アクセス系光ファイバ通信ネットワークとして、一部の伝送路を複数ユーザーで共有するPONが一般の家庭向けインターネット接続用回線として普及している。一般の家庭向けインターネット接続用回線ではコスト重視のため、伝送路やONUの冗長化はなされていないことが一般的である。このため、複数ユーザが共有する線路(幹線とも呼ばれる。以下、本明細書では幹線と呼ぶ)上で災害や不慮の事故により伝送路の切断、破損などの回線異常が発生してしまった場合、この幹線を共有している全てのユーザ(配下の全ONU)が通信不能になることから、ネットワーク障害の影響が大きく、大きな問題になる。一方、電気事業においても、場合によってより高信頼な通信回線が求められると考えられるため、PONの耐障害化技術が重要となってくる。
光回線異常により正常な光通信サービスができなくなった場合、通信事業者は、不具合箇所を特定し、早急に故障個所を修繕するか、切断されたり破損したりした光ケーブルの区間を別の光ケーブルにて再敷設する必要がある。特に、幹線に被害が及んだ場合は、この幹線を共有している全てのユーザに不便をかけるため早急に復旧しなければならない。しかしながら、幹線の再敷設のためには、ユニック車などの工事車両や、光ケーブルを敷設できる技術を有する技術者などが必要になる。すなわち、修理作業完了までに様々な時間を要するため、光通信サービスを瞬時に復旧させることは難しい。そのため、光伝送路(光回線)、特に幹線の冗長化を図って信頼度を高めることが要望されている。
そこで、隣接幹線を迂回線路として利用するPON伝送路冗長化方式が提案されている。このPON伝送路冗長化方式は、図10に示すように、2つの幹線103,103’のドロップケーブル用分岐クロージャー104,104’を、幹線に障害が発生したときに障害が発生した幹線側のドロップケーブル用分岐クロージャーを障害が発生していない幹線側のドロップケーブル用分岐クロージャーの後段に直列接続することにより、障害が発生した幹線側のONU装置を障害が発生していない幹線側のドロップケーブル用分岐クロージャーの複数の出力回線の1つとして接続することにより、お互いの幹線を保護し合う光通信回線の冗長構成を構築するものである。ドロップケーブル用分岐クロージャー104は、例えば図10に示すように、光スプリッタ106の上段に光スイッチ105を設けると共に、光スプリッタ106の出力端子の1つを利用して受光監視部107を備え、光スプリッタ106から分岐させた幹線の下り信号を検知して光スイッチ105の制御を行うようにしている。一方、光スイッチ105のデフォルト側の端子は、他の幹線に接続されているドロップケーブル用分岐クロージャー104’の光スプリッタ106’の出力端子の1つにバイパス用光ファイバ109で接続されている。尚、図中の符号101は集線局内のOLT、102は光スプリッタ、108はドロップケーブル、110はONUである。
したがって、このPON伝送路冗長化方式によると、幹線103上で回線異常が発生した場合、ドロップケーブル用分岐クロージャー104の受光監視部107は、光スプリッタ106で分岐された後の下り信号を検知して受光パワーの異常を検出し、光スイッチ105を図11(A)から(B)の状態に切り替えることにより、上位回線接続先を幹線103から別の幹線(予備幹線)103’に変更する(図10参照)。これにより、ドロップケーブル用分岐クロージャー104は、同一OLT101に接続された他の幹線103’のドロップケーブル用分岐クロージャー104’の後段に出力回線の1つとして再接続されることになる。よって、通信障害が発生していた各ONU装置110は、ドロップケーブル用分岐クロージャー104(光スプリッタ106→光スイッチ105→バイパス用光ファイバ109)、ドロップケーブル用分岐クロージャー104’(光スプリッタ106’→光スイッチ105’)を経由して、別の幹線103’を介してOLT装置101との信号送受信が可能となり、自動復旧できる。
同様に、幹線103’上で回線異常が発生した場合、ドロップケーブル用分岐クロージャー104’の受光監視部107’は、受光パワーの異常を検出し、光スイッチ105’を切り替えることにより、上位回線接続先を幹線103’から別の幹線(予備幹線)103に変更する。これにより、ドロップケーブル用分岐クロージャー104’は、ドロップケーブル用分岐クロージャー104の後段に再接続されることになる。よって、通信障害が発生していた各ONU装置110’は、ドロップケーブル用分岐クロージャー104’(光スプリッタ106’→光スイッチ105’→バイパス用光ファイバ109’)、ドロップケーブル用分岐クロージャー104(光スプリッタ106→光スイッチ105)を経由して、予備幹線103を介してOLT装置101との信号送受信が可能となり、自動復旧できる。
しかしながら、特許文献1記載の冗長構成では、線路の復旧が完了して光信号がクロージャーまで届いていても、光スイッチの後段にある光パワーモニタではそれを検出することができない(図12(A)参照)。したがって、伝送線路を元の状態に戻すには、作業員がクロージャーを1つずつ開けて光スイッチを手動で図12(B)に示すように切り替える作業を行わなくてはならない。これには高所作業車が必要であるばかりか、警察などへの作業の届けや人件費なども必要である。また、簡単に手で切り替えられるものではないので、障害復旧後に手動で切り替える回路が必要となる上に、その回路も複雑なものとなる。
もちろん、障害が復旧しても直ちに上位回線接続先を元の幹線に戻すように光スイッチを復帰させなくとも、特に支障を来すものではないが、その場合にはどの線路がどのクロージャーを通っているかということを別途管理しておく必要がある。信号のパケットを分析してもどのクロージャーを通ったかは分からないので、経路を検出するのはかなり難しいものとなる。したがって、管理者側のデータと実際の経路が食い違っていた場合、今後障害が発生したときに断線位置と回線断の範囲がデータと異なって混乱することとなる。
また、特許文献1に記載の冗長化方式では、光スプリッタ106,106’の出力端子の1つに光パワーモニタ107,107’を接続すると共に、光スイッチ105,105’のデフォルト側端子に接続されたバイパスケーブル109,109’を他のドロップケーブル用分岐クロージャー104,104’の光スプリッタ106,106’の出力端子の1つに接続しているので、光スプリッタ106,106’の出力端子の数よりもONU110,110’への引き込み線(ドロップケーブル)108,108’の数を減らさざるを得ない問題を有している。即ち、ドロップケーブル108,108’の接続数が1つのドロップケーブル用分岐クロージャー104,104’毎に2本少ないものとなる。一般的なドロップケーブル用分岐クロージャー104,104’では、光スプリッタ106,106’で8分岐されて8本のドロップケーブル108,108’が接続可能とされているので、幹線の冗長化のために25%のドロップケーブルの減数が強いられることとなる。本来、ドロップケーブル用分岐クロージャーで分岐された光ファイバは、ONU110,110’への引き込み線(ドロップケーブル)108,108’として収益を上げるための重要なインフラであり、その数を減らすことは望ましくない。
一方、幹線に障害が発生したときには、2つのドロップケーブル用分岐クロージャーを経由して、障害が発生した側の幹線に接続されているONUを障害が発生していない側の幹線に接続しているので、幹線に障害が発生した側のONUと障害が発生していない側の幹線にもともと接続されているONUとの間、即ち幹線に障害が発生する前と後とで、ドロップケーブル用分岐クロージャーの複数の出力回線の1つとして接続することにより、ONUに到達する光強度が極端に異なる問題がある。例えば、障害前後の光強度変化を示した図13によると、特許文献1に記載の冗長方式では、OLT101からの光出力強度を100とすると、まず親局内の4分岐の光スプリッタ102で1/4の25になる。光スイッチ105の伝送損失は小さいため無視すると、8分岐の光スプリッタ106でさらに1/8になり、結局ONU110には3.125の強度の光が届く。これが障害時には、図13(B)に示すように、8分岐の光スプリッタを2回通るため(106→106’)、障害が発生した幹線103側のONU110には0.39(障害発生前の12.48%)の光しか届かないこととなる。即ち、幹線障害の前後で無視できない大きな伝送損失の変化が発生するという問題を有している。さらに多重障害が発生してカスケード的に別の幹線のドロップケーブル用分岐クロージャへの切替が発生すると、その都度光スプリッタを通るため、障害の発生前後で光スプリッタの分岐数分の1の累乗の伝送損失係数(伝送損失係数=(1/a)n ,ここで、aは光スプリッタの分岐数、nはカスケード段数である。)で急激に伝送損失を増大させて信号劣化を招くことから、多重障害に対応できない冗長構成である。例えば、カスケード段数が2になると、ONUに正常時に到達していた3.125の光強度が2桁も小さな0.0488(障害発生前の約1.56%)まで劣化することとなる。
しかも、光パワーモニタ107,107’に必要な光強度は、入力光の100分の1のパワーで十分であり、光通信に必要とするほどの光強度を必要としないことから、光スプリッタの出力端子に光パワーモニタを接続してもほとんどのパワーは無駄になる。
本発明は、シンプルでOLTの性能を効率よく利用でき、多重障害にも対応可能で、かつ停電時にも通信途絶が生じないPON伝送路冗長化方式を提供することを目的とする。また、本発明は、電気事業用のような高い信頼性を必要とするネットワークへの適用が可能なPON伝送路冗長化方式を提供することを目的とする。さらに、本発明は、ONUへの引き込み回線数を減らさずに冗長構成とすることができるPON伝送路冗長化方式を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために請求項1記載のPON伝送路冗長化方式は、親局(OLT)に接続される幹線を分岐して子局(ONU)に繋がる複数のドロップケーブルが接続される光スプリッタよりも上段に、伝送路切替スイッチモジュールを配置し、伝送路切替スイッチモジュールは、幹線に接続される第1の光カプラと、第1の光カプラに接続される非自己保持型光スイッチと、第1の光カプラから分岐させた幹線の下り信号を検知して非自己保持型光スイッチの制御を行う光パワーモニタと、非自己保持型光スイッチに接続される第2の光カプラとを備え、非自己保持型光スイッチのデフォルト側ポートと同じOLTに接続された別の幹線の伝送路切替スイッチモジュールの第2の光カプラの分岐ポートの1つとをバイパス用光ファイバで接続し、光パワーモニタによって幹線の下り信号を検知しているときには非自己保持型光スイッチの接続状態を非デフォルト側で保持し、障害が発生して幹線の下り信号を検知できないときには非自己保持型光スイッチをデフォルト側に切り替えて、障害が発生している幹線に接続されているONUの接続先幹線を障害の発生していない他の幹線に変更する一方、障害が復旧したときには、幹線の下り信号を光パワーモニタによって検出することにより非自己保持型光スイッチを自動的に元の状態に戻し、上位回線接続先を障害発生前の元の幹線に戻すようにしている。
また、請求項2記載の発明にかかる請求項1記載のPON伝送路冗長化方式において、同じOLTから分岐された幹線に備えられたそれぞれの伝送路切替スイッチモジュールの非自己保持型光スイッチのデフォルト側ポートと、他の幹線の伝送路切替スイッチモジュールの第2の光カプラの分岐ポートとは、バイパス用光ファイバでカスケード接続されていることを特徴とする。
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載のPON伝送路冗長化方式において、地理的に近い場所に設置される隣接幹線の伝送路切替スイッチモジュール同士をバイパス用光ファイバで接続し、隣接幹線を迂回線路として利用するものである。
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載のPON伝送路冗長化方式において、同一OLTに接続される複数の幹線を別々の多心ケーブルに分けてドロップケーブル用分岐クロージャーに至る伝送路を敷設し、同一OLTに接続されているドロップケーブル用分岐クロージャー同士を地理的に近い場所へ設置すると共に、伝送路切替スイッチモジュール同士を接続するバイパス用光ファイバは隣接ONU間を経由して敷設されていることを特徴とするものである。
請求項1記載のPON伝送路冗長化方式によれば、上位回線接続先を切り替えるスイッチとして非自己保持型光スイッチを用い、その前段に光パワーモニタを設けるようにしているので、OLTから最終クロージャーまでの区間の幹線に障害が発生したときには自動的に障害幹線を迂回し、尚且つ幹線の障害が除去され復旧したときにも自動的に上位回線接続先を障害復発生前の元の幹線に戻すことができるので、通信が途絶えることがないと共に障害復旧と同時に光強度も元に戻る。しかも、作業員がクロージャーを1つずつ開けて光スイッチを手動で切り替える作業を行わなくて済む。同時に、光スイッチを元に切り替える作業のための高所作業車や警察などへの作業の届け、人件費も必要なくなる。さらに、停電時でも非自己保持型光スイッチがデフォルト側に自動的に切り替わり、回線が維持されるため、配電自動化用の通信回線など、電気事業として電力の復旧のために通信が必要な場合にも利用できる可能性がある。
また、ドロップケーブル用分岐クロージャーの光スプリッタで分岐した光ファイバを全て引き込み線(ドロップケーブル)としてONUを接続できるため、ユーザーに引き込める回線数を減らさずに、OLTから最終クロージャーまでの区間で耐障害化を施すことができる。これにより、帯域リソースを有効活用できる。さらに、OLTおよびONUには新規機能の追加は不要であり、従来のものをそのまま利用でき、また幹線長よりも接続クロージャー間の距離を短くすることで、幹線を二重化するよりも敷設コストが低く抑えられる。
また、本冗長化方式では光スイッチの切替制御信号はクロージャー部にて得られるので遠隔制御等が不要で、そのための制御回線も必要ない、さらに非自己保持型光スイッチを用いるので、制御信号の生成には光パワーモニタにおいて単にフォトダイオードの出力をトランジスタで増幅する程度で済む。本冗長方式では、非自己保持型光スイッチとして、動作速度は遅くてもよく、より低消費電力のものを選択できる。しかも、光スイッチに波長依存性の小さなものを選ぶことで、将来的に光スプリッタをAWGに交換してWDM−PONとする場合にも適用できる可能性がある。
また、本発明のPON伝送路冗長化方式は、幹線に障害が発生したときに、障害が発生した側の幹線に接続されているドロップケーブル用分岐クロージャーと、障害が発生していない側の幹線のドロップケーブル用分岐クロージャーとを、障害が発生していない幹線に並列に接続する冗長構成としているので、幹線に障害が発生する前と後とで、ONUに到達する光強度が極端に変化(劣化)することがない。例えば、障害前後の光強度変化を示した図9に示すように、OLT1からの光出力強度を100とすると、まず親局内の4分岐の光スプリッタ2で1/4の25になる。第1の光カプラ5で光パワーモニタ6へ信号を分岐することの伝送損失並びに光スイッチでの伝送損失は小さいため無視すると、2分岐の第2の光カプラ8でさらに1/2の12.5になった後に、さらに8分岐の光スプリッタ10で1/8にされて、結局ONU12には1.56の強度の光が届く。これが障害時には、2分岐の第2の光カプラ8を2回通るため、障害が発生した幹線側のONU12には0.78(障害発生前の50%)の光が届くこととなる。即ち、幹線障害の前後で信号強度が半減する程度の伝送損失の変化に抑えることができ、特許文献1に記載の冗長方式の2倍の信号強度が得られる。
以上、本発明のPON伝送路冗長化方式によれば、シンプルでOLTの性能を効率よく利用でき、多重障害にも対応可能で、かつ停電時にも通信途絶が生じないため、電気事業用のような高い信頼性を必要とするネットワークへの適用も可能な耐障害化を構築できる。
また、請求項2記載の発明によると、カスケード接続により同一OLTに接続されている幹線の伝送路切替スイッチモジュールが相互に接続されているので、上位回線接続先が多重化されて多重障害に対応できる。しかも、障害が発生した側の幹線のドロップケーブル用分岐クロージャーと、障害が発生していない幹線のドロップケーブル用分岐クロージャーとが障害が発生していない幹線に並列接続されるので、多重障害によりカスケード的に別の幹線のドロップケーブル用分岐クロージャへの切替が発生しても、第2の光カプラを通過する都度に光が半減するだけなので、特許文献1に記載の冗長方式のような極端な光信号の劣化・伝送損失が起こらず多重障害にも対応できる。例えば、カスケード段数が2になっても、ONUに正常時に到達していた1.56の光強度が1/4の0.39(障害発生前の約25%)までしか劣化することがなく、これは特許文献1に記載の冗長方式の場合のカスケード段数1の場合のONUに到達する光強度と同じである。
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載のPON伝送路冗長化方式において、地理的に近い場所に設置される隣接幹線の伝送路切替スイッチモジュール同士をバイパス用光ファイバで接続し、隣接幹線を迂回線路として利用するので、バイパス用光ファイバの敷設工事が比較的短距離で大規模にならずに済み、工事の手間もコストも削減できる。
また、請求項4記載の発明によると、多心ケーブルを用いた伝送路においてもOLTから最終クロージャーまでの区間で耐障害化が施されることになる。
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
PON伝送路において断線時の影響が大きいのは分岐線路よりも幹線であることから、幹線を冗長化する必要がある。ここで、PON伝送路は、通常、集線局内で一度光スプリッタで分岐されているため、同一のOLTに接続するファイバが比較的近い経路に敷設されていることが多い。そのため、隣り合った幹線を互いに予備線路としても利用できれば、線路コストをより低減することが可能となる。一般に伝送路の共有部分は比較的長く、一方で隣り合うドロップケーブル用分岐クロージャー(光スプリッタ)間の距離は短いため、幹線を二重化するよりはクロージャー間を接続した方が、冗長化構成に必要とされる全体のファイバ長は短くなると考えられる。
そこで、本発明のPON伝送路冗長化方式は、屋外の光スプリッタの直前に伝送路切替スイッチモジュールを配置し、隣り合うモジュール間をバイパス用光ファイバで接続し、接続先幹線に障害が発生した場合、その配下のONUを非自己保持型光スイッチによる信号経路の切り替えによって、隣接幹線の配下のONUと共に隣接幹線に対し並列接続されるように構成されている。
具体的には、図1及び図2に示すように、本実施形態のPON伝送路冗長化方式は、親局(OLT)に接続される幹線を分岐して子局(ONU)12に繋がる複数のドロップケーブル11が接続される光スプリッタ10よりも上段に、伝送路切替スイッチモジュール4を配置し、同一のOLT1に接続される複数の幹線3,3’,…の間で伝送路切替スイッチモジュール4,4’同士をバイパス用光ファイバ9,9’で接続することにより、隣接幹線3,3’を迂回線路として利用するようにしている。
ここで、伝送路切替スイッチモジュール4は、幹線3に接続される第1の光カプラ5と、第1の光カプラ5に接続される非自己保持型光スイッチ7と、第1の光カプラ5から分岐させた幹線3の下り信号を検知して非自己保持型光スイッチ7の制御を行う光パワーモニタ6と、非自己保持型光スイッチ7に接続される第2の光カプラ8とを備え、ドロップケーブル用分岐クロージャー(例えば図6〜9において符号18、図4及び5において符号18A1,18A2並びに18B1,18B2などで示すボックス)に組み込まれている。そして、伝送路切替スイッチモジュール4の非自己保持型光スイッチ7のデフォルト側ポートBと、同じOLT1から分岐された他の幹線3’に接続された伝送路切替スイッチモジュール4’の第2の光カプラ8’の分岐ポートの1つとは、バイパス用光ファイバ9で接続されている。つまり、非自己保持型光スイッチ7がデフォルト側ポートBに切り替わると、このデフォルト側ポートBに接続されているバイパス用光ファイバ9を介して、障害が発生した幹線3側の伝送路切替スイッチ4と、障害が発生していない幹線3’側の伝送路切替スイッチ4’とが、障害が発生していない幹線側に並列に接続されるので、隣接幹線を迂回線路として利用する冗長構成となる。本実施形態の場合、伝送路切替スイッチモジュール4は、例えば、図2に示すように、第1及び第2の2個の1x2の光カプラ5,8と、同じく1個の1x2の非自己保持型光スイッチ7が配置され、光パワーモニタ6の動作用に電源13が接続されている。電源13は、通常、伝送路を敷設する際には電源ケーブルを敷設した電柱を利用しているので、電源ケーブルから分岐させて用いることが簡単である。尚、本実施形態では、伝送路切替スイッチモジュール4は、ドロップケーブル用分岐クロージャーに組み込まれているが、これに特に限られるものでなく、場合によっては、ドロップケーブル用分岐クロージャーとは別の筐体に納めてドロップケーブル用分岐クロージャーの前段に配置するようにしても良い。
非自己保持型光スイッチ7は、電源断でスイッチの接続状態が特定の(デフォルト)状態に戻るという特性を有するものである。この非自己保持型光スイッチ7は、通常(非事故・障害)状態においては常に光スイッチに電圧を加えておく必要があるが、電源断で自動的にデフォルト状態に戻り(隣接幹線への迂回)、さらには電源(および光信号)の復旧で再度自動的に通常状態に復帰するため、運用がシンプルになる。本実施形態の場合、非自己保持型光スイッチ7は、光パワーモニタ6で発生する電流を利用してスイッチング動作が制御されている。例えば、図6に示すように、非自己保持型光スイッチ7への電源供給は光パワーモニタ6の出力を増幅器14で増幅して与えるようにしている。即ち、非自己保持型光スイッチ7は、光パワーモニタ6でOLT1からの下り光信号が受信できかつ電源が供給されているときはポートAとCとが接続され(非デフォルト状態)、電源あるいはOLT1からの光入力が失われた場合には自動的にデフォルト状態(B−C間が接続)に戻る。
光パワーモニタ6は、受光素子として通常フォトダイオードが用いられており、受光すると微弱な電流を発生する。これをオペアンプ14のような簡単な電気回路で増幅し、非自己保持型光スイッチ7が要求する閾値以上の電流または電圧にして加えることで、非自己保持型光スイッチ7のスイッチバーをデフォルト状態(図2の左側の状態:Bポート)から非デフォルト状態(図2の右側の状態:A−C間が接続)に切り替えることができる。非自己保持型光スイッチ7への電源供給は光パワーモニタ6の出力を増幅して与えるだけでよく、電源13かOLT1からの光入力が失われた場合(電源断)、非自己保持型スイッチ7は自動的にデフォルト状態(B−C間が接続)に戻る。また、電源13およびOLT1からの光入力が復帰した場合には、自動的にポートA−C間が接続されるため、リセット動作などは不要である。ここで、電源断とは、光パワーモニタ6で受光する光信号(下り信号)が途絶えるか、または増幅器14を動作させるための電源13が停電する場合の双方を含む概念であり、光信号(下り信号)が途絶えなくとも電源が停電する場合にはデフォルト状態に切り替わる。例えば、伝送路を敷設した電柱が倒壊して電源ケーブルが断線するような場合は、光ケーブルも少なからずダメージを受けること、場合によっては大きなダメージを受けることが想定されるので、電源断で隣接幹線に強制的に迂回させることは合理的である。
ドロップケーブル用分岐クロージャー(伝送路切替スイッチモジュール4,4’)同士の接続は、図2に示すように、一方の幹線3の非自己保持型光スイッチ7のデフォルト側ポートBと他方の幹線3’の伝送路切替スイッチモジュール4’の第2の光カプラ8’の分岐ポートとを、バイパス用光ファイバ9で接続することによって、隣接する2本の幹線3,3’の間で相互に保護し合う冗長構成としても良いが、場合によっては図3に示すように、同じOLT1から分岐された幹線3,…,3’’’に備えられた全てのドロップケーブル用分岐クロージャー(伝送路切替スイッチモジュール4,…,4’’’)同士をカスケード接続するようにしても良い。カスケード接続する場合、両端のクロージャー間も接続することで、ループを構成できる。カスケード接続の場合、障害を起こしていない接続先幹線に接続されるまで、障害を起こした各幹線の配下のONUは上位回線接続先を切り替えるため、多重障害に対応することができる。ここで、地理的に近い場所に設置される隣接幹線の伝送路切替スイッチモジュール同士をバイパス用光ファイバで接続し、隣接幹線を迂回線路として利用することが好ましい。この場合には、幹線の冗長化に必要とされる光ファイバの全長が少なくできる。
以上のように構成されたPON伝送路冗長化方式によれば、接続先幹線の下り信号を検知しているとき、例えば図7(A)に示すように、接続先幹線3に障害が発生していない通常状態では、非自己保持型光スイッチ7の接続状態が非デフォルト側に保持される。すなわち、光パワーモニタ6でOLT1からの下り光信号が受信でき、かつ電源が供給されているときには、非自己保持型光スイッチ7はポートAとCが接続される。しかし、接続先幹線3に障害が発生するなど、下り信号を検知できないときには、図7(B)に示すように、非自己保持型光スイッチ7の前段にある光パワーモニタ6で光信号断が検出されるため、光パワーモニタ6からの制御電圧が低下しあるいは消失し、非自己保持型光スイッチ7の切替制御が自動的に行われる。非自己保持型光スイッチ7はポートBとCが接続される(デフォルト)状態となる。つまり、図9(B)に示すように、非自己保持型光スイッチ7をデフォルト状態に切り替えて、バイパス用光ファイバ9を介して他の幹線3’に接続されている他の伝送路切替スイッチモジュール4’の第2の光カプラ8’を介して光スプリッタに接続されたONU12の接続先幹線を他の幹線3’に変更する。しかも、本発明のPON伝送路冗長化方式は、障害が発生した幹線側の伝送路切替スイッチモジュール4(ドロップケーブル用分岐クロージャー)を、障害が発生していない幹線側の伝送路切替スイッチモジュール4’(ドロップケーブル用分岐クロージャー)と、障害が発生していない幹線3’に対して並列に接続することにより、障害が発生した幹線3側のONU12にも障害発生前の50%の光強度で下り光信号が届くこととなる。このため、停電時にも通信回線が失われることはない。
また、幹線の障害が除去され復旧したときには、図8(A)に示すように、幹線の下り信号がドロップケーブル用分岐クロージャーの非自己保持型光スイッチ7まで届いているので、非自己保持型光スイッチ7の前段にある光パワーモニタ6で光信号・下り信号が検出される。そして、図8(B)に示すよう、光パワーモニタ6からの制御電圧がかかって非自己保持型光スイッチがポートBからAに自動的に切り替わり、元の状態(A−C間が接続)に戻る。これにより、上位回線接続先を障害発生前の元の幹線に自動的に戻す。同時に、障害復旧後の幹線に接続されるONU12には、図9(A)に示すように、障害発生前の光強度(1.56)に戻る。
図4に多心ケーブルを用いた伝送路における冗長構成の実施形態の一例を示す。尚、本実施形態におけるOLTやそれに接続される伝送路の構成は、図中の符号に添えるアルファベットと数字で区別している。一般に光ファイバ伝送路の敷設には多心ケーブル15,16が用いられている。この場合、集線局からは一般に多心ケーブル15で比較的長い距離(〜数km)を敷設され、途中でケーブル分岐用クロージャー17にて多心ケーブル15がさらに複数の多心ケーブル16に分岐され、その後ドロップケーブル用分岐クロージャー18A1,18A2並びに18B1,18B2で複数のドロップケーブルに分岐される。
通常、集線局には複数のOLT(または1台のOLT内に複数の光インターフェース)1A,1Bがあり、多心ケーブルも複数接続されているため、各OLT1A,1Bの1段目の分岐において各分岐線3A1と3B1、3A2と3B2を別々の多心ケーブル15へ収容する。図4では説明を簡単にするため、2分岐としており、3A1と3B1、3A2と3B2をまとめてケーブル化している。その後、ケーブル分岐クロージャー17を経由してドロップケーブル用分岐クロージャー18A1,18A2並びに18B1,18B2に至る伝送路を敷設し、同一OLT1Aあるいは1Bに接続されているドロップケーブル用分岐クロージャー18A1,18A2あるいは18B1,18B2同士を地理的に近い場所へ設置する。具体的には、例えばOLT1Aに接続されている幹線3A1,3A2のドロップケーブル用分岐クロージャー18A1,18A2同士、並びにOLT1Bに接続されている幹線3B1,3B2のドロップケーブル用分岐クロージャー18B1,18B2同士を地理的に近い場所へ設置する。そして、伝送路切替スイッチモジュール4A1,4A2同士並びに4B1,4B2同士を接続するバイパス用光ファイバ9A,9Bは隣接ONU12A1,12A2並びに12B1,12B2間を経由して敷設される。このように接続することで、OLT1A,1Bから最終クロージャー18A1,18A2並びに18B1,18B2までの区間で耐障害化が施されることになる。
PONの伝送路は市街地であれば碁盤目状に敷設されることが多い。この場合に本発明のPON伝送路冗長化方式を用いると、例えば図5のようにクロージャー間を接続することが可能である。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、非自己保持型光スイッチや光カプラの挿入による伝送損失の増加が無視できないほどに大きなものとなる場合には、OLTの光源出力を大きくする、光増幅器を用いるなどの対策が必要となることもある。