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JP5616782B2 - 免疫増強機能を有する抗体 - Google Patents

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Description

本発明は、免疫を増強する新規抗体に関する。更には、当該抗体を用いた医薬等の用途に関する。
免疫系は、外部の異物や病原体等から人体を保護する重要な機能であるが、その機構が阻害されたり、機能しなくなると、様々な障害が現れたり、重篤な疾病に罹患しやすくなるといった問題が生じる。
例えばアレルギーや自己免疫疾患は、本来免疫寛容されるべき対象に対する過剰な免疫反応により生じている。
また、このような過剰免疫反応とは反対に、がんの成長・増殖・転移過程では腫瘍細胞が免疫を抑制し、腫瘍に対して免疫を機能させなくする(いわゆる腫瘍免疫)仕組み、すなわち「免疫抑制機能」を有しており、これによりがんは増殖・転移を繰り返す。
このような免疫を抑制させる機構については、近年多くの研究がなされており、徐々にその機構が解明されてきている。
このメカニズム解明の中でも、特に近年注目されているのが、がん組織周辺の「免疫抑制」状態の解除方法に関するものである。
がん組織は、TGF−β、IL−10、PGE2等の免疫抑制物質を産生することで、がん組織周辺での免疫機能を低下させ、がん組織が自己の免疫細胞により攻撃されることを回避していると考えられている。
そこで、この免疫抑制状態を解除することにより、また、免疫機能を向上させることにより、がんの治療も向上すると考えられ、様々な研究がなされてきている。
この免疫抑制を担う細胞群としては、CD4CD25FoxP3細胞等が主に挙げられ、レギュラトリーT細胞(以下、「Treg」ということもある)として知られている。このTregには、天然型Treg(natural Treg、以下「nTreg」ということもある)と、誘導型Treg(induced Treg、以下「iTreg」ということもある)とに大別される。
nTregは主に胸腺で分化し、末梢血単核球中に約5%存在する細胞である。例えばアレルギーや自己免疫疾患等は通常このnTregが働くことにより、回避する仕組みとなっている。
一方のiTregは二次リンパ組織(末梢組織)で分化し、がん組織周辺など特定の環境にのみ存在するTregであると推定され、がん組織周辺ではこのiTregが作用して免疫抑制状態を引き起こしていると考えられていて、がん治療方法の研究のひとつとしてこれらに対する抗体や、これら細胞を認識するマーカー等の探索が始められている。
このようなTregによる免疫抑制を解除する方法としては例えば、(1)抗CD25抗体単独もしくはジフテリア毒素などと結合させたものを用いる方法(非特許文献1)、(2)抗GITR抗体を用いる方法(非特許文献2)、(3)抗CTLA−4抗体を用いる(非特許文献3)、等という方法が挙げられる。
しかしながら、上記(1)の方法では、CD25陽性細胞を全て取り除くことになり、CD25陽性細胞は活性化を担う細胞でもあるため、Tregが除去されると同時にTreg以外の活性化したリンパ球も排除されてしまう。また、(2)の方法では、マウスでの有効な治療成績は残されているものの(非特許文献2)、人間での有効データはまだ明確なものが得られていない。(3)の抗CTLA−4抗体を用いた方法では、メラノーマに対しては一定の効果があるものの(非特許文献3)、その他のがん種での効果はいまだ不明である。
他方、特許文献1には、B細胞慢性リンパ球性白血病に関連するタンパク質として、FLJ32028タンパク質が単離され、このタンパク質がB細胞慢性リンパ球性白血病の診断マーカーとなり得ること、また、このタンパク質に対する抗体がB細胞慢性リンパ球性白血病の診断に用いられることも記載されている。しかしかしながら、特許文献1には、FLJ32028タンパク質とTregとの関係については全く何ら記載されていない。また、特許文献2には、Tregの細胞表面には4型葉酸受容体が高発現しており、この受容体をマーカーとして、この受容体に対する抗体を用いて、Tregを検出できることが記載されている。しかしながら、特許文献2には、FLJ32028タンパク質とTregとの関係については全く何ら記載されていない。
国際公開第WO2004/110369号パンフレット 特開2006−304740号公報 Dannull J,et al., J Clin Invest. 2005 Dec;115(12):3623-33. Shimizu J, et al.,Nature Immunology 3,135-142(01 Feb 2002) Phan GQ,et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100.372
このように、がんの治療においてはiTregを除去することがその治療において有効であると考えられているものの、その具体的な方法はまだ確立していない。
従って、本発明の課題は、Tregを特異的に除去することが可能な抗体及びその利用を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を克服するため、当該Treg特異的な標識となりうる分子がないかを検証し、FLJ32028が、Treg、とりわけiTreg表面特異的に発現している分子であることを解明した。さらにこの分子に対するモノクローナル抗体を得たことにより、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]から[19]に関する。
[1].膜貫通分子FLJ32028を認識する抗体であって、かつ、レギュラトリーT細胞に特異的に結合する抗体;
[2].レギュラトリーT細胞表面に特異的に発現している膜貫通分子FLJ32028に結合する上記[1]に記載の抗体;
[3].レギュラトリーT細胞が、誘導型レギュラトリーT細胞である上記[1]または[2]に記載の抗体;
[4].誘導型レギュラトリーT細胞の前駆細胞から誘導型レギュラトリーT細胞への分化を阻害する上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の抗体;
[5].抗体がモノクローナル抗体である上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の抗体;
[6].モノクローナル抗体が、ブダペスト条約に基づき国際寄託され、受領番号FERM ABP−11100が付与されたハイブリドーマから産生される上記[5]に記載の抗体;
[7].上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の抗体に、レギュラトリーT細胞を結合させて、レギュラトリーT細胞を除去する、レギュラトリーT細胞の除去方法;
[8].レギュラトリーT細胞が、誘導型レギュラトリーT細胞である上記[7]に記載の除去方法;
[9].上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の抗体を具備するレギュラトリーT細胞除去装置;
[10].レギュラトリーT細胞が、誘導型レギュラトリーT細胞である上記[9]に記載の除去装置;
[11].上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の抗体を含む医薬;
[12].レギュラトリーT細胞による免疫抑制を解除するための上記[11]に記載の医薬;
[13].レギュラトリーT細胞により増殖が抑制された細胞を増殖させるための上記[11]または[12]に記載の医薬;
[14].免疫機能を増強させるための上記[11]乃至[13]のいずれかに記載の医薬;
[15].レギュラトリーT細胞が、誘導型T細胞である上記[11]乃至[14]のいずれかに記載の医薬;
[16].膜貫通分子FLJ32028タンパク質またはその断片からなるレギュラトリーT細胞検出用マーカー;
[17].レギュラトリーT細胞が誘導型レギュラトリーT細胞である上記[16]に記載のレギュラトリーT細胞検出用マーカー;
[18].その細胞表面上に膜貫通分子FLJ32028タンパク質の発現が疑われる被験細胞と、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の抗体とを接触させ、該被験細胞表面上の膜貫通分子FLJ32028タンパク質の発現を検出することを含む、該被験細胞中におけるレギュラトリーT細胞の検出方法;および
[19].レギュラトリーT細胞が誘導型レギュラトリーT細胞である上記[18]に記載の検出方法。
本発明の抗体は、iTreg表面に発現しているFLJ32028を認識するため、がん組織周辺で発生しているiTregをターゲットとして、その機能を抑止することが可能となる。すなわち、がん組織周辺の免疫抑制状態を解除し、免疫機能を増強すること等が可能である。更には、本発明の抗体は、誘導型レギュラトリーT細胞の前駆細胞から誘導型レギュラトリーT細胞への分化を阻害することができる。
以上のことから、本発明の抗体を、免疫増強剤やがん治療剤として治療に用いることにより、あるいは免疫細胞療法によるがん治療を行う際に用いる細胞培養時に用いることにより、効果的ながん治療を提供することが可能となる。
図1は、CD4CD25又はCD4CD25細胞由来cDNAをテンプレートにしFLJ32028分子に対するリアルタイムPCRを行った結果を示す図である。 図2は、CHO細胞へFLJ32028分子をコードするプラスミドベクター又はコントロールベクターを一過性に発現させ、抗FLJ32028抗体の抗原特異性を確認した図である。 図3は、抗FLJ32028抗体に磁気ビーズを付着させ、その複合体をヒトPBMCに反応させ、FLJ32028分子を除去後に抗CD3抗体によって細胞増殖を測定した図である。 図4は、図3と同様の処理をしたPBMCをK562と1:1で混合した際の細胞障害活性を示す図である 図5は、図3と同様の処理をしたPBMCを回収し、PMA及びionomycin再処理を行った後に細胞内IFN−γ産生をFACS解析した図である。 図6は、ヒトPBMCを抗CD3抗体で刺激する際、プレートに抗FLJ32028抗体を固相化又は培地中に抗FLJ32028抗体を添加して細胞増殖を測定した図である。 図7は、ヒトCD4CD25細胞をiTregへ誘導する条件で培養し、6〜7日後に各抗体でFACS解析した解析のグラフである。 図8は、アロMLR時にiTregを添加する際に、コントロール抗体添加又は抗FLJ32028抗体添加を行い免疫抑制解除の割合を示すグラフである。 図9は、iTregを誘導する際に、本発明の抗体を添加して培養した際の、得られた細胞のFoxP3の発現強度を示すグラフである。 図10は、iTregを誘導する際に、本発明の抗体を添加して培養し、得られた細胞とエフェクター細胞と腫瘍細胞を共培養した際の、エフェクター細胞の腫瘍細胞に対する細胞傷害活性を示すグラフである。 図11は、誘導後iTregに本発明の抗体を添加して培養し、得られた細胞とエフェクター細胞と腫瘍細胞を共培養した際の、エフェクター細胞の腫瘍細胞に対する細胞傷害活性を示すグラフである。 図12は、U937を移植した免疫不全マウスに本抗体を投与した場合の、腫瘍体積の変化を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
FLJ32028に対する抗体
まず、本発明にかかる、FLJ32028分子に対する抗体(以下、「本発明の抗体」ということもある)について説明する。
本発明の抗体は、Tregの表面分子であるFLJ32028を認識する抗体であり、Treg、とりわけ誘導型Tregを認識し、誘導型Tregに特異的に結合することができる。
本発明の抗体は、上記FLJ32028分子を認識する抗体である。上述の通り、FLJ32028はTreg特異的に発現しているため、本発明の抗体は、Tregと特異的に結合するという特性を有する。
本発明の抗体は、クローン化されたイムノグロブリン抗体であれば何であってもよく、抗体の由来する動物種、イムノグロブリンのタイプやサブクラス、抗体の産生方法は問わない。また、抗体を断片化して免疫反応部位を残したもの、それら断片の修飾物、抗体そのものの修飾物、2種類の抗体を結合させたキメラ抗体、ヒト化抗体等も包含する。また、本発明の抗体は、抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよく、特に、モノクローナル抗体であることが好ましい。
FLJ32028は分子量約20kDaの公知の蛋白質であり、一回膜貫通型のトランスメンブレンプロテイン154(TMEM154)、HGNC ID26489として同定されている。ただし、リガンドは今のところ見出されていない。GenBankにはAK056590として登録されている(Nat. Genet.36(1)、40-45(2004))。FLJ32028タンパク質をコードする遺伝子は配列表の配列番号1に示したとおりであり、FLJ32028タンパク質のコード遺伝子は、1番目から552番目まである。FLJ32028タンパク質のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示したとおりである。細胞膜外の部分は、23番目から75番目まであると推測される。今回本発明者らにより、当該分子がTreg上、特にiTreg上に発現していることを見出し、その抗体、好ましくはモノクローナル抗体を用いてこのiTregを効果的に除去できるようにして本発明を完成したものである。
具体的には、FLJ32028分子は、末梢血細胞中からレギュラトリーT細胞の細胞群を選択し、そこから、CD4CD25及びヘルパーT細胞1(Th1)、ヘルパーT細胞2(Th2)を除去することにより、CD4CD25細胞を得、その細胞表面に発現しているタンパク質を解析することにより得ることができる。
この場合、従来公知の方法を適宜使用することができ、SAGE法、遺伝子ディファレンシャルディスプレイ法などが挙げられるが、例えばサブトラクション法を用いることにより、好適に分子を同定することができる。
サブトラクション法として具体的には、レギュラトリーT細胞と思われる亜細胞群(CD4CD25)、そこから遺伝子差し引きを行うTh1、Th2細胞群の調製を健常人末梢血単核球から行い、その後夫々の細胞からRNA、cDNAの調製を行い、ハイブリダイズすることで遺伝子サブトラクションを行う。
上記サブトラクションにより得られるTreg特異的cDNA断片をTAクローニング用ベクターへ挿入し、DNAシークエンサーを用いて塩基配列を決定する。明らかになった塩基配列をもとに、BLASTサーチを行うことで、Treg特異的に発現している分子を同定することが可能となる。
本発明の抗体は、従来公知の技術をもって適宜作製することが可能である。例えば、FLJ32028抗原タンパクを動物に免疫して、その血清を得てもよく、また、例えば、ポリエチレングリコールなどの融合促進剤を用いて細胞融合を行ってハイブリドーマを用いて産生させてもよいし、抗体のアミノ酸配列から予想されるDNAを用いて、遺伝子工学を用いる製造法等によって製造することができる。
本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、公知の方法に準じた方法、即ち、マウス、ラット等の動物を免疫原で免疫し、次いで免疫した動物のB細胞とミエローマ細胞を融合し、得られたハイブリドーマの中から本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞株を選択することにより得ることができる。
マウス、ラット等の動物を免疫する免疫原は様々なものを用いることができる。例えばFLJ32028タンパク質又はそのペプチド断片、FLJ32028をコードする遺伝子又はその断片を導入したベクター、iTreg細胞、FLJ32028を発現するトランスフェクタント等が挙げられる。ペプチド断片を使用する場合、細胞膜外のぺプチド部分で免疫することが好ましい。以下に一例として、FLJ32028をコードするcDNAにより免疫を行う方法について詳説する。
ヒト末梢血リンパ球からcDNAを作製し、それを鋳型として遺伝子特異的プライマーを用いて遺伝子の全長を増幅し、哺乳類発現ベクターに挿入することで、FLJ32028のクローニングを行うことができる。全長の配列をベクターに導入することにより、免疫動物にDNA免疫を行った際にFLJ32028は正しく立体構造を構成し、細胞膜表面に発現する。そのため、FLJ32028の細胞膜外に出ている立体構造を認識する抗体を得ることが可能となる。
FLJ32028に対する特異的なモノクローナル抗体の作製
免疫動物(例えば、マウス)に同定したFLJ32028分子の免疫を行う。FLJ32028分子をコードする遺伝子配列を挿入したベクターと金コロイド等の免疫賦活剤の混合物を、Balb/cマウス、雌8〜10週齢に遺伝子銃で導入し、約2〜3ヶ月飼育する。FLJ32028に対する抗体価の上昇は以下の手順により確認できる。
1)適当な細胞(例えば、CHO細胞)に当該遺伝子挿入ベクターを導入し、FLJ32028を一過的に発現させた細胞を作製する。
2)免疫動物から採取した血清(FLJ32028に対するポリクローナル抗体を含んでいる)と混合する。
3)蛍光標識した抗マウスポリクローナル抗体(二次抗体)を用いてFCM解析を行う。
上記のように、FLJ32028を一過性発現させた細胞を用いて、抗体価を確認することにより、FLJ32028の細胞膜外に出ている立体構造を認識する抗体が得られているかを確認することができる。
抗体価の強い上昇が確認された後、免疫動物はFLJ32028を一過的に発現させた細胞(例えばCHO細胞)を腹腔内に注射し、最終免疫を行う。最終免疫の3〜5日後、免疫動物の脾臓細胞を取り出して、ミエローマ細胞(例えば、SP2/0マウスミエローマ細胞)とポリエチレングリコール(PEG1500など)を用いて融合し、ハイブリドーマを作製する。作製したハイブリドーマ細胞株群の中から目的のFLJ32028に対する抗体を産生しているハイブリドーマは、FLJ32028を一過的に発現させた細胞とハイブリドーマ培養上清を混合した後、蛍光標識した抗ポリクローナルマウス抗体(二次抗体)を用いてFCM解析を行うことで選択することができる。
このようにして得られたハイブリドーマの一株を、Mouse−Mouse hybridoma FLJ32028−41と命名し、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、平成20年3月6日に国内寄託した(受託番号FERM P−21522)。また、平成21年2月26日にブダペスト条約に基づく国際寄託へ移管した(受領番号FERM ABP−11100)。このハイブリドーマを用いることにより、本発明のモノクローナル抗体を容易に得ることができる。
このようにして得られた本発明の抗体は、Treg表面、とりわけ、iTreg表面に発現しているFLJ32028を特異的に認識するため、これにより血中や腫瘍組織周辺に存在していると考えられるiTregと特異的に結合して除去することが可能である。
本発明の抗体を用いることにより、例えば免疫細胞療法に用いる培養のための細胞については、培養前に存在するTregを除去することで、細胞増殖能を向上させることが可能であるし、がん等の組織周辺に投与することで組織周辺で発生している免疫抑制解除を行うことも可能となる。
Treg除去方法およびTreg除去装置
本発明のTreg除去方法およびTreg除去装置は、例えば、本発明の抗体と、ビーズなどの高分子化合物とを結合させ、それをカラム等に充填することにより、血中から効果的にTregを取り除くものである。
ここでいう高分子化合物としては、体液と接触しても溶解せず、血球成分と接触しても害を及ぼさない毒性の低いポリマーから選ばれ、例えばポリウレタン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、セルロース系樹脂、キチン、キトサン、アガロース、デキストラン等があげられる。また、これらの高分子材料を単独で用いてもよいし、これらの共重合体、複合体あるいは混合物から構成されていてもよい。
具体的な構成例としては、例えばビーズを用い、本発明の抗体を結合させたものをカラムに充填することで、そこに血液を通すことによりTregを除去させる、というようなものがあげられる。
本発明の抗体とこれら高分子化合物の結合は化学結合により固定されるが、化学結合としては、共有結合、イオン結合、疎水結合などがあり、中でも固定が十分に可能であることから、共有結合が好ましい。この共有結合で固定するためには、これら高分子化合物は適当な官能基を持っていることが好ましく、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、チオール基、グリシジル基、イソシアナート基、ハロゲン基などを有していることが好ましい。中でも例えばトシル基やエポキシ基等が好適に用いられる。
これら本発明の抗体と高分子化合物をカラムに充填するときの形状は特に限定されるものではなく、例えば、ビーズのほか、フィルム、繊維、中空糸、ゲルなどがあげられる。
本発明の抗体の上記高分子化合物への固定化量としては、本発明の抗体が少なすぎると除去効果が不十分となる恐れがあり、多すぎると抗体同士が重なり合って互いに立体障害となる恐れがあるため、高分子化合物1gあたり1pmol〜10molの範囲で固定化することが好ましい。
このように構成された、本発明のTreg除去方法およびTreg除去装置は、効率よくTregを除去することできる。
具体的には、例えば採取した血液を通した後に、免疫細胞療法用の細胞培養のために用いれば、Tregを除去してあるため、培養効率も向上するし、例えば透析のように、患者血液やその他の体液を体外で循環させるときに、本発明の除去方法を採用し、あるいは除去装置を通すようにして患者体内に戻すようにすれば、Tregを除去した血液により、患者の免疫機能を向上させることが可能となり、治療効率も向上することとなる。
本発明の抗体を含む医薬
本発明の医薬は、本発明の抗体を含むことを特徴とする。本発明の抗体を用いてTregを事前に細胞群から除去することで、以下のような効果が期待できる。
1)細胞培養中の阻害因子がなくなるので、細胞増殖率を向上させることが可能となる。すなわち、Tregにより増殖が抑制された細胞、例えば、リンパ球、サイトカイン産生細胞などの細胞の増殖を向上させる細胞増殖機能を発揮することができる。
2)免疫機能が低下している患者体内に投与することで、全体的な免疫機能が向上し、それにより、様々な疾病治療の効果をあげることが可能となり、全体的な免疫向上機能を発揮することができる。
3)がんなどの疾病ではその疾病組織周辺において免疫抑制状態が発生しているため、その抑制状態を解除することにより、がん治療の効果が向上することができ、がんにおける免疫抑制解除機能を発揮することができる。特に、本発明の抗体は、CD4CD25T細胞などの前駆細胞からiTregへの分化を抑制し、免疫抑制効果を解除できる。
上記の通り、1)の機能は、特に患者本人の細胞を用いて治療を行う免疫細胞療法に適当であり、2)の機能は、幅広く対象として使用可能であるが、特に感染症などによる免疫機能低下の阻止・治療効果の向上が望め、3)の機能については上述の通り、がん治療に効果的なものとなる。
これら上述した効果については、本発明の医薬単独で使用した場合でも十分期待できるものであるが、従来それぞれに用いられている薬剤・医薬との併用ももちろんその相乗効果が望めるものである。
具体的には、例えば本発明の抗体を細胞増殖前の血液に添加して培養したり、本発明の抗体を患部組織周辺に接触させることにより、効率よくTregを除去することができる。
例えば、上述の1)のような細胞増殖機能向上を目的として使用する場合は、免疫細胞療法で用いられる患者自身の細胞を培養する際に、例えば患者から採血した際にその血液に添加してTregを除去してもよいし、あるいは細胞培養工程の初期に添加してから培養を開始してもよい。本発明の抗体の添加量は、その添加方法や添加時期によって変動し得るが、通常は、1μg/ml〜50μg/mlである。
また、構成としては本発明の抗体単独でもよいし、その他のサイトカインや薬剤などを適宜選択・組み合わせて使用してもよい。
本発明の医薬を治療に用いる場合も、単独で用いても、その他の医薬と併用することも可能であり、例えば、抗がん剤との併用や、免疫細胞療法で用いられる細胞・細胞ワクチンとの併用が可能である。
抗がん剤を用いたがん治療の場合、抗がん剤によりがん組織が攻撃されてそれによりがんが縮小することを目指すものであるが、副作用によっては、患者本来が持つ免疫機能も損なわれてしまうことも多い。そのような場合、本発明の医薬を併用することにより、免疫機能を改善し、抗がん剤の治療効果と合わせた相乗効果が期待できる。すなわち、本発明の医薬により組織周辺の免疫抑制を解除し、更には周辺に存在する免疫担当細胞の活性化も促進することが可能となるため、その治療効果も向上する。
また、抗がん剤の種類としては、種々併用可能であり、特定のものに限定はされない。
上述した2)や3)の用途で用いる場合、本発明の抗体と細胞障害活性のある物質(例えば、抗がん作用のある物質)とを結合させて用いることで、投与された抗体がTregに特異的に結合し、抗体に結合した細胞障害活性を有する物質がTregに作用し、Tregを特異的に除去することができる。このような方法をとることによって、体内の免疫抑制を解除し、免疫機能を改善し、併用している治療の効果の向上が見込まれる。
また、免疫細胞療法における併用では、やはり免疫抑制状態となったがん組織周辺では、培養された細胞がうまく機能できないこともあるため、本発明のがん治療剤を併用することで、その治療効果を向上させることが可能である。
併用する免疫細胞療法としては、LAK(Lymphokine Activated Killer)細胞、樹状細胞、NK細胞など様々なものと併用可能である。
本発明の医薬の用量としては、使用方法にもよるが、単独使用であっても、併用であっても、おおよそ0.0001〜30mg/kg程度を投与すればよく、この程度の量であれば、その治療効率を向上させることが可能である。
本薬剤を投与する方法としては、例えば静脈内、皮内、皮下、リンパ節等へ注射することができる。また、病変部に直接注入してもよく、例えば内視鏡的または経皮的に直接穿針して投与することもできる。更に、病変部近辺の動脈から注入してもよく、例えばがん栄養血管に選択的に挿入された動脈カテーテルを経由して投与することができる。
投与時期としては、事前に免疫機能を高めるため抗がん剤などの医薬や免疫細胞療法による培養細胞の投与日前に投与したり、医薬/細胞投与当日(同時投与)、あるいは医薬/細胞投与日の間に投与する、といった方法が可能である。
また、投与間隔としては、2週間に一度(細胞投与と同時)程度であれば効果の持続が望めるが、それ以外にも、疾病や併用する医薬に合わせて、毎週一度や毎月一度、といった間隔で投与してもよい。
膜貫通分子FLJ32028タンパク質またはその断片からなるレギュラトリーT細胞検出用マーカー
本発明のレギュラトリーT細胞検出用マーカーについて説明する。
本発明のレギュラトリーT細胞検出用マーカーは膜貫通分子FLJ32028タンパク質またはその断片からなるマーカーである。FLJ32028はレギュラトリーT細胞に特異的に発現するため、FLJ32028またはその断片はレギュラトリーT細胞のマーカーとして機能する。FLJ32028の断片としては、細胞膜外のぺプチド部分が好ましい。本発明のマーカーは、レギュラトリーT細胞検出のために用いることができる。
レギュラトリーT細胞の検出方法
その細胞表面上に膜貫通分子FLJ32028タンパク質の発現が疑われる被験細胞と、本発明の抗体とを接触させ、該被験細胞表面上の膜貫通分子FLJ32028タンパク質の発現を検出することにより、該被験細胞中におけるレギュラトリーT細胞を検出することができる。例えば、FLJ32028に特異的に結合するモノクローナル抗体に蛍光色素を付着させ、がん患者の末梢血と混合し、該モノクローナル抗体と膜貫通分子FLJ32028と結合させ、フローサイトメータ等で測定することによりサンプル中のレギュラトリーT細胞を検出することができる。本発明のレギュラトリーT細胞の検出方法は、例えば本発明の医薬と免疫細胞療法との併用において、本発明の医薬の投与前に患者血液中のマーカーを測定し、レギュラトリーT細胞を検出する事で、治療に必要なモノクローナル抗体の量を決定する指標となり得るものである。
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
実施例1
誘導型Treg(iTreg)マーカーとしてのFLJ32028の同定
iTreg表面特異的に発現している分子の同定を行うため、下記の通り細胞の調製を行った後、遺伝子サブトラクション法で当該分子の同定を行った。
<細胞の調製>
まず、実験に用いる各Treg及びTh1,Th2の調製を行った。
培養に用いる培地としては、Th1、Th2細胞を誘導する際は完全培地を用いた。
完全培地の組成としては以下のとおりである。
RPMI1640(インビトロジェン社製)including 10%FBS(EQUITECH−BIO,INC社製)
25mM HEPES(インビトロジェン社製)
5×10−5M 2−mercaptoethanol(インビトロジェン社製)
2×10−5M L−glutamine(インビトロジェン社製)
1×10−5M sodium pyruvate(インビトロジェン社製)
1%non−essential amino acids(インビトロジェン社製)
100U/ml penicillin/100mg/ml streptomycin(インビトロジェン社製)
また、健常人全血から末梢血単核球(PBMC)の単離は全血をLympho prep(Axis−Shield Poc AS社製)に重層し、遠心(Centrifuge430g,30min,RT (遠心機;KUBOTA5910))することで得た。
次に、human CD4 multisort kit(Miltenyi Biotec GmbH社製)によりCD4T細胞、CD4T細胞を調製した。
まずPBMCにCD4マイクロビーズを反応させ、CD4分画、CD4分画に分ける。CD4分画を、CD45RAビーズ又はCD25ビーズと反応させることでCD4CD45RA、CD4CD25分画を得た。
すなわち、ポジティブフラクションからCD4CD45RA(ナイーブT細胞)、CD4CD25を得、ネガティブフラクションからCD4CD45RA(メモリーT細胞)及び CD4CD25を得た。
ここで、CD4CD45RAは抗原刺激を受けていないナイーブT細胞であり、後述の抗原提示細胞(APC)と反応させることでTh1又はTh2へ誘導させる。
次いでCD4CD25分画はTregとして使用するもので、フローサイトメータでその発現を確認後Isogen試薬に溶解した(RNA調製へ)。
CD4CD45RA分画はナイーブT細胞からTh1又はTh2への誘導を行った。
Th1又はTh2の誘導では、APCとしてCD4フラクションに25μg/mlのマイトマイシン(和光純薬工業社製)を加えて37℃で30分間反応させた後培地で4回洗浄した。
このようにして得られたTh1、Th2用APCを用いてそれぞれを誘導した。
ナイーブT細胞(CD4CD45RA)をTh1誘導条件又は、Th2誘導条件で培養し、エフェクターTh1又はTh2を誘導した。
Th1:CD4CD45RAT細胞(1×10)+APCs(2×10)+plate coated5μg/mlCD3抗体(2C11; BDファーミンジェン社製)+5μg/mlCD28抗体(CD28.2; BDファーミンジェン社製)+5μg/ml抗IL−4抗体(MP4−25D2; BDファーミンジェン社製)+2.5ng/mlrIL−12(PeproTeck EC LTD社製)+10U/mlrIL−2(BDファーミンジェン社製)
上記Th1は論文;J Immunol.2002 Aug 5;169(4):1893−903.を参照して誘導した、
Th2: CD4CD45RAT細胞(1×10)+APCs(2×10)+1mg/ml thalidomide(シグマ・アルドリッチ社製)+10μg/mlPHA(シグマ・アルドリッチ社製)+2ng/mlIL−12抗体(C8.6, BDファーミンジェン社製)+20ng/mlrIL−4(BDファーミンジェン社製)+10Uml rIL−2
Th2は論文:Clin Exp Immunol.1995Feb;99(2):160−7.を参照して誘導した。
<Th1,2の確認>
次に、誘導したTh1、Th2細胞にPMA,Ionomycinによるマイトジェン刺激を行い、Th1特有のIFN−γ産生、Th2特有のIL−4産生を細胞内染色することで所望の細胞であることを確認した。
まず、Th1,2細胞に40ng/ml PMA(シグマ・アルドリッチ社製),4ng/ml Ionomycin(シグマ・アルドリッチ社製)を加え4時間培養した。反応の終了前2時間時に2μM Brefeldin A(シグマ・アルドリッチ社製)を加えた。
反応後、細胞を回収しIntraPrep(ベックマン・コールター社製)により固定、膜透過処理を行った。
次にヒトPE−IFN−γ抗体(45.15,ベックマン・コールター社製)及びヒトFITC−IL4抗体(4D9,ベックマン・コールター社製)により染色を行った
その後、Epics XL(ベックマン・コールター社製)により測定し、Th1細胞ではIFN−γが、Th2細胞ではIL−4が産生されていることを確認した。
<サブトラクション>
RNA調製、cDNA合成及び遺伝子サブトラクションに用いた試薬
まずサブトラクションに用いる各細胞(CD4CD25T細胞、CD4CD25T細胞、Th1、Th2)のRNAをCell suspended with Isogen TRIzol(和光純薬工業社製)を用いて、以下のプロトコルにて調製した。
細胞をIsogenに懸濁し、クロロホルムを加えボルテックスにかけた後、14000rpm,15min,4℃条件で遠心分離した。
次に遠心分離した上清に2−プロパノールを加え、14000rpm 10min,4℃条件で遠心分離した。その後ペレットに70%エタノールを加え、14000rpm,15min,4℃遠心分離を行い、ペレットをDEPC waterに溶解した。
次に、Followed to the SMARTTM PCR cDNA synthesis kit instruction(BDバイオサイエンス社製)を用いて、下記プロトコルによりcDNAを合成した。
それぞれの細胞から得られたRNAの3’側にCDSプライマーをハイブリダイズし、リバーストランスクリプターゼでcDNAに結合させた。その後5’PCRプライマーIIA,アドバンテージポリメラーゼによりロングディスタンスPCRを行い、そのPCR産物を回収、cDNAを得た。
次に、CD4CD25T細胞に特異的な膜貫通分子を同定する目的で記載の遺伝子サブトラクションを行った。
概要を模式すると、以下のとおりとなる。
(CD4CD25T細胞)−(CD4CD25T細胞,Th1、Th2)
サブトラクションは、クロンテックPCR−セレクト(TM) cDNAサブトラクションキットインストラクション(BDバイオサイエンス・クロンテック社製)を用いて行った。プロトコルはPCT−セレクト(TM) cDNAサブトラクションキットに添付されたユーザーマニュアルに従って行い、これによりTregに優位に発現する遺伝子産物を取得した。
サブトラクションにより得られる遺伝子産物は、サブクローニング用ベクターであるpGEM−T Easy Vectorにライゲーションしシークエンスすることでその配列を決定した。
<クローニング>
サブトラクションで得られたPCR産物をpGEM−T EASYベクター(Promega Corporation社製)にライゲーションし、大腸菌DH5α(東洋紡社製)へトランスフォームした。そのDH5αをAMP(アンピシリン、明治製菓社製)、X−gal(シグマ・アルドリッチ社製)、IPTG(シグマ・アルドリッチ社製)セレクションLBプレートに蒔いた。37℃で一晩培養した後、プレート上にできたコロニーのうち、ホワイトコロニーを選別し、T7プライマーとSP6プライマーを用いたコロニーPCRを行い、挿入断片を増幅した。
上記PCR産物である増幅断片をMicrocon−PCR(ミリポア社製)により精製した後、それを鋳型としてT7プライマー又はSP6プライマーを用いてシークエンス反応を行った。PCR産物は300クローン得られ、DNAシークエンサーを用いて塩基配列を決定し、BLASTサーチを行って遺伝子名を同定した。
サブトラクションで得られた300クローンについて、BLASTサーチ又はタンパク質の構造を予測するWebサイト(例えば、SOSUIやHuman Protein Reference Database)により膜タンパク質と予測されるクローンを選択したところ30クローンであった。30クローンについてリアルタイムPCRを行い、レギュラトリーT細胞にmRNAレベルで優位に発現している分子を調べた結果、8クローンが選択された。それらクローンのひとつであるFLJ32028のリアルタイムPCRの結果を図1に示す。FLJ32028はCD4CD25T細胞、Th1細胞、Th2細胞に比べ、Tregに優位に発現していたため、Tregのマーカーとして研究を進めることとした。
FLJ32028遺伝子のクローニング
健常人抹消血リンパ球から抽出したRNAから作製したcDNA断片を鋳型として使用し、ヒトFLJ32028遺伝子断片(開始コドンから終止コドンまでの全長の遺伝子)をPCR法により増幅した。プライマーの配列は、下記2種類のDNAオリゴマーを合成して使用した。下記プライマー塩基配列における下線部は、ベクター挿入するための制限酵素サイトの配列Hin dIII(FLJ32028 F)及びXba I(FLJ32028 R)を示す。
プライマーFLJ32028 F: 5’−AATAAGCTTGCCACCATGCAGGCTCCCCGCGCAGCCCTAGTCTTCGCCCTGGTG−3’
プライマーFLJ32028 R: 5’−CCATCTAGATTAGGATTCACTGTCACTTGGGTTGTGATTTG−3’
PCRは、KOD plus DNA polymerase(TOYOBO社製)を用い、94℃で2分間置いた後、94℃で15秒、55℃で30秒、68℃で30秒を1サイクルとして35サイクル繰り返させる反応条件で行った。前記PCR法で特異的に増幅されたDNA断片を1.5%アガロースゲル電気泳動により分離、切り出して、制限酵素Hin dIII及びXba I処理した。同様に、プラスミドベクターpRc/CMV(Invitrogen社製)を制限酵素処理し、Hin dIII及びXba I部位にDNA断片を挿入し、pRc/CMV−FLJ32028を得た。
実施例2
FLJ32028に対するモノクローナル抗体の作製:ハイブリドーマの作製
FLJ32028の遺伝子断片(開始コドンから終止コドンまでの全長の配列:配列表の配列番号1における、1番目から552番目までの遺伝子)をタグ付の哺乳動物発現ベクターに組込む。構築した遺伝子構築物が設計した通りに細胞表面に発現されるかどうかについて免疫実施前にハムスター由来CHO細胞を用いて検証した。すなわち、構築した遺伝子構築物を該CHO細胞に一過性発現導入した。
この導入したCHO細胞をCOインキュベータに24時間培養して、フローサイトメトリー(FCM)解析に用いた。
FCM解析する際、上記の導入遺伝子に付加しているタグに対する抗体としてMycを遺伝子導入した培養細胞が入っている培養溶液に加え、30分間静置した。その後、タグを特異的に認識する蛍光標識した二次抗体を溶液に添加し、30分間静置してからFCM解析に使用した。本発明で構築した遺伝子構築物が細胞表面に発現していることを確認した。
次に、上記遺伝子構築物をBalb/cマウス、雌6〜8週齢6匹に対して遺伝子銃を用いて導入し、約2〜3ヶ月飼育した。
その後、免疫した動物より採集した血清、すなわちポリクローナル抗体の解析に、ヒトFLJ32028遺伝子を導入した上記CHO細胞を用いた。
すなわち、タグをつけたvv8/FLJ32028構築物をCHO細胞に一過性発現導入し、導入したCHO細胞をCOインキュベータに24時間培養して、FCM解析に用いた。
FCM解析する際、上記の導入遺伝子で免疫動物より採集した血清(ポリクローナル抗体)をvv8/FLJ32028導入した培養細胞が入っている培養溶液に加え、30分間静置した。その後、免疫動物の免疫グロブリンを特異的に認識する蛍光標識した二次抗体を溶液に添加し、30分間静置してからFCM解析に使用した。
ヒトFLJ32028遺伝子導入細胞を認識する強い特異抗体を産生している動物を解剖し、脾臓細胞を取り出しSP2/0マウスミエローマ細胞とそれぞれ4×10、1×10個ずつをポリエチレングリコールにより融合した。融合から7〜10日後、ハイブリドーマ細胞株の中から、ヒトFLJ32028の立体構造を認識するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞株を選抜する手段として、フローサイトメトリー(FCM)を用い、ヒトFLJ32028遺伝子を導入したCHO細胞を用い、vv8/FLJ32028構築物をCHO細胞に一過性発現導入した(トランスフェクト)。導入した哺乳細胞をCOインキュベータに24時間培養して、FCM解析に用いた。
FCM解析する際、各ハイブリドーマの培養上清の一部をvv8/FLJ32028導入した培養細胞が入っている培養溶液に加え、30分間静置した。その後、マウスの免疫グロブリンを特異的に認識する蛍光標識した二次抗体を溶液に添加し、30分間静置してからFCM解析に使用した。
その結果、抗FLJ32028抗体を産生するハイブリドーマを1クローン得た。このハイブリドーマをMouse−Mouse hybridoma FLJ32028−41と命名し、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、平成20年3月6日に国内寄託した(受託番号FERM P−21522)。また、平成21年2月26日にブダペスト条約に基づく国際寄託へ移管した(受領番号FERM ABP−11100)。
抗ヒトFLJ32028抗体を産生するハイブリドーマの特異抗体大量生産として、樹立したハイブリドーマ細胞をヌードマウス1匹あたり1×10〜1×10のハイブリドーマ細胞を腹腔内に注射した。ハイブリドーマの増殖により、ヌードマウスの腹腔内に腹水が貯留する。腹水を回収し、GE社のProtein G Sepharose精製用樹脂を充填したカラムで腹水より高純度のイムノグロブリンを回収した。以後の解析はこの精製したモノクローナル抗体を用いて、実施した。
実施例3
抗体の確認:当該抗体がFLJ32028を認識することの検証
実施例2で得たFLJ32028をコードする遺伝子を用い、プラスミド(pRC−cmvベクター、インビトロジェン社製)に該FLJ32028分子をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクター(pRC−FLJ32028)4μgを5×10個のCHO細胞にトランスフェクションした。具体的には、DNAプラスミド4μgをlipofectoamine2000(インビトロジェン社製)10μlと混合し、CHO細胞へ添加した。4時間後、培地を交換し24〜48時間後にCHO細胞を回収しFACS解析した。
上記トランスフェクタントと実施例2で得られたFLJ32028ハイブリドーマ上清100μlと抗マウスIgG1 2μlとを結合させたものを4℃で反応させ、FACSでその反応を解析した。また、比較として、FLJ32028とは無関係なタンパクをコードするDNAプラスミド(mock)をCHO細胞に組み込んだトランスフェクタントと上記上清+抗マウスIgG1とを反応させ、その反応についてもFACS解析を行った。図2にその結果を示す。
図2はFLJ32028トランスフェクタント及びmockトランスフェクタントと、抗FLJ32028抗体との反応を示すFACS解析のグラフである。図2によれば、FLJ32028トランスフェクタントと、上記実施例で得られた上清とが反応していることが示されている。これにより、当該抗体がFLJ32028を認識する抗体であることが示された。
実施例4
当該抗体を用いたTregの除去および除去したときの効果(抗体+マグネットビーズでの除去効果)
本発明の抗体によるTreg除去効果を調べるため、血中のTregを本発明の抗体を用いて除去して細胞培養を行い、その細胞増殖の程度を測定した。
<細胞の調製>
試験に用いた末梢血単核球は、上記実施例同様に、健常人ドナーから30〜50mlヘパリン採血を行い、全血を等量RPMI1640培地に希釈した後、Lymphoprepに重層し、さらに1500rpm、室温で遠心してPBMCを得た。
<抗体ビーズの作製>
使用する磁気ビーズとして、エポキシ基活性化ビーズM450及びトシル基活性化ビーズM450(ダイナルビーズM450エポキシ、及びダイナルビーズM450トシル ベリタス社製)を用い、本発明の抗体及び比較用の抗体結合ビーズとして、以下の6種類の抗体結合ビーズを作製した。エポキシとトシル2種類を用いた理由は、抗体の種類によって効率よく結合する磁気ビーズが異なるためである。
エポキシ基活性化コントロールIgG1
トシル基活性化コントロールIgG1
エポキシ基活性化抗CD25抗体(IgG1)
トシル基活性化抗CD25抗体(IgG1)
エポキシ基活性化抗FLJ32028抗体(IgG1)
トシル基活性化抗FLJ32028抗体(IgG1)
上記抗体結合ビーズの作製方法としては、各ビーズ2×10個とコントロール、抗CD25又は抗FLJ32028抗体50μgを、37℃、2時間の条件で混合し、結合ビーズを得た。
<Treg除去機能の解析>
上記の通り作製したビーズを用いて、下記の通り解析を行った。
上記採血・分離により得た健常人PBMC30〜50mlを75cmフラスコ(スミロン社製)で、37℃、2時間の条件で培養し、主に単球細胞などの付着細胞を取り除いた。
上述の通り前処理したPBMCを除去なし群及び上記6種類のビーズとの共培養群用に1mlに分けて、それぞれにビーズを50μlずつ混合し、4℃冷蔵庫において30分間振盪器でインキュベートした。
ついで、それぞれの試験管からダイナル社専用磁石により磁気ビーズ−抗体複合体に付着した細胞を除去し、残ったPBMCそれぞれについて抗CD3抗体で刺激し、テトラゾリウム塩(WST−1)による細胞増殖測定を行った。
このWST−1測定は、生存細胞中だけに活性があるミトコンドリア中のコハク酸塩テトラゾリウム還元酵素によってWST−1がホルマザン色素へ分解されるため、その色素変化により、細胞増殖を測定するものである。
上記ビーズ除去が終わり、2〜3日間抗CD3刺激を受けた各PBMC200μlにWST−1を10μl添加後、30分放置および90分放置し450nmの吸光度を測定した。
図3に本測定の結果を示す。図3に示すとおり、無処理、コントロールと比較して、FLJ32028抗体でTregを除去することにより、細胞増殖が増強されることが示された。
<細胞障害活性試験>
また、ビーズ操作後のPBMCを用いて、がん細胞に対する細胞障害活性及び細胞内IFN−γの産生量を解析した。
まず細胞障害活性については、がん細胞株であるK562をターゲットとして、ターゲット:培養細胞=1:1の割合で混合し、その障害活性を調べた。
K562細胞株(ATCCより購入)をDMEM培地(GIBCO社製)で培養し、3〜4日おきに継代培養した。
これらの細胞を回収し後RPMI1640培地(GIBCO社製)に懸濁し、Calcein−AM(DOJINDO社製、10mg/ml)1μlを加えた後、37℃で40分間静置した。その後、エフェクター細胞であるPBMCと1:1の割合で混合し(96wellプレート(スミロン社製)、最終液量150μl、2×10)、5%CO存在下37℃で4時間反応させた。4時間後、テラスキャンにより細胞障害活性を測定した。
また細胞内IFN−γの割合については、各群PBMCを培養3日後に回収し、PMA(40ng/ml、シグマ社製)及びionomycin(4μg/ml、シグマ社製)で4時間再刺激した。これらの細胞におけるCD4又はCD8陽性細胞についてIFN−γ産生をFACS解析した。
これら測定の結果を図4、5に示す。
図4はビーズ除去後の各細胞群における細胞傷害活性を示すグラフである。図に示すとおり、細胞傷害活性は、本発明の抗体を結合したビーズで処理した群が一番高い活性を示した。
図5は各細胞群のIFN−γ産生の割合を示すグラフである。この図でも、本発明の抗体を結合したビーズで処理した群が一番高い産生量を示している。
以上の通り、本発明の抗体で処理した(Tregを除去した)リンパ球は、その増殖率も向上し、さらにその機能も向上することが示された。
実施例5
当該抗体を培養液中に添加して細胞を培養した場合の効果
次に、本発明の抗体を細胞増殖過程で常時存在させることで、どの程度細胞阻害要因であるTregを除去し、細胞増殖を増強させる効果があるかどうかについて調べた。
<FLJ32028抗体等の固相化した場合の試験>
まず、本試験に用いる抗体を培養容器に固相化した。
抗FLJ32028抗体及び、ネガティブコントロールとしてIgG1を用いた。
まず、96wellプレート(スミロン社製)に、抗マウスヤギIgGポリクローナル抗体5μg/ml(シグマ社)(PBS)を入れ、37℃で2時間置いて、固相化した。(この工程により、次に固相化する試験用の抗体の力価を上げることができるため、よりわかりやすい結果を得ることが可能になる。)
ついで、抗CD3抗体(別名オルソクローン、ヤンセンファーマ社製)、及び抗FLJ32028抗体、コントロールIgG1、抗GITR抗体をそれぞれ個別に5μg/mlずつ上記ポリクローナル抗体を固相化したプレートに入れ固相化した(37℃、2時間、CO2インキュベータ内)。
固相化した各容器に健常人ドナーより得たPBMC(方法は上述の実施例と同様)3×10個播種し、37℃、COインキュベータで3日間培養後にWST−1 10μlを添加後、30分及び90分放置したものの吸光度を測定した。
<FLJ32028抗体等を培地に添加した場合の試験>
上記固相化試験同様に、抗マウスヤギポリクローナル抗体は事前に容器に固相化した。
このポリクローナル抗体を固相化した容器に、抗CD3抗体及び抗FLJ32028抗体、コントロールIgG1、それぞれ5μg/mlを、10%FCS RPMI1640培地添加と同時に入れ、更にPBMC2×10個とWST−1を上記固相化試験と同様に添加し、30分及び90分放置したものの吸光度を測定した。
以上の試験の結果を図6に示す。
図6に示すとおり固相化した場合でも常時添加した場合でも、コントロール抗体に比べ、本発明の抗体(抗FLJ32028抗体)により、細胞増殖の度合いが促進、すなわち細胞増殖抑制が解除されていることが示された。
実施例6
iTregの選別(染色による選別)
次に、Tregでも、特にがん組織周辺で発生していると考えられている誘導型Treg(iTreg)における本発明の抗体の効果を見るため、まずiTregを取得することとした。
抗CD3抗体(オルソクローン、5μg/ml)及び抗CD28抗体(BDファーミンジェン社製、5μg/ml)を24wellプレート(スミロン社製)に固相化した。次に、上記実施例と同様に、健常人から採血し、そこからMACSビーズを用いてCD4CD25画分を分離した(nTreg(CD4CD25画分細胞)の除去)。
この画分のT細胞(CD4CD25T細胞)5×10個を上記固相化処理した24wellプレートに蒔き培養を行った。
培地の組成は、10%FCS RMPI1640培地に、rIL−2(60U/ml)、rIL−9(42U/ml)、rIL−15(1ng/ml)、rTGF−β1(32U/ml)、抗IL−12抗体(20μg/ml)、抗IFN−γ抗体(10μg/ml)を加えたものを使用した。培養3日後に、上記固相化プレートから細胞を分離し、同じ培地・容器を用いてさらに3〜4日培養した。
上記培地にて培養を開始してから6〜7日目の細胞を回収し、この培養細胞表面を抗FLJ32028抗体で染色し、細胞を1%パラホルムアルデヒドを含むPBSで固定し、サポニンを含む界面活性剤処理し、抗FoxP3抗体10μLと4℃で30分反応させ、その後細胞をFACSにて解析した。
この解析結果を図7に示す。図に示す通り、Tregマーカーとして最も有用と考えられているFoxP3の陽性画分にはFLJ32028の発現が認められ、これにより、このFLJ32028陽性画分をiTregと判断し、その後の研究においてiTregとして選別して、用いることとした。
実施例7
得られたiTregと本発明の抗体とを用いて培養を行った場合の培養効果
上記実施例6にて選別したiTregと本発明の抗体、抗FLJ32028抗体を用いて、アロ(他家)リンパ球の混合実験(MLR)を行った。
混合実験に用いたリンパ球はHLAタイプが異なる二名の健常人より得た。iTregを誘導したリンパ球提供者と同一健常人からリンパ球を採取し(ドナーAリンパ球とする)、CFSEラベルした。CFSEは細胞が1回増殖するについれその蛍光強度が半減していく性質を持つ。このCFSEラベルリンパ球にHLAタイプが異なるリンパ球(ドナーBリンパ球とする)をMMC(マイトマイシン)処理(30μg/ml、37℃、30分)して、ドナーAリンパ球:ドナーBリンパ球=1:1の割合で混合した(MLR)。
このアロMLRにおいて、iTregをiTreg:ドナーAリンパ球=1:1、又は1:10の割合で混合し、最終細胞数2×10を48wellプレート(スミロン社製)に蒔き、iTregの抑制アッセイを行った。この際、コントロールIgG1抗体又は抗FLJ32028抗体2μg/ml添加し、培地として10%FCSRPMI1640培地を用い、37℃、4日間培養を行った。
培養4日後に培養細胞を回収し、CFSEラベルしたリンパ球の分裂回数をFACS解析した。
図8に本試験の結果を示す。図に示す通り、本発明の抗体を添加して培養することにより、コントロールでは抑制されていたドナーAリンパ球の細胞増殖が回復していることがわかった。
実施例8
iTreg誘導時に抗FLJ32028抗体を添加して培養した際のFoxP3の発現およびその抑制効果への影響
健常人採血を行い、実施例6と同様にMACSビーズを用いてCD4CD25T細胞を取得した。実施例6に記載の培地(RPMI1640、10%FCS、rIL−2、rIL−9、rIL−15、rTGF−β1、抗IL−12抗体、抗IFN−γ抗体)を用いて、1×10個CD4CD25T細胞を培養し、iTregを誘導した。その際、(1)コントロールIgG1(50μg/ml)、(2)抗FLJ32028抗体(1μg/ml)、(3)抗FLJ32028抗体(10μg/ml)、(4)抗FLJ32028抗体(50μg/ml)となるように抗体を添加した4条件で培養した。7日後に細胞を回収し、フローサイトメータによってCD25/FoxP3の発現を測定した。また、同じ健常人から取得したPBMCsから抗CD3抗体、rIL−2を用いて誘導したCD3−LAK細胞と、U937を感作させたPBMCsをそれぞれエフェクター細胞として、U937を標的細胞として、エフェクター細胞:U937=1:1又は10:1となるように共培養し、細胞傷害活性を測定した。その際、前述の培養で得られた(1)から(4)のiTregをエフェクター細胞の1/10の割合となるように添加し、エフェクター細胞の細胞傷害活性に対し、(1)から(4)の細胞がどのような影響を示すか測定した。
それぞれの結果を図9、図10に示す。コントロールIgG1添加群のFoxP3発現強度を1とすると、抗FLJ32028抗体添加群のFoxP3発現強度は、抗体の濃度依存的に減少していた(図9)。このことから本発明の抗体はCD4CD25T細胞からiTregへの分化を抑制する効果があることが明らかとなった。また、コントロールIgG1を添加して培養したiTregはPBMCsの細胞傷害活性を抑制していたが、抗FLJ32028抗体を添加して培養したiTregでは抑制が解除されており、その作用は抗FLJ32028抗体濃度に依存していた。このことから、本発明の抗体はiTregの分化を抑制し、免疫抑制効果を解除できることが明らかとなった。
実施例9
iTreg誘導後に抗FLJ32028抗体を添加した際の細胞傷害活性への影響
実施例6と同様に健常人のCD4CD25T細胞からiTregを誘導した。その後、(1)コントロールIgG1(50μg/ml)、(2)抗FLJ32028抗体(1μg/ml)、(3)抗FLJ32028抗体(10μg/ml)、(4)抗FLJ32028抗体(50μg/ml)となるように抗体を添加した4条件で2日間培養した。同じ健常人ドナーのPBMCsからCD3−LAKを誘導し、U937を標的細胞として、CD3−LAK:U937=1:1又は10:1となるように共培養し、細胞傷害活性を測定した。その際、前述した4条件の培養で得られたiTregをぞれぞれCD3−LAKの1/10の割合で添加した。結果を図11に示す。どの群にも差は見られず、iTregを誘導後に抗FLJ32028抗体を添加しても、iTregの免疫抑制能には影響はないことが示唆された。
実施例10
免疫不全マウスを用いた抗FLJ32028抗体の抗腫瘍免疫に対する影響
免疫不全マウス(NOD/SCID)はT、B細胞は存在せず、NK細胞は存在するがその機能が失われているマウスである。免疫不全マウスに健常人由来2×10個ヒトPBMCsを腹腔内投与し、その7日後に1×10個のU937を皮下移植した。対象マウスを抗体を静脈注射する日程、量により以下の2群に分けた(各群5匹)。
(1)U937移植後2、4、6、8日目にコントロールIgG1(50μg/ml)を静脈注射した群
(2)U937移植後2、4、6、8日目に抗FLJ32028抗体(50μg/ml)を静脈注射した群
U937の腫瘍体積を測定すると、(2)の2、4、6、8日目に抗FLJ32028抗体を投与した群が最も腫瘍体積が抑制されていた。このことから本発明の抗体は体内に投与した場合に、腫瘍の増加を抑制することが明らかとなった。
以上説明したように、本発明の抗体は誘導型Treg(iTreg)を特異的に認識するという特性を有する。更には、本発明の抗体は、誘導型レギュラトリーT細胞の前駆細胞から誘導型レギュラトリーT細胞への分化を阻害することができる。このような特性を利用して、本発明の抗体は、がん組織などで生じている免疫抑制状態を効率よく解除する等様々な用途に有用に用いることができる。

Claims (12)

  1. ブダペスト条約に基づき国際寄託されたハイブリドーマ(受託番号FERM BP−11100)から産生され、膜貫通分子FLJ32028を認識する抗体であって、かつ、レギュラトリーT細胞に特異的に結合する抗体。
  2. 請求項に記載の抗体に、レギュラトリーT細胞を結合させて、レギュラトリーT細胞を除去する、レギュラトリーT細胞の除去方法。
  3. レギュラトリーT細胞が、誘導型レギュラトリーT細胞である請求項に記載の除去方法。
  4. 請求項に記載の抗体を具備するレギュラトリーT細胞除去装置。
  5. レギュラトリーT細胞が、誘導型レギュラトリーT細胞である請求項に記載の除去装置。
  6. 請求項に記載の抗体を含む医薬。
  7. レギュラトリーT細胞による免疫抑制を解除するための請求項に記載の医薬。
  8. レギュラトリーT細胞により増殖が抑制された細胞を増殖させるための請求項6または7に記載の医薬。
  9. 免疫機能を増強させるための請求項6乃至8のいずれか一項に記載の医薬。
  10. レギュラトリーT細胞が、誘導型T細胞である請求項6乃至9のいずれか一項に記載の医薬。
  11. その細胞表面上に膜貫通分子FLJ32028タンパク質の発現が疑われる被験細胞と、請求項に記載の抗体とを接触させ、該被験細胞表面上の膜貫通分子FLJ32028タンパク質の発現を検出することを含む、該被験細胞中におけるレギュラトリーT細胞の検出方法。
  12. レギュラトリーT細胞が誘導型レギュラトリーT細胞である請求項11に記載の検出方法。
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