以下、本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。以下の実施例では、PONの構成と動作を、ITU−T勧告G984.3で規定されたGPONの構成およびその動作を用いて説明する。しかし、本発明は、GPONに限定するものではない。
図1を参照して、PONシステムの構成を説明する。図1において、PON1は、OLT10と、集線ファイバ70と、スプリッタ30と、3本の第1支線ファイバ75と、3台のスプリッタ31と、複数の第2支線ファイバ71と、複数のONUとから構成されている。
GPONを代表例とする従来のPONでは、PONシステム毎に含まれる加入者装置ONUの通信距離分散範囲、即ちOLT10まで最も近い位置にあるONUと最も遠い位置に設置されるONUとの距離差は20km以内とされてきた。そのため、ONU間の距離分散を考慮せずにOLT10との光通信が可能な範囲(一定強度の光信号でOLTと全ONUとの通信が可能な範囲)において、光モジュールの発信光強度範囲と受光感度範囲が規定されている。
これら既存の装置および光デバイスを可能な限り再利用するため、本実施例ではその第1の特徴として、PON1を構成するONUをOLT10からの距離差が20km以内に収まるようにグループ化して接続する。具体的には、スプリッタ30の配下にONU20をグループ毎に束ねる2段目のスプリッタ31A、31B、31Cを設け、各第2のスプリッタ31A〜31Cに対してONUを接続する。勿論、個々のONUを独立なもの(1グループに1つのONUと考えれば良い)として取り扱うことも可能である。以降ではONUグループを用いる構成を説明する。しかし、グループ内のONU数については任意である。
PONでは光ファイバを一旦敷設した後は、相当の事故等が発生しない限り光ファイバを頻繁に張り替えることはない。また、ONU設置箇所についても、一旦設置した後は引越しや都市再開発等の事情が発生しない限り、PONの設定状況が変更されることはない。したがって、通信品質に変更が生じる機会が極めて稀な安定したシステムである。この特性を利用し、ONUの位置(およびOLT10からの距離)に応じて、スプリッタ31A、31B.31Cを設置して一つまたは複数のONUを束ねる構成とした。そのため、図1では第1のスプリッタ30に加え、第2のスプリッタ31を設置し、個々のONUとスプリッタ31とを接続する光ファイバを75A、75B、75Cとする。また、第2のスプリッタ配下のONUを、OLTに対する通信距離とビットレートにより分類し、それぞれONU群20A、20B、20C、20Dとした構成を示す。ここで、個々のONU群内のONU間距離差L−A、L−B、L−C、L−Dは、それぞれ20km以内とした。全てのONU20が分散配置される際の距離差(ONU20とOLT10との間の最大通信距離差)を、ONU分布範囲L−Tとする。即ち、一つのOLT10に対して、既存PONの規定である20kmを超える範囲に分散配置されたONUが収容されることを示す。更に、OLT10からONU群20A(20D)、20B、20CまでのPON区間の通信距離をそれぞれ距離A、B、C、PON区間をPON区間80A、80B、80Cのように表す。
PON1は、OLT10、複数個のグループに分類されるONU20A−1〜20A−nA、20B−1〜20B−nB、20C−1〜20A−nC、20D−1〜20D−nD(以下、全ONUをまとめて示す場合には、「ONU20」または「ONU20A−1〜20D−nD」と記載する)を含む。ここで、nA、nB、nC、nDは各グループに含まれるONUを識別するための自然数である。図1には、各グループの代表ONUとして、ONU20A−R、20B−R、20C−R、20D−Rを示す。本システムは更に、集線光ファイバ70、光スプリッタ30、複数本の第1支線光ファイバ75A〜75C、さらに各ONUグループを束ねる支線スプリッタ31A〜31C、ONU20とスプリッタ31とを接続する第2支線ファイバ71A〜71Cから構成する。
PON1は、OLT10に図示しない光アンプを備え、各ONU20(20A−1〜20D−nD)をそれぞれ加入者網(あるいは、PCや電話等の端末;図1では代表例としてONU20C−Rと接続される加入者網50C−Rのみ図示)50と接続し、更にOLT10を上位の通信網であるアクセス網90と接続したシステムである。
ここでOLT10内部の光アンプの代わりにPON区間へ光増幅器を導入する場合でも、支線網の光ファイバ(図1では光ファイバ75B、75C)毎に光増幅器を導入し、通信事業者がその光増幅器を信号送信先のONU(図1ではONU群20B、20C)に対し適切な光強度の信号を到達するように調整すれば、ONUはOLTからどれほど距離が離れていても信号受信に問題は生じない。しかし、光増幅器の設置や保守に関するコストが増大する問題が生じる。よって、実運用上での光増幅器の導入は、基幹網の光ファイバ(図1では光ファイバ70)のみとして、必要最低限に抑えるべきである。光増幅器の配備位置は本実施例の本質には影響しないが、以降の実施例では、光増幅器の保守コストを最小限にする光ファイバ70への配置として説明する。
OLT10は、アクセス網90を介して更に上位の通信網と情報の送受信を行なう。OLT10は、情報をさらにONU20へ転送することにより、情報信号を送受信する装置である。なお、アクセス網90は、IPルータやイーサネット(登録商標)スイッチなどで構成されるパケット通信網を用いることが多い。しかし、アクセス網90は、これ以外の通信網であっても構わない。ONU20は、ユーザの家庭や企業のサイトに設置され、LANもしくは相当のネットワークである加入者網50に接続される形態が一般的である。各加入者網50には、IP電話や既存の電話サービスを提供する電話端末やPC/携帯端末等の情報端末が接続される。PON区間80(80A〜80C)では、OLT10と各ONU20(20A−1〜20D−nD)との間で光信号によって通信が行なわれている。なお、PONでは使用される光信号の波長を、上りλupと下りλdownとをそれぞれ異なる波長にして光ファイバ70、75(75A〜75C)と71(71A〜71C)やスプリッタ30、31(31A〜31C)において信号が干渉しないようにしてある。
OLT10からONU20へ向け発信される下り信号は、光アンプ等で構成される強度制御部(図示せず)において増幅または強度調整され、スプリッタ30およびスプリッタ31A〜31Cで分岐されて、PON1を構成するONU20A−1〜20D−nDに到達する。OLT10からの下り信号は、PON区間80(80A〜80C)の通信に用いるフレーム(以下、下り基本フレームと称する)を用いて送出される。この下り基本フレームには、GEM(GPON Encapsulation Method)フレームと呼ばれるフレームが収容される。GEMフレームは、ヘッダとペイロードから構成され、各ヘッダには、個々のGEMフレームの宛先となるONU20を識別するための識別子(以下、Port−IDとも称することがある)が挿入されている。ONU20は、GEMフレームのヘッダを抽出し、当該フレームの宛先Port−IDが自分自身を指すものであった場合に当該フレームの処理を行なう。ONU20は、他のONU20宛てのフレームであった場合は当該フレームを廃棄する。
各ONU20からOLT10へ向かう上り通信には、全てのONU20から同じ波長λupの光信号を用いて電子信号を送出する。上り信号は、下り信号と同様にONU毎のヘッダとペイロードから構成される可変長のフレームを用い、各上りフレームにはGEMフレームを含む。ONU20は、OLT10において各ONU20からのGEMフレームが識別できるよう、集線光ファイバ70上で個々の上り信号が衝突/干渉しないように、送信タイミングをずらして上り信号を送出する。これらの信号は、集線光ファイバ71(71A〜71C)、75(75A〜75C)、70上でそれぞれ時間分割多重されOLT10に到達する。具体的には、以下の通りである。
(1)レンジング過程でOLT10から各ONU20A−1〜20D−nDまでの距離を測定した上で信号の遅延量を調整する。
(2)OLT10の指示で、各ONU20A−1〜20D−nDに送信待ちのデータ量を申告させる。
(3)DBA(Dynamic Bandwidth Assignment;ONU20に対し、上り信号用の通信帯域(タイムスロット)を動的に割当てる機能。動的帯域割当とも称する)機能により、申告に基づいて各ONU20−1〜20−nの上り信号送信タイミングと送出可能な上り通信データ量を指示する。
(4)各ONU20がOLT10から指示されたタイミングで上り通信データを送信すると、これらの信号が集線光ファイバ71、75、70上で時間分割多重されOLT10に到達する。
(5)OLT10は各ONU20に指示したタイミングを知っているので、多重化された信号から各ONU20の信号を識別して受信フレームの処理を実施する。
上記の上り通信を行なうためのシステム動作例を説明する。先ずPON1を立上げる際にOLT10が、個々のONU立ち上げ時のレンジング過程において、ONU20までの往復遅延時間(RTD:Round Trip Delay)を個々に測定し、測定結果に基づき等価遅延(EqD:Equalization Delay)の値を決定する。EqDは、OLT10のレンジング管理DB1061に記憶される。このレンジングは、ITU−T勧告G.984.3で規定されたレンジング方法を用いれば良い。なお、EqDは、既存のPONのEqDと同様に、OLT10に対する個々のONU20からの応答時間がシステム内で同一となるよう設定する。
OLT10のレンジング管理DB1061には、EqD情報とPON区間80のRTDを保持しておく。これはOLT10が各ONU20に対して帯域割当てを行なった後、該当するONU20からの上り信号を受信する際に、ONU20からの上り信号を正しく受信できるようにするためである。
図2を参照して、PONにおける下り信号時分割多重伝送を説明する。図2において、OLT10は、SNI(Service Network Interface)を介して受信したアクセス網90からの信号を、下りフレーム処理部(図3;1210)にてGEMフレームにカプセリングし、更には一つまたは複数のGEMフレームを束ねて125マイクロ秒単位の下り通信用フレームを生成する。その後、生成した下りフレームをO/E処理部1310で光信号に変換し、また個々のGEMフレームの宛先となるONU20に対して光制御部(図3;1090)内で規定された光強度に変換した後、集線光ファイバ70へ送出する。図2は、OLT10側からONU20側へ下り信号が送信・多重化される様子を示し、光ファイバ通過中に、光信号の強度が徐々に低下していく様子(およびS/N比の悪化、波長分散効果による信号識別レベルの低下)を示している。
一本の集線光ファイバ70へ送出された光信号は、スプリッタ30を通過して各第1支線光ファイバ75A〜75Cに分岐され、更にスプリッタ31A〜31Cで分岐されて第2支線光ファイバ71A〜71Cへ分配される。スプリッタ30および31を通過する際には光強度が低下するが、その低下分を見込んで、対象となるONU20へ到達するために必要な強度でOLT10から送信されている。各ONU20は、それぞれ支線光ファイバ71A〜71Cを通じて下り信号を受信する。図2中で、光信号301−1〜301−4は、各ONU20A−1〜20D−nDに宛てて送信された下りフレームの送信位置および送信データサイズを示している。図1との対応関係では、下り信号301−1がONU20A−R、下り信号301−2がONU20B−R、下り信号301−3がONU20C−R、下り信号301−4がONU20D−R向けであると考えれば良い。
また、図2では、OLT10がONU20へ送信する光信号の強度に差があることを示している。図2中ではONU群20C宛ての受信信号の光の強度が最も強く、次にONU群20B、次にONU群20D、次いでONU群20Aの順に光の強度が強いことを示している。この光信号の強度の関係は、スプリッタ30透過後の集線光ファイバ70上においても維持されつつ情報が伝達される。なお、下りフレーム処理部1210から強度制御部11000までの処理は、OLT10内部の処理であり、PON区間80での光信号は各区間における光信号の状態(タイミングと強度)を示している。
下り光信号到達時の動作は、以下のようになる。ONU群20Aでは光信号301−1を受信する。ONU群20AはOLT10に対して最も距離が近いグループであり、その他の信号はONU群20A宛の信号よりも光強度が高い。そこで、これらの信号(本図では信号301−2、301−3、301−4)をONU20の強度制御部2311を用いてブロックする。どのように各ONUがその信号をブロックしているかは後に詳しく説明する。
ONU群20Dは、光信号301−4を受信する。ONU群20Dは、OLT10に対して、ONU群20Aと同距離に位置しているが、ONU群20Aに比べて信号のビットレートが高い。高ビットレート信号は光伝送特性上、低ビットレートの信号よりも短距離で減衰するため、同距離に位置するONU群20Aの信号よりも高い光強度で出力している。ONU群20Dは、自グループ宛の信号301−4のみ受信し、それ以外の信号(301−1、301−2、301−3)については強度制御部2311を用いてブロックする。301−1の信号についてはONU群20Dでも受信可能な光強度ではあるが、本実施例ではONUの内部回路の不要な駆動を削減するため自グループ宛以外の信号は全て遮断する。もちろんこのような信号については、遮断だけではなくONUにて廃棄を行なっても構わない。
ONU群20B、ONU群20Cについても上記と同様に、ONU群20Bは信号301−2のみ受信し、それ以外の信号(301−1、301−3、301−4)はブロックする。ONU群20Cは信号301−3のみ受信し、それ以外の信号(301−1、301−2、301−4)はブロックする。
図3を参照して、OLTの構成を説明する。図3において、OLT10は、IF1100と、下りフレーム処理部1210と、電気−光変換部(E/O)1310と、PON制御部1000と、光−電気変換部(O/E)1320と、上りフレーム処理部1410と、WDM1500とから構成されている。下りフレーム処理部1210は、下り経路情報DB1211を保持する。電気−光変換部(E/O)1310は、強度制御部11000を含む。PON制御部1000は、光制御部1090と、ONU管理部1060とを含む。上りフレーム処理部1410は、上り経路情報DB1411を保持する。光制御部1090は、光増幅率情報DB1091を保持する。ONU管理部1060は、レンジング/DBA情報DB1061を保持する。IF1100は、スイッチまたはルータを介してアクセス網90に接続されている。WDM1500は、集線光ファイバ70を介してONU20に接続されている。
下り信号は、アクセス網90からSNI(Service Network Interface)と呼ばれるIF1100−1〜1100−nに入力される。なお、アクセス網90にはパケット通信網が多く用いられ、IFには10/100Mbit/sまたは1Gbit/sのイーサネットインタフェースが用いられる。受信信号(以下信号をデータまたはパケットと称することもある)は、下りフレーム処理部1210に転送される。下りフレーム処理部1210は、パケットのヘッダ情報を解析する。具体的には、下りフレーム処理部1210は、パケットのヘッダに含まれる宛先情報、送信元情報、経路情報を含むフロー識別情報に基づいて、当該受信パケットを転送すべき先のONU20を決定する。下りフレーム処理部1210は、必要に応じて、当該受信パケットのヘッダ情報の変換や付与を行なう。なお、下りフレーム処理部1210は、宛先決定、ヘッダ情報の変換および付与を含む処理を決定するための下り経路情報DB1211を備え、受信パケットのヘッダ情報として含まれる一つまたは複数のパラメータをキーとしてDB1211を参照することで、上記処理を行なう。
下りフレーム処理部1210は、更に、下りフレーム処理部1210内部で決定されたヘッダ処理内容に従い、当該受信パケットをPON区間80伝送用のフレームフォーマットに変更するフレーム生成機能も備える。イーサネットの受信パケットをGPONのPON区間80に送信する場合の具体的な処理は、次のようになる。
(1)イーサネットパケットのヘッダ情報を抽出する。
(2)ヘッダ情報をキーとして下りフレーム処理部1210内の下り経路情報DB1211を検索することにより、受信パケットに対するVLANタグ処理(変換、削除、透過、付与など)およびその転送先を決定する。
(3)フレーム生成機能にて該当する転送先ONUに設定したPort−IDを含むGEMヘッダを生成する。
(4)当該GEMヘッダを受信パケットに付与して、イーサネットパケットをGEMフレームとしてカプセリングする。
イーサネットパケットをカプセリングしたGEMフレームは、下りフレーム処理部1210から読み出される。E/O処理部1310は、読み出した電気信号を光信号に変換する。E/O処理部1310は、光信号を波長多重分離器(WDM)1500と集線光ファイバ70を介して、ONU20へ送信する。このとき、E/O処理部1310に具備された強度制御部11000にて、当該フレームの対象となるONU20が属するONU群によって、それぞれ異なる光強度で送信する。この強度制御部11000は、光アンプおよび光アンプの増幅率設定回路(図示せず)により実現される。増幅率設定回路は、光制御部1090からの指示により制御される。光制御部1090では、当該下りフレームの宛先を参照し、宛先と関連付けられる光増幅率情報DB1091から得られる増幅率に従い、フレームの増幅率を設定する。光増幅率情報は、ONU管理部1060に保持されるレンジング情報(RTDを基に算出される、PON区間の通信距離情報)に基づいて設定する。
PON制御部1000は、各ONU20の設定・管理等の制御他、上下双方向の信号伝送制御も含めたPON1全体の制御を行なう部分である。本実施例では、OLT10が下り光信号の強度制御を実施する。そのため、本実施例では、OLT10にPON制御部の一機能として光制御部1090を含む構成とした。PON制御部のレンジング/DBA情報DB1061に保持される情報には個々のONU20に対するEqD設定値を含む。これはOLT10から各ONU20の伝送距離(伝送所要時間/応答遅延時間)に相当する情報であり、レンジング/DBA情報DB1061に記憶され、PON運用中のDBA処理に利用される。
図4を参照して、OLT10の下りフレーム処理部1210とPON制御部1000の詳細な構成を説明する。図4において、下りフレーム処理部1210は、ヘッダ解析部12105と、複数のパケットバッファ12101と、ヘッダ変換・付与部12102と、GEMヘッダ生成部12103と、GEMフレーム生成部12104と、送信計画決定部12108と、送信光強度取得部12106と、下り強度マップ生成部12107とから構成されている。また、下りフレーム処理部1210は、下り経路情報DB1211を保持する。なお、パケットバッファの個数を3つとしているが、これに限定されるものではない。
PON制御部1000は、光制御部1090と、ONU管理部1060とから構成されている。光制御部1090は、光増幅率決定部1092から構成され、光増幅率情報DB1091を保持する。ONU管理部1060は、DBA処理部1062から構成され、レンジング/DBA情報DB1061を保持する。
下りフレーム処理部1210に転送された下りパケット処理は以下の手順による。インタフェース1100−1および1100−2にて受信した下りパケットは、ヘッダ解析部12105によりフレームヘッダの解析後、パケットバッファ12101に格納され、その後GEMフレーム生成部12104を通じてE/O変換部1310へ転送される。この一連の流れの中で、GEMフレーム生成部12104へパケット情報が通知される前に、下りフレーム処理部1210において(1)ヘッダ情報の解析および転送方路の決定、(2)下りパケットの送信計画の決定、(3)下りパケット送信光強度の決定および下り強度マップの生成を行なう。
処理(1)において、ヘッダ解析部12105は、ヘッダ部に含まれる宛先情報、送信元情報、経路情報を含むフロー識別情報に基づいて、ヘッダ変換の要否および変換方法(付与・削除・透過・変換)を決定する。この決定は、当該パケットのフロー識別情報の一部(例:宛先情報)または全部を参照し、情報を下り経路情報DB1211に保持する経路テーブルと照合することにより行なう。ここで得たヘッダ変換内容を参照して、GEMヘッダ生成部12103は、該当するGEMフレームヘッダ情報を生成し、GEMフレーム生成部12104へ転送する。ヘッダ解析部12105での処理終了後、パケットは後段のパケットバッファに格納されるが、本実施例ではパケットの宛先ONU群に応じて格納するパケットバッファを変える。その振り分け先については送信計画決定部12108から指示を受ける。
処理(2)では、送信計画決定部12108は、パケットバッファ12101−1〜12101−3の監視を順次行なう。送信計画決定部12108は、監視結果に基づき各ONU群への信号送信計画を決定する。送信計画決定部12108は、決定した信号送信計画を下り強度マップ生成部12107に通知し、下り強度マップの生成に利用する。信号送信計画の内容および決定方法については後で詳細を述べる。
処理(3)では、下り強度マップ生成部12107は、パケットバッファ12101−1〜12101−3からパケットのヘッダ部を取得し、ヘッダ情報に基づき送信光強度取得部12106に対して送信光強度情報の要求を、送信計画決定部12108に対して信号送信計画の要求を行なう。下り強度マップ生成部12107は、取得した送信光強度情報と信号送信計画を基に下り強度マップの生成を行なう。
送信光強度取得部12106は、PON制御部1000に備えた光増幅率決定部1092へ当該下りパケットを送信するための適正な光強度を指定するよう要求する。光増幅率決定部1092は、光増幅率情報DB1091を参照して、当該パケットの宛先ONUに対応する光増幅率を取得し、これを下りフレーム処理部1210の送信光強度取得部12106へ通知する。なお、光増幅率情報DB1091は、ONU立ち上げ時に実施するレンジング処理を利用した通信距離測定に基づいて、個々のONUとの通信に要する光強度を算出する機能を備える。ONU管理部1060に含まれるDBA処理部1062とは、個々のONUに対し上り信号(パケット)を送出するタイミングを算出する機能ブロックである。従来のPONで用いる上り信号の帯域割当てのためのDBAと同様であり、ここで算出した帯域割当て状況は、一旦割り当てた上りフレームを受信完了するまで、レンジング/DBA情報DB1061に保持する。
GEMフレーム生成部12104は、GEMフレームヘッダ情報とパケットバッファ12101に格納されているデータ(フレームペイロード)を結合して下りGEMフレームを生成し、当該下りGEMフレームを更に結合して125マイクロ秒を区切りとする下りフレームを生成する。具体的なフレーム構成については後述する。
図5を参照して、ONUの構成を説明する。図5において、ONU20は、WDM2500と、O/E処理部2310と、下りフレーム処理部2210と、n台のIF2100と、PON制御部2000と、上りフレーム処理部2410と、E/O処理部2320とから構成される。O/E処理部2310は、強度制御部2311を有する。下りフレーム処理部2210は、下り経路情報DB2211を保持する。PON制御部2000は、下り受信制御部2070と、ONU制御部2060とからなる。上りフレーム処理部2410は、上り経路情報DB2411を保持する。下り受信制御部2070は、下り強度マップ情報DB2071を保持する。WDM2500は、第2支線ファイバ71を介してOLT10と接続される。IF2100は、加入者網50と接続される。
ONU20が収容する端末(図示せず)からPONへの上りの信号は、加入者網50からUNI(User Network Interface)と呼ばれるIF2100−1〜2100−nに入力される。なお、加入者網50にもLANやパケット網が用いられることが多く、IFには、10/100Mbit/sまたは1Gbit/sのイーサネットインタフェースが用いられる。
ONU20での下り信号および上り信号を処理する構成と動作は、それぞれ図3および図4を用いて説明したOLT10の上り信号および下り信号処理の構成と動作に概ね同様である。下り信号については、ヘッダ解析の結果を基に宛先決定やヘッダ情報の変換および付与を含む処理を決定するための下り経路情報DB2211を備えた下りフレーム処理部2210がPON区間80から受信したGEMフレームをイーサネットパケットに変換してONU20の端末に出力する。上り信号については、上り経路情報DB2411を備えた上りフレーム処理部2410が端末から受信したイーサネットパケットをGEMフレームに変換してOLT10に向かって出力するものである。
強度制御部2311は、OLT10から光ファイバ70および支線ファイバ71を介して受信する光信号の強度を監視し、ONU20のO/E処理部2310を構成する光受信器にとって適切な強度に調整する。強度制御部2311は、高強度の光信号を遮断し、O/E処理部2310の光受信器が故障することを防ぐ。強度制御部2311は、ONU制御部2060の指示に従って動作する。また、ONU制御部2060は、下りフレーム処理部2210にてフレーム処理の結果得られる下り信号の受信時刻情報(下り強度マップ)を下り強度マップ情報DB2071に記憶する。情報に基づき、自装置が属するONU群が受信すべき適切な光強度・通信ビットレートの下り信号が送られている間は下り信号受信を可能とし、それ以外の信号の場合は光を遮断するように強度制御部2311を制御する。強度制御部2311の動作詳細については後述する。
ONU制御部2060は、OLT10からの指示に従い、ONU20を立上げる場合のパラメータ設定や通信状態管理に用いる機能ブロックで、受信フレームの解析、装置の保守管理情報の管理、OLT10への通信(返信)要否判定などが本ブロックの処理に含まれる。
図6を参照して、ONU20の下りフレーム処理部、PON制御部および上りフレーム処理部の詳細を説明する。図6において、下りフレーム処理部2210は、ヘッダ解析部22101と、レンジングリクエスト処理部22102と、ヘッダ処理部22103と、ペイロード処理部22104とから構成される。下りフレーム処理部2210は、下り経路情報DB2211を保持する。
PON制御部2000は、ONU制御部2060、下り受信制御部2070に加えて、レンジング信号処理部20001を備える。PON制御部2000は、下り強度マップ情報DB2071に加えて、DBA情報DB20002を保持する。
上りフレーム処理部2410は、キュー長監視部24101と、ペイロード生成部24102と、DBA要求生成部24103と、レンジングレスポンス生成部24104と、上りフレーム生成部24105とから構成される。上りフレーム処理部2410は、上り経路情報DB2411を保持する。
WDM2500を介して受信した下り信号について、(1)フレームが自装置宛てであるか否か、また自装置宛てである場合、(2)フレームのヘッダ情報を下りフレーム処理部2210のヘッダ解析部22101にて調査する。ここで、下りフレームに含まれる情報は大きく二つのカテゴリに分類される。一つはPON区間制御用の信号でありONU20にて終端すべきもの、他方はユーザデータなどの主信号フレームでありONU20を介してIF2100−1〜2100−nに接続された機器へ転送すべきものである。
前者の代表的動作としてレンジング処理時の信号送受信がある。ヘッダ解析部22101は、OLT10から当該ONU20宛てのレンジングリクエストであることを検出すると、情報をレンジングリクエスト処理部22102へ転送する。レンジングリクエスト処理部22102は、当該レンジングリクエスト信号を受信した時刻を記録し、更にレンジングリクエストを受信した旨を通知するため内部信号(応答要求通知)を生成し、受信時刻と共にレンジング信号処理部20001に転送する。受信時刻は、レンジングリクエスト受信後35マイクロ秒程度でOLTへ返信することが規定されている。
後者の代表例は下り方向へのユーザデータ転送処理である。ユーザデータはPON下りフレームのペイロード部分に、GEMフレームの形で一つまたは複数含まれる。ヘッダ解析部22101は、個々のGEMフレームのヘッダ情報を参照し、ヘッダ情報のうち自装置(ONU20)宛てであることを示す識別子(以下、Port−IDと称する)がGEMヘッダ内に存在する場合に、当該GEMフレームの処理を行なう。具体的には、GEMフレームとして受信した信号をONU20のIF2100−1〜2100−nに接続される機器へ転送するため、データフォーマットの変更を行なう。GEMヘッダ内のデータについてそれぞれの宛先を示すアドレスフィールド(代表例としてイーサネット宛先アドレスやIP宛先アドレス)を参照し、各データを送出するべきIF2100(具体的にはIFの物理アドレス或いは装置内部で用いるIF識別子など(実装依存))を決定する。このIF決定に際して下り経路情報DB2211を参照する。また、下りフレーム処理部2210からIF2100への信号転送に際してユーザデータフレームのヘッダ情報を変更または追加する必要もある。イーサネットフレームに付与されるVLANタグ値の変更やVLANタグの挿入がこれに当たる。そのため、下り経路情報DB2211には、フレームの宛先情報と送信先IF識別子との関連付けと共に、そのためのヘッダ情報変換規則も保持しておく。下り経路情報DB2211に基づき、ヘッダ処理部22103において上記のようにシステム設定に従い必要となるヘッダ処理を行ない、外部機器向け下りフレームのヘッダフォーマットを成型する。その後ペイロード処理部22104に於いて、当該フレームのペイロード部に含まれているユーザデータと組合せることで転送用の下りフレームフォーマットを構築し、フレームをIF2100−1〜2100−nへ転送する。
PON制御部2000は、レンジング信号処理部20001を含む。レンジング信号処理部20001は、レンジングリクエスト処理部からの応答要求通知を受信すると、通知に含まれるレンジングリクエスト受信時刻に基づいてレンジングレスポンスを送出する時刻(実際には装置内クロック数を用いて算出できる)を決定し、レンジングレスポンス生成および送出指示をレンジングレスポンス生成部24104に対し送出する。通常レンジング処理はONU20立ち上げ時にのみ実施される。しかし、運用中の上り信号同期異常などの通信障害が検出された場合、再度レンジング処理を実施することもある。その際にはPON制御部2000のレンジング処理部20001から上りフレーム処理部に対し、レンジングレスポンス送信時には上りユーザデータフレーム送出を停止するように通知する。なお、図6では平常運用時の処理を説明しており、通信障害時の制御信号の流れについては図示していない。
上りフレーム処理部2410は、レンジングレスポンス生成部24104を備える。レンジングレスポンス生成部24104は、レンジング信号処理部20001からの指示に従いレンジングレスポンスを生成・送出する。このとき、レンジングレスポンス生成部24104は、レンジング信号処理部が指定する時刻にE/O変換部2320へ送出開始するようタイミング制御を行なう。
次に、ONU20が下り信号を受信した場合の処理を、図6を用いて説明する。図6において、ONU20に用いられる受光デバイスは、信号識別可能なS/N比レベルおよびデバイス破壊することなく受光可能な光強度上限値が決まっている。O/E部2310およびヘッダ解析部22101に於いて正常に受光され下り信号は、信号がレンジングリクエストでない場合には下りフレーム処理部2210に備えるフレームバッファ(図示せず)に保持され、ヘッダ解析部2210にて信号のヘッダ情報の解析が行なわれる。このヘッダ解析処理において、自装置(ONU20)宛ての下り強度マップを検出した場合には、当該情報を下り強度マップ情報DB2071に通知し、DB2071に保持する。このときの自装置宛てか否かの判断を行なう際には、下り経路情報DB2211を参照する。この具体的な動作については前出の通りであるため説明を割愛する。下り強度マップにはONU20が下り信号を受信すべきタイミングおよび遮断すべきタイミング(時刻またはクロック(バイト)数で表される)が記載されている。ONU制御部2060は、下り強度マップ情報DB2071を参照することにより、O/E部2310に備える強度制御部2311へ下り信号の受光タイミングを指示する。強度制御部2311は、指示に従い下り光信号を遮断または受光部を開放する。これによってONU20ではO/E部2310の光デバイスの故障や(自装置以外のONU宛てフレームであって、S/N比の低い信号を受信した場合の)不要な通信異常警報の発行を防ぐことができる。
次にONU20における上り信号の処理について述べる。IF2100−1〜2100−nで受信した信号は、一旦ONU20内に蓄積された後、OLTから指示される上りフレーム送信タイミングに従いOLTへ転送される。上り信号を構成するための手順は下り信号の解析と同様に、ヘッダ情報処理とペイロード情報処理に分割される。上り信号として入力された情報は、一旦上りフレーム処理部に備えるフレームバッファ(図示せず)に蓄積される。このうちペイロード部分については、ペイロード生成部24102に於いてGEMフレームのペイロードを構成するために透過、分割あるいは結合される。この段階における処理は、OLTから指示される上り信号送出帯域(バイト数へ変換可能)に依存する。
一方ヘッダ情報については2段階の処理を行なう。第1段階はIF2100から受信した上り信号のGEMヘッダを構成する処理である。GEMヘッダにはONU20の識別子として、予めONU20に割り当てられたPort−IDを挿入する。このPort−IDを決定する際に、上り経路情報DB2411を参照する。また、上りフレームを構成する際には、ONU20からOLT10に対してDBAレポートと呼ばれる上り帯域要求を通知する。情報は、上りフレームのヘッダ内に格納される。上り帯域要求は、具体的にはONU20内の上り信号送信待ちキューのデータ蓄積量をOLT10へ通知するものである。これによりデータ量に応じてOLT10からの送信許可を受けるための情報である。上りフレーム生成部24105において上り帯域要求を含む上り信号ヘッダ情報と、ペイロード生成部24102にて生成されるペイロードとを結合して上りフレームを完成する。その後、OLT10からの上り信号送信許可に従うタイミングでE/O部2320を介して送出する。なお、OLT10からの上り信号送信許可は、ONU20内に備える、DBA情報DB20002に保持する。
図7ないし図10を参照して、PONシステム立ち上がり時にOLTと各ONUの間で行なわれるレンジング動作を説明する。本実施例のPONシステムは、OLT10がGPONの通信ビットレートである2.5Gbit/sと次世代規格PONの通信ビットレートである10Gbit/sの2種類の通信ビットレートに対応するとする。また、配下のONUには通信ビットレート2.5Gbit/s対応のONU、通信ビットレート10Gbit/s対応のONUが混在している状況とする。ここでは次世代規格PONを通信ビットレート10Gbit/sと述べたが、次世代規格PONの通信ビットレートを10Gbit/sに限定しているわけではない。あくまで通信ビットレートの異なるPONシステムの混在収容時の一つのモデルとして述べたものである。
また、非特許文献1にあるように、運用当初はOLT10がONU20までの距離、およびONU20の対応通信ビットレートを把握していない状況からの立ち上げ処理を想定し説明する。
図7を参照して、PONシステム立ち上がり時にOLTとONU群20Aに属する各ONUの間で行なわれるレンジング動作を説明する。図7において、OLT10は、立ち上がり後、各ONUに対してレンジングリクエスト信号20000−Aを送信する。このとき、OLT10は、各ONUの配置状況、通信ビットレートを把握していない。そこで、OLT10は、まず最少の光強度(この強度を光強度LA10000とする)、通信ビットレート2.5Gbit/sでレンジングリクエスト信号20000−Aを各ONUへ送信する(S−10000A)。この時、OLT−ONU間の距離や伝送損失の影響によって、各ONUは前述の最少の光信号LA10000で送信されたレンジングリクエスト信号20000−Aを正しく受信できるか、または各ONUに搭載されているO/E2310の受信感度能力の不足や通信ビットレートの違いになどにより受信不可となる。ここでは、レンジングリクエスト信号20000−AをONU群20AのONUが受信可能(S−10010A)であり、残りのONU群20D、ONU群20B、ONU群20CのそれぞれのONUは受信不可(S−10010D、S−10010B、S−10010C)とする。また、後述する光信号LA10000より一段高い光強度光信号LA10010で送信するレンジングリクエスト信号20000−BはONU群20Bのみが正しく受信可能であり、ONU群20A、20Dにとっては光強度が強すぎ光受信器が破壊もしくは故障される懸念があり、ONU群20Cにとってはまだ光強度が受信可能になるには低すぎるものとする。その他にも光信号LA10010より更に一段高い光強度光信号LA10020で送信するレンジングリクエスト信号20000−CはONU群20Cのみが正しく受信可能であり、ONU群20A、ONU群20D、ONU群20Bにとっては光強度が強すぎ光受信器が破壊もしくは故障する懸念がある。
正しく受信できたONU群20AのONUはOLT10に対し、それぞれレンジングレスポンス信号20010−Aを送信する(S−10020A)。レンジングレスポンス信号20010−Aを受け取ったOLT10(S−10030A)は、レンジングレスポンス信号20010−Aを送信してきたONU群AのONUとは先ほどレンジングリクエスト信号20000−Aを送信した光強度LA10000で通信可能と判断し、光強度LA10000の信号で各ONUまでの往復遅延時間RTDを個々に測定し、測定結果に基づき等価遅延EqDの値を決定するなど(20020−A)、ITU−T勧告G.984.3に基づいたレンジング処理を実施する。この時、OLT10は、レンジング処理の結果に基づき、各ONUまでの通信時間を測定する。ここで得た通信時間は、OLT10から各ONUに対する絶対(OLT側管理)時刻を設定するために利用できる。この絶対時刻は、各ONUが後に詳しく説明する光強度マップ内に示す各ONU宛のフレームに関する到達時刻情報を正しく認識することに寄与される。これはOLT側で管理された時刻情報(絶対時刻)からONUが自装置に設定すべき時刻情報を得ることができるため、OLT10からの基本フレーム周期の境界時刻若しくは該当フレームが各ONUへ到着する時刻をONUへ設定することができるためである。先に述べたように、本実施例ではこの絶対時刻を設定する方法は特に限定しない。具体的には、特許文献1に記載の時刻設定方法を用いることができる。
絶対時刻まで各ONU群20AのONUに設定(20030−A)したOLT10は、それまで通信していた各ONUに対して、通常運用の開始予定時刻から受信動作を開始し、それまでの時間全ての受信信号を遮断するようONU内の強度制御部2311を設定するように通知する(20040−A、20050−A)。
図8を参照して、PONシステム立ち上がり時にOLTとONU群20Dに属する各ONUの間で行なわれるレンジング動作を説明する。図8において、レンジング処理を終えたONU群20Aは、レンジングリクエスト信号20000−Dをブロックした状態にある。一方、OLT−ONU間の距離や伝送損失の影響および通信ビットレートの違いによって、前述の最少の光信号LA10000かつ通信ビットレート2.5Gbit/sで送信されたレンジングリクエスト信号20000−Aを正しく受信できなかったONU群20D、ONU群20B、ONU群20CのONUはOLT10からのレンジングリクエスト信号を待ち続けている状態を維持している。
光信号(光強度LA10000、通信ビットレート2.5Gbit/s)にてレンジング処理や各ONUへの絶対時刻を定義し終えたOLT10は、次に通信ビットレートを10Gbit/sに変更し、送信光強度をビットレートでの通信に必要な光強度に設定して、レンジングリクエスト信号20000−Dを再度各ONUへ送信する(S−10000D)。この時、先ほどレンジング処理を終えているONU群20AのONUは、OLT10から通常運用の開始予定時刻まで受信信号を全て遮断するように指示されているので、今回到達する光強度LA10000、通信ビットレート10Gbit/sの信号をブロックして自ONUの光受信器を保護している(20050−A)。その一方、ONU群20Bおよび20CのONUは先ほどと同様に各ONUに搭載されているO/E2310の受信感度能力が足らないか、或いは受信感度が適正範囲であっても通信ビットレートが異なるために信号を捕捉できず、信号エラーなどで受信不可となる。ONU群20DのONUは光強度LA10000かつ通信ビットレート10Gbit/sで送信された信号で初めてレンジングリクエスト信号20000−Dを認識できたので、OLT10との間でレンジング処理や絶対時刻情報の設定を行なう。この時の処理内容は、前述のOLT10とONU群20A間の処理と同じなので省略する。その後、OLT10はONU群20Dに対して、通常運用の開始予定時刻までの間に全ての受信信号を遮断するようONU内の強度制御部2311を設定するように通知する(20020−D)。
図9を参照して、PONシステム立ち上がり時にOLTとONU群20Bに属する各ONUの間で行なわれるレンジング動作を説明する。図9において、レンジング処理を終えたONU群20Aおよび20Dは、レンジングリクエスト信号20000−Bをブロックした状態にある。一方、OLT−ONU間の距離や伝送損失の影響および通信ビットレートの違いによって、前述の光信号(光強度LA10000、通信ビットレート2.5Gbit/s/10Gbit/s)で送信されたレンジングリクエスト信号20000−A、20000−Dを正しく受信できなかったONU群20B、ONU群20CのONUはOLT10からのレンジングリクエスト信号を待ち続けている状態を維持している。
光強度LA10000にてレンジング処理や各ONUへの絶対時刻を定義し終えたOLT10は、次に光強度をLA10000より一段上昇させた光強度LA10010に変更し、レンジングリクエスト信号20000−B(通信ビットレートは2.5Gbit/s)を再度各ONUへ送信する(S−10000B)。この時、先ほどレンジング処理を終えているONU群20AおよびONU群20DのONUは、本来ならば光信号LA10000より一段上昇させた光強度LA10010が到達したために自ONUの光受信器が故障もしくは破壊などの不具合を起こす可能性があったが、OLT10から通常運用の開始予定時刻まで受信信号を全て遮断するように指示されているので、今回到達する光強度LA10010の信号をブロックして自ONUの光受信器を保護している(20050−A、20050−D)。
一方、ONU群20CのONUは、先ほどと同様に各ONUに搭載されているO/E2310の受信感度能力が足らずに信号エラーなどで受信不可となる。しかし、光強度LA10010、通信ビットレート2.5Gbit/sで送信された信号で初めてレンジングリクエスト信号20000−Bを認識できたので、ONU群20BのONUは、OLT10との間でレンジング処理や絶対時刻情報の設定を行なう。この時の処理内容は、前述の光強度LA10000で行なわれたOLTと各ONU間の処理と同じなので省略する。その後、通常運用の開始予定時刻までの間に全ての受信信号を遮断するようONU内の強度制御部2311を設定するように通知する(20020−B)。
前述の処理実行後、OLT10から光強度LA10010、通信ビットレート10Gbit/sの条件にてレンジングリクエスト信号が発信されるが、ここでは省略する。
図10を参照して、PONシステム立ち上がり時にOLTとONU群20Cに属する各ONUの間で行なわれるレンジング動作を説明する。このレンジング動作は、図7、図8、図9で示したONU群20A、20D、20Bへのレンジング処理が完了した後に行なわれる。図10において、光強度LA10010で前述の処理を終えたOLT10は、更に一段高い光強度LA10020でレンジングリクエスト信号を送信して、レンジングレスポンス信号を返信したONU群20Cとの間で前述と同様の処理を行なう(この際の処理の過程は、先のONU群20A、ONU群20Bと同様なので省略する)。この時も自ONUにとって光強度LA10020の信号が強すぎるONU(光強度LA10000、光強度LA10010でOLT10との間で一連の処理を終えているONU群20A、ONU群20D、ONU群20B)は、OLT10からの指示で受信信号を遮断しているため、自ONUの光受信器の故障もしくは破壊などの不具合が発生しない。
こうしてOLT10が徐々に光信号の強度を上昇させながらレンジング処理や絶対時間の通知を行なうことで、OLT10は配下の全ONU20のレンジング処理や絶対時刻の設定を実施することができ、最終的にOLT10や全ONU20は通常運用に移行する(S−10060−OLT、S−10060−A、S−10060−D、S−10060−B、S−10060−C)。この時、通常運用開始時刻として、各光レベルの信号が最初に到達する時刻(後述する図18を例にすると、ONU群20Aに対してT1、ONU群20Dに対してT2、ONU群20Bに対してT3、ONU群20Cに対してT4に相当する)をそれぞれ指定していると、全ONU20は運用開始直後に到達する下りフレームからエラーや障害を起こすことなく、受信可能となる。
OLT10は、徐々に下り信号送信時の光強度を上げ、接続距離の近いONUから遠いONUへ順にレンジングを行なう。このときOLT10が、或る距離のONU群に対するレンジング処理完了を認識する方法には大きく二通りがある。
一つは、ONU接続時(ユーザ宛てONU配布時)に予め設定しておくシリアルナンバー(SN)リストをOLT10内部に保持しておき、接続距離別に用意したリストのSNに該当するONUの立上げがすべて完了したか否かを参照する方法である。
さらにもう一つは、定期的に一通りの立上げ処理を実施し、新規に接続されたONUが存在するか否かをポーリングにより知る方法である。この方法では、ONU群20AからONU群20Cまでの立上げにおいて、各群につき一つのONUずつを対象として少しずつSN番号(この場合、OLT10はSNリストを事前には分かっていない)を変えて全SN番号(既接続ONU分を除く)につき順にポーリングをかける。或いはONU群20Aについて全SNのポーリングが完了したらONU群20Dの調査に移るという方法でも良い。
図11を参照して、OLT10のレンジング処理フローを説明する。図11において、ステップS―10000AからS1003が図7に対応している。同様に、ステップS―10000DからS1006が図8に、ステップS―10000BからS1009が図9のシーケンス処理に対応する。より詳細には、ステップS1002は図7のS−10000Aからレンジングレスポンス信号受信S−10030Aを受信する迄の時間内に実行する確認処理である。S1002の結果、レンジングレスポンスを正しく受信できたことが確認できると、20020−AからS−10040Aに至る一連のONU設定処理を行なう。この一連の処理を、本図では纏めてステップS1003として記載している。
図8および図9との対応についても同様である。ステップS1005は図8のS−10000Dからレンジングレスポンス信号受信S−10030Dを受信する迄の時間内に実行する確認処理であり、更にS1005の結果、レンジングレスポンスを正しく受信できたことが確認できると、OLT10は20020−DからS−10040Dに至る一連のONU設定処理を行なう(S1006)。図9との対応についても同様であるため説明を割愛する。
以上のように、OLT10に近いONU20群から順に立上げ処理を行ない、OLT10から最も遠い位置にあるONU群に対するレンジング処理を終えた段階で本フローを完了する。そして、最遠距離にあるONU群へのレンジング処理はステップS1013からS1015に相当する。その後レンジング処理終了確認および運用開始時刻までの待機(S1016)を経て運用を開始する(S1017)。なお、ステップS1016のレンジング終了確認および待機処理において、図12に示す光強度テーブルの統合処理を実施する。
図12を参照して、PONシステム立ち上げ処理の結果、OLT10内で生成およびに保持するONUテーブルを説明する。図12は図7から図10で述べたレンジング処理の結果、ステップS−10050(図10)にてOLT10が作成する。ONUテーブルは、各ONUに関するOLTからの距離情報と通信に必要な光強度を纏めたテーブルである。ONUテーブルは、OLT10内のレンジング/DBA情報DB1061に保持する。
ONUテーブルは、個々のONUの識別子であるONU−ID30000と該当ONUまでの距離情報30010の関係が示されている。ONUテーブルは、各光強度で行なったレンジングの完了時毎に作成することができる。即ち、OLT10がレンジング時のONU−ID30000と距離情報30010を処理する間に、その時のOLT−ONU間通信に用いている光強度の情報30020と通信ビットレート情報30030を加えることで作成可能である(S−10040A、S−10040D、S−10040B、S−10040C)。また、このテーブル情報をOLT10が光強度を変更させてレンジング処理を行なう度に実施し、最後にそれらを統合することで全ONUについてのテーブル情報を作成可能である(S−10050)。このテーブル情報を基にOLT10はIF1100から転送されるフレームに対して、宛先情報などからこのONUテーブルを利用することで、送信先のONUが正しくフレームを受信できる光強度を判断する。
また、後に詳しく説明する下り強度マップの作成にONUテーブルの光強度情報30020、通信ビットレート情報30030を利用する。これによりONUへの入力光強度が強すぎて受信器が故障もしくは破壊されてしまう事例や、入力光強度が弱すぎてエラー信号として受信してしまう事例を回避できる。加えて各ONUの通信ビットレート情報を管理することにより通信ビットレート毎の受信指示も追加できるため、異なるPONシステムを混在収容することができる。なお、図12のテーブル情報の値はあくまで一例であり、本実施例はこの値に影響されるものではない。
図13を参照して、下りフレーム生成時に用いる下り強度マップを説明する。図13において、OLT10は、アクセス網90から転送されたフレームを受信すると、PON制御部1000が受信フレームのヘッダ情報から送信先ONUを特定し、レンジング時に作成した全ONU20と適切な送信光強度の関係(図12のデータベース)を照合することで、該当ペイロードの送信すべき光強度が決定できる(70010)。また、10GPONやGPONなど同一ネットワーク内に複数の通信ビットレートが存在する場合は、併せて通信ビットレート情報が照会できる(70020)。以上により決定された各ONUの光強度、通信ビットレート情報から、同じ光強度、通信ビットレートのONUをONU群(70030)として扱い、ONU群が収容しているONU−ID(70040)をテーブル内に保持する。本実施例では下り強度マップの利用はこのONU群単位にて行なうこととする。もちろん下り強度マップの管理はONU群単位だけではなく、ONU単位であっても構わない。
下りフレーム処理部1210が下りフレームを作成する際に、前述の情報に加えて信号の受信/遮断を判断する時刻情報を付加するために、図4の送信計画決定部12018がパケットバッファ12101を監視し、各ONU群に絶対時間での信号遮断開始時刻(70050)、次回信号受信開始時刻(70060)の決定を行なう。信号送信計画決定部12018がどのようにONU群毎の各時刻情報を決定するかについては後に詳しく説明する。本実施例ではOLT10と各ONU20は共通の時間情報を用いて、フレーム処理に代表される各種処理を実施しており、その処理はOLTとONUが互いに基準となる前述の絶対時刻で管理しているが、基準となった時刻からの相対的な時刻情報(相対時刻)で処理を行なっても構わない。OLTとONUの時刻同期の手段としては例えばGPS機能による時刻同期などが挙げられる。
下り強度マップは、レンジング/DBA情報DB1061に格納され、後述の下りフレームのヘッダにも搭載され、各ONU20において自装置が信号を受信すべきタイミングや信号の遮断を行なうタイミングなどを理解する下り強度マップに利用される。
なお、図13で示した具体的な数値はあくまで一例であり、本実施例はこの数値に特化したものではない。個々の数値は、説明の都合上、上位網からの信号とレンジング時に生成したONUと適切な光強度の関係を把握するためのテーブル構成として挙げた数値である。
図14を参照して、OLT10の光制御部1090における処理フローを説明する。
OLT10の下りフレーム処理部1210は、SNIで受信した下りフレームから抽出したヘッダ情報を検索キーとして、下り経路情報データベース1211を検索する。この段階で得られる、GEMフレームに付与するPort−ID情報に基づき、発信光強度を問い合わせる。または、光制御部1090に当該ONU20までの送信距離(またはONU迄の属するONU群識別子情報)をレンジング/DBA情報DB1061より検索し、この結果に基づき光増幅率情報DBを検索する方法も可能である。後者の場合として、図14を説明する。図14において、光制御部1090は、下りフレーム処理部1210からの、ONU20がONU群のうちいずれに属しているかの確認依頼を受け付ける(S201)。光制御部1090は、この制御信号を受け、予めレンジング/DBA情報DB1061に基づき決定された光増幅率DB1091を参照し、ONU20の属するONU群を特定すると共に、フレーム処理部1210に対してONU20に対し信号送信する際の信号強度(増幅率)を決定する(S202)。この時、Port−IDに対応するONU―IDが同一であれば(またはONU群が同一であれば)光増幅率も同一値となる。そのため、光増幅率DB1091には、レンジング/DBA情報DB1061から展開された前述の図12や図13のテーブル情報や、その一部に加工を施した情報を格納する構成例を用いる。
当該ONU20宛ての信号強度を決定した後、光制御部1090は、フレーム処理部1210に対し、強度情報を通知する(S203)。また、光制御部1090は、当該Port−IDを含む下りフレーム(GEMフレーム)を送出する際の光強度情報を、O/E処理部1310へ通知して(S204)、終了する。前者は下りフレームヘッダに下り光強度マップを生成・挿入するためであり、後者は、実際に下りフレームを送出する際の光モジュール制御のために使用する。この光機能調整は、O/E処理部1310の強度制御部11000が担う。
なお、光強度の調整に当たっては、上記フローでは光制御部1090の指示に従う方法を一例として示したが、強度制御部11000からの依頼を受け光制御部1090から光増幅率DB1091を参照し、強度情報を収集する手段を採用する構成でも実現可能である。
ステップ203で得た送信強度情報に基づいてフレーム処理部1210では下りフレームヘッダに挿入する下り強度マップを生成し、PON区間80へ伝送する下りフレーム構成処理を完了する。ここで構成されるフレームは、後述する図17に示したものとなる。
図15を参照して、OLT10の光制御部に保持する光増幅率データベース1091の構成を説明する。光増幅率データベース1091は、図14に示したフローチャートのステップ202において、当該フレームのPort−IDから送信強度(光強度/増幅率10912)を決定するために使用する。
光増幅率データベース1091は、下りフレームの宛先ONU20に対する、送信信号の光強度を管理するために使用する。図15では、ONU20の識別子としてPort−ID10911を管理IDとして用いている。これはPort−IDが下りフレーム(GEMフレーム)に含まれる宛先識別子であるため便利であることが理由である。其の他の構成方法として、ONU−IDやSN(Serial Number)、LLID(Logical Link ID)等、既存のPONで用いられてきた識別子を用いる構成としても良い。
更に光増幅率データベース1091には、ONU20毎の下り光信号発信強度を示すパラメータとして、光強度または増幅率フィールド10912を含む。図15Aでは、光強度を格納した状態を示した。図15Bでは、光モジュールのデフォルト発信強度(光モジュール製造/出荷時に予め設定されている初期設定強度)を基準として、相対的な増幅/減衰率を示す変数10916を用いることも可能である。
個々のONU20の状態は、個々のテーブルエントリが有効か無効かを示すValidフィールド10913とその他フラグ10915によって管理される。OLT10におけるONU20の状態管理方法は、ベンダ別の実装に依存して多くの手段を適用できる。Valid10913は、障害あるいは異常信号発生時に使用し、ONU20の状態を示す情報(状態番号)は、ONU20の電源が投入されているか否かを含め、全てをその他フラグ10915に確保した数ビットを用いて表す方法がある。また別の方法として、ONU20の電源投入時にValid10913を有効値として、その後のONU20立上げおよび運用、保守管理に関する情報をその他フラグ10915の数ビットで管理することも可能である。
更に、光増幅率データベース1091には、Port−ID10911毎に、各送信先が属するONU群を格納しておくことも可能である。絶対的または相対的な光強度10912および10916は、このONU群の差異によって決定される。したがって、オペレータがONU20を設置した段階で、ONU群10914は確定し、同時に光強度/増幅率10912の概算値が決定する。
また、OLTから同距離に存在するONU群であっても、通信ビットレートが異なる場合は通信に要する光強度が異なる。通信ビットレートが2.5Gbit/sから10Gbit/sになる場合、波長分散の影響は約16倍、S/N比は4倍となり、伝送距離が大幅に短縮される。したがって、本DB1091を生成するためには、ONU群までの距離と通信ビットレートが及ぼす光特性の影響を考慮して光強度/増幅率10912を決定する。
図16を参照して、下りフレーム受信時の、OLT10の送信計画決定部12108の動作を説明する。図16において、アクセス網90から転送されたフレームはOLT10の下りフレーム処理部1210に備えたヘッダ解析部12105でヘッダ情報の解析が行なわれた後、フレームの宛先対象となるONU群に応じて、指定されたパケットバッファ12101−1〜3へと振り分けられる。ここで宛先ONU群に対するパケットバッファの振り分け先(バッファ/キュー)割当てはシステム立ち上げ時に決定しているものとする。
送信計画決定部12108は、これらバッファ内を順次、定期的に監視していき、各ONU群宛フレームのキュー長を取得する(S301)。送信計画決定部12108は、取得したキュー長の割合から、各ONU群への割当帯域を決定する(S302)。送信計画決定部12108は、送信対象フレームがないONU群が存在するか判定する(S303)。YESのとき、送信計画決定部12108は、ONUへの割当帯域を最小値に設定する(S304)。この最小割当帯域は本実施例ではバッファ内の送信待ちデータ量を一定の単位量でカウントした場合の1単位分とするがこれに限定されるものではない(バッファ量の監視方法に関する詳細は図19にて詳述する)。更に、本実施例では全ONU群に対して同一周期での下り信号帯域割当てを実施するが、その実施周期に関しては特に限定しない。最も基本的な単位は下り信号の基本フレーム周期(125マイクロ秒であり、以降の説明では125マイクロ秒を単位とする下り信号構成例として説明するが、本実施例を適用するにあたり、バッファ監視周期を当該周期に限定する必要は無い。
OLTが今回送信するフレームを各ONU群が受信を開始する時刻は、運用開始直後では立ち上げ処理時に、通常運用時ではONUが前回受信したフレーム内の下り強度マップの時刻情報から決定されている。ステップ303でNOまたはステップ304のあと、送信計画決定部12108、は取得キュー長から信号遮断開始時刻を算出する(S305)。送信計画決定部12108は、その取得キュー長から決定されたONU群毎の割当帯域から次回信号受信開始時刻を算出する(S306)。送信計画決定部12108は、今回の送信動作で余剰フレームが存在するか判定する(S307)。ここで通常運用中の各ONU群の使用帯域の割合は、前述のように前回のバッファ監視結果に基づくものであるため、あるONU群へのトラフィックが前回に比べて増加した場合、今回監視を行なったフレームは一度の送信動作では全て送信できない。ステップ307でYESのとき、当該余剰フレームを次回送出分へ持ち越す(S308)。
ステップ307でNOまたはステップ308のあと、このようにして決定された時刻情報(信号遮断開始時刻、次回信号入力開始時刻)を、送信計画決定部12108は、下り強度マップ生成部12107へ通知し、下り強度マップへの反映を行なって(S309)、終了する。送信計画決定部12108はステップ301からステップ309までの動作を繰り返すことでアクセス網90から転送されるフレームの送信計画を順次決定していく。
図17を参照して、下り強度マップを搭載するフレームのフォーマットを説明する。PONシステム1では、ONU20の光受信デバイスの故障を回避するため、また、信号受光対象でないONUからの無用なエラーメッセージ発行を回避するために、OLT10から個々のONU20へ下り信号の送信タイミングを下り強度マップによって通知する。
GPONでは、OLTから各ONU宛の信号は、図17(A)のように各ONUがOLTからの信号を識別して処理できるように、OLTから各ONUに向けて送信される信号の先頭に、先頭を識別するためのフレーム同期パターン9000と、監視・保守・制御情報を送信するPLOAMフィールド5130と、各ONUの信号送信タイミングを指示するグラント指示領域9010と呼ばれるヘッダ(オーバヘッドと称されることもある)とが各ONU宛に時分割多重化されたデータ5120(ペイロードとも称されることもある)に付加されて構成されている。
図17(A)では、非特許文献1に従う下り信号のヘッダ情報に含まれる制御メッセージ領域であるPLOAM(Physical Layer Operation, Administration and Management)フィールドを用いる。制御フレーム識別子5131には、当該PLOAMメッセージが“光強度情報”を含む独自規定メッセージであることを示す識別子(ベンダ独自で使用できる空きIDを用いれば良い。ここでは例として“11000000”とした)を含む。PLOAM内のメッセージフィールド5132には、ONU20群がフレームを受信/遮断すべきタイミングを示す下り信号送信計画5150を挿入する。この下り信号送信計画5150には、図17(A)には、OLT10にてONU群単位で決定される下り信号送信計画に従い、信号遮断開始時刻5151と次回信号受信開始時刻5152を格納しておく。
図17(C−A)、(C−D)、(C−B)、(C−C)にそれぞれONU20A−R、ONU20D−R、20B−R,20C−R向けの信号送信計画信号の構成を示す。図2と図17(C−A)を参照すると、ONU20A−Rでは、ONU群Aが受信するべきでない光強度および通信ビットレートの信号を、信号遮断開始時刻5151‐Aからブロックを開始し、ONUの光受信器の破壊や信号エラーの発生を防止する。そして次回信号受信開始時刻5152−Aからブロックを解除して信号の受信を開始する。(C−D)によりONU20D−Rに通知される下り強度マップ、(C−B)によりONU20B−Rに通知される下り強度マップ、(C−C)によりONU20C−Rに通知される下り強度マップも同様の構成であり、信号遮断開始時刻5151−D、5151−B、5151−C、次回信号受信開始時刻5152−D、5152−B、5152−Cをそれぞれ含む。これらを受信するONU20D−R、ONU20B−Rおよび20C−Rにおける動作も上記ONU20A−Rの動作と同様である。
なお、本フレーム構成では、システム立ち上げ後のONUにとって初回の信号受信開始時刻をONUは知ることができない。そのため、本実施例ではシステム立ち上げ処理時に初回の信号受信開始時刻を各ONU群に通知しておく。
また、ONU群毎に下り強度マップを指示する以外に、ONU単位で時刻情報を指示する方法を用いてもよい。
図18を参照して、OLTが送出する下りフレームの光信号強度と、ONUの受信状態を説明する。図18は、距離・通信ビットレート別のONU群が4グループ20A、20D、20B,20Cで、構成される状況を想定した信号構成である。図18で示すフレーム構成では、下り強度マップとして図17に示したPLOAMメッセージを利用する。図18(a)において、縦軸方向に光強度、横軸では経過時間を示す。横軸上では左端の時刻が最も早く、右に行くにつれて後の時刻に送出されるフレームである。図18は或る時刻における光ファイバ上の信号構成を示したものであり、右から左に向けてOLT10からONU20への送信信号が送られている状態を表す。
本実施例は、ONU20の通信距離がそれぞれ大きく異なっており、同一ネットワーク内に異なる通信ビットレートを持つONUが混在している場合を想定している。そのため、OLT10からONU20へ信号を発信する際には、ONU群単位にそれぞれのONU群に光信号が到着した段階でONUが正常に光信号を受光できるよう、宛先ONU群毎に光強度を調整して発信する必要がある。以下、これを実現するためのフレーム構成方法を説明する。
図18では各ONU群に対して、PON基本周期に従い125マイクロ秒基本フレームを単位として下りフレームを送信する。一つの125マイクロ秒基本フレーム毎に送信光強度および通信ビットレートが異なるため、ONU側での受信可否は125マイクロ秒基本フレーム毎に決まる。
ONU側では自身が受信すべき下り信号、および遮断すべき下り信号のタイミング(先頭位置)を下り強度マップ内の信号遮断開始時刻と次回信号受信開始時刻を用いて判断できる。図18にそって説明すると、OLT10は、システム立ち上げ時に各ONU群に対して、初回の信号受信開始時刻を通知しておく。ここではONU群20Aは時刻T1、ONU群20Dは時刻T2、ONU群20Bは時刻T3、ONU群20Cは時刻T4を初回の信号受信開始時刻とする。各ONUは、指定された時刻通りに下り信号の強度制御部(図5、2311)を光信号受信可能状態にして信号の受信を開始する。
ONU群20Aは、OLT10から光強度LA10000、通信ビットレート2.5Gbit/sで送信された信号5000−A1を、T1のタイミングから受信を開始する。ONU群20AのONUは、ヘッダ部5010内の下り強度マップ5020を読み取り、信号遮断開始時刻がT2、次回信号開始時刻がT9であることを認識する。これらの時刻情報は、OLT10が信号5000−A1を送信する前に、OLT10内の送信計画管理部(図4、12108)がパケットバッファ(図4、12101)を監視した結果に基づき決定されている。パケットバッファを監視し、あるONU群の次回信号送信時刻の決定を行なう時点でONU群宛のフレームがパケットバッファ内に存在していない場合は、次回信号送信時刻をパケットバッファ内のその他のONU群宛フレームの処理に要する時間の経過後に設定しておく。
ONU群20Aは、ヘッダ5010の解析および下り強度マップ5020からの時刻情報取得後、ペイロード部5030を読み取り、ユーザ信号の処理を行なう。ここで、ペイロード5030内は、複数のGEMフレームで構成され、1つの125μ秒基本フレームのペイロード内にONU群20Aが収容する複数のONUに対してのユーザ信号が含まれている。各ユーザ信号の判別は、のGEMヘッダ内のPort−IDにより行ない、GEMフレームが自装置宛であるかを判別し、自装置宛のGEMフレームのペイロードのみ処理を行ない、他装置宛のペイロードは廃棄する。
ペイロード5030の処理完了後、ONU群20Aは、下り強度マップ5020で指定された信号遮断開始時T2から信号のブロックを開始し、次回信号開始時刻T9からブロックを解除して再び信号を受信する。
ONU群20DにおいてもONU群20Aと同様であり、ONU群20Dは、光強度LA10000、通信ビットレート10Gbit/sの自グループ宛の信号5000−D1を時刻T2から受信を開始し、信号5000−D1の処理完了後、T3から信号のブロックを開始、次回信号受信開始時刻Tx(図示せず)から信号のブロックを解除し、再び信号の受信を開始する。
ONU群20B、ONU群20CにおいてもONU群20A、ONU群20Dと信号の光強度が異なる以外は同様であるため説明は省略する。
次に図19と図20を用いて、通常運用中にOLT10が各ONU群宛の利用帯域をパケットバッファの監視結果に基づき、動的に調整しながらフレーム送信を行なうまでの流れを説明する。
図19の説明に先立ち、既にいくつかの下り信号フレームがOLT10からONU20へ送出された状態を想定する。ONU20では、前回受信フレームの下り光強度マップから各ONU群は信号受信開始時刻を把握しており、ONU群20Aは時刻A1、ONU群20Bは時刻B1、ONU群20Cは時刻C1、ONU群20Dは時刻D1の時刻にそれぞれ受信を開始する。さらに各ONU群に対し、今回新たに送出する下り信号における利用帯域割合を、それぞれONU群20Aは5.0Mbytes、ONU群20Bは8.0Mbytes、ONU群20Cは2.0Mbytes、ONU群Dは3.0Mbytesに設定した状態を示す。
以上の条件において、OLT10がアクセス網90から今回送信するフレームに続いてONU宛てに送出するデータを受信し、パケットバッファ12101−1〜3に一度蓄える。新たに受信したこれらのデータについて、送信計画決定部12108がバッファ内の監視を行ない、ONU群毎に分割したバッファへ格納する。その後、ONU群毎に送出待ちデータ量を確認する。ONU毎のキュー長を取得した結果を図19Aに示す。図19Aにおいて、ONU毎のキュー長に関するデータは、送信計画決定部12108に保持する。図19Aでは、ONU群20A向けにキュー長(Q−20A),ONU群20B向けのキュー長(Q−20B)、ONU群20C向けに送信すべきデータは無く、ONU群20D向けデータがキュー長(Q−20D)蓄積されている。
取得したキュー長から送信計画決定部12108は、次回送信時の各ONU群の利用帯域割合を決定する。図19Aのキュー長を参照した場合、図19Bにおいて、ONU群20Aには4.0Mbytes、ONU群20Bには10.0Mbytes、ONU群20Cには0Mbytes、ONU群20Dには3.0Mbytesと決定する。この利用帯域設定はバッファ監視時のキュー長の比率に基づいて決定される。
OLT10は、取得キュー長と次回送信時の利用帯域設定から各ONU群に対する信号送信計画を算出し、算出した結果を下り強度マップに反映する。今回のOLT10のフレーム送信動作における下り強度マップ用の情報を図20に示す。図20において、ONU群20Aの信号遮断開始時刻はA2、次回信号受信開始時刻はA3、ONU群20Bの信号遮断開始時刻はB2、次回信号受信開始時刻はB3、ONU群20Cの信号遮断開始時刻はC2、次回信号受信開始時刻はC3、ONU群20Dの信号遮断開始時刻はD2、次回信号受信開始時刻はD3とする。これらの信号遮断開始時刻と次回信号入力開始時刻は下りフレームのヘッダ部にそれぞれ挿入されて発信される。
図19Bに戻って、図20の送信計画に基づいたOLT10の信号送信動作を説明する。まずONU群20Aは、時刻A1に信号を受信開始することが決定しており、今回受信したフレームのキュー長から信号遮断開始時刻はA2、次回信号受信開始時刻はA3であると算出する。OLT10は、ONU群20A宛のフレームF−a10をONU群20AがA1のタイミングで受信できるように送信を行なう。ONU群20AのONUが信号F−a1を受信するとヘッダ内の下り強度マップから時刻情報を読み取り、信号遮断開始時刻はA2であり、次回信号受信開始時刻A3であると認識する。
ONU群20Bは、ONU群20Aと同様に、信号F−b1を時刻B1から信号を受信開始し、B2に信号の遮断を開始、B3に次回信号を受信し始める。ここでONU群20B宛の信号については、予め設定されていた帯域上限内では全て送信しきれないキュー長であったため、余剰分については今回の送信動作では送信を行なわず、次回送信時まで保持する。次回送信動作時では取得したキュー長に、余剰フレーム分を加えて各時刻情報の算出を行なう。なお、ONU群20Bについて、図19Bでは8.0Mbytesから10.0Mbytesへ変更している。
ONU群20CもONU群20A、20Bと同様に時刻C1から受信開始し、C2に信号の遮断を開始、C3に次回信号を受信し始める。ここで今回のONU群20C宛の信号送出時に、次回下り信号にてONU群20C宛てに送出すべきデータを受信していない(キューに蓄積されていない)ので、次回の下り信号送信時にONU群20Cに割り当てる帯域として予め設定されている帯域最小値が割り当てられる(図16参照)。次回送信する下り信号では、ONU群20Cに対して下り光強度マップの通知用フレームのみ送信する(ペイロードにはユーザデータは含まない)。
ONU群20DもONU群20A、20B、20Cと同様に時刻D1から信号の受信開始し、D2に信号の遮断を開始、D3に次回信号を受信し始める。
以上のようにして各ONU群に対するトラフィック量に対して使用帯域を動的に割り当てることによって下り強度マップを効率的に伝達することができる。
次に、図21を用いて通常運用中のPONシステム1へ新規ONUを登録する際の手順を説明する。ここで、通常運用中の全ONUをONU20−normal、新規登録するONUをONU20−newとする。まずOLT10からONU20−normalへ通常運用を一時停止通知するための一時停止信号40000を送信する(S−60000)。一時停止信号40000を受け取ったONU20−normalは、信号内の通常運用再起動時刻を読み取り、通常運用再起動時刻まで全ての受信信号を遮断するようにO/E処理部2310を制御する(S−60010、S−60020)。この信号を受信することによって、これからONU20−newに対して行なうレンジング処理などの通常運用前の処理に起こる可能性のある、光強度の違いによるエラー受信やONUの光受信器の破壊や故障を防ぐことができる。また、後にONU20−newが送信するレンジングレスポンス信号40020などの上り信号とONU20−normalが送信する通常運用時の上り信号の衝突も回避できる。一時停止信号40000は例えば、通常の下りフレーム内の下り強度マップに次回信号受信開始時刻として通常運用再起動時刻を割り当てることで通知できる。
一時停止信号40000を送信した後、立ち上げ可能の旨の連絡を受けた設置業者もしくはユーザがONU20−newを起動させる(S−60030)。その後、OLT10がONU20−newに対し、図7〜図10の立上げ動作時と同様に、光強度や通信ビットレートを調整しながらレンジングリクエスト信号40010を送信してONU20−newからのレンジングレスポンス信号40020を待つ(S−60040)。この時、予め設置場所や該当ONUの距離情報や通信ビットレートなどが把握していれば、オペレータがOLT10に対して、送信するレンジングリクエスト信号40010の光強度や通信ビットレートを指定するように送信するように指示をしてもよい。レンジングリクエスト信号40010を受け取ったONU20−new(S−60050)はOLT10へレンジングレスポンス信号40020を送信する(S−60060)。レンジングレスポンス信号40020を受け取ったOLT10(S−60070)は送信したレンジングリクエスト信号40010の光強度と通信ビットレートにて図7〜図10の説明にて記載した通常運用までの処理(40030、40040、40050)をONU20−newとの間で行なう。その後、ONU20−newは通常運用再開時刻まで全ての受信信号を遮断するようにO/E処理部2310を制御して待機する(S−60080)。この時の処理内容は図7〜図10の説明にて記載した内容と重複するので省略する。この際、図12で示したテーブル情報にもONU20−newの情報が追加され、その後の下りフレーム生成や下り強度マップの作成に用いられる(S−60090)。
通常運用再開時刻になると、以後、OLT10、ONU20−normal、ONU20−newは通常運用を再開する(S−60100−OLT、S−60100−ONU)。