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JP5561201B2 - 電気コバルト又は電気ニッケルの製造方法 - Google Patents

電気コバルト又は電気ニッケルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、酸溶解性に優れた電気コバルト又は電気ニッケルの製造方法に関する。
コバルトは、携帯電話やノートパソコン等に使用されるリチウムイオン電池の電極材、航空機やプラント等に使用される特殊鋼の材料、磁性材料、石油精製時の触媒等としての用途を有している。
コバルトの精製方法としては、以下の方法が広く用いられている。まず、コバルトを含む鉱物等を選鉱し、精鉱を得る。次に、硫酸や塩酸を用いて、精鉱に含まれるコバルトを硫酸又は塩酸の溶液中に浸出させた後、溶媒抽出等の方法により浸出液からニッケル、鉄、亜鉛等の不純物を分離除去し、コバルト純液を得る。そして、この硫酸酸性又は塩酸酸性のコバルト純液を電解液に用い、コバルトを電解採取し、電気コバルトとして得る。
このうち、塩酸酸性の電解液を用いた電解は、硫酸酸性の電解液を用いた電解に比べて電解時の電槽電圧が低いので、電力コストを低減できるという利点を有するが、また同時に、電気コバルトの電着組織が非常に緻密で硬くなるという特徴を有する。このような特徴は、例えば、特殊鋼である耐熱合金の添加元素や磁性材料として用いる場合には、その特性に影響を及ぼすことはない。すなわち、上記用途では、電気コバルトを融点以上で熔融して使用するため、電気コバルトの電着組織が熔融に伴い解消されて均一な熔融体となるからである。
電気コバルトを用いて硫酸コバルトや塩化コバルト等のコバルト化成品を製造する場合には、電着組織が非常に緻密で硬いという特徴が電気コバルトの酸に対する溶解速度、すなわち、酸溶解性の良し悪しに影響を与え、結果として製品の生産性に影響を与え得る。しかしながら、上記のように一度融点以上に加熱して熔解し、次いで徐冷して均一且つ粗大な組織のメタルとし、これを酸溶解することは、設備投資やエネルギーコストがかかり工業的に著しく不利となる。
コバルト化成品の製造工程では、電気コバルトを硫酸や塩酸等の酸を満たした反応槽の中に入れ、60〜90℃の温度を保持しつつ、空気を吹き込みながら酸化し、化学的に溶解させて、硫酸コバルト溶液や塩化コバルト溶液を得る。次に、これらの溶液を濃縮して、硫酸コバルトや塩化コバルトの結晶を晶析させたり、これらの溶液に水酸化ナトリウム等のアルカリを加えて中和し、水酸化コバルトの沈殿を生成させたりすることで、目的とするコバルト化成品を製造する。この工程において、電気コバルトの酸溶解性が低いと、所定量の溶解液を得るためには溶解に長時間を要することになり、空気の吹き込み量を増加して酸化力を高める必要が生じ、結果として、設備規模の拡大や工程管理の手間の増大につながる。
酸溶解性に優れた金属を得る方法としては、コバルトと化学的性質の似たニッケルに関していくつかの報告がある。例えば、特許文献1には、ニッケルマット又は粗ニッケルの陽極と、金属ニッケル板陰極とを用い、硫黄含有化合物を含む硫酸塩−塩化物混合物又は単一塩化物の電解浴を用いる硫黄含有電解ニッケルの製造方法において、添加する硫黄含有化合物として四チオン酸塩を用い、且つ、電解に先立って短時間、逆電流を流すことで、ニッケルを溶解性の良い形態で電析させる方法が開示されている。また、特許文献2には、硫酸ニッケル溶液を電解して表面積の大きい粉末状の電着を得る方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、電解ニッケル中に硫黄が含有されるため、電解ニッケルの溶解後に硫黄を主成分とする未溶解残渣が発生するという問題があった。そのため、溶解後の後処理に手間を要したり、含有された微細な硫黄分等の未溶解残渣が液中に浮遊し、化成品を製造する際に巻き込まれて不純物の原因となったりする懸念があった。また、特許文献2に開示された方法により得られる電気ニッケルによれば、比表面積が大きいので、酸溶液に対する溶解性は向上するが、粉末の形状では、その隙間に電解液が巻き込まれ易くなる。電解液が巻き込まれると、電気ニッケルを熔解する等して製品に加工する際に、電解液中の不純物や電解液自体の成分も製品に含有される可能性があった。
特公平3−59145号公報 特許第3381793号公報
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、酸溶解性に優れるとともに、酸溶解時に未溶解残渣が生じ難く、表面が平滑で、且つ、高純度な電気コバルト及びその製造方法、並びに電気ニッケルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、電気コバルトの酸溶解性と、電気コバルト中に含まれる水素の濃度との間に一定の傾向があることを確認した。そして、本発明者らが、さらに研究を進めたところ、電解精製又は電解採取によってコバルトを電析させる際にある特定の方法の通電を行うことで、電気コバルト中に含まれる水素濃度が制御可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
(1) コバルト又はニッケルを含有する酸性溶液からなる電解液を用いて、電解採取又は電解精製により電気コバルト又は電気ニッケルを製造する方法であって、上記電解採取又は電解精製では、上記電解液に対して停電と通電とを反復する間欠通電を行うことを特徴とする電気コバルト又は電気ニッケルの製造方法。
(2) 上記間欠通電では、反復する停電時間が30〜60秒である(1)に記載の電気コバルト又は電気ニッケルの製造方法。
(3) 上記電解液のpHは、1.0〜3.5である(1)又は(2)に記載の電気コバルト又は電気ニッケルの製造方法。
(4) 水素濃度が20ppm以上であって、且つ硫黄濃度が1ppm以下であることを特徴とする電気コバルト。
本発明の電気コバルトによれば、酸溶解性に優れ、且つ、不純物である硫黄をほとんど含有しないので、品質の良い製品を効率良く生産することができる。
また、本発明の電気コバルト又は電気ニッケルの製造方法によれば、酸溶解性に優れるとともに、酸溶解時に未溶解残渣が生じ難く、表面が平滑で、且つ、高純度な電気コバルト又は電気ニッケルを得ることができる。
電気コバルトの溶解速度比と、該電気コバルト中の水素濃度(ppm)との関係を示す図である。 電気コバルト中の水素濃度(ppm)と、間欠通電にて反復する停電時間(分)との関係を示す図である。 電気コバルトの溶解速度比と、間欠通電にて反復する停電時間(分)との関係を示す図である。 電気コバルトの溶解速度比と、電気コバルト中の水素濃度(ppm)との関係を示す図である。 電解採取時の電流効率(%)と、電気コバルト中の水素濃度(ppm)との関係を示す図である。 電解採取時の電流効率(%)と、電気コバルトの溶解速度比との関係を示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本発明の電気コバルトは、水素濃度が20ppm以上であって、且つ硫黄濃度が1ppm以下であることを特徴とする。本発明では、電気コバルト中の水素濃度と、該電気コバルトの酸に対する溶解性との間に、一定の傾向があることを初めて見出した点に意義がある。本発明の電気コバルトによれば、酸に対して優れた溶解性を示すので、コバルト含有製品を効率良く生産することができる。なお、本明細書では、電気コバルト等とは、電解採取又は電解精製により得られたコバルトメタル等を意味する。
本発明の電気コバルトは、好ましくは、水素濃度が40ppm以上であり、より好ましくは60ppm以上である。電気コバルト中の水素濃度が高くなると、相対的に酸に対する溶解性は向上する。水素濃度が20ppm以上になると、電気コバルトの酸に対する溶解性が顕著に向上し、40ppm以上になると更に溶解し易くなり、60ppm以上では従来の2倍の溶解速度を示す。なお、上限は、特に限定されるものではない。しかし、60ppmを超えても溶解性はほとんど向上せず、そのまま維持される。
電気コバルト中の水素濃度が高くなると、電気コバルトの酸への溶解が促進される機構は明らかではないが、酸溶液中では、電気コバルト中に含有された水素原子とコバルト原子とが隣接する部分で電池反応が生じ、イオン化傾向の小さな水素がカソードとして、イオン化傾向の大きなコバルトがアノードとして働き、酸溶液中に溶出するのではないかと推測される。なお、電気コバルトが溶出した後の水素ガスは、気泡として気相に抜けるため、従来のように未溶解残渣を生じることで、製品が汚染されるおそれはないと考えられる。
本発明の電気コバルトは、好ましくは、硫黄濃度が0.5ppm以下であり、より好ましくは0.1ppm以下である。本発明の電気コバルトによれば、酸溶解時の未溶解残渣の要因となる硫黄をほとんど含有しないので、酸溶解後の後処理に手間を要したり、含有された微細な硫黄分が未溶解残渣となり液中に浮遊し、化成品を製造する際に巻き込まれて不純物の混入原因となったりする懸念がない。
本発明の電気コバルトは、酸に対する良好な溶解性を示すので、例えば、硫酸コバルトや塩化コバルト等のコバルト化成品の製造に用いた場合であっても、従来のように、所定量の溶解液を得るために長い時間を要したり、空気の吹き込み量を増加する等の酸化力を高めたりする必要がなく、設備規模の拡大や工程管理の手間も不要となる。
本発明の電気コバルトを製造する方法は、特に限定されるものではないが、コバルトを含有する酸性溶液からなる電解液に対して停電と通電とを反復する間欠通電を行う、電解採取又は電解精製により製造することが好ましい。この方法は、コバルトを電解によって製造する際に一般的に行われる通電方法、すなわち、連続的な通電を行う方法とは異なり、通電と停電とを繰り返す通電方法である。なお、本明細書では、一般的に行われる連続した通電を一方向通電というのに対して、停電と通電とを反復する通電を間欠通電ということとする。
水素濃度の高い電気コバルトを得る方法としては、例えば、一方向通電の電解において、電解液に水素ガスを吹き込むことにより、機械的に水素ガスをコバルト中に巻き込ませる方法が考えられるが、水素ガスを多量に吹き込んだとしても、コバルト中に水素ガスが巻き込まれる効率は極めて低く、実用的とはいえない。また、電解槽に水素ガスを吹き込むことは、電極のショートによる引火の可能性もあり、安全性の点で問題がある。さらに、水素ガスの吹き込みにより生じる大きな気泡では、電着物の表面が粗くなり、電解液も同時にコバルト中に巻き込まれる可能性が高い。電解液には、亜鉛や銅等の不純物、電解液自体の成分である硫黄や塩素が含まれているため、これらが電気コバルト中に含有されることは、製品の品質低下につながり、好ましくない。
本発明者らは、電解採取又は電解精製により電気コバルトを製造する際に、コバルトを含有する酸性溶液からなる電解液に対して、停電と通電とを反復する間欠通電を行うことで、コバルト中に効率良く水素を含有させ得ることを見出した。電解によって発生する初期の水素は、微細且つ化学的に極めて活性であることが知られている。通電と停電とを繰り返すと、初期の活性な水素が頻繁に発生することになるため、これが電着したコバルトの内部に拡散するものと考えられる。
本発明の製造方法では、コバルトを含有する酸性溶液を電解液として用いる。電解液として用いるコバルトを含有する酸性溶液は、塩酸浴であっても、硫酸浴であってもよく、特に限定されない。また、酸性溶液のpHは、好ましくは1.0〜3.5の範囲内であり、より好ましくは1.2〜3.0の範囲内である。電解液のpHが上記範囲内であれば、より酸溶解性の高い電気コバルトを得ることができる。なお、電解液のpHが1.0未満であると、電着した電気コバルトが直ちに再溶解したり、水素が過剰に発生したりする結果、カソードの電流効率が50%程度にまで著しく低下し、生産性に大きな影響を与える可能性がある。また、電解液のpHが3.5を超えると、電解中のカソード表面において、局部的にpHが更に上昇し、コバルトイオンが金属と水酸化物の不均一な混合物を生成し、純粋な電気コバルトが得られない場合がある。
電解液のpHを調整する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、市販のpH計にて電解液のpHを測定しながら、リサイクルした電気コバルトを添加して電解液中の遊離酸を中和してpHを上げたり、塩酸等の酸を添加してpHを下げたりするとよい。
本発明の製造方法において好ましい電解液のコバルト濃度は、上記pHや後述する停電と通電との反復周期によって異なるため、一概に規定することはできない。例えば、pHとコバルト濃度の両方が低い場合には、水素が過剰に発生し、カソードの電流効率が低下するため好ましくなく、一方、pHとコバルト濃度の両方が高い場合には、水素の発生量が減少し、その結果、溶解性が低下するため好ましくない。好ましい一例としては、電解液のpHが1〜1.5の範囲内であれば、コバルト濃度は50g/l程度である。
本発明の製造方法では、コバルトを含有する酸性溶液からなる電解液に対して、停電と通電とを1つのサイクルとして反復する間欠通電を行う。この間欠通電では、反復する停電時間が1サイクルにつき30〜60秒の範囲内であるか、或いは6〜12分の範囲内であることが好ましく、30〜60秒の範囲内であることがより好ましい。反復する停電時間が上記範囲内であれば、従来の一方向通電の電解により得られる電気コバルトよりも酸に対する溶解性の良い電気コバルトを得ることができる。
反復する停電時間を上記範囲内とすることで、酸に対する溶解性の良い電気コバルトが得られる理由は明らかではないが、例えば、以下のように推測することができる。コバルトの電解時には、析出の電位から若干の水素がカソード上で発生する。カソードの表面では、電解槽への電解液の通液や通電に伴う磁場や電極での反応により、電解槽内の電解液が上昇流として流れている。この上昇流は通電に伴って生じるため、停電すると消滅する。上述のように、電解によって発生する初期の水素は、微細且つ化学的に極めて活性であるため、発生と同時にコバルト内に拡散しようとする傾向があり、その結果、水素原子とコバルト原子とが隣接する電池反応の生じ易い合金が形成したのではないかと考えられる。これに対して、従来の一般的な一方向通電では、発生した水素は上昇流によって液面に運ばれるため、コバルト内に拡散することは難しいと考えられる。
また、1サイクルの長さを短くして短い時間の停電を繰り返す通電を行った場合、活性な水素がカソード上で次々と発生するので、電着したコバルトの内部に拡散する量が多くなり、水素濃度が高まり、酸溶解性が向上すると考えられる。一方、通電する電気量が同じであっても、1サイクルの長さを長くしてその中で長い時間の停電を繰り返す通電を行った場合、長時間の停電によりカソード表面の上昇流が止まり、カソード表面に析出して付着した水素が液面に運ばれることも少なくなり、付着時間が長くなるため、コバルト内に入り易くなり、拡散するのではないかと考えられる。このような理由で、停電時間の短い場合と長い場合において、水素濃度が高く、酸溶解性が良好な電気コバルトが得られるものと推測される。
本発明の製造方法では、電解に用いる電流密度は、特に規定されるものではないが、電析表面が平滑となる範囲であることが好ましい。電析表面が平滑となる電流密度の範囲は、他の電解条件の影響もあるため、一概に定めることはできないが、一般には200〜1500A/mの範囲内となる。なお、電流密度が高すぎると、カソード表面での限界電流密度を超え、水素の発生が過度に優先され、電力コストが著しく増加するので好ましくない。一方、電流密度が低すぎると、生産性が低下するので好ましくない。
電析表面が平滑でないと、電解中に不純物や電解液を巻き込み易く、その結果、純度の低い電気コバルトとなったり、電析表面のデンドライトが長く伸び、ショートが発生したりする場合があるため、好ましくない。また、最終的に得られる電気コバルトの表面が平滑でないと、製品に加工する際のハンドリング性が低下するため、やはり好ましくない。最終的に得られる電気コバルトの表面粗さは、接触式表面粗さ計を用い、JIS B0601(2001)に準拠した方法により測定した最大高さ(Rmax)が30μm以下であることが好ましい。
本発明の製造方法では、カソードの電流効率は、70〜95%の範囲内であることが好ましい。ここで、電流効率とは、通過した電流のうち、目的とする電極反応に使用された電流の割合を意味し、一般に、通電電気量から算出される理論電着量に対する実際の電着量の割合を百分率で表す。カソードの電流効率が上記範囲内であれば、水素濃度が20ppm以上の電気コバルトを得ることができる。一方、カソード電流効率が95%を超えると、電気コバルト中の水素濃度は20ppm未満となる。このことから、電気コバルトを製造する際の電流効率を測定することで、得られる電気コバルトの酸溶解性の良否を判断することができると考えられる。この手法によれば、最終的に得られた電気コバルト中の水素濃度を測定しなくても、製造時の電流効率を測定するだけで、簡単にその電気コバルトの酸溶解性の良否を判断することができる。なお、カソード電流効率が低い場合には、水素濃度が高い電気コバルトが得られることが予想されるが、同時に生産性が著しく低下するおそれがあるため、70%以上であることが望ましい。
なお、本明細書では、コバルトについて詳細に述べたが、本発明の製造方法は、コバルトと化学的性質の似たニッケルについても容易に応用することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
[酸溶解性の評価]
酸溶解性の良否は、電気コバルトの単位面積あたりの溶解速度を指標として判断した。なお、従来から工業的に生産されている電気コバルトの単位面積あたりの溶解速度を評価の基準(1倍)とした。
(1)評価基準品の製造
厚さ8mmのコバルト板を縦60mm×横60mmのサイズに切断し、電極面積が片面のみ20cm(縦40mm×横50mm)となるように、その他の部分をめっき用マスキングテープでマスキングしたものをアノードとした。また、厚さ0.5mmのチタン板を縦60mm×横60mmのサイズに切断し、電極面積が片面のみ20cm(縦40mm×横50mm)となるように、その他の部分をめっき用マスキングテープでマスキングしたものをカソードとした。電解液は、試薬の塩化コバルトを純水に溶解して、液中のコバルト濃度が55g/Lとなるように調整した後、さらに、塩酸を用いてpHが1.2となるように調整したものを用いた。次に、上記アノードと上記カソードとを各1枚、容量2リットルの塩化ビニール製の容器(電解槽)に入れ、対面したアノードカソード間の極板間距離が60mmとなるように配置した。そして、この電解槽に50℃に加温した上記電解液を1.8リットル入れ、温度を維持した状態でスターラーと撹拌子とを用いて、自然に停止しない程度の回転数(10〜20回転/分間)でゆっくりと撹拌した。カソードの電流密度が270A/mとなるように、0.54Aの電流を48時間通電した。48時間の通電後、通電を停止してカソードを引きあげ、チタン板の表面に電着したコバルトをハンマーで衝撃を与えてチタン板から剥離した。剥離したコバルトは、純水で洗浄した後、さらにアルコールで洗浄し、ドライヤーの冷風で乾燥させて、評価基準品である電気コバルトを得た。
(2)溶解速度測定用試料の調製
電気コバルトを、面積が1.0〜3.0cmの範囲となるように切断機を用いて切断した。次いで、切断した電気コバルトを、カソードに接した面が研磨面となるようにプラスチック製のホルダーの底に入れ、室温硬化型のエポキシ樹脂を充填して型埋めした。24時間静置して固結させた後、型抜きして固結サンプルを得た。得られた固結サンプルを自動研磨機(製品名:エコメット,ビューラー社製)にセットし、粗さ320番の耐水性研磨紙を利用して、水とアルミナとのスラリーを用いて回転させながら湿式研磨した。粗さ320番の研磨紙で研磨した固結サンプルは、次に、粗さ1000番の研磨紙に交換した自動研磨機で、同様に傷が見えなくなるまで湿式研磨した。そしてさらに、粗さ2400番の研磨紙に交換した自動研磨機で、目視で傷が確認できなくなるまで研磨した後、研磨により露出した部分の寸法を測定し、表面積を算出した。研磨後の固結サンプルは、その表面を純水で十分に洗浄し、さらにエタノールで洗浄して脱脂した後、ドライヤーの冷風で乾燥させ、これを溶解速度測定用サンプルとした。
(3)溶解速度の測定
溶解速度の測定には、22質量%濃度の硫酸200mlを用いた。なお、この硫酸の濃度は、電気コバルトが完全に溶解した場合であっても硫酸コバルトが飽和濃度に達しないように考慮し、設定したものである。90℃に加温した上記硫酸に、上記溶解速度測定用サンプルを入れ、温度を維持した状態でスターラーと撹拌子とで撹拌しながら、3時間浸漬させた。その後、サンプルを取り出し、その表面を純水で洗浄した。次いで、この洗浄液と、上記サンプルを取り出した後の溶液とを回収し、総量を測定するとともに、これらの溶液中の電気コバルト濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)法により測定した。そして、上記サンプルから溶出した電気コバルトの量から、単位面積あたりの電気コバルトの溶解速度を算出した。
(4)水素濃度の測定
電気コバルト中の水素濃度は、株式会社堀場製作所製の水素分析装置(EMGA−921)を用いて測定した。なお、水素濃度測定用サンプルには、上記(2)にて切断した電気コバルトの残りの部分を用いた。
(5)硫黄濃度の測定
電気コバルト中の硫黄濃度は、グロー放電質量分析(GD−MS)法により測定した。なお、硫黄濃度測定用サンプルには、上記(2)にて切断した電気コバルトの残りの部分を用いた。
<試験例1>
電気コバルトの酸溶解性と、該電気コバルト中の水素濃度との関係について検討した。
試験には、電流密度や電解液のコバルト濃度、通電方法等の電解条件を変えることにより製造した5種類の電気コバルト、及びめっき陽極用として市販されている電気コバルトを用いた。これらの電気コバルトは、上記方法により溶解速度を測定した後、上記(1)に記載の従来法、すなわち一方向通電を行うことにより工業的に電解採取して製造した電気コバルト(水素濃度:3ppm)を評価基準品に用い、該評価基準品の硫酸に対する溶解速度(90g/m/hr)を1とした場合の溶解速度比を算出し、その値をもって酸溶解性の良否を判断した。また、上記方法により電気コバルト中の水素濃度についても測定した。従来の電気コバルトを基準とした電気コバルトの酸に対する溶解速度比と、電気コバルト中の水素濃度(ppm)との関係を図1に示す。
図1に示すように、電気コバルトの酸溶解性は、該電気コバルト中の水素濃度が高くなるにしたがって向上した。特に、水素濃度が20ppmを超えると溶解性が顕著に向上し、40ppmを超えると更に溶解し易くなり、60ppm付近では従来の電気コバルトの2倍以上の溶解性を示した。そして、水素濃度が60ppmを超えると、それ以降は水素濃度が高くても溶解性に変化は認められなかった。なお、市販の電気コバルト中の水素濃度は、5ppmであり、その酸溶解性は、上記(1)に記載の従来法により電解採取して製造した電気コバルトと同程度であった。
このことから、電気コバルトの酸溶解性と、該電気コバルト中の水素濃度との間には、ある一定の傾向があり、電気コバルト中の水素濃度を高めることで、電気コバルトの酸溶解性を向上できることが明らかとなった。
<試験例2>
一方向通電を行う従来法により工業的に電解採取して製造した電気コバルトと、停電と通電とを反復する間欠通電を行い電解採取して製造した方法により得られた電気コバルトとを用いて、間欠通電が電気コバルト中の水素濃度に及ぼす効果を検討した。
電解液は、試薬の塩化コバルトを用いて液中のコバルト濃度が55g/Lとなるように調整した後、さらに、塩酸を用いてpHが1.2となるように調整したものを用いた。次に、上記(1)の評価基準品の製造と同様の方法にて調製したアノードとカソードとを各1枚、容量1.5リットルの塩化ビニール製の容器(電解槽)に入れ、対面したアノードカソード間の極板間距離が60mmとなるように配置し、通電中は、タイマーを介して自動的に所定の時間、停電と通電とを繰り返すように配線した。なお、全電解時間に占める通電時間の割合は80〜90%となるように調整した。そして、この電解槽に50℃に加温した上記電解液を1リットル入れ、温度を維持した状態でスターラーと撹拌子とを用いて、自然に停止しない程度の回転数(10〜20回転/分間)でゆっくりと撹拌させながら、カソードの電流密度が270A/mとなるように、0.54Aの電流を48時間通電した。なお、電解の途中、液量を観察し、蒸発により減少した場合には、その都度純水を補給し、一定の液量を維持するようにした。
48時間の通電後、通電を停止してカソードを引きあげ、チタン板の表面に電着したコバルトをハンマーで衝撃を与えてチタン板から剥離した。剥離したコバルトは、純水で洗浄した後、さらにアルコールで洗浄し、ドライヤーの冷風で乾燥させて、電気コバルトを得た。このようにして得た電気コバルト中の水素濃度を上記方法により測定した。電気コバルト中の水素濃度(ppm)と、間欠通電にて反復する停電時間(分)との関係を図2に示す。なお、比較対照として使用した、一方向通電を行う従来法により工業的に電解採取して製造した電気コバルト中の水素濃度は、3ppmであった。
図2に示すように、停電と通電とを反復する間欠通電を行うことにより得られた電気コバルト中の水素濃度は、一方向通電を行う従来法により得られた電気コバルト中の水素濃度に比べて高かった。また、電気コバルト中の水素濃度は、停電時間の長さ、すなわち、通電と停電との繰り返し周期により異なり、特に、停電時間が0.5〜1分前後、また、6分を超えて10〜12分前後とすることで、水素濃度の高い電気コバルトが得られた。
このことから、コバルトを含有する酸性溶液からなる電解液に対して停電と通電とを反復する間欠通電を行うことで、水素濃度の高い電気コバルトが得られることが明らかとなった。また、通電と停電との繰り返し周期の長さを調整することで、より高い水素濃度の電気コバルトが得られることも明らかとなった。
<試験例3>
一方向通電を行う従来法により工業的に電解採取して製造した電気コバルトと、コバルトを含有する酸性溶液からなる電解液に対して停電と通電とを反復する間欠通電を行い電解採取して製造した電気コバルトとを用いて、間欠通電が電気コバルトの酸溶解性に及ぼす効果を検討した。
電解液は、試薬の塩化コバルトを用いて液中のコバルト濃度が55g/Lとなるように調整した後、さらに、塩酸を用いてpHが1.2となるように調整したものを用いた。次に、上記(1)の評価基準品の製造と同様の方法にて調製したアノードとカソードとを各1枚、容量1.5リットルの塩化ビニール製の容器(電解槽)に入れ、対面したアノードカソード間の極板間距離が60mmとなるように配置し、通電中は、タイマーを介して自動的に所定の時間、停電と通電とを繰り返すように配線した。なお、全電解時間に占める通電時間の割合は80〜90%となるように調整した。そして、この電解槽に50℃に加温した上記電解始液を1リットル入れ、温度を維持した状態でスターラーと撹拌子とを用いて、自然に停止しない程度の回転数(10〜20回転/分間)でゆっくりと撹拌させながら、カソードの電流密度が270A/mとなるように、0.54Aの電流を48時間通電した。なお、電解の途中、液量を観察し、蒸発により減少した場合には、その都度純水を補給し、一定の液量を維持するようにした。
48時間の通電後、通電を停止してカソードを引きあげ、チタン板の表面に電着したコバルトをハンマーで衝撃を与えてチタン板から剥離した。剥離したコバルトは、純水で洗浄した後、さらにアルコールで洗浄し、ドライヤーの冷風で乾燥させて、電気コバルトを得た。このようにして得た電気コバルトは、上記方法により溶解速度を測定し、上記(1)に記載の一方向通電を行うことにより工業的に電解採取して製造した電気コバルトを評価基準品に用い、該評価基準品の硫酸に対する溶解速度(90g/m/hr)を1とした場合の溶解速度比を算出し、その値をもって酸溶解性の良否を判断した。従来の電気コバルトを基準とした電気コバルトの酸に対する溶解速度比と、間欠通電にて反復する停電時間(分)との関係を図3に示す。
図3に示すように、停電と通電とを反復する間欠通電を行うことにより得られた電気コバルトは、一方向通電を行うことにより得られた従来の電気コバルトに比べて、酸に対する溶解性が優れていた。また、停電時間が0.5分程度と短い場合には、非常に高い溶解性を示す電気コバルトが得られ、停電時間が3分程度になるとその溶解性は低下する傾向を示した。そして、停電時間が10分程度まで長くなると、再び溶解性の高い電気コバルトが得られるようになった。
このことから、コバルトを含有する酸性溶液からなる電解液に対して、停電と通電とを反復する間欠通電を行うことにより、酸溶解性に優れた電気コバルトが得られることが明らかとなった。また、停電時間をある特定の短い時間とするか、或いは、ある特定の長い時間とすることで、より優れた酸溶解性を示す電気コバルトが得られることも明らかとなった。
<試験例4>
一方向通電を行う従来法により工業的に電解採取して製造した電気コバルトと、コバルトを含有する酸性溶液からなる電解液に対して停電と通電とを反復する間欠通電を行い電解採取して製造した電気コバルトとを用いて、電解時の電流効率が電気コバルト中の水素濃度、及び電気コバルトの酸溶解性に及ぼす効果を検討した。また、得られた電気コバルトについて、表面の平滑性を評価した。
電解液は、試薬の塩化コバルトを用いて液中のコバルト濃度が55g/Lとなるように調整した後、さらに、塩酸を用いてpHが1.2となるように調整したものを用いた。次に、上記(1)の評価基準品の製造と同様の方法にて調製したアノードとカソードとを各1枚、容量1.5リットルの塩化ビニール製の容器(電解槽)に入れ、対面したアノードカソード間の極板間距離が60mmとなるように配置し、通電中は、タイマーを介して自動的に所定の時間、停電と通電とを繰り返すように配線した。なお、全電解時間に占める通電時間の割合は85〜100%となるように調整した。そして、この電解槽に50℃に加温した上記電解始液を1リットル入れ、温度を維持した状態でスターラーと撹拌子とを用いて、自然に停止しない程度の回転数(10〜20回転/分間)でゆっくりと撹拌させながら、カソードの電流密度が270A/mとなるように、0.54Aの電流を48時間通電した。なお、電解の途中、液量を観察し、蒸発により減少した場合には、その都度純水を補給し、一定の液量を維持するようにした。
48時間の通電後、通電を停止してカソードを引きあげ、チタン板の表面に電着したコバルトをハンマーで衝撃を与えてチタン板から剥離した。剥離したコバルトは、純水で洗浄した後、さらにアルコールで洗浄し、ドライヤーの冷風で乾燥させて、電気コバルトを得た。このようにして得られた電気コバルト中の水素濃度を上記方法により測定した。また、上記方法により電気コバルトの溶解速度を測定し、上記(1)に記載の一方向通電を行うことにより工業的に電解採取して製造した電気コバルトを評価基準品に用い、該評価基準品の硫酸に対する溶解速度(90g/m/hr)を1とした場合の溶解速度比を算出した。さらに、得られた電気コバルト表面の平滑性を評価した。なお、平滑であるか否かは、以下の方法により評価した。まず、目視にて2mm以上の直径を有する粒が表面に認められた場合には×と評価し、2mm以上の直径を有する粒が認められなかったものについて、測定装置に接触式表面粗さ計を用い、JIS B0601(2001)に準拠して測定した最大高さ(Rmax)が30μm以下であるものを○と評価し、最大高さが30μmを超えたものを△と評価した。
そして、従来の電気コバルトを基準とした電気コバルトの酸に対する溶解速度比と、電気コバルト中の水素濃度(ppm)との関係を図4に、電解時の電流効率と、電気コバルト中の水素濃度(ppm)との関係を図5に、電解時の電流効率と、従来の電気コバルトを基準とした電気コバルトの酸に対する溶解速度比との関係を図6に、電気コバルト表面の平滑性の評価結果を表1に示す。
Figure 0005561201
図4に示すように、電気コバルトの酸溶解性は該電気コバルト中の水素濃度が高くなるにしたがって向上した。図5,6に示すように、電流効率と、電気コバルト中の水素濃度及び電気コバルトの酸溶解性との間には、一定の関係性が認められた。このことから、電気コバルトを製造する際に電流効率を測定することで、得られる電気コバルトの酸溶解性の良否を判断することができるものと考えられる。
また、表1に示すように、本発明の製造方法によれば、表面が平滑な電気コバルトが得られることが確認された。
<参考試験例1>
電解液のpHが、電気コバルトの酸溶解性に及ぼす効果について検討した。
電解槽、アノード、及びカソードは、上記(1)の評価基準品の製造と同様の方法にて調製したものを使用した。また、電解液は、試薬の塩化コバルトを用いて液中のコバルト濃度が55g/Lとなるように調整した後、さらに、塩酸を用いてpHが0.5、1.2、2.0、3.0、又は3.8となるように調整したものを用いた。
上記アノードと上記カソードとを各1枚、容量1.5リットルの塩化ビニール製の容器(電解槽)に入れ、対面したアノードカソード間の極板間距離が60mmとなるように配置した。そして、この電解槽に50℃に加温した上記電解液を1リットル入れ、温度を維持した状態でスターラーと撹拌子とを用いて、自然に停止しない程度の回転数(10〜20回転/分間)でゆっくりと撹拌した。カソードの電流密度が270A/mとなるように、0.54Aの電流を一方向に48時間通電した。
48時間の通電後、通電を停止してカソードを引きあげ、チタン板の表面に電着したコバルトをハンマーで衝撃を与えてチタン板から剥離した。剥離したコバルトは、純水で洗浄した後、さらにアルコールで洗浄し、ドライヤーの冷風で乾燥させて、電気コバルトを得た。このようにして得た電気コバルトは、上記方法により溶解速度を測定し、一方向通電を行う従来法により工業的に電解採取して製造した電気コバルト(水素濃度:3ppm)の硫酸に対する溶解速度(90g/m/hr)を1とした場合の溶解速度比を算出し、その値をもって酸溶解性の良否を判断した。結果を表2に示す。
Figure 0005561201
pH0.5の電解液を用いて電解採取したところ、電着よりも水素の発生が優先し、電着物をほとんど得ることができなかった。また、pH3.8の電解液を用いて電解採取したところ、水酸化物が生成し始め、溶解速度比及びカソードの電流効率が低下した。これに対して、pH2.0及び3.0の電解液では、酸溶解性が良好な電気コバルトが得られた。pH1.2の電解液では、酸溶解性に変化はなかったが、水素濃度は高くなった。これらの結果は、一方向通電の場合のものであるが、間欠通電においても問題なく適用できると考えられる。したがって、間欠通電において、pH1.2〜3.0付近の電解液を用いることで、酸溶解性が良好な電気コバルトの製造が可能であると推測される。
<参考試験例2>
電解液への添加剤の有無が、電気コバルトの酸溶解性及びに及ぼす効果について検討した。
電解槽、アノード、及びカソードは、上記(1)の評価基準品の製造と同様の方法にて調製したものを使用した。また、電解液は、試薬の塩化コバルトを用いて液中のコバルト濃度が55g/Lとなるように調整した後、さらに、塩酸を用いてpHが1.2となるように調整したものに、チオ硫酸ナトリウムを適量添加したものを用いた。
そして、上記アノードと上記カソードとを各1枚、容量2リットルの塩化ビニール製の容器(電解槽)に入れ、対面したアノードカソード間の極板間距離が60mmとなるように配置した。そして、この電解槽に50℃に加温した上記電解液を1リットル入れ、温度を維持した状態でスターラーと撹拌子とを用いて、自然に停止しない程度の回転数(10〜20回転/分間)でゆっくりと撹拌した。カソードの電流密度が270A/mとなるように、0.54Aの電流を1時間通電した。
1時間の通電後、通電を停止してカソードを引きあげ、チタン板の表面に電着したコバルトをハンマーで衝撃を与えてチタン板から剥離した。剥離したコバルトは、純水で洗浄した後、さらにアルコールで洗浄し、ドライヤーの冷風で乾燥させて、電気コバルトCを得た。このようにして得た電気コバルトCは、上記方法により溶解速度を測定し、一方向通電を行う従来法により工業的に電解採取して製造した電気コバルトB(水素濃度:3ppm)の硫酸に対する溶解速度(90g/m/hr)を1とした場合の溶解速度比を算出し、その値をもって酸溶解性の良否を判断した。また、上記方法により水素濃度及び硫黄濃度を測定した。さらに、得られた電気コバルト表面の平滑性を評価した。なお、平滑であるか否かは、以下の方法により評価した。まず、目視にて2mm以上の直径を有する粒が表面に認められた場合には×と評価し、2mm以上の直径を有する粒が認められなかったものについて、測定装置に接触式表面粗さ計を用い、JIS B0601(2001)に準拠して測定した最大高さ(Rmax)が30μm以下であるものを○と評価し、最大高さが30μmを超えたものを△と評価した。結果を表3に示す。
Figure 0005561201
表3には、比較のために、試験例2において停電と通電とを反復する間欠通電を行うことにより得られた電気コバルトA(停電時間:0.5分)の結果を合わせて示した。電解液にチオ硫酸ナトリウムを添加した電気コバルトCの溶解速度は、添加しなかった電気コバルトBの1.7倍(157g/m/hr)と良好な結果を示した。しかしながら、硫黄濃度が160ppmと高く、硫酸への溶解後には、硫黄を主成分とする溶解残渣が発生したため、後処理に手間を要した。これに対して、チオ硫酸ナトリウムを含まない電解液を用いて、停電と通電とを反復する間欠通電を行って得られた電気コバルトAは、その表面が平滑であり、また、同じくチオ硫酸ナトリウムを含まない電解液を用いて、一方向通電を行って得られた電気コバルトBの1.5倍(135g/m/hr)の溶解速度を示し、さらに、不純物である硫黄濃度も0.1ppm未満と、非常に高純度であった。

Claims (4)

  1. コバルト又はニッケルを含有する酸性溶液からなる電解液を用いて、電解採取又は電解精製により電気コバルト又は電気ニッケルを製造する方法であって、
    前記電解採取又は電解精製では、全電解時間に占める通電時間の割合を80〜90%として、前記電解液に対して停電と通電とを反復する間欠通電を行うことを特徴とする電気コバルト又は電気ニッケルの製造方法。
  2. 前記間欠通電では、反復する停電時間が30〜60秒である請求項1に記載の電気コバルト又は電気ニッケルの製造方法。
  3. 前記電解液のpHは、1.0〜3.5である請求項1又は2に記載の電気コバルト又は電気ニッケルの製造方法。
  4. 水素濃度が20ppm以上であって、且つ硫黄濃度が1ppm以下であることを特徴とする電気コバルト。
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