本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
本発明の実施の形態における血圧情報測定装置は、容積補償法に基づいて血圧情報を測定する。本実施の形態において、「血圧情報」とは、循環器系の特徴を示す情報であり、少なくとも脈波を含み、脈波に加え、脈波より算出可能な指標、たとえば、最高血圧、最低血圧、平均血圧、脈拍数、AI(Augmentation Index)値等をさらに含む。
上記血圧情報の一つである脈波には、捉える対象の違いから圧脈波と容積脈波が存在する。圧脈波は、心臓の拍動に伴う血管内容積の変動をカフの容積変化に変換することで、脈波をカフの容積変化に伴うカフ圧の変動として捉えたものであり、圧力センサからの出力に基づいて得ることができる。容積脈波は、脈波を心臓の拍動に伴う血管内容積の変動として捉えたものであり、動脈容積センサからの出力に基づいて得ることができる。なお、血管内容積の変動は、血管内の血液組織量変動として捉えることが可能である。
本明細書において使用する血圧情報測定装置という用語は、脈波を取得する機能を少なくとも有する装置全般を指すものであり、より特定的には、容積補償法に従うため、光学的な手法により血液組織量変動を検出して容積脈波を取得する装置を指すものである。その意味において、取得される容積脈波をそのまま測定結果として出力するものに限られず、取得された容積脈波に基づいて算出あるいは計測される上述のような特定の指標のみを測定結果として出力するものや、容積脈波および特定の指標の両方を測定結果として出力するものをも含む。
従来の代表的な容積補償法式の血圧情報測定装置においては、特許第1547959号公報(特許文献1)に記載されたような方式でV0(制御目標値)を検出する。具体的には、最低血圧より十分低い圧力から最高血圧より十分高い圧力まで、カフを徐々に加圧する(加圧速度:3〜5mmHg/sec)。その期間内で、動脈容積変化信号(容積脈波の交流成分)の最大値を検出し、そのときの動脈容積信号(容積脈波の直流成分)をV0とする。これは、カフ圧が被験者の動脈内圧(血圧)と一致したときに、動脈壁が無負荷状態(外圧と動脈内圧とが平衡した状態)となり、動脈の容積変化が最も大きくなるという性質を利用した方法である。
一般的に、被験者の血圧値は事前にはわからないため、V0検出のためにカフを加圧する圧力範囲は、例えば40mmHgから280mmHgなど、幅広い被験者に適用可能である必要がある。そのため、V0検出まで約1分程度の時間を要する(例えば240mmHgを4mmHg/secで加圧した場合、60秒必要)。予め血圧値(最高血圧および最低血圧)がわかっていれば、カフを加圧する圧力範囲を限定できるため、V0検出に要する時間を短縮できる。
そこで、V0検出制御の前に、被測定者の最高血圧および最低血圧を推定することが考えられる。従来のオシロメトリック法を利用した場合、血圧測定に最低でも30秒程度必要であるため、全体の時間短縮にはつながらない。これに対し、測定時間を短縮する方法として、上述のように、動脈を圧迫するカフ圧を急速に加減圧し、動脈圧=カフ圧となった瞬間を示す脈波上の特徴点(動脈の閉塞開始/終了点)を検出し、その時点のカフ圧を血圧値として測定する方法がある(米国特許第6802816号(特許文献3))。
その原理は次の通りである。カフによって圧迫された動脈は、外圧すなわちカフ圧と血圧との大小関係に依存して容積変化を起こす。血圧は1心拍周期内で最高血圧と最低血圧の間で変化しているため、動脈の容積もそれに応じて変化する。
図1は、瞬時にカフ圧を加圧した場合における動脈容積信号の特性と最高血圧との関係を示す図である。図1(A)には、拍動に伴なう容積変化を示した容積脈波(基準脈波)が時間軸に沿って示されている。図1(B)には、カフ圧の変化と仮想的な動脈内圧との関係が、図1(A)と同一の時間軸に沿って示されている。図1(C)には、図1(A)と同一の時間軸に沿って、カフ圧の変化に伴なう動脈容積信号の変化(計測用脈波)の典型例が示されている。
図1(B)に示すとおり、カフ圧が動脈内圧より大きいと、動脈がカフ圧によって一時的に押しつぶされる。そうすると、図1(C)に示されるように、検出される動脈容積の波形も平坦になる。この区間を動脈の「閉塞区間」と呼ぶ。
図1(B),(C)を参照して、カフ圧を最高血圧(SYS)より高い値から減圧した時の閉塞終了点Ps(反対にカフ圧を最低血圧より低い値から加圧した時は「閉塞開始点」と呼ぶ。)は、カフ圧が1心拍内のある時点の血圧と一致する瞬間である。したがって、その特徴点Psを検出することで、その時点での血圧値BPxを測定することができる。以下、このようにして測定された血圧値を「瞬時血圧値」ともいう。
また、図1(A)に示すような、基準脈波としてカフ(空気袋)の上流側で検出した動脈容積信号を同時に記録することで、閉塞終了点Psにおける血圧値と動脈容積の関係を求めることができるとともに、閉塞終了点Psが1心拍周期中のどの時点で発生したか(すなわち、得られた瞬時血圧値BPxが1心拍周期中のどの時点の血圧値か)を測ることができる。したがって、閉塞終了点Psが最高血圧の時点Pbで発生するようにカフ圧を適切に制御すれば、最高血圧が測定できる。
同様に、閉塞終了点Psが最低血圧(DIA)の時点Paで発生するようにカフ圧を適切に制御すれば、最低血圧も測定できる。瞬時にカフ圧を加圧した場合における動脈容積信号の特性と最低血圧との関係を図2に示す。図2(A)〜(C)は、それぞれ、図1(A)〜(C)と同様であるものとする。
しかし、血圧値や脈拍間隔は常に変動しているため、ちょうど最高血圧や最低血圧の時点Pa,Pbで血圧と一致するようにカフ圧を制御するのは非常に困難である。そのため、このような技術を用いても、カフ圧の加減圧のタイミング調整に時間がかかるため、測定時間が長くなる。
そこで、本発明においては、加減圧のタイミングを調整するなどして最高血圧と最低血圧を測定するのではなく、得られた瞬時血圧値と閉塞終了点の情報を利用して、V0検出に使用するカフ圧の制御範囲(圧力範囲)を決定する。
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、閉塞開始点および閉塞終了点を総称して「閉塞端点」ともいう。
<外観および構成について>
(外観について)
図3は、本発明の実施の形態に係る血圧情報測定装置1の外観斜視図である。血圧情報測定装置1の外観は、一般的な血圧計と同様である。
図3を参照して、血圧情報測定装置1は、本体部10と、被測定者の手首に巻き付け可能なカフ20とを備える。本体部10はカフ20に取り付けられている。本体部10の表面には、たとえば液晶等により構成される表示部40と、ユーザ(被測定者)からの指示を受付けるための操作部41とが配置されている。操作部41は、複数のスイッチを含む。
なお、本実施の形態において、カフ20は、被測定者の手首に装着されるものとして説明する。しかしながら、カフ20が装着される部位(測定部位)は、手首に限定されるものではなく、たとえば、上腕であってもよい。
また、本実施の形態における血圧情報測定装置1は、図3に示されるように、本体部10がカフ20に取り付けられた形態を例に説明する。しかしながら、上腕式の血圧情報測定装置で採用されているような、本体部10とカフ20とがエアチューブ(図5においてエアチューブ31)によって接続される形態のものであってもよい。
(ハードウェア構成について)
図4は、本発明の実施の形態に係る血圧情報測定装置1のハードウェア構成を表わすブロック図である。
図4を参照して、血圧情報測定装置1のカフ20は、空気袋21と、2つの動脈容積センサ70A,70Bとを含む。動脈容積センサ70Aは、カフ20の圧迫に伴なう動脈容積の変化を検出するために設けられ、発光素子71Aと受光素子72Aとを有する。動脈容積センサ70Bは、カフ20の圧迫の影響を受けることなく動脈の拍動に伴なう動脈容積の変化を検出するために設けられ、発光素子71Bと受光素子72Bとを有する。
各発光素子71A,71Bは、動脈に対して光を照射し、各受光素子72A,72Bは、それぞれ、発光素子71A,71Bによって照射された光の動脈の透過光または反射光を受光する。
図5は、動脈容積センサ70Aおよび動脈容積センサ70Bの配置例を示す図である。図5を参照して、動脈容積センサ70Aを構成する発光素子71Aおよび受光素子72Aは、たとえば、空気袋21の内側に所定の間隔に配置される。動脈容積センサ70Bを構成する発光素子71Bおよび受光素子72Bは、カフ20の上流側、すなわち、測定部位の表面のうち、カフ20により圧迫される部分の外側かつ心臓に近い部分に配置されればよい。本実施の形態では、動脈容積センサ70Bの少なくとも一部が、カフ20に所定の間隔で接着されているものとするが、このような形態に限らず、動脈容積センサ70Bは、カフ20と別に設けられ、ユーザにより配置されてもよい。
なお、動脈容積センサ70は、動脈の容積が検出できるものであればよく、インピーダンスセンサ(インピーダンスプレスチモグラフ)により動脈の容積を検出するものであってもよい。その場合、各発光素子71A,Bおよび各受光素子72A,Bに代えて、動脈を含む部位のインピーダンスを検出するための複数の電極(電流印加用の電極対、および、電圧検知用の電極対)が含まれる。
空気袋21は、エアチューブ31を介して、エア系30に接続される。
本体部10は、上述の表示部40および操作部41に加え、エア系30と、各部を集中的に制御し、各種演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)100と、CPU100に所定の動作をさせるプログラムや各種データを記憶するためのメモリ部42と、測定された血圧情報を記憶するための不揮発性メモリ(たとえばフラッシュメモリ)43と、CPU100に電力を供給するための電源44と、計時動作を行なう計時部45と、着脱可能な記録媒体132からプログラムやデータの読み出しおよび書き込みをするためのインターフェイス部46とを含む。
操作部41は、電源をONまたはOFFするための指示の入力を受付ける電源スイッチ41Aと、測定開始の指示を受付けるための測定スイッチ41Bと、測定停止の指示を受付けるための停止スイッチ41Cと、フラッシュメモリ43に記録された血圧などの情報を読み出す指示を受付けるためのメモリスイッチ41Dとを有する。
エア系30は、空気袋21内の圧力(カフ圧)を検出するための圧力センサ32と、カフ圧を加圧するために、空気袋21に空気を供給するためのポンプ51と、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために開閉される弁52とを含む。
本体部10は、発光素子駆動回路73A,73Bと、動脈容積検出回路74A,74Bと、上記エア系30に関連して、発振回路33と、ポンプ駆動回路53と、弁駆動回路54とをさらに含む。
発光素子駆動回路73Aは、CPU100からの指令信号に応じて発光素子71Aを所定のタイミングで発光させる。同様に、発光素子駆動回路73Bは、CPU100からの指令信号に応じて発光素子71Bを所定のタイミングで発光させる。
動脈容積検出回路74Aは、受光素子72Aからの出力を電圧値に変換することで動脈容積を検知する。同様に、動脈容積検出回路74Bは、受光素子72Bからの出力を電圧値に変換することで動脈容積を検知する。
なお、本実施の形態では、2つの発光素子71A,71Bに対して、それぞれ2つの発光素子駆動回路73A,73Bを設けたが、1つの発光素子駆動回路で各発行素子71A,71Bを駆動させることとしてもよい。同様に、2つの受光素子72A,72Bからの信号を1つの動脈容積検出回路が受け付けて、それぞれを区別してCPU100に出力してもよい。
圧力センサ32は、静電容量形の圧力センサであり、カフ圧により容量値が変化する。発振回路33は、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号をCPU100に出力する。CPU100は、発振回路33から得られる信号を圧力に変換し圧力を検知する。ポンプ駆動回路53は、ポンプ51の駆動をCPU100から与えられる制御信号に基づいて制御する。弁駆動回路54は弁52の開閉制御をCPU100から与えられる制御信号に基づいて行なう。
ポンプ51、弁52、ポンプ駆動回路53および弁駆動回路54は、カフ20内の圧力を加圧および減圧により調整するための調整機構50を構成する。なお、調整機構50を構成する装置は、上記に限定されない。たとえば、調整機構50は、上記に加えて、エアシリンダと、エアシリンダを駆動するためのアクチュエータとを含んでいてもよい。
また、カフ20には空気袋21が含まれることとしたが、カフ20に供給される流体は空気に限定されるものではなく、たとえば液体やゲルであってもよい。あるいは、流体に限定されるものではなく、マイクロビーズなどの均一な微粒子であってもよい。
(機能構成について)
図6は、本発明の実施の形態に係る血圧情報測定装置1の機能構成を示す機能ブロック図である。
図6を参照して、CPU100は、カフ圧取得部102と、範囲決定処理部103と、検出処理部104と、サーボ制御部106と、血圧決定部108とを含む。なお、図6には、説明の簡単のために、これらの機能ブロックとの間で直接的に信号やデータが授受される周辺のハードウェアのみ示されている。
カフ圧取得部102は、発振回路33からの信号に基づいてカフ圧を取得する。より具体的には、発振回路33により検出された発振周波数の信号を圧力に変換することにより、カフ圧を取得する。取得したカフ圧は、範囲決定処理部103、検出処理部104、サーボ制御部106および血圧決定部108に出力される。
範囲決定処理部103は、被測定者の最高血圧および最低血圧を推定することにより、後述の検出処理部104でのカフ圧の制御範囲を決定する。範囲決定処理部103は、調整制御部112と算出部114とを含む。
調整制御部112は、調整機構50のポンプ駆動回路53および弁駆動回路54を制御することで、カフ圧を瞬時に変化させる。具体的には、調整制御部112は、所定の圧力値から少なくとも閉塞端点が検出されるまでの間を1心拍以内に変化させる。なお、「カフ圧を変化させる」とは、カフ圧を加圧すること、および、カフ圧を減圧することのいずれかであり、本実施の形態では、前者であるものとする。加圧の速度は、上記区間を被測定者の1心拍以内に加圧できるような速度であればよく、所定の速度であってよい。
算出部114は、調整制御部112による制御期間を表わす瞬時変化期間に、カフ圧取得部102から得られるカフ圧と、動脈容積検出回路74Aから得られる動脈容積信号(「計測用脈波」という)と、動脈容積検出回路74Bから得られる動脈容積信号(以下「基準脈波」という)とを入力する。そして、入力したこれらの情報に基づいて、被測定者の最高血圧および最低血圧を推定し、推定された最高血圧および最低血圧それぞれを制御範囲の上限値および下限値として算出する。
本実施の形態において、算出部114は、基準脈波とカフ圧とに基づいて、動脈の閉塞端点(加圧の場合、閉塞開始点)を示す、計測用脈波の特徴点を検出することにより、瞬時変化期間における血圧値(瞬時血圧値)を算出する。そして、算出された瞬時血圧値と、閉塞端点が検出された時点における基準脈波のレベルと、被測定者の脈圧を表わす脈圧値とに基づいて、最高血圧および最低血圧を推定する。
検出処理部104は、範囲決定処理部103により決定された下限値から上限値までカフ20を加圧し、その過程において、動脈容積検出回路74Aから動脈容積信号(計測用脈波)を取得する。また、動脈容積信号の1拍ごとの変化(振幅)を表わす動脈容積変化信号(動脈容積信号の交流成分)を検出する。動脈容積変化信号は、たとえば、動脈容積信号をフィルタ処理することにより得ることができる。
このように、計測用脈波は、閉塞端点を示す特徴点を検出するために用いられ、基準脈波は、閉塞端点が1心拍周期中のどの時点で発生したかを検出するために用いられる。
検出処理部104によるV0およびPC0の決定方法については上述の特許第1547959号公報(特許文献1)と同様であってよい。本実施の形態では、たとえば、動脈容積変化信号の最大値が検出された時点の動脈容積信号の値(好ましくは、1拍分の平均値)をV0と決定し、その時点のカフ圧をPC0として決定する。
サーボ制御部106は、調整機構50と接続され、動脈容積検出回路74Aから得られる動脈容積信号の値(動脈容積値)がV0と一致するようにサーボ制御を行なう。つまり、動脈容積変化信号の値がほぼゼロになるように、カフ20内の圧力をフィードバック制御する。この制御を動脈容積一定制御と呼ぶ。
血圧決定部108は、サーボ制御の期間中、血圧を連続的に決定(測定)する。具体的には、動脈容積検出回路74Aから動脈容積信号およびカフ圧取得部102からのカフ圧信号を時系列に取得し、動脈容積値とV0との差が所定の閾値以下である時点のカフ圧を血圧として決定する。
なお、一連の血圧測定期間中、CPU100は、発光素子駆動回路73Aに指令信号を送信することにより、一定の間隔で発光素子71Aを発光させているものとする。また、CPU100は、少なくとも、範囲決定処理部103による処理期間中、発光素子駆動回路73Bに指令信号を送信することにより、一定の間隔で発光素子71Bを発光させているものとする。
また、CPU100に含まれる各機能ブロックの動作は、メモリ部42中に格納されたソフトウェアを実行することで実現されてもよいし、これらの機能ブロックのうち少なくとも1つについては、ハードウェアで実現されてもよい。
<動作について>
図7は、本発明の実施の形態における血圧測定処理を示すフローチャートである。図7のフローチャートに示す処理は、予めプログラムとしてメモリ部42に格納されており、CPU100がこのプログラムを読み出して実行することにより、血圧測定処理の機能が実現される。
図7を参照して、CPU100は、電源スイッチ41Aが押下されたか否かを判断する(ステップS2)。電源スイッチ41Aが押下されたと判断した場合(ステップS2においてYES)、ステップS4に進む。
ステップS4において、CPU100は、初期化処理を行なう。具体的には、メモリ部42のたとえば所定の領域を初期化し、空気袋21の空気を排気し、圧力センサ32の0mmHg補正を行なう。
初期化が終わると、CPU100は、測定スイッチ41Bが押下されたか否かを判断する(ステップS6)。測定スイッチ41Bが押下されるまで待機する。測定スイッチ41Bが押下されたと判断すると(ステップS6においてYES)、ステップS7に進む。
ステップS7において、範囲決定処理部103は、制御範囲決定処理を実行する。制御範囲決定処理については、図8のフローチャートおよび図9を用いて後述する。
制御範囲が決定されると、検出処理部104は、制御目標値検出処理を実行する。すなわち、V0およびPC0が決定される。制御目標値検出処理については、図10のフローチャートを用いて後述する。
V0およびPC0が決定されると、サーボ制御部106は、カフ圧をPC0に設定する(ステップS10)。これにより、動脈容積信号とV0とが一致するようにカフ圧が調整される。
次に、サーボ制御部106は、動脈容積信号がV0と一致するように、動脈容積一定制御を実行する(ステップS12)。つまり、調整機構50を制御することにより、動脈容積変化信号の値がほぼゼロになるように、カフ圧をフィードバック制御する。動脈容積変化信号は、たとえば、動脈容積信号をフィルタ処理することで得ることができる。
このような動脈容積一定制御に並行して、血圧決定部108は、動脈容積(動脈容積信号が示す値)とV0との差は所定の閾値以下であるか否かを判断する(ステップS14)。つまり、容積変化信号の値がゼロに近いか(所定の閾値以下であるか)否かが判断される。
動脈容積とV0との差が閾値以下であると判断した場合(ステップS14においてYES)、血圧決定部108は、そのときのカフ圧を血圧として決定し、フラッシュメモリ43に格納する(ステップS16)。ステップS16の処理が終わると、ステップS18に進む。
一方、動脈容積とV0との差が所定の閾値を超えると判断した場合(ステップS14においてNO)、ステップS18に進む。つまり、動脈容積とV0とがほぼ一致しているといえない場合には、そのときのカフ圧は血圧値として決定されない。
ステップS18において、サーボ制御部106は、停止スイッチ41Cが押下されたか否かを判断する。停止スイッチ41Cが押下されていないと判断した場合(ステップS18においてNO)、ステップS12に戻る。停止スイッチ41Cが押下されたと判断した場合(ステップS18においてYES)、一連の血圧測定処理は終了される。なお、本実施の形態では、停止スイッチ41Cの押下が検知された場合に、血圧測定処理を終了することとしたが、動脈容積一定制御が開始されてから所定時間経過した場合に、終了することとしてもよい。
以下に、制御範囲決定処理および制御目標値検出処理について詳細に説明する。
(制御範囲決定処理について)
図8および図9を用いて当該処理について説明する。
図8は、本発明の実施の形態における制御範囲決定処理を示すフローチャートである。図9は、基準脈波の各特徴点における容積レベルを示す図である。
図8を参照して、まず、範囲決定処理部103の調整制御部112は、カフ圧を初期カフ圧値に設定する(ステップST21)。急速加圧により瞬時血圧を測定する場合、初期カフ圧は被測定者の最低血圧より十分低い圧力であり、例えば0mmHgとすればよい。
次に、範囲決定処理部103は、基準脈波から、脈の立上りの検出処理を実行する(ステップST22)。脈の立ち上り点(図9の点Pa11)は、様々な方法で検出できるが、一般には、脈波信号にハイパスフィルタや微分処理を施すことにより、立上りを強調した信号の振幅を抽出する。そして抽出された振幅値が所定の閾値を上回る点が立ち上り点として検出できる。
ステップST22の処理は、脈の立ち上りが検出されるまで実行される(ステップST23においてNO)。
範囲決定処理部103は、脈の立上りを検出したと判断すると(ステップST23においてYES)、加圧を開始する(ステップST24)。加圧の速度は脈波の立ち上がり速度とほぼ同等になるよう、予め設定した値とする。例えば、脈圧(最高血圧と最低血圧の差)が50mmHgで脈の立上り時間が0.1秒の標準的な場合を想定する。その場合、加圧速度を500mmHg/sとればよい。なお、加圧速度は、このような値に限定されず、一般的な成人の脈圧と心拍数を考慮した速度、たとえば、300〜800mmHg/sの間に設定することが好ましい。
カフの加圧は、閉塞開始点(図1,2における点Psと同じ)が検出済みと判断されるまで(ステップST30)、継続される。
カフの加圧処理に続いて、範囲決定処理部103の算出部114は、基準脈波の1心拍内の最大値と最小値を検出する。算出部114は、現在の基準脈波が最大値であるかを判断し、最大値と判断された場合に(ステップST25においてYES)、その値をメモリ部42に格納(更新)する(ステップST26)。同様に、現在の基準脈波が最小値であるかを判断し、最小値と判断された場合に(ステップST27においてYES)、その値をメモリ部42に格納(更新)する(ステップST28)。
続いて、算出部114は、計測用脈波から閉塞開始点を検出する(ステップST29)。閉塞開始点は様々な方法で検出できるが、例えば前述した基準脈波からの脈の立上り検出と同等の方法で計測用脈波の立上りを検出すればよい。閉塞開始点を検出したと判断されたら(ステップST30においてYES)、その時のカフ圧を瞬時血圧値(「BP_inst」と表わす)として検出し、同時にその時点(図9の時刻tPs)の基準脈波のレベル(「Lp_inst」と表わす)を検出する(ステップST31)。検出されたこれらの値はメモリ部42に格納される。
閉塞開始点検出後は制御目標値検出処理に移行するまで、カフ圧を閉塞開始点検出時の値(すなわち瞬時血圧値(Bp_inst))に等しい値に維持する(ステップST32)。これにより、制御目標値検出処理に移行後のカフ圧の調整時間を短縮することができる。
カフの加圧を開始して以降、基準脈波から次の立上り(図9の点Pa12)を検出したと判断された場合に(ステップST33においてNO)、メモリ部42に格納されている基準脈波の最大値を最高血圧時の脈波レベル(「Lp_sys」と表わす)として確定し、同様に基準脈波の最小値を最低血圧時の脈波レベル(「Lp_dia」と表わす)として確定する(ステップST34)。
その後、下記の式(1),(2)により、カフ圧制御最大値(「Pc_max」と表わす)と、カフ圧制御最小値(「Pc_min」と表わす)を算出する(ステップST35)。これらの値Pc_max、Pc_minは、制御目標値検出処理におけるカフ圧の制御範囲の上限値と下限値である。
上記式(1)において、“PP”は脈圧値を表す。実際の被験者の脈圧は瞬時血圧1点からはわからないため、本実施の形態では脈圧値PPは、所定値であることとする。
つまり、本実施の形態では、基準脈波の振幅値ΔVに対する、基準脈波の最大値と瞬時血圧が検出された時点の値との差(Δv)の比率を、脈圧値PPに乗算した値を、瞬時血圧値に加算することにより、被測定者の最高血圧を推定する。そして、この推定された最高血圧を、制御範囲の上限値として決定する。
したがって、脈圧値PPの値は、想定される脈圧の最大値とすることが好ましく、ここでは、多数のサンプルにおける脈圧の最大値である150mmHgを利用する。その結果、式(1)より、制御範囲の最大値Pc_maxは、被験者の脈圧を150mmHgと仮定したときの最高血圧となる。また、制御範囲の最小値Pc_minは、被験者の脈圧を150mmHgと仮定したときの最低血圧となる。ただし、最大値Pc_maxの上限を300mmHgとし、この値を超える場合は、最大値Pc_maxを300mmHgとすることが好ましい。同様に、最小値Pc_minの下限を40mmHgとし、この値を下回る場合はPc_minを40mmHgとすることが好ましい。
このように、所定の脈圧値PPを想定される脈圧の最大値として定めることで、脈圧が大きい被測定者であっても、適切な制御範囲を定めることができる。
なお、本実施の形態では、瞬時血圧値は、カフ20を急速に加圧して求めることとしたが、急速に減圧して求めてもよい。
(制御目標値検出処理について)
ここでは、カフ圧の減圧中に制御目標値を検出する場合について説明する。なお、加圧中に検出してもよい。
図10は、本発明の実施の形態における制御目標値検出処理を示すフローチャートである。
図10を参照して、検出処理部104は、動脈容積変化信号(PGac)の最大値と、そのときの動脈容積信号(PGdc)およびカフ圧とを格納するメモリ部42内の領域を初期化する(ステップST41)。なお、以下の処理において動脈容積変化信号の最大値は随時更新されるものであるので、最終的に最大値として確定するまでの値を「容積変化仮最大値」というものとする。
次に、検出処理部104は、カフ圧を制御範囲の最大値Pc_maxに設定し(ステップST42)、カフ20の徐速での減圧を開始する(ステップST43)。
カフ20を減圧する段階において、検出処理部104は、動脈容積検出回路74Aから入力する容積脈波信号に基づき、動脈容積信号と動脈容積変化信号を検出する(ステップST44)。
検出処理部104は、動脈容積変化信号の値がメモリ部42に記憶された容積変化仮最大値以上であるか否かを判断する(ステップST45)。動脈容積変化信号の値が容積変化仮最大値以上であると判断された場合(ステップST45において「≧容積変化仮最大値」)、ステップST46に進む。一方、動脈容積変化信号が容積変化仮最大値未満であると判断された場合(ステップST45において「<容積変化仮最大値」)、ステップST47に進む。
ステップST46において、検出処理部104は、容積変化仮最大値を更新するとともに、その時点におけるカフ圧と動脈容積信号の値を上書き記録する。この処理が終わると、処理はステップST47に移される。
ステップST47において、検出処理部104は、検出するカフ圧が制御範囲の下限値Pc_minに達したか否かを判断する。カフ圧が下限値Pc_minに達していないと判断した場合(ステップST47において「>Pc_min」)、ステップST43に戻り、上記処理を繰返す。一方、カフ圧が下限値Pc_minに達したと判断した場合(ステップST47において「≦Pc_min」)、ステップST48に進む。
ステップST48において、検出処理部104は、ステップST46において最終的に記録された容積変化仮最大値を容積変化最大値として確定するとともに、容積変化最大値が検出された時点において検出された動脈容積信号の値を制御目標値V0として確定し、その時点において検出されたカフ圧を、制御初期カフ圧PC0として確定する。つまり、ステップST46において記録されている動脈容積値およびカフ圧を、それぞれ、V0およびPC0として決定する。
以上で、制御目標値検出処理は終了される。
図11は、本発明の実施の形態における、制御範囲の決定からV0決定までのカフ圧制御の様子を示すグラフである。図11には、カフ圧、および、被測定者の仮想的な血圧が時間軸に沿って示されている。測定が開始されると、1心拍内に0mmHgから閉塞開始点が検出されるまで瞬時にカフ圧が上昇制御される(カフ圧=Bp_inst)。そして、制御範囲が決定されると、カフ圧が制御範囲の上限値Pc_maxにセットされ、下限値Pc_minまで徐々に減圧される。図中、制御範囲の決定に要する時間が時間TAで示され、V0検出に要する時間が時間TBで示されている。本実施の形態によると、時間TAは、0.4〜0.6秒程度である。このように、瞬時に制御範囲を決定することができるため、制御範囲を従来よりも狭くすることができる。その結果、V0の検出精度を維持したまま、血圧の連続測定を開始するまでにかかる時間(TA+TB)を従来よりも短縮することができる。
<データ構造について>
次に、以上の血圧測定処理によりフラッシュメモリ43に格納される各測定データのデータ構造について説明する。
図12は、本発明の実施の形態における各測定データのデータ構造を示す図である。
図12(a)を参照して、フラッシュメモリ43に格納される測定データ80の各々は、一例として「ID情報」、「記録日時」、「血圧情報」の3つのフィールド81〜83を含む。各フィールドの内容について概略すると、「ID情報」フィールド81は、各測定データを特定するための識別番号などを格納し、「記録日時」フィールド82は、計時部45により計時された、各測定データの測定開始日時や測定期間などの情報を格納する。また、「血圧情報」フィールド83は、時系列の血圧データすなわち、脈波波形データを格納する。
図12(b)は、測定データに含まれる血圧情報フィールド83のデータ構造を示す図である。図12(b)を参照して、血圧情報フィールド83は、「時間データ」を格納する領域831と、「血圧データ」を格納する領域832とを有している。
領域831には、サンプリング周期に応じた複数の時間データ1,2,3,・・・,Nが格納される。領域832には、領域831の時間データそれぞれと対応付けて、血圧データBD(1),BD(2),・・・,BD(n)が格納される。領域832中、「−」で示された領域は、その時点における動脈容積の値と目標値との差が所定値を越えていて血圧として記録されなかったことを示している。
なお、格納形態は、このような例に限定されず、時間(時刻)と血圧とが対応付けられて記憶されればよい。
このように、フラッシュメモリ43には、血圧情報が記憶される。この血圧情報は、最高血圧、最低血圧、平均血圧などの血圧値の他、脈拍数、AIなど、脈波から算出可能な指標をも含んでよい。
<変形例>
続いて、制御範囲の上限値Pc_maxと下限値Pc_minを算出する別の実施例を本発明の実施の形態の変形例として説明する。
前述の算出方法は被験者の脈圧(脈圧値PP)を150mmHgと仮定したため、脈圧が150より低い被験者にとっては不必要に高い上限値となる。この問題を解決するため、本変形例においては、カフ20の加圧を2回行うことにより瞬時血圧値を2点(BP_inst1とBP_inst2)検出し、同時にその時の基準脈波のレベル(Lp_inst1とLp_inst2)を検出する。そして、下記の式3により被験者の脈圧(脈圧値PP)を推定して、推定された脈圧値PPを上記式1と式2に代入することで、制御範囲の上限値Pc_maxと下限値Pc_minを算出する。
この処理によって、被験者の脈圧に応じたカフ圧の制御範囲の設定が可能になる。式3から被験者の脈圧が推定できる理由を図13を用いて説明する。図13は、動脈容積波形(基準脈波)と血圧波形との関係を示す図であり、図13(A)に動脈容積波形、図13(B)に血圧波形が示される。
図13に示されるように、血圧波形と動脈容積波形は相似関係にある。そのため、2点の瞬時血圧値の差(BP_inst1−BP_inst2)と、最高血圧と最低血圧との差(SYS−DIA、すなわち脈圧(PP))との比は、2点の閉塞開始点の脈波レベルの差(Lp_inst1−Lp_inst2)と最高血圧・最低血圧時点の脈波レベルの差(Lp_sys−Lp_dia)の差の比と等しいことを利用する。
図14は、本発明の実施の形態の変形例における制御範囲決定処理を示すフローチャートである。なお、図8のフローチャートと同様の処理については同一のステップ番号を付してある。したがって、ここではそれらについての説明は繰返さない。
図14を参照して、ステップST31において瞬時血圧値(BP_inst)と、そのときの基準脈波のレベル(Lp_inst)とが検出されると、算出部114は、閉塞開始点が2点検出されたか否かを判断する(ステップST62)。条件を満たしていない場合には(ステップST62においてNO)、ステップST21に戻り、2点目の閉塞開始点を検出するための処理を再度実行する。
一方、条件を満たす場合すなわち、閉塞開始点が2点検出されたと判断された場合(ステップST62においてYES)、上述のステップST32〜ST34の処理が実行される。ステップST34にて最高血圧時の脈波レベル(Lp_sys)および最低血圧時の脈波レベル(Lp_dia)が確定されると、算出部114は、被測定者の脈圧を上記式(3)に従い推定する(ステップST65)。脈圧が推定されると、上記式(1),(2)の“PP”に推定した脈圧値を代入することにより、制御範囲の上限値Pc_maxおよび下限値Pc_minを算出する(ステップST66)。
このように、本変形例によると、動脈容積波形と血圧波形とが相似関係にあることを利用して、被測定者の脈圧を推定する。これにより、脈圧が小さい被測定者であれば、さらにV0検出に要する時間を短縮することができる。なお、本変形例では閉塞開始点を2点検出するため制御範囲の決定処理に上記実施の形態よりも多い時間がかかるが、それでも1秒程度で済むため、結果として、(脈圧が高くなければ、)血圧の連続測定を開始するまでにかかる時間を上記実施の形態よりも短縮することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 血圧情報測定装置、10 本体部、20 カフ、21 空気袋、30 エア系、31 エアチューブ、32 圧力センサ、33 発振回路、40 表示部、41 操作部、41A 電源スイッチ、41B 測定スイッチ、41C 停止スイッチ、41D メモリスイッチ、42 メモリ部、43 フラッシュメモリ、44 電源、45 計時部、46 インターフェイス部、50 調整機構、51 ポンプ、52 弁、53 ポンプ駆動回路、54 弁駆動回路、70A,70B 動脈容積センサ、71A,71B 発光素子、72A,72B 受光素子、73A,73B 発光素子駆動回路、74A,74B 動脈容積検出回路、100 CPU、102 カフ圧取得部、103 範囲決定処理部、104 検出処理部、106 サーボ制御部、108 血圧決定部、112 調整制御部、114 算出部、132 記録媒体。