以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1から図24に本発明の一実施形態を示している。
まず、本発明の特徴部分の説明に先立ち、本発明の特徴を適用する車両用自動変速機1の構成を説明する。
図1は、本発明の使用対象となる車両用自動変速機1を用いた車両のパワートレインの概略構成を示す図、図2は、図1の車両用自動変速機1の一例を示すスケルトン図、図3は、図1および図2の変速機構部3を模式的に示す斜視図である。
図1に示す車両用自動変速機1は、主として、流体伝動装置としてのトルクコンバータ2、変速機構部3、油圧制御装置4、トランスミッション制御装置5、オイルポンプ6を含み、前進8段、後進2段の変速が可能な構成とされている。
なお、図1において、7はエンジン(内燃機関)、8はエンジン7の動作を制御するエンジン制御装置である。エンジン制御装置8は、トランスミッション制御装置5に対し、互いに送受信可能に接続されている。車両用自動変速機1とエンジン7とを含んでパワートレインが構成される。
トルクコンバータ2は、エンジン7に回転連結されるもので、ポンプインペラ21、タービンランナ22、ステータ23、ワンウェイクラッチ24、ステータシャフト25、ロックアップクラッチ26を含む。
ワンウェイクラッチ24は、ステータ23を変速機構部3のケース1aに一方向の回転のみ許容して支承するものである。ステータシャフト25は、ワンウェイクラッチ24のインナレースをケース1aに固定するものである。ロックアップクラッチ26は、ポンプインペラ21とタービンランナ22とを直結するものである。
変速機構部3は、トルクコンバータ2から入力軸9に入力される回転動力を変速して出力軸10に出力するもので、図2および図3に示すように、フロントプラネタリ31と、リアプラネタリ32と、中間回転要素としての中間ドラム33と、第1〜第4クラッチC1〜C4と、第1,第2ブレーキB1,B2とを含む構成である。
フロントプラネタリ31は、ダブルピニオンタイプと呼ばれるギア式遊星機構とされており、第1サンギアS1と、第1リングギアR1と、複数個のインナーピニオンギアP1と、複数個のアウターピニオンギアP2と、第1キャリアCA1とを含む構成である。
なお、第1サンギアS1は、ケース1aに固定されて回転不可能とされ、第1リングギアR1は、中間ドラム33に第3クラッチC3を介して一体回転可能な状態または相対回転可能な状態に支持され、第1リングギアR1の内径側に第1サンギアS1が同心状に挿入されている。
複数個のインナーピニオンギアP1および複数個のアウターピニオンギアP2は、第1サンギアS1と第1リングギアR1との対向環状空間の円周数ヶ所に介装されており、複数個のインナーピニオンギアP1は第1サンギアS1に噛合され、また、複数個のアウターピニオンギアP2はインナーピニオンギアP1と第1リングギアR1とに噛合されている。
第1キャリアCA1は、両ピニオンギアP1,P2を回転可能に支持するもので、この第1キャリアCA1の中心軸部が入力軸9に一体的に連結され、第1キャリアCA1において両ピニオンギアP1,P2を支持する各支持軸部が第4クラッチC4を介して中間ドラム33に一体回転可能な状態または相対回転可能な状態に支持されている。
また、中間ドラム33は、第1リングギアR1の外径側に回転可能に配置されており、第1ブレーキB1を介してケース1aに回転不可能な状態または相対回転可能な状態に支持されている。
リアプラネタリ32は、ラビニオタイプと呼ばれるギア式遊星機構とされており、大径の第2サンギアS2と、小径の第3サンギアS3と、第2リングギアR2と、複数個のショートピニオンギアP3と、複数個のロングピニオンギアP4と、第2キャリアCA2とを含む構成である。
なお、第2サンギアS2は、中間ドラム33に連結され、第3サンギアS3は、第1クラッチC1を介してフロントプラネタリ31の第1リングギアR1に一体回転可能または相対回転可能に連結され、第2リングギアR2は、出力軸10に一体に連結されている。
また、複数個のショートピニオンギアP3は、第3サンギアS3に噛合され、複数個のロングピニオンギアP4は、第2サンギアS2および第2リングギアR2に噛合するとともにショートピニオンギアP3を介して第3サンギアS3に噛合されている。
さらに、第2キャリヤCA2は、複数個のショートピニオンギアP3および複数個のロングピニオンギアP4を回転可能に支持するもので、その中心軸部が第2クラッチC2を介して入力軸9に連結され、この第2キャリアCA2において各ピニオンギアP3,P4を支持する各支持軸部が、第2ブレーキB2およびワンウェイクラッチF1を介してケース1aに支持されている。
そして、第1〜第4クラッチC1〜C4および第1,第2ブレーキB1,B2は、請求項に記載の油圧式係合要素に相当するものであり、ここでは、オイルの粘性を利用した湿式多板摩擦係合装置とされている。
第1クラッチC1は、リアプラネタリ32の第3サンギアS3をフロントプラネタリ31の第1リングギアR1に対して一体回転可能な係合状態または相対回転可能な解放状態とするものである。
第2クラッチC2は、リアプラネタリ32の第2キャリヤCA2を入力軸9に対して一体回転可能な係合状態または相対回転可能な解放状態とするものである。
第3クラッチC3は、フロントプラネタリ31の第1リングギアR1を中間ドラム33に対して一体回転可能な係合状態または相対回転可能な解放状態とするものである。
第4クラッチC4は、フロントプラネタリ31の第1キャリアCA1を中間ドラム33に対して一体回転可能な係合状態または相対回転可能な解放状態とするものである。
第1ブレーキB1は、中間ドラム33を車両用自動変速機1のケース1aに対して一体化して回転不可能な係合状態または相対回転可能な解放状態とするものである。
第2ブレーキB2は、リアプラネタリ32の第2キャリアCA2をケース1aに対して一体化して回転不可能な係合状態または相対回転可能な解放状態とするものである。
ワンウェイクラッチF1は、リアプラネタリ32の第2キャリアCA2の一方向のみの回転を許容するものである。
油圧制御装置4は、変速機構部3の変速動作を制御するもので、図4に示すように、主として、圧力制御弁41、マニュアルバルブ42、複数のリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC3,SLC4,SLB1、B2コントロールバルブ44、フェールセーフバルブとしてのカットオフバルブ45,46,47、切換弁48,49等を含む構成になっている。
圧力制御弁41は、オイルポンプ6からの油圧を所定のライン圧に制御してマニュアルバルブ42のポートPLに供給するものである。
マニュアルバルブ42は、運転者によるシフトレバーの操作に対応したニュートラルレンジN、前進走行レンジDまたは後進走行レンジRを確保するために、適宜、ポートDからリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC3,SLC4,SLB1に、またポートRからB2コントロールバルブ44にそれぞれ作動油圧を供給するものである。
複数のリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC3,SLC4,SLB1は、変速機構部3における第1〜第4クラッチC1〜C4ならびに第1ブレーキB1を個別に駆動するもので、その基本構成は公知の構成とされるので、ここでは詳細な図示や説明を割愛する。
なお、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC3,SLC4,SLB1の符号の意味は、それぞれ対応する各油圧式係合要素(第1〜第4クラッチC1〜C4ならびに第1ブレーキB1)を示す参照符号をSLの後に付加して表示している。
この各リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC3,SLC4,SLB1のソレノイド(符号省略)が、トランスミッション制御装置5から供給される制御信号(制御電流)に応じて作動して、図示していない弁体を圧縮バネのバネ力とバランスする位置まで移動させ、必要なポートを開閉、または開度を増減調整する。
B2コントロールバルブ44は、第2ブレーキB2を駆動するものである。
第1のカットオフバルブ45は、第1クラッチC1とリニアソレノイドバルブSLC1との間に介装されており、二つの入力ポートに共に油圧が供給されたときにリニアソレノイドバルブSLC1から出力ポートを経由して第1クラッチC1へ供給する油圧を遮断して、ドレンポートからケース1a内に排出するフェールセーフバルブとして構成されている。
第2のカットオフバルブ46は、第4クラッチC4とリニアソレノイドバルブSLC4との間に介装されており、単一の入力ポートにリニアソレノイドバルブSLC3から油圧が供給されたときにリニアソレノイドバルブSLC4から出力ポートを経由して第4クラッチC4へ供給する油圧を遮断して、ドレンポートからケース1a内に排出するフェールセーフバルブとして構成されている。
第3のカットオフバルブ47は、第1ブレーキB1とリニアソレノイドバルブSLB1との間に介装されており、二つの入力ポートのいずれか一方にリニアソレノイドバルブSLC3またはSLC4から油圧が供給されたときにリニアソレノイドバルブSLB1から出力ポートを経由して第1ブレーキB1へ供給する油圧を遮断して、ドレンポートからケース1a内に排出するフェールセーフバルブとして構成されている。
切換弁48,49は、リニアソレノイドバルブSLB1と第1カットオフバルブ45の一方入力ポートとの間に直列に配置されている。
第1切換弁48の二つの入力ポートには、リニアソレノイドバルブSLB1の油圧配管とリニアソレノイドバルブSLC4の油圧配管とが並列に接続されている。また、第2切換弁49の二つの入力ポートには、第1切換弁48の出力配管とリニアソレノイドバルブSLC3の油圧配管とが並列に接続されている。これら第1、第2切換弁48,49は、そのいずれか一方の入力ポートに油圧が供給されたときに、当該供給された油圧を出力ポートから出力するものである。
トランスミッション制御装置5は、油圧制御装置4を制御することにより変速機構部3における適宜の変速段つまり動力伝達経路を成立させるもので、一般的に公知のECU(Electronic Control Unit)とされている。
つまり、トランスミッション制御装置5は、図5に示すように、中央処理装置(CPU)51と、読出し専用メモリ(ROM)52と、ランダムアクセスメモリ(RAM)53と、バックアップRAM54と、入力インタフェース55と、出力インタフェース56とを双方向性バス57によって相互に接続した構成になっている。
なお、エンジン制御装置8もトランスミッション制御装置5と同様のハードウエア構成である。
CPU51は、ROM52に記憶された各種制御プログラムや制御マップに基づいて演算処理を実行する。ROM52には、変速機構部3の変速動作や本発明の特徴を適用したフェールセーフ動作を制御するための各種制御プログラムが記憶されている。前記フェールセーフ動作は、後で詳細に説明する。RAM53は、CPU51での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM54は、各種の保存すべきデータを記憶する不揮発性のメモリである。
入力インタフェース55には、少なくとも、エンジン回転数センサ11、入力軸回転数センサ12、出力軸回転数センサ13、レンジ位置センサ14、スロットル開度センサ15等が接続されている。また、出力インタフェース56には、少なくとも、油圧制御装置4の構成要素(圧力制御弁41、マニュアルバルブ42、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC3,SLC4,SLB1、B2コントロールバルブ44)が接続されている。
なお、エンジン回転数センサ11は、エンジンの回転が伝達されるトルクコンバータ2のエンジン回転数NEを検出するものである。入力軸回転数センサ12は、入力軸9の回転数NTを検出するものである。出力軸回転数センサ13は、出力軸10の回転数NOを検出するものである。レンジ位置センサ14は、マニュアルバルブ42が前進走行レンジD、ニュートラルレンジNにシフトされているときに検出信号を送出するものである。スロットル開度センサ15は、アクセルの踏み込み量を検出するものである。
ここで、上述した変速機構部3における各変速段を成立させる条件について、図6から図17を参照して説明する。
図6は、第1〜第4クラッチC1〜C4、第1,第2ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッチF1における係合状態または解放状態と各変速段との関係を示す係合表である。この係合表において、○印は「係合状態」、×印は「解放状態」、◎印は「エンジンブレーキ時に係合状態」、△印は「駆動時のみ係合状態」を示す。
図7は、フロントプラネタリ31の構成要素における変速段毎の回転状態を示す表である。この図において、各構成要素を動力伝達方向の下流側(図3の紙面右側)から上流側(図3の紙面左側)を見たときの反時計周りを正回転方向としており、インナーピニオンギアP1およびアウターピニオンギアP2の回転方向は、第1キャリアCA1に対する回転方向で示している。
図8は、リアプラネタリ32の構成要素における変速段毎の回転状態を示す表である。この図において、各構成要素を動力伝達方向の下流側(図3の紙面右側)から上流側(図3の紙面左側)を見たときの反時計周りを正回転方向としており、ショートピニオンギアP3およびロングピニオンギアP4の回転方向は、第2キャリアCA2に対する回転方向で示している。
図9は、第1〜第4クラッチC1〜C4、第1,第2ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッチF1の係合により成立される変速段(第1速段〜第8速段、後進第1速段、後進第2速段)と、そのときの前後二つのプラネタリ31,32における各構成要素の回転数比との関係を示す速度線図である。この図9において、各縦軸方向は二つのプラネタリ31,32における各構成要素の速度比であり、各縦軸の間隔は、各要素のギア比に応じて設定される。また、第1〜第4クラッチC1〜C4、第1,第2ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッチF1が係合される点に、C1〜C4、B1、B2、F1を記入している。さらに、図9に記載している入力1〜入力4とは、入力軸9からの回転動力の入力位置を示し、また、図9に記載している出力とは、出力軸10に出力させる回転動力の出力位置を示している。
図10から図17には、油圧制御装置4において第1速段から第8速段を成立するための油圧経路をそれぞれ示している。なお、これらの図において、リニアソレノイドバルブからクラッチまたはブレーキへ油圧供給しているものに、ドット模様を付している。
(第1速段:1st)
第1速段1stは、第1クラッチC1の係合と、ワンウェイクラッチF1の自動係合によって成立される。
つまり、図10に示すように、リニアソレノイドバルブSLC1から第1クラッチC1への油圧経路のみを確保して、第1クラッチC1を係合する。
この場合、第1クラッチC1の係合によって、フロントプラネタリ31の第1リングギアR1とリアプラネタリ32の第3サンギアS3とが一体回転可能な状態となり、また、ワンウェイクラッチF1の自動係合によってリアプラネタリ32の第2キャリアCA2が回転停止される。
これにより、入力軸9と直結された第1キャリアCA1から第1リングギアR1を経て回転される第3サンギアS3と、ワンウェイクラッチF1によって逆回転を阻止された第2キャリアCA2と、フリー回転可能な第2サンギアS2との噛合に伴い、第2リングギアR2および出力軸10が第1速段のギア比で回転される。なお、回転方向は、図7および図8に示すとおりである。
(第2速段:2nd)
第2速段2ndは、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合によって成立される。
つまり、図11に示すように、リニアソレノイドバルブSLC1から第1クラッチC1への油圧経路を確保して第1クラッチC1を係合するとともに、リニアソレノイドバルブSLB1から第1ブレーキB1への油圧経路を確保して第1ブレーキB1を係合する。
この場合、まず、第1クラッチC1の係合によって、フロントプラネタリ31の第1リングギアR1とリアプラネタリ32の第3サンギアS3とが一体回転可能な状態となり、また、第1ブレーキB1の係合によって中間ドラム33およびリアプラネタリ32の第2サンギアS2がケース1aに固定されて回転不可能な状態になる。
これにより、入力軸9と直結された第1キャリアCA1から第1リングギアR1を経て回転される第3サンギアS3と、回転不可能とされた第2サンギアS2と、フリー回転可能な第2キャリアCA2との噛合に伴い、第2リングギアR2および出力軸10が第2速段のギア比で回転される。
(第3速段:3rd)
第3速段3rdは、第1クラッチC1および第3クラッチC3の係合によって成立される。
つまり、図12に示すように、リニアソレノイドバルブSLC1から第1クラッチC1への油圧経路を確保して第1クラッチC1を係合するとともに、リニアソレノイドバルブSLC3から第3クラッチC3への油圧経路を確保して第3クラッチC3を係合する。
この場合、まず、第1クラッチC1の係合によって、フロントプラネタリ31の第1リングギアR1とリアプラネタリ32の第3サンギアS3とが一体回転可能な状態となり、また、第3クラッチC3の係合によって、フロントプラネタリ31の第1リングギアR1と中間ドラム33およびリアプラネタリ32の第2サンギアS2とが一体回転可能な状態になる。
これにより、入力軸9と直結された第1キャリアCA1から第1リングギアR1および中間ドラム33を経て回転される第2サンギアS2および第3サンギアS3と、フリー回転可能な第2キャリアCA2との噛合に伴い、第2リングギアR2および出力軸10が第3速段のギア比で回転される。
(第4速段:4th)
第4速段4thは、第1クラッチC1および第4クラッチC4の係合によって成立される。
つまり、図13に示すように、リニアソレノイドバルブSLC1から第1クラッチC1への油圧経路を確保して第1クラッチC1を係合するとともに、リニアソレノイドバルブSLC4から第4クラッチC4への油圧経路を確保して第4クラッチC4を係合する。
この場合、まず、第1クラッチC1の係合によって、フロントプラネタリ31の第1リングギアR1とリアプラネタリ32の第3サンギアS3とが一体回転可能な状態となり、また、第4クラッチC4の係合によって、フロントプラネタリ31の第1キャリアCA1と中間ドラム33およびリアプラネタリ32の第2サンギアS2とが一体回転可能な状態になる。
これにより、入力軸9と直結された第1キャリアCA1および中間ドラム33を経て回転される第2サンギアS2と、入力軸9と直結された第1キャリアCA1から第1リングギアR1を経て回転される第3サンギアS3と、フリー回転可能な第2キャリアCA2との噛合に伴い、第2リングギアR2および出力軸10が第4速段のギア比で回転される。
(第5速段:5th)
第5速段5thは、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合によって成立される。
つまり、図14に示すように、リニアソレノイドバルブSLC1から第1クラッチC1への油圧経路を確保して第1クラッチC1を係合するとともに、リニアソレノイドバルブSLC2から第2クラッチC2への油圧経路を確保して第2クラッチC2を係合する。
この場合、まず、第1クラッチC1の係合によって、フロントプラネタリ31の第1リングギアR1とリアプラネタリ32の第3サンギアS3とが一体回転可能な状態となり、また、第2クラッチC2の係合によって、入力軸9とリアプラネタリ32の第2キャリアCA2とが一体回転可能な状態になる。
これにより、入力軸9と直結された第1キャリアCA1から第1リングギアR1を経て回転される第3サンギアS3と、フリー回転可能な第2サンギアS2と、入力軸9と一体回転する第2キャリアCA2との噛合に伴い、第2リングギアR2および出力軸10が第5速段のギア比で回転される。
(第6速段:6th)
第6速段6thは、第2クラッチC2および第4クラッチC4の係合によって成立される。
つまり、図15に示すように、リニアソレノイドバルブSLC2から第2クラッチC2への油圧経路を確保して第2クラッチC2を係合するとともに、リニアソレノイドバルブSLC4から第4クラッチC4への油圧経路を確保して第4クラッチC4を係合する。
この場合、まず、第2クラッチC2の係合によって、入力軸9とリアプラネタリ32の第2キャリアCA2とが一体回転可能な状態になり、また、第4クラッチC4の係合によって、フロントプラネタリ31の第1キャリアCA1と中間ドラム33およびリアプラネタリ32の第2サンギアS2とが一体回転可能な状態になる。
これにより、入力軸9と直結された第1キャリアCA1および中間ドラム33を経て回転される第2サンギアS2と、入力軸9と一体回転する第2キャリアCA2と、フリー回転可能な第3サンギアS3との噛合に伴い、第2リングギアR2および出力軸10が第6速段のギア比で回転される。
(第7速段:7th)
第7速段7thは、第2クラッチC2および第3クラッチC3の係合によって成立される。
つまり、図16に示すように、リニアソレノイドバルブSLC2から第2クラッチC2への油圧経路を確保して第2クラッチC2を係合するとともに、リニアソレノイドバルブSLC3から第3クラッチC3への油圧経路を確保して第3クラッチC3を係合する。
この場合、まず、第2クラッチC2の係合によって、入力軸9とリアプラネタリ32の第2キャリアCA2とが一体回転可能な状態になり、また、第3クラッチC3の係合によって、フロントプラネタリ31の第1リングギアR1と中間ドラム33およびリアプラネタリ32の第2サンギアS2とが一体回転可能な状態になる。
これにより、入力軸9と直結された第1キャリアCA1から第1リングギアR1および中間ドラム33を経て回転される第2サンギアS2と、入力軸9と一体回転される第2キャリアCA2と、フリー回転となる第3サンギアS3との噛合に伴い、第2リングギアR2および出力軸10が第7速段のギア比で回転される。
(第8速段:8th)
第8速段8thは、第2クラッチC2および第1ブレーキB1との係合によって成立される。
つまり、図17に示すように、リニアソレノイドバルブSLC2から第2クラッチC2への油圧経路を確保して第2クラッチC2を係合するとともに、リニアソレノイドバルブSLB1から第1ブレーキB1への油圧経路を確保して第1ブレーキB1を係合する。
この場合、まず、第2クラッチC2の係合によって、入力軸9とリアプラネタリ32の第2キャリアCA2とが一体回転可能な状態になり、また、第1ブレーキB1の係合によって中間ドラム33およびリアプラネタリ32の第2サンギアS2がケース1aに固定されて回転不可能な状態になる。
これにより、入力軸9と一体回転される第2キャリアCA2と、回転不可能とされた中間ドラム33および第2サンギアS2と、フリー回転となる第3サンギアS3との噛合に伴い、第2リングギアR2および出力軸10が第8速段のギア比で回転される。
(後進第1速段:R1)
後進第1速段R1は、第3クラッチC3および第2ブレーキB2の係合によって成立される。
つまり、図示していないが、リニアソレノイドバルブSLC3から第3クラッチC3への油圧経路を確保して第3クラッチC3を係合するとともに、B2コントロールバルブ44から第2ブレーキB2への油圧経路を確保して第2ブレーキB2を係合する。
この場合、まず、第3クラッチC3の係合によって、フロントプラネタリ31の第1リングギアR1と中間ドラム33およびリアプラネタリ32の第2サンギアS2とが一体回転可能な状態になり、また、第2ブレーキB2の係合によってリアプラネタリ32の第2キャリアCA2がケース1aに固定されて回転不可能な状態になる。
これにより、入力軸9と直結された第1キャリアCA1から第1リングギアR1および中間ドラム33を経て回転される第2サンギアS2と、回転不可能とされた第2キャリアCA2と、フリー回転となる第3サンギアS3との噛合に伴い、第2リングギアR2および出力軸10が後進第1速段のギア比で逆回転される。
(後進第2速段:R2)
後進第2速段R2は、第4クラッチC4および第2ブレーキB2の係合によって成立される。
つまり、図示していないが、リニアソレノイドバルブSLC4から第4クラッチC4への油圧経路を確保して第4クラッチC4を係合するとともに、B2コントロールバルブ44から第2ブレーキB2への油圧経路を確保して第2ブレーキB2を係合する。
この場合、まず、第4クラッチC4の係合によって、フロントプラネタリ31の第1キャリアCA1と中間ドラム33およびリアプラネタリ32の第2サンギアS2とが一体回転可能な状態になり、また、第2ブレーキB2の係合によってリアプラネタリ32の第2キャリアCA2がケース1aに固定されて回転不可能な状態になる。
これにより、入力軸9と直結された第1キャリアCA1および中間ドラム33を経て回転される第2サンギアS2と、回転不可能とされた第2キャリアCA2と、フリー回転となる第3サンギアS3との噛合に伴い、第2リングギアR2および出力軸10が後進第2速段のギア比で逆回転される。
次に、本発明の特徴を適用した部分について、図18から図24を参照して詳細に説明する。
そもそも、アップシフトやダウンシフトといった変速処理を行うにあたって、目標とする変速段を成立するうえで不要なクラッチまたはブレーキが係合したまま解放不可能になることがある。その原因は、それの駆動用のリニアソレノイドバルブが開弁したままとなるソレノイドオン故障が発生することが挙げられる。このような油圧制御装置4による油圧式係合要素(クラッチやブレーキ)の動作制御不良が原因で、変速処理中に変速前の変速段よりも低速段が成立されてしまうといった変速異常が発生することがある。
このような変速異常が発生すると、入力軸9の回転数NTが急上昇し、それに伴いエンジン回転数NEが急上昇して吹け上がるといった現象が発生することになってしまい、エンジン7ならびにそれに付設される補機関係に過大な負荷を付与してしまう等、好ましくない。
この実施形態では、前述したように意図しない低速段が成立されるといった変速異常が発生したときに、前記変速前の変速段よりも高速段を成立させることにより、入力軸9の回転数NTを降下させるように対処する構成になっている。
この対処は、上述している油圧制御装置4における三つのカットオフバルブ55〜57で行うようになっている。
具体的に、上述したような変速異常が発生する状況の一例として、例えば第4速段4thから第5速段5thへの変速処理を行う場合について詳細に説明する。
そもそも、第4速段4thの成立条件は、図13に示すように、第1クラッチC1および第4クラッチC4を係合させることであり、また、第5速段5thの成立条件は、図14に示すように、第1クラッチC1および第2クラッチC2を係合させることである。
したがって、第4速段4thから第5速段5thへ変速する際の手順としては、まず、第1クラッチC1を係合したまま、第1段階として第4クラッチC4を解放してから、第2段階として第2クラッチC2を係合させるようにする、いわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速を行う。
しかも、各クラッチC1〜C4やブレーキB1を駆動するためのリニアソレノイドバルブSLC1〜SLC4,SLB1は、単に全開、全閉と切り替えるような、いわゆる急峻制御とせずに、開度つまり油圧供給を漸増または漸減するような、いわゆる漸次制御にしている。その理由は、各クラッチC1〜C4やブレーキB1を徐々に係合または解放させることにより、連結または分離対象となる二つの要素間の回転数差を可及的に小さくさせるようにして変速ショックを軽減するためである。
さて、変速前の第4速段4thにおいて、仮にリニアソレノイドバルブSLB1がソレノイドオン故障によって全開状態のままで不動になっている場合、リニアソレノイドバルブSLC4からの油圧が第3カットオフバルブ57の一方入力ポートに供給されているので、この第3カットオフバルブ57によってリニアソレノイドバルブSLB1から第1ブレーキB1に対する油圧供給が遮断されてドレンポートから排出されることになり、第1ブレーキB1が係合せずに解放状態になっている。このような理由により、第4速段4thでは、リニアソレノイドバルブSLB1がソレノイドオン故障していても、第4速段4thが正常に成立しているのである。
ここで、第4速段4thから第5速段5thへ変速する際、第1段階として、リニアソレノイドバルブSLC4を閉弁させて第4クラッチC4を解放するのであるが、これに伴い、リニアソレノイドバルブSLC4から第3カットオフバルブ57の一方入力ポートに供給されていた油圧が遮断されることになるので、第3カットオフバルブ57によってリニアソレノイドバルブSLB1から第1ブレーキB1に対する油圧供給を許容するようになり、第1ブレーキB1が係合することになる。
これにより、図20においてドット模様および斜線を付しているように、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合状態になるために、意図していない変速段である第2速段2ndが成立してしまうことになる。なお、図20において、ドット模様および斜線を付与しているリニアソレノイドバルブSLC1,SLB1が開弁状態になっており、それら以外が解放状態になっている。
引き続き、第4速段4thから第5速段5thへの変速処理における第2段階として、リニアソレノイドバルブSLC2を開弁させて第2クラッチC2を係合させるのであるが、これに伴い、リニアソレノイドバルブSLC2から第1カットオフバルブ55の他方入力ポートに油圧が供給されることになり、既に第1カットオフバルブ55の一方入力ポートにリニアソレノイドバルブSLB1から油圧が供給されている状態であるために、当該第1カットオフバルブ55によってリニアソレノイドバルブSLC1から第1クラッチC1に対する油圧供給を遮断するようになり、第1クラッチC1が解放されることになる。
これにより、図21においてドット模様および斜線を付しているように、第2クラッチC2と第1ブレーキB1とが係合状態になるために、第8速段8thが成立することになる。なお、図21において、ドット模様および斜線を付与しているリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLB1が開弁状態になっており、それら以外が解放状態になっている。
さらに詳しくは、例えば図23の(c)に示すように、時間t1において全開状態のリニアソレノイドバルブSLC4を漸次制御により徐々に閉弁させることにより第4クラッチC4に対する油圧供給を漸減させる。
さらに、この時間t1から所定時間dt遅延させた時間t2において、図23の(b)に示すように、全閉状態のリニアソレノイドバルブSLC2を漸次制御により徐々に開弁させることにより第2クラッチC2に対する油圧供給を漸増させる。
ここで、図23の(c)に示すように、時間t3において第4クラッチC4に対する油圧がフェールセーフ作動圧Pにまで降下すると、図23の(d)に示すように、リニアソレノイドバルブSLB1から第1ブレーキB1に対する油圧供給を遮断していた第3カットオフバルブ57が前記油圧供給を許容する状態になる。これにより、リニアソレノイドバルブSLB1から第1ブレーキB1に対する油圧供給が行われるので、第1ブレーキB1が係合することになって、意図しない第2速段2ndが成立することになってしまう。その結果、図22の二点鎖線で示すように、入力軸9の回転数NTが想定外に急上昇し始めることになる。
そして、図23の(b)に示すように、時間t4においてリニアソレノイドバルブSLC2から第2クラッチC2に供給する油圧がフェールセーフ作動圧Pにまで上昇すると、図23の(a)に示すように、リニアソレノイドバルブSLC1から第1クラッチC1に対する油圧供給を許容していた第1カットオフバルブ55が前記油圧供給を遮断する状態になる。これにより、リニアソレノイドバルブSLC1から第1クラッチC1に対する油圧供給が行われるので、第2クラッチC2が係合することによって、第8速段8thが成立することになる。その結果、図22の二点鎖線で示すように、入力軸9の回転数NTが降下することになる。なお、図22において、破線は変速処理が正常に行われた場合を示している。
このように、リニアソレノイドバルブSLB1がソレノイドオン故障していることが原因で、第4速段4thから第5速段5thへの変速処理において第5速段5thを正常に成立させることができないといった異常が発生したときに、第8速段8thを強制的に成立させることによって、入力軸9の回転数NTならびにエンジン7の回転数NEの急上昇を制限して降下させるようにしている。このような変速異常が発生している状態を、図24の速度共線図に示している。
しかしながら、上述しているように、変速処理におけるリニアソレノイドバルブからクラッチやブレーキに対する油圧供給を漸次制御としている関係より、第4速段4thから第5速段5thへの変速処理において、第1段階で意図しない第2速段2ndが成立してから第2段階で第8速段8thを成立させるまでに要する時間が長くかかってしまう。この第2速段2ndから第8速段8thへの移行期間において、入力軸9の回転数NTならびにエンジン7の回転数NEが想定外に急上昇し過ぎて、エンジン7ならびにエンジン7に付設される補機関係に過大な負荷がかかりやすくなると言える。
このような事情を考慮し、本発明では、例えば第4速段4thから第5速段5thへの変速処理における変速異常の発生に対する対処処理について、第2速段2ndから第8速段8thへの移行期間を可及的に短縮することにより、入力軸9の回転数NTならびにエンジン7の回転数NEが想定外に急上昇することを制限させるように工夫している。
そこで、上記変速処理の第1段階のように意図していない第2速段2nd(低速段)が成立されることによって入力軸9の回転数NTが第5速段5th(目標変速段)で想定される回転数よりも急上昇するような変速異常が発生したときに、この変速異常を可及的速やかに検出し、短時間のうちに第8速段8th(高速段)を成立させて変速処理を強制終了させるように対処する。
以下、具体的に、本発明の特徴を適用したトランスミッション制御装置5による変速処理について、図18に示すフローチャート、図19に示すタイムチャートならびに図22に示すグラフを参照して詳細に説明する。
図18に示すフローチャートは、車両用自動変速機1の変速制御に関するメインフローチャートの一部であり、一定周期毎に繰り返される。
まず、ステップS21にエントリーされると、変速処理中かどうかを判定する。ここで、否定判定した場合には、メインフローチャートに戻るが、肯定判定した場合には、続くステップS22〜S24において変速異常の発生の有無を調べる。
なお、三つのものステップS22〜S24で異常発生の有無を調べる理由は、異常発生を直接検出せずに、異常発生に伴い不可避的に生ずる現象を検出しているので、この現象を高精度に検出するためである。
ここで、まず、ステップS22では、入力軸9の回転数NTが所定の閾値X以上か否かを調べることにより、想定外の回転上昇が発生しているか否かを判定する。なお、入力軸9の回転数NTは、入力軸回転数センサ12で直接的に検出され、この検出値がトランスミッション制御装置5に入力され、トランスミッション制御装置5が前記ステップS22の処理を行う。また、前記閾値Xは、同期回転数最大値に適宜のマージンαを加算した値に特定される。なお、同期回転数とは、変速前後の変速段に見合った入力軸9の回転数NTのことであり、トランスミッション制御装置5で適宜に算出される。また、前記同期回転数最大値とは、同期回転数の許容範囲における最大値のことであり、トランスミッション制御装置5に予め適宜に設定されている。
続くステップS23では、入力軸9の回転数NTがエンジン7の回転数NEに適宜のマージンβを加算した閾値Y以上か否かを調べることにより、想定外の回転上昇の発生原因がエンジン7の回転数上昇制御とは無関係であるか否かを判定する。換言すれば、変速処理中においてエンジン回転数NEを急上昇制御していない状況であるにもかかわらず入力軸9の回転数NTが目標変速段で想定される回転数よりも急上昇するような現象が発生しているか否かを調べているのである。
さらに続くステップS24では、入力軸9の回転上昇の度合い(回転数変化量)ΔNTが所定の閾値Z以上か否かを調べることにより入力軸9の回転上昇が想定外に急峻であるか否かを判定する。この閾値Zは、実験により把握した値に特定されるが、入力軸9の回転数NTの変化量ΔNTつまり上昇勾配に適宜のマージンγを加算した値に特定される。入力軸9の回転数NTの変化量ΔNTは、トランスミッション制御装置5で適宜に算出される。
そして、上記ステップS22〜S24においてそれぞれ否定判定した場合には、変速異常が発生していないものと判断して、メインフローチャートに戻る。しかし、ステップS22で肯定判定した場合には、続くステップS23に移行し、ステップS23で肯定判定した場合には、続くステップS24に移行する。
最終のステップS24で肯定判定した場合には、変速処理の第1段階で変速前の変速段(第4速段4th)より低速段(第2速段2nd)が成立されたという変速異常が発生しているものと判断して、続くステップS25において、可及的速やかに目標変速段(第5速段5th)より高速段(第8速段8th)を成立させて当該変速処理を強制終了させる。この後、メインフローチャートに戻る。
なお、上記ステップS22〜S24が、請求項4に記載の変速異常検出手段に相当し、上記ステップS22が請求項4に記載の第1判定手段に相当し、上記ステップS23が請求項4に記載の第2判定手段に相当し、上記ステップS24が請求項4に記載の第3判定手段に相当する。
さらに詳しくは、例えば図19の(c)に示すように、時間t1において全開状態のリニアソレノイドバルブSLC4を漸次制御により徐々に閉弁させることにより第4クラッチC4に対する油圧供給を漸減させる。
さらに、この時間t1から所定時間dt遅延させた時間t2において、図19の(b)に示すように、全閉状態のリニアソレノイドバルブSLC2を漸次制御により徐々に開弁させることにより第2クラッチC2に対する油圧供給を漸増させる。
ここで、図19の(c)に示すように、時間t3において第4クラッチC4に対する油圧がフェールセーフ作動圧Pにまで降下すると、図19の(d)に示すように、それまでリニアソレノイドバルブSLB1から第1ブレーキB1に対する油圧供給を遮断していた第3カットオフバルブ57が前記油圧供給を許容する状態になる。これにより、リニアソレノイドバルブSLB1から第1ブレーキB1に対する油圧供給が行われることになって、第1ブレーキB1が係合することになる。その結果、第2速段2ndが成立することになってしまい、図22の実線で示すように、入力軸9の回転数NTが想定外に急上昇し始めることになる。
しかしながら、この実施形態では、前記入力軸9の回転数NTが想定外に急上昇するという変速異常を検出(図18のステップS22〜S24)するのに要する時間Stが短くなるので、図19の(b)に示すように、時間t3から前記短い時間Stが経過した時間t4において、漸次制御により開弁させているリニアソレノイドバルブSLC2を急峻制御に変更して瞬時に全開状態にする。これに伴い、第2クラッチC2に対する供給油圧がフェールセーフ作動圧Pを越えるまで急峻に上昇することによって、図19(a)に示すように、それまでリニアソレノイドバルブSLC1から第1クラッチC1に対する油圧供給を許容していた第1カットオフバルブ55が前記油圧供給を遮断する。
これにより、第8速段8thが成立され、これで変速処理が強制終了される(図18のステップS25)。このように、第2速段2ndから第8速段8thへの移行期間を可及的に短縮することができるから、図22の実線で示すように、入力軸9の回転数NTの急上昇を早期段階で制限して降下させることができるようになる。
なお、上記実施形態において、入力軸9の回転数NTが想定外に急上昇する状況として、第4速段4thから第5速段5thへのアップシフトとする場合を例に挙げているが、それ以外の状況において入力軸9の回転急上昇が発生した場合についても、詳細な説明を割愛するが、上記同様に対処することが可能である。
以上説明したように、本発明の特徴を適用した実施形態によれば、車両用自動変速機1の変速処理中において入力軸9の回転数NTが想定外に急上昇したときでもレブリミットに到達する前に余裕をもって、この回転上昇を変速異常として検出することができるとともに、可及的速やかに入力軸9の回転数NTを強制降下させるように対処することができる。
したがって、上述したように、油圧制御装置4における特定のリニアソレノイドバルブのソレノイドオン故障が原因で変速異常が発生することによって、入力軸9の回転数NTが想定外に急上昇しても、自動変速機1が連結されるエンジン7ならびにエンジン7に付設される補機関係に過大な負荷が作用することを回避できるようになる等、それらの耐久性ならびに信頼性向上に貢献できるようになる。
なお、本発明は上記実施形態のみに限定されるものではなく、いろいろな応用や変形が考えられる。
上記実施形態では、前進8段、後進2段に設定した車両用自動変速機1に本発明を適用した例を挙げているが、それ以外の車両用自動変速機においても本発明を適用することができる。
例えば、変速機構部3について、少なくとも二つのプラネタリ31,32と、各プラネタリ31,32の構成要素間を動力伝達可能に連結する中間ドラム33(中間回転要素)とを備える構成にしているが、この変速機構部3の構成は適宜に変更できる。
また、変速機構部3における適宜の変速段を成立させるために、各プラネタリ31,32の構成要素や中間ドラム33の動作を切り替える複数の油圧式係合要素(クラッチやブレーキ)の配置構成についても、適宜の構成に変更できる。その構成に合わせて、複数の油圧式係合要素の動作を油圧制御する油圧制御装置4の構成についても適宜に変更できる。