以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体について説明する。すなわち、本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体は、ディーゼル機関に接続された排ガス管と、
前記排ガス管内の排ガス通路に配置され且つセリアと銀とを含む酸化触媒を備えるPM浄化体と、
前記排ガス管内の排ガス通路に配置され且つゼオライトと前記ゼオライトに担持された遷移金属とを含むNOx選択還元型触媒を備えるNOx浄化体と、
を備えることを特徴とするものである。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体の好適な一実施形態を示す概略模式図である。図1に示すディーゼル排ガス浄化用構造体は、ディーゼル機関1に接続された排ガス管2と、排ガス管2内の排ガス通路の上流側に配置されたPM浄化体3と、排ガス管2内の排ガス通路の下流側に配置されたNOx浄化体4とを備えるものである。なお、図1において、矢印Aはガス流を示す。
図1に示すような構成のディーゼル排ガス浄化用構造体は、PM浄化体3の下流側にNOx浄化体4が配置されているため、熱に起因したゼオライトからの脱Alを抑制できる。また、このような構成のディーゼル排ガス浄化用構造体においては、排ガスを先にPM浄化体3に接触することができ、排ガス中に含まれるPMやHCをPM浄化体3に吸着させることができるため、NOx浄化体4に接触するPM等の量が少なく、NOx浄化体4のPM等による被毒が十分に抑制される。そのため、このような構造のディーゼル排ガス浄化用構造体は、より効率的に触媒活性の維持を図ることができ、好適に用いることができるものである。
ディーゼル機関1としては、特に制限されず、例えば、大型トラック等に採用されているディーゼルエンジン等を挙げることができる。また、排ガス管2としては、特に制限されず、排ガスを排出するために用いることが可能なものであれば用いることができる。また、排ガス管2の形状等も特に制限されず、その設計を適宜変更して用いることができる。
また、PM浄化体3は、セリアと銀とを含む酸化触媒を備えるものである。このように、本発明においては、白金等の貴金属を含む酸化触媒ではなく、セリアと銀とを含む酸化触媒を備えるため、比較的低温域においてもPMを酸化して十分に浄化することができる。また、このような本発明にかかる酸化触媒は、白金等の貴金属を含む酸化触媒と比べるとNOを過剰に酸化することなく、適度に酸化することができるものであるため、排ガス中のNOとNO2の濃度の割合をより好適な状態とすることをも可能とする。
このような酸化触媒としては、セリアと銀とを含むものであればよく、特に制限されないが、核となる銀(Ag)の粒子と、前記Agの粒子の周囲を覆っている平均一次粒径が1〜100nmのセリア(CeO2)の微粒子とからなる凝集体からなるものが好ましい。なお、本発明にかかるAgの粒子及びCeO2の微粒子そのものは一次粒子であり、前者が後者により覆われてなる二次粒子を「凝集体(又は一次凝集体)」、さらにそのような凝集体が集合してなる三次粒子を「集合体(又は二次凝集体)」と称する。
また、前記Agの粒子はAgを単独で用いたものであってもよいが、AgとAg以外の他の金属との二種以上の金属からなる合金であってもよい。更に、前記Agの粒子は、その一部が、酸化物を形成していてもよく、他の元素との化合物を形成していてもよい。前記Agの粒子の一部が酸化物や化合物を形成している場合、Agの含有率が0.3質量%以上であることが好ましい。
このようなAgの粒子は、含酸素物質の少なくとも酸素を遊離させ、酸素活性種を生成することができるものである。すなわち、このようなAgの粒子は、酸素遊離材として機能する。そして、このようなAgの粒子によって、効率的にPM等を酸化する反応系に酸素原子を取り込むことが可能となる。また、このようなAgの粒子(酸素遊離材)は、含酸素物質捕捉材としても機能することもある。そのため、このようなAgの粒子によって、より低温から大量の酸素活性種を酸素活性種移動材を通じてPMや、HC、CO又はNO等の成分に供給して酸化を促進することが可能となる。
また、このようなAgの粒子の粒径としては、特に限定されないが、大気中500℃で5時間焼成した後の平均粒径が10〜100nm(より好ましくは10〜50nm)であることが好ましく、また、酸素10容量%及び窒素90容量%からなる雰囲気中800℃で5時間焼成した後の平均粒径が10〜400nm(より好ましくは10〜80nm)であることが好ましい。このようなAgの粒子の平均粒径が前記下限未満ではAgの粒子(酸素遊離材)により生成された酸素活性種のCeO2の微粒子(酸素活性種移動材)への受け渡しが阻害される傾向にあり、他方、前記上限を超えるとAgの粒子がCeO2の微粒子によって覆われにくくなる傾向にある。
また、前記セリアの微粒子は、セリウムが価数変動可能なものであることから、還元剤としても作用するものである。そして、このようなセリアの微粒子は、前記Agの粒子(酸素遊離材)により生成された酸素活性種を移動することが可能なものであり、酸素活性種移動材として機能する。
このようなセリアの微粒子は、その価数変化等を通じて酸素活性種(例えば酸素イオン)を移動することのできる材料である。このような材料を用いることによって前記Agの粒子(酸素遊離材)により生成された酸素活性種を受け取ると、酸素活性種はCeO2の微粒子(酸素活性種移動材)を移動して、吸着されているPMに到達することが可能となる。このような酸素活性種が移動する経路は、CeO2の微粒子のバルク内部を通る必要はなく、例えば、CeO2の微粒子の表面を移動できればよい。また、PMを酸化する場合においては、酸素活性種の酸化力が強過ぎると、PMとCeO2の微粒子との間の接触部分が優先的に酸化されてしまい、両者の間の接触状態が失われて空隙が生じるため、PMを完全に酸化することが困難となることから、酸素活性種は適度の酸化力(PMと酸素活性種が直ちに反応せず、酸素活性種がPM上を移動できる程度)を有することが好ましい。
また、このような酸化触媒においては、CeO2の微粒子における酸素活性種の移動度を高めると共にCeO2粒子の粗大化をより確実に防止するために、La、Nd、Pr、Sm、Y、Ca、Ti、Fe、Zr及びAlからなる群から選択される少なくとも一種(特に好ましくはLa及び/又はNd)を更に含有していることがより好ましい。なお、このような添加成分を含有する場合、Ceと添加成分の合計量に対して添加成分の含有量が1〜30mol%程度であることが好ましく、5〜20mol%程度であることがより好ましい。なお、このような添加成分は、CeO2の微粒子中に含有されていることが好ましい。
また、このようなCeO2の微粒子の粒径は、特に限定されないが、大気中500℃で5時間焼成した後の平均粒径が1〜75nm(より好ましくは8〜20nm、更に好ましくは8〜15nm)であることが好ましく、また、酸素10容量%及び窒素90容量%からなる雰囲気中800℃で5時間焼成した後の平均粒径が8〜100nm(より好ましくは8〜60nm、更に好ましくは8〜40nm)であることが好ましい。CeO2の微粒子(酸素活性種移動材粒子)の上記平均粒径が上記下限未満ではスート等のPMとの接触が阻害される傾向にあり、他方、上記上限を超えるとAgの粒子(酸素遊離材粒子)を覆うことが困難となる傾向にある。
また、このような酸化触媒においては、大気中500℃で5時間焼成した後、並びに、酸素10容量%及び窒素90容量%からなる雰囲気中800℃で5時間焼成した後のいずれにおいても、前記Agの粒子(酸素遊離材粒子)の平均粒径が前記CeO2の微粒子(酸素活性種移動材粒子)の平均粒径の1.3倍以上であることが好ましく、2.0倍以上であることがより好ましい。Agの粒子及びCeO2の微粒子の平均粒径が上記条件を満たさないと、Agの粒子の周囲が十分にCeO2の微粒子により覆われず、PMや、HC、CO又はNO等の成分を酸化する能力が低下する傾向にある。
また、このような酸化触媒は、Agの粒子の周囲がCeO2の微粒子により覆われてなるものである。かかるAgの粒子とCeO2の微粒子との比率は特に限定されないが、Agの粒子とCeO2の微粒子との比率(モル比)が4:1〜1:9であることが好ましく、35:65〜60:40であることがより好ましく、40:60〜60:40であることが特に好ましい。Agの粒子の量が上記下限より少ないと、気相から遊離される活性酸素種の量が低下してPMや、HC、CO又はNO等の成分を酸化する能力が低下する傾向にあり、他方、CeO2の微粒子の量が上記下限より少ないと、PMや、HC、CO又はNO等の成分に移動できる活性酸素種の量が低下してPMを酸化する能力が低下する傾向にある。そして、上記の比率が40:60〜60:40であると、Agの粒子の周囲をCeO2の微粒子が覆い易く、且つ、それらの凝集体を形成しない両成分の割合が低下するため特に好ましい。
このような酸化触媒の平均粒径、すなわち前記Agの粒子が前記CeO2の微粒子により覆われてなる凝集体の平均粒径は特に制限されないが、0.05〜0.5μmであることが好ましく、0.07〜0.2μmであることがより好ましい。平均粒径が上記下限未満では含酸素物質とAgの粒子との接触が阻害される傾向にあり、他方、上記上限を超えるとCeO2の微粒子とPM等の接触が阻害される傾向にある。
また、このような酸化触媒は、分散性が高いことが好ましく、全凝集体のうちの60容量%以上のものが前記平均粒径±50%の範囲内の粒径を有していることが好ましい。前記酸化触媒の分散性が、このように高いとPMを酸化する能力がより向上すると共に、DPF等の担体により均一に担持させることが可能となる傾向にある。
さらに、前記酸化触媒は、前記セリアの微粒子の表面に担持されている第三の金属超微粒子を更に備えていてもよい。かかる第三の金属超微粒子が存在すると、セリアの微粒子がCeO2の微粒子(酸素活性種移動材粒子)である場合に、酸素活性種をPMや、HC、CO又はNO等の成分に供給し易くなる傾向にある。
このような第三の金属超微粒子を構成する第三の金属としては、Hのイオン化傾向より小さいイオン化傾向を有するもの(例えば、Au,Pt,Pd,Rh,Ru,Ag,Hg,Cu,Bi,Sb,Ir,Os)であることが好ましく、Agのイオン化傾向以下のイオン化傾向を有するもの(貴金属:例えば、Au,Ag,Cu,Pt,Pd,Rh,Ru,Ir,Os)であることがより好ましく、Agであることが特に好ましい。また、第三の金属超微粒子が、1〜1000個の原子からなることが好ましい。
また、前記酸化触媒は、前記銀の粒子の周囲を覆っている前記セリアの微粒子が、その表面にクラックを生じた状態で凝集していてもよい。さらに、前記酸化触媒の形状は特に限定されないが、前記凝集体が球状であることが好ましい。
次に、このような酸化触媒の製造方法について説明する。このような酸化触媒の製造方法としては、Agの塩とCeの塩とを含有する溶液から、Agの塩に由来するAgの粒子がCeの塩に由来するCe化合物微粒子により覆われている凝集体前駆体を生成せしめる工程と、得られた凝集体前駆体を焼成することによって、核となるAgの粒子と、前記Agの粒子の周囲を覆っている平均一次粒径が1〜100nmのセリアの微粒子とからなる凝集体を備える酸化触媒を得る工程とを含む方法が挙げられる。
このようなAgやCeの塩としては、AgやCeの硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、無機錯塩等の水溶性の塩が挙げられ、中でも硝酸塩(例えば、硝酸銀や硝酸セリウム)が好適に用いられる。また、Agの塩とCeの塩とを含有する溶液を調製するための溶媒としては、特に制限されず、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の単独又は混合系溶媒)等の各種溶媒が挙げられるが、水が特に好ましい。
なお、Agの塩とCeの塩との配合量(仕込み量)は、得られるAgの粒子とCeO2の微粒子との比率と完全には一致する必要はなく、得ようとする酸化触媒におけるAgの粒子とCeO2の微粒子との組み合わせや比率の好適条件に応じてAgの塩とCeの塩との組み合わせや配合量の条件が適宜設定される。また、Ceの塩に対してAgの塩が過剰に存在するようにすると、溶液中に生成するCeO2の微粒子を全て凝集体の一部とさせ易くなる傾向にあり、凝集体以外の成分が溶液中に生成しないので好ましい。
また、このような酸化触媒の製造方法においては、前記凝集体前駆体を生成せしめる工程において、pH調整剤の存在下でCe化合物微粒子を生成せしめ、前記Ce化合物微粒子の還元作用によって前記Agの粒子を析出させることによって前記凝集体前駆体を生成せしめることが好ましい。
酸化還元反応が起きるための要件はAgとCeとの電位で説明することができるが、電位はpH依存性がある。一般的に、pHが大きくなるほど電位は低下する。したがって、このような酸化触媒の製造方法においては、適宜pH調整剤を添加して酸化還元反応を制御することが好ましい。また、pH調整剤を添加することによって、活性化エネルギーも変化することから、酸化還元反応を最適条件にすることが可能である。このようなpH調製剤としては、NaOH、KOH、NH3、HNO3、H2SO4が例示されるが、一般的な酸やアルカリを用いれば足りる。
なお、Agは酸性側では電位が高いため、反応が早く進行し過ぎるため、粗大なAgが析出し易くなる傾向があることから、塩基の存在下でアルカリ性とすることが好ましい。その際、pH調整剤としてNaOHを用いると沈殿が生じてしまうことから、アンモニアでアルカリ性とすることが好ましい。この場合には、アンモニアは錯化剤としても機能している。また、このような塩基の濃度は特に限定されないが、塩基としてアンモニアを用いる場合には一般的には1〜50%程度のアンモニア濃度を有する溶液を用いることが好ましい。さらに、この場合におけるCe化合物微粒子は、Ceの水酸化物であると考えられる。
また、このような酸化触媒の製造方法においては、前記凝集体前駆体を生成せしめる工程において、錯化剤の存在下で前記Agの塩に由来する第一の金属化合物を生成せしめ、前記Ce化合物微粒子の還元作用によって前記第一の金属化合物を還元して前記銀の粒子を析出させることがより好ましい。
さらに、酸化還元反応を最適な条件にするためには、上記のようにpH調整剤を添加することが好ましいが、その場合、特にpHによっては沈殿物を生じることがある。そこで、錯化剤を用いない場合に沈殿物が生成する条件であっても、錯化剤を添加することにより、金属塩の状態とすることができる。このようにすることにより、電位や活性化エネルギーも変化するため、適宜条件を合わせることが可能となる。例えば、Agを[Ag(NH3)2]+とすることが好ましい。このような錯化剤としては、アンモニア、有機酸(グリコール酸、クエン酸、酒石酸等)のアルカリ塩、チオグリコール酸、ヒドラジン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、グリシン、ピリジン、シアン化物が例示される。
また、このような酸化触媒の製造方法においては、前記凝集体前駆体を生成せしめる工程において、温度調整することが好ましい。反応溶液の温度条件は、酸化還元反応を支配する重要な因子である。溶媒が液体として機能している範囲で溶液の温度を適宜調整することが好ましい。例えば、30℃以上とすることが好ましく、60℃以上とすることがより好ましい。そして、1〜3気圧、100〜150℃程度の条件とすると確実に反応を起こすことができる傾向にあり、また反応時間を短縮できることから産業への応用上も好ましい。
なお、前記凝集体前駆体を生成せしめる工程において、Ag及びCeの塩溶液にpH調整剤含有溶液(例えば塩基性溶液)を添加・混合するいわゆる「沈殿法」であっても、pH調整剤含有溶液(例えば塩基性溶液)にAg及びCeの塩溶液を添加・混合するいわゆる「逆沈殿法」であってもよい。この場合において、Agの塩、Ceの塩の順、又はその逆の順序で逐次添加・混合してもよい。また、反応時間は特に限定されないが、好ましくは0.1〜24時間程度、より好ましくは0.1〜3時間程度かけて凝集させることが好ましい。また、錯化剤を用いる場合には、予め錯化剤により金属塩としてから上記操作を行ってもよい。
また、このような前記凝集体前駆体を生成せしめる工程における反応溶液中の固形分濃度は特に制限されないが、1質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが更に好ましい。固形分濃度が前記下限未満では、凝集処理の促進効果が低下する傾向にあり、他方、上記上限を超えると銀の粒子を核とした凝集体を得ることが困難となる傾向にある。このように凝集処理を行うことで、前述のように銀の粒子がCe化合物微粒子により覆われている凝集体前駆体が効率良く且つ確実に得られるようになる。
さらに、このような凝集体前駆体の平均粒径は特に制限されないが、0.05〜0.5μmであることが好ましく、0.07〜0.2μmであることがより好ましい。また、かかる凝集体前駆体の分散性が高いことが好ましく、全凝集体前駆体のうちの60容量%以上のものが前記平均粒径±50%の範囲内の粒径を有していることが好ましい。凝集体前駆体の分散性がこのように高いと、得られる酸化触媒の分散性が高くなり、DPF等の担体により均一に担持させることが可能となる傾向にある。
そして、このような凝集処理によって得られた凝集体前駆体を、必要に応じて洗浄した後に、焼成することによって、前述の酸化触媒を得ることができる。かかる焼成の際の条件は特に限定されないが、一般的には酸化雰囲気(例えば、空気)中において300〜600℃で1〜5時間程度かけて焼成することが好ましい。
さらに、このような酸化触媒の製造方法においては、前記Ce化合物微粒子又は前記CeO2の微粒子の表面に第三の金属超微粒子を担持せしめる工程が更に含まれていてもよい。このように第三の金属超微粒子を担持せしめる方法としては、(i)前記凝集処理によって得られた凝集体前駆体を焼成した後にセリアの微粒子の表面に第三の金属超微粒子を担持せしめる方法と、(ii)前記凝集処理と同時にCe化合物微粒子の表面に第三の金属超微粒子を析出させる方法が例示される。
方法(i)においては、前述の第三の金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩等を用いて、いわゆる含浸担持させる方法、或いは、金属酸化物表面での酸化還元反応を利用する方法を採用することができる。前者の含浸担持法は、触媒等を得る際に用いられる一般的な金属超微粒子の担持法である。
一方、後者の方法は、例えばAg+をセリアの微粒子中の欠陥サイト(例えば、CeO2が部分的にCe3+となっている部分)により還元させることにより金属超微粒子を析出させる方法である。その際、析出反応速度を制御して金属超微粒子の粒径を制御するために、必要に応じて錯化剤を添加することが好ましい。例えば、AgNO3にアンモニア水を滴下することにより[Ag(NH3)2]+を生成させると、酸化還元電位が変化して析出速度が低下するため、より微細な金属超微粒子が得られる傾向にある。
また、方法(ii)は、前述の凝集処理時の酸化還元反応を利用するものであり、第三の金属がAgである場合に特に好ましい方法である。この方法においては、前述の凝集体前駆体を生成せしめる工程において、Ce化合物微粒子により第一の金属が析出されると同時に、Ce化合物微粒子の表面にも第三の金属超微粒子が析出されるものである。
また、PM浄化体3は前記酸化触媒を備えるものであればよく、その形態は特に制限されず、基材に前記酸化触媒を担持させたものを用いることができる。ここで用いられる基材としては特に制限されず、DPF基材、モノリス状基材、ハニカム状基材、ペレット状基材、プレート状基材、発泡状セラミック基材等が好適に採用される。また、このような基材の材質も特に制限されないが、コージエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。このようなPM浄化体3の中でも、PM粒子と前記酸化触媒との接触性を高め、効率よくPMを酸化させる観点から、ウォールスルー型ハニカム形状の基材に前記酸化触媒を担持させたものが好適に用いられる。
PM浄化体3において前記基材に付与する酸化触媒の量は特に制限されず、対象とするディーゼル機関等に応じて適宜調整されるが、基材体積1リットルに対して酸化触媒の量が10〜300g程度となる量が好ましい。なお、PM浄化体3としては、酸化触媒自身をペレット化する等して用いることもできる。また、このようなPM浄化体3においては、前記基材が1〜300μmの細孔を有するものであり、前記細孔内に前記凝集体の平均粒径の0.5〜50倍の平均厚さを有するコート層が前記酸化触媒により形成されていることが好ましい。なお、PM浄化体3においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、前記酸化触媒とともに他の成分を更に備えていてもよい。このような他の成分としては、核となるPt、Rh、Pd、Ru、Ir、Os、Au等の第一の金属粒子と、前記第一の金属粒子の周囲を覆っている平均一次粒径が1〜100nmのLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd等の第二の金属酸化物微粒子とからなる凝集体であってもよい。
次に、PM浄化体3の好適な製造方法について説明する。PM浄化体3の好適な第一の製造方法は、第一の酸化触媒分散液を基材に接触させた後に焼成することによってPM浄化体3を得ることを特徴とする方法である。また、PM浄化体3の好適な第二の製造方法は、第二の酸化触媒分散液を基材に接触させた後に焼成することによってPM浄化体3を得ることを特徴とする方法である。
このような第一の酸化触媒分散液は、前記酸化触媒と、分散媒とを含有するものである。このような第一の酸化触媒分散液は、バインダーを更に含有していることが好ましい。ここで用いるバインダーは特に制限されず、例えばセリアゾル等が好適に用いられる。また、酸化触媒とバインダーとの混合比率も特に制限されず、酸化触媒とバインダーとの混合比率が重量比で99:1〜80:20程度であることが好ましい。例えば、バインダーを用いた場合であっても、超音波処理により容易に分散性の高い分散液(スラリー)を得ることができる。
また、第二の酸化触媒分散液は、上記酸化触媒の製造方法の過程で得られた凝集体前駆体と、分散媒とを含有するものである。このような第二の酸化触媒分散液においては、上述の酸化触媒の製造過程で得られた凝集体前駆体を含有する溶液から、系中の残存イオンを50〜99.9%分離して得られた凝集体前駆体を含有していることが好ましい。凝集する段階でもある程度の分散性はあるが、塩や錯化剤に起因する残存イオンを除去することにより非常に分散性の高い分散液を得ることができるようになる。
ここで、前記第一及び第二の酸化触媒分散液を基材に接触させる方法は特に制限されないが、例えばDPF等のフィルタ基材の細孔内に入り込ませる際には超音波をかけながら接触させることが好ましい。また、この場合の焼成条件は、前述の焼成条件と同様の条件が好ましい。
また、PM浄化体3の第二の製造方法によれば、酸化触媒が前記凝集体である場合には、PM、HC、CO又はNO等を酸化できる成分が凝集体自身であるゆえ、それ自身がバインダーの役割を果たすことから、より効果的なPM浄化体3を提供できる。なお、上記の第二の酸化触媒分散液を基材に接触させた後に焼成して基材を得る方法は、上記の酸化触媒を得る過程において得られた凝集体に限定されず、それ以外の基材を得る場合にも適用することができる。すなわち、凝集体自身がバインダーの役割を果たすものであれば、同一種同士の粒子の凝集体であってもよい。この場合において、均一なコート層を得るためには凝集体の分散性が高いことが好ましい。また、薄層コートを行うためには粒子径が小さいことが好ましい。
NOx浄化体4は、ゼオライトと前記ゼオライトに担持された遷移金属とを含むNOx選択還元型触媒を含有するものである。このようなNOx選択還元型触媒は、尿素等の還元剤を添加することで効率よくNOxを浄化することができるものである。
このようなゼオライトとしては特に制限されず、結晶性のアルミナケイ酸塩であればよく、天然ゼオライトあっても、あるいは合成ゼオライトであってもよい。このようなゼオライトとしては、例えば、ホウフッ石群、ホウソーダ石群、リュウフッ石群、モルデンフッ石群等の各種のゼオライト族に属する鉱物系のゼオライト;β型、A型、X型、Y型、L型、MFI型等のゼオライト;フェリエライト型ゼオライト;フィリップサイト型ゼオライト;水和ソーダライト型ゼオライトを挙げることができる。このようなゼオライトは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、このようなゼオライトは、公知の製造方法を適宜採用して得られるものを用いてもよく、また、市販されているものを用いてもよい。
また、ゼオライトとしては、ZSM−5型ゼオライト、ベータ型ゼオライト及びフェリエライト型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種のゼオライトを用いることが好ましい。このようなゼオライトは、耐久性が高く、高いNOx吸着性能を維持できる傾向にある。
さらに、このようなゼオライトとしては、Si/Al2のモル比が10〜100であることが好ましく、20〜60であることがより好ましい。このようなモル比が前記下限未満では、耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、イオン交換サイトが減少し、活性が低下する傾向にある。
また、前記ゼオライトに担持された遷移金属としては、特に制限されず、例えば、クロム、鉄、ニッケル、銅、セリウム、プラセオジム、テルビウム、マンガン等を挙げることができる。更に、このような遷移金属としては、低温域での活性の観点から、鉄、銅、マンガンからなる群から選択された少なくとも1種の金属が好ましく、鉄が特に好ましい。なお、これらの遷移金属は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
このようなNOx選択還元型触媒においてゼオライトに担持された遷移金属の全担持量は、遷移金属が担持されたゼオライトの総量に対して金属換算で1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがより好ましい。このような遷移金属の担持量が前記下限未満では、遷移金属の担持量が少なすぎてゼオライトにイオン交換により担持される遷移金属の高活性種(例えば、遷移金属がFeの場合にはFe3+イオン)の量が十分なものとならない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、全遷移金属中の不活性種(例えば、遷移金属がFeの場合には、結晶性のα−Fe2O3等)の割合が増加し、ゼオライトの細孔が不活性種に塞がれるため、高活性種に対するNOxの接触が阻害されてNOxの吸着量が不十分となる傾向にある。
また、このようなNOx選択還元型触媒の形態は特に制限されず、粉末状の触媒を定法によりペレット成形してペレット状の触媒としてもよく、更には粉末状の触媒を含有するスラリーを他の基材に被覆成形して用いてもよい。
次に、このようなNOx選択還元型触媒の製造方法について説明する。このようなNOx選択還元型触媒の製造方法は特に制限されず、ゼオライトに遷移金属を担持することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ゼオライトに遷移金属の塩化物の水溶液を含浸担持せしめ、その後、乾燥させて、大気中において焼成する方法を採用することができる。
このようなNOx選択還元型触媒の製造方法として好適な方法としては、前記ゼオライトと遷移金属の塩化物とを300℃以上の温度条件で熱処理して前記ゼオライトに遷移金属を担持せしめる方法を挙げることができる。
このような熱処理を施すことによって、遷移金属の塩化物を昇華させて、その蒸気をゼオライトと接触せしめてゼオライトに遷移金属を担持させる。また、遷移金属の塩化物の蒸気がゼオライトの細孔内を容易に拡散することから、ゼオライトのイオン交換サイトにおけるFeのイオン交換率を十分に向上させることができる。そのため、このような熱処理を施すことで、高活性種(例えば遷移金属がFeの場合には鉄(III)イオン)として前記ゼオライトに担持された遷移金属の量を、高濃度(好ましくは、前記NOx選択還元型触媒の全量に対して金属換算で1.0質量%以上)とすることが可能となり、得られるNOx選択還元型触媒により高い触媒活性を発揮させることが可能となる。
また、このようなゼオライトとしては、より効率的に遷移金属の塩化物の蒸気を細孔内に拡散させるために予め脱気処理しておくことが好ましい。このような脱気処理の方法としては特に制限されないが、例えば、N2ガス流通下において300〜600℃程度の温度条件で0.5〜10時間程度加熱して脱気する方法を挙げることができる。
また、このような遷移金属の塩化物としては特に制限されないが、前述のようにゼオライトに遷移金属を担持させるために熱処理によって遷移金属の塩化物を昇華させることから、例えば、遷移金属の塩化物が塩化鉄(III)の場合には、その無水結晶又は六水和物結晶をそのまま用いることが好ましい。なお、このような遷移金属の塩化物は、公知の製造方法を適宜採用して得られるものを用いてもよく、市販されているものを用いてもよい。また、より効率的にNOx選択還元型触媒を製造するために、熱処理を施す前に、予め前記ゼオライトと遷移金属の塩化物とを混合して用いることが好ましい。このような混合の方法は特に制限されず、単なる物理混合であってもよい。
また、熱処理の温度条件は上述のように300℃以上(より好ましくは400〜700℃)である。このような温度条件が300℃未満では、遷移金属の塩化物を昇華させてゼオライトに遷移金属を担持することが困難となり、他方、前記上限を超えると、ゼオライトに脱アルミニウム現象や構造破壊等が起き、得られるNOx選択還元型触媒の活性が不十分となる傾向にある。また、このような温度条件における加熱時間としては特に制限されないが、ゼオライトに遷移金属を十分に担持させるために0.5〜3時間程度であることが好ましい。更に、このような加熱は、還元雰囲気又は不活性ガス雰囲気下(例えばN2ガス)において行うことが好ましい。
そして、このような熱処理を施した後においては、大気中において300〜700℃程度の温度条件で1〜5時間程度加熱して焼成することが好ましい。このようにして加熱焼成することで、還元された遷移金属を再酸化し、触媒が作動し易くなる傾向にある。
次いで、NOx選択還元型触媒を製造するのに好適な第二の製造方法について説明する。すなわち、NOx選択還元型触媒の第二の製造方法は、還元雰囲気又は不活性雰囲気下において、前記ゼオライトに遷移金属を担持させた吸着材前駆体を400℃以上の温度条件で熱処理し、NOx選択還元型触媒を得ることを特徴とする方法である。
また、このような吸着材前駆体の製造方法としては、ゼオライトに遷移金属を担持せしめることが可能な方法であればよく、特に制限されず、例えば、遷移金属の塩(例えば遷移金属がFeの場合にはFe(NO3)39H2O等)が溶解した水溶液にゼオライトを含浸せしめた後に蒸発乾固することによりゼオライトに遷移金属を担持せしめる方法等の公知の方法を適宜採用することができる。
また、このような吸着材前駆体を製造する際に用いられる遷移金属の塩の量としては、用いるゼオライトの種類や目的とする触媒の設計等に応じて適宜その量を調整するものではあるが、ゼオライト中のAlと遷移金属とのモル比(遷移金属/Al)が0.02〜10となる量であることが好ましく、0.1〜2となる量であることがより好ましい。このようなモル比が前記下限未満では、担持される遷移金属の量が少なくなって最終的に得られる触媒中の金属の高活性種の量が十分なものとならない傾向にあり、他方、前記上限を超えると金属の高活性種以外の不活性種などが増加し、ゼオライト細孔が塞がれるため、NOxの接触が阻害されてNOx吸着量が不十分となる傾向にある。
また、第二の製造方法においては、還元雰囲気又は不活性雰囲気下において前記吸着材前駆体に熱処理を施す。このように還元雰囲気又は不活性雰囲気下において熱処理を施す理由を以下に説明する。すなわち、高温の還元雰囲気又は不活性雰囲気下においては、ゼオライトに担持された遷移金属の低活性種は還元されてゼオライトとの結合性が弱くなるため、還元された遷移金属の低活性種は移動性が向上してゼオライトの細孔内を拡散し易くなる。これにより遷移金属の低活性種による細孔の閉塞が防止され、更に細孔内を拡散した低活性種がゼオライトの細孔内のイオン交換サイトに達すると、イオン交換により高活性種(例えば、Fe3+イオン)として担持される。そのため、還元雰囲気又は不活性雰囲気下において熱処理することで、ゼオライトに担持される遷移金属の高活性種とNOxとの接触性を向上させることができ、更には前記遷移金属の高活性種の量を増加させることが可能となる。なお、ここにいう還元雰囲気又は不活性雰囲気としては、例えばH2(5容量%)、N2(95容量%)からなるガスの雰囲気、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気が挙げられる。
また、このような熱処理に際しては、前記吸着材前駆体を400℃〜900℃(より好ましくは650℃〜850℃)の範囲の温度条件下で熱処理する。このような熱処理の温度条件が400℃未満では、熱処理による遷移金属の還元性が低下して遷移金属の低活性種をゼオライト細孔内に十分に拡散することができないため遷移金属の高活性種として担持された遷移金属の量が十分なものとならない。他方、前記熱処理の温度条件が900℃を超えると、ゼオライトに脱アルミニウム現象や構造破壊等が起き、得られる触媒に十分な活性が得られない。
また、このような熱処理の時間としては特に制限されないが、1時間以上であることが好ましい。このような熱処理の時間が前記下限未満では、低活性種(例えば、遷移金属がFeの場合には、結晶性のα−Fe2O3等)をゼオライト細孔内に拡散させてイオン交換により高活性種(例えば、遷移金属がFeの場合にはFe3+イオン)を生成することが困難になり、ゼオライトに担持される高活性種の量が低下する傾向にある。
そして、このような熱処理を施した後においては、大気中において300〜700℃程度の温度条件で1〜5時間程度加熱して焼成することが好ましい。このようにして加熱焼成することで、還元された遷移金属を再酸化し、触媒が作動し易くなる傾向にある。
以上、本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体の好適な一実施形態について説明したが、本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明においては、PM浄化体3の配置位置やNOx浄化体の配置位置、排ガス管の形状等は特に制限されず、目的とする構成に合せて適宜その設計を変更することができ、例えば、図2に示すディーゼル排ガス浄化用構造体を好適に用いることができる。
図2に示すディーゼル排ガス浄化用構造体は、ディーゼル機関1に接続された排ガス管2と、排ガス管2内の排ガス通路の上流側に配置されたNOx浄化体5と、排ガス管2内の排ガス通路の中流域に配置されたPM浄化体3と、排ガス管2内の排ガス通路の下流側に配置されたNOx浄化体4とを備えるものである。なお、図2において、矢印Aはガス流を示す。
このようなディーゼル機関1、排ガス管2、PM浄化体3、NOx浄化体4は図1に示すディーゼル排ガス浄化用構造体において説明したものと同様のものである。また、NOx浄化体5は、NOxを吸着、浄化することが可能なものであれば特に制限されず、NOx浄化体4と同様のものを用いることができる。
そして、図2に示すディーゼル排ガス浄化用構造体は、前述のように、PM浄化体3よりも上流側にNOx浄化体5が配置されていることから、排ガスが低温である場合にNOx浄化体5に排ガス中のNOを十分に吸着させることが可能となる。そのため、図2に示すような構成とすることで、ディーゼル排ガス浄化用構造体は、低温時のNOxの排出量をより低減できる傾向にある。
以上、本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体について説明したが、以下、本発明の排ガスの浄化方法について説明する。
本発明の排ガス浄化方法は、上記本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体に排ガスを接触せしめて排ガスを浄化することを特徴とする方法である。このような本発明の排ガス浄化方法の好適な一実施形態として、上記本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体として図1に示すディーゼル排ガス浄化用構造体を用いた場合の排ガスの浄化方法について説明する。
図1に示す上記本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体を用いた場合においては、先ず、ディーゼル機関1から排出された排ガスは、排ガス供給管2に流入し、排ガス供給管2の上流側に備えられたPM浄化体3に供給される。そのため、排ガス中のPMやHCは、PM浄化体に吸着され、酸化される。本発明においては、特に、PM浄化体3は排ガス温度が比較的低温(好ましくは350℃程度以上、より好ましくは350〜600℃)においてPMを十分に浄化することができる。なお、前述のように、PM浄化体3は、排ガス中に含まれるNOの一部を酸化してNO2とする。
次に、PM浄化体3に供給された後の排ガスは、排ガス供給管2に再度流入し、排ガス供給管2の下流側に備えられたNOx浄化体4に供給された後、外部に排出される。このように、本発明においては、PM浄化体3に供給された後の排ガスがNOx浄化体4に供給されるため、NOx浄化体4の熱劣化が十分に抑制される。このように、本発明においては、PM浄化体3が比較的低温(350〜600℃程度)であっても十分にPMを浄化することが可能であることから、温度条件を制御することなく、通常の使用条件において十分に排ガスを浄化することが可能となり、NOx浄化体の熱劣化も十分に防止することができる。
また、NOx浄化体4によるNOx浄化の際には、尿素(還元剤)を添加することが好ましく、PM浄化体3とNOx浄化体4との間において排ガスに尿素を添加することがより好ましい。還元剤として尿素を用い、PM浄化体3とNOx浄化体4との間において排ガスに尿素を添加することで、酸素過剰雰囲気下において排ガスとNOx浄化体4とを接触せしめることによって、前記ゼオライトに担持された遷移金属で排ガス中のNOxを選択的にN2に還元でき、より効率的にNOxを浄化することが可能となる。なお、このような尿素は水溶液として添加されることが好ましい。また、このような尿素を添加するための尿素添加手段は特に制限されず、尿素を添加することが可能となるような公知の装置を適宜用いることができ、例えば、インジェクタを用いてもよい。
以上、本発明の排ガス浄化方法の好適な一実施形態について説明したが、本発明の排ガス浄化方法は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体として図1に示すディーゼル排ガス浄化用構造体を用いる代わりに、図2に示すディーゼル排ガス浄化用構造体を用いてもよい。このようにして図2に示すディーゼル排ガス浄化用構造体を用いた場合においては、前述のように、排ガスが低温である場合にNOx浄化体5に排ガス中のNOを十分に吸着させて、ディーゼル排ガス浄化用構造体から排出されるNOxの排出量を低減でき、排ガスの温度が高温になったときに吸着したNOを排出して、下流側のNOx浄化体4により効率的にNOxを浄化することができるため、より効率的に排ガスを浄化することが可能となる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(製造例1:PM浄化体の製造)
先ず、Ceの硝酸塩及びAgの硝酸塩を1:1のモル比で混合した溶液を得た後、前記溶液に撹拌下で25質量%のアンモニア水を滴下してCeとAgの共沈殿物を形成させ、150度で熟成処理した。次いで、得られた共沈物を取り出し、大気中において500℃の温度条件で6時間熱処理を施し、CeO2とAgとを含むCeO2−Ag触媒を得た。
次に、得られたCeO2−Ag触媒をイオン交換水中に加えてスラリー化し、そのスラリー300gを、開放口を市松上に目封じしたコージエライトからなる2LサイズのDPF(ウォールスルー型ハニカム形状の基材)にコートし、更に、300℃の温度条件で3時間焼成して、PM浄化体を調製した。
(製造例2:NOx浄化体の製造)
先ず、ZSM−5型ゼオライト(東ソー株式会社製の商品名「HSZ−940」)に、塩化Feを水溶液中で担持処理し、その後大気中で500℃の温度条件で2時間焼成し、Fe担持ゼオライト触媒(SCR触媒)を得た。得られたFe担持ゼオライト触媒におけるFeの担持量はZSM−5型ゼオライトのAl量と当モル量であった。そして、得られたFe担持ゼオライト触媒300gを2Lのストレート型ハニカム形状の基材にコートしてNOx浄化体を調製した。
(比較例1)
図1に示す構成のディーゼル排ガス浄化用構造体を用い、排ガスを浄化させた。すなわち、ディーゼル機関1として2Lのディーゼルエンジンを用い、PM浄化体3として製造例1で調製したPM浄化体を用い、NOx浄化体として製造例2で調整したNOx浄化体を用いたディーゼル排ガス浄化用構造体を用いて、ディーゼル機関1から排出される排ガスを浄化させた。また、排ガスを浄化させる際においては、図示を省略したインジェクタ(尿素添加手段)によってPM浄化体3とNOx浄化体4の間から尿素水溶液を噴霧添加し、排ガス中に尿素を添加した。なお、尿素水溶液の添加量は、排気中のNOxと添加する尿素とが当モル量となるような量にした。また、ディーゼル機関1は、エンジンの回転数を1600rpmとし、負荷を変えて排ガスの温度を350℃に調整しながら20時間運転した。
このような排ガス浄化の際に、排ガスの圧力変化と、初期及び20時間経過後の350℃の温度条件でのNOx浄化率とを測定した。測定の結果として、経時による排ガスの圧力変化を示すグラフを図3に示し、用いたディーゼル排ガス浄化用構造体の初期及び20時間後のNOx浄化率を図4に示す。なお、用いたディーゼル排ガス浄化用構造体の初期のNOx浄化率は83%であり、20時間後のNOx浄化率は81%であった。
(実施例1)
図2に示す構成のディーゼル排ガス浄化用構造体を用い、NOx浄化体5として製造例2で調製したNOx浄化体を用い、排ガス温度が交互に150℃で1時間、350℃で3時間となるようにして負荷を変えながらディーゼル機関1を20時間運転し、排ガス温度が350℃の時にのみ尿素水溶液を噴霧添加し、尿素水溶液の添加量を尿素の量が350℃の時のNOx量の1.3倍のモル量となるようにした以外は、比較例1と同様にして排ガスを浄化させた。
このような排ガス浄化の際の排ガスの圧力変化を測定した。得られた排ガスの圧力変化を示すグラフを図5に示す。また、初期及び20時間経過後のディーゼル排ガス浄化用構造体を用い、150℃及び350℃の温度条件下におけるNOx浄化率を測定した。このような測定により得られたディーゼル排ガス浄化用構造体の初期及び20時間後のNOx浄化率を図6に示す。なお、用いたディーゼル排ガス浄化用構造体の初期のNOx浄化率は150℃の温度条件で77%であり、350℃の温度条件で86%であり、20時間後のNOx浄化率は150℃の温度条件で76%であり、350℃の温度条件で84%であった。
(比較例2)
PM浄化体3としてCeO2−Ag触媒をコートしていないDPFを使用した以外は比較例1と同様にして排ガスを浄化させた。なお、比較例2においては、排ガスの圧力が7KPa以上となった時に、PM浄化体3に対してヒータを用いて700度の加熱を施した。
このような排ガス浄化の際に、排ガスの圧力変化と、初期及び20時間経過後の350℃の温度条件でのNOx浄化率とを測定した。測定の結果として、経時による排ガスの圧力変化を示すグラフを図3に示し、用いたディーゼル排ガス浄化用構造体の初期及び20時間経過後のNOx浄化率を図4に示す。なお、用いたディーゼル排ガス浄化用構造体の初期のNOx浄化率は73%であり、20時間後のNOx浄化率は51%であった。
(比較例3)
PM浄化体3及びNOx浄化体5としてCeO2−Ag触媒をコートしていないDPFを使用した以外は実施例1と同様にして排ガスを浄化させた。
初期及び20時間経過後のディーゼル排ガス浄化用構造体を用い、150℃及び350℃の温度条件下におけるNOx浄化率を測定した。このような測定により得られたディーゼル排ガス浄化用構造体の初期及び20時間後のNOx浄化率を図6に示す。なお、用いたディーゼル排ガス浄化用構造体の初期のNOx浄化率は150℃の温度条件で6%であり、350℃の温度条件で72%であり、20時間後のNOx浄化率は150℃の温度条件で3%であり、350℃の温度条件で50%であった。
〈ディーゼル排ガス浄化用構造体(実施例1及び比較例1〜3)の評価結果〉
図3に示す結果からも明らかなように、比較例2で用いたディーゼル排ガス浄化用構造体においては、運転時間の経過とともに排ガスの圧力が高くなることが確認され、ヒータによる700℃の加熱によって圧力が低下することが確認された。このような結果から、比較例2で用いたディーゼル排ガス浄化用構造体においては、350℃の温度条件下においてはPMを十分に浄化できないことが分かる。これに対して、比較例1で用いたディーゼル排ガス浄化用構造体(比較例1)においては、圧力上昇が見られず、PMが堆積していないことが確認され、350℃の温度条件下においてもPMを酸化して浄化できることが確認された。
また、図4に示す結果からも明らかなように、比較例2で用いたディーゼル排ガス浄化用構造体においては、排ガス中のNOがそのままNOx浄化体4に供給されることから初期の状態でも70%程度しかNOxを浄化することができないことが分かった。更に、比較例2で用いたディーゼル排ガス浄化用構造体においては、20時間の運転後、ヒータによる700℃の加熱の熱履歴が加わっているため、NOx浄化体4が熱劣化し、NOx浄化率が低下していることが確認された。これに対して、比較例1で用いたディーゼル排ガス浄化用構造体(比較例1)においては、初期の状態において80%以上のNOxを浄化でき、高度なNOx浄化性能を有することが確認され、更には20時間の運転後においても81%以上のNOxを浄化でき、NOx浄化性能の低下を十分に抑制できることが確認された。このような結果から、比較例1で用いたディーゼル排ガス浄化用構造体(比較例1)においては、PM浄化体により排ガス中のNOの半分近くをNO2に酸化することができるために初期の浄化率が高くなるものと推察される。更に、比較例1で用いたディーゼル排ガス浄化用構造体(比較例1)においては、ヒータによる700℃の加熱が不必要であることから、熱負荷がなく、NOx浄化性能の低下を十分に抑制でき、耐久性を向上させることができることが分かった。
さらに、図5に示す結果からも明らかなように、本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体(実施例1)においては、150℃という低温域においてはPMの堆積が見られるが350℃という温度条件でPMを十分に浄化して排ガスの圧力を低下させることができることが確認された。
また、図6に示す結果からも明らかなように、本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体(実施例1)においては、初期の状態において150℃の温度条件でNOxを上流側のNOx浄化体5に吸着させることができるため、高い浄化性能を示すことが確認された。また、350℃の温度条件下においては、吸着したNOxを放出し、PM触媒でNOをNO2に酸化しつつ下流側のNOx浄化体3でNOxを浄化できるため、高いNOx浄化性能を示すことが確認された。更に、本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体(実施例1)においては、ヒータによる700℃の加熱が不必要であることから、熱負荷がなく、NOx浄化性能の低下を十分に抑制でき、耐久性を向上させることができることが確認された。