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JP4735552B2 - 高強度鋼板および高強度めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

高強度鋼板および高強度めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車用鋼板等の使途に供して有用な、引張強度(TS)が540MPa以上の高強度でかつ高r値(r値≧1.2)を有し、さらにr値の面内異方性(Δr)が、絶対値で0.20以下と小さな、深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法に関するものである。
また、本発明は、上記の高強度鋼板に対してめっきを付与した深絞り性に優れた高強度めっき鋼板の製造方法に関するものである。
近年、地球環境保全の観点から、CO2の排出量を規制するために、自動車の燃費改善が要求されている。加えて、衝突時に乗員の安全を確保するために、自動車車体の衝突特性を中心とした安全性の向上も要求されている。このように、自動車車体の軽量化および自動車車体の強化が積極的に進められている。
自動車車体の軽量化と強化を同時に満たすには、剛性に問題とならない範囲で部品素材を高強度化し、板厚を減ずることによる軽量化が効果的であると言われており、最近では、高強度鋼板(高張力鋼板ともいう)が自動車部品に積極的に使用されている。
この軽量化効果は、使用する鋼板が高強度であるほど大きくなるため、自動車業界では、例えば内板および外板用のパネル用材料として引張強度(TS)が440 MPa以上の鋼板を使用する動向にある。
一方、鋼板を素材とする自動車部品の多くは、プレス加工によって成形されるため、自動車用鋼板には優れたプレス成形性を有していることが必要とされる。しかしながら、高強度鋼板は、通常の軟鋼板に比べて成形性、特に深絞り性が大きく劣化するため、自動車の軽量化を進める上での課題として、TS≧440 MPa、より好ましくはTS≧540 MPaで、しかも良好な深絞り成形性を兼ね備える鋼板に対する要求が高まっており、深絞り性の評価指標であるランクフォード値(以下、r値という)で、平均r値≧1.2 という高r値の高強度鋼板が要求されている。
さらに、適用部品によっては、その面内異方性が小さいことが、同じ平均r値であっても成形性の向上に寄与するため、面内異方性の低減も要求されている。
高r値を維持しながら高強度化を図る手段としては、極低炭素鋼を用い、鋼中に固溶する炭素や窒素を固定する量のTiやNbを添加し、IF(Interstitial atom free)化した鋼をベースとして、これにSi,Mn,Pなどの固溶強化元素を添加する手法がある(例えば特許文献1)。
特開昭56−139654号公報
この特許文献1は、C:0.002〜0.015%、Nb:C%×3〜C%×8+0.020%、Si:1.2%以下、Mn:0.04〜0.8%、P:0.03〜0.10%の組成を有する、引張強さが35〜45kgf/mm2級(340〜440 MPa級)の非時効性を有する成形性の優れた高張力冷延鋼板に関する技術である。
しかしながら、このような極低炭素鋼を素材とする技術では、引張強さが440 MPa以上の鋼板を製造しようとすると、合金元素添加量が多くなり、表面外観上の問題や、めっき性の劣化、2次加工脆性の顕在化などの問題が生じてくることがわかってきた。また、多量に固溶強化成分を添加すると、r値が劣化するので、高強度化を図るほどr値の水準は低下してしまうという問題があった。
また、C量を極低炭素域まで低減するためには、製鋼工程で真空脱ガスを行う必要性が生じるが、これは製造過程でCO2を多量に発生させることになり、地球環境保全の観点からも最適のものとは言い難い。
鋼板の高強度化の方法として、上述したような固溶強化法以外に組織強化法がある。例えば、軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相からなる複合組織鋼板であるDP(Dual-Phase)鋼板がある。このDP鋼板は、一般的に延性については概ね良好であり、優れた強度−延性バランス(TS×El)を有し、さらに降伏比が低いという特徴、すなわち引張強さの割に降伏応力が低く、プレス成形時の形状凍結性に優れるという特徴があるが、r値が低く深絞り性に劣る。これは、結晶方位的にr値に寄与しないマルテンサイトが存在することの他、マルテンサイト形成に不可欠な固溶Cが、高r値化に有効な{111}再結晶集合組織の形成を阻害するからと言われている。
このような複合組織鋼板のr値を改善する試みとして、例えば特許文献2あるいは特許文献3に開示の技術がある。
特公昭55−10650号公報 特開昭55−100934号公報
特許文献2の技術は、冷間圧延後、再結晶温度〜Ac3変態点の温度で箱焼鈍を行い、その後複合組織とするため700〜800℃に加熱した後、焼入れ焼戻しを行う方法である。しかしながら、この方法では、連続焼鈍時に焼入れ焼戻しを行うため、製造コストが問題となる。また、箱焼鈍は、連続焼鈍に比べて処理時間や効率の面で劣る。
特許文献3の技術は、高r値を得るために、冷間圧延後、まず箱焼鈍を行い、この時の温度をフェライト(α)−オーステナイト(γ)の2相域とし、その後連続焼鈍を行うものである。この技術では、箱焼鈍の均熱時にα相からγ相にMnを濃化させる。このMn濃化相は、その後の連続焼鈍時に優先的にγ相となり、ガスジェット程度の冷却速度でも混合組織が得られるものである。しかしながら、この方法では、Mn濃化のために比較的高温で長時間の箱焼鈍が必要であり、そのため鋼板間の密着の多発、テンパーカラーの発生および炉体インナーカバーの寿命低下など製造工程上多くの問題がある。
また、特許文献4には、C:0.003〜0.03%、Si:0.2〜1%、Mn:0.3〜1.5%、Ti:0.02〜0.2%(但し、(有効Ti)/(C+N)の原子濃度比を0.4〜0.8)含有する鋼を、熱間圧延し、冷間圧延した後、所定温度に加熱後、急冷する連続焼鈍を施すことを特徴とする深絞り性及び形状凍結性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造方法が開示されている。
特公平1−35900号公報
この特許文献4中には、質量%で、0.012%C−0.32%Si−0.53%Mn−0.03%P−0.051%Tiの組成の鋼を、冷間圧延後、(α−γ)2相域である870℃に加熱後、100℃/sの平均冷却速度で冷却することにより、r値=1.61、TS=482 MPaの複合組織型冷延鋼板が製造可能であることが開示されている。しかしながら、100℃/sという高い冷却速度を得るには水焼入れ設備が必要となる他、水焼入れした鋼板は表面処理性の問題が顕在化するため、製造設備上および材質上の問題が残る。
また、深絞り性に優れた高強度鋼板およびその製造技術として、特許文献5に開示の技術がある。この技術は、所定のC量を含有し、平均r値が1.3以上、かつ組織中にベイナイト、マルテンサイト、オーステナイトのうち1種類以上を合計で3%以上有する高強度鋼板を得るものであり、その製造方法としては、冷間圧延の圧下率を30〜95%とし、ついでAlとNのクラスターや析出物を形成することによって集合組織を発達させてr値を高めるための焼鈍と、引き続き組織中にベイナイト、マルテンサイト、オーステナイトのうち1種類以上を合計で3%以上有するようにするための熱処理を行うことを特徴とするものである。この方法では、冷間圧延後、良好なr値を得るための焼鈍と、組織を作り込むための熱処理をそれぞれ必要としており、また焼鈍工程では、その保持時間が1時間以上という長時間保持を必要としており、工程的(時間的)に生産性が悪いという問題がある。さらに、得られる組織の第2相分率が比較的高いため、優れた強度−延性バランスを安定的に確保することは難しいという問題がある。なお、r値の面内異方性については、その請求項3において、rL:1.1以上、rD:0.9以上、rC:1.2以上としていることから、面内異方性を積極的に制御する技術とはなっていない。
特開2003−64444号公報
さらに、深絞り性に優れた複合組織鋼板として、特許文献6では、C:0.010〜0.050%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜3.0%、P:0.005〜0.10%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.01%以下、Nb:0.01〜0.3%を含有し、かつ鋼中のNbとCの比が(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7なる関係を満たす鋼組成を有し、面積率で50%以上でのフェライト相と面積率で1%以上のマルテンサイトを含む鋼組織を有し、平均r値が1.2以上であることを特徴とする。
この技術は、特許文献5のように特殊な製造条件を必要とすることなく、高強度の深絞り用鋼板を提供する技術である。しかしながら、本発明者らの研究によれば、この技術では、Nb量と炭素量が高目になると、平均r値は良好であるものの、r値の面内異方性が大きくなる傾向が見られ、高C成分域でのr値の面内異方性が課題となっている。
特開2005−120467号公報
深絞り性に優れる(軟)鋼板を高強度化するに当たり、従来検討されてきた固溶強化による高強度化の方法には、多量のあるいは過剰な合金成分の添加が必要であり、これは、コスト的にも工程的にも、またr値の向上そのものにも課題を抱えるものであった。
また、組織強化を利用する方法では、2回焼鈍(加熱)で長時間加熱が必要であったり、高速冷却設備を必要とするため、製造工程上の問題があった。
さらに、540 MPa以上の高r値を有する高強度鋼板のr値の面内異方性についての制御方法の報告は少なく、r値が高くても異方性が大きいことから、適用用途も限定されるという問題があった。
本発明は、このような従来技術の問題点を有利に解決した、深絞り性が良好でさらにr値の面内異方性の小さい高強度鋼板の安定した製造方法を提案することを目的とする。
また、本発明は、上記の製造方法で得た高強度鋼板に対してめっきを付与した深絞り性に優れ、かつr値の面内異方性の小さい高強度めっき鋼板の製造方法を提案することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を進めたところ、特別なあるいは過剰な合金成分や特別な設備を用いることなく、スラブ加熱温度を、1200℃以下で、かつ鋼中のC量やNb量に応じて調整することにより、特許文献6のような技術において、C量が高い領域での面内異方性の改善に有効に寄与することを見出した。また、巻取り温度を600℃以上の高温にすること、さらに焼鈍処理においては、加熱速度を焼鈍温度付近において特に徐加熱制御することにより、平均r値が1.2以上で深絞り性に優れ、さらにr値の面内異方性も小さく、しかもフェライトとマルテンサイトを含む鋼組織からなる高強度鋼板が得られることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.035〜0.05%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:1.5〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
Al:0.005%〜0.1%、
S:0.01%以下、
N:0.01%以下および
Nb:0.05〜0.12%
を含み、かつ鋼中のNbおよびCの含有量が、
(Nb/93)/(C/12)=0.15〜0.45(式中のNb,Cは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、スラブ加熱温度(SRT)が1000℃以上 1200℃以下で、かつC量:[%C]とNb量:[%Nb](質量%)に応じて、次式
SRT ≦ 25000 [%C][%Nb]+1050
の関係を満足する温度域に加熱し、ついで熱間圧延にて仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取り温度:600〜720℃で巻き取って熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に酸洗および冷間圧延を施して冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に700℃までの平均昇温速度:15℃/s以上、700℃から焼鈍温度:800℃以上 950℃以下までの平均昇温速度:0.1〜2℃/sで焼鈍を行い、ついで焼鈍温度から500℃まで平均冷却速度:5℃/s以上で冷却する冷延板焼鈍工程を順次に施すことを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
2.前記鋼スラブが、前記組成に加えて、さらに質量%で
Ti:0.1%以下および
V:0.1%以下
のうちから選んだ1種または2種を含有し、かつ前記(Nb/93)/(C/12)=0.15〜0.45なる関係に代えて、次式
Ti*>0の場合、Ti*=Ti−1.5S−3.4N(式中のTi,S,Nは各々の元素の含有量(質量%))であり、Ti*≦0の場合、Ti*=0
で表されるTi*とVとNbとCの含有量が、次式
{(Nb/93)+(Ti*/48)+(V/51)}/(C/12)=0.15〜0.45(式中のV,Nb,Cは各々の元素の含有量(質量%))
の関係を満足することを特徴とする上記1に記載の高強度鋼板の製造方法。
3.前記鋼スラブが、前記組成に加えて、さらに質量%で
Mo,CuおよびNiのうちから選んだ1種または2種以上の合計:0.5%以下
を含有することを特徴とする上記1または2に記載の高強度鋼板の製造方法。
4.上記1〜3のいずれか1項に記載の方法で製造した高強度鋼板に対して、さらにめっき処理を施すことを特徴とする高強度めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、C含有量が0.035〜0.05質量%の範囲において、従来の極低炭素IF鋼のように深絞り性に悪影響をおよぼす固溶Cの低減を完全に行わずに、マルテンサイト形成に必要な程度の固溶Cを残存させた状態下で、スラブ加熱温度の低温化、冷延後の再結晶以降の高温域での徐加熱化により、{111}再結晶集合組織を効果的に発達させて、平均r値≧1.2で、かつその面内異方性が小さく(|Δr|≦0.20)、しかもTS≧540 MPaの高強度鋼板を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明の解明経緯について説明する。なお、元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であるが、以下、特に断らない限り、単に「%」で示す。
高r値化、すなわち{111}再結晶集合組織を発達させるには、従来軟鋼板においては、冷間圧延および再結晶前の固溶Cを極力低減することや熱延板組織を微細化することなどが有効な手段とされてきた。一方、前述したようなDP鋼板では、マルテンサイト形成に必要な固溶Cを必要とするため、母相の再結晶集合組織が発達せずr値が低かった。しかしながら、本発明では、{111}再結晶集合組織の発達と、マルテンサイトの形成を可能にする絶妙の好適成分範囲が存在することを新たに見出した。
すなわち、従来のDP鋼板(低炭素鋼レベル)よりもC量を低減するものの、極低炭素鋼に比べるとC量が多い低炭素領域の0.035〜0.05%のC含有量とし、このC量に合わせて適切な量のNb添加あるいはさらにTiやV添加を行うことで、{111}再結晶集合組織の発達と、マルテンサイトの形成が行えることを新たに見出した。
従来から知られているように、Nbは再結晶遅延効果があるため、熱延時の仕上温度を適切に制御することで熱延板組織を微細化することが可能である。また、Nbは鋼中において高い炭化物形成能を有している。本発明では、特に熱延仕上温度を変態点直上の適切な範囲にして熱延板組織を微細化すると同時に、熱延後のコイル巻取り温度も適切にすることで熱延板中にNbCを析出させ、冷延前および再結晶前の固溶Cの低減を図っている。この場合、Ti,Vもその効果はNbほどではないがそれなりにあるので複合して添加することができる。ここで、Nb単独添加の場合は、Nb量をC量との原子比で0.15〜0.4とする。すなわち、
(Nb/93)/(C/12)=0.15〜0.45(式中のNb,Cは各々の元素の含有量(質量%)。以下、同じ)
とすることで、またTiやVを複合添加する場合は、
{(Nb/93)+(Ti*/48)+(V/51)}/(C/12)=0.15〜0.45
ここで、Ti*=Ti−1.5S−3.4N、ただしTi*>0
とすることで、あえてNb,Ti,Vの炭化物として析出しないCを存在させている。
従来、このような、Nb、Ti、Vの炭化物として析出しないCの存在が{111}再結晶集合組織の発達を阻害するとされてきたが、本発明では、全Cの一部をNb,Ti,Vの炭化物として析出させるだけで、高r値化を達成でき、またr値の面内異方性を小さくできると共に、マルテンサイト形成に必要な固溶Cを確保することができる。
このためには、成分だけでなく、製造条件の高精度制御が重要となる。製造条件として重要な要件は、スラブ加熱温度と巻取り温度および焼鈍時の加熱パターンである。HSLA鋼(High Strength Low Alloyed Steel:析出強化鋼)系においては、スラブ加熱温度を高温にしていたが、本発明では、逆に低温化することで、面内異方性の改善が可能となる。その理由は、熱延板の析出物の粗大化によりΔrが負値で大きくなるのを防ぐ効果があると考えられる。この熱延板の析出物の粗大化という観点からは巻取り温度は600℃以上とする必要がある。
鋼成分が、0.04%C−0.5%Si−2.0%Mn−0.03%P−0.005%S−0.035%Al−0.0020%N−0.06%Nb{(Nb/93)/(C/12)=0.19}の鋼スラブを用いて、スラブ加熱温度(SRT)と巻取り温度(CT)を変化させ、仕上圧延出側温度:870℃として熱延板を製造し、ついで冷延−焼鈍を行った場合のΔrについて調べた結果を、図1に示す。
なお、焼鈍時の焼鈍温度は860℃とし、この焼鈍温度までの昇温は、平均昇温速度:15℃/sで一様に昇温する場合と、700℃までは15℃/sで昇温し、700℃から焼鈍温度までは1.5℃/sで昇温する場合の2種類で行った。また、焼鈍温度から500℃までの平均冷却速度はいずれも15℃/sの一定とした。
同図に示したとおり、加熱温度が1250℃、巻取り温度が550℃で、焼鈍温度までの平均昇温速度:15℃/sで一様に昇温した場合には、Δrは−0.90であった。
これに対し、スラブ加熱温度を低温化すると共に、巻取り温度を高温化した場合には、Δrを−0.30まで小さくすることができた。さらに、焼鈍時に昇温速度制御を行った場合には、Δrの絶対値を0.20以下にまで低減することができた。
その理由については、まだ定かではないが、700℃以上で徐加熱の効果が現れることを考慮すると、二相組織における再結晶と変態の競合が生じ、変態の効果が強すぎると、冷延の主方位である{100}<110>〜{221}<110>付近が焼鈍後も継承され、Δrが負値で大きくなるものと考える。そのため、変態をある程度抑制するためにも、冷延板に700℃までの平均昇温速度:15℃/s以上、700℃から焼鈍温度:800℃以上 950℃以下までの平均昇温速度を0.1〜2℃/sで焼鈍を行う必要があることが分かった。
また、成分組成と製造条件とを種々検討した結果、後述するように、Δrを小さくできるスラブ加熱温度には、Nb量とC量が関係することも判明した。
その他の高r値化に対する技術的要素としては次の事柄が考えられる。成分的にIF系にしなくても高いr値が得られることは、固溶Cの存在による{111}再結晶集合組織形成に対する負の要因よりも、熱延板組織の微細化に加え、マトリックス中に微細なNbCを析出させることで冷間圧延時に 粒界近傍に歪を蓄積させ粒界からの{111}再結晶粒の発生を促進するという正の要因が大きいためと考えられる。特にマトリックス中にNbCを析出させることの効果は、従来の極低炭素鋼程度のC量では有効ではなく、本発明のC量レベルにおいて初めてその効果を発揮するものと推測され、この領域を見出したことが本発明の技術思想の骨子の一つとなっている。そして、NbC以外のC、その存在形態はおそらくセメンタイト系炭化物あるいは固溶Cであると推測されるが、これらNbCとして固定されなかったCの存在により、焼鈍工程における冷却時にマルテンサイトを形成可能とし高強度化にも成功したものと考えられる。
次に、本発明に用いる鋼スラブ、すなわち本発明で得ようとする高強度鋼板の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.035〜0.05%
Cは、後述するNbと共に本発明における重要な元素である。このCは、高強度化に有効であり、フェライトを主相としマルテンサイトを含む第2相を有する複合組織の形成を促進する効果をもつ。また、本発明では、SRTを制御してr値の面内異方性を制御するのにCが有効であることおよび540 MPa以上の強度を確実に確保するために、0.035%以上のCを含有させるものとした。とはいえ、良好なr値を得るためには過剰なC添加は好ましくなく、また面内異方性の制御性を考慮して、上限を0.05%とした。より好ましいC量は、0.038%以上 0.045%以下である。
Si:0.01〜1.0%
Siは、フェライト変態を促進させ、未変態オーステナイト中のC量を上昇させてフェライトとマルテンサイトの複合組織を形成させ易くする他、固溶強化の効果もある。これらの効果を得るには、Siは0.01%以上含有させる必要があり、より好ましくは0.05%以上である。
一方、Siを1.0%を超えて含有すると、熱延時に赤スケールが発生するため、製品板とした 時の表面外観を悪くする。また、溶融亜鉛めっき(合金化溶融亜鉛めっきを含む)を施す際にめっきの濡れ性を悪くしてめっきむらの発生を招き、めっき品質が劣化するので、Si量は1.0%以下とする必要がある。より好ましくは0.7%以下である。
Mn:1.5〜3.0%
Mnは、高強度化に有効なだけでなく、マルテンサイト相が得られる臨界冷却速度を低くする作用があり、焼鈍後の冷却時にマルテンサイトの形成を促すために、要求される強度レベルおよび焼鈍後の冷却速度に応じて含有させることが好ましい。また、Mnは、Sによる熱間割れを防止する上でも有効な元素である。このような観点から、Mnは1.5%以上含有させる必要がある。より好ましくは1.8%以上である。一方、3.0%を超える過度の添加はr値および溶接性を劣化させるので、Mn量は3.0%を上限とした。
P:0.005〜0.1%
Pは、固溶強化に有効な元素である。しかしながら、P含有量が0.005%未満では、その効果が現れないだけでなく、製鋼工程において脱りんコストの上昇を招く。従って、Pは0.005%以上含有させるものとする。好ましくは0.01%以上である。一方、0.1%を超える過剰な添加は、Pが粒界に偏析し、耐二次加工脆性および溶接性を劣化させる。また、溶融亜鉛めっき鋼板とする場合には、溶融亜鉛めっき後の合金化処理時に、めっき層と鋼板の界面における鋼板からめっき層へのFeの拡散が抑制され、合金化処理性が劣化する。そのため、高温での合金化処理が必要となり、得られるめっき層は、パウダリング、チッピング等のめっき剥離が生じ易いものとなる。従って、P量の上限は0.1%とする。
Al:0.005%〜0.1%
Alは、鋼の脱酸元素として有用である他、固溶Nを固定して耐常温時効性を向上させる作用があるため、0.005%以上含有する。しかしながら、0.1%を超える添加は合金コストの上昇を招くだけでなく、表面欠陥を誘発するので、0.1%を上限とした。
S:0.01%以下
Sは、不純物であり、熱間割れの原因になるだけでなく、鋼中に介在物として存在し鋼板の諸特性を劣化させるので、極力低減することが好ましいが、0.01%までは許容できるので、上限を0.01%以下とする。
N:0.01%以下
Nは、多すぎると耐常温時効性を劣化させ、多量のAlやTi添加が必要となるため、極力低減することが好ましいが、0.01%までは許容できるので、上限を0.01%とする。
Nb:0.05〜0.12%で、かつ(Nb/93)/(C/12)=0.15〜0.45
Nbは、本発明において最も重要な元素であり、熱延板組織の微細化および熱延板中にNbCとしてCを析出固定させる作用を有し、高r値化に寄与する元素である。さらに、SRTの調整によりr値の面内異方性を制御するという効果を発揮させる観点から:Nbは0.05%以上含有させる必要がある。一方で、過剰のNb添加は、r値の面内異方性の制御が困難となる。また、本発明では、焼鈍後の冷却過程でマルテンサイトを形成させるための固溶Cを必要とするが、過剰のNb添加はこれを妨げる傾向にあるため、上限を0.12%とする。
また、Nb添加の効果を奏するには、特にNb含有量とC含有量とが、(Nb/93)/(C/12)=0.15〜0.45の範囲を満足するように、NbとCを含有させることが重要である。なお、ここで、Nb,Cは各々の元素の含有量(質量%)を表し、(Nb/93)/(C/12)はNbとCの原子濃度比を表している。
本発明では、(Nb/93)/(C/12)が0.15未満では、固溶Cの存在量が多く、高r値化に必要な{111}再結晶集合組織の形成が阻害されることになる。一方、(Nb/93)/(C/12)が 0.45を超えると、r値の面内異方性の制御が困難になるだけでなく、マルテンサイトを形成して強度を540 MPa以上を確保するのに必要なC量を鋼中に存在さ せることを妨げられる。従って、Nbは、0.05〜0.12%で、かつ(Nb/93)/(C/12)=0.15〜0.45を満足する範囲で含有させるものとした。
以上、基本成分について説明したが、本発明ではその他にも、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Ti:0.1%以下およびV:0.1%以下のうちから選んだ1種または2種
TiおよびVは、Nbと同様、熱延板組織の微細化および熱延板中に炭化物としてCを析出固定させる作用を有し、高r値化に寄与する元素である。但し、熱延板の微細化効果はNbの方が大きいので、Nb添加鋼に対して、適宜Ti、Vを添加することが好ましい。このような観点からは、Ti,Vは0.005%以上含有させるのが好ましい。一方で、本発明では、焼鈍後の冷却過程でマルテンサイトを形成させるための固溶Cを必要とするが、Nb添加鋼にさらに過剰のTi,Vを添加した場合はその妨げとになるので、それぞれ0.1%以下で含有させるものとした。
{(Nb/93)+(Ti*/48)+(V/51)}/(C/12)=0.15〜0.45。但し、Ti*>0の場合、Ti*=Ti−1.5S−3.4N、Ti*≦0の場合、Ti*=0
また、NbおよびTi,V添加の効果を奏するには、特にNb、Ti(Ti*)、V含有量とC含有量との比を0.15〜0.45の範囲を満足させる必要がある。{(Nb/93)+(Ti*/48)+(V/51)}/(C/12)が0.15未満では、固溶Cの存在量が多く、高r値化に有効な{111}再結晶集合組織の形成が阻害されることになる。一方、0.4を超えると、マルテンサイトを形成して、強度を540 MPa以上を確保するのに必要なC量が鋼中に存在することが妨げられるので、最終的にマルテンサイト相を含む第2相を有する組織が得られない。従って、Nb、Ti(Ti*)、V含有量とC含有量(質量%)との比については 、0.15〜0.45の範囲を満足させるものとした。
なお、Tiは固溶S,Nの析出固定に効果がある元素であり、鋼中でTiはCよりも先にSやNと結合しやすいため、鋼中のTi含有量からこれらSやNを固定するのに消費されると考えられるTi量を除いて得た有効Ti量(Ti*)をCとの比の計算に用いることとした。また、Ti*≦0の場合、TiはSやNを固定するために消費されてしまい、TiによるCの析出固定が起こらないと考えられるため、Ti*>0の場合のみ、Cとの比の計算に用いることとし、Ti*≦0の場合には、Ti*はCとの比の計算には用いずにTi*=0とした。
Mo,CuおよびNiのうちから選んだ1種または2種以上の合計:0.5%以下
Moは、Mn同様、マルテンサイトが得られる臨界冷却速度を遅くする作用を有し、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト形成を促す元素であり、強度レベルの向上に効果がある。また、Cを析出固定させる作用を有し高r値化に寄与する元素でもある。これらの効果を得るためには、Moは0.05%以上含有させることが好ましい。
また、Cu,Niは、Mn同様、マルテンサイトが得られる臨界冷却速度を遅くする作用を有し、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト形成を促す元素であり、強度レベル向上に効果がある。また、めっき性に及ぼす影響も小さい。これらの効果を得るためには、Cu,Niはそれぞれ0.05%以上含有させることが好ましい。
しかしながら、過剰のMo,Cu,Ni添加は、これらの効果が飽和するだけでなく、合金コストの上昇を招き、また特にCuは表面性状に悪影響を与えることから、これらの元素は単独使用または併用いずれの場合も合計として0.5%以下で含有させることが好ましい。
本発明では、上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
なお、通常の鋼組成範囲内であれば、さらにB,Ca,REM等を含有しても何ら問題はない。例えば、Bは、鋼の焼入性を向上する作用をもつ元素であり、必要に応じて含有させることができる。しかしながら、B含有量が0.003%を超えるとその効果が飽和するため 、0.003%以下とすることが好ましい。また、CaおよびREMは、硫化物系介在物の形態を制御する作用をもち、これにより鋼板の諸特性の劣化を防止する。このような効果は、CaおよびREMのうちから選ばれた1種または2種の含有量が合計で0.01%を超えると飽和するので、これ以下とすることが好ましい。
なお、その他の不可避的不純物としては、例えばSb,Sn,Zn,Co等が挙げられ、これらの含有量の許容範囲については、それぞれSb:0.01%以下、Sn:0.1%以下、Zn:0.01%以下、Co:0.1%以下である。
次に、本発明に従う高強度鋼板の製造方法について説明する。
本発明では、上記した好適成分組成に調整した鋼スラブを素材とし、該素材を加熱後、熱間圧延を施して熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に酸洗および冷間圧延を施して冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に再結晶と複合組織化を達成する冷延板焼鈍工程とを順次に施すことによって、高強度鋼板を製造することができる。
以下、各処理条件について説明する。
鋼スラブの製造に際しては、成分のマクロ偏析を防止するために連続鋳造法で製造することが望ましいが、造塊法や薄スラブ鋳造法で製造してもよい。また、鋼スラブを製造した後、いったん室温まで冷却し、その後再度加熱する従来法に加え、冷却せず温片のまま加熱炉に装入し熱間圧延に供する直送圧延、あるいはわずかの保熱を行った後に直ちに熱間圧延に供する直送圧延・直接圧延などの省エネルギープロセスも問題なく適用することができる。
スラブ加熱温度(SRT):1000℃以上 1200℃以下 かつ SRT ≦ 25000 [%C][%Nb]+1050
スラブ加熱温度は、析出物を粗大化させて面内異方性を小さくするために低いほうが望ましい。この意味で1200℃以下にする必要がある。しかしながら、加熱温度が1000℃未満では圧延荷重の増大を招き熱間圧延時におけるトラブル発生の危険性が増すので、スラブ加熱温度は1000℃以上とすることが好ましい。
また、析出物は主にNbCであり、その粗大化にはSRTだけでなく、C量およびNb量も影響する。
図2は、C,Nb量とSRTを変化させて、CT:700℃、圧下率:65%で冷間圧延し、ついで700℃まで平均昇温速度:20℃/sで昇温し、引き続き700℃から焼鈍温度:860℃まで平均昇温速度:1.5℃/sで昇温し、860℃で80秒間焼鈍後、焼鈍温度から500℃まで平均冷却温度:1.5℃/sで冷却して得た冷延焼鈍板のΔr値を測定した結果である。
析出量が溶解度積に対応することを考慮して、横軸をC含有量([%C])とNb含有量([%Nb])の積である[%C][%Nb]とすると、C含有量が0.035%以上、Nb含有量が0.05%以上(従って、1000[%C][%Nb]≧1.75)の範囲で、かつ SRT ≦ 25000 [%C][%Nb]+1050の範囲を満足する場合に、Δrの絶対値を0.20以下にすることができる。
そこで、本発明では、スラブ加熱温度(SRT)は、1000℃以上 1200℃以下で、かつSRT ≦ 25000 [%C][%Nb]+1050の関係を満足する範囲に限定したのである。
上記の条件で加熱されたスラブに、粗圧延および仕上げ圧延からなる熱間圧延を施す。ここで、スラブは粗圧延によりシートバーとされる。なお、粗圧延の条件は特に規定する必要はなく、常法に従って行えばよい。また、スラブ加熱温度を低くし、かつ熱間圧延時のトラブルを防止するといった観点から、シートバーを加熱するいわゆるシートバーヒーターを活用することが有効な方法であることは言うまでもない。
熱間圧延での仕上圧延出側温度:800℃以上
ついで、シートバーに仕上げ圧延を施して熱延板とする。この際、仕上圧延出側温度(FT)は800℃以上とする必要がある。これは、冷間圧延および再結晶焼鈍後に優れた深絞り性が得られる微細な熱延板組織を得るためである。
FTが800℃未満では、組織が加工組織を有し冷延焼鈍後に{111}集合組織が発達しないだけでなく、熱間圧延時の圧延負荷が高くなる。一方、FTが980℃を超えると組織が粗大化し、これも冷延焼鈍後の{111}再結晶集合組織の形成および発達を妨げ高r値の達成を阻害するので、FTは980℃以下にすることが好ましい。
なお、熱間圧延時の圧延荷重を低減するために、仕上げ圧延の一部または全部のパスを潤滑圧延とすることもできる。この潤滑圧延を行うことは鋼板形状の均一化や材質の均質化の観点からも有効である。なお、潤滑圧延の際の摩擦係数は0.10〜0.25の範囲とするのが好ましい。さらに、相前後するシートバー同士を接合し、連続的に仕上げ圧延に供する連続圧延プロセスとすることも好ましい。連続圧延プロセスを適用することは熱間圧延の操業安定性の観点からも望ましい。
巻取り温度:600〜720℃
コイルの巻取り温度(CT)は600℃以上 720℃以下とする。というのは、この温度範囲が、スラブ加熱時に析出できなかったNb,Ti,V等の炭化物を析出、成長させるのに好適な温度範囲であるだけでなく、特にCTが上限温度を超えると結晶粒が粗大化し強度の低下を招くと共に、冷延焼鈍後の高r値化が妨げられるからである。好ましくは620〜700℃の温度範囲である。
ついで、熱延板に酸洗を施したのち、冷間圧延を施して冷延板とする。酸洗は、通常の条件にて行えばよい。冷間圧延条件は、所望の寸法形状の冷延板とすることができればよく、特に限定はされないが、冷間圧延時の圧下率は40%以上とすることが好ましい。より望ましくは50%以上である。
高r値化には、一般に高圧下率での冷延が有効であり、圧下率が40%未満では{111}再結晶集合組織が発達せず、優れた深絞り性を得ることが困難となる。そして、本発明では、冷間圧下率を90%までの範囲で高くするほどr値が上昇するが、90%を超えるとその効果が飽和するばかりでなく、圧延時のロールへの負荷が高まるため、上限は90%とすることが好ましい。
700℃までの平均昇温速度:15℃/s以上、700℃から焼鈍温度:800℃以上 950℃以下までの平均昇温速度:0.1〜2℃/s
冷延後の焼鈍では、少なくとも再結晶を行わせる必要がある。このためには、焼鈍の際の最高到達温度である焼鈍温度は800℃以上の温度とすることが最低必要である。一方、950℃を超える高温では再結晶粒が著しく粗大化し、特性の著しい劣化を招くので、焼鈍温度は800℃以上 950℃以下に限定した。なお、焼鈍温度での保持時間、いわゆる焼鈍時間は、特に規定するものではないが、焼鈍を安定して行うという観点から10〜120秒程度とすることが好ましい。
上記した焼鈍温度までの加熱速度は、本発明の中で重要な要件である。
すなわち、700℃まではある程度速い昇温速度で昇温して、回復をある程度抑制し、再結晶を促す必要がある。そうしないと、それ以上の温度域で変態が優先的に進行し、面内異方性を小さくすることができない。そこで、本発明では、700℃までは平均昇温速度: 15℃/s以上で昇温するものとした。一方、700℃以上の温度域では、徐加熱として、再結晶を促し、r値に好ましい{111}方位の発達と、面内異方性の改善を図る必要がある。このため、この温度域での平均昇温速度は2℃/s以下とする。但し、昇温速度が0.1℃/s未満の超低速での徐加熱は、700℃以上という温度条件および現状の焼鈍設備を考慮すると極めて難しいので、本発明では、700℃から焼鈍温度までの平均昇温速度は0.1〜2℃/sの範囲に限定した。
焼鈍温度から500℃まで平均冷却速度:5℃/s以上
上記焼鈍後の冷却処理については、マルテンサイト形成の観点から、焼鈍温度から500℃までの平均冷却速度を5℃/s以上とする必要がある。というのは、該温度域での平均冷却速度が5℃/sに満たないとマルテンサイトが形成されにくくフェライト単相組織となって組織強化が不足することになる。本発明では、マルテンサイトを含む第2相の存在が不可欠であることから、500℃までの平均冷却速度が臨界冷却速度以上であることが要求されるが、これは平均冷却速度を5℃/s以上とすることで達成される。しかしながら、この冷却速度が15℃/s超になると、複合組織にはなるものの、第2相の分率が高くなって延性には好ましくない分布となるため、この温度域での平均冷却速度は15℃/s以下とすることが好ましい。
なお、500℃未満の温度域の冷却については、それまでの冷却によりγ相はある程度安定化するので、特に限定はしないが、引き続き、望ましくは300℃まで5℃/s以上の平均冷却速度で冷却することが好ましい。また、過時効処理を施す場合は、やはり過時効処理温度まで平均冷却速度:5℃/s以上で冷却することが好ましい。
また、上記の冷延板焼鈍の後に、電気めっき処理や溶融めっき処理などのめっき処理を施して、鋼板表面にめっき層を形成しても良い。また、めっきの種類については、例えば純亜鉛の他、亜鉛を主成分として合金元素を添加した亜鉛系めっき、あるいは純Alや、Alを主成分として合金元素を添加したAl系めっきなどが適用できる。
例えば、めっき処理として、自動車用鋼板に多く用いられる溶融亜鉛めっき処理を行う場合には、上記焼鈍を連続溶融亜鉛めっきラインにて行い、焼鈍後の冷却に引き続いて溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、表面に溶融亜鉛めっき層を形成すればよい。さらに、合金化処理を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板としてもよい。その場合、溶融めっきのポットから出た後、さらには合金化処理した後の冷却においても、300℃までの平均冷却速度を5℃/s以上とすることが好ましい。
上記のようにして得た冷延焼鈍板、さらにはめっき処理を施しためっき鋼板には、形状矯正、表面粗度調整等の目的で調質圧延やレベラー加工を施すこともできる。この調質圧延およびレベラー加工は、伸び率で0.2〜15%の範囲とすることが好ましい。0.2%未満では形状矯正、粗度調整の所期の目的が達成できず、一方15%を超えると顕著な延性の低下を招く。なお、調質圧延とレベラー加工では加工形式が相違するが、その効果は両者で大きな差がないことを確認している。そして、これらの調質圧延およびレベラー加工はめっき処理後でも有効である。
次に、上記した本発明の製造方法で得られる鋼板の鋼組織について説明する。
良好な深絞り性を有し、引張強さ≧540 MPaの鋼板とするためには、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上より好ましくは3%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織とする必要がある。フェライト相が少なくなり、面積率で50%未満になると、良好な深絞り性を確保することが困難となり、プレス成形性が低下する傾向にある。より好ましいフェライト相の比率は面積率で70%以上である。また、複合組織の利点を利用するため、フェライト相は99%以下とするのが好ましい。なお、ここでフェライト相とは、ポリゴナルフェライト相や、オーステナイト相から変態した転位密度の高いペイニチックフェライト相を意味する。
上述したとおり、本発明では、マルテンサイト相が存在することが必要であり、その相比率は面積率で1%以上より好ましくは3%以上さらに好ましくは5%以上である。マルテンサイト相が1%未満では良好な強度−延性バランスを得ることが難しい。
なお、上記したフェライト相およびマルテンサイト相の他に、パーライト、ベイナイトあるいは残留γ相などを含んだ組織としてもよい。この場合、これらの相の全体の比率は面積率で30%以下とすることが好ましい。
本発明では、上記した成分組成および鋼組織とすることにより、平均r値が1.2以上を達成することができる。
ここで、平均r値とは、JIS Z 2254で求められる平均塑性ひずみ比を意味し、次式で求められる値である。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
なお、r0、r45およびr90は、試験片を板面の圧延方向に対し、それぞれ0 °、45°および90°方向に採取し測定した塑性ひずみ比である。
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これら鋼スラブを1250℃に加熱したのち、粗圧延によりシートバーとし、ついで表2に示す条件で仕上圧延を施して熱延板とした。これらの熱延板を、酸洗後、圧下率:65%の冷間圧延を施して板厚:1.2 mmの冷延板とした。引き続き、これら冷延板に、連続焼鈍ラインにて、表2に示す条件で連続焼鈍を施した。なお、焼鈍時間は60〜80秒とした。ついで、得られた冷延焼鈍板に、伸び率:0.5%の調質圧延を施して、製品板とした。
なお、No.16の鋼板は、連続溶融亜鉛めっきラインにて連続焼鈍を施し、その後引き続きインラインで溶融亜鉛めっき(めっき浴温:480℃)を施した溶融亜鉛めっき鋼板を製品板とした。
かくして得られた各製品板の、微視組織、引張特性、r値およびめっき処理性について調査した結果を表2に併記する。
なお、微視組織および各特性の調査方法は次のとおりである。
(1) 冷延焼鈍板の微視組織
各冷延焼鈍板から試験片を採取し、圧延方向に平行な板厚断面(L断面)について、光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡を用いて400〜10000倍で微視組織を撮像し、画像解析装置で主相であるフェライトの面積率および第2相の種類と面積率を求めた。
(2) 引張特性
得られた各冷延焼鈍板から圧延方向に対して90°方向(C方向)にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度:10mm/minで引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張強さ(TS)および伸び(El)を求めた。
(3) r値
得られた各冷延焼鈍板の圧延方向(L方向)、圧延方向に対し45°方向(D方向)、圧延方向に対し90°方向(C方向)からJIS5号引張試験片を採取した。 これらの試験片に10%の単軸引張歪を付与した時の各試験片の幅歪と板厚歪を測定し、これらの測定値を用い、JIS Z 2254の規定に準拠して平均r値(平均塑性歪比)を以下の式から求め、これを平均r値とした。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
なお、r0、r45およびr90は、試験片を板面の圧延方向に対し、それぞれ0 °、45°および90°方向に採取し測定した塑性ひずみ比である。
また、下式からr値の面内異方性(Δr)を求めた。
Δr=(r0+r90−2r45)/2
(4) めっき処理性
得られた溶融亜鉛めっき鋼板の表面を目視観察し、不めっき欠陥の存在の有無を判定しめっき性を評価した。なお、評価は、不めっき欠陥の全くないもの(めっき性良好)を○、不めっき欠陥が一部発生したもの(めっき性やや良好)を△、不めっき欠陥が多数発生したもの(めっき性不良)を×とした。
Figure 0004735552
Figure 0004735552
表2から明らかなとおり、本発明に従い得られた発明例はいずれも、TSが540 MPa以上であり、しかも平均r値が1.2以上の高いr値を有し、かつΔrの絶対値が0.20以下とr値の面内異方性にも優れていた。また、めっき処理性も良好であった。
これに対し、本発明の範囲を外れる条件で製造した比較例で、強度が不足しているか、あるいはr値やその面内異方性が悪い鋼板となっていた。
本発明によれば、TSが540 MPa以上で、しかも平均r値が1.2以上の高r値でかつその面内異方性が小さい深絞り性に優れた高強度鋼板を安価にかつ安定して製造することが可能となり産業上格段の効果を奏する。
例えば、本発明の高強度鋼板を自動車部品に適用した場合、これまでプレス成形が困難であった部位についても高強度化が可能となり、自動車車体の衝突安全性および軽量化に十分寄与できるという効果がある。また、自動車部品に限らず家電部品やパイプ用素材としても適用可能である。
鋼板の製造に際し、スラブ加熱温度(SRT)、巻取り温度(CT)および焼鈍温度までの平均昇温速度を種々に変化させた場合のΔrの推移を示した図である。 C,Nb量およびSRTを種々に変化させて製造した鋼板のΔrについて調べた結果を、SRTと1000[%C][%Nb]との関係で示した図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.035〜0.05%、
    Si:0.01〜1.0%、
    Mn:1.5〜3.0%、
    P:0.005〜0.1%、
    Al:0.005%〜0.1%、
    S:0.01%以下、
    N:0.01%以下および
    Nb:0.05〜0.12%
    を含み、かつ鋼中のNbおよびCの含有量が、
    (Nb/93)/(C/12)=0.15〜0.45(式中のNb,Cは各々の元素の含有量(質量%))
    なる関係を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、スラブ加熱温度(SRT)が1000℃以上 1200℃以下で、かつC量:[%C]とNb量:[%Nb](質量%)に応じて、次式
    SRT ≦ 25000 [%C][%Nb]+1050
    の関係を満足する温度域に加熱し、ついで熱間圧延にて仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取り温度:600〜720℃で巻き取って熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に酸洗および冷間圧延を施して冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に700℃までの平均昇温速度:15℃/s以上、700℃から焼鈍温度:800℃以上 950℃以下までの平均昇温速度:0.1〜2℃/sで焼鈍を行い、ついで焼鈍温度から500℃まで平均冷却速度:5℃/s以上で冷却する冷延板焼鈍工程を順次に施すことを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼スラブが、前記組成に加えて、さらに質量%で
    Ti:0.1%以下および
    V:0.1%以下
    のうちから選んだ1種または2種を含有し、かつ前記(Nb/93)/(C/12)=0.15〜0.45なる関係に代えて、次式
    Ti*>0の場合、Ti*=Ti−1.5S−3.4N(式中のTi,S,Nは各々の元素の含有量(質量%))であり、Ti*≦0の場合、Ti*=0
    で表されるTi*とVとNbとCの含有量が、次式
    {(Nb/93)+(Ti*/48)+(V/51)}/(C/12)=0.15〜0.45(式中のV,Nb,Cは各々の元素の含有量(質量%))
    の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板の製造方法。
  3. 前記鋼スラブが、前記組成に加えて、さらに質量%で
    Mo,CuおよびNiのうちから選んだ1種または2種以上の合計:0.5%以下
    を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法で製造した高強度鋼板に対して、さらにめっき処理を施すことを特徴とする高強度めっき鋼板の製造方法。
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