JP4525386B2 - 形状凍結性と深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
(1)質量%で、
C:0.010〜0.050%、
Si:1.0%以下、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
S:0.01%以下、
Al:0.005〜0.5%、
N:0.01%以下および
Nb:0.01〜0.3%
を含有し、かつ鋼中のNbおよびCの含有量が、
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7(式中のNb,Cは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満たし、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、熱間圧延にて仕上圧延出側温度:800℃ 以上とする仕上圧延を施し、巻取温度:500〜700℃で巻取り、熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し、冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に焼鈍温度:800〜900℃で焼鈍を行い、ついで焼鈍温度から水冷開始温度まで平均冷却速度:5℃/s以上15℃/s以下で冷却し、550〜750℃の温度で水冷を開始する冷延板焼鈍工程とを有することを特徴とする形状凍結性と深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。
Mo,Cr,CuおよびNiのうちから選んだ1種または2種以上を合計で0.5%以下
含有する組成になることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の形状凍結性と深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。
Ti:0.1%以下
を含有し、かつ 鋼中のTi,SおよびNの含有量が、
(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2.0(式中のTi,S,Nは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満足することを特徴とする請求項(1)〜(3)のいずれかに記載の形状凍結性と深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。
従来、軟鋼板においては、冷間圧延および再結晶前の固溶Cを極力低減することや熱延板組織を微細化することなどが、{111}再結晶集合組織を発達させて、高r値化するための有効な手段とされてきた。一方、前述したようなDP鋼板では、マルテンサイト形成に固溶Cを必要とするため、母相の再結晶集合組織が発達せずr値が低かった。
しかしながら、本発明では、母相であるフェライト相の{111}再結晶集合組織の発達と、マルテンサイト相の形成の双方を可能にする絶妙の成分範囲が存在することを新たに見出した。すなわち、従来のDP鋼板(低炭素鋼レベル)よりもC量を低減しつつ、極低炭素鋼よりはC量が多い、0.010〜0.050質量%のC含有量とし、加えて、このC含有量に合わせて適切なNb添加を行うことで、{111}再結晶集合組織をはじめとする深絞り成形性に好ましい集合組織の発達と、マルテンサイト相の形成の双方を同時に達成できることを新たに見出した。
この場合、水冷開始温度までの冷却速度と、水冷開始温度の双方を制御することより、強度と降伏比を最適化できることも判明した。
なお、元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であるが、以下、特に断らない限り、単に「%」で示す。
まず、本発明に用いる鋼スラブ、すなわち本発明で得ようとする高強度鋼板の成分組成を限定した理由について説明する。
Cは、後述するNbと共に本発明における重要な元素である。このCは、高強度化に有効であり、フェライト相を主相としマルテンサイト相を含む第2相を有する複合組織の形成を促進する。しかしながら、C含有量が0.010%未満では、マルテンサイト相の形成が困難となるため、本発明では複合組織形成の観点から、Cを0.010%以上含有させる必要がある。好ましくは、0.015%以上である。特に、TS:500MPa以上といった高強度を得るためには、複合組織を形成するとともに固溶強化元素であるSi,Mn,P等で調整することも勿論可能であるが、複合組織鋼板である本発明鋼の特長を活かす観点から、主にC量で調整することが最も望ましい。その場合、C量を0.020%以上とすることが好ましく、さらにTS:590MPa以上を得るためには0.025%以上含有させることが望ましい。
また、その際のNbとの関係は、
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7
を満足する範囲とする必要がある。より好ましくは、
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.5
の範囲である。
しかしながら、0.050%を超えるCの含有は、従来の低炭素鋼板同様、集合組織の発達を妨げ、良好なr値が得られなくなることから、Cの上限は0.050%とする。
Siは、フェライト変態を促進させ、未変態オーステナイト中のC含有量を上昇させてフェライト相とマルテンサイト相の複合組織を形成し易くすることの他、固溶強化の面でも効果がある。上記の効果を得るためには、Siは0.01%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.05%以上である。一方、Siを1.0%を超えて含有すると、熱間圧延時に赤スケールと称される表面欠陥が発生し、鋼板とした時の表面外観が悪くなるため、1.0%以下とする。
また、溶融亜鉛めっき(合金化を含む)を施す場合には、めっきの濡れ性を悪くしてめっきむらの発生を招き、めっき品質が劣化するので、溶融亜鉛めっきを施す場合には、Si含有量は低減することが好ましく、0.7%以下とすることが好ましい。
Mnは、高強度化に有効なだけでなく、マルテンサイト相が得られる臨界冷却速度を低くする作用があり、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト相の形成を促すため、要求される強度レベルおよび焼鈍後の冷却速度に応じて含有させるのが好ましい。また、Mnは、Sによる熱間割れを防止する上でも有効な元素である。このような観点から、Mnは1.0%以上含有させる必要があり、好ましくは1.2%以上、より好ましくは1.5%以上とする。一方、3.0%を超える過度のMnを含有することは、r値および溶接性を劣化させるので、Mn含有量の上限は3.0%とする。
Pは、固溶強化に有効な元素である。しかしながら、P含有量が0.005%未満では、その効果が現れないだけでなく、製鋼工程において脱りんコストの上昇を招く。従って、Pは0.005%以上含有させるものとする。好ましくは0.01%以上である。一方、0.1%を超える過剰なPの含有は、Pが粒界に偏析し、耐二次加工脆性および溶接性を劣化させる。また、溶融亜鉛めっき鋼板とする場合には、溶融亜鉛めっき後の合金化処理時に、めっき層と鋼板の界面における鋼板からめっき層へのFeの拡散が抑制され、合金化処理性が低下する。そのため、高温での合金化処理が必要となり、得られるめっき層は、パウダリング、チッピング等のめっき剥離が生じ易いものとなる。従って、P含有量の上限は0.1%とする。
Sは、不純物であり、熱間割れの原因になる他、鋼中で介在物として存在し鋼板の諸特性を劣化させるので、極力低減する必要がある。具体的には、Sは0.01%までは許容できるため、S含有量は0.01%以下とする。
Alは、鋼の固溶強化元素、脱酸元素として有用なだけでなく、不純物として存在する固溶Nを固定して耐常温時効性を向上させる作用がある。さらに、Alは、フェライト生成元素として、α−γ2相域の温度調整成分としても有用である。かかる作用を発揮させるためには、Al含有量は0.005%以上とする必要がある。一方、0.5%を超えるAlの含有は、合金コストの上昇を招き、さらに表面欠陥を誘発するので、Al含有量の上限は0.5%とする。より好ましくは0.1%以下である。
Nは、耐常温時効性を劣化させる元素であり、極力低減することが望ましい。すなわち、N含有量が多くなると、耐常温時効性が劣化し、固溶Nを固定するために多量のTiやAl添加が必要となるため、できるだけ低減することが好ましいが、Nは0.01%程度までは許容できるため、N含有量の上限は0.01%とする。
Nbは、本発明において最も重要な元素であり、熱延板組織の微細化および熱延板中にNbCとしてCを析出固定させる作用を有し、高r値化に寄与する元素である。このような観点からNbは0.01%以上含有させる必要がある。一方、本発明では、焼鈍後の冷却過程でマルテンサイト相を形成させるための固溶Cを必要とするが、0.3%を超える過剰のNb含有は、これを妨げることになるので、Nb含有量の上限は0.3%とする。
また、Nb含有の効果を奏するには、特にNb含有量(質量%)とC含有量(質量%)が、(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7(ただし、式中のNb,Cは各々の元素の含有量)の範囲を満足するように、NbとCを含有させることが重要である。なおここで、(Nb/93)/(C/12)はNbとCの原子濃度比を表している。(Nb/93)/(C/12)が0.2未満では、Nbによる熱延板微細化効果が低下すると共に、特にC含有量が高い範囲では固溶Cの存在量が多くなり、高r値化に有効な再結晶集合組織の形成を阻害する。また、(Nb/93)/(C/12)が0.7を超えると、マルテンサイト相を形成するのに必要なC量を鋼中に存在させることが妨げられるので、最終的にマルテンサイト相を含む第2相を有する組織が得られない。
従って、Nb含有量を0.01〜0.3%とした上で、さらにNb含有量とC含有量が、(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7を満足する範囲でNbとCを含有させることが重要である。なお、より好ましくは(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.5の範囲である。
Mo,Cr,CuおよびNiのうちから選んだ1種または2種以上を合計で0.5%以下
Mo,Cr,CuおよびNiはいずれも、Mnと同様、マルテンサイト相が得られる臨界冷却速度を低くする作用を通じて、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト相の形成を促す元素であり、強度レベル向上に効果がある。しかしながら、これら1種または2種以上の元素の合計が0.5%を超える過剰な添加は、その効果が飽和するだけでなく、高価な成分によるコストの上昇を招くことから、これら1種または2種の元素の合計含有量の上限は0.5%とすることが好ましい。なお、上記した効果を得るため、これら1種または2種以上の元素の合計は0.05%以上とすることが好ましい。
Tiは、Alと同等あるいはAl以上に固溶Nの析出固定に有効な元素であり、この効果を得るためには0.005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、0.1%を超える過剰の添加は、コストの上昇を招くばかりか、TiCの形成によりマルテンサイト相の形成に必要な固溶Cを鋼中に残すことを妨げる。従って、Ti含有量は、0.1%以下とすることが好ましい。
また、Tiは、鋼中でSおよびNと優先的に結合し、ついでCと結合する。従って、鋼中での介在物の形成等によるTiの歩留まり低下を考慮すると、(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}が2.0を超えるTi添加量では、S,Nを固定するというTi添加の効果は飽和し、かえってTiCの形成を促進して鋼中に固溶Cを残すことを妨げるという弊害が大きくなる。従って、Ti含有量は鋼中で優先的に結合するSおよびNの含有量との関係で、(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2.0を満足する範囲で含有させることが好ましい。
本発明では、上記した好適成分組成に調整した鋼スラブを素材とし、該素材に熱間圧延を施し熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に再結晶と複合組織化を達成する冷延板焼鈍工程とを順次経ることにより、高強度鋼板を製造することができる。
すなわち、本発明の高強度鋼板は、上記した範囲内の組成を有し、平均結晶粒径が8μm 以下である熱延板を素材とし、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に再結晶と複合組織化を達成する冷延板焼鈍工程とを順次経ることにより、製造することができる。
本発明では、粒径を測定する際、上記した腐食が深い線と浅い線の両者を粒界として結晶粒径を測定した。
このことから、詳細は定かではないが、本発明における粒界からの深絞り成形性に好ましい再結晶核発生の促進には、5°以上の傾角が有効であると推測される。
[C]fix=100×12×([Nb*]/93)/[C]total
ここで、鋼中にTiを含有しない場合、NbはNbNを形成するため、
[Nb*]=[Nb]−(93[N]/14)、[Nb*]>0
一方、鋼中にTiを含有する場合、Nは優先的にTiNを形成するので
[Nb*]=[Nb]−(93[N*]/14)
なお、式中、
[N*]=[N]−(14[Ti*]/48)、[N*]>0
[Ti*]=[Ti]−(48[S]/32)、[Ti*]>0
[C]fixは析出固定されるC量の割合(%)、
[C]totalは、鋼中の全C含有量(質量%)、
[Nb]、[N]、[Ti]、[S]は、それぞれ析出Nb、析出N、析出Ti、析出S量(質量%)である。
ここで、熱延板はスケールを除去するために冷間圧延前に酸洗を行うことが好ましい。酸洗は通常の条件にて行えばよい。冷間圧延条件は、所望の寸法形状の冷延板とすることができればよく、特に限定されないが、冷間圧延時の圧下率は40%以上とすることが好ましい。より好ましくは50%以上である。高r値化には高冷延圧下率が一般に有効であり、圧下率が40%未満では{111}再結晶集合組織が発達しにくく、優れた深絞り性を得ることが困難となる。一方、本発明では、冷間圧下率を90%までの範囲で高くするほどr値が上昇するが、90%を超えるとその効果が飽和するばかりでなく、冷間圧延時のロールへの負荷も高まるため、上限は90%とすることが好ましい。
さらに、700℃から焼鈍温度までは、再結晶集合組織形成の観点から、好ましくは0.1℃/s以上で昇温させる。一方、700℃から焼鈍温度までを20℃/sを超える速度で昇温させると、未再結晶部からの変態、あるいは未再結晶のまま変態が進み易く、集合組織形成の点で不利になりやすいため、20℃/s以下の昇温速度で加熱することが好ましい。
本発明では、焼鈍後、水冷開始温度まで上記範囲で徐冷することにより、オーステナイト相をフェライト相へ逆変態させて加熱中のオーステナイト相の分率を調整した後、水冷を開始してオーステナイト相をマルテンサイトやベイナイトを主体とした低温変態相とすることで高強度化させるとともに、低温変態相の周囲に歪場を発生させ可動転位を導入させるのである。
なおここで、水冷とは、水中への焼入れを意味し、例えば水を貯めた水槽中にロールを組み入れて、そのロールに鋼帯を通して水冷させればよい。
なお、焼戻す際の温度は、延性向上のため、100℃以上とすることが好ましい。また、保持時間は、延性向上のため、1分以上とすることが好ましい。さらに、焼戻し処理は、上記水冷後の鋼板を一旦室温近傍まで冷却後、再度加熱して焼戻し処理を施してよいが、上記水冷が可能な連続焼鈍設備にて、上記水冷後引き続き焼戻し処理を行うことが、生産効率の点から好ましい。
ここで、めっき層は純亜鉛めっきや亜鉛系合金めっきに限らず、AlめっきやAl系合金めっきなど、従来、鋼板表面に施されている各種めっき層とすることも勿論可能である。
(1)面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有すること
本発明により得た高強度鋼板は、良好な深絞り性を有すると共に、引張強さ≧440MPaの鋼板であり、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有する鋼板、いわゆる複合組織鋼板である。特に、本発明では、50%以上の面積率を占めるフェライト相を、深絞り成形性に好ましい集合組織が発達した組織とすることによって、平均r値≧1.2を達成することができる。この点、フェライト相が少なくなり、面積率で50%未満となると、良好な深絞り性を確保することが困難となり、プレス成形性が低下するおそれがある。なお、フェライト相は、面積率で70%以上とすることが好ましい。また、複合組織の利点を利用するため、フェライト相は面積率で99%以下とするのが好ましい。
本発明により得た高強度鋼板は、上記の鋼組織を満足すると共に、平均r値が1.2以上を満足するものである。
ここで、「平均r値」とは、JIS Z 2254で求められる平均塑性ひずみ比を意味し、以下の式から算出される値である。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
なお、r0、r45およびr90は、試験片を板面の圧延方向に対し、それぞれ0 °、45°および90°方向に採取し測定した塑性ひずみ比である。
降伏比(YR)が高いと、プレス時の成形可能範囲は狭くなる。特にしわ押え圧が低い領域でのプレスしわが発生し易くなる。しわなどが発生すると、プレス成形後の形状凍結性に劣ることになる。強度レベルが高くなると、成形可能範囲が、高しわ押え圧側にシフトする。
従って、本発明が対象とする強度レベルを考慮すると、YRは65%以下である必要がある。
図1は、作製した種々の発明鋼板と比較鋼板について、平均r値とP(222)/{P(200)+P(110)+P(310)}の値を算出し、これら算出した値に基づいてプロットしたものである。
本発明鋼板におけるr値と集合組織の相関について鋭意研究を進めたところ、 詳細はまだ明らかではないが、(310)面は少ないながらも{100}、{110}面同様、r値を低下させる集合組織であり、これを低減することが高r値化に寄与することを見出した。これは、詳細は明らかではないが、Nb添加により熱延時の未再結晶γ域での圧下率が高いことや、前述した微細なNbCの析出、およびNbCとして析出固定されないCの存在などが、(310)面低減に寄与していると考えられる。
表1に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これら鋼スラブを1250℃に加熱したのち、粗圧延によりシートバーとし、ついで表2に示す条件で仕上圧延を施して熱延板とした。これらの熱延板を、酸洗後、圧下率:65%の冷間圧延を施して板厚:1.2mmの冷延板とした。引き続き、これら冷延板に、連続焼鈍ラインにて、表2に示す条件で連続焼鈍を施した。ついで、得られた冷延焼鈍板に、伸び率:0.5%の調質圧延を施したのち、各種特性について調査した。
なお、ここで連続焼鈍ラインでの水冷は、水を貯めた水槽中に通板ロールを組み入れ、そのロールに鋼板を通すことにより行った。表2中の水冷開始温度は、該水槽へ進入時の鋼板温度である。また、焼戻し処理を施す場合は、連続焼鈍ライン内にて、上記水冷に引き続いて行った。
(i)熱延板中のNbCとして析出固定されるC量の割合
前述のように抽出分析により析出Nb、析出Ti、析出N、析出S量を定量し、下記式で求めた。
[C]fix=100×12×([Nb*]/93)/[C]total
ここで、鋼中にTiを含有しない場合、
[Nb*]=[Nb]−(93[N]/14)、[Nb*]>0
Tiを含有する場合、
[Nb*]=[Nb]−(93[N*]/14)
なお、式中、
[N*]=[N]−(14[Ti*]/48)、[N*]>0
[Ti*]=[Ti]−(48[S]/32)、[Ti*]>0
[C]fixは析出固定されるC量の割合(%)、
[C]totalは、鋼中の全C含有量(質量%)、
[Nb]、[N]、[Ti]、[S]は、それぞれ析出Nb、析出N、析出Ti、析出S量(質量%)である。
なお、抽出分析の方法は、10%マレイン酸系電解液を用いて電解抽出した残渣をアルカリ融解し、融成物を酸溶解した後、ICP発光分光法で定量した。
ナイタール腐食した圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を光学顕微鏡で撮像し、JIS G 0552に準じた切断法により、前述したように結晶粒の平均切片長さl(μm )を求め、(ASTM)公称粒径dn=1.13×lとして表記した。粒界としては、先述したように、ナイタール液により腐食し、通常どおり深く腐食される線および腐食が浅い線の双方を粒界としてカウントした。また、このようにして測定した平均結晶粒径の値は、傾角5°以上の結晶粒境界を結晶粒界とみなして測定した値に相当することをEBSP解析により確認した。ここでナイタール液は、3%硝酸アルコール溶液(3%HNO3−C2H5OH)を用い、10〜15秒間腐食した。
各冷延焼鈍板から試験片を採取し、圧延方向に平行な板厚断面(L断面)について、光学顕微鏡或いは走査型電子顕微鏡を用いて400〜10000倍で微視組織を撮像し、相の種類を観察するとともに、1000〜3000倍の像から主相であるフェライト相の面積率と第2相の種類、面積率を求めた。
得られた各冷延焼鈍板から圧延方向に対して90°方向(C方向)にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度:10mm/minで引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張強さ(TS)および伸び(El)を求めた。
得られた各冷延焼鈍板の圧延方向(L方向)、圧延方向に対し45°方向(D方向)、圧延方向に対し90°方向(C方向)からJIS5号引張試験片を採取した。 これらの試験片に10%の単軸引張歪を付与した時の各試験片の幅歪と板厚歪を測定し、これらの測定値を用い、JIS Z 2254の規定に準拠して平均r値(平均塑性歪比)を以下の式から算出し、これをr値とした。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
なお、r0、r45およびr90は、試験片を板面の圧延方向に対し、それぞれ0 °、45°および90°方向に採取し測定した塑性ひずみ比である。
得られた各冷延焼鈍板の鋼板1/4板厚位置にて、白色X線を用いたエネルギー分散型X線回折を行った。測定面は、α−Feの主要回折面である(110)面、(200) 面、(211)面、(220)面、(310)面、(222)面、(321)面、(400)面、(411)面、(420)面の計10面について測定し、無方向性標準試料との相対強度比で各面のX線回折積分強度比を求め、求めた(222)面、(200)面、(110)面および(310)面のX線回折積分強度比P(222)、P(200)、P(110)およびP(310)を下記式の右辺各項に代入し、左辺項Aを算出した。
A=P(222)/{P(200)+P(110)+P(310)}
これに対し、本発明の範囲を外れる条件で製造した比較例では、強度が不足していたり、r値が1.2未満と深絞り性に劣っていたり、YRが65%超と形状凍結性に劣っていた。
例えば、本発明の高強度鋼板を自動車部品に適用した場合、これまでプレス成形が困難であった部位も形状凍結性を維持しながら高強度化が可能となり、自動車車体の衝突安全性や軽量化に十分寄与できるという効果がある。また、自動車部品に限らず、家電部品やパイプ用素材としても適用可能である。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.010〜0.050%、
Si:1.0%以下、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
S:0.01%以下、
Al:0.005〜0.5%、
N:0.01%以下および
Nb:0.01〜0.3%
を含有し、かつ鋼中のNbおよびCの含有量が、
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7(式中のNb,Cは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満たし、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、熱間圧延にて仕上圧延出側温度:800℃ 以上とする仕上圧延を施し、巻取温度:500〜700℃で巻取り、熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し、冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に焼鈍温度:800〜900℃で焼鈍を行い、ついで焼鈍温度から水冷開始温度まで平均冷却速度:5℃/s以上15℃/s以下で冷却し、550〜750℃の温度で水冷を開始する冷延板焼鈍工程とを有することを特徴とする形状凍結性と深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。 - 前記水冷後、250℃以下の温度で30分以内の焼戻し処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の形状凍結性と深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。
- 鋼スラブが、上記組成に加えて、さらに質量%で、
Mo,Cr,CuおよびNiのうちから選んだ1種または2種以上を合計で0.5%以下
含有する組成になることを特徴とする請求項1または2に記載の形状凍結性と深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。 - 鋼スラブが、上記組成に加えて、さらに質量%で、
Ti:0.1%以下
を含有し、かつ 鋼中のTi,SおよびNの含有量が、
(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2.0(式中のTi,S,Nは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の形状凍結性と深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。
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