以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置は、抵抗変化素子とMOSトランジスタとを直列に接続してなる1T1R型の不揮発性記憶装置であって、抵抗変化素子の高抵抗値レベルを制御可能とするフォーミング方法と、抵抗変化素子に対して最適な高抵抗化パルス電圧印加を可能とし、これにより、高抵抗状態と低抵抗状態の広い動作ウィンドウを提供するものである。
[本発明の基礎データ1 固定抵抗素子を直列接続した抵抗変化膜の特性]
説明の準備として、本発明の抵抗変化型不揮発性記憶装置に用いられる抵抗変化素子に関する基礎的なデータを説明する。
図1は、本実験に用いた抵抗変化素子の基本構造を示す模式図である。図1に示されるように、抵抗変化素子100は、下部電極100a、抵抗変化層100b、上部電極100cがサンドイッチ状に形成され、下部電極100aから下部電極端子Bが引き出され、上部電極100cから上部電極端子Aが引き出されている。ここで、下部電極100aは、TaNで構成され、上部電極100cは、抵抗変化を起こしやすいPtを主成分とする電極材料で構成されている。
また、抵抗変化層100bは、下部電極100aに接する第1の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−1(TaOx:X=1.54)、および上部電極100cに接する第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2(TaOy:y=2.47)を有している。
第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2(TaO2.47)は、上部電極100cの製造工程前に、スパッタリングにより成膜された第1の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−1(TaO1.54)の表面にプラズマ酸化処理を施して作られ、そのため、第1の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−1(TaO1.54)と比べて酸素含有率が高く、つまり、抵抗値が高くなっている。このため、この抵抗変化素子100では、初期抵抗が非常に高く(>10MΩ)なるため、抵抗変化動作をさせるためには、高いフォーミング電圧(低抵抗化電圧)を印加することにより、導電パスを形成する必要がある。
フォーミング後、この抵抗変化素子100では、上部電極100cに下部電極100aを基準に抵抗変化が生じるしきい値電圧以上の正電圧を印加すると、上部電極100c界面で酸化が起こり、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移し、逆に、上部電極100cに下部電極100aを基準に抵抗変化が生じるしきい値電圧以下の負電圧を印加すると、上部電極100c界面で還元が起こり、高抵抗状態から低抵抗状態に遷移する抵抗変化特性を有する。このような高抵抗層(TaO2.47)を設けた抵抗変化素子100は、可逆的に安定した書き換え特性を有する、抵抗変化現象を利用した不揮発性記憶素子を得ることを目的として本願発明者らにより発明されたものであり、関連特許である国際公開第2010/021134号(特許文献6)で詳細に説明されている。
ここで、本実験において用いた抵抗変化素子100のサイズと、第1のタンタル酸化物層(TaOx層)の膜厚および酸素含有率xと、第2のタンタル酸化物層(TaOy層)の膜厚および酸素含有率yを表1にまとめる。
次に、抵抗変化素子100に関する実験について説明する。
図2は、本実験の評価回路の回路図であり、図1の抵抗変化素子100に1kΩの固定抵抗素子を直列に結線したセル構成を取っている。図2において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。図2に示す評価回路では、1T1R型メモリセル特性を検討するため、メモリセルトランジスタを固定抵抗素子で代用した擬似構造の素子で、固定抵抗として1kΩを付加した基礎データ取得用のセル構成を取っており、固定抵抗の抵抗変化素子100と接続されていない方の端子は、下部電極側端子Dとして引き出されている。
図3A(a1)〜図3A(a3)、図3B(b1)〜図3B(b3)、図3C(c1)〜図3C(c3)、図3D(d1)〜図3D(d3)、図3E(e1)〜図3E(e3)は、図2に示す評価回路において様々な条件で電圧パルスを印加したときの抵抗変化素子の初期状態からのパルス印加R−V特性図である。なお、これらの図は、所定のパルスを印加した後の抵抗値の状態を示す特性図で、以降パルスRVとも呼ぶ。横軸は、図2の評価回路における上部電極端子Aと下部電極側端子D間に印加されるパルス電圧V(パルス幅100ns)であり、下部電極側端子Dは、接地電位に固定されている。ここでは、下部電極側端子Dを基準に、上部電極端子Aに正電圧を印加する方向を正パルス電圧印加と表示し、逆に上部電極端子Aに負電圧を印加する方向を負パルス電圧印加と表示している。また、縦軸は、各パルス電圧印加後における上部電極端子Aと下部電極側端子D間の抵抗値を表し、抵抗測定電圧は、+0.4Vで実施している。
図4は、図3A(a1)〜図3A(a3)、図3B(b1)〜図3B(b3)、図3C(c1)〜図3C(c3)、図3D(d1)〜図3D(d3)、図3E(e1)〜図3E(e3)に示すパルスRV特性を得るための測定フロー図である。なお、ここでは、具体的な数値説明に関しては、図3A(a1)を例に取り説明する。
1)VP=0V〜−1.85V
図4に示すように、最初にパルス電圧VPを開始電圧Vsn(図3A(a1)では、約−0.07V)に設定し(S1:第1ステップ)、パルス電圧VPが0Vより小さく、かつ最小負電圧Vnm(図3A(a1)では、−1.85V)以上かどうかを判定(S2:第2ステップ)し、判定結果が真(Yes)の場合には、設定したパルス電圧VPを用いて、図2に示す評価回路に対して、LR化負パルス電圧(約−0.07V、パルス幅100ns)を印加(S3:第3ステップ)する。その後、上部電極端子Aと下部電極側端子D間に+0.4Vを印加し、抵抗値を測定(S4:第4ステップ)する。次に、パルス電圧VPを−Vstep1(図3A(a1)では、Vstep1=約0.07V)ディクリメントし、約−0.14Vに設定(S5:第5ステップ)する。その後、第2ステップ(S2)から第5ステップ(S5)までを、パルス電圧VPが最小負電圧Vnmより小さくなるまで、繰り返す。第2ステップ(S2)でパルス電圧VPが最小負電圧Vnmより小さくなる場合(VP<Vnm)には、第6ステップ(S6)に移行する。
2)VP=−1.85V〜0V
第6ステップ(S6)に移行後、パルス電圧VPを、直前に設定されたパルス電圧VP(図3A(a1)では、約−1.89V)+2Vstep1(図3A(a1)では、新しく設定されたVP=約−1.75V)に設定する。次に、パルス電圧VPが0Vより小さく、かつ最小負電圧Vnm以上かどうかを判定(S7:第7ステップ)し、判定結果が真(Yes)の場合には、設定したパルス電圧VPを用いて、図2に示す評価回路に対して、LR化負パルス電圧(約−1.75V、パルス幅100ns)を印加(S8:第8ステップ)する。その後、上部電極端子Aと下部電極側端子D間に+0.4Vを印加し、抵抗値を測定(S9:第9ステップ)する。次に、パルス電圧VPを+Vstep1だけインクリメントし、約−1.68Vに設定(S10:第10ステップ)する。その後、第7ステップ(S7)から第10ステップ(S10)までを、パルス電圧VPが0V以上になるまで、繰り返す。第7ステップ(S7)でパルス電圧VPが0V以上になる場合(VP≧0V)には、第11ステップ(S11)に移行する。
3)VP=0V〜+6V
第11ステップ(S11)に移行後、パルス電圧VPを、開始電圧Vsp(図3A(a1)では、約0.1V)に設定(S11:第11ステップ)する。次に、パルス電圧VPが0Vより大きく、かつ最大正電圧Vpm(図3A(a1)では、6V)以下かどうかを判定(S12:第12ステップ)し、判定結果が真(Yes)の場合には、設定したパルス電圧VPを用いて、図2に示す評価回路に対して、HR化正パルス電圧(約0.1V、パルス幅100ns)を印加(S13:第13ステップ)する。その後、上部電極端子Aと下部電極側端子D間に+0.4Vを印加し、抵抗値を測定(S14:第14ステップ)する。次に、パルス電圧VPを+Vstep2(図3A(a1)では、Vstep2=約0.2V)だけインクリメントし、約0.3Vに設定(S15:第15ステップ)する。その後、第12ステップ(S12)から第15ステップ(S15)までを、パルス電圧VPが最大正電圧Vpmより大きくなるまで、繰り返す。第12ステップ(S12)でパルス電圧VPが最大正電圧Vpmより大きくなる場合(VP>Vpm)には、第16ステップ(S16)に移行する。
4)VP=+6V〜0V
第16ステップ(S16)に移行後、パルス電圧VPを、直前に設定されたパルス電圧VP(図3A(a1)では、約6.1V)−2Vstep2(図3A(a1)では、新しく設定されたVP=約5.7V)に設定する。次に、パルス電圧VPが0Vより大きく、かつ最大正電圧Vpm以下かどうかを判定(S17:第17ステップ)し、判定結果が真(Yes)の場合には、設定したパルス電圧VPを用いて、図2に示す評価回路に対して、HR化正パルス電圧(約5.7V、パルス幅100ns)を印加(S18:第18ステップ)する。その後、上部電極端子Aと下部電極側端子D間に+0.4Vを印加し、抵抗値を測定(S19:第19ステップ)する。次に、パルス電圧VPを−Vstep2だけディクリメントし、約5.5Vに設定(S20:第20ステップ)する。その後、第17ステップ(S17)から第20ステップ(S20)までを、パルス電圧VPが0V以下になるまで、繰り返す。第17ステップ(S17)でパルス電圧VPが0V以下になる場合(VP≦0V)には、パルスRV測定(1ループ)を終了する。以降では、パルスRV特性は、全て図4で説明した測定フローに基づいて測定している。
図3A(a1)に示されるように、初期状態(約25MΩ)から、初めに導電パス形成のフォーミング(低抵抗化)を行うために負パルス電圧の絶対値をステップアップさせながら印加していくと、約−1.5V(つまり、フォーミング開始電圧)の負パルス電圧を印加(点D)した時に約2.2kΩの低抵抗状態に抵抗変化する。この時、導電パスが形成され、フォーミングが行われる。その後、約−1.8Vまで負パルス電圧の絶対値をステップアップさせた後、そこから、負パルス電圧の絶対値を約0Vまでステップダウンさせて行き、次に正パルス電圧をステップアップさせながら印加していくと、約2.1Vの正パルス電圧を印加した時、低抵抗状態から高抵抗状態(約20kΩ)に遷移し始め(図中の点EH)、さらに約2.4Vの正パルス電圧を印加した点Eで高抵抗値レベルが最大(約113kΩ)となり(図中の点E)、以降、そこからさらに最大約5.9V(図中の点EL)まで正パルス電圧をステップアップさせて行くと、高抵抗値レベルが低抵抗状態まで減少し始める。続いて、正パルス電圧を点EL(+5.9V)からステップダウンさせて行くと、ステップダウンするにつれて、抵抗値Rが上昇して行くが、1回目のステップアップ時のパルスRV曲線とは異なる経路を辿る。その後、さらに正パルス電圧を約0Vまでステップダウン印加させて行くと、約+2.7Vの正パルス電圧印加で抵抗値上昇が飽和し始め、約15kΩの高抵抗状態に保持される。
詳細は省略するが、例えば、点Eと点ELの2点に対応する同一極性のパルス電圧である+2.4Vと+5.9Vを交互に印加しても高抵抗値と低抵抗値に交互に遷移することが確認されている。このように同一極性のパルス電圧のみで高抵抗値と低抵抗値を書き換えられるパルス電圧領域をユニポーラ領域と呼ぶ。ただし、後述するように、本発明に係る抵抗変化型不揮発性記憶素子は、ユニポーラ領域で記憶素子として動作させるのではなく、バイポーラ領域で記憶素子として動作させている。つまり、本発明に係る抵抗変化型不揮発性記憶素子は、印加される電圧パルスの極性に応じて高抵抗状態と低抵抗状態とを可逆的に遷移する記憶素子である。
さらに図3A(a2)に示されるように、2回目のパルスRV特性測定ループでは、高抵抗状態(約16kΩ)から、低抵抗化を行うために負パルス電圧の絶対値をステップアップさせながら印加していくと、約−0.7Vの負パルス電圧を印加(点D2)した時に約3.4kΩの低抵抗状態に抵抗変化する。その後、約−1.8Vまで負パルス電圧の絶対値をステップアップさせ、低抵抗状態(約1.5kΩ)に遷移させた後、そこから、負パルス電圧の絶対値を約0Vまでステップダウンさせて行き、次に正パルス電圧をステップアップさせながら印加していくと、約2.1Vの正パルス電圧を印加した時、低抵抗状態から高抵抗状態(約5.3kΩ)に遷移し始め、さらに約2.4Vの正パルス電圧を印加した点E2で高抵抗値レベルが最大(約9kΩ)となり、以降、そこからさらに最大約5.9Vまで正パルス電圧をステップアップさせて行くと、高抵抗値レベルが低抵抗状態まで減少し始める。続いて、正パルス電圧を点EL2(+5.9V)からステップダウンさせて行くと、ステップダウンするにつれて、抵抗値Rが上昇して行くが、2回目のステップアップ時のパルスRV曲線とほぼ同様の経路を辿る。その後、さらに正パルス電圧を約0Vまでステップダウン印加させて行くと、約+2.8Vの正パルス電圧印加で抵抗値上昇が飽和し始め、約13kΩの高抵抗状態に保持される。
以降、図3A(a3)に示されるように、同様なパルスRV特性測定を3回目とループさせているが、一度点Eの山を越え、ユニポーラ領域にパルス抵抗変化させてしまうと、以降如何なる正パルス電圧を印加しても、二度と点Eのような非常に高い高抵抗値レベル(約113kΩ)には遷移させることが出来なくなることがわかる。
次に、図3B(b1)〜図3B(b3)に示されるパルスRV特性を説明する。図3B(b1)〜図3B(b3)は、図3A(a1)〜図3A(a3)とは試料条件は同じ(図2及び表1参照)で、別の抵抗変化素子を用いた場合のパルスRV特性であり、図3B(b1)は、図3A(a1)とは、負パルス電圧の絶対値の最大値が異なる(約2.4Vである)点以外は、同じ測定フローで評価している。また、図3B(b2)、図3B(b3)は、図3A(a1)と同一の測定フローで評価している。
図3B(b1)に示されるように、フォーミングにより低抵抗化した状態にさらに絶対値が大きい負パルス電圧を−2.4Vまで印加していくと、その後、負パルス電圧印加フローが終わった後に、1回目の正パルス電圧のステップアップ印加時において点Fで高抵抗値レベルが最大(約213kΩ)となっているが、抵抗値が約20kΩ以上の電圧領域幅Gは、図3A(a1)において見られた抵抗値が約20kΩ以上の電圧領域幅Hよりも明らかに減少している。
さらに図3B(b2)に示されるように、2回目のパルスRV特性測定ループは、ほぼ図3A(a2)と同様のパルスRV特性を示すが、高抵抗状態(約16kΩ)から、低抵抗化を行うために負パルス電圧の絶対値をステップアップさせながら印加していくと、約−0.6Vの負パルス電圧を印加(点D3)した時に約3.8kΩの低抵抗状態に抵抗変化する。その後、約−1.8Vまで負パルス電圧の絶対値をステップアップさせ、低抵抗状態(約1.5kΩ)に遷移させた後、そこから、負パルス電圧の絶対値を約0Vまでステップダウンさせて行き、次に正パルス電圧をステップアップさせながら印加していくと、約2.3Vの正パルス電圧を印加した時、低抵抗状態から高抵抗状態(約10kΩ)に遷移し始め、さらに約2.5Vの正パルス電圧を印加した点E3で高抵抗値レベルが最大(約11kΩ)となり、以降、そこからさらに最大約5.9Vまで正パルス電圧をステップアップさせて行くと、高抵抗値レベルが低抵抗状態まで減少し始める。続いて、正パルス電圧を点EL3(+5.9V)からステップダウンさせて行くと、ステップダウンするにつれて、抵抗値Rが上昇して行くが、2回目のステップアップ時のパルスRV曲線とほぼ同様の経路を辿る。その後、さらに正パルス電圧を約0Vまでステップダウン印加させて行くと、約+2.6Vの正パルス電圧印加で抵抗値上昇が飽和し始め、約11kΩの高抵抗状態に保持される。以降、図3B(b3)に示されるように、同様なパルスRV特性測定を3回目とループさせているが、図3A(a1)〜図3A(a3)の結果と同様に、一度点Fの山を越え、ユニポーラ領域にパルス抵抗変化させてしまうと、以降如何なる正パルス電圧を印加しても、二度と点Fのような非常に高い高抵抗値レベル(約213kΩ)には遷移させることが出来なくなる。ここで、図3A(a1)に示される点E(約113kΩ)と図3B(b1)に示される点F(約213kΩ)の差は、素子毎のばらつきで生じており、有意な差ではない。
次に、図3C(c1)〜図3C(c3)に示されるパルスRV特性を説明する。図3C(c1)〜図3C(c3)は、図3A(a1)〜図3A(a3)とは試料条件は同じ(図2及び表1参照)で、別の抵抗変化素子を用いた場合のパルスRV特性であり、図3C(c1)は、図3B(b1)とは、負パルス電圧の絶対値の最大値が異なる(約2.8Vである)点以外は、同じ測定ルーチンで評価している。また、図3C(c2)、図3C(c3)は、図3A(a1)と同一の測定フローで評価している。
図3C(c1)に示されるようにフォーミングにより低抵抗化した状態にさらに絶対値が大きい負パルス電圧を−2.8Vまで印加していくと、その後、負パルス電圧印加フローが終わった後に、1回目の正パルス電圧のステップアップ印加時において点Iで高抵抗値レベルが極大(約7.8kΩ)となっているが、図3C(c1)〜図3C(c3)に示されるように、1回目〜3回目まで如何なる正パルス電圧を印加しても、高抵抗値レベルを20kΩ以上に遷移させることができない。
次に、図3D(d1)〜図3D(d3)に示されるパルスRV特性を説明する。図3D(d1)〜図3D(d3)は、図3A(a1)〜図3A(a3)とは試料条件は同じ(図2及び表1参照)で、別の抵抗変化素子を用いた場合のパルスRV特性であり、図3D(d1)は、図3C(c1)とは、負パルス電圧の絶対値の最大値が異なる(約3.8Vである)点以外は、同じ測定ルーチンで評価している。図3D(d1)に示されるようにフォーミングにより低抵抗化した状態にさらに絶対値が大きい負パルス電圧を−3.8Vまで印加していくと、その後、負パルス電圧印加フローが終わった後に、1回目の正パルス電圧のステップアップ印加時において抵抗値レベルの極大点がほとんど観測されず、図3D(d1)〜図3D(d3)に示されるように、1回目〜3回目まで如何なる正パルス電圧を印加しても、高抵抗値レベルを約20kΩ以上に遷移させることができない。
ここで、図3A(a1)、図3B(b1)、図3C(c1)、図3D(d1)の結果から、フォーミング開始電圧Vb(負電圧)と印加最大低抵抗化パルス電圧VpLR(負電圧)との差で表されるフォーミングマージン(Δ)、及び遷移可能最大HR(高抵抗値レベル)との関係を表2にまとめる。
表2に示されるように、フォーミングマージンΔが0.7V以下であれば(図3A(a1)、図3B(b1))、遷移可能最大HRを低下させずにフォーミング可能なことが実験結果から確認できる。つまり、抵抗変化素子を、製造後の第1の状態から、印加される電圧パルスの極性によって高抵抗状態と低抵抗状態とを可逆的に遷移し得る第2の状態に変化させるフォーミング時に印加する電圧としては、上部電極100cを基準に下部電極100aに印加する電圧を正の電圧とした場合に(あるいは、電圧の絶対値で表現すると)、上記第1の状態から上記第2の状態に変化させるのに要する最低の電圧(フォーミング開始電圧Vb)以上であり、かつ、そのフォーミング開始電圧Vbに予め定められた電圧(ここでは、フォーミングマージン:0.7V)を加えて得られる電圧以下(ここでは、電圧の絶対値が2.4V以下)が好ましいことが分かる。つまり、フォーミング方法として、抵抗変化素子を上記第1の状態から上記第2の状態に変化させるのに要する、絶対値が最低の電圧であるフォーミング開始電圧に、予め定められた電圧を加えて得られる電圧を絶対値最大電圧とし、絶対値が絶対値最大電圧を超えない電圧の電圧パルスを抵抗変化素子に印加するのが好ましいことが分かる。
なお、この実験では、抵抗変化素子に固定抵抗を直列に接続した直列回路に対して電圧パルスが印加されたが、固定抵抗の抵抗値(1KΩ)が抵抗変化素子の初期抵抗値(約20MΩ)に比べて無視できるくらい小さいので、この回路に印加された電圧とほぼ同じ電圧が抵抗変化素子に印加されたといえる。
次に、図3E(e1)〜図3E(e3)に示されるパルスRV特性を説明する。図3E(e1)〜図3E(e3)は、図3A(a1)〜図3A(a3)とは試料条件は同じ(図2及び表1参照)で、別の抵抗変化素子を用いた場合のパルスRV特性であり、図3A(a1)〜図3A(a3)とは、負パルス電圧を約−1.9Vまで印加するフォーミング後、正パルス電圧の最大値を約2.2Vで留め、ユニポーラ領域に入らないように制御している点が異なる。図3E(e1)〜図3E(e3)に示されるように、図3A(a1)〜図3A(a3)に比べ、より高い高抵抗値レベル(48kΩ〜74kΩ@パルス電圧+2.2V)を維持しつつ、1回目から3回目までで比較的安定したヒステリシスループを再現している。このことから、例えば、通常の高抵抗化パルス電圧として、+2.2V(点J)、低抵抗化パルス電圧として−1.8V(点K)を用いて、パルス抵抗変化させれば、高抵抗状態(48kΩ〜74kΩ)と低抵抗状態(約1.5kΩ〜1.8kΩ)の動作ウィンドウを非常に広く確保できる。
以上、図3A(a1)〜図3D(d3)のパルスRV特性から分かるように、フォーミング時に印加する負電圧の絶対値が大きくなるほど、1回目の正パルス電圧のステップアップ印加時における極大抵抗値レベルが低下傾向になる。このことは、抵抗変化素子のフォーミング開始電圧のばらつきを考慮して、十分余裕のある絶対値が大きい負パルス電圧でフォーミングを実施すると、素子に依っては過剰な負パルス電圧が印加され続け、その結果遷移可能な最大高抵抗値レベルを約1桁低下させてしまい、高抵抗状態と低抵抗状態のウィンドウを著しく減少させてしまう従来知られていなかった現象があることを示す。
また、図3A(a1)〜図3A(a3)と図3E(e1)〜図3E(e3)のパルスRV特性から分かるように、フォーミング後パルス抵抗変化動作において高抵抗化する場合、点EH(高抵抗化し始める最低電圧を印加した点)より大きい正パルス電圧を印加すると高抵抗化し、特に点E(高抵抗状態にある抵抗変化素子の抵抗値が最大となる点)に近い電圧を印加するほど、より高い高抵抗状態が得られるが、一度でもユニポーラ領域に入ってパルス抵抗変化させてしまうと、以降如何なる正パルス電圧を印加しても、二度と点Eや点Fのような非常に高い高抵抗値レベルには遷移させることが出来なくなるというもう一つの現象があることがわかった。
以上のことから、動作ウィンドウの広いパルス抵抗変化を安定的に実現するためには、以下の印加パターンに関する2つの制御ルールを守ることが好ましいことが分かる。
1)第1の制御ルールは、フォーミングにおいては、抵抗変化素子に過剰な負パルス電圧(フォーミングマージンΔ>0.7Vの電圧パルス)が印加されないように制御(このような制御下でのフォーミングを、以下「ソフトフォーミング」と呼ぶ。)することである。これにより、遷移可能な高抵抗値レベル(極大点E)を高く、かつ、極大点近傍では、印加パルス電圧に敏感に依存しなくなるように制御できる。
2)第2の制御ルールは、フォーミング後の抵抗変化動作において、特に高抵抗化パルス電圧はユニポーラ領域の電圧(高抵抗状態にある抵抗変化素子の抵抗値が最大となる印加電圧)以下に制御することである。これにより、抵抗変化素子の高抵抗状態における抵抗値を高く維持できるので、より大きな動作ウィンドウで抵抗変化素子を使用することができる。
なお、以上の2点の制御ルールは、両方が実施されることが好ましいが、本発明は、必ずしも両方とも実施される必要はない。一方の制御ルールだけが実施された場合であっても、両方とも実施されない場合に比べ、より大きな動作ウィンドウが形成され得るからである。
[本発明の基礎データ2 1T1R型メモリセルの特性]
基礎データ1では、1T1R型メモリセルのMOSトランジスタのオン抵抗を想定し、抵抗変化素子100に外部抵抗(1kΩ)を接続した評価回路を用いて、抵抗変化素子100の基本特性を2端子法で評価したが、次に、本発明の抵抗変化型不揮発性記憶装置に用いられる1T1R型メモリセルに関する基礎的なデータを説明する。
具体的には、1T1R型メモリセルを用いた場合でも、上記と同様に、ソフトフォーミングの効果を確認したので、以下では、その実験結果を説明する。
図5は、本実験で用いた図1の抵抗変化素子100を含む1T1R型メモリセルの模式図である。図5において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。図5では、選択トランジスタであるNMOSトランジスタは、ゲート端子を備え、抵抗変化素子100の下部電極端子BとNMOSトランジスタのN+拡散領域が直列に接続され、抵抗変化素子100と接続されていない他方のN+拡散領域は、下部電極側端子Cとして引き出され、基板端子は、接地電位に接続されている。ここでは高抵抗な第2の酸素不足型酸化物層100b−2を、NMOSトランジスタと反対側の上部電極端子A側に配置することが特徴である。
さらに図6は、図5の抵抗変化素子100を含む1T1R型メモリセルの断面図である。図6において、図5と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
図6(a)は、1T1R型セル2ビット分の第1の基本構成を示す断面図である。
トランジスタ317は、図5におけるNMOSトランジスタに対応している。
半導体基板301上に、第1のN型拡散層領域302a、第2のN型拡散層領域302b、ゲート絶縁膜303a、ゲート電極303b、第1ビア304、第1配線層305、第2ビア306、第2配線層307、第3ビア308、抵抗変化素子100、第4ビア310、第3配線層311が順に形成されている。
第4ビア310と接続される第3配線層311がビット線BLに対応し、トランジスタ317の第1のN型拡散層領域302aに接続された、第1配線層305および第2配線層307が、この図面に垂直に走るソース線SLに対応している。
半導体基板301の電圧は0Vで、0V電源線(図示なし)より、一般的に知られている構成で供給されている。
抵抗変化素子100は、第3ビア308上に下部電極100a、抵抗変化層100b、上部電極100cがサンドイッチ状に形成され、さらには第3配線層311と接続される第4ビア310につながっている。
ここで、図6(a)のような抵抗変化素子100の上部電極(図5の100cに対応し、より酸素含有率が高い、高抵抗な第2の酸素不足型酸化物層(図5の100b−2)が接続されている側の電極)がビット線と接続されるメモリセル構造をI型セルと呼ぶことにする。
一方、図6(b)は、1T1R型セル2ビット分の第2の基本構成を示す断面図である。
半導体基板301上に、第1のN型拡散層領域302a、第2のN型拡散層領域302b、ゲート絶縁膜303a、ゲート電極303b、第1ビア304、第1配線層305、抵抗膜用第1ビア510、抵抗変化素子100、抵抗膜用第2ビア511、第2ビア306、第2配線層307、第3ビア308、第3配線層311が順に形成されている。
トランジスタ317の第1のN型拡散層領域302aと接続される第3配線層311がビット線BLに対応し、抵抗膜用第2ビア511に接続された第2配線層307が、この図面に垂直に走るソース線SLに対応している。
半導体基板301の電圧は0Vで、0V電源線(図示なし)より、一般的に知られている構成で供給されている。
抵抗変化素子100は、抵抗膜用第1ビア510上に下部電極100a、抵抗変化層100b、上部電極100cがサンドイッチ状に形成され、さらには第2配線層307と接続される抵抗膜用第2ビア511につながっている。
ここで、図6(b)のような抵抗変化素子100の上部電極(図5の100cに対応し、より酸素含有率が高い、高抵抗な第2の酸素不足型酸化物層(図5の100b−2)が接続されている側の電極)がソース線と接続されるメモリセル構造をII型セルと呼ぶことにする。
なお、図6(a)、図6(b)に示した構成においては、図示を省略しているが、ゲート電極303bにゲート電圧を印加するためのワード線WLが、ソース線SLに平行に配置されている。
ここで、本実験において用いたI型及びII型セルを構成可能な1T1R型メモリセルにおいて、抵抗変化素子100は、表1に示した通りであり、また、NMOSトランジスタのゲート幅Wは、0.44μm、ゲート長Lは、0.18μm、ゲート酸化膜厚Toxは、3.5nmである。
以下、1T1R型メモリセルを用いたソフトフォーミング実験について詳細に説明する。
(1)ソフトフォーミングを実施し、高抵抗化電圧を+3.3Vまで印加した場合
まず、フォーミングについてはソフトフォーミングを実施し、かつ、高抵抗化時についてはユニポーラ領域に属する高い電圧を印加した場合(つまり、上述した2つの制御ルールのうち第1の制御ルールだけを実施した場合)について説明する。図7(a)〜図7(c)は、そのような印加パターンでの、図5及び表1に示す1T1R型メモリセルにおける初期状態からのパルスRV特性図であり、横軸は、図5のメモリセルにおける上部電極端子Aと下部電極側端子C間に印加されるパルス電圧V(パルス幅50ns)である。ここでは、下部電極側端子Cを基準として、上部電極端子Aに下部電極側端子Cよりも高い電圧を印加する方向を正パルス電圧印加と表示し、逆に下部電極側端子Cに上部電極端子Aよりも高い電圧を印加する方向を負パルス電圧印加と表示している。また、縦軸は、各パルス電圧印加(この時、ゲート電圧Vg=3.3V)後における上部電極端子Aと下部電極側端子C間の抵抗値を表し、抵抗測定電圧は、+0.4V(この時、ゲート電圧Vg=1.8V)で実施している。
図7では、初期状態(約20MΩ)から、最初に導電パス形成のフォーミング(初期化としての低抵抗化)を行うために負パルス電圧の絶対値をステップアップさせながら印加していき、−1.8Vの負パルス電圧を印加(点Z1)した時に約19kΩの低抵抗状態にフォーミングされ、フォーミング後、それより絶対値が高い負パルス電圧を印加せずにステップダウンさせて行き、ソフトフォーミングをさせる。ここでは、高抵抗状態から、40kΩ未満の抵抗値に遷移した場合をフォーミング完了と定義し、その負パルス電圧よりも絶対値が大きい負パルス電圧は、印加しないようにしている。次に、正パルス電圧をステップアップさせながら印加していくと、約1.4Vの正パルス電圧を印加した時、低抵抗状態から約31kΩの抵抗値へと高抵抗化し、さらに2.5Vの正パルス電圧を印加した点Z2で高抵抗値レベルが最大(約667kΩ)となり、以降、そこからさらに最大3.3V(点Z3)まで正パルス電圧をステップアップさせて行くと、高抵抗値レベルが低下し始める。続いて、正パルス電圧を点Z3(+3.3V)からステップダウンさせて行くと、ステップダウン時には、1回目のステップアップ時のパルスRV曲線とは異なる経路を辿る。その後、さらに正パルス電圧を約0Vまでステップダウン印加させて行くと、約333kΩの高抵抗状態に保持される。
さらに図7(b)に示されるように、2回目のパルスRV特性測定ループでは、高抵抗状態(約333kΩ)から、低抵抗化を行うために負パルス電圧の絶対値をステップアップさせながら印加していくと、約−1.3Vの負パルス電圧を印加(点Z4)した時に約12.3kΩの低抵抗状態に抵抗変化する。その後、負パルス電圧の絶対値を約0Vまでステップダウンさせて行き、次に正パルス電圧をステップアップさせながら印加していくと、約1.2Vの正パルス電圧を印加した時、低抵抗状態から約24.7kΩに高抵抗化し、さらに約2.2Vの正パルス電圧を印加した点Z5で高抵抗値レベルが最大(約222kΩ)となり、以降、そこからさらに最大約3.3Vまで正パルス電圧をステップアップさせて行くと、高抵抗値レベルがほぼ飽和する。続いて、正パルス電圧を点Z6(+3.3V)からステップダウンさせて行くと、2回目のステップアップ時の飽和高抵抗値レベルとほぼ同様の経路を辿りながら、その後、さらに正パルス電圧を約0Vまでステップダウン印加させて行くと、約250kΩの高抵抗状態に保持される。
以降、図7(c)に示されるように、同様なパルスRV特性測定の3回目をループさせているが、一度点Z2の山を越え、点Z2と点Z3の間(ユニポーラ領域)にパルス抵抗変化させてしまうと、以降如何なる正パルス電圧を印加しても、二度と点Z2のような非常に高い高抵抗値レベル(約667kΩ)には遷移させることができない。
(2)低抵抗化(フォーミング)電圧を−3.3Vまで印加し、高抵抗化電圧を+2.4Vまで印加した場合
次に、フォーミングについてはソフトフォーミングを超える大きな電圧を印加し、かつ、高抵抗化時については抵抗変化素子の抵抗値が最大になる電圧以下の電圧(ユニポーラ領域には入らない電圧)を印加した場合(つまり、上述した2つの制御ルールのうち第2の制御ルールだけを実施した場合)について説明する。図8(a)〜図8(c)は、そのような印加パターンでの、図5及び表1に示す1T1R型メモリセルにおける初期状態からのパルスRV特性図であり、横軸及び縦軸は、図7(a)〜図7(c)と同様のため、ここでは詳しい説明は省略する。
図8(a)は、初期状態(約20MΩ)から、初めに導電パス形成のフォーミング(初期化としての低抵抗化)を行うために負パルス電圧の絶対値をステップアップさせながら印加していくと、約−2.3Vの負パルス電圧を印加(点L)した時に約22.5kΩの低抵抗状態にフォーミングされ、その後、約−3.3Vまで負パルス電圧の絶対値をステップアップさせた後、そこから、負パルス電圧の絶対値を約0Vまでステップダウンさせて行き、次に正パルス電圧をステップアップさせながら印加していくと、約1.7Vの正パルス電圧を印加した時、低抵抗状態から高抵抗状態(約41.7kΩ)に遷移し、さらに約2.4Vの正パルス電圧を印加した点Mで高抵抗値レベルが約118kΩまで増大する。続いて、正パルス電圧を+2.4Vからステップダウンさせて行くが、最終的には、約133kΩの高抵抗状態に保持される。
さらに図8(b)に示されるように、2回目のパルスRV特性測定ループでは、高抵抗状態(約133kΩ)から、低抵抗化を行うために負パルス電圧の絶対値をステップアップさせながら印加していくと、約−1.2Vの負パルス電圧を印加(点L2)した時に約9.6kΩの低抵抗状態に抵抗変化する。その後、約−3.3Vまで負パルス電圧の絶対値をステップアップさせた後、そこから、負パルス電圧の絶対値を約0Vまでステップダウンさせて行き、次に正パルス電圧をステップアップさせながら印加していくと、約1.7Vの正パルス電圧を印加した時、低抵抗状態から高抵抗状態(約60.6kΩ)に遷移し、さらに約2.4Vの正パルス電圧を印加した点Mで高抵抗値レベルが約133kΩまで増大する。続いて、正パルス電圧を+2.4Vからステップダウンさせて行くが、若干高抵抗値レベルが低下しながら、さらに正パルス電圧を約0Vまでステップダウン印加させて行くと、最終的には、約80kΩの高抵抗状態に保持される。
以降、図8(c)に示されるように、同様なパルスRV特性測定の3回目をループさせているが、図8(b)と同様のパルスRV特性を示す。このように、1回目から3回目までユニポーラ領域に入らないように正パルス電圧を+2.4Vまでの印加で留めたとしても、遷移可能な高抵抗値レベルの最大値(約200kΩ)は、図7(a)の点Z2に示す高抵抗値レベル(約667kΩ)よりも低くなる場合がある。
図9は、図8(a)〜図8(c)のパルスRV特性を示した1T1R型メモリセルについて、低抵抗化を引き起こすパルス電圧と高抵抗化を引き起こすパルス電圧とを交互に印加し続けたときの、その都度の抵抗値(抵抗測定電圧は+0.4V)を表したグラフであり、横軸及び、縦軸は、図53と同一のため、ここでは詳しい説明は省略する。
ここでは、図53に示すパルス変化特性と同様に、ゲート端子にゲート電圧Vg=2.4Vが印加され、約8.8kΩの低抵抗状態LRから、上部電極端子Aに+2.4Vのパルス電圧(パルス幅50ns)の印加(このとき、下部電極側端子Cには、接地電位を印加)、つまり+2.4Vの正パルス電圧印加で約91kΩ〜500kΩ(平均261kΩ)の高抵抗状態HRに変化し、次に、下部電極側端子Cに、+2.4Vのパルス電圧(パルス幅50ns)の印加(このとき、上部電極端子Aには、接地電位を印加)、つまり−2.4Vの負パルス電圧印加で約8.8kΩの低抵抗状態LRに変化し、正パルス電圧印加による高抵抗化と、負パルス電圧印加による低抵抗化とを繰り返している。
次に、ソフトフォーミングを実施した場合のパルスRV特性及びその後のパルス変化特性について実験結果を説明する。
(3)ソフトフォーミングを実施し、高抵抗化電圧を+2.4Vまで印加した場合
次に、フォーミングについてはソフトフォーミングを実施し、かつ、高抵抗化時については抵抗変化素子の抵抗値が最大になる電圧以下の電圧(ユニポーラ領域には入らない電圧)を印加した場合(つまり、上述した上述した2つの制御ルールを実施した場合)について説明する。図10(a)〜図10(c)は、そのような印加パターンでの、1T1R型メモリセルにおける初期状態からのパルスRV特性図であり、横軸及び縦軸は、図8と同様のため、ここでは詳しい説明は省略する。
図10(a)は、ソフトフォーミングを実施した場合におけるパルスRV特性(1回目のループ)を測定したグラフであり、図8のパルスRV特性との違いは、初期状態から、フォーミングを行うために負パルス電圧の絶対値をステップアップさせながら印加していき、フォーミング(初期化としての低抵抗化)され抵抗値が40kΩ未満に遷移したら、その後は、−1.8V(点N)より絶対値が大きい負パルス電圧を印加せず、点Nから負パルス電圧の絶対値をステップダウンさせて行く点である。
また、図10(b)及び図10(c)は、ソフトフォーミングを実施した場合におけるパルスRV特性を測定したグラフであり、図10(b)は2回目のループを、図10(c)は3回目のループを示している。図8のパルスRV特性との違いは、各ループにおいて、高抵抗状態から、低抵抗化を行うために負パルス電圧の絶対値をステップアップさせながら印加していき、低抵抗化され抵抗値が40kΩ未満に遷移したら、その後は、40kΩ未満に遷移させた負パルス電圧(例えば、点P)より絶対値が大きい負パルス電圧を印加せず、点Pから負パルス電圧の絶対値をステップダウンさせて行く点である。
ここで、製造後の抵抗変化素子の初期状態からフォーミングされ、抵抗値が40kΩ未満に初めて遷移した時の最低の(絶対値が最低の)パルス電圧をフォーミング開始電圧Vbと定義する。
図10(a)では、初期状態(約20MΩ)から、初めに導電パス形成のフォーミング(初期化としての低抵抗化)を行うために負パルス電圧の絶対値をステップアップさせながら印加していき、約−1.8Vの負パルス電圧を印加(点N)した時に約18.3kΩ(<40kΩ)の低抵抗状態にフォーミングされ、その後、それより絶対値が高い負パルス電圧を印加せずにステップダウンさせて行く。次に、正パルス電圧をステップアップさせながら印加していくと、約1.4Vの正パルス電圧を印加した時、低抵抗状態から約38kΩの抵抗値へと高抵抗化し、さらに約2.4Vの正パルス電圧を印加した点Oで高抵抗値レベルが約400kΩまで増大する。ここでは、図8と同様に、正パルス印加は、+2.4Vの印加までで留め、ユニポーラ領域に入らないように制御している。続いて、正パルス電圧を+2.4Vからステップダウンさせて行くが、最終的には、約286kΩの高抵抗状態に保持される。図10(b)に示す2回目のループ、図10(c)に示す3回目のループでは、既にフォーミングされているため、−1.3V〜−1.2V程度の負パルス電圧印加で高抵抗状態から低抵抗状態に遷移している点が、図10(a)と異なる。しかし、正パルス印加による遷移可能な最大高抵抗値レベルは、1回目のループから3回目のループまでほぼ変わらない。
このように、+2.4Vの正パルス印加後の高抵抗値レベル(図10(a))で比較すると、ソフトフォーミングを実施した場合における高抵抗値レベル(約400kΩ)は、ソフトフォーミング無し(図8(a))の場合における高抵抗値レベル(約118kΩ)よりも約3.4倍高い抵抗値に制御できていることが分かる。よって、上述の第1の制御
ルールを実施するだけでも、そうでない場合に比べ、より大きな動作ウィンドウが確保される。
図11は、図10(a)のソフトフォーミングを実施した1T1R型メモリセルについて、低抵抗化を引き起こすパルス電圧と高抵抗化を引き起こすパルス電圧とを交互に印加し続けたときの、その都度の抵抗値(抵抗測定電圧は0.4V)を表したグラフであり、横軸及び、縦軸は、図53と同一のため、ここでは詳しい説明は省略する。
図11は、図9に示すパルス変化特性と同様に、ゲート端子にゲート電圧Vg=2.4Vが印加され、約11kΩの低抵抗状態LRから、上部電極端子Aに+2.4Vのパルス電圧(パルス幅50ns)の印加(このとき、下部電極側端子Cには、接地電位を印加)、つまり+2.4Vの正パルス電圧印加で約286kΩ〜2MΩ(平均993kΩ)の高抵抗状態HRに変化し、次に、下部電極側端子Cに、+2.4Vのパルス電圧(パルス幅50ns)の印加(このとき、上部電極端子Aには、接地電位を印加)、つまり−2.4Vの負パルス電圧印加で約11kΩの低抵抗状態LRに変化し、正パルス電圧印加による高抵抗化と、負パルス電圧印加による低抵抗化とを繰り返している。但し、−2.4Vの負パルス印加では、NMOSトランジスタのゲートにVg=2.4Vが入力されていることから、ゲート電圧Vg=2.4Vから、バックバイアス効果により増大したNMOSトランジスタのしきい値電圧分ドロップした約−1.7Vが抵抗変化素子100の両端に印加されているが、絶対値(1.7V)がフォーミング開始電圧Vb(約−1.8V)の絶対値(1.8V)以上のパルス電圧は、抵抗変化素子100には印加されていない。従って、通常のパルス変化動作では、遷移可能な高抵抗値レベルの低下は生じていない。
ここで、ソフトフォーミング無しの場合の図9とソフトフォーミングを実施した場合の図11とのパルス抵抗変化特性を比較すると、パルスRV特性の結果から示されたように、ソフトフォーミングを実施したメモリセルの高抵抗値レベル(平均約993kΩ)は、ソフトフォーミング無しの場合の高抵抗値レベル(平均約261kΩ)よりも約3.8倍高い高抵抗値に制御できていることが分かる。このデータからも、上述の第1の制御ルールを実施するだけでも、そうでない場合に比べ、より大きな動作ウィンドウが確保されることが分かる。
また、本実験における1T1R型メモリセルでも、最も高抵抗値レベルを高く設定可能な高抵抗化電圧としては、図7(a)に示す点Z2近傍である+2.4V〜+2.6Vが好適であることを、本願発明者らは見出した。従って、図8、図10におけるパルスVRの実験では、高抵抗化電圧の最大値を+2.4Vに制限し、ユニポーラ領域に入れないように制御し、遷移可能な高抵抗値レベルを低下させないようにしている。よって、上述の第2の制御ルールを実施するだけでも、そうでない場合に比べ、より大きな動作ウィンドウが確保される。
なお、図7(a)〜図7(c)に示されるように、1T1R型メモリセルにおける低抵抗値レベル(約9kΩ〜約20kΩ)が、図3A(a1)〜図3A(a3)に示す抵抗変化素子と固定抵抗(1kΩ)を直列接続した評価回路の低抵抗値レベル(約1.5kΩ〜約2kΩ)よりも高くなっているのは、NMOSトランジスタのオン抵抗が、固定抵抗(1kΩ)よりも大きく、低抵抗化時に流れる電流がより小さくなっているためである(特許文献2に参照)。一方、ソフトフォーミングした場合の最大高抵抗値レベルは、いずれの場合も低抵抗値レベルより約2桁大きくなる。
以上をまとめると、1T1R型メモリセルでも、抵抗変化素子と固定抵抗とを接続した場合と同様に、ソフトフォーミングを実施することで(上述の第1の制御ルール)、そうでない場合に比べ、高抵抗値レベルを高く維持することができる。また、抵抗変化素子がユニポーラ領域に入らない高抵抗化電圧を用いて、パルス抵抗変化させることにより(上述の第2の制御ルール)、そうでない場合に比べ、高抵抗値レベルをより高く制御することが可能となる。よって、いずれの制御ルールを実施した場合であっても、そうでない場合に比べ、低抵抗状態と高抵抗状態との動作ウィンドウを拡大できることが明らかとなった。なお、2つの制御ルールは、単独で実施してもよいが、両方とも実施することが好ましいのは言うまでもない。
[本発明のソフトフォーミング(第1の制御ルール)]
以下では、ここまでの本願発明のソフトフォーミングをまとめる。
1)メモリセル構造
図12(a)、図12(b)は、本願発明のソフトフォーミングを説明するための、抵抗変化素子を含むメモリセルの模式図である。図12(a)における抵抗変化素子600は、下部電極600a、抵抗変化層600b、上部電極600cがサンドイッチ状に形成され、下部電極600aから下部電極端子Eが引き出され、上部電極600cから上部電極端子Fが引き出されている。また、抵抗変化層600bは、下部電極600aに接する第1の酸素不足型の遷移金属酸化物層600b−1、および上部電極600cに接する第2の酸素不足型の遷移金属酸化物層600b−2を有している。
さらに、抵抗変化素子600の下部電極端子Eと、NMOSトランジスタ、PMOSトランジスタ、又はダイオード等で構成されるスイッチ素子401とが接続され、抵抗変化素子600と接続されていないスイッチ素子401の他方の端子は、下部電極側端子Gとして引き出されている。
また、図12(b)は、図12(a)の構成において、抵抗変化素子600とスイッチ素子401の接続関係を入れ替えた場合のメモリセルの模式図であり、具体的には、抵抗変化素子600の上部電極端子Fと、スイッチ素子401とが接続され、抵抗変化素子600と接続されていないスイッチ素子401の他方の端子は、上部電極側端子Tとして引き出されている。
ここで、下部電極600aは、窒化タンタルTaN、タングステンW、ニッケルNi、タンタルTa,チタンTi、アルミニウムAlで構成され、上部電極600cは、抵抗変化を起こしやすい白金Pt、イリジウムIr、パラジウムPd、銀Ag、銅Cu、金Au等で構成される。
また、第2の酸素不足型の遷移金属酸化物層600b−2は、第1の酸素不足型の遷移金属酸化物層600b−1と比べて酸素含有率が高く、つまり、抵抗値が高くなるように形成する。このため、この抵抗変化素子600では、初期抵抗が高くなるため、抵抗変化動作をさせるためには、通常書換え電圧よりも高いフォーミング電圧(初期化としての低抵抗化のための電圧)を印加することにより、第2の酸素不足型の遷移金属酸化物層600b−2を還元し、導電パスを形成する必要がある。
このように、図12(a)、図12(b)に示すようなメモリセル構成を採用することにより、ソフトフォーミングを行うことが可能となる。
2)各抵抗状態の関係
次に、ソフトフォーミングに必要な各抵抗状態の関係を説明する。
図13は、ソフトフォーミング時の抵抗変化素子の各抵抗状態の関係を説明するための図である。図13に示すように、抵抗変化素子は、第1抵抗状態である高抵抗状態HRと第2抵抗状態である低抵抗状態LRがあり、第3抵抗状態である初期抵抗状態(フォーミングを施していない抵抗変化素子の抵抗状態)は、第1抵抗状態よりも抵抗値が高く、第4抵抗状態は、高抵抗状態HRと低抵抗状態LRの間にある。
本実験で説明したように、ソフトフォーミングを行うためには、メモリセル毎に、第3抵抗状態(初期抵抗状態)から、還元方向の低抵抗化電圧を少しずつ大きくしながら複数回印加し、第3抵抗状態から第4抵抗状態に遷移したら、低抵抗化電圧の印加を止め、各抵抗変化素子に過剰な電流を流さないように制御する。このようにメモリセル毎に異なるフォーミング電圧Vbで、ソフトフォーミングを行う。
3)フォーミング電圧Vbの分布
図14は、図5及び表1に示す酸素不足型のタンタル酸化物で構成される抵抗変化素子100を有するメモリセルアレイ(8kビット)において、メモリセル毎に徐々に電圧(電圧の絶対値)を大きくしながらソフトフォーミングを実施した場合のフォーミング電圧Vbの累積確率分布図を示す。横軸は、各メモリセルにおけるソフトフォーミング実施時のフォーミング電圧Vbを表し、縦軸は、そのフォーミング電圧Vbにおいて抵抗変化素子のソフトフォーミングが完了している確率(ここでは、全ての抵抗変化素子のうち、ソフトフォーミングが完了した抵抗変化素子の比率、つまり、累積確率)を表す。図14に示されるように、フォーミング電圧Vbは、1.1V〜2.6Vとメモリセル毎に大きく異なる。よって、個別に抵抗変化素子の抵抗値をベリファイしながら、ソフトフォーミングする必要がある。
4)ソフトフォーミング推定メカニズム
図15(a)〜図15(i)は、ソフトフォーミングの推定メカニズムを説明するための図である。図15において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
図15(a)〜図15(e)は、ある抵抗変化素子Aに対する説明図であり、また、図15(f)〜図15(i)は、別の抵抗変化素子Bに対する説明図である。図15(a)は、ある抵抗変化素子100の初期状態(つまり、製造後において未だソフトフォーミングされていない状態)を表し、図15(b)に示すように、負電圧パルスの絶対値を大きくしていきながら都度パルス印加し、低抵抗化負パルス電圧VLRが−V1である負パルス電圧印加時に、高抵抗層である第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2が、下部電極100a側への酸素イオンO2-の移動により還元され、導電パスが形成される。その結果、低抵抗化し、ソフトフォーミングされる。ここで、このフォーミング電圧Vb(=−V1)によるソフトフォーミング時に形成された導電パスの径をφ1とする。次に、図15(c)に示すように、図15(b)に示すソフトフォーミングされた状態から、さらにより絶対値が大きい負パルス電圧VLR(=−V2)(−V2<−V1)を印加すると、さらに高抵抗層(第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2)の還元が行われ、導電パスの径がφ2(>φ1)となり、より低抵抗化が進む。さらに、図15(d)に示すように、図15(c)に示す状態から、さらにより絶対値が大きい負パルス電圧VLR(=−V3)(−V3<−V2)を印加すると、さらに高抵抗層(第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2)の還元が行われ、導電パスの径がφ3(>φ2)となり、より低抵抗化が進む。さらに、図15(e)に示すように、図15(d)に示す状態から、さらにより絶対値が大きい負パルス電圧VLR(=−V4)(−V4<−V3)を印加すると、さらに高抵抗層(第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2)の還元が行われ、導電パスの径がφ4(>φ3)となり、より低抵抗化が進む。このように、図15(c)〜図15(e)に示すように、ソフトフォーミング後(図15(b))に、さらに過剰な負パルス電圧を印加すると、高抵抗層である第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2が過剰に還元され、導電パスの径がより大きくなる。このため、逆極性の高抵抗化パルス印加により第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2を酸化したとしても、導電パスの径がφ1より大きいため、ソフトフォーミングした場合と比して、十分導電パスを酸化物で埋めることができなくなり、遷移可能な高抵抗値レベルが低下してしまうと推定される。
また、図15(f)は、別の抵抗変化素子100(抵抗変化素子B)の初期状態を表し、図15(g)に示すように、負電圧パルスの絶対値を大きくしていきながら都度パルス印加し、低抵抗化負パルス電圧VLRが−V2である負パルス電圧印加時に、高抵抗層である第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2が還元され、導電パスが形成される。その結果、低抵抗化し、ソフトフォーミングされる。ここで、フォーミング電圧Vb(=−V2)によるソフトフォーミング時に形成された導電パスの径をφ1とする。次に、図15(h)に示すように、図15(g)に示すソフトフォーミングされた状態から、さらにより絶対値が大きい負パルス電圧VLR(=−V3)(−V3<−V2)を印加すると、さらに高抵抗層(第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2)の還元が行われ、導電パスの径がφ2(>φ1)となり、より低抵抗化が進む。さらに、図15(i)に示すように、図15(h)に示す状態から、さらにより絶対値が大きい負パルス電圧VLR(=−V4)(−V4<−V3)を印加すると、さらに高抵抗層(第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2)の還元が行われ、導電パスの径がφ3(>φ2)となり、より低抵抗化が進む。このように、図15(h)〜図15(i)に示すように、ソフトフォーミング後(図15(g))に、さらに過剰な負パルス電圧を印加すると、高抵抗層である第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2が過剰に還元され、導電パスの径がより大きくなる。この抵抗変化素子Bでは、抵抗変化素子Aと異なるフォーミング開始電圧Vb(=−V2)でソフトフォーミングされたが、これは、局所的な高抵抗層(第2の酸素不足型のタンタル酸化物層100b−2)の膜厚の違いなどでフォーミング開始電圧Vbがばらつくためである。実際、図14に示されるように、フォーミング開始電圧Vbの素子毎のばらつきは、非常に大きい。
なお、ここでは、抵抗変化層として酸素不足型のタンタル酸化物を例にとり、ソフトフォーミングの推定メカニズムを説明したが、酸素不足型の遷移金属酸化物でも同様の推定メカニズムが考えられる。
[本発明の書き込み方法(第2の制御ルール)]
次に、本発明に係る抵抗変化素子の書き込み方法について、図16を参照しながら、説明する。
本発明に係る抵抗変化素子の書き込み方法は、印加される電圧パルスの極性に応じて高抵抗状態と低抵抗状態とを可逆的に遷移する抵抗変化素子(つまり、バイポーラ型の抵抗変化素子)に対する書き込み方法であって、大きく分けて、準備ステップS50と、書き込みステップS51(高抵抗化ステップS51a、低抵抗化ステップS51b)とを含む。
ここで、前提として、右上のパルスRV特性に示されるように、抵抗変化素子は、第1の電圧V1以上の絶対値を有する電圧パルスが印加された場合に低抵抗状態S52から高抵抗状態S53に遷移し、第1の電圧V1よりも絶対値が大きい第2の電圧V2の電圧パルスが印加された場合に最大の抵抗値Rmaxをもつ高抵抗状態S53になり、第2の電圧V2よりも絶対値が大きい第3の電圧V3の電圧パルスが印加された場合に最大の抵抗値Rmaxよりも低い抵抗値をもつ高抵抗状態になる特性(ユニポーラ特性)を有する。ここで、第1の電圧V1、第2の電圧V2、及び第3の電圧V3はいずれも第1の極性(例えば、正)の電圧である。
まず、準備ステップS50では、抵抗変化素子に対して、電圧の絶対値が徐々に大きくなる電圧パルスを印加しながら抵抗変化素子の抵抗値を測定することで、第1の電圧V1及び第2の電圧V2を決定しておく。
その後に、抵抗変化素子をメモリ素子として使用する。書き込みステップS51は、抵抗変化素子をメモリ素子として使用する動作モードにおける記憶ステップであり、抵抗変化素子に第1の極性(例えば、正)の電圧パルスVpを印加することで、抵抗変化素子を低抵抗状態S52から高抵抗状態S53に遷移させる高抵抗化ステップS51aと、抵抗変化素子に第2の極性(例えば、負)の電圧パルスVnを印加することで、抵抗変化素子を高抵抗状態S53から低抵抗状態S52に遷移させる低抵抗化ステップS51bとを含む。ここで、高抵抗化ステップS51aでは、絶対値が第1の電圧V1以上で、かつ、第2の電圧V2以下の電圧Vpをもつ電圧パルス、好ましくは、その条件に加えて、第2の電圧V2に近い電圧Vpをもつ電圧パルスを印加することを特徴とする。
なお、抵抗変化素子の特性(第1の電圧V1、第2の電圧V2)が予め判明している場合、あるいは、予測できる場合には、上記準備ステップS50を省略してもよいのは言うまでもない。
また、高抵抗化ステップS51aで印加する電圧パルスの電圧としては、絶対値が第2の電圧V2を超えないことが望ましいが、現実的には、高抵抗状態における最大の抵抗値Rmaxから一定範囲内の高抵抗値を維持できるのであれば、絶対値が第2の電圧V2を超えてもよい。その程度は、確保すべき動作ウィンドウの幅に依存して決定すればよい。たとえば、最大の抵抗値Rmaxの90%の抵抗値となる電圧であれば、絶対値が第2の電圧V2を超える電圧で高抵抗化をしてもよい。
その場合には、抵抗変化素子に対して、段階的に(例えば、0.1V刻みで)大きくなる正の電圧パルスを印加していき、その都度、抵抗値を測定することで、抵抗値が最大となり、次に抵抗値が低下した点の電圧を、高抵抗化用の電圧(あるいは、第2の電圧V2)と決定してもよい。これにより、最大でも第2の電圧V2から上述の刻み電圧(例えば、0.1V)を加えた電圧以下の電圧が高抵抗化用の電圧として決定される。これにより、最適な高抵抗化電圧を決定し(準備ステップ)、決定した高抵抗化電圧で高抵抗化(書き込みステップ)をすることができる。なお、印加した電圧パルスの電圧とその時の抵抗変化素子の抵抗値との関係を特定する際には、抵抗値のばらつきを考慮し、複数の測定点(複数の電圧印加で得られた抵抗値)を平滑化し、平滑後の測定点に対して抵抗値の最大点を決定してもよい。
また、準備ステップS50で用いる抵抗変化素子は、次の書き込みステップS51で用いる抵抗変化素子と同じ種類であるが別の抵抗変化素子、つまり、同一の製造条件で製造された別の抵抗変化素子(準備ステップだけに用いられる抵抗変化素子)であってもよい。この準備ステップS50では抵抗変化素子に対して第2の電圧V2を超える第3の電圧V3が印加されるために、上述したユニポーラ特性のために、その後にその抵抗変化素子に対していかなる電圧の電圧パルスを印加しても高抵抗状態における抵抗値は、最大の抵抗値Rmaxに回復されない。ところが、準備ステップS50で用いる抵抗変化素子と書き込みステップS51で用いる抵抗変化素子とを別のもの(ただし、同一の製造条件で製造された同一の特性を有する抵抗変化素子)にすることで、準備ステップS50で得られた第2の電圧V2を超えない電圧で高抵抗化ステップS51aを行うことができ、その結果、抵抗変化素子を最大の抵抗値Rmax(あるいは、最大の抵抗値Rmaxに近い)の高抵抗状態S53に遷移させることが可能となる。
[第1の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置]
次に、本発明の第1の実施形態として、上記で説明した抵抗変化素子を用いた1T1R型の不揮発性記憶装置について説明する。
図17は、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を示すブロック図である。
図17に示すように、本実施形態に係る不揮発性記憶装置200は、半導体基板上に、メモリ本体201を備えており、メモリ本体201は、図6(b)に示されたII型セルで構成されたメモリアレイ202と、行選択回路208、ワード線ドライバWLD、ソース線ドライバSLDからなる行ドライバ207と、列選択回路203と、データの書き込みを行うための書き込み回路206と、選択ビット線に流れる電流量を検出し、高抵抗状態をデータ「0」に、また低抵抗状態をデータ「1」と判定するセンスアンプ204と、端子DQを介して入出力データの入出力処理を行うデータ入出力回路205と、を備える。
さらには、書き込み用電源211として、高抵抗(HR)化用電源213及び低抵抗(LR)化用電源212を備えている。
さらに、外部から入力されるアドレス信号を受け取るアドレス入力回路209と、外部から入力されるコントロール信号に基づいて、メモリ本体201の動作を制御する制御回路210とを備えている。
メモリアレイ202は、半導体基板の上に形成された、互いに交差するように配列された複数のワード線WL0、WL1、WL2、・・・および複数のビット線BL0、BL1、BL2、・・・と、これらのワード線WL0、WL1、WL2、・・・、およびビット線BL0、BL1、BL2、・・・の交点に対応してそれぞれ設けられた複数のNMOSトランジスタN11、N12、N13、N21、N22、N23、N31、N32、N33、・・・(以下、「トランジスタN11、N12、・・・」と表す)と、トランジスタN11、N12、・・・と1対1に直列接続された複数の抵抗変化素子R11、R12、R13、R21、R22、R23、R31、R32、R33、・・・(以下、「抵抗変化素子R11、R12、・・・」と表す)とを備え、個々がメモリセルM11、M12、M13、M21、M22、M23、M31、M32、M33、・・・(以下、「メモリセルM11、M12、・・・」と表す)を構成している。
図17に示すように、トランジスタN11、N21、N31、・・・のゲートはワード線WL0に接続され、トランジスタN12、N22、N32、・・・のゲートはワード線WL1に接続され、トランジスタN13、N23、N33、・・・のゲートはワード線WL2に接続され、トランジスタN14、N24、N34、・・・のゲートはワード線WL3に接続されている。
また、トランジスタN11、N12、N13、N14、・・・のドレインは、ビット線BL0に接続され、トランジスタN21、N22、N23、N24、・・・のドレインは、ビット線BL1に接続され、トランジスタN31、N32、N33、N34、・・・のドレインは、ビット線BL2に接続されている。
また、抵抗変化素子R11、R21、R31、・・・はソース線SL0に接続され、抵抗変化素子R12、R22、R32、・・・はソース線SL1に接続され、抵抗変化素子R13、R23、R33、・・・はソース線SL2に接続され、抵抗変化素子R14、R24、R34、・・・はソース線SL3に接続されている。
アドレス入力回路209は、外部回路(図示せず)からアドレス信号を受け取り、このアドレス信号に基づいて行アドレス信号を行選択回路208へ出力するとともに、列アドレス信号を列選択回路203へ出力する。ここで、アドレス信号は、複数のメモリセルM11、M12、・・・のうちの選択される特定のメモリセルのアドレスを示す信号である。
制御回路210は、データの書き込みサイクルにおいては、データ入出力回路205に入力された入力データDinに応じて、書き込み用電圧の印加を指示する書き込み信号を書き込み回路206へ出力する。他方、データの読み出しサイクルにおいて、制御回路210は、読み出し動作を指示する読み出し信号をセンスアンプ204へ出力する。
行選択回路208は、アドレス入力回路209から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、行ドライバ207より、複数のワード線WL0、WL1、WL2、・・・のうちの何れかに対応するワード線ドライバ回路WLDより、その選択されたワード線に対して、所定の電圧を印加する。
また同様に、行選択回路208は、アドレス入力回路209から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、行ドライバ207より、複数のソース線SL0、SL1、・・・のうちの何れかに対応するソース線ドライバ回路SLDより、その選択されたソース線に対して、所定の電圧を印加する。
また、列選択回路203は、アドレス入力回路209から出力された列アドレス信号を受け取り、この列アドレス信号に応じて、複数のビット線BL0、BL1、BL2、・・・のうちの何れかを選択し、その選択されたビット線に対して、書き込み用電圧または読み出し用電圧を印加する。
書き込み回路206は、通常パルス発生回路700と、可変電圧パルス発生回路701とから構成され、制御回路210から出力された通常書き込み信号を受け取った場合、通常パルス発生回路700が活性化され、列選択回路203により選択されたビット線に対して書き込み用電圧(書き込み用電圧パルス)を印加し、また、制御回路210から出力されたフォーミング信号を受け取った場合、可変電圧パルス発生回路701が活性化され、列選択回路203により選択されたビット線に対してフォーミング用電圧(フォーミング用電圧パルス)を印加する。
また、センスアンプ204は、行選択回路208及び列選択回路203で選択されたメモリセル内の抵抗変化素子の抵抗値を判定する読み出し部の一例であり、通常判定基準回路702と、フォーミング判定基準回路703とを備え、各基準回路702、703は、それぞれ、通常読み出し用の判定レベルとフォーミング用の判定レベルの判定レベルを有し、それぞれ、制御回路210から出力される読み出しイネーブル信号C1とフォーミングイネーブル信号C2により制御され、いずれか一方の判定レベルが選択され、選択セルのデータを「1」または「0」と判定する。その結果判定された出力データDOは、データ入出力回路205を介して、外部回路へ出力される。ここで、通常読み出しとは、フォーミングを終えた抵抗変化素子の抵抗状態(高抵抗状態/低抵抗状態)を判定することをいう。
書き込み用電源211は、高抵抗(HR)化用電源213及び低抵抗(LR)化用電源212より構成され、高抵抗(HR)化用電源213の出力VH0は、行ドライバ207に供給され、また、低抵抗(LR)化用電源212の出力VL0は、書き込み回路206に入力されている。
図18は、図17におけるセンスアンプ204の詳細な構成の一例を示す回路図である。センスアンプ204は、ミラー比が1対1のカレントミラー回路218とサイズが等しいクランプトランジスタ219、220と、基準回路221、及びインバータ224から構成される。基準回路221は、通常判定基準回路702と、フォーミング判定基準回路703から構成される。通常判定基準回路702では、選択トランジスタ222と通常読み出し用の基準抵抗Rref(20kΩ)が直列に接続されたブランチの一端を接地電位に接続され、他方の端子をクランプトランジスタ219のソース端子と接続され、また、選択トランジスタ222のゲート端子には、読み出しイネーブル信号C1が入力され、読み出しイネーブル信号C1により、選択トランジスタ222は、導通/非導通状態を切り換えられる。同様に、フォーミング判定基準回路703では、選択トランジスタ223とフォーミング用の基準抵抗Rb(90kΩ)が直列に接続されたブランチの一端を接地電位に接続され、他方の端子をクランプトランジスタ219のソース端子と接続され、また選択トランジスタ223のゲート端子には、フォーミングイネーブル信号C2が入力され、フォーミングイネーブル信号C2により、選択トランジスタ223は、導通/非導通状態を切り換えられる。
また、クランプトランジスタ219、220は、ゲート端子にクランプ電圧VCLP(0.9V)が入力され、クランプトランジスタ220のソース端子は、列選択回路203とビット線を介して、メモリセルと接続され、クランプトランジスタ219、220のドレイン端子は、それぞれカレントミラー回路218を構成するトランジスタ225、226のドレイン端子と接続される。クランプトランジスタ220のドレイン端子電位は、インバータ224により反転増幅され、センスアンプ出力SAOとしてデータ入出力回路205に伝達される。
図19は、センスアンプ204の判定レベルを説明するための図である。センスアンプ204は、図19に示すように、高抵抗状態HR(100kΩ)と低抵抗状態LR(11kΩ)の間に、通常読み出し用の基準抵抗Rref(20kΩ)と、それより大きいフォーミング用の基準抵抗Rb(90kΩ)との2つの判定レベルを有する。なお、フォーミング用の基準抵抗Rbは、抵抗変化素子のフォーミングが完了したか否かを判定するために、高抵抗状態HRの抵抗値よりも小さい抵抗値に設定され、好ましくは、高抵抗状態HRにある抵抗変化素子がとり得る抵抗値の最小値よりも小さい値に設定される。また、通常読み出し用の基準抵抗Rrefは、抵抗変化素子が高抵抗状態にあるか低抵抗状態にあるかを判定するために、高抵抗状態HRの抵抗値より小さく、かつ、低抵抗状態LRの抵抗値よりも大きい抵抗値に設定され、好ましくは、高抵抗状態HRにある抵抗変化素子がとり得る抵抗値の最小値よりも小さく、かつ、低抗状態LRにある抵抗変化素子がとり得る抵抗値の最大値よりも大きい抵抗値に設定される。
図20は、図17における書き込み回路206の詳細な構成の一例を示す図である。書き込み回路206は、書き込みドライバ回路214と、ボルテージフォロワ回路215と、分圧回路216とから構成される。
分圧回路216は、低抵抗(LR)化用電源212の出力VL0と接地電位の間に24個の固定抵抗Rd10〜Rd33が直列に接続され、各固定抵抗Rd10〜Rd33間のノード及び、低抵抗(LR)化用電源212の出力VL0端子と固定抵抗Rd33間のノードにそれぞれスイッチSW10〜SW33が接続され、各スイッチSW10〜SW33の固定抵抗Rd10〜Rd33と接続されていない方の端子は、全て共通ノードNOに接続され、各スイッチSW10〜SW33は、制御回路210から与えられる分圧切替信号TRM10、11、・・・、33により、それぞれ独立にON/OFF制御が可能である。また、共通ノードNOは、ボルテージフォロワ回路215の入力端子と接続され、共通ノードNOの電位を出力するボルテージフォロワ回路215の出力端子VCは、書き込みドライバ回路214と接続される。
書き込みドライバ回路214は、電源として、ボルテージフォロワ回路215の出力端子VCの電圧が入力され、入力端子には、制御回路210から供給されるパルス印加制御信号が入力され、書き込みドライバ回路214の出力端子から書き込みパルス電圧Vpが出力され、図17の列選択回路203に入力される。書き込み電圧パルスは、一定の時間(例えば、50ns)だけ、ボルテージフォロワ回路215の出力端子VCの電圧となる(他の時間においては0V)電圧パルスである。
従って、書き込み回路206は、書き込みパルス印加時に、制御回路210が分圧切替信号TRM10、11、・・・、33を制御し、対応するスイッチSW10〜SW33の一つのみをON状態に制御することにより、分圧回路216の出力電圧を多段階に制御可能となり、ボルテージフォロワ回路215の出力端子VCの電圧を多段階に制御でき、パルス印加制御信号に応じて書き込みドライバ回路214の出力である書き込みパルス電圧Vpを多段階に出力可能となる。
[第1の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置の動作]
以上の様に構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置について、先ず、主要な回路ブロックの動作を説明し、その後、抵抗変化型不揮発性記憶装置のデータ書き込み、フォーミングを行う場合の書き込みサイクル、及び通常読み出し、ベリファイ読み出しを行う場合の読み出しサイクルにおける動作を説明する。
先ず、図18に示されるセンスアンプ204の動作を説明する。センスアンプ204は、抵抗変化素子に導電パスを形成するフォーミング時には、列選択回路203とビット線を介して、対象メモリセルと接続され、メモリセルには、クランプ電圧VCLP(0.9V)からクランプトランジスタ219、220のしきい値電圧(0.5V)分低下した0.4Vより大きな電圧が印加されない構成となっている。一方、基準回路221では、フォーミングイネーブル信号C2により、選択トランジスタ223が活性化され、導通状態になり、フォーミング用の基準抵抗Rb(90kΩ)が選択され、もう一方の選択トランジスタ222は、読み出しイネーブル信号C1により非活性化され、非導通状態にされ、基準電流Irefとして、約4.4μA(=(0.9V−0.5V)/90kΩ)流れる。従って、基準電流Irefがカレントミラー回路218により転写され、負荷電流ILとしては、約4.4μA流れ、この負荷電流ILとメモリセル電流Icの大小関係がクランプトランジスタ220で比較される。その比較結果に依存して、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧がインバータ224の反転電圧(入力しきい値電圧)より高くなるか低くなるかが検知され、インバータ224は、センスアンプ出力SAOを出力する。ここで、初期抵抗値を20MΩとした場合に、メモリセル電流Icは、0.02μA(=0.4V/20MΩ)流れ、この時、負荷電流IL(約4.4μA)>メモリセル電流Ic(0.02μA)となり、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧が、所定時間後にインバータ224の反転電圧より高くなり、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力する。つまり、選択メモリセルが、フォーミング用の基準抵抗Rb(90kΩ)より高い初期状態(20MΩ)の場合には、センスアンプ204は、“0”、つまり、フェイルと判定する。一方、選択メモリセルの抵抗値がフォーミング後50kΩとフォーミング用の基準抵抗Rb(90kΩ)より低くなった場合には、メモリセル電流Icは、8μA(=0.4V/50kΩ)流れ、この時、負荷電流IL(約4.4μA)<メモリセル電流Ic(8μA)となり、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧が、所定時間後にインバータ224の反転電圧より低くなり、センスアンプ出力SAOは、Hレベルを出力する。つまり、選択メモリセルが、フォーミング用の基準抵抗Rb(90kΩ)より低い抵抗状態の場合には、センスアンプ204は、“1”、つまり、パスと判定し、対象メモリセルのフォーミングが完了していることを示す。
また、通常読み出し時には、基準回路221は、読み出しイネーブル信号C1により、選択トランジスタ222が活性化され、導通状態になり、通常読み出し用の基準抵抗Rrefが選択され、もう一方の選択トランジスタ223は、フォーミングイネーブル信号C2により非活性化され、非導通状態にされ、基準電流Irefは、20μA(=(0.9V−0.5V)/20kΩ)流れる。従って、基準電流Irefがカレントミラー回路218により転写され、負荷電流ILとしては、20μA流れ、この負荷電流ILとメモリセル電流Icの大小関係を比較される。その比較結果に依存して、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧がインバータ224の反転電圧(入力しきい値電圧)より高くなるか低くなるかが検知され、インバータ224は、センスアンプ出力SAOを出力する。ここで、高抵抗状態を100kΩ、低抵抗状態を11kΩとした場合に、選択メモリセルが高抵抗状態である時には、メモリセル電流Icは、4μA(=0.4V/100kΩ)流れ、この時、負荷電流IL(20μA)>メモリセル電流Ic(4μA)となり、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧が、インバータ224の反転電圧より高くなり、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力する。つまり、選択メモリセルが通常読み出し用の基準抵抗Rref(20kΩ)より高い高抵抗状態(100kΩ)の場合には、センスアンプ204は、“0”データと判定する。一方、選択メモリセルが低抵抗状態である時には、メモリセル電流Icは、約36.4μA(=0.4V/11kΩ)流れ、この時、負荷電流IL(20μA)<メモリセル電流Ic(約36.4μA)となり、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧が、インバータ224の反転電圧より低くなり、センスアンプ出力SAOは、Hレベルを出力する。つまり、選択メモリセルが通常読み出し用の基準抵抗Rref(20kΩ)より低い低抵抗状態(11kΩ)の場合には、センスアンプ204は、“1”データと判定する。
次に、図20に示される書き込み回路206の動作について説明する。
今、低抵抗(LR)化用電源212の出力VL0の電位を3.3V、抵抗Rd10を100kΩ、各抵抗Rd11〜Rd33を10kΩ、パルス印加制御信号の電圧振幅を3.3Vとした場合、書き込み回路206は、分圧切替信号TRM10によりスイッチSW10のみをON状態に制御すると、分圧の関係式から、共通ノードNOの電位は、1.0V(=3.3V×100kΩ/330kΩ)となり、出力端子VCが1.0Vに制御されるため、書き込みドライバ回路214は、パルス印加制御信号に応じて、書き込みパルス電圧Vpとして1.0Vを出力可能となる。
図21は、書き込み回路206が出力可能な、ステップアップ書き込みパルス電圧Vpのタイミングチャートである。図21では、制御回路210から出力される分圧切替信号TRM10、11、・・・、33により、スイッチSW10〜SW33をスイッチSW10からスイッチSW33まで順次択一的に導通状態に切替制御していき、出力端子VCの電圧を1.0Vから3.3Vまで0.1Vステップで増加させていき、パルス印加制御信号に同期して、書き込みパルス電圧Vpを1.0Vから3.3Vまで0.1Vステップでステップアップさせながらパルス印加できることを示す。
次に、フォーミング、ベリファイ読み出し、低抵抗(LR)化、高抵抗(HR)化、読み出しの各動作モードにおけるワード線(WL)電圧、ソース線(SL)電圧、ビット線(BL)電圧、及び高抵抗(HR)化用電源213の出力VH0電圧、低抵抗(LR)化用電源212の出力VL0電圧の各種設定電圧一覧(II型セル)を図22に示す。図22において、フォーミング時におけるビット線BL電圧は、図21に示すステップアップ書き込みパルス電圧Vpを表し、また、LR化及びHR化時におけるビット線BL電圧は、2.4Vの振幅の書き込みパルス電圧Vpを表す。ここで、ベリファイ読み出しとは、フォーミング時のベリファイ読み出しを意味する。
高抵抗(HR)化書き込み時において、Vp(2.4V)は、書き込み回路206から印加される書き込みパルス電圧であり、VLは、書き込み回路206に供給されるLR化用電源212で発生されている電圧で、VHは、HR化用電源213で発生されている電圧で、図10(a)におけるパルスRV特性に示される点Oの電圧(+2.4V)に設定され、事前評価(上述の準備ステップ)により求めたユニポーラ領域に入らないように設定されている。つまり、上述の第2の制御ルールを順守するように制御される。
なお、ビット線を基準にして、ソース線に高抵抗(HR)化用電源213の出力VH0電圧が印加されるが、高抵抗(HR)化用電源213からソース線までの寄生抵抗による電圧降下分を考慮し、実効的にソース線の最大電圧が点Oの電圧(+2.4V)を超えない範囲となるように、高抵抗(HR)化用電源213の出力VH0電圧を高めに設定しても良い。
低抵抗(LR)化書き込み時において、VHは、高抵抗(HR)化書き込み時と同様に、2.4Vに設定され、また、Vp(2.4V)は、書き込み回路206で発生されている書き込みパルス電圧で、図10(a)、図10(b)に示すパルスRV特性の点Pを超え、かつ点Nを越えない書き込みパルス電圧が、メモリセルM11、M12、・・・に実効的に印加される。
また、フォーミング時において、Vpは、書き込み回路206から印加されるステップアップ書き込みパルス電圧であり、VHは、HR化用電源213で発生されている電圧で、フォーミング時に高電圧の書き込みパルス電圧Vpが印加できるように、3.3Vに設定されている。
ベリファイ読み出し及び読み出し時において、Vreadは、センスアンプ204でクランプした読み出し用電圧(0.4V)で、図10に示すパルスRV特性においては、負電圧の向きになり、読み出しディスターブが発生しない(つまり、抵抗変化素子の抵抗状態が変化しない)ように調整された電圧値(−0.4V)に対応している。また、VDDは不揮発性記憶装置200に供給される電源電圧に対応している。
次に、抵抗変化型不揮発性記憶装置におけるソフトフォーミング動作の一例について、図23に示すソフトフォーミングフロー図を参照しながら説明する。図23に示すように、先ず、LR化書き込みパルス電圧Vpを1.0Vに設定(S31:第1ステップ)し、次に書き込みパルス電圧Vpが3.3V以下かどうかを判定(S32:第2ステップ)し、書き込みパルス電圧Vpが3.3Vより大きい場合には(第2ステップでNo)、フォーミング不良としてソフトフォーミング動作を終了し、書き込みパルス電圧Vpが3.3V以下の場合には(第2ステップでYes)、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し(S33:第3ステップ)、次に、選択メモリセルM11のアドレスADがメモリアレイ202の最終アドレスADf以下であるかどうかを判定(S34:第4ステップ)し、選択メモリセルのアドレスADが最終アドレスADf以下である場合には(第4ステップでYes)、選択メモリセルに対して、選択メモリセルの抵抗値Rcが基準抵抗Rbより小さい(Rc<Rb)かどうかをベリファイ読み出し(S35:第5ステップ(判定ステップ))し、選択メモリセルの抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rbより小さい(Rc<Rb)場合には(第5ステップでYes)、既にフォーミングを必要としない程度に抵抗値が低下しているため、選択メモリセルのアドレスADをインクリメント(S37:第7ステップ)し、次のアドレスADのメモリセルを選択する。また、選択メモリセルの抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rb以上(Rc≧Rb)の場合には(第5ステップでNo)、設定された書き込みパルス電圧Vpを用いて、選択メモリセルに対して、フォーミング(“1”)書き込みの負電圧パルス(−1.0V、パルス幅50ns)を印加(S36:第6ステップ(印加ステップ))する。その後、選択メモリセルのアドレスADをインクリメント(S37:第7ステップ)し、次のアドレスADのメモリセルを選択する。以下、第4ステップ(S34)〜第7ステップ(S37)までを、選択メモリセルのアドレスADが最終アドレスADfより大きくなるまで、繰り返す。第4ステップ(S34)で選択メモリセルのアドレスADが最終アドレスADfより大きい場合(AD>ADf)には(第4ステップでNo)、メモリアレイ202の全メモリセルの各抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rbより小さく(Rc<Rb)なっているかどうかをメモリテスター等の外部装置で判定(S38:第8ステップ)し、全メモリセルの各抵抗値Rcが基準抵抗Rbより小さくなっていない場合には(第8ステップでNo)、書き込みパルス電圧Vpを+0.1Vインクリメントし、+1.1Vに設定(S39:第9ステップ)し、次に、書き込みパルス電圧Vpが3.3V以下かどうかを判定(S32:第2ステップ)する。その後、第2ステップ(S32)〜第9ステップ(S39)までを、書き込みパルス電圧Vpが最大書き込みパルス電圧3.3Vより大きくなるまで、又は、第8ステップ(S38)で全メモリセルのソフトフォーミングがパスするまで、繰り返す。
このように、このフォーミングフローは、抵抗変化素子100の抵抗値が高抵抗状態のときよりも小さいか否かを判断する判断ステップS35と、小さくないと判断された場合に(S35でNo)、フォーミング電圧にフォーミングマージン(0.7V)を加えて得られる電圧を超えない電圧パルスを印加する印加ステップS36とを含む。そして、判断ステップS35と印加ステップS36とはメモリアレイ202中の全メモリセルについて繰り返し(S34〜S37)、フォーミング対象メモリセルについて同一電圧の電圧パルスによる印加を終えた後に、フォーミングマージン(0.7V)を超えない刻み(0.1V)だけ電圧をインクリメント(S39)し、再び、判断ステップS35と印加ステップS36とを全メモリセルについて繰り返す(S34〜S37)。以上のようなフォーミングフローを採ることにより、ソフトフォーミングのためのフォーミングマージン(0.7V)よりも小さい電圧(0.1V)でインクリメントしながらフォーミング電圧を印加していくので、各メモリセルM11、M12、・・・毎に適したフォーミング電圧Vbで、抵抗変化素子に過剰な電圧及び電流ストレスを掛けずにソフトフォーミングが実現できる(つまり、上述の第1の制御ルールが順守される)。さらに、図23に示すソフトフォーミングフローによれば、フォーミングが必要なメモリセルに対してのみ書き込みパルス電圧Vpを印加していくと同時に、書き込みパルス電圧Vpの電圧切替(インクリメント)動作を最小限に抑えることができるため、メモリアレイに対して、高速にソフトフォーミングを実施することができる。
なお、この例では、フォーミングのための書き込みパルス電圧Vpを+0.1V刻みでインクリメントしているが(第9ステップ)、本発明は、このような刻み電圧(0.1V)に限られず、フォーミングマージン(ここでは、0.7V)よりも小さい刻み電圧であればよい。これにより、フォーミングに必要な最低電圧にフォーミングマージン(ここでは、0.7V)を加えて得られる電圧を最大電圧(絶対値最大電圧の一例)として、フォーミング用の書き込み電圧パルスが印加され、確実にソフトフォーミングが実施される。
以上の様に構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置の、データ書き込みサイクル、読み出しサイクル、及びソフトフォーミングにおける動作例について、図24(a)〜図24(c)及び図25に示すタイミングチャート、図17の本発明の実施形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置の構成図、および図10のパルスRV特性を説明する図を参照しながら説明する。
図24(a)〜図24(c)は、本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作例を示すタイミングチャートである。なお、ここでは、抵抗変化層が高抵抗状態の場合をデータ「0」に、低抵抗状態の場合をデータ「1」にそれぞれ割り当てると定義して、その動作例を示す。また、説明は、メモリセルM11についてデータの書き込みおよび読み出しをする場合のみについて示す。
図24(a)に示すメモリセルM11に対するデータ「0」書き込みサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を、それぞれ電圧VH(2.4V)及び電圧Vp(2.4V)に設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VH(2.4V)に設定するが、この時は、図17の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11は、まだオフ状態である。この段階では、図17のNMOSトランジスタN11のドレイン端子と、ソース端子はともに電圧2.4Vが印加されているので、トランジスタのオン・オフに関係なく電流は流れない。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧0Vに設定し、所定期間後、再度電圧Vp(2.4V)となるパルス波形を印加する。この段階で、図17のメモリセルM11には、図10(a)のパルスRV特性における点Oの正パルス電圧(+2.4V)が印加され、低抵抗値から高抵抗値に書き込みが行われる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データ「0」の書き込みが完了する。つまり、ソース線及びワード線で行方向のメモリセルを選択しておき、その後に、特定のビット線に負電圧方向のパルス波形を印加することで、ソース線、ワード線及びビット線で選択されたメモリセルの抵抗変化素子に正の電圧パルスを印加して高抵抗化している。
図24(b)に示すメモリセルM11に対するデータ「1」書き込みにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧0Vに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VH(2.4V)に設定し、図17の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧Vp(2.4V)に設定し、所定期間後、再度電圧0Vとなるパルス波形を印加する。この段階で、図17のメモリセルM11には、図10(a)、図10(b)に示すパルスRV特性の点Pを超え、かつ点Nを越えない負パルス電圧が印加され、高抵抗値から低抵抗値に書き込みが行われる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データ「1」の書き込みが完了する。つまり、ソース線及びワード線で行方向のメモリセルを選択しておき、その後に、特定のビット線に正電圧方向のパルス波形を印加することで、ソース線、ワード線及びビット線で選択されたメモリセルの抵抗変化素子に負の電圧パルスを印加して低抵抗化している。ただし、この方法に限定されるわけではない。
図24(c)に示すメモリセルM11に対するデータの読み出しサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧0Vに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VDD(1.8V)に設定し、選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、読み出し電圧Vreadを0.4Vに設定し、センスアンプ204により、選択メモリセルM11に流れる電流値を検出することで、記憶されているデータをデータ「0」またはデータ「1」と判定する。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データの読み出し動作を完了する。
次に、本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置のソフトフォーミング動作について説明する。
図25は、本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置のソフトフォーミング動作を示すタイミングチャートである。図25に示すソフトフォーミング動作では、アドレスADが0であるメモリセルM11の1ビットのみをアクセスし、アレイではなく、そのビットに対して、図23に示すソフトフォーミングフロー(但し、1ビットアクセスのため、第4、第7ステップはカット)を実施している。
図25において、ソフトフォーミング開始時は、フォーミング対象のメモリセルM11のワード線WL0とビット線BL0とソース線SL0の電圧状態は全て0Vであり、また、分圧切替信号TRM10、TRM11、・・・、TRMmn(m:1〜3の整数、n:0〜9の整数)及び、端子DQは、全てLレベルとなっている。また、メモリセルM11は、初期状態である。
先ず、図23に示す第1ステップにおいて、分圧切替信号TRM10のみをHレベルに設定し、書き込み回路206が、書き込みパルス電圧Vpとして、Vp10(=1.0V)の電圧パルスを印加できるように設定する。
次に、第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが3.3V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
第5ステップにおいて、選択メモリセルの抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rbより小さい(Rc<Rb)かどうかをベリファイ読み出しするため、選択するワード線WL0を電圧VDD(1.8V)に設定し、選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、読み出し電圧Vreadを0.4Vに設定し、センスアンプ204により、選択メモリセルM11に流れる電流値を検出することで、選択メモリセルM11の抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rbより小さい(Rc<Rb)かどうかを判定し、ここでは、抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rb以上のため、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力し、端子DQに“0”データを出力し、フォーミングがフェイル(偽)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達する。その後、ワード線WL0及びビット線BL0を電圧0Vに設定し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
次に、図23に示すフォーミング用のLR化書き込み(第6ステップ)を実施する。選択メモリセルに対して、フォーミング用のLR化書き込みの負電圧パルス(−1.0V、パルス幅50ns)を印加するために、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0、ワード線WL0を電圧0Vに設定する。その後、選択するワード線WL0を電圧VH(3.3V)に設定し、図17の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧Vp(1.0V)に設定し、所定期間後、再度電圧0Vとなるパルス波形(負電圧パルス)を印加する。この段階で、図17のメモリセルM11には、図10(a)に示すパルスRV特性の点N(フォーミング開始電圧Vb=−1.8V)より大きい(つまり、絶対値が小さい)負パルス電圧が印加されるが、選択メモリセルM11は、初期状態のままで、フォーミングはされない。つまり、フォーミングは失敗に終わる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、フォーミング用のLR化書き込みが完了する。
次に、第8ステップにおいて、第5ステップの判定結果がフォーミングフェイル(偽)と確認され、第9ステップに移行し、分圧切替信号TRM11のみをHレベルに設定し、書き込み回路206が、書き込みパルス電圧Vpとして、Vp11(=1.1V)の電圧パルスを印加できるように設定する。
次に第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが3.3V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
2回目の第5ステップでは、1回目の第5ステップと同様のベリファイ読み出し(Rc<Rb?)動作を行うが、今、抵抗値Rcが初期抵抗状態のままで、フォーミング用の基準抵抗Rb以上のため、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力し、端子DQに“0”データを出力し、フォーミングがフェイル(偽)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
次に、図23に示す第6ステップのフォーミング用のLR化書き込み(2回目)を実施する。選択メモリセルに対して、フォーミング用のLR化書き込みの負電圧パルス(−1.1V、パルス幅50ns)を印加するために、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0、ワード線WL0を電圧0Vに設定する。その後、選択するワード線WL0を電圧VH(3.3V)に設定し、図17の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧Vp(1.1V)に設定し、所定期間後、再度電圧0Vとなるパルス波形(負電圧パルス)を印加する。この段階で、図17のメモリセルM11には、図10(a)に示すパルスRV特性の点N(フォーミング開始電圧Vb=−1.8V)より大きい(つまり、絶対値が小さい)負パルス電圧が印加されるが、選択メモリセルM11は、初期状態のままで、フォーミングはされない。つまり、フォーミングは失敗に終わる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、2回目のフォーミング用のLR化書き込みが完了する。
その後、図23に示す第2ステップから第9ステップ(第4、第7ステップを除く)のループ、つまり、ベリファイ読み出し動作とフォーミングLR化書き込み動作を3回目から8回目まで繰返すが、メモリセルM11の抵抗値Rcが初期状態のままで、基準抵抗Rb以上のままである。つまり、フォーミングは失敗に終わる。
次に、第9ステップにて、分圧切替信号TRMmn(m=1、n=8)のみをHレベルに設定し、書き込み回路206が、書き込みパルス電圧Vpとして、Vpmn(m=1、n=8)(=1.8V)の電圧パルスを印加できるように設定する。
次に第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが3.3V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
次に、9回目の第5ステップにおいて、ベリファイ読み出し(Rc<Rb?)動作を行うが、今、抵抗値Rcが初期抵抗状態のままで、フォーミング用の基準抵抗Rb以上のため、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力し、端子DQに“0”データを出力し、フォーミングがフェイル(偽)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
次に、図23に示す第6ステップのフォーミング用のLR化書き込み(9回目)を実施する。選択メモリセルに対して、フォーミング用のLR化書き込みの負電圧パルス(−1.8V、パルス幅50ns)を印加するために、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0、ワード線WL0を電圧0Vに設定する。その後、選択するワード線WL0を電圧VH(3.3V)に設定し、図17の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧Vp(1.8V)に設定し、所定期間後、再度電圧0Vとなるパルス波形(負電圧パルス)を印加する。この段階で、図17のメモリセルM11には、図10(a)に示すパルスRV特性の点N(フォーミング開始電圧Vb=−1.8V)に相当する負パルス電圧が印加されるため、選択メモリセルM11は、初期の高抵抗状態から、導電パスが形成され、高抵抗状態HRと低抵抗状態LRの間のフォーミング後抵抗値に遷移し、フォーミングが行われる。これにより、初めて、フォーミングが成功したことになる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、9回目のフォーミング用のLR化書き込みが完了する。
その後、第8ステップにおいて、フォーミングLR化書き込み前の第5ステップの判定結果がフォーミングフェイル(偽)していたと確認され、第9ステップに移行し、分圧切替信号TRMm(n+1)(m=1、n=8)のみをHレベルに設定し、書き込み回路206が、書き込みパルス電圧Vpとして、Vpm(n+1)(m=1、n=8)(=1.9V)の電圧パルスを印加できるように設定する。
次に第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが3.3V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
10回目の第5ステップでは、ベリファイ読み出し(Rc<Rb?)動作を行うが、今、選択メモリセルM11の抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rbより小さくなっているため、センスアンプ出力SAOは、Hレベルを出力し、端子DQに“1”データを出力し、フォーミングがパス(真)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
その後、第8ステップにおいて、直前の第5ステップの判定結果がフォーミングパス(真)していたと確認され、ソフトフォーミングが完了する。
このように、0.1V刻みで電圧の絶対値を大きくしていきながら負電圧パルスを印加し、印加の都度、フォーミングの完了を判定し、フォーミングが完了した後にはそれ以上の負電圧パルスを印加しないことにしているので、所定の書き込みパルス電圧Vpでフォーミングされた後には、メモリセルM11には、過剰なパルス電圧が印加されない。
ソフトフォーミング後、図22に示すように、高抵抗(HR)化書き込みパルス電圧、低抵抗(LR)化書き込みパルス電圧ともに2.4Vに、またパルス幅を50nsに設定し、通常の“0”データ(HR化)及び“1”データ(LR化)書き込みが可能となる。
以上のように、図23に示すソフトフォーミングフローに基づいて、各メモリセルに対して、ソフトフォーミングを実施することにより(つまり、上述の第1の制御ルールを順守することにより)、遷移可能な高抵抗値レベルをより高く制御可能となり、かつ、ユニポーラ領域に入らない極大点付近の高抵抗化電圧を用いて、高抵抗化させることにより(つまり、上述の第2の制御ルールを順守することにより)、高抵抗値レベルを可能な限り高く設定することが可能(図10、図11参照)となり、低抵抗状態と高抵抗状態との動作ウィンドウを拡大でき、高速読み出し、及びデータ信頼性が向上可能となり、誤読み出し発生の恐れを大幅に低減可能となる。
なお、“1”データ(LR化)書き込みを行う低抵抗化電圧は、フォーミングマージンΔが0.7Vより大きくなり、遷移可能な高抵抗値レベルを低下させてしまうことが無いような低抵抗化電圧を設定しないといけないことは、言うまでもない。
また、高抵抗値レベルの極大点付近が比較的なだらかな場合には、少しぐらいユニポーラ領域に入る高抵抗化電圧を用いて、“0”データ(HR化)書き込みを行っても、実使用上は問題ない。たとえば、高抵抗化電圧として、高抵抗値レベルの極大点を越えても、高抵抗値レベルの極大点の抵抗値の90%以上の抵抗値となるような高抵抗化電圧であれば、実使用上問題ない。
なお、本実施形態では、通常の“0”、“1”データの書き込みにおいて、ワード線WL0電圧(=2.4V)、低抵抗化パルス電圧Vp(=2.4V)、及び高抵抗化パルス電圧VH(=2.4V)は、全て同一電圧に設定したが、必ずしも一致させる必要は無い。
[第2の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置]
次に、本発明の第2の実施形態として、上記で説明したI型セルを用いた1T1R型の不揮発性記憶装置について説明する。
図26は、本発明の第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を示すブロック図である。
図26において、図17と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
不揮発性記憶装置227は、図26に示すように、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置200に対して、図6(a)に示されたI型セルで構成されたメモリアレイ229、書き込み回路230、行ドライバ231が異なる。
メモリ本体228は、メモリアレイ229と、行選択回路208、ワード線ドライバWLD、ソース線ドライバSLD及び可変電圧発生回路704からなる行ドライバ231と、列選択回路203と、データの書き込みを行うための書き込み回路230と、選択ビット線に流れる電流量を検出し、高抵抗状態をデータ「0」に、また低抵抗状態をデータ「1」と判定するセンスアンプ204と、端子DQを介して入出力データの入出力処理を行うデータ入出力回路205とを備える。
メモリアレイ229は、半導体基板の上に形成された、互いに交差するように配列された複数のワード線WL0、WL1、WL2、・・・および複数のビット線BL0、BL1、BL2、・・・と、これらのワード線WL0、WL1、WL2、・・・、およびビット線BL0、BL1、BL2、・・・の交点に対応してそれぞれ設けられた複数のNMOSトランジスタN11、N12、N13、N21、N22、N23、N31、N32、N33、・・・(以下、「トランジスタN11、N12、・・・」と表す)と、トランジスタN11、N12、・・・と1対1に直列接続された複数の抵抗変化素子R11、R12、R13、R21、R22、R23、R31、R32、R33、・・・(以下、「抵抗変化素子R11、R12、・・・」と表す)とを備え、個々がメモリセルM11、M12、M13、M21、M22、M23、M31、M32、M33、・・・(以下、「メモリセルM11、M12、・・・」と表す)を構成している。
図26に示すように、トランジスタN11、N21、N31、・・・のゲートはワード線WL0に接続され、トランジスタN12、N22、N32、・・・のゲートはワード線WL1に接続され、トランジスタN13、N23、N33、・・・のゲートはワード線WL2に接続され、トランジスタN14、N24、N34、・・・のゲートはワード線WL3に接続されている。
また、トランジスタN11、N21、N31、・・・およびトランジスタN12、N22、N32、・・・はソース線SL0に共通に接続され、トランジスタN13、N23、N33、・・・およびトランジスタN14、N24、N34、・・・はソース線SL2に共通に接続されている。
また、抵抗変化素子R11、R12、R13、R14、・・・はビット線BL0に接続され、抵抗変化素子R21、R22、R23、R24、・・・はビット線BL1に接続され、抵抗変化素子R31、R32、R33、R34、・・・はビット線BL2に接続されている。このように、第1の実施形態におけるメモリアレイ202に対して、各ビット線BL0、BL1、BL2、・・・に対応する抵抗変化素子R11、R12、R13、・・・がNMOSトランジスタN11、N12、・・・を介さずに直接接続される構成(I型セル構成)を取っている。
制御回路210は、データの書き込みサイクルにおいては、データ入出力回路205に入力された入力データDinに応じて、書き込み用電圧の印加を指示する書き込み信号を書き込み回路230へ出力する。他方、データの読み出しサイクルにおいて、制御回路210は、読み出し動作を指示する読み出し信号をセンスアンプ204へ出力する。
行選択回路208は、アドレス入力回路209から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、行ドライバ231より、複数のワード線WL0、WL1、WL2、・・・のうちの何れかに対応するワード線ドライバ回路WLDより、その選択されたワード線に対して、所定の電圧を印加する。
また同様に、行選択回路208は、アドレス入力回路209から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、行ドライバ231より、複数のソース線SL0、SL2、・・・のうちの何れかに対応するソース線ドライバ回路SLDより、その選択されたソース線に対して、可変電圧発生回路704により生成された所定の電圧(フォーミング用電圧パルス)を印加する。
書き込み回路230は、制御回路210から出力された書き込み信号を受け取った場合、列選択回路203を通して選択されたビット線に対して書き込み用電圧(書き込み用電圧パルスVp)を印加する。
書き込み用電源211は、低抵抗化用のLR化用電源212と、高抵抗化用のHR化用電源213より構成され、LR化用電源212の出力VL0は行ドライバ231に入力され、また、HR化用電源213の出力VH0は書き込み回路230に入力されている。
図27は、図26における可変電圧発生回路704の構成の一例を示す図である。図27において、図20と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。可変電圧発生回路704では、ボルテージフォロワ回路215の出力端子VCは、ソース線ドライバ回路SLDの電源端子と接続される。従って、ソース線ドライバ回路SLDは、書き込みパルス印加時に、制御回路210が分圧切替信号TRM10、11、・・・、33を制御し、対応するスイッチSW10〜33の一つのみをON状態に制御することにより、分圧回路216の出力電圧を多段階に制御可能となり、ボルテージフォロワ回路215の出力端子VCの電圧を多段階に制御でき、ソース線ドライバ回路SLDに入力されるソース線ドライバ制御信号に応じてソース線ドライバ回路SLDの出力である書き込みパルス電圧Vpを多段階に出力可能となる。
[第2の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置の動作]
以上の様に構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置について、先ず、主要な回路ブロックの動作を説明し、その後、抵抗変化型不揮発性記憶装置のデータ書き込み、フォーミングを行う場合の書き込みサイクル、及び通常読み出し、ベリファイ読み出しを行う場合の読み出しサイクルにおける動作を説明する。
まず、可変電圧発生回路704の動作について説明する。
図27に示されるように、今、低抵抗(LR)化用電源212の出力VL0の電位を3.3V、抵抗Rd10を100kΩ、各抵抗Rd11〜Rd33を10kΩ、ソース線ドライバ制御信号の電圧振幅を3.3Vとした場合、可変電圧発生回路704は、分圧切替信号TRM10によりスイッチSW10のみをON状態に制御すると、分圧の関係式から、共通ノードNOの電位は、1.0V(=3.3V×100kΩ/330kΩ)となり、出力端子VCが1.0Vに制御されるため、ソース線ドライバ回路SLDは、ソース線ドライバ制御信号に応じて、書き込みパルス電圧Vpとして1.0Vを出力可能となる。
図28は、ソース線ドライバ回路SLDが出力可能なステップアップ書き込みパルス電圧Vpのタイミングチャートである。図28では、制御回路210から出力される分圧切替信号TRM10、11、・・・、33により、スイッチSW10〜SW33をスイッチSW10からスイッチSW33まで順次択一的に導通状態に切替制御していき、出力端子VCの電圧を1.0Vから3.3Vまで0.1Vステップで増加させていき、ソース線ドライバ制御信号に同期して、書き込みパルス電圧Vpを1.0Vから3.3Vまで0.1Vステップでステップアップさせながらパルス印加できることを示す。
次に、フォーミング、ベリファイ読み出し、低抵抗(LR)化、高抵抗(HR)化、読み出しの各動作モードにおけるワード線(WL)電圧、ソース線(SL)電圧、ビット線(BL)電圧、及び高抵抗(HR)化用電源213の出力VH0電圧、低抵抗(LR)化用電源212の出力VL0電圧の各種設定電圧一覧(I型セル)を図29に示す。図29において、フォーミング時におけるソース線SL電圧は、図28に示すステップアップ書き込みパルス電圧Vpを表し、また、LR化時及びHR化時におけるビット線BL電圧は、2.4Vの振幅のパルス電圧を表す。また、LR化時におけるソース線SL電圧は、可変電圧発生回路704において、分圧切替信号TRM33によりスイッチSW33のみをON状態に制御し、共通ノードNOの電位が2.4V(=VL)となり、出力端子VCが2.4Vに制御されるため、ソース線ドライバ回路SLDは、書き込みパルス電圧Vpとして2.4V(=VL)を出力可能であることを表す。
低抵抗(LR)化書き込み時において、VLは、LR化用電源212で発生されている電圧で、Vp(2.4V)は、ソース線ドライバ回路SLDから印加される書き込みパルス電圧であり、図10(a)、図10(b)に示すパルスRV特性の点Pを超え、かつ点Nを越えない書き込みパルス電圧が、メモリセルM11、M12、・・・に実効的に印加され、VHは、書き込み回路230に供給されるHR化用電源213で発生されている電圧である。
高抵抗(HR)化書き込み時において、VLは、LR化用電源212で発生されている電圧で、VHは、書き込み回路230に供給されるHR化用電源213で発生されている電圧で、図10(a)におけるパルスRV特性に示される点Oの電圧(+2.4V)に設定され、事前評価により求めたユニポーラ領域に入らないように設定されている。つまり、上述の第2の制御ルールを順守するように制御される。
なお、ビット線を基準にして、ソース線に高抵抗(HR)化用電源213の出力VH0電圧が印加されるが、高抵抗(HR)化用電源213からソース線までの寄生抵抗による電圧降下分を考慮し、実効的にソース線の最大電圧が点Oの電圧(+2.4V)を超えない範囲となるように、高抵抗(HR)化用電源213の出力VH0電圧を高めに設定しても良い。
また、フォーミング時において、Vpは、ソース線ドライバ回路SLDから印加されるステップアップ書き込みパルス電圧であり、VLは、LR化用電源212で発生されている電圧で、フォーミング時に高電圧の書き込みパルス電圧Vpが印加できるように、3.3Vに設定されている。
ベリファイ読み出し及び読み出し時において、Vreadは、センスアンプ204でクランプした読み出し用電圧(0.4V)で、図10に示すパルスRV特性においては、正電圧の向きになり、読み出しディスターブが発生しない(つまり、抵抗変化素子の抵抗状態が変化しない)ように調整された電圧値(+0.4V)に対応している。また、VDDは不揮発性記憶装置227に供給される電源電圧に対応している。
不揮発性記憶装置227におけるソフトフォーミングのフロー図については、図23に示すフロー図と同一のため、ここでは、説明は省略する。
以上の様に構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置について、データ書き込みサイクル、読み出しサイクル、及びソフトフォーミングにおける動作例について、図30(a)〜図30(c)及び図31に示すタイミングチャート、図26の本発明の実施形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置の構成図、および図10のパルスRV特性を説明する図を参照しながら説明する。
図30(a)〜図30(c)は、本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作例を示すタイミングチャートである。なお、ここでは、抵抗変化層が高抵抗状態の場合をデータ「0」に、低抵抗状態の場合をデータ「1」にそれぞれ割り当てると定義して、その動作例を示す。また、説明は、メモリセルM11についてデータの書き込みおよび読み出しをする場合のみについて示す。
図30(a)に示すメモリセルM11に対するデータ「1」書き込みサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を、それぞれ電圧VH(2.4V)及び電圧Vp(2.4V)に設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VL(2.4V)に設定するが、この時は、図26の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11は、まだオフ状態である。この段階では、図26のNMOSトランジスタN11のドレイン端子と、ソース端子はともに電圧2.4Vが印加されているので、トランジスタのオン・オフに関係なく電流は流れない。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧0Vに設定し、所定期間後、再度電圧VH(2.4V)となるパルス波形を印加する。この段階で、図26のメモリセルM11には、図10(a)、図10(b)に示すパルスRV特性の点Pを超え、かつ点Nを越えない負パルス電圧が印加され、高抵抗値から低抵抗値に書き込みが行われる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データ「1」の書き込みが完了する。つまり、ソース線及びワード線で行方向のメモリセルを選択しておき、その後に、特定のビット線に負電圧方向のパルス波形を印加することで、ソース線、ワード線及びビット線で選択されたメモリセルの抵抗変化素子に負の電圧パルスを印加して低抵抗化している。
図30(b)に示すメモリセルM11に対するデータ「0」書き込みにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧0Vに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VL(2.4V)に設定し、図26の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧VH(2.4V)に設定し、所定期間後、再度電圧0Vとなるパルス波形を印加する。この段階で、図26のメモリセルM11には、図10(a)に示すパルスRV特性の点Oの正パルス電圧(+2.4V)が印加され、低抵抗値から高抵抗値に書き込みが行われる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データ「0」の書き込みが完了する。つまり、ソース線及びワード線で行方向のメモリセルを選択しておき、その後に、特定のビット線に正電圧方向のパルス波形を印加することで、ソース線、ワード線及びビット線で選択されたメモリセルの抵抗変化素子に正の電圧パルスを印加して高抵抗化している。
図30(c)に示すメモリセルM11に対するデータの読み出しサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧0Vに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VDD(1.8V)に設定し、選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、読み出し電圧Vreadを0.4Vに設定し、センスアンプ204により、選択メモリセルM11に流れる電流値を検出することで、記憶されているデータをデータ「0」またはデータ「1」と判定する。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データの読み出し動作を完了する。
次に、本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置のソフトフォーミング動作について説明する。
図31は、本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置のソフトフォーミング動作を示すタイミングチャートである。図31に示すソフトフォーミング動作では、アドレスADが0であるメモリセルM11の1ビットのみをアクセスし、アレイではなく、そのビットに対して、図23に示すソフトフォーミングフロー(但し、1ビットアクセスのため、第4、第7ステップはカット)を実施している。
図31において、ソフトフォーミング開始時は、フォーミング対象のメモリセルM11のワード線WL0とビット線BL0とソース線SL0の電圧状態は全て0Vであり、また、分圧切替信号TRM10、TRM11、・・・、TRMmn(m:1〜3の整数、n:0〜9の整数)及び、端子DQは、全てLレベルとなっている。また、メモリセルM11は、初期状態である。
先ず、図23に示す第1ステップにおいて、分圧切替信号TRM10のみをHレベルに設定し、ソース線ドライバ回路SLDが、書き込みパルス電圧Vpとして、Vp10(=1.0V)の電圧パルスを印加できるように設定する。
次に、第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが3.3V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
第5ステップにおいて、選択メモリセルの抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rbより小さい(Rc<Rb)かどうかをベリファイ読み出しするため、選択するワード線WL0を電圧VDD(1.8V)に設定し、選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、読み出し電圧Vreadを0.4Vに設定し、センスアンプ204により、選択メモリセルM11に流れる電流値を検出することで、選択メモリセルM11の抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rbより小さい(Rc<Rb)かどうかを判定し、ここでは抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rb以上のため、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力し、端子DQに“0”データを出力し、フォーミングがフェイル(偽)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達する。その後、ワード線WL0及びビット線BL0を電圧0Vに設定し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
次に、図23に示すフォーミング用のLR化書き込み(第6ステップ)を実施する。選択メモリセルに対して、フォーミング用のLR化書き込みの負電圧パルス(−1.0V、パルス幅50ns)を印加するために、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0、ワード線WL0を電圧0Vに設定する。その後、選択するワード線WL0を電圧VL(3.3V)に設定し、図26の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。次に、選択ソース線SL0を所定期間、電圧Vp(1.0V)に設定し、所定期間後、ビット線電圧を再度電圧0Vとなるパルス波形(ソース線に対し負電圧パルス)を印加する。この段階で、図26のメモリセルM11には、図10(a)に示すパルスRV特性の点N(フォーミング開始電圧Vb=−1.8V)より大きい(つまり、絶対値が小さい)負パルス電圧が印加されるが、選択メモリセルM11は、初期状態のままで、フォーミングはされない。つまり、フォーミングは失敗に終わる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、フォーミング用のLR化書き込みが完了する。
次に、第8ステップにおいて、第5ステップの判定結果がフォーミングフェイル(偽)と確認され、第9ステップに移行し、分圧切替信号TRM11のみをHレベルに設定し、ソース線ドライバ回路SLDが、書き込みパルス電圧Vpとして、Vp11(=1.1V)の電圧パルスを印加できるように設定する。
次に第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが3.3V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
2回目の第5ステップでは、1回目の第5ステップと同様のベリファイ読み出し(Rc<Rb?)動作を行うが、今、抵抗値Rcが初期抵抗状態のままで、基準抵抗Rb以上のため、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力し、端子DQに“0”データを出力し、フォーミングがフェイル(偽)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
次に、図23に示す第6ステップのフォーミング用のLR化書き込み(2回目)を実施する。選択メモリセルに対して、フォーミング用のLR化書き込みの負電圧パルス(−1.1V、パルス幅50ns)を印加するために、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0、ワード線WL0を電圧0Vに設定する。その後、選択するワード線WL0を電圧VL(3.3V)に設定し、図26の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。次に、選択ソース線SL0を所定期間、電圧Vp(1.1V)に設定し、所定期間後、再度電圧0Vとなるパルス波形(負電圧パルス)を印加する。この段階で、図26のメモリセルM11には、図10(a)に示すパルスRV特性の点N(フォーミング開始電圧Vb=−1.8V)より大きい(つまり、絶対値が小さい)負パルス電圧が印加されるが、選択メモリセルM11は、初期状態のままで、フォーミングはされない。つまり、フォーミングは失敗に終わる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、2回目のフォーミング用のLR化書き込みが完了する。
その後、図23に示す第2ステップから第9ステップ(第4、第7ステップを除く)のループ、つまり、ベリファイ読み出し動作とフォーミングLR化書き込み動作を3回目から8回目まで繰返すが、メモリセルM11の抵抗値Rcが初期状態のままで、フォーミング用の基準抵抗Rb以上のままである。つまり、フォーミングは失敗に終わる。
次に、第9ステップにて、分圧切替信号TRMmn(m=1、n=8)のみをHレベルに設定し、ソース線ドライバ回路SLDが、書き込みパルス電圧Vpとして、Vpmn(m=1、n=8)(=1.8V)の電圧パルスを印加できるように設定する。
次に第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが3.3V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
次に、9回目の第5ステップにおいて、ベリファイ読み出し(Rc<Rb?)動作を行うが、今、抵抗値Rcが初期抵抗状態のままで、フォーミング用の基準抵抗Rb以上のため、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力し、端子DQに“0”データを出力し、フォーミングがフェイル(偽)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
次に、図23に示す第6ステップのフォーミング用のLR化書き込み(9回目)を実施する。選択メモリセルに対して、フォーミング用のLR化書き込みの負電圧パルス(−1.8V、パルス幅50ns)を印加するために、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0、ワード線WL0を電圧0Vに設定する。その後、選択するワード線WL0を電圧VL(3.3V)に設定し、図26の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。次に、選択ソース線SL0を所定期間、電圧Vp(1.8V)に設定し、所定期間後、再度電圧0Vとなるパルス波形(負電圧パルス)を印加する。この段階で、図26のメモリセルM11には、図10(a)に示すパルスRV特性の点N(フォーミング開始電圧Vb=−1.8V)に相当する負パルス電圧が印加されるため、選択メモリセルM11は、初期の高抵抗状態から、導電パスが形成され、高抵抗状態HRと低抵抗状態LRの間のフォーミング後抵抗値に遷移し、フォーミングが行われる。これにより、初めて、フォーミングが成功したことになる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、9回目のフォーミング用のLR化書き込みが完了する。
その後、第8ステップにおいて、フォーミングLR化書き込み前の第5ステップの判定結果がフォーミングフェイル(偽)していたと確認され、第9ステップに移行し、分圧切替信号TRMm(n+1)(m=1、n=8)のみをHレベルに設定し、ソース線ドライバ回路SLDが、書き込みパルス電圧Vpとして、Vpm(n+1)(m=1、n=8)(=1.9V)の電圧パルスを印加できるように設定する。
次に第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが3.3V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
10回目の第5ステップでは、ベリファイ読み出し(Rc<Rb?)動作を行うが、今、選択メモリセルM11の抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rbより小さくなっているため、センスアンプ出力SAOは、Hレベルを出力し、端子DQに“1”データを出力し、フォーミングがパス(真)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
その後、第8ステップにおいて、直前の第5ステップの判定結果がフォーミングパス(真)していたと確認され、ソフトフォーミングが完了する。
このように、0.1V刻みで電圧の絶対値を大きくしていきながら負電圧パルスを印加し、印加の都度、フォーミングの完了を判定し、フォーミングが完了した後にはそれ以上の負電圧パルスを印加しないことにしているので、所定の書き込みパルス電圧Vpでフォーミングされた後には、メモリセルM11には、過剰なパルス電圧が印加されない。
ソフトフォーミング後、図29に示すように、高抵抗化書き込みパルス電圧、低抵抗化書き込みパルス電圧ともに2.4Vに、またパルス幅を50nsに設定し、通常の“0”データ(HR化)及び“1”データ(LR化)書き込みが可能となる。
以上のように、I型セルにおいても、ソース線側からステップアップフォーミングパルスを印加することにより、第1の実施形態(II型セル、ビット線側からステップアップパルスを印加)と同様の効果を奏することが可能となり、各メモリセルに対して、ソフトフォーミングを実施することにより(つまり、上述の第1の制御ルールを順守することにより)、遷移可能な高抵抗値レベルをより高く制御可能となり、かつ、ユニポーラ領域に入らない極大点付近の高抵抗化電圧を用いて、高抵抗化させることにより(つまり、上述の第2の制御ルールを順守することにより)、高抵抗値レベルを可能な限り高く設定することが可能(図10、図11参照)となり、低抵抗状態と高抵抗状態との動作ウィンドウを拡大でき、高速読み出し、及びデータ信頼性が向上可能となり、誤読み出し発生の恐れを大幅に低減可能となる。
なお、“1”データ(LR化)書き込みを行う低抵抗化電圧は、フォーミングマージンΔが0.7Vより大きくなり、遷移可能な高抵抗値レベルを低下させてしまうことが無いような低抵抗化電圧を設定しないといけないことは、言うまでもない。
また、高抵抗値レベルの極大点付近が比較的なだらかな場合には、少しぐらいユニポーラ領域に入る高抵抗化電圧を用いて、“0”データ(HR化)書き込みを行っても、実使用上は問題ない。たとえば、高抵抗化電圧として、高抵抗値レベルの極大点を越えても、高抵抗値レベルの極大点の抵抗値の90%以上の抵抗値となるような高抵抗化電圧であれば、実使用上問題ない。
なお、本実施の形態では、通常の“0”、“1”データの書き込みにおいて、ワード線WL0電圧(=2.4V)、低抵抗化パルス電圧Vp(=2.4V)、及び高抵抗化パルス電圧VH(=2.4V)は、全て同一電圧に設定したが、必ずしも一致させる必要は無い。
[第3の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置]
次に、本発明の第3の実施形態として、I型セルを用いてビット線側からステップアップパルスを印加してソフトフォーミングを実施する場合における1T1R型の不揮発性記憶装置について説明する。
図32は、本発明の第3の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を示すブロック図である。
図32において、図26と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
不揮発性記憶装置270は、図32に示すように、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置227に対して、可変電圧パルス発生回路706を備えた書き込み回路271及び行ドライバ273が異なる。
メモリ本体272は、メモリアレイ229と、行選択回路208、ワード線ドライバWLD、ソース線ドライバSLDからなる行ドライバ273と、列選択回路203と、データの書き込みを行うための書き込み回路271と、選択ビット線に流れる電流量を検出し、高抵抗状態をデータ「0」に、また低抵抗状態をデータ「1」と判定するセンスアンプ204と、端子DQを介して入出力データの入出力処理を行うデータ入出力回路205とを備える。
制御回路210は、データの書き込みサイクルにおいては、データ入出力回路205に入力された入力データDinに応じて、書き込み用電圧の印加を指示する書き込み信号を書き込み回路271へ出力する。他方、データの読み出しサイクルにおいて、制御回路210は、読み出し動作を指示する読み出し信号をセンスアンプ204へ出力する。
行選択回路208は、アドレス入力回路209から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、行ドライバ273より、複数のワード線WL0、WL1、WL2、・・・のうちの何れかに対応するワード線ドライバ回路WLDより、その選択されたワード線に対して、所定の電圧を印加する。
また同様に、行選択回路208は、アドレス入力回路209から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、行ドライバ273より、複数のソース線SL0、SL2、・・・のうちの何れかに対応するソース線ドライバ回路SLDより、その選択されたソース線に対して、所定の電圧を印加する。
書き込み回路271は、制御回路210から出力された書き込み信号を受け取った場合、列選択回路203に対して選択されたビット線に対して書き込み用電圧を印加する。
書き込み用電源211は、低抵抗化用のLR化用電源212と、高抵抗化用のHR化用電源213より構成され、LR化用電源212の出力VL0は行ドライバ273に入力され、また、HR化用電源213の出力VH0は書き込み回路271に入力されている。
図33は、図32における書き込み回路271の構成の一例を示す図である。図33において、図20と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
書き込み回路271は、図33に示すように、図20の分圧回路216、書き込みドライバ回路214に対して、分圧回路233、書き込みドライバ回路234で置換し、ボルテージフォロワ回路215を使用せず、分圧回路233と書き込みドライバ回路234を直結した構成を採用している。
分圧回路233は、HR化用電源213から出力される電圧VHと接地電位の間に33個の固定抵抗Rd1〜Rd33が直列に接続され、各固定抵抗Rd1〜Rd33間のノード及び、電源VH端子と固定抵抗Rd33間のノードにそれぞれスイッチSW1〜SW33が接続され、各スイッチSW1〜SW33の固定抵抗Rd1〜Rd33と接続されていない方の端子は、全て共通ノードVCに接続され、各スイッチSW1〜SW33は、制御回路210から入力される分圧切替信号TRMにより、独立にON/OFF制御が可能である。また、共通ノードVCは、書き込みドライバ回路234と接続される。
書き込みドライバ回路234は、電源としてHR化用電源213から出力される電圧VHが入力されているライトバッファ235と、PMOSクランプトランジスタPCと、制御回路210によりON/OFF制御されるスイッチ236から構成され、ライトバッファ235の入力端子には、制御回路210からパルス印加制御信号が入力され、ライトバッファ235の出力端子とPMOSクランプトランジスタPCのドレイン端子、及びスイッチ236の一方端とが接続され、PMOSクランプトランジスタPCのゲート端子と、共通ノードVCとが接続され、スイッチ236の他方端と接続されたソース端子から書き込み電圧Vp1が出力される。
従って、書き込み回路271は、フォーミングパルス印加時に、制御回路210が分圧切替信号TRMを制御し、スイッチSW1〜SW33の一つのみをON状態に制御することにより、分圧回路233の出力電圧を多段階に制御可能となり、PMOSクランプトランジスタPCのゲート電圧を多段階に制御でき、ライトバッファ235から出力される振幅が大きいパルス電圧のLレベル側をクランプすることにより、PMOSクランプトランジスタPCのゲート電圧からPMOSクランプトランジスタPCのしきい値電圧Vt分上昇した書き込み電圧に変換し、Vp1が出力可能となる。この時、スイッチ236は、制御回路210により、オフ状態に制御される。
また、書き込み回路271は、通常の“1”データ(LR)又は、“0”データ(HR)書き込みパルス印加時には、スイッチ236が制御回路210により、オン状態に制御され、PMOSクランプトランジスタPCのソース・ドレイン端子間がショートされ、ライトバッファ235による電圧振幅VH(Lレベルは、接地電位)の書き込みパルス電圧Vp1が出力される。
[第3の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置の動作]
以上の様に構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置について、先ず、主要な回路ブロックの動作を説明し、その後、抵抗変化型不揮発性記憶装置のデータ書き込み、フォーミングを行う場合の書き込みサイクル、及び通常読み出し、ベリファイ読み出しを行う場合の読み出しサイクルにおける動作を説明する。
まず、図33に示される書き込み回路271の動作について説明する。
フォーミングパルス印加時に、例えば、電源VHの電位を3.3V、各抵抗Rd1〜Rd33を10kΩ、ライトバッファ235のパルス電圧振幅を3.3V、PMOSクランプトランジスタPCのしきい値電圧Vtを0.5Vとした場合に、書き込み回路271は、スイッチSW18(図33では図示が省略されている)のみをON状態に制御すると、分圧の関係式から、共通ノードVCの電位は、1.8V(=3.3V×180kΩ/330kΩ)に制御されるため、ライトバッファ235から印加される接地電位(0V)を2.3V(=1.8V+0.5V)に変換し、書き込み電圧Vp1(=2.3V−3.3V=−1.0V)として出力可能となる。
図34は、書き込み回路271が出力可能なステップダウン書き込み電圧Vp1のタイミングチャートである。図34では、ソフトフォーミング時において、制御回路210から出力される分圧切替信号TRM18、17、・・・、1により、スイッチSW18〜SW1を、スイッチSW18からスイッチSW1まで順次択一的に導通状態に切替制御していき、共通ノードVCの電圧を1.8Vから0.1Vまで0.1Vステップで減少させていき、パルス印加制御信号により制御されたライトバッファ出力パルスに同期して、書き込み電圧Vp1を2.3Vから0.6Vまで0.1Vステップでステップダウンさせながら、−1.0Vから−2.7V(−0.1Vステップ)までの負パルス電圧をメモリセルに印加できることを示す。
次に、フォーミング、ベリファイ読み出し、低抵抗(LR)化、高抵抗(HR)化、読み出しの各動作モードにおけるワード線(WL)電圧、ソース線(SL)電圧、ビット線(BL)電圧、及び高抵抗(HR)化用電源213の出力VH0電圧、低抵抗(LR)化用電源212の出力VL0電圧の各種設定電圧一覧(I型セル)を図35に示す。図35において、フォーミング時におけるビット線BL電圧は、図34に示すステップダウン書き込みパルス電圧Vp1印加を表し、また、LR化時及びHR化時におけるビット線BL電圧は、2.4Vの振幅のパルス電圧印加を表す。
低抵抗(LR)化書き込み時において、VLは、LR化用電源212で発生されている電圧で、Vp1(2.4V)は、書き込み回路271から印加される書き込みパルス電圧であり、図10(a)、図10(b)に示すパルスRV特性の点Pを超え、かつ点Nを越えない書き込みパルス電圧が、メモリセルM11、M12、・・・に実効的に印加され、VHは、書き込み回路271に供給されるHR化用電源213で発生されている電圧である。
高抵抗(HR)化書き込み時において、VLは、LR化用電源212で発生されている電圧で、VHは、書き込み回路271に供給されるHR化用電源213で発生されている電圧で、図10(a)におけるパルスRV特性に示される点Oの電圧(+2.4V)に設定され、事前評価により求めたユニポーラ領域に入らないように設定されている。つまり、上述の第2の制御ルールを順守するように制御される。
なお、ビット線を基準にして、ソース線に高抵抗(HR)化用電源213の出力VH0電圧が印加されるが、高抵抗(HR)化用電源213からソース線までの寄生抵抗による電圧降下分を考慮し、実効的にソース線の最大電圧が点Oの電圧(+2.4V)を超えない範囲となるように、高抵抗(HR)化用電源213の出力VH0電圧を高めに設定しても良い。
また、フォーミング時において、Vp1は、書き込み回路271から印加されるステップダウン書き込みパルス電圧であり、VLは、LR化用電源212で発生されている電圧で、フォーミング時に高電圧の書き込みパルス電圧Vp1が印加できるように、3.3Vに設定されている。
ベリファイ読み出し及び読み出し時において、Vreadは、センスアンプ204でクランプした読み出し用電圧(0.4V)で、図10に示すパルスRV特性においては、正電圧の向きになり、読み出しディスターブが発生しない(つまり、抵抗変化素子の抵抗状態が変化しない)ように調整された電圧値(+0.4V)に対応している。また、VDDは不揮発性記憶装置270に供給される電源電圧に対応している。
図36は、不揮発性記憶装置270におけるソフトフォーミングフロー図であり、フォーミングするための低抵抗化負パルス印加時においてメモリセルM11、M12、・・・に印加されるパルス電圧の絶対値をVpとすると、第2ステップの判定ルーチンにおいて、印加可能なパルス電圧Vpの最大値が3.3Vから2.7Vに変わった点(S42)以外は、図23に示すフロー図と同一のため、ここでは、説明は省略する。
以上の様に構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置について、データ書き込みサイクル、読み出しサイクル、及びソフトフォーミングにおける動作例について、図37(a)〜図37(c)及び図38に示すタイミングチャート、図32の本発明の実施形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置の構成図、および図10のパルスRV特性を説明する図を参照しながら説明する。
図37(a)〜図37(c)は、本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作例を示すタイミングチャートである。なお、ここでは、抵抗変化層が高抵抗状態の場合をデータ「0」に、低抵抗状態の場合をデータ「1」にそれぞれ割り当てると定義して、その動作例を示す。また、説明は、メモリセルM11についてデータの書き込みおよび読み出しをする場合のみについて示す。
図37(a)に示すメモリセルM11に対するデータ「1」書き込みサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を、それぞれ電圧Vp1(2.4V)及び電圧VL(2.4V)に設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VL(2.4V)に設定するが、この時は、図32の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11は、まだオフ状態である。この段階では、図32のNMOSトランジスタN11のドレイン端子と、ソース端子はともに電圧2.4Vが印加されているので、トランジスタのオン・オフに関係なく電流は流れない。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧0Vに設定し、所定期間後、再度電圧Vp1(2.4V)となるパルス波形を印加する。この段階で、図32のメモリセルM11には、図10(a)、図10(b)に示すパルスRV特性の点Pを超え、かつ点Nを越えない負パルス電圧が印加され、高抵抗値から低抵抗値に書き込みが行われる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データ「1」の書き込みが完了する。つまり、ソース線及びワード線で行方向のメモリセルを選択しておき、その後に、特定のビット線に負電圧方向のパルス波形を印加することで、ソース線、ワード線及びビット線で選択されたメモリセルの抵抗変化素子に負の電圧パルスを印加して低抵抗化している。
図37(b)に示すメモリセルM11に対するデータ「0」書き込みにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧0Vに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VL(2.4V)に設定し、図32の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧VH(2.4V)に設定し、所定期間後、再度電圧0Vとなるパルス波形を印加する。この段階で、図32のメモリセルM11には、図10(a)に示すパルスRV特性の点Oの正パルス電圧(+2.4V)が印加され、低抵抗値から高抵抗値に書き込みが行われる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データ「0」の書き込みが完了する。つまり、ソース線及びワード線で行方向のメモリセルを選択しておき、その後に、特定のビット線に正電圧方向のパルス波形を印加することで、ソース線、ワード線及びビット線で選択されたメモリセルの抵抗変化素子に正の電圧パルスを印加して高抵抗化している。
図37(c)に示すメモリセルM11に対するデータの読み出しサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧0Vに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VDD(1.8V)に設定し、選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、読み出し電圧Vreadを0.4Vに設定し、センスアンプ204により、選択メモリセルM11に流れる電流値を検出することで、記憶されているデータをデータ「0」またはデータ「1」と判定する。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データの読み出し動作を完了する。
次に、本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置のソフトフォーミング動作について説明する。
図38は、本発明の実施形態に係る不揮発性記憶装置のソフトフォーミング動作を示すタイミングチャートである。
図38に示すソフトフォーミング動作では、アドレスADが0であるメモリセルM11の1ビットのみをアクセスし、アレイではなく、そのビットに対して、図36に示すソフトフォーミングフロー(但し、1ビットアクセスのため、第4、第7ステップはカット)を実施している。
図38において、ソフトフォーミング開始時は、フォーミング対象のメモリセルM11のワード線WL0とビット線BL0とソース線SL0の電圧状態は全て0Vであり、また、分圧切替信号TRM1、TRM2、・・・、TRM33、及び、端子DQは、全てLレベルとなっている。また、メモリセルM11は、初期状態である。
先ず、図36に示す第1ステップにおいて、分圧切替信号TRM18のみをHレベルに設定し、書き込み回路271が、書き込みパルス電圧Vp1として、Vp10(=3.3V−2.3V=1.0V)の負電圧パルスを印加できるように設定する。
次に、第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが2.7V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
第5ステップにおいて、選択メモリセルの抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rbより小さい(Rc<Rb)かどうかをベリファイ読み出しするため、選択するワード線WL0を電圧VDD(1.8V)に設定し、選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、読み出し電圧Vreadを0.4Vに設定し、センスアンプ204により、選択メモリセルM11に流れる電流値を検出することで、選択メモリセルM11の抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rbより小さい(Rc<Rb)かどうかを判定し、ここでは、抵抗値Rcがフォーミング用の基準抵抗Rb以上のため、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力し、端子DQに“0”データを出力し、フォーミングがフェイル(偽)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達する。その後、ワード線WL0及びビット線BL0を電圧0Vに設定し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
次に、図36に示すフォーミング用のLR化書き込み(第6ステップ)を実施する。選択メモリセルに対して、フォーミング用のLR化書き込みの負電圧パルス(−1.0V、パルス幅50ns)を印加するために、選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧Vp1(3.3V)及び電圧VL(3.3V)に設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VL(3.3V)に設定し、その後、選択ビット線BL0を所定期間、電圧2.3V(=Vp1−Vp10)に設定し、所定期間後、再度電圧Vp1(3.3V)となるパルス波形(−1.0Vの負電圧パルス)を印加する。この段階で、図32のメモリセルM11には、図10(a)に示すパルスRV特性の点N(フォーミング開始電圧Vb=−1.8V)より大きい(つまり、絶対値が小さい)負パルス電圧が印加されるが、選択メモリセルM11は、初期状態のままで、フォーミングはされない。つまり、フォーミングは失敗に終わる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、フォーミング用のLR化書き込みが完了する。
次に、第8ステップにおいて、第5ステップの判定結果がフォーミングフェイル(偽)と確認され、第9ステップに移行し、分圧切替信号TRM17のみをHレベルに設定し、書き込み回路271が、書き込みパルス電圧Vp1として、Vp11(=1.1V)の電圧パルスを印加できるように設定する。
次に第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが2.7V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
2回目の第5ステップでは、1回目の第5ステップと同様のベリファイ読み出し(Rc<Rb?)動作を行うが、今、抵抗値Rcが初期抵抗状態のままで、基準抵抗Rb以上のため、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力し、端子DQに“0”データを出力し、フォーミングがフェイル(偽)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
次に、図36に示す第6ステップのフォーミング用のLR化書き込み(2回目)を実施する。選択メモリセルに対して、フォーミング用のLR化書き込みの負電圧パルス(−1.1V、パルス幅50ns)を印加するために、選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧Vp1(3.3V)及び電圧VL(3.3V)に設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VL(3.3V)に設定し、その後、選択ビット線BL0を所定期間、電圧2.2V(=Vp1−Vp11)に設定し、所定期間後、再度電圧Vp1(3.3V)となるパルス波形(−1.1Vの負電圧パルス)を印加する。この段階で、図32のメモリセルM11には、図10(a)に示すパルスRV特性の点N(フォーミング開始電圧Vb=−1.8V)より大きい(つまり、絶対値が小さい)負パルス電圧が印加されるが、選択メモリセルM11は、初期状態のままで、フォーミングはされない。つまり、フォーミングは失敗に終わる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、2回目のフォーミング用のLR化書き込みが完了する。
その後、図36に示す第2ステップから第9ステップ(第4、第7ステップを除く)のループ、つまり、ベリファイ読み出し動作とフォーミングLR化書き込み動作を3回目から8回目まで繰返すが、メモリセルM11の抵抗値Rcが初期状態のままで、基準抵抗Rb以上のままである。つまり、フォーミングは失敗に終わる。
次に、第9ステップにて、分圧切替信号TRM10のみをHレベルに設定し、書き込み回路271が、書き込みパルス電圧Vp1として、Vp18(=1.8V)の電圧パルスを印加できるように設定する。
次に第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが2.7V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
次に、9回目の第5ステップにおいて、ベリファイ読み出し(Rc<Rb?)動作を行うが、今、抵抗値Rcが初期抵抗状態のままで、基準抵抗Rb以上のため、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力し、端子DQに“0”データを出力し、フォーミングがフェイル(偽)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
次に、図36に示す第6ステップのフォーミング用のLR化書き込み(9回目)を実施する。選択メモリセルに対して、フォーミング用のLR化書き込みの負電圧パルス(−1.8V、パルス幅50ns)を印加するために、選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧Vp1(3.3V)及び電圧VL(3.3V)に設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VL(3.3V)に設定し、その後、選択ビット線BL0を所定期間、電圧1.5V(=Vp1−Vp18)に設定し、所定期間後、再度電圧Vp1(3.3V)となるパルス波形(−1.8Vの負電圧パルス)を印加する。この段階で、図32のメモリセルM11には、図10(a)に示すパルスRV特性の点N(フォーミング開始電圧Vb=−1.8V)に相当する負パルス電圧が印加されるため、選択メモリセルM11は、初期の高抵抗状態から、導電パスが形成され、高抵抗状態HRと低抵抗状態LRの間のフォーミング後抵抗値に遷移し、フォーミングが行われる。これにより、初めて、フォーミングが成功したことになる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、9回目のフォーミング用のLR化書き込みが完了する。
その後、第8ステップにおいて、フォーミングLR化書き込み前の第5ステップの判定結果がフォーミングフェイル(偽)していたと確認され、第9ステップに移行し、分圧切替信号TRM9のみをHレベルに設定し、書き込み回路271が、書き込みパルス電圧Vp1として、Vp19(=1.9V)の電圧パルスを印加できるように設定する。
次に第2ステップにおいて、書き込みパルス電圧Vpが2.7V以下であると判定され、第3ステップにおいて、メモリセルのアドレスADを初期化(AD=0)し、第5ステップに移行する。
10回目の第5ステップでは、ベリファイ読み出し(Rc<Rb?)動作を行うが、今、選択メモリセルM11の抵抗値Rcが基準抵抗Rbより小さくなっているため、センスアンプ出力SAOは、Hレベルを出力し、端子DQに“1”データを出力し、フォーミングがパス(真)していることを外部装置(例えば、メモリテスター)に伝達し、ベリファイ読み出し動作を完了する。
その後、第8ステップにおいて、直前の第5ステップの判定結果がフォーミングパス(真)していたと確認され、ソフトフォーミングが完了する。
このように、0.1V刻みで電圧の絶対値を大きくしていきながら負電圧パルスを印加し、印加の都度、フォーミングの完了を判定し、フォーミングが完了した後にはそれ以上の負電圧パルスを印加しないことにしているので、所定の書き込みパルス電圧Vp1でフォーミングされた後には、メモリセルM11には、過剰なパルス電圧が印加されない。
ソフトフォーミング後、図35に示すように、高抵抗化書き込みパルス電圧、低抵抗化書き込みパルス電圧ともに2.4Vに、またパルス幅を50nsに設定し、通常の“0”データ(HR化)及び“1”データ(LR化)書き込みが可能となる。
以上のように、I型セルの別のソフトフォーミング方法において、ビット線側からステップダウンフォーミングパルスを印加することにより、第2の実施形態(I型セル、ソース線側からステップアップパルス印加)と同様の効果を奏することが可能となり、各メモリセルに対して、ソフトフォーミングを実施することにより(つまり、上述の第1の制御
ルールを順守することにより)、遷移可能な高抵抗値レベルをより高く制御可能となり、かつ、ユニポーラ領域に入らない極大点付近の高抵抗化電圧を用いて、高抵抗化させることにより(つまり、上述の第2の制御ルールを順守することにより)、高抵抗値レベルを可能な限り高く設定することが可能(図10、図11参照)となり、低抵抗状態と高抵抗状態との動作ウィンドウを拡大でき、高速読み出し、及びデータ信頼性が向上可能となり、誤読み出し発生の恐れを大幅に低減可能となる。
なお、“1”データ(LR化)書き込みを行う低抵抗化電圧は、フォーミングマージンΔが0.7Vより大きくなり、遷移可能な高抵抗値レベルを低下させてしまうことが無いような低抵抗化電圧を設定しないといけないことは、言うまでもない。
また、高抵抗値レベルの極大点付近が比較的なだらかな場合には、少しぐらいユニポーラ領域に入る高抵抗化電圧を用いて、“0”データ(HR化)書き込みを行っても、実使用上は問題ない。たとえば、高抵抗化電圧として、高抵抗値レベルの極大点を越えても、高抵抗値レベルの極大点の抵抗値の90%以上の抵抗値となるような高抵抗化電圧であれば、実使用上問題ない。
なお、本実施形態では、通常の“0”、“1”データの書き込みにおいて、ワード線WL0電圧(=2.4V)、低抵抗化パルス電圧Vp(=2.4V)、及び高抵抗化パルス電圧VH(=2.4V)は、全て同一電圧に設定したが、必ずしも一致させる必要は無い。
[第4の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置]
次に、本発明の第4の実施形態として、ウエハー検査時に外部から直接低抵抗化フォーミングパルスを入力可能とするII型セルを用いた1T1R型の不揮発性記憶装置について説明する。
図39は、本発明の第4の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を示すブロック図である。
図39において、図17と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
不揮発性記憶装置237は、図39に示すように、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置200に対して、外部印加端子接続用スイッチ239を設け、ソフトフォーミング時に可変電圧パルス発生を外部にさせる点が異なる。
外部印加端子接続用スイッチ239は、制御回路210からの制御信号により導通状態に制御されることにより、図外の外部装置(例えばメモリテスター)が、外部印加端子から、列選択回路203を介して選択メモリセルに低抵抗化フォーミングパルスを印加することが可能となっている。
また、書き込み回路280は、制御回路210から出力された書き込み信号を受け取った場合、列選択回路203に対して選択されたビット線に対して通常の書き込み用電圧を印加する。
書き込み用電源211は、低抵抗化用のLR化用電源212と、高抵抗化用のHR化用電源213より構成され、HR化用電源213の出力VH0は行ドライバ207に入力され、また、LR化用電源212の出力VL0は書き込み回路280に入力されている。
[第4の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置の動作]
不揮発性記憶装置237におけるソフトフォーミングフロー図については、図23に示すフロー図と同一のため、ここでは、説明は省略する。但し、第1の実施形態では、ソフトフォーミング実施時に、“1”書き込み負パルス印加(第6ステップ)を可変電圧パルス発生回路701により内部発生させていたが、本実施形態では、外部装置(例えば、不図示のメモリテスター)により外部からフォーミング用の負パルスを印加する。つまり、不揮発性記憶装置237自身が上述した第1の制御ルールを順守したフォーミング用電圧パルスの発生回路を有するのではなく、外部印加端子を介して、そのようなフォーミング用電圧パルスを受け取り、メモリセルに印加する構成を備える。
このように、外部印加によるソフトフォーミング方法においても、第1の実施形態(ステップアップパルス内部発生)と同様の効果を奏することが可能となり、各メモリセルに対して、ソフトフォーミングを実施することにより(つまり、上述の第1の制御ルールを順守することにより)、遷移可能な高抵抗値レベルをより高く制御可能となり、かつ、ユニポーラ領域に入らない極大点付近の高抵抗化電圧を用いて、高抵抗化させることにより(つまり、上述の第2の制御ルールを順守することにより)、高抵抗値レベルを可能な限り高く設定することが可能(図10、図11参照)となり、低抵抗状態と高抵抗状態との動作ウィンドウを拡大でき、高速読み出し、及びデータ信頼性が向上可能となり、誤読み出し発生の恐れを大幅に低減可能となる。さらに、可変電圧パルス発生回路を内部に設ける必要がなくなるため、チップ面積を削減でき、低コスト化が可能となる。
さらに、本実施形態では、II型セルを用いて説明したが、メモリセルの別実施形態として、I型セル(ビット線側からステップダウンパルス印加)を用いた場合でも同様の効果を奏することができる。
[第5の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置]
次に、本発明の第5の実施形態として、上記で説明したベリファイソフトフォーミング法以外のソフトフォーミング手法として、電流制限した電圧パルスによる1パルス印加ソフトフォーミング回路を用いた1T1R型の不揮発性記憶装置について説明する。
図40は、本発明の第5の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を示すブロック図である。
図40において、図26及び図32と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
不揮発性記憶装置241は、図40に示すように、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置227に対して、センスアンプ240、フォーミング回路244を備えた構成となっている。
低抵抗(LR)化用電源212の出力VL0は、行ドライバ231に供給され、高抵抗(HR)化用電源213の出力VH0は、書き込み回路230とフォーミング回路244に供給されている。
HR化用電源213は、図10(a)のパルスRV特性において、点Oで示す電圧の供給が可能な電源回路であり、LR化用電源212は、通常のLR書き込み時には、図10(b)のパルスRV特性において、点Pで示す電圧の絶対値以上の電圧の供給が可能な電源回路である。
センスアンプ240は、図18に示す回路図から、選択トランジスタ223と基準抵抗Rbを除いた、所謂読み出し判定レベルが一つ(基準抵抗Rref)の通常のセンスアンプであり、選択ビット線に流れる電流量を検出し、高抵抗状態をデータ「0」に、また低抵抗状態をデータ「1」と判定する。
フォーミング回路244は、図41に示すように、PMOSトランジスタ249とNMOSトランジスタ250が、HR化用電源213から供給される電圧VHと接地電位間にインバータ接続され、ドライバを形成し、その出力VOは、列選択回路203を介して、選択されたフォーミング対象メモリセルが繋がるビット線に接続され、入力VINには、制御回路210から供給される制御信号が入力される。
また、制御回路210は、外部から入力されるコントロール信号に基づいて、メモリ本体242の動作を制御し、フォーミング動作時には、フォーミング(初期化としてのLR化)用電圧の印加を指示する書き込み信号を行ドライバ231及びフォーミング回路244へ出力し、フォーミング回路244のドライバ(フォーミング時に電流制限可能なNMOSトランジスタ250)を用いて、各メモリセルM11、M21、・・・に対して1回のパルス印加でソフトフォーミングを実施する。
次に、本実施例の特徴であるフォーミング回路244の負荷特性について説明する。
図42(a)、図42(b)は、通常のLR化書き込みとフォーミング動作時におけるメモリセルM11とビット線側ドライバのバイアス条件及び各種トランジスタサイズを説明するための図である。
図42(a)は、LR化書き込み時において、ソース線ドライバSLDから供給される電圧VL(=2.4V)がメモリセルM11のNMOSトランジスタN11(トランジスタ幅(つまり、チャネル幅、あるいは、ゲート幅)Ws)のソース端子に入力され、ワード線には、ワード線ドライバWLDから供給される電圧VL(=2.4V)が印加され、抵抗変化素子R11の上部電極端子は、列選択回路203を介して接続される書き込み回路230のドライバ出力と接続され、ドライバのNMOSトランジスタ251(トランジスタ幅Wn)のゲート端子には、電源VDD(=3.3V)が印加され、ソース端子は0Vに固定され、ソース線からビット線方向に電流が流れることにより、抵抗変化素子R11が、低抵抗化するバイアス条件が示されている。また、抵抗変化素子R11に効率良く電圧印加ができるようにドライバのNMOSトランジスタ251のトランジスタ幅Wnは、NMOSトランジスタN11のトランジスタ幅Wsよりも十分大きく設定し、オン抵抗があまり見えないようにしている。
また、図42(b)は、フォーミング時において、ソース線ドライバSLDから供給される電圧VL(=3.3V)がメモリセルM11のNMOSトランジスタN11(トランジスタ幅Ws)のソース端子に入力され、ワード線には、ワード線ドライバWLDから供給される電圧VL(=3.3V)が印加され、抵抗変化素子R11の上部電極端子は、列選択回路203を介して接続されるフォーミング回路244のドライバ出力VOと接続され、ドライバのNMOSトランジスタ250(トランジスタ幅Wb)のゲート端子には、電源VDD(=3.3V)が印加され、ソース端子は0Vに固定され、ソース線からビット線方向に電流が流れることにより、抵抗変化素子R11が、フォーミングするバイアス条件が示されている。ここでは、高電圧印加により導電パスを形成するフォーミングが起こり、抵抗変化素子R11に電流が流れ始めたら、NMOSトランジスタ250で電流制限を行い、フォーミングにより低抵抗状態に遷移した後に、大電流が流れ、その後に遷移可能な高抵抗値レベルが低くなってしまわないように、NMOSトランジスタ250のトランジスタ幅Wbは、NMOSトランジスタN11のトランジスタ幅Wsよりも十分小さく設定している。つまり、NMOSトランジスタ250は、ドレイン端子とゲート端子に電源VDD(=3.3V)が印加され、ソース端子は0Vに固定された時、流れる電流がILRを超えないように設定される。
なお、図42(a)、図42(b)では、列選択スイッチや配線抵抗等は、インピーダンスが十分小さくなるように設計していると仮定して、図示していない。
[第5の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置の動作]
図43(a)、図43(b)は、図42(a)、図42(b)におけるトランジスタと抵抗変化素子の負荷特性を用いて、抵抗遷移時における動作点解析を行うためのI−V特性の模式図であり、縦軸は、電流I(任意単位)であり、横軸は、印加電圧Vである。
図43(a)は、図42(a)に対応して、高抵抗状態HRから低抵抗状態LRへの遷移を説明するためのI−V特性図であり、ここでは、簡単化のため、抵抗値成分が大きい抵抗変化素子R11とNMOSトランジスタN11の2素子について、負荷特性を描いている。また、図43(a)では、飽和状態で動作するNMOSトランジスタN11の負荷特性を曲線(1)で表し、HR状態の抵抗変化素子R11の負荷特性を直線(2)で表し、LR状態の抵抗変化素子R11の負荷特性を直線(3)で表し、初期抵抗状態の抵抗変化素子R11の負荷特性を直線(4)で表している。ここで、抵抗変化素子R11がHR状態にある場合に、図42(a)に示すLR化電圧が印加されたとすると、メモリセルM11端子間電圧Vcellは、約1.7Vとなり、印加直後の動作点は、点Qになる。その後、低抵抗化が始まり、抵抗変化素子R11の端子間電圧が、低抵抗化電圧VR(約0.8V)になるように抵抗変化素子R11の動作点が点Qから点R(この時のLR化電流をILRとする)に遷移し、抵抗変化素子R11の負荷特性が(1)から(2)に遷移し、低抵抗化が完了する。
また、仮に初期の高抵抗状態に、図42(a)に示す通常のLR化電圧を印加した場合、動作点は、点Sになり、この時、所定のフォーミングしきい値電流It(図3A(a1)において初期状態から点Dに遷移させるのに必要な電流)を流すことができず、低抵抗状態に遷移させることができない。つまり、通常のLR化電圧印加では、動作点Sに留まったままになり、フォーミングできないことを示す。
図43(b)は、図42(b)に対応して、初期の高抵抗状態から低抵抗状態へのフォーミングを説明するためのI−V特性図であり、ここでは、簡単化のため、抵抗値成分が大きい抵抗変化素子R11とNMOSトランジスタ250の2素子について、負荷特性を描いている。また、図43(b)では、非飽和状態で動作するNMOSトランジスタ250の負荷特性を曲線(5)で表し、初期状態の抵抗変化素子R11の負荷特性を直線(6)で表し、通常の書き込み回路230を用いてフォーミングする、つまり、負荷曲線(1)に沿ってフォーミングした後の低抵抗状態の抵抗変化素子R11の負荷特性を直線(7)で表し、フォーミング回路244を用いてソフトフォーミングする、つまり、負荷曲線(5)に沿ってフォーミングした後の低抵抗状態の抵抗変化素子R11の負荷特性を直線(8)で表す。ここで、先ず、通常の書き込み回路230を用いてフォーミングした場合には、図42(a)において、ワード線電圧とソース線電圧を共に図42(b)と同様に3.3Vに設定し、フォーミング(初期化としてのLR化)電圧が印加されたとすると、メモリセルM11端子間電圧Vcellは、約2.6Vとなり、印加直後の動作点は、点Tになり、動作点電流がフォーミングしきい値電流Itを越える。その後、低抵抗化が始まり、抵抗変化素子R11の端子間電圧が、低抵抗化電圧VR(約0.8V)になるように抵抗変化素子R11の動作点が点Tから点Uに遷移し、抵抗変化素子R11の負荷特性が(6)から(7)に遷移し、フォーミングが完了する。しかしながら、所定のLR化電流ILRに対して、動作点Uにおけるフォーミング時に非常に大きなフォーミング電流INが抵抗変化素子R11に流れてしまい、ソフトフォーミングがされず、遷移可能な高抵抗値レベルを低下させてしまう。
次に、フォーミング回路244を用いてフォーミングした場合には、図42(b)におけるフォーミング(初期化としてのLR化)電圧が印加されたとすると、抵抗変化素子R11とNMOSトランジスタ250の端子間電圧Vaは、約2.6Vとなり、印加直後の動作点は、点Vになり、動作点電流がフォーミングしきい値電流Itを越える。その後、低抵抗化が始まり、抵抗変化素子R11の端子間電圧が、低抵抗化電圧VR(約0.8V)になるように抵抗変化素子R11の動作点が点Vから点Wに遷移し、抵抗変化素子R11の負荷特性が(6)から(8)に遷移し、フォーミングが完了する。このときは、所定のLR化電流ILRに対して、動作点Wにおけるフォーミング電流は小さくなるため、抵抗変化素子R11に過剰な電流が印加されず、ソフトフォーミングが1回の負パルス印加で実施される。このため、遷移可能な高抵抗値レベルをより高く制御可能となる。
以上の様に構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置について、データ書き込み、及びソフトフォーミングを行う場合の動作例について、図44(a)〜図44(c)に示すタイミングチャート、図40の本発明の第5の実施形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置の構成図、および図43の抵抗遷移時における動作点解析を行うためのI−V特性を説明する図を参照しながら説明する。
図44(a)〜図44(c)は、本発明の第5の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作例を示すタイミングチャートである。なお、ここでは、抵抗変化層が高抵抗状態の場合をデータ「0」に、低抵抗状態の場合をデータ「1」にそれぞれ割り当てると定義して、その動作例を示す。また、説明は、メモリセルM11についてデータの書き込をする場合のみについて示す。
図44(a)の“1”データ書き込みの場合においては、VL(2.4V)、及びVH(2.4V)は、図43(a)に示すI−V特性の動作点Qから動作点Rへの低抵抗化遷移を可能とする電圧、電流供給能力を有する。
図44(b)において、VL(2.4V)は、LR化用電源212で発生されている電圧で、VH(2.4V)は、HR化用電源213で発生されている電圧で、図10(a)に示すパルスRV特性の点Oにおける正電圧が、メモリセルM11、M12、・・・に実効的に印加される。
図44(c)のフォーミング回路244を用いたソフトフォーミング動作の場合において、VL(3.3V)は、LR化用電源212で発生されている電圧で、VH(3.3V)は、HR化用電源213で発生されている電圧で、図43(b)に示すI−V特性の動作点Vから動作点Wへのフォーミング(初期化としてのLR化)遷移を可能とする電圧、電流供給能力を有する。
図44(a)に示すメモリセルM11に対するデータ「1」書き込みサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0をそれぞれ電圧VH(2.4V)、電圧VL(2.4V)に設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VL(2.4V)に設定するが、この時は、図40の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11は、まだオフ状態である。この段階では、図40のNMOSトランジスタN11のドレイン端子と、ソース端子はともに電圧2.4Vが印加されているので、トランジスタのオン・オフに関係なく電流は流れない。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧0Vに設定し、所定期間後、再度電圧VHとなるパルス波形を印加する。この段階で、図40のメモリセルM11には、図43(a)のI−V特性において動作点Qから動作点Rへ、つまり、高抵抗値から低抵抗値に書き込みが行われる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データ「1」の書き込みが完了する。
図37(b)に示すメモリセルM11に対するデータ「0」書き込みサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0を電圧0Vに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VL(2.4V)に設定し、図40の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧VH(2.4V)に設定し、所定期間後、再度電圧0Vとなるパルス波形を印加する。この段階で、図40のメモリセルM11には、図10(a)のパルスRV特性の点Oの正パルス電圧(+2.4V)が印加され、低抵抗値から高抵抗値に書き込みが行われる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データ「0」の書き込みが完了する。
図44(c)に示すメモリセルM11に対するフォーミングサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0、ソース線SL0をそれぞれ電圧VH(3.3V)、電圧VL(3.3V)に設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VL(3.3V)に設定するが、この時は、図40の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11は、まだオフ状態である。この段階では、図40のNMOSトランジスタN11のドレイン端子と、ソース端子はともに電圧3.3Vが印加されているので、トランジスタのオン・オフに関係なく電流は流れない。
次に、選択ビット線BL0を所定期間、電圧0Vに設定し、所定期間後、再度電圧VH(3.3V)となるパルス波形を1回印加する。この段階で、図40のメモリセルM11には、図43(b)のI−V特性において動作点Vから動作点Wへ、つまり、初期の高抵抗値から低抵抗値に電流制限されながら、ソフトフォーミングが行われる。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、ソフトフォーミング動作が完了する。
以上のように、フォーミング回路244を設けることにより、供給可能な電流の最大値が制限された電圧源を用いてフォーミング用の電圧パルスを発生するので、ソフトフォーミングを1回のパルス印加で完了させることができ、第3の実施形態(I型セル)と同様の効果を奏すると共に、フォーミング動作を高速化することが可能となり、検査時間の短縮、つまり低コスト化が可能となる。
なお、本実施形態では、通常の“0”、“1”データの書き込みにおいて、ワード線WL0電圧(=2.4V)、低抵抗化パルス電圧V2(=2.4V)、及び高抵抗化パルス電圧V1(=2.4V)は、全て同一電圧に設定したが、必ずしも一致させる必要は無い。
なお、本実施形態では、I型セルに対して、0Vを印加するビット線側から、ドライバを構成するNMOSトランジスタのトランジスタ幅を小さくし、電流供給能力を絞り、フォーミング時における過剰電流が抵抗変化素子に流れ、高抵抗値レベルが低下してしまうことを抑制したが、ソース線側ドライバを構成するPMOSトランジスタのトランジスタ幅を小さくし、ILRを超えないように電流供給能力を絞り、フォーミング時における過剰電流が抵抗変化素子に流れるのを抑制しても良い。
また、本実施形態では、I型セルを用いて説明したが、II型セルでも同様に、電流制限可能なフォーミング回路を適用できることは言うまでもない。
また、本実施形態のフォーミング回路では、ドライバのNMOSトランジスタ幅を小さくし、電流制限を行ったが、電流駆動能力がより小さい高耐圧トランジスタ等を用いて、電流制限を行っても良いし、或いは、フォーミング用ドライバとメモリセル間に電流制限用の固定抵抗を挿入して、電流制限を行っても良い。
また、本実施形態では、電流制限を行うのに、フォーミング回路におけるドライバのNMOSトランジスタ幅を小さくしたが、NMOSトランジスタのゲート電圧を下げて、電流制限を行っても良い。
なお、本実施形態では、メモリセルの選択トランジスタは、NMOSトランジスタで構成したが、PMOSトランジスタを用いても良いし、選択トランジスタの代わりに双方向ダイオード等の整流素子で構成しても良い。
[第6の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置]
次に、本発明の第6の実施形態として、自動フォーミング制御回路を設けた1T1R型の不揮発性記憶装置について説明する。
図45は、本発明の第6の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を示すブロック図である。
図45において、図40と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
不揮発性記憶装置290は、図45に示すように、第5の実施形態に係る不揮発性記憶装置241に対して、自動フォーミング制御回路247を備えた構成となっている。
自動フォーミング制御回路247は、外部から入力されるコントロール信号に基づいて、メモリ本体242の動作を制御する。つまり、自動フォーミング制御回路247は、行選択回路208、列選択回路203、書き込み用電源232及びフォーミング回路244等を制御することによってメモリセルを順に選択し、選択したメモリセルに含まれる抵抗変化素子に対してフォーミング用電圧パルスを印加させる制御をする。
[第6の実施形態における抵抗変化型不揮発性記憶装置の動作]
この自動フォーミング制御回路247は、フォーミングサイクルにおいて、行アドレス信号及び列アドレス信号を自動発生し、行選択回路208、及び列選択回路203にそれぞれアドレス信号を出力し、メモリセルM11、M21、M31、・・・、M12、M22、M32、・・・と、ビット線BL及びワード線WLを切り換えながら、全メモリセルM11、M21、・・・を連続的に選択し、さらに、この時、フォーミング(初期化としてのLR化)用電圧の印加を指示するフォーミング信号をフォーミング回路244へ出力し、全メモリセルM11、M21、・・・をそれぞれ、フォーミング回路244により1回のパルス印加でソフトフォーミングして行く。
全メモリセルM11、M12、・・・のソフトフォーミング後には、VH=VL=2.4V、パルス幅50nsに設定し、“0”データ及び“1”データ書き込みが可能となる。
以上のように、自動フォーミング制御回路247を設け、メモリアレイに対して、ソフトフォーミング動作を連続自動処理することにより、第5の実施形態と同様の効果を奏すると共に、外部から制御するよりもさらにソフトフォーミング動作を高速化することが可能となり、検査時間の短縮、つまり低コスト化が可能となる。
なお、本実施形態では、第5の実施形態に自動フォーミング制御回路を設けたが、第1〜第3の実施形態に自動フォーミング制御回路を設けても、さらにソフトフォーミング動作を高速化することが可能である。
また、複数ビットを同時にソフトフォーミングしても良い。
以上、本発明に係る抵抗変化型不揮発性記憶素子のフォーミング方法及び抵抗変化型不揮発性記憶装置について、第1〜第6の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、各実施形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、各実施形態における構成要素を任意に組み合わせて実現される形態も本発明に含まれる。
たとえば、第4の実施形態における外部印加端子は、他の実施形態における不揮発性記憶装置に備えられてもよい。つまり、本発明に係る不揮発性記憶装置は、フォーミング用の可変電圧パルス発生回路を備えるとともに、外部からフォーミング用の可変電圧パルスを受け取って抵抗変化素子に印加するための外部印加端子をも備えてもよい。