まず、本発明の実施の形態を説明する前に、本発明の課題を詳細に説明する。
[背景技術]
従来、抵抗変化素子を用いた不揮発性記憶装置として、互いに直交するように配置されたビット線とワード線との交点近傍の位置に、MOSトランジスタと抵抗変化素子とを直列に接続して構成された、いわゆる1T1R型と呼ばれるメモリセルをマトリックス状にアレイ配置した不揮発性記憶装置が一般的に知られている。1T1R型において、2端子の抵抗変化素子の一端はビット線またはソース線に接続され、他の一端はトランジスタのドレインまたはソースに接続される。トランジスタのゲートはワード線に接続される。トランジスタの他の一端はソース線またはビット線(つまり、抵抗変化素子の一端が接続されていないソース線またはビット線)に接続される。ソース線は、ビット線またはワード線と平行に配置される。
また、別のメモリセル構成として、互いに直交するように配置されたビット線とワード線との交点の位置に、ダイオードと抵抗変化素子とを直列に接続して構成された、いわゆる1D1R型と呼ばれるクロスポイントメモリセルをマトリックス状にアレイ配置した不揮発性記憶装置も一般的に知られている。
以下、代表的な従来の抵抗変化素子を説明する。
非特許文献1では、遷移金属酸化物を抵抗変化素子として用いた1T1R型メモリセルで構成された不揮発性メモリが開示されている。遷移金属酸化物の薄膜は、通常、絶縁体であり、遷移金属酸化物の薄膜の抵抗値を電気パルスの印加にて変化可能にするためには、フォーミング処理を行い、高抵抗状態と低抵抗状態を切り替え可能な導電パスを形成する必要があることが示されている。
図14は、非特許文献1で示されているフォーミング電圧(V_form)の遷移金属酸化物の膜厚(TMO Thickness)への依存を示す特性図である。遷移金属酸化物としては、NiO、TiO2、HfO2、ZrO2の4種類の特性が示されており、必要なフォーミング電圧は、遷移金属酸化物の種類に依存し、遷移金属酸化物の膜厚が厚くなるほど、高くなる。このため、フォーミング電圧を低減させるためには、NiOのような遷移金属酸化物を選択し、遷移金属酸化物の膜厚を薄膜化することが好ましい。なお、フォーミングとは、製造後の抵抗変化素子を、電気信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化できる状態(通常動作)にするために、抵抗変化素子に対して通常動作における電圧よりも大きな電圧を印加することをいう。
特許文献1では、絶縁体膜(アモルファスGd2O3)と導体膜(CuTe)から成るイオン伝導型抵抗変化素子で構成された不揮発性メモリが開示されている。
図15は、特許文献1で示されている可変抵抗素子5の断面の模式図である。
可変抵抗素子5は、2つの電極1および2の間に導体膜3と絶縁体膜4の積層構造を持つ構成となっている。ここでは、導体膜3に用いる材料としては、例えば、Cu、Ag、Znから選ばれる1つ以上の金属元素を含有する金属膜、合金膜(例えばCuTe合金膜)、金属化合物膜等が開示され、また、絶縁体膜4の材料としては、例えば、アモルファスGd2O3や、SiO2等の絶縁体が開示されている。
図15に示す可変抵抗素子5への書き込みについては、電極1の電位が電極2の電位よりも高くなる電圧を印加すると、金属元素のイオンが電極2に引き寄せられて、絶縁体膜4内に入っていく。そして、イオンが電極2まで到達すると、上下の電極1および2間が導通して可変抵抗素子5が低抵抗化(LR化)する。このようにして可変抵抗素子5へのデータの書き込み(LR化)が行われる。逆に、電極1の電位が電極2の電位よりも低くなる電圧を印加すると、金属元素がイオン化して電極1に引き寄せられて、絶縁体膜4から抜けていくため、上下の電極1および2間の絶縁性が増して、可変抵抗素子5が高抵抗化(HR化)する。このようにして可変抵抗素子5へのデータの消去(HR化)が行われる。
図16Aおよび図16Bは、1回のデータ記録を行う場合に、可変抵抗素子5に印加する電圧パルスの波形図である。
図16Aは、書き込み(“1”データの記録)を行う場合のパルス波形である。ここでは、まず逆極性の電圧パルスとして消去電圧パルスPEを印加し、その後、記録すべき情報に対応する極性の電圧パルスPWを印加している。即ち、2つの電圧パルスPEおよびPWのセットにより、“1”情報の記録を行う電圧パルスP1を構成している。
図16Bは、消去(“0”データの記録)を行う場合のパルス波形である。ここでは、まず逆極性の電圧パルスとして書き込み電圧パルスPWを印加し、その後、記録すべき情報に対応する極性の電圧パルスPEを印加している。即ち、2つの電圧パルスPWおよびPEのセットにより、“0”情報の記録を行う電圧パルスP0を構成している。
図16Aおよび図16Bに示した電圧パルスP1およびP0を用いて、可変抵抗素子5にデータの記録を行うことにより、同じ極性の電圧パルスPWまたはPEが連続する回数が2回以下に制限される。これにより、同一極性の電圧パルスPWまたはPEが多数回連続して印加されることによる可変抵抗素子5の抵抗値の変化(LR状態が高抵抗方向に変動する不具合、HR状態が低抵抗方向に変動する不具合)を抑制することができ、書き換え寿命が向上する。
ここで、背景技術で開示されたことをまとめると、非特許文献1では、遷移金属酸化物の幾つかは、電気的パルスの印加により可逆的かつ不揮発的な抵抗変化現象を示すこと、また、その抵抗変化現象が起こり得る状態にするためには、当該状態になってから可逆的な抵抗変化を起こすために印加する電圧よりも絶対値が大きい電圧を、あらかじめ印加する必要があることが開示されている。なお、本明細書では統一して、そのような電圧を印加する動作(上述のフォーミングを含む動作)を初期ブレイクと称し、初期ブレイクで印加される電圧を初期ブレイク電圧と称する。
非特許文献1には、初期ブレイクのメカニズムとして、初期の絶縁状態に近い非常に高抵抗な状態にある遷移金属酸化物に対し、可逆的な抵抗変化が可能な導電パスを形成するモデルで説明できることが開示されている。
特許文献1では、可変抵抗素子にデータを記録する都度、記録すべき情報に対応する一方の極性の電圧が可変抵抗素子に印加される前に、他方の極性の電圧を可変抵抗素子に印加することで、抵抗変化素子の書き換え寿命を向上させるデータ記録方法が開示されている。
そして、このような抵抗変化素子をメモリセルとして用いることで、例えばフラッシュメモリなどの一般的に知られている不揮発性メモリに比べ、信頼性の高いメモリが構成できることが期待できる。
[本願発明者らによる知見]
本願発明者らは、上記開示内容を踏まえ、抵抗変化型不揮発性記憶装置の1つとして、遷移金属の一つであるタンタル(Ta)を用い、その酸素不足型の酸化物(例えば、酸化タンタル)の抵抗変化層とスイッチ素子とでメモリセルを構成した抵抗変化型不揮発性記憶装置を検討している。
ここで、酸素不足型の酸化物とは、酸素が化学量論的組成から不足している酸化物をいう。
課題を説明するための準備として、酸素不足型のTa酸化物(TaOx、0<x<2.5)を抵抗変化層とする抵抗変化素子について、実験で得られたいくつかの特性を説明する。なお、これらの詳細は関連特許である特許文献2および特許文献3に開示されている。
図17は、従来の抵抗変化素子を用いた1T1R型メモリセルの構成(1ビット分の構成)を示す模式図である。図17に示されるように、1T1R型メモリセルは、通常、NMOSトランジスタ104と抵抗変化素子100とから構成されている。
図17に示されるように、抵抗変化素子100は、下部電極100a、酸素不足型の遷移金属酸化物で構成された低抵抗な第1の金属酸化物層(ここでは、第1のタンタル酸化物層(TaOx、0<x<2.5))100b−1と高抵抗な第2の金属酸化物層(ここでは、第2のタンタル酸化物層(TaOy、x<y))100b−2とを積層して構成される抵抗変化層100b、および上部電極100cが積層して形成された素子である。下部電極100aから下部電極端子105が引き出され、上部電極100cから上部電極端子102が引き出されている。
また、選択トランジスタ(つまり、スイッチ素子の一例)であるNMOSトランジスタ104は、ゲート端子103を備える。抵抗変化素子100の下部電極端子105とNMOSトランジスタ104のソースまたはドレイン(N+拡散)領域が直列に接続され、抵抗変化素子100と接続されていない他方のドレインまたはソース(N+拡散)領域は、下部電極端子101として引き出され、NMOSトランジスタ104のの基板端子は、接地電位に接続されている。ここでは高抵抗な第2の金属酸化物層100b−2を、NMOSトランジスタ104と反対側の上部電極端子102側に配置している。
ここで、上部電極100cの材料としては、関連特許である上記特許文献3に開示されている様に、例えば、Pt(白金)、Ir(イリジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Ni(ニッケル)、W(タングステン)、Cu(銅)などが使用できる。
特許文献3には、抵抗変化層100bの構成元素であるTaの標準電極電位よりも高い標準電極電位を有する電極材料で上部電極100cを構成した場合には、抵抗変化層100bの上部電極100cとの界面付近における抵抗変化が起こりやすく、このとき、上部電極100cを構成する電極材料の標準電極電位と抵抗変化層100bを構成する金属の標準電極電位との差が大きいほど抵抗変化が起こりやすく、上部電極100cを構成する電極材料の標準電極電位と抵抗変化層100bを構成する金属の標準電極電位との差が小さくなるにつれて抵抗変化が起こりにくいことが開示されている。また、抵抗変化層100bの構成元素であるTaの標準電極電位よりも低い標準電極電位を有する電極材料で上部電極100cを構成した場合には、抵抗変化が起こりにくいことが開示されている。
なお、一般に標準電極電位は、酸化されにくさの一つの指標であり、この値が大きければ酸化されにくく、小さければ酸化されやすいことを意味する。特に、標準電極電位が高いPtまたはIrを電極に用いた場合が、良好な抵抗変化動作が得られ、望ましい。
また、図17に示されたメモリセルでは、上部電極端子102を基準として下部電極端子101に正の所定電圧(例えば、第1の閾値電圧)以上の電圧(低抵抗化電圧パルス)が印加された場合、抵抗変化層100bにおける上部電極100cとの界面近傍で還元が起こり、抵抗変化素子100は低抵抗状態に遷移する。一方、下部電極端子101を基準として上部電極端子102に別の正の所定電圧(例えば、第2の閾値電圧)以上の電圧(高抵抗化電圧パルス)が印加された場合、抵抗変化層100bにおける上部電極100cとの界面近傍で酸化が起こり、抵抗変化素子100は高抵抗状態に遷移する。ここで、低抵抗化電圧パルスの印加方向を負電圧方向と定義し、高抵抗化電圧パルスの印加方向を正電圧方向と定義する。
しかしながら、上述した抵抗変化素子を用いたメモリセルにおいて、高抵抗化電圧パルス(1回)と低抵抗化電圧パルス(1回)とを交互に印加することを繰り返した場合に、書き換え初期は、安定的に抵抗変化動作をするが、書き換え回数を増やしていくと、抵抗変化状態が不安定になるという課題がある。すなわち、高抵抗化電圧パルスを印加しても低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移しなくなる現象(「LR張り付き」)が生じることを発見した。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った。その結果、LR張り付きの状態になっている素子に対し、第1電圧(LR化電圧)と極性が同じである第1回復電圧パルスと、第1回復電圧パルスに後続し、第2電圧(HR化電圧)より振幅が大きく、かつ第2電圧と極性が同じである第2回復電圧パルスとの2パルスで構成される回復電圧パルスセットを少なくとも1回、抵抗変化型不揮発性記憶素子に印加することで、素子を通常の抵抗変化動作が可能な状態へと復帰させうることが分かった。そこで、以下のような抵抗変化型不揮発性記憶素子の書き込み方法および抵抗変化型不揮発性記憶装置を考案するに至った。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
以下で説明する実施形態は、いずれも本発明の望ましい一具体例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、あくまで一例であり、本発明を限定するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より望ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。また、製造方法においては、必要に応じて、各工程の順序等を変更でき、かつ、他の公知の工程を追加できる。
(第1実施形態)
第1実施形態の抵抗変化型不揮発性記憶素子の書き込み方法は、抵抗変化型不揮発性記憶素子に電圧パルスを印加することにより、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態を可逆的に変化させる書き込み方法であって、抵抗変化型不揮発性記憶素子は、第1電極と、第2電極と、第1電極および第2電極に挟まれた抵抗変化層とを有し、抵抗変化層は、第1電極と接する第1の金属酸化物層と、第2電極と接し、第1の金属酸化物層よりも酸素不足度が小さい第2の金属酸化物層とを含み、抵抗変化型不揮発性記憶素子は、第1電圧のパルスが印加されると、第1情報の記憶に用いられる第1抵抗状態から第2情報の記憶に用いられる第2抵抗状態へと変化し、第1電圧とは極性が異なる第2電圧のパルスが印加されると、第2抵抗状態から第1抵抗状態へと変化する特性を有し、書き込み方法は、抵抗変化型不揮発性記憶素子に第2電圧のパルスが印加された時に、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移できず、第2抵抗状態に留まるか否かを判定する第1判定ステップと、第1判定ステップにおいて抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移できず第2抵抗状態に留まると判定された場合に、第1電圧と極性が同じである第1回復電圧パルスと、第1回復電圧パルスに後続し、第2電圧より振幅が大きく、かつ第2電圧と極性が同じである第2回復電圧パルスとの2パルスで構成される回復電圧パルスセットを少なくとも1回、抵抗変化型不揮発性記憶素子に印加する回復ステップとを含む。
かかる構成では、「LR張り付き」等のような抵抗変化における不具合が生じた場合であっても、抵抗変化型不揮発性記憶素子に対して少なくとも1回、回復電圧パルスセットが印加されるので、そのような不具合が解消される。よって、抵抗変化型不揮発性記憶素子の書き換え回数が増加しても適切な動作ウィンドウを確保することが可能となり、その結果、抵抗変化動作を安定的に持続でき、不揮発性記憶装置の信頼性を大きく向上できる。
上記書き込み方法において、さらに、回復電圧パルスセットの印加によって抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移したか否かを判定する第2判定ステップを含み、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移するまで、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を繰り返してもよい。
かかる構成では、抵抗変化における不具合が解消されるまで回復ステップが繰り返されるので、「LR張り付き」のような抵抗変化における不具合が確実に解消される。
上記書き込み方法において、第2回復電圧パルスは、第2電圧のパルスの幅よりも長いパルス幅を有してもよい。
かかる構成では、強固な「LR張り付き」等のような抵抗変化における不具合が生じた場合であっても、抵抗変化型不揮発性記憶素子に対して少なくとも1回、パルス幅の長い第2回復電圧パルスを含む回復電圧パルスセットが印加されるので、そのような不具合が解消される。よって、抵抗変化型不揮発性記憶素子の書き換え回数が増加しても適切な動作ウィンドウを確保することが可能となり、その結果、抵抗変化動作を安定的に持続でき、不揮発性記憶装置の信頼性をさらに大きく向上できる。
上記書き込み方法において、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を所定の回数繰り返しても抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移しない場合に、第2回復電圧パルスを、より長いパルス幅を有する新たな第2回復電圧パルスに変更した上で、回復ステップでの回復電圧パルスセットを、少なくとも1回、抵抗変化型不揮発性記憶素子に印加してもよい。
かかる構成では、回復電圧パルスセットを印加しても抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が変化しない場合に、第2回復電圧パルスのパルス幅を伸ばした上で回復ステップが実行される。よって、「LR張り付き」のような抵抗変化における不具合がさらに確実に解消される。
上記書き込み方法において、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を所定の回数繰り返しても抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移しない場合に、第2回復電圧パルスを、より長いパルス幅を有する新たな第2回復電圧パルスに変更した上で、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移するまで、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を、所定の回数繰り返す、追加回復処理を、前記抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が前記第1抵抗状態に遷移するまで繰り返してもよい。
「追加回復処理」は、第2回復電圧パルスを、より長いパルス幅を有する新たな第2回復電圧パルスに変更した上で、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を、所定の回数繰り返す処理である。
所定の回数だけ追加回復処理を繰り返してもなお、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移しない場合には、第2回復電圧パルスを、さらに長いパルス幅を有する新たな第2回復電圧パルスに変更した上で、新たな追加回復処理が所定の回数繰り返される。同様にして、パルス幅を長くしながら、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移するまで、追加回復処理が繰り返される。所定の回数は、第2回復電圧パルスのパルス幅毎に異なっていてもよい。
かかる構成では、回復電圧パルスセットを印加しても抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が変化しない場合に、抵抗変化における不具合が解消されるまで第2回復電圧パルスのパルス幅が拡大されていくことにより、より強固な「LR張り付き」のような抵抗変化における不具合であっても、解消され得る。
上記書き込み方法において、新たな第2回復電圧パルスは、変更前の第2回復電圧パルスよりも振幅が大きくてもよい。
かかる構成では、より強固な「LR張り付き」のような抵抗変化における不具合であっても、不具合が解消される確率がさらに高まる。
上記書き込み方法において、第1の金属酸化物層は、TaOxで表される組成を有する層であり、第2の金属酸化物層は、TaOy(ただし、x<y)で表される組成を有する層であってもよい。
上記書き込み方法において、抵抗変化型不揮発性記憶素子は、高抵抗状態と低抵抗状態とを可逆的に遷移する素子であり、第1抵抗状態は、高抵抗状態であり、第2抵抗状態は、低抵抗状態であってもよい。
上記書き込み方法において、第1回復電圧パルスの振幅は、第1電圧のパルスの振幅以下であってもよい。
上記書き込み方法において、第1回復電圧パルスの振幅は、第1電圧のパルスの振幅と同程度であっもよい。
第1実施形態の抵抗変化型不揮発性記憶装置は、抵抗変化型不揮発性記憶素子とスイッチ素子とが直列に接続されたメモリセルと、メモリセルを駆動する駆動回路とを備えた抵抗変化型不揮発性記憶装置であって、抵抗変化型不揮発性記憶素子は、第1電極と、第2電極と、第1電極および第2電極に挟まれた抵抗変化層とを有し、抵抗変化層は、第1電極と接する第1の金属酸化物層と、第2電極と接し、第1の金属酸化物層よりも酸素不足度が小さい第2の金属酸化物層とを含み、抵抗変化型不揮発性記憶素子は、第1電圧のパルスが印加されると、第1情報の記憶に用いられる第1抵抗状態から第2情報の記憶に用いられる第2抵抗状態へと変化し、第1電圧とは極性が異なる第2電圧のパルスが印加されると、第2抵抗状態から第1抵抗状態へと変化する特性を有し、駆動回路は、メモリセルへの書き込みを行う書き込み回路と、メモリセルからの読み出しを行うセンスアンプと、書き込み回路によって抵抗変化型不揮発性記憶素子に第2電圧のパルスが印加された時に、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移できず、第2抵抗状態に留まるか否かの第1判定ステップを、センスアンプを用いて行う制御回路とを有し、制御回路は、第1判定ステップにおいて抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移できず第2抵抗状態に留まると判定した場合に、第1電圧と極性が同じである第1回復電圧パルスと、第1回復電圧パルスに後続し、第2電圧より振幅が大きく、かつ第2電圧と極性が同じである第2回復電圧パルスとの2パルスで構成される回復電圧パルスセットを少なくとも1回、抵抗変化型不揮発性記憶素子に印加する回復ステップを行うように、書き込み回路を制御する。
かかる構成では、「LR張り付き」等のような抵抗変化における不具合が生じた場合であっても、抵抗変化型不揮発性記憶素子に対して少なくとも1回、回復電圧パルスセットが印加されるので、そのような不具合が解消される。よって、抵抗変化型不揮発性記憶素子の書き換え回数が増加しても適切な動作ウィンドウを確保することが可能となり、その結果、抵抗変化動作を安定的に持続でき、不揮発性記憶装置の信頼性を大きく向上できる。
上記抵抗変化型不揮発性記憶装置において、制御回路は、さらに、回復電圧パルスセットの印加によって抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移したか否かを判定する第2判定ステップを、センスアンプを用いて行い、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移するまで、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を繰り返してもよい。
かかる構成では、抵抗変化における不具合が解消されるまで回復ステップが繰り返されるので、「LR張り付き」のような抵抗変化における不具合が確実に解消される。
上記抵抗変化型不揮発性記憶装置において、第2回復電圧パルスは、第2電圧のパルスの幅よりも長いパルス幅を有してもよい。
かかる構成では、強固な「LR張り付き」等のような抵抗変化における不具合が生じた場合であっても、抵抗変化型不揮発性記憶素子に対して少なくとも1回、パルス幅の長い第2回復電圧パルスを含む回復電圧パルスセットが印加されるので、そのような不具合が解消される。よって、抵抗変化型不揮発性記憶素子の書き換え回数が増加しても適切な動作ウィンドウを確保することが可能となり、その結果、抵抗変化動作を安定的に持続でき、不揮発性記憶装置の信頼性をさらに大きく向上できる。
上記抵抗変化型不揮発性記憶装置において、制御回路は、さらに、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を所定の回数繰り返しても抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移しない場合に、第2回復電圧パルスを、より長いパルス幅を有する新たな第2回復電圧パルスに変更した上で、回復ステップでの回復電圧パルスセットを、少なくとも1回、抵抗変化型不揮発性記憶素子に印加してもよい。
かかる構成では、回復電圧パルスセットを印加しても抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が変化しない場合に、第2回復電圧パルスのパルス幅を伸ばした上で回復ステップが実行される。よって、「LR張り付き」のような抵抗変化における不具合がさらに確実に解消される。
上記抵抗変化型不揮発性記憶装置において、制御回路は、さらに、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を所定の回数繰り返しても抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移しない場合に、第2回復電圧パルスを、より長いパルス幅を有する新たな第2回復電圧パルスに変更した上で、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を、所定の回数繰り返す、追加回復処理を、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移するまで繰り返してもよい。
「追加回復処理」は、第2回復電圧パルスを、より長いパルス幅を有する新たな第2回復電圧パルスに変更した上で、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を、所定の回数繰り返す処理である。
所定の回数だけ追加回復処理を繰り返してもなお、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移しない場合には、第2回復電圧パルスを、さらに長いパルス幅を有する新たな第2回復電圧パルスに変更した上で、新たな追加回復処理が所定の回数繰り返される。同様にして、パルス幅を長くしながら、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態に遷移するまで、追加回復処理が繰り返される。所定の回数は、第2回復電圧パルスのパルス幅毎に異なっていてもよい。
かかる構成では、回復電圧パルスセットを印加しても抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が変化しない場合に、抵抗変化における不具合が解消されるまで第2回復電圧パルスのパルス幅が拡大されていくことにより、より強固な「LR張り付き」のような抵抗変化における不具合であっても、解消され得る。
上記抵抗変化型不揮発性記憶装置において、新たな第2回復電圧パルスは、変更前の第2回復電圧パルスよりも振幅が大きくてもよい。
かかる構成では、より強固な「LR張り付き」のような抵抗変化における不具合であっても、不具合が解消される確率がさらに高まる。
上記抵抗変化型不揮発性記憶装置において、第1の金属酸化物層は、TaOxで表される組成を有する層であり、第2の金属酸化物層は、TaOy(ただし、x<y)で表される組成を有する層であってもよい。
上記抵抗変化型不揮発性記憶装置において、抵抗変化型不揮発性記憶素子は、高抵抗状態と低抵抗状態とを可逆的に遷移する素子であり、第1抵抗状態は、高抵抗状態であり、第2抵抗状態は、低抵抗状態であってもよい。
上記抵抗変化型不揮発性記憶装置において、第1回復電圧パルスの振幅は、第1電圧のパルスの振幅以下であってもよい。
上記抵抗変化型不揮発性記憶装置において、第1回復電圧パルスの振幅は、第1電圧のパルスの振幅と同程度であってもよい。
上記抵抗変化型不揮発性記憶装置において、スイッチ素子は、MOSトランジスタであってもよい。
上記抵抗変化型不揮発性記憶装置において、スイッチ素子は、双方向ダイオードであってもよい。
[課題の詳細な説明]
ここで、本実施形態の課題について、より詳細に説明する。
まず、図17に示すような、上部電極100cがIr(イリジウム)、下部電極100aがTaN(窒化タンタル)、抵抗変化層100bが第1の金属酸化物層(ここでは、第1のタンタル酸化物層(TaOx、0<x<2.5))100b−1および第2の金属酸化物層(ここでは、第2のタンタル酸化物層(TaOy、x<y))100b−2で構成される抵抗変化素子100を用いて構成された1T1R型メモリセルについて、抵抗変化特性を示し、その課題を詳細に説明する。
抵抗変化層100bは、上部電極100c(第2電極)と下部電極100a(第1電極)との間に介在され、上部電極100cと下部電極100aとの間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する層である。例えば、上部電極100cと下部電極100aとの間に与えられる電圧の極性に応じて高抵抗状態と低抵抗状態とを可逆的に遷移する層である。抵抗変化層100bは、上部電極100cに接続する第2の抵抗変化層と、下部電極100aに接続する第1の抵抗変化層の少なくとも2層を積層して構成される。
第1の金属酸化物層100b−1(第1の抵抗変化層)は、酸素不足型の第1の金属酸化物で構成され、第2の金属酸化物層100b−2(第2の抵抗変化層)は、第1の金属酸化物よりも酸素不足度が小さい第2の金属酸化物で構成されている。抵抗変化素子の第2の抵抗変化層中には、電気パルスの印加に応じて酸素不足度が可逆的に変化する微小な局所領域が形成されている。局所領域は、酸素欠陥サイトから構成されるフィラメントを含むと考えられる。
ここで実験に用いたサンプルは、抵抗変化層100bの面積が0.25μm2(=0.5μm×0.5μm)であり、下部電極100aに接する第1の金属酸化物層100b−1(ここでは、TaOx:x=1.54、膜厚:30nm)、および上部電極100cに接する第2の金属酸化物層100b−2(ここでは、TaOy:y=2.47、膜厚:6.5nm)を有している。スイッチ素子であるNMOSトランジスタ104は、ゲート幅W:0.44μm、ゲート長L:0.18μm、およびゲート絶縁膜の膜厚Tox:3.5nmである。
第2の金属酸化物層100b−2(ここでは、TaOy)は、上部電極100cの製造工程前に、スパッタリングにより成膜された第1の金属酸化物層100b−1(ここでは、TaOx)の上にスパッタリングにより成膜され、第1の金属酸化物層100b−1(ここでは、TaOx)と比べて酸素不足度が小さく、つまり、抵抗値が非常に高い(>1MΩ)構造で、抵抗変化動作するためには最初に初期ブレイク電圧を所定時間印加し第2の金属酸化物層100b−2中に導電パスを形成することが必要である。
「酸素不足度」とは、金属酸化物において、その化学量論的組成(複数の化学量論的組成が存在する場合は、そのなかで最も抵抗値が高い化学量論的組成)の酸化物を構成する酸素の量に対し、不足している酸素の割合をいう。化学量論的組成の金属酸化物は、他の組成の金属酸化物と比べて、より安定でありかつより高い抵抗値を有している。
例えば、金属がタンタル(Ta)の場合、上述の定義による化学量論的組成の酸化物はTa2O5であるので、TaO2.5と表現できる。TaO2.5の酸素不足度は0%であり、TaO1.5の酸素不足度は、酸素不足度=(2.5−1.5)/2.5=40%となる。また、酸素過剰の金属酸化物は、酸素不足度が負の値となる。なお、本明細書中では、特に断りのない限り、酸素不足度は正の値、0、負の値も含むものとして説明する。
酸素不足度の小さい酸化物は化学量論的組成の酸化物により近いため抵抗値が高く、酸素不足度の大きい酸化物は酸化物を構成する金属により近いため抵抗値が低い。
「酸素含有率」とは、総原子数に占める酸素原子の比率である。例えば、Ta2O5の酸素含有率は、総原子数に占める酸素原子の比率(O/(Ta+O))であり、71.4atm%となる。したがって、酸素不足型のタンタル酸化物は、酸素含有率は0より大きく、71.4atm%より小さいことになる。例えば、第1の金属酸化物層を構成する金属と、第2の金属酸化物層を構成する金属とが同種である場合、酸素含有率は酸素不足度と対応関係にある。すなわち、第2の金属酸化物の酸素含有率が第1の金属酸化物の酸素含有率よりも大きいとき、第2の金属酸化物の酸素不足度は第1の金属酸化物の酸素不足度より小さい。
抵抗変化層100bを構成する金属は、タンタル以外の金属を用いてもよい。抵抗変化層を構成する金属としては、遷移金属、またはアルミニウム(Al)を用いることができる。遷移金属としては、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)等を用いることができる。遷移金属は複数の酸化状態をとることができるため、異なる抵抗状態を酸化還元反応により実現することが可能である。
例えば、ハフニウム酸化物を用いる場合、第1の金属酸化物の組成をHfOxとした場合にxが0.9以上1.6以下であり、かつ、第2の金属酸化物の組成をHfOyとした場合にyがxの値よりも大である場合に、抵抗変化層の抵抗値を安定して高速に変化させることができる。この場合、第2の金属酸化物の膜厚は、3〜4nmとしてもよい。
また、ジルコニウム酸化物を用いる場合、第1の金属酸化物の組成をZrOxとした場合にxが0.9以上1.4以下であり、かつ、第2の金属酸化物の組成をZrOyとした場合にyがxの値よりも大である場合に、抵抗変化層の抵抗値を安定して高速に変化させることができる。この場合、第2の金属酸化物の膜厚は、1〜5nmとしてもよい。
第1の金属酸化物を構成する第1の金属と、第2の金属酸化物を構成する第2の金属とは、異なる金属を用いてもよい。この場合、第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物よりも酸素不足度が小さい、つまり抵抗が高くてもよい。このような構成とすることにより、抵抗変化時に第1電極と第2電極との間に印加された電圧は、第2の金属酸化物に、より多くの電圧が分配され、第2の金属酸化物中で発生する酸化還元反応をより起こしやすくすることができる。
また、第1の抵抗変化層となる第1の金属酸化物を構成する第1の金属と、第2の抵抗変化層となる第2の金属酸化物を構成する第2の金属とを、互いに異なる材料を用いる場合、第2の金属の標準電極電位は、第1の金属の標準電極電位より低くてもよい。標準電極電位は、その値が高いほど酸化しにくい特性を表す。これにより、標準電極電位が相対的に低い第2の金属酸化物において、酸化還元反応が起こりやすくなる。なお、抵抗変化現象は、抵抗が高い第2の金属酸化物中に形成された微小な局所領域中で酸化還元反応が起こってフィラメント(導電パス)が変化することにより、その抵抗値(酸素不足度)が変化すると考えられる。
例えば、第1の金属酸化物に酸素不足型のタンタル酸化物(TaOx)を用い、第2の金属酸化物にチタン酸化物(TiO2)を用いることにより、安定した抵抗変化動作が得られる。チタン(標準電極電位=−1.63eV)はタンタル(標準電極電位=−0.6eV)より標準電極電位が低い材料である。このように、第2の金属酸化物に第1の金属酸化物より標準電極電位が低い金属の酸化物を用いることにより、第2の金属酸化物中でより酸化還元反応が発生しやすくなる。その他の組み合わせとして、高抵抗層となる第2の金属酸化物にアルミニウム酸化物(Al2O3)を用いることができる。例えば、第1の金属酸化物に酸素不足型のタンタル酸化物(TaOx)を用い、第2の金属酸化物にアルミニウム酸化物(Al2O3)を用いてもよい。
積層構造の抵抗変化層における抵抗変化現象は、いずれも抵抗が高い第2の金属酸化物中に形成された微小な局所領域中で酸化還元反応が起こって、局所領域中のフィラメント(導電パス)が変化することにより、その抵抗値が変化すると考えられる。
つまり、第2の金属酸化物に接続する上部電極100c(第2電極)に、下部電極100a(第1電極)を基準にして正の電圧を印加したとき、抵抗変化層中の酸素イオンが第2の金属酸化物側に引き寄せられる。これによって、第2の金属酸化物中に形成された微小な局所領域中で酸化反応が発生し、酸素不足度が減少する。その結果、局所領域中のフィラメントが繋がりにくくなり、抵抗値が増大すると考えられる。
逆に、第2の金属酸化物に接続する上部電極100c(第2電極)に、下部電極100a(第1電極)を基準にして負の電圧を印加したとき、第2の金属酸化物中の酸素イオンが第1の金属酸化物側に押しやられる。これによって、第2の金属酸化物中に形成された微小な局所領域中で還元反応が発生し、酸素不足度が増加する。その結果、局所領域中のフィラメントが繋がりやすくなり、抵抗値が減少すると考えられる。
酸素不足度がより小さい第2の金属酸化物に接続されている上部電極100c(第2電極)は、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)など、第2の金属酸化物を構成する金属及び下部電極100a(第1電極)を構成する材料と比べて標準電極電位が、より高い材料で構成する。また、酸素不足度がより高い第1の金属酸化物に接続されている下部電極100a(第1電極)は、例えば、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)など、第1の金属酸化物を構成する金属と比べて標準電極電位が、より低い材料で構成してもよい。標準電極電位は、その値が高いほど酸化しにくい特性を表す。
すなわち、上部電極100c(第2電極)の標準電極電位V2、第2の金属酸化物を構成する金属の標準電極電位Vr2、第1の金属酸化物を構成する金属の標準電極電位Vr1、下部電極100a(第1電極)の標準電極電位V1との間には、Vr2<V2、かつV1<V2なる関係を満足してもよい。さらには、V2>Vr2で、Vr1≧V1の関係を満足してもよい。
上記の構成とすることにより、第2電極と第2の金属酸化物の界面近傍の第2の金属酸化物中において、選択的に酸化還元反応が発生し、安定した抵抗変化現象が得られる。
以上のように構成された抵抗変化素子100を駆動する場合は、外部の電源によって所定の条件を満たす電圧を下部電極100aと上部電極100cとの間に印加する。
このように構成された図17の抵抗変化素子を用いた1T1R型メモリセルについて、図1Aに示す高抵抗(HR)化電圧パルス10(電圧がVH、パルス幅50ns)と低抵抗(LR)化電圧パルス11(電圧が−VL、パルス幅50ns)とを下部電極端子101と上部電極端子102との間に繰返し交互に複数回印加した場合における、通常の抵抗変化特性の一例を図1Bに示す。また、「低抵抗(LR)張り付き」という不具合が発生した場合の異常な抵抗変化特性の一例を図1Cに示す。なお、「低抵抗(LR)張り付き」とは、低抵抗(LR)状態の抵抗変化素子に対してHR化電圧パルスを印加してもその抵抗変化素子が高抵抗(HR)状態に遷移しない(LR状態のまま維持される)現象(不具合)である。
ここで、電圧パルスの後に付記した記号は当該電圧パルスの電圧値を表す。以下では適宜、電圧パルスの電圧値を同様に表記する。また、高抵抗、低抵抗なる語句は、明瞭性を損なわない限り、それぞれHR、LRと略記することがある。また、図1Aにおいて、高抵抗(HR)化電圧パルス10と低抵抗(LR)化電圧パルス11とは、それぞれHR化、LR化と略記されている。
下部電極端子101に対して上部電極端子102に正の電圧を印加する場合を正の電圧印加、逆の場合を負の電圧印加とする。また、NMOSトランジスタ104のゲート端子103には、HR化電圧パルス10(電圧がVH)とLR化電圧パルス11(電圧が−VL)印加時の両方において、例えばLR化電圧パルス11と絶対値が等しい正のゲート電圧VLが印加され、NMOSトランジスタ104が導通状態となる。
ここで、メモリセルの下部電極端子101と上部電極端子102との間にHR化電圧パルス10(電圧がVH)を印加したとき、抵抗変化素子100の両端にはほぼ電圧VHがそのまま印加される。しかし、メモリセルの下部電極端子101と上部電極端子102との間にLR化電圧パルス11(電圧が−VL)を印加したときには、NMOSトランジスタ104の閾値電圧をVthとすると、抵抗変化素子100の両端に印加される電圧は−(VL−Vth)となり、NMOSトランジスタ104の閾値電圧分だけ低下した電圧となる。これは、LR化電圧パルス11(電圧が−VL)印加時にNMOSトランジスタ104がソースフォロア接続となるためである。
図1Bおよび図1Cにおいて、縦軸は、図17のメモリセルにおいて、ゲート端子103に正のゲート電圧VGが印加され、上部電極端子102に正の読み出し電圧Vreadを印加(このとき、下部電極端子101には、接地電位を印加)した時の高抵抗(HR)状態と低抵抗(LR)状態のセル電流(抵抗変化素子100を流れる電流)であり(このとき、抵抗変化素子100にほぼ電圧Vreadが印加される)、横軸は、パルス印加回数である。このとき、電圧Vreadの印加では、抵抗変化は起こらない。
図1Bおよび図1Cは、図1Aに示したように、HR化電圧パルス10として、正の電圧VHを下部電極端子101と上部電極端子102との間に所定のパルス幅で印加し、LR化電圧パルス11として、負の電圧−VLを下部電極端子101と上部電極端子102との間に所定のパルス幅で印加した場合の抵抗変化特性の一例を示している。この時、ゲート端子103にはゲート電圧VLが印加されている。また、VL>VHである。ただし、低抵抗化時にNMOSトランジスタ104がソースフォロア接続となるため、実際に抵抗変化素子にかかる電圧は、高抵抗化時にかかる電圧VHの方が低抵抗化時にかかる電圧(VL−Vth)よりも大きい。
図1Bに示すように、通常の抵抗変化動作において、HR状態とLR状態のセル電流は、それぞれ比較的狭い範囲内で安定した値を示している。しかしながら、図1Cに示すように、一旦、「LR張り付き」、つまり、LR状態に張り付く不具合(あるLR化電圧パルスの印加時にLR状態になり、その後、HR化電圧パルスを印加しても抵抗変化しない現象)が発生すると、以降は、図1Aに示す通常のHR化電圧パルス10(電圧がVH)とLR化電圧パルス11(電圧が−VL)とを繰返し交互に印加したとしてもLR状態に張り付いたまま回復しない。
このように「LR張り付き」が発生する原因は、初期ブレイクにより形成した導電パスに、LR化電圧パルスの印加時に、偶発的に、酸素イオンが、通常のLR状態のときより過剰に抜けてしまうためと推定される。一旦、「LR張り付き」が発生してしまうと、通常のHR化電圧パルスの印加では、容易に「LR張り付き」から回復することができなくなり、書き換え回数(書き換え寿命)が短くなるという課題が見出された。
[本発明に係る「LR張り付き」からのHR回復に関する基礎データ]
本願の発明者は、このような事情を鑑みて、「LR張り付き」、つまり、LR状態に張り付く不具合を解消(この解消を「高抵抗(HR)化回復」、あるいは、単に「回復」ともいう)することができる抵抗変化型不揮発性記憶素子の書き込み方法を鋭意検討した。その結果、先ず、LR化電圧パルスを印加し、引き続き、通常のHR化電圧パルスよりも振幅が大きいHR化電圧パルスを印加する回復電圧パルスセットを抵抗変化素子に印加することにより、導電パスから過剰に抜けてしまった酸素イオンを補充して導電パスを機能回復させることができること、すなわち「LR張り付き」を解消できることを見出した。
以下では、まず「LR張り付き」からの高抵抗(HR)化回復に関する基礎データを説明し、その後に、実施形態の具体的構成について説明する。
(1)導電パスの機能回復によるHR化回復(「回復ステップ」の一例)
「低抵抗張り付き」からの回復手法である「導電パスの機能回復」を説明する。
「回復ステップ」は、抵抗変化型不揮発性記憶素子に電圧パルスを印加することにより、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態を可逆的に変化させる書き込み方法の一つである。
ここで、抵抗変化型不揮発性記憶素子(例えば、抵抗変化素子100)は、第1電極(例えば、下部電極100a)と、第2電極(例えば、上部電極100c)と、第1電極および第2電極に挟まれた抵抗変化層(例えば、抵抗変化層100b)とを有し、抵抗変化層は、第1電極と接する第1の金属酸化物層(例えば、第1の金属酸化物層100b−1)と、第2電極と接し、第1の金属酸化物層よりも酸素不足度が小さい第2の金属酸化物層(例えば、第2の金属酸化物層100b−2)とを含む。また、抵抗変化型不揮発性記憶素子は、第1電圧(例えば、−VL)のパルス(低抵抗化電圧パルス、LR化電圧パルス)が印加されると、第1情報(例えば、「0」)の記憶に用いられる第1抵抗状態(例えば、HR)から第2情報(例えば、「1」)の記憶に用いられる第2抵抗状態(例えば、LR)へと変化する。また、第1電圧とは極性が異なる第2電圧(例えば、VH)のパルス(高抵抗化電圧パルス、HR化電圧パルス)が印加されると、第2抵抗状態(例えば、LR)から第1抵抗状態(例えば、HR)へと変化する特性を有するとする。
「回復ステップ」では、抵抗変化型不揮発性記憶素子に第2電圧(例えば、VH)のパルスが印加された時に、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態(例えば、HR)に遷移できず、第2抵抗状態(例えば、LR)に留まる(例えば、「LR張り付き」が生じている)か否かを判定する第1判定ステップにおいて、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態(例えば、HR)に遷移できず第2抵抗状態(例えば、LR)に留まると判定された場合に、(1)第1電圧(例えば、−VL)と極性が同じである第1回復電圧(例えば、負電圧)パルスと、(2)第1回復電圧パルスに後続し、第2電圧(例えば、VH)より振幅が大きく、かつ、第2電圧(例えば、VH)と極性が同じである第2回復電圧(例えば、正電圧)パルスとの2パルスで構成される回復電圧パルスセットを少なくとも1回、抵抗変化型不揮発性記憶素子に印加する。
第1回復電圧パルスは、第1電圧と極性が同じである。かつ、第1回復電圧パルスの振幅は、第1電圧のパルスと同程度(第1電圧のパルスの80%以上120%以下)であってもよいし、第1電圧のパルスと実質的に等しくてもよく(第1電圧のパルスの90%以上110%以下)、さらに、第1電圧のパルスと等しくてもよい。また、第1回復電圧パルスの振幅は、第1電圧のパルスの振幅以下(第1電圧のパルスの100%以下)であってもよく、さらに、第1電圧のパルスの振幅より小さくてもよい。以上の点は、後述する追加回復処理についても同様である。
第1回復電圧パルスのパルス幅は、第1電圧のパルスと同程度(第1電圧のパルスの80%以上120%以下)であってもよいし、第1電圧のパルスと実質的に等しくてもよく(第1電圧のパルスの90%以上110%以下)、さらに、第1電圧のパルスと等しくてもよい。また、第1回復電圧パルスのパルス幅は、第1電圧のパルスのパルス幅以下であってもよく、さらに、第1電圧のパルスのパルス幅より短くてもよい。以上の点は、後述する追加回復処理についても同様である。
第2回復電圧パルスのパルス幅は、第2電圧のパルスと同程度(第2電圧のパルスの80%以上120%以下)であってもよいし、第2電圧のパルスと実質的に等しくてもよく(第2電圧のパルスの90%以上110%以下)、さらに、第2電圧のパルスと等しくてもよい。また、第2回復電圧パルスのパルス幅は、第2電圧のパルスのパルス幅以上であってもよく、さらに、第2電圧のパルスのパルス幅より長くてもよい。
以下、「回復ステップ」の一例である「導電パスの機能回復」の詳細を説明する。
図17に示した抵抗変化素子を用いた1T1R型メモリセルの下部電極端子101と上部電極端子102との間に、図2Aに示す第1回復電圧パルス12(電圧:−Vrcl、パルス幅:50ns)と第2回復電圧パルス13(電圧:Vrch、パルス幅:50ns)とを繰返し交互に複数回印加した場合における、「低抵抗(LR)張り付き」からのHR化回復特性の一例とHR化回復した後のパルス抵抗変化特性の一例を図2Bに示す。
ここで、Vrch>VHである。また、VrclはVL近傍の電圧であれば、VLより高くても、低くてもよく、VLと等しくしてもよい。さらに、Vrcl≦VLとしてもよく、Vrcl<VLとしてもよい。VHはHR化電圧パルスの電圧であり、VLはLR化電圧パルスの電圧である。また、ここでは、第2回復電圧パルス13のパルス幅を50nsとし、HR化電圧パルス10のパルス幅50nsと同じとしたが、必ずしも一致させる必要は無い。また、メモリセルの下部電極端子101と上部電極端子102との間に第1回復電圧パルス12(電圧が−Vrcl)を印加し、NMOSトランジスタ104のゲート端子103に電圧Vrclを印加したとき、NMOSトランジスタ104の閾値をVthとすると、抵抗変化素子100の両端に印加される電圧は−(Vrcl−Vth)となり、NMOSトランジスタ104の閾値電圧分だけ低下した電圧となる。また、メモリセルの下部電極端子101と上部電極端子102との間に第2回復電圧パルス13(電圧がVrch)を印加したときには、抵抗変化素子100の両端にはほぼ電圧Vrchがそのまま印加される。
図2Bにおいて、縦軸および横軸は、図1Bと同様である。
図2Bは、図2Aに示したように、図1Cで示される「LR張り付き」の状態にあるメモリセルに対し、第1回復電圧パルス12(電圧が−Vrcl)を所定のパルス幅(例えば、50ns)で印加し、第2回復電圧パルス13(電圧がVrch)を所定のパルス幅(例えば、50ns)で印加する動作を、交互に繰り返した場合の抵抗変化特性の一例と、「LR張り付き」から回復した後に、通常動作時のHR化電圧パルス10(電圧がVH)と、通常動作時のLR化電圧パルス11(電圧が−VL)を交互印加(図1Aと同じ条件)した場合の抵抗変化特性の一例を示している。電圧Vrchは、通常の高抵抗化電圧VHよりも高い。この時、ゲート端子103にはゲート電圧Vrchが印加されている。
図2Bに示すように、「LR張り付き」の状態にあるメモリセルに回復電圧パルスセットの印加を数回(例えば、2回)繰り返すことにより、第2回復電圧パルス13の印加後にセル電流が顕著に低下し、メモリセルは「LR張り付き」から回復する。その後、メモリセルに、通常動作時のHR化電圧パルス10(電圧がVH)を所定のパルス幅(例えば、50ns)で印加し、通常動作時のLR化電圧パルス11(電圧が−VL)を所定のパルス幅(例えば、50ns)で印加する(ここで、VL>VHであり、トランジスタのゲート端子103にはゲート電圧VLが印加される)、通常の抵抗変化電圧パルス(図1の(a)と同じ条件)の交互印加を行うと、もはや、「LR張り付き」が発生することなく、安定的に抵抗変化できる。
図3Aおよび図3Bは、このような回復電圧パルスセットの印加による「LR張り付き」からの回復時のプロセスを説明するための図である。図3において、図17と同じ構成要素については、同じ符号を用い、説明を省略する。
図3Aは、「LR張り付き」の状態にある抵抗変化素子100を表す。本図に示されるように、「LR張り付き」の状態では、第2の金属酸化物層100b−2中に形成されたフィラメント113から、酸素イオンが通常の低抵抗状態時より過剰に抜け過ぎて、酸素欠陥密度が過剰になり、抵抗変化素子100が過剰LR状態になっている。そのため、通常のHR化電圧パルスを印加しても抵抗変化素子100に電圧が印加され難くなり、フィラメント(導電パス)が高抵抗化せず、機能しなくなっていると考えられる。
図3Bに示されるように、「LR張り付き」が発生した抵抗変化素子100に回復電圧パルスセットを繰返し印加した場合には、フィラメント113中の過剰な酸素欠陥密度が正常レベルまで低減され、フィラメント113が正常状態に回復すると考えられる。
なお、図4に示すように、図2Aにおける第2回復電圧パルス13(電圧がVrch)のみを「LR張り付き」の状態にある抵抗変化素子100に繰返し印加した場合、図2Bに見られたような抵抗変化特性の回復は起こらなかった。
以上をまとめると、「LR張り付き」の状態にあるメモリセルに、第1回復電圧パルス12(電圧が−Vrcl)を印加し、その後、第2回復電圧パルス13(電圧がVrch)を印加する回復電圧パルスセットを繰返し印加することにより、フィラメント内に過剰に存在する酸素欠陥が正常レベルまで低減され、フィラメントを正常化でき、その結果、抵抗変化特性が安定化し、書き換え寿命が大幅に向上できると考えられる。
(2)導電パスの機能回復における第2回復電圧パルスのパルス幅拡大
次に、「低抵抗張り付き」からの回復手法の変形である、導電パスの機能回復における第2回復電圧パルスのパルス幅拡大(追加回復処理)について説明する。
上述した第1判定ステップにおいて抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態(例えば、HR)に遷移できず第2抵抗状態(例えば、LR)に留まると判定された場合に、(1)第1電圧(例えば、−VL)と極性が同じである第1回復電圧(例えば、負電圧)パルスと、(2)第1回復電圧パルスに後続し、第2電圧(例えば、VH)より振幅が大きく、第2電圧のパルスより長いパルス幅を有し、かつ、第2電圧(例えば、VH)と極性が同じである第2回復電圧(例えば、正電圧)パルスとの2パルスで構成される回復電圧パルスセットを少なくとも1回、抵抗変化型不揮発性記憶素子に印加する。
ここでは、上述した(1)導電パスの機能回復によるHR化回復(「回復ステップ」の一例)を実施しても、「LR張り付き」から脱出できない場合の、HR化回復手法(「新たな回復ステップ」の一例)について説明する。
図17に示す抵抗変化素子を用いた1T1R型メモリセルについて、図5Aに示すように、図2Aに示した回復電圧パルスセットを繰り返し印加(例えば、5回繰り返し)する。さらに、第1回復電圧パルス20(電圧:−Vrcl3、パルス幅:TpL=50ns)と新たな第2回復電圧パルス21(電圧:Vrch3、Vrch3>VH、パルス幅:TpH(m)、m=1、2、・・・)とから構成される電圧パルスセットを「新たな回復電圧パルスセット」と定義する。新たな回復電圧パルスセット19を所定回数(例えば、5回)繰返し印加し、順次、パルス幅TpH(m)をTpH(1)からTpH(6)まで拡大して行う。以上のような場合における「低抵抗張り付き」からのHR化回復特性の一例を図5Bに示す。
新たな回復電圧パルスセット19に含まれる第1回復電圧パルス20の振幅(Vrcl3)は、第1回復電圧パルス12の振幅(Vrcl)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、新たな回復電圧パルスセット19に含まれる第1回復電圧パルス20の振幅(Vrcl3)は、第1回復電圧パルス12の振幅以上であってもよいし、第1回復電圧パルス12の振幅より大きくてもよい。新たな回復電圧パルスセット19に含まれる第1回復電圧パルス20の振幅は、mの値に応じて変更されてもよい。
新たな回復電圧パルスセット19に含まれる第1回復電圧パルス20のパルス幅は、第1回復電圧パルス12のパルス幅と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、新たな回復電圧パルスセット19に含まれる第1回復電圧パルス20のパルス幅は、第1回復電圧パルス12のパルス幅以上であってもよいし、第1回復電圧パルス12のパルス幅より長くてもよい。新たな回復電圧パルスセット19に含まれる第1回復電圧パルス20のパルス幅は、mの値に応じて変更されてもよい。
新たな回復電圧パルスセット19に含まれる第2回復電圧パルス21の振幅(Vrch3)は、第2回復電圧パルス13の振幅(Vrch)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、新たな回復電圧パルスセット19に含まれる第2回復電圧パルス21の振幅(Vrch3)は、第2回復電圧パルス13の振幅以上であってもよいし、第2回復電圧パルス13の振幅より大きくてもよい。新たな回復電圧パルスセット19に含まれる第2回復電圧パルス21の振幅は、mの値に応じて変更されてもよい。
ここで、例えば、TpH(1)=100ns、TpH(2)=500ns、TpH(3)=1μs、TpH(4)=5μs、TpH(5)=10μs、TpH(6)=50μsである。また、図5Bにおいて、縦軸および横軸は、図2Bと同様である。Vrcl3はVL近傍の電圧であれば、VLより高くても、低くてもよい。VHはHR化電圧パルスの振幅であり、VLはLR化電圧パルスの振幅である。
図5Bに示すように、第2回復電圧パルス13(電圧:Vrch)のパルス幅TpH(ここでは、50ns)が、通常のHR化電圧パルス10(電圧:VH)のパルス幅と同程度である場合には、第1回復電圧パルス12と第2回復電圧パルス13を繰り返し(ここでは、5回)印加しても「LR張り付き」からまだ脱出できていない。その後、第1回復電圧パルス20(電圧:−Vrcl3、パルス幅:TpL=50ns)と新たな第2回復電圧パルス21(電圧:Vrch3、Vrch3>VH、パルス幅:TpH(m)、m=1、2、・・・)とから構成される新たな回復電圧パルスセット19を繰り返し(ここでは、5回)印加しながら、順次、パルス幅TpH(m)をTpH(1)からTpH(6)まで拡大する。その結果、徐々に酸化能力が向上していき、フィラメント内に過剰に存在する酸素欠陥が正常レベルまで低減される。フィラメントを正常化でき、その結果、パルス幅TpH(6)(=50μs)まで拡大した時の2回目の新たな回復電圧パルスセット19の印加で「LR張り付き」から脱出できている。したがって、強固な「LR張り付き」が発生しても、新たな第2回復電圧パルス21のパルス幅TpH(m)(m=1、2、3、・・・)を順次拡大していくことにより、酸化能力も順次向上し、過剰に存在する酸素欠陥が正常レベルまで低減され易くなる。よって、「LR張り付き」から脱出させ易くなると推定される。
なお、新たな回復電圧パルスセット19に含まれる第1回復電圧パルス20は、第1回復電圧パルス12と同じ電圧であってもよい。また、新たな回復電圧パルスセット19に含まれる第1回復電圧パルス20と第1回復電圧パルス12のパルス幅は必ずしも同じである必要は無い。さらに、新たな第2回復電圧パルス21の電圧(Vrch3)の振幅は、第2回復電圧パルス13の電圧(Vrch)以上としてもよい。
図6は、図17に示す1T1R型メモリセルにおいて、LR状態に対してHR化電圧パルス10(電圧:VH、パルス幅:Tp)を1回印加した場合におけるHR化パルス幅TpとHR化不良ビット率の関係を測定したものである。
この測定は、アレイ全ビットを安定的にHR化するのに必要なHR化電圧パルスのパルス幅Tpを推定する目的で行った。具体的には、図17に示した1T1R型メモリセルを256キロビット配列したアレイが搭載された抵抗変化型不揮発性記憶装置を用い、予めLR状態にセットしておいた256キロビットアレイの全ビットに所定のパルス幅Tpを有するHR化電圧パルス10を1回のみ印加し、所定のHR状態に遷移できなかったHR化不良ビットの比率を算出し、この測定を、HR化電圧パルスのパルス幅Tpを変えながら繰り返し行った。ここで、アレイ全ビットにHR化電圧パルス10を1回のみ印加し、所定のHR状態に遷移できなかったHR化不良ビットの比率をHR化不良ビット率と定義する。図6は、HR化不良ビット率を縦軸に、その時のHR化電圧パルスのパルス幅Tp[a.u.]を横軸に表したものである。なお、この測定に用いた抵抗変化型不揮発性記憶装置の構成や、具体的な動作方法は後ほど抵抗変化型不揮発性記憶装置の項で説明するので、ここでは省略する。
図6から明らかなように、HR化電圧パルスのパルス幅Tpを拡大すると、HR化不良ビット率は指数関数的に顕著に低減できる。ここで、点Aに示すように、256キロビット中1ビット未満が不良となる、つまり、全256キロビットが、1回のHR化電圧パルス10の印加により、概ねHR化するためには、TpAより長いHR化電圧パルスのパルス幅Tpが必要であることが推定できる(点Aに対応するHR化不良ビット率が1/256kに対応するため)。このようにアレイ全ビットを安定的にHR化するためには、長いパルス幅を有するHR化電圧パルス10の印加が有効である。前述の偶発的に発生する強固な「LR張り付き」に対しても、第2回復電圧パルス21のパルス幅TpH(m)(m=1、2、・・・)を拡大した、新たな回復電圧パルスセット19の印加が同様に効果的と考えられる。
[第1実施形態の抵抗変化型不揮発性記憶装置の構成]
発明者らは、上述した「LR張り付き」からのHR化回復に関する基礎データから得られた知見に基づき、「LR張り付き」の状態にある不良セルに対して好適なHR化回復動作を実施する不揮発性記憶装置を考案した。以下、第1実施形態として、図17に示された抵抗変化素子を用いた1T1R型の不揮発性記憶装置について説明する。
図7は、第1実施形態に係る抵抗変化型不揮発性記憶装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図7に示す例において、第1実施形態の不揮発性記憶装置200は、抵抗変化型不揮発性記憶素子とスイッチ素子とが直列に接続されたメモリセルM11等と、メモリセルを駆動する駆動回路(周辺の回路)とを備えた抵抗変化型不揮発性記憶装置である。
ここで、抵抗変化型不揮発性記憶素子(例えば、抵抗変化素子100)は、第1電極(例えば、下部電極100a)と、第2電極(例えば、上部電極100c)と、第1電極および第2電極に挟まれた抵抗変化層(例えば、抵抗変化層100b)とを有し、抵抗変化層は、第1電極と接する第1の金属酸化物層(例えば、第1の金属酸化物層100b−1)と、第2電極と接し、第1の金属酸化物層よりも酸素不足度が小さい第2の金属酸化物層(例えば、第2の金属酸化物層100b−2)とを含む。また、抵抗変化型不揮発性記憶素子は、第1電圧(例えば、−VL)のパルス(例えば、低抵抗化電圧パルス11)が印加されると、第1情報(例えば、「0」)の記憶に用いられる第1抵抗状態(例えば、HR)から第2情報(例えば、「1」)の記憶に用いられる第2抵抗状態(例えば、LR)へと変化し、第1電圧とは極性が異なる第2電圧(例えば、VH)のパルス(例えば、高抵抗化電圧パルス10)が印加されると、第2抵抗状態(例えば、LR)から第1抵抗状態(例えば、HR)へと変化する特性を有するとする。
駆動回路には、メモリセルへの書き込みを行う書き込み回路206と、メモリセルからの読み出しを行うセンスアンプ204と、書き込み回路206によって抵抗変化型不揮発性記憶素子に第2電圧(例えば、VH)のパルスが印加された時に、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態(例えば、HR)に遷移できず、第2抵抗状態(例えば、LR)に留まる(例えば、「LR張り付き」が生じている)か否かの第1判定ステップを、センスアンプ204を用いて行う制御回路210とが含まれる。
制御回路210は、第1判定ステップにおいて抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態(例えば、HR)に遷移できず第2抵抗状態(例えば、LR)に留まると判定した場合に、(1)第1電圧と極性が同じである第1回復電圧(例えば、負電圧)パルス12と、第1回復電圧パルス12に後続し、第2電圧(例えば、VH)より振幅が大きく、かつ、第2電圧と極性が同じである第2回復電圧(例えば、正電圧)パルス13との2パルスで構成される回復電圧パルスセットを少なくとも1回、抵抗変化型不揮発性記憶素子に印加する回復ステップを行うように、書き込み回路206を制御する。
制御回路210は、さらに、回復電圧パルスセットの印加によって抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態(例えば、HR)に遷移したか否かを判定する第2判定ステップを、センスアンプ204を用いて行い、抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態(例えば、HR)に遷移するまで、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を繰り返してもよい。このとき、
第2回復電圧パルス13は、第2電圧のパルス(例えば、高抵抗化電圧パルス10)の幅よりも長いパルス幅を有してもよい。
制御回路210は、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を所定の回数繰り返しても抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態(例えば、HR)に遷移しない場合に、第2回復電圧パルス13を、より長いパルス幅を有する新たな第2回復電圧パルス21に変更した上で、回復ステップでの新たな回復電圧パルスセット19を、少なくとも1回、抵抗変化型不揮発性記憶素子に印加してもよい。
制御回路210は、回復ステップでの回復電圧パルスセットの印加および第2判定ステップでの判定を所定の回数繰り返しても抵抗変化型不揮発性記憶素子の抵抗状態が第1抵抗状態(例えば、HR)に遷移しない場合に、第2回復電圧パルスを、より長いパルス幅を有する新たな第2回復電圧パルス21に変更した上で、回復ステップでの新たな回復電圧パルスセット19の印加および第2判定ステップでの判定を、所定の回数繰り返してもよい。
新たな第2回復電圧パルス21は、変更前の第2回復電圧パルス13よりも振幅が大きくてもよい。
以下、このような不揮発性記憶装置200の詳細を説明する。
図7に示すように、第1実施形態に係る不揮発性記憶装置200は、半導体基板上に、メモリ本体部201を備えている。メモリ本体部201は、図17に示された1T1R型メモリセルで構成されたメモリセルアレイ202と、行選択回路208およびワード線ドライバ回路WLDおよびソース線ドライバ回路SLDからなる行ドライバ207と、列選択回路203と、データの書き込みを行うための書き込み回路206と、選択ビット線に流れる電流量を検出し、高抵抗状態をデータ「0」と判定し、また低抵抗状態をデータ「1」と判定するセンスアンプ204と、端子DQを介して入出力データの入出力処理を行うデータ入出力回路205と、を備える。
さらには、不揮発性記憶装置200は、書き込み用電源211として、高抵抗(HR)化用電源213および低抵抗(LR)化用電源212を備えている。
さらに、この不揮発性記憶装置200は、外部から入力されるアドレス信号を受け取るアドレス入力回路209と、外部から入力されるコントロール信号に基づいて、メモリ本体部201の動作を制御する制御回路210と、を備えている。
メモリセルアレイ202は、半導体基板の上に形成された、互いに交差するように配列された複数のワード線WL0、WL1、WL2、WL3、・・・および複数のビット線BL0、BL1、BL2、・・・と、ワード線WL0、WL1、WL2、WL3、・・・とビット線BL0、BL1、BL2、・・・との交点に対応してそれぞれ設けられたスイッチ素子としての複数のNMOSトランジスタN11、N12、N13、N14、・・・、N21、N22、N23、N24、・・・、N31、N32、N33、N34、・・・(以下、「トランジスタN11、N12、・・・」と表す)と、トランジスタN11、N12、・・・と1対1に直列接続された複数の抵抗変化素子R11、R12、R13、R14、・・・、R21、R22、R23、R24、・・・、R31、R32、R33、R34、・・・(以下、「抵抗変化素子R11、R12、・・・」と表す)と、を備える。トランジスタN11、N12、・・・と抵抗変化素子R11、R12、・・・との組のそれぞれが、メモリセルM11、M12、M13、M14、・・・、M21、M22、M23、M24、・・・M31、M32、M33、M34、・・・(以下、「メモリセルM11、M12、・・・」と表す)を構成している。
図7に示すように、トランジスタN11、N21、N31、・・・のゲートはワード線WL0に接続され、トランジスタN12、N22、N32、・・・のゲートはワード線WL1に接続され、トランジスタN13、N23、N33、・・・のゲートはワード線WL2に接続され、トランジスタN14、N24、N34、・・・のゲートはワード線WL3に接続されている。
また、トランジスタN11、N21、N31、・・・およびトランジスタN12、N22、N32、・・・はソース線SL0に共通に接続され、トランジスタN13、N23、N33、・・・およびトランジスタN14、N24、N34、・・・はソース線SL2に共通に接続されている。すなわち、ソース線SL0、SL2、・・・は、ワード線WL0、WL1、WL2、WL3、・・・に対して平行となり、ビット線BL0、BL1、BL2、・・・に対して交差(本実施の形態では、垂直方向)するように配置されている。
なお、上記の構成例では、ソース線は、ワード線と平行に配置されているが、ビット線と平行に配置してもよい。また、ソース線は、トランジスタに共通の電位を与える構成としているが、行選択回路/ドライバと同様の構成のソース線選択回路/ドライバを有し、選択されたソース線と非選択のソース線を異なる電圧(極性も含む)で駆動する構成としてもよい。
また、抵抗変化素子R11、R12、R13、R14、・・・はビット線BL0に接続され、抵抗変化素子R21、R22、R23、R24、・・・はビット線BL1に接続され、抵抗変化素子R31、R32、R33、R34、・・・はビット線BL2に接続されている。このように、本実施の形態におけるメモリセルアレイ202では、抵抗変化素子R11、R21、R31、・・・がNMOSトランジスタN11、N21、N31・・・を介さずに、対応するビット線BL0、BL1、BL2、・・・に直接接続される構成を取っている。
制御回路210は、HR化回復動作時には、所定の回復電圧の印加を指示するHR化回復信号を書き込み回路206へ出力する。また、データの書き込みサイクルにおいては、制御回路210は、データ入出力回路205に入力された入力データDinに応じて、書き込み用電圧の印加を指示する書き込み信号を書き込み回路206へ出力する。他方、データの読み出しサイクルにおいて、制御回路210は、読み出し動作を指示する読み出し信号をセンスアンプ204へ出力する。
行選択回路208は、アドレス入力回路209から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、行ドライバ207から(複数のワード線WL0、WL1、WL2、WL3、・・・のうちの選択されるワード線に対応するワード線ドライバ回路WLDから)、その選択されたワード線に対して、所定の電圧を印加する。
また同様に、行選択回路208は、アドレス入力回路209から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、行ドライバ207から(複数のソース線SL0、SL2、・・・のうちの選択されるソース線に対応するソース線ドライバ回路SLDから)、その選択されたソース線に対して、所定の電圧を印加する。
書き込み回路206は、制御回路210から出力されたHR化回復信号を受け取った場合、所定のパルス幅と所定の振幅とを有するHR化回復動作用の電圧パルス(例えば、第1回復電圧パルス12と第2回復電圧パルス13)を、列選択回路203により選択されたビット線に対して印加する。また、書き込み回路206は、制御回路210から出力された書き込み信号を受け取った場合、列選択回路203により選択されたビット線に対して通常動作時の書き込み用電圧パルス(例えば、高抵抗化電圧パルス10および低抵抗化電圧パルス11のいずれか一方)を印加する。
書き込み用電源211は、低抵抗化用のLR化用電源212と、高抵抗化用のHR化用電源213と、から構成される。LR化用電源212の出力電圧VL0は行ドライバ207に入力され、また、HR化用電源213の出力電圧VH0は書き込み回路206に入力されている。
図8は、図7におけるセンスアンプ204の詳細な構成の一例を示す回路図である。
センスアンプ204は、一例として、ミラー比が1対1のカレントミラー回路218とサイズが等しいクランプトランジスタ219および220と、基準回路221と、差動アンプ224と、から構成される。基準回路221は、通常動作用基準電流生成回路702と、HR化ベリファイ用基準電流生成回路703と、から構成される。
通常動作用基準電流生成回路702では、選択トランジスタ222と通常読み出し用の基準抵抗Rrefとが直列に接続されたブランチの一端が接地電位に接続され、他方の端子がクランプトランジスタ219のソース端子と接続されている。また、選択トランジスタ222のゲート端子には、読み出しイネーブル信号C1が入力され、読み出しイネーブル信号C1により、選択トランジスタ222は、導通/非導通状態を切り換えられる。
HR化ベリファイ用基準電流生成回路703では、選択トランジスタ223とHR化ベリファイ用の基準抵抗RH(RH>Rref)とが直列に接続されたブランチの一端が接地電位に接続され、他方の端子がクランプトランジスタ219のソース端子と接続されている。また、選択トランジスタ223のゲート端子には、HR化ベリファイイネーブル信号C2が入力され、HR化ベリファイイネーブル信号C2により、選択トランジスタ223は、導通/非導通状態を切り換えられる。
クランプトランジスタ219および220は、ゲート端子にクランプ電圧VCLP(VCLP<VDD)が入力される。クランプトランジスタ220のソース端子は、列選択回路203とビット線とを介して、メモリセルと接続される。クランプトランジスタ219および220のドレイン端子は、それぞれカレントミラー回路218を構成するトランジスタ225および226のドレイン端子と接続される。クランプトランジスタ220のドレイン端子電位は、差動アンプ224により基準電位VREFと比較され、さらに反転増幅され、センスアンプ出力SAOとしてデータ入出力回路205に伝達される。
図9は、このように構成されたセンスアンプ204の判定レベルを説明するための図である。センスアンプ204は、図9に示すように、高抵抗(HR)状態にあるメモリセルの抵抗値(=Rhr)と低抵抗(LR)状態にあるメモリセルの抵抗値(=Rlr)との間に、通常読み出し用の基準抵抗Rref(Rlr<Rref<Rhr)と、それより大きいHR化ベリファイ用の基準抵抗RH(Rref<RH<Rhr)との2つの判定レベルを有する。
なお、HR化ベリファイ用の基準抵抗RHは、抵抗変化素子のHR化書き込みが完了したか否かを判定するために、高抵抗状態HRの抵抗値よりも小さい抵抗値に設定される。例えば、高抵抗状態HRの抵抗値よりも小さく、かつ、高抵抗状態HRの抵抗値に近い値に設定される。また、通常読み出し用の基準抵抗Rrefは、抵抗変化素子が高抵抗状態にあるか低抵抗状態にあるかを判定するために、高抵抗状態HRの抵抗値より小さく、かつ、低抵抗状態LRの抵抗値よりも大きい抵抗値に設定される。
「LR張り付き」の状態にあるメモリセルの抵抗値はRvl(Rvl<Rlr)で表される。
[第1実施形態の抵抗変化型不揮発性記憶装置の動作、第1実施形態にかかる抵抗変化型不揮発性記憶素子の書き込み方法]
以上のように構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置について、まず、主要な回路ブロックの動作を説明し、その後、抵抗変化型不揮発性記憶装置の通常動作、導電パスの機能回復によるHR化回復動作、および導電パスの機能回復における第2回復電圧パルスのパルス幅拡大動作を説明する。
まず、図8に示されるセンスアンプ204の動作を説明する。抵抗変化素子をHR化するHR書き込み工程において、抵抗変化素子にHR化用正電圧パルスが印加された後、センスアンプ204が、列選択回路203とビット線を介して、対象メモリセルと接続される。メモリセルには、クランプ電圧VCLPからクランプトランジスタ219および220のしきい値電圧(Vth)分低下した電圧(VCLP−Vth)より大きな電圧は印加されない構成となっている。
基準回路221では、HR化ベリファイイネーブル信号C2により、選択トランジスタ223が活性化され、導通状態になり、HR化用の基準抵抗RHが選択される。選択トランジスタ222は、読み出しイネーブル信号C1により非活性化され、非導通状態にされる。その結果、基準回路221の出力として、基準電流Iref(=(VCLP−Vth)/RH)が流れる。
従って、基準電流Irefがカレントミラー回路218により転写され、負荷電流ILとしては、Irefとほぼ同じ電流が流れる(IL=Iref)。負荷電流ILとメモリセル電流Icの大小関係がクランプトランジスタ220で比較される。比較結果に応じて、差動アンプ224により、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧が基準電圧VREFより高くなるか低くなるかが検知され、差動アンプ224は、センスアンプ出力SAOを出力する。
ここで、HR化電圧パルス(電圧がVH)印加後の抵抗変化素子の抵抗値をRvl(「LR張り付き」の状態における抵抗値、Rvl<Rlr<RH<Rhr)とした場合に、メモリセル電流Ic(=(VCLP−Vth)/Rvl)が流れ、この時、負荷電流IL<メモリセル電流Icとなり、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧が、所定時間後に差動アンプ224に入力される基準電圧VREFよりも低くなり、センスアンプ出力SAOは、Hレベルを出力する。つまり、選択メモリセルが、HR化用の基準抵抗RHより低い「LR張り付き」の状態(Rvl)の場合には、センスアンプ204は、“1”、つまり、フェイルと判定する。
一方、選択メモリセルの抵抗値が、導電パスの機能回復により、HR化電圧パルス(電圧がVH)印加後の抵抗値がRhr(>RH)とHR化ベリファイ用の基準抵抗RHより高くなった場合には、メモリセル電流Ic(=(VCLP−Vth)/Rhr)が流れ、この時、負荷電流IL>メモリセル電流Icとなり、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧が、所定時間後に差動アンプ224に入力される基準電圧VREFよりも高くなり、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力する。つまり、選択メモリセルが、HR化ベリファイ用の基準抵抗RHより高い抵抗状態(Rhr)の場合には、センスアンプ204は、“0”、つまり、パスと判定し、対象メモリセルのHR化書き込みが完了していることを示す。
通常読み出し時には、基準回路221は、読み出しイネーブル信号C1により、選択トランジスタ222が活性化され、導通状態になり、通常読み出し用の基準抵抗Rrefが選択される。選択トランジスタ223は、HR化ベリファイイネーブル信号C2により非活性化され、非導通状態にされる。その結果、基準回路221の出力として、基準電流Iref(=(VCLP−Vth)/Rref)が流れる。
従って、基準電流Irefがカレントミラー回路218により転写され、負荷電流ILとしては、Irefとほぼ同じ電流が流れる(IL=Iref)。負荷電流ILとメモリセル電流Icの大小関係が比較される。その比較結果に応じて、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧が、差動アンプ224により基準電圧VREFより高くなるか低くなるかが検知され、差動アンプ224は、センスアンプ出力SAOを出力する。
ここで、高抵抗状態のメモリセルの抵抗値をRhr、低抵抗状態のメモリセルの抵抗値をRlr(Rhr>Rref>Rlr)とした場合に、選択メモリセルが高抵抗状態である時には、メモリセル電流Ic(=(VCLP−Vth)/Rhr)が流れ、この時、負荷電流IL>メモリセル電流Icとなり、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧が、差動アンプ224に入力される基準電圧VREFよりも高くなり、センスアンプ出力SAOは、Lレベルを出力する。つまり、選択メモリセルが通常読み出し用の基準抵抗Rrefより高い高抵抗状態(Rhr)の場合には、センスアンプ204は、“0”データと判定する。
一方、選択メモリセルが低抵抗状態である時には、メモリセル電流Ic(=(VCLP−Vth)/Rlr)が流れ、この時、負荷電流IL<メモリセル電流Icとなり、クランプトランジスタ220のドレイン端子電圧が、差動アンプ224に入力される基準電圧VREFよりも低くなり、センスアンプ出力SAOは、Hレベルを出力する。つまり、選択メモリセルが通常読み出し用の基準抵抗Rrefより低い低抵抗状態(Rlr)の場合には、センスアンプ204は、“1”データと判定する。
次に、図10を参照して、通常動作における高抵抗(HR)化と低抵抗(LR)化と通常読み出し、第1回復電圧パルスセット印加によるHR化回復動作における第1回復電圧パルス印加と第2回復電圧パルス印加とHR化ベリファイ読み出し、および、第2回復電圧パルスセット印加によるHR化回復動作における第1回復電圧パルス印加と新たな第2回復電圧パルス印加とHR化ベリファイ読み出し、の各動作の際にメモリセルに印加される電圧パルスと、メモリセルに当該電圧パルスを印加するためにワード線(WL)とソース線(SL)とビット線(BL)とに印加される電圧について説明する。ワード線(WL)とソース線(SL)とビット線(BL)とに印加される電圧は、以下に述べるように、LR化用電源212、およびHR化用電源213にて生成される。
図10において、通常動作時のLR化電圧パルス用の電圧VLは、HR化用電源213で生成され、書き込み回路206に供給される。通常動作時のLR化電圧パルス用の電圧VLは、LR化用電源212で生成され、ワード線ドライバ回路WLDからワード線に印加され、ソース線ドライバ回路SLDからソース線に印加される。
通常動作時のHR化電圧パルス用の電圧VHは、HR化用電源213で生成され、書き込み回路206に供給される。通常動作時のHR化電圧パルス用の電圧VLは、LR化用電源212で生成され、ワード線ドライバ回路WLDからワード線に印加される。
第1回復電圧パルスセット印加によるHR化回復動作において、第1回復電圧パルスの印加時におけるビット線BLの電圧は、電圧−Vrclの電圧パルスを表し、第2回復電圧パルスの印加時におけるビット線BLの電圧は、電圧Vrchの電圧パルスを表す。第1回復電圧パルスの印加時において、LR化用電源212で電圧Vrclが生成され、ワード線ドライバ回路WLDおよびソース線ドライバ回路SLDからそれぞれワード線およびソース線に印加される。HR化用電源213で電圧Vrclが生成され、書き込み回路206を介してビット線に印加される。なお、第2回復電圧パルスの印加において、ワード線WLの電圧Vrchとビット線BLの電圧Vrchとは、必ずしも一致させる必要はない。
第2回復電圧パルスセット印加によるHR化回復動作において、第1回復電圧パルスの印加時におけるビット線BLの電圧は、電圧−Vrcl3の電圧パルスを表し、第2回復電圧パルスの印加時におけるビット線BLの電圧は、電圧Vrch3の電圧パルスを表す。第1回復電圧パルスの印加時において、LR化用電源212で電圧Vrcl3が生成され、ワード線ドライバ回路WLDおよびソース線ドライバ回路SLDからそれぞれワード線およびソース線に印加される。HR化用電源213で電圧Vrcl3が生成され、書き込み回路206を介してビット線に印加される。なお、第2回復電圧パルスの印加において、ワード線WLの電圧Vrch3とビット線BLの電圧Vrch3とは、必ずしも一致させる必要はない。
通常読み出し時およびHR化ベリファイ読み出し時において、電圧Vreadは、センスアンプ204でクランプした読み出し用電圧である。電圧Vreadは、読み出しディスターブが発生しない(つまり、抵抗変化素子の抵抗状態が変化しない)ように調整された電圧値に対応している。VDDは不揮発性記憶装置200に供給される電源電圧に対応している。
以上の様に構成された抵抗変化型不揮発性記憶装置200の、データ書き込みサイクル、読み出しサイクル、およびHR化回復動作の一例について、図11A〜図11C、および、図7を参照しながら説明する。
図11A〜図11Cは、第1実施形態に係る不揮発性記憶装置200の動作例を示すタイミングチャートである。なお、ここでは、抵抗変化層が高抵抗状態の場合をデータ「0」に、低抵抗状態の場合をデータ「1」にそれぞれ割り当てると定義して、その動作例を示す。以下の説明は、1つのメモリセル(例えば、メモリセルM11)に対してデータの書き込みおよび読み出しをする場合についてなされている。
図11Aは、メモリセルM11に対する、通常動作時のLR化(データ「1」書き込み)サイクルのタイミングチャートを示している。このサイクルでは、メモリセルM11にLR化電圧パルス(電圧:−VL)が印加される。
このサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0およびソース線SL0を、それぞれ電圧0Vに設定する。次に選択ビット線BL0およびソース線SL0を、それぞれ電圧VLに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VLに設定するが、この時は、図7の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11は、まだオフ状態である。この段階では、図7のNMOSトランジスタN11のドレイン端子と、ソース端子はともに電圧VLが印加されているので、トランジスタのオン・オフに関係なく電流は流れない。
次に、選択ビット線BL0を時間tlの間、電圧0Vに設定し、その後、再度電圧VLとなるパルス波形を印加する。この段階で、図7のメモリセルM11には、LR化電圧(−VL)の電圧パルスが印加され、メモリセルM11の抵抗値が高抵抗値から低抵抗値に遷移する。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データ「1」の書き込み動作におけるLR化電圧パルスの印加が完了する。ただし、LR化サイクルとしては、この方法に限定されるわけではない。
HR化回復動作においても、上述した方法と同様にして、負電圧パルスである第1回復電圧パルスの印加が行われる。この場合には、図7のメモリセルM11には導電パスの機能回復のための負電圧Vrcl、または負電圧Vrcl3が印加される。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、HR化回復動作時の第1回復電圧パルスの印加が完了する。
つまり、ソース線およびワード線で行方向のメモリセルを選択しておき、その後、特定のビット線に負電圧方向のパルス波形を印加することで、ソース線、ワード線およびビット線で選択されたメモリセルの抵抗変化素子に負の電圧パルスを印加することで、低抵抗化が実行される。
図11Bは、メモリセルM11に対する、通常動作時のHR化(データ「0」書き込み)サイクルのタイミングチャートを示している。このサイクルでは、メモリセルM11にHR化電圧パルス(電圧:VH)が印加される。
このサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0およびソース線SL0をそれぞれ電圧0Vに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VLに設定し、図7の選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を時間thの間、電圧VHに設定し、その後、再度電圧0Vとなるパルス波形を印加する。この段階で、図7のメモリセルM11には正電圧パルスVHが印加され、メモリセルM11の抵抗値が低抵抗状態から高抵抗状態になるような書き込みが行われる。
HR化回復動作においても、用いる電圧が異なる点を除けば、上述した方法と同様にして、正電圧パルスである第2回復電圧パルス、または新たな第2回復電圧パルスの印加が行われる。この場合には、図7のメモリセルM11には導電パスの機能回復のための正電圧Vrch、または正電圧Vrch3が印加され、導電パスの機能回復によりフィラメントが高抵抗化され、メモリセルM11は「LR張り付き」から抵抗値が増加して、通常状態(通常動作時の駆動電圧パルス印加により抵抗変化が可能な状態)に移行する。
その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、通常動作時のデータ「0」の書き込み、HR化回復動作時の第2回復電圧パルス、または新たな第2回復電圧パルスの印加が完了する。
つまり、ソース線およびワード線で行方向のメモリセルを選択しておき、その後に、特定のビット線に正電圧方向のパルス波形を印加することで、ソース線、ワード線およびビット線で選択されたメモリセルの抵抗変化素子に正の電圧パルスを印加している。ただし、この方法に限定されるわけではない。
HR化回復動作では、前述したように、図11Aに記載の負電圧パルスの印加方法に従って第1回復電圧パルスが印加された後、引き続き、図11Bの正電圧パルスの印加方法に従って第2回復電圧パルス、または新たな第2回復電圧パルスの印加が行われ、さらに負電圧パルスと正電圧パルスのペアを複数回繰り返す。かかる動作により、「LR張り付き」の状態にあるメモリセルは、抵抗変化可能な状態に移行する。
図11Cは、メモリセルM11に対するデータの読み出しサイクルのタイミングチャートを示している。この読み出しサイクルにおいては、最初に選択ビット線BL0およびソース線SL0を電圧0Vに設定する。次に、選択するワード線WL0を電圧VDD(VDD>Vread)に設定し、選択メモリセルM11のNMOSトランジスタN11をオンする。
次に、選択ビット線BL0を時間trの間、読み出し電圧Vreadに設定し、センスアンプ204により、選択メモリセルM11に流れる電流値を検出することで、記憶されているデータがデータ「0」またはデータ「1」のいずれであるかが判定される。その後、ワード線WL0を電圧0Vに設定し、データの読み出し動作を完了する。
読み出し動作については、センスアンプ204において、通常動作時には読み出し用基準抵抗Rrefが用いられ、通常HR化動作、及びHR化回復動作時にはHR化ベリファイ用基準抵抗RHが用いられる(図8)。この点を除けば、図11Cに示される読み出し方法は、通常動作時と、通常HR化動作、及びHR化回復動作時とで同様である。ただし、HR化回復動作時において、負パルス印加と正パルス印加の都度、読み出し動作を実施する必要はない。
次に、抵抗変化型不揮発性記憶装置におけるHR化回復動作の一例について、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。図12に示すように、まず、選択アドレスに対応するメモリセル(以下、選択メモリセル)が低抵抗(LR)状態にあって高抵抗(HR)化したい場合、制御回路210による制御の下で、通常のHR化電圧パルス(電圧:VH)が選択メモリセルに印加され(S101)、次に、選択メモリセルの抵抗値Rcが基準抵抗RH以上(Rc≧RH)かどうかを判定するHR化ベリファイ読出しを行う(S102)。ここで、選択メモリセルの抵抗値RcがHR化ベリファイ用の基準抵抗RH以上(Rc≧RH)である場合には(S102でYes)、制御回路210は、「LR張り付き」が発生しておらず、正常にHR化書き込みが終了したと判断する。他方、選択メモリセルの抵抗値RcがHR化ベリファイ用の基準抵抗RHより小さい(Rc<RH)場合には(S102でNo)、制御回路210は、「LR張り付き」が発生していると判断し、HR化回復動作に入る。
HR化回復動作では、制御回路210は、第1回復電圧パルス12(例えば、電圧が−Vrcl)を選択メモリセルに印加し(S103)、次に、第2回復電圧パルス13(例えば、電圧がVrch)を選択メモリセルに印加してから(S104)、第2判定ステップとして、再度HR化ベリファイ読出しを行う(S102)。このような処理(回復電圧パルスセットの印加)が、第2判定ステップでHR化できたことが確かめられる(S102でYes)まで繰り返される。
ここで、ステップS101、ステップS104は、図11Bのタイミングチャートに対応し、ステップS103は、図11Aのタイミングチャートに対応し、ステップS2は、図11Cのタイミングチャートに対応している。
このように、本実施形態の「LR張り付き」からのHR化回復動作により、「LR張り付き」が撲滅可能となり、メモリセルアレイの抵抗変化動作が大幅に安定化し、書き換え寿命の長寿命化が可能となる。
[LR化回復動作フローチャートの変形例]
次に、図12に示したHR化回復動作によってもメモリセルのHR化回復が見られない強固な「LR張り付き」が発生する場合における、新たな回復ステップを用いたHR化回復動作について、図13に示すフローチャートを参照しながら説明する。図13において、図12と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。ここでは、HR化電圧パルスと同じ極性の電圧パルスである新たな第2回復電圧パルス21を所定回数印加する毎に、新たな第2回復電圧パルス21のパルス幅TpH(m)(m=1、2、3、・・・、TpH(1)<TpH(2)<TpH(3)<・・・)を、HR化回復するまで順次拡大していく構成を特徴としている。すなわち、所定回数印加してもHR化回復しない場合には、mに1を加えて、新たなパルス幅TpH(m)をパルス幅とする新たな第2回復電圧パルス21を印加する。
図13に示すように、第1判定ステップでの判定結果として、選択メモリセルの抵抗値RcがHR化ベリファイ用の基準抵抗RHより小さい(Rc<RH)場合には(S202でNo)、制御回路210は、「LR張り付き」が発生していると判断し、HR化回復動作に入る。
HR化回復動作では、まず、制御回路210は、回復ステップとして、第1回復電圧パルス12(例えば、電圧が−Vrcl)を選択メモリセルに印加し(S204)、次に、第2回復電圧パルス13(例えば、電圧がVrch)を選択メモリセルに印加してから(S205)、再度HR化ベリファイ読み出しを行う(S202)。このような処理(回復電圧パルスセットの印加)が、HR化できたことが確かめられる(S202でYes)か、または所定の上限回数に到達する(S203でYes)まで繰り返される。
HR化できないまま前述の処理が所定の上限回数繰り返された場合は(S203でYes)、制御回路210は、続いて、回復ステップとして、第1回復電圧パルス20(電圧:−Vrcl3)の印加(S207)、および新たな第2回復電圧パルス21(電圧:Vrch3、パルス幅:TpH(1))の印加(S208)により、HR化回復を試み、第3判定ステップとして、再度HR化ベリファイ読出しを行う(S202)。このような処理(新たな回復電圧パルスセット19の印加:追加回復処理)が、HR化できたことが確かめられる(S202でYes)か、またはパルス幅TpH(1)における所定の上限回数に到達する(S206でYes)まで繰り返される。HR化できないまま前述の処理が所定の上限回数繰り返された場合は(S206でYes)、制御回路210は、mを+1増加させ(S209)、新たな第2回復電圧パルスのパルス幅をTpH(2)(>TpH(1))に拡大し、再度、第1回復電圧パルス20(電圧が−Vrcl3)の印加(S207)、および新たな第2回復電圧パルス21(電圧がVrch3、パルス幅TpH(2))の印加(S208)により、HR化回復を試み、HR化ベリファイ読出しを行う(S202)。このような処理(追加回復処理)が、第2回復電圧パルス幅TpH(m)を拡大していきながら、第3判定ステップでHR化できたことが確かめられる(S202でYes)まで繰り返される。
なお、ステップS203およびS206の繰り返し上限回数は、必要に応じて、1回でもよい。
ここで、ステップS208は、図11Bのタイミングチャートに対応(th=TpH(m))し、ステップS207は、図11Aのタイミングチャートに対応している。
このように、本変形例に係る「LR張り付き」からのHR化回復動作(追加回復処理)により、強固な「LR張り付き」も撲滅可能となり、メモリセルアレイの抵抗変化動作が大幅に安定化し、書き換え回数のさらなる向上が可能となる。
なお、新たな第2回復電圧パルス21の最初のパルス幅TpH(1)は、通常のHR化電圧パルス10(電圧:VH)のパルス幅より大きくてもよい。例えば、通常のHR化電圧パルス10(電圧:VH)のパルス幅が50nsである場合には、新たな第2回復電圧パルス21のパルス幅の設定として、TpH(1)=100ns、TpH(2)=500ns、TpH(3)=1μs、TpH(4)=5μs、TpH(5)=10μs、TpH(6)=50μs、・・・と指数関数的に増大させて設定すると、短時間で効率的に「LR張り付き」を回復できる。
また、図13に示すHR化回復動作によっても選択メモリセルのHR化回復が見られない場合は、そのメモリセルを回復不可能と判断して、周知の代替処理(例えば、冗長救済処理(redundancy)や誤り訂正処理(error correction)等)を行うなどの処置を行ってもよい。
また、図13に示すHR化回復動作においては、書き込み時間短縮のため、必要に応じて、回復電圧パルスセットの印加(ステップS203、S204、S205)を無くしても良い。つまり、「LR張り付き」からの回復として、最初に行われる回復ステップから、第2回復電圧パルスのパルス幅を通常のHR化電圧パルスのパルス幅よりも大きくしてもよい。
また、図7に示した記憶装置の構成では、スイッチ素子であるNMOSトランジスタに1つの抵抗変化素子を接続した、所謂1T1R型メモリセルであったが、本実施形態は、この1T1R型メモリセルに限定されるものではない。例えば、スイッチ素子として、双方向ダイオードを用いた1D1R型メモリセルに適用しても良い。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。