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JP4649109B2 - カンジダ菌種の細胞における有機生成物の産生のための方法及び材料 - Google Patents

カンジダ菌種の細胞における有機生成物の産生のための方法及び材料 Download PDF

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Description

本出願は、2000年11月22日出願の米国特許仮出願番号第60/252,541号に基づく優先権を主張する、2001年11月23日出願の米国特許出願番号第09/992,430号の一部継続出願である。
工業的に重要な有機生成物を合成するための微生物の使用は広く知られている。有機生成物を産生するための生合成アプローチは、大規模化学合成に比べて極めて効率的でありうる。有機生成物を製造するために生合成アプローチが化学合成アプローチに対して有しうる利点は、より迅速でより効率的な生成物収率、異性体純度及び低いコストを含む(Thomasら、2002、Trends Biotechnol.20:238−42参照)。
乳酸は、化学的処理及び合成、化粧品、薬剤、プラスチック、及び食品産生における使用を含む、幅広い工業上の適応性を持つ。乳酸は比較的単純な有機分子であり、化学合成によって又は微生物中での発酵(生合成)によって産生することができる。微生物の遺伝子操作がより一層進歩すると共に、乳酸産生のための発酵工程が化学合成よりも商業的に選択されるようになってきた。この選択の1つの理由は、遺伝的に修飾された微生物を使用することは光学的に純粋な(すなわちL(+)又はD(−)異性体のいずれか)生成物の産生を可能にするということである。そのような方法は、ラセミ体混合物を分離する必要性を取り除き、それによってコストを低下させる。
それにもかかわらず、有機生成物を産生するための微生物の使用にはある種の制限がある。例えば、細菌は発酵条件下で大量の有機生成物を産生するが、細菌自体及び増殖培地中の有機生成物の蓄積は細菌の増殖を阻害する又は細胞死を引き起こすことがありうる。好酸性酵母、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの、より丈夫な生物を構築して産生のために使用するときであってさえも、有機生成物は細胞増殖の抑制を導き、有機生成物の全体的収率を低下させうる。そこで、当技術分野では、バイオリアクターにおける使用のため、及び工業的に重要な有機生成物を産生するための他の生合成方法に関して、遺伝子操作しやすい強健な微生物の必要性が依然として存在する。
発明の概要
本発明は、生合成によって有機生成物を産生するための方法と試薬、特に細胞及び組換え細胞を提供する。本発明は特に、有機生成物の合成のために有用な少なくとも1つのタンパク質をコードする組換え核酸構築物、前記構築物を含む細胞、特にクラブトリー(Crabtree)陰性細胞、そのような細胞を作製するための方法、そのような細胞を培養するための方法、及び数多くの有機生成物をインビボで合成するための方法と試薬を提供する。
1つの局面では、本発明は、有機生成物の合成のために有用な少なくとも1つのタンパク質をコードする配列を含む組換え核酸構築物を提供する。好ましい実施形態では、前記組換え核酸構築物は乳酸デヒドロゲナーゼをコードする。この局面の1つの実施形態では、前記組換え核酸構築物は、有機生成物の合成のために有用なタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含み、そのプロモーターは、カンジダ菌種、好ましくは前記組換え核酸構築物を含むカンジダ菌種からのプロモーターである。
もう1つの局面では、本発明は、有機生成物の合成のために有用な少なくとも1つのタンパク質をコードする組換え核酸構築物を含む、カンジダ属からの形質転換クラブトリー陰性細胞を提供する。好ましい実施形態では、前記組換え核酸構築物は乳酸デヒドロゲナーゼをコードする。この局面の1つの実施形態では、前記組換え核酸構築物は、有機生成物の合成のために有用なタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含み、そのプロモーターは、カンジダ菌種、好ましくは前記組換え核酸構築物を含むカンジダ菌種からのプロモーターである。もう1つの局面では、本発明は、ピルビン酸をエタノールに代謝する効率を低下させるように遺伝的に操作されたカンジダ菌種の細胞を提供する。本発明のこの局面の好ましい実施形態では、細胞は、有機生成物の合成のために有用な少なくとも1つのタンパク質をコードする本発明の組換え核酸構築物をさらに含む。好ましい実施形態では、前記組換え核酸構築物は乳酸デヒドロゲナーゼをコードする。この局面の1つの実施形態では、前記組換え核酸構築物は、有機生成物の合成のために有用なタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含み、そのプロモーターは、カンジダ菌種、好ましくは前記組換え核酸構築物を含むカンジダ菌種からのプロモーターである。
もう1つの局面では、本発明は、本発明の組換え核酸構築物を含むカンジダ属からのクラブトリー陰性細胞を、前記有機生成物の生合成を可能にする条件下で発酵させることを含む、有機生成物を産生するための方法を提供する。本発明のこの局面の好ましい実施形態では、前記有機生成物は乳酸である。好ましい実施形態では、前記組換え核酸構築物は乳酸デヒドロゲナーゼをコードする。この局面の1つの実施形態では、前記組換え核酸構築物は、有機生成物の合成のために有用なタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含み、そのプロモーターは、カンジダ菌種、好ましくは前記組換え核酸構築物を含むカンジダ菌種からのプロモーターである。
本明細書で提供される形質転換細胞が「クラブトリー陰性(Crabtree negative)」表現型を示すことは、本発明の1つの利点である。クラブトリー陰性生物は、増進する発酵状態へと誘導される能力を特徴とする。天然に生じる生物及び遺伝的に修飾された生物の両方が、クラブトリー陰性と特徴づけることができる。クラブトリー効果は、微生物を高濃度グルコース(例えば>5mMグルコース)の存在下において好気条件下で培養する場合において、微生物における酸素消費抑制と定義される。クラブトリー陽性生物は、グルコースの存在下で酸素のアベイラビリティーに関わりなく発酵(呼吸ではなく)し続けるが、クラブトリー陰性生物はグルコースを介した酸素消費の抑制を示さない。この特性は、細胞が、高い基質濃度で増殖するが酸化的リン酸化の有益なエネルギー効果を保持することを可能にするので、有機生成物合成のために有用である。多くの酵母及び真菌がクラブトリー陰性表現型を有しており、非限定的な例としてKluyveromyces属、ピヒア(Pichia)属、Hansenula属、Torulopsis属、Yamadazyma属、及びカンジダ属を含む。
当技術分野では酵母及び二相性真菌として様々に特徴付けられているカンジダ菌種は、クラブトリー陰性表現型を示しうる(Franzblau & Sinclair,1983,Mycopathologia 82:185−190)。一部の種は、グルコースならびに他の炭素源を発酵させることができ、高温(すなわち37℃以上)で増殖することが可能であり、低pHストレスに耐性でありうる。カンジダ種は、有機生成物製造の生合成方法において使用される生物の望ましい特性のいくつかを備える:遺伝子操作の受け入れやすさ、多様な炭素源を処理する能力、クラブトリー陰性表現型、及び様々な環境ストレスの下で増殖する能力。
本発明の特定の好ましい実施形態は、特定の好ましい実施形態についての下記のより詳細な説明及び特許請求の範囲より明らかになるであろう。
発明の詳細な説明
本明細書で使用する、「有機生成物(organic product)」は、炭素原子を含むあらゆる化合物である。有機生成物の非限定的な例は、カルボン酸塩(例えば乳酸塩、アクリル酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩、α−ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、オキサロ酢酸塩)、炭水化物(例えばD−キシロース)、アルジトール(例えばキシリトール、アラビトール、リビトール)、アミノ酸(例えばグリシン、トリプトファン、グルタミン酸)、脂質、エステル、ビタミン(例えばL−アスコルビン酸塩)、ポリオ−ル(例えばグリセロール、1,3−プロパンジオール、エリトリトール)、アルデヒド、アルケン、アルキン、及びラクトンを含む。従って、有機生成物は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上の炭素原子を含みうる。さらに、有機生成物は、約1,000ダルトン未満(例えば約900、800、700、600、500、400、300、200又は100ダルトン未満)である分子量を有しうる。例えば、D−キシロース(C10)は150ダルトンの分子量を有する有機生成物である。さらに、有機生成物は発酵生成物でありうる。
本明細書で使用する用語「発酵生成物(fermentation product)」は、発酵工程によって産生されるあらゆる有機生成物を表す。一般に、発酵工程は、ATPの形態でエネルギーを産生する、有機化合物(例えば炭水化物)の、エチルアルコールなどの化合物への嫌気性酵素変換を含みうる。細胞発酵は、分子酸素ではなく有機生成物を電子受容体として使用するという点で細胞呼吸とは異なる。発酵生成物の非限定的な例は、酢酸塩、エタノール、酪酸塩及び乳酸塩である。
有機生成物はピルビン酸塩から誘導することもできる。本明細書で使用する「ピルビン酸塩由来生成物(pyruvate−derived product)」は、15以下の酵素段階の中でピルビン酸塩から合成されるあらゆる化合物を表す。1つの酵素段階は、酵素活性を有する1つのポリペプチドによって触媒される何らかの化学反応又は一連の反応とみなされる。そのようなポリペプチドは、1又は複数の反応の完了時にそれ自体は破壊されずに又は変化せずに、他の物質の化学反応を触媒するあらゆるポリペプチドである。これらのポリペプチドは、アコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ、コハク酸チオキナーゼ、コハク酸デビドロゲナーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、クエン酸シンターゼ、2,5−ジオキソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、5−デヒドロ−4−デオキシ−D−グルカレートデヒドロゲナーゼ、グルカレートデヒドラターゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、グルクロノラクトンレダクターゼ、L−グロノラクトンオキシダーゼ、2−デヒドロ−3−デオキシ−D−ペンタン酸アルドラーゼ、キシロン酸デヒドラターゼ、キシロノラクトナーゼ、D−キシロースデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、CoA−トランスフェラーゼ、アシルCoAデヒドラターゼ、又はアクリリル−CoAヒドラターゼに関連する活性の非限定的な例を含む、あらゆるタイプの酵素活性を有しうる。
本発明のカルボキシレート生成物は、遊離酸又は塩の形態である可能性があり、交換可能に言及されうる(例えば「乳酸」又は「乳酸塩」)。特に異なる記載がない限り、いずれかの用語の使用は他方を包含するとみなされる。好ましい実施形態では、本発明は遊離酸形態のカルボキシレートを提供する。
用語「核酸配列(nucleic acid sequence)」又は「核酸分子(nucleic acid molecule)」は、DNA又はRNA分子を表す。この用語は、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニル−シトシン、プソイドイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、及び2,6−ジアミノプリンなどの(但しこれらに限定されない)、DNA及びRNAのあらゆる既知の塩基類似体から形成される分子を包含する。
用語「ベクター(vector)」は、タンパク質コード情報を宿主細胞に伝達するために使用されるあらゆる分子(例えば核酸、プラスミド又はウイルス)を表すために使用される。
用語「発現ベクター(expression vector)」は、宿主細胞の形質転換に適しており、挿入した異種核酸配列の発現を指令する及び/又は制御する核酸配列を含むベクターを表す。発現は、転写、翻訳、及びイントロンが存在する場合はRNAスプライシングなどの工程を含むが、これらに限定されない。
用語「作動可能に連結された(operably linked)」は、本明細書では、配列が互いに連結されており、それらの通常の機能を果たすように配置又は構築されている、配列の配置を表すために使用される。従って、タンパク質をコードする配列に作動可能に連結された配列は、そのコード配列に隣接して、コード配列の複製及び/又は転写を生じさせうる。例えば、コード配列は、プロモーターがそのコード配列の転写を指令することができるとき、そのプロモーターに作動可能に連結されている。フランキング配列は、それが正しく機能する限り、コード配列に隣接する必要はない。従って、例えば、介在非翻訳転写配列がプロモーター配列とコード配列との間に存在することが可能であり、そのプロモーター配列は、それでもやはりコード配列に「作動可能に連結されている」とみなすことができる。
用語「宿主細胞(host cell)」は、核酸配列が導入された又は核酸配列で形質転換された、又は核酸配列で形質転換することができ、その後対象選択遺伝子を発現することができる、細胞を表すために使用される。この用語は、その子孫がもとの親と形態的に又は遺伝的形質において同一であるか否かに関わらず、親細胞の子孫を包含する。
本明細書で使用する用語「内因性(endogenous)」は、外来性ではない、すなわちその細胞に導入されたのではないゲノム材料を表す。そのような内因性ゲノム材料は通常、生物、組織又は細胞内で発生し、組換え技術によって挿入又は修飾されない。内因性ゲノム材料は、天然に生じる変異体を包含する。
本明細書で使用する用語「外来性(exogenous)」又は「異種(heterologous)」は、内因性でないゲノム材料、すなわちその細胞に導入された物質を表す。典型的には、そのような物質は組換え技術によって挿入又は修飾される。
本明細書で使用する用語「遺伝的に修飾された(genetically modified)」は、そのゲノムが遺伝物質の付加、置換又は欠失という非限定的な例を含む方法によって修飾された生物を表す。そのような遺伝子操作の方法は当技術分野においてよく知られており、1個又は複数の個別ヌクレオチド残基の挿入、欠失及び置換を含むランダム突然変異誘発、点突然変異、ノックアウトテクノロジー、ならびに、安定な及び一過性の形質転換体の両方を含む、組換え技術を用いた核酸配列による生物の形質転換を含むが、これらに限定されない。
用語「嫌気性(anaerobic)」及び「嫌気的条件(anaerobic conditions)」は、溶液、典型的には培養培地中の溶解酸素の量が検出不能である(すなわち約0%)であるか、あるいは大気中の酸素の量が約0%から2%までであることを意味するとみなされる。
ベクター及び宿主細胞
対象有機生成物の合成のために有用なポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸分子は、標準的な結合技術(例えば、Sambrookら、2001、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York参照)を用いて適切なクローニング又は発現ベクターに挿入される。そのベクターは、典型的には使用する個々の宿主細胞において機能性である(すなわちそのベクターが、遺伝子の複製、増幅及び/又は発現が起こりうるように宿主細胞機構と適合性である)ように選択される。対象有機生成物の合成のために有用なポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸分子は、あらゆる適切な細胞中で増幅し、あらゆる宿主細胞において、最も好ましくはクラブトリー陰性宿主細胞において発現することができる。
好ましいクラブトリー陰性宿主細胞は、C.sonorensis、C.methanosorbosa、C.diddensiae、C.parapsilosis、C.naeodendra、C.krusei、C.blankii、及びC.entomophilaという非限定的な例を含む、カンジダ属からのものを含む。
フランキング配列(プロモーター及びターミネーターを含む)は、同種(すなわち宿主細胞と同じ種及び/又は菌株から)、異種(すなわち宿主細胞の種又は菌株以外の種から)、雑種(すなわち2つ以上のソースからのフランキング配列の組合せ)、又は合成である可能性があり、あるいはフランキング配列は、対象遺伝子の発現を調節するために正常に機能する天然配列でもよい。それ自体、フランキング配列のソースは、そのフランキング配列が宿主細胞機構において機能性であり、宿主細胞機構によって活性化されうることを条件として、いかなる原核又は真核生物、脊椎又は無脊椎生物、若しくは植物であってもよい。
本発明のベクターにおいて有用なフランキング配列は、当技術分野でよく知られているいくつかの方法のいずれかによって入手しうる。典型的には、本明細書で有用なフランキング配列は、マッピングによって及び/又は制限エンドヌクレアーゼ消化によってあらかじめ特定しておき、適切な制限エンドヌクレアーゼを用いて生物学的ソースから単離することができる。一部の例では、フランキング配列の完全なヌクレオチド配列が既知であることがある。そのような場合は、核酸合成又はクローニングのための、当業者によく知られた方法ならびに本明細書で述べる方法を用いて、そのフランキング配列を合成してもよい。
フランキング配列の全部又は一部だけが既知である場合は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのインビトロ増幅手法を用いて、及び/又はゲノムライブラリーを適切なオリゴヌクレオチド及び/又は同じか若しくは別の種からのフランキング配列フラグメントを用いてスクリーニングすることによって、完全な機能性フランキング配列を入手しうる。フランキング配列が既知でない場合は、フランキング配列を含有するDNAのフラグメントを、例えばコード配列又は1個若しくは複数の別の遺伝子を含有しうる、より大きなDNAの断片から単離しうる。単離は、制限エンドヌクレアーゼ消化によって適切なDNAフラグメントを生成し、その後アガロースゲル精製、Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(Chatsworth、CA)、又は当業者に既知の他の方法を用いて単離することによって実施しうる。この目的を達成するための適切な酵素の選択は、当業者には容易に明白である。
選択マーカー遺伝子又はエレメントは、選択培地で増殖する宿主細胞の生存及び増殖のために必要なタンパク質をコードする。有用な選択マーカー遺伝子は、(a)抗生物質又は他の毒素、例えばアンピシリン、テトラサイクリン又はカナマイシンに対する耐性を宿主細胞に与える;(b)Leu2欠損などの宿主細胞の栄養要求欠損を補う;又は(c)天然培地からは得られない必須栄養素を供給する、タンパク質をコードする。好ましい選択マーカーは、ゼオシン耐性遺伝子、G418耐性遺伝子及びヒグロマイシン耐性遺伝子の非限定的な例を含む。
発現する遺伝子を増幅するために他の選択遺伝子を使用してもよい。増幅は、増殖にとって重要なタンパク質を産生するためにより需要の大きい遺伝子を、連続する世代の組換え細胞の染色体内で縦列反復する過程である。哺乳類細胞のための適切な選択マーカーの例は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)及びプロモーターなしチミジンキナーゼを含む。哺乳類細胞形質転換体は、その形質転換体だけが、ベクター内に存在する選択遺伝子によって独自に生存に適応する、選択圧下に置く。選択圧は、培地中の選択物質の濃度を漸次上昇させ、それによって選択遺伝子と有機生成物を合成するために有用なポリペプチドをコードするDNAとの両方の増幅を導く条件下で、形質転換細胞を培養することによって課せられる。
本発明の発現及びクローニングベクターは、典型的には、宿主生物によって認識され、そして有機生成物を合成するために有用なポリペプチドをコードする分子に作動可能に連結された、プロモーターを含む。プロモーターは、構造遺伝子の翻訳開始コドンの上流(すなわち5’側)に位置する非転写配列(一般には約100から1000bp以内)であり、構造遺伝子の転写を制御する。プロモーターは慣例的に2つのクラスのいずれかに分類される:誘導的プロモーター及び構成的プロモーター。誘導的プロモーターは、栄養素の存在若しくは不存在又は温度変化などの培養条件の何らかの変化に応答して、それらの制御下でDNAからの高いレベルの転写を開始させる。構成的プロモーターは、他方で、連続的な遺伝子産物の産生を開始させる;すなわち、遺伝子発現の調節はほとんど若しくは全く存在しない。様々な潜在的宿主細胞によって認識される、両方のプロモータータイプの数多くのプロモーターは、当技術分野においてよく知られている。適切なプロモーターは、制限酵素消化によってソースDNAからそのプロモーターを取り出すことにより、又はインビトロ増幅によってプロモーターフラグメントを作製し、所望のプロモーター配列をベクターに挿入することにより、有機生成物を合成するために有用なポリペプチドをコードするDNAに作動可能に連結する。有機生成物を合成するために有用なポリペプチドをコードする核酸分子の増幅及び/又は発現を指令するために、天然プロモーター配列を使用してもよい。しかしながら、異種プロモーターが、天然プロモーターに比べてより大きな転写及び発現タンパク質のより高い収率を可能にし、且つ使用のために選択した宿主細胞系と適合性である場合には、異種プロモーターが好ましい。
酵母宿主細胞に関する使用のために適切なプロモーターもまた、当技術分野においてよく知られており、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、トリオースデヒドロゲナーゼ(TDH)、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、及びアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を含む酵母遺伝子からのプロモーターの非限定的な例を含む。本発明の好ましいプロモーターは、PGK及びTDHプロモーターを含む。プロモーターに比較的近接して位置するときに発現を増加させる配列である酵母エンハンサーは、酵母プロモーターと共に好都合に使用される。
細胞を形質転換する方法は当技術分野においてよく知られており、エレクトロポレーション法、及び塩化カルシウム又は酢酸リチウムに基づく形質転換法などの非限定的な例を含みうる。
本発明の実施例で開示するベクターのいくつかはこれまでに構築されており、PCT/US01/44041号の出願において述べられている。簡単に述べると、ベクターpMI234、pMI238、pMI246、pMI247、及びλファージ中のPDC2を次のように構築した。
C.sonorensis遺伝子の単離(λファージ中のPDC2):C.sonorensisのゲノムDNA(ATCC アクセッション番号32109)を、Easy DNAキット(Invitrogen)を使用してYPD中で一晩増殖させた細胞から単離した。DNAをSau3Aで部分消化し、スクロース密度勾配遠心分離によってサイズ分別した(Sambrookら、同上)。約22kbのDNAフラグメントは、BamHI消化し、ホスファターゼ処理したλファージDASH(商標)ベクターアーム(Stratagene)に連結し、そして連結混合物は、Gigapack II Gold Packaging Extract(Stratagene)を用いてλファージ粒子に充填した。大腸菌(E.coli)MRA P2に感染させるためにそのλファージ粒子を使用した。
ライブラリーからC.sonorensis遺伝子を単離するために使用するプローブは、Dynazyme EXTポリメラーゼ(Finnzymes、Espoo,Finland)、配列特異的プライマー、及び鋳型としてS.cerevisiae、C.albicans又はC.sonorensisのゲノムDNAを使用するPCR増幅によって、次のように調製した。
●S.cerevisiae TDH1遺伝子に対応するオリゴヌクレオチド、TGT CAT CAC TGC TCC ATC TT(配列番号:17)及びTTA AGC CTT GGC AAC ATA TT(配列番号:18)を使用して、ゲノムS.cerevisiae DNAからのTDH遺伝子のフラグメントを増幅した。
●C.albicans PGK1遺伝子に対応するオリゴヌクレオチド、GCG ATC TCG AGG TCC TAG AAT ATG TAT ACT AAT TTG C(配列番号:19)及びCGC GAA TTC CCA TGG TTA GTT TTT GTT GGA AAG AGC AAC(配列番号:20)を使用して、ゲノムC.albicansDNAからのPGK1遺伝子のフラグメントを増幅した。
●C.sonorensis 26S rRNAに対応するオリゴヌクレオチド、TGG ACT AGT AAA CCA ACA GGG ATT GCC TTA GT(配列番号:21)及びCTA GTC TAG AGA TCA TTA CGC CAG CAT CCT AGG(配列番号:22)を使用して、C.sonorensisゲノムDNAからの26S rDNA遺伝子のフラグメントを増幅した。
●S.cerevisiae PDC1、Pichia stipitis PDC1及びPDC2の間で保存されている、ピルビン酸デカルボキシラーゼアミノ酸配列の部分、WAGNANELNA(配列番号:25)とDFNTGSFSYS(配列番号:26)、ならびにCandida albicans PDC1及びPDC3の不完全な配列に基づき、オリゴヌクレオチド、CCG GAA TTC GAT ATC TGG GCW GGK AAT GCC AAY GAR TTR AAT GC(配列番号:23)及びCGC GGA TTC AGG CCT CAG TAN GAR AAW GAA CCN GTR TTR AAR TC(配列番号:24)を設計した。これらのプライマーを使用して、C.sonorensisゲノムDNAからのPDC遺伝子のフラグメントを増幅した。これらのプライマーによるPCR反応は、PDC1及びPDC2と称される、異なるヌクレオチド配列の2つのフラグメントを生成した。
●真菌アルコールデヒドロゲナーゼ配列において見られる保存領域に基づき、オリゴヌクレオチド、TCTGTTMCCTACRTAAGA(配列番号:27)及びGTYGGTGGTCACGAAGGTGC(配列番号:28)を設計した。これらのプライマーを使用して、C.sonorensisゲノムDNAからのADH遺伝子のフラグメントを増幅した。これらのプライマーによるPCR反応は、ADH1、ADH2及びADH3と称される、異なるヌクレオチド配列の3つのフラグメントを生成した。
上述したように生成したPCRフラグメントを用いてライブラリーをスクリーニングし、Random Primed Labeling Kit(Boehringer Mannheim)を用いて生成物を32P α−dCTPで標識した。放射性プローブとのハイブリダイゼーションは、50%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、5×SSPE、0.1%SDS、100μg/mL ニシン精子DNA、1μg/mL ポリA DNAを含む溶液中、42℃で一晩インキュベートすることによって実施した。TDH1、PGK1及びPDC1プローブについては、ハイブリダイゼーション後にフィルターを2×SSCの溶液中室温で5分間洗浄して繰り返し、次いで1×SSC−0.1%SDSの溶液中68℃で30分間の洗浄を2回反復した。rDNA及びPDC2プローブについてのハイブリダイゼーション後洗浄は、2×SSC中室温で5分間を2回、次に0.1×SSC−0.1%SDS中68℃で30分間の洗浄を2回実施した。
製造者(Stratagene)の指示に従って陽性プラークを単離し、精製した。DNアーゼI処理を除くこと及びPEG6000を用いて溶解宿主細胞から放出されたファージ粒子を沈殿させることによって修正した、従来の方法(Sambrookら、同上)を使用して、バクテリオファージを精製した。次に前記ファージ粒子をSM緩衝液に溶解し、クロロホルムで抽出して、Kontron TST41.14ローターにおいて25,000rpmで2時間遠心分離してペレット化し、再びSM緩衝液に溶解した。ファージ粒子をプロテイナーゼKで消化し、次にフェノール抽出して、エタノール沈殿させることにより、λファージDNAを単離した。
C.sonorensisゲノムDNA挿入物を、配列特異的プライマーを使用して部分的に配列決定した。既知の遺伝子又はタンパク質との相同性を使用して、ファージ挿入物によって全体的に又は部分的にコードされる遺伝子を特定するために、それらから推定したヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を配列データベースと比較した。得られた配列は、各々のクローンを単離するために使用されるプローブに依存して、真菌rDNA、ホスホグリセリン酸キナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、又はピルビン酸デカルボキシラーゼと有意の類似性を有していた。C.sonorensis PGK1、PDC1及びTDH1の配列をコードするオープンリーディングフレームの開始点及び終止点をそれによって特定した。
(「基礎単位(building−block)」ベクター、pMI203、pMI205(C.sonorensisについてのゼオシン耐性ベクター)、pVR24及びpVR27)
実施例で述べるベクターの構築にこれらのプラスミドを使用し、またこれらはPCT出願PCT/US01/44041の中で記述されている。これらのベクターの構築を簡単に述べる。
S.cerevisiae TEF1プロモーターの制御下にあるゼオシン耐性マーカーを含むプラスミドpTEF1/Zeo(Invitrogen)は、相同的組換えの標的を提供するためにC.sonorensis rDNAフラグメントを付加することによって修飾した。C.sonorensis 26S rRNA(Genbank アクセッション番号U70185)に対応する、下記のオリゴヌクレオチドプライマー:
TGG ACT AGT AAA CCA ACA GGG ATT GCC TTA GT(配列番号:29)及び
CTA GTC TAG AGA TCA TTA CGC CAG CAT CCT AGG(配列番号:30)
を使用してC.sonorensisゲノムDNAを増幅し、26S rDNA遺伝子のPCR増幅フラグメントを提供した。生じたPCR産物フラグメントを制限酵素SpeI及びXbaIで消化し、XbaIで消化したpTEF/Zseoプラスミドに連結した。生じたプラスミドをpMI203(図23B)と称した。
pMI203に含まれるTEF1プロモーターを、別のカンジダ菌種からの遺伝子のプロモーター、C.albicans PGK1プロモーターに置換した。入手可能なC.albicans PGK1配列(Genbank アクセッション番号U25180)に基づき、下記のオリゴヌクレオチドプライマー:
GCG ATC TCG AGG TCC TAG AAT ATG TAT ACT AATTTGC(配列番号:31)及び
ACT TGG CCA TGG TGA TAG TTA TTC TTC TGC AATTGA(配列番号:32)
を設計した。これらのプライマーを使用し、C.albicansゲノムDNAを鋳型として用いて、C.albicans PGK1オープンリーディングフレームの上流領域からの700bpフラグメントを増幅した。フラグメントのクローニングを容易にするために、制限部位XbaI及びSpeI(前記の下線部)をプライマーに付加した。増幅後、フラグメントを単離し、制限酵素XhoI及びNcoIで消化して、その後XhoI及びNcoIで消化したプラスミドpMI203に連結した。生じたプラスミドをpMI205(図23B)と称した。
pVR24及びpVR27:プラスミドpBFY004(所有者、NREL)をNotI制限酵素(Invitrogen)で消化して、1235bpフラグメント(配列番号:33)を結果として生成した。そのフラグメントを単離し、NotI消化したpGEM5zF(+)(Promega North,Madison,WI)に連結した。大腸菌(top10)(Invitrogen)を、標準エレクトロポレーション・プロトコール(Sambrook、同上)を用いて、連結混合物で形質転換した。生じたプラスミドをpNC002と称した。
LDH遺伝子をコードする巨大菌(B.megaterium)DNAを次のように単離した。巨大菌は、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection)より入手し(ATCC アクセッション番号6458)、標準条件下で増殖させた。Invitrogen社の「Easy−DNA」キットを使用し、製造者のプロトコールに従って、これらの細胞からゲノムDNAを精製した。巨大菌からのL−LDHに関するGenbankで入手可能な配列(Genbank アクセッション番号M22305)に基づいて、プライマーを設計した。標準手法を用いてPCR増幅反応を実施し、各々の反応は、巨大菌ゲノムDNA(6ng/μL)、4つのdNTP(0.2mM)、及び増幅プライマーBM1270及びBM179(各々1μM)を含んだ。プライマーは次の配列を有する:
BM1270 CCTGAGTCCACGTCATTATTC(配列番号:34)及び
BM179 TGAAGCTATTTATTCTTGTTAC(配列番号:35)。
反応は次の熱サイクリング条件に従って実施した:95℃で10分間の初期インキュベーション、次に95℃で30秒間、50℃で30秒間、72℃で60秒間から成る35サイクル。1100塩基対(bp)の強い生成物フラグメントを従来の手順を用いてゲル精製し、クローン化して、配列決定した。生じた配列は、既知のL−LDHコード遺伝子と高い相同性を示すポリペプチドに翻訳することができた。
本明細書で開示する、巨大菌LDHコード遺伝子についてのコード配列を、どちらもSaccharomyces cerevisiae酵母からの、PGK1遺伝子からのプロモーター及びGAL10遺伝子からの転写ターミネーターに作動可能に連結した。前記遺伝子のコード配列の両末端に制限部位を導入するために、この配列に基づいて2つのオリゴヌクレオチドプライマー、Bmeg5’及びBmeg3’を設計した:
Bmeg5’ GCTCTAGATGAAAACACAATTTACACC(配列番号:36)及び
Bmeg3’ ATGGATCCTTACACAAAAGCTCTGTCGC(配列番号:37)。
この増幅反応は、Pfu Turboポリメラーゼ(Stratagene)を製造者から供給される緩衝液中で使用して、上述したdNTP及びプライマー濃度を用いて実施した。熱サイクリングは、反応混合物を95℃で3分間初期インキュベートし、次に95℃で30秒間、50℃で30秒間、72℃で60秒間の20サイクル、その後72℃で9分間の最終インキュベーションによって実施した。その生成物を制限酵素XbaI及びBamHIで消化し、その後プラスミドpNC002のXbaI及びBamHI部位に連結した。この連結により、巨大菌LDHコード配列に作動可能に連結されるPGKプロモーター及びGAL10ターミネーターが生成された(pVR24;図21)。
R.oryzae LDHを含有するベクターを創造し、S.cerevisiae PGK1プロモーターの制御下で発現させるために、pVR27(図22)の構築を行った。標準条件下で増殖させた細胞(ATCC アクセッション番号9363)から精製した(「Easy−DNA」キット、Invitrogen)ゲノムDNA由来のRhizopus oryzaeから、LDHを単離した。R.oryzaeからのLDHに関するGenbankで入手可能な配列(Genbank アクセッション番号AF226154)に基づいて、プライマーを設計した。標準手法を用いてPCR増幅反応を実施し、各々の反応は、R.oryzaeのゲノムDNA(6ng/μL)、4つのdNTPの各々(0.2mM)、及び増幅プライマーRal−5’及びRal−3’の各々(1μM)を含んだ。増幅プライマーは次の配列を有した:
Ral−5’ CTTTATTTTTCTTTACAATATAATTC(配列番号:38)及び
Ral−3’ ACTAGCAGTGCAAAACATG(配列番号:39)。
反応は次のサイクリング条件に従って実施した:95℃で10分間の初期インキュベーション、次に95℃で30秒間、41℃で30秒間、72℃で60秒間から成る35サイクル。1100bpの強い生成物フラグメントをゲル精製し、TAベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)にてクローニングして、配列決定した。生じた配列は、Genbankにおける既知のRhizopus oryzae LDHコード遺伝子(アクセッション番号AF226154)と高い相同性を示すポリペプチドに翻訳することができた。
本明細書で開示する、R.oryzae LDHコード遺伝子についてのコード配列を、どちらもS.cerevisiae酵母からの、PGK1遺伝子からのプロモーター及びGAL10遺伝子からの転写ターミネーターに作動可能に連結した。この構築物を作製するときに、次のオリゴヌクレオチドを調製し、Rhizopus LDH挿入物を含むプラスミドからのコード配列を増幅するために使用した。前記遺伝子のコード配列の両末端に制限部位を導入するために、この配列に基づいて2つのオリゴヌクレオチドプライマー、Rapgk5及びPapgk3’を設計した:
Rapgk5 GCTCTAGATGGTATTACACTCAAAGGTCG(配列番号:40)及び
Papgk3 GCTCTAGATCAACAGCTACTTTTAGAAAAG(配列番号:41)。
この増幅反応は、Pfu Turboポリメラーゼ(Stratagene)を製造者から供給される緩衝液中で使用して、上述したdNTP及びプライマー濃度を用いて実施した。熱サイクリングは、反応混合物を95℃で3分間初期インキュベートし、次に95℃で30秒間、53℃で30秒間、72℃で60秒間の20サイクル、その後72℃で9分間の最終インキュベーションによって実施した。その生成物を制限酵素XbaIで消化し、その後プラスミドpNC002のXbaI部位に連結した。
この連結により、R.oryzae LDHコード配列に作動可能に連結されるPGKプロモーター及びGAL10ターミネーターが生成された(pVR27;図22)。
pMI234及びpMI238:C.sonorensis形質転換体についての陽性選択を生じさせるために、S.cerevisiae MEL5遺伝子(Naumovら、1990、MGG 224:119−128;Turakainenら、1994、Yeast 10:1559−1568;Genbank アクセッション番号Z37511)を、プラスミドpMEL5−39からの2160bp EcoRI−SpeIフラグメントとして入手し、EcoRIとSpeIで消化したpBluescript II KS(−)(Stratagene)に連結した。MEL5遺伝子内のEcoRI部位はイニシエーターATGの510bp上流に位置し、SpeI部位はMEL5の終止コドンの250bp下流に位置する。生じたプラスミドをpMI233(図23C)と称した。
C.sonorensisの1500bp PGK1プロモーターを、上記のように単離したPGK1λファージクローンからのDNAを鋳型として使用して、次の配列:
GCG ATC TCG AGA AAG AAA CGA CCC ATC CAA GTG ATG(配列番号:5)及び
TGG ACT AGT ACA TGC ATG CGG TGA GAA AGT AGA AAG CAA ACA TTG TAT ATA GTC TTT TCT ATT ATT AG(配列番号:42)
を有するプライマーで増幅した。3’プライマーは、オープンリーディングフレームのすぐ上流のPGK1プロモーター内に存在するヌクレオチド及びMEL5オープンリーディングフレームの5’末端に対応するヌクレオチドに対応するので、C.sonorensis PGK1プロモーターとS.cerevisiae MEL5との間の融合を作り出すことができる。生じた増幅フラグメントを制限酵素SphIとXhoIで消化し、SphIとXhoIで消化したプラスミドpMI233(図23C)に連結した。このプラスミド内に生じた構築物は、MEL5オープンリーディングフレームの上流に位置し、MEL5オープンリーディングフレームに作動可能に連結されたC.sonorensis PGK1プロモーターを含み、図5においてpMI234として特定されている。
同様に、650bpのC.sonorensis TDH1プロモーターは、上記のように単離したTDH1λファージクローンからのDNAを鋳型として使用して、次の配列:
GCG ATC TCG AGA AAA TGT TAT TAT AAC ACT ACA C(配列番号:3)及び
TGG ACT AGT ACA TGC ATG CGG TGA GAA AGT AGA AAG CAA ACA TTT TGT TTG ATT TGT TTG TTT TGT TTT TGT TTG(配列番号:43)
を有するプライマーで増幅した。3’プライマーは、オープンリーディングフレームのすぐ上流のTDH1プロモーター内に存在するヌクレオチド及びMEL5オープンリーディングフレームの5’末端に対応するヌクレオチドに対応するので、C.sonorensis TDH1プロモーターとS.cerevisiae MEL5との間の融合を創造することができる。増幅したフラグメントをSphIとXhoIで消化し、SphIとXhoIで消化したプラスミドpMI233(図23C)に連結した。図6においてpMI238として特定される、生じたプラスミドは、MEL5オープンリーディングフレームの上流に位置し、MEL5オープンリーディングフレームに作動可能に連結されたC.sonorensis TDH1プロモーターを含む。
pMI246及びpMI247:プラスミドpMI205を使用して、選択マーカーとしてのMEL5遺伝子とC.sonorensisにおける乳酸の産生を可能にするためのLDH遺伝子とを含有するプラスミドを作製した。生じたプラスミドにおいて、pMI205内のゼオシン耐性遺伝子をヘルベチカス菌(L.helveticus)LDH遺伝子に置換した。
LDH遺伝子及びCYC1ターミネーターを含むpVR1の1329bp NcoI−BamHIフラグメントを、pMI205(図23B)の3413bp NcoI−BamHIフラグメントに連結して、ヘルベチカス菌LDH遺伝子をC.albicans PGK1プロモーターの制御下に置いた;生じたプラスミドをpMI214と称した。第二段階では、C.albicans PGK1プロモーターをC.sonorensis PGK1プロモーターに置換した。C.sonorensis PGK1プロモーターを、次の配列:
GCG ATC TCG AGA AAG AAA CGA CCC ATC CAA GTG ATG(配列番号:5)及び
ACT TGG CCA TGG TAT ATA GTC TTT TCT ATT ATT AG(配列番号:44)
を有するプライマーを使用して、上述したような単離λファージクローンからの増幅によって単離し、そのPCR産物をXhoIとNcoIで消化して、XhoIとNcoIで消化したpMI214に連結した。このプラスミドをpMI277と称し、図19に示している。
pMI227からのLDH発現カセットとpMI234からのMEL5マーカーカセットは、pMI227(図23A)の3377bp AvrII−NheIフラグメントをSpeI消化したpMI234(図23C)と連結することによって同じベクター内に組み入れた。生じたプラスミドをpMI246と称し、図8に示している。
pMI227からのLDH発現カセットとpMI238からのMEL5マーカーカセットは、pMI227の3377bp AvrII−NheIフラグメントをSpeI消化したpMI238と連結することによって同じベクター内に組み入れた。生じたプラスミドをpMI247と称し、図9に示している。
1つの実施形態では、本発明は、カンジダ属において機能性であるプロモーターに作動可能に連結された、有機生成物の生合成のために有用なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換え核酸構築物を提供する。
関連する実施形態では、そのヌクレオチド配列は乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子をコードする。好ましい実施形態では、前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子は、それが導入されるカンジダ酵母細胞にとって異種である。最も好ましい実施形態では、前記乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子は、例えば細菌又は真菌などの微生物からであり、本発明の方法に従って産生される有機生成物は乳酸(又は乳酸塩)である。
典型的には、乳酸を産生するための本発明の方法は、炭水化物基質がヘキソース、例えばグルコースであるとき、(産生される乳酸のグラム数/消費される炭水化物基質のグラム数 に基づき)約60%又はそれ以上、好ましくは約70%又はそれ以上、より好ましくは約80%又はそれ以上、最も好ましくは約90%又はそれ以上を産することができる。
乳酸を産生するための本発明の方法は、約75g/L又はそれ以上、好ましくは約90g/L又はそれ以上、最も好ましくは約100g/L又はそれ以上の乳酸力価を生じることができる。本発明の細胞は、グルコースなどのヘキソース炭水化物基質を産生のために使用するとき、約0.20又はそれ以上、好ましくは約0.30又はそれ以上、最も好ましくは約0.50又はそれ以上の乳酸産生の特異的産生性(産生される乳酸のグラム数/時間当たりの乾燥細胞重量のグラム数 に関して)を有する。
1つの実施形態では、本発明のクラブトリー陰性細胞は、自然に又は遺伝的修飾により、デンプンを異化することができる。さらなる実施形態では、前記細胞を、真菌ベースのセルラーゼなどの分子の添加を通してセルロース類を異化するように遺伝的に修飾する。
関連する実施形態では、本発明の細胞は、グルコース又は他の単糖類ヘキソース以外の糖類、特にキシロース及びL−アラビノースの非限定的な例を含むペントースを代謝することができる。
本発明のクラブトリー陰性細胞は、好ましくはカンジダ菌株 C.sonorensis、C.methanosorbosa、C.diddensiae、C.parapsilosis、C.naeodendra、C.krusei、C.blankii及びC.entomophilaから選択される。好ましい実施形態では、前記細胞はC.sonorensis及びC.methanosorbosa細胞である。
本発明の細胞によって産生される有機生成物を単離するための方法は、当技術分野においてよく知られている。特に、低pH発酵混合物を含む発酵混合物から乳酸を分離するための方法は、Eyalら(1999年4月22日公開の国際公開第WO99/19290号)によって開示されている。乳酸を単離するためのそのような方法は、抽出、吸着、蒸留/蒸発、膜を通しての分離、結晶化、及び相分割を含む。(Vickroy,1985,Comprehensive Biotechnology,(Moo−Young編集)、第3巻、38章、Pergamon Press,Oxford;Dattaら、1995、FEMS Microbiol.Rev.16:221−231;米国特許第4,771,001号;米国特許第5,132,456号;米国特許第5,510,526号;及び米国特許第5,420,304号も参照のこと)。
発酵条件
本発明の様々な局面に関して様々な発酵工程が使用できる(例えば、Wolf,1996,Nonconventional Yeasts in Biotechnology,Springer−Verlag Berlin、及びWalker,2000、Yeast Physiology and Biotechnology,John Wiley & Sons,England参照)。当業者は、発酵条件が、特定の宿主生物及び所望の生成物に依存して、(中でも特に)生成物の収率、培養の産生性、及び培養物の健康状態(culture health)を含む発酵の様々な局面を改善するように変化させうることを認識するであろう。発酵条件を調整する上でカンジダ菌種の良好な特性を利用することは特に好都合である。したがって、pHは、処理の様々な段階において約2.5から約9.0までの範囲を有しうる。酸素レベルは、培地上方の大気中で測定される又は培地に溶解するものとして、約0%から約100%まで(空気中で認められる酸素含量に対して)変化させうる。酸素レベルは、分圧、O電極、容積/容積、又はガス流速(VVM)を含む一般的な方法によって測定又は算定することができる。温度範囲は、ほぼ室温(23℃)から約40℃及びそれ以上まで(例えば約45℃まで)にわたりうる。
好ましい発酵条件は、約4から約5までのpH範囲の維持を含む。バイオマス産生の間及び乳酸産生の間、約5のpHを維持することが特に好ましい。好ましくは、塩基、例えばCa(OH)の自動添加によって発酵工程全体を通じてそのpHを維持する。バイオマス産生の間の温度は、好ましくは約35℃に維持する。好ましくは、乳酸産生のための適切な細胞量が達成されるまで、培養培地が好ましくは攪拌されて気流供給される好気的条件下でバイオマスを産生する。乳酸産生の間、攪拌速度及び気流は、好ましくはバイオマス産生中のそれらの速度に比べて緩やかである。
上記で詳述した好ましい条件下においてグルコース培地で、3つの異なる発酵槽培養から下記のデータを生成した。

Figure 0004649109
Figure 0004649109

下記の実施例は本発明の一部の実施形態を例示するためのものであり、下記の実施例によって本発明の範囲又は精神は限定されない。
実施例
実施例1:G418耐性ベクター及びC.sonorensis形質転換体の選択のためのG418の使用
有機生成物の合成のために有用なタンパク質をコードする組換え核酸構築物を含む酵母細胞形質転換体の選択を可能にする、G418耐性を形質転換酵母細胞に付与するベクターを次のように調製した。G418耐性マーカーを、C.sonorensis PGK1又はTDH1プロモーターのいずれかの転写制御下でクローン化し、それらの構築物をそれぞれpMI268(図2)及びpMI269(図3)と称した。S.cerevisiae GAL10ターミネーターを両方の場合に使用した。
G418耐性遺伝子を、次の配列:
CTAGTCTAGA ACA ATG AGC CAT ATT CAA CGG GAA ACG(G418 5’;配列番号:1)及び
CGC GGATCC GAA TTC TTA GAA AAA CTC ATC GAG CAT CAA ATG(G418 3’;配列番号:2)
を有する1対のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、Dynazyme EXT Polymerase(Finnzymes,Espoo,Finland)を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。プラスミドpPIC9K(Invitrogen社より入手)を鋳型として使用した。PCRは、反応混合物を95℃で5分間初期インキュベートし、次に95℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で2分間の29サイクル、その後72℃で5分間の最終インキュベーションによって実施した。そのPCR産物を制限酵素BamHI及びXbaIで消化し、800bpフラグメントを単離した。このフラグメントをpNC101(NRELのEric Jarvisより入手)の4226bp BamHI−XbaIフラグメントに連結した。プラスミドpNC101は、標準クローニング手法(例えばSambrookら、同上)を用いて、S.cerevisiaeからのホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター(pPGK)及びGAL10ターミネーター配列から構築した。このプラスミドはまた、BamHI部位と共に、酵母プロモーターとターミネーター配列との間に認められるポリリンカー領域内に含まれる、XbaIとEcoRI部位との間に挿入されたK.thermotoleransからのLDH遺伝子も含有する。このプラスミドは、前記酵母プロモーター及びターミネーターの制御下で、様々な遺伝子又は選択マーカーの発現を可能にする。
これらの操作から生じるプラスミドは、S.cerevisiae PGK1プロモーターとS.cerevisiae GAL10ターミネーターとの間にG418耐性遺伝子を含み、これをpMI260と称した。このプラスミドの構造の概略を図1に示す。
C.sonorensisの600bp TDH1プロモーターは、pMI238を鋳型として使用して(上記「ベクター及び宿主細胞」参照;図6に示されている)、次の配列:
GCG ATC TCG AGA AAA TGT TAT TAT AAC ACT ACA C(5441;配列番号:3)及び
CTAGTCTAGATT TGT TTG ATT TGT TTG TTT TGT TTT TGT TTG(Cs1;配列番号:4)
を有する1対のオリゴヌクレオチドプライマーを用い、Dynazyme EXT Polymeraseを用いるPCRによって増幅した。PCRは、反応混合物を最初に95℃で5分間インキュベートし、次に95℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で2分間の29サイクル、及び72℃で5分間の最終インキュベーションによって実施した。そのPCR産物を、クレノウ(Klenow)ポリメラーゼ及び4つのdNTPの各々で平滑末端にして、その後制限酵素XbaIで消化した。生じた600bpフラグメントをpMI260の4216bp PstI(T4ポリメラーゼで平滑末端にした)−XbaIフラグメントに連結した。生じたプラスミドは、C.sonorensis TDH1プロモーター及びS.cerevisiae GAL10ターミネーターに作動可能に連結されたG418耐性遺伝子を含み、これをpMI269と称した。このプラスミドの構造の概略を図3に示す。
1500bpのC.sonorensis PGK1プロモーターは、pMI234を鋳型として使用して(上記「ベクター及び宿主細胞」参照;図5に示されている)、次の配列:
GCG ATC TCG AGA AAG AAA CGA CCC ATC CAA GTG ATG(5423;配列番号:5)及び
CTA GTC TAG ATG TAT ATA GTC TTT TCT ATT ATT AG(Cs2;配列番号:6)
を有する1対のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、Dynazyme EXT Polymeraseを用いるPCRによって増幅した。PCRは、反応混合物を最初に95℃で5分間インキュベートし、次に95℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で2分間の29サイクル、及び72℃で10分間の最終インキュベーションによって実施した。1500bpのPCR産物フラグメントを、クレノウポリメラーゼ及び4つのdNTPの各々で平滑末端にして、その後制限酵素XbaIで消化した。その1500bp PGK1プロモーターフラグメントをpMI260の4216bp PstI(T4ポリメラーゼで平滑末端にした)−XbaIフラグメントに連結した。生じたプラスミドは、C.sonorensis PGK1プロモーター及びS.cerevisiae GAL10ターミネーターに作動可能に連結されたG418耐性遺伝子を含み、これをpMI268と称した。このプラスミドの構造の概略を図2に示す。
前記の2つの構築物pMI268及びpMI269を制限酵素SalI及びNotIで消化し、Gietzら(1992、Nucleic Acids Res.20:1425)に従った化学的方法を用いてC.sonorensisに形質転換した。この形質転換手法をこれらの実施例全体を通じて使用しており、下記のように簡単に説明する。
0.8−1.5のOD600まで増殖させたC.sonorensisの一晩培養物からの細胞を遠心分離によって収集し、最初に過剰の10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH7.5)の溶液で洗浄し、次に過剰の100mM酢酸リチウム(LiAc)、10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH7.5)の溶液で洗浄して、その後100mM LiAc、10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH7.5)の溶液2mLに再懸濁した。細胞(2mL懸濁液を約50μL)を、形質転換DNAを約10μg及び40%PEG4000、100mM LiAc、10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH7.5)の溶液300μLと混合した。細胞を、緩やかに振とうしながら30℃で30分間インキュベートした。ジメチルスルホキシド(DMSO;40μL)を加え、細胞を42℃の水浴中で15分間インキュベートした。細胞を遠心分離によって収集し、過剰の10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH7.5)の溶液で洗浄し、YPD培地(10g/L酵母抽出物、20g/Lペプトン及び20g/Lグルコースを含む)に再懸濁して、30℃で3−7時間インキュベートした。場合により、YPDインキュベーションは一晩継続しうる。
選択を適用する前に、細胞を液体YPD中で少なくとも3時間又は一晩インキュベートした。形質転換体を、100μg/mL又は200μg/mLの濃度のG418抗生物質を添加したYPD寒天平板(10g/L酵母抽出物、20g/Lペプトン、20g/Lグルコース及び2%寒天を含む)上で増殖させた。平板を30℃で2−5日間インキュベートし、その後形質転換体を新鮮な選択平板に再び線条接種した。G418耐性コロニーから単離した全DNAのサザン分析は、G418耐性遺伝子が形質転換体のゲノムに組み込まれたことを示した。
これらの結果は、G418耐性遺伝子を本明細書で述べるように調製した構築物から発現できること、及びそれがC.sonorensis形質転換のための適切な選択であることを示した。
実施例2:ヒグロマイシン耐性(hgh)ベクター及びC.sonorensis形質転換体の選択のためのヒグロマイシンBの使用
有機生成物の合成のために有用なタンパク質をコードする組換え核酸構築物を含む酵母細胞形質転換体の選択を可能にする、ヒグロマイシン耐性を形質転換酵母細胞に付与するベクターを次のように調製した。ヒグロマイシン耐性マーカー(大腸菌hph)を、C.sonorensis PGK1及びTDH1プロモーターのいずれかの転写制御下でクローン化し、それらの構築物をそれぞれpMI270(図4)及びpMI271と称した。S.cerevisiae GAL10ターミネーターを両方の場合に使用した。
ヒグロマイシンBに対する耐性を付与する大腸菌hph遺伝子をプラスミドpRLMex30(Machら、1994、Curr.Genet.25,567−570)から得た。pRLMex30を制限酵素NsiIで線状化し、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端にして、その後XbaIで消化した。
実施例1で調製したpMI268プラスミドをEcoRIで消化し、クレノウポリメラーゼ及び4つのdNTPの各々で平滑末端にして、その後XbaIで消化した。生じた4900bpフラグメントをpRLMex30の1035bp hphフラグメントに連結した。この連結は、C.sonorensis PGK1プロモーター及びS.cerevisiae GAL10ターミネーターに作動可能に連結されたヒグロマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドを生成し、それをpMI270と命名した。このプラスミドの構造の概略を図4に示す。
実施例1で調製したpMI269プラスミドをEcoRIで消化し、クレノウポリメラーゼ及び4つのdNTPの各々で平滑末端にして、その後XbaIで消化した。生じた4000bpフラグメントをpRLMex30の1035bp hphフラグメントに連結した。これは、C.sonorensis TDH1プロモーター及びS.cerevisiae GAL10ターミネーターに作動可能に連結されたヒグロマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドを生成し、それをpMI271と命名した。このプラスミドの構造の概略を図7に示す。
酵母細胞を、上記実施例1で述べたようにGietzら(1992、Nucleic Acids Res.20:1425)に従い、化学的方法を用いて形質転換した。2つの構築物pMI270及びpMI271を制限酵素XhoI及びNotIで消化した。この形質転換混合物をYPD中30℃で3時間インキュベートした後、選択平板に塗布した。形質転換体を、150−300μg/mLの濃度のヒグロマイシンB(Calbiochem)を添加したYPD寒天平板上で2−5日間、30℃で増殖させた。形質転換体を新鮮な選択平板に再び線条接種した。ヒグロマイシン耐性形質転換体のゲノム内に形質転換したDNAが存在することを、次の配列:
CCGGACTA GTT GGT ACA GAG AAC TTG TAA ACA ATT CGG(ScerGal10t;配列番号:7)及び
TAT AAA TAC TTA TCA TTT CCTCC(5436;配列番号:8)
を有する1対のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRによって確認した。PCRは、最初に反応混合物を94℃で3分間インキュベートし、次に94℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で2分間の29サイクル、その後72℃で10分間の最終インキュベーションによって実施した。
これらの結果は、本明細書で述べる構築物を用いて大腸菌hph遺伝子を発現することができ、それがC.sonorensisにおいて機能すること、及びC.sonorensis形質転換体を選択するためにヒグロマイシンBを使用できることを示している。
実施例3:ヘルベチカス菌LDHの発現のため及びPDC1遺伝子座への形質転換DNAの標的組込みのためのベクター
C.sonorensis PDC1遺伝子座への標的組込みのためのヘルベチカス菌LDH遺伝子を含むベクターを次のように調製した。pMI246ベクターは、図8に概略図が示されている、MEL5発現カセットとヘルベチカス菌LDH発現カセットとを含む(上記「ベクター及び宿主細胞」参照)。C.sonorensis PDC1遺伝子座への標的組込み及びPDC1タンパク質コード領域の置換を可能にするベクターを構築するために、PDC1タンパク質コード領域のすぐ上流及び下流の配列に対応するDNAフラグメントをpMI246に付加した。
PDC1ターミネーターは、C.sonorensisゲノムDNAを鋳型として使用して、次の配列:
GGG ACT AGT GGA TCC TTG AAG TGA GTC AGC CAT AAG GAC TTA AATTCACC(Cs7;配列番号:9)及び
AAGGCCT TGT CGA CGC GGC CGC TTG GTT AGA AAA GGT TGT GCC AAT TTA GCC(Cs8;配列番号:10)
を有するオリゴヌクレオチドプライマーを用い、Dynazyme EXT Polymerase(Finnzymes、Espoo、Finland)を用いたPCRによって増幅した。PCRは、最初に反応混合物を95℃で5分間インキュベートし、次に95℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で2分間の29サイクル、その後72℃で10分間の最終インキュベーションによって実施した。920bpのPCR産物フラグメントを制限酵素BamHI及びNotIで消化し、その920bpフラグメントを精製して、pMI246からの8900bp BamHI−NotIフラグメントに連結した。生じたプラスミドをpMI256と命名し、図18に概略図を示す。
PDC1プロモーターは、C.sonorensisゲノムDNAを鋳型として使用して、次の配列:
GGG ACG GGC CCG CGG CCG CTA CAA GTG ATT CAT TCA TTC ACT(Cs5;配列番号:11)及び
CCC TGG GCC CCT CGA GGA TGA TTT AGC AAG AAT AAA TTA AAA TGG(Cs6;配列番号:12)
を有する1対のオリゴヌクレオチドプライマーを用い、C.sonorensisから増幅した。PCRは、最初に反応混合物を95℃で5分間インキュベートし、次に95℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で2分間の29サイクル、その後72℃で10分間の最終インキュベーションによって実施した。PCR産物フラグメントをApaIで消化し、その800bpフラグメントを精製して、9760bpのApaI線状化pMI256に連結した(上記「ベクター及び宿主細胞」参照;図18)。生じたプラスミドをpMI257と命名し、図10に概略図を示す。pMI257は、順に、C.sonorensis PDC1プロモーター、S.cerevisiae MEL5遺伝子に作動可能に連結されたC.sonorensis PGK1プロモーター、ヘルベチカス菌LDHに作動可能に連結されたC.sonorensis PGK1プロモーター、及びS.cerevisiae CYC1ターミネーター、次にC.sonorensis PDC1ターミネーターを含む。
pMI257をNotIで消化し、PDC1 5’側及び3’側領域に隣接されたMEL5及びLDH発現カセットを含む7300bpフラグメントを切り取った。この7300bpフラグメントを使用して、上記実施例1で述べた方法によってC.sonorensisを形質転換し、その形質転換体をMEL5マーカーの発現に基づいてスクリーニングした。形質転換体を、α−ガラクトシダーゼの色素産生基質、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−α−D−ガラクトピラノシド(X−α−gal;ICN Biochemicals)を40μg/mLの濃度で添加したYPD寒天平板上で増殖させた。平板を30℃で1−3日間インキュベートし、その後4℃に移した。X−α−gal酵母の存在下で、機能性MEL5発現カセットで形質転換したコロニーは青色に変わったが、非形質転換コロニーは白色であった。青色コロニーを新鮮な指標平板に再び線条接種することによって精製した。NotI消化したpMI257によるC.sonorensisの形質転換から生じる形質転換体を、257−1から257−15、257−41、257−42及び257−45と称した。
形質転換pMI257 DNAによるPDC1オープンリーディングフレームの予想される置換が起こった形質転換体を特定するために、C.sonorensis PDC1プローブを用いて、pMI257形質転換体から単離したゲノムDNAのサザンブロット分析を実施した。形質転換体257−3、257−9、257−12、257−15及び257−41においてPDC1ハイブリダイズバンドが存在しないことは、PDC1遺伝子が欠失していることを示唆した。他のpMI257形質転換体及びC.sonorensisは、PDC1ハイブリダイゼーションにおいて陽性シグナルを生じた。ヘルベチカス菌LDHプローブとのハイブリダイゼーションは、LDH遺伝子がpdc1欠失体に1コピー存在することを示した。形質転換体257−6、257−7及び257−8は、ゲノム内にランダムに組み込まれたヘルベチカス菌LDHの2コピーを含んだ。他のpMI257形質転換体は、ゲノム内にランダムに組み込まれた1コピーのLDHを有していた。
これらの結果は、PDC1遺伝子座への形質転換pMI257 DNAの標的組込みが、PDC1プロモーターとターミネーター配列との間の相同的組換えを通して起こったことを示している。これらの結果はまた、PDC1がC.sonorensisにおける単一コピー遺伝子であることも示している。加えて、PDC1遺伝子座の外での組込み事象が起こった。一部の形質転換体では、LDH遺伝子がゲノム内に1コピーより多く組み込まれた。
実施例4:巨大菌LDHの発現のため及びPDC1遺伝子座への形質転換DNAの標的組込みのためのベクター
C.sonorensis PDC1遺伝子座への標的組込みのための巨大菌LDH遺伝子を含むベクターを次のように調製した。これらのベクターでは、pMI257内のヘルベチカス菌LDHを巨大菌LDHに置換した。
pMI257をNcoIで線状化し、5’突出末端をDNAポリメラーゼI、クレノウ断片、及びdATP、dCTP及びdTTPの混合物で部分充填し、dGTPはこの反応から省いた。これに続いて、マングビーンヌクレアーゼでの処理によって一本鎖延長部(extensions)を除去した。次にそのDNAをBamHIで消化し、9200bpフラグメントを電気泳動分離後に0.8%アガロースゲルから単離した。巨大菌LDHを含むベクターpVR24を巨大菌ゲノムDNAから生成し、図21に示している。LDH遺伝子を、アクセッション番号M22305から設計したプライマーを使用したPCRによってゲノムDNAからクローン化し、市販のベクターに連結した(上記「ベクター及び宿主細胞」参照)。巨大菌LDHを含む976bpフラグメントをXbaI消化によってpVR24から切り出し、次いで5’突出末端をDNAポリメラーゼI、クレノウ断片、及び4つのdNTPの各々によって充填して、BamHIで消化した。pMI257からの9200bp NcoI(平滑末端)−BamHIフラグメントとpVR24からの976bp XbaI(平滑末端)−BamHIフラグメントを連結して、生じたプラスミドをpMI265と称し、図11に示している。pMI265は、順に、C.sonorensis PDC1プロモーター、S.cerevisiae MEL5遺伝子に作動可能に連結されたC.sonorensis PGK1プロモーター、巨大菌LDHに作動可能に連結されたC.sonorensis PGK1プロモーター及びC.sonorensis PDC1ターミネーターを含む。pMI265をNotIで消化し、PDC1 5’側及び3’側領域に隣接されたMEL5及びLDH発現カセットから成る7300bpフラグメントを切り出した。この7300bpフラグメントを使用して、実施例1で述べたようにC.sonorensisを形質転換し、その形質転換体を、40μg/mLの濃度のX−α−galを添加したYPD平板上でスクリーニングした。形質転換体は、X−α−gal(40μg/mL)を添加したYPD寒天平板上で増殖させた。NotI消化したpMI265によるC.sonorensisの形質転換から生じる形質転換体を、265−1から265−60までと称した。
形質転換pMI265 DNAによるPDC1オープンリーディングフレームの予想される置換が起こった形質転換体を特定するために、C.sonorensis PDC1プローブを用いて、pMI265形質転換体から単離したゲノムDNAのサザンブロット分析を実施した。形質転換体265−5、265−7、265−15、265−17、265−33、265−34、265−35、265−38、265−39、265−42、265−43、265−47、265−48、265−49、265−51及び265−60においてPDC1ハイブリダイズバンドが存在しないことは、PDC1遺伝子が欠失していることを示唆した。他のpMI265形質転換体及び非形質転換C.sonorensisは、PDC1ハイブリダイゼーションに関して陽性シグナルを生じた。巨大菌LDHプローブとのハイブリダイゼーションは、LDH遺伝子がpdc1欠失体に1コピー存在することを示した。PDC1ハイブリダイズ陽性形質転換体265−14、265−22及び265−23は、そのゲノム内にランダムに組み込まれたLDH遺伝子の2コピーを含み、265−56は3コピーを含んだ。他のpMI265形質転換体は、ゲノム内にランダムに組み込まれた1コピーのLDHを有していた。
これらの結果は、PDC1遺伝子座への形質転換pMI265 DNAの標的組込みが、PDC1プロモーターとターミネーター配列との間の相同的組換えを通して起こったことを示した。これらの結果はまた、PDC1がC.sonorensisにおける単一コピー遺伝子であることを確認した。pdc1を欠失した形質転換体は生存可能であり、これは、PDC1がC.sonorensisにおける必須遺伝子ではないことを示唆した。PDC1欠失組込みに加えて、ある形質転換体ではPDC1遺伝子座の外で組込み事象が起こった。一部の形質転換体では、LDH遺伝子がゲノム内に1コピーより多く組み込まれた。
実施例5:R.oryzae LDHの発現のため及びPDC1遺伝子座への形質転換DNAの標的組込みのためのベクター
C.sonorensis PDC1遺伝子座への標的組込みのためのR.oryzae LDH遺伝子を含むベクターを次のように調製した。これらのベクターでは、pMI257内のヘルベチカス菌LDHコード配列をR.oryzae LDHに置換した。
上記実施例3で述べたpMI257プラスミドをNcoIで線状化し、5’突出末端をDNAポリメラーゼI、クレノウ断片、及びdATP、dCTP及びdTTPの混合物で部分充填し、dGTPはこの反応から省いた。これに続いて、マングビーンヌクレアーゼでの処理によって一本鎖延長部を除去した。次にそのDNAをBamHIで消化し、9200bpフラグメントを電気泳動分離後に0.8%アガロースゲルから単離した。R.oryzae LDHをコードするDNAのコード配列は、C.sonorensis PGK1プロモーター及びC.sonorensis PDC1遺伝子の転写ターミネーターに作動可能に連結した。R.oryzae LDHを含むベクターpVR27をR.oryzaeゲノムDNAから生成し、図22に示している。LDH遺伝子を、アクセッション番号AF226154から設計したプライマーを使用したPCRによってゲノムDNAからクローン化し、市販のベクターに連結した(上記「ベクター及び宿主細胞」参照)。R.oryzae LDHを含む978bpフラグメントをXbaI消化によってpVR27から切り出し、次いで5’突出末端をDNAポリメラーゼI、クレノウ断片、及び4つのdNTPの各々によって充填して、BamHIで消化した。pMI257からの9200bp NcoI(平滑末端)−BamHIフラグメントとpVR27からの978bp XbaI(平滑末端)−BamHIフラグメントを連結して、生じたプラスミドをpMI266と称し、図12に概略図を示す。pMI266は、順に、C.sonorensis PDC1プロモーター、S.cerevisiae MEL5遺伝子に作動可能に連結されたC.sonorensis PGK1プロモーター、R.oryzae LDH Aに作動可能に連結されたC.sonorensis PGK1プロモーター及びC.sonorensis PDC1ターミネーターを含む。pMI266をNotIで消化し、PDC1 5’側及び3’側領域に隣接されたMEL5及びLDH発現カセットから成る7300bpフラグメントを切り出した。この7300bpフラグメントを使用して、上記実施例1で述べた方法によってC.sonorensisを形質転換し、その形質転換体を、40μg/mLの濃度のX−α−galを添加したYPD平板上でスクリーニングした。NotI消化したpMI266によるC.sonorensisの形質転換から生じる形質転換体を、266−1から266−13までと称した。
形質転換pMI266 DNAによるPDC1オープンリーディングフレームの予想される置換が起こった形質転換体を特定するために、C.sonorensis PDC1プローブを用いて、pMI266形質転換体から単離したゲノムDNAのサザンブロット分析を実施した。形質転換体266−1、266−3、266−4及び266−11においてPDC1ハイブリダイズバンドが存在しないことは、PDC1遺伝子が欠失していることを示唆した。これに対し、pMI266形質転換体266−2、266−7及び266−8、及び非形質転換C.sonorensisは、PDC1ハイブリダイゼーションにおいて陽性シグナルを生じた。LDHプローブとのハイブリダイゼーションは、R.oryzae LDH遺伝子がすべての形質転換体に1コピー存在することを示した。
これらの結果は、PDC1遺伝子座への形質転換pMI266 DNAの標的組込みが、PDC1プロモーターとターミネーター配列との間の相同的組換えを通して起こったことを示した。さらに、PDC1遺伝子座の外での組込み事象が起こった。
実施例6:LDHを含まないPDC1の置換のためのベクター
外来性LDHコード配列を導入せずにPDC1を置換するためのベクターを調製した。LDH遺伝子及びS.cerevisiae CYC1ターミネーターを除去するために、上記実施例3で述べたpMI257プラスミドをNcoIとBamHIで消化した。5’突出末端をDNAポリメラーゼI、クレノウ断片、及び4つのdNTPの各々によって充填した。その9200bpフラグメントをアガロースゲル電気泳動後に精製し、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)400U及び製造者が推奨する適切な緩衝液の存在下において40ng/μLの濃度でのインキュベーションによって再環状化させた。生じたプラスミドをpMI267と称し、図13に概略図を示す。pMI267は、順に、C.sonorensis PDC1プロモーター、S.cerevisiae MEL5遺伝子に作動可能に連結されたC.sonorensis PGK1プロモーター、及びC.sonorensis PDC1ターミネーターを含む。
pMI267をNotIで消化し、PDC1 5’側及び3’側領域に隣接されたMEL5カセットから成る6300bpフラグメントを切り出した。この6300bpフラグメントを使用して、上記実施例1で述べた方法によってC.sonorensisを形質転換し、その形質転換体を、40μg/mLの濃度のX−α−galを添加したYPD平板上でスクリーニングした。NotI消化したpMI267によるC.sonorensisの形質転換から生じる形質転換体を、267−1から267−10までと称した。
PDC1オープンリーディングフレームが欠失された形質転換体を特定するために、C.sonorensis PDC1プローブを用いて、pMI267形質転換体から単離したゲノムDNAのサザンブロット分析を実施した。形質転換体267−1及び267−10においてPDC1ハイブリダイズバンドが存在しないことは、PDC1遺伝子が欠失していることを示唆した。
これらの結果は、PDC1遺伝子座への形質転換pMI267 DNAの標的組込みが、PDC1プロモーターとターミネーター配列との間の相同的組換えを通して起こったことを示した。LDHの発現は、pdc1欠失菌株の生存能力を維持するために必要ではなかった。さらに、PDC1遺伝子座の外での組込み事象が起こった。
実施例7:巨大菌LDH遺伝子及びG418マーカーを含むC.sonorensisベクターの構築
G418耐性遺伝子及び巨大菌LDH遺伝子を含むベクターを次のように調製した。これらのベクターでは、プラスミドpMI265からの巨大菌LDH発現カセットとプラスミドpMI269からのG418耐性マーカーカセットとを同じベクター内で組み合わせた。実施例1で述べたpMI269プラスミドはEcoRIで消化し、5’突出末端をDNAポリメラーゼI、クレノウ断片、及び4つのdNTPの各々によって充填して、その後前記DNAをBamHIで消化した。pMI269の4800bp EcoRI(平滑末端)−BamHIフラグメントを、実施例4で述べたpMI265プラスミドからの2800bp MscI−BamHIフラグメントと連結した。生じたプラスミドをpMI278と命名し、これは、順に、G418耐性遺伝子に作動可能に連結されたC.sonorensis TDH1プロモーター及びMEL5ターミネーター、次に巨大菌LDHに作動可能に連結されたC.sonorensis PGK1プロモーター及びS.cerevisiae GAL10ターミネーターを含み、図14に概略図を示している。
実施例8:R.oryzae LDHと巨大菌LDHを同時に発現するC.sonorensis菌株の構築
R.oryzae LDHがpdc1遺伝子座に組み込まれた、266−3と称するC.sonorensis形質転換体を、上記実施例4で述べた巨大菌LDH構築物による第二の形質転換のための宿主として選択した。形質転換体266−3を、SalI−NotI消化したpMI278でさらに形質転換し、その形質転換体を、200μg/mLの濃度のG418抗生物質を添加したYPD寒天平板上で選択した。平板を選択のために30℃で2−5日間インキュベートした;形質転換体を新鮮な選択平板に再び線条接種することによって精製した。生じた形質転換体を278−1から278−20までと称した。これらの形質転換体のうち19のゲノム内に巨大菌LDHが存在することは、巨大菌LDH遺伝子をプローブとして使用して、HindIII消化した酵母DNAのサザンブロット分析によって確認した。形質転換体の一部は、ゲノム内に組み込まれた巨大菌LDHの1コピーより多くを有していた。R.oryzae LDH遺伝子をプローブとしてサザンブロット分析を反復し、R.oryzae LDHがまだ存在することを確認した。
この実験は、種々のマーカーを用いてC.sonorensisを独立して多重形質転換できることを示した。このようにして、宿主ゲノム内の対象遺伝子(LDH)のコピー数を増加させることが可能であることが明らかになった。
実施例9:巨大菌LDHの発現のため及びPDC2遺伝子座への形質転換DNAの標的組込みのためのベクター
C.sonorensis PDC2遺伝子座への標的組込みのための巨大菌LDH遺伝子を含むベクターを次のように調製した。C.sonorensis PDC2プロモーターを、Dynazyme EXT Polymerase、及び次の配列:
GGG ACG GGC CCG CGG CCG CTT ACA GCA GCA AAC AAG TGATGCC(Cs26;配列番号13)及び
CCC TGG GCC CCT CGA GTT TGA TTT ATT TGC TTT GTA AAGAGAA(Cs27;配列番号14)
を有する1対のオリゴヌクレオチドプライマーを使用したPCRによって増幅した。ラムダベクターにクローニングしたC.sonorensis PDC2のゲノムコピーを鋳型として使用した(上記参照)。PCRは、最初に反応混合物を94℃で3分間インキュベートし、次に94℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で2分間の29サイクル、その後72℃で10分間の最終インキュベーションによって実施した。1000bpのPCR産物をTOPO TAベクター(Invitrogen)にクローニングして、生じたプラスミドをPMI277と称し、図19に概略図を示している。PDC2プロモーターをEcoRI消化によって遊離し、クレノウポリメラーゼ及び4つのdNTPの各々で平滑末端にした。
実施例7で述べたように調製したpMI278プラスミドをSalIで線状化し、5’突出末端をクレノウポリメラーゼ及び4つのdNTPの各々によって充填して、その後pMI277プラスミドの1000bp EcoRI(平滑末端)フラグメントに連結した。所望の方向に挿入物を含むプラスミドをpMI279と命名し、図20に概略図を示している。
PDC2ターミネーターを、ラムダベクターにクローニングしたC.sonorensis PDC2遺伝子のゲノムコピーを鋳型として使用して、次の配列:
TGGACTAGTAGTAG CAA TTC TTA CTT GAA AAA TTA ATT GAA GCA TTACC(Cs29;配列番号15)及び
GGC CCG CGG CCG CTA AAT ATA ATT ATC GCT TAG TTA TTA AAA TGG(Cs30;配列番号16)
を有する1対のオリゴヌクレオチドプライマーとDynazyme EXT Polymeraseを用いたPCRによって増幅した。pdc2ターミネーターフラグメントは、239個のC末端アミノ酸に対応するオープンリーディンフレームの部分を含む。ターミネーターフラグメント内の最後の239個のC末端アミノ酸タンパク質に対応するヌクレオチドの上流の3つのフレームすべてにおいて、PCRオリゴヌクレオチドCs29に翻訳終止コドンを導入した。PCRは、最初に反応混合物を94℃で3分間インキュベートし、次に94℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で2分間の29サイクル、その後72℃で10分間の最終インキュベーションによって実施した。PCR産物をクレノウポリメラーゼ及び4つのdNTPの各々によって平滑末端にし、Qiaquickカラム(Qiagen)で精製した。そのPCR産物を、標準条件下で(Sambrookら、同上、参照)T4ポリヌクレオチドキナーゼ及び1mMの濃度のrATPでリン酸化した。800bpのPDC2ターミネーターフラグメントを、アガロースゲル電気泳動後に精製し、仔ウシ腸ホスファターゼで脱リン酸化したNcoI(平滑末端)消化pMI279に連結した。生じたプラスミドをpMI286と命名し、このプラスミドは、順に、C.sonorensis PDC2プロモーター、G418耐性遺伝子に作動可能に連結されたC.sonorensis TDH1プロモーター及びS.cerevisiae MEL5ターミネーター、巨大菌LDH遺伝子に作動可能に連結されたC.sonorensis PGK1プロモーター、S.cerevisiae GAL10ターミネーター、次にC.sonorensis PDC2ターミネーターを含む。この構築物の概略を図15に示す。
pMI286プラスミドをNotIで消化し、PDC2 5’側及び3’側領域に隣接されたG418耐性及びLDH発現カセットから成る6400bpフラグメントを切り出した。この6400bpフラグメントを使用して、上記実施例1で述べた方法によってC.sonorensisを形質転換した。その形質転換体を、200μg/mLの濃度のG418抗生物質を添加したYPD寒天平板上で増殖させた。平板を30℃で2−5日間インキュベートし、その後形質転換体を新鮮な選択平板に再び線条接種した。それらの形質転換体を286−1から286−40までと称した。
巨大菌LDHがPDC2遺伝子座に組み込まれた形質転換体を特定するために、C.sonorensis PDC2プローブ(欠失領域のヌクレオチドに対応する)を用いて、pMI286形質転換体から単離したゲノムDNAのサザンブロット分析を実施した。形質転換体286−1、286−2、286−4、286−19及び286−30においてPDC2ハイブリダイズバンドが存在しないことは、PDC2遺伝子が欠失していることを示唆した。他のpMI286形質転換体及び非形質転換C.sonorensisは、PDC2ハイブリダイゼーションにおいて陽性シグナルを生じた。巨大菌LDHプローブとのハイブリダイゼーションは、LDHがpdc2欠失体に1コピー存在することを示した。PDC2遺伝子座へ標的組込みの頻度は15%であった。
これらの結果は、PDC2遺伝子座への形質転換pMI286 DNAの標的組込みが、PDC2プロモーターとPDC2ターミネーター配列との間の相同的組換えを通して起こることを示した。これらの結果はまた、PDC2がC.sonorensisにおける単一コピー遺伝子であることを示している。さらに、PDC2の外での組込み事象が起こった。一部の形質転換体では、LDH遺伝子がゲノム内に1コピーより多く組み込まれた。
実施例10:pdc1を欠失し、pdc2を破壊され、pdc1及びpdc2遺伝子座にゲノム内に組み込まれた巨大菌LDHの2コピーを含有する、C.sonorensis菌株の構築
pdc1遺伝子座に組み込まれた巨大菌LDHを有するC.sonorensis形質転換体265−15を、巨大菌LDHによる第二の形質転換のための宿主として選択した。形質転換体265−15を、上記実施例1で述べた方法を用いて、NotI消化したpMI286でさらに形質転換し、その形質転換体を、200μg/mLの濃度のG418抗生物質を添加したYPD寒天平板上で選択した。平板を選択のために30℃で2−5日間インキュベートし、それによって得た形質転換体を、新鮮な選択平板に再び線条接種することによって精製した。それらの形質転換体をC44/286−1からC44/286−40までと称した。
PDC2プローブ(欠失領域内のヌクレオチドに対応する)を使用してpdc2遺伝子の破壊を確認した。形質転換体C44/286−10、C44/286−26、C44/286−27、C44/286−28、C44/286−29、C44/286−30、C44/286−31、C44/286−32及びC44/286−33においてPDC2ハイブリダイズバンドが存在しないことは、PDC2遺伝子が欠失していることを示唆した。pdc1、pdc2二重欠失体においてゲノム内に巨大菌LDHが2コピー存在することは、巨大菌LDH遺伝子をプローブとして使用して、HindIII消化した酵母DNAのサザン分析によって確認した。
これらの結果は、PDC2遺伝子座への形質転換pMI286 DNAの標的組込みが、PDC2プロモーターとPDC2ターミネーター配列との間の相同的組換えを通して起こることを示した。これらの結果はまた、PDC2がC.sonorensisにおける単一コピー遺伝子であること、及びPDC2遺伝子座の外で組込み事象が起こりうることを確認している。一部の形質転換体では、LDH遺伝子がゲノム内に1コピーより多く組み込まれた。pdc1を欠失し、同時にpdc2を破壊された形質転換体は生存可能である。
この実施例はまた、種々のマーカーを使用するとき、C.sonorensisを独立して多重形質転換できることを確認した。このようにして、宿主ゲノム内の対象遺伝子(LDH)のコピー数を増加させることも可能である。
実施例11:pdc1−pdc2−菌株によるエタノールの産生
PDC1及び/又はPDC2遺伝子の欠失又は破壊を有するカンジダ菌株におけるエタノール産生を次のように分析した。C44/286−10、C44/286−26及びC44/286−33と称する形質転換体、及び対照として含めた他の4つの菌株を、250mL振とうフラスコ内のYP+5%グルコース50mL中、250rpmで振とうしながら30℃の温度で増殖させた。試料を毎日回収し、細胞を遠心分離によって取り出した。接種の56時間後に採取した培養上清試料を、Boehringer Mannheim社のエタノールUV法によってエタノールに関して分析した(表1)。これらの結果は、pdc1とpdc2の両方を欠失した形質転換体によるエタノール産生は、無傷PDC1又はPDC2遺伝子を含む菌株に比べて10倍以上低いことを示した。
これらの結果は、両方の遺伝子を同時に欠失したときにのみエタノール産生の著しい低下が認められるので、PDC1及びPDC2の両方が機能性ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードすることを明らかにした。これらの結果はまた、PDC2オープンリーディングフレームの約60%を除去するPDC2の破壊はPDC2機能を消滅させることを示唆した。

Figure 0004649109

実施例12:LDHを含まないPDC2の破壊のためのベクター
外来性LDHコード配列を導入せずにPDC2を置換するためのベクターを調製した。巨大菌LDH遺伝子を、1276bpのSpeI−XbaIフラグメントとして、実施例9で述べたpMI286プラスミドから除去した。pMI286をSpeIで消化し、その線状化した分子をXbaIで部分消化した。8100bpのSpeI−XbaIフラグメントをゲル電気泳動後に単離し、再環状化させた。pMI287と称する、生じたプラスミドは、順に、C.sonorensis PDC2プロモーター、G418耐性遺伝子に作動可能に連結されたC.sonorensis TDH1プロモーター及びS.cerevisiae MEL5ターミネーター、C.sonorensis PGK1プロモーター、次にC.sonorensis PDC2ターミネーターを含み、図16に概略図を示している。
pMI287をNotIで消化し、PDC2 5’側及び3’側領域に隣接されたG418発現カセットから成る5100bpフラグメントを切り出した。この5100bpフラグメントを使用して、上記実施例1で述べた方法によってC.sonorensisを形質転換した。形質転換体を、200μg/mLの濃度のG418抗生物質を添加したYPD寒天平板上で増殖させた。平板を30℃で2−5日間インキュベートし、形質転換体を新鮮な選択平板に再び線条接種した。
形質転換体を287−1から287−57までと称した。成功した形質転換体を特定するために、欠失領域のヌクレオチドに対応するPDC2プローブを用いて、pMI287形質転換体から単離したゲノムDNAのサザンブロット分析を実施した。形質転換体287−6及び287−16ではPDC2ハイブリダイズバンドは認められず、PDC2遺伝子が欠失していることを示唆した。
実施例13:ヘルベチカス菌LDHの発現のため及びPDC2遺伝子座への形質転換DNAの標的組込みのためのベクター
pMI286内の巨大菌LDHをコードする配列を、ヘルベチカス菌LDHをコードするDNAで置換するために、実施例9で述べたpMI286を制限酵素SpeIで消化し、DNAポリメラーゼI、クレノウ断片、及び4つのdNTPの各々で平滑末端にして、その後BspMIで消化した。図9に示すプラスミドpMI247をBamHIで消化し、DNAポリメラーゼI、クレノウ断片、及び4つのdNTPの各々で平滑末端にして、その後BspMIで消化した。pMI286の6800bp SpeI(平滑末端)−BspMIフラグメントとpMI247の2700bp BamHI(平滑末端)−BspMIフラグメントとを連結した。pMI288と称する、生じたプラスミドは、順に、C.sonorensis PDC2プロモーター、G418耐性遺伝子に作動可能に連結されたC.sonorensis TDH1プロモーター及びS.cerevisiae MEL5ターミネーター、ヘルベチカス菌LDH遺伝子に作動可能に連結されたC.sonorensis PGK1プロモーター及びS.cerevisiae CYC1ターミネーター、次にC.sonorensis PDC2ターミネーターを含み、図17に概略図を示している。
pMI288をNotIで消化し、PDC2 5’側及び3’側領域に隣接されたG418耐性及びLDH発現カセットから成る6400bpフラグメントを切り出した。pdc1遺伝子座に組み込まれたヘルベチカス菌LDHを有する、257−3と称するC.sonorensis形質転換体を、ヘルベチカス菌LDHによる第二の形質転換のための宿主として選択した。形質転換体257−3を、上記実施例1で述べた方法によって、pMI288の6400bpのNotIフラグメントでさらに形質転換した。形質転換体を、200μg/mLの濃度のG418抗生物質を添加したYPD寒天平板上で選択した。平板を30℃で2−5日間インキュベートし、それによって得られた形質転換体を、新鮮な選択平板に再び線条接種することによって精製した。これらの形質転換体をC40/288−1からC40/288−40までと称した。
前記遺伝子座の欠失領域内のヌクレオチドに対応するPDC2プローブを使用して、pdc2遺伝子の破壊を確認した。形質転換体C40/288−2、C40/288−11、C40/288−29、C40/288−34及びC40/288−38においてPDC2ハイブリダイズバンドが存在しないことは、PDC2遺伝子が欠失していることを示唆した。pdc1、pdc2二重欠失体においてゲノム内にヘルベチカス菌LDHが2コピー存在することは、ヘルベチカス菌LDH遺伝子をプローブとして使用して、HindIII消化した酵母DNAのサザンブロット分析によって確認した。
これらの結果は、C.sonorensis PDC2遺伝子座への外来性LDH配列の標的組込みが達成され、PDC2遺伝子座が破壊された細胞が提供されることを明らかにした。
実施例14:ゲノム内に組み込まれたヘルベチカス菌又は巨大菌LDH遺伝子を含有するC.sonorensisによる、好気性試験管培養における特定グルコース培地又は濃厚グルコース培地でのL−乳酸の産生
C.sonorensis細胞及び上記実施例で開示したその形質転換体(すなわち、246−27、247−11、265−03、265−05、265−06、265−07、265−11、265−12、265−14、265−15、265−17、265−18、265−22、265−23、265−29、265−33、265−34、265−35、265−38、265−39、265−42、265−43、265−44、265−45、265−46、265−47、265−48、265−49、265−51、265−52、265−55、265−56、265−57及び265−60)を、YPD培地(5%グルコース及び0.5M MESを添加したYP、pH5.5)又はYD培地(2%グルコース及び0.5M MESを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基、pH5.5)で培養した。各々の形質転換体からの2つの独立したコロニーを、YPD又はYD培地5mLを含む14mL使い捨てプラスチックチューブに接種し、250rpmで振とうしながら30℃で培養した。培養中に試料を回収し、OD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集し、培養上清をHPLCによって乳酸、グルコース及びエタノールに関して分析した。HPLC分析は、Waters 510 HPLCポンプ、Waters 717+自動試料採取器、ならびに、屈折率検出器(Waters 410 示差屈折計)及びUV検出器(Waters 2487 デュアルλUV検出器)を備えたWater System Interfase Module液体クロマトグラフィーコンプレックス(complex)を用いて実施した。Aminex HPX−87Hイオン排除カラム(300mm×7.8mm、Bio−Rad)を使用して、35℃において水中5mM HSOで平衡させ、0.6mL/分の流速で水中5mM HSOで試料を溶出した。データの捕捉と管理はWaters Millenniumソフトウエアを用いて実施した。2つの独立した試料から得られた数値を平均した。これらの結果を表2及び3に示す。
特定培地での13時間の培養後、ヘルベチカス菌LDH遺伝子を含む形質転換体246−27及び247−11は0.1−0.4g/Lの乳酸を産生し、19時間後には1.8−3.9g/Lの乳酸を産生した。
特定培地での13時間の培養後、1コピーのゲノム内の未知の部位に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含む形質転換体265−03、265−06、265−11、265−12、265−18、265−29、265−44、265−45、265−46、265−52、265−55及び265−57は、0.5−1.9g/Lの乳酸を産生し、19時間後には4.0−6.3g/Lの乳酸を産生した。
特定培地での13時間の培養後、ゲノム内の未知の部位に組み込まれた2コピーの巨大菌LDH遺伝子を含む形質転換体265−14、265−22及び265−23は、0.5−1.2g/Lの乳酸を産生し、19時間後には3.8−6.1g/Lの乳酸を産生した。
特定培地での13時間の培養後、3コピーの巨大菌LDH遺伝子を含む形質転換体265−56は、0.7g/Lの乳酸を産生し、19時間後には5.2g/Lの乳酸を産生した。
特定培地での13時間の培養後、pdc1遺伝子座に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含む(pdc1遺伝子型)形質転換体265−05、265−07、265−15、265−17、265−33、265−34、265−35、265−38、265−39、265−42、265−43、265−47、265−48、265−49、265−51及び265−60は、0.4−2.7g/Lの乳酸を産生し、19時間後には3.4−7.5g/Lの乳酸を産生した。
濃厚培地での12時間の培養後、ヘルベチカス菌LDH遺伝子を含む形質転換体246−27及び247−11は、0.5−1.7g/Lの乳酸を産生し、17時間後には3.7−6.1g/Lの乳酸を産生した。これに対し、宿主菌株は17時間の培養後0.1g/Lの乳酸を産生した。
濃厚培地での12時間の培養後、巨大菌LDH遺伝子を含む形質転換体265−03、265−06、265−11、265−12、265−18、265−29、265−44、265−45、265−46、265−52、265−55及び265−57は、1.4−4.3g/Lの乳酸を産生し、17時間後には7.2−9.8g/Lの乳酸を産生した。
濃厚培地での12時間の培養後、2コピーの巨大菌LDH遺伝子を含む形質転換体265−14、265−22及び265−23は、2.1−1.9g/Lの乳酸を産生し、17時間後には6.3−6.8g/Lの乳酸を産生した。
濃厚培地での12時間の培養後、3コピーの巨大菌LDH遺伝子を含む形質転換体265−56は、2.6g/Lの乳酸を産生し、17時間後には7.5g/Lの乳酸を産生した。
濃厚培地での12時間の培養後、pdc1遺伝子座に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含む(pdc1遺伝子型)形質転換体265−05、265−07、265−15、265−17、265−33、265−34、265−35、265−38、265−39、265−42、265−43、265−47、265−48、265−49、265−51及び265−60は、2.0−4.7g/Lの乳酸を産生し、17時間後には7.1−10.7g/Lの乳酸を産生した。
これらの結果は、宿主菌株が乳酸を産生しなかったときにLDH形質転換体は乳酸を産生したことを示している。巨大菌及びヘルベチカス菌LDHはC.sonorensisにおいて活性であることを示した。これらの異種LDHは、従って、PDCの存在下でピルビン酸塩に関して有効に競合しうる。pdc1の欠失は、乳酸塩の全体的収率及び産生に影響を及ぼさないと思われた。2コピー(265−14、265−22、265−23)又は3コピー(265−56)を含む形質転換体では、残留グルコースはより高く、エタノール濃度はより低かった。より高いLDHコピー数はまた、グルコースからのより高い乳酸収率、より低いエタノール産生、及び乳酸対エタノールのより高い比率をもたらした。生物量(OD600)の上昇は、1コピーより多くの巨大菌LDHを含む菌株ではより少なかった。

Figure 0004649109
Figure 0004649109

実施例15:ゲノム内に組み込まれたヘルベチカス菌、巨大菌又はR.oryzae LDH遺伝子を含有するC.sonorensisによる、好気性試験管培養における特定グルコース培地又は濃厚グルコース培地でのL−乳酸の産生
C.sonorensis細胞及び上記で開示したその形質転換体(すなわち、246−27、247−11、265−39、265−5、265−15、265−44、266−1、266−2、266−4、266−6、266−7、266−8、266−11、278−2、278−3、278−4、278−6、278−7、278−8、278−9、278−11、278−12、278−13、278−14、278−15、278−17、278−18、278−19、278−20、257−3、257−5、257−6、257−8、257−9、257−10、257−11及び257−12)を、YPD培地(5%グルコース及び0.5M MESを添加したYP、pH5.5)又はYD培地(2%グルコース及び0.5M MESを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基、pH5.5)で培養した。各々の形質転換体からのコロニーを、YPD又はYD培地5mLを含む14mL使い捨てプラスチックチューブに接種し、250rpmで振とうしながら30℃で培養した。培養中、12及び17時間目の時点で試料を回収し、OD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集し、上述したように培養上清をHPLCによって乳酸、グルコース及びエタノールに関して分析した。HPLC分析は上記実施例14で詳述したように実施した。これらの結果を表4及び5に示す。
特定培地での12時間の培養後、ヘルベチカス菌LDH遺伝子を含む形質転換体は、0.1−0.7g/Lの乳酸を産生した。濃厚培地では、これらの細胞によって0.9−2.7g/Lの乳酸が産生された。
特定培地での12時間の培養後、巨大菌LDH遺伝子を含む形質転換体は、0.1−0.5g/Lの乳酸を産生した。濃厚培地では、これらの細胞によって1.9−3.2g/Lの乳酸が産生された。
特定培地での12時間の培養後、R.oryzae LDH遺伝子を含む形質転換体は、0.2−0.6g/Lの乳酸を産生した。濃厚培地では、これらの細胞によって0.9−2.7g/Lの乳酸が産生された。
特定培地での12時間の培養後、pdc1遺伝子座に組み込まれたR.oryzae LDH遺伝子及び巨大菌LDH遺伝子の両方を含む形質転換体は、0.1−0.9g/Lの乳酸を産生した。濃厚培地では、これらの細胞によって1.0−3.3g/Lの乳酸が産生された。
特定培地での17時間の培養後、ヘルベチカス菌LDH遺伝子を含む形質転換体は、0.9−2.1g/Lの乳酸を産生した。濃厚培地では、これらの細胞によって6.6−9.9g/Lの乳酸が産生された。
特定培地での17時間の培養後、巨大菌LDH遺伝子を含む形質転換体は、0.8−1.7g/Lの乳酸を産生した。濃厚培地では、これらの細胞によって8.7−11.0g/Lの乳酸が産生された。
特定培地での17時間の培養後、R.oryzae LDH遺伝子を含む形質転換体は、0.7−1.3g/Lの乳酸を産生した。濃厚培地では、これらの細胞によって7.3−9.5g/Lの乳酸が産生された。
特定培地での17時間の培養後、pdc1遺伝子座に組み込まれたR.oryzae LDH遺伝子及び巨大菌LDH遺伝子の両方を含む形質転換体は、0.7−3.0g/Lの乳酸を産生した。濃厚培地では、これらの細胞によって5.0−10.7g/Lの乳酸が産生された。
これらの結果は、3つの異種LDHすべてがC.sonorensisにおいて活性であり、乳酸を産生するために使用しうることを示した。これらのLDHは、PDCの存在下でピルビン酸塩と有効に競合しうる。これらのLDH遺伝子のいずれかの発現は、特に濃厚培地において、グルコース利用、増殖及びエタノール産生を低下させた。グルコース利用率及び増殖の低下は、ヘルベチカス菌LDHを含む菌株で最も強く、R.oryzae LDHを含む菌株において最も軽度であり、巨大菌LDH形質転換体は中間的な挙動を示した。2つの由来のLDHを含む形質転換体では、巨大菌LDHの存在によってその作用が隠蔽された。

Figure 0004649109
Figure 0004649109

実施例16:ゲノム内に組み込まれた巨大菌又はR.oryzae LDH遺伝子を含有するC.sonorensisによる、微好気性振とうフラスコ培養における、緩衝剤を含む又は含まない特定グルコース培地でのL−乳酸の産生
巨大菌LDH遺伝子を含む(すなわち265−23及び265−55)又はR.oryzae LDH遺伝子を含む(266−8)C.sonorensis形質転換体を、特定グルコース培地で培養した。前培養物をYD培地(5%グルコース及び0.5M MESを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基、pH5.5)で増殖させ、細胞を遠心分離によって収集し、培養実験のためOD600が15になるようにYD培地(10%グルコースを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基)50mLに再懸濁した。酵母は、CaCO 4gを含む又は含まない250mLエルレンマイヤーフラスコ中、100rpmで振とうしながら30℃で培養した。培養中に試料を回収し、CaCOを含まない培養物からOD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集し、培養上清をL−乳酸(Boehringer Mannheim社、Roche社のL−乳酸UV法によって)及びグルコース(Boehringer Mannheim社、Roche社のグルコース/GOD−Perid法によって)に関して分析した。これらの結果を表6に示す。
24時間の培養後、巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体265−55は、CaCO緩衝剤を含む場合は35.7g/Lの乳酸を産生し、緩衝剤なしの場合はpHが2.75に低下したとき6.16g/Lの乳酸を産生した。2コピーの巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体265−23は、CaCO緩衝剤を含む場合は38.2g/Lの乳酸を産生し、緩衝剤なしの場合はpHが2.68に低下したとき6.81g/Lの乳酸を産生した(24時間の培養)。R.oryzae LDH遺伝子を含有する形質転換体266−8は、CaCO緩衝剤を含む場合は35.4g/Lの乳酸を産生し、緩衝剤なしの場合はpHが2.83に低下したとき3.05g/Lの乳酸を産生した(24時間の培養)。
これらの結果は、pH6.5のCaCOの存在下では、乳酸の産生及びグルコース利用がpH3以下の非緩衝条件におけるよりも高かった。CaCOの存在下ではより高い乳酸力価が達成された。

Figure 0004649109

実施例17:CaCO 緩衝及び非緩衝培養における細胞内乳酸
上記実施例16で述べたように、特定グルコース培地で培養した、巨大菌LDH遺伝子を含む(すなわち265−23及び265−55)又はR.oryzae LDH遺伝子を含む(266−8)C.sonorensis形質転換体からの細胞ペレットを分析して、細胞内乳酸濃度を測定した。培養中、8時間目と24時間目に試料(2mL)を回収し、OD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集した。上清を廃棄し、各々のペレットを、2mM EDTAを添加した、氷冷10mM KHPO/KHPO、pH7.5 1mLで洗浄した。洗浄した細胞ペレットを同じ緩衝液0.5mLに再懸濁し、−70℃で保存した。試料を解凍し、1M Tris−HCl、pH9.0(1mL)で1回洗浄して、13,000rpmで1分間遠心分離した。ペレットを氷冷5%トリクロロ酢酸(TCA)1mLに懸濁し、1分間渦動攪拌した。渦動攪拌後、試料を約30分間氷上に保持した。氷上でのインキュベーション後、試料を1分間渦動攪拌し、4℃で30分間、13,000rpmで遠心分離した。収集した上清において乳酸レベルを測定した。酵素的方法によって(L−乳酸UV法、Boehringer Mannheim社、Roche社)又はHPLCによって(実施例14におけるように)、乳酸濃度を分析した。乳酸の細胞内濃度を次のように算定した:
1.細胞(試料中の)の細胞内容量:
培養物の乾燥重量(g/L) × 試料の容量(L) × 2mL/g細胞 = 細胞容量(mL)。
細胞容量を、0.001を乗じてリットルに換算する。細胞1グラム(乾燥重量)は細胞容量2mLに相当する(Gancedo & Serrano,1989,“Energy Yielding Metabolism”、The yeastsより(Rose & Harrison編集)、第3巻、Academic Press:London)。
2.細胞中の乳酸量:
測定した乳酸濃度(g/L) × 使用した5%TCAの容量(L) = 試料中の乳酸量(g)。細胞中の乳酸濃度を算定するには、試料中の乳酸量(g)を細胞容量(L)で除する。
24時間の培養後、巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体265−55は、CaCO緩衝剤を含む場合は28.2g/Lの細胞内乳酸濃度、緩衝剤なしでは7.2g/Lの細胞内乳酸濃度を有していた。2コピーの巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体265−23は、24時間の培養後、CaCO緩衝剤を含む場合は46.1g/L、緩衝剤なしでは8.2g/Lの細胞内乳酸濃度を有していた。R.oryzae LDH遺伝子を含有する形質転換体266−8は、CaCO緩衝剤を含む場合は45.4g/L、緩衝剤なしでは4.9g/Lの細胞内乳酸濃度を有していた(24時間の培養)。これらの結果を表7に示す。
これらの結果は、8時間の培養後、非緩衝培養中で増殖したときの形質転換体265−55及び265−23では細胞内乳酸レベルが細胞外レベルよりも2倍高いことを示した。他の形質転換体についての培養8時間目では、細胞内レベルと細胞外レベルの差は小さく、約10%であった。CaCOを培養物に含めたとき、すべての菌株において細胞内及び細胞外乳酸レベルはCaCOなしの培養物よりも高かった。CaCO緩衝培養物では、すべての菌株で細胞内及び細胞外乳酸濃度が8時間目から24時間目まで上昇した。非緩衝培養物での細胞内乳酸濃度は、8時間目と24時間目で同様である。菌株266−8における細胞内乳酸レベルは、その他の菌株のレベルよりも低い。

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実施例18:ゲノム内に組み込まれたヘルベチカス菌又は巨大菌LDH遺伝子を含有するC.sonorensisにおける乳酸デヒドロゲナーゼ及びピルビン酸デカルボキシラーゼの酵素活性
C.sonorensis形質転換体(すなわち、246−27、247−11、257−3、257−12、257−6、247−9、246−27、247−11、265−39、265−15、265−44、265−55、265−23、265−22、265−56、278−14、278−17、286−4、286−30及び286−1)を、250mLエルレンマイヤーフラスコ中、YD培地(5%グルコース及び0.5M MESを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基、pH5.5)50mLにおいて、250rpmで振とうしながら30℃でOD600 10まで培養した。遠心分離によって細胞を採集し、その培養上清をHPLCによって分析した。酵素活性測定に使用する細胞試料(2mL)を遠心分離によって収集し、2mM EDTAを添加した、氷冷10mM KHPO/KHPO、pH7.5 1mLで洗浄した。洗浄した細胞ペレットを同じ緩衝液0.5mLに再懸濁し、−70℃で保存した。試料を室温で解凍し、超音波破砕緩衝液(sonication buffer)(2mM MgCl及び10mM DTTを添加した100mM KHPO/KHPO、pH7.5)中で1回洗浄した(1mL)。洗浄した試料を超音波破砕緩衝液0.5mLに再懸濁し、ビーズビーター(Bead Beater)ホモジナイザーでガラスビーズ0.5mLを用いて1分間ホモジナイズした。ホモジナイズ後、試料を4℃で30分間、14,000rpmで遠心分離した。上清試料を収集し、そして乳酸デヒドロゲナーゼ活性は、0.4mM NADH、5mM フルクトース−1,6−ジホスフェート、1mM グリオキシル酸及び2mM ピルビン酸塩を含む、酢酸ナトリウム緩衝液(50mM 酢酸ナトリウム、pH5.2)(ヘルベチカス菌LDH)又はイミダゾール緩衝液(40mM 塩酸イミダゾール、pH6.5)(巨大菌LDH)中、30℃で、Cobas MIRA自動分析器によって分光光度測定した(A340)。タンパク質濃度をローリー法(Lowryら、1951、J.Biol.Chem.193:265−275)によって測定した。ウシ血清アルブミン(Sigma)をタンパク質標準品として使用した。ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性は、0.2mM NADH、50mM MgCl、0.2mM チアミンピロリン酸(コカルボキシラーゼ)、90単位のADH及び50mM ピルビン酸塩を含むイミダゾール緩衝液(40mM 塩酸イミダゾール、pH6.5)中、30℃で、Cobas MIRA自動分析器によって分光光度測定した(A340)。酵素活性1Uは、1分間に1μmolのNADHをNADに変換する活性の量と定義した。これらの結果を表8に示す。
この実施例は、細胞内LDH活性がゲノム内のLDH遺伝子のコピー数に相関することを明らかにした。ヘルベチカス菌LDHの1コピーを含有する菌株での算定LDH活性は8U/mg総細胞タンパク質であり、2コピーを含有する菌株での活性は15又は35U/mg総細胞タンパク質であった。乳酸力価及びグルコースからの収率は多コピー数のLDH遺伝子を含む細胞ではより高かったが、エタノール力価は1コピーだけのLDH遺伝子を含む菌株においてよりも低かった。巨大菌LDHの1コピーを含有する菌株での算定LDH活性は2−3U/mg総細胞タンパク質、2コピーを含有する菌株での活性は10U/mg、及び3コピーを含有する菌株での活性は40U/mgであった。
ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性は、典型的には、無傷PDC2遺伝子を含有する菌株において2−4U/mg総細胞タンパク質であった。pdc2を破壊したとき、PDC活性は0.4U/mg総細胞タンパク質以下に低下した。pdc1とpdc2の両方を欠失又は破壊した場合は(菌株C44/286−10)、PDC活性は0.07U/mg総細胞タンパク質に低下した。

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実施例19:ゲノム内に組み込まれたヘルベチカス菌、巨大菌又はR.oryzae LDHコード遺伝子、あるいは巨大菌とR.oryzae LDH遺伝子の両方を含有するC.sonorensisによる、特定グルコース培地でのL−乳酸の産生
C.sonorensis細胞及びその形質転換体(すなわち、266−7、266−8、246−27、247−11、257−3、257−12、257−6、247−9、265−39、265−15、265−44、265−55、265−23、265−22、265−56、266−3、278−14、278−17、286−4、286−30及び286−1)を、YD培地(5%グルコース及び0.5M MESを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基、pH5.5)で培養し、遠心分離によって収集した。細胞をYD(10%グルコースを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基)50mL中に再懸濁して、培養実験のためにOD600を15とした。細胞を、100rpmで振とうしながら30℃で、CaCO 4gを含む250mLエルレンマイヤーフラスコ中で培養した。培養中に試料を回収し、遠心分離によって細胞を採集して、増殖培地を上述したように(実施例14)HPLCによって、乳酸、グルコース及びエタノールに関して分析した。これらの結果を表9−13に示す。
培養上清中の最大乳酸力価は、典型的には、すべてのグルコースが消費された後、培養中72時間目又はそれ以後に達成された。種々の遺伝的背景に基づいて分類した最大乳酸力価及び収率は次の通りであった:
−1コピーのR.oryzae菌LDH(菌株266−7):96時間目に81g/L及び収率79%
−1コピーの巨大菌LDH(菌株265−55):96時間目に85g/L及び収率82%
−1コピーのヘルベチカス菌LDH(菌株257−3):96時間目に85g/L及び収率84%
−2コピーの巨大菌LDH(菌株265−22):72時間目に87g/L及び収率84%
−3コピーの巨大菌LDH(菌株265−56):72時間目に83g/L及び収率80%
−2コピーのヘルベチカス菌LDH(菌株247−9):72時間目に90g/L及び収率89%
−1コピーのR.oryzae菌LDH及び1コピーの巨大菌LDH(菌株278−17):72時間目に79g/L及び収率76%
−1コピーのR.oryzae菌LDH及び2コピーの巨大菌LDH(菌株278−14):96時間目に89g/L及び収率86%。
すべてのグルコースが消費された後、次の培養物では乳酸カルシウム沈殿物が形成された:246−27、247−11、265−39、265−15、265−44、265−23、265−22、278−14、278−17、286−4、286−30及び286−1。沈殿物形成はまた、非常に高い乳酸力価が得られたことを示唆した。
これらの結果は、ヘルベチカス菌、R.oryzae又は巨大菌LDHを過剰発現するC.sonorensisは、pH6.5のCaCO緩衝特定培地中でグルコースから高い最終乳酸力価(>80g/L)及び収率(>80%)を達成することを明らかにした。ヘルベチカス菌と巨大菌LDH形質転換体は基本的に等しく良好な成績であり、わずかに低い乳酸力価及び収率を生じたR.oryzae LDH形質転換体よりも良好であった。LDHコピー数は特に副産物形成に影響を及ぼした:より高いLDHコピー数及びLDH活性は、より低いエタノール及び酢酸塩産生をもたらした。ヘルベチカス菌及び巨大菌LDH形質転換体の両方が、R.oryzae形質転換体よりもより低いエタノール及び酢酸塩を産生した。グリセロール及びピルビン酸塩を含む、他の測定された副産物は、無視しうる量で存在し、PDC+、pdc1−又はpdc2−遺伝子型の間で有意差がなかった。

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実施例20:ゲノム内に組み込まれたヘルベチカス菌又はR.oryzae LDHコード遺伝子を含有するC.sonorensisによる、窒素スパージした(sparged)チューブにおける特定グルコース培地でのL−乳酸の産生
形質転換C.sonorensis細胞におけるL−乳酸の産生を次のようにして明らかにした。C.sonorensis細胞及びヘルベチカス菌LDH遺伝子を含む(すなわち246−14、246−18、246−23、246−27、247−7、247−8、247−11及び257−3)又はR.oryzae LDH遺伝子を含む(266−3及び266−4)その形質転換体を、YD培地(12%グルコース及び0.4M MESを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基、pH5.5)で培養した。前培養物を、250mLエルレンマイヤーフラスコにおいて250rpmで振とうしながら30℃で、YD培地(6.5%グルコース及び0.4M MESを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基、pH5.5)50mL中で増殖させた。細胞を遠心分離によって収集し、0.9%NaClで1回洗浄して、培養実験のためにOD600が11になるようにYD培地50mLに再懸濁した。酵母を、窒素でスパージした50mL使い捨てプラスチックチューブにおいて250rpmで浸透しながら30℃で培養した((ほぼ)嫌気性条件)。培養中に試料を回収し、その後チューブを窒素でスパージした。OD600を測定し、遠心分離によって細胞を採集して、培養上清を、乳酸、グルコース及びエタノールに関して、上述したようにHPLCによって分析した。これらの結果を表14−20に示す。
94時間の培養後、ヘルベチカス菌LDH遺伝子を含有する形質転換体は、6.9−7.2g/Lの乳酸(収率66−84%に等しい)及び1−1.4g/Lのエタノールを産生し、一方、宿主菌株は0.1g/Lの乳酸及び40g/Lのエタノールを産生した。R.oryzae LDH遺伝子を含有する形質転換体は、94時間の培養後、7.2−8.8g/Lの乳酸(収率13−18%に等しい)及び17−28g/Lのエタノールを産生した。R.oryzae LDH形質転換体によるグルコース消費及びエタノール産生は、ヘルベチカス菌形質転換体よりも迅速であった。
これらの結果は、ヘルベチカス菌LDH又はR.oryzae LDHで形質転換したC.sonorensisが、窒素スパージしたチューブでの培養においてグルコースから乳酸を産生したことを示した。

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実施例21:ゲノム内に組み込まれたヘルベチカス菌又は巨大菌LDH遺伝子を含有するC.sonorensisによる、微好気性振とうフラスコ培養における緩衝剤を含まない濃厚グルコース培地でのL−乳酸の産生
形質転換C.sonorensis細胞におけるL−乳酸の産生を次のようにして明らかにした。上記で開示した巨大菌LDH遺伝子を含む(すなわち265−23及び286−1)又はヘルベチカス菌LDH遺伝子を含む(246−27及び247−11)C.sonorensis形質転換体を、250mLエルレンマイヤーフラスコにおいて250rpmで振とうしながら30℃で、YD培地(5%グルコース及び0.5M MESを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基、pH5.5)50mL中で培養した。細胞を遠心分離によって収集し、培養実験のためOD600が15になるように、5%グルコースを添加したYP培地50mLに再懸濁した。細胞を、250mLエルレンマイヤーフラスコ中、100rpmで振とうしながら30℃で培養した。培養中に試料を回収し、OD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集した。培養上清を、L−乳酸(Boehringer Mannheim社、Roche社のL−乳酸UV法によって)、グルコース(Boehringer Mannheim社、Roche社のグルコース/GOD−Perid法によって)、酢酸塩(Boehringer Mannheim社、Roche社の酢酸UV法によって)、及びエタノール(Boehringer Mannheim社、Roche社のエタノールUV法によって)に関して分析した。これらの結果を表15−20に示す。
酵母ゲノム内にランダムに組み込まれたヘルベチカス菌LDH遺伝子を含有する形質転換体246−27及び247−11(PDC+遺伝子型)は、24時間の培養後、7.8−9.0g/Lの乳酸(収率24−29%に等しい)を産生した。pdc2遺伝子座に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体286−1(pdc2−遺伝子型)は、24時間の培養後、8.9g/Lの乳酸(収率31%に等しい)を産生した。ゲノム内にランダムに組み込まれた2コピーの巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体265−23(PDC+遺伝子型)は、24時間の培養後、9.1g/Lの乳酸(収率30%に等しい)を産生した。24時間の培養後、巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体は、グルコースからの収率が30−31%に等しい、8.9−9.1g/Lの乳酸を産生した。ヘルベチカス菌LDH遺伝子を含有する形質転換体は、グルコースからの収率が24−29%に等しい、7.8−9.0g/Lの乳酸を産生した。24時間目には一部のグルコースが消費されていなかったが、最終的にはすべてのグルコースが消費された(120時間目)。しかし、24時間目以降は、乳酸濃度のさらなる上昇は起こらなかった。すべての菌株によるグルコース消費は非常に類似していた。培養培地のpHは、この実験中は3.4−3.8であった。2コピーの巨大菌LDHを含有する形質転換体265−23は、培養の初期にはより少ないエタノール及び酢酸塩を産生したが、pdc2−形質転換体286−1は、培養の終了時近くで、その他の菌株よりもエタノール及び酢酸塩の産生が少なかった。
これらの結果は、ヘルベチカス菌LDH又は巨大菌LDHで形質転換したC.sonorensisが低pHの微好気性条件下でグルコースから9g/Lまでの乳酸を産生できることを明らかにした。

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実施例22:ゲノム内に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有するC.sonorensisによる、濃厚グルコース培地でのバイオリアクターにおけるL−乳酸の産生
上述した265−55、286−30及び265−15と称するC.sonorensis形質転換体を好気性バイオリアクターで培養した。2Lの作業容量で、実験室用バイオリアクター(Biostat CT−DCU3、Braun,Germany)において35℃でバッチ培養を実施した。産生期の間、pHは、5.0±0.1に維持するか、あるいは培養の48時間後に5M 水酸化カリウム(KOH)の自動添加によって6.0±0.1に上昇させた。150g/Lグルコースを添加したYP培地でバイオマスを産生した。バイオマス産生期に、23%(w/v)グリセロール中−80℃で保存した培養物20mLを、0.7−1の初期OD600で接種した。バイオリアクターを1.0L/分の流速の100%空気で洗い流し、この期間中800rpmで攪拌した。23.5時間の培養後、10−21g/Lの細胞量が産生された(乾燥重量)(使用したグルコースのグラム数につき0.2−0.3g乾燥重量に等しい)。24時間のバイオマス産生後、バイオリアクターを空にし、遠心分離によって(4000rpm、20℃、10分間)細胞を収集した。乳酸塩産生のための培地(100g/Lグルコースを添加したYP培地)をポンプでバイオリアクターに供給し、バイオマス産生期から収集した細胞を5g/L乾燥重量に相当する密度になるように接種した。バイオリアクターを1.0L/分の流速の10%空気−90%窒素ガスで洗い流し、500rpmで攪拌した。
培養中に試料を回収した。各々の試料について、乾燥細胞重量を測定し、OD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集した。培養上清を上述したようにHPLCによって、乳酸、グルコース、エタノール及び酢酸塩に関して分析した。これらの結果を表21及び22に示す。
ゲノム内にランダムに組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体(265−55、PDC+遺伝子型)は、乳酸塩産生期での52時間の培養後、pH5.0で28g/Lの乳酸(収率67%に等しい)を産生した。同じ形質転換体は、産生期での72時間の培養後、pH6.0で28g/Lの乳酸(収率60%に等しい)を産生した。
pdc1遺伝子座に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体(265−15、pdc1−遺伝子型)は、乳酸塩産生期での51時間の培養後、pH5.0で23g/Lの乳酸(収率66%に等しい)を産生した。
pdc2遺伝子座に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体(286−30、pdc2−遺伝子型)は、乳酸塩産生期での46時間の培養後、pH5.0で27g/Lの乳酸(収率54%に等しい)を産生した。
46−52時間の乳酸産生期後、形質転換体は23−28g/Lの乳酸(収率54−67%に等しい)を産生した。
これらの結果は、異種乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を過剰発現するC.sonorensisが、微好気性条件下での(例えば大気中0%−2%O)バッチ発酵においてグルコースから乳酸を産生することを明らかにした。

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細胞内乳酸及びピルビン酸塩
細胞内乳酸及びピルビン酸塩濃度は、試料容量が1mLであったこと及び細胞ペレットを1M Tris−HCl、pH9.0で洗浄し(1mL)、13,000rpmで1分間遠心分離して、−70℃で保存したことを除いて、実施例17で上述したように測定した。解凍後、ペレットを氷冷5%TCA 1mLに直接懸濁した。細胞内ピルビン酸濃度を試料から酵素的に分析した(ピルビン酸塩キット、Sigma Diagnostics)。これらの結果を表24−27に示す。
ゲノム内にランダムに組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体(265−55、PDC+遺伝子型)は、pH5.0で、乳酸塩産生期での52時間の培養後、細胞内で60.9g/Lの乳酸を産生した。同じ形質転換体は、乳酸塩産生期での72時間の培養後、pH6.0で、38.7g/Lの乳酸を産生した。
pdc1遺伝子座に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体(265−15、pdc1−遺伝子型)は、乳酸塩産生期での51時間の培養後、細胞内で13.4g/Lの乳酸を産生した。
pdc2遺伝子座に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体(286−30、pdc2−遺伝子型)は、乳酸塩産生期での49時間の培養後、14.3g/Lの乳酸を産生した。
ゲノム内にランダムに組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体(265−55、PDC+遺伝子型)は、pH5.0及びpH6.0での培養期間中、細胞内で0.1g/Lのピルビン酸塩を産生した。
pdc1遺伝子座(265−15、pdc1−遺伝子型)又はpdc2遺伝子座(286−30、pdc2−遺伝子型)に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体は、培養期間中細胞内で0.3g/Lのピルビン酸塩を産生した。
これらの結果は、pdc1の欠失及びpdc2の破壊は細胞内ピルビン酸塩レベルの上昇を生じさせることを示した。PDC+菌株では、培養の終了時近くで細胞内乳酸レベルが上昇したが、pdc1−及びpdc2−菌株ではこの傾向はそれほど明らかではなかった。

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乳酸デヒドロゲナーゼ及びピルビン酸デカルボキシラーゼ活性
乳酸デヒドロゲナーゼ及びピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を次のようにして測定した。酵素活性測定のための試料(2mL)を遠心分離によって収集し、細胞ペレットを、2mM EDTAを添加した氷冷10mM KHPO/KHPO、pH7.5 1mLで洗浄した。洗浄したペレットを同じ緩衝液0.5mLに再懸濁し、−70℃で保存した。試料を室温で解凍し、ホモジナイズ緩衝液(2mM MgCl及び10mM DTTを添加した100mM KHPO/KHPO、pH7.5)中で1回洗浄した(1mL)。洗浄した試料をホモジナイズ緩衝液0.5mLに再懸濁し、ビーズビーターホモジナイザーでガラスビーズ0.5mLを用いて1分間ホモジナイズした。ホモジナイズ後、試料を4℃で30分間、14,000rpmで遠心分離した。上清試料を収集し、乳酸デヒドロゲナーゼ及びピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を、グリオキシル酸を使用しなかったことを除いて、実施例18で上述したように分光光度測定した(A340)。これらの結果を表28−31に示す。
ゲノム内にランダムに組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体(265−55、PDC+遺伝子型)は、pH5.0の乳酸塩産生期での培養52時間目に、1.4U/mg総細胞タンパク質の乳酸デヒドロゲナーゼ活性及び0.8U/mg総細胞タンパク質のピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を生じた。同じ形質転換体は、乳酸塩産生期での培養72時間目に、pH6.0で、1.2U/mg総細胞タンパク質の乳酸デヒドロゲナーゼ活性及び0.4U/mg総細胞タンパク質のピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を生じた。
pdc1遺伝子座に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体(265−15、pdc1−遺伝子型)は、乳酸塩産生期での培養51時間目に、1.5U/mg総細胞タンパク質の乳酸デヒドロゲナーゼ活性及び0.5U/mg総細胞タンパク質のピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を生じた。
pdc2遺伝子座に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有する形質転換体(286−30、pdc2−遺伝子型)は、乳酸塩産生期での培養49時間目に、0.7U/mg総細胞タンパク質の乳酸デヒドロゲナーゼ活性及び0.1U/mg総細胞タンパク質のピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を生じた。
これらの結果は、ゲノム内に組み込まれた1コピーの巨大菌LDHを含有するすべての菌株においてLDH活性は同様であることを明らかにした。LDH活性はPDC活性よりも高く(U/mg総細胞タンパク質)、それ故LDHはピルビン酸塩に関してPDCと効率よく競合することができた。pdc2−菌株286−30は、野生型に比べて明らかに低いPDC活性を有する。pdc1−菌株265−15において認められたPDC活性へのpdc1欠失の影響は、経時的な、より緩やかな活性の低下であった。

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実施例23:ゲノム内に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有するC.sonorensisによる、濃厚グルコース培地でのバイオリアクターにおけるL−乳酸の嫌気的産生
上述した265−55と称するC.sonorensis形質転換体をバイオリアクターで培養した。2Lの作業容量で、実験室用バイオリアクター(Biostat CT−DCU3、Braun、Germany)において35℃でバッチ培養を実施した。150g/Lグルコースを添加したYP培地で好気的にバイオマスを産生した。バイオマス産生期に、23%(w/v)グリセロール中−80℃で保存した培養物20mLを接種した。バイオリアクターを1.0L/分の流速の100%空気で洗い流し、800rpmで攪拌した。溶解酸素濃度を酸素電極(Mettler Toledo)で継続的にモニターした。22.5時間のバイオマス産生後、バイオリアクターを空にし、遠心分離によって(4000rpm、20℃、10分間)細胞を収集した。乳酸産生のための培地(100g/Lグルコースを添加したYP)をポンプでバイオリアクターに供給し、遠心分離したバイオマスを4.5g/L細胞乾燥重量に等しい密度になるように接種した。バイオリアクターを1.0L/分の流速の100%窒素で洗い流し、500rpmで攪拌した。pHは、5M 水酸化カリウム(KOH)の自動添加によって5.0±0.1に維持した。
培養中に試料を回収した。細胞乾燥重量を計量し、OD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集した。培養上清を、L−乳酸(Boehringer Mannheim社のL−乳酸UV法によって)及びグルコース含量(Boehringer Mannheim社のグルコース/GOD−Perid法によって)に関して分析した。これらの結果を表32及び33に示す。
120時間の培養後、4.7g/Lの乳酸がグルコースから産生された(収率52%に等しい)。
この実施例は、異種乳酸デヒドロゲナーゼを過剰発現するC.sonorensisが、嫌気性バッチ発酵下でグルコースから乳酸を産生しうることを明らかにした。

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実施例24:ゲノム内に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有するC.sonorensisによる、Ca(OH) 緩衝濃厚グルコース培地でのバイオリアクターにおけるL−乳酸の産生
上述した265−55と称するC.sonorensis形質転換体を、実施例23で述べたように、35℃でバイオリアクター(Biostat CT−DCU3、Braun,Germany)におけるバッチ培養によって培養した。18.5時間のバイオマス産生後、バイオリアクターを空にし、遠心分離によって(4000rpm、20℃、10分間)細胞を収集した。乳酸産生のための培地(100g/Lグルコースを添加したYP)をポンプでバイオリアクターに供給し、遠心分離したバイオマスを6.7g/L細胞乾燥重量に等しい密度になるように接種した。バイオリアクターを1.0L/分の流速の90%窒素及び10%空気で洗い流し、500rpmで攪拌した。pHは、2.5M 水酸化カルシウム(Ca(OH))の自動添加によって5.0±0.1に維持した。
培養中に試料を回収した。細胞乾燥重量を計量し、OD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集した。培養上清を、L−乳酸(Boehringer Mannheim社のL−乳酸UV法によって)及びグルコース含量(Boehringer Mannheim社のグルコース/GOD−Perid法によって)に関して分析した。これらの結果を表34及び35に示す。
53時間の培養後、26g/Lの乳酸がグルコースから産生された(収率67%に等しい)。
これらの結果は、巨大菌乳酸デヒドロゲナーゼを過剰発現するC.sonorensisが、水酸化カルシウム緩衝剤を伴う微好気性バッチ発酵(2%O)においてグルコースから乳酸を産生しうることを明らかにした。

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実施例25:ゲノム内に組み込まれたヘルベチカス菌LDH遺伝子を含有するC.sonorensisによる、濃厚グルコース培地でのバイオリアクターにおけるL−乳酸の産生
上述した247−5及び247−11と称するC.sonorensis形質転換体を、
2Lの作業容量で、30℃(菌株247−11)又は35℃(菌株247−5)で、実験室用バイオリアクター(Biostat CT−DCU3、Braun、Germany)におけるバッチ培養によって培養した。培地は40g/Lグルコースを添加したYPであった。前培養物をYPD培地でOD600 11−16まで増殖させ、細胞を遠心分離によって収集して、OD600が1になるようにバイオリアクターに接種した。すべてのグルコースが消費されるまで培養を続けた。pHは、5M 水酸化カリウム(KOH)の自動添加によって5.0±0.1に維持した。バイオリアクターを0.5L/分の流速の5%空気及び95%窒素ガスで洗い流し、500rpmで攪拌した。溶解酸素濃度を酸素電極(Mettler Toledo)で継続的にモニターした。
培養中に試料を回収した。細胞乾燥重量を計量し、OD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集した。培養上清を、乳酸、グルコース、エタノール及び酢酸塩に関して上述したようにHPLCによって分析した。これらの結果を表36及び37に示す。
52−69時間の培養後、形質転換体はグルコースから26−29g/Lの乳酸を産生した(収率67−72%に等しい)。
これらの結果は、ヘルベチカス菌乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を過剰発現するC.sonorensisが、微好気性バッチ発酵においてグルコースから乳酸を産生しうることを明らかにした。

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実施例26:ゲノム内に組み込まれたヘルベチカス菌LDH遺伝子を含有するC.sonorensis細胞による特定キシロース培地でのL−乳酸の産生
C.sonorensis細胞及び前記で開示した形質転換体(すなわち、246−1、246−10、247−2及び247−5)をYX培地(0.3%尿素及び5%キシロースを添加した、硫酸アンモニウム及びアミノ酸を含まない酵母窒素塩基)で培養した。前培養物をYPD培地で増殖させ、細胞を遠心分離によって収集して、YX培地で1回洗浄し、その後培養実験のためにOD600が14−22になるようにYX培地50mLに再懸濁した。酵母細胞を、100mLエルレンマイヤーフラスコ中100rpmで振とうしながら30℃で培養した。pHが約3.5に達したとき、0.2%固体炭酸カルシウムを加えた。培養中に試料を回収し、OD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集し、培養上清を上述したようにHPLCによって分析した。これらの結果を表38に示す。
71時間の培養後、ヘルベチカス菌LDH遺伝子を含有する形質転換体は、キシロースからの収率18−34%に等しい、3.6−5.0g/Lの乳酸を産生し、一方、C.sonorensis宿主は検出可能な乳酸を産生しなかった。バイオマスは、167時間の実験期間中に10%未満増加した。形質転換体は、10−30g/Lのキシロースを利用し、4−9g/Lの乳酸を産生した。使用されたキシロースの3分の1が形質転換体246−10及び247−5によって乳酸に変換された。
これらの結果は、異種乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を過剰発現するC.sonorensisが、キシロースから乳酸を産生しうることを明らかにした。

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実施例27:ゲノム内に組み込まれたヘルベチカス菌LDH遺伝子を含有するC.sonorensisによる特定L−アラビノース培地でのL−乳酸の産生
C.sonorensis細胞及び上述した形質転換体(すなわち、246−1、246−10、247−2及び247−5)をYA培地(0.3%尿素及び2%L−アラビノースを添加した、硫酸アンモニウム及びアミノ酸を含まない酵母窒素塩基)で培養した。前培養物をYPD培地で増殖させ、細胞を遠心分離によって収集して、YA培地で1回洗浄し、培養実験のためにOD600が14−20になるようにYA培地50mLに再懸濁した。酵母細胞を、100mLエルレンマイヤーフラスコ中100rpmで振とうしながら(微好気性条件)30℃で培養した。pHが約3.5に達したとき、0.2%固体炭酸カルシウムを加えた。培養中に試料を回収し、OD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集し、培養上清を、上述したようにHPLCによって、乳酸及びキシロースに関して分析した。これらの結果を表39に示す。
71時間の培養後、ヘルベチカス菌LDH遺伝子を含有する形質転換体は、アラビノースからの収率14−34%に等しい2.3−3.2g/Lの乳酸を産生し、一方、対照菌株は検出可能な乳酸を産生しなかった。バイオマスは、167時間の実験期間中に20−60%増加した。形質転換体は、最初に供給した20g/Lのアラビノースのほとんどすべてを使用し、3.3−4.5g/Lの乳酸を産生した。使用されたアラビノースの約20%が形質転換体246−10及び247−5によって乳酸に変換された。
この実施例は、異種LDH遺伝子を発現するC.sonorensisがアラビノースから乳酸を産生することを示した。

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実施例28:C.methanosorbosaの形質転換及びゲノム内に組み込まれた巨大菌LDHを含有する菌株による乳酸の産生
C.methanosorbosaを、乳酸産生のために、上述したC.sonorensisベクターpMI278で形質転換した。pMI278をSalI及びNotIで消化した。実施例1で上述したGietzら(1992、Nucleic Acids Res.20:1425)の方法の変更に従い、酢酸リチウム形質転換を行った。OD600=0.9−1.1に増殖させたC.methanosorbosaの一晩培養物からの細胞を遠心分離によって収集し、最初に過剰の10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH7.5)の溶液で洗浄し、次に過剰の100mM LiAc/10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH7.5)の溶液で洗浄して、100mM LiAc/10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH7.5)の溶液2mLに再懸濁した。細胞50μLを、形質転換DNA10μg及び熱変性ニシン精子DNA50μgと混合した。それらの細胞に、100mM LiAc/10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH7.5)中の40%PEG−4000溶液300μLを加え、次に、緩やかに振とうしながら30℃で30分間細胞をインキュベートした。その後DMSO(40μL)を加え、細胞を42℃の水浴中で15分間インキュベートした。細胞を遠心分離によって収集し、過剰の10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH7.5)の溶液で洗浄し、YPDに再懸濁し、30℃で一晩インキュベートした。細胞を、200μg/mLのG418を含む固体YPD培地に塗布し、3−5日間30℃でインキュベートした。形質転換体を新鮮な選択平板に2回線条接種した。それらの形質転換体をCm/278−1からCm/278−74までと称した。
形質転換体を、次のようにして、L−乳酸を産生する能力に関して試験した。10mLプラスチックチューブ中のYPD5mLに、G418平板上で増殖させたコロニーを接種し、250rpmで振とうしながら30℃で一晩インキュベートした。細胞を遠心分離によって採集し、その上清を、Boehringer Mannheim社のL−乳酸UV法を用いてL−乳酸に関して分析した。L−乳酸は2.3−4.3g/Lで産生された。ゲノム内に単一コピーの巨大菌LDH遺伝子が存在することを、巨大菌LDH遺伝子をプローブとして使用して、HindIII消化した酵母DNAのサザンブロット分析によって確認した。
これらの結果は、巨大菌LDHがC.methanosorbosaにおいて機能することができ、グルコースから乳酸を産生することを示した。巨大菌LDHは、C.methanosorbosaにおいて異種遺伝子の発現を駆動することができるC.sonorensis PGK1プロモーターに作動可能に連結されている。さらに、G418耐性遺伝子に作動可能に連結されたC.sonorensis TDH1プロモーターはまた、C.methanosorbosaにおいて機能することができる。
実施例29:ゲノム内に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有するC.methanosorbosaによる、緩衝剤を含まない濃厚グルコース培地でのL−乳酸の産生
上記で開示したC.methanosorbosa形質転換体の1つ(Cm/278−1)をYD培地(5%グルコース及び0.5M MESを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基、pH5.5)で培養した。次に遠心分離によって細胞を収集し、5%グルコースを添加したYP50mLに、OD600が16になるように再懸濁した。酵母細胞を、250mLエルレンマイヤーフラスコ中100rpmで振とうしながら30℃で培養した。培養中に試料を回収し、OD600を測定して、遠心分離によって細胞を採集し、そして培養上清を、L−乳酸(Boehringer Mannheim社、Roche社のL−乳酸UV法によって)、グルコース(Boehringer Mannheim社、Roche社のグルコース/GOD−Perid法によって)、酢酸塩(Boehringer Mannheim社、Roche社の酢酸UV法によって)、及びエタノール(Boehringer Mannheim社、Roche社のエタノールUV法によって)に関して分析した。これらの結果を表40に示す。
24時間の培養後、形質転換体はグルコースから8.1g/Lの乳酸(収率19%に等しい)を産生し、pHは3.5に低下した。
これらの結果は、異種LDHを過剰発現するC.methanosorbosaが、低pHの濃厚培地でグルコースから乳酸を産生することを明らかにした。

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実施例30:ゲノム内に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有するC.methanosorbosaによる、CaCO 緩衝特定グルコース培地でのL−乳酸の産生
上記で開示した形質転換C.methanosorbosa細胞(すなわち、Cm/278−1及びCm/278−14と称する形質転換体)及び非形質転換宿主菌株(Cm)をYD培地(5%グルコース及び0.5M MESを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基、pH5.5)で培養した。次に細胞を遠心分離によって収集して、培養実験のためYD培地(10%グルコースを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基)50mLに、OD600が15になるように再懸濁した。酵母細胞を、CaCO 4gを含む250mLエルレンマイヤーフラスコ中100rpmで振とうしながら30℃で培養した。培養期間を通じて培養培地のpHは6.5であった。培養中に試料を回収し、遠心分離によって細胞を採集して、培養上清を、上述したようにHPLCによって、乳酸、グルコース及びエタノールに関して分析した。これらの結果を表41−44に示す。
形質転換体は培養96時間目にグルコースを消費し、63−65g/Lの乳酸(収率63−64%に等しい)及び6.5−6.9g/Lのエタノールを産生した。宿主菌株(Cm)は培養120時間目までにすべてのグルコースを消費し、23g/Lのエタノールを産生し、乳酸は産生しなかった。
これらの結果は、異種LDH遺伝子を過剰発現するC.methanosorbosa細胞が、中性pHの特定培地でグルコースから乳酸を産生することを明らかにした。63−65g/Lという高い乳酸力価及び63−64%の収率が達成された。

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実施例31:乳酸デヒドロゲナーゼ及びピルビン酸デカルボキシラーゼの酵素活性、ならびにゲノム内に組み込まれた巨大菌LDH遺伝子を含有するC.methanosorbosaによる特定グルコース培地でのL−乳酸の産生
上記で開示したC.methanosorbosa形質転換体(Cm/278−1及びCm/278−14)をYD培地(5%グルコース及び0.5M MESを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基、pH5.5)50mL中で培養した。酵母細胞を、250mLエルレンマイヤーフラスコ中250rpmで振とうしながら30℃で、OD600が10になるように培養した。試料を収集し(2mL)、遠心分離によって細胞を採集した。その培養上清をHPLCによって分析した。
酵素活性測定のために、細胞ペレットを氷冷10mM KHPO/KHPO、2mM EDTA(pH7.5)1mLで洗浄した。洗浄したペレットを同じ緩衝液0.5mLに再懸濁し、−70℃で保存した。試料を室温で解凍し、超音波破砕緩衝液(100mM KHPO/KHPO、2mM MgCl、10mM DTT、pH7.5)1mLで1回洗浄した。洗浄した試料を超音波破砕緩衝液0.5mLに再懸濁し、ビーズビーターホモジナイザーでガラスビーズ0.5mLを用いて1分間ホモジナイズした。ホモジナイズ後、試料を4℃で30分間、14,000rpmで遠心分離した。上清試料を収集し、乳酸デヒドロゲナーゼ及びピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を、実施例18で上述したように分光光度測定した(A340)。これらの結果を表45に示す。
培養の20時間目に、形質転換体278−1及び278−14は、それぞれ0.69及び0.33g/Lの乳酸(グルコースから収率の7及び4%に等しい)を産生した。その時点で、形質転換体278−1及び278−14において、それぞれ乳酸デヒドロゲナーゼ活性は0.05及び0.16U/mg総細胞タンパク質であり、ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性は0.71及び0.53U/mg総細胞タンパク質であった。
これらの結果は、異種LDH遺伝子を過剰発現するC.methanosorbosa細胞において乳酸デヒドロゲナーゼ活性が検出されることを明らかにし、それらの細胞がグルコースから乳酸を産生できることを確認した。低い活性は、主として細胞増殖と少量の乳酸産生を生じさせる、低いOD600初期値と高い通気(250rpm)が原因であったと考えられる。

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実施例32:ゲノム内に組み込まれたヘルベチカス菌又は巨大菌LDHをコードする遺伝子を含有するC.sonorensisによる、及び巨大菌LDHをコードする遺伝子を含有するC.methanosorbosaによる、特定キシロース培地での乳酸の産生
特定培地で培養したC.sonorensis及びC.methanosorbosaのCaCO緩衝培養物においてキシロースから乳酸を産生した。細胞バイオマスをグルコース又はキシロースのいずれかで2段階で生成した後、キシロース含有産生培地に移した。
A)グルコースでのバイオマス生成及びキシロースでの乳酸産生
YP+5%グルコース培地5mLに、YPD平板で増殖させた酵母コロニー(菌株C40/288−34)を接種した。培養物を250rpmで振とうしながら30℃で一晩インキュベートした。250mLエルレンマイヤーフラスコ中のYD培地(酵母窒素塩基、アミノ酸を含まず、5%グルコース及び0.5M MESを添加、pH5.5)50mLを初期OD600 0.1で接種し、OD600 10が達成されるまで250rpmで振とうしながら30℃で一晩インキュベートした。細胞をYX培地(5%キシロースを添加した、アミノ酸を含まない酵母窒素塩基)50mLに再懸濁し、OD600が11−13になるようにした。細胞を、CaCO 2gを含む250mLエルレンマイヤーフラスコ中100rpmで振とうしながら30℃で培養した。培養中に試料を回収した。遠心分離によって細胞を採集し、培養上清を、上述したように(実施例14)HPLCによって、乳酸及びキシロースに関して分析した。2つの独立した実験を実施し、それらの結果を表46に示している。
C.sonorensis形質転換体C40/288−34は、7−8日間で50g/Lのキシロースを消費し、キシロースからの28−32%乳酸収率に相当する、13−16g/Lの乳酸を産生した。

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B)キシロースでのバイオマス生成及びキシロースでの乳酸産生
巨大菌LDHを含有する形質転換体265−55及び265−44(C.sonorensis)、ヘルベチカス菌LDHを含有する形質転換体C40/288−34、C40/288−36、257−3及び246−27(C.sonorensis)、ならびに巨大菌LDHを含有する形質転換体Cm/278−1及びCm/278−42(C.methanosorbosa)を使用した。
250mLエルレンマイヤーフラスコ中のYP+5%キシロース培地50mLに、YP+2%キシロース平板で増殖させた酵母コロニーを接種した。培養物を、OD600 10が達成されるまで250rpmで振とうしながら30℃で一晩インキュベートし、その後250mLエルレンマイヤーフラスコ中のYX培地(酵母窒素塩基、アミノ酸添加なし、5%キシロース及び0.5M MES、pH5.5)50mLを初期OD600 0.2になるように接種した。細胞を、OD600 7−10が達成されるまで250rpmで振とうしながら30℃で一晩インキュベートした。細胞をYX培地(酵母窒素塩基、アミノ酸添加なし、5%キシロース)50mLに再懸濁して、OD600が11−12になるようにした。細胞を、CaCO 2gを含む250mLエルレンマイヤーフラスコ中100rpmで振とうしながら30℃で培養した。培養中に試料を回収した。遠心分離によって細胞を採集し、培養上清を、上述したように(実施例14)HPLCによって、乳酸及びキシロースに関して分析した。それらの結果を表47に示す。
C.sonorensis形質転換体は、典型的には5−6日間で、50g/Lのキシロースを消費した。最大乳酸力価は、少なくとも95%のキシロースが消費されたときである、CaCO緩衝キシロース培地に移した後4−5日目に測定された。産生された乳酸の量は、キシロースからの63−76%乳酸収率に相当する、30−37g/Lであった。
C.methanosorbosa形質転換体は、典型的には5−6日間で、50g/Lのキシロースを消費した。最大乳酸力価は、少なくとも95%のキシロースが消費されたときである、CaCO緩衝キシロース培地に移した後4−5日目に測定された。形質転換体は、キシロースからの16−28%乳酸収率に相当する、8−14g/Lの乳酸を産生した。

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この実施例は、培養条件及び接種材料の来歴がキシロースからの乳酸産生に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。バイオマスをグルコースで生成したとき、C.sonorensis LDH形質転換体C40/288−34は、キシロース含有培地に移した後、約30%の収率でキシロースを乳酸に変換した。これに対して、バイオマスをキシロースで生成したとき、同じ形質転換体は、キシロース含有培地に移した後、はるかに高い収率(63−76%)でキシロースを乳酸に変換した。キシロースで増殖させたバイオマスはまた、乳酸産生条件下でグルコース増殖バイオマスよりも迅速にキシロースを消費した。これらのデータは、それらをキシロース含有乳酸産生培地に移す前にキシロース含有培地上で増殖させることによって、細胞をグルコース以外の糖類、例えばキシロースに「適応させる」とき、高い乳酸収率が得られることを示唆している。
実施例33:欠失pdc1遺伝子及び破壊pdc2遺伝子を含み、ゲノム内に組み込まれたヘルベチカス菌LDHコード遺伝子を含有するC.sonorensisによる、特定グルコース培地でのL−乳酸の産生
257−3、C40/288−2、C40/288−34及びC40/288−11と称するC.sonorensis形質転換体(実施例13で上述した)を、乳酸産生期のためにOD600=18になるように懸濁したことを除いて、実施例19で述べたように培養し、分析した。培養上清を、上述したように、乳酸、グルコース及びエタノールに関して分析した。これらの結果を表48に示す。
pdc1−菌株257−3(pdc1が欠失している)は、48時間で、グルコースからの収率93%に相当する(g/g)、89g/Lの乳酸を産生した。pdc1−(欠失)pdc2−(pdc2が破壊されている)菌株C40/288−2、C40/288−34及びC40/288−11は、72時間で、グルコースからの収率89−90%に相当する(g/g)、86−87g/Lの乳酸を産生した。これらの時点でエタノールは検出されなかった。

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本発明を前記の詳細な説明及び実施例に関連付けて説明しているが、それらは例示を意図するものであり、添付する特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲又は精神を限定することを意図しないことは明白である。他の局面、利点及び変更は本発明の請求項の範囲内である。
図1は、PGKプロモーター(S.cerevisiae)によって駆動され、及びGAL10(S.cerevisiae)ターミネーターに連結された、G418耐性コード遺伝子を含む、pMI260として説明されるベクターの概要図である。 図2は、PGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動され、及びGAL10(S.cerevisiae)ターミネーターに連結された、G418耐性コード遺伝子を含む、pMI268として説明されるベクターの概要図である。 図3は、TDHプロモーター(C.sonorensis)によって駆動され、及びGAL10(S.cerevisiae)ターミネーターに連結された、G418耐性コード遺伝子を含む、pMI269として説明されるベクターの概要図である。 図4は、PGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動され、及びGAL10(S.cerevisiae)ターミネーターに連結された、ヒグロマイシン耐性コード遺伝子を含む、pMI270として説明されるベクターの概要図である。 図5は、PGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるMEL5(S.cerevisiae)遺伝子を含む、pMI234として説明されるベクターの概要図である。 図6は、TDHプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるMEL5(S.cerevisiae)遺伝子を含む、pMI238として説明されるベクターの概要図である。 図7は、TDHプロモーター(C.sonorensis)によって駆動され、及びGAL10(S.cerevisiae)ターミネーターに連結された、ヒグロマイシン耐性コード遺伝子を含む、pMI271として説明されるベクターの概要図である。 図8は、各々PGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるMEL5(S.cerevisiae)及びLDH(ヘルベチカス菌)遺伝子を含む、pMI246として説明されるベクターの概要図である。LDH遺伝子は、S26 rRNA(C.sonorensis)領域の上流に位置するCYC1ターミネーターに連結されている。 図9は、TDHプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるMEL5(S.cerevisiae)遺伝子及びPGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるLDH(ヘルベチカス菌)遺伝子を含む、pMI247として説明されるベクターの概要図である。LDH遺伝子は、S26 rRNA(C.sonorensis)領域の上流に位置するCYC1ターミネーターに連結されている。 図10は、PGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるMEL5(S.cerevisiae)遺伝子及びPGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるLDH(ヘルベチカス菌)遺伝子を含む、pMI257として説明されるベクターの概要図である。LDH遺伝子はCYC1ターミネーターに連結されている。この発現カセット全体が、PDC1プロモーターとターミネーター(C.sonorensis)の間に挿入されている。 図11は、PGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるMEL5(S.cerevisiae)遺伝子及びPGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるLDH(巨大菌;ベクターpVR24より)遺伝子を含む、pMI265として説明されるベクターの概要図である。LDH遺伝子はPDC1(C.sonorensis)ターミネーターに連結されている。この発現カセット全体が、PDC1プロモーターとターミネーター(C.sonorensis)の間に挿入されている。 図12は、PGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるMEL5(S.cerevisiae)遺伝子及びPGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるLDH(R.oryzae;ベクターpVR27より)遺伝子を含む、pMI266として説明されるベクターの概要図である。LDH遺伝子はPDC1(C.sonorensis)ターミネーターに連結されている。この発現カセット全体が、PDC1プロモーターとターミネーター(C.sonorensis)の間に挿入されている。 図13は、PGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるMEL5(S.cerevisiae)遺伝子を含む、pMI267として説明されるベクターの概要図である。この発現カセット全体が、PDC1プロモーターとターミネーター(C.sonorensis)の間に挿入されている。 図14は、MEL5ターミネーターに作動可能に連結された、TDHプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるG418耐性コード遺伝子、及びPGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるLDH(巨大菌)遺伝子を含む、pMI278として説明されるベクターの概要図である。LDH遺伝子はGAL10(S.cerevisiae)ターミネーターに連結されている。 図15は、MEL5(S.cerevisiae)ターミネーターに作動可能に連結された、TDHプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるG418耐性コード遺伝子、及びPGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるLDH(巨大菌)遺伝子を含む、pMI286として説明されるベクターの概要図である。LDH遺伝子はGAL10(S.cerevisiae)ターミネーターに連結されている。この発現カセット全体が、PDC2プロモーターとターミネーター(C.sonorensis)の間に挿入されている。 図16は、MEL5(S.cerevisiae)ターミネーターに作動可能に連結された、TDHプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるG418耐性コード遺伝子を含む、pMI287として説明されるベクターの概要図である。この発現カセットは、PDC2プロモーターとターミネーター(C.sonorensis)の間に挿入されている。 図17は、MEL5(S.cerevisiae)ターミネーターに作動可能に連結された、TDHプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるG418耐性コード遺伝子、及びPGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるLDH(ヘルベチカス菌)遺伝子を含む、pMI288として説明されるベクターの概要図である。LDH遺伝子はCYC1ターミネーターに連結されている。この発現カセット全体が、PDC2プロモーターとターミネーター(C.sonorensis)の間に挿入されている。 図18は、PGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるMEL5(S.cerevisiae)遺伝子及びPGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるLDH(ヘルベチカス菌)遺伝子を含む、pMI256として説明されるベクターの概要図である。LDH遺伝子はCYC1ターミネーターに連結されている。この発現カセット全体が、PDC1ターミネーター(C.sonorensis)の上流に挿入されている。 図19は、PDC2プロモーター(C.sonorensis)を含む、pMI277として説明されるベクターの概要図である。 図20は、MEL5(S.cerevisiae)ターミネーターに作動可能に連結された、TDHプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるG418耐性コード遺伝子、及びPGKプロモーター(C.sonorensis)によって駆動されるLDH(巨大菌)遺伝子を含む、pMI279として説明されるベクターの概要図である。LDH遺伝子はGAL10ターミネーター(S.cerevisiae)に連結されている。この発現カセット全体が、PDC2プロモーター(C.sonorensis)の下流に挿入されている。 図21は、pVR24として説明されるベクターの概要図である。 図22は、pVR27として説明されるベクターの概要図である。 図23A−Cは、pMI214、pMI203、pMI205、pMI227、pMI233及びpMI234を含むベクターの概要図である。
配列表
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Claims (37)

  1. カンジダ属菌種からの酵母細胞中で機能性のプロモーターに作動可能に連結された乳酸デヒドロゲナーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する核酸を含む核酸構築物を含むカンジダ属菌種由来の組換え酵母細胞。
  2. 前記ヌクレオチド配列が巨大菌からの乳酸デヒドロゲナーゼタンパク質をコードする、請求項1に記載の核酸構築物を含む組換え酵母細胞。
  3. 前記ヌクレオチド配列がヘルベチカス菌からの乳酸デヒドロゲナーゼタンパク質をコードする、請求項1に記載の核酸構築物を含む組換え酵母細胞。
  4. 前記ヌクレオチド配列がRhizopus oryzae菌からの乳酸デヒドロゲナーゼタンパク質をコードする、請求項1に記載の核酸構築物を含む組換え酵母細胞。
  5. 前記プロモーターが、Candida sonorensis、Candida parapsilosis、Candida naeodendra、Candida methanosorbosa、Candida entomophila、Candida krusei、Candida blankii又はCandida diddensiaeであるカンジダ菌種からである、請求項1に記載の核酸構築物を含む組換え酵母細胞。
  6. 選択薬剤に対する耐性をコードする遺伝子をさらに含む、請求項1に記載の核酸構築物を含む組換え酵母細胞。
  7. 選択薬剤に対する耐性をコードする前記遺伝子が、細菌のネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ヒグロマイシン耐性遺伝子又はゼオシン耐性遺伝子である、請求項6に記載の核酸構築物を含む組換え酵母細胞。
  8. 単糖類ヘキソース以外の炭素源を処理するタンパク質をコードする遺伝子をさらに含む、請求項1に記載の核酸構築物を含む組換え酵母細胞。
  9. 前記遺伝子がα−ガラクトシダーゼをコードする、請求項8に記載の核酸構築物を含む組換え酵母細胞。
  10. 前記遺伝子が酵母MEL5である、請求項9に記載の核酸構築物を含む組換え酵母細胞。
  11. 少なくとも1つの外来性LDH遺伝子を含む、カンジダ属からの遺伝的に修飾された細胞。
  12. 前記細胞がさらに、低いピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)活性を発現する、請求項11に記載の細胞。
  13. 前記低いPDC活性が、少なくとも1つのピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の欠失から生じる、請求項12に記載の細胞。
  14. 前記低いPDC活性が、少なくとも1つのピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の遺伝的破壊から生じる、請求項12に記載の細胞。
  15. Candida sonorensis、Candida parapsilosis、Candida naeodendra、Candida methanosorbosa、Candida entomophila、Candida krusei、Candida blankii又はCandida diddensiae細胞である、請求項11に記載の細胞。
  16. pdc1遺伝子座における欠失、pdc2遺伝子座における破壊、及びpdc1とpdc2遺伝子座の各々の細胞ゲノム内に2又はそれ以上のコピー数の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含む、カンジダ菌細胞。
  17. 2又はそれ以上のコピー数の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が各々、カンジダ菌細胞において転写活性であるプロモーターに作動可能に連結されている、請求項16に記載の細胞。
  18. 規定量のグルコースの存在下で又はグルコースに富む培地中で培養したときエタノール産生が少なくとも10倍低いことを特徴とする、非機能性pdc1若しくはpdc2遺伝子を含むように又はpdc1若しくはpdc2遺伝子の欠失を含むように遺伝的に修飾されたカンジダ菌細胞。
  19. 乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子をさらに含む、請求項18に記載の細胞。
  20. 乳酸デヒドロゲナーゼがpdc1又はpdc2プロモーターに作動可能に連結されている、請求項19に記載の細胞。
  21. 前記細胞が、形質転換されていないカンジダ菌細胞に比べて高い乳酸デヒドロゲナーゼ活性を有する、請求項11に記載のカンジダ菌細胞。
  22. a)請求項1から11のいずれか1項に記載の細胞を、その細胞が増殖できる条件下で培養すること;及び
    b)(a)の細胞培養物を、形質転換されていないカンジダ菌細胞によって乳酸に変換される糖の量に比べて前記細胞によって乳酸に変換される糖の量が増加する条件下で、糖を含む栄養培地中で発酵させること、
    の段階を含む、乳酸を産生するための方法。
  23. 前記乳酸がL−乳酸である、請求項22に記載の方法。
  24. 前記細胞がCandida sonorensis細胞である、請求項22に記載の方法。
  25. 前記細胞が、ヘルベチカス菌、巨大菌、若しくはR.oryzae菌乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子である少なくとも1つの乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、又はそれらの組合せを含む、請求項24に記載の方法。
  26. 前記細胞がCandida methanosorbosa細胞である、請求項22に記載の方法。
  27. 前記細胞が、ヘルベチカス菌、巨大菌、若しくはR.oryzae菌乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子である少なくとも1つの乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、又はそれらの組合せを含む、請求項26に記載の方法。
  28. 前記細胞を、栄養培地中においてpHをpH5からpH9までに維持するように緩衝されている、緩衝培地である培地中で培養する、請求項22に記載の方法。
  29. 乳酸産生後の培養培地中の最終pHがpH2.6からpH5までである、請求項22に記載の方法。
  30. 前記発酵段階を、2%以下の酸素を含む大気下で実施する、請求項22に記載の方法。
  31. 前記発酵段階を嫌気性条件下で実施する、請求項22に記載の方法。
  32. 前記栄養培地中の糖が、1又は複数のヘキソース、1又は複数のペントース、又はそれらの組合せである、請求項22に記載の方法。
  33. 前記栄養培地中の糖が、グルコース、キシロース又はL−アラビノース、又はそれらの組合せである、請求項22に記載の方法。
  34. 前記栄養培地中の糖がグルコースであり、前記細胞によって消費されるグルコースの量に対する乳酸の収率が少なくとも60重量%である、請求項33に記載の方法。
  35. 前記栄養培地中の糖がキシロースであり、前記細胞によって消費されるキシロースの量に対する乳酸の収率が少なくとも15重量%である、請求項33に記載の方法。
  36. 前記栄養培地中の糖がL−アラビノースであり、前記細胞によって消費されるL−アラビノースの量に対する乳酸の収率が少なくとも20重量%である、請求項33に記載の方法。
  37. カンジダ菌細胞が、Candida diddensiae、Candida parapsilosis、Candida naeodendra、Candida krusei、Candida blankii、Candida methanosorbosa又はCandida entomophila細胞である、請求項22に記載の方法。
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