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JP4513444B2 - 塗膜構造の形成方法 - Google Patents

塗膜構造の形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、塗膜構造の形成方法に関する。
塗膜構造としては、特許文献1に示すように、燃焼室壁面に、フッ素樹脂とバインダーとからなる塗膜を所定の条件で形成することにより、燃焼生成物の付着性を改善したものや、特許文献2に示すように、アモルファスフッ素系のアンダーコート層上にフッ素系樹脂製のオーバーコート層を設けて、該オーバーコート層の密着性を高めたものが知られている。
特開平2−160083号公報 特開平4−232332号公報
ところで、燃料の不完全燃焼、エンジンオイルの熱劣化に伴い、炭化水素を主成分とした燃焼生成物(以下、デポジットと称す)が生成される。このデポジットは、燃焼室壁面に付着、堆積し、その量が多くなると、そのデポジットが運転中の衝撃等により剥離することになっており、その剥離したデポジットは、シール摺動面に噛み込んだ場合には、摺動面を摩耗させ、シール溝に噛み込んでシールの動きを拘束した場合には、燃焼ガス漏れを引き起こしたり、エンジン出力を低下させたりするおそれがある。
この問題解消手段として、非粘着性に優れたフッ素樹脂を用いた塗膜を燃焼室壁面に設けて、デポジットの付着、堆積を抑制することが考えられる。具体的には、フッ素樹脂だけからなる膜の形成が不可能であり、また、フッ素樹脂と基材との密着性が低いことから、スプレーコーティングの手法を用い、バインダーとフッ素樹脂粉末とを混在させた状態で焼き付けた塗膜を燃焼室壁面に設けることが考えられる。
しかし、エンジンの燃焼室等のように、高温下に曝される環境においては、フッ素樹脂並びにそれを固定する樹脂バインダーは、軟化して、デポジットを抱き込むように作用することになり、この場合、フッ素樹脂の非粘着性は、デポジットの付着防止に十分に機能し得ない。
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、高温下においても、非粘着性を安定的に維持できる塗膜構造の形成方法を提供することにある。
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項に係る発明)にあっては、
混合物として、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、バインダー樹脂及び溶剤を全体重量に対してフッ素樹脂5〜15wt%、シリコーン樹脂2〜5wt%、バインダー樹脂5〜15wt%及び溶剤65〜88wt%の割合で混合したものを用意し、
前記混合物を金属製の被塗物表面に施工して、塗膜を生成し、
前記塗膜を、該塗膜内における各成分の性状に基づき、前記被塗物表面上に設けられて前記バインダー樹脂が濃化状態で含有される第1塗膜層と、該第1塗膜層上に設けられてフッ素樹脂及びシリコーン樹脂が濃化状態で含有される第2塗膜層とからなる積層構造に構造変化させる、
ことを特徴とする塗膜構造の形成方法とした構成としてある。この請求項の好ましい態様としては、請求項2以下の記載の通りとなる。
請求項1に記載された発明によれば、混合物として、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、バインダー樹脂及び溶剤を全体重量に対してフッ素樹脂5〜15wt%、シリコーン樹脂2〜5wt%、バインダー樹脂5〜15wt%及び溶剤65〜88wt%の割合で混合したものを用意し、前記混合物を金属製の被塗物表面に施工して、塗膜を生成し、前記塗膜を、該塗膜内における各成分の性状に基づき、前記被塗物表面上に設けられて前記バインダー樹脂が濃化状態で含有される第1塗膜層と、該第1塗膜層上に設けられてフッ素樹脂及びシリコーン樹脂が濃化状態で含有される第2塗膜層とからなる積層構造に構造変化させることから、塗膜構造として、被塗物上に、該被塗物から外側に向けて順に、第1塗膜層、第2塗膜層を設け、第1塗膜層に、バインダー樹脂を濃化状態で含有させ、第2塗膜層に、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂を濃化状態で含有させたものを形成することができる。
この場合、上記形成方法においては、各樹脂の含有割合に基づき、見かけ上均等に分散した状態の混合物をもって被塗物に施工される。また、被塗物に施工された塗膜が、その内部において、第1塗膜層と第2塗膜層とに構造変化することに関しては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が他の材料と濡れづらいこと、バインダー樹脂(極性基)と金属とが優れた吸着、反応性を有していることに基づいて各樹脂の移動現象(流動現象)が生じ、被塗物側にバインダー樹脂の濃化が進む一方で、そのバインダー樹脂の濃化領域よりも外側領域において、フッ素樹及びシリコーン樹脂が濃化された状態となることが利用される。
この結果、この塗膜構造においては、被塗物と第1塗膜層との間に関しては、第1塗膜層のバインダー樹脂(例えばエポキシ樹脂)を関与させて、被塗物に対する第1塗膜層の密着性を確保でき、第1塗膜層と第2塗膜層との間に関しては、第1塗膜層のバインダー樹脂が炭化水素基を含有していると共に、第2塗膜層におけるシリコーン樹脂の側鎖が炭化水素基を含有していることに基づき、各樹脂に含まれる酸素とその各炭化水素基の水素との間に水素結合力を作用させ、その水素結合力を第1塗膜層と第2塗膜層との間の密着性に貢献させることができることになる。一方、耐熱性、非粘着性に優れるシリコーン樹脂が、非粘着性に優れたフッ素樹脂の成膜化を図りつつ、第1塗膜層を覆うことから、そのシリコーン樹脂及びフッ素樹脂の非粘着性に基づき第2塗膜層に高い非粘着性を確保できると共に、シリコーン樹脂の耐熱性に基づき外部熱によりフッ素樹脂及びバインダー樹脂が軟化することを抑制できることになる。このため、この塗膜構造においては、高温下においても、非粘着性を安定的に維持できることになる。
請求項2に記載された発明によれば、被塗物が、内燃機関の燃焼室から排気経路に至る部分の部材壁面部であることから高温になり易い当該個所に、高温下でも安定した非粘着性を示す塗膜構造を形成でき、これにより、燃焼等により生成するデポジットの付着、堆積を有効に低減できることになる。
請求項に記載された発明によれば、施工が、スプレー塗装であることから、塗膜として、各樹脂が見かけ上均等分散したものを、スプレー塗装という方法を用いて具体的に被塗物上に施工することができることになる。
請求項に記載された発明によれば、塗膜を生成した後、乾燥を行って該塗膜内の溶剤を揮発させることから、その溶剤の揮発に伴い、粘度が上昇するけれども、シリコーン樹脂の高い流動性、金属に対するバインダー樹脂の優れた吸着、反応性が有効に利用され、塗膜内で粘度が上昇しても各樹脂の移動現象を支障なく行わせることができることになる。このため、塗膜内の溶剤の揮発を乾燥により促進させることに伴い、第1塗膜層と第2塗膜層とに構造変化した当該塗膜構造を迅速に得ることができることになる。
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、被塗物1表面に設けられる実施形態に係る塗膜構造を模式的に示している。
前記被塗物1は、金属製材料により形成されて高温下に曝されるものを対象としており、本実施形態においては、内燃機関の燃焼室から排気通路に至る部分の部材壁面部が対象となっている。勿論、低温下において使用されるものに対しても適用することができる。
前記塗膜構造は、被塗物1上に、塗膜2として、該被塗物1から外側に向けて順に、第1塗膜層3、第2塗膜層4が設けられる構成となっている。第1塗膜層3は、バインダー樹脂(有機物)5が濃化された状態で形成されたもので、この第1塗膜層3には、多少、フッ素樹脂6が分散した状態で含まれているが、この第1塗膜層3の大部分は、バインダー樹脂5により形成されている。この第1塗膜層3におけるバインダー樹脂5は、極性基を有しており、その極性基は、吸着、反応性に関し、金属に対して優れた性質を示すことになっている。このため、このバインダー樹脂5の第1塗膜層3は、金属製被塗物1に対して十分な密着性が確保されている。このバインダー樹脂5としては、例えばエポキシ樹脂が用いられる。
前記第2塗膜層4は、フッ素樹脂6及びシリコーン樹脂7が濃化された状態で形成されたもので、シリコーン樹脂7が基本的に第1塗膜層3を覆い、そのシリコーン樹脂7中にフッ素樹脂6が分散された状態で抱き込まれている(成膜化)。このフッ素樹脂6とシリコーン樹脂7とは、優れた非粘着性を有し、シリコーン樹脂7は、さらに耐熱性に関しても優れた性質を有しており、このフッ素樹脂6とシリコーン樹脂7とは、共に表面(第2塗膜2表面)に露出されて、塗膜2に高い非粘着性を付与し、シリコーン樹脂7は、その存在により、外部からの熱によってフッ素樹脂6及びバインダー樹脂5(塗膜2)が軟化することを規制することになっている。しかも、シリコーン樹脂7の側鎖は、第1塗膜層のバインダー樹脂(例えばエポキシ樹脂)と同様、炭化水素基を含有し、これら樹脂における炭化水素基の水素と各樹脂に含まれる酸素との間で水素結合力が作用することになっており、この水素結合力は、第1塗膜2に対する第2塗膜層4の密着性を高めるために貢献することになっている。
このような第1,第2塗膜層3,4を有する塗膜構造は、固形分だけの組成比(重量比)とした場合、
フッ素樹脂6:エポキシ樹脂:シリコーン樹脂7=1:1:0.3
が好ましい。この好ましい組成比は、下記知見から求められている。
(i)シリコーン樹脂7の比率を高めると、塗料中の分離が進み、溶剤、固形分、エポキシ樹脂(バインダー樹脂5)が均等に混ざり合わない状態となり、上記のような塗膜2を得ることができない。
(ii)フッ素樹脂6とエポキシ樹脂(バインダー樹脂5)との比率において、エポキシ樹脂の比率を増してゆくと表面へのエポキシ樹脂の露出が顕著となり、非粘着性の(デポジットの付着抑制)の効果が低下するように作用する。
(iii)逆に、フッ素樹脂6とエポキシ樹脂との比率において、フッ素樹脂6の比率を増してゆくと、エポキシ樹脂量(バインダー樹脂量)が減少し、被塗物1(基材)との密着性が低下するように作用する。
図2は、前記好ましい組成比(重量比が、フッ素樹脂6:エポキシ樹脂(バインダー樹脂5):シリコーン樹脂7=1:1:0.3)に係る塗膜2についての表面写真を示す(倍率100倍)。塗膜2表面に、シリコーン樹脂7中にフッ素樹脂6が分散された状態で存在することが確認でき、シリコーン樹脂7、フッ素樹脂6の性質に基づき、非粘着性と耐熱性とに関して、効果を期待できることが理解できる。
図3は、前記好ましい塗膜2を含む種々の試験面に対する水滴の接触角(contact angle)、テープ剥離力を測定した試験結果を示すものである。接触角は、気液間の界面張力の方向と固体表面とのなす角を表すもので、その角度が大きいほど濡れ性が悪いことを示す。種々の試験面における水滴の接触角を常温(25℃)下で測定したところ、前記好ましい塗膜2(図3において、「シリコーン樹脂+フッ素樹脂+バインダー」と表示)上における水滴がなす接触角が最も大きい値を示した。
また、種々の試験面に対するテープ剥離力は、各試験面の非粘着性を示すものである。このテープ剥離力試験は、図4に示すように、試験面8に対して一定形状のテープ9(幅2cm 長さ2cm)を貼り、そのテープ9をばねばかり10をもって剥がすときの値を測定するものであり、その値が小さいものほど非粘着性が高いことを示すことになる。種々の試験面に対するテープ剥離力を測定したところ、前記好ましい塗膜2(図3において、「シリコーン樹脂+フッ素樹脂+バインダー」と表示)に対するテープ剥離力が最も小さい値を示し、前記好ましい塗膜2の非粘着性が高いことを示した。
図5は、高温下でのカーボン付着量を、前記好ましい塗膜2を含む各種試験面について調べた結果を示すものである。試験は、高温下での環境とするために、ロータリーエンジンを低速にて3000km運転した後、ローター表面における試験面に付着したカーボンデポジット量を測定することにより行われた。試験面としては、ローター表面に塗膜を形成しないもの(スチール面:図5において「STD」と表示)、ローター表面に、塗膜として、図6に示すように、バインダー樹脂5とフッ素樹脂6粉末とを混在させた状態で焼き付けた塗膜(図5において「フッ素」と表示)、ローター表面に前記好ましい塗膜2(重量比が、フッ素樹脂6:エポキシ樹脂:シリコーン樹脂7=1:1:0.3)を施したもの(図5において「シリコーン+フッ素」と表示)を用意した。
この結果、試験面を、バインダー樹脂5とフッ素樹脂6粉末とを混在させた状態で焼き付けた塗膜2を用いた場合についても、ローター表面に塗膜を形成しないものに比べて、カーボンデポジットの付着量を少なくできたが、試験面を前記好ましい塗膜2とした場合には、カーボンデポジットの付着量は、格段に少なくすることができた。
次に、前記塗膜構造の形成方法について説明する。
(1)先ず、混合物として、フッ素樹脂6、シリコーン樹脂7、バインダー樹脂5及び溶剤を混合したものを用意する。フッ素樹脂6、シリコーン樹脂7、バインダー樹脂5が混合されているのは、最終的に各樹脂の性質に基づき、塗膜2に対して非粘着性、耐熱性等を付与するためである。溶剤が混合されているのは、後述の塗膜2内での各樹脂の移動現象を可能とすべく、フッ素樹脂6、シリコーン樹脂7、バインダー樹脂5を、適度の粘性を有する溶液の状態とするためである。
(i)前記混合の割合は、全体重量に対してフッ素樹脂5〜15wt%、シリコーン樹脂2〜5wt%、バインダー樹脂5〜15wt%及び溶剤65〜88wt%とされる。これは、基本的には、混合状態において、フッ素樹脂6、シリコーン樹脂7、バインダー樹脂5が見かけ上均等に分散する粘性を実現する観点から決められている。
(ii)具体的には、各成分の臨界的意義は次の通りとなる。
フッ素樹脂5〜15wt%
フッ素樹脂が5wt%よりも少なくなると、表面層(塗膜2)内に含まれる固形分量が減り(流動性の富むシリコーン樹脂の比率が高まる)、コーティングの被膜硬さが低下することになる。この被膜硬さ低下は、飛来するカーボン等のデポジット(燃焼室などで生成)をコーティング表面に衝突によって埋まりこみやすくすると共に、そのデポジットを機械的なアンカーリングによって被膜に付着させることになり、これによって、デポジットの堆積量は増加することになる。このため、フッ素樹脂の下限は5wt%に設定されている。一方、フッ素樹脂量が15wt%よりも多くなると、被膜の硬さが増し、加熱冷却の繰り返し作用に基づいて被膜内部応力の高まりが生じたときには、コーティング被膜が割れ、高温で使用された後ごく低温状態に保持され極端に応力が高まった状態になったときには、基材(スチール面)から剥離が生じやすくなる。このため、フッ素樹脂の上限は15wt%に設定されている。
バインダー樹脂5〜15wt%
バインダー樹脂が5wt%よりも少なくなり基材面を覆うバインダー層の厚さが薄くなると、固形分のフッ素樹脂が基材面に接触する割合が増加する。これに伴い、被膜の密着力が低下し、コーティング被膜が剥離し易くなる。特に、上述のように高温で使用された後ごく低温状態に保持され極端に応力が高まった状態になると基材(スチール面)からの剥離が生じやすくなる。このため、バインダー樹脂の下限は5wt%に設定されている。一方、バインダー量が15wt%より多くなると、乾燥過程でシリコーン樹脂が表面まで流出する経路が長くなり、乾燥過程でシリコーン樹脂が表面に析出する前に塗膜が固まり、樹脂層の分離が不十分となる。これによって、コーティング表面へシリコーン樹脂が十分な量をもって析出しないことになり、カーボン付着を抑制する効果が損なわれることになる。また、層内や界面にシリコーン樹脂が閉じ込められることにより、コーティング被膜の硬さが低下し、飛来するカーボン等のデポジット(燃焼室などで生成)は、コーティング表面に衝突によって埋まりこみやすくなると共に、機械的なアンカーリングによって被膜に付着しやすくなり、デポジットの堆積量は増加しやすくなる。このため、バインダー樹脂の上限は15wt%に設定されている。
シリコーン樹脂2〜5wt%
シリコーン量が2wt%よりも少なくなると、表面を覆うだけの量が確保できなくなり、下地バインダー樹脂(例えばエポキシ樹脂)が露出することになり、非粘着性・耐熱性等の性能が著しく低下することになる。一方、シリコーン量が5wt%よりも多くなると、塗布後の乾燥期間に基材表面に十分な量のシリコーン樹脂が析出する。この十分な量のシリコーン樹脂の析出は、表面エネルギーの安定化が既に達成されているので、内部に残るシリコーン樹脂の移動を抑制することになり、コーティング内部や基材面にシリコーンが残存することになる。このことが、バインダーと基材との顕著な密着力不足をもたらし、部品の組み付け時や物流時に加わる外力によって塗膜の剥離を生じ易くなる。このため、上記の如く、シリコーン樹脂の含有割合は、2〜5wt%に設定されている。
溶剤65〜88wt%
溶剤量が65wt%よりも少なくなると、塗膜の粘度が高くなり、塗膜内での移動現象が生じないことになる。これによって、表面に耐熱性に劣るバインダー樹脂(例えばエポキシ樹脂)が露出することになり、非粘着性・耐熱性等の性能が著しく低下することになる。一方、88wt%よりも溶剤量が多くなると、固形分が少なくなりすぎて溶剤揮発後に均質な膜が形成されないことになり、これに伴い、基材が露出することになり、所定の性能を得ることができなくなる。このため、溶剤の含有割合は、65〜88wt%に設定されている。
(iii)前記混合においては、フッ素樹脂6、シリコーン樹脂7、バインダー樹脂5毎に適した溶剤を用いて溶かし、その各溶かしたものを混合するのが好ましい。混合物(液体)の粘性を適正なものに容易に調整できるからである。
このため、例えば、フッ素樹脂6に対してはメチルエチルケトン、シリコーン樹脂7に対してはシクロヘキサン、バインダー樹脂5(エポキシ樹脂)に対しては酢酸ブチルおよびイソプロピルアルコールが用いられる。
(iv)また、この混合においては、有機溶剤として、塗膜の乾燥性を調整することを目的としたものをも混入することが好ましい。すなわち、沸点70〜100℃の低沸点溶剤(例えば沸点80℃のエチルベンゼン)、沸点100〜140℃の中沸点溶剤(例えば沸点110℃のトルエン)、沸点140℃以上の高沸点溶剤(例えば沸点144℃キシレン)の各配合量を調整すれば、塗膜内部における溶剤の揮発終了時間を調整できることになり、塗膜内部が構造変化するために適切な時間を確保できることになる。
(v)前記混合物としては、下記組成の具体例が好ましい。
酢酸ブチル(溶剤) 20〜30wt%(より好ましくは25wt%)
シクロヘキサン(溶剤) 20〜30wt%(より好ましくは25wt%)
イソプロピルアルコール(溶剤) 10〜20wt%(より好ましくは15wt%)
メチルエチルケトン(溶剤) 1〜10wt%(より好ましくは7wt%)
キシレン(溶剤) 1.5wt%
エチルベンゼン(溶剤) 1.5wt%
トルエン(溶剤) 1.5wt%
PTFE(フッ素樹脂6(固形分):Poly Tetra Fluoro Etylen)
5〜15wt%(より好ましくは10wt%)
エポキシ樹脂(バインダー樹脂5(固形分))
5〜15wt%(より好ましくは10wt%)
シリコーン樹脂7(固形分) 2〜5wt%(より好ましくは3wt%)
(2)次に、前記混合物を金属製の被塗物1表面に施工する。混合物をもって被塗物1表面に塗膜2を形成し、時間の経過に伴って、塗膜2内を前述の第1塗膜層3と第2塗膜層4とに構造変化させるためである。
(i)被塗物1を金属製としているのは、バインダー樹脂5(有機物)の極性基が金属に対して吸着性、反応性に優れており、これを後述の各樹脂の移動(流動)現象に利用するためである。
(ii)施工としては、スプレー塗装の他、転写(スタンプ法)、刷毛塗り等が行われる。既存の手法により簡単に被塗物1表面に塗膜2を形成できるからである。この施工によって塗膜2が生成された直後の時点においては、前述の混合状態が維持され、塗膜2内は、フッ素樹脂6、シリコーン樹脂7、バインダー樹脂5が見かけ上均等に分散した状態となっている。
(iii)塗膜2内を第1塗膜層3と第2塗膜層4とに構造変化させることには、フッ素樹脂6、シリコーン樹脂7が他の材料と濡れづらいこと、特に、シリコーン樹脂に関しては、他の材料との濡れ性が悪い上に、低粘度で他の樹脂(バインダー樹脂(エポキシ樹脂)やフッ素樹脂)に比べて流動性が高く、バインダー樹脂から分離して、移動し易いこと、バインダー樹脂5(極性基)と金属とが優れた吸着、反応性を有していることが利用されている。これらは、塗膜2内において、各樹脂の移動現象(流動現象)を引き起こし、それに基づき、金属製被塗物1側にバインダー樹脂5の濃化が進み、その一方で、そのバインダー樹脂5の濃化領域よりも外側領域においては、フッ素樹及びシリコーン樹脂7が濃化された状態となる。この場合、フッ素樹脂6の移動速度がシリコーン樹脂7の移動速度に比べて相対的に遅くなるため、図1に示すように、バインダー樹脂5中にもフッ素樹脂6が幾分存在することになる。
(3)次に、前記塗膜2内の溶剤を揮発(減少)させる。溶剤を塗膜2から揮発させて所定の塗膜2にするためである。
(i)溶剤を揮発させる方法としては、大気中に放置して溶剤を揮発させることは勿論、オーブン中で加熱する等、乾燥により溶剤を揮発させることが行われる。
(ii)溶剤を揮発させることは、単に、その溶剤を揮発させることだけが行われるだけでなく、その処理時間が、塗膜2内において各樹脂が移動現象を行うための時間として、有効に利用される。
(iii)溶剤を揮発させることに伴い、各樹脂の濃化が進み、粘度が高まることになるが、その粘度の上昇は、前述の各樹脂の移動現象に支障を与えることはない。
すなわち、溶剤の揮発に伴い塗膜内の粘度が増大しても、バインダー樹脂(エポキシ樹脂)が金属基材に吸着反応して、金属基材側で第1塗膜層3を形成する濃化現象が生じる一方で、シリコーン樹脂は、他の材料との濡れ性が悪く低粘度で他の樹脂(バインダー樹脂(エポキシ樹脂)やフッ素樹脂)に比べて流動性が高い性質に基づき、表面エネルギーをより安定にするべく、固形分が凝集した界面の隙間を伝って表面側に染み出し、塗膜(第2塗膜層4)を形成することになり、溶剤の揮発に伴う粘度上昇が塗膜2の構造変化に与える影響は極めて小さい。このため、溶剤を揮発させるために仮に乾燥工程を用いるとしても、第1、第2塗膜層3,4を有する塗膜2を問題なく形成できることになり、当該塗膜2を乾燥工程により迅速に形成できることになる。
(4)この後、塗膜2から溶剤がなくなることにより、前述の第1、第2塗膜層4からなる塗膜2(塗膜構造)が得られることになる。
尚、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましい或いは利点として載されたものに対応したものを提供することをも含むものである。
実施形態に係る塗膜構造を模式的に示す説明図。 好ましい組成に係る塗膜表面を示す表面写真図(倍率:100倍)。 各種試験面に対する水滴の接触角、テープ剥離力の結果を示す図。 テープ剥離力試験を説明する説明図。 各種試験面に対する高温下でのカーボンデポジットの付着量の結果を示す図。 図5の試験において用いられる従来の被膜(バインダー樹脂とフッ素樹脂粉末とを混在させた状態で焼き付けた塗膜)を模式的に示す図。
1 被塗物
2 塗膜
3 第1塗膜層
4 第2塗膜層
5 バインダー樹脂
6 フッ素樹脂
7 シリコーン樹脂

Claims (4)

  1. 混合物として、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、バインダー樹脂及び溶剤を全体重量に対してフッ素樹脂5〜15wt%、シリコーン樹脂2〜5wt%、バインダー樹脂5〜15wt%及び溶剤65〜88wt%の割合で混合したものを用意し、
    前記混合物を金属製の被塗物表面に施工して、塗膜を生成し、
    前記塗膜を、該塗膜内における各成分の性状に基づき、前記被塗物表面上に設けられて前記バインダー樹脂が濃化状態で含有される第1塗膜層と、該第1塗膜層上に設けられてフッ素樹脂及びシリコーン樹脂が濃化状態で含有される第2塗膜層とからなる積層構造に構造変化させる、
    ことを特徴とする塗膜構造の形成方法。
  2. 請求項1において、
    前記被塗物が、内燃機関の燃焼室から排気経路に至る部分の部材壁面部である、
    ことを特徴とする塗膜構造の形成方法。
  3. 請求項において、
    前記施工が、スプレー塗装である、
    ことを特徴とする塗膜構造の形成方法。
  4. 請求項において、
    前記塗膜を生成した後、乾燥を行って該塗膜内の溶剤を揮発させる、
    ことを特徴とする塗膜構造の形成方法。
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