JP4505698B2 - ビニル基含有アルコキシアミン、その用途および製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラジカル発生剤、ビニルモノマーの重合開始剤、エチレン系ポリマーの酸化防止剤またはエチレン系ポリマーを加熱して架橋させる際のスコーチ防止剤として有用なビニル基含有アルコキシアミン、およびその簡便な製造方法に関する。
また、本発明は、ラジカル重合性単量体を重合してなる高分子量体であって、その高分子の分子主鎖中に特定構造のアルコキシアミン基が懸垂(ペンダント)している高分子ラジカル重合開始剤およびその製造方法、さらには、その高分子ラジカル重合開始剤を用いて得られるグラフトポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
分子内にビニル基を有するアルコキシアミンは、既にいくつか合成されている。さらに、得られたビニル基を有するアルコキシアミンを用いて高分子ラジカル重合開始剤を得、次いで安定フリーラジカルが関与するラジカル重合によりグラフトポリマーを得る方法が既に知られている。例えば特公平5−6537号公報、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 34, 1456 (1995)およびMacromolecules, 31, 4396 (1998)にその技術の開示がある。
【0003】
即ち、特公平5−6537号公報に記載の方法によれば、まず、分子内に水酸基を有するアゾ系化合物を熱分解して発生する炭素中心ラジカルと、ニトロキシド化合物とを反応させることにより、水酸基を有するアルコキシアミンを得る。次いで、該アルコキシアミンの水酸基を(メタ)アクリル酸クロライドとエステル化して、ビニル基を有するアルコキシアミンを得ている。しかる後に、得られたビニル基を有するアルコキシアミンを他の単量体と共重合させることによって、オリゴマーの(分子量5,000以下の低分子量体である)ラジカル重合開始剤を得ている。
【0004】
Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 34, 1456 (1995)およびMacromolecules, 31, 4396 (1998)では、ニトロキシド化合物およびスチレン単量体の存在下、過酸化ベンゾイルを熱分解し、得られた生成物を加水分解することによって水酸基を有するアルコキシアミンを得た後、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 34, 1456 (1995)ではクロロメチルスチレンと該水酸基を有するアルコキシアミンとを反応させることにより、またMacromolecules, 31, 4396 (1998)では1-ブロモ-8-オクテンと該水酸基を有するアルコキシアミンと反応させることにより、非共役ビニル基を有するアルコキシアミンを得ている。
次いで、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 34, 1456 (1995)では、ビニル基を有するアルコキシアミンをスチレンと共重合することにより、ポリスチレンを主鎖とする高分子ラジカル重合開始剤を得ている。また、Macromolecules, 31, 4396 (1998)では、非共役ビニル基を有するアルコキシアミンをプロピレンもしくは2−メチルペンテンとをメタロセン触媒により共重合することにより、ポリオレフィンを主鎖とする高分子ラジカル重合開始剤を得ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにして合成される従来のビニル基含有アルコキシアミンには、次のような問題点があった。
【0006】
まず、ビニル基含有アルコキシアミンは、その使用温度により適した分解温度を示す構造が望まれるが、その熱分解速度には、アルコキシアミンのニトロキシド基に結合した炭素側の構造が大きく影響することが知られている。一般的に、この部分の構造が三級<二級<一級となるにつれて解離エネルギーが大きくなり、この順に分解する温度が高くなる。また、この部分が置換基を有している場合には、その置換基の立体および共鳴効果も、その解離エネルギーに影響を及ぼす。従って、様々な用途に適した様々な分解温度を有するビニル基含有アルコキシアミンを得るためには、ニトロキシド基に結合した炭素側の構造が制限される事なく、種々選択可能なアルコキシアミンの合成方法が必要不可欠である。
しかしながら、前記の従来技術では、以下に述べるような理由から、ニトロキシド基に結合した炭素側の構造が限られたアルコキシアミンしか得ることができなかった。
即ち、特公平5−6537号に記載の方法においては、比較的低温で熱分解可能なアゾ化合物しか反応に用いることができず、ニトロキシド基に結合した炭素側の構造が、メチル基とシアノ基を含む第三級炭素であるアルコキシアミンしか得られない。
また、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 34, 1456 (1995)およびMacromolecules, 31, 4396 (1998)に記載の方法では、水酸基含有アルコキシアミンを得るのに加水分解反応を行っている。このため、(メタ)アクリル酸エステル類などの加水分解されやすい単量体は反応に用いることができず、これらから誘導されるアルコキシアミンを得ることができなかった。
【0007】
また、前記のいずれの従来の方法においても、ビニル基含有アルコキシアミンを得るのに、一旦水酸基を有するアルコキシアミンを得なければならず、少なくとも2段階以上の反応を必要としている点で非常に煩雑であり、工業的に好ましくなかった。
【0008】
加えて、上記反応で不純物として残存する可能性のある未反応の水酸基を有するアルコキシアミンは、その後のグラフトポリマーを得るためのラジカル重合において、枝ポリマーを形成する反応に関与せず、ホモポリマーを生成してしまう。即ち、グラフトポリマーの純度を低下させるという問題点を有しており、好ましい合成法とは言えなかった。
【0009】
また、高分子ラジカル重合開始剤およびそれを用いて得られるグラフトポリマーに関しては、従来の技術にはそれぞれ次のような問題点があった。
【0010】
特開昭60−89452号公報に記載の発明は、特にオリゴマーを得ることを目的としており、これにより合成されるグラフトポリマーとしては、分子量、特にグラフトポリマーの枝ポリマーの分子量が極めて小さいものしか得られておらず、枝ポリマー部分の特性が十分に発現されないものであった。即ち、この発明により得られるグラフトポリマーは、2種以上の高分子量体からなる混合物の相溶化剤、乳化剤、分離安定剤などとして添加して用いた際に十分な効果を奏するものではなかった。
【0011】
また、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 34, 1456 (1995) に記載の方法では、該高分子ラジカル重合開始剤を用いて得られたグラフト重合体については、分岐したスチレンホモポリマーを得る反応に関する記載はあるが、2種以上のモノマーからなるグラフトコポリマーの合成に関してはなんら具体的な記述がない。分岐状のホモポリスチレンは、前記の相溶化剤、乳化剤、分離安定剤などとしての効果を有していない。
【0012】
加えて、上記のAngew. Chem. Int. Ed. Engl., 34, 1456 (1995)およびMacromolecules, 31, 4396 (1998)に記載の方法においては、高分子ラジカル重合開始剤を合成するためのビニル基を有するアルコキシアミンを得るのに、少なくとも3段階以上の反応を必要としている点で非常に煩雑であり、コスト面で極めて不利であり実用的とはいえなかった。
【0013】
本発明の目的は、様々な分解温度を示す新規なビニル基含有アルコキシアミン、およびその1段階の簡便な製造方法を提供することである。
また、本発明は、グラフトポリマー合成用として有用な高分子ラジカル重合開始剤、およびこれを簡便な反応により得る方法を提供し、さらに、グラフトポリマーを構成するモノマーのホモポリマーの生成を実質的に伴わなず、相溶化剤、乳化剤、分離安定剤などとして有用な高純度のグラフトポリマーを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来法の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、工業的に入手可能でかつ安価な原料を用い、かつ1段階の簡便な方法により、様々な構造の新規なビニル基含有アルコキシアミン(A)を得ることができるとの知見を得た。さらに、このようにして得たビニル基含有アルコキシアミン(A)を用いて高分子ラジカル重合開始剤(G)を得ることができ、該高分子ラジカル重合開始剤(G)を用いて得られるグラフトポリマー(H)が、その枝ポリマーの分子量が均一で狭い多分散性を有し、かつホモポリマー含有量の極めて低い高純度なものであるとの知見を得て本発明を完成した。
【0015】
即ち、本出願における第1の発明は、下記一般式(1)
【0016】
【化9】
【0017】
(式中、R1は下記一般式(2)、下記一般式(3)、下記一般式(4)のいずれかで表されるラジカル重合性ビニル基を有する1価の有機残基を表す。R 3 、R 4 、R 5 、およびR 6 はそれぞれメチル基を示す。R 2 およびR 7 はそれぞれ独立に選択される炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはR2とR7が連結した環式構造であり、環式構造の場合には、アルキル基、ヒドロキシ基、アセトキシル基、ベンゾイルオキシ基、メトキシ基もしくはオキソ基により置換されていてもよく、環式構造の炭素数の合計はR 3 の炭素、R 4 の炭素、R 5 の炭素、R 6 の炭素、および置換基の炭素を含めて8〜16であり、かつ、環式構造の置換基、R 3 、R 4 、R 5 、およびR 6 を除く部分は、ピペリジン、ピロリジンおよびイソインドリンから選ばれる窒素含有環である。R8は水素またはメチル基を表す。R9はフェニル基、トルイル基、シアノ基、炭素数が1〜4のアルコキシカルボニル基、炭素数が1〜4のアルキルカルボニルオキシ基から選択されるものである。)で表されるビニル基含有アルコキシアミン(A)である。
【0019】
【化10】
【0020】
(式中、R 10 は水素またはメチル基を表す。)
【0022】
【化11】
【0023】
(式中、R 11 は水素またはメチル基を表す。nは0〜2の整数を表す。)
【0025】
【化12】
【0026】
(式中、R 12 は水素またはメチル基を表す。nは1〜2の整数を表す。)
【0027】
本出願における第2の発明は、分子内にラジカル重合性ビニル基を有する下記一般式(5)
【0028】
【化13】
【0029】
(式中、R 1 は前記一般式(2)、前記一般式(3)、前記一般式(4)のいずれかで表されるラジカル重合性ビニル基を有する1価の有機残基を表す。)で表される有機過酸化物(B)と、下記一般式(6)
【0030】
【化14】
【0031】
(式中、R 3 、R 4 、R 5 、およびR 6 はそれぞれメチル基を示す。R 2 およびR 7 はそれぞれ独立に選択される炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはR2とR7が連結した環式構造であり、環式構造の場合には、アルキル基、ヒドロキシ基、アセトキシル基、ベンゾイルオキシ基、メトキシ基もしくはオキソ基により置換されていてもよく、環式構造の炭素数の合計はR 3 の炭素、R 4 の炭素、R 5 の炭素、R 6 の炭素、および置換基の炭素を含めて8〜16であり、かつ、環式構造の置換基、R 3 、R 4 、R 5 、およびR 6 を除く部分は、ピペリジン、ピロリジンおよびイソインドリンから選ばれる窒素含有環である。)で表されるニトロキシド化合物(C)と、下記一般式(7)
【0032】
【化15】
【0033】
(式中、R8は水素またはメチル基を表す。R9はフェニル基、トルイル基、シアノ基、炭素数が1〜4のアルコキシカルボニル基、炭素数が1〜4のアルキルカルボニルオキシ基から選択されるものである。)で表されるラジカル重合性単量体(D)とを含む混合物中で、前記有機過酸化物(B)を分解させることを特徴とする第1の発明に記載のビニル基含有アルコキシアミン(A)の製造方法である。
【0034】
本出願における第3の発明は、第1の発明に記載のビニル基含有アルコキシアミン(A)と、ラジカル重合性単量体(E1)と、ラジカル重合開始剤(F)とからなる混合物中で、前記ビニル基含有アルコキシアミン(A)が分解しない条件下において、前記ラジカル重合開始剤(F)を分解させることを特徴とする高分子ラジカル重合開始剤(G)の製造方法である。
【0035】
本出願における第4の発明は、第3の発明に記載の方法により得られる高分子量体であって、下記一般式(8)
【0036】
【化16】
【0037】
(式中、R 3 、R 4 、R 5 、およびR 6 はそれぞれメチル基を示す。R 2 およびR 7 はそれぞれ独立に選択される炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはR2とR7が連結した環式構造であり、環式構造の場合には、アルキル基、ヒドロキシ基、アセトキシル基、ベンゾイルオキシ基、メトキシ基もしくはオキソ基により置換されていてもよく、環式構造の炭素数の合計はR 3 の炭素、R 4 の炭素、R 5 の炭素、R 6 の炭素、および置換基の炭素を含めて8〜16であり、かつ、環式構造の置換基、R 3 、R 4 、R 5 、およびR 6 を除く部分は、ピペリジン、ピロリジンおよびイソインドリンから選ばれる窒素含有環である。R8は水素またはメチル基を表す。R9はフェニル基、トルイル基、シアノ基、炭素数が1〜4のアルコキシカルボニル基、炭素数が1〜4のアルキルカルボニルオキシ基から選択されるものである。)で表されるアルコキシアミン基がその主鎖に懸垂している高分子ラジカル重合開始剤(G)である。
【0038】
本出願における第5の発明は、第4の発明に記載の高分子ラジカル重合開始剤(G)と、ラジカル重合性単量体(E2)とを、100〜180℃の範囲において加熱することにより得られるグラフトポリマー(H)である。
【0039】
本発明において、その重要な点の一つは、分子内にビニル基を含有し、かつニトロキシドに結合する炭素構造の自由度が高いアルコキシアミンを1段階の簡便な反応によって得ることができることである。
【0040】
既に述べたように、従来技術では、ビニル基を含有するアルコキシアミンを得る際に、まずヒドロキシ基を有するアルコキシアミンを得た後、ヒドロキシ基と(メタ)アクリル酸クロライドあるいはクロロメチルスチレンなどのラジカル重合性二重結合を有する化合物を反応させることにより、該アルコキシアミンにビニル基を導入している。つまり、従来技術においては、反応前駆体であるヒドロキシ基を有するアルコキシアミンを得るための1段階目の反応は、過酸化ベンゾイルの熱分解で生じるベンゾイルオキシラジカルのラジカル重合性二重結合へのラジカル付加反応である。従って、そのようなラジカル付加反応において、目的物を選択的に得るために、系中にラジカル重合性二重結合を有する化合物を1種のみ存在させる方法が必然的にとられている。
即ち、従来技術では、反応系中に他のラジカル重合性二重結合を有する化合物を存在させるという着想が全くなく、開始剤自体にラジカル重合性二重結合を有するものを用いるといった概念の存在も推察することができない。その結果として、前述の多段階の反応方法が行われていると考えられる。また、次の加水分解工程の存在から、必然的にスチレンなどのように耐加水分解性のあるビニルモノマーが限定されて使われている。
【0041】
一方、本発明では、上記したような従来技術に全く想起されない着想に基づき、反応系中に、二重結合を有する有機過酸化物(B)をラジカル重合開始剤として存在させている。この有機過酸化物(B)の熱分解によって生じた二重結合を有する特定のオキシラジカルを、自由に選択可能なラジカル重合性二重結合を有する化合物、即ちラジカル重合性単量体(D)と反応させ、さらにはニトロキシド化合物(C)と反応させることにより、分子内にビニル基を含有し、かつニトロキシドに結合する炭素構造の自由度が高いアルコキシアミン(A)を1段階の簡便な反応によって得ることができるのである。
【0042】
また、本発明における重要な別の点の一つは、本発明によって得られるビニル基を含有するアルコキシアミン(A)が、特異な製造方法によって合成されるものであるために、不純物としてのビニル基を含有しないアルコキシアミンを全く含まない点にある。このため、アルコキシアミンの熱分解によりグラフトポリマー(H)を得る反応において、有効に枝ポリマーが形成されることとなり、最終的に得られるグラフトポリマー(H)の純度を従来技術より高くできるのである。
【0043】
【発明実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態について説明する。
【0044】
本発明のビニル基含有アルコキシアミンは、一般式(1)で表される化合物(A)である。一般式(1)において、R1は前記一般式(2)、前記一般式(3)、前記一般式(4)のいずれかで表されるラジカル重合性ビニル基を有する1価の有機残基を表す。R 3 、R 4 、R 5 、およびR 6 はそれぞれメチル基を示す。R 2 およびR 7 はそれぞれ独立に選択される炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはR2とR7が連結した環式構造であり、環式構造の場合には、アルキル基、ヒドロキシ基、アセトキシル基、ベンゾイルオキシ基、メトキシ基もしくはオキソ基により置換されていてもよく、環式構造の炭素数の合計はR 3 の炭素、R 4 の炭素、R 5 の炭素、R 6 の炭素、および置換基の炭素を含めて8〜16であり、かつ、環式構造の置換基、R 3 、R 4 、R 5 、およびR 6 を除く部分は、ピペリジン、ピロリジンおよびイソインドリンから選ばれる窒素含有環である。R8は水素またはメチル基を表す。R9はフェニル基、トルイル基、シアノ基、炭素数が1〜4のアルコキシカルボニル基、炭素数が1〜4のアルキルカルボニルオキシ基から選択されるものである。
【0045】
本発明の一般式(1)で表されるビニル基含有アルコキシアミン(A)の具体的な化合物例としては、2−(シンナモイルオキシ)−1−フェニル−1−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)エタン、1−(4’−ヒドロキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−1−メチル−2−(4’−メチル−シンナモイルオキシ)−1−(メチルオキシカルボニル)エタン、1−(4’−アセトキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−2−(アリルオキシカルボニルオキシ)−1−フェニルエタン、2−(2’−アリルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)−1−フェニル−1−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)エタン、2−(2’−(2’’−アリルオキシエチルオキシ)エチルオキシカルボニルオキシ)−1−(ジ−t−ブチルニトロキシル)−1−(メチルオキシカルボニル)エタン、2−(メタリルオキシカルボニルオキシ)−1−(4’−オキソ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−1−フェニルエタン、1−(4’−ベンゾイルオキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−1−シアノ−2−(2’−メタリルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)エタン、2−(2’−(2’’−メタリルオキシエチルオキシ)エチルオキシカルボニルオキシ)−1−メチル−1−フェニル−1−(2’,2’,5’,5’−テトラメチル−1’−ピロリジニルオキシ)エタン、1−アセトキシ−1−(4’−アセトキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−2−(2’−アクリロイルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)エタン、2−(2’−(2’’−アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルオキシカルボニルオキシ)−1−(4’−メトキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−1−フェニルエタン、2−(2’−メタクリロイルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)−1−フェニル−1−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)エタン、1−(ブチルオキシカルボニル)−1−(ジ−t−ブチルニトロキシル)−2−(2’−(2’’−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルオキシカルボニルオキシ)エタン、1−(4’−ヒドロキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−2−(2’−メタクリロイルオキシエチルオキシカルボニルオキシオキシ)−1−フェニルエタン、などが挙げられる。
【0046】
本発明の一般式(1)で表されるビニル基含アルコキシアミン(A)は、分子内にラジカル重合性ビニル基を有する有機過酸化物(B)と、ニトロキシド化合物(C)と、ラジカル重合性単量体(D)とを含む混合物中で、前記有機過酸化物(B)の過酸化結合を解裂させることにより、製造することができる。即ち、混合物中で有機化酸化物(B)を分解させることによりオキシラジカルを生成させ、このオキシラジカルがラジカル重合性単量体(D)に付加して生成した炭素ラジカルを、ニトロキシド化合物(C)に捕捉させて、ビニル基含有アルコキシアミン(A)を得るのである。
【0047】
前記、分子内にラジカル重合性ビニル基を有する有機過酸化物(B)として、具体的には、ジシンナモイルペルオキシド、ジ(4−メチルシンナモイル)ペルオキシド、ジアリルパーオキシジカーボネート、ジ(2−アリルオキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−(2’−アリルオキシエチルオキシ)エチル)パーオキシジカーボネート、ジメタリルパーオキシジカーボネート、ジ(2−メタリルオキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−(2’−メタリルオキシエチルオキシ)エチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−アクリロイルオキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−(2’−アクリロイルオキシエチルオキシ)エチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−(2’−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチル)パーオキシジカーボネート、などが挙げられる。
【0048】
これら有機過酸化物(B)の分解方法としては、有機過酸化物(B)の熱分解温度まで加熱処理することにより分解する方法や、光により分解する方法、また、促進剤などを併用することによるレドックス的な分解方法などがあり、特に限定されるものではない。
【0049】
前記、ニトロキシド化合物(C)として、具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、1,1,3,3−テトラメチルイソインドリン−2−オキシル、ジ−t−ブチルニトロキシドなどが挙げられる。
【0050】
前記、ラジカル重合性単量体(D)としては、特に限定されるものではないが、例えば、スチレンもしくはα−メチルスチレンなどのα一置換アルキルスチレン、p−メチルスチレンなどの核置換アルキルスチレンや、(メタ)アクリル酸メチルもしくは(メタ)アクリル酸エチルもしくは(メタ)アクリル酸ブチルなどのエステル基含有ビニル単量体、(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル単量体、または酢酸ビニルもしくは酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル単量体などを具体例として挙げることができる。
【0051】
本発明において、一般式(1)で表されるビニル基含有アルコキシアミン(A)を得る際に用いるニトロキシド化合物(C)と有機過酸化物(B)の配合比は、ニトロキシド化合物(C)/有機過酸化物(B)=0.3〜4.0(モル比)が好ましく、より好ましくは0.6〜2.0の範囲である。0.3未満では、ニトロキシド化合物(C)による炭素中心ラジカルの捕捉が十分ではなく、ラジカル重合性単量体(D)の重合物が生成してしまうため好ましくはない。また、4.0よりも大きくなると、ニトロキシド化合物(C)に対する収率が低下し、経済的に不利になるため好ましくない。
【0052】
本発明において、一般式(1)で表されるビニル基含有アルコキシアミン(A)を得る際に用いる前記ラジカル重合性単量体(D)とニトロキシド化合物(C)の配合比は、ラジカル重合性単量体(D)/ニトロキシド化合物(C)=1〜100(モル比)が好ましく、より好ましくは5〜40の範囲である。1未満では、有機過酸化物(B)の分解により生じたオキシラジカルがラジカル重合性単量体(D)に付加せずに有機過酸化物(B)のビニル基と反応する割合が増加してしまい、ビニル基含有アルコキシアミン(A)の収率が低下する。一方、100よりも大きくなると、未反応のラジカル重合性単量体(D)が多量に残存し、経済的に不利である。
【0053】
本発明において、一般式(1)で表されるビニル基含有アルコキシアミン(A)を合成する際の反応温度は、好ましくは10〜120℃であり、更に好ましくは40〜100℃である。10℃未満では、有機過酸化物(B)の分解速度が小となり工業的に不利である。120℃よりも高くなると、生成したビニル基含有アルコキシアミン(A)が分解を起こしたり、重合を起こしたりしやすくなる傾向があり、収率が低下する。
【0054】
本発明の高分子ラジカル重合開始剤(G)は、一般式(8)で示されるアルコキシアミン基が分子主鎖から直接、または2価の有機残基を介して懸垂している高分子ラジカル重合開始剤である。
一般式(8)において、R 3 、R 4 、R 5 、およびR 6 はそれぞれメチル基を示す。R 2 およびR 7 はそれぞれ独立に選択される炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはR2とR7が連結した環式構造であり、環式構造の場合には、アルキル基、ヒドロキシ基、アセトキシル基、ベンゾイルオキシ基、メトキシ基もしくはオキソ基により置換されていてもよく、環式構造の炭素数の合計はR 3 の炭素、R 4 の炭素、R 5 の炭素、R 6 の炭素、および置換基の炭素を含めて8〜16であり、かつ、環式構造の置換基、R 3 、R 4 、R 5 、およびR 6 を除く部分は、ピペリジン、ピロリジンおよびイソインドリンから選ばれる窒素含有環である。R8は水素またはメチル基を表す。R9はフェニル基、トルイル基、シアノ基、炭素数が1〜4のアルコキシカルボニル基、炭素数が1〜4のアルキルカルボニルオキシ基から選ばれる。
【0055】
本発明において、高分子ラジカル重合開始剤(G)の分子量は、グラフトポリマー(H)に対する要求特性に応じて適宜決定すれば良いが、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(以下GPCと略記する)により測定されるスチレン換算分子量において、数平均分子量が3,000〜50万の範囲であることが好ましく、5,000〜40万の範囲であることがより好ましい。高分子ラジカル重合開始剤(G)の分子量が3,000未満であると、これを用いてグラフトポリマー(H)を合成した場合に幹ポリマーの物性が十分発現できなくなる傾向にあり、一方、分子量が50万よりも大きくなると、溶融状態または溶液状態での高分子ラジカル重合開始剤(G)の粘度が高くなり、それ自体の製造およびグラフトポリマー(H)製造時の作業性が悪くなる傾向にあるので好ましくない。
【0056】
また、本発明の高分子ラジカル重合開始剤(G)一分子当たりに懸垂したアルコキシアミン基の平均個数は、3〜200個の範囲内であることが好ましく、5〜100個の範囲にあることがより好ましい。アルコキシアミン基の個数が1個または2個の場合であっても、枝ポリマーの分子量を十分に大きくすることによってグラフトポリマー(H)としての効果発現は可能であるが、アルコキシアミン基の平均個数が3より少ない場合には、アルコキシアミン基を分子内に有さない高分子量体が生成しやすくなるうえ、これを用いてグラフトポリマー(H)を合成した場合に枝ポリマーの物性が十分発現できなくなる傾向にあるので好ましくない。一方、平均個数が200個よりも多くなると、幹ポリマーの物性が十分発現できなくなる傾向にあるので好ましくない。
【0057】
上記のような高分子ラジカル重合開始剤(G)は、次のようにして得ることができる。
即ち、一般式(1)で示される同一分子内にラジカル重合性ビニル基とアルコキシアミン基とを有するビニル基含有アルコキシアミン(A)と、ラジカル重合性単量体(E1)と、ラジカル重合開始剤(F)とからなる混合物中で、前記ビニル基含有アルコキシアミン(A)が分解しない条件下において、前記ラジカル重合開始剤(F)を分解させる(以下、第一段目重合と称する)。
【0058】
本発明において、第一段目重合に用いられるラジカル重合性単量体(E1)は、ビニル基含有アルコキシアミン(A)と共重合体可能なビニル単量体であって、目的とするグラフトポリマー(H)の幹ポリマーを構成するのに適したものの中から適宜選択することができる。
ビニル基含有アルコキシアミン(A)と共重合可能なラジカル重合性単量体(E1)の具体的な例としては、スチレン、p−メチルスチレン、クロルメチルスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体や、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基含有ビニル単量体や、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水基含有ビニル単量体や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのエステル基含有ビニル単量体や、(メタ)アクリル酸2−イソシアネートエチル、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどのイソシアネート基含有ビニル単量体や、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素含有アルキル(メタ)アクリレートや、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有ビニル単量体や、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどの芳香族含窒素ビニル単量体や、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル単量体や、、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル単量体などが挙げられる。
これらラジカル重合性単量体(E1)のうち特に好ましいものは、分子内に酸素原子または窒素原子を含むラジカル重合性単量体であり、具体的には、カルボキシル基含有ビニル単量体、酸無水基含有ビニル単量体、エステル基含有ビニル単量体、イソシアネート基含有ビニル単量体、窒素含有アルキル(メタ)アクリレート、アミド基含有ビニル単量体、芳香族含窒素ビニル単量体、ニトリル基含有ビニル単量体、カルボン酸ビニルエステル単量体などが挙げられる。
【0059】
これらラジカル重合性単量体(E1)は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いることもできる。
特に、グラフトポリマー(H)において枝ポリマーとは異なる物性を幹ポリマーに導入することが望ましい場合には、第一段目重合に、スチレン系以外のラジカル重合性単量体(E1)を単独で用いたり、あるいは少なくとも1種以上のスチレン系以外のラジカル重合性単量体(E1)を含む単量体混合物を用いることが好ましい。
なぜならば、本発明の高分子ラジカル重合開始剤(G)を用いてグラフトポリマー(H)を製造する場合に、より高度に分子量が制御された枝ポリマーを得るには、スチレン系単量体を含む単量体を用いることがより好ましいからである。
【0060】
本発明において、第一段目重合において用いられる上記のビニル基含有アルコキシアミン(A)とラジカル重合性単量体(E1)の使用量は、得られる高分子ラジカル重合開始剤(G)中の所望されるアルコキシアミン基の個数に依存して適宜選択すれば良いが、通常、ラジカル重合性単量体(E1)/ビニル基含有アルコキシアミン(A)=10〜500(モル比)の範囲であることが好ましい。10よりも小さいと、グラフトポリマー(H)を合成した場合に枝ポリマーと枝ポリマーの間の幹ポリマーの鎖長が短くなりすぎて幹ポリマーの物性が十分発現できなくなる傾向にあり、一方、500よりも大きくなると、枝ポリマー間の幹ポリマーの鎖長が長くなりすぎて枝ポリマーの物性が十分発現できなくなる傾向にあるので好ましくない。
【0061】
本発明において、第一段目重合は、ラジカル重合開始剤(F)を加熱によって分解させて開始するほかに、二元開始剤を用いてレドックス的にラジカルを発生させたり、または光重合開始剤に光照射することによりラジカルを発生させたりして重合を開始することもできる。
【0062】
第一段目重合を加熱によって開始する場合には、前記のビニル基含有アルコキシアミン(A)と、ラジカル重合性単量体(E1)と、ラジカル重合開始剤(F)とからなる混合物を、ラジカル重合開始剤(F)が分解し、かつビニル基含有アルコキシアミン(A)が分解しない温度領域まで加熱することにより、重合が行われる。
この場合の具体的な重合温度としては、0〜120℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。重合温度が0℃よりも低くなると、重合速度が遅いため重合完結までに長時間を要するので経済的に不利である。一方、重合温度が120℃よりも高くなると、上記ビニル基含有アルコキシアミン(A)の分解が顕著になり、結果として最終的に得られるグラフトポリマー(H)の構造の制御が困難になってゲルが発生したり、グラフトポリマー(H)の純度が低下するので好ましくない。
【0063】
本発明において、第一段目重合に用いられるラジカル重合開始剤(F)としては、通常使用されるものを用いることができる。
加熱によって重合を開始する場合のラジカル重合開始剤(F)としては、通常の有機過酸化物またはアゾ化合物を用いることができ、上記の重合温度条件下で有効にラジカルを発生しうるものを適宜選択すると良い。
このような場合に、通常、用いられるラジカル重合開始剤(F)の具体的な例としては、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−オクチルペルオキシネオデカノエートやt−ブチルペルオキシピバレート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−オクチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類や、イソブチリルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類や、ジプロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどのペルオキシジカーボネート類や、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)などのペルオキシケタール類や、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(シクロヘキサンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)などのアゾ化合物が挙げられる。
レドックス的に重合を開始する場合のラジカル重合開始剤(F)としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどと、硫酸第一鉄、硫酸第一銅、アスコルビン酸ナトリウムなどの還元剤とを組み合わせた二元開始剤を用いることができる。
また、光照射により重合を開始する場合のラジカル重合開始剤(F)としては、通常に使用される光重合開始剤(光増感剤)を用いることができる。
【0064】
本発明において、第一段目重合は、懸濁重合、溶液重合、塊状重合及び乳化重合など公知の重合方法によって行うことができ、重合方法は、モノマーの種類、重合温度、所望される高分子ラジカル重合開始剤(G)の分子量などによってこれらの中から適宜選択される。
【0065】
本発明において、第一段目重合に懸濁重合を採用した場合、分散剤として水溶性高分子の保護コロイド剤や、難溶性無機物を重合系に添加することができる。
水溶性高分子保護コロイド剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等があり、これらのうちポリビニルアルコールが好ましい。また、難溶性無機物としては、第三燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、ピロ燐酸カルシウム、ベントナイト等が挙げられる。難溶性無機物を分散剤とした場合には、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルフォン酸ソーダなどのアニオン界面活性剤を少量使用することが好ましい。
【0066】
本発明において、第一段目重合に溶液重合を採用した場合に使用できる溶媒の具体的な例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒や、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶媒や、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒や、エチレングリコール、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエチレングリコール系溶媒や、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジエチレングリコール系溶媒や、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコール系溶媒などが挙げられ、これらは単独で用いたり、あるいは混合物として用いることができる。
【0067】
また、本発明では、第一段目重合において、必要に応じて、α−メチルスチレンダイマー(2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン)、ターピノーレン、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオフェノールなどの公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0068】
本発明においては、第一段目重合が完結した後、第一段目重合によって生成した高分子ラジカル重合開始剤(G)は、そのままで、あるいは溶媒留去または再沈殿などの精製工程を経た後に、グラフトポリマー(H)を得るための重合(以下、第二段目重合と称する)に供される。
【0069】
本発明において第二段目重合は、前記第一段目重合で生成した高分子ラジカル重合開始剤(G)と、ラジカル重合性単量体(E2)とを含む混合物を加熱することにより実施される。
即ち、高分子ラジカル重合開始剤(G)が熱的作用によって、幹ポリマー側に結合した炭素ラジカルと、安定なニトロキシドラジカルに解裂する。炭素ラジカルは、系中に存在するラジカル重合性単量体(E2)との付加重合を開始する。一方、ニトロキシドラジカルは重合を開始することなく、炭素ラジカルからの生長ポリマーラジカルとの間で、再結合と再開裂を繰り返しながら重合反応が進行する、いわゆるリビング的なラジカル重合が起こる。
【0070】
本発明において、第二段目重合に用いられるラジカル重合性単量体(E2)としては、前記第一段目重合におけるラジカル重合性単量体(E1)として用いることが可能なものとして例示した化合物の中から、目的とするグラフトポリマー(H)に要求される物性に応じて適宜選択して用いることができる。中でも、第二段目重合で得られるグラフトポリマー(H)の枝ポリマーの分子量を効果的に大きくする目的、または、より高度に制御する目的で、スチレン系単量体を単独で用いるか、あるいは少なくとも1種以上のスチレン系単量体を含むラジカル重合性単量体(E2)の混合物を用いることが好ましい。
【0071】
本発明において、第二段目重合の重合温度は100〜180℃の範囲が好ましく、110〜160℃の範囲がより好ましい。重合の温度が100℃よりも低いと、高分子ラジカル重合開始剤(G)の分解速度が遅くなり、結果として重合時間が長くなる傾向にあるので好ましくない。一方、重合温度が180℃よりも高いと、重合速度の制御が困難になる上、熱重合により第二段目重合時に添加されたラジカル重合性単量体(E2)のホモポリマーが生成しやすくなり、結果としてグラフトポリマー(H)の純度が低下するので好ましくない。
【0072】
本発明において、第二段目重合は、上記第一段目重合と同様に、塊状重合、懸濁重合、溶液重合及び乳化重合など公知の重合方法によって行うことができ、モノマーの種類、重合温度、所望される高分子ラジカル重合開始剤(G)の分子量などによって適宜選択される。
【0073】
本発明において、第二段目重合で得られるグラフトポリマー(H)の枝ポリマーの分子量は、幹ポリマーの分子量との関係、および得られるグラフトポリマー(H)の分子量によって、適宜決定すればよい。高分子ラジカル重合開始剤(G)中に懸垂したアルコキシアミン基の個数(即ち、最終的に得られる枝ポリマーの個数)にも依存するが、通常、GPCによるスチレン換算分子量が1,000〜15万の範囲であることが好ましく、2,000〜10万の範囲であることがより好ましい。分子量が1,000よりも小さいと、グラフトポリマー(H)を合成した場合に枝ポリマーの物性が十分発現できなくなる傾向にあり、一方、15万よりも大きくなると、幹ポリマーの物性が十分発現できなくなる傾向にあるので好ましくない。
【0074】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0075】
<実施例1:2−(シンナモイルオキシ)−1−フェニル−1−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)エタン(A−1)の合成>
ラジカル重合性単量体(D)としてスチレン20.8g(200mmol)に、ニトロキシド化合物(C)として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル1.56g(10mmol)を加え、80℃に加温した。次いで、有機過酸化物(B)としてジシンナモイルペルオキシド(純度75.7%、水含有)3.89g(10mmol)を少しずつ加え、80℃で3時間加熱した。
次に、溶液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填、溶出液としてジクロロメタン/n−ヘキサン混合溶液を使用)で精製することにより、目的物2.47gを収率60.5%で得た。
得られた物質を、1H−核磁気共鳴分析(1H−NMR)、質量分析(FAB−MS)および元素分析により、同定した。各分析結果を、以下に示す。
【0076】
1H−NMR(ppm,CDCl3/TMS): 0.70−1.73(m,18H),4.39(dd,J=6 and 11Hz,1H),4.74(dd, J=6 and 11Hz,1H),5.00(dd,J=6 and 6Hz, 1H),6.33(d,J=16Hz,1H),7.24−7.49(m,10H),7.58(d,J=16Hz,1H)
【0077】
【0078】
これらの分析結果から、得られた物質が下記構造の2−(シンナモイルオキシ)−1−フェニル−1−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)エタン(以下、化合物A−1とする)であることを確認した。
【0079】
【化17】
【0080】
<実施例2:1−(4’−ヒドロキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−1−メチル−2−(4’−メチル−シンナモイルオキシ)−1−(メチルオキシカルボニル)エタンの合成>
ラジカル重合性単量体(D)としてメタクリル酸メチル20.0g(200mmol)に、ニトロキシド化合物(C)として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル1.72g(10mmol)を加え、80℃に加温した。次いで、有機過酸化物(B)としてジ(4−メチルシンナモイル)ペルオキシド(純度72.0%、水含有)4.48g(10mmol)を少しずつ加え、60℃で8時間加熱した。
次に、溶液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填、溶出液としてジクロロメタン/n−ヘキサン混合溶液を使用)で精製することにより、目的物0.997gを収率23.0%で得た。
得られた物質のFAB−MSおよび元素分析による分析結果を、以下に示す。
【0081】
【0082】
これらの分析結果から、得られた物質が下記構造の1−(4’−ヒドロキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−1−メチル−2−(4’−メチル−シンナモイルオキシ)−1−(メチルオキシカルボニル)エタンであることを確認した。
【0083】
【化18】
【0084】
<実施例3:1−(4’−アセトキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−2−(アリルオキシカルボニルオキシ)−1−フェニルエタンの合成>
ラジカル重合性単量体(D)としてスチレン20.8g(200mmol)に、ニトロキシド化合物(C)として4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル2.14g(10mmol)を加え、60℃に加温した。次いで、有機過酸化物(B)としてジアリルパーオキシジカーボネート(純度43.0%、トルエン溶液)4.70g(10mmol)を少しずつ加え、60℃で3時間加熱した。
次に、溶液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填、溶出液としてジクロロメタン/n−ヘキサン混合溶液を使用)で精製することにより、目的物2.57gを収率61.3%で得た。
得られた物質のFAB−MSおよび元素分析による分析結果を、以下に示す。
【0085】
【0086】
これらの分析結果から、得られた物質が下記構造の1−(4’−アセトキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−2−(アリルオキシカルボニルオキシ)−1−フェニルエタンであることを確認した。
【0087】
【化19】
【0088】
<実施例4:2−(2’−アリルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)−1−フェニル−1−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)エタン(A−4)の合成>
ラジカル重合性単量体(D)としてスチレン20.8g(200mmol)に、ニトロキシド化合物(C)として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル1.56g(10mmol)を加え、60℃に加温した。次いで、有機過酸化物(B)としてジ(2−アリルオキシエチル)パーオキシジカーボネート(純度43.9%、トルエン溶液)6.61g(10mmol)を少しずつ加え、60℃で3時間加熱した。
次に、溶液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填、溶出液としてジクロロメタン/n−ヘキサン混合溶液を使用)で精製することにより、目的物2.47gを収率61.1%で得た。
得られた物質の1H−NMR、FAB−MSおよび元素分析による分析結果を、以下に示す。
【0089】
1H−NMR(ppm,CDCl3/TMS): 0.65−1.60(m,18H),3.57−3.60(m,2H),3.96−3.99(m,2H),4.17−4.21(m,2H),4.33(dd,J=7 and 11Hz,1H),4.67(dd,J=5 and 11Hz,1H),4.93(dd, J=5 and 7Hz,1H),5.14−5.19(m,1H),5.21−5.29(m,1H),5.80−5.94(m,1H),7.26−7.34(m,5H)
【0090】
【0091】
これらの分析結果から、得られた物質が下記構造の2−(2’−アリルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)−1−フェニル−1−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)エタン(以下、化合物A−4とする)であることを確認した。
【0092】
【化20】
【0093】
<実施例5:2−(2’−(2’’−アリルオキシエチルオキシ)エチルオキシカルボニルオキシ)−1−(ジ−t−ブチルニトロキシル)−1−(メチルオキシカルボニル)エタンの合成>
ラジカル重合性単量体(D)としてアクリル酸メチル17.2g(200mmol)に、ニトロキシド化合物(C)としてジ−t−ブチルニトロキシド1.44g(10mmol)を加え、60℃に加温した。次いで、有機過酸化物(B)としてジ(2−(2’−アリルオキシエチルオキシ)エチル)パーオキシジカーボネート(純度42.0%、トルエン溶液)9.01g(10mmol)を少しずつ加え、60℃で3時間加熱した。
次に、溶液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填、溶出液としてジクロロメタン/n−ヘキサン混合溶液を使用)で精製することにより、目的物1.21gを収率29.1%で得た。
得られた物質のFAB−MSおよび元素分析による分析結果を、以下に示す。
【0094】
【0095】
これらの分析結果から、得られた物質が下記構造の2−(2’−(2’’−アリルオキシエチルオキシ)エチルオキシカルボニルオキシ)−1−(ジ−t−ブチルニトロキシル)−1−(メチルオキシカルボニル)エタンであることを確認した。
【0096】
【化21】
【0097】
<実施例6:1−(4’−ベンゾイルオキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−1−シアノ−2−(2’−メタリルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)エタンの合成>
ラジカル重合性単量体(D)としてアクリロニトリル10.6g(200mmol)に、ニトロキシド化合物(C)として4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル2.76g(10mmol)を加え、60℃に加温した。次いで、有機過酸化物(B)としてジ(2−メタリルオキシエチル)パーオキシジカーボネート(純度40.5%、トルエン溶液)7.86g(10mmol)を少しずつ加え、60℃で3時間加熱した。
次に、溶液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填、溶出液としてジクロロメタン/n−ヘキサン混合溶液を使用)で精製することにより、目的物1.17gを収率24.0%で得た。
得られた物質のFAB−MSおよび元素分析による分析結果を、以下に示す。
【0098】
【0099】
これらの分析結果から、得られた物質が下記構造の1−(4’−ベンゾイルオキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−1−シアノ−2−(2’−メタリルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)エタンであることを確認した。
【0100】
【化22】
【0101】
<実施例7:1−アセトキシ−1−(4’−アセトキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−2−(2’−アクリロイルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)エタンの合成>
ラジカル重合性単量体(D)として酢酸ビニル17.2g(200mmol)に、ニトロキシド化合物(C)として4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル2.14g(10mmol)を加え、60℃に加温した。次いで、有機過酸化物(B)としてジ(2−アクリロイルオキシエチル)パーオキシジカーボネート(純度41.5%、トルエン溶液)7.67g(10mmol)を少しずつ加え、60℃で3時間加熱した。
次に、溶液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填、溶出液としてジクロロメタン/n−ヘキサン混合溶液を使用)で精製することにより、目的物2.79gを収率60.8%で得た。
得られた物質のFAB−MSおよび元素分析による分析結果を、以下に示す。
【0102】
【0103】
これらの分析結果から、得られた物質が下記構造の1−アセトキシ−1−(4’−アセトキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−2−(2’−アクリロイルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)エタンであることを確認した。
【0104】
【化23】
【0105】
<実施例8:2−(2’−メタクリロイルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)−1−フェニル−1−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)エタンの合成>
ラジカル重合性単量体(D)としてスチレン20.8g(200mmol)に、ニトロキシド化合物(C)として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル1.56g(10mmol)を加え、60℃に加温した。次いで、有機過酸化物(B)としてジ(2−メタクリロイルオキシエチル)パーオキシジカーボネート(純度40.0%、トルエン溶液)8.66g(10mmol)を少しずつ加え、60℃で3時間加熱した。
次に、溶液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填、溶出液としてジクロロメタン/n−ヘキサン混合溶液を使用)で精製することにより、目的物2.58gを収率59.5%で得た。
得られた物質のFAB−MSおよび元素分析による分析結果を、以下に示す。
【0106】
【0107】
これらの分析結果から、得られた物質が下記構造の2−(2’−メタクリロイルオキシエチルオキシカルボニルオキシ)−1−フェニル−1−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)エタンであることを確認した。
【0108】
【化24】
【0109】
<実施例9:1−(4’−ヒドロキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−2−(2’−メタクリロイルオキシエチルオキシカルボニルオキシオキシ)−1−フェニルエタン(A−9)の合成>
ラジカル重合性単量体(D)としてスチレン20.8g(200mmol)に、ニトロキシド化合物(C)として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル1.72g(10mmol)を加え、60℃に加温した。次いで、有機過酸化物(B)としてジ(2−メタクリロイルオキシエチル)パーオキシジカーボネート(純度40.0%、トルエン溶液)8.66g(10mmol)を少しずつ加え、60℃で3時間加熱した。
次に、溶液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル充填、溶出液としてジクロロメタン/n−ヘキサン混合溶液を使用)で精製することにより、目的物1.81gを収率40.3%で得た。
得られた物質のFAB−MSおよび元素分析による分析結果を、以下に示す。
【0110】
【0111】
これらの分析結果から、得られた物質が下記構造の1−(4’−ヒドロキシ−2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)−2−(2’−メタクリロイルオキシエチルオキシカルボニルオキシオキシ)−1−フェニルエタン(以下、化合物A−9とする)であることを確認した。
【0112】
【化25】
【0113】
<実施例10:高分子ラジカル重合開始剤(G−1)の合成>
ビニル基含有アルコキシアミン(A)として実施例1で得た化合物A−1:2−(シンナモイルオキシ)−1−フェニル−1−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジニルオキシ)エタン0.61g(1.5mmol)と、ラジカル重合性単量体(E1)としてクロロメチルスチレン(CMS:m体およびp体の混合物)7.08g(45mmol)と、ラジカル重合開始剤(F)としてt−ブチルパーオキシピバレート(BPV:日本油脂株式会社製「パーブチルPV」)0.042g(0.17mmol)とを混合したところに窒素を吹き込み、酸素を除去した上で、内容量10mlのガラスアンプル中に注入して封管し、反応温度70℃にて5時間重合を行った。その後、内容物を50mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、その溶液をメタノール300mlに滴下してポリマーの再沈殿を行った。この精製操作をさらに一回行い、未反応の化合物A−1、メタクリル酸メチル(MMA)およびBPVを完全に取り除いたのち、生成物を30℃で24時間減圧下に放置し乾燥を行なった。
【0114】
得られた高分子量体の重量は3.7gであり、収率は48%であった。GPCで分子量を測定したところ、スチレン換算で数平均分子量が4.8万、重量平均分子量が8.6万のポリCMSであることを確認した。
また、得られた高分子量体を、1H−NMRにより分析した。分析結果を、以下に示す。
【0115】
1H−NMR(TMS/CDCl3)、δ(ppm): 0.6〜1.2(CH3)、1.3〜2.1(CH、CH2)、4.50(CH2Cl)、6.8〜7.3(ベンゼン環プロトン)
【0116】
上記の1H−NMR分析結果より、化合物A−1に由来するベンゼン環プロトンと、ポリCMSのクロロメチル基に由来するプロトンとのプロトン比から、ポリマー一分子あたりに平均して12.2個のアルコキシアミン基が導入されていることを確認した。
以上のことから、この高分子量体が次式で示される本発明の高分子ラジカル重合開始剤(以下、化合物G−1とする)であることを確認した。
【0117】
【化26】
【0118】
<実施例11〜12:高分子ラジカル重合開始剤(G−2、G−3)の合成>
実施例10において、ビニル基含有アルコキシアミン(A)、ラジカル重合性単量体(E1)およびラジカル重合開始剤(F)の種類と使用量をかえ、添加剤および溶媒を適宜選択し、重合温度と時間をかえた以外は、実施例10に準じて高分子ラジカル重合開始剤(以下、化合物G−2および化合物G−3とする)の合成を行った。化合物G−2および化合物G−3の合成条件、並びに、GPCおよび1H−NMRによる分析結果を、表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
尚、上記表1および下記において、各記号はそれぞれ以下のものを表す。
モノマー
VAc:酢酸ビニル
MMA:メタクリル酸メチル
BA:n−ブチルアクリレート
重合開始剤
ADVN:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
HPV:t−ヘキシルパーオキシピバレート(日本油脂株式会社製「パーヘキシルPV」)
添加剤
OM:n−オクチルメルカプタン
【0121】
【化27】
【0122】
【化28】
【0123】
<実施例13:グラフトポリマー(H−1)の合成>
内容量20mlのガラスアンプルに、高分子ラジカル重合開始剤(G)として実施例10で得られた化合物G−12g、ラジカル重合性単量体(E2)としてスチレン10gを注入し、窒素置換したうえで封管し125℃で5時間重合を行った。内容物を50mlのTHFに溶解させ、その溶液をメタノール500mlに滴下してポリマーの再沈殿を行った。この精製操作をさらに一回行い、未反応のスチレンモノマーを完全に取り除いたのち、ポリマーを30℃で24時間減圧下に放置し乾燥を行なった。
【0124】
得られたポリマー(以下、化合物H−1とする)の重量は7.1gであり、スチレンの転化率は51.0%であった。得られたポリマーの分子量は、GPC測定結果より、スチレン換算で数平均分子量が14万、重量平均分子量が21万であった。また、ソックスレー管を用いた分別抽出により、化合物H−1の組成は、スチレンとCMSのグラフト共重合体が96%、ポリスチレンホモポリマーが4%であり、ポリMMAホモポリマーおよびゲル分をほぼ全く含まないことが確認された。さらに、グラフト体の組成比を1H−NMRにより分析した結果、枝ポリマー部分は平均で72.4個のスチレン単量体から構成されていることがわかった。
【0125】
<実施例14〜15:グラフトポリマー(H−2、H−3)の合成>
実施例11〜12で合成された本発明の高分子ラジカル重合開始剤:G−2およびG−3を用いて、表2に示す重合条件に従い実施例4と同様にして本発明のグラフトポリマー(化合物H−2および化合物H−3)の合成を行った。結果を、表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
【発明の効果】
本発明によれば、以下のような顕著な効果が得られる。
【0128】
即ち、第一に、本発明の一般式(1)で表されるビニル基含有アルコキシアミン(A)は新規化合物であり、ラジカル発生剤、ビニルモノマーの重合開始剤、エチレン系ポリマーの酸化防止剤またはエチレン系ポリマーを加熱して架橋させる際のスコーチ防止剤として有用である。
【0129】
第二に、上記ビニル基含有アルコキシアミン(A)は、広い用途、温度条件に適用することができるため、その利用範囲が拡大するものであり、その価値は極めて高いものである。
【0130】
第三に、上記ビニル基含有アルコキシアミン(A)は、1段階の簡便な製造方法により製造することができ、その工業的利用価値は大きい。
【0131】
第四に、上記ビニル基含有アルコキシアミン(A)から、簡便な方法によって特定構造のアルコキシアミン基がペンダントした高分子ラジカル重合開始剤(G)を得ることができ、さらに得られた高分子ラジカル重合開始剤(G)を用いることにより、ホモポリマーやゲルの生成を抑制し、グラフトポリマー(H)を高純度で得ることができる。
【0132】
本発明によって得られるグラフトポリマー(H)は、例えば、少なくとも2種以上のお互いに相溶性のないポリマー同士を均一に混合するための相溶化剤、界面活性剤、顔料分散剤、接着性改良剤などとしての用途に対し優れた効果を有する。
Claims (5)
- 下記一般式(1)で表されるビニル基含有アルコキシアミン(A)。
- 分子内にラジカル重合性ビニル基を有する下記一般式(5)
- 請求項1に記載のビニル基含有アルコキシアミン(A)と、ラジカル重合性単量体(E1)と、ラジカル重合開始剤(F)とからなる混合物中で、前記ビニル基含有アルコキシアミン(A)が分解しない条件下において、前記ラジカル重合開始剤(F)を分解させることを特徴とする高分子ラジカル重合開始剤(G)の製造方法。
- 請求項3に記載の方法により得られる高分子量体であって、下記一般式(8)
- 請求項4に記載の高分子ラジカル重合開始剤(G)と、ラジカル重合性単量体(E2)とを、100〜180℃の範囲において加熱することにより得られるグラフトポリマー(H)。
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