JP4349607B2 - 自動二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車用空気入りタイヤに関し、特には、自動二輪車の少なくとも前輪または後輪に適用することにより操縦安定性を高めることのできる自動二輪車用空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両の軽量化、高性能化が進み、超高速時の安定性の確保がより重要になってきた。これにより、これまでの、タイヤ赤道面に対しコード方向が所定の角度を有する角度付きベルト構造から、高速時の接地形状変化が小さく、高速耐久性にも優れている、コード方向が実質的にタイヤ周方向のスパイラルベルト構造が採用されるようになってきた。
【0003】
かかるスパイラルベルト構造は、構造上トレッド領域の曲げ剛性がサイド領域の剛性に比較して低くなり過ぎるというデメリットをも持つため、ハンドリング応答性、路面グリップ力の低さ等といった操縦性能の面で問題があった。そこで本出願人は、先に、スパイラルベルト構造を採用することにより高速耐久性の向上を図るとともに、トレッドにキャップ・ベース構造を採用してスパイラルベルトの構造柔軟性を高強度のキャップゴムで補強し、かつベースゴムの硬度をキャップゴムよりも低くすることでハンドリング性能変化を小さく保つことができる二輪車用空気入りタイヤを提案した(特開2000−177318号公報)。
【0004】
また、踏面曲げ剛性を高めるためにスチールコードのみで構成されたスパイラルベルト構造では剛性が高くなりすぎ、乗り心地性や耐スリップ性を高く保つことが困難となり、またスチールコードのみで構成されたスパイラルベルトにおいて単にコードの打込み本数を減らした場合、空気圧に対する破壊強度の低下、耐パンク性の低下、および断面方向の曲げ剛性の低下により繰り返し屈曲に対するトレッドゴムとプライ材の耐疲労性の低下という弊害が生じる。このような問題を解決するために、本出願人は、先に、二種類のコードの組合せによるスパイラル構造においてコードの打込み本数を適切な本数とし、操縦安定性やその他の性能を向上させ得る空気入りタイヤおよびその製造方法も提案している(特開2002−59707号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年のタイヤに対する更なる要求性能の向上の観点より、スパイラルベルトを用いた従来の自動二輪車用ラジアルタイヤにおいて、より適切な高速安定性、耐シミー性、ハンドリングのリニアー性を実現することが望まれていた。
【0006】
これに対し、スパイラルベルトに加えて補強ベルトを配する構造が提案されているが、この場合、ベルトの断面方向引張り剛性と曲げ剛性との最適化が図りにくいためにトレッド部の曲げ剛性が高くなり過ぎて、高速での接地性が低下して安定性が下がり、コーナーグリップが低下するなどの問題を生じていた。
【0007】
また、スパイラルベルトとともに、トレッド部からサイド部までの全領域にわたってカーカス間にカーカスゴムに追加してゴム層を配設した構造のタイヤや、トレッド部のベルト上・ベルト/カーカス間およびカーカス内層にゴム層を追加配設した構造のタイヤも提案されているが、前者においては、トレッド部およびサイド部の全領域で曲げ剛性が高くなるために、トレッドとサイドの剛性バランスの最適化がなされず、ハンドリングのリニアー性が十分に保ち難いという難点があった。また、後者においても、トレッド領域のベルト上にゴム層を配設するとコーナーリングフォースが低下して高速安定性が悪化し、ベルト/カーカス間にゴム層を配設するとベルトのタガが低下して、横方向のねじり剛性が低下するために高速安定性、耐シミー性、グリップが悪化し、さらに、カーカス内層にゴム層を配設すると、質量の増加分による悪影響が目立ち、ハンドリング軽快性が大きく損なわれるなどの問題があり、いずれも要求性能を十分に満足できるものではなかった。
【0008】
そこで本発明の目的は、スパイラルベルトを用いた自動二輪車用ラジアルタイヤにおいて、曲げ剛性と、トレッド接地面でのコーナーリングフォースの発生およびその力のリムに伝わる伝達効率を最適化することにより、高速安定性、耐シミー性、コーナーリンググリップ、ハンドリング性を適切に向上して、操縦安定性に優れた自動二輪車用空気入りタイヤを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、スパイラルベルトと少なくとも2枚のカーカスプライとを有し、かつ、補強ベルトを有しないタイヤ構造において、カーカスプライ間の所定の領域に補強ゴム層を配設することにより、各種性能をバランスさせて、高度の操縦安定性を実現することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤは、以下のとおりである。
(1)左右一対のビード部に埋設されたビードコアと、一方のビード部から他方のビード部にトロイド状に跨がり両端部分が該ビードコアに巻回され係止されたラジアルカーカス層と、該ラジアルカーカス層のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層と、該ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されたトレッド部と、を備えた自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層が、コード方向が実質的にタイヤ周方向であって、高弾性補強コードよりなるスパイラルベルトからなり、前記ラジアルカーカス層が少なくとも2枚のラジアルカーカスプライからなり、該少なくとも2枚のラジアルカーカスプライ間のトレッド領域に、該ラジアルカーカスのコーティングゴムと同質または異質のゴムからなる補強ゴム層を有し、かつ、該補強ゴム層の100%モジュラス(M do )が、前記ラジアルカーカスのコーティングゴムの100%モジュラス(M dc )に対し(M do )/(M dc )=1.0〜3.0を満足する自動二輪車用空気入りタイヤである。
【0011】
(2)前記(1)の自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、前記トレッド領域が、JATMA規格に定める標準リムに組み、タイヤの規格最大内圧の80%の内圧を充填した無負荷標準状態で、トレッドセンターから両側に、各々両側トレッド端間ペリフェリー長の20%〜60%までの領域である自動二輪車用空気入りタイヤである。
【0012】
(3)前記(1)または(2)の自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、前記補強ゴム層が、少なくともトレッドセンターから両側に向かう末端部において先端先細り状にその厚さを漸減させてなり、全体として略レンズ状断面を呈する自動二輪車用空気入りタイヤである。
【0013】
(4)前記(1)〜(3)のうちいずれかの自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、前記補強ゴム層のトレッドセンター近傍における厚さが、0.3mm以上2.0mm以下である自動二輪車用空気入りタイヤである。
【0015】
(5)前記(1)〜(4)のうちいずれかの自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、前記スパイラルベルトの引張り破断強度が、少なくとも6.3cN/dtex以上である自動二輪車用空気入りタイヤである。
【0016】
(6)前記(1)〜(5)のうちいずれかの自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、前記高弾性補強コードが、スチール、芳香族ポリアミドまたは脂肪族ポリアミドからなる自動二輪車用空気入りタイヤである。
【0017】
(7)前記(1),(2),(5),(6)のうちいずれかの自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、前記補強ゴム層がトレッドセンター近傍に断絶部を有し、かつ、該断絶部が、該補強ゴム層の幅方向配設領域のうち5〜80%を占める自動二輪車用空気入りタイヤである。
【0018】
(8)前記(1)〜(7)のうちいずれかの自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、前記スパイラルベルト最内層配設全域において、該最内層スパイラルベルトを構成するコードと、前記カーカス層の最外側カーカスプライの補強コードとの間が、該最内層スパイラルベルトの配設されていないタイヤサイド領域における前記カーカスプライのコード間距離の2.5〜6.0倍の距離であり、かつ、前記最内層スパイラルベルトのコーティングゴムの100%モジュラス(Mds)と略同等の100%モジュラス(Mdu)を有する実質上均一厚さの緩和ゴム層にて充填されてなる自動二輪車用空気入りタイヤである。
【0019】
上記(1)の発明により、カーカスプライ間の所定のトレッド領域に補強ゴム層を配設したことで、曲げ剛性と、トレッド接地面でのコーナーリングフォースの発生およびその力のリムに伝わる伝達効率を最適化することができ、これにより高速安定性、耐シミー性、コーナーリンググリップ、ハンドリング性をバランスさせて、激しい走行を行った場合においても高度の操縦安定性を実現することが可能となった。前述したように、スパイラルベルトのみで補強ベルトを有しないタイヤ構造において、トレッド部からサイド部までの全領域にわたってカーカス層間にゴムを配設したタイヤは従来存在したが、本発明に係る上記構造、即ち、カーカスプライ間のトレッド部のみに限定して補強ゴム層を配設したタイヤはこれまでにはなかった。特には、上記(2)〜(5)の発明により、補強ゴム層の配設領域、形状、厚さおよび物性を最適化することで、上記本発明の効果をより適切に得ることができる。なお、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤは、特に、フロントタイヤの特性の最適化に有効である。
【0020】
また、上記(6)または(7)の発明により、スパイラルベルトを最適化して、本発明に係るスパイラルベルトと補強ゴム層との組み合わせの効果をよりバランスよく適切に得ることができる。
【0021】
さらに、上記(8)の発明により、トレッド中央部の設置領域における踏面剛性を適度に緩和することができるとともに、特に、比較的低速での直進走行時における乗り心地性能や、路面凹凸のエンベロープ性等を向上することができる。
【0022】
さらにまた、上記(9)の発明により、スパイラルベルトのコードとカーカスプライの補強コードとの間で生じやすい剪断ストレスを緩和して、激しい走行用途にも対応可能な本発明のタイヤ構造において、高速耐久性をもさらに向上させることができる。特に、激しい走行用途に対応してスチールコードからなるスパイラルベルトを用いた際には、カーカス層との間に生ずる剪断ストレスがより大きくなるため、上記緩和ゴム層の配設が一層重要となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る自動二輪車用空気入りタイヤを図1に基づき説明する。
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車用空気入りタイヤ10を示す。この空気入りタイヤ10の骨格を構成するカーカスプライ12a,12bは、ナイロンやポリエステル等の有機繊維コードを平行に並べてゴムコーティングしたものである。そのコードはこの空気入りタイヤ10の赤道面CLに対して75〜90°の角度でそれぞれ配列した複数層により形成されている。図示する例では、内層カーカスプライ12aおよび外層カーカスプライ12bの2枚のカーカスプライによりカーカス層を構成しているが、本発明においてはこれには限られず、少なくとも2枚のカーカスプライによりカーカス層を形成するものであればよい。
【0024】
このカーカスプライ12a,12bの両端部近傍には、それぞれリング状にスチールワイヤーが巻かれて束ねられた一対のビードコア14が配置されている。カーカスプライ12a,12bは、これら一対のビードコア14にトロイド状に跨がりカーカスプライ12a,12bの両端部分が巻き付けられて係止されている。さらに、このビードコア14の上部のカーカスプライ12a,12b間の隙間には、硬質ゴム製で先細り形状に形成されたビードフィラー16がそれぞれ埋設されている。
【0025】
この空気入りタイヤ10のクラウン部18には、ゴム材により円環状に形成されて路面に接地するトレッド22が配置されており、このトレッド22には適宜トレッドパターン(図示せず)が形成されている。また、ビードコア14とトレッド22の両端部との間を繋ぐ部分のカーカスプライ12a,12b上にはサイドウォール24が配置されており、この空気入りタイヤ10の最内層にはインナーライナー(図示せず)が形成されている。
【0026】
また、本発明においては、カーカスプライ12a,12bとトレッド部22との間に、スパイラルベルトからなるベルト層26が配設されている。本発明に係るベルト層26は、図示するように、カーカス層のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されていればよく、これと後述する補強ゴム層28との組み合わせにより本発明の所期の効果を得ることができる。
【0027】
スパイラルベルトは、1本のコードをゴムで被覆した長尺状のゴム被覆コード(図示せず)または複数本のコードをゴムで被覆した帯状プライ(図示せず)を螺旋状に巻き回して形成され、コード方向が実質的にタイヤ周方向とされたものである。かかるスパイラルベルトのコードには高弾性補強コードを用いるが、高弾性補強コードとしては、スチールコードの他、芳香族ポリアミドであるアラミド(例えば、du Pont社製 商品名:ケブラー)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、レーヨン、ザイロン(登録商標)(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維)、脂肪族ポリアミドであるナイロン等の有機繊維、さらにはグラスファイバーやカーボンファイバー等の材質のものを適宜選択して用いることができる。
【0028】
また、ベルト材としてのタガ強度の確保および補強効果の確保等の観点から、スパイラルベルトの引張り破断強度を、好ましくは少なくとも6.3cN/dtex以上とする。
【0029】
本発明においては、上述の構造の自動二輪車用空気入りタイヤ10において、少なくとも2枚のカーカスプライ12a,12b間のトレッド領域に、さらに、補強ゴム層28を有する。この補強ゴム層28を設けたことにより、補強ベルトなしでも、スパイラルベルトからなるベルト層26のみでは劣る曲げ剛性と、トレッド接地面でのコーナーリングフォースの発生およびその力のリムに伝わる伝達効率とを最適化することができ、高速安定性、耐シミー性、コーナーリンググリップ、ハンドリング性のバランスのとれた、優れた操縦安定性を実現することができる。
【0030】
補強ゴム層28を設けるトレッド領域とは、好適には、JATMA規格に定める標準リムに組み、タイヤの規格最大内圧の80%の内圧を充填した無負荷標準状態で、トレッドセンターから両側に、各々両側トレッド端間ペリフェリー長の20%〜60%までの領域である。即ち、最大で、タイヤ幅方向に両側トレッド端間ペリフェリー長の120%の領域に補強ゴム層28を設ける。この領域よりも狭いと本発明に係る補強ゴム28による効果が十分ではなく、一方、この領域よりも広いと、曲げ剛性が広範囲にわたり高くなりすぎて、従来技術におけるトレッドとサイドの剛性バランスの問題が生じ、ハンドリングのリニアー性が十分に保ち難くなる。
【0031】
補強ゴム層28の形状としては、少なくともトレッドセンターから両側に向かう末端部において先端先細り状にその厚さを漸減させることで、図示するように、全体として略レンズ状断面を呈するよう形成することが好ましい。これにより、追加した補強ゴム層28の最外側両端部での剛性段差の変化が緩やかになり、操縦安定性等の向上に寄与することができる。
【0032】
また、好適には、補強ゴム層28のトレッドセンター近傍における厚さを、0.3mm以上2.0mm以下とする。即ち、補強ゴム層28を追加配設したトレッド領域のカーカス層12a,12b間におけるカーカスプライコード間距離を、補強ゴム層28を設けていないサイド領域のカーカスプライコード間距離よりも0.3mm以上広くすることが好ましい。補強ゴム層28の厚みが0.3mmよりも小であると本発明の効果が十分ではなく、一方、2.0mmよりも大であると、厚くなり過ぎて耐熱耐久性等に劣ることになる。
【0033】
補強ゴム層28のゴムの材質としては、特に制限されず、カーカスコーティングゴムと同質のものを用いても、異質のものを用いてもよい。好ましくは、補強ゴム層28の100%モジュラス(Mdo)が、カーカスコーティングゴムの100%モジュラス(Mdc)に対し(Mdo)/(Mdc)=1.0〜3.0を満足するようにする。この値が1.0よりも小であると本発明の効果が十分ではなく、一方、3.0より大であると、カーカスコーティングゴムとの剛性段差が大きくなり過ぎてゴム層間で無用な剪断ストレスが生じ、層間セパレーションを誘発しやすくなる。
【0034】
また、補強ゴム層28は、図示する例ではタイヤ幅方向にわたり連続的に配設されているが、トレッドセンター近傍に断絶部(図示せず)、即ち、補強ゴム層28を設けない部分を形成してもよい。かかる断絶部は、補強ゴム層28の幅方向配設領域のうち5〜80%の範囲で設けることができる。この場合、トレッド接地中央部の比較的狭幅領域における踏面剛性を適度に緩和することができ、特には、比較的低速での直進走行時における乗心地性能、踏面凹凸のエンベロープ性等を向上させることができる。
【0035】
本発明においては、さらに、スパイラルベルト(ベルト層26)最内層配設全域において、最内層スパイラルベルトを構成するコードと、カーカス層の最外側カーカスプライ、図示する例では外側カーカスプライ12bの補強コードとの間が、最内層スパイラルベルトの配設されていないタイヤサイド領域におけるカーカスプライ12a,12b間のコード間距離の2.5〜6.0倍の距離であり、所定の緩和ゴム層32により充填されていることが好ましい。この緩和ゴム層32は、好適には、最内層スパイラルベルトのコーティングゴムの100%モジュラス(Mds)と略同等、好ましくは±20%差以内の100%モジュラス(Mdu)を有するような材質にて、実質上均一厚さに形成する。
【0036】
即ち、ベルト層に高弾性補強コードよりなるスパイラルベルトを用いたタイヤ構造においては、通常、ラジアル配列カーカスとスパイラルベルトとで両補強コードの変位方向が略90°異なることに起因して、カーカス層とベルト層との間で大きな剪断ストレスが発生する。従って、本発明に係るスパイラルベルトと補強ゴム層との組み合わせにより、従来より一層激しい走り方が可能となったタイヤにおいては特に、上記緩和ゴム層の配設により、かかる剪断ストレスを緩和して、高速耐久性を更に向上させることが好適となる。特に、より激しい走行用途に供されるタイヤにおいて、接地踏面部のケース剛性をより強固なものとするためにスパイラルベルトにスチールコードを用いる場合には、一般にテキスタイルコードよりなるカーカス層との間の前記剪断ストレスがより一層多大となることから、緩和ゴム層の配設がより一層重要となる。
【0037】
【実施例】
次に、実施の形態で説明した空気入りタイヤの実施例と従来例に係るタイヤとを比較して行った走行試験およびその結果について以下に説明する。
【0038】
実施例
図1に示す実施の形態の自動二輪車用空気入りタイヤ10において、下記の表1中に示す条件にて、夫々カーカス層12a,12b(2プライカーカス構造)、ベルト層26(スパイラルベルト)、補強ゴム層28および緩和ゴム層32を設けた。スパイラルベルトは、アラミド繊維のコードをゴムで被覆した長尺状のゴム被覆コード1本を螺旋状に巻き回して形成した。
【0039】
下記の表1中、補強ゴム層28の厚さとは、トレッドセンター近傍における層厚を意味し、モジュラス比(Mdo)/(Mdc)とは、カーカスコーティングゴムの100%モジュラス(Mdc)に対する補強ゴム層28の100%モジュラス(Mdo)の比率を意味する。また、緩和ゴム層32のコード間距離の比とは、タイヤサイド領域におけるカーカスプライ12a,12bのコード間距離に対する、緩和ゴム層32配設領域における最内層スパイラルベルトのコードと外側カーカスプライ12bの補強コードとの間の距離の比率を意味し、モジュラス比(Mdu)/(Mds)とは、最内層スパイラルベルトのコーティングゴムの100%モジュラス(Mds)に対する緩和ゴム層32の100%モジュラス(Mdu)の比率を意味する。
【0040】
従来例
補強ゴム層28および緩和ゴム層32を設けなかった以外は実施例と同様にして、自動二輪車用空気入りタイヤを作製し、供試タイヤとした。
【0041】
これらの各タイヤをフロントタイヤとして車両に装着して走行試験を行い、下記の表1の結果を得た。各試験結果は、ドライバーによる実車フィーリング評価に基づき、従来例の結果を100として指数で表示した。数値が大なる程結果が良好である。
【0042】
なお、走行試験の際に用いたフロントタイヤのサイズは120/70ZR17、リムサイズはMT3.50×17であり、リアタイヤのサイズは190/50ZR17、リムサイズはMT6.00×17である。フロントタイヤおよびリアタイヤのタイヤ空気圧は、それぞれ250kPaおよび290kPaとした。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の結果より、実施例においては、従来例に比し、全てにおいてバランスよく各性能が向上することが確かめられた。
【0045】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、ラジアルカーカス構造の自動二輪車用空気入りタイヤを前後輪両方に装着する組み合わせにおいて、少なくともその一方に本発明の自動二輪車用空気入りタイヤを装着することにより、そのスパイラルベルトと補強ゴム層との組み合わせの効果により、曲げ剛性と、トレッド接地面でのコーナーリングフォースの発生およびその力のリムに伝わる伝達効率を最適化して、高速安定性、耐シミー性、コーナーリンググリップ、ハンドリング性の各性能を向上し、優れた操縦安定性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る自動二輪車用空気入りタイヤの断面図である。
【符号の説明】
10 自動二輪車用空気入りタイヤ
12a、12b カーカスプライ
14 ビードコア
16 ビードフィラー
18 クラウン部
22 トレッド
24 サイドウォール
26 ベルト層
28 補強ゴム層
32 緩和ゴム層
Claims (8)
- 左右一対のビード部に埋設されたビードコアと、一方のビード部から他方のビード部にトロイド状に跨がり両端部分が該ビードコアに巻回され係止されたラジアルカーカス層と、該ラジアルカーカス層のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層と、該ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されたトレッド部と、を備えた自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト層が、コード方向が実質的にタイヤ周方向であって、高弾性補強コードよりなるスパイラルベルトからなり、前記ラジアルカーカス層が少なくとも2枚のラジアルカーカスプライからなり、該少なくとも2枚のラジアルカーカスプライ間のトレッド領域に、該ラジアルカーカスのコーティングゴムと同質または異質のゴムからなる補強ゴム層を有し、かつ、該補強ゴム層の100%モジュラス(M do )が、前記ラジアルカーカスのコーティングゴムの100%モジュラス(M dc )に対し(M do )/(M dc )=1.0〜3.0を満足することを特徴とする自動二輪車用空気入りタイヤ。 - 前記トレッド領域が、JATMA規格に定める標準リムに組み、タイヤの規格最大内圧の80%の内圧を充填した無負荷標準状態で、トレッドセンターから両側に、各々両側トレッド端間ペリフェリー長の20%〜60%までの領域である請求項1記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記補強ゴム層が、少なくともトレッドセンターから両側に向かう末端部において先端先細り状にその厚さを漸減させてなり、全体として略レンズ状断面を呈する請求項1または2記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記補強ゴム層のトレッドセンター近傍における厚さが、0.3mm以上2.0mm以下である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記スパイラルベルトの引張り破断強度が、少なくとも6.3cN/dtex以上である請求項1〜4のうちいずれか一項記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記高弾性補強コードが、スチール、芳香族ポリアミドまたは脂肪族ポリアミドからなる請求項1〜5のうちいずれか一項記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記補強ゴム層がトレッドセンター近傍に断絶部を有し、かつ、該断絶部が、該補強ゴム層の幅方向配設領域のうち5〜80%を占める請求項1,2,5,6のうちいずれか一項記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
- 前記スパイラルベルト最内層配設全域において、該最内層スパイラルベルトを構成するコードと、前記カーカス層の最外側カーカスプライの補強コードとの間が、該最内層スパイラルベルトの配設されていないタイヤサイド領域における前記カーカスプライのコード間距離の2.5〜6.0倍の距離であり、かつ、前記最内層スパイラルベルトのコーティングゴムの100%モジュラス(Mds)と略同等の100%モジュラス(Mdu)を有する実質上均一厚さの緩和ゴム層にて充填されてなる請求項1〜7のうちいずれか一項記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
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