上記構成においては、振動子の変位は一平面内であるため、主アーム、共振アーム、共振片、固定片部を、同一の単結晶、例えば、水晶、LiTaO3 単結晶、LiNbO3 単結晶で構成することができる。この場合は、測定感度を良好にできる。単結晶薄板を作製し、この単結晶薄板をエッチング、研削により加工することによって、振動子の全体を作成できる。
基部と屈曲振動片とは、別部材で構成することもできるが、一体で構成することが特に好ましい。また、振動子の材質は特に限定するものでないが、水晶、LiNbO3 、LiTaO3 、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体(Li(Nb,Ta)O3 )単結晶等からなる単結晶を使用することが好ましい。こうした単結晶を使用すると、検出感度を良好にすることができるとともに、検出ノイズを小さくできる。
そして、温度変化に対して特に鈍感であるため、温度安定性を必要とする車載用として好適である。この点について更に説明する。音叉型の振動子を使用した角速度センサとしては、例えば前述した特開平8−128833号公報に記載された圧電振動型ジャイロスコープがある。しかし、こうした振動子において、振動子が2つの方向に向かって振動する。つまり、図23においては、振動子がX−Y平面内で振動するのと共に、Z方向にも振動する。このため、振動子を特に前記したような単結晶によって形成した場合には、単結晶の2方向の特性を合わせる必要がある。しかし、現実には圧電単結晶には異方性がある。
一般に圧電振動型ジャイロスコープでは、測定感度を良好にするために、駆動の振動モードの固有共振周波数と検出の振動モードの固有共振周波数との間に、一定の振動周波数差を保つことが要求されている。しかし、単結晶は異方性を持っており、結晶面が変化すると、振動周波数の温度変化の度合いが異なる。例えば、ある特定の結晶面に沿って切断した場合には、振動周波数の温度変化がほとんどないが、別の結晶面に沿って切断した場合には、振動周波数が温度変化に敏感に反応する。
ここで、振動子が2つの方向に向かって振動すると、2つの振動面のうち少なくとも一方の面は、振動周波数の温度変化が大きい結晶面になる。
これに対して、本発明におけるように、振動子の全体を所定平面内で振動するようにし、かつ振動子を圧電単結晶によって形成することで、前記した単結晶の異方性の影響を受けないようにし、単結晶の最も特性の良い結晶面のみを振動子において利用できるようになった。
具体的には、振動子の振動が単一平面内ですべて行われていることから、圧電単結晶のうち、振動周波数の温度変化がほとんどない結晶面のみを利用して振動子を製造することができる。これによって、きわめて温度安定性の高い振動型ジャイロスコープを提供できる。
前記した単結晶の中では、LiNbO3 単結晶、LiTaO3 単結晶、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶が、電気機械結合係数が特に大きい。また、LiNbO3 単結晶とLiTaO3 単結晶とを比較すると、LiTaO3 単結晶の方がLiNbO3 単結晶よりも電気機械的結合係数が一層大きく、かつ温度安定性も一層良好である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態を更に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る振動子を示す正面図であり、図2(a)は、直線状の振動子の振動方向を説明するための正面図であり、図2(b)は、図1の振動子の駆動方向を説明するための正面図であり、図3(a)、(b)、(c)は、図1の振動子の各部分の振動方向と振動の原理とを説明するための模式図である。
図1の振動子2の主アーム101Aにおいては、基部3が固定部1から垂直に延びており、基部3の一方の端部3aが固定部1に固定されている。基部3内に所定の励振手段5A、5Bが設けられている。基部3の他方の端部3b側に、基部3に対して垂直方向に延びる2本の屈曲振動片4A、4Bが設けられている。
この振動子2の振動のモードについて説明する。図3(a)に模式的に示すように、励振手段5A、5Bに対して駆動電圧を印加し、基部3を、固定部材1との接続部分26を中心として、矢印Hの方向へと屈曲させる。この屈曲に伴い、振動子2の基部3だけでなく、各屈曲振動片4A、4Bの各点も、矢印Iのように移動する。この移動の速度のベクトルをVとする。
本実施形態ではZ軸を回転軸とし、振動子2をz軸を中心として回転させる。例えば、振動子2が矢印Hの方向に変位したときに、wで示すように振動子2の全体がZ軸を中心として回転すると、矢印Jで示すようにコリオリ力が作用する。この結果、図3(b)に示すように、各屈曲振動片4A、4Bが、それぞれ基部3の他方の端部3bとの接続部分25を中心として矢印J方向へと屈曲する。
これとは反対に、図3(c)に示すように、基部3を矢印Kで示すように駆動したときに、wで示すように振動子2の全体がZ軸を中心として回転すると、矢印Lで示すようにコリオリ力が作用する。この結果、各屈曲振動片4A、4Bが、それぞれ基部3の他方の端部3bとの接続部分25を中心として矢印L方向へと屈曲する。これによって、各屈曲振動片4A、4Bを、矢印A、Bのように振動させることができる。
このように、基部3の屈曲振動によって、各屈曲振動片4A、4Bにおいて、X−Y平面内に発生するコリオリ力を、各屈曲振動片4A、4Bの接続部分25を中心とする屈曲振動に変換し、その屈曲振動から回転角速度を求めることができる。これによって、振動子を回転軸Zに対して垂直に配置(横置き)しても、回転角速度を高感度で検出できる。
なお、図1、図3に示す振動子2による検出の感度について、更に説明する。本発明者は、図2(a)に示すように、細長い棒状の振動子8A、8Bを使用し、振動子8BをX−Y平面内に設置し、伸縮させた。ただし、8Aは振動子が延びた状態を示し、8Bは振動子が縮んだ状態を示している。ここで、振動子が8Bの状態から8Aの状態へと向かって矢印Eのように延びようとしている瞬間を考える。振動子8Bを、Z軸を中心として回転させると、矢印Fのようにコリオリ力が加わる。しかし、このような圧電体の縦振動による変位は小さく、共振周波数が低いので、感度を高くすることができない。
これに対して、本発明では、図2(b)に示すように、基部3を矢印Gのように振動させ、これによって屈曲振動片4A、4Bを矢印Dで示すように振動させる。これによって、図2(a)の場合よりもはるかに大きな振幅と振動速度とを得ることができ、コリオリ力を大きくすることができる。
また、図1、図3の振動子を使用したとき、各屈曲振動片4A、4Bに対して矢印A、Bで示すような屈曲振動を励振することができる。振動子2がX−Y平面内で回転すると、各屈曲振動片にコリオリ力が加わり、各屈曲振動片のコリオリ力が、基部3に対して加わる。これによって基部3が接続部分26を中心として矢印Gのように屈曲振動する。この基部3の屈曲振動を検出し、検出した屈曲振動に応じた信号を出力することができる。
振動子を圧電単結晶によって形成した場合には、励振手段、検出手段5A、5B、6A、6B、6C、6Dとしては、電極を使用する。しかし、振動子を弾性材料によって形成でき、この場合には、励振手段、検出手段5A、5B、6A、6B、6C、6Dとして、電極が設けられている圧電体を使用できる。また、励振手段(または検出手段)5Aと5Bとの一方があれば、少なくとも励振または検出を行うことが可能である。また、検出手段(または励振手段)6A、6B、6C、6Dのうちの一つがあれば、少なくとも励振(または検出)を行うことが可能である。
図4〜図6の各実施形態においては、両端が固定されている固定片部の一方の側に主アームを設け、固定片部の他方の側に共振片を設け、固定片部、主アームおよび共振片が実質的に所定平面内に延びるように形成する。
図4の実施形態では、固定片部12によって励振手段側と検出手段側とを分離している。具体的には、固定片部12の両端を固定部材11によって固定する。固定片部12の一方の側に主アーム101Bを設けている。主アーム101Bは、細長い基部16と、基部16の端部16bから、基部16の長さ方向に対して直交する方向に延びる2本の屈曲振動片4A、4Bを備えている。
固定片部12の他方の側に、共振片32が設けられている。共振片32は、固定片部12から垂直方向に延びる長方形の支持部13を備えており、支持部13内に所定の励振手段5A、5Bが設けられている。支持部13の他方の端部13b側に、支持部13に対して垂直方向に延びる2本の振動片15A、15Bが設けられている。基部16の端部16aと共振片13の端部13aとが、固定片部12に対して連続している。このように、固定片部12の両側が、ほぼ線対称な形状をしている。
この振動子10の振動のモードについて説明する。励振手段5A、5Bに対して駆動電圧を印加し、共振片13および一対の振動片15A、15Bを、固定片部12との接続部分27を中心として、矢印Mのように振動させる。この振動に対する共振によって、基部16および一対の屈曲振動片4A、4Bが、固定部材12との接続部分26を中心として、矢印Dのように振動する。
この振動子10の全体が、回転軸Zを中心として回転すると、各屈曲振動片4A、4Bに、前記のようにコリオリ力が作用する。この結果、各屈曲振動片4A、4Bが、それぞれ接続部分25を中心として、矢印A、Bで示すように振動する。
このように、共振片32の屈曲振動によって、各屈曲振動片4A、4Bにおいて、X−Y平面内に発生するコリオリ力を、各屈曲振動片4A、4Bの接続部分25を中心とする屈曲振動に変換し、その屈曲振動から回転角速度を求めることができる。これによって、振動子を回転軸Zに対して垂直に配置(横置き)しても、回転角速度を高感度で検出できる。
なお、図4の実施形態においては、振動子10において、共振片32の形態と主アーム101Bの形態とを、固定片部12に対して線対称とし、これによって共振片と主アームとの各振動モードの固有共振周波数を整合させた。ただし、共振片32側の形態と主アームの形態とを、固定片部12に対して線対称とする必要はない。
図5の振動子20においては、基部16、一対の屈曲振動片4A、4Bからなる主アーム101Bの形態、固定片部12の形態は、図4に示すものと同じであるので、その説明を省略する。固定片部12から垂直方向に、細長い長方形の共振片21が延びている。共振片21の固定片部12側の端部21a付近に励振手段5A、5Bが設けられている。
励振手段5A、5Bに対して駆動電圧を印加し、共振片21を、固定片部12との接続部分27を中心として、矢印Mのように振動させる。この振動に対する共振によって、基部16および一対の屈曲振動片4A、4Bが、固定部材11との接続部分26を中心として、矢印Dのように振動する。
このように共振片21を細長い長方形とすることによって、図4の実施形態と比較して、振動子の全体の構造が簡略になる。ただし、固定片部12の励振側の振動周波数と、検出側の振動周波数との差が大きくならないように、両側のモーメントが同程度となるように、調整する必要がある。この観点から、図5の共振片21を図4の共振片32と比較すると、図5においては、振動片15A、15Bが存在せず、これらの質量が存在しない。従って、共振片21の先端部21bの固定片部12からの突出寸法を、共振片32の固定片部12からの突出部分の寸法よりも大きくし、即ち共振片21の質量を、支持部13の質量より大きくする必要がある。このため、共振片21の固定片部12からの突出寸法が増加する傾向がある。
図6の振動子22においては、基部16、一対の屈曲振動片4A、4Bからなる主アーム101Bの形態、固定片部12の形態は、図4に示すものと同じであるので、その説明を省略する。固定片部に共振片31が設けられている。共振片31は、固定片部12から垂直方向に延びる長方形の支持部30を備えており、支持部30に励振手段5A、5Bが設けられている。支持部30の先端側に幅の広い長方形の拡張部23が形成されている。
励振手段5A、5Bに対して駆動電圧を印加し、共振片31を、固定片部12との接続部分27を中心として、矢印Mのように振動させる。この振動に対する共振によって、基部16および一対の屈曲振動片4A、4Bが、固定部材11との接続部分26を中心として、矢印Dのように振動する。
このように共振片31内に拡張部23を設けることによって、共振片31の固定片部12からの突出寸法を小さくすることができ、しかも共振片31の振動周波数を、基部16および屈曲振動片4A、4B側の振動周波数に接近させることができる。
本発明の各振動子においては、屈曲振動片の長手方向と基部の長手方向とは、必ずしも直角でなくともよい。また、屈曲振動片の形状は、直線状であってよく、曲線状であってよい。ただし、一対の屈曲振動片を設けた場合には、両者が基部に対して線対称であることが好ましい。
図7の振動子40の主アーム101Cにおいては、各屈曲振動片33A、33Bが、基部3が延びる方向に対して所定角度θをもって交差している。交差角度θは直角ではないが、45°〜135°とすることが好ましく、70−100゜が特に好ましい。これによって、各屈曲振動片33A、33Bの振動N、Pの振動モードの固有共振周波数は、図1に示す振動子における屈曲振動片の振動モードの固有共振周波数に比べて、若干変化する。
図8の振動子41の主アーム101Dにおいては、各屈曲振動片34A、34Bが若干湾曲した弧状の形状を有している。これによって、各屈曲振動片34A、34Bの振動Q、Rの振動モードの固有共振周波数は、図1、図7に示す振動子に対して若干変化する。図7、図8に示すような形態は、図4、図5、図6に示す振動子においても採用できる。
一般に圧電振動型ジャイロスコープでは、測定感度を良好にするために、駆動の振動モードの固有共振周波数と検出の振動モードの固有共振周波数との間に、一定の振動周波数差を保つことが要求されている。本発明の各振動子においては、基部の振動モードの固有共振周波数と屈曲振動片の振動モードの固有共振周波数とが近くなると、感度は良くなるが、応答速度が悪化する。基部の振動モードの固有共振周波数と屈曲振動片の振動モードの固有共振周波数との差が大きくなると、応答速度は良くなるが、感度が悪化する。
このため、屈曲振動片の先端側の質量を除去することによって、屈曲振動片の振動モードの固有共振周波数を変化させることができる。また、基部の固定端部とは反対側に、屈曲振動片から突出する突出部を設け、この突出部の質量を除去することによって、基部の振動モードの固有共振周波数を変化させることができる。
例えば、図9の振動子42の主アーム101Eにおいては、基部3の他方の端部3b側に、屈曲振動片4A、4Bから突出する突出部35が設けられている。そして、突出部35の一部分37から質量を除去する加工を施すことによって、基部の振動Dの振動モードの固有共振周波数を変化させる。また、各屈曲振動片4A、4Bの各先端側の36A、36Bから質量を除去する加工を行うことによって、各屈曲振動片の振動A、Bの振動モードの固有共振周波数を、それぞれ独立して変化させることができる。この除去加工は、レーザーの照射や機械加工によって実施できる。
次に、本発明の振動子が、基部の振動に対して共振する少なくとも一対の共振アームであって、固定部から突出する共振アームを備えている態様について述べる。
図1〜図9に示したように、主アームないしその共振片の屈曲振動片の屈曲振動を利用した振動型ジャイロスコープは、回転系に対して垂直に延びる振動子を採用した場合に、従来ない高い感度を達成できるものであった。しかし、本発明者が更に検討を進めた結果、更に次の問題点が残されていたことが判明してきた。即ち、屈曲振動片と基部とからなる主アームが固定部から突出している形態であるために、例えば屈曲振動片の屈曲振動を駆動振動とし、基部の固定部を中心とする屈曲振動を検出した場合に、基部の振動が比較的に早期に減衰し易いために、この検出振動のQ値にいまだ改善の余地があることが判明した。
本発明者は、この問題点を解決するために検討を進めた結果、固定部から基部と共に少なくとも一対の共振アームを突出させ、基部の振動に対して共振アームを共振させることを想到した。この場合、共振アームおよび基部の振動を駆動振動として使用することもできるが、共振アームおよび基部の振動を検出振動として使用することが一層好ましい。なぜなら、ジャイロ信号を担う検出振動の方が、駆動振動に比べてはるかに振幅が小さいために、Q値の改善の効果が大きいからである。
図10〜図12は、この態様に係る各実施形態の振動型ジャイロスコープを示すものである。
図10の振動型ジャイロスコープ43の振動子44においては、固定部1から主アーム101Fが突出し、かつ主アーム101Fの両側に一対の共振アーム48A、48Bが突出している。固定部1から基部3が突出し、基部3の端部3b側に、基部3に対して垂直に延びる屈曲振動片45A、45Bが形成されており、各屈曲振動片45A、45Bの先端に質量部47A、47Bが形成されている。各屈曲振動片45A、45Bには、それぞれ、励振手段(検出手段)46A、46B、46C、46Dが設けられている。
固定部1から突出する共振アーム48A、48Bには、それぞれ、検出手段(励振手段)49A、49B、49C、49Dが設けられており、また各共振アームの先端にそれぞれ質量部50A、50Bが設けられている。
このときの好適な振動モードについて、図11(a)〜(c)を参照しつつ述べる。前記したように、屈曲振動片45A、45Bを励振して、図11(a)に示す矢印Sのように屈曲振動させる。振動子の全体を前記のように回転させると、矢印Tで示すようにコリオリ力が作用する。このコリオリ力によって基部および一対の共振アームに励起される振動は複数存在する。
図11(b)には二次振動を示す。この場合には、基部3と各共振アーム48A、48Bとは、互いに逆相で屈曲振動し、これと同時に、屈曲振動片45A、45Bも直線58に対して外れるように振動する。図11(c)には一次振動を示す。この場合には、基部3と各共振アーム48A、48Bとは、互いに逆相で屈曲振動し、これと同時に、屈曲振動片45A、45Bも直線58に対して外れるように振動する。一次振動の場合と二次振動の場合とでは、各屈曲振動片45A、45Bの振動の方向は逆相になる。
ここで、一次振動と二次振動とのいずれを検出振動として使用してもよいが、駆動振動の固有共振周波数と検出振動の固有共振周波数との差が一定範囲になるように選択する必要がある。
図12の振動型ジャイロスコープ59Aの振動子60Aにおいては、固定部1から主アーム101Gが突出しており、固定部1から基部3が突出し、基部3の端部3b側に、基部3に対して垂直に延びる屈曲振動片61A、61Bが形成されている。質量部47A、47Bに相当する部分はないので、その分各屈曲振動片を長くする必要がある。各屈曲振動片61A、61Bには、それぞれ、励振手段(検出手段)46A、46B、46C、46Dが設けられている。
また、固定部1から一対の共振アーム62A、62Bが突出しており、各共振アームには、それぞれ、検出手段(励振手段)49A、49B、49C、49Dが設けられている。
本発明においては、共振アームを使用した場合には、固定部からの共振アームの突出位置において、共振アームの両側の固定部からの突出寸法を異ならせることによって、いわゆるスプリアスモードの振動の固有共振周波数を変動させることができる。この実施形態について、図13、図14の振動型ジャイロスコープ59Bを参照しつつ、説明する。
振動子60Bにおいては、固定部1の突出部1aから主アーム101Hが突出している。即ち基部3が突出し、基部3の端部3b側に、基部3に対して垂直に延びる屈曲振動片61A、61Bが形成されている。各屈曲振動片61A、61Bには、駆動電極46A、46B、46C、46Dが設けられている。また、固定部1から一対の共振アーム63A、63Bが突出しており、各共振アームには、それぞれ、検出電極49A、49B、49C、49Dが設けられている。
なお、図14の斜視図において、駆動電極の形態および検出電極の形態を断面図として示す。
ここで、各共振アームの外側には寸法aの切り欠き部74を設け、これによって固定部1から高さaの突出部1aを突出させている。この結果、スプリアスモードの振動の固有共振周波数を、駆動振動の固有共振周波数から離すことができる。
例えば、図13に示す振動子において、屈曲振動片61A、61Bの屈曲振動を駆動振動とし、その固有共振周波数を8750Hzに調整したとき、図13において、矢印Uで示す各共振アーム63Aと63Bとの逆相の屈曲振動が、スプリアスモードの振動となる。この振動の固有共振周波数は、図12に示すようにa=0の場合には、図15に示すように8700Hzとなる。この結果、駆動振動の固有共振周波数とスプリアスモードの固有共振周波数との差が50Hzとなるので、共振アームの逆相振動によって生ずる信号が、ジャイロ信号に比べて非常に大きくなる。
しかし、図15に示すように、寸法aを大きくするのに従って、スプリアスモードの固有共振周波数が著しく変化した。特にaを1.0mm以上とすることによって、スプリアスモードの固有共振周波数を駆動振動の固有共振周波数から大きく逸らすことが可能になった。
このように、固定部からの前記共振アームの突出位置において、共振アームの両側の固定部からの突出寸法を異ならせることが、スプリアスモードの振動の影響によるノイズを減少させるために有効であり、このためにはaを1.0mm以上とすることが特に好ましい。これは6.0mm以下とすることが好ましい。
以上述べてきた各実施形態の振動型ジャイロスコープにおいては、振動子を圧電単結晶で形成した場合には、いずれも紙面に対して垂直な方向に電圧を印加することで、各屈曲振動片、基部または共振アームを屈曲振動させている。こうしたアームの屈曲振動方式は、例えばニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶の場合に特に有用である。
しかし、図1〜図14の各実施形態の振動子は、前述したように、まったく同じ駆動振動、検出振動の態様を採用しつつ、水晶等の他の圧電単結晶に対しても当然適用可能である。ただし、この場合には、圧電単結晶において有効な圧電軸の方向がニオブ酸リチウム等の場合とは異なっているので、有効な圧電軸を屈曲振動に利用できるようにするために、駆動電極、検出電極の各形態を適宜変更する必要がある。
図16〜図18は、いずれも、水晶のように所定平面内に三回対称軸(a軸)を有している圧電単結晶を使用して振動子を形成し、かつそのc軸が所定平面に対して垂直な方向に向かっている場合において、特に好適な実施形態の振動型ジャイロスコープを示すものである。
この態様においては、屈曲振動片における電圧の印加方向と、共振アームにおける信号電圧の方向とが、それぞれa軸に向かうようにすることが好ましい。図16、図17は、この実施形態に係るものである。
図16の振動型ジャイロスコープ59Cの振動子60Cにおいては、固定部1から主アーム101Iないし基部3が突出し、基部3の端部3b側に、基部3に対して垂直に延びる屈曲振動片64A、64Bが形成されている。各屈曲振動片64A、64Bには、それぞれ、駆動電極65A、65Bが設けられている。この駆動電極の形態は、A−A’断面図に示すようになっており、駆動電極65Aがアースされており、駆動電極65Bが交流電源68に接続されている。これによって、屈曲振動片64A、64Bにおいては、a軸方向に電圧が印加され、屈曲振動が生ずる。
一対の各共振アーム66A、66Bの長手方向は、屈曲振動片64A、64Bに対して120°傾斜している。各共振アーム66A、66Bにおける各検出電極67A、67Bの形態は、駆動電極65A、65Bの形態と同じである。この結果、共振アーム66A、66Bにおいても、a軸方向に電圧が印加される。従って、屈曲振動片において利用される圧電定数と、共振アームにおいて利用される圧電定数とが共に高くなり、かつ同程度となる。
図17の振動型ジャイロスコープ59Dの振動子60Dにおいては、固定部1の突出部1aから主アーム101Jないし基部3が突出し、基部3の端部3b側に、基部3に対して120°傾斜した方向に向かって延びる屈曲振動片70A、70Bが形成されている。各屈曲振動片の先端には質量部71B、71Bが設けられている。
各屈曲振動片70A、70Bには、それぞれ、駆動電極72A、72Bが設けられている。この駆動電極の形態は、A−A’断面図に示すようになっており、駆動電極72Bがアースされており、駆動電極72Aが交流電源68に接続されている。これによって、屈曲振動片70A、70Bにおいては、a軸方向に電圧が印加され、屈曲振動が生ずる。
一対の各共振アーム75A、75Bの長手方向は、屈曲振動片70A、70Bに対して120°傾斜している。各共振アームにおける各検出電極76A、76B、76C、76Dの形態は、B−B’断面図に示すが、検出電極76Dがアースされており、検出電極76Cから検出信号を取り出す。この結果、各共振アーム75A、75Bにおいても、a軸方向に信号電圧が生ずる。
また、例えば図18の実施形態に示すように、屈曲振動片と共振アームとを垂直方向に延ばした場合には、屈曲振動片および共振アームの長手方向をa軸に対して10°〜20°、好ましくは15°傾斜させることによって、検出信号を取り出すことができる。
即ち、振動型ジャイロスコープ59Hにおいては、固定部1から主アーム101Nないし基部3が突出し、基部3の端部3b側に、基部3に対して垂直に延びる屈曲振動片99A、99Bが形成されており、各屈曲振動片の先端に質量部47A、47Bが設けられている。各屈曲振動片には、駆動電極65A、65Bが設けられている。また、固定部1から一対の共振アーム100A、100Bが基部3と平行に突出しており、各共振アームには、それぞれ、検出電極67A、67Bが設けられている。
ここで、各屈曲振動片における電圧の印加方向も、各共振アームにおける信号電圧の方向も、共にa軸に対して15°をなしており、従って双方のアームにおいて利用される圧電定数は同じである。
また、本発明においては、屈曲振動片または共振アームに、その長手方向に向かって延びる貫通孔を設けることができる。これによって、屈曲振動片または共振アームの振動の固有共振周波数を低下させ、共振アームの振動振幅を増大させて、センサの感度を向上させることができる。図19、図20は、本発明のこの実施形態に係る振動型ジャイロスコープを示すものである。
図19の振動型ジャイロスコープ59Eの振動子60Eにおいては、固定部1から主アーム101Kが突出しており、固定部1から基部3が突出し、基部3の端部3b側に、基部3に対して垂直に延びる屈曲振動片78A、78Bが形成されている。各屈曲振動片の先端に質量部47A、47Bが設けられている。各屈曲振動片には、それぞれ、屈曲振動片の長手方向に延びる貫通孔79A、79Bが形成されている。そして、屈曲振動片には、各貫通孔の両側の位置に、細長い駆動電極80A、80B、80C、80Dが設けられる。
本実施形態では、タンタル酸リチウムの130°Y板を使用しており、c軸が振動子の主面に対して50°をなしている。この角度で振動子の温度特性がもっとも良好になる。各屈曲振動片では、A−A’断面図に示すように、駆動電極80A、80Cと駆動電極80B、80Dとの間で、電圧の印加方向が逆相になるので、屈曲振動片が屈曲する。
また、固定部1から一対の共振アーム81A、81Bが突出しており、共振アームには、検出電極83A、83B、83C、83Dが設けられている。各共振アームには、それぞれ、共振アームの長手方向に延びる貫通孔82A、82Bが形成されており、共振アームには、各貫通孔の両側の位置に、細長い検出電極83A、83B、83C、83Dが設けられる。各共振アームでは、B−B’断面図に示すように、検出電極83A、83Cと検出電極83B、83Dとの間で、発生する電位が逆相になる。
図20の振動型ジャイロスコープ59Fの振動子60Fにおいては、固定部1から主アーム101Lないし基部3が突出し、基部3の端部3b側に、一対の屈曲振動片85A、85Bが形成され、各屈曲振動片の先端に質量部71A、71Bが設けられている。各屈曲振動片は、基部に対して120°の角度をなすように延びている。各屈曲振動片には、それぞれ、屈曲振動片の長手方向に延びる貫通孔86A、86Bが形成されている。そして、各貫通孔の外側壁面に駆動電極89A、89Dが設けられており、内側壁面に駆動電極89B、89Cが設けられている。
本実施形態では、水晶のように、所定平面内に三回対称軸のa軸を有する圧電単結晶板を使用している。各屈曲振動片では、A−A’断面図に示すように、外側面上の駆動電極89A、89Dが交流電源68に接続されており、内側面上の駆動電極89B、89Cがアースされている。この結果、駆動電極89A−89Bの組み合わせと、駆動電極89C−89Dの組み合わせとの間では、電圧の印加方向が逆相になるので、屈曲振動片が屈曲する。
また、固定部1の突出部分1aから一対の共振アーム87A、87Bが突出しており、各共振アームには、それぞれ、共振アームの長手方向に延びる貫通孔88A、88Bが形成されている。そして、B−B’断面図に示すように、各貫通孔の外側壁面に検出電極90A、90Dが設けられており、内側壁面に検出電極90B、90Cが設けられている。各共振アームでは、検出電極90A、90C側と90B、90D側との間で、発生する電位が逆相になる。
そして、本実施形態におけるように、共振アームや屈曲振動片の貫通孔において、貫通孔の両側で、内側面と外側面とに一対の駆動電極を設けることで、1本の屈曲振動片または共振アームを屈曲させることができる。検出側においても同様である。
本発明においては、固定片部の一方の側に、前記した主アームと少なくとも一対の共振アームとを設けると共に、固定片部の他方の側に、主アームに対して共振する共振片を設けることができる。この場合には、共振片の屈曲振動片に駆動電極を設け、共振アームの方に検出電極を設ける。これによって、共振片の屈曲振動片の屈曲振動を駆動振動として使用し、共振アームの屈曲振動を検出振動として使用できる。または、共振アームに駆動電極を設け、共振片の屈曲振動片に検出電極を設ける。これによって、共振アームの屈曲振動を駆動振動として使用し、共振片の屈曲振動片の屈曲振動を検出振動として使用できる。
この態様においては、更に、固定片部の他方の側に第二の共振アームを設けることができる。図21は、この実施形態に係る振動型ジャイロスコープ59Gを概略的に示す斜視図である。
この振動子60Gにおいては、固定部材90の内側に固定片部12が設けられている。固定片部12の一方の側では、突出部分94Aから主アーム101Lと一対の共振アーム92A、92Bが突出している。主アーム101Lにおいては、基部3の端部側に、基部3に対して垂直に延びる屈曲振動片91A、91Bが形成されている。屈曲振動片には、駆動電極46A、46B、46C、46Dが設けられている。各共振アームの先端には質量部93A、93Bが設けられている。
各屈曲振動片91A、91Bでは、A−A’断面図に示すように、駆動電極46A、46C側と駆動電極46B、46D側との間で、電圧の印加方向が逆相になっている。
固定片部12の他方の側では、突出部分94Bから、共振片103と、一対の第二の共振アーム97A、97Bが設けられている。共振片103においては、基部98の端部側に、基部98に対して垂直に延びる屈曲振動片95A、95Bが形成されている。
各共振アーム97A、97Bの先端には質量部96A、96Bが設けられている。B−B’断面図に示すように、共振アームには、検出電極49A、49B、49C、49Dが設けられている。検出電極49A、49C側と検出電極49B、49D側との間では、発生する信号電圧が逆相になる。
図22の振動子110においては、中央の固定部分104は、四辺形状の中央部104aと、4箇所の拡張部104bとを備えている。固定部分104からは一対の主アーム101P、101Qが延びている。各主アームにおいては、各拡張部104bから、それぞれ基部3が延びており、各基部3の先端部分3bから、基部3に対して垂直方向に延びるように屈曲振動片111が設けられており、各屈曲振動片111の両端がそれぞれ基部3に連続している。この結果、固定部分104a、一対の基部3および屈曲振動片111によって空間105が包囲される。固定部分104の中央部104aには、一対の屈曲振動片106が設けられている。
所定の励振手段に対して駆動電圧を印加し、各主アームの各屈曲振動片111を矢印Uのように屈曲振動させる。この状態で、振動子をz軸を中心として回転させると、各基部3が3aを中心として屈曲振動する。これに対応して、各屈曲振動片106が矢印Vで示すように共振するので、この振動に伴って発生する検出信号から角速度を測定できる。
1、11、90 固定部材,2、10、20、22、40、41、42、44、60A、60B、60C、60D、60E、60F、60G、60H 振動子,3、16 主アームの基部,4A、4B、15A、15B、33A、33B、34A、34B、45A、45B、61A、61B、64A、64B、70A、70B、78A、78B、85A、85B、91A、91B、95A、95B、99A、99B 屈曲振動片,5A、5B 励振手段(検出手段),6A、6B、6C、6D 検出手段(励振手段),8A、8B 棒状の振動子,12 固定片部,13、30 共振片内の支持部,21 長方形の共振片,23 拡張部,25 各屈曲振動片の基部との接続部分,26 基部の固定部材との接続部分,31、32 共振片,35 突出部,36A、36B、37 質量を除去加工した部分,48A、48B、62A、62B、63A、63B、66A、66B、75A、75B、81A、81B、87A、87B、92A、92B、100A、100B 共振アーム,101A、101B、101C、101D、101E、101F、101G、101H、101I、101J、101K、101L、101N 主アーム,A、B、N、P、Q、R 屈曲振動片の振動,I 屈曲振動片の移動方向,H、K 基部の屈曲方向,J、L 屈曲振動片の屈曲方向,V 屈曲振動片の振動のベクトル,w 振動子の回転,X−Y平面振動子が振動する所定平面,z軸 回転軸