JP4218058B2 - 含フッ素重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料透過性係数が低く、燃料バリア性に優れ、非フッ素系重合体との接着性に優れる含フッ素重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体等のフッ素系重合体は、耐熱性、耐薬品性、耐候性、ガスバリア性等に優れた特性を有し、半導体産業や自動車産業等の種々の分野で使用されている。
【0003】
近年、タンク、ホース、チューブなどの部品、特に高温環境等の過酷な条件にさらされる自動車のエンジンルーム内で使用される燃料用ホースへのフッ素系重合体の適用が検討されている。燃料用ホースとは、アルコールや芳香族化合物を含むガソリン系燃料を移送するための配管用ホースである。
【0004】
なかでも、フッ素系重合体の層を含有する多層積層体からなる燃料用ホースが、種々の要求特性を満足するものとして検討されている。多層積層体の中で、燃料に直接接触する内層材料には、燃料を透過しにくい燃料バリア性及び燃料に含有されるエタノールやメタノール等の浸食性液体に対する耐薬品性を有する樹脂の使用が必須である。この点、フッ素系重合体は、耐熱性、耐薬品性、ガスバリア性に優れるので内層材料として適する。特に、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体は、燃料バリア性に優れるので、燃料ホースの内層材料として好ましい。
【0005】
一方、燃料用ホースの外層材料としては、機械特性や耐久性に優れる非フッ素系重合体が用いられる。通常、ポリアミド6、ポリアミド11及びポリアミド12等のポリアミド系樹脂は、優れた特性を有するので非フッ素系重合体として適する。
【0006】
前記のような多層積層体からなる燃料用ホースでは、フッ素系重合体の層と非フッ素系重合体の層とを良好に接着する技術が重要である。層間の接着力が不充分であると、使用中に層間が剥離し、ホースの閉塞や燃料透過量の増加等の問題が発生する可能性がある。
【0007】
そこで、多層積層体において層間の接着力を向上する技術が検討されている。例えば、フッ素系重合体を押出し成形して得たチューブの表面を、薬液処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の方法により処理して、種々の接着性の官能基をチューブ表面に導入する。ついで、必要に応じて接着剤を塗布した後、フッ素系重合体のチューブの外側に非フッ素系重合体を押出し成形し積層体を製造する方法が採用される(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)。これらの方法により、層間の接着力に優れる燃料ホースが製造できるが、工程が煩雑で積層体の生産性が低い。
【0008】
また、非フッ素系重合体とフッ素系重合体との混合物からなる接着層を用いて、非フッ素系重合体の層とフッ素系重合体の層とを接着する方法が提案されている(例えば、特許文献3及び特許文献4を参照。)。また、非フッ素系重合体と接着性のフッ素系重合体として、官能基を有するエチレン性不飽和化合物をグラフト化したフッ素系重合体(例えば、特許文献5を参照。)、及びペルオキシドに由来するカーボネート基を有するフッ素系重合体(例えば、特許文献6を参照。)の製造方法が提案されている。
【0009】
製造工程が簡便でかつフッ素系重合体と非フッ素系重合体とを共押出し成形法等の簡便な方法で成形することにより多層積層体からなる燃料ホースや燃料タンクを製造できるフッ素系重合体の開発が要請されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平2−107371号公報
【特許文献2】
特開平5−8353号公報
【特許文献3】
特開平7−223300号公報
【特許文献4】
特開平8−258212号公報
【特許文献5】
特表平10−503236号公報
【特許文献6】
国際公開第99/45044号パンフレット
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような背景のもとに開発が要請されている、燃料バリア性に優れ、非フッ素系重合体との接着性に優れる含フッ素重合体を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、連鎖移動剤に由来する酸無水物残基を含有する含フッ素重合体であって、該酸無水物残基の含有量が主鎖炭素原子数1×106個あたり100〜1000個であることを特徴とする含フッ素重合体を提供する。
【0013】
また、本発明は、連鎖移動剤として酸無水物を用い、ラジカル重合開始剤、重合媒体の存在下に、含フッ素オレフィンを含有するモノマーを重合する上記含フッ素重合体の製造方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の含フッ素重合体は、連鎖移動剤に由来する酸無水物残基を有する含フッ素重合体であって、該酸無水物残基の含有量が主鎖炭素原子数1×106個あたり100〜1000個である。ここで、酸無水物残基とは、酸無水物の骨格を有する置換基をいう。すなわち、酸無水物分子の炭素原子に結合した水素原子を1個取り去った構造を有する置換基をいう。酸無水物残基の含有量が少なすぎると非フッ素系重合体との接着性が不充分であり、多すぎると含フッ素重合体の容量流速が大きくなり、成形性が低下する。酸無水物残基の含有量は、200〜800個がより好ましく、250個〜600個が最も好ましい。
【0015】
本発明の含フッ素重合体の容量流速(以下、Q値という。)は、1〜1000mm3/秒が好ましく、5〜500mm3/秒がより好ましく、10〜200mm3/秒が最も好ましい。Q値は、含フッ素重合体の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。Q値が小さすぎると押出し成形が困難となり、大きすぎると含フッ素重合体の機械的強度が低下する。
【0016】
本発明の含フッ素重合体としては、含フッ素オレフィンに基づく重合単位からなる重合体又は共重合体、又は含フッ素オレフィンと含フッ素オレフィン以外のモノマーとに基づく重合単位からなる共重合体が好ましい。
【0017】
含フッ素オレフィンとしては、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(以下、VDFという。)、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという。)、CF2=CFRf(ここで、Rfは炭素原子数2〜10のポリフルオロアルキル基である。以下同じ。)等が挙げられる。含フッ素オレフィンは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
含フッ素オレフィン以外のモノマーとしては、エチレン(以下、Eという。)、プロピレン、ブテン等の炭化水素系オレフィン、CH2=CX(CF2)nY(ここで、X及びYはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子、nは2〜8の整数である。)で表される化合物、CF2=CFO(CF2)3F等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、CF2=CFOCH2CF3等の(ポリフルオロアルキル)トリフルオロビニルエーテル、メチルビニロキシブチルカーボネート等のビニルエーテル、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニル等のビニルエステル、(ポリフルオロアルキル)アクリレート、(ポリフルオロアルキル)メタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。含フッ素オレフィン以外のモノマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記CH2=CX(CF2)nYで表される化合物において、n=2〜4が好ましく、含フッ素重合体が燃料バリア性と耐ストレスクラック性に優れる。具体例としては、CH2=CF(CF2)2F、CH2=CF(CF2)3F、CH2=CF(CF2)4F、CH2=CF(CF2)2H、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CH(CF2)2H、CH2=CH(CF2)3H、CH2=CH(CF2)4H等が挙げられる。CH2=CF(CF2)2F、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)2H又はCH2=CF(CF2)2Hがより好ましく、CH2=CH(CF2)2Fが最も好ましい。
【0020】
本発明の含フッ素重合体の具体例としては、TFE/HFP系共重合体、TFE/E系共重合体、TFE/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)系共重合体、TFE/VDF/HFP系共重合体、TFE/VDF系共重合体、クロロトリフルオロエチレン/E系共重合体等が好ましく、TFE/E系共重合体がより好ましい。
【0021】
前記TFE/E系共重合体において、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位のモル比は、30/70〜70/30が好ましく、45/55〜65/35がより好ましく、50/50〜65/35が最も好ましい。TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位のモル比が小さすぎると含フッ素重合体の耐熱性、耐候性、耐薬品性、ガスバリア性、燃料バリア等が低下し、モル比が大きすぎると機械的強度、溶融成形性等が低下する。この範囲にあると含フッ素重合体が耐熱性、耐候性、耐薬品性、ガスバリア性、燃料バリア、機械的強度、溶融成形性等に優れる。
【0022】
また、TFE/E系共重合体が、TFE及びE以外のモノマーに基づく重合単位を含有する場合は、その含有量は、TFE/E系共重合体中の全重合単位に対して0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜15モル%がより好ましく、1〜10が最も好ましい。
【0023】
TFE/E系共重合体としては、TFE/E/CH2=CH(CF2)4F共重合体、TFE/E/CH2=CH(CF2)2F共重合体がより好ましく、TFE/E/CH2=CH(CF2)2F共重合体が最も好ましい。CH2=CH(CF2)4F又はCH2=CH(CF2)2Fに基づく重合単位を含有量は、0.01〜20モル%が好ましく、0.05〜15モル%がより好ましく、0.1〜10モル%が最も好ましい。
【0024】
本発明の含フッ素重合体の製造方法としては、連鎖移動剤として酸無水物を用い、ラジカル重合開始剤、重合媒体の存在下に、含フッ素オレフィンを含有するモノマーを重合することが好ましい。
【0025】
連鎖移動剤として用いる酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロ−4−メチルフタル酸無水物等が挙げられる。連鎖移動反応により、通常、含フッ素重合体の主鎖末端に酸無水物残基が導入される。該酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸及びヘキサヒドロフタル酸無水物からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。酸無水物の使用量を制御することによって、含フッ素重合体中の酸無水物に由来する酸無水物残基の含有量を容易に制御できる。
【0026】
本発明において、含フッ素重合体の酸無水物残基の含有量及び含フッ素重合体の容量流速をさらに制御するために、必要に応じて、前記酸無水物以外の連鎖移動剤を併用することも好ましい。酸無水物以外の連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。
【0027】
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である分解温度が0℃〜100℃であるものが好ましく、20〜90℃であるものがより好ましい。具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート等のペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル、(Z(CF2)pCOO)2(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
【0028】
重合溶媒としては、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒、水性媒体等が挙げられる。
【0029】
重合方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合が好ましく、重合媒体として前記有機溶媒を用いる溶液重合がより好ましい。
【0030】
本発明において重合条件は特に限定されず、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましく、2〜10時間がより好ましい。
【0031】
重合終了後、得られた含フッ素重合体は、重合媒体から分離し、単離される。単離方法としては、スラリ状の含フッ素重合体と水を造粒槽で加熱、撹拌し、溶媒を留去しながら造粒する方法が好ましい。特に、TFE/E系共重合体の場合には、溶液重合で得られるスラリ状のTFE/E系共重合体を加熱減圧下に造粒して回収することが好ましい。このような単離工程においても、通常、含フッ素重合体中の酸無水物残基はその化学構造が維持される。
【0032】
本発明の含フッ素重合体は、燃料バリア性に優れる。燃料バリア性の尺度として、JIS Z−0208に規定されているカップ法に準拠し測定される燃料透過係数を用いると、燃料透過係数が低いほど、燃料バリア性に優れることを示す。本発明の含フッ素重合体は、該燃料透過係数が低いことが特徴である。
【0033】
本発明の含フッ素重合体を用いて多層積層体を得ることが好ましい。多層積層体は含フッ素重合体の層(A)と非フッ素系重合体の層(B)とを含有することが好ましい。例えば、(A)と(B)の2層からなる(A)/(B)積層体、(A)と(B)にさらに本発明の含フッ素重合体以外のフッ素系重合体の層(C)を積層した3層からなる(C)/(A)/(B)積層体、さらに積層する層を増加させた(C)/(A)/(B)/(B)積層体等の多層積層体が挙げられる。ここで、本発明の含フッ素重合体の層(A)と非フッ素系重合体の層(B)とが直接接するように積層されることが好ましく、これにより強固に接着した積層体が得られる。また、本発明の含フッ素重合体を用いて成形される多層積層体は、(A)と(C)の積層体であることも好ましい。例えば、(A)/(C)積層体、(A)/(C)/(C)積層体、(C)/(A)/(C)積層体等の多層積層体が挙げられる。
【0034】
本発明の含フッ素重合体を用いて成形される多層積層体において、燃料に接触する最内層は、含フッ素重合体の層(A)又はフッ素系重合体の層(C)であって、かつ導電性を有することが好ましい。特に、導電性カーボンブラックを配合した含フッ素重合体の層(A)又はフッ素系重合体の層(C)を用いることが好ましい。より好ましくは、導電性カーボンブラックを配合した含フッ素重合体の層(A)/非フッ素系重合体の層(B)からなる2層積層体、導電性カーボンブラックを配合したフッ素系重合体の層(C)/含フッ素重合体の層(A)/非フッ素系重合体の層(B)からなる3層積層体、フッ素系重合体の層(C)/含フッ素重合体の層(A)/非フッ素系重合体の層(B)/非フッ素系重合体の層(B)からなる4層積層体が好ましい。導電性を有する場合には、導電性の尺度としての表面抵抗率は、1×109Ω・cm以下が好ましい。
【0035】
本発明の含フッ素重合体を用いて成形される多層積層体において、非フッ素系重合体の層(B)を含有することが好ましい。非フッ素系重合体としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6(半芳香族系ポリアミド)等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレン/ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレエート等が挙げられる。
【0036】
非フッ素系重合体としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6が好ましく、ポリアミド11又はポリアミド12がより好ましい。
【0037】
多層積層体に(B)が2層以上含有される場合には、(B)の非フッ素系重合体は、同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
また、多層積層体が、本発明の含フッ素重合体以外のフッ素系重合体の層(C)を含有する場合には、該フッ素系重合体としては、TFE/HFP系共重合体、TFE/(ペルフルオロプロピルビニルエーテル)系共重合体、TFE/E系共重合体、TFE/VDF/HFP系共重合体、TFE/VDF系共重合体、クロロトリフルオロエチレン/E系共重合体等が好ましく、TFE/E系共重合体がより好ましい。多層積層体に(C)が2層以上含有される場合には、(C)のフッ素系重合体は、同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
前記多層積層体は、含フッ素重合体と非フッ素系重合体等とを共押出し成形して得ることが好ましい。共押出し成形法は、フィルム、チューブ等の形状の2層以上の積層体を得る方法である。2機以上の押出し機の吐出口から吐出される含フッ素重合体及び非フッ素系重合体の溶融物を溶融状態で接触させつつダイを通し積層体に成形する。押出し温度としては、スクリュ温度は100〜350℃が好ましく、ダイ温度は200〜350℃が好ましい。スクリュ回転数は特に限定されないが10〜200回転/分が好ましい。溶融物の押出し機内の滞留時間は1〜20分が好ましい。
【0040】
本発明の含フッ素重合体及びそれから得られた多層積層体の用途としては、自動車用燃料用ホース、自動車用燃料用タンクが好ましい。その他に、産業用ホース、食品用ホース、耐候性フィルム、耐薬品性ライニング、耐候性ライニング、フッ素系重合体と非フッ素系重合体との接着材等が挙げられる。
【0041】
【実施例】
以下に実施例(例1〜2)及び比較例(例3)を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、燃料透過係数、酸無水物の含有量、Q値は下記の方法によって測定した。
【0042】
[燃料透過係数]
JIS Z−0208に規定されているカップ法に準拠して含フッ素重合体の燃料透過係数を測定した。燃料のE10(イソオクタン:トルエン:エタノール=50:50:10体積比)の9.5〜10gを透過面積28.26cm2のカップに入れ、プレス成形で得た厚さ100μmの含フッ素重合体のフィルムでカップ上部を覆い、60℃で10日間保持した後の質量減少量より燃料透過係数を求めた。燃料透過係数が低いほど燃料バリア性に優れることを示す。
【0043】
[酸無水物残基の含有量(個/主鎖炭素原子数1×106個)]
含フッ素重合体をプレス成形して200μmのフィルムを得た。赤外吸収スペクトルにおいて、酸無水物残基に基づく吸収ピークは1730cm−1に現れるのでそのピークの吸光度を測定した。K=1.03×106×L/εの関係式を用いて主鎖炭素原子数1×106個あたりの酸無水物残基の含有量K個を算出した。ここで、Lは1730cm−1における吸光度、εはモル吸光係数、である。なお、εはモデル化合物よりε=200と決定した。
【0044】
[Q値(mm3/秒)]
島津社製フローテスタを用いて、温度297℃、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィスから押出すときの含フッ素重合体の押出し速度である。
【0045】
[表面抵抗率測定]
チューブ両端に銅ピンを挿入し、抵抗計にて抵抗値を測定する。
【0046】
[例1]
内容積が94リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの110.3kg、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製AK225cb、以下、AK225cbという。)の10.1kg、無水酢酸の6.3kg、CH2=CH(CF2)2Fの730gを仕込み、TFEの8.5kg、Eの1.3kgを圧入した。重合槽内を66℃に昇温し、重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの1質量%AK225cb溶液の289mLを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるように組成TFE/E=60/40(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。重合開始5.2時間後、モノマー混合ガスの8.0kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0047】
得られたスラリ状の含フッ素重合体1を、水の75kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、ついで撹拌しながら105℃まで昇温し、溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で5時間乾燥することにより、8.2kgの含フッ素重合体1の造粒物1が得られた。
【0048】
溶融NMR分析及びフッ素含有量分析の結果から、含フッ素重合体1の組成はTFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CH2=CH(CF2)2Fに基づく重合単位のモル比で58.1/39.1/2.8であった。また、赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素重合体の無水酢酸残基の含有量は主鎖炭素原子1×106個あたり494個であった。含フッ素重合体1の融点は238℃、Q値は27mm3/秒、燃料透過係数は2.48gmm/m2/24hであった。
【0049】
押出機を用いて、280℃、滞留時間2分で造粒物1を溶融混練し、ペレット1を作成した。また、造粒物1の100部とカーボンブラック(電気化学社製、粒状アセチレンブラック)の15部とを、押出機を用いて、260℃、滞留時間2分で溶融混練し、導電性含フッ素重合体1bのペレット2を作成した。
【0050】
外層を形成するシリンダにポリアミド12(宇部興産社製、3030JLX2)を供給し、中間層を形成するシリンダにペレット1を供給し、内層を形成するシリンダにペレット2を供給し、それぞれシリンダの輸送ゾーンに移送させた。ポリアミド12、ペレット1、ペレット2の輸送ゾーンにおける加熱温度をそれぞれ260℃、280℃、280℃とした。共ダイの温度を280℃として3層共押出しをおこない、3層積層チューブを得た。積層チューブの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層、含フッ素重合体1の中間層、導電性含フッ素重合体1bの内層の厚さはそれぞれ0.7mm、0.1mm、0.2mmであった。内層の表面抵抗率は、2×105Ω・cmであった。
【0051】
得られたチューブの各層間の剥離強度を測定した。含フッ素重合体1の中間層と導電性含フッ素重合体1bの内層は剥離できず、部分的に材料破壊し高い接着力を示した。含フッ素重合体1の中間層とポリアミド12の外層との剥離強度は33.2N/cmであり、高い剥離強度を示した。
【0052】
[例2]
重合前に1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの104.5kg、AK225cbの19.1kg、無水酢酸の3.8kgを仕込み以外は例1と同様にして、含フッ素重合体2の造粒物2の8.0kgを得た。重合時間は5.8時間であった。
【0053】
溶融NMR分析及びフッ素含有量分析の結果から、含フッ素重合体2の組成はTFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CH2=CH(CF2)2Fに基づく重合単位のモル比で57.9/39.5/2.6であった。また、赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素重合体2の無水酢酸残基の含有量は主鎖炭素原子1×106個あたり330個であった。含フッ素重合体2の融点は241℃、Q値は31mm3/秒、燃料透過係数は2.13gmm/m2/24hであった。
【0054】
押出機を用いて、260℃、滞留時間2分で造粒物2を溶融混練し、ペレット3を作成した。また、造粒物2の100部とカーボンブラック(電気化学工業社製粒状アセチレンブラック)の15部とを、押出機を用いて、260℃、滞留時間2分で溶融混練し、導電性含フッ素重合体2bのペレット4を作成した。
【0055】
外層を形成するシリンダに例1のポリアミド12を供給し、内層を形成するシリンダにペレット4を供給し、それぞれシリンダの輸送ゾーンに移送させた。ポリアミド12、ペレット4の輸送ゾーンにおける加熱温度をそれぞれ260℃、280℃とした。共ダイの温度を280℃として2層共押出しをおこない、2層積層チューブを得た。積層チューブの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層、導電性含フッ素重合体2bの内層の厚さはそれぞれ0.7mm、0.3mmであった。内層の表面抵抗率は、3×105Ω・cmであった。内層と外層との剥離強度は25.3N/cmであり、高い剥離強度を示した。
【0056】
[例3]
重合前に1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの93.7kg、AK225cbの34.7kg、CH2=CH(CF2)2Fの730gを仕込み、無水酢酸は使用しない以外は例1と同様にして、含フッ素重合体3の造粒物3の8.5kgを得た。重合時間は6.2時間であった。
【0057】
溶融NMR分析及びフッ素含有量分析の結果から、含フッ素重合体3の組成はTFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CH2=CH(CF2)2Fに基づく重合単位のモル比で57.9/39.5/2.6であった。また、赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素重合体3の無水酢酸残基の含有量は主鎖炭素原子1×106個あたり0個であった。含フッ素重合体3の融点は240℃、Q値は25mm3/秒、燃料透過係数は1.75gmm/m2/24hであった。
【0058】
押出機を用いて、260℃、滞留時間2分で造粒物3を溶融混練し、ペレット5を作成した。また、造粒物3の100部とカーボンブラック(電気化学工業社製粒状アセチレンブラック)の15部とを、押出機を用いて、260℃、滞留時間2分で溶融混練し、導電性含フッ素重合体3bのペレット6を作成した。
【0059】
外層を形成するシリンダに例1のポリアミド12を供給し、内層を形成するシリンダにペレット6を供給し、それぞれシリンダの輸送ゾーンに移送させた。ポリアミド12、ペレット6の輸送ゾーンにおける加熱温度をそれぞれ260℃、280℃とした。共ダイの温度を280℃として2層共押出しをおこない、2層積層チューブを得た。積層チューブの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層、導電性含フッ素重合体3bの内層の厚さはそれぞれ0.7mm、0.3mmであった内層と外層とは、容易に剥離した。内層の表面抵抗率は、5×105Ω・cmであった。
【0060】
【発明の効果】
本発明の含フッ素重合体は、燃料透過係数が低く、燃料バリア性に優れ、非フッ素系重合体との接着性に優れる。また、耐ストレスクラック性にも優れる。
【0061】
本発明の含フッ素重合体は、非フッ素系重合体及び含フッ素重合体以外のフッ素系重合体との共押出し成形が容易で、剥離強度に優れる積層体を与える。該積層体は、燃料用ホースに適する。また、本発明の含フッ素重合体は、積層体において非フッ素系重合体の層と直接接する層の構成材料として適する。
Claims (3)
- 連鎖移動剤に由来する酸無水物残基を含有する含フッ素重合体であって、当該含フッ素重合体は、含フッ素オレフィンに基づく重合単位からなる重合体又は共重合体、又は含フッ素オレフィンと含フッ素オレフィン以外のモノマーとに基づく重合単位からなる共重合体であり、当該酸無水物残基の含有量が主鎖炭素原子数1×106個あたり100〜1000個であることを特徴とする含フッ素重合体。
- 連鎖移動剤として酸無水物を用い、ラジカル重合開始剤、重合媒体の存在下に、含フッ素オレフィンを含有するモノマーを重合する請求項1に記載の含フッ素重合体の製造方法。
- 前記酸無水物が、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸及びヘキサヒドロフタル酸無水物からなる群から選ばれる1種以上である請求項2に記載の含フッ素重合体の製造方法。
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