JP4100665B2 - 六方晶フェライト焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネトプランバイト型六方晶フェライト焼結磁石等の六方晶フェライト焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化物永久磁石材料としては、六方晶系のマグネトプランバイト型(M型)のSrフェライトまたはBaフェライトが主に用いられており、これらは焼結磁石やボンディッド磁石として利用されている。
【0003】
本発明者らは、例えば特開平11−154604号公報において、従来のM型フェライト焼結磁石では達成不可能であった高い残留磁束密度と高い保磁力とを有するフェライト焼結磁石を提案している。このフェライト焼結磁石は、少なくともSr、LaおよびCoを含有し、六方晶M型フェライトの主相を有するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
焼結磁石は、原料粉末を成形して焼成することにより製造される。原料粉末の粒径を小さくすると、焼結体の結晶粒径を小さくするできるため、保磁力が向上する。しかし、原料粉末の粒径を小さくすると、磁場中成形の際の粒子の配向度が低下するため、残留磁束密度が低下し、また、成形性も悪化するという問題がある。また、上記特開平11−154604号公報に示されるように、LaおよびCoを含有させることにより、フェライト焼結磁石の保磁力および残留磁束密度を著しく向上させることができるが、Coは高価であるためコストアップを招く。
【0005】
このような事情から、保磁力および残留磁束密度が共に高いフェライト焼結磁石を低コストで製造することは困難であった。
【0006】
また、フェライト焼結磁石をモータに適用した場合、磁石の比抵抗が低いと渦電流損失が大きくなり、モータの発熱が大きくなってしまう。しかし、フェライト焼結磁石の比抵抗を向上させる簡易な手段は知られていない。
【0007】
本発明は、残留磁束密度を実質的に低下させることなく、また、Coの添加量を増加させることなく、フェライト焼結磁石の保磁力を向上させることを目的とする。また、本発明は、簡易な手段で比抵抗の高い六方晶フェライト焼結体を実現することを目的とする。
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(3)の本発明により達成される。
(1) 焼結工程を有し、この焼結工程の降温過程に、低速降温域と低速降温域よりも高温度側に高速降温域とを設け、低速降温域は、降温速度が0℃/min以上1℃/min未満であり、この低速降温域の持続時間を、600〜1000℃の温度範囲内において2時間以上とし、かつ、1000℃を超える温度範囲内において0〜3時間とし、高速降温域は、降温過程の少なくとも900℃以上焼結温度以下の温度範囲内に、降温速度が5℃/min以上である領域を温度幅50℃以上にわたって設けるものである六方晶フェライトの製造方法。
(2) 前記高速降温域における降温速度を10℃/min以上とする上記(1)の六方晶フェライト焼結体の製造方法。
(3) 前記六方晶フェライト焼結体が、Fe、元素A(Aは、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種)、元素R(Rは、希土類元素およびBiか ら選択される少なくとも1種)および元素M(Mは、Co、Mn、NiおよびZnから選択される少なくとも1種)を含有し、六方晶マグネトプランバイト型フェライトを主相として有する焼結磁石である上記(1)又は(2)の六方晶フェライト焼結体の製造方法。
【0009】
【作用および効果】
本発明では、フェライト焼結磁石を製造するに際し、焼結時の降温過程の特定の温度範囲に、降温速度の遅い低速降温域を設ける。これにより、残留磁束密度を実質的に低下させることなく保磁力を向上させることができる。
【0010】
降温速度を本発明に基づいて制御した場合、保磁力が向上すると共に磁石の比抵抗が増大する。また、比較的高い温度範囲に低速降温域を設ければ、比抵抗増大率をより高くできる。したがって、本発明によって製造された磁石を例えばモータに適用した場合、渦電流損失が小さくなるため発熱を少なくできる。なお、本発明では、フェライト焼結磁石の磁化容易軸(c軸)方向における比抵抗が特に高くなるが、磁化容易軸と直交する磁化困難軸方向においても比抵抗は向上する。
【0011】
本発明は、M型、W型、X型、Y型、Z型等の各種六方晶フェライト焼結磁石の製造において有効であるが、上記元素Mおよび上記元素Rを含有する六方晶M型フェライト焼結磁石の製造において特に有効である。すなわち、この組成の磁石の製造に本発明を適用したときに、保磁力向上率が特に高くなると共に、比抵抗向上率も特に高くなる。
【0012】
元素Rおよび元素Mを含有するフェライト焼結磁石の製造に本発明を適用したとき、磁化容易軸方向の比抵抗を高くすることができる。なお、本明細書における比抵抗は、25℃における値である。すなわち、本発明により、高保磁力かつ高抵抗のフェライト焼結磁石が実現する。ただし、降温過程の制御によって著しく比抵抗を上げようとすると保磁力向上効果が低くなるため、本発明では比抵抗が100kΩmを上回らないように降温過程を制御することが好ましい。
【0013】
ところで、従来、高周波用コイルに使用される磁性材料としては、一般にスピネルフェライト、特にNi−Zn系フェライトが用いられている。しかし、適用される電気・電子機器の高速化に伴い、使用される周波数が高くなってきている。そのため、スピネル系の磁性材料より高い周波数まで対応できる磁性材として六方晶フェライトが注目されており、そのうち、c面の面内方向に磁化容易軸が存在するプラナ型フェライトは、高い周波数領域まで高い透磁率を維持するため、高周波での使用に特に適する。しかし、プラナ型フェライトは、スピネルフェライトに比べて比抵抗が低い。そのため、コイル製造時に絶縁対策が必要であり、コストアップを招くという問題があり、また、渦電流損失が大きくなるという問題もある。これに対し、本発明をプラナ型フェライト焼結体の製造に適用すれば、比抵抗を向上させることが可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下では、Fe、元素A(Aは、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種)、元素R(Rは、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種)および元素M(Mは、Co、Mn、NiおよびZnから選択される少なくとも1種)を含有する六方晶マグネトプランバイト型フェライト焼結磁石の製造に本発明を適用する場合を例に挙げて、説明する。
【0015】
製造方法
本発明の製造方法は、原料粉末の成形体を焼結して焼結磁石を得る焼結工程を有する。本発明では、焼結工程の降温過程において、降温速度の遅い低速降温域を設けることにより、焼結磁石の保磁力を向上させる。
【0016】
本発明において、低速降温域における降温速度は、0℃/min以上1℃/min未満、好ましくは0〜0.5℃/min、より好ましくは0〜0.1℃/minである。降温速度が速すぎると、本発明の効果が実現しない。
【0017】
焼結工程における温度変化パターンを、図1に模式的に示す。図1に示す焼結工程は、昇温過程、安定温度域および降温過程から構成される。なお、本発明は、安定温度域を設けずに昇温過程と降温過程とからなる焼結工程にも適用できる。図1における降温過程は、上記低速降温域と、降温速度が低速降温域より速い通常降温域とから構成される。T1およびT2は、それぞれ低速降温域の開始温度および終了温度である。低速降温域における降温速度は0℃/minであってもよいので、T1=T2であってもよい。
【0018】
次に、低速降温域が満足すべき条件について説明する。本発明では、600〜1000℃の温度範囲内、好ましくは700℃〜1000℃の温度範囲内、より好ましくは800〜1000℃の温度範囲内、さらに好ましくは800〜900℃の温度範囲内において、3時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上持続するように、上記低速降温域を設ける。これにより、保磁力の向上と比抵抗の向上とが同時に実現する。上記温度範囲内での低速降温域の持続時間が短すぎると、保磁力向上効果および比抵抗向上効果が実現しないか不十分となる。一方、上記持続時間を長くするほど生産性が低くなるため、上記持続時間は、通常、100時間以下、特に50時間以下とすることが好ましい。
【0019】
低速降温域が上記した条件を満足する限り、T1およびT2の具体的値は特に限定されない。例えば、T2は室温であってもよく、また、T1が1000℃を超える温度であってもよい。ただし、600℃未満の温度範囲に存在する低速降温域は、保磁力向上および比抵抗向上に実質的に寄与しないので、生産性向上のために600℃未満の温度範囲では通常の降温速度とすることが好ましい。また、低速降温域が1000℃を超える高温度域まで延びており、かつ、この温度域における低速降温域の持続時間が長いと、保磁力向上効果が損なわれる。そのため、1000℃を超える温度範囲内における低速降温域の持続時間は、0〜3時間とする。
【0020】
なお、低速降温域の持続時間が800〜1000℃の温度範囲、特に800〜900℃の温度範囲において十分な長さに達した場合、それ以下の温度範囲では通常の降温速度に戻してもよい。これにより、高保磁力かつ高比抵抗の磁石が比較的短時間で得られる。
【0021】
図1に示す通常降温域における降温速度は特に限定されず、低速降温域より速ければよい。ただし、低速温度域より高温度側において、降温速度を比較的速くすることにより、保磁力をさらに向上させることができる。図2に、焼結工程における温度変化パターンの変形例を模式的に示す。図2に示すパターンは、降温過程において、低速降温域より高温度側に、高速降温域を設けてある。図2に示すTHは、高速降温域の開始温度である。本明細書において高速降温域における降温速度は、5℃/min以上、好ましくは10℃/min以上、より好ましくは15℃/min以上である。降温過程の900℃以上焼結温度以下の温度範囲内に、このような高速降温域を温度幅50℃以上、好ましくは温度幅100℃以上、さらに好ましくは上記温度範囲の全域にわたって設ければ、保磁力をさらに向上させることができる。
【0022】
なお、高速降温域における降温速度の上限は特にないが、通常、100℃/min以下とすることが好ましい。降温速度をさらに速くしても保磁力がさらに向上するわけではなく、また、降温速度を著しく速くするためには炉の改造が必要であり、コストアップを招く。
【0023】
焼結工程における条件は、温度変化パターン以外は特に限定されず、従来の条件と同様であってよい。例えば、焼結温度(最高温度または安定温度)は、好ましくは1150〜1250℃、より好ましくは1160〜1230℃とし、この温度範囲に保持する時間または安定温度に保持する時間(安定時間)は、好ましくは0.5〜3時間である。焼結工程は、通常、空気中で行えばよいが、酸素分圧を制御した雰囲気中で行ってもよい。
【0024】
次に、本発明の製造方法における、焼結工程以外の各種条件等について説明する。
【0025】
成形対象の原料粉末は、六方晶マグネトプランバイト型(M型)フェライト相を有するものであれば特に限定されない。原料粉末は、例えば、いわゆる仮焼によって固相反応により製造してもよく、共沈法や水熱合成法などにより製造してもよい。以降では、主として仮焼工程を設ける場合について説明する。
【0026】
まず、出発原料を混合した後、仮焼し、仮焼体を得る。この仮焼体を解砕ないし粉砕して粉末化し、上記原料粉末を得る。そして、この原料粉末を成形した後、焼成する。
【0027】
出発原料としては、フェライト構成元素(Fe、元素A、元素R、元素M等)の1種を含有する化合物、またはこれらの2種以上を含有する化合物を用いればよい。元素Aを含む出発原料には、ストック時の安定性が良好であることから、水酸化物または炭酸塩を用いることが好ましい。このほか、焼結助剤として、Si化合物および/またはCa化合物が用いられる。Si化合物としてはSiO2が好ましく、Ca化合物としてはCaCO3が好ましい。Si化合物のSiO2換算での添加量は、出発原料全体の0.1〜2質量%程度とすればよく、Ca化合物のCaCO3換算での添加量は、出発原料全体の0.2〜4質量%程度とすればよい。
【0028】
出発原料には、酸化物粉末、または焼成により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等の粉末を用いる。出発原料の平均粒径は特に限定されないが、通常、0.1〜2μm程度とすることが好ましい。特に酸化鉄は微細粉末を用いることが好ましく、具体的には一次粒子の平均粒径が好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下のものを用いる。
【0029】
仮焼は、通常、空気中等の酸化性雰囲気中で行えばよい。仮焼条件は特に限定されないが、通常、安定温度は1000〜1350℃、安定時間は1秒間〜10時間、より好ましくは1秒間〜3時間とすればよい。仮焼体は、実質的にマグネトプランバイト型のフェライト構造をもち、その一次粒子の平均粒径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.1〜1μm、最も好ましくは0.1〜0.5μmである。平均粒径は走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0030】
出発原料化合物は、仮焼前にすべてを混合する必要はなく、各化合物の一部または全部を仮焼後に添加する構成としてもよい。特に、焼結助剤として用いるSi化合物およびCa化合物は、一部、好ましくは全部を、仮焼後に添加することが好ましい。
【0031】
焼結助剤以外の化合物、すなわち、Fe、元素A、元素Rまたは元素Mを含有する化合物の少なくとも一部を仮焼後に添加する方法を、本明細書では後添加法と呼ぶ。この後添加法では、まず、少なくとも前記元素Aを含有する六方晶フェライトを主相とする仮焼体を製造する。次いで、この仮焼体を粉砕した後、または粉砕時に、後添加する化合物(後添加物)を仮焼体に添加し、その後、成形し、焼結する。元素Rおよび元素Mから選択される1種または2種以上の元素、好ましくは元素Rおよび元素Mの両方が後添加物に含有されるように、後添加する化合物を選択すれば、複数のキュリー温度をもつ磁石を得ることができ、その結果、高磁気特性が得られる。
【0032】
後添加物の量は、仮焼体の好ましくは1〜100体積%、より好ましくは5〜70体積%、さらに好ましくは10〜50体積%である。元素Rを含有する化合物としてはR酸化物を用いることができるが、R酸化物は水に対する溶解度が比較的大きいため、湿式成形の際に流出してしまうなどの問題がある。また、吸湿性もあるため、秤量誤差の原因になりやすい。そのため、R化合物としては炭酸塩または水酸化物が好ましい。そのほかの元素の後添加物は、酸化物、または焼成により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩や水酸化物として添加すればよい。
【0033】
後添加物の添加時期は、仮焼後かつ焼結前であればよいが、好ましくは、次に説明する粉砕時に添加する。ただし、仮焼体ではなく、共沈法や水熱合成法などにより製造され、少なくとも前記元素Aを含有する六方晶フェライトを主相とする粒子に後添加物を添加してもよい。
【0034】
元素Rまたは元素Mについては、磁石中に含まれる全量の好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上が、後添加物として添加されることが望ましい。そのほかの元素については、後添加物として添加される量は特に限定されない。なお、後添加物の平均粒径は、0.1〜2μm程度であることが好ましい。
【0035】
ここで、後添加物の添加量について、具体的に説明する。例えば、
Sr:La:Fe:Co=0.8:0.2:11.8:0.2
である焼結磁石の製造を目的とする場合、原料配合時には
Sr:Fe=0.8:9.6(=1:12)
の割合で混合して仮焼し、得られた仮焼体に、
La:Fe:Co=0.2:2.2:0.2
である後添加物を添加して焼成することにより、上記した目的組成の焼結磁石が得られる。また、例えば、
Sr:Fe=0.8:11.8(=1:14.75)
の割合で混合して仮焼し(このとき仮焼体はM型Srフェライトとα−Fe2O3との2相状態となる)、得られた仮焼体に
La:Co=0.2:0.2
である後添加物を添加して焼成することによっても、上記した目的組成の焼結磁石が得られる。
【0036】
後添加法により製造された焼結磁石が複数のキュリー温度をもつ理由は明確ではないが、次のように考えられる。焼結時には、M型フェライト相を有する仮焼体粒子と後添加物との反応が生じるが、その過程でLa濃度およびCo濃度が高いM型フェライト部分と、これらの濃度が低いM型フェライト部分とが生じると考えられる。すなわち、後添加物中のLaやCoが、焼結時に仮焼体粒子の中心に向かって拡散していくとすると、焼結後の結晶粒中におけるLaやCoの濃度は、中心部よりも表層部で高くなりやすいと考えられる。キュリー温度はLaやCoの置換量、特にLaの置換量に依存するため、複数のキュリー温度の存在は、結晶粒中におけるLaやCoの濃度分布の存在を反映していると考えられる。
【0037】
次に、成形およびその前工程である粉砕について説明する。
【0038】
原料粉末の成形には、乾式成形法を用いても湿式成形法を用いてもよく、いずれの場合でも本発明の効果は実現する。ただし、より高い磁気特性が得られる点では、湿式成形法を利用することが好ましい。湿式成形では、原料粉末と、分散媒としての水と、分散剤とを含む成形用スラリーを用いることが好ましい。なお、分散剤の効果をより高くするためには、湿式成形工程の前に湿式粉砕工程を設けることが好ましい。また、原料粉末として仮焼体粉末を用いる場合、仮焼体は一般に顆粒から構成されるので、仮焼体の粗粉砕ないし解砕のために、湿式粉砕工程の前に乾式粗粉砕工程を設けることが好ましい。なお、共沈法や水熱合成法などにより原料粉末を製造した場合には、通常、乾式粗粉砕工程は設けず、湿式粉砕工程も必須ではないが、配向度をより高くするためには湿式粉砕工程を設けることが好ましい。以下では、仮焼体粉末を原料粉末として用い、乾式粗粉砕工程および湿式粉砕工程を設ける場合について説明する。
【0039】
乾式粗粉砕工程では、通常、BET比表面積が2〜10倍程度となるまで粉砕する。粉砕後において、平均粒径は好ましくは0.1〜1μm程度、BET比表面積は好ましくは4〜10m2/g程度である。粉砕手段は特に限定されず、例えば乾式振動ミル、乾式アトライター(媒体攪拌型ミル)、乾式ボールミル等が使用できるが、特に乾式振動ミルを用いることが好ましい。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよい。なお、仮焼後に一部の出発原料を添加する場合には、この乾式粗粉砕工程において添加することが好ましい。SiO2と、焼成によりCaOとなるCaCO3とは、それぞれの少なくとも一部をこの乾式粗粉砕工程またはこれに続く湿式粉砕工程において添加することが好ましい。
【0040】
乾式粗粉砕には、仮焼体粒子に結晶歪を導入して保磁力HcBを小さくする効果もある。保磁力の低下により粒子の凝集が抑制され、分散性が向上する。また、軟磁性化することにより、配向度も向上する。軟磁性化された粒子は、後の焼結工程において本来の硬磁性に戻る。
【0041】
乾式粗粉砕の後、粉砕された粒子と水とを含む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式粉砕を行う。粉砕用スラリー中の原料粉末の含有量は、10〜70質量%程度であることが好ましい。湿式粉砕に用いる粉砕手段は特に限定されないが、通常、ボールミル、アトライター、振動ミル等を用いることが好ましい。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよい。
【0042】
湿式粉砕後、粉砕用スラリーを濃縮して成形用スラリーを調製する。濃縮は、遠心分離などによって行えばよい。成形用スラリー中の原料粉末の含有量は、60〜90質量%程度であることが好ましい。
【0043】
湿式成形工程では、成形用スラリーを用いて磁場中成形を行う。成形圧力は10〜50MPa程度、印加磁場強度は0.5〜1.5T程度とすればよい。
【0044】
成形用のスラリーに非水系の分散媒を用いると高配向度が得られるが、環境への負荷を軽減するためには水系分散媒を用いることが好ましい。そして、水系分散媒を用いることによる配向度の低下を補うために、成形用スラリー中に分散剤を存在させることが好ましい。この場合に用いる分散剤は、水酸基およびカルボキシル基を有する有機化合物であるか、その中和塩であるか、そのラクトンであるか、ヒロドキシメチルカルボニル基を有する有機化合物であるか、酸として解離し得るエノール型水酸基を有する有機化合物であるか、その中和塩であることが好ましい。このような分散剤は、例えば特開平11−214208号公報に記載されている。
【0045】
なお、非水系の分散媒を用いる場合には、例えば特開平6−53064号公報に記載されているように、トルエンやキシレンのような有機溶媒に、例えばオレイン酸のような界面活性剤を添加して、分散媒とする。このような分散媒を用いることにより、分散しにくいサブミクロンサイズのフェライト粒子を用いた場合でも最高で98%程度の高い磁気的配向度を得ることが可能である。
【0046】
湿式成形後、成形体を乾燥させ、次いで、空気中または窒素中において好ましくは100〜500℃の温度に加熱する脱脂処理を施すことにより、添加した分散剤を十分に分解除去する。乾燥と上記脱脂処理とは連続して行えばよいが、成形体を十分に乾燥させないまま急激に加熱すると、成形体にクラックが発生してしまうので、室温から100℃程度まではゆっくりと昇温し、この温度範囲において十分に乾燥させることが好ましい。脱脂処理後、前記した条件で焼結し、フェライト焼結磁石を得る。
【0047】
なお、前記成形体をクラッシャー等を用いて解砕し、ふるい等により平均粒径が100〜700μm程度となるように分級して磁場配向顆粒を得、これを乾式磁場成形した後、焼結することにより磁石を得てもよい。
【0048】
焼結磁石
本発明は、六方晶マグネトプランバイト型(M型)フェライトを主相として有するフェライト焼結磁石の製造に対し有効であるが、そのうち特に、Fe、元素A(Aは、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種)、元素R(Rは、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種)および元素M(Mは、Co、Mn、NiおよびZnから選択される少なくとも1種)を含有するフェライト焼結磁石の製造において著しい効果を発揮する。なお、本明細書において希土類元素とは、Y、Scおよびランタノイドである。
【0049】
このようなフェライト焼結磁石中において、全金属元素量に対するA,R,FeおよびMそれぞれの総計の比率は、好ましくは
A:1〜13原子%、
R:0.05〜10原子%、
Fe:80〜95原子%、
M:0.1〜5原子%
であり、より好ましくは
A:3〜11原子%、
R:0.2〜6原子%、
Fe:83〜94原子%、
M:0.3〜4原子%
であり、さらに好ましくは
A:3〜9原子%、
R:0.5〜4原子%、
Fe:86〜93原子%、
M:0.5〜3原子%
である。元素Aの含有量が少なすぎると、M型フェライトが生成しないか、α−Fe2O3 等の非磁性相が多くなる。元素Aの含有量が多すぎると、M型フェライトが生成しないか、SrFeO3-x 等の非磁性相が多くなる。元素Rの含有量が少なすぎると、元素Mの固溶量が少なくなってしまうので、磁気特性向上効果が不十分となる。元素Rの含有量が多すぎると、オルソフェライト等の非磁性の異相が多くなる。元素Mの含有量が少なすぎても多すぎても、磁気特性向上効果が不十分となる。
【0050】
上記磁石中において、A、R、FeおよびMの原子比は、
式I A1-xRx(Fe12-yMy)zO19
で表すことができる。上記式Iにおいて、x、yおよびzは、
0.04≦x≦0.9、
0.04≦y≦1.0、特に0.04≦y≦0.5、
0.4≦x/y≦5、
0.7≦z≦1.2
を外れないことが好ましい。
【0051】
上記式Iにおいて、xが小さすぎると、すなわち元素Rの量が少なすぎると、六方晶フェライトに対する元素Mの固溶量を多くできなくなってきて、飽和磁化向上効果および/または異方性磁場向上効果が不十分となってくる。xが大きすぎると六方晶フェライト中に元素Rが置換固溶できなくなってきて、例えば元素Rを含むオルソフェライトが生成して飽和磁化が低くなってくる。yが小さすぎると飽和磁化向上効果および/または異方性磁場向上効果が不十分となってくる。yが大きすぎると六方晶フェライト中に元素Mが置換固溶できなくなってくる。また、元素Mが置換固溶できる範囲であっても、異方性定数(K1)や異方性磁場(HA)の劣化が大きくなってくる。zが小さすぎるとSrおよび元素Rを含む非磁性相が増えるため、飽和磁化が低くなってくる。zが大きすぎるとα−Fe2O3相または元素Mを含む非磁性スピネルフェライト相が増えるため、飽和磁化が低くなってくる。
【0052】
上記式Iにおいて、x/yが小さすぎても大きすぎても元素Rと元素Mとの価数の平衡がとれなくなり、W型フェライト等の異相が生成しやすくなる。元素Mが2価イオンであって、かつ元素Rが3価イオンである場合、価数平衡の点でx/y=1とすることが一般的であるが、前述したようにRを過剰にすることが好ましい。なお、x/yが1超の領域で許容範囲が大きい理由は、yが小さくてもFe3+→Fe2+の還元によって価数の平衡がとれるためである。
【0053】
本発明による保磁力向上効果を十分に高いものとするためには、好ましくは
1≦x/yとし、より好ましくは
1<x/yとし、さらに好ましくは
1.3≦x/y
とすることが望ましい。ただし、x/yを大きくしていくと保磁力そのものが低くなってしまうため、好ましくは
x/y≦3とし、より好ましくは
x/y≦2
とする。
【0054】
なお、本発明により製造された磁石では高い比抵抗が得られるが、比抵抗の値は磁石組成によっても大きく影響を受ける。すなわち、本発明により比抵抗が向上するとは、従来の製造方法と本発明法とで同一組成の磁石を製造して比抵抗を比較した場合に、本発明法により製造された磁石がより高い比抵抗を示すことを意味する。上記式Iにおいて
0.04≦x≦0.9、
0.04≦y≦0.5、
0.9≦x/y≦1.4、
0.9≦z≦1.1
で表される比較的狭い組成範囲では、本発明の製造方法を利用することにより、保磁力が295kA/m以上380kA/m未満となるとき、25℃における磁化容易軸方向の比抵抗を0.5kΩm以上にでき、保磁力が380kA/m以上410kA/m以下となるとき、25℃における磁化容易軸方向の比抵抗を0.6kΩm以上にでき、保磁力が410kA/m超500kA/m以下となるとき、25℃における磁化容易軸方向の比抵抗を0.2kΩm以上にできる。
【0055】
組成を表わす上記式Iにおいて、酸素(O)の原子数は19となっているが、これは、Mがすべて2価、Rがすべて3価であって、かつx=y、z=1のときの酸素の化学量論組成比を示したものである。MおよびRの種類やx、y、zの値によって、酸素の原子数は異なってくる。また、例えば焼成雰囲気が還元性雰囲気の場合は、酸素の欠損(ベイカンシー)ができる可能性がある。さらに、FeはM型フェライト中においては通常3価で存在するが、これが2価などに変化する可能性もある。また、Co等の元素Mも価数が変化する可能性があり、これらにより金属元素に対する酸素の比率は変化する。本明細書では、Rの種類やx、y、zの値によらず酸素の原子数を19と表示してあるが、実際の酸素の原子数は、これから多少偏倚した値であってよい。
【0056】
磁石組成は、蛍光X線定量分析などにより測定することができる。また、上記主相の存在は、X線回折や電子線回折などにより確認できる。
【0057】
磁石の飽和磁化および保磁力を高くするためには、元素AとしてSrおよびCaの少なくとも1種を用いることが好ましく、特にSrを用いることが好ましい。A中においてSr+Caの占める割合、特にSrの占める割合は、好ましくは51原子%以上、より好ましくは70原子%以上、さらに好ましくは100原子%である。元素A中のSrの比率が低すぎると、飽和磁化向上と保磁力の著しい向上とを共に得ることができなくなる。
【0058】
元素Rとしては、好ましくはランタノイドの少なくとも1種、より好ましくは軽希土類の少なくとも1種、さらに好ましくはLa、NdおよびPrの少なくとも1種を用い、特にLaを必ず用いることが好ましい。R中においてLaの占める割合は、好ましくは40原子%以上、より好ましくは70原子%以上であり、飽和磁化向上のためにはRとしてLaだけを用いることが最も好ましい。これは、六方晶M型フェライトに対する固溶限界量を比較すると、Laが最も多いためである。したがって、R中のLaの割合が低すぎるとRの固溶量を多くすることができず、その結果、元素Mの固溶量も多くすることができなくなり、磁気特性向上効果が小さくなってしまう。なお、Biを併用すれば、仮焼温度および焼結温度を低くすることができるので、生産上有利である。
【0059】
元素Mとしては、少なくともCoおよびZnの1種以上、特にCoを必ず用いることが好ましい。M中においてCoの占める割合は、好ましくは10原子%以上、より好ましくは20原子%以上である。M中におけるCoの割合が低すぎると、保磁力向上が不十分となる。
【0060】
磁石には、B2O3が含まれていてもよい。B2O3を含むことにより仮焼温度および焼結温度を低くすることができるので、生産上有利である。B2O3の含有量は、磁石粉末全体の0.5質量%以下であることが好ましい。B2O3含有量が多すぎると、飽和磁化が低くなってしまう。
【0061】
磁石粉末中には、Na、KおよびRbの少なくとも1種が含まれていてもよい。これらをそれぞれNa2O、K2OおよびRb2Oに換算したとき、これらの含有量の合計は、磁石粉末全体の3質量%以下であることが好ましい。これらの含有量が多すぎると、飽和磁化が低くなってしまう。これらの元素をMIで表わしたとき、フェライト中においてMIは例えば
Sr1.3-2aRaMI a-0.3Fe11.7M0.3O19
の形で含有される。なお、この場合、0.3<a≦0.5であることが好ましい。aが大きすぎると、飽和磁化が低くなってしまう他、焼成時に元素MIが多量に蒸発してしまうという問題が生じる。
【0062】
また、これらのほか、例えばGa、In、Li、Mg、Cu、Ti、Zr、Ge、Sn、V、Nb、Ta、Sb、As、W、Mo等が酸化物として含有されていてもよい。これらの含有量は、化学量論組成の酸化物に換算して、それぞれ酸化ガリウム5質量%以下、酸化インジウム3質量%以下、酸化リチウム1質量%以下、酸化マグネシウム3質量%以下、酸化銅3質量%以下、酸化チタン3質量%以下、酸化ジルコニウム3質量%以下、酸化ゲルマニウム3質量%以下、酸化スズ3質量%以下、酸化バナジウム3質量%以下、酸化ニオブ3質量%以下、酸化タンタル3質量%以下、酸化アンチモン3質量%以下、酸化砒素3質量%以下、酸化タングステン3質量%以下、酸化モリブデン3質量%以下であることが好ましい。
【0063】
本発明により製造される磁石は、少なくとも2つの異なるキュリー温度を有するものであってもよい。この場合、これらのキュリー温度が400℃〜480℃の範囲に存在し、かつこれらの差の絶対値が5℃以上であることが好ましい。Coを含有する場合においてこのように複数のキュリー温度をもつ構造とすることで、角形性Hk/HcJが著しく改善されると共に、高価なCoやRの含有量を少なくすることが可能になる。このような磁石は、前記した後添加法により製造することができる。
【0064】
磁石の平均結晶粒径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5〜1.0μmであるが、本発明では平均結晶粒径が1μmを超えていても、十分に高い保磁力が得られる。結晶粒径は走査型電子顕微鏡によって測定することができる。
【0065】
本発明により製造されるフェライト焼結磁石では、高保磁力かつ高飽和磁化が実現する。そのため、これらの元素を含有しない従来のフェライト焼結磁石と同一形状であれば、発生する磁束密度を増やすことができるため、モータに適用した場合には高トルク化等を実現でき、スピーカーやヘッドホンに適用した場合には磁気回路の強化によりリニアリティーのよい音質が得られるなど、応用製品の高性能化に寄与できる。また、従来のフェライト焼結磁石と同じ機能でよいとすれば、磁石の大きさ(厚さ)を小さく(薄く)できるので、小型軽量化(薄型化)に寄与できる。また、従来は界磁用の磁石を巻線式の電磁石としていたようなモータにおいても、これをフェライト焼結磁石で置き換えることが可能となり、軽量化、生産工程の短縮、低価格化に寄与できる。さらに、保磁力(HcJ)の温度特性に優れているため、従来はフェライト焼結磁石の低温減磁(永久減磁)の危険のあった低温環境でも使用可能となり、特に寒冷地、上空域などで使用される製品の信頼性を著しく高めることができる。
【0066】
本発明により製造された磁石は所定の形状に加工され、下記に示すような幅広い用途に使用される。
【0067】
例えば、フュエルポンプ用、パワーウインド用、ABS用、ファン用、ワイパ用、パワーステアリング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータ;FDDスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VTRカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラジカセ等キャプスタン用、CD、LD、MDスピンドル用、CD、LD、MDローディング用、CD、LD光ピックアップ用等のOA、AV機器用モータ;エアコンコンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータ;ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用モータ;その他、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネットラッチ等に使用できる。
【0068】
【実施例】
実施例1(図4:パターンA)
出発原料としてSrCO3およびFe2O3を用い、これらをモル比で
SrCO3:Fe2O3=0.8:5.9
となるように秤量し、湿式アトライタで粉砕して混合した。得られた混合物をロータリーキルンにより空気中で仮焼して、仮焼体を得た。仮焼温度は1250℃、仮焼時間は3時間とした。
【0069】
この仮焼体を振動ミルで解砕した後、後添加物としてSiO2、CaCO3、水酸化ランタン[La(OH)3]および酸化コバルト(Co3O4とCoOとの混合物)を添加し、さらに分散剤としてソルビトールを添加し、水を媒体として湿式アトライタで粉砕して混合することにより、スラリーとした。なお、ソルビトールの添加量は原料粉末(出発原料+後添加物)全体に対し0.6質量%とし、SiO2およびCaCO3の添加量は、出発原料全体のそれぞれ0.6質量%および1.4質量%とした。また、水酸化ランタンおよび酸化コバルトの添加量は、最終組成におけるモル比が
(Sr0.8La0.2)(Fe11.8Co0.2)O19
となるように決定した。
【0070】
次いで、固形分濃度が約76%となるように上記スラリーを脱水濃縮して、成形用スラリーを得た。
【0071】
次いで、成形用スラリーを脱水しながら圧縮成形し、直径30mm、高さ18mmの成形体を得た。なお、圧縮成形の際には、加圧方向に平行な1Tの磁場を印加した。
【0072】
この成形体を空気中において100〜500℃に加熱して十分に脱脂し、次いで、空気中において焼結した後、室温まで降温し、焼結磁石サンプルを得た。
【0073】
焼結の際の温度変化パターンは、図3に示す基準パターンまたは図4に示すパターンAとした。これらのパターンにおいてT0は、焼結温度(安定温度)である。この実施例ではT0を1220℃とし、安定時間は1時間とした。パターンAにおいてT1は、降温速度が5℃/minから0.5℃/minに変化する温度である。パターンAでは、降温速度を0.5℃/minとした温度域が低速降温域である。パターンAにおけるT1は、表1に示す温度とした。なお、T1=0℃(サンプルNo.109)のときが、降温過程の全域において降温速度が5℃/minとなる基準パターンである。
【0074】
得られたサンプルの保磁力(HcJ)を、室温においてB−Hトレーサで測定した。各サンプルのHcJと、各サンプルのHcJから基準パターンで焼結したときのHcJを減じた値(△HcJ)を、それぞれ表1に示す。
【0075】
また、各サンプルの内部から2mm×2mm×10mmの角柱を切り出し、これについて、成形時の磁場印加方向(磁化容易軸方向)の比抵抗と、これに直交する方向(磁化困難軸方向)の比抵抗とを測定した。これらの結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1において、サンプルNo.102〜No.105では、600〜1000℃の温度範囲における低速降温域の持続時間が3時間以上である。そのため、これらのサンプルでは、基準パターンで焼結した基準サンプルNo.109に比べ保磁力が向上し、また、比抵抗、特に磁化容易軸方向の比抵抗が向上している。また、これらのうちサンプルNo.102〜No.103では、800〜900℃の温度範囲における低速降温域の持続時間が3時間以上であるため、保磁力および比抵抗の向上率が高い。
【0078】
一方、サンプルNo.101では、1000℃を超える温度範囲における低速降温域の持続時間が3時間を超えたため、保磁力向上は認められない。
【0079】
実施例2(図5:パターンB)
焼結工程における温度変化パターンを図5に示すパターンBとし、図5におけるT1を表2に示す温度としたほかは実施例1と同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。パターンBにおいてT1は、降温速度が5℃/minから0.1℃/minに変化する温度である。このパターンでは、降温速度を0.1℃/minとした温度域が低速降温域である。なお、降温速度を0.5℃/minとした温度域も低速降温域であるが、この温度域は600℃以下であるため、本発明には関係しない。
【0080】
これらのサンプルについて、実施例1と同様な測定を行った。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
表2のサンプルNo.201〜No.203では、600〜1000℃の温度範囲における低速降温域の持続時間が10時間以上である。そのため、これらのサンプルでは表1の基準サンプルNo.109に比べ保磁力が向上し、また、比抵抗、特に磁化容易軸方向の比抵抗が向上している。また、これらのうちサンプルNo.201では、800〜900℃の温度範囲における低速降温域の持続時間が10時間以上であるため、保磁力および比抵抗の向上率が高い。
【0083】
実施例3(図6:パターンC)
焼結工程における温度変化パターンを図6に示すパターンCとし、800〜900℃の温度範囲における降温速度を表3に示す値としたほかは実施例1と同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。このパターンでは、600〜800℃において降温速度を0.5℃/minとし、その持続時間は約6.7時間である。そのため、800〜900℃における降温速度によらず、本発明で限定する条件を満足する。
【0084】
これらのサンプルについて、実施例1と同様にしてHcJおよび磁化容易軸方向の比抵抗を測定した。結果を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
表3から、800〜900℃における降温速度を遅くするほど、すなわちこの温度範囲を通過する時間が長くなるほど、保磁力および比抵抗が高くなることがわかる。この結果から、800〜900℃の温度範囲内における降温速度の制御が重要であることがわかる。
【0087】
実施例4(図7:パターンD)
焼結工程における温度変化パターンを図7に示すパターンDとし、図7におけるT1を表4に示す温度としたほかは実施例1と同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。パターンDにおいてT1は、降温速度が5℃/minから0.05℃/minに変化する温度である。
【0088】
これらのサンプルについて、実施例1と同様にしてHcJの測定を行った。結果を表4に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
表4から、800〜900℃の温度範囲を通過する時間が長くなるほど、保磁力が高くなることがわかる。この結果から、800〜900℃の温度範囲内における降温速度の制御が重要であることがわかる。
【0091】
実施例5(図8:パターンE)
焼結工程における温度変化パターンを図8に示すパターンEとし、図8におけるT1を表5に示す温度としたほかは実施例1と同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。パターンEでは、降温速度0.05℃/minの低速降温域より高温側に、1100℃から始まる降温速度15℃/minの高速降温域を設けてあり、T1は、降温速度が15℃/minから0.05℃/minに変化する温度である。このパターンは、図7に示すパターンDに、高速降温域を付加したものである。
【0092】
これらのサンプルについて、実施例1と同様な測定を行った。結果を表5に示す。
【0093】
【表5】
【0094】
表4と表5との比較から、高速降温域を付加することにより保磁力の最大値が向上することがわかり、また、最大保磁力を得るために必要な温度T1が、高温側にシフトすることがわかる。また、900℃未満の温度まで急冷すると保磁力および比抵抗がかなり低下することから、800〜900℃の温度範囲を通過する時間が保磁力向上および比抵抗向上に大きく寄与することがわかる。
【0095】
実施例6(図9:温度変化パターンF)
焼結工程における安定温度T0を1230℃とし、かつ、焼結工程における温度変化パターンを図9に示すパターンFとしたほかは実施例1と同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。パターンFでは、900℃に一定時間保持する低速降温域を設け、そのほかの温度における降温速度は5℃/minとしてある。表6に、900℃における保持時間を示す。なお、保持時間が0時間(サンプルNo.604)のときは、降温過程の全域において降温速度が5℃/minとなる基準パターン(図3)である。
【0096】
これらのサンプルについて、実施例1と同様にしてHcJの測定を行った。結果を表6に示す。なお、表6に示す△HcJは、サンプルNo.604に対する保磁力の向上量である。
【0097】
【表6】
【0098】
表6から、900℃における保持時間を2時間以上としたサンプルNo.601、No.602において大きな保磁力向上が認められ、特に保持時間の長いサンプルNo.601では保磁力が顕著に向上している。
【0099】
なお、上記実施例1〜実施例6において、降温速度制御によって保磁力が向上したサンプルと基準ンプルNo.109との残留磁束密度を比較したところ、保磁力向上に伴う残留磁束密度低下は実質的に認められなかった。
【0100】
実施例7(図9〜図11:温度変化パターンF〜パターンH)
CaCO3の添加量を1.45質量%としたほかは実施例6(パターンF)と同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。
【0101】
また、焼結工程における温度変化パターンを、図10に示すパターンGまたは図11に示すパターンHとしたほかは上記サンプルと同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。
【0102】
また、焼結工程における温度変化パターンを、図3に示す基準パターンとしたほかは上記サンプルと同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。
【0103】
パターンF、パターンGおよびパターンHにおいて、900℃における保持時間はいずれも10時間とした。上記4種のパターンにおける焼結温度T0は、1230℃である。パターンGは、焼結温度から900℃までの温度域が降温速度11℃/minの高速降温域であることが、パターンFとの相違点である。一方、パターンHは、900℃から室温までの温度域が降温速度0.5℃/minの低速降温域であることが、パターンFとの相違点である。
【0104】
これらのサンプルについて、実施例1と同様にしてHcJの測定を行い、また、室温における残留磁束密度(Br)の測定を行った。結果を表7に示す。なお、表7に示す△HcJは、基準パターンで焼結したサンプルNo.704に対する保磁力の向上量である。
【0105】
【表7】
【0106】
表7において、焼結温度から900℃までの温度域を高速で降温するパターンGを利用したサンプルNo.702では、パターンFを利用したサンプルNo.701に比べ、保磁力が著しく向上している。この結果から、900℃を超える温度域に高速降温域を設けることによる効果が明らかである。
【0107】
また、900℃で10時間保持後に低速で降温するパターンHを利用したサンプルNo.703では、900℃で10時間保持だけを行うパターンFを利用したサンプルNo.701に比べ、保磁力が著しく向上している。
【0108】
実施例8(図5:パターンB)
出発原料混合時に、出発原料の0.7質量%のAl2O3を添加し、また、焼結温度T0を1230℃としたほかは実施例2(パターンB)と同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。このサンプルの組成をC1とする。
【0109】
また、後添加物として添加するSiO2の添加量を、出発原料全体の0.46質量%とし、また、水酸化ランタンおよび酸化コバルトの添加量を、最終組成におけるモル比が
(Sr0.77La0.23)(Fe11.8Co0.2)O19
となるように決定し、また、焼結温度T0を1230℃としたほかは実施例2(パターンB)と同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。このサンプルの組成をC2とする。
【0110】
各サンプルについて、パターンBにおける温度T1を表8に示す。
【0111】
これらのサンプルについて、実施例1と同様な測定を行った。結果を表8に示す。なお、表8に示す△HcJは、組成C1のものではサンプルNo.804を基準とした向上量であり、組成C2のものではサンプルNo.807を基準とした向上量である。
【0112】
【表8】
【0113】
表8から、本発明はさまざまな組成の磁石に対して有効であることがわかる。
【0114】
実施例9(図8:パターンE)
後添加物として水酸化ランタンおよび酸化コバルトを添加せず、替わりに出発原料として酸化ランタンおよび酸化コバルトを用い、最終組成を
Sr1-xLax(Fe12-yCoy)zO19
で表したときにx、yおよびzが表9に示す値となるように酸化ランタンおよび酸化コバルトの添加量を決定したほかは実施例5(パターンE)と同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。ただし、パターンEにおける焼結温度T0は1230℃、温度T1は900℃とした。
【0115】
これらのサンプルについて、実施例1と同様にしてHcJおよび比抵抗を測定した。結果を表9に示す。
【0116】
また、比較のために、上記各サンプルとそれぞれ組成を同じとし、かつ、焼結工程における温度変化パターンを図3に示す基準パターン(T0=1230℃)として作製した焼結磁石についても、HcJを測定した。これらの焼結磁石のHcJを、その組成における基準HcJとして表9に併記する。表9に示す△HcJは、各サンプルのHcJからその組成における基準HcJを減じた値である。また、これらの焼結磁石の比抵抗を、その組成における基準比抵抗として表9に併記する。
【0117】
【表9】
【0118】
表9から、本発明はさまざまな組成の磁石に対して有効であることがわかり、また、本発明が特に有効な磁石組成が存在することがわかる。
【0119】
表9において本発明により製造されたサンプルは、比抵抗の値自体は小さいが、基準比抵抗と比較すれば著しい向上が認められるので、本発明の効果が明らかである。なお、表9に示すサンプルにおいて比抵抗の値が小さくなったのは、
Sr1-xLax(Fe12-yCoy)zO19
においてx≠yzであり、また、z≠1であるために、Fe2+の生成量が多くなった結果と考えられる。
【0120】
実施例10(図8:パターンE)
後添加物として水酸化ランタンおよび酸化コバルトを添加せず、替わりに出発原料として酸化ランタンおよび酸化コバルトを用い、最終組成が
Sr0.87La0.13(Fe11.902Co0.098)1.02O19
となるようにこれらの添加量を決定し、かつ、焼結助剤であるCaCO3およびSiO2を、質量比(CaCO3/SiO2)および合計添加量(CaCO3+SiO2)が表10に示す値となるように添加したほかは実施例5(パターンE)と同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。ただし、仮焼温度は1170℃とし、また、パターンEにおける焼結温度T0は1200℃、温度T1は900℃とした。
【0121】
これらのサンプルについて、実施例1と同様にしてHcJを測定した。結果を表10に示す。
【0122】
また、比較のために、上記各サンプルとそれぞれ組成を同じとし、かつ、焼結工程における温度変化パターンを図3に示す基準パターン(T0=1200℃)として作製した焼結磁石についても、HcJを測定した。これらの焼結磁石のHcJを、その組成における基準HcJとして表10に併記する。表10に示す△HcJは、各サンプルのHcJからその組成における基準HcJを減じた値である。
【0123】
【表10】
【0124】
表10から、本発明は焼結助剤添加パターンをさまざまに変化させても有効であることがわかり、また、本発明が特に有効となる焼結助剤添加パターンが存在することがわかる。
【0125】
実施例11(図9:パターンF)
以下の手順で、LaおよびCoのいずれも含有しないフェライト焼結磁石サンプルを作製した。
【0126】
モル比で
SrCO3:Fe2O3=1:6
となるようにSrCO3とFe2O3とを秤量し、湿式アトライタで粉砕して混合した。得られた混合物をロータリーキルンにより空気中で仮焼して、仮焼体を得た。仮焼温度は1250℃、仮焼時間は3時間とした。
【0127】
この仮焼体を振動ミルで解砕した後、SiO2およびCaCO3を添加し、水を媒体として湿式アトライタで粉砕して混合することにより、スラリーとした。なお、SiO2およびCaCO3の添加量は、出発原料全体のそれぞれ0.6質量%および1.4質量%とした。
【0128】
これ以降は実施例1と同様にして成形体を得た。この成形体を空気中において焼結した後、室温まで降温し、焼結磁石サンプルを得た。降温の際の温度変化パターンは、実施例6と同様に、図9に示すパターンFとした。表11に、900℃における保持時間を示す。なお、保持時間が0時間(サンプルNo.1104)のときは、降温過程の全域において降温速度が5℃/minとなる基準パターン(図3)である。
【0129】
これらのサンプルについて、実施例1と同様にしてHcJの測定を行った。結果を表11に示す。なお、表11に示す△HcJは、サンプルNo.1104に対する保磁力の向上量である。
【0130】
【表11】
【0131】
表11から、900℃における保持時間を2時間以上としたサンプルNo.1101、No.1102において、大きな保磁力向上が認められることがわかる。
【0132】
実施例12(図7:パターンDおよびパターンE)
最終組成が、
Sr1-xLax(Fe12-yCoy)zO19
において
x=0.3、
yz=0.2
となり、かつ、zが表12に示す値となるようにし、かつ、焼結助剤であるSiO2の添加量を0.6質量%、CaCO3の添加量を表12に示す値とし、焼結時の温度制御を図7に示すパターンDまたは図8に示すパターンEとし、パターンDおよびパターンEのいずれにおいても、焼結温度T0を1220℃、温度T1を900℃として、フェライト焼結磁石サンプルを作製した。
【0133】
これらのサンプルについて、室温においてHcJおよびBrの測定を行った。結果を表12および表13に示す。
【0134】
また、比較のために、上記各サンプルとそれぞれ組成を同じとし、かつ、焼結工程における温度変化パターンを図3に示す基準パターン(T0=1220℃)として作製した焼結磁石についても、HcJおよびBrを測定した。これらの焼結磁石のHcJおよびBrを、その組成における基準HcJおよび基準Brとしてそれぞれ表12および表13に併記する。なお、表12に示す△HcJは、各サンプルのHcJからその組成における基準HcJを減じた値であり、表13に示す△Brは、各サンプルのBrからその組成における基準Brを減じた値である。
【0135】
【表12】
【0136】
【表13】
【0137】
表12から、本発明はさまざまな組成の磁石に対して有効であることがわかる。また、表13から、本発明を適用したことによるBrの低下(△Br)はほとんど認められないことがわかる。すなわち、ほとんどのサンプルにおいて、△Brは測定誤差(約3mT)以下となっており、△Brが測定誤差を大きく超えるサンプルはない。
【0138】
実施例13
最終組成が、
Sr1-xLax(Fe12-yCoy)zO19
においてz=1となり、かつ、x、yおよびx/yが表14に示す値となるようにし、かつ、焼結助剤であるSiO2およびCaCO3の添加量をそれぞれ0.6質量%および1.4質量%となるようにし、焼結時の温度制御を図7に示すパターンDまたは図8に示すパターンEとし、パターンDおよびパターンEのいずれにおいても焼結温度T0を1220℃、温度T1を900℃として、フェライト焼結磁石サンプルを作製した。
【0139】
これらのサンプルについて、室温においてHcJの測定を行った。結果を表14に示す。
【0140】
また、比較のために、上記各サンプルとそれぞれ組成を同じとし、かつ、焼結工程における温度変化パターンを図3に示す基準パターン(T0=1220℃)として作製した焼結磁石についても、HcJを測定した。これらの焼結磁石のHcJを、その組成における基準HcJとして表14に併記する。なお、表14に示す△HcJは、各サンプルのHcJからその組成における基準HcJを減じた値である。
【0141】
【表14】
【0142】
表14から、
Sr1-xLax(Fe12-yCoy)zO19
で表される磁石組成においてxをyより大きくすることにより、より優れた保磁力向上効果が得られることがわかる。
【0143】
実施例14
次に、上記実施例で作製したサンプルから下記表15に示すものを選んだ。これらのサンプル製造時の低速降温域の設定を、徐冷条件として表15に示す。徐冷条件に△5℃とあるのは、降温速度5℃/minということである。
【0144】
これら各サンプルの粒界三重点の結晶化の有無および組成を、透過型電子顕微鏡(TEM)により調べた。結晶化の有無については、電子線回折像において格子点が認められれば結晶化しているとし、格子点が見られずハロー状になっていれば非晶質であると判断した。組成は、TEMに装着されたエネルギー分散型X線分光器(TEM−EDS)により調べた。分析対象の三重点は、各サンプルにつき10箇所以上とした。結果を表15に示す。
【0145】
なお、組成分析の結果、三重点の組成は、表15に示す組成I〜組成VIに分類できることがわかった。表15には、測定対象の三重点に対する組成I〜組成VIのそれぞれに該当する三重点の数の比と、測定対象の三重点のうち結晶化していたものの比率とをそれぞれ示してある。
【0146】
【表15】
【0147】
表15から、本発明におけるHcJ向上効果を考察した。HcJが最大であるサンプルNo.301は、900℃からの徐冷により生成したと考えられる結晶化した三重点の比率が高くなっている。また、1000℃から徐冷したサンプルNo.102も、結晶化した三重点の比率が高くなっている。以上から、HcJ向上のためには結晶化した三重点が多いことが必要と考えられる。
【0148】
低速降温域を設けない従来の方法により製造した比較サンプルNo.109について、三重点付近の透過型電子顕微鏡写真と、その三重点の電子線回折像を図12に示す。また、本発明法により製造したサンプルNo.301について、三重点付近の透過型電子顕微鏡写真と、その三重点の電子線回折像を図13に示す。図12の電子線回折像はハロー状であり、比較サンプルNo.109の三重点が非晶質であることがわかる。これに対し図13の電子線回折像はスポット状であり、サンプルNo.301の三重点が結晶化していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼結工程に低速降温域を設けた場合の温度変化パターンを説明するためのグラフである。
【図2】焼結工程に低速降温域および高速降温域を設けた場合の温度変化パターンを説明するためのグラフである。
【図3】従来の焼結工程の温度変化パターンを説明するためのグラフである。
【図4】実施例における焼結工程の温度変化パターンを説明するためのグラフである。
【図5】実施例における焼結工程の温度変化パターンを説明するためのグラフである。
【図6】実施例における焼結工程の温度変化パターンを説明するためのグラフである。
【図7】実施例における焼結工程の温度変化パターンを説明するためのグラフである。
【図8】実施例における焼結工程の温度変化パターンを説明するためのグラフである。
【図9】実施例における焼結工程の温度変化パターンを説明するためのグラフである。
【図10】実施例における焼結工程の温度変化パターンを説明するためのグラフである。
【図11】実施例における焼結工程の温度変化パターンを説明するためのグラフである。
【図12】結晶構造を表す図面代用写真であって、a)は、従来の方法により製造された焼結体の三重点付近の透過型電子顕微鏡写真であり、b)は、前記三重点の電子線回折像である。
【図13】結晶構造を表す図面代用写真であって、a)は、本発明法により製造された焼結体の三重点付近の透過型電子顕微鏡写真であり、b)は、前記三重点の電子線回折像である。
Claims (3)
- 焼結工程を有し、この焼結工程の降温過程に、低速降温域と前記低速降温域よりも高温度側に高速降温域とを設け、
前記低速降温域は、降温速度が0℃/min以上1℃/min未満であり、この低速降温域の持続時間を、600〜1000℃の温度範囲内において2時間以上とし、かつ、1000℃を超える温度範囲内において0〜3時間とし、
前記高速降温域は、前記降温過程の少なくとも900℃以上焼結温度以下の温度範囲内に、降温速度が5℃/min以上である領域を温度幅50℃以上にわたって設けるものである六方晶フェライトの製造方法。 - 前記高速降温域における降温速度を10℃/min以上とする請求項1の六方晶フェライト焼結体の製造方法。
- 前記六方晶フェライト焼結体が、Fe、元素A(Aは、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種)、元素R(Rは、希土類元素およびBiか ら選択される少なくとも1種)および元素M(Mは、Co、Mn、NiおよびZnから選択される少なくとも1種)を含有し、六方晶マグネトプランバイト型 フェライトを主相として有する焼結磁石である請求項1又は2のいずれかの六方晶フェライト焼結体の製造方法。
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