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JP4036596B2 - 5,11,14−エイコサトリエン酸及び/又は5,11,14,17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質及びその製造方法 - Google Patents

5,11,14−エイコサトリエン酸及び/又は5,11,14,17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アラキドン酸生産能を有する微生物をΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養することにより、5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸、あるいはこれらを構成成分として含有する脂質を採取することを特徴とする5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸、又はこれらを構成成分として含有する脂質の製造方法、並びに5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質又はトリグリセリド、特に5, 11, 14−エイコサトリエン酸を12重量%以上含有する脂質又はトリグリセリド、及びこれらを含有する組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
5, 11, 14−エイコサトリエン酸や5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸は、二重結合の配置が非メチレン介在型である高度不飽和脂肪酸であり、アラキドン酸やエイコサペンタエン酸(EPA)の作用と拮抗すると考えられ、その生理作用が期待されている。現在、これらの生理作用の解明が進みつつあるが、5, 11, 14−エイコサトリエン酸と5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸は、それぞれ異なる作用を持っていると考えられている(Ikeda ら、 Lipids, 27, 500-504, 1992。菅野 食品と開発, 34, 4-8, 1999 )。
【0003】
5, 11, 14−エイコサトリエン酸や5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸は、天然界ではナギ種子、ニオイヒバ(ビオタ)種子、イチイ種子、ハマグリやヒトデなどに存在することが知られているが、これらは供給量が乏しく不安定な上、高価で実用的でない。その上、5, 11, 14−エイコサトリエン酸や5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の含量が低い点、また必ず両者とも含まれており、その組成を制御できない点にも問題がある。
【0004】
また、これらの脂肪酸を濃縮する方法として、ニオイヒバ(ビオタ)種子の油脂を分解して得た5, 11, 14−エイコサトリエン酸や5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有する遊離脂肪酸を、Candida 由来のリパーゼを用いて濃縮する方法が知られているが(Jie MSFLK ら、J. Am. Oil Chem. Soc., 72, 245-249 (1995) )、やはり上記の問題があるとともに、遊離脂肪酸しか得られないことやコストの面などに問題がある。
微生物による製造方法としては、アラキドン酸生産能を有しかつΔ6不飽和化活性の低下した微生物を利用した製造方法が知られているが(特開平5−276964)、Δ6不飽和化活性の低下している度合いがそれほど顕著でないために、生産量や含量が低く、必ずしも実用的ではなかった。
【0005】
Δ6不飽和化反応を阻害する化合物については、動物で−イソペントキシアニリン(p-isopentoxyaniline )が阻害作用を持ち(Obukowicz MGら,Biochem. Pharmacol., 55, 1045-1058 (1998) )、またSC-26196やニフェジピン(nifedipine)がラット肝臓ミクロソーム画分を用いたin vitro実験で阻害作用を持つが(Obukowicz MGら、J. Pharmacol. Exp. Ther., 287, 157-166 (1998) ;河島ら、Biosci. Biotech. Biochem., 60, 1672-1676 (1996) )、これらの化合物はすべて、動物又は動物のミクロソーム画分に対する作用が知られているのみであった。
【0006】
微生物に関しては、モルティエレラ属糸状菌の培養の際に没食子酸プロピル(propyl gallate)を添加することによりΔ5不飽和化反応とΔ6不飽和化反応が同時に阻害できること(河島ら、Biochim. Biophys. Acta, 1299, 34-38 (1996))が知られていた。しかしこの場合、5, 11, 14−エイコサトリエン酸や5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の蓄積は認められなかった。5, 11, 14−エイコサトリエン酸が生成するためには、リノール酸が鎖長延長、及びΔ5 不飽和化の2つの反応を受ける必要があるが、没食子酸プロピル(propyl gallate)を添加した場合、Δ5 不飽和化反応も強く阻害するために5, 11, 14−エイコサトリエン酸が生成しなかったと考えられる。
【0007】
すなわち、微生物について、その培養の際に培地に添加することによりΔ6不飽和化反応を特異的に阻害し、その結果菌体内に5, 11, 14−エイコサトリエン酸や5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を蓄積させるような作用を持った化合物は知られていなかった。
このように、5, 11, 14−エイコサトリエン酸や5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸、又はこれらを構成成分として含有する脂質の生産効率の高い製造方法、並びに5, 11, 14−エイコサトリエン酸の含量が高い脂質又はトリグリセリド、及びこれらを含有する組成物の開発が強く望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は、5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸、又はこれらを構成成分として含有する脂質の製造方法、並びに5, 11, 14−エイコサトリエン酸を構成成分として含有する脂質又はトリグリセリド、及びこれらを含有する組成物を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成するために種々研究した結果、微生物の培養においてΔ5 不飽和化反応にほとんど影響を与えず、Δ6不飽和化反応のみを特異的に阻害する化合物が存在することを見い出した。このような化合物として、3’,4’−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール等のメチレンジオキシフェニル基をもつ化合物や、パラクマル酸エステル、パラアニシジン(p-anisidine )が挙げられる。
【0010】
これらを添加した培地でアラキドン酸生産能を有する微生物を培養することにより、Δ6不飽和化反応の基質であるリノール酸が蓄積し、そのリノール酸が鎖長延長化反応により11, 14−エイコサジエン酸に変換され、さらにこの脂肪酸がΔ5不飽和化反応によって5, 11, 14−エイコサトリエン酸に変換され、この脂肪酸を含有する脂質が菌体内に生成蓄積されること、
【0011】
その際、培地にα−リノレン酸もしくはその誘導体及び/又は11, 14, 17−エイコサトリエン酸もしくはその誘導体、あるいはこれらを構成成分として含有する油脂を添加することにより、α−リノレン酸が鎖長延長化反応により11, 14, 17−エイコサトリエン酸に変換され、さらにこの脂肪酸がΔ5不飽和化反応によって5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸に変換され、5,11,14−エイコサトリエン酸と5,11,14,17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質が菌体内に生成蓄積されること、あるいは
【0012】
Δ6不飽和化反応のみを特異的に阻害する化合物を添加した培地でアラキドン酸生産能を有する微生物を20℃よりも低い温度で培養することにより、前述のごとく生成された5, 11, 14−エイコサトリエン酸がさらにω3不飽和化反応によって5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸に変換され、5, 11, 14−エイコサトリエン酸と5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質が菌体内に生成蓄積されること、
を本発明者らは見い出し、本発明を完成した。
【0013】
さらに本発明者等は、菌体内のリノール酸/γ―リノレン酸の比を30以上に保ち続けることにより、リノール酸から11, 14−エイコサジエン酸への変換が、γ―リノレン酸からジホモ−γ−リノレン酸への変換よりも十分優先して進行し、その結果として著量の5, 11, 14−エイコサトリエン酸を含有する脂質が生成することを見い出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち本発明は、アラキドン酸生産能を有する微生物を、Δ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、そして培養物から脂質を採取することを特徴とする5, 11, 14−エイコサトリエン酸含有脂質の製造方法;
アラキドン酸生産能を有する微生物を、Δ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、培養物から脂質を採取し、そして該脂質からトリグリセリドを分離精製することを特徴とする5, 11, 14−エイコサトリエン酸を含有するトリグリセリドの製造方法;及び
【0015】
アラキドン酸生産能を有する微生物を、Δ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、培養物から脂質を採取し、そして該脂質から5, 11, 14−エイコサトリエン酸を分離精製することを特徴とする5, 11, 14−エイコサトリエン酸の製造方法;並びに、
前記の製造方法においてアラキドン酸生産能を有する微生物を、飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、11, 14−エイコサジエン酸のいずれか、もしくはこれらの誘導体、又はこれらを構成成分として含有する油脂をさらに添加した培地で培養することを特徴とする製造方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、アラキドン酸生産能を有する微生物を、α−リノレン酸もしくはその誘導体及び/又は11, 14, 17−エイコサトリエン酸もしくはその誘導体、あるいはこれらを構成成分として含有する油脂を添加し、さらにΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、そして培養物から脂質を採取することを特徴とする5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸含有脂質の製造方法を提供する。
本発明はまた、アラキドン酸生産能を有する微生物を、Δ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で20℃よりも低い温度で培養し、そして培養物から脂質を採取することを特徴とする5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸含有脂質の製造方法を提供する。
【0017】
本発明はさらに、アラキドン酸生産能を有する微生物を、菌体内のリノール酸/γ―リノレン酸の比を30以上に保ちながら培養するか、あるいはアラキドン酸生産能を有する微生物から得られたリノール酸/γ―リノレン酸の比が30以上であるΔ6不飽和化反応が低下した微生物を培養し、そして培養物から脂質を採取することを特徴とする5, 11, 14−エイコサトリエン酸を12重量%以上含有する脂質の製造方法を提供する。
【0018】
本発明はさらに、3’,4’−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール等のメチレンジオキシフェニル基をもつ化合物や、パラクマル酸エステル、パラアニシジン(p-anisidine )を含有するアラキドン酸生産能を有する微生物のΔ6不飽和化反応阻害剤を提供する。
【0019】
本発明はさらに、脂質中の全脂肪酸に対して5, 11, 14−エイコサトリエン酸の含量が15重量%以上である5, 11, 14−エイコサトリエン酸を含有する脂質、及び脂質中の全脂肪酸に対して5, 11, 14−エイコサトリエン酸の含量が15重量%以上、かつ5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の含量が0.1重量%以下である5, 11, 14−エイコサトリエン酸を含有する脂質、
【0020】
トリグリセリド中の全脂肪酸に対して5, 11, 14−エイコサトリエン酸の含量が12重量%以上である5, 11, 14−エイコサトリエン酸を含有するトリグリセリド、トリグリセリド中の全脂肪酸に対して5, 11, 14−エイコサトリエン酸の含量が12重量%以上、かつ5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の含量が0.1重量%以下である5, 11, 14−エイコサトリエン酸を含有するトリグリセリド、
さらに、上記脂質又はトリグリセリドを含有する組成物を提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明においては、アラキドン酸生産能を有する微生物であれば、すべて使用することができる。アラキドン酸生産能を有する微生物としては、モルティエレラ(Mortierella )属、コニディオボラス(Conidiobolus)属、フィチウム(Pythium )属、フィトフトラ(Phytophthora)属、ペニシリューム(Penicillium )属、クラドスポリューム(Cladosporium)属、ムコール(Mucor )属、フザリューム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus )属、ロードトルラ(Rhodotorula )属、エントモフトラ(Entomophthora )属、エキノスポランジウム(Echinosporangium)属、サプロレグニア(Saprolegnia )属に属する微生物を挙げることができる。
【0022】
モルティエレラ(Mortierella )属モルティエレラ(Mortierella )亜属に属する微生物では、例えばモルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)、モルティエレラ・フィグロフィラ(Mortierella hygrophila)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)等を挙げることができる。
【0023】
具体的にはモルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)IFO8570 、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)IFO8571 、モルティエレラ・フィグロフィラ(Mortierella hygrophila)IFO5941 、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568 、ATCC16266 、ATCC32221 、ATCC42430 、CBS219.35 、CBS224.37 、CBS250.53 、CBS343.66 、CBS527.72 、CBS529.72 、CBS608.70 、CBS754.68 等の菌株を挙げることができる。
【0024】
これらの菌株はいずれも、大阪市の財団法人醗酵研究所(IFO )、及び米国のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection, ATCC)及び、Centrralbureau voor Schimmelcultures(CBS )からなんら制限なく入手することができる。また本発明の研究グループが土壌から分離した菌株モルティエレラ・エロンガタSAM0219 (微工研菌寄第8703号)(微工研条寄第1239号)を使用することもできるが、これらの菌株に限定しているわけではない。これらのタイプカルチャーに属する菌株、あるいは自然界から分離した菌株をそのまま用いることができるが、増殖及び/又は単離を1回以上行うことによって得られる元の菌株とは性質の異なる自然突然変異株を用いることもできる。
【0025】
また本発明において、アラキドン酸生産能を有する微生物から得られたΔ6不飽和化活性が低下した微生物を使用することができる。すなわちアラキドン酸生産能を有する微生物から得られたΔ6不飽和化活性が低下した微生物を、Δ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養することにより、脂質又はトリグリセリド中の5,11,14-エイコサトリエン酸及び/又は5,11,14,17- エイコサテトラエン酸の割合を高めることが可能となる。
【0026】
また、該Δ6不飽和化活性が低下した微生物の中でも、菌体内のリノール酸/γ―リノレン酸の比が30以上である微生物を用いることによって、Δ6不飽和化反応阻害剤を培地に添加しなくても、5, 11, 14−エイコサトリエン酸を著量含有する脂質を得ることができる。このようなΔ6不飽和化活性が低下した微生物は、上記アラキドン酸生産能を有する微生物を用いて、例えば以下に記載する変異処理によって得ることができる。また、アラキドン酸生産能を有する微生物のΔ6不飽和化反応に関与する酵素の活性を低下または欠失させる遺伝子操作によっても得ることができる。その例として、該酵素をコードする遺伝子のノックアウトや、アンチセンスによる不活化などが挙げられるが、これらの方法に限定しているわけではない。
【0027】
さらに本発明には、5,11,14−エイコサトリエン酸及び/又は、5,11,14,17−エイコサテトラエン酸の脂質又はトリグリセリド中の割合を高めるため、上記アラキドン酸生産能を有する微生物又はこの微生物から得られるΔ6不飽和化活性が低下した微生物に対して、変異処理や遺伝子操作を施すことによって得られる鎖長延長活性やΔ5不飽和化活性が強化された微生物の使用も包含される。
【0028】
本発明において変異処理は、放射線(X線、ガンマー線、中性子線)照射や紫外線照射、高熱処理等を行ったり、また微生物を適当なバッファー中などに懸濁し、変異原を加えて一定時間インキュベート後、適当に希釈して寒天培地に植菌し、変異株のコロニーを得るといった一般的な突然変異操作を行うこともできる。
【0029】
変異原としては、ナイトロジェンマスタード、メチルメタンサルホネートやN-メチル-N'-ニトロ-N- ニトロソグアニジン(NTG )等にアルキル化剤、5-ブロモウラシル等の塩基類似体、マイトマイシンC 等の抗生物質、6-メルカプトプリン等の塩基合成阻害剤、プロフラビン等の色素類、4-ニトロキノリン-N- オキシド等のある種の発がん剤、塩化マンガン、ホルムアルデヒド等の化合物を挙げることができる。前記突然変異操作によって得られたコロニーは一般的な方法に従って菌体内の脂肪酸組成を分析し、Δ6不飽和化反応が低下した菌を選択する。
【0030】
例えば本発明の変異株として、本発明の研究グループが突然変異処理を施して得たΔ6不飽和化活性の低下した菌株モルティエレラ・アルピナSAM1969 (微工研菌寄第12901 号)を使用することもできるが、これらの菌株に限定しているわけではない。
本発明に使用される菌株を培養する為には、その菌株の胞子、菌糸、又は予め培養して得られた前培養液を、液体培地又は固体培地に接種し培養する。液体培地の場合に、炭素源としてはグルコース、フラクトース、キシロース、サッカロース、マルトース、可溶性デンプン、糖蜜、グリセロール、マンニトール等の一般的に使用されているものが、いずれも使用できるが、これらに限られるものではない。
【0031】
窒素源としてはペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、カザミノ酸、コーンスティープリカー、大豆タンパク、脱脂ダイズ、綿実カス等の天然窒素源の他に、尿素等の有機窒素源、ならびに硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等の無機窒素源を用いることができる。この他必要に応じリン酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸銅等の無機塩及びビタミン等も微量栄養源として使用できる。
【0032】
これらの培地成分は微生物の生育を害しない濃度であれば特に制限はない。実用上一般に、炭素源は0.1 〜40重量% 、好ましくは1〜25重量% の濃度とするのが良い。炭素源は培養途中に逐次流加しても構わない。又、初発の窒素源添加量は0.1〜10重量% 、好ましくは0.1〜6重量% とし、培養途中に窒素源を流加しても構わない。
【0033】
本発明に使用するΔ6不飽和化反応阻害剤は、使用する微生物のΔ6不飽和化反応を特異的に阻害し5, 11, 14−エイコサトリエン酸や5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を蓄積させる化合物をすべて使用できる。好ましくは、11, 14−エイコサジエン酸を5, 11, 14−エイコサトリエン酸へ変換するΔ5不飽和化反応、及び11, 14, 17−エイコサトリエン酸を5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸へ変換するΔ5不飽和化反応を進行させるために、Δ5不飽和化反応阻害作用が小さい方がよい。このような化合物として、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0034】
【化1】
Figure 0004036596
【0035】
【化2】
Figure 0004036596
【0036】
【化3】
Figure 0004036596
【0037】
メチレンジオキシフェニル基をもつ化合物としては、3’,4’−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロールが好ましく、またパラクマル酸エステルとしてはパラクマル酸メチルエステルが好ましい。
Δ6不飽和化反応阻害剤の総添加量は、微生物の生育を害しない濃度であれば特に制限はない。実用上一般に、培地に対して0.0001〜10重量% 、好ましくは0.01〜10重量% である。
【0038】
これらのΔ6不飽和化反応阻害剤は微生物を接種する前又はその直後に加えてもよく、又は培養を開始した後に加えてもよく、あるいは両時点で加えてもよい。培養開始後の添加は1 回でもよく、又は複数回に分けて間欠的に添加してもよい。あるいは、連続的に添加することもできる。Δ6不飽和化反応阻害剤は単独で使用してもよく、複数の化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本発明の微生物の培養温度は使用する微生物によりことなるが、5〜40℃、好ましくは10〜30℃とする。また5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を実質的に含有せず5, 11, 14−エイコサトリエン酸を含有する脂質を生産させる場合の培養温度は、20℃以上の温度、好ましくは20〜40℃、より好ましくは20〜30℃とする。なお実質的に含有しないとは、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸が脂質中の全脂肪酸に対して0.1重量%以下の場合を意味する。
【0040】
ただしこの温度で培養する場合でも培地に5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の前駆体であるα−リノレン酸もしくはその誘導体及び/又は11, 14, 17−エイコサトリエン酸もしくはその誘導体、あるいはこれらを構成成分として含有する油脂を添加して培養した場合には、5, 11, 14,17−エイコサテトラエン酸も生産される。
【0041】
さらに、α−リノレン酸もしくはその誘導体及び/又は11, 14, 17−エイコサトリエン酸もしくはその誘導体、あるいはこれらを構成成分として含有する油脂を培地に添加せずに5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を生産させる場合の培養温度は、20℃よりも低い温度、好ましくは5℃以上20℃よりも低い温度、より好ましくは10℃以上20℃よりも低い温度とする。
培地のpHは4 〜10、好ましくは5〜9 として通気攪拌培養、振盪培養、又は静置培養を行う。培養は通常2 〜30日間、好ましくは5 〜20日間、より好ましくは5 〜15日間行う。
【0042】
固体培養で培養する場合は、固形物重量に対して50〜100 重量% の水を加えたふすま、もみがら、米ぬか等を用い、5 〜40℃、好ましくは前記の温度において、3 〜14日間培養を行う。この場合に必要に応じて培地中に窒素源、無機塩類、微量栄養源を加えることができる。
【0043】
本発明においては、5, 11, 14−エイコサトリエン酸の前駆体として飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、11, 14−エイコサジエン酸のいずれか、もしくはこれらの誘導体、あるいはこれらを構成成分として含有する油脂を培地に添加することによって、5, 11, 14−エイコサトリエン酸の生産を増加させることができる。また、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の前駆体としてα−リノレン酸もしくはその誘導体及び/又は11, 14, 17−エイコサトリエン酸もしくはその誘導体、あるいはこれらを構成成分として含有する油脂を培地に添加することによって、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を生産させることができる。
【0044】
それぞれの場合において前駆体の総添加量は培地に対して0.001 〜10重量% 、好ましくは0.5 〜10重量% である。これらの前駆体は生産微生物を接種する前又はその直後に加えてもよく、又は培養を開始した後に加えてもよく、あるいは両時点で加えてもよい。培養開始後の添加は1 回でもよく、又は複数回に分けて間欠的に添加してもよい。あるいは、連続的に添加することもできる。
【0045】
また、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の生産の有無に関わりなく、5, 11, 14−エイコサトリエン酸の生成量を高めるために、その基質を添加することができる。基質としては、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の炭化水素、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸等の脂肪酸又はその塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)及びエステル、又は脂肪酸が構成成分として含まれる油脂(例えば、オリーブ油、サフラワー油、パーム油)等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。
【0046】
基質の総添加量は培地に対して0.001 〜10重量% 、好ましくは0.5 〜10重量% である。これらの基質は生産微生物を接種する前又はその直後に加えてもよく、又は培養を開始した後に加えてもよく、あるいは両時点で加えてもよい。培養開始後の添加は1 回でもよく、又は複数回に分けて間欠的に添加してもよい。あるいは、連続的に添加することもできる。
【0047】
また、5,11,14-エイコサトリエン酸及び/又は5,11,14,17- エイコサテトラエン酸を含有する脂質又はトリグリセリドを商品化が可能な収率で得るには、液体培地を用い、通気撹拌培養が好ましく、通常の撹拌式発酵槽、あるいは気泡塔型培養装置を使用することもできる。通気量としては0.1〜3 vvmが、撹拌速度としては10〜500 rpmが望ましい。
【0048】
このように培養して、菌体内に5,11,14-エイコサトリエン酸及び/又は5,11,14,17- エイコサテトラエン酸を含有する脂質が生成蓄積される。液体培地を使用した場合には、菌体培養によって脂質を製造する途中の培養液もしくはその殺菌した培養液、または培養終了時の培養液もしくはその殺菌した培養液、またはそれぞれから集菌した培養菌体もしくはその乾燥物から5,11,14-エイコサトリエン酸及び/又は5,11,14,17- エイコサテトラエン酸を含有する脂質を採取する。
例えば、培養菌体からは次のようにして5,11,14-エイコサトリエン酸及び/又は5,11,14,17- エイコサテトラエン酸を含有する脂質の採取、および5,11,14-エイコサトリエン酸及び/又は5,11,14,17- エイコサテトラエン酸を含有するトリグリセリド、又は5,11,14-エイコサトリエン酸及び/又は5,11,14,17- エイコサテトラエン酸の単離を行う。
【0049】
培養終了後、培養液より遠心分離法や濾過等の常用の固液分離手段により培養菌体を得る。菌体は十分水洗し、好ましくは乾燥する。乾燥は凍結乾燥、風乾等によって行うことができる。乾燥菌体は、例えばダイノミルや超音波などにより破砕した後、好ましくは窒素気流下で有機溶媒によって抽出処理する。有機溶媒としてはエーテル、ヘキサン、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、石油エーテル等を用いることができ、又メタノールと石油エーテルの交互抽出やクロロホルム- メタノール- 水の一層系の溶媒を用いた抽出によっても良好な結果を得ることができる。抽出物から減圧下で有機溶媒を留去することにより、5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有した脂質が得られる。
【0050】
また、上記の方法に代えて湿菌体を用いて抽出をおこなうことができる。この場合にはメタノール、エタノール等の水に対して相溶性の溶媒、又はこれらと水及び/又は他の溶媒とからなる水に対して相溶性の混合溶媒を使用する。その他の手順は上記と同様である。
【0051】
上記のようにして得られた脂質中には、5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸が、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、ステロールエステルなどの中性脂質や、フォスファチジルコリン、リゾフォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、リゾフォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、リゾフォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、リゾフォスファチジルセリン、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸などの極性脂質の構成成分として、あるいは遊離脂肪酸として存在している。
【0052】
例えば、モルティエレラ亜属に属する微生物を用いて製造される5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質の油脂組成としては、中性脂質が70〜100重量%、極性脂質が0〜30重量%であり、中性脂質の主な成分であるトリグリセリドは70〜99重量%である。
【0053】
また、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を実質的に含有しない脂質の場合、脂質中の5, 11, 14−エイコサトリエン酸含量は、全脂肪酸に対して0.2 〜80重量%、好ましくは1.3 〜80重量%、より好ましくは2.5 〜80重量%である。また、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質の場合、脂質中の、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸含量は、全脂肪酸に対して0.1 〜70重量%、好ましくは0.2 〜70重量%、より好ましくは0.5 〜70重量%であるが、この5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸含量はその前駆体の種類や添加量、あるいは培養温度によって変化する。
【0054】
また、脂質中のトリグリセリド中の全脂肪酸に対する割合は、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を実質的に含有しない脂質の場合、5, 11, 14−エイコサトリエン酸が3.0 〜80重量%、好ましくは12.1〜80重量%、より好ましくは13.4〜80重量%であり、また、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質の場合、脂質中の、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸含量は、全脂肪酸に対して0.1 〜70重量%、好ましくは0.4 〜70重量%、より好ましくは0.5 〜70重量%であるが、この5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸含量はその前駆体の種類や添加量、あるいは培養温度にを調整することによって自由に変更可能である。
【0055】
なお本発明においては、脂質中の全脂肪酸に対して5, 11, 14−エイコサトリエン酸の含量が15重量%以上である5, 11, 14−エイコサトリエン酸を含有する脂質を得ることができる。また、脂質中の全脂肪酸に対して5, 11, 14−エイコサトリエン酸の含量が15重量%以上かつ5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の含量が0.1重量%以下である5, 11, 14−エイコサトリエン酸を含有する脂質を得ることができる。
【0056】
なお、上記の脂質とは、その分子内で高級脂肪酸が何らかの化学結合、代表的にはエステル結合を形成した、水に不溶でかつアルコール、クロロホルム、ベンゼンなどの有機溶媒に可溶な物質を言う。5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有した脂質の例としては、5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の低級アルキルエステル、5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を構成成分として含むグリセリンエステル又はステロールエステル、及びこれらのうちの任意の2種以上の混合物などが挙げられる。
【0057】
上記5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の低級アルキルエステルとは、炭素数1〜6個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個の低級アルコールと5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸のエステルを言う。また、5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を構成成分として含むグリセリンエステルとは、グリセリン1分子に対して、少なくとも1分子の5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸がエステル結合した物質を言う。
【0058】
その例として、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、フォスファチジルコリン、リゾフォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、リゾフォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、リゾフォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、リゾフォスファチジルセリン、フォスファチジン酸、リゾフォスファチジン酸、グリセロ糖脂質などが挙げられる。
【0059】
また、5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を構成成分として含むステロールエステルとは、ステロールと5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸がエステル結合した物質を言う。その例として、コレステロールエステル、デスモステロールエステルなどが挙げられる。
5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有した脂質は以上の例に限定されず、スフィンゴリン脂質、他のリン脂質、セラミド、スフィンゴ糖脂質、他の糖脂質など、上記の定義に包含される任意の脂質を含む。
【0060】
さらに本発明においては、脂質中のトリグリセリド中の全脂肪酸に対して、5, 11, 14−エイコサトリエン酸の含量が12重量%以上、好ましくは13重量%以上、より好ましくは14重量%以上である5, 11, 14−エイコサトリエン酸を含有するトリグリセリドを得ることができる。また、脂質中のトリグリセリド中の全脂肪酸に対して5, 11, 14−エイコサトリエン酸の含量が12重量%以上かつ5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の含量が0.1重量%以下、好ましくは13重量%以上かつ5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の含量が0.1重量%以下、より好ましくは14重量%以上かつ5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸の含量が0.1重量%以下である5, 11, 14−エイコサトリエン酸を含有するトリグリセリドを得ることができる。
【0061】
培養物から採取した5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質から、5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有するトリグリセリドを分離精製するには、常法に従って、例えば、脱酸法、脱臭法、脱ガム法、脱水法、水蒸気蒸留法、分子蒸留法、冷却分離法、カラムクロマトグラフィー法などにより行う。例えば前述の操作に従って培養物からヘキサンを用いて5,11,14−エイコサトリエン酸及び/又は5,11,14,17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質を抽出し、この抽出油から例えば脱酸、脱臭、脱ガム等の精製処理により、本発明のトリグリセリドを得ることができる。
【0062】
5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質から5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を分離するには、混合脂肪酸あるいは混合脂肪酸エステルの状態で、常法により、例えば、尿素付加法、冷却分離法、カラムクロマトグラフィー法などにより濃縮分離することにより行う。
【0063】
より具体的には5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を直接分離することもできるが、低級アルコールとのエステル、例えば5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸のエチルエステルとして分離するのが好ましい。このようなエステルにすることにより、他の脂質成分から容易に分離することができ、また、培養中に生成する他の脂肪酸、例えばパルミチン酸等(これらも、5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸のエステル化に際してエステル化される)から容易に分離することができる。
【0064】
例えば、高度不飽和脂肪酸のエチルエステルを得るには、前記の抽出脂質を無水エタノール- 塩酸5 〜10% 、BF3-エタノール10〜50% 等により、室温にて1 〜24時間処理するのが好ましい。前記の処理液から5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸のエチルエステルを回収するにはヘキサン、エーテル、酢酸エチル等の有機溶媒で抽出するのが好ましい。次に、この抽出液を無水硫酸ナトリウム等により乾燥し、有機溶媒を好ましくは減圧下で留去することにより脂肪酸エステルを主成分として含む混合物が得られる。この混合物はそのまま又はさらに本発明の脂肪酸の濃度を高め本発明の組成物に使用することができる。
【0065】
この混合物には、目的とする5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸のエチルエステルの他に、パルミチン酸エチルエステル等の脂肪酸エチルエステルが含まれている。これらの脂肪酸エチルエステル混合物から5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸のエチルエステルを単離するには、カラムクロマトグラフィー、低温結晶化法、尿素包接法、液々交流分配クロマトグラフィー等を単独で、又は組み合わせて使用することができる。
【0066】
こうして単離された5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸のエチルエステルから遊離の5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を得るには、アルカリで加水分解した後、エーテル、酢酸エチル等の有機溶媒で抽出すればよい。
また、5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸をそのエチルエステルを経ないで摂取するには、前記の抽出脂質をアルカリ分解(例えば5%水酸化ナトリウムにより室温にて2 〜3 時間)した後、この分解液から、脂肪酸の抽出・精製に常用されている方法により抽出・精製することができる。得られた遊離の本発明の脂肪酸及びその塩もまた本発明の組成物のために使用することができる。
【0067】
本発明の5, 11, 14−エイコサトリエン酸及び/又は5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質又はトリグリセリドは、該脂肪酸を豊富に含有する脂質又はトリグリセリドで、その用途に関しては無限の可能性があり、食品、飲料、化粧品、医薬品、動物用飼料などの原料並びに添加物として使用することがでる。例えば、一般食品、飲料、機能性食品、栄養補助食品、調製乳、化粧水、乳液、経腸栄養剤、粉末、顆粒、トローチ、シロップ、錠剤、カプセル剤、輸液、注射剤、塗布用ゲル、湿布、粉末飼料、固形飼料、液状飼料などを挙げることができるが、これらに限定するものではなく、その使用目的、使用量、加工形態に関して何ら制限を受けるものではない。
【0068】
【実施例】
次に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は、実施例に限定を受けるものではない。
実施例1Δ6不飽和化反応阻害剤を用いた5 , 11 , 14−エイコサトリエン酸、5 , 11 , 14 , 17−エイコサテトラエン酸の製造方法
アラキドン酸生産能を有する微生物であるモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568 の一白金耳を、10mLエルレンマイヤーフラスコに入れた液体培地2mL(グルコース4%、酵母エキス1%、及び下記のΔ6不飽和化反応阻害剤(表1に示した濃度)に植菌し、28℃、120rpmで10日間振とう培養した。
【0069】
培養後、菌体を濾過により集め、乾燥した。常法に従い、塩酸メタノールで菌体内の脂肪酸をメチルエステル化した後、ヘキサンで抽出し、ヘキサンを留去して得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。結果を表1に示す。
【0070】
(1)3’,4’−(メチレンジオキシ)アセトフェノン
(2)3,4−(メチレンジオキシ)アニリン
(3)1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン
(4)ピペロニルアルコール
(5)ピペロニルアミン
(6)ピペロニロニトリル
(7)サフロール
(8)パラクマル酸メチルエステル
(9)パラアニシジン
【0071】
【表1】
Figure 0004036596
【0072】
いずれのΔ6不飽和化反応阻害剤も、リノール酸と5, 11, 14−エイコサトリエン酸を蓄積させることがわかった。いずれも5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸は検出されなかった。
【0073】
実施例2アラキドン酸生産能を有する微生物による5 , 11 , 14−エイコ サトリエン酸の製造方法
下記のアラキドン酸生産能を有する微生物の一白金耳を、10mLエルレンマイヤーフラスコに入れた液体培地2mL( グルコース4%、酵母エキス1%、ピペロニルアミン 0.05 %) に植菌し、28℃、120rpmで10日間振とう培養した。培養後、実施例1と同様にメチルエステル化し、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。結果を表2に示す。
【0074】
(1)モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568
(2)モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)SAM1969 (微工研菌寄第12901 号)
(3)モルティエレラ・フィグロフィラ(Mortierella hygrophila)IFO5941
(4)コニディオボラス・スロモボイデス(Conidiobolus thromoboides )CBS183.60
(5)フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)CBS494.86
(6)フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)IFO4872
(7)エキノスポランジウム・トランスベルサレ(Echinosporangium transversale )NRRL3116
(8)サプロレグニア・ラポニカ(Saprolegnia lapponica )CBS313.81
【0075】
【表2】
Figure 0004036596
【0076】
いずれの菌株も、ピペロニルアミンを添加することにより5, 11, 14−エイコサトリエン酸の生成が認められた。ピペロニルアミンを添加しないでも5, 11, 14−エイコサトリエン酸を生成するモルティエレラ・アルピナ(Mortie rella alpina)SAM1969 (微工研菌寄第12901 号)の場合も、添加することにより、生成量、総脂肪酸量に対する割合ともに著しく増加した。また、いずれの場合も5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸は検出されなかった。
【0077】
実施例3低温培養による5 , 11 , 14 , 17−エイコサテトラエン酸の製造方法
モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568 又はモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)SAM1969 (微工研菌寄第12901 号)の一白金耳を、10mLエルレンマイヤーフラスコに入れた液体培地2mL(グルコース4%、酵母エキス1%、ピペロニルアミン 0.05 %)に植菌し、12〜28℃で、120rpmで10日間振とう培養した。培養後、実施例1と同様にメチルエステル化し、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
Figure 0004036596
いずれの菌株も、20℃以下で培養した場合のみ、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を生成した。
【0079】
実施例4α−リノレン酸、11 , 14 , 17−エイコサトリエン酸、又はこれらの関連化合物の添加による5 , 11 , 14 , 17−エイコサテトラエン酸の製造方法
モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568 の一白金耳を、10mLエルレンマイヤーフラスコに入れた液体培地2mL(グルコース4%、酵母エキス1%、ピペロニルアミン 0.05 %からなる培地に、表4に示した化合物を0.5%添加)に植菌し、28℃、120rpmで10日間振とう培養した。
【0080】
培養後、菌体の一部を実施例1と同様にメチルエステル化し、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。
また残りの菌体は乾燥後、クロロホルム−メタノール抽出を行った。さらに常法に従い、抽出した油を、薄層クロマトグラフィー、ケイ酸カラムクロマトで分画し、トリグリセリドを得た。得られたトリグリセリドについても、上記の方法によりガスクロマトグラフィーで分析した。結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
Figure 0004036596
【0082】
ピペロニルアミンを含む培地に、さらにα−リノレン酸もしくはその誘導体、11, 14, 17−エイコサトリエン酸もしくはその誘導体、又はこれらを構成成分として含有する油脂を添加することによって、5, 11, 14, 17−エイコサテトラエン酸を含有する脂質が生成した。また生成した脂質には、5,11,14,17−エイコサテトラエン酸を含有するトリグリセリドが含まれていた。
【0083】
実施例5 , 11 , 14−エイコサトリエン酸生産に及ぼす基質の添加効果モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568 の一白金耳を、10mLエルレンマイヤーフラスコに入れた液体培地2mL(グルコース4%、酵母エキス1%、ピペロニルアミン 0.05 %からなる培地に、表5に示した化合物を0.5%添加)に植菌し、28℃、120rpmで10日間振とう培養した。培養後、実施例1と同様にメチルエステル化し、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。結果を表5に示す。
【0084】
【表5】
Figure 0004036596
いずれの基質も、5, 11, 14−エイコサトリエン酸の生成量を増加させる効果があった。
【0085】
実施例610L 容通気槽培養を用いた5 , 11 , 14−エイコサトリエン酸の大量培養法
モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)SAM1969 (微工研菌寄第12901 号)の一白金耳を、500mL エルレンマイヤーフラスコに入れた液体培地100mL (グルコース2 %、酵母エキス1%)に植菌し、28℃で、120rpmで7日間前培養した。10L 容通気培養槽に5L の培地(グルコース2 %、酵母エキス1%、ピペロニルアミン0.05%)を入れ、上記前培養液を植菌して、28℃、300rpm、通気1vvmで培養した。流加法によりグルコース濃度を0.5 〜1.5 %に維持し10日間培養した。
【0086】
菌体は経時的にサンプリングして、実施例1と同様にメチルエステル化し、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。また、培養終了後に菌体を回収し、乾燥後、クロロホルム−メタノール抽出を行った。さらに常法に従い、抽出した油を、薄層クロマトグラフィー、ケイ酸カラムクロマトで分画したところ、抽出した油のうち、中性脂質が92重量%(トリグリセリドは抽出した油の91重量%)、極性脂質が8重量%であった。得られたトリグリセリドは上記の方法でメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィーで分析した。経時変化を表6及び表7に示す。
【0087】
【表6】
Figure 0004036596
【0088】
【表7】
Figure 0004036596
【0089】
10L 容通気培養槽を用いた大量培養法により、著量の5, 11, 14−エイコサトリエン酸を生産できることがわかった。また、得られたトリグリセリド中に著量の5, 11, 14−エイコサトリエン酸が含まれていた。
【0090】
実施例7カプセル剤の調製
ゼラチン100 重量部及び食品添加用グリセリン35重量部に水を加え50〜60℃で溶解し、粘度20000cpsのゼラチン皮膜を調製した。次に実施例6に記した方法で得た乾燥菌体を破砕しヘキサンで抽出したヘキサン抽出油又は該ヘキサン抽出油を脱酸、脱臭、脱ガム処理して得られたトリグリセリドに3重量%のビタミンE油を混合し、内容物を調製した。これらを用いて、常法に従い、カプセル成型及び乾燥を行い、1粒当たり180 mgの内容物を含有するソフトカプセルを製造した。

Claims (18)

  1. モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属しアラキドン酸生産能を有する微生物を、3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、そして培養物から脂質を採取することを特徴とする5,11,14−エイコサトリエン酸含有脂質の製造方法。
  2. モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属しアラキドン酸生産能を有する微生物を、3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、培養物から脂質を採取し、そして該脂質からトリグリセリドを分離精製することを特徴とする5,11,14−エイコサトリエン酸を含有するトリグリセリドの製造方法。
  3. モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属しアラキドン酸生産能を有する微生物を、3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、培養物から脂質を採取し、そして該脂質から5,11,14−エイコサトリエン酸を分離精製することを特徴とする5,11,14−エイコサトリエン酸の製造方法。
  4. 前記アラキドン酸生産能を有する微生物を、飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸もしくは11,14−エイコサジエン酸のいずれか、又はこれらの誘導体、あるいはこれらを構成成分として含有する油脂をさらに添加した培地で培養することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記アラキドン酸生産能を有する微生物を、菌体内のリノール酸/γ−リノレン酸の比を30以上に保ちながら培養することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記アラキドン酸生産能を有する微生物を20℃以上の温度で培養することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. アラキドン酸生産能を有する微生物から得られるリノール酸/γ―リノレン酸の比が30以上であるΔ6不飽和化反応が低下したモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)SAM1969(微工研菌寄第12901号)の微生物を、3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、そして培養物から脂質を採取することを特徴とする、5,11,14−エイコサトリエン酸を全脂肪酸に対して12重量%以上含有する脂質の製造方法。
  8. アラキドン酸生産能を有する微生物から得られるリノール酸/γ―リノレン酸の比が30以上であるΔ6不飽和化反応が低下したモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)SAM1969(微工研菌寄第12901号)の微生物を、3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、培養物から5,11,14−エイコサトリエン酸を全脂肪酸に対して12重量%以上含有する脂質を採取し、そして該脂質からトリグリセリドを分離精製することを特徴とする5,11,14−エイコサトリエン酸を含有するトリグリセリドの製造方法。
  9. アラキドン酸生産能を有する微生物から得られるリノール酸/γ―リノレン酸の比が30以上であるΔ6不飽和化反応が低下したモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)SAM1969(微工研菌寄第12901号)の微生物を、3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、培養物から5,11,14−エイコサトリエン酸を全脂肪酸に対して12重量%以上含有する脂質を採取し、そして該脂質から5,11,14−エイコサトリエン酸を分離精製することを特徴とする、5,11,14−エイコサトリエン酸の製造方法。
  10. モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属するアラキドン酸生産能を有する微生物を、3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で20℃より低い温度で培養し、そして培養物から脂質を採取することを特徴とする、5,11,14,17−エイコサテトラエン酸含有脂質の製造方法。
  11. モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属するアラキドン酸生産能を有する微生物を、3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で20℃より低い温度で培養し、培養物から脂質を採取し、そして該脂質からトリグリセリドを分離精製することを特徴とする、5,11,14,17−エイコサテトラエン酸含有トリグリセリドの製造方法。
  12. モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属するアラキドン酸生産能を有する微生物を、3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で20℃より低い温度で培養し、培養物から脂質を採取し、そして該脂質から5,11,14,17−エイコサテトラエン酸を分離精製することを特徴とする、5,11,14,17−エイコサテトラエン酸の製造方法。
  13. モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属するアラキドン酸生産能を有する微生物を、α−リノレン酸もしくはその誘導体及び/又は11,14,17−エイコサトリエン酸もしくはその誘導体、あるいはこれらを構成成分として含有する油脂を添加し、さらに3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、そして培養物から脂質を採取することを特徴とする、5,11,14,17−エイコサテトラエン酸含有脂質の製造方法。
  14. モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属するアラキドン酸生産能を有する微生物を、α−リノレン酸もしくはその誘導体及び/又は11,14,17−エイコサトリエン酸もしくはその誘導体、あるいはこれらを構成成分として含有する油脂を添加し、さらに3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、培養物から脂質を採取し、該脂質からトリグリセリドを分離精製することを特徴とする、5,11,14,17−エイコサテトラエン酸含有トリグリセリドの製造方法。
  15. モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属するアラキドン酸生産能を有する微生物を、α−リノレン酸もしくはその誘導体及び/又は11,14,17−エイコサトリエン酸もしくはその誘導体、あるいはこれらを構成成分として含有する油脂を添加し、さらに3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル、サフロール、パラクマル酸低級アルキルエステル及びパラアニシジンから成る群から選択されるΔ6不飽和化反応阻害剤を添加した培地で培養し、培養物から脂質を採取し、そして該脂質から5,11,14,17−エイコサテトラエン酸を分離精製することを特徴とする、5,11,14,17−エイコサテトラエン酸の製造方法。
  16. 前記パラクマル酸低級アルキルエステルがパラクマル酸メチルエステルである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
  17. 3',4'−(メチレンジオキシ)アセトフェノン、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、1,2−(メチレンジオキシ)−4−ニトロベンゼン、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、ピペロニロニトリル又はサフロールのいずれかを含んで成る、アラキドン酸生産能を有するモルティエレラ・アルピナ種微生物のΔ6不飽和化反応阻害剤。
  18. パラアニシジン(p-anisidine )を含んで成る、アラキドン酸生産能を有するモルティエレラ・アルピナ種微生物のΔ6不飽和化反応阻害剤。
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