JP3772524B2 - 水系コーティング樹脂組成物およびそれを用いた塗装品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系コーティング樹脂組成物と、それを用いた塗装品に関し、特に、耐候性および靭性等に優れた塗布硬化被膜を形成でき、エマルジョンとしての混合安定性に優れた水系コーティング樹脂組成物と、それを用いた塗装品に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機溶剤系塗料は、その使用時に希釈有機溶剤を大気中に放出するため、地球環境および人体に対して悪影響を与えるので、水系、粉体系またはハイソリッド化塗料を使用する方向へ移行している。これらの塗料の中でも特に、従来の有機溶剤系塗料用の設備やラインを使用でき、かつ、取り扱いが容易である水系塗料が注目されている。
【0003】
他方、耐候性塗料用樹脂としては、アクリルウレタン樹脂、アクリルメラミン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が知られている。しかし、これらの中で、アクリルウレタン樹脂およびアクリルメラミン樹脂は耐候性が充分でなく、フッ素樹脂は、架橋剤として使用されるイソシアネートの毒性が懸念される問題、廃液の特殊処理、さらには燃焼時に有害ガスを発生する等の欠点がある。また、アクリルシリコーン樹脂は、アクリルの主鎖とアルコキシシリル基の側鎖からなるものであり、湿気によりアルコキシシリル基が加水分解縮合してシロキサン架橋を形成し、耐候性を発現するが、その耐候性はシリコーン変性割合によって変化し、シリコーン変性割合の少ないアクリルシリコーン樹脂の耐候性は、アクリルウレタン樹脂またはアクリルメラミン樹脂と比べて劣る場合がある。さらに、アクリルシリコーン樹脂を水系に移行する場合、アルコキシシリル基が乳化時、塗料化時および保存中に水と反応して架橋し、増粘、ゲル化等が生じやすく、少量のアルコキシシリル基やシラノール基しか導入できないため、架橋効果が少なく、不充分な耐候性しか得られない欠点があった。特開平9−316390号公報では、水系アクリルシリコーン塗料のシリコーン量を増加させるために、シラノール基含有ビニル共重合体エマルジョンとシラノール基含有シリコーンエマルジョンとを混合する方法が提案されているが、シラノール基含有シリコーン樹脂は、樹脂状態ではほとんど固体状態に近く、比較的高分子体であるため、混合したエマルジョンの塗布硬化被膜内でのシラノール基の反応性は低く、充分な架橋を得るためには、100℃以上の加熱硬化が必要である。さらに、上記混合する方法でも、シリコーン含有量は樹脂全量に対して半分以下であり、充分な耐候性が得られるものではない。
【0004】
一方、シリコーン樹脂は、高耐候性塗料用樹脂として知られているが、その架橋反応を預かるシラノール基またはアルコキシシリル基は、水と反応して加水分解縮合反応を起こすため、乳化剤を用いて反応性シリコーン樹脂の乳化を試みても、ゲル化、相分離等を起こすため、反応性シリコーン樹脂を水系にするのは困難であった。そのため、水系シリコーン樹脂コーティング材を得るためには、樹脂状態でほとんど固体状態に近く、高分子で、かつ、架橋に預かる反応基を少量しか有していないシリコーン樹脂を使用するしかなく、その水系コーティング材の塗布硬化被膜は、架橋性に欠け、塗膜強度が弱くなり、脆い硬化被膜しか形成できない(特開平7−247434号公報参照)。
【0005】
これらの問題点を解消するため、本発明者らは、先に、比較的低分子量のオルガノシロキサン部分加水分解物を乳化することにより得られる反応性シリコーンエマルジョンコーティング材を開発し、すでに特許出願している(特願平8−334025号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、本発明者らのその後の検討により、上記反応性シリコーンエマルジョンコーティング材の塗布硬化被膜は、靭性がなく、その厚みが10μm以上になるとクラックを生じやすいため、膜厚を制御しにくい現場塗装用途等には使用できない問題点があった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、エマルジョンとしての混合安定性に優れるとともに、形成される塗布硬化被膜が耐候性だけでなく靭性にも優れる水系コーティング樹脂組成物と、それを用いた塗装品とを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは種々検討を重ねた。その結果、オルガノシロキサン部分加水分解物を主成分とするシリコーンエマルジョンに、アルコキシシリル基含有ビニル共重合体エマルジョンを組み合わせれば、シリコーン含有量が樹脂全量に対して半分以上であってもエマルジョンとしての混合安定性に優れるとともに、形成される塗布硬化被膜が耐候性だけでなく靭性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る水系コーティング樹脂組成物は、下記(A)および(B)成分を含んでなる。
(A)成分:
平均組成式(I):R2 a SiOb (OR1)c (OH)d で表され(ここでR1 、R2 は互いに独立に同一または異種の置換もしくは非置換で炭素数1〜9の1価炭化水素基を示し、a、b、cおよびdはa+2b+c+d=4、0≦a<3、0<b<2、0<c<4、0<d<4の関係を満たす数である)、その重量平均分子量がポリスチレン換算で600〜5000であるオルガノシロキサン部分加水分解物と、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の界面活性剤と、コロイダルシリカと、(A)成分の全量に対して50〜90重量%の水とを含んでなるシリコーンエマルジョン。
(B)成分:
重合性ビニルモノマーと、下記一般式(II):
【0010】
【化2】
【0011】
(ここでR3 は水素原子および/またはメチル基を示し、R4 およびR5 は互いに独立に同一または異種の置換もしくは非置換で炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、mは1〜12の整数であり、eは0〜2の整数である)で表されるアルコキシシリル基含有(メタ)アクリルシランとを、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の界面活性剤と重合開始剤との存在下に水系媒体中で乳化重合させてなるアルコキシシリル基含有ビニル共重合体エマルジョン。
【0012】
ここで、本明細書中、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロキシ」等のように、「(メタ)アクリ…」は、「アクリ…」および「メタクリ…」のいずれか一方または両方を指す。
前記(A)成分に含まれる前記オルガノシロキサン部分加水分解物は、前記R2 基として、フェニル基、トリル基およびこれらのうちの少なくとも一方を含む炭化水素基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の基を、前記オルガノシロキサン部分加水分解物の有する全R2 基に対し、5〜50モル%含有することが好ましい。
【0013】
本発明の水系コーティング樹脂組成物は、シラノール基同士の縮合、および/または、シラノール基とアルコキシシリル基との縮合を促進する硬化触媒をさらに含有することが好ましい。
本発明の水系コーティング樹脂組成物は、さらに造膜助剤を含有することが好ましい。
【0014】
本発明の水系コーティング樹脂組成物は、さらにフィラーを含有することが好ましい。
前記フィラーはシリカであることが好ましい。
本発明の水系コーティング樹脂組成物は、平均組成式(III) :HO(R6 2 SiO)n H(ここでR6 は1価の炭化水素基を示し、nは3≦n≦50の数である)で表される両末端水酸基含有直鎖状ポリシロキサンジオールをさらに含有することが好ましい。
【0015】
前記(B)成分において、前記重合性ビニルモノマーの一部は、エポキシ基、グリシジル基およびこれらのうちの少なくとも一方を含む炭化水素基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の基を有する少なくとも1種の重合性ビニルモノマーであることが好ましい。
前記(B)成分において、前記重合性ビニルモノマーの一部は、ベンゾトリアゾール基およびベンゾフェノン基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収基を有する少なくとも1種の重合性ビニルモノマーであることが好ましい。
【0016】
前記(A)成分中の前記オルガノシロキサン部分加水分解物と前記(B)成分中の前記アルコキシシリル基含有ビニル共重合体との重量比(オルガノシロキサン部分加水分解物/アルコキシシリル基含有ビニル共重合体)は99/1〜20/80であることが好ましい。
本発明にかかる塗装品は、基材の表面に、本発明の水系コーティング樹脂組成物の塗布硬化被膜からなる塗装層を備える。
【0017】
前記基材は、表面に少なくとも1層の樹脂層を有する塗装基材であることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の組成物の(A)成分であるシリコーンエマルジョンは、オルガノシロキサン部分加水分解物を、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の界面活性剤で水中に乳化分散させることにより得られる。
【0019】
前記オルガノシロキサン部分加水分解物は、分子末端に−OR1 基と−OH基(いずれもケイ素原子に直接結合している)を両方とも有する3次元架橋性のシリコーン化合物であり、本発明の組成物の塗布硬化被膜の主骨格を形成し、該被膜の耐候性発現に必須の成分である。
オルガノシロキサン部分加水分解物を表す前記式(I)中のR1 およびR2 は互いに独立に同一または異種の置換もしくは非置換で炭素数1〜9の1価炭化水素基を示す。R1 およびR2 は互いに同一のものであってもよいし異なるものであってもよい。また、R1 が複数ある場合、複数のR1 は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R2 が複数ある場合、複数のR2 は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0020】
R2 は、置換もしくは非置換で炭素数1〜9の1価の炭化水素基であれば特に限定はされないが、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基等の置換炭化水素基等を例示することができる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキル基およびアリール基が好ましく、特に、(B)成分に含まれるアルコキシシリル基含有ビニル共重合体との相溶性の観点から、R2 基として、アリール基およびアリール基含有炭化水素基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の基がオルガノシロキサン部分加水分解物の有する全R2 基に対し5〜50モル%含まれることが好ましい。
【0021】
また、R1 は、置換もしくは非置換で炭素数1〜9の1価の炭化水素基であれば特に限定はされないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物の架橋反応性の観点から、炭素数1〜4のアルキル基が好適である。
オルガノシロキサン部分加水分解物の調製方法としては、特に限定はされないが、たとえば、前記式(I)中のR1 がアルキル基(OR1 がアルコキシ基)であるものを得る場合について例示すると、加水分解性オルガノクロロシランおよび加水分解性オルガノアルコキシシランからなる群の中から選ばれた1種もしくは2種以上の加水分解性オルガノシランを公知の方法により大量の水で加水分解することで得られるシラノール基含有ポリオルガノシロキサンのシラノール基を部分的にアルコキシ化することにより、オルガノシロキサン部分加水分解物を得ることができる。なお、この調製方法において、加水分解性オルガノアルコキシシランを用いて加水分解を行う場合は、水量を調節することでアルコキシ基の一部のみを加水分解することにより、未反応のアルコキシ基と、シラノール基とが共存したオルガノシロキサン部分加水分解物を得ることができるので、前述した、シラノール基含有ポリオルガノシロキサンのシラノール基を部分的にアルコキシ化する処理が省ける場合がある。
【0022】
前記加水分解性オルガノクロロシランとしては、特に限定はされないが、たとえば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン等が挙げられる。
前記加水分解性オルガノアルコキシシランとしては、特に限定はされないが、たとえば、一般式(IV):R2 p Si(OR1)4-p (ここでR1 、R2 は前記式(I)中のものと同じであり、pは0〜3の整数)で表される加水分解性オルガノシランのうち、R1 がアルキル基であるものが挙げられる。具体的には、p=0のテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが例示でき、p=1のオルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが例示できる。また、p=2のジオルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが例示でき、p=3のトリオルガノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、ジメチルイソブチルメトキシシランなどが例示できる。
【0023】
加水分解性オルガノシランを部分加水分解するために用いられる触媒は、特に限定するものではないが、酸性触媒としては、塩酸、硝酸等の水溶性の酸や、酸性コロイダルシリカ等が例示でき、塩基性触媒としては、アンモニア水溶液や塩基性コロイダルシリカ等が例示できる。加水分解性オルガノシランとしてR1 が低級アルキル基の加水分解性オルガノアルコキシシランを用いた場合、その部分加水分解において低級脂肪族アルコールが発生するが、この低級脂肪族アルコールは両親媒性の溶媒であり、エマルジョンの安定性を低下させるので、本発明の組成物の調製の際には予め脱溶媒して除いておくことが望ましい。
【0024】
オルガノシロキサン部分加水分解物を表す前記式(I)中のa、b、cおよびdは前述した関係を満たす数である。aが3以上の場合は、塗布被膜の硬化がうまく進行しないという不都合がある。b=0の場合は、モノマーであり、硬化被膜を形成できないという問題がある。bが2の場合は、シリカ(SiO2 (オルガノシロキサンではない))であり、硬化被膜にクラックを生じるという問題がある。c=0の場合は、分子末端がR2 基と、親水基であるOH基のみになるため、分子全体での親水性が増加してエマルジョンの長期安定性が得られない。c=4の場合は、モノマーであり、硬化被膜を形成できないという問題がある。d=0の場合は、分子末端がR2 基とOR1 基の疎水基のみになるために、エマルジョンの長期安定性には有利であるが、OR1 基は塗布被膜硬化時の架橋反応性に欠けるため、十分な硬化被膜を得ることができない。d=4の場合は、モノマーであり、硬化被膜を形成できないという問題がある。
【0025】
オルガノシロキサン部分加水分解物の重量平均分子量はポリスチレン換算で600〜5000の範囲である。600未満の場合は、塗布硬化被膜にクラックを生じる等の不都合があり、5000を超えると、硬化がうまく進行しないという不都合を生じる。
オルガノシロキサン部分加水分解物は、上記の構造を持ち、かつ、その重量平均分子量が上記所定範囲内にあるため、反応性が高い。そのため、これを含む(A)成分は、加熱すれば塗膜の硬化に硬化触媒を必要としないとともに、硬化触媒を使用すれば常温での硬化も可能である。また、オルガノシロキサン部分加水分解物は、反応性が高いにも関わらず、その分子末端基の親水性−疎水性バランスが良好であるため、長期間安定なエマルジョン化が可能である。
【0026】
(A)成分中、オルガノシロキサン部分加水分解物の配合量は、特に限定はされないが、たとえば、(A)成分全量に対し、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%の割合である。オルガノシロキサン部分加水分解物の配合量が5重量%未満だと本発明の組成物の固形分量が小さくなりすぎる傾向があり、50重量%を超えると(A)成分の安定性が低下する傾向がある。
【0027】
(A)成分中に含まれる界面活性剤としては、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の界面活性剤が用いられる。
イオン性界面活性剤としては、特に限定はされないが、たとえば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ロジン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;アルキルアミノプロピオン酸、アルキルイミノジプロピオン酸、イミダゾリンカルボン酸、アルキルベタイン、スルホベタイン、アミンオキシド、N−アシルアミドプロピル−N,N’−ジメチルアンモニオベタイン類、N−アシルアミドプロピル−N,N’−ジメチル−N’−β−ヒドロキシプロピルアンモニオベタイン類等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
ノニオン性界面活性剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類(たとえば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類(たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(たとえば、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート等)等のポリオキシエチレン付加ノニオン性界面活性剤;オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体;多価アルコール脂肪酸部分エステル;ポリオキシエチレン化多価アルコール脂肪族エステル;フッ素系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0029】
イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤は、それぞれ、1種のみ用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
上記界面活性剤の中でも、エマルジョンの長期安定性のためにはノニオン性界面活性剤が望ましく、その中でもポリオキシエチレン付加ノニオン性界面活性剤が望ましい。また、エマルジョン安定性の点から、ノニオン性界面活性剤の平均HLB値は、好ましくは5.0〜20.0、より好ましくは7.5〜20.0である。
【0030】
(A)成分中の界面活性剤の含有量は、特に限定されるわけではないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物に対し、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%の割合である。0.1重量%未満であると、乳化が困難になる傾向がある。30重量%を超えると、被膜の硬化性および耐候性が損なわれる恐れがある。
【0031】
(A)成分中の水の含有量は、特に限定されるわけではないが、たとえば、(A)成分全量中で、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%の割合である。水の含有量が上記範囲を外れると、エマルジョンの安定性が低下し、沈殿物を発生する等の不都合を生じる傾向がある。
(A)成分は、エマルジョン粒子内でのオルガノシロキサン部分加水分解物の分子量安定性向上のため等の必要に応じて、非水溶性の有機溶剤を含むことができる。使用可能な非水溶性の有機溶剤としては、特に限定はされないが、25℃の水100gに対する溶解度が1g以下のもの、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等を例示することができる。このような非水溶性の有機溶剤を使用する場合、その含有量は、環境上などの問題を引き起こさない範囲内、たとえば、(A)成分全量に対し、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜10重量%の割合である。
【0032】
(A)成分を製造する方法としては、特に限定はされないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物、界面活性剤および水を混合攪拌することにより得ることができる。攪拌方法、いわゆる乳化方法は、特に限定はされず、公知の方法を使用できるが、たとえば、ホモジナイザー、ホモミキサー等の乳化機を用いて乳化する方法等が挙げられる。
【0033】
本発明の組成物の(B)成分に含まれるアルコキシシリル基含有ビニル共重合体は、本発明の組成物の塗布硬化被膜の靭性を向上させるために有効な成分である。また、該被膜をアルカリ成分に侵されにくくして長期耐久性を付与する効果もある。
アルコキシシリル基含有ビニル共重合体を構成する共重合成分である重合性ビニルモノマーは、熱可塑性ポリマーおよびゴム弾性ポリマーのいずれか一方を形成しうる単量体であり、分子内にアルコキシシリル基またはシラノール基を有しなければ、それ以上特に限定されるものではない。このような重合性ビニルモノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル等の脂肪酸ビニル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン等のアルキルビニルケトン類;ビニルトリメチルシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメチルシラン、p−トリメチルシリルスチレン、ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、p−トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン等のシラノール基を有しないケイ素含有重合性ビニルモノマー;3,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有重合性ビニルモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性ビニルモノマー;2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基含有重合性ビニルモノマー;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の極性基含有重合性ビニルモノマー等が挙げられる。
【0034】
上述した重合性ビニルモノマーは、形成される塗膜の使用目的に応じて、1種のみ用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用することもできる。
上記重合性ビニルモノマーの中でも、特に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルおよび(メタ)アクリル酸ブチルからなる群の中から選ばれた少なくとも1種の使用が、取り扱いの容易さ、または、入手の容易さから好ましい。
【0035】
各種基材に対する塗布硬化被膜の密着性を向上させる点からは、重合性ビニルモノマーの一部として、エポキシ基、グリシジル基およびこれらのうちの少なくとも一方を含む炭化水素基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の基を有する少なくとも1種の重合性ビニルモノマー(エポキシ基含有重合性ビニルモノマー)を用いることが好ましい。このようなエポキシ基含有重合性ビニルモノマーとしては、特に限定はされないが、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
エポキシ基含有重合性ビニルモノマーの使用量は、(B)成分に含まれるアルコキシシリル基含有ビニル共重合体を構成する共重合成分として用いられる重合性ビニルモノマー全量に対する比率で、5〜30モル%であることが好ましい。5モル%未満では密着性向上効果が少なくなる傾向があり、30モル%を超えると、硬化被膜の耐候性を損なう危険性がある。
【0037】
また、重合性ビニルモノマーの一部として、少なくとも1種の紫外線吸収基を有する少なくとも1種の重合性ビニルモノマー(紫外線吸収基含有重合性ビニルモノマー)を用いることが好ましい。紫外線吸収基含有重合性ビニルモノマーは、(B)成分に含まれるアルコキシシリル基含有ビニル共重合体の骨格中に固定されるため、単純添加型紫外線吸収剤と比較して、劣化しにくく、高耐久性が得られる。そのため、本発明の組成物から形成される塗布硬化被膜のさらなる耐候性向上に有用であるとともに、顔料等を分散しないで透明な硬化被膜として使用する場合に下地を紫外線から保護するのに有用である。
【0038】
上記紫外線吸収基としては、特に限定はされないが、たとえば、ベンゾトリアゾール基、ベンゾフェノン基等が挙げられる。紫外線吸収基含有重合性ビニルモノマーの具体例としては、特に限定はされないが、たとえば、2−(2’−ヒドロキシー5’−(メタ)アクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0039】
紫外線吸収基含有重合性ビニルモノマーの使用量は、その紫外線吸収能、目的によっても異なるが、(B)成分に含まれるアルコキシシリル基含有ビニル共重合体を構成する共重合成分として用いられる重合性ビニルモノマー全量に対する比率で、3〜20モル%であることが好ましい。3モル%未満では紫外線吸収効果が少なくなる傾向があり、20モル%を超えると、共重合体の安定性を損なう危険性がある。
【0040】
(B)成分に含まれるアルコキシシリル基含有ビニル共重合体を構成する他の共重合成分であるアルコキシシリル基含有(メタ)アクリルシランは、前記一般式(II)で表され、(A)成分中のオルガノシロキサン部分加水分解物と(B)成分中のアルコキシシリル基含有ビニル共重合体とを架橋反応させるためと、硬化被膜内でのそれらの相溶性を得るために用いられる。このアルコキシシリル基含有(メタ)アクリルシランは、前記一般式(II)中のR3 が水素原子の場合はアクリルシラン、R3 がメチル基の場合はメタクリルシランとなるが、目的に応じて、いずれか一方のみを選択することも、両者を併用することもできる。
【0041】
前記一般式(II)中のR4 およびR5 は、互いに独立に同一または異種の置換もしくは非置換で炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。R4 およびR5 は互いに同一のものであってもよいし異なるものであってもよい。また、R4 が複数ある場合、複数のR4 は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R5 が複数ある場合、複数のR5 は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。R4 およびR5 の具体例としては、特に限定はされないが、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等の置換炭化水素基等が挙げられる。原料の入手・合成の容易さ、および、共重合体の特性から考慮すると、R4 およびR5 が両方ともメチル基である場合が最も好ましい。
【0042】
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリルシランは、入手の容易さと、扱いやすさの点からは、メタクリロキシトリメトキシシランであることが好ましい。
(B)成分に含まれるアルコキシシリル基含有ビニル共重合体において、それを構成する共重合成分である重合性ビニルモノマーとアルコキシシリル基含有(メタ)アクリルシランとの重量比率は、90/10〜50/50であることが好ましい。重合性ビニルモノマーの比率が90より多いと、オルガノシロキサン部分加水分解物との相溶性が得られなくなる傾向があり、同比率が50より小さいと、(B)成分中でのアルコキシシリル基含有ビニル共重合体の安定性が得られなくなる傾向がある。
【0043】
(B)成分の作製に用いられる界面活性剤は、共重合成分である重合性ビニルモノマーおよびアルコキシシリル基含有(メタ)アクリルシランとを水系媒体中へ乳化分散させるための乳化剤である。
この界面活性剤としては、(A)成分の場合と同様に、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤のうちのいずれか一方または両方を用いることができる。それらの具体例や好ましいものについても、(A)成分に用いられるものと同様である。
【0044】
(B)成分の作製に用いられる界面活性剤の量は、特に限定されるわけではないが、たとえば、重合性ビニルモノマーとアルコキシシリル基含有(メタ)アクリルシランとの合計量に対し、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の割合である。0.1重量%未満であると、乳化重合が困難になる傾向がある。10重量%を超えると、被膜の硬化性および耐候性が損なわれる恐れがある。
【0045】
(B)成分の作製に用いられる重合開始剤としては、開裂してラジカルを発生するものであれば特に限定はされないが、たとえば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩等の水溶性タイプ;ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性タイプ等が挙げられる。重合開始剤としては、さらに、必要に応じて酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸、硫酸鉄(II)等の還元剤を併用したレドックス系も使用することができる。
【0046】
これらの重合開始剤および還元剤は、いずれも、1種のみ使用しても2種以上併用してもよい。
本発明においては、t−ブチルハイドロパーオキサイドまたは過酸化水素水等の過酸化物と還元剤とを併用したレドックス系を使用することが、入手の容易さと扱いやすさの点で好ましい。
【0047】
重合開始剤の使用量は、特に限定されるわけではないが、たとえば、重合性ビニルモノマーとアルコキシシリル基含有(メタ)アクリルシランとの合計量に対し、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜1重量%の割合である。0.05重量%未満であると、重合反応が充分に進まない傾向があり、10重量%を超えると、所望の分子量よりも小さい共重合体が得られる傾向があるため、好ましくない。
【0048】
本発明の組成物の(B)成分であるアルコキシシリル基含有ビニル共重合体エマルジョンは、重合性ビニルモノマー、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリルシラン、界面活性剤、重合開始剤および水系媒体を用い、公知の乳化重合方法により製造することができる。乳化重合方法としては、特に限定はされないが、たとえば、モノマーを全量仕込んで重合する一括仕込み重合法、モノマーの一部を重合した後、残りのモノマーを追加するシード重合法、モノマー組成がコア部とシェル部とで異なるコアーシェル重合法、モノマー組成が連続的に異なるパワー重合法等が挙げられる。
【0049】
乳化重合時に用いる水系媒体としては、特に限定はされず、たとえば、イオン交換水等の水を単独で用いてもよいが、水と、アセトン、メタノール、テトラヒドロフラン等の水溶性有機溶剤とを併用してもよい。
また、乳化重合の際、分子量調整の目的で、ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤を使用することも可能である。
【0050】
(B)成分に含まれるアルコキシシリル基含有ビニル共重合体の重量平均分子量は、特に限定はされないが、ポリスチレン換算で、好ましくは1,000〜1,000,000の範囲である。分子量が1,000未満だと、ビニル共重合体としての靭性付与効果が小さくなったり、(B)成分の安定性が低下したりする傾向があり、1,000,000を超えると、該ビニル共重合体が(A)成分中のオルガノシロキサン部分加水分解物との相溶性に欠けて硬化被膜の透明性が失われたり、アルコキシシリル基の反応性が低下して該ビニル共重合体がオルガノシロキサン部分加水分解物と架橋反応しなくなって最終的に硬化被膜の耐候性が低下したりする傾向があるため、好ましくない。
【0051】
(B)成分中、アルコキシシリル基含有ビニル共重合体の配合量は、特に限定はされないが、たとえば、(B)成分全量に対し、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜60重量%の割合である。アルコキシシリル基含有ビニル共重合体の配合量が5重量%未満だと、本発明の組成物中の固形分量が小さくなりすぎる傾向があり、70重量%を超えると、(B)成分の安定性が低下する傾向がある。
【0052】
本発明の組成物は、硬化触媒なしで低温硬化および加熱硬化が可能なので、硬化触媒を含む必要はないのであるが、シラノール基同士の縮合、および/または、シラノール基とアルコキシシリル基との縮合を促進することによって、塗布被膜の加熱硬化を促進させたり同被膜を常温で硬化させたりする目的で必要に応じて、さらに硬化触媒を含むことができる。硬化触媒としては、シラノール基同士の縮合、および/または、シラノール基とアルコキシシリル基との縮合を促進するものであれば特に限定はされないが、たとえば、アルキルチタン酸塩類;ラウリン酸錫、オクチル酸錫、オクチル酸鉄、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレエート等のカルボン酸金属塩類;n−ヘキシルアミン、グアニジン等のアミン化合物およびその塩酸塩;ジブチルアミン−2−ヘキソエート、ジメチルアミンアセテート、エタノールアミンアセテート等のアミンのカルボン酸塩類;酢酸テトラメチルアンモニウム等のカルボン酸第4級アンモニウム塩;テトラエチルペンタミン等のアミン類、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミン系シランカップリング剤;p−トルエンスルホン酸、フタル酸、塩酸等の酸類;アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート等のアルミニウム化合物;酢酸リチウム、酢酸カリウム、蟻酸リチウム、蟻酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタニウムテトラアセチルアセトネート等のチタニウム化合物;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルモノクロロシラン等のハロゲン化シラン類等の少なくとも1種を用いることができる。これらの硬化触媒は、その使用に際して、必要に応じ乳化したものを使用してもよい。
【0053】
本発明の組成物は、必要に応じ、さらに造膜助剤を含有することができる。造膜助剤は、本発明の組成物の造膜性を高めたり、レベリング性を調節したり、該組成物の安定性を向上させたりする効果がある。造膜助剤としては、特に限定はされないが、たとえば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のセロソルブ系;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のカルビトール系;トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のトリグリコールエーテル系;アセチルアセトン等のケトン系;トリエチルアミン、ジエタノールアミン等のアミン系;2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレート(商品名「テキサノール」)等の少なくとも1種を用いることができる。
【0054】
造膜助剤の添加量は、特に限定はされないが、本発明の組成物中、オルガノシロキサン部分加水分解物とアルコキシシリル基含有ビニル共重合体との合計量に対し、1〜50重量%が好ましく、特に1〜20重量%が好ましい。
本発明の組成物は、必要に応じ、さらにフィラーを含有することができる。フィラーは、優れた造膜性を塗布被膜に付与し、硬化被膜の強度および表面硬度を高める効果がある。フィラーの形状は、特に限定はされず、たとえば、球状、針状、ファイバー状等の少なくとも1種を使用できる。その材質についても特に限定はなく、無機系、有機系、それらの複合系の中から適宜選択して使用すればよい。
【0055】
本発明の組成物には、特に、前記フィラーとしてコロイダルシリカ等のシリカを添加することが有効である。シリカは、上述したフィラーの効果に加え、塗布硬化被膜に優れた透明性を付与する効果もあり、また、(A)成分を構成するオルガノシロキサン部分加水分解物の原料である加水分解性オルガノシランを加水分解して縮合する場合の縮合触媒としても使用できる。
【0056】
シリカの添加量は、特に限定されるわけではないが、たとえば、本発明の組成物中、オルガノシロキサン部分加水分解物とアルコキシシリル基含有ビニル共重合体との合計量に対し、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜50重量%の割合である。シリカが5重量%未満であると、所望の塗膜強度が得られない傾向があり、80重量%を超えると、シリカの均一分散が困難となる傾向がある。
【0057】
コロイダルシリカとしては、特に限定はされないが、たとえば、分散媒として水を用いたもの、または、分散媒としてアルコール等の非水系の有機溶媒を用いたものが使用できる。一般に、これらのコロイダルシリカは、固形分としてのシリカを20〜50重量%含有しており、この値からシリカ配合量を決定できる。分散媒として水を用いたコロイダルシリカは、水系なので、そのままエマルジョンに導入できる利点がある。一方、分散媒として非水系有機溶媒を用いたコロイダルシリカは、エマルジョンの安定性を低下させるので、本発明の組成物に直接導入することはできないが、オルガノシロキサン部分加水分解物の原料として用いられる前記加水分解性オルガノシランの反応性触媒として使用すれば、非水系の有機溶媒中に分散したオルガノシロキサン部分加水分解物とシリカとの混合物として得ることができる。この混合物から有機溶媒を脱溶媒すれば、オルガノシロキサン部分加水分解物とシリカとの混合物としてのエマルジョン化が可能になる。また、分散媒として水を用いたコロイダルシリカにおいて、固形分以外の成分として存在する水は、前記加水分解性オルガノシランの硬化剤として用いることができる。
【0058】
分散媒として水を用いたコロイダルシリカは、通常、水ガラスから作られるが、市販品として容易に入手することができる。また、分散媒として非水系有機溶媒を用いたコロイダルシリカは、前記水分散コロイダルシリカ中の水を有機溶媒と置換することで容易に調製することができる。このような有機溶媒分散コロイダルシリカも水分散コロイダルシリカと同様に市販品として容易に入手することができる。有機溶媒分散コロイダルシリカに用いられる有機溶媒の種類は、特に限定はされないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;およびジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの親水性有機溶媒と併用して、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシムなども用いることができる。これらの中でも、脱溶媒の容易さから、低級脂肪族アルコール類が好ましい。
【0059】
本発明の組成物は、必要に応じ、前記平均組成式(III) で表される両末端水酸基含有直鎖状ポリシロキサンジオール(以下、「両末端水酸基含有直鎖状ポリシロキサンジオール」または単に「ポリシロキサンジオール」と記す)をも含むことができる。ポリシロキサンジオールは、組成物の塗布硬化被膜の靭性(柔軟性)をさらに改善して該被膜の耐クラック性をさらに向上させるとともに、該被膜表面に撥水性または非粘着性を付与するための成分である。
【0060】
両末端水酸基含有直鎖状ポリシロキサンジオールを表す前記平均組成式(III) 中、R6 は、1価の炭化水素基であれば特に限定はされないが、たとえば、前記式(I)中のR2 として前述したものと同じものが使用できる。そのようなR6 を有する直鎖状ポリシロキサンジオールの中でも、硬化被膜の耐候性を低下させない点、該被膜の耐クラック性をより向上させる点および入手の容易さの点から、ジメチルシロキサンジオール、メチルフェニルシロキサンジオールが好ましい。
【0061】
両末端水酸基含有直鎖状ポリシロキサンジオールは、分子末端のOH基以外に反応基を有していないために、比較的反応性に乏しい分子である。そのため、硬化被膜中において、ポリシロキサンジオールは、分子末端のみがオルガノシロキサン部分加水分解物またはアルコキシシリル基含有ビニル共重合体と結合または未結合の状態にある。ポリシロキサンジオールの主鎖は、2次元構造であり、比較的動きやすい状態で存在するため、オルガノシロキサン部分加水分解物同士の架橋による硬化収縮、オルガノシロキサン部分加水分解物とアルコキシシリル基含有ビニル共重合体との架橋による硬化収縮およびアルコキシシリル基含有ビニル共重合体同士の架橋による硬化収縮をすべて吸収してクラックの発生を防止することができる。この効果は、前記式(III) 中のnが3≦n≦50(好ましくは5≦n≦45、より好ましくは5≦n≦40)の範囲内にあるポリシロキサンジオールで最も大きい。ポリシロキサンジオールは、直鎖状なので、硬化応力を吸収しやすい。nが3未満の場合は柔軟化剤としての効果はない。nが小さいものは、硬化被膜内部に取り込まれるが、nが大きくなるにつれて相溶性に欠け、ポリシロキサンジオールの一部が硬化被膜表面に遊離する傾向にあるため、硬化被膜表面に撥水性または非粘着性を付与する効果が大きくなる。nが50より大きい場合は、相溶性がさらに低下し、硬化被膜中にまったく取り込まれず、塗膜中で相分離や白濁等を招来する恐れがある。
【0062】
本発明の組成物中、ポリシロキサンジオールの配合量は、nの大きさによって異なり、特に限定はされないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物とアルコキシシリル基含有ビニル共重合体との合計量に対し、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜20重量%の割合である。1重量%未満では柔軟化の効果が期待できず、50重量%を超えると未結合のポリシロキサンジオールが塗膜の硬化阻害を引き起こす等の不都合が生じる傾向がある。
【0063】
本発明の組成物へのポリシロキサンジオールの配合方法は、特に限定はされないが、たとえば、ポリシロキサンジオールを予めエマルジョン化してから配合する方法等が挙げられる。
本発明の組成物は、エマルジョンの安定性向上のために通常添加される増粘剤または保護コロイド剤等を必要に応じて含むことができる。保護コロイドは、エマルジョン安定化のための粘度増加剤として使用できる。
【0064】
上記増粘剤または保護コロイド剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類;グアガム、ローカストビーンガム等の多糖類;ゼラチン、カゼイン等の動物性タンパク質類;可溶性デンプン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ウレタンアクリルブロックコーポリマー等の水溶性高分子化合物等が挙げられる。
【0065】
本発明の組成物は、必要に応じ、顔料、染料等の着色剤をさらに含むことにより、調色可能である。なお、本発明の組成物から形成される塗布硬化被膜は、下記に例示する酸化チタン顔料等のように光触媒性能を有する着色剤を含んでいても塗膜性能が低下することが少ない。
使用できる顔料としては、特に限定はされないが、たとえば、カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエロー等の有機顔料;酸化チタン、硫酸バリウム、弁柄、複合金属酸化物等の無機顔料がよく、これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0066】
顔料の分散方法としては、通常のダイノーミール、ペイントシェーカー等による顔料粉を直接分散する方法ではエマルジョンが破壊され、相分離、ゲル化、沈殿生成等の不都合を生じる恐れがある。そこで、顔料分散方法としては、分散剤を介して顔料を水に(好ましくは高濃度に)分散してなる顔料ベースをエマルジョンに添加し、適度に攪拌する方法等が望ましい。顔料ベースの市販品は容易に入手できる。顔料ベースは、分散剤の他に、湿潤剤、粘性コントロール剤等を含んでいてもよい。
【0067】
顔料ベースの分散方法は、特に限定はされず、通常の分散法でよい。その際、分散助剤、カップリング剤等の使用も可能である。
本発明の組成物中、顔料の配合量は、顔料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物とアルコキシシリル基含有ビニル共重合体との合計量に対して、好ましくは5〜100重量%、より好ましくは5〜80重量%の割合である。顔料の配合量が5重量%未満の場合は隠蔽性が悪くなる傾向があり、100重量%を超えると塗膜の平滑性が悪くなったり硬化被膜の塗膜強度が低下したりすることがある。
【0068】
本発明の組成物の調色に使用できる染料としては、特に限定はされないが、たとえば、アゾ系、アントラキノン系、インジコイド系、硫化物系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系等の染料が挙げられる。これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0069】
本発明の組成物中、染料の配合量は、染料の種類により着色性が異なるので特に限定はされないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物とアルコキシシリル基含有ビニル共重合体との合計量に対して、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%の割合である。染料の配合量が0.1重量%未満の場合は着色性が悪くなる傾向があり、50重量%を超えると硬化被膜の耐久性が悪くなったり硬化被膜の塗膜強度が低下したりすることがある。
【0070】
本発明の組成物の各成分の調製過程では、(A)成分に含まれるオルガノシロキサン部分加水分解物の原料として加水分解性オルガノアルコキシシランを用いた場合(加水分解性オルガノアルコキシシランの加水分解反応の副生成物としてアルコールが生成する)や、コロイダルシリカとして有機溶媒に分散したシリカを用いた場合等のように、有機溶媒の生成や使用を伴う場合があり、該有機溶媒をそのままにしておくと、エマルジョン化した際にエマルジョンの安定性を損なう場合がある。その場合は、エマルジョン化する前に有機溶媒を除去する脱溶媒工程が必要になる。なお、脱溶媒の容易さからは、前記加水分解性オルガノアルコキシシランの有するR1 は低級アルキル基が、前記有機溶媒分散コロイダルシリカに含まれる有機溶媒は低級脂肪族アルコールがそれぞれ望ましい。
【0071】
有機溶媒の脱溶媒法としては、特に限定はされないが、たとえば、加熱・常圧、常温・減圧または加熱・減圧の条件下で有機溶媒を脱溶媒させる方法が使用でき、オルガノシロキサン部分加水分解物等の重合抑制等の点からは、できるだけ低い温度の加熱かつ減圧下で脱溶媒することが望ましい。
有機溶媒の脱溶媒を行う場合、脱溶媒時からエマルジョン化までの期間のオルガノシロキサン部分加水分解物の縮合反応の進行を抑える目的、および、硬化被膜の硬化性能を維持させる目的で、必要に応じ、重合抑制剤を使用してもよい。重合抑制剤としては、特に限定はされないが、たとえば、前述の界面活性剤と同様のものを使用できる。重合抑制剤としてノニオン性界面活性剤を用いる場合、上記目的のためには、脱溶媒される有機溶媒の種類に応じてHLB値が5.0〜20.0のノニオン性界面活性剤が好ましい。HLB値が上記範囲外では、重合を抑止する効果がないだけでなく、重合を促進さえする場合もある。
【0072】
なお、本発明の組成物の調製に際し、重合抑制剤として界面活性剤を使用した場合は、それと同種の界面活性剤を該組成物の調製工程を通じてエマルジョン化のための界面活性剤として使用することが望ましい。
重合抑制剤の使用量は、特に限定はされないが、たとえば、脱溶媒処理すべき有機溶媒含有混合物中に含まれるオルガノシロキサン部分加水分解物に対し、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは2〜15重量%である。0.1重量%未満では、その効果が見られず、20重量%を超えると、被膜の硬化性および耐候性が損なわれる恐れがある。なお、重合抑制剤として界面活性剤を用いた場合、(A)成分中の界面活性剤の前記含有量は、重合抑制剤として用いた界面活性剤をも含めた量であり、最終的に(A)成分中の全界面活性剤の量がその範囲に収まるように配合量を調整する。
【0073】
本発明の組成物には、必要に応じて、さらに、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、防カビ剤、レベリング剤、金属粉、ガラス粉、抗菌剤(好ましくは無機抗菌剤)、帯電防止剤、紫外線吸収剤等のその他の添加剤を適宜含有させることができる。
本発明の水系コーティング樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分と(必要に応じ、さらにその他の成分)を均一に混合することにより得られる。混合は、使用直前に行ってもよいし、予め行ってもよい。
【0074】
(A)成分と(B)成分の混合比は、特に限定はされないが、(A)成分中のオルガノシロキサン部分加水分解物と(B)成分中のアルコキシシリル基含有ビニル共重合体との重量比(オルガノシロキサン部分加水分解物/アルコキシシリル基含有ビニル共重合体)として、好ましくは99/1〜20/80である。アルコキシシリル基含有ビニル共重合体が1より少ないと、組成物の塗布硬化被膜の靭性を向上させる効果が少なく、アルコキシシリル基含有ビニル共重合体が80より多いと、該被膜の耐候性を損なう恐れがある。
【0075】
本発明の組成物を塗布する方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、刷毛塗り、スプレー、浸漬(ディッピング)、バー、ロール、フロー、カーテン、ナイフコート、スピンコート等の通常の各種塗布方法を選択することができる。
本発明の組成物の塗膜を硬化させる方法については、公知の方法を用いればよく、特に限定はされない。また、硬化の際の温度も特に限定はされず、所望される塗布硬化被膜性能や基材の耐熱性等に応じて常温〜加熱温度の広い範囲をとることができる。なお、本発明の組成物は、それに硬化触媒を混合した場合は常温でも縮合反応が進行して硬化するが、短時間で硬化させたい場合または硬化触媒を使用しないで硬化させたい場合は、一般に、約100℃以上の加熱処理が必要である。
【0076】
本発明の組成物の塗布硬化被膜の厚みは、特に制限はなく、たとえば、0.1〜50μm程度が好ましいが、塗布硬化被膜が長期的に安定に密着、保持され、かつ、クラックや剥離等が発生しないためには、より好ましくは1〜30μmである。
本発明の組成物が塗布される基材(本発明の塗装品に用いられる基材でもある)としては、特に限定はされないが、たとえば、無機質基材、有機質基材、無機有機複合基材、および、これらのうちのいずれかの表面に少なくとも1層の無機物被膜および/または少なくとも1層の有機物被膜を有する塗装基材等が挙げられる。
【0077】
無機質基材としては、特に限定はされないが、たとえば、金属基材;ガラス基材;ホーロー;水ガラス化粧板、無機質硬化体等の無機質建材;セラミックス等が挙げられる。
金属基材としては、特に限定はされないが、たとえば、非鉄金属〔たとえば、アルミニウム(JIS−H4000等)、アルミニウム合金(ジュラルミン等)、銅、亜鉛等〕、鉄、鋼〔たとえば、圧延鋼(JIS−G3101等)、溶融亜鉛めっき鋼(JIS−G3302等)、(圧延)ステンレス鋼(JIS−G4304、G4305等)等〕、ブリキ(JIS−G3303等)、その他の金属全般(合金含む)が挙げられる。
【0078】
ガラス基材としては、特に限定はされないが、たとえば、ナトリウムガラス、パイレックスガラス、石英ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
前記ホーローとは、金属表面にガラス質のホーローぐすりを焼き付け、被覆したものである。その素地金属としては、たとえば、軟鋼板、鋼板、鋳鉄、アルミニウム等が挙げられるが、特に限定はされない。ホーローぐすりも通常のものを用いればよく、特に限定はされない。
【0079】
前記水ガラス化粧板とは、たとえば、ケイ酸ソーダをスレートなどのセメント基材に塗布し、焼き付けた化粧板などを指す。
無機質硬化体としては、特に限定はされないが、たとえば、繊維強化セメント板(JIS−A5430等)、窯業系サイディング(JIS−A5422等)、木毛セメント板(JIS−A5404等)、パルプセメント板(JIS−A5414等)、スレート・木毛セメント積層板(JIS−A5426等)、石膏ボード製品(JIS−A6901等)、粘土瓦(JIS−A5208等)、厚形スレート(JIS−A5402等)、陶磁器質タイル(JIS−A5209等)、建築用コンクリートブロック(JIS−A5406等)、テラゾ(JIS−A5411等)、プレストレストコンクリートダブルTスラブ(JIS−A5412等)、ALCパネル(JIS−A5416等)、空洞プレストレストコンクリートパネル(JIS−A6511等)、普通煉瓦(JIS−R1250等)等の無機材料を硬化、成形させた基材全般を指す。
【0080】
従来のシリコーンコーティングでは、水ガラス化粧板や無機質硬化体から溶質してくるアルカリ成分に侵されやすく、長期耐久性が得られないため、基材に予め目止め処理を必要としたが、本発明の組成物では、アルコキシシリル基含有ビニル共重合体を導入しているためアルカリ成分に侵されにくいので、長期耐久性が得られる特徴がある。
【0081】
セラミックス基材としては、特に限定はされないが、たとえば、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
有機質基材としては、特に限定はされないが、たとえば、プラスチック、木、木材、紙等が挙げられる。
プラスチック基材としては、特に限定はされないが、たとえば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性もしくは熱可塑性プラスチック、および、これらのプラスチックをナイロン繊維等の有機繊維で強化した繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられる。本発明の組成物は、水性であり、有機溶媒量が少ないため、プラスチックのように比較的有機溶媒に侵されやすい基材にも塗布可能である。
【0082】
無機有機複合基材としては、特に限定はされないが、たとえば、上記プラスチックをガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維で強化した繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられる。
前記塗装基材を構成する有機物被膜としては、特に限定はされないが、たとえば、アクリル系、アルキド系、ポリエステル系、エポキシ系、ウレタン系、アクリルシリコーン系、塩化ゴム系、フェノール系、メラミン系等の有機樹脂を含むコーティング材の硬化被膜等が挙げられる。
【0083】
前記塗装基材を構成する無機物被膜としては、特に限定はされないが、たとえば、シリコーン樹脂等の無機樹脂を含むコーティング材の硬化被膜等が挙げられる。
本発明の組成物を基材に塗布する際に、基材の材質や表面状態によっては、そのまま本発明の組成物を塗布すると密着性が得にくい場合があるので、必要に応じ、基材の表面に、本発明の組成物の塗布硬化被膜を形成させる前に予めプライマー層を形成させておいてもよい。プライマー層としては、有機、無機を問わず、特に限定はされないが、有機プライマー層の例としては、ナイロン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、有機変性シリコーン樹脂(たとえば、アクリルシリコーン樹脂等)、塩化ゴム樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の有機樹脂を固形分として10重量%以上含有する有機プライマー組成物の硬化樹脂層等が挙げられ、無機プライマー層の例としては、シリコーン樹脂等の無機樹脂を固形分として90重量%以上含有する無機プライマー組成物の硬化樹脂層等が挙げられる。
【0084】
プライマー層の厚みは、特に限定はされないが、たとえば、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。この厚みが薄すぎると密着性が得られない恐れがあり、厚すぎると乾燥時に発泡等の恐れがある。
なお、表面に上記のような有機プライマー層および/または無機プライマー層を少なくとも1層有する基材は、前記塗装基材の範疇に含まれる。すなわち、前記塗装基材が表面に有する前記被膜は上記プライマー層であってもよいのである。
【0085】
基材の形態については、特に限定はされず、たとえば、フィルム状、シート状、板状、繊維状等が挙げられる。また、基材は、これらの形状の材料の成形体、または、これらの形状の材料もしくはその成形体の少なくとも1つを一部に備えた構成体等であってもよい。
基材は、上述した各種材料単独からなるものでもよいし、上述した各種材料のうちの少なくとも2つを組み合わせてなる複合材料または上述した各種材料のうちの少なくとも2つを積層してなる積層材料でもよい。
【0086】
本発明の組成物から形成される塗膜(本発明の塗装品の有する塗膜でもある)は、優れた耐候性および靭性(耐クラック性)を有するため、該塗膜を各種材料または物品の少なくとも一部に装備させることにより、たとえば、下記の用途に好適に用いることができる。
建物関連の部材または物品、たとえば、外装材(たとえば、外壁材、平板瓦・日本瓦・金属瓦等の瓦等)、塩ビ雨とい等の樹脂製雨とい・ステンレス雨とい等の金属製雨とい等の雨とい、門およびそれに用いるための部材(たとえば、門扉・門柱・門塀等)、フェンス(塀)およびそれに用いるための部材、ガレージ扉、ホームテラス、ドア、柱、カーポート、駐輪ポート、サインポスト、宅配ポスト、配電盤・スイッチ等の配線器具、ガスメーター、インターホン、テレビドアホン本体およびカメラレンズ部、電気錠、エントランスポール、縁側、換気扇吹き出し口、建物用ガラス等;窓(たとえば、採光窓、天窓、ルーバー等の開閉窓等)およびそれに用いるための部材(たとえば、窓枠、雨戸、ブラインド等)、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、機械装置、道路周辺部材(たとえば、防音壁、トンネル内装板、各種表示装置、ガードレール、車止め、高欄、交通標識の標識板および標識柱、信号機、ポストコーン等)、広告塔、屋外または屋内用照明器具およびそれに用いるための部材(たとえば、ガラス、樹脂、金属およびセラミックスからなる群の中から選ばれた少なくとも1種の材料からなる部材等)、太陽電池用ガラス、農業用ビニールおよびガラスハウス、エアコン用室外機、VHF・UHF・BS・CS等のアンテナ等。
【0087】
なお、本発明の組成物を上記の各種材料または物品の少なくとも一部に直接塗布し、硬化させてもよいが、これに限定されず、たとえば、本発明の組成物をフィルム基材の表面に塗布し、硬化させてなるフィルムを上記の各種材料または物品の少なくとも一部に貼るようにしてもよい。このようなフィルムの基材の材質としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂およびそれらの複合樹脂等の樹脂が挙げられるが、特に限定はされない。
【0088】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明を詳細に説明する。但し、本発明の具体例は、調製例A−2を(A)成分に用いる実施例4、5、11、12であり、それ以外の実施例は、本発明の技術的範囲からは外れる参考技術である。実施例および比較例中、特に断らない限り、「部」はすべて「重量部」を、「%」はすべて「重量%」を表す。また、分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、測定機種として東ソー(株)のHLC8020を用いて、標準ポリスチレンで検量線を作成し、測定したものである。なお、本発明は下記実施例に限定されない。
【0089】
実施例および比較例に先立ち、それらに用いる各成分を以下のように準備した。
まず、(A)成分であるシリコーンエマルジョンの調製例を説明する。
(シリコーンエマルジョンの調製例):
<調製例A−1>
攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー、滴下ロートおよび温度計を取り付けたフラスコに、水1000部、アセトン50部を計り取り、その混合溶液中に、メチルトリクロロシラン44.8部(0.3モル)とジメチルジクロロシラン38.7部(0.3モル)とフェニルトリクロロシラン84.6部(0.4モル)とトルエン200部とからなる溶液を攪拌下に滴下しながら60℃で加水分解した。滴下終了から40分後に攪拌を止め、反応液を分液ロートに移し入れて静置した後、二層に分離した下層の塩酸水を分液除去し、次に、上層のオルガノポリシロキサンのトルエン溶液中に残存している水と塩酸を減圧ストリッピングにより過剰のトルエンとともに留去して除去することにより、反応性分子末端シラノール基含有オルガノポリシロキサンのトルエン50%溶液を得た。
【0090】
この溶液100部にメチルトリメトキシシラン5部およびジメチルジメトキシシラン5部を加えてなる混合溶液中に、ジブチルスズジラウレート0.6部とトルエン10部とからなる溶液を攪拌下に滴下しながらシラノール基のアルコキシ化を60℃で行った。滴下終了から40分後に攪拌を止め、ジブチルスズジラウレートおよびメタノールを過剰のトルエンとともに留去して除去することにより、重量平均分子量2000のオルガノシロキサン部分加水分解物の80%トルエン溶液を得た。
【0091】
このトルエン溶液50部に、アニオン系界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ4部を添加し、均一に攪拌した。これに水89.3部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2 )処理を行い、次いでロータリーエバポレーターを用いてトルエンを留去して、シリコーンエマルジョンを得た。これをA−1と称する。
【0092】
<調製例A−2>
メチルトリメトキシシラン100部に、水分散酸性コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20%)30部およびメタノール分散オルガノシリカゾル(酸性コロイダルシリカ)(商品名「MA−ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)40部を混合した後、攪拌して室温で加水分解した。得られた液を60℃恒温槽中で加熱することにより、重量平均分子量1600のコロイダルシリカ混合オルガノシロキサン部分加水分解物の40%メタノール溶液を得た。
【0093】
この溶液100部に、重合抑制剤としてノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB値5.7)3部を添加し、均一に攪拌後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。得られた残留物43部に、ノニオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB値13.7)3部を添加し、よく攪拌して均一にした。これに水87.3部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2 )処理を行うことによりシリコーンエマルジョンを得た。これをA−2と称する。
【0094】
<調製例A−3>
メチルトリメトキシシラン68部(0.5モル)、フェニルトリメトキシシラン19.8部(0.1モル)およびジフェニルジメトキシシラン11.7部(0.05モル)を混合し、次いで、イソプロピルアルコール20.5部で希釈し、さらに0.01規定塩酸7.2部を水30部で希釈したものを添加し、攪拌して室温で加水分解した。得られた液を60℃恒温槽中で加熱することにより、重量平均分子量1000のオルガノシロキサン部分加水分解物の40%混合アルコール溶液を得た。
【0095】
この溶液100部からアルコールをロータリーエバポレーターで留去した。得られた残留物40部に、ノニオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB値14.1)3部を添加し、均一に攪拌した。これに水90.3部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2 )処理を行うことによりシリコーンエマルジョンを得た。これをA−3と称する。
【0096】
上記で得られたオルガノシロキサン部分加水分解物はすべて前記平均組成式(I)を満たすものであることが確認されている。
得られたシリコーンエマルジョンA−1〜A−3の特徴を表1にまとめた。
次に、(B)成分であるアルコキシシリル基含有ビニル共重合体エマルジョンの調製例を説明する。
(アルコキシシリル基含有ビニル共重合体エマルジョンの調製例):
<調製例B−1〜B−6および比較調製例B−1〜B−2>
攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー、滴下ロート、窒素ガス導入・排出口および温度計を取り付けたフラスコに、水200部および10%の炭酸ナトリウム水溶液2.8部を投入した。
【0097】
他方、これとは別の容器に、表2に示す配合で各成分を入れ、ホモジナイザー(300kg/cm2 )処理を行うことにより、モノマー乳化物を得た。なお、表2中、ベンゾトリアゾールプロピルメタクリレートとしては、大塚化学(株)製の商品名「RUVA−93」を用いた。
上記で得られたモノマー乳化物のうちの30部をシードモノマーとして上述のフラスコに加え、攪拌しながらフラスコ内の雰囲気を窒素置換して60℃に昇温した。次いで、フラスコ内の混合物に、t−ブチルハイドロパーオキサイド(有効成分69%)0.3部、ロンガリット0.6部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの1%水溶液0.135部および硫酸鉄(II)の1%水溶液0.045部を添加してシード重合を開始した。
【0098】
次に、フラスコ内の混合物を80℃まで昇温した後、これに、前記モノマー乳化物の残部を2時間かけて徐々に滴下すると同時に、t−ブチルハイドロパーオキサイド(有効成分69%)1.5部とロンガリット0.4部とイオン交換水70部との混合液を2時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後2時間80℃を保持して重合反応を完了することにより、ビニル(共)重合体エマルジョンを得た。次いで、このエマルジョンを水で希釈して、ビニル(共)重合体の固形分濃度がエマルジョン全量に対して50%になるように調整することにより、アルコキシシリル基含有ビニル共重合体エマルジョンB−1〜B−6および比較用アルコキシシリル基不含ビニル(共)重合体エマルジョンB−1〜B−2を得た。
【0099】
上記で得られた各成分を用い、以下の実施例と比較例を行った。
<実施例1〜12および比較例1〜4>
調製例A−1〜A−3で得られたシリコーンエマルジョンA−1〜A−3、調製例B−1〜B−6で得られたアルコキシシリル基含有ビニル共重合体エマルジョンB−1〜B−6、比較調製例B−1〜B−2で得られた比較用アルコキシシリル基不含ビニル(共)重合体エマルジョンB−1〜B−2を表3〜5に示す配合で混合し、次いで、表3〜5に示す配合量・種類の両末端水酸基含有直鎖状ポリシロキサンジオール、硬化触媒および造膜助剤を添加混合することにより、水系コーティング樹脂組成物(1)〜(12)および比較用水系コーティング樹脂組成物(1)〜(4)を得た。
【0100】
表3〜5の注釈は以下の通り。
ポリシロキサンジオール(1):重量平均分子量Mw=800(n≒11)の直鎖状ジメチルポリシロキサンジオールの乳化物(ポリシロキサンジオール成分50%)。
ポリシロキサンジオール(2):重量平均分子量Mw=3000(n≒40)の直鎖状ジメチルポリシロキサンジオールの乳化物(ポリシロキサンジオール成分50%)。
【0101】
硬化触媒:10%酢酸カリウム水溶液。
造膜助剤:2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレート(商品名「テキサノール」)。
A/B:(A)成分中のオルガノシロキサン部分加水分解物と(B)成分中のアルコキシシリル基含有ビニル共重合体との重量比。
【0102】
上記で得られた実施例および比較例の水系コーティング樹脂組成物の特性を以下の方法で評価した。
(造膜性):
パイレックスガラスプレートの表面に各例の水系コーティング樹脂組成物をバーコータ塗装機で乾燥塗膜厚が10μmになるように塗布し、室温で乾燥させて、乾燥被膜の状態を目視で観察し、以下の判断基準で評価した。
【0103】
○:連続透明膜。
×:不連続不透明被膜(相分離、凝集による白濁)。
(透明性):
各例の水系コーティング樹脂組成物をパイレックスガラスプレートの表面にバーコータ塗装機で乾燥塗膜厚が10μmになるように塗布し、室温で乾燥させて、乾燥被膜の透明性をHazeメーターで測定した。
(耐クラック性):
各例の水系コーティング樹脂組成物をアルミナプレートの表面にバーコータ塗装機で乾燥塗膜厚が5μm、10μmまたは20μmになるように塗布し、室温で乾燥させた後、150℃で30分間硬化させて形成された硬化被膜の外観を目視で観察し、以下の判断基準で評価した。
【0104】
○:クラックなし。
△:局所的に微細クラック発生。
×:全面にクラック発生。
(耐温水性):
各例の水系コーティング樹脂組成物をパイレックスガラスプレートの表面にバーコータ塗装機で乾燥塗膜厚が10μmになるように塗布し、室温で乾燥させた後、150℃で30分間硬化させて得られた試験片を60℃の温水に24時間浸漬した後の硬化被膜の外観を目視で観察し、以下の判断基準で評価した。
【0105】
○:クラックも白濁もなし。
△:微細クラック発生および/または微量白濁発生。
×:全面クラック発生および/または白濁発生。
(耐光性):
各例の水系コーティング樹脂組成物をパイレックスガラスプレートの表面にバーコータ塗装機で乾燥塗膜厚が10μmになるように塗布し、室温で乾燥させた後、150℃で30分間硬化させて得られた試験片に、紫外線照射装置(オーク製作所製「ハンディーUV300」により紫外線を24時間照射した後の硬化被膜の外観を目視で観察し、以下の判断基準で評価した。
【0106】
○:クラックも白濁もなし。
△:微細クラック発生および/または微量白濁発生。
×:全面クラック発生および/または白濁発生。
(鉛筆硬度):
各例の水系コーティング樹脂組成物をアルミナプレートの表面にバーコータ塗装機で乾燥塗膜厚が10μmになるように塗布し、室温で乾燥させた後、1)室温で1週間放置した場合と、2)150℃で30分間硬化させた場合の鉛筆硬度をJIS−K5400に準じてそれぞれ測定した。
(密着性):
各例の水系コーティング樹脂組成物をアルマイトプレートの表面にバーコータ塗装機で乾燥塗膜厚が10μmになるように塗布し、室温で乾燥させた後、150℃で30分間硬化させて形成された硬化被膜と上記アルマイトプレートとの密着性を碁盤目粘着テープ(セロハンテープ使用)剥離試験で評価した。
(耐アルカリ性):
各例の水系コーティング樹脂組成物をアルミナプレートの表面にバーコータ塗装機で乾燥塗膜厚が10μmになるように塗布し、室温で乾燥させた後、150℃で30分間硬化させて形成された硬化被膜の表面に、1%水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを滴下し、24時間後に水洗浄した後の硬化被膜の外観を目視で観察し、以下の判断基準で評価した。
【0107】
○:アルカリ滴下前と比べて変化なし。
×:白濁、膨れ、クラック発生。
(促進耐候性):
各例の水系コーティング樹脂組成物をアルミナプレートの表面にバーコータ塗装機で乾燥塗膜厚が10μmになるように塗布し、室温で乾燥させた後、150℃で30分間硬化させて得られた試験片について、サンシャインスーパーロングライフウェーザーメーター(スガ試験機社製、型番「WEL−SUN−HC」)を用いて2000時間の促進耐候性試験を行い、光沢保持率を測定して評価した。光沢は60゜グロスとした。
【0108】
評価結果を表6〜8に示す。
次に、以下のようにして塗装品を作製した。
<実施例13〜16>
実施例8で得られた水系コーティング樹脂組成物に顔料として酸化チタンをPWC=30になるように混合して得られた白色コーティング樹脂組成物を下記基材(ステンレス板またはスレート板)にバーコータ塗装で硬化被膜厚が30μmになるように塗布し、室温で1週間放置することにより、各塗装品を得た。
<実施例17〜20>
実施例10で得られた水系コーティング樹脂組成物を下記基材(PC板または有機塗装板)にバーコータ塗装で硬化被膜厚が20μmになるように塗布し、室温で1週間放置することにより、各塗装品を得た。
【0109】
上記基材としては、以下のものを用いた。
ステンレス板:SUS304板(150mm×70mm×0.5mm)。
スレート板:繊維強化セメント板(150mm×70mm×3mm)。
PC板:ポリカーボネート板(150mm×70mm×5mm)。
有機塗装板:熱硬化アクリル樹脂塗装アルミニウム板(150mm×70mm×2mm)。
【0110】
なお、必要に応じて、プライマーとして、エポキシ系シーラー(イサム塗料(株)製、商品名「エポロEシーラー」)を用いた。
得られた各塗装品について、前述と同様の方法で塗膜特性(温水試験前後の密着性、促進耐候性)を評価した。
塗装品の評価結果を表9〜10に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
【表5】
【0116】
【表6】
【0117】
【表7】
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
【表10】
【0121】
【発明の効果】
請求項1から10までのいずれかに記載の水系コーティング樹脂組成物は、オルガノシロキサン部分加水分解物を含むので、耐候性に優れた塗布硬化被膜を形成することができる。
上記水系コーティング樹脂組成物は、さらにアルコキシシリル基含有ビニル共重合体を含むので、この組成物の塗布硬化被膜は、靭性(柔軟性)を有し、そのため耐クラック性にも優れる。
【0122】
上記水系コーティング樹脂組成物は、水系であるため地球環境や人体に与える悪影響の問題が少ないだけでなく、長期間にわたりエマルジョンとして安定であり、エマルジョンとしての混合安定性に優れる。
請求項2に記載の水系コーティング樹脂組成物では、前記オルガノシロキサン部分加水分解物が、R2 基として、フェニル基、トリル基およびこれらのうちの少なくとも一方を含む炭化水素基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の基を前記所定割合で有するため、オルガノシロキサン部分加水分解物とアルコキシシリル基含有ビニル共重合体との相溶性が良好であり、エマルジョンとして、より安定である。
【0123】
請求項3に記載の水系コーティング樹脂組成物は、シラノール基同士の縮合、および/または、シラノール基とアルコキシシリル基との縮合を促進する硬化触媒をさらに含有するため、加熱硬化だけでなく、常温でも硬化することができる。そのため、広い乾燥硬化条件範囲あるいは温度範囲での使用が可能である。従って、熱を均等にかけにくい形状を持つ基材、大きな寸法を持つ基材または耐熱性に劣る基材等に対しても塗装ができるのみでなく、屋外等で塗装作業を行ったりする場合等のように熱をかけにくい場合でも塗装できることから、その産業的価値が高い。
【0124】
請求項4に記載の水系コーティング樹脂組成物は、さらに造膜助剤を含有するため、造膜性にも優れる。
請求項5に記載の水系コーティング樹脂組成物は、さらにフィラーを含有するため、造膜性にも優れるとともに、塗膜強度および表面硬度の高い塗布硬化被膜を形成することができる。
【0125】
請求項6に記載の水系コーティング樹脂組成物は、前記フィラーとしてシリカを含有するため、形成される塗布硬化被膜は、さらに透明性にも優れる。
請求項7に記載の水系コーティング樹脂組成物は、両末端水酸基含有直鎖状ポリシロキサンジオールをさらに含有するため、形成される塗布硬化被膜の靭性がさらに改善されて該被膜の耐クラック性がさらに向上する。しかも、該被膜表面に撥水性または非粘着性が付与される。
【0126】
請求項8に記載の水系コーティング樹脂組成物では、アルコキシシリル基含有ビニル共重合体の原料の一つである重合性ビニルモノマーの一部として、エポキシ基、グリシジル基およびこれらのうちの少なくとも一方を含む炭化水素基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の基を有する少なくとも1種の重合性ビニルモノマーが用いられるため、各種基材に対する塗布硬化被膜の密着性が向上する。
【0127】
請求項9に記載の水系コーティング樹脂組成物では、アルコキシシリル基含有ビニル共重合体の原料の一つである重合性ビニルモノマーの一部として、ベンゾトリアゾール基およびベンゾフェノン基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収基を有する少なくとも1種の重合性ビニルモノマーが用いられるため、紫外線吸収基が塗膜中に固定されるので、単純添加型紫外線吸収剤を用いた場合と比較して、塗膜が劣化しにくく、高耐久性が得られる。そのため、塗膜の耐候性がさらに向上するとともに、顔料等を分散しないで透明な硬化被膜として使用する場合に下地を紫外線から保護するのに有用である。
【0128】
請求項10に記載の水系コーティング樹脂組成物では、オルガノシロキサン部分加水分解物とアルコキシシリル基含有ビニル共重合体との重量比が前記所定範囲であるため、塗布硬化被膜の耐候性と靭性がバランス良く得られる。
請求項11または12に記載の塗装品は、基材の表面に、上記水系コーティング樹脂組成物の塗布硬化被膜からなる塗装層を備えたものであるため、上記水系コーティング樹脂組成物や、それから形成される塗布硬化被膜に由来する上記の優れた各種特性や利点を有する。
【0129】
請求項12に記載の塗装品では、基材として、表面に少なくとも1層の樹脂層を有する塗装基材が用いられているため、上記水系コーティング樹脂組成物から形成される塗布硬化被膜と基材との密着性が高い。
Claims (12)
- 下記(A)および(B)成分を含んでなる水系コーティング樹脂組成物。
(A)成分:
平均組成式(I):R2 a SiOb (OR1)c(OH)d で表され(ここでR1 、R2 は互いに独立に同一または異種の置換もしくは非置換で炭素数1〜9の1価炭化水素基を示し、a、b、cおよびdはa+2b+c+d=4、0≦a<3、0<b<2、0<c<4、0<d<4の関係を満たす数である)、その重量平均分子量がポリスチレン換算で600〜5000であるオルガノシロキサン部分加水分解物と、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の界面活性剤と、コロイダルシリカと、(A)成分の全量に対して50〜90重量%の水とを含んでなるシリコーンエマルジョン。
(B)成分:
重合性ビニルモノマーと、下記一般式(II):
- 前記(A)成分に含まれる前記オルガノシロキサン部分加水分解物は、前記R2 基として、フェニル基、トリル基およびこれらのうちの少なくとも一方を含む炭化水素基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の基を、前記オルガノシロキサン部分加水分解物の有する全R2基に対し、5〜50モル%含有する、請求項1に記載の水系コーティング樹脂組成物。
- シラノール基同士の縮合、および/または、シラノール基とアルコキシシリル基との縮合を促進する硬化触媒をさらに含有する請求項1または2に記載の水系コーティング樹脂組成物。
- さらに造膜助剤を含有する請求項1から3までのいずれかに記載の水系コーティング樹脂組成物。
- さらにフィラーを含有する請求項1から4までのいずれかに記載の水系コーティング樹脂組成物。
- 前記フィラーはシリカである、請求項5に記載の水系コーティング樹脂組成物。
- 平均組成式(III) :HO(R6 2 SiO)nH(ここでR6 は1価の炭化水素基を示し、nは3≦n≦50の数である)で表される両末端水酸基含有直鎖状ポリシロキサンジオールをさらに含有する請求項1から6までのいずれかに記載の水系コーティング樹脂組成物。
- 前記(B)成分において、前記重合性ビニルモノマーの一部は、エポキシ基、グリシジル基およびこれらのうちの少なくとも一方を含む炭化水素基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の基を有する少なくとも1種の重合性ビニルモノマーである、請求項1から7までのいずれかに記載の水系コーティング樹脂組成物。
- 前記(B)成分において、前記重合性ビニルモノマーの一部は、ベンゾトリアゾール基およびベンゾフェノン基からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収基を有する少なくとも1種の重合性ビニルモノマーである、請求項1から8までのいずれかに記載の水系コーティング樹脂組成物。
- 前記(A)成分中の前記オルガノシロキサン部分加水分解物と前記(B)成分中の前記アルコキシシリル基含有ビニル共重合体との重量比(オルガノシロキサン部分加水分解物/アルコキシシリル基含有ビニル共重合体)が99/1〜20/80である、請求項1から9までのいずれかに記載の水系コーティング樹脂組成物。
- 基材の表面に、請求項1から10までのいずれかに記載の水系コーティング樹脂組成物の塗布硬化被膜からなる塗装層を備えた塗装品。
- 前記基材は、表面に少なくとも1層の樹脂層を有する塗装基材である、請求項11に記載の塗装品。
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