JP3628881B2 - 撥水液及び撥水性基板の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス基板等の表面に撥水性被膜を形成した撥水性基板およびその製造方法に関し、建築用、自動車用、船舶用或いは航空機用等の各種窓材、浴室用或いは自動車用等のミラー、さらにはその他産業用など種々の分野の各種透明物品等に利用できる撥水性基板およびその製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、より優れた耐久性と撥水性を併せ持ち、優れた撥水性能をより長く持続する透明な撥水性被膜が望まれてきている。
これらのニ−ズに答えるためには、例えば高い耐摩耗性(耐トラバ−ス性)を有する撥水性薄膜を備える撥水性基板とする必要がある。
【0003】
高い撥水耐久性(特に、耐摩耗性など)を得るためには、フルオロアルキル基含有シラン化合物を基材表面に処理した撥水性ガラスについて、非常に多くの検討例が報告されている。
【0004】
例えば、本出願人が既に出願した特願平7−294106号(特開平9−132433号公報)等に記載している発明は、ガラス表面に高硬度で高機械的強度、かつ耐久性に優れた高い比表面積で制御した特異で微細な凹凸形状表層表面を有するベ−ス膜を形成し、該ベ−ス膜を被覆する撥水膜を形成することで、該撥水膜の付着効率と密着性を高め、さらに耐光性能を向上するようにしたものである。
【0005】
また、本出願人が既に出願した特願平8−131595号(特開平9−309746号公報)等に記載している発明は、ガラス基板の表面に撥水膜を形成する際に、ガラス基板の温度が90〜200℃程度にある状態でガラス基板表面(場合によっては方向性をもつ筋状の疵をつけた微細な凹凸状ガラス基板表面)に撥水膜層を形成することとし、耐候性、耐摩耗性、耐擦傷性ならびに耐久性に格段に優れた撥水性能を発揮するようにしたものである。
【0006】
また、特許第2500178号には、基材表面の撥水撥油処理方法として、フッ化炭素基とクロル基を複数個含むシラン系化合物を用いてガラス基板などの基材表面に化学吸着単分子層を形成する方法が示されており、フルオロアルキル基含有クロロシラン化合物を非水系の溶媒に溶解した溶液に基板を浸漬する工程と、基材を取り出した後、水分を全く含まないかまたは実質的に含まない雰囲気中で乾燥する工程が示されており、基材表面に形成された単分子層は優れた耐摩耗性を発揮することが示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した例えば、特願平7−294106号に記載の撥水性のガラスは、前述したニ−ズに充分に答えうるものであるものの、特異なベ−ス膜と撥水膜の2層構造の膜構成と複雑であり、単純で簡便な下地層を必要としない層であって、より高性能を有する撥水性ガラスも望まれているところである。
【0008】
また、特願平8−131595号等に記載の撥水性ガラスは、製造時における作業性、特にガラス基板温度を90〜200℃に高めた状態に管理する必要があるため、その取り扱いが充分に簡便で高効率であるとは言い難い場合がある。
【0009】
また、特許第2500178号に記載のガラス表面の撥水撥油剤に開示されている方法では、クロロシラン系化合物が極めて水に対して反応性が高いため、多くの工程を水分のない極めて乾燥した環境下で行う必要があるなど、取り扱いが極めて厄介である。
【0010】
すなわち、従来の単分子層を形成させるものや、耐久性能を向上させるために下地膜を形成させるものは、複雑な管理条件と工程を要しコスト高になっており、一方下地膜のないものでは、一般的に撥水剤成分とガラス表面との反応性が不十分であったり、フルオロアルキル基含有クロロシランのような反応性の高い化合物を取り扱う必要があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来のかかる課題に鑑みてなしたものであって、フルオロアルキル基含有シラン化合物のフルオロアルキル基の鎖長を制御し、[1]式で示すフルオロアルキル基含有シラン化合物のm=9以上である撥水液により得られた撥水性被膜は、格段に優れた耐摩耗性(耐トラバ−ス性)を有する。この撥水性被膜は、高硬度かつ高密着性であって耐久性や耐摩耗性とを併せ持ち、より長期的に優れた撥水性能を維持することができる。
【0012】
すなわち本発明は、一般式[1]で表される長鎖フルオロアルキル基含有シラン化合物の撥水剤と、希釈用の溶媒と、酸性水溶液を混合してなり、脱水剤で液中から水分を除去することで、フルオロアルキル基含有シラン化合物の脱水重縮合反応を促進させてなることを特徴とする基板表面に撥水性被膜を固定化させるための撥水液。
【0013】
CF3(CF2)m(CH2)2SiX3[1]
(式中、11≧m≧9の整数、Xはハロゲン、イソシアネート基またはアルコキシ基であって、アルコキシ基は、メトキシ基(OCH3)、エトキシ基(OC2H5)およびイソプロポキシ基(OC3H5)を表す)
また、基板表面形状が凹凸化されていることが好ましい。
【0014】
さらに本発明は、一般式[1]で表されるフルオロアルキル基含有シラン化合物を有効成分とする溶液を加水分解および縮重合して調整してなる撥水液を基板表面に塗布する工程と、次いで該撥水液に含まれる長鎖フルオロアルキル基含有シランを該基板表面に固定化し撥水性被膜を形成する硬化工程とからなることを特徴とする撥水性基板の製造方法。
【0015】
CF3(CF2)m(CH2)2SiX3[1]
(式中、11≧m≧9の整数、Xはハロゲン、イソシアネート基またはアルコキシ基であって、アルコキシ基は、メトキシ基(OCH3)、エトキシ基(OC2H5)およびイソプロポキシ基(OC3H5)を表す)
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の高耐久性撥水性被膜を形成する撥水液は、フルオロアルキル基含有シラン化合物からなる撥水剤と、希釈用の溶媒と、触媒としての酸性水溶液を所定量混合したのち、所定時間撹拌して加水分解反応を終結させ、次いで該溶液に脱水剤を添加し、所定時間脱水処理を行って縮重合させることにより得ることができる。
【0017】
上記の出発原料としては、撥水剤としてフルオロアルキルアルコキシシラン系化合物或いはフルオロアルキルハロゲン化シラン系化合物であり、その化合物としては、例えばCF3(CH2)9CH2CH2Si(OR)3、CF3(CF2)10CH2CH2Si(OR)3、CF3(CH2)11CH2CH2Si(OR)3、CF3(CF2)12CH2CH2Si(OR)3、CF3(CF2)9CH2CH2SiR(OR)2、CF3(CF2)10CH2CH2SiR(OR)2、CF3(CF2)11CH2CH2SiR(OR)2、CF3(CF2)12CH2CH2SiR(OR)2、CF3CH2CH2SiCl3、CF3(CF2)9CH2CH2SiCl3、CF3(CF2)9CH2CH2SiRCl2、CF3(CF2)10CH2CH2SiCl3、CF3(CF2)10CH2CH2SiRCl2等を用いることが出来る。
なお、上記化学式におけるRはCH3、C2H5、C3H7を示す。
また、一般式[1]におけるmについては、mが大きくなるほど凝固点が下がるので、撥水液の調合や撥水処理を考慮すると、m=11以下が好ましい。
【0018】
また、希釈溶媒としては、イソプロピルアルコ−ル(以下、「i−PA」と略す)の他に、メタノ−ル、エタノ−ルなど炭素数が5以下の低級アルコ−ル溶媒であってもよく、アルコ−ル以外にエ−テル類やケトン類を用いることができ、ことにイソプロピルアルコールを主成分としてなるアルコールがコ−ティング溶液の調製における希釈溶媒として好ましい。
【0019】
また、触媒としての酸性水溶液は、0.01N以上、好ましくは0.1N〜13N程度の濃度の硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸あるいは、酢酸、クエン酸などの有機酸を使用することができる。
【0020】
なお、撥水剤:希釈溶剤:酸性水溶液は、重量割合で1:5〜40:0.09〜1.0の範囲が好ましいが、これらの範囲に限定されるものではない。
次に、フルオロアルキル基含有シラン化合物の加水分解および縮重合反応について説明する。
【0021】
(1)加水分解反応
フルオロアルキル(Rf)基含有シラン化合物(次式はアルコキシシラン化合物の例)は次式に示すように、酸触媒下で水と反応して比較的容易に加水分解される。なお、加水分解反応については、加水分解反応(攪拌)の終結を得るには約90分程度、好ましくは約120分程度の時間が必要であるが、これに限定されるものではない。
【0022】
【化1】
【0023】
なお、上記反応における加水分解物の縮重合反応は、撥水剤濃度が約20%以下では他の多くのアルコキシシラン化合物(例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等)に比べて非常に遅く、多くは単量体であり、ゲル化し難い。
【0024】
上式により得られたフルオロアルキル基含有シラン化合物(FAS)の加水分解物(単量体)は、ガラス表面のシラノール基(−SiOH)と次式のような脱水縮重合反応をし、ガラス基板上へ固定化または高重合体(多分子)化する。
【0025】
しかし、フルオロアルキル(Rf)基の嵩高さや剛直さにより、FAS同士の縮重合反応は進みにくく、基本的には単量体が選択的にガラス基板と反応することとなる。これは、Rf基が長鎖になるほどその傾向が強い。
【0026】
しかし、合成ゼオライトなどの脱水剤で強制的に撥水液中から水分を除去する
【0027】
と、(化2)の化学平衡は右に寄って、その結果、脱水縮合反応が促進されて撥水液中に2量体や3量体の形成が可能である。
▲1▼ガラスとの反応
【0028】
【化2】
【0029】
(2)縮重合反応
▲2▼FAS同士の反応
FAS同士の反応により重合度が増加する。
【0030】
・2量化
【0031】
【化3】
【0032】
・3量化
【0033】
【化4】
【0034】
なお、撥水液中の含有水分量は、通常約4000ppm以下が好ましく、その水分量の測定は、例えばカ−ルフィッシャ−電量滴定法を用いることによって測定し求めている。
【0035】
なお、脱水剤としては、シリカゲル、合成ゼオライト、活性アルミナ等を用いることが出来るが、これに限定するものではない。
また本発明は、加水分解終結後に縮重合する場合あるいは加水分解の途中で縮重合が開始する場合等、特に限定するものではない。
【0036】
基板としては、表面に水酸基(−OH)等の活性水素が含まれているガラス、プラスチック、セラミックス等の材料であれば何でも用いることが出来、また、表面に活性水素を含まない場合に、プラズマ処理あるいはコロナ処理等で基板表面に水酸基を導入したものでも適用できる。
【0037】
代表的基材の一つであるガラス基板としては、建築用窓ガラスや自動車用窓ガラス等に通常使用されているフロ−トガラスあるいはロ−ルアウト法で製造されたガラス等無機質の透明性がある板ガラスが好ましく、無色または着色、ならびにその種類あるいは色調、他の機能性膜との組み合わせ、形状等に特に限定されるものではなく、さらに曲げ板ガラスとしてはもちろん各種強化ガラスや強度アップガラスであり、平板や単板で使用できるとともに、複層ガラスあるいは合せガラスとしても使用できる。
また、被膜はガラス基板の両面に成膜しても構わない。
【0038】
さらに、撥水液をガラス基板の表面上に塗布する条件は、撥水剤成分のシラノール基と基材表面の水酸基との反応を活性化させるために、通常雰囲気湿度が約75%RH以下15%RH以上程度が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
さらに、ガラス基板の表面状態について、例えばフロートガラスの場合、該ガラスのトップ面とボトム面において明らかに差異があり、フロ−トガラスの火造り面であるトップ面に被膜することが好ましく、同様にロールアウト法で製造されるガラスについても、搬送ロール等と接触していない火造り面に被覆することが好ましいが、場合によっては、ボトム面あるいは非火造り面でも被覆できる。
【0040】
撥水液を塗布するガラス基板の表面を予め研摩処理し、酸処理することにより表面改質すると、被膜の強度等が増し好ましいが、その方法は以下のようにして行う。
【0041】
ガラス基板の表面改質のための研摩処理は、錫の混入が少ないフロ−トガラストップ面、ロ−ルアウトガラス面もしくはこれらの曲げまたは/および強化ガラス面等を、酸化セリウム(セリア)または/および酸化アルミニウム(アルミナ)または/および酸化珪素等の無機金属酸化物を主成分とする微細粉体(平均粒径が約5μm以下、好ましくは約1μm以下)である表面研摩剤を用い、湿式あるいは乾式でブラシ、スポンジまたは布などの研摩面にて、使用する粉体の種類とその粒径、研摩面の材質およびガラス基板との接触圧などを適宜変えることで、前記ガラス基板面の表面疵状態や研摩状態を制御しつつ研摩することが好ましい。
【0042】
次いで、該研磨処理したガラス面を、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸或いは酢酸、ギ酸もしくは蓚酸等の有機酸を、たとえばpH4濃度以下になるように添加調整した水溶液でなる酸処理液を用い、例えば酸処理液の温度が5℃〜70℃以下、処理時間10秒〜10分以下の条件下で酸処理することで、研摩処理したガラス表面のナトリウムイオンの抽出やシロキサン結合の切断によりシラノ−ル基を効率的に生成するようにし、該シラノ−ル基が後工程の撥水処理において撥水性フルオロアルキル基の固定化に寄与するものとすることができる。
【0043】
なお酸処理は、酸溶液中に浸漬して行うが、他にスプレ−法、フロ−法等、浸漬法と同等あるいは近似した酸処理効果が得られる方法であれば特に限定するものではなく採用できる。
【0044】
さらに、ガラス基板表面に凹凸の下地層を形成すると耐久性がより向上するので特に好ましく、その方法としては、例えば金属アルコキシド系化合物或いは金属アセチルアセトネート系化合物の中から少なくとも1種以上選択し、しかも該選択した2つ以上の化合物における平均分子量が異なるものであって、該2つ以上の化合物を溶剤とともに混合してコーティング溶液とし、概要液を被覆・加熱成膜してマイクロピット状の表層をつくる方法等が採用できるがこれに限定されるものではない。
【0045】
またさらに、ガラス基板への膜付け法としては、手塗り(ラビング法)、ノズルフロ−コ−ト法、ディッピング法、スプレー法、リバ−スコ−ト法、フレキソ法、印刷法、フローコート法あるいはスピンコート法、ならびにそれらの併用等既知の塗布手段、さらに本出願人が出願提案した各種塗布法等が適宜採用し得るものである。
また成膜の条件としては、例えば80℃以上350℃以下で1分間乃至60分間の乾燥とキュアリングを行い成膜するのが好ましい。
【0046】
【作用】
本発明は、m=9以上のタイプの長鎖フルオロアルキル基を含有するアルコキシ基含有シラン化合物を用いることにより、得られる撥水性基板は、初期接触角には殆ど有意差は認められないものの、実用耐久性(耐トラバース性、耐光性および耐薬品性など)は飛躍的に向上し、この効果は、フルオロアルキル基の鎖長に強く依存した。さらに、表面形状を凹凸化させた下地層(特にシリカ層)を基板表面に形成すると、極めて高い実用耐久性が実現可能となる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は係る実施例に限定されるものではない。
【0048】
実施例1
▲1▼撥水液の調合
撥水性被膜を形成するための撥水液組成の原料として、m=9であるヘインコサンフルオロドデシルトリメトキシシラン〔CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3(試作品、以下「FAS−9」と略す)〕と、希釈溶媒であるイソプロピルアルコ−ル〔(以下、「i−PA」と略す)〕と、酸触媒である60%硝酸(HNO3)用い、その配合割合をC10−FAS:i−PA:60%HNO3=1:25:0.3(単位:g)とし、室温で約2時間攪拌し加水分解反応を終結させた。
【0049】
次いで、該加水分解反応を終結させた溶液に脱水剤である合成ゼオライト〔モレキュラ−シ−ブ4A〕を添加し(添加量は重量比で撥水剤の5倍)、16時間(脱水時間)浸漬・放置し縮重合反応をさせつつ脱水を完了した後、濾紙(NO.7)を用いて濾過しモレキュラ−シ−ブ4Aを分離除去して塗布用撥水液とした。
▲2▼ガラス基板の準備
200mm×300mm×3.5mmサイズのフロートガラス基板の表面を、研磨液とブラシポリッシャーを用いて研磨し、十分に研摩剤を除去した後、35℃の0.1N硫酸水溶液中に1分間浸漬した。その後、市販のガラス洗浄機にて水洗および乾燥した。
▲3▼撥水処理方法
撥水処理は、撥水液を手塗りで基材表面に塗布し、風乾後、140℃で10分間キュアリングした。その後、余剰な撥水剤成分をi−PAで拭き取り、撥水性ガラスを得た。なお、撥水液塗布時の雰囲気温度と湿度は、22℃、45%RHとした。
▲4▼評価方法
撥水液の重合度の測定及び撥水性基板の撥水性試験及び耐摩耗性(耐トラバース)試験は下記の方法で評価した。
なお、GPC測定用の撥水液試料は、シラノール基を不活性化するために撥水液中のFASの加水分解および縮重合をTMS(トリメチルシリル)化剤の一つである、トリメチルクロロシラン((CH3)3SiCl:TMCS)を用いて、撥水液中のFASの加水分解物および縮重合物をTMS化したのち、孔径0.5μmのフィルターで試料(撥水液)をろ過した。TMS化のための反応条件は、5gの試料(撥水液)に対し、0.57gのTMCSを加えて、室温で1h撹拌した。得られたGPCチャートにおける各ピークから、脱水撥水液中にはFASの単量体(Monomer)、2量体(Dimer)、3量体(Trimer)および4〜5量体が存在することを確認し、それぞれの保持時間を、32.5、30.8、29.9および29.3〜28.5分と同定できた。
【0050】
なお、実施例1および後述する比較例1、比較例2のGPC測定によるFAS重合体の存在状態を図1に示す。
(図中、▲1▼は実施例1、▲2▼は比較例1、▲3▼は比較例2の各データを示す)
【0051】
なお、下地層を設けない実施例1、比較例1及び比較例2の耐光性の経時変化を図2に示す。
(図中、▲1▼は実施例1、▲2▼は比較例1、▲3▼は比較例2の各データを示す)
また、凹凸状の下地層を設けた実施例2および比較例3の耐光性の経時変化を図3に示す。
(図中、▲1▼は実施例2、▲2▼は比較例3の各データを示す)
▲5▼評価結果
得られた撥水液の重合度をGPCで測定したところ、図1に示しように、単量体、2量体、3量体が存在していた。また、耐摩耗性(耐トラバース性)、耐光性、耐アルカリ性は表1に示す通り、全ての評価において良好な結果を示した。
【0052】
実施例2
ガラス基板表面に凹凸状の下地層を形成した以外は実施例と同じ方法で行った。
なお、凹凸状の下地層は下記の方法で行った。
【0053】
先ず塗布液は、以下のようにして調製した。
テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4:TEOS〕の重合ゾル(平均分子量Mw:約1000〜3000)とアセチルアセトンで安定化したテトラブトキシチタン〔Ti(O−Bu)4〕との混合ゾル(アセチルアセトンとで安定化したテトラブトキシチタンの合有量は酸化物換算でSiO2に対してモル比で約20mol%である)を、イソプロピルアルコール(iPA)溶媒を加え、固形分濃度として酸化物換算で5wt%になるまで希釈したものをゾル溶液Aとした。メチルトリメトキシシラン〔CH3Si(OCH3)3:MTMS〕の重合ゾル(平均分子量Mv=約1,000)にイソプロピルアルコール(iPA)を加え、固形分濃度として酸化物換算で約20wt%になるまで希釈したものをゾル溶液Bとした。上記ゾル溶液Aを20gとゾル溶液Bを20gと、加水分解および脱水縮合反応の速度を調整するためのブタノール(n−BuOH、水分量2000ppm)25gとを約50℃で約3時間密詮状態で混合攪拌したものを溶液Cとした。さらにiPA(90wt%)324gとn−BuOH(10wt%)36gの混合系溶媒約360gで溶液Cを希釈してコーテイング用薬液を得た。
【0054】
塗布方法は、下記に示すスピンコーター法で行った。
先ず、スピンコーター上に被膜用ガラス基板をセットし、先ず塗布被膜域(高速スピン回転)において、スピン回転を開始し、回転速度が150rpmで3秒後、上記塗布液の塗布量としては200ml程度滴下し、18秒回転速度を維持し被膜化した。続いてレベリング域(スピン回転停止)において、被膜化した塗布液が渇きはじめて流動性を失うようになる前に、スピン回転を一旦停止し60秒間静止してレベリングせしめ、乾燥促進域(低速スピン回転)において、再度スピン回転を始め、50rpmの低速回転で40秒間維持し、塗膜の乾燥促進を行い、良好な成膜性のゲル膜を得た。
【0055】
次に、該ゲル膜付きガラス基板を250℃で30分間仮焼成を行い、さらにガラス温度で630℃〜660℃の本焼成を行い、SiO2−TiO2薄膜を得た。なお、凹凸化した上記下地層のRaは6nmであった。
また、塗布時の条件は次のような条件で行った。
【0056】
雰囲気温度、湿度:25℃、50%RH
塗布液の温度:25℃(雰囲気温度と同じ)
結果、表1、および図2に示すように、耐トラバース性は110〜112゜、耐光性(SUV試験600h)は106゜、耐薬品性(耐アルカリ性)は108゜と殆ど劣化が見れられず、良好な結果を示した。特に、耐光性試験ではUV照射1000hにおいても接触角は100゜以上を維持しており、実質上の耐光劣化が見られなくなった。
【0057】
比較例1
実施例1と比較して、撥水剤にm=7タイプのフルオロアルキルアルコキシシランである、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン〔CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3〕(信越化学製KBM−7803、以下「FAS−7」と略す)を用いた以外は、実施例1と同じ方法で行った。
【0058】
結果、表1、および図1に示すように、耐トラバース性は103〜108゜、耐光性(SUV試験600h)は72゜、耐薬品性(耐アルカリ性)は75゜と、実施例1よりかなり実用耐久性は低下した傾向を示した。
【0059】
比較例2
実施例1と比較して、撥水剤にm=5タイプのフルオロアルキルアルコキシシランである、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン〔CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3〕(東芝シリコーン製TSL8256、以下「FAS−5」と略す)を用いた以外は実施例1と同じ方法で行った。
【0060】
結果、表1、および図1に示すように、耐トラバース性は102〜104゜であったものの、耐光性(SUV試験600h)は60゜、耐薬品性(耐アルカリ性)は50゜と、実用に耐えるものではなかった。
【0061】
比較例3
実施例2と比較して、撥水剤にm=7タイプのフルオロアルキルアルコキシシランである、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン〔CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3〕(信越化学製KBM−7803、「FAS−7」)を用いた以外は実施例2と同じ方法で行った。
【0062】
結果、表1、および図2に示すように、耐トラバース性は103〜108゜と良好であったものの、耐光性(SUV試験600h)は89゜、耐薬品性(耐アルカリ性)は80゜と、実施例2より実用耐久性は大幅に低下した。
【0063】
【表1】
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、耐摩耗性(耐トラバース性)、耐光性及び耐薬品性(耐アルカリ性)等の特性に優れた長期耐久性を有する高品質撥水性基板が、量産下で簡単な方法で安定かつ確実に効率よく得られるので、建築用はもとより自動車用窓材、船舶や航空機の窓材、浴室用あるいは自動車用などのミラ−、産業用ガラス等各種の物品に広く採用できる利用価値の高い、有用な撥水性基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各脱水時間における撥水液のGPCチャート
【図2】下地層のない撥水性ガラスの耐光性試験結果を示すグラフ
【図3】凹凸状下地層を有する撥水性ガラスの耐光性試験結果を示すグラフ
Claims (2)
- 一般式[1]で表される長鎖フルオロアルキル基含有シラン化合物の撥水剤と、希釈用の溶媒と、酸性水溶液を混合してなり、脱水剤で液中から水分を除去することで、フルオロアルキル基含有シラン化合物の脱水重縮合反応を促進させてなることを特徴とする基板表面に撥水性被膜を固定化させるための撥水液。
CF3(CF2)m(CH2)2SiX3[1]
(式中、11≧m≧9の整数、Xはハロゲン、イソシアネート基またはアルコキシ基であって、アルコキシ基は、メトキシ基(OCH3)、エトキシ基(OC2H5)およびイソプロポキシ基(OC3H5)を表す) - 基板表面に直接または下地層を形成した上面に請求項1に記載の撥水液を塗布する工程と、次いで撥水液中に含まれる長鎖フルオロアルキル基含有シランを該基板表面に固定化し撥水性被膜を形成する硬化工程とからなることを特徴とする撥水性基板の製法。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP22665398A JP3628881B2 (ja) | 1998-08-11 | 1998-08-11 | 撥水液及び撥水性基板の製法 |
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