JP3553553B2 - 熱可塑性エラストマーのアニオン性乳化分散液およびその製法 - Google Patents
熱可塑性エラストマーのアニオン性乳化分散液およびその製法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマーのアニオン性乳化分散液およびその製法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、熱可塑性エラストマーの乳化・分散に使用する界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤より少ない量のカチオン界面活性剤の異種イオン性界面活性剤3種を使用することによって、乳化性が向上し、経日安定性および機械的安定性が改良され、アスファルト改質用、塗工紙用、フォームラバー用、タイヤコード用、コーティング用(缶、プラスチック、無機材料、木など)、塗料用、フロアポリッシュ用、接着剤用(水系接着剤、ポリマーセメント、モルタル接着剤など)、粘着剤用、再剥離ラベル用、ダイレクトメール用、およびカーペット、自動車シート、マットなどの繊維加工用、防水材用などのエマルジョンとして、またはこれらの用途に用いられるエマルジョンに混合して使用される場合に好適な性質を付与することができる熱可塑性エラストマーのアニオン性乳化分散液およびその製法に関する。
【0003】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
たとえば、多くの用途に使用することができるブロック共重合体ラテックスの1つの用途として、アスファルトに、ゴム、樹脂(熱可塑性エラストマーを含む、以下同様)などの高分子材料からなる改質剤を添加することにより、60℃粘度、タフネス、テナシティー、感温性などを改善したアスファルト(改質アスファルト)が開発され、舗装の耐流動性、耐磨耗性などの向上を目的として使用されてきている。
【0004】
前記改質剤として、熱可塑性エラストマーを有機溶剤に溶解させたのち、該エラストマーに対して10重量%(以下、%という)以下のポリアルキレンオキシド基含有アニオン界面活性剤を主成分とし、必要によりノニオン界面活性剤が使用される乳化分散剤を加え、ついで温水を加えて乳化分散させ、有機溶剤を除去して平均粒子径5μm以下の水性乳化分散体のアスファルト改質剤を得て使用することが開示されている(特開平2−292368号公報)。
【0005】
なお、前記ポリアルキレンオキシド基含有アニオン界面活性剤および必要により使用されるノニオン界面活性剤の具体例として、それぞれポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル硫酸エステルソーダ塩(エチレンオキシド4モル付加物)、ポリオキシエチレンドデシルエーテル酢酸ソーダ塩(エチレンオキシド3モル付加物)、およびポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(エチレンオキシド4モル付加物)があげられている。
【0006】
また、多くの用途に使用することができるブロック共重合体ラテックスとして一般式:
A−B−A、(A−B)n、B−(A−B)n、(A−B)n−AまたはA−B−(B−A)n
(式中、Aは25℃以上の2次転移温度を有する非弾性重合体ブロック、Bは10℃以下の2次転移温度を有する弾性重合体ブロック、nは2以上の整数)で表わされるブロック共重合体を、乳化剤として、(a)ロジン酸塩または不均化ロジン酸塩、および(b)一般式:
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基または炭素数8〜12のアルキル基を有するアルキルフェニル基、R2は炭素数2〜5のアルキレン基、mは3〜50の整数)で表わされる化合物および必要により増粘剤(メチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、カゼイン、ポリアクリル酸またはその誘導体)を用いて乳化したブロック共重合体ラテックスが開示されている(特公昭52−22651号公報)。
【0009】
さらに、前記ブロック共重合体ラテックスと類似の技術として、多くの用途に使用することができるスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとして、溶液重合法によって得られたスチレン−ブタジエンランダム共重合体またはスチレン−ブタジエン2元ブロック共重合体またはこれらの混合物を、乳化剤として(a)高級脂肪酸、ロジン酸または不均化ロジン酸、および(b)一般式:
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基またはアルキル基の炭素数8〜12のアルキルフェニル基、R2は炭素数2〜5のアルキレン基、nは3〜50の整数)で表わされる化合物を重合体溶液に溶解し、これをアルカリ水溶液と混合、乳化したスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスが開示されている(特公昭52−15100号公報、特開昭51−13847号公報)。
【0012】
しかし、前記ブロック共重合体ラテックスおよびスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスは、いずれも経日安定性または機械安定性が必ずしも充分ではないという問題を有している。
【0013】
前記問題を解決するために本発明者らは、熱可塑性エラストマーを乳化・分散させる乳化剤として、スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレンポリアミンポリアルキレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルポリアルキレンオキシド付加物およびベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物のうちの1種以上とアニオン界面活性剤とを使用した水性乳化分散型アスファルト改質剤であって、簡便な方法で熱アスファルトに混合、溶解させることができ、施工性を損うことなくアスファルトの耐流動性、強靭性、低温可撓性を改善することができる、経日安定性および機械的安定性の改善された水性乳化分散型アスファルト改質剤を開発している(特開2001−59053公報)。
【0014】
特開2001−59053公報に記載の水性乳化分散型アスファルト改質剤は、従来のアスファルト改質剤と比較してすぐれたものではあるが、未だ保存安定性および機械的安定性の面で改良の余地がある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特開2001−59053公報に記載の水性乳化分散液における保存安定性および機械的安定性が必ずしも充分な性能を有していないという問題を解決するためになされたものである。
【0016】
本発明者らは、前記問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とのコンプレックスを部分的に形成することにより、該コンプレックスがアニオン界面活性剤と部分的に類似した構造をもつことによりアニオン界面活性剤との親和性が向上し、アニオン界面活性剤の乳化分散力を高めること、ひいては、乳化物の経日安定性および機械的安定性をさらに向上させることができること、また、溶剤留去工程でのアニオン界面活性剤に由来する泡立を抑制することができることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0017】
すなわち、本発明は、
熱可塑性エラストマーを、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤より少ない量のカチオン界面活性剤の異種イオン性界面活性剤3種を用いて乳化分散させたことを特徴とする熱可塑性エラストマーのアニオン性乳化分散液(請求項1)、
アニオン界面活性剤100重量部(以下、部という)に対して、カチオン界面活性剤0.1〜50.0部を配合する請求項1記載のアニオン性乳化分散液(請求項2)、
ノニオン界面活性剤がスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物である請求項1または2記載のアニオン性乳化分散液(請求項3)、
前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物が、モノスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれる請求項3記載のアニオン性乳化分散液(請求項4)、
ノニオン界面活性剤がベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物である請求項1または2記載のアニオン性乳化分散液(請求項5)、
前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物が、モノベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれる請求項5記載のアニオン性乳化分散液(請求項6)、
さらに、増粘剤としてセルロース誘導体を含有する請求項1、2、3、4、5または6記載のアニオン性乳化分散液(請求項7)、
熱可塑性エラストマーおよび有機溶剤からなる溶液に、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤より少ない量のカチオン界面活性剤を溶解させた溶液を調製したのち、水と混合して乳化させ、ついで有機溶剤を留去させることを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載のアニオン性乳化分散液の製法(請求項8)、
請求項8記載のアニオン性乳化分散液の製法において、有機溶剤を留去させたのち、さらに増粘剤を添加・溶解させることを特徴とする請求項7記載のアニオン性乳化分散液の製法(請求項9)
に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される熱可塑性エラストマーは、たとえば水性感圧接着剤として使用した場合には、アクリル系水性感圧接着剤に混合することによって、高温での保持力を改良する成分として、またアスファルト改質剤として使用した場合には、アスファルトとの相溶性が良好で、たとえばアスファルトに加えた場合にアスファルトの軟化点、粘弾性、強靭性、高温粘度、低温可撓性などを向上させることができる成分として、そして水性耐チッピング塗料用SBRラテックスなどに加えた場合には、SBRとの相溶性が良好で耐チッピング性や密着性などを向上させることができる成分として使用されるものである。
【0019】
前記熱可塑性エラストマーとしては、従来から前記のごとき目的で使用されているものであればとくに限定なく使用することができる。その例としては、たとえばホットメルト接着剤として使用されている一般式:
A−B−A、(A−B)n、B−(A−B)nおよび(A−B)n−A
(式中、Aは25℃以上の2次転移温度を有する非弾性重合体ブロック、Bは10℃以下の2次転移温度を有する弾性重合体ブロック、nは2以上の整数)で表わされるブロック共重合体があげられる。
【0020】
前記非弾性重合体ブロックとしては、たとえばスチレン、α−メチルスチレンなどのモノビニル芳香族炭化水素から選ばれた単量体の単独重合体ブロックまたは2種以上からなる共重合体ブロック、モノビニル芳香族炭化水素と下記Bブロック成分の脂肪族共役ジエン化合物とのテーパー型共重合体ブロック、モノビニル芳香族炭化水素と下記Bブロック成分の脂肪族共役ジエン化合物とのランダム共重合体ブロックなどがあげられる。該ブロックの具体例としては、スチレン重合体、スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体、スチレンとブタジエンあるいはイソプレンとのテーパー型共重合体、スチレンとブタジエンあるいはイソプレンとのランダム共重合体などのブロックがあげられ、その分子量としては、一般に1,000〜200,000、さらには10,000〜50,000のものが使用される。
【0021】
また、前記弾性重合体ブロックとしては、たとえばブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン化合物から選ばれた単量体の単独重合体ブロック、前記単量体の2種以上からなる共重合体ブロック、脂肪族共役ジエン化合物とモノビニル芳香族化合物とのテーパー型共重合体ブロック、脂肪族共役ジエン化合物とモノビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロック、これらの重合体ブロックを水添した重合体ブロックなどがあげられる。該ブロックの具体例としては、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、ブタジエンとイソプレンの共重合体、スチレンとブタジエンあるいはイソプレンのテーパー型共重合体、スチレンとブタジエンあるいはイソプレンのランダム共重合体、水添したブタジエン重合体、水添したスチレンとブタジエンの共重合体などのブロックがあげられ、その分子量としては、一般に5,000〜500,000、さらには100,000〜350,000のものが使用される。
【0022】
前記ブロック共重合体中における非弾性重合体ブロックの含有率は全重合体に対して10〜70%、さらには20〜40%であるのが好ましい。該含有率が前記範囲外の場合には熱可塑性エラストマーとしての特徴が発現しにくくなる。
【0023】
前記ブロック共重合体の分子量としては、10,000〜700,000、さらには100,000〜500,000であるのが好ましい。該分子量が小さすぎる場合には、ラテックスから得られる皮膜の機械的強度が充分でなくなる傾向が生じ、大きすぎる場合には、乳化時の粘度が高くなりすぎる、乳化が不完全になったり困難となり、得られるラテックスの性能に悪影響を及ぼす傾向が生じる。
【0024】
前記ブロック共重合体の具体例としては、たとえばSBSブロック共重合体、SISブロック共重合体、水添SBSブロック共重合体などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
前記ブロック共重合体は、リビング重合開始剤の存在下に、単量体をブロック毎に順次重合させる方法、反応性の異なる2種以上の単量体を同時に投入して重合させ、ブロック共重合体を得る方法、前記開始剤によるリビングブロック共重合体をカップリングする方法などにより得ることができる。
【0026】
前記ブロック重合体から該ブロック共重合体ラテックスを製造する際のポリマー溶液は重合溶液をそのまま用いてもよく、また該ブロック共重合体の固形状物をベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロオクタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクレン、二塩化メタンなどの溶剤に溶解させて使用してもよい。ポリマー溶液は通常5〜30%の濃度の範囲で用いるのが好ましい。
【0027】
本発明では、前記熱可塑性エラストマーを乳化・分散させるために、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤よりも少ない量のカチオン界面活性剤の異種イオン性活性剤3種が用いられる。前記熱可塑性エラストマーの乳化・分散に、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤よりも少ない量のカチオン界面活性剤の異種イオン性活性剤3種を用いるため、カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とのコンプレックスが部分的に形成し、該コンプレックスがアニオン界面活性剤と部分的に類似した構造をもつことによりアニオン界面活性剤との親和性が向上し、一層アニオン界面活性剤の乳化分散力を高めることができ、ひいては、乳化物の経日安定性および機械的安定性を向上させることができる。また、アニオン−カチオン界面活性剤のコンプレックス(通常、水不溶性)が生成するため、耐水性が向上し、しかも溶剤留去工程でのアニオン界面活性剤に由来する泡立を抑制することができる。また、カチオン界面活性剤の量がアニオン界面活性剤の量よりも少ないため、得られる熱可塑性エラストマーの乳化分散液は、アニオン性乳化分散液となり、アニオン性の水性塗料や水性接着剤の改質、あるいはアスファルト改質剤として使用することができる。さらに、アニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤のほかに、イオン性に影響しないノニオン界面活性剤を使用するため、乳化分散性が良好なアニオン性乳化分散液にすることができる。
【0028】
前記アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤とのコンプレックスが部分的に形成するというのは、アニオン界面活性剤をカチオン界面活性剤よりも多く使用するため、コンプレックスができてもアニオン界面活性剤がすべてコンプレックスになることはないということである。
【0029】
前記ノニオン界面活性剤の具体例としては、たとえばスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレンポリアミンポリアルキレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルポリアルキレンオキシド付加物およびベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物のうちの1種以上(以下、特定の乳化剤ともいう)およびこれら以外の他の通常のノニオン界面活性剤があげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
前記ノニオン界面活性剤として前記特定の乳化剤を使用する場合には、製造されるアニオン性乳化分散液、さらには該アニオン性乳化分散液を用いた各改質剤の経時安定性および機械的安定性を良好にすることができる。また、熱可塑性エラストマーの乳化・分散時に熱可塑性エラストマー溶液の製造に使用される有機溶剤(たとえばトルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロオクタンなど)を減圧除去する際の泡立を抑制することにより、脱溶剤を短時間に容易に実施可能で、保存上安定な水性分散液を製造することができる。
【0031】
前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物とは、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノールおよびトリ以上のスチレン化フェノールのうちの1種以上に炭素数2〜4のアルキレンオキシド(たとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド)を付加重合させたものである。たとえばジスチレン化フェノールポリエチレンオキシド付加物は次式で示される。
【0032】
【化3】
【0033】
前記トリ以上のスチレン化フェノールとは、トリスチレン化フェノールにテトラ以上のスチレン化フェノールが少量混入していてもよいことを意味する。
【0034】
前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物の好ましい具体例としては、たとえばエチレンオキシド平均付加モル数が20モルのモノスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれるものなどがあげられる。
【0035】
前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物は、モノスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ジスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、トリ以上のスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物をそれぞれ単独で使用してもよいが、乳化性は分布をもっている方が良好であるため、これらの混合物を用いる方が好ましい。
【0036】
前記ポリアルキレンポリアミンポリアルキレンオキシド付加物とは、たとえばポリエチレンイミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミンなどのポリアルキレンポリアミンに、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加重合させたもの(たとえばエチレンオキシドとプロピレンオキシドまたはブチレンオキシドとをブロックまたはランダム付加重合させたもの)である。
【0037】
前記ポリアルキレンポリアミンポリアルキレンオキシド付加物の好ましい具体例としては、たとえばポリエチレンイミン(たとえば分子量1200または1800のもの)にエチレンオキシドとプロピレンオキシドをランダムまたはブロック付加してなる多官能チッ素系ポリエーテル化合物などがあげられる。
【0038】
前記多価アルコール脂肪酸エステルとは、たとえば3〜8価の多価アルコールと炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸とからなり、ソルビタンを例にとれば水酸基が1分子当り平均2〜3個残存しているもの、ショ糖を例にとれば水酸基が1分子当り平均5〜7個残存しているものである。
【0039】
前記多価アルコールの具体例としては、たとえばグリセリン、ジグセリン、ソルビトール、ソルバイドや前述のソルビタン、ショ糖などがあげられる。
【0040】
また、前記飽和または不飽和脂肪酸の具体例としては、たとえばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、炭素数8〜22の直鎖状または分岐を有する合成飽和脂肪酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などの不飽和脂肪酸などがあげられる。
【0041】
前記多価アルコール脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、たとえばソルビタンオレイン酸エステル(モノ、ジ、トリ、テトラエステルの分布があり、1分子当り平均2〜3個の水酸基を有するもの)などがあげられる。
【0042】
前記多価アルコール脂肪酸エステルポリアルキレンオキシド付加物とは、たとえば3〜8価の多価アルコールと炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸とからなり、ソルビタンを例にとれば水酸基が1分子当り2〜3個残存している多価アルコール脂肪酸エステル、ショ糖を例にとれば水酸基が1分子当り平均5〜7個残存している多価アルコール脂肪酸エステルに、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(たとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド)を付加重合させたものである。
【0043】
前記多価アルコールおよび飽和または不飽和脂肪酸としては、前記多価アルコール脂肪酸エステルの製造に使用したものと同じものが使用される。
【0044】
前記多価アルコール脂肪酸エステルポリアルキレンオキシド付加物の好ましい具体例としては、たとえばアトラス社のTween60、Tween80、Tween85、第一工業製薬(株)のソルゲンTW−20、ソルゲンTW−60、ソルゲンTW−80などがあげられる。
【0045】
前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物とは、モノベンジル化フェノール、ジベンジル化フェノール、トリ以上のベンジル化フェノールのうちの1種以上に、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(たとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキサイド)を付加重合させたものである。たとえばジベンジル化フェノールポリエチレンオキシド付加物は次式で示される。
【0046】
【化4】
【0047】
前記トリ以上のベンジル化フェノールとは、トリベンジル化フェノールにテトラ以上のベンジル化フェノールが少量混入していてもよいことを意味する。
【0048】
前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物の好ましい具体例としては、たとえばエチレンオキシド平均付加モル数が20モルのモノベンジル化フェノールエチレンオキシド付加物:ジベンジル化フェノールエチレンオキシド付加物:トリ以上のベンジル化フェノールエチレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれるものなどがあげられる。
【0049】
前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物は、モノベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ジベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、トリ以上のベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物をそれぞれ単独で使用してもよいが、乳化性は分布をもっている方が良好であるため、これらの混合物を用いる方が好ましい。
【0050】
前記特定の乳化剤は、1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらのうちでは、スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物、ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物が、多分散度が高く(疎水基、親水基ともに幅広い分布をもっており)、乳化される熱可塑性エラストマーの多分散度が高いのとあいまって乳化性能が良好で泡トラブルが少なくなる点から好ましい。
【0051】
前記特定のノニオン界面活性剤以外の通常のノニオン界面活性剤としては、たとえばアルキルポリオキシエチレンエーテル(アルキル基の炭素数は8〜22)、アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテル(アルキル基の炭素数は8〜12)、アルキルポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル(アルキル基の炭素数は8〜22、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックはどちらが先に付加していてもよい、また、ランダム付加していてもよい)、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル(脂肪酸は炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸)、ポリオキシエチレン(硬化)ひまし油、アルキルポリオキシエチレンアミン(アルキル基の炭素数は8〜18)、アルキルポリオキシエチレンアミド(アルキル基の炭素数は8〜18)などがあげられる。
【0052】
前記ノニオン界面活性剤は、前記特定の乳化剤だけをノニオン界面活性剤として用いてもよく、また、特定の乳化剤以外の通常のノニオン界面活性剤だけをノニオン界面活性剤として用いてもよく、さらに、これらを組み合わせて用いてもよい。前記特定の乳化剤と特定の乳化剤以外の通常のノニオン界面活性剤とを組み合わせて用いる場合には、目的に応じて適宜使用割合を定めて使用すればよい。
【0053】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤としては、前記熱可塑性エラストマーの水性乳化分散液の製造に使用することができるものであればとくに限定なく使用することができる。
【0054】
前記アニオン界面活性剤としては、たとえばカルボン酸型アニオン界面活性剤、硫酸エステル型アニオン界面活性剤、スルホン酸型アニオン界面活性剤、リン酸エステル型アニオン界面活性剤などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
前記カルボン酸型アニオン界面活性剤の具体例としては、たとえば一般式:
RCOOM
(式中、RはC7 〜 21の飽和または不飽和炭化水素基、MはNa、K、NH4、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン)で表わされる脂肪酸塩、松の木の抽出などによって得られる樹脂酸の塩で主成分はアビエチン酸塩(たとえば、
【0056】
【化5】
【0057】
で表わされる)であるロジン酸塩、石油に含まれるカルボン酸の塩で、たとえば一般式:
【0058】
【化6】
【0059】
(式中、MはNa、K、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン、nは1以上)で表わされる構造を有するナフテン酸塩、一般式:
R(OC2H4)nOCH2COOM
(式中、RはC10 〜 18のアルキル基、アルキルフェニル基、MはNa、Kなどの陽イオン、nは2以上)で表わされるエーテルカルボン酸塩、一般式:
【0060】
【化7】
【0061】
(式中、RはC8 〜 18の不飽和炭化水素基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるアルケニルコハク酸塩、一般式:
RCON(CH3)CH2COOM
(式中、RはC11 〜 18の飽和または不飽和炭化水素基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるN−アシルサルコシン塩、一般式:
【0062】
【化8】
【0063】
(式中、RはC11 〜 18の飽和または不飽和炭化水素基、MはNa、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン)で表わされるN−アシルグルタミン酸塩などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
前記硫酸エステル型アニオン界面活性剤の具体例としては、一般式:
ROSO3M
(式中、RはC8 〜 18の飽和または不飽和炭化水素基、MはNa、K、NH4、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン)で表わされる硫酸第1アルキル塩、一般式:
【0065】
【化9】
【0066】
(式中、RR1CH−はC12 〜 16の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する第2級アルコールからOH基を除いた基、MはNaなどの陽イオン)で表わされる硫酸第2アルキル塩、一般式:
R(OC2H4)nOSO3M
(式中、RはC12 〜 18の飽和または不飽和炭化水素基、MはNa、K、NH4、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン、nは2以上)で表わされる硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、一般式:
【0067】
【化10】
【0068】
(式中、RはC8 〜 12のアルキル基、MはNaなどの陽イオン、nは2以上)で表わされるアルキルフェニルポリオキシエチレン硫酸塩、一般式:
RCOOCH2CH(OH)CH2OSO3M
(式中、RはC11 〜 17の飽和または不飽和炭化水素基、MはNaなどの陽イオン)で表わされる硫酸モノアシルグリセリン塩、一般式:
RCONHC2H4OSO3M
(式中、RはC11 〜 17の飽和または不飽和炭化水素基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるアシルアミノ硫酸エステル塩、オリブ油、ひまし油、綿実油、なたね油、牛脂などの油脂中の2重結合や水酸基が硫酸エステル化物の塩(一部アシルグリセリンの加水分解、硫酸化も起こっている)である硫酸化油、オレイン酸、リシノール酸などの2重結合、水酸基を有する脂肪酸のプロピル、ブチルエステルなどの硫酸エステル化物の塩である硫酸化脂肪酸アルキルエステルなどがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
前記スルホン酸型アニオン界面活性剤の具体例としては、たとえばC14 〜 19のα−オレフィンのスルホン化物で一般にはRCH=CHCH2SO3M(アルケニル体)および
【0070】
【化11】
【0071】
(MはNa、Kなどの陽イオン)の混合物として得られるα−オレフィンスルホン酸(AOS)塩、C8 〜 20のn−パラフィンにSO2、Cl2のスルホオキシ化物あるいはスルホクロル化物をアルカリで中和して得られる第2アルカンスルホン酸塩、C12 〜 18の脂肪酸のメチル、イソプロピルエステルなどのα−スルホン化物の塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、一般式:
RCOOC2H4SO3M
(式中、RはC11 〜 17の飽和または不飽和炭化水素基、M、Naなどの陽イオン)で表わされるアシルイセチオン酸塩、一般式:
RCON(CH3)C2H4SO3M
(式中、RはC11 〜 17の飽和または不飽和の炭化水素基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるN−アシル−N−メチルタウリン酸、一般式:
【0072】
【化12】
【0073】
(式中、RはC2 〜 20直鎖または分岐鎖アルキル基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるジアルキルスルホコハク酸、一般式:
【0074】
【化13】
【0075】
(式中、RR1CH−はC9 〜 13の直鎖または分岐鎖アルキル基、MはNa、Kなどの陽イオン)で表わされるアルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS、LAS)、一般式:
【0076】
【化14】
【0077】
(式中、RはC3 〜 5の直鎖または分岐鎖アルキル基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるアルキルナフタレンスルホン酸塩、一般式:
【0078】
【化15】
【0079】
(式中、RはC12のアルキル基、MはNaなどの陽イオン)で表わされるアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
前記リン酸エステル型アニオン界面活性剤の具体例としては、たとえば一般式:
【0081】
【化16】
【0082】
(式中、RはC8 〜 18のアルキル基、MはH、Na、K、NH4、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン)で表わされるリン酸アルキル塩((1)リン酸モノエステル塩、(2)ジエステル塩、(3)(1)と(2)の混合物として存在する)、一般式:
【0083】
【化17】
【0084】
(式中、RはC12 〜 18のアルキル基、MはH、Na、K、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン、nは2以上)で表わされるリン酸アルキルポリオキシエチレン塩(通常はジエステル塩との混合物として存在する)、一般式:
【0085】
【化18】
【0086】
(式中、RはC8 〜 12のアルキル基、MはH、Na、K、アルカノールアミン・Hなどの陽イオン、nは2以上)で表わされるリン酸アルキルポリオキシエチレン塩(通常はモノエステル塩とジエステル塩との混合物として存在する)などがあげられる。
【0087】
また、前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物の硫酸エステル塩(Na塩、K塩など)、前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物の硫酸エステル塩(Na塩、K塩など)などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
前記アニオン界面活性剤に使用される原料のアルコールの具体例としては、たとえば2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、アルフォール、ドバノールなどの合成第1級アルコール、タージトールS、ソフタノール、オキソアルコールなどの合成第2級アルコール、ベンジルアルコール、およびフェノールとしてオクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどのC8 〜 22のもの、スチレン化フェノール、ベンジル化フェノールなど、アミンの具体例としては、ラウリルアミン、ラウリルメチルアミン、ジオレイルアミンなどの高級アミン、カルボン酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ロジン酸などがあげられる。
【0089】
前記アニオン界面活性剤は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物の硫酸エステル塩(Na塩、K塩など)、前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物の硫酸エステル塩(Na塩、K塩など)が前記特定のノニオン界面活性剤との相溶性がよい点から、また、カルボン酸型界面活性剤が、カチオン界面活性剤との間で生成したコンプレクスの被乳化物への吸着性が良い点から好ましい。
【0090】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤としては、前記熱可塑性エラストマーの水性乳化分散液の製造に使用することができるものであればとくに限定なく使用することができる。
【0091】
前記カチオン界面活性剤としては、たとえばアルキルアミン塩型カチオン界面活性剤、アシルアミン塩型カチオン界面活性剤、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、アミド結合含有アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、エステル結合またはエーテル結合含有アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、イミダゾリンまたはイミダゾリウム塩型カチオン界面活性剤などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
前記アルキルアミン塩型カチオン界面活性剤、アシルアミン塩型カチオン界面活性剤の具体例としては、たとえばC12 〜 18のアルキル基を有する第1級アミン塩(塩酸塩、酢酸塩など)、C17のアルキル基またはアルケニル基を有するアシルアミノエチルジエチルアミン塩(塩酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩など)、C12 〜 18のアルキル基を有するN−アルキルポリアルキレンポリアミン塩(塩酸塩、酢酸塩、アルキレン基のC数は2〜3、アルキレンアミン基の繰返し数は1〜3)、C17のアルキル基またはアルケニル基を有する脂肪酸ポリエチレンポリアミド塩(塩酸塩、エチレンアミン基の繰返し数は2)、C17のアルキル基を有するジエチルアミノエチルアミド塩(塩酸塩、酢酸塩、乳酸塩など)などがあげられる。これらは1種で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
前記第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、アミド結合含有アンモニウム塩型カチオン界面活性剤の具体例としては、たとえばC12 〜 18のアルキル基またはC18のアルケニル基を有するアルキルまたはアルケニルトリメチルアンモニウム塩(陰イオンはCl−、Br−、CH3SO4 −など)、C12 〜 18のアルキル基またはC18のアルケニル基を有するジアルキルまたはジアルケニルジメチルアンモニウム塩(陰イオンはCl−、Br−、CH3SO4 −)、C12 〜 18のアルキル基またはC18のアルケニル基を有するアルキルまたはアルケニルジメチルベンジルアンモニウム塩(陰イオンはCl−)、C12 〜 18のアルキル基を有するアルキルピリジウム塩(陰イオンはCl−、Br−)、C17のアルキル基またはC17のアルケニル基を有するアシルアミノエチルメチルジエチルアンモニウム塩(陰イオンはCH3SO4 −)、C13のアルキル基を有するアシルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩(陰イオンはCl−)、C17のアルキル基を有するアシルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩(陰イオンはClO4 −)、C11のアルキル基を有するアシルアミノエチルピリジニウム塩(陰イオンはCl−)、C17のアルキル基またはC17のアルケニル基を有するジアシルアミノエチルジメチルアンモニウム塩(陰イオンはCl−、なお、メチル基の1つがヒドロキシエチル基になっていてもよい)などがあげられる。また、トリアルキルまたはアルケニルジアルキルアミンなどの3級アミンを、キシレニルジクロライドなどの4級化剤を用いてカチオン化させた化合物などもあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
前記エステル結合またはエーテル結合含有アンモニウム塩型カチオン界面活性剤の具体例としては、たとえばC17のアルキル基またはC17のアルケニル基を有するジアシロキシエチルメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩(陰イオンは、CH3SO4 −)、C16のアルキル基を有するアルキルオキシメチルピリジウム塩(陰イオンはCl−)などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
前記イミダゾリンまたはイミダゾリウム塩型カチオン界面活性剤の具体例としては、たとえばC11 〜 17のアルキル基またはC17のアルケニル基を有するアルキルまたはアルケニルイミダゾリン(酢酸塩、炭酸塩、四級化物がある)、C11 〜 17のアルキル基またはC17のアルケニル基を有する1−ヒドロキシエチル2−アルキルまたはアルケニルイミダゾリン(第四級化物もある)、C17のアルキル基またはアルケニル基を有する1−アシルアミノエチル−2−アルキルイミダゾリウム塩(陰イオンは、CH3SO4 −、C2H5SO4 −、2位のアルキル基はメチル基またはエチル基)などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
前記カチオン界面活性剤は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が、アニオン界面活性剤とのコンプレックス形成能の点から好ましい。
【0097】
前記ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤の使用割合としては、全量が100部となるようにノニオン界面活性剤、好ましくは特定のノニオン界面活性剤を含むノニオン界面活性剤を10〜90部、さらには30〜70部、とくには40〜60部使用し、アニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤を合計量10〜90部、さらには30〜70部、とくには40〜60部使用するのが、熱可塑性エラストマー水性分散体の製造時の熱可塑性エラストマーと溶剤とからなる混合物の乳化性、溶剤留去工程での泡立防止、熱可塑性エラストマーのアニオン性乳化分散液(以下、熱可塑性エラストマー乳化分散体ともいう)の保存安定性などの点から好ましい。前記ノニオン界面活性剤、とくに特定の乳化剤を含むノニオン界面活性剤の使用量が10部未満になると、ノニオン界面活性剤を使用することによる乳化分散性向上の効果が充分得られにくくなる傾向が生じ、90部をこえるとアニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤を使用することによる熱可塑性エラストマー乳化分散体の製造時の熱可塑性エラストマーと溶剤とからなる混合物の乳化性を充分良好にすることができにくくなる傾向が生じる。また、アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤のコンプレックスの生成量が少なくなるため、溶剤留去工程での泡立防止の効果が得られにくくなる傾向が生じる。なお、アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤のコンプレックスの生成と、特定の乳化剤またはこれを含むノニオン界面活性剤とを組み合わせて使用する場合、相乗抑泡効果が得られるため好ましい。
【0098】
前記アニオン界面活性剤へのカチオン界面活性剤の配合割合としては、併用するノニオン界面活性剤の種類および量により異なるため一義的に規定することは困難であるが、一般に、アニオン界面活性剤100部に対して0.1〜50.0部、さらには0.5〜40.0部、ことには1.0〜30.0部であるのが好ましい。カチオン界面活性剤の配合割合が少なすぎる場合には、カチオン界面活性剤−アニオン界面活性剤のコンプレックスを形成することによる効果が充分発現せず、多すぎる場合には製造される熱可塑性エラストマー乳化分散体が充分アニオン性を示さなくなる。ただし、使用するアニオン界面活性剤のアニオン基数に対して、併用するカチオン界面活性剤のカチオン基数を前記条件下において、50%以内に調整することが、本発明の効果を発現させるために肝要である。
【0099】
前記アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤との具体的な組み合わせとしては、たとえばスチレン基が平均2個付加したフェノールにエチレンオキシド13モルを付加させ、さらに硫酸化した化合物のナトリウム塩(スチレン化フェノールEOA硫酸Na)100部とラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(LDMBAC)3〜20部との組み合わせ、ロジンK(天然系アニオン化合物のカリウム塩)100部とラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(LDMBAC)3〜30部との組み合わせ、スチレン基が平均2個付加したフェノールにエチレンオキシド13モルを付加させ、さらに硫酸化した化合物のナトリウム塩(スチレン化フェノールEOA硫酸Na)100部とラウリルジメチルアンモニウムエチルサルフェート(LDMEAS)1〜30部との組み合わせ、ロジンK(天然系アニオン化合物のカリウム塩)100部とラウリルジメチルアンモニウムエチルサルフェート(LDMEAS)1〜30部との組み合わせなどがあげられる。これらのうちでも、スチレン化フェノールEOA硫酸NaまたはロジンK/LDMBACの組み合わせが、ノニオン界面活性剤との相溶性がよい、そしてアニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤のコンプレックスの被乳化物への吸着性がよい点から好ましい。
【0100】
本発明の各種改質剤などに使用される熱可塑性エラストマーのアニオン性乳化分散液は、ノニオン界面活性剤、好ましくは特定の乳化剤を含むノニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤、さらにアニオン界面活性剤より少ない量のカチオン界面活性剤の存在下で前記熱可塑性エラストマーを乳化分散させ、アニオン性乳化分散液にすることによって製造される。
【0101】
前記熱可塑性エラストマー100部に対するノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤(以下、全界面活性剤ともいう)の使用量は、1〜15部、さらには5〜13部であるのが好ましい。前記全界面活性剤の使用量が少なすぎる場合には、前記アニオン性乳化分散液製造時の熱可塑性エラストマーと溶剤とからなる混合物の乳化性が良好でなくなり、多すぎる場合には溶剤留去工程での泡トラブルが生じ、溶剤留去に要する時間が大幅に長くなり、製造上問題となる。
【0102】
前記アニオン性乳化分散液にしめる前記熱可塑性エラストマーおよび全界面活性剤の割合は、40〜65%、さらには45〜60%であるのが、アニオン性乳化分散液の保存安定性や各改質剤として用いた場合にポンプ輪送しやすい粘性にすることができるなどの点から好ましい。
【0103】
前記アニオン性乳化分散液の製造は、たとえば熱可塑性エラストマーの有機溶剤溶液および全界面活性剤の溶融混合物と温水をラインミキサーで混合する、熱可塑性エラストマーの有機溶剤溶液および全界面活性剤の溶融混合物に温水を滴下するなどの方法により乳化・分散させたのち、有機溶剤をたとえば60℃、720〜640mmHg(約96.0〜85.3kPa)で除去することにより行なうことができる。
【0104】
前記有機溶剤の除去時、特開2001−59053公報に記載の水性乳化分散液以外の従来の熱可塑性エラストマー水性分散体の場合には泡立がはげしく、脱溶剤に長時間を要するが、本発明ではアニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤のコンプレックスを形成させるため泡立を少なくすることができ、容易に熱可塑性エラストマーのアニオン性乳化分散液を製造することができる。ノニオン界面活性剤として特定の乳化剤を使用する場合には、さらに泡立を少なくすることができるという相乗効果が期待できる。
【0105】
製造されたアニオン性乳化分散液の粒径は、乳化のさせ方、使用する乳化剤の量、乳化分散液の濃度などによっても異なるが、通常5μm以下、さらには0.6〜3μm、ことには0.8〜2μmである。粒径が大きすぎる場合には、安定性が不充分になりやすく、逆に小さすぎる場合には、粘度が高くなり、製造しにくくポンプ輪送上の問題が生じやすくなる傾向にある。
【0106】
このようにして製造された本発明のアニオン性乳化分散液は、アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤とのコンプレックスが部分的に生成し、そのコンプレックスがアニオン活性剤との親和性が良いことから、アニオン界面活性剤での乳化性が一層良好となり、経時安定性および機械的安定性が良好となる。アニオン性乳化分散液製造時の泡立が少なく、また、たとえば水性感圧接着剤として使用する場合には、水性感圧接着剤に混合することによって、高温での保持力を改良し、あるいは水性耐チッピング塗料用SBRラテックスなどに加えた場合には、SBRとの相溶性が良好で、耐チッピング性や密着性などを向上させ、アスファルトに添加する場合には、アスファルトの軟化点、粘弾性、強靭性、高温粘度、低温可撓性などを向上させることができる。
【0107】
本発明のアニオン性乳化分散液を製造する際に、増粘剤を添加してもよい。増粘剤を添加する場合には、長期間保存したときにも水と熱可塑性エラストマーの分離がさらに生じにくい保存安定性の良好な増粘剤入りの水性乳化分散液となる。
【0108】
前記増粘剤の具体例としては、たとえばベントナイト、アルミノシリケート、セルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースなどがあげられる。また、天然多糖高分子であるキサンタンガム、ラムザンガムなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、セルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースなどが、また天然多糖高分子であるキサンタンガム、ラムザンガムなどが好ましい。ことに、セルロース誘導体のうちのヒドキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロースが、また天然多糖高分子であるキサンタンガム、ラムザンガムなどが好ましい。
【0109】
前記増粘剤を添加する場合、熱可塑性エラストマー100部に対して固形分で0.1〜3.0部、さらには0.1〜1.8部添加するのが好ましい。なお、増粘剤がセルロース誘導体、あるいは天然多糖高分子の場合の添加量としては、0.1〜2.0部、さらには0.1〜1.0部が好ましい。添加量が少なすぎる場合には、増粘剤を使用することによる効果が充分得られず、多すぎる場合には、粘度が増大しすぎ、ポンプ輪送が行ないにくくなったり、各改質性能が低下する傾向が生ずる。
【0110】
以上説明したごとき本発明のアニオン性乳化分散液は、一般に、固形分濃度が40〜65%、さらには45〜60%、粘度(25℃、B型粘度計で測定)が100〜700mPa・s、さらには150〜500mPa・sのごときものであり、増粘剤を添加することにより、一般に、固形分濃度が40〜65%、さらには45〜60%、粘度(25℃、B型粘度計で測定)が200〜6000mPa・s、さらには350〜4000mPa・sのごときものになる。
【0111】
本発明のアニオン性乳化分散液を改質剤として使用する場合、通常、被改質物(固形分)に対して固形分で0.5〜50%、さらには1.0〜30%添加される。添加量が少なすぎる場合には改質効果が充分得られず、多すぎる場合には改質物の粘度が高くなりすぎて実用的でなくなる。また、改質物が高価になる。
【0112】
本発明のアニオン性水性分散液を使用する場合には、必要により、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐防黴剤、消泡剤、分散安定剤、可塑剤、顔料などを加えて使用してもよい。また、パラフィン系、アロマ系、ナフテン系などのオイルを加えてもよい。さらに、SBRラテックス、クロロプレンラテックス、ポリブタジエンラテックス、エチレンプロピレンゴムラテックスなどのゴムラテックス、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、EVAエマルジョン、ウレタンエマルジョンなどの高分子化合物のエマルジョンと混合して使用してもよく、あるいは別々に併用してもよい。本発明のアニオン性水性分散液は、乳化剤としてノニオン界面活性剤が含まれるため、通常のアニオン性エマルジョンほどカチオン性エマルジョンと混合した場合に凝集現象を起こし難いが、カチオン性エマルジョンなどと混合する場合には、作業性を損わない範囲とするのが好ましい。さらに、セメント、石灰、イソシアネート化合物などの水反応性化合物と併用してもよい。
【0113】
前記オイルを加える方法としては、オイルを油展した熱可塑性エラストマーを水性乳化分散液にする方法、熱可塑性エラストマーを前記溶剤に溶解し、ポリマー溶液とするときに同時にオイルを溶解して添加する方法、オイルの非イオン性および(または)アニオン性乳化物を本発明のアニオン性乳化分散液に混合する方法などがあげられる。オイルの添加量は熱可塑性エラストマー100部あたり5〜300部が好ましい。オイルは、パラフィン系、アロマ系、ナフテン系のいずれを使用してもよいが、好ましくはナフテン系オイルである。
【0114】
オイルを使用することにより、たとえば耐クラック性が改善し、劣化アスファルトの再生を容易にし、あるいは柔軟性(可撓性)を付与するという効果が期待できる。
【0115】
本発明のアニオン性乳化分散液を使用する場合、一般的にはドラム缶やコンテナーなどの容器に充填して運搬し、ポンプを使用して塗布機や他のエマルジョンとの混合設備に投入する方法が採られる。この場合、貯蔵・運搬中に容器内で熱可塑性エラストマーと分散媒である水とが分離(エマルジョンの離水現象)して濃度が不均一になると、塗布量や他のエマルジョンへの添加量が不均一になり、一定の塗膜厚さや一定の改質効果が得られないなどの問題が生じる。それゆえ、乳化分散性を向上させ、ひいては保存安定性を向上させることは重要である。また、乳化分散液をポンプで投入する場合、ポンプの剪断力で乳化・分散状態が破壊され、熱可塑性エラストマーが分散媒である水から分離して、トラブル(ポンプの詰り、能力低下、使用不能)の原因になる。この防止策のためにも、乳化性能を向上させて機械安定性を向上させることは重要である。
【0116】
つぎに、本発明のアニオン性乳化分散液を熱可塑性エラストマーおよび有機溶剤からなる溶液に、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤より少ない量のカチオン界面活性剤の異種イオン性界面活性剤3種を溶解させた溶液を調製したのち、水と混合して乳化させ、ついで有機溶剤を留去させることにより製造する方法、さらに製造された乳化分散液に増粘剤を添加・溶解させることにより乳化分散液を製造する方法について説明する。
【0117】
まず、熱可塑性エラストマーをノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤より少ない量のカチオン界面活性剤の異種イオン性界面活性剤3種を用いて乳化させる場合の1例について説明する。
【0118】
熱可塑性エラストマー100部を有機溶剤100〜1000部(エラストマーの有機溶剤への溶解性で両者の割合が異なってくる)に溶解させた溶液を製造したのち、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤の所定量を溶解させる。
【0119】
熱可塑性エラストマーを有機溶剤に溶解させる際の温度、時間などにはとくに限定はないが、30〜80℃で均一に溶解させる(通常2〜3時間を要す)のが好ましい。また、溶解溶剤としては、たとえばトルエン、キシレン、シクロヘキサンなどが好ましく使用される。
【0120】
得られた乳化剤を含む熱可塑性エラストマー有機溶剤溶液を30〜80℃、さらには40〜60℃に調整したのち、30〜80℃、さらには40〜60℃に調整した水80〜600部、さらには100〜400部と混合・乳化することにより、乳化物が製造される。使用する水の量は、目的とする粒径などのエマルジョン物性に応じて決定される。
【0121】
前記乳化剤を含む熱可塑性エラストマー有機溶剤溶液と水との混合は、水に乳化剤を含む熱可塑性エラストマー有機溶剤溶液を加えてもよいが、乳化剤を含む熱可塑性エラストマー有機溶剤溶液に水を加えるほうが、均一な粒径のエマルジョンを製造することができる点から好ましい。
【0122】
また、前記混合・乳化方法にはとくに限定はないが、目的、スペックに応じた最適乳化分散機、たとえば連続乳化が可能で乳化処理物の移送も行なえる特殊機化工業(株)製のラインミキサーあるいはユーロテック社のキャビトロンなどが、またバッチ製造方式になるが、アンカー、ディスパーおよびミキサーを併備した特殊機化工業(株)製のコンビミクスなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
このようにして製造された有機溶剤を含有する乳化分散液は、25〜60℃、720〜640mmHg(約96.0〜85.3kPa)の減圧下で有機溶剤が留去され(通常、0.3%以下、好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下まで留去される)、本発明のアニオン性乳化分散液が製造される。
【0124】
前記有機溶剤の留去に際し、必要により濃度調整などのための水、消泡剤などが加えられ、チッ素ガスが流される。
【0125】
前記水の温度は、有機溶剤を含有する乳化分散液の温度と同じであるのが好ましい。また、前記消泡剤としては、たとえばシリコーン系消泡剤、あるいは低分子量プロピレンオキサイド化合物などがあげられ、その添加量は、通常熱可塑性エラストマーエマルジョン100部に対して、0.1〜2部程度である。
【0126】
有機溶剤が留去されたのちの乳化分散液は、長期保存をすると分離(エマルジョンの離水現象)する場合があり、必要により増粘剤が添加される。増粘剤の添加量は、得られる乳化分散液の保存安定性が良好で、使用し易い粘度などの点から決定される。
【0127】
また、必要により、さらに防腐剤などが添加される。
【0128】
このようにして製造される本発明のアニオン性乳化分散液は、熱可塑性エラストマーの乳化・分散に使用する乳化成分として、好ましくは特定のノニオン界面活性剤および必要により使用される他の界面活性剤と、アニオン界面活性剤の一部とカチオン界面活性剤とからなるアニオン界面活性剤−カチオン界面活性剤のコンプレックスと、アニオン界面活性剤の残りとを使用して熱可塑性エラストマーを乳化したものであり、さらに必要により増粘剤を使用することによって、乳化分散性能を向上させて保存安定性および機械安定性を改良したものである。
【0129】
このようにして製造された本発明のアニオン性乳化分散液は、塗工紙用、フォームラバー用、タイヤコード用、コーティング用(缶、プラスチック、無機材料、木など)、塗料用、フロアポリッシュ用、接着剤用(水系接着剤、ポリマーセメント、モルタル接着剤など)、粘着剤用、再剥離ラベル用、ダイレクトメール用およびカーペット、自動車シート、マットなどの繊維加工用、防水材用などのエマルジョンとして使用することができる。また、これらの用途に従来から用いられているエマルジョンと混合して使用することができる。これらの用途に使用する場合には、強度および接着・粘着性の向上、あるいは柔軟性(可撓性)の付与など、エラストマー独特の性質・機能を被処理物に付加できる。
【0130】
ただし、本発明のアニオン性乳化分散液は、乳化剤としてノニオン界面活性剤が含まれているため、通常のアニオン性エマルジョンほどカチオン性エマルジョンと混合した場合に凝集現象を起こし難いが、カチオン性エマルジョンなどと混合する場合には、作業性を損わない範囲とするのが好ましい。また、アスファルト改質剤としても有用である。
【0131】
本発明のアニオン性乳化分散液を、前記のごとき用途に従来から用いられているエマルジョンと混合して使用する場合、本発明のアニオン性乳化分散液100部(固形分)に対する従来から用いられているエマルジョンの使用量(固形分)は、1〜20000部、さらには10〜10000部であるのが、従来から用いられているエマルジョンの持つ性能を阻害することなく、しかも本発明のアニオン性乳化分散液のもつ利点が付加できることから好ましい。たとえば、本発明のアニオン性乳化分散液を従来から使用されているアスファルト改質剤と混合して使用する場合、本発明のアニオン性乳化分散液100部(固形分)に対する従来から使用されているアスファルト改質剤(エマルジョン)の使用量(固形分)は、1〜200部、さらには10〜100部であるのが、アスファルトに好適な性能を付与できる点から好ましい。また、本発明のアニオン性乳化分散液を従来から使用されている水性感圧接着剤用エマルジョンと混合して使用する場合、本発明のアニオン性乳化分散液100部(固形分)に対して、従来から用いられているエマルジョンの使用量(固形分)は、100〜2000部、さらには200〜1000部であるのが、従来から用いられているエマルジョンの性能を損うことなく、保持力を向上させることができる点から好ましい。
【0132】
以下に、一例として、本発明のアニオン性乳化分散液をアスファルト改質剤として使用する場合について詳しく説明する。
【0133】
本発明のアニオン性乳化分散液が加えられるアスファルトには、とくに制限はなく、たとえば石油アスファルト、天然アスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、脱色アスファルト(石油樹脂)、グースアスファルトなどのアスファルトに加えられる。
【0134】
本発明のアニオン性乳化分散液を用いてアスファルトを改質する場合として、以下の場合があげられる。
【0135】
(1)熱アスファルトの改質
撹拌できる粘度まで充分融解された熱アスファルトに撹拌しながら直接前記アニオン性乳化分散液を添加し、水を蒸発させ、熱可塑性エラストマーがほぼ均一にアスファルトに溶解、分散するまで撹拌する。
【0136】
(2)熱アスファルト混合物の改質
骨材と熱アスファルトを混合したのち、混合物に撹拌しながら前記アニオン性乳化分散液を添加し、水を蒸発させ、熱可塑性エラストマーがほぼ均一にアスファルトに溶解、分散するまで撹拌する。再生アスファルト混合物に使用される場合は、本発明のアニオン性乳化分散液の添加前にさらに再生材(舗装道路の補修のために掘り起こしたときに発生するアスファルト混合物の廃棄物である発生材を粉砕して、もう一度新アスファルト混合物と混ぜて使用できるようにしたもの)が混合される。
【0137】
(3)アスファルト乳剤の改質
(a)アスファルトをアニオン性、ノニオン性またはこれらを組み合わせた乳化剤を用いて水性乳化分散液としたアスファルト乳剤と、前記アニオン性乳化分散液とを混合して均一になるまで撹拌する。
【0138】
(b)加熱アスファルトに前記アニオン性乳化分散液を添加し、水分を蒸発させ、熱可塑性エラストマーがほぼ均一にアスファルトに溶解、分散するまで撹拌したのち、これと乳化剤および水を混合して改質アスファルトの水性乳化分散液とする。
【0139】
(c)前記アニオン性乳化分散液にアニオン性、ノニオン性またはこれらを組み合わせた乳化剤を添加し、加熱アスファルトを混合して水性乳化分散液とする。
【0140】
(4)常温アスファルト混合物の改質
前記(3)のアスファルト乳剤と前記アニオン性乳化分散液との混合物または改質アスファルト乳剤を骨材に散布して混合し、あるいはアスファルト乳剤と前記アニオン性乳化分散液とを別々に骨材に散布して混合し、ほぼ均一になるまで撹拌する。再生アスファルト混合物に使用される場合は、さらに再生材が混合される(ただし、前記アニオン性乳化分散液(アスファルト改質剤)とカチオン性アスファルト乳剤とを混合する場合には、作業性が得られる範囲で混合する)。
【0141】
前記アニオン性乳化分散液のごときタイプのアスファルト改質剤を使用する場合、一般的にはドラム缶やコンテナなどの容器に充填して運搬し、ポンプを使用してアスファルトに投入する方法が採られている。この場合、貯蔵・運搬中に容器内で熱可塑性エラストマーと分散媒である水とが分離して濃度が不均一になると、アスファルト改質剤としての添加量が不均一になり、一定の改質効果が得られなかったり、添加されたアスファルト改質剤中の分離した熱可塑性エラストマーがアスファルトに溶解しにくいなどの問題が生じる。それゆえ、アスファルト改質剤中での熱可塑性エラストマーの保存安定性は重要である。また、アスファルト改質剤をポンプで投入する場合、ポンプの剪断力で乳化・分散状態が破壊され、熱可塑性エラストマーが分散媒である水から分離しても、アスファルトへの熱可塑性エラストマーの溶解不良や、ポンプ自体に熱可塑性エラストマーが詰まり、ポンプの能力低下、さらには使用不能になる場合があり、アスファルト改質剤の機械的安定性は重要である。
【0142】
前記アスファルト改質剤は、加熱アスファルト合材、再生加熱アスファルト合材、フォームドアスファルト合材などのアスファルト合材、常温アスファルト合材および再生常温アスファルト合材用アスファルト乳剤、そしてタックコート、シールコート、アーマコートなどのコート材のアスファルトの改質に好適に使用され、道路、空港、港湾、鉄道、鉄道貨物ヤード、構内、駐車場、歩道、自転車道、スポーツ施設、レース場、テニスコート、石油タンク基礎、水利構造物、廃棄物処理場などの舗装に使用することができる。さらに、土木、屋上、屋根などの防水用アスファルト、住宅用床防音材、床材、鋼管塗布などの建築用アスファルト、その他電気絶縁用コウンパウンド、トンネル断熱材用などのアスファルトの改質に使用することができる。
【0143】
【実施例】
つぎに本発明のアニオン性乳化分散液を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
なお、実施例などで用いる評価方法を以下にまとめて説明する。
【0145】
(泡立)
熱可塑性エラストマー水性分散体を水で2倍に希釈した液を100mlネスラー管に50ml入れ、30回手で倒立撹拌し、静置したのちの泡の量を経時的に測定する。
【0146】
(粘度)
ブルックフィールド型回転粘度計、東機産業(株)製BL型を使用。
【0147】
単一円筒型のローターを25℃の試料中で回転させ、そのときのずり速度とずり応力より粘度を求める。
【0148】
(熱可塑性エラストマー水性分散液の粒子径)
エマルジョン製造時のトルエン留去後に採取した熱可塑性エラストマー水性分散体を、(株)島津製作所製のSALD2000を用いた光回折法により評価。
【0149】
(貯蔵安定性)
日立卓上遠心機((株)日立製作所製 CT5DL型)を使用し、試料と容器(27φ×90mm)風袋の合計重量が135gになるように試料(熱可塑性エラストマー水性分散体)を採取した(試料:約45g)。
【0150】
遠心分離の条件は、3000rpm(1761g)×30分とし、遠心分離後の容器下層部の熱可塑性エラストマー水性分散体をストローで約1g採取して精密天秤で計量し、電気オーブンを使用して200℃×15分蒸発乾燥後の重量を求め、下記計算式から全固形分濃度を求めた。
【0151】
【数1】
【0152】
(機械安定性)
JIS 6387[参考−機械的安定度]記載の「マロン安定性試験法」に準じて、荷重10kg、時間5分、回転数1000rpm、温度60℃の条件下、サンプル量50gを使用した。
【0153】
なお、下記計算式から凝固率を求めた。数値が小さいほど、機械安定性がよいことを示している。
【0154】
【数2】
【0155】
(初期粘着性)
JIS Z0237に準じて傾斜式ボールタック試験を行なった。傾斜角30度、測定温度25℃とし、粘着部分に保持されたボールナンバーで初期粘着性を評価した。
【0156】
(粘着力)
JIS Z0237に準じて180度引き剥がし試験を行なった。試験板(被写体)としてステンレス板(大きさ:50mm×150mm×1.5mm)を用い、測定温度25℃とした。
【0157】
(保持力)
JIS Z0237に準じて40℃および100℃の雰囲気下で保持力を測定した。100gの荷重をかけた場合における落下時間で保持力を評価した。
【0158】
(高温環境下における粘着性)
直径2cmのガラス棒の周面に、長さ60mm、幅25mmの粘着テープを貼り付け、室温で24時間にわたり養生した。ついで、150℃の雰囲気下に1時間放置したのち、粘着テープの貼り付き状態を目視観察し、下記基準で評価した。
○:放置前における貼り付き状態と変わらない。
△:粘着テープの端部にウキが認められる。
×:粘着テープの半分以上にウキが認められる。
【0159】
(耐チッピング性)
グラベロ試験機にて6号砕石500gを5kg/cm2(約0.49MPa)の圧力で5回噴射し、試験片の状態を目視観察し、下記基準で評価した。
○:傷つきがない。
△:層間剥離がある。
×:界面剥離がある。
【0160】
(防音性)
試験片の塗膜面に1mの高さから直径10mmのスチールボールを落下させ、その際に生じる衝突音を指示騒音計で5回測定し、平均値を求めた。数値の小さいほど防音性効果が高い。
【0161】
(密着性)
試験片をJIS K5400に準じてテープ剥離法(2mmクロスカット)で3回測定し平均値を求めた。数値の大きいほど密着性がすぐれる。
【0162】
以下にアスファルト改質剤として本発明のアニオン性乳化分散液を評価した方法について説明する。
【0163】
(アスファルト物性)
ストレートアスファルト(60〜80、コスモ石油(株)製(以下、コスモ60〜80という))を170℃に加熱し、4枚羽根撹拌翼を付けた撹拌機により、回転数400〜500rpmの条件下で本発明のアニオン性乳化分散液を混合した。
【0164】
本発明のアニオン性乳化分散液の配合割合は、ストレートアスファルト(コスモ60〜80)100部に対し、固形分換算で6部とした。
【0165】
アスファルトの物性試験は、「舗装試験法便覧」(昭和63年11月10日(社)日本道路協会刊行)に記述された方法に準拠して評価した。
【0166】
(アスファルト乳剤蒸発残留物物性)
市販アスファルト乳剤(PK−4、東邦理化(株)製)100部(固形分)の中に本発明のアニオン性乳化分散液6部(固形分)を添加し、4枚羽根撹拌翼を付けた撹拌機により、回転数400〜500rpmの条件で本発明のアニオン性乳化分散液を10分間混合後、撹拌を続けながら90〜95℃に加温して大半の水分を蒸発させたのち、さらに130〜140℃に昇温して水分を完全に蒸発させてアスファルト乳剤蒸発残留物を得、物性(針入度、軟化点、伸度、タフネス、テナシティ)を評価した。
【0167】
得られたアスファルト乳剤蒸発残留物の物性の評価は「舗装試験法便覧」に記述された方法に準拠して行なった。
【0168】
つぎに、実施例などで使用する主要原料の内容および略号について以下に説明する。
【0169】
熱可塑性エラストマー
SBS:ジェイエスアール(株)製 TR−2631C、分子量約140,000
【0170】
界面活性剤
スチレン化フェノールEOA:スチレン基が平均2個付加したフェノールにエチレンオキシド20モルを付加したもの(モノスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=18:48:34(重量比))
ベンジル化フェノールEOA:ベンジル基が平均2個付加したフェノールにエチレンオキシド20モルを付加したもの(モノベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=16:47:37(重量比))
ラウリルアルコールEOA:ラウリルアルコールにエチレンオキシド20モルを付加したもの
LDMBAC:ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド
LDMEAS:ラウリルジメチルアンモニウムエチルサルフェート
スチレン化フェノールEOA硫酸Na:スチレン基が平均2個付加したフェノール(モノ:ジ:トリ以上の比率は前記したスチレン化フェノールEOAに同じ)エチレンオキシド13モルを付加させ、さらに硫酸化した化合物
ロジンK:天然系アニオン化合物のカリウム塩
【0171】
増粘剤
HEC:ヒドロキシエチルセルロース(ハーキュレス社製、MR250HR)
【0172】
実施例1
ディスパーとミキサーおよびアンカーを備えた乳化機(特殊機化工業(株)製、TKコンビミックス3M−5型)へ、SBS100部(600g)、トルエン300部(1800g)を投入し、55℃に昇温してSBSを溶解させた。
【0173】
溶解後、活性剤(以下に記す活性剤の添加量は固形分換算)としてスチレン化フェノールEOA4.7部(28.2g)、スチレン化フェノールEOA硫酸Na3部(18.0g)およびLDMBAC0.3部(1.8g)を投入し、ミキサーの周速12.8m/s、ディスパーの周速9.6m/s、アンカーの回転数60rpmで10分間撹拌混合した。
【0174】
しかるのち、55℃の温水250部(1500g)を30分間かけて添加した。添加後10分間撹拌してSBS乳化分散液を得た。
【0175】
そののち、60℃、720〜640mmHg(約96.0〜85.3kPa)でトルエンを留去し、トルエン残存量を0.05%以下にし、固形分を50%に調整したアニオン性乳化分散液を得た。
【0176】
得られたSBSアニオン性乳化分散液の泡立は、直後20ml、1分後9ml、5分後3mlであった。
【0177】
得られたSBSアニオン性乳化分散液(固形分50%)の粘度、粒子径、貯蔵安定性、機械安定性を測定した。結果を表1に記す。
【0178】
また、アスファルト改質剤として使用したときのアスファルト物性、アスファルト乳剤蒸発残留物物性を測定した。結果を表1に示す。
【0179】
実施例2
実施例1で用いたLDMBACをLDMEASにかえたほかは実施例1と同様にしたSBSアニオン性乳化分散液を得、評価した。結果を表1に示す。
【0180】
実施例3〜8および比較例1〜5
表1記載の原料を表1記載の割合で使用し、実施例1と同様にしてSBSアニオン性乳化分散液を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0181】
なお、実施例6〜8および比較例3〜4は、実施例1〜2、4、比較例1〜2で得られたSBS乳化分散液(固形分55%)に、たとえば実施例6の場合、増粘剤であるHEC 0.2部(1.2g)を粉体のまま添加し、固形分50%になるように水を添加し、撹拌(2000rpm)し、そののち、12時間放置してHECを溶解させることにより調製した。実施例7〜8、比較例3〜4の場合も、表1記載の増粘剤を表1記載の量使用し、同様の操作を行なって調製した。
【0182】
実施例9〜10
実施例1および6で得られた固形分50%のSBSアニオン性乳化分散液80部とアニオン系界面活性剤を用いて乳化重合したガラス転移温度60℃、ムーニー粘度(ML1+4)50、固形分50%のSBRラテックス(ジェイエスアール(株)製、JSR0678)20部とを混合したものについて評価した。結果を表1に示す。
【0183】
実施例11
実施例1で得られた固形分50%のSBSアニオン性乳化分散液60部とスチレン化フェノールEOAで乳化した固形分50%のナフテン系オイル(出光興産(株)製、NM−280)40部とを混合したものについて評価した。結果を表1に示す。
【0184】
【表1】
【0185】
本発明のアニオン性乳化分散液は、特開2001−59053公報記載のノニオン活性剤とアニオン活性剤とを併用した乳化分散液に比較し、マロン安定性試験の凝固率測定結果で1/10以下の値となり、また貯蔵安定性でも数%のオーダーで安定性が向上したことを示していることから、乳化性が大幅に改良されていることがわかる。
【0186】
そして、SBRラテックスと混合した場合には、伸度が良好となり、耐クラック性が改善されるという効果が期待できる。
【0187】
また、ナフテン系オイルと混合した場合には、柔軟性(可撓性)が良好となり、劣化アスファルトの再生に有用な効果が期待できる。
【0188】
このような本発明のアニオン性乳化分散液を、たとえばアスファルト改質剤に使用した場合には、アスファルトへの混合、溶解が簡便で、アスファルトの軟化点、粘弾性特性、強靭性、高温粘度などを向上させることができるので、舗装の耐流動性、耐磨耗性、強靭性などを改良し、舗装の長寿命化を図ることができる。また、従来の固形熱可塑性エラストマーでは困難であったアスファルト乳剤の改質を容易に行なうことができるので、常温舗装用合材やコート材の改質にも有効である。さらに、熱アスファルトの低温可撓性を改善することができるので、防水材などの改質にも有効である。
【0189】
実施例12〜15および比較例6〜8
劣化アスファルトに、実施例1および実施例11で得られたSBSアニオン性乳化分散液を、表2に示す割合で混合し、その再生効果を評価した。結果を表2に示す。
【0190】
なお、劣化アスファルトは、コスモ60〜80を1mmの薄膜にして85℃、48時間、熱風乾燥機で酸化劣化させたものを使用した。
【0191】
【表2】
【0192】
本発明のSBSアニオン性乳化分散液を劣化アスファルトに混合すると、軟化点、伸度、タフネスおよびテナシティが著しく向上し、劣化アスファルトの再生、改質効果が充分に認められる。
【0193】
実施例16〜18および比較例9
アニオン系界面活性剤で乳化重合した固形分51%、ガラス転移温度45℃のアクリルエマルジョンAE200(ジェイエスアール(株)製)および実施例2で得られたSBSアニオン性乳化分散液を表3に示す割合で混合した。得られた混合物100部(固形分)に、25%アンモニア水0.1部を添加してpHを8に調整したのち、ポリカルボン酸系エマルジョン型増粘剤(日本アクリル工業(株)製、プライマルASE−60)0.1部を添加することにより、粘度が約10,000mPa・s(BM型)の水性感圧接着剤を調製した。
【0194】
得られた水性感圧接着剤を15/10,000インチの隙間を有するアプリケーターを用いて、ポエステルフィルム(厚さ25μm)よりなる基材表面に塗布し、塗膜を110℃で1分間乾燥することにより、前記基材表面に粘着層(20〜25g/m2)が形成された粘着テープを製造した。
【0195】
得られたテープを用いて表3記載の項目について評価した。結果を表3に示す。
【0196】
【表3】
【0197】
本発明のSBSアニオン性乳化分散液は、水性感圧接着剤の改質剤として好適に用いることができる。
【0198】
本発明のSBSアニオン性乳化分散体を用いた水性感圧接着剤は、被着体に対して良好な粘着性を有するとともに、高温環境下においても適度な粘着性を有し、耐熱性にすぐれたものである。
【0199】
実施例19〜20および比較例10
実施例3および4で得られたSBSアニオン性乳化分散液100部(固形分)またはアニオン系界面活性剤で乳化重合した固形分54%、ガラス転移温度30℃のSBRラテックスJSR0545(ジェイエスアール(株)製)100部(固形分)に、分散剤(アロン化成(株)製、アロンA−20)0.2部、炭酸カルシウム150部、タルク50部を添加し、水を加えて全固形分が70%になり、しかもその粘度が30,000mPa・sとなるようにポリエーテルポリウレタン系増粘剤(第一工業製薬(株)製、DKシックナーSCT−275)0.2部を添加した塗料を調製した。
【0200】
得られた塗料をエアレススプレーにより厚さ0.8mmの鋼板に1.6mmの塗装厚となるように塗装した。そののち、90℃で10分および室温で1日乾燥させた。
【0201】
得られた試験片について、表4に記載の評価項目について評価した。結果を表4に示す。
【0202】
【表4】
【0203】
本発明のSBSアニオン性乳化分散液を使用したものは、耐チッピング性、防音性、かつ密着性にすぐれ、水系耐チッピング塗料用としても有用である。
【0204】
実施例21〜23および比較例11
コスモ60〜80(コスモ石油(株)製)100部に対して、実施例3、実施例4で得られたSBSアニオン性乳化分散液、およびアニオン系界面活性剤で乳化重合した固形分50%、ガラス転移温度50℃、ムーニー粘度(ML1+4)50のSBRラテックスJSRローデックス(ジェイエスアール(株)製)を表5に示すような割合で混ぜた(固形分換算)ものを、固形分で10部添加し、均一に混合した。
【0205】
得られたアスファルト防水材の強度と伸度をJIS A6021に準拠して、(株)島津製作所製オートグラフAG−500Aを用いて測定した。
【0206】
比較として、市販アスファルト防水材のブローンアスファルト(コスモ石油(株)製)を評価した。結果を表5に示す。
【0207】
【表5】
【0208】
本発明のSBSアニオン性乳化分散液は、アスファルト防水材用の改質剤として使用した場合に、強度および伸度のバランスにすぐれ、好適な性能を示すことがわかる。
【0209】
【発明の効果】
本発明のアニオン性乳化分散液は、特開2001−59053公報に記載のものと比較して、乳化性が向上したことにより、貯蔵(経日)安定性、機械安定性が改良されたものである。
【0210】
本発明のアニオン性乳化分散液は、アスファルト改質剤として有用であり、また、水性感圧接着剤あるいは水系耐チッピング塗料に活用できるエマルジョンとして有用であり、さらに、その他の多用途に用いられるエマルジョンに混合して使用される場合に好適な性質を付与することができる。
Claims (9)
- 熱可塑性エラストマーを、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤より少ない量のカチオン界面活性剤の異種イオン性界面活性剤3種を用いて乳化分散させたことを特徴とする熱可塑性エラストマーのアニオン性乳化分散液。
- アニオン界面活性剤100重量部に対して、カチオン界面活性剤0.1〜50.0重量部を配合する請求項1記載のアニオン性乳化分散液。
- ノニオン界面活性剤がスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物である請求項1または2記載のアニオン性乳化分散液。
- 前記スチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物が、モノスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のスチレン化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれる請求項3記載のアニオン性乳化分散液。
- ノニオン界面活性剤がベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物である請求項1または2記載のアニオン性乳化分散液。
- 前記ベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物が、モノベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:ジベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物:トリ以上のベンジル化フェノールポリアルキレンオキシド付加物=10〜20:40〜55:30〜45(重量比)の割合で合計量が100になるように含まれる請求項5記載のアニオン性乳化分散液。
- さらに、増粘剤としてセルロース誘導体を含有する請求項1、2、3、4、5または6記載のアニオン性乳化分散液。
- 熱可塑性エラストマーおよび有機溶剤からなる溶液に、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤より少ない量のカチオン界面活性剤を溶解させた溶液を調製したのち、水と混合して乳化させ、ついで有機溶剤を留去させることを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載のアニオン性乳化分散液の製法。
- 請求項8記載のアニオン性乳化分散液の製法において、有機溶剤を留去させたのち、さらに増粘剤を添加・溶解させることを特徴とする請求項7記載のアニオン性乳化分散液の製法。
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