JP3547088B2 - アンチロック制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は車両用のアンチロック制御装置に関するものであり、特に、アンチロック制御におけるブレーキ圧の制御特性を路面の摩擦係数との関係において適正に決定する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記アンチロック制御装置は一般に、車両制動時に車輪がロック状態に陥らないように車輪のブレーキ圧を制御するように構成される。その一例が本出願人の特開平3−67757号公報に記載されている。
【0003】
アンチロック制御においては、ブレーキ圧の制御特性を路面の摩擦係数との関係において適正に決定したいという要望がある。例えば高μ路ではブレーキ圧の増圧傾向を強くする一方、低μ路ではブレーキ圧の減圧傾向を強くすることにより、路面の摩擦係数の変化に追従して制御特性を変化させたいという要望があるのである。
【0004】
この要望を満たすべく本出願人は次のようなアンチロック制御装置を開発した。これは前記公報に記載されているように、車両制動時には車両重心点における加減速度が路面の摩擦係数の高低を反映するとの事実に着目し、車両の前後方向における加減速度を取得してそれに基づいてアンチロック制御におけるブレーキ圧の制御特性を決定するアンチロック制御装置である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
車両の進行方向と車体の向きとが互いにほぼ一致する車両走行状態では、車両の前後加減速度が車両重心点における加減速度、すなわち実際の加減速度にほぼ一致するから、前後加減速度に基づいてアンチロック制御の特性を決定しても、アンチロック制御による効果を予定通り享受することができる。しかし、車体がスピンした状態など、車両の進行方向と車体の向きとが十分に一致しない車両走行状態では、車両の前後加減速度の絶対値が実際の加減速度の絶対値より小さくなるため、前後加減速度にのみ基づいてアンチロック制御の特性を決定すると、その特性が路面の摩擦係数との関係において減圧側となってしまい、アンチロック制御による効果を予定通り享受することができない場合があるという問題がある。
【0006】
本発明はこの問題を解決することを課題としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本願請求項1に係る発明は、車両制動時に、車輪の回転を抑制するブレーキを作動させるブレーキシリンダの液圧であるブレーキ圧を、車輪がロック状態に陥らないように制御するアンチロック制御装置において、(1)車両の複数の車輪の各々の回転速度である車輪速を検出する複数の車輪速センサと、(2)それら車輪速センサにより検出された複数の車輪速に基づいて前記車両の推定車速を取得する手段と、(3)その取得された推定車速の時間に関する微分値である推定前後加速度を取得する手段と、(4)車両を真上から見た場合に車両前後方向に対してそれぞれほぼ45度傾斜した2方向の加速度成分を検出する2つの加速度センサと、(5)それら加速度センサにより検出された2方向の加速度の合成加速度の絶対値が大きい場合に、小さい場合に比較して、アンチロック制御におけるブレーキ圧の増圧勾配を急にすることと、ブレーキ圧の減圧勾配を緩やかにすることととの少なくとも一方を行う制御特性決定手段とを設けたことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1のアンチロック制御装置に、(a)開状態で前記ブレーキ圧を増圧し、閉状態で保持し、開状態と閉状態との時間比率の制御により増圧勾配の制御が可能な増圧用電磁弁と、(b)開状態で前記ブレーキ圧を減圧し、閉状態で保持し、開状態と閉状態との時間比率の制御により減圧勾配の制御が可能な減圧用電磁弁とを設け、かつ、前記制御特性決定手段を、(i)ブレーキ圧の増圧勾配を急にすべく、増圧用電磁弁を閉状態にする時間の開状態にする時間に対する比率を小さくする手段と、(ii)ブレーキ圧の減圧勾配を緩やかにすべく、減圧用電磁弁を閉状態にする時間の開状態にする時間に対する比率を大きくする手段との少なくとも一方を含むものとしたことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または2のアンチロック制御装置に、前記2つの加速度センサの一方が故障した場合に、残る1つの加速度センサの検出加速度と前記推定前後加速度との合成加速度を取得する手段を設け、かつ、前記制御特性決定手段を、その1つの加速度センサの検出加速度と推定前後加速度との合成加速度を、前記2つの加速度センサの2つの検出加速度の合成加速度の代わりに使用するものとしたことを特徴とする。
【0008】
【0009】
【0010】
【作用】
本願請求項1の発明に係るアンチロック制御装置においては、車輪速センサにより車両の複数の車輪の車輪速が検出され、その検出結果に基づいて車両の推定車速および推定前後加速度が取得される。また、制御特性決定手段により、車両前後方向に対してそれぞれほぼ45度傾斜した2方向の加速度成分の合成加速度に基づいてアンチロック制御におけるブレーキ圧の制御特性が決定される。合成加速度の絶対値が大きい場合に、小さい場合に比較して、アンチロック制御におけるブレーキ圧の増圧勾配を急にすることと、ブレーキ圧の減圧勾配を緩やかにすることとの少なくとも一方が行われるのである。
請求項2の発明に係るアンチロック制御装置においては、増圧用電磁弁を閉状態にする時間の開状態にする時間に対する比率を小さくすることによりブレーキ圧の増圧勾配が急にされ、あるいは、減圧用電磁弁を閉状態にする時間の開状態にする時間に対する比率を大きくすることによりブレーキ圧の減圧勾配が緩やかにされる。
請求項3の発明に係るアンチロック制御装置においては、2つの加速度センサの一方が故障した場合に、残る1つの加速度センサの検出加速度と推定前後加速度との合成加速度が、2つの加速度センサの2つの検出加速度の合成加速度の代わりに使用される。
【0011】
【発明の効果】
このように、本願請求項1に係る発明によれば、車両前後方向に対してそれぞれほぼ45度傾斜した2方向の加速度成分の合成加速度として、車両の真の加速度の絶対値が精度よく検出され、その検出結果に基づいてアンチロック制御におけるブレーキ圧の制御特性が決定される。合成加速度が大きい場合には、小さい場合より路面摩擦係数が大きいとして、アンチロック制御におけるブレーキ圧の増圧勾配を急にすることと、ブレーキ圧の減圧勾配を緩やかにすることととの少なくとも一方が行われるのであり、それによって、路面の特性によく適合した制御特性で車輪のブレーキ圧を制御することができるという効果が得られる。また、車輪速センサにより検出された車輪速に基づいて推定前後加速度が取得されるため、2つの加速度センサの一方が故障しても、未だ、互いに異なる2つの方向の加速度が得られる。それによって、例えば、請求項3に記載されているように、正常な1つの加速度センサの検出加速度と推定前後加速度との合成加速度が、2つの加速度センサの2つの検出加速度の合成加速度の代わりに使用されるようにすることができる。
請求項2に係る発明によれば、比較的安価な増圧用電磁弁や減圧用電磁弁の制御によって、アンチロック制御時における増圧勾配や減圧勾配の制御を行うことができる。
また、請求項3に係る発明によれば、2つの加速度センサの一方が故障した場合でも、支障なく、路面の特性によく適合した制御特性で車輪のブレーキ圧を制御することができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の一実施例であるアンチロック制御装置を含むアンチロック型ブレーキシステムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1において符号10はブレーキペダルであり、ブースタ12を介してマスタシリンダ14に連携させられている。マスタシリンダ14は2個の加圧室が互いに直列に並んで成るタンデム型であり、それら加圧室に互いに等しい高さのブレーキ圧をそれぞれ発生させる。
【0014】
本ブレーキシステムは互いに独立した2個のブレーキ系統がX字状に配置されたX配管式である。第1のブレーキ系統は、マスタシリンダ14の一方の加圧室が液通路20,ノーマルオープン型の電磁弁22および液通路24を経て左後輪RLのブレーキのホイールシリンダ26に接続されるとともに、液通路20,30,ノーマルオープン型の電磁弁32および液通路34を経て右前輪FRのブレーキのホイールシリンダ36に接続されることによって構成されている。一方、第2のブレーキ系統は、他方の加圧室が液通路40,ノーマルオープン型の電磁弁42および液通路44を経て左前輪FLのブレーキのホイールシリンダ46に接続されるとともに、液通路40,48,ノーマルオープン型の電磁弁50および液通路52を経て右後輪RRのブレーキのホイールシリンダ54に接続されることによって構成されている。
【0015】
また、第1のブレーキ系統においては、前記液通路24がノーマルクローズド型の電磁弁60を経て、前記液通路34もノーマルクローズド型の電磁弁62を経てそれぞれリザーバ64に接続されている。このリザーバ64はポンプ66の吸込み口に接続され、それの吐出し口は前記液通路20に接続されている。一方、第2のブレーキ系統においては、前記液通路44がノーマルクローズド型の電磁弁68を経て、前記液通路52もノーマルクローズド型の電磁弁70を経てそれぞれリザーバ72に接続されている。このリザーバ72はポンプ74の吸込み口に接続され、それの吐出し口は前記液通路40に接続されている。そして、それら2個のポンプ66,74は共通のモータ76により駆動される。
【0016】
したがって、例えば、左後輪RLのブレーキ圧については、電磁弁22,60をいずれも非通電状態とすることによって増圧状態が実現され、電磁弁22のみを通電状態とすることによって保持状態が実現され、電磁弁22,60をいずれも通電状態とすることによって減圧状態が実現される。他の車輪のブレーキ圧についても同様である。すなわち、各車輪のブレーキ圧は2個の電磁弁の組合せによって、増圧状態,保持状態および減圧状態が択一的に実現されるのであり、以下、説明を簡単にするために、増圧状態,保持状態および減圧状態をそれぞれ実現するために電磁弁のソレノイドに供給される信号を増圧信号,保持信号および減圧信号ということにする。
【0017】
それら電磁弁22等は電子制御装置80により制御される。この電子制御装置80は図2に示すように、コンピュータ82を主体として構成されており、CPU84,ROM86,RAM88,タイマ90,入力インターフェース回路92および出力インターフェース回路94を含んでいる。この出力インターフェース回路94には各ドライバ96を介して前記モータ76および電磁弁22等がそれぞれ接続されている。一方、入力インターフェース回路92には各アンプ98を介して4個の車輪速センサ100,102,104,106およびストップランプスイッチ110(図1参照)がそれぞれ接続されている。各車輪速センサ100〜106は各車輪と共に回転するロータの回転を検出するものである。また、ストップランプスイッチ110はドライバによるブレーキペダル10の踏込みを検出するものである。
【0018】
入力インターフェース回路92にはさらに、各信号処理回路112を介して2個の加速度センサ120,122もそれぞれ接続されている。両加速度センサ120,122はいずれも、車両重心点を通る垂直軸線上のある位置に搭載されているが、図3に示すように、加速度センサ120は、車両を真上から見た場合に車両重心点から左斜め前方45度の角度を有して延びる方向における成分加速度GL1 を検出する状態で搭載され、一方、加速度センサ122は、車両を真上から見た場合に車両重心点から左斜め後方45度の角度を有して延びる方向における成分加速度GL2 を検出する状態で搭載されている。また、加速度センサ120は、車両の前進加速時および左旋回時に発生する加速度を正、前進減速時および右旋回時に発生する加速度を負として検出するように設計され、一方、加速度センサ122は、前進減速時および左旋回時に発生する加速度を正、前進加速時および右旋回時に発生する加速度を負として検出するように設計されている。
【0019】
なお、本実施例においては、上述のように、「加速度」が正の値のみならず負の値も取り得る物理量として広義に定義されているが、正の値しか取らない物理量として狭義に定義することも可能である。そして、この場合には、一般に、車両加速時に車体に発生する「狭義の加速度」が『加速度』と称され、車両減速時に車体に発生する「狭義の加速度」が『減速度』と称される。
【0020】
ROM86には図4に示すように、アンチロック制御に必要な種々のプログラムが予め記憶されている。以下、そのプログラムのうち代表的なものを説明する。
【0021】
(1) 車輪速演算ルーチン
このルーチンは、各車輪の車輪速センサ100〜106からの出力信号に基づき、各車輪の車輪速VW を逐次演算するものである。演算結果は各車輪に関連付けてRAM88に記憶される。
【0022】
(2) 車輪加速度演算ルーチン
このルーチンは、車輪速演算ルーチンにより演算された各車輪速VW を時間に関して微分することにより、すなわち、具体的には、車輪速VW の今回のサンプリング値から前回のサンプリング値を差し引いた値をサンプリング周期で割ることにより各車輪の加速度VW ′を逐次演算するものである。この演算結果も各車輪に関連付けてRAM88に記憶される。
【0023】
(3) 推定車速演算ルーチン
このルーチンは、4個の車輪のうち車輪速VW が最大である最速車輪の車輪速VW が車速を表すと推定して推定車速VSOを演算し、その最速車輪の車輪加速度VW ′が予定された上限値を超えた後にはその上限値に固定して車速を推定して推定車速VSOを演算するものである。演算結果はRAM88に記憶される。
【0024】
(4) 成分加速度演算ルーチン
このルーチンは、各加速度センサ120,122について順にかつ逐次実行されるルーチンであって、各加速度センサ120,122からの出力信号に基づいて各回の成分加速度GL1 ,GL2 を逐次サンプリングし、さらにそれらに対してバターワース型のフィルタリングを行うことにより、各回の成分加速度GL1 ,GL2 のそれぞれの最終値を演算するものである。この演算結果もRAM88に記憶される。
【0025】
(5) 合成加速度演算ルーチン
このルーチンは、成分加速度演算ルーチンにより演算された各回の成分加速度GL1 ,GL2 に基づき、車両の前後加速度GX および横加速度GY を演算し、それらの合成値を合成加速度GXYとして演算するものである。具体的には、
GX =(GL1 −GL2 )/21/2
なる式を用いて前後加速度GX を演算し、
GY =(GL1 +GL2 )/21/2
なる式を用いて横加速度GY を演算し、
GXY=(GL1 2+GL2 2)1/2
なる式を用いて合成加速度GXYを演算するのである。
【0026】
(6) アンチロック制御ルーチン
このルーチンは図5にフローチャートで表されているが、まず、その概略を説明する。
【0027】
このルーチンは、各車輪についてアンチロック制御を実行する必要があるか否かを逐次判定するとともに、その必要があると判定した場合には、各車輪がロック状態に陥らないように各車輪のブレーキ圧を増減させるアンチロック制御を行うルーチンである。このルーチンは、ストップランプスイッチ110がドライバによるブレーキペダル10の踏込みを検出している間、各車輪について順にかつ一定短時間(例えば、10ms)ごとに繰り返し実行される。
【0028】
このルーチンによるアンチロック制御は、車輪に発生したロック傾向ができる限り迅速に消滅するとともに車輪にできる限り大きな制動力が発生するように車輪のブレーキ圧を制御するために、車輪の車輪速VW および車輪加速度VW ′に基づき、急減圧モード,パルス減圧モード,保持モードおよびパルス増圧モードから成る4個の制御モードの中から各時期における車輪の状態に適した制御モードを選択し、その制御モードが実現されるように電磁弁の流通状態を制御するものである。
【0029】
制御モードの選択は次のような規則に従って行われる。すなわち、図6に表で表されるように、車輪速VW が基準車速VSN,VSH(ただし、VSN>VSH)により3個の領域に分割され、車輪加速度VW ′が基準加速度G1 ,G2 (ただし、G1 は負の値を取り、G2 は正の値を取る)により3個の領域に分割され、結局、車輪速VW と車輪加速度VW ′との関係が9個の領域に分割されていて、それら各領域と制御モードとの間に予め設定された関係に従って制御モードが選択されるのである。
【0030】
ただし、車輪速VW が基準車速VSHより小さく、かつ、車輪加速度VW ′が基準加速度G2 以上である場合には、本来であれば前輪についても後輪についても保持モードが選択されるはずであるが、合成加速度GXYが0.2Gより小さい場合には、前輪についてのみ保持モードが選択され、後輪についてはパルス減圧モードが選択されるようにされている。
【0031】
以上説明した制御モードの選択規則は原則であって例外もある。例外は、パルス増圧モードがやや長い時間連続して実行された場合であって、この場合にはその後にディザ増圧モードが実行されるように設計されている。
【0032】
ここで、各モードについて説明する。まず、「急減圧モード」とは、電磁弁に減圧信号を供給し続けて電磁弁を減圧状態に維持することによりホイールシリンダ圧を急減圧するモードである。また、「パルス減圧モード」とは、図7に示すように、電磁弁に保持信号と減圧信号とを交互に供給して電磁弁を保持状態と減圧状態とに交互に切り換えることによりホイールシリンダ圧を緩減圧するモードである。また、「保持モード」とは、電磁弁に保持信号を供給し続けて電磁弁を保持状態に維持することによりホイールシリンダ圧を保持するモードである。また、「パルス増圧モード」とは、電磁弁に保持信号と増圧信号とを交互に供給して電磁弁を保持状態と増圧状態とに交互に切り換えることによりホイールシリンダ圧を緩増圧するモードである。また、「ディザ増圧モード」とは、図8に示すように、パルス増圧モードの場合と同様に、電磁弁に保持信号と増圧信号とを交互に供給するモードであるが、パルス増圧モードの場合よりホイールシリンダ圧の増圧勾配が急になるように各信号の継続時間が設定されるモードである。
【0033】
パルス減圧モードにおける1個の保持信号の継続時間である保持時間TD1(図7参照)と、1個の減圧信号の継続時間である減圧時間TD2(同図参照)とはそれぞれ次のようにして取得される。すなわち、保持時間TD1については、合成加速度GXYに応じて可変の演算値とされており、合成加速度GXYの値が大きいほど、すなわち路面の摩擦係数μが高いほど長くなるように演算されるのである。路面の摩擦係数μが高いほどパルス減圧モードにおけるホイールシリンダ圧の減圧勾配が緩やかになるように演算されるのである。一方、減圧時間TD2は、不変値とされている。
【0034】
ディザ増圧モードにおける1個の保持信号の継続時間である保持時間TU1(図8参照)と、互いに連続した1個の保持信号と1個の増圧信号とによって規定される1個の増圧パルスの周期TU2(同図参照)とはそれぞれ次のようにして取得される。すなわち、保持時間TU1も周期TU2も、合成加速度GXYに応じて可変の演算値とされているが、合成加速度GXYの値が大きいほど、すなわち路面の摩擦係数μが高いほど、保持時間TU1は短く、周期TU2は長くなるように演算されるのである。路面の摩擦係数μが高いほどディザ増圧モードにおけるホイールシリンダ圧の増圧勾配が急になるように演算されるのである。
【0035】
次にこのアンチロック制御ルーチンを図5に基づいて詳細に説明する。
【0036】
本ルーチンの各回の実行時には、まず、ステップS1(以下、単にS1という。他のステップについても同じとする)において、最新の推定車速VSOがRAM88から読み込まれ、続いて、S2において、その推定車速VSOに基づき、アンチロック制御に係る基準車速VSN,VSHが演算される。その後、S3において、本ルーチンの今回の実行対象である車輪(以下、単に実行対象車輪という)の車輪速VW および車輪加速度VW ′がRAM88から読み込まれる。
【0037】
続いて、S4において、最新の合成加速度GXYがRAM88から読み込まれ、その後、S5において、その合成加速度GXYに基づき、前述のようにして、前記保持時間TD1,減圧時間TU1および周期TU2がそれぞれ演算される。
【0038】
続いて、S6において、アンチロック制御を実行する必要があるか否かが判定される。例えば、アンチロック制御の開始条件は、車輪速VW が基準車速VSNより小さく、かつ、車輪加速度VW ′が基準加速度G1 より小さくなることとされる。
【0039】
今回は実行対象車輪にロック傾向が発生していないと仮定すれば、判定がNOとなり、S7において、ブレーキシステムがノーマル状態とされる。ブレーキペダル10の踏込みに応じた高さの液圧が各ホイールシリンダ26,36,46,54に発生する状態とされるのである。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0040】
その後、本ルーチンの実行が何回も繰り返されるうちに実行対象車輪にロック傾向が発生し、そのため、アンチロック制御の開始条件が満たされるに至ったと仮定すれば、S6の判定がYESとなり、S8において、実行対象車輪に対して実行するのが適当な制御モードが選択され、以下のステップにおいてその選択された制御モードが実行される。
【0041】
例えば、S8において急減圧モードが選択されたと仮定すれば、S9において、今回の制御モードがパルス増圧モードであるか否かが判定されれば、判定がNOとなり、S10において、今回の制御モードがパルス減圧モードであるか否かが判定されれば、この判定もNOとなり、S11において、急減圧モードが実行される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0042】
その後、S1〜6,8〜10および11の実行が繰り返されるうちに実行対象車輪のロック傾向の進行が抑制され、その結果、S8において、今回の制御モードとしてパルス減圧モードが選択されたと仮定すれば、S9の判定はNOとなり、S10の判定はYESとなって、S12において、パルス減圧モードが実行される。演算された保持時間TD1および減圧時間TD2に従って電磁弁の切換状態が制御されるのである。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0043】
その後、S1〜6,S8〜10および12の実行が繰り返されるうちに実行対象車輪のロック傾向がほぼ解消され、S8において、今回の制御モードとしてパルス増圧モードが選択されたと仮定すれば、S9の判定がYESとなり、S13において、パルス増圧モードが実行される。続いて、S14において、今回まで連続して実行されたパルス増圧モードの時間が長いか否か、すなわち、例えば、電磁弁に連続して供給された増圧パルスの数が一定個数以上となったか否かが判定される。今回はパルス増圧モードの当初であるから、判定がNOとなり、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0044】
その後、S1〜6,8,9,13および14の実行が繰り返されるうちに実行対象車輪に再びロック傾向が発生したと仮定すれば、S8において、今回の制御モードとして急減圧モードまたはパルス減圧モードが選択され、以下のステップにおいて、その選択された制御モードが実行される。これに対して、S1〜6,8,9,13および14の実行が繰り返されるうちに実行対象車輪に再びロック傾向が発生することなく、S14の判定がYESとなれば、S15において、ディザ増圧モードが実行される。演算された保持時間TU1および周期TU2に従って電磁弁の切換状態が制御されるのである。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0045】
したがって、本実施例においては、前後加速度GX ではなく合成加速度GXYを用いて路面の摩擦係数μが想定されてアンチロック制御におけるホイールシリンダ圧の制御特性が決定されるため、路面の摩擦係数μが精度よく想定され、その結果、アンチロック制御が路面の摩擦係数μとの関係において適正に実行されるという効果が得られる。
【0046】
また、本実施例においては、路面の摩擦係数μが低い場合には、ホイールシリンダ圧の減圧傾向が強くなり、高い場合には、増圧傾向が強くなるようにアンチロック制御の特性が決定されるため、路面の摩擦係数μの高低とは無関係に一律に特性を決定する場合のように、低μ路上では減圧不足となり、高μ路上では減圧過剰となることはないという効果も得られる。
【0047】
また、本実施例においては、合成加速度GXYを取得するために2個の加速度センサ120,122が用いられ、かつ、それらはいずれも車両加速度の横方向成分を検出し得る状態で配置されている。そのため、一方の加速度センサが故障しても他方の加速度センサが正常である限り、その正常な加速度センサにより検出された加速度(GL1 とGL2 との一方)と、推定車速VSOを時間に関して微分値して取得した推定前後加速度(前記前後加速度GX に相当する)と、前述の、
GX =(GL1 −GL2 )/21/2
なる式で表される関係とを用いれば、故障した加速度センサにより本来であれば検出されるはずの加速度(GL1 とGL2 との他方)を推定することができ、その推定値と正常な加速度センサにより検出された加速度とから合成加速度GXYを取得することができるという効果も得られる。
【0048】
なお、本実施例においては、加速度センサ120,122が車両重心点を通る垂直軸線上に配置されていたが、車両の任意の水平面における任意の位置に配置することもできる。
【0049】
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、電子制御装置80のうち成分加速度演算ルーチン,合成加速度演算ルーチンおよび図5のS4および5を実行する部分が2個の加速度センサ120,122と共同して本発明における「制御特性決定手段」の一態様を構成しているのである。
【0050】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、この他にも特許請求の範囲を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した態様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるアンチロック制御装置を含むアンチロック型ブレーキシステムを示すシステム図である。
【図2】 図1における電子制御装置の構成を概念的に示す図である。
【図3】 図2における2個の加速度センサによる加速度GL1 ,GL2 の検出方向を説明するとともに、それら加速度GL1 ,GL2 から合成加速度GXYを取得する原理を説明するための図である。
【図4】 図2におけるROMの構成を概念的に示す図である。
【図5】 図4におけるアンチロック制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】 図5のアンチロック制御ルーチンにおける制御モードの選択規則を示す表である。
【図7】 図5のアンチロック制御ルーチンにおけるパルス減圧モードを実現するための信号の構成を説明するためのタイムチャートである。
【図8】 図5のアンチロック制御ルーチンにおけるディザ増圧モードを実現するための信号の構成を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
22,32,42,50,60,62,68,70 電磁弁
26,36,46,54 ホイールシリンダ
80 電子制御装置
100,102,104,106 車輪速センサ
120,122 加速度センサ
Claims (3)
- 車両制動時に、車輪の回転を抑制するブレーキを作動させるブレーキシリンダの液圧であるブレーキ圧を、車輪がロック状態に陥らないように制御するアンチロック制御装置であって、
前記車両の複数の車輪の各々の回転速度である車輪速を検出する複数の車輪速センサと、
それら車輪速センサにより検出された複数の車輪速に基づいて前記車両の推定車速を取得する手段と、
その取得された推定車速の時間に関する微分値である推定前後加速度を取得する手段と、
車両を真上から見た場合に車両前後方向に対してそれぞれほぼ45度傾斜した2方向の加速度成分を検出する2つの加速度センサと、
それら加速度センサにより検出された2方向の加速度の合成加速度の絶対値が大きい場合に、小さい場合に比較して、アンチロック制御におけるブレーキ圧の増圧勾配を急にすることと、ブレーキ圧の減圧勾配を緩やかにすることととの少なくとも一方を行う制御特性決定手段と
を含むことを特徴とするアンチロック制御装置。 - 開状態で前記ブレーキ圧を増圧し、閉状態で保持し、開状態と閉状態との時間比率の制御により増圧勾配の制御が可能な増圧用電磁弁と、
開状態で前記ブレーキ圧を減圧し、閉状態で保持し、開状態と閉状態との時間比率の制御により減圧勾配の制御が可能な減圧用電磁弁と
を含み、かつ、前記制御特性決定手段が、前記ブレーキ圧の増圧勾配を急にすべく、前記増圧用電磁弁を閉状態にする時間の開状態にする時間に対する比率を小さくする手段と、前記ブレーキ圧の減圧勾配を緩やかにすべく、前記減圧用電磁弁を閉状態にする時間の開状態にする時間に対する比率を大きくする手段との少なくとも一方を含む請求項1に記載のアンチロック制御装置。 - 前記2つの加速度センサの一方が故障した場合に、残る1つの加速度センサの検出加速度と前記推定前後加速度との合成加速度を取得する手段を含み、前記制御特性決定手段が、その1つの加速度センサの検出加速度と前記推定前後加速度との合成加速度を、前記2つの加速度センサの2つの検出加速度の合成加速度の代わりに使用する請求項1または2に記載のアンチロック制御装置。
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JP25078092A JP3547088B2 (ja) | 1992-08-26 | 1992-08-26 | アンチロック制御装置 |
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JPH0672308A JPH0672308A (ja) | 1994-03-15 |
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JP25078092A Expired - Lifetime JP3547088B2 (ja) | 1992-08-26 | 1992-08-26 | アンチロック制御装置 |
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