以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(パワー半導体素子の課題)
例えばパワーMOSFETおよびIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に代表されるパワー半導体素子は、負荷を駆動するスイッチング素子として使用されるが、負荷にインダクタンスが含まれる場合、パワー半導体素子をオフすると、インダクタンスによる逆起電力が発生し、この逆起電力に起因する電圧がパワー半導体素子に加わる。この場合、パワー半導体素子には、電源電圧以上の電圧が印加されることになり、この電圧がアバランシェ降伏電圧を超えると、パワー半導体素子にアバランシェ降伏現象が生じてアバランシェ電流が流れる。このアバランシェ電流が、パワー半導体素子のアバランシェ耐量(許容電流量)を超えると、パワー半導体素子が破壊されることになる。このアバランシェ耐量とは、アバランシェ降伏現象に起因して破壊に至るまでに流れるアバランシェ電流の許容電流量を示すものであり、パワー半導体素子において、アバランシェ電流の局所的な電流集中が生じると、アバランシェ耐量を超えてパワー半導体素子の破壊が起こりやすくなる。
このことから、パワー半導体素子の信頼性を向上するためには、できるだけアバランシェ電流の局所的な電流集中を回避して、アバランシェ電流がアバランシェ耐量を超えないように、パワー半導体素子のデバイス構造を工夫することが必要である。
例えばパワー半導体素子を形成した半導体チップには、一般的に、パワー半導体素子が形成されるセル領域と、セル領域の外側を囲む周辺領域が存在する。ここで、アバランシェ降伏電圧に着目すると、パワー半導体素子の破壊を防止する観点から、セル領域のソース・ドレイン間耐圧よりも、周辺領域のソース・ドレイン間耐圧が高いことが望ましい。なぜなら、周辺領域でアバランシェ降伏現象が生じると、局所的(例えばセル領域の外周部分)にアバランシェ電流が集中して、セル領域でアバランシェ降伏現象が生じる場合よりも、アバランシェ耐量を超えてパワー半導体素子の破壊が起こりやすくなるからである。
ところが、現状のデバイス構造では、セル領域のソース・ドレイン間耐圧よりも、周辺領域のソース・ドレイン間耐圧が低く、周辺領域でアバランシェ降伏現象が生じてしまう。または同程度のソース・ドレイン間耐圧であっても、周辺領域にはアバランシェ降伏現象で生じた電流が流れるソース側コンタクトがないため、ホールが流れるセル領域の外周部分のソース側コンタクトにアバランシェ電流が集中し、そこでパワー半導体素子の破壊が生じる。従って、パワー半導体素子において、アバランシェ降伏現象に起因するパワー半導体素子の破壊を効果的に防止して、パワー半導体素子を含む半導体装置の信頼性を向上するためには、周辺領域でのソース・ドレイン間耐圧よりも、セル領域でのソース・ドレイン間耐圧を低くする工夫(ソース・ドレイン間に逆バイアスを印加する場合、セル領域で先にアバランシェ降伏現象を起こす工夫)が必要とされる。
(本実施の形態における基本思想)
例えばパワーMOSFET、IGBTまたはダイオードに代表されるpn接合デバイスでは、pn接合の耐圧によってデバイスの耐圧が決定される。
ここでいうpn接合の耐圧とは、アバランシェ降伏現象が生じるアバランシェ降伏電圧を意味している。例えばパワーMOSFETにおけるpn接合の耐圧とは、ゲート電極とソース領域とを接地した状態でドレイン領域に電圧を印加したとき、アバランシェ降伏現象が起こる電圧として定義される。
具体的に、アバランシェ降伏電圧とは、pn接合に逆方向電圧(接合に形成される電位障壁を高くする方向に印加される電圧)を印加したときに、アバランシェ降伏現象が生じる電圧であり、アバランシェ降伏現象とは以下のメカニズムで生じる現象である。すなわち、逆方向電圧をpn接合に印加すると、pn接合に形成された空乏層において、高電界で加速された電子および正孔が結晶格子に衝突する。そのとき、結晶格子間を接続している共有結合が破れ、新たに電子と正孔の対を発生させる(インパクトイオン化)。そして、新たに発生した電子正孔対も高電界のもとでエネルギーを得て、結晶格子に衝突し、さらに新しい電子正孔対を発生させる。この増倍現象が成長して空乏層に大電流が流れる。この現象がアバランシェ降伏現象である。
このようなpn接合の耐圧は、例えば、以下に示す(式1)で近似される。
VB≒60×(Eg/1.1)3/2×(NB/1016)−3/4・・・(式1)
ここで、VBはpn接合の耐圧を示しており、Egはバンドギャップを示しており、NBはバックグランド濃度(pn接合における低い方の不純物濃度)を示している。(式1)から、pn接合の耐圧は、バンドギャップの3/2乗に比例し、かつバックグランド濃度の3/4乗に反比例することがわかる。
そこで、本実施の形態では、pn接合の耐圧に与えるバックグランド濃度に着目している。そして、(式1)から明らかなように、バックグランド濃度が低くなるほどpn接合の耐圧が高くなる。言い換えれば、バックグランド濃度が高くなるほどpn接合の耐圧が低くなる。このことから、pn接合の耐圧を向上するためには、バックグランド濃度を低くすればよいことになる。
前述したように、パワー半導体素子の信頼性を向上する観点からは、周辺領域ではなく、セル領域でアバランシェ降伏現象が生じることが望ましい。つまり、アバランシェ降伏現象に基づくパワー半導体素子の破壊を防止する観点からは、周辺領域のソース・ドレイン間耐圧よりもセル領域のソース・ドレイン間耐圧を低くすることが望ましい。
そこで、本実施の形態では、周辺領域のソース・ドレイン間耐圧よりもセル領域のソース・ドレイン間耐圧を低くするために、(式1)で示されるpn接合の耐圧とバックグランド濃度との関係に着目し、セル領域のバックグランド濃度を周辺領域のバックグランド濃度よりも高くする。これにより、セル領域のアバランシェ降伏電圧は、周辺領域のアバランシェ降伏電圧よりも低くなるので、周辺領域でアバランシェ降伏現象が生じる前に、セル領域でアバランシェ降伏現象が生じることになる。つまり、本実施の形態における基本思想によれば、セル領域でアバランシェ降伏現象を生じさせることができるので、アバランシェ降伏現象に起因するパワー半導体素子の破壊を効果的に防止することができ、これによって、パワー半導体素子を含む半導体装置の信頼性を向上することができる。
本実施の形態では、上述した基本思想を具現化するための工夫を施している。
(実施の形態1)
<半導体装置の構成>
実施の形態1では、パワー半導体素子として、パワーMOSFETを例に挙げて説明する。図1は、実施の形態1による半導体装置(パワーMOSFET)の構成要素である半導体チップの平面構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、実施の形態1による半導体チップCHPは、例えば矩形形状をしており、セル領域CRと、遷移領域TRと、周辺領域PERとを有している。そして、セル領域CRの外側を囲むように遷移領域TRが配置され、さらに、遷移領域TRを囲むように周辺領域PERが配置されている。言い換えれば、周辺領域PERで囲まれた内側領域に、遷移領域TRを介してセル領域CRが配置されている。
セル領域CRには、例えばスイッチング素子として機能する複数のパワーMOSFETが形成されている。一方、周辺領域PERには、例えば周辺を斜めにエッチングするベベル構造、拡散リング構造(Diffused Ring Structure)、フィールドリング構造またはフィールドプレート構造に代表される周辺構造が形成されている。これらの周辺構造は、基本的に電界集中によってアバランシェ降伏現象を生じにくくする設計思想に基づいて形成されている。
以上のように、実施の形態1による半導体チップCHPにおいては、中心領域を含む内側領域に複数のパワーMOSFETが形成され、かつ内側領域を囲む外側領域に電界緩和構造である周辺構造が形成されている。
図2は、図1のA−A線で切断した断面図である。図2に示すように、半導体チップCHPには、セル領域CRと、遷移領域TRと、周辺領域PERとが形成されている。そして、セル領域CRのpn接合の耐圧>遷移領域TRのpn接合の耐圧>周辺領域PERのpn接合の耐圧の関係となるように、セル領域CR、遷移領域TRおよび周辺領域PERのそれぞれの構造が設計されている。以下、セル領域CR、遷移領域TRおよび周辺領域PERのそれぞれの構造について説明する。
(1)セル領域CRの構造
図2に示すように、セル領域CRでは、半導体基板1Sの主面上のエピタキシャル層EPIに、複数の第1p型カラム領域PC1と複数のn型カラム領域NCとがx方向に交互に配置された、所謂スーパージャンクション構造を有している。実施の形態1によるセル領域CRでは、第1p型カラム領域PC1の幅(x方向の寸法)、奥行き(z方向の寸法)および深さ(y方向の寸法)とn型カラム領域NCの幅(x方向の寸法)、奥行き(z方向の寸法)および深さ(y方向の寸法)とがそれぞれ同じになるように設計されている。従って、実施の形態1では、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の幅とn型カラム領域NCの幅との比が1:1の場合を例示している。
以下、具体的に説明する。例えばリン(P)または砒素(As)などのn型不純物を含有するシリコンからなる半導体基板1Sの主面上にエピタキシャル層EPIが形成されている。このエピタキシャル層EPIは、例えばリン(P)または砒素(As)などのn型不純物が導入されたシリコンを主成分とする半導体層から構成されている。エピタキシャル層EPIのn型不純物濃度(Nep)は半導体基板1Sの不純物濃度よりも低く、例えば2.4×1015/cm3である。
そして、エピタキシャル層EPI内でx方向に互いに離間するように複数のn型カラム領域NCが形成されている。このn型カラム領域NCのそれぞれは、例えば柱形状をしており、リン(P)または砒素(As)などのn型不純物が導入された半導体領域から構成されている。n型カラム領域NCのn型不純物濃度(Nn)はエピタキシャル層EPIのn型不純物濃度(Nep)よりも高く、例えば3.0×1015/cm3である。この複数のn型カラム領域NCと半導体基板1Sによって、パワーMOSFETのドレイン領域が構成されている。
さらに、互いに隣り合うn型カラム領域NCで挟まれたエピタキシャル層EPIの部分領域には、第1p型カラム領域PC1が形成されている。この第1p型カラム領域PC1のそれぞれは、例えば柱形状をしており、ボロン(B)などのp型不純物が導入された半導体領域から構成されている。第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度(Np1)は、例えば3.0×1015/cm3である。
そして、スーパージャンクション構造が形成されたエピタキシャル層EPIの上面に素子部が形成されている。
素子部には、エピタキシャル層EPIの上面に第1p型カラム領域PC1と接するチャネル領域CHが形成されており、このチャネル領域CHに内包されるようにソース領域SRが形成されている。このとき、チャネル領域CHは、例えばボロン(B)などのp型不純物が導入された半導体領域から構成され、ソース領域SRは、例えばリン(P)または砒素(As)などのn型不純物が導入された半導体領域から構成されている。また、ソース領域SRの中央部分には、エピタキシャル層EPIの上面からチャネル領域CHに達するボディコンタクト領域BCが形成されている。このボディコンタクト領域BCは、例えばボロン(B)などのp型不純物が導入された半導体領域から構成されており、ボディコンタクト領域BCの不純物濃度は、チャネル領域CHの不純物濃度よりも高くなっている。
さらに、互いに隣り合うチャネル領域CHで挟まれる領域上にゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極GEが形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば酸化シリコン膜から形成されるが、これに限らず、例えば酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成することもできる。また、ゲート電極GEは、例えば多結晶シリコン膜から形成されている。このゲート電極GEは、ソース領域SRと整合するように形成されている。また、ゲート電極GEの上面および両側の側壁を覆うように、例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜ILが形成されている。
複数のゲート電極GEを覆う層間絶縁膜IL上にわたって、例えばチタンタングステン膜からなるバリア導体膜とアルミニウム膜とからなるソース電極SEが形成されている。これにより、ソース電極SEは、ソース領域SRと電気的に接続されるとともに、ボディコンタクト領域BCを介してチャネル領域CHとも電気的に接続されることになる。
このとき、ボディコンタクト領域BCは、ソース電極SEとのオーミック接触を確保する機能を有し、このボディコンタクト領域BCが存在することにより、ソース領域SRとチャネル領域CHとは同電位で電気的に接続されることになる。
従って、ソース領域SRをエミッタ領域とし、チャネル領域CHをベース領域とし、かつn型カラム領域NCをコレクタ領域とする寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作を抑制することができる。すなわち、ソース領域SRとチャネル領域CHとが同電位で電気的に接続されているということは、寄生npnバイポーラトランジスタのエミッタ領域とベース領域との間に電位差が生じていないこと意味し、これによって、寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作を抑制することができる。
ソース電極SEを部分的に覆うように、例えば酸化シリコン膜からなる表面保護膜PASが形成されており、ソース電極SEの一部領域は、表面保護膜PASから露出している。また、半導体基板1Sの裏面(エピタキシャル層EPIが形成された主面と反対側の面)には、金属膜からなるドレイン電極DEが形成されている。
以上のようにして、セル領域CRに複数のパワーMOSFETが形成されている。
(2)遷移領域TRの構造
図2に示すように、遷移領域TRでは、複数の第2p型カラム領域PC2とエピタキシシャル層EPIからなる複数のn型カラム領域とがx方向に交互に配置された、所謂スーパージャンクション構造を有している。実施の形態1による遷移領域TRでは、第2p型カラム領域PC2の幅(x方向の寸法)と、エピタキシシャル層EPIからなるn型カラム領域の幅(x方向の寸法)とは互いに異なる。しかし、第2p型カラム領域PC2の奥行き(z方向の寸法)および深さ(y方向の寸法)とエピタキシシャル層EPIからなるn型カラム領域の奥行き(z方向の寸法)および深さ(y方向の寸法)とがそれぞれ同じになるように設計されている。
以下、具体的に説明する。セル領域CRと同様に遷移領域TRにおいても、半導体基板1Sの主面上にエピタキシャル層EPIが形成されている。そして、エピタキシャル層EPI内でx方向に互いに離間するように複数の第2p型カラム領域PC2が形成されている。この第2p型カラム領域PC2のそれぞれは、例えば柱形状をしており、ボロン(B)などのp型不純物が導入された半導体領域から構成されている。第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度(Np2)は、例えば3.0×1015/cm3である。そして、互いに隣り合う第2p型カラム領域PC2で挟まれたエピタキシャル層EPIの部分領域が、n型カラム領域になる。
さらに、セル領域CRに形成されているゲート電極GEと同層の多結晶シリコン膜からなるゲート引き出し部GPUが、エピタキシャル層EPIに形成されたチャネル領域CH上に、ゲート絶縁膜GOXを介して形成されている。そして、このゲート引き出し部GPUの上面および両側の側壁を覆うように層間絶縁膜ILが形成されており、この層間絶縁膜ILの一部にゲート引き出し部GPUの上面の一部を露出する開口部が形成されている。
そして、開口部内を含む層間絶縁膜IL上に、例えばチタンタングステン膜からなるバリア導体膜とアルミニウム膜とからなるゲート引き出し電極GPEが形成されている。ここで、ゲート引き出し部GPUは、複数のゲート電極GEと電気的に接続されており、ゲート引き出し電極GPEに印加されたゲート電圧は、ゲート引き出し部GPUを介して、複数のゲート電極GEのそれぞれに印加される。
さらに、エピタキシャル層EPIの上面には、セル領域CRから延在するチャネル領域CHが形成されており、このチャネル領域CHの内部に内包されるようにソース引き出し領域SPRが形成されている。チャネル領域CH上を覆うように、エピタキシャル層EPIの上面上に層間絶縁膜ILが形成されており、この層間絶縁膜ILには、ソース引き出し領域SPRを露出するように開口部が形成されている。そして、この開口部を埋め込み、かつ層間絶縁膜IL上に、例えばチタンタングステン膜からなるバリア導体膜とアルミニウム膜とからなるソース引き出し電極SPEが形成されている。
遷移領域TRにおいても、ゲート引き出し電極GPEおよびソース引き出し電極SPEを部分的に覆うように、例えば酸化シリコン膜からなる表面保護膜PASが形成されており、ゲート引き出し電極GPEの一部領域およびソース引き出し電極SPEの一部領域は、表面保護膜PASから露出している。
以上のようにして、遷移領域TRに遷移構造が形成されている。
(3)周辺領域PERの構造
図2に示すように、周辺領域PERでは、複数の第3p型カラム領域PC3と複数のエピタキシシャル層EPIからなるn型カラム領域とがx方向に交互に配置された、所謂スーパージャンクション構造を有している。実施の形態1による周辺領域PERでは、第3p型カラム領域PC3の幅(x方向の寸法)、奥行き(z方向の寸法)および深さ(y方向の寸法)とエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の幅(x方向の寸法)、奥行き(z方向の寸法)および深さ(y方向の寸法)とがそれぞれ同じになるように設計されている。従って、実施の形態1では、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3の幅とエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の幅との比が1:1の場合を例示している。
以下、具体的に説明する。セル領域CRと同様に周辺領域PERにおいても、半導体基板1Sの主面上には、エピタキシャル層EPIが形成されている。そして、エピタキシャル層EPI内でx方向に互いに離間するように複数の第3p型カラム領域PC3が形成されている。この第3p型カラム領域PC3のそれぞれは、例えば柱形状をしており、ボロン(B)などのp型不純物が導入された半導体領域から構成されている。第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度(Np3)は遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度(Np2)よりも低く、例えば2.4×1015/cm3である。そして、互いに隣り合う第3p型カラム領域PC3で挟まれたエピタキシャル層EPIの部分領域が、n型カラム領域になる。
さらに、エピタキシャル層EPIの上面には、セル領域CRに形成されているゲート電極GEと同層の多結晶シリコン膜からなる複数の電極(ダミー電極)FFPが形成されている。複数の電極(ダミー電極)FFPの上面および両側の側壁を覆うように、エピタキシャル層EPIの上面上に層間絶縁膜ILが形成されている。
周辺領域PERにおいても、例えば酸化シリコン膜からなる表面保護膜PASが形成されている。
以上のようにして、周辺領域PERに周辺構造が形成されている。
<スーパ−ジャンクション構造の利点>
上述したように、実施の形態1によるパワーMOSFETはスーパージャンクション構造をしている。このようなスーパージャンクション構造のパワーMOSFETによれば、以下に示すような利点を得ることができる。
すなわち、通常のパワーMOSFETでは、エピタキシャル層EPIの不純物濃度を低くして、パワーMOSFETのオフ状態時にエピタキシャル層EPIに形成される空乏層を延ばすことにより、耐圧を確保している。従って、高耐圧を実現するためには、低不純物濃度のエピタキシャル層EPIの厚さを厚くする必要がある。一方、低不純物濃度のエピタキシャル層を厚くすると、パワーMOSFETのオン抵抗が高くなる。つまり、パワーMOSFETにおいては、耐圧の向上とオン抵抗の低減とはトレードオフの関係にあることになる。
この点に関し、実施の形態1によるスーパージャンクション構造のパワーMOSFETでは、周期的な第1p型カラム領域PC1とn型カラム領域NCとからなるスーパージャンクション構造をエピタキシャル層EPIに形成している。このスーパージャンクション構造のパワーMOSFETでは、オフ状態において、第1p型カラム領域PC1とn型カラム領域NCとの境界領域に形成されるpn接合から横方向にも空乏層が延びる。このため、スーパージャンクション構造のパワーMOSFETでは、電流通路であるn型カラム領域NCの不純物濃度を高くしても、2つの境界領域に挟まれるn型カラム領域NCの内側方向に延びる空乏層が繋がってn型カラム領域NC全体が空乏化しやすくなる。これにより、オフ状態でn型カラム領域NC全体が空乏化するため、耐圧を確保することができる。つまり、スーパージャンクション構造のパワーMOSFETでは、電流通路であるn型カラム領域NCの不純物濃度を高くしながらも、n型カラム領域NC全体を空乏化することができる。この結果、スーパージャンクション構造のパワーMOSFETでは、高耐圧を確保しながら、オン抵抗を低減することができる利点が得られる。
<実施の形態1における特徴および効果>
(1)pn接合の耐圧
実施の形態1による半導体装置では、セル領域CRのn型カラム領域NCのn型不純物濃度(Nn)を周辺領域PERのエピタキシャル層EPIのn型不純物濃度(Nep)よりも高くしている。すなわち、実施の形態1では、セル領域CRのn型カラム領域NCのn型不純物濃度(Nn)を3.0×1015/cm3、周辺領域PERのエピタキシャル層EPIのn型不純物濃度(Nep)を2.4×1015/cm3としている。これにより、セル領域CRにおけるpn接合部(第1p型カラム領域PC1とn型カラム領域NCとの接合部)のバックグランド濃度が周辺領域PERにおけるpn接合部(第3p型カラム領域PC3とエピタキシャル層EPIとの接合部)のバックグランド濃度よりも高くする。これにより、アバランシェ降伏電圧(pn接合の耐圧)とバンドギャップとの関係を示す前記(式1)を考慮すると、セル領域CRのアバランシェ降伏電圧は、周辺領域PERのアバランシェ降伏電圧よりも低くなる。
従って、例えば負荷に含まれるインダクタンスの影響によって、パワーMOSFETに電源電圧以上の電圧が印加される場合において、周辺領域PERでアバランシェ降伏現象が生じることなく、セル領域CRでアバランシェ降伏現象を生じさせることができる。すなわち、実施の形態1によるパワーMOSFETによれば、周辺領域PERよりも局所的にアバランシェ電流が集中しにくいセル領域CRでアバランシェ降伏現象を生じさせることができる。つまり、パワーMOSFETのアバランシェ耐量を超えやすい周辺領域PERでアバランシェ降伏現象を生じる前に、周辺領域PERよりもパワーMOSFETのアバランシェ耐量を超えにくいセル領域CRでアバランシェ降伏現象を生じさせることができる。これはアバランシェ電流が流れるソース側コンタクトが高密度に存在するセル領域と、ソース側コンタクトが存在しない周辺領域の構造差による。この結果、電源電圧を超える電圧がパワーMOSFETに印加されてアバランシェ降伏現象が生じる場合であっても、パワーMOSFETの破壊にまで至る状況を回避することができる。これにより、実施の形態1によれば、パワーMOSFETを含む半導体装置の信頼性を向上することができる。
図3(a)は、実施の形態1による半導体装置におけるpn接合の耐圧(BVdss)のチャージバランスを示すグラフ図である。ここでは、セル領域および周辺領域のチャージバランスを示している。
実施の形態1では、セル領域CRのn型カラム領域NCのn型不純物濃度(Nn)を周辺領域PERのエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域のn型不純物濃度(Nep)よりも高くしている。これにより、図3(a)に示すように、セル領域CRのpn接合の耐圧(BVdss)は、周辺領域PERのpn接合の耐圧(BVdss)よりも低くなる。
また、セル領域CRのpn接合の耐圧(BVdss)の低下度合い(チャージバランスの曲線の曲率)は、周辺領域PERのpn接合の耐圧(BVdss)の低下度合いよりも小さくなる。この結果、セル領域CRのチャージバランスと周辺領域PERのチャージバランスとが重ならないので、1つの半導体チップCHPで考えた場合、半導体チップCHPの耐圧はセル領域CRのチャージバランスによって決まることになる。
(2)各領域のチャージバランス
スーパージャンクション構造では、pn接合部を構成するp型カラム領域の総電荷量とn型カラム領域の総電荷量とのチャージバランスが崩れると、pn接合の耐圧が急激に低下する。そのため、セル領域CR、遷移領域TRおよび周辺領域PERにおいてそれぞれp型カラム領域の総電荷量とn型カラム領域の総電荷量とを同じに設定することが望ましい。
しかし、半導体装置の製造時のプロセスマージンを考慮すると、p型カラム領域の総電荷量とn型カラム領域の総電荷量とを全く同じにすることは実際には難しい。そこで、通常、スーパージャンクション構造では、p型カラム領域の総電荷量(Qp)とn型カラム領域の総電荷量(Qn)とが同じ(Qp=Qn)、またはp型カラム領域の総電荷量(Qp)がn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも大きくなるように(Qp>Qn)、p型カラム領域およびn型カラム領域は形成される。さらに言えば、p型カラム領域の総電荷量(Qp)とn型カラム領域の総電荷量(Qn)とを全く同じ(Qp=Qn)にすることは実際には難しいため、p型カラム領域の総電荷量(Qp)とn型カラム領域の総電荷量(Qn)とを実質的に同じ(Qp≒Qn)としている。なお、「Qp≒Qn」で示すp型カラム領域の総電荷量(Qp)とn型カラム領域の総電荷量(Qn)とが実質的に同じとは、p型カラム領域の総電荷量(Qp)とn型カラム領域の総電荷量(Qn)との差がp型カラム領域の総電荷量(Qp)の±10%以内であることを言う。
従って、実施の形態1では、セル領域CRでは、第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)が、n型カラム領域NCの総電荷量(CQn)と実質的に同じ(CQp≒CQn)またはn型カラム領域NCの総電荷量(CQn)よりも大きくなるように(CQp>CQn)、各総電荷量が設定される。また、遷移領域TRでは、第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)が、エピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)と実質的に同じ(TQp≒TQn)またはエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)よりも大きくなるように(TQp>TQn)、各総電荷量が設定される。また、周辺領域PERでは、第3p型カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)が、エピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(PEQn)と実質的に同じ(PEQp≒PEQn)またはエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(PEQn)よりも大きくなるように(PEQp>PEQn)、各総電荷量が設定される。
これにより、セル領域CR、遷移領域TRおよび周辺領域PERにおいて、それぞれ理想的なチャージバランスをとることができる。
さらに、実施の形態1では、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)およびn型カラム領域NCの総電荷量(CQn)がそれぞれ遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)およびエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)よりも大きくなるように各総電荷量が設定される。また、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)およびエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)がそれぞれ周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)およびエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(PEQn)よりも大きくなるように各総電荷量が設定される。すなわち、セル領域CR、遷移領域TRおよび周辺領域PERにおいて、それぞれチャージバランスをとりながら、
CQp>TQp>PEQp、CQn>TQn>PEQn・・・(式2)
となるように、セル領域CR、遷移領域TRおよび周辺領域PERにおいて、各総電荷量が設定される。
実施の形態1では、図3(a)を用いて説明したように、1つの半導体チップCHPで考えた場合、半導体チップCHPの耐圧はセル領域CRのチャージバランスによって決まる。従って、セル領域CRにおいて、第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)が、n型カラム領域NCの総電荷量(CQn)と同じ(CQp=CQn)またはn型カラム領域NCの総電荷量(CQn)よりも大きく(CQp>CQn)、かつ目標値以上のpn接合の耐圧が得られるように、プロセス条件が設定される。
ここで、(式2)の関係を満たしていれば、セル領域CRの理想的な総電荷量の領域((CQp=CQn)および(CQp>CQn)の領域)において、遷移領域TRでも総電荷量は(TQp=TQn)および(TQp>TQn)の状態となり、かつ常にセル領域CRのpn接合の耐圧は遷移領域TRのpn接合の耐圧よりも低くなる。また、セル領域CRの理想的な総電荷量の領域((CQp=CQn)および(CQp>CQn)の領域)において、周辺領域PERでも総電荷量は(PEQp=PEQn)および(PEQp>PEQn)の状態となり、かつ常にセル領域CRのpn接合の耐圧は周辺領域PERのpn接合の耐圧よりも低くなる。
すなわち、(式2)の関係を満たしていれば、セル領域CRのチャージバランスで決まる総電荷量が(CQp=CQn)および(CQp>CQn)の範囲で、かつ目標値以上ののpn接合の耐圧が得られる領域(図3(a)に示すA1の領域)に、遷移領域TRの理想的なチャージバランスおよび周辺領域PERの理想的なチャージバランスを含めることができる。すなわち、この領域(図3(a)に示すA1の領域)であれば、遷移領域TRでも総電荷量が(TQp=TQn)および(TQp>TQn)の状態であり、また、周辺領域PERでも総電荷量が(PEQp=PEQn)および(PEQp>PEQn)の状態であり、かつ常にセル領域CRのpn接合の耐圧は遷移領域TRおよび周辺領域PERのpn接合の耐圧よりも低くすることができる。
図3(b)は、比較例として本発明者らが検討したセル領域のチャージバランスのpn接合の耐圧(BVdss)のピークと周辺領域のチャージバランスのpn接合の耐圧(BVdss)のピークとがシフトした場合の半導体装置のpn接合の耐圧(BVdss)のチャージバランスを示すグラフ図である。
セル領域CRのチャージバランスのpn接合の耐圧(BVdss)と周辺領域PERのチャージバランスのpn接合の耐圧(BVdss)とをシフトさせることによっても、セル領域CRのpn接合の耐圧(BVdss)を、周辺領域PERのpn接合の耐圧(BVdss)よりも低くすることはできる。しかし、周辺領域PERにおいて第3p型カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)よりもn型カラム領域の総電荷量(PEQn)が大きくなる範囲(PEQn>PEQp、図3(b)にA3で示す領域)は使用することができない。そのため、比較例による半導体装置の製造時のプロセスマージン(図3(b)にA2で示す領域)は、実施の形態1による半導体装置の製造時のプロセスマージン(図3(a)にA1で示す領域)よりも小さくなる。
従って、実施の形態1による半導体装置の方が、比較例による半導体装置よりも、その製造時のプロセスマージンを広くとれるという利点がある。
次に、セル領域CR、遷移領域TRおよび周辺領域PERにおけるそれぞれのp型カラム領域およびn型カラム領域の構造について詳細に説明する。
(2−1)セル領域
セル領域CRでは、図2に示したように、半導体基板1Sの主面上のエピタキシャル層EPIに、複数の第1p型カラム領域PC1と複数のn型カラム領域NCとが交互に形成されている。第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度をNp1、幅をCRWp、奥行きをDpおよび深さをTpとすると、第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)は、
CQp=Np1×{CRWp×Dp×Tp}・・・(式3)
で表される。
また、n型カラム領域NCのn型不純物濃度をNn、幅をCRWn、奥行きをDnおよび深さをTnとすると、n型カラム領域NCの総電荷量(CQn)は、
CQn=Nn×{CRWn×Dn×Tn}・・・(式4)
で表される。
第1p型カラム領域PC1の幅CRWp、奥行きDpおよび深さTpは、それぞれn型カラム領域NCの幅CRWn、奥行きDnおよび深さTnと同じであり、第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度(Np1)とn型カラム領域NCのn型不純物濃度(Nn)とは同じである。実施の形態1によるパワーMOSFETでは、第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度(Np1)およびn型カラム領域NCのn型不純物濃度(Nn)は、例えば3.0×1015/cm3である。
従って、セル領域CRでは、第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)とn型カラム領域NCの総電荷量(CQn)とは同じとなり(CQp=CQn)、チャージバランスをとることができる。
(2−2)遷移領域
遷移領域TRでは、図2に示したように、半導体基板1Sの主面上のエピタキシャル層EPIに、複数の第2p型カラム領域PC2が互いに離間して形成されている。エピタキシャル層EPIのn型不純物濃度は、セル領域CRのn型カラム領域NCのn型不純物濃度よりも低く、例えば2.4×1015/cm3である。
第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度をNp2、幅をTWp、奥行きをDpおよび深さをTpとすると、第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)は、
TQp=Np2×{TWp×Dp×Tp}・・・(式5)
で表される。ここで、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度(Np2)とセル領域CRの第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度(Np1)とは同じであるが(Np2=Np1)、第2p型カラム領域PC2の幅(TWp)は、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の幅(CRWp)よりも小さい(TWp<CRWp)。これにより、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)は、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)よりも小さくなる(TQp<CQp)。
また、エピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域のn型不純物濃度をNep、幅をTWn、奥行きをDpおよび深さをTpとすると、エピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)は、
TQn=Nep×{TWn×Dp×Tp}・・・(式6)
で表される。ここで、遷移領域TRのエピタキシャル層EPIのn型不純物濃度(Nep)は、セル領域CRのn型カラム領域NCのn型不純物濃度(Nn)よりも低い(Nep<Nn)。これにより、セル領域CRのn型カラム領域NCの幅(CRWn)と遷移領域TRのエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の幅(TWn)とが同じであっても、遷移領域TRのエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)は、セル領域CRのn型カラム領域NCの総電荷量(CQn)よりも小さくなる(TQn<CQn)。
従って、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)およびエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)は、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)およびn型カラム領域NCの総電荷量(CQn)よりもそれぞれ小さくなる(TQp<CQp,TQn<CQn)。また、第2p型カラム領域PC2の幅(TWp)およびピッチを調整することによって、遷移領域TRでは、第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)とエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)とは同じとなり(TQp=TQn)、チャージバランスをとることができる。
なお、上記説明では、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度とセル領域CRの第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度とを同じとし、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の幅(TWp)を、セル領域CRの第1型p型カラム領域PC1の幅(CRWp)よりも小さくした。これにより、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)を、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)よりも小さくした。しかし、これに限定されるものではない。
例えば遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の幅(TWp)とセル領域CRの第1p型カラム領域PC1の幅(CRWp)とを同じとし、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度をセル領域CRの第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度よりも低くしてもよい。これにより、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)を、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)よりも小さくすることができる。
(2−3)周辺領域
周辺領域PERでは、図2に示したように、半導体基板1Sの主面上のエピタキシャル層EPIに、複数の第3p型カラム領域PC3が互いに離間して形成されている。エピタキシャル層EPIのn型不純物濃度は、セル領域CRのn型カラム領域NCのn型不純物濃度よりも低く、例えば2.4×1015/cm3である。
第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度をNp3、幅をPEWp、奥行きをDpおよび深さをTpとすると、第3p型カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)は、
PEQp=Np3×{PEWp×Dp×Tp}・・・(式7)
で表される。ここで、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度(Np3)は、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度(Np2)よりも低い(Np3<Np2)。これにより、遷移領域TRのエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の幅(TWn)と周辺領域PERのエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の幅(PEWn)とが同じであっても、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)は、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)よりも小さくなる(PEQp<TQp)。
また、エピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域のn型不純物濃度をNep、幅をPEWn、奥行きをDpおよび深さをTpとすると、エピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(PEQn)は、
PEQn=Nep×{PEWn×Dp×Tp}・・・(式8)
で表される。ここで、周辺領域PERのエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の幅(PEWn)を、遷移領域TRのエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の幅(TWn)よりも小さくする(PEWn<TWn)。これにより、周辺領域PERのエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(PEQn)は、遷移領域TRのエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)よりも小さくなる(PEQn<TQn)。
従って、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)およびエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(PEQn)は、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)およびエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)よりもそれぞれ小さくなる(PEQp<TQp,PEQn<TQn)。また、第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度(Np3)、幅(PEWp)およびピッチを調整することによって、周辺領域PERでは、第3p型カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)とエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域の総電荷量(PEQn)とは同じとなり(PEQn=PEQp)、チャージバランスをとることができる。
なお、上記説明では、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度(Np3)をセル領域CRの第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度(Np1)および遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度(Np2)よりも低くした。これにより、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)を、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)および遷移領域TRの第2型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)よりも小さくした。しかし、これに限定されるものではない。
例えば周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度(Np3)と遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度(Np2)とを同じとし、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3の幅(PEWp)およびピッチを、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の幅(TWp)およびピッチよりもそれぞれ小さくしてもよい。これにより、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)を、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)および遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)よりも小さくすることができる。
(3)特徴点のまとめと効果
実施の形態1による半導体装置では、セル領域CRのn型カラム領域NCのn型不純物濃度(Nn)を周辺領域PERのエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域のn型不純物濃度(Nep)よりも高くすること、並びにセル領域CR、遷移領域TRおよび周辺領域PERにおいてそれぞれチャージバランスをとることが特徴となる。さらに、前記(式2)に示したように、セル領域CRの総電荷量(CQp、CQn)が遷移領域TRの総電荷量(TQp、TQn)よりも大きくなり、遷移領域TRの総電荷量(TQp、TQn)が周辺領域PERの総電荷量(PEQp、PEQn)よりも大きくなるように各総電荷量が設定されていることが特徴となる。
セル領域CRのn型カラム領域NCのn型不純物濃度(Nn)を周辺領域PERのエピタキシャル層EPIからなるn型カラム領域のn型不純物濃度(Nep)よりも高くすることにより、セル領域CRのpn接合の耐圧は周辺領域PERのpn接合の耐圧よりも低くなるので、セル領域CRでアバランシェ降伏現象を生じさせることができる。従って、パワーMOSFETのアバランシェ耐量を超えやすい周辺領域PERでアバランシェ降伏現象を生じる前に、パワーMOSFETのアバランシェ耐量を超えにくいセル領域CRでアバランシェ降伏現象を生じさせることができる。この結果、電源電圧を超える電圧がパワーMOSFETに印加されてアバランシェ降伏現象が生じる場合であっても、パワーMOSFETの破壊にまで至る状況を回避することができる。
また、セル領域CR、遷移領域TRおよび周辺領域PERにおいてそれぞれチャージバランスをとり、セル領域CRの総電荷量(CQp、CQn)を遷移領域TRの総電荷量(TQp、TQn)よりも大きくし、さらに、遷移領域TRの総電荷量(TQp、TQn)を周辺領域PERの総電荷量(PEQp、PEQn)よりも大きくしている。これにより、セル領域CRにおいて、総電荷量が(CQp=CQn)および(CQp>CQn)の範囲で、かつ目標値以上のpn接合の耐圧が得られる領域を、半導体装置の製造時のプロセスマージンとすることができる。この領域であれば、遷移領域TRでも総電荷量が(TQp=TQn)および(TQp>TQn)の状態であり、また、周辺領域PERでも総電荷量が(PEQp=PEQn)および(PEQp>PEQn)の状態であり、かつ常にセル領域CRのpn接合の耐圧を遷移領域TRおよび周辺領域PERのpn接合の耐圧よりも低くすることができる。
また、セル領域CRのn型カラム領域NCのn型不純物濃度(Nn)を高くしたことにより、パワーMOSFETのオン抵抗を低減することができる。
以上のことから、実施の形態1によるスーパージャンクション構造のパワーMOSFETを含む半導体装置の信頼性を向上させることができる。
<半導体装置の製造方法>
実施の形態1による半導体装置(パワーMOSFET)の製造方法の一例について図4〜図18を用いて説明する。図4〜図18は、実施の形態1による半導体装置の製造工程を示す断面図である。実施の形態1では、2段のエピタキシャル層を形成する、所謂「マルチエピタキシャル法」と呼ばれる製造方法について説明する。また、セル領域のpn接合の耐圧が600V〜650V、周辺領域のpn接合の耐圧が650V〜730Vの半導体装置を例示する。すなわち、周辺領域のpn接合の耐圧がセル領域のpn接合の耐圧よりも50V〜80V程度高い半導体装置を例示する。また、セル領域、遷移領域および周辺領域にそれぞれ形成されるカラム領域の奥行および深さは、同じとしている。
まず、図4に示すように、主面(表面、上面)上にn型半導体層からなる1層目のエピタキシャル層EPI1を形成した半導体基板1Sを用意する。例えば半導体基板1Sは、リン(P)または砒素(As)などのn型不純物を単結晶シリコンに導入することにより形成されている。また、エピタキシャル層EPI1のn型不純物濃度は、例えば2.4×1015/cm3程度であり、エピタキシャル層EPI1の厚さは、例えば22μm〜25μm程度である。
次に、図5に示すように、エピタキシャル層EPI1上にパターニングしたレジスト膜FR1を形成する。レジスト膜FR1は、セル領域CRのn型カラム形成領域を露出し、遷移領域TRおよび周辺領域PERを含むその他の領域のエピタキシャル層EPI1の上面を覆うように形成される。
そして、パターニングしたレジスト膜FR1をマスクにしたイオン注入法により、セル領域CRのエピタキシャル層EPI1の内部に、例えばリン(P)または砒素(As)などのn型不純物を導入することにより、複数のn型カラム領域NCを互いに離間するように形成する。
複数のn型カラム領域NCのそれぞれは、例えば注入エネルギーを変えたイオン注入を複数回実施することにより、エピタキシャル層EPI1の下面から上面にわたる略柱形状に形成される。n型カラム領域NCのn型不純物濃度は、例えば3.0×1015/cm3程度である。
次に、図6に示すように、レジスト膜FR1を除去した後、エピタキシャル層EPI1上にパターニングしたレジスト膜FR2を形成する。レジスト膜FR2は、セル領域CRの第1p型カラム形成領域および遷移領域TRの第2p型カラム形成領域を露出し、周辺領域PERを含むその他の領域のエピタキシャル層EPI1の上面を覆うように形成される。
そして、パターニングしたレジスト膜FR2をマスクにしたイオン注入法により、セル領域CRおよび遷移領域TRのエピタキシャル層EPI1の内部に、例えばボロン(B)などのp型不純物を導入することにより、セル領域CRでは、複数の第1p型カラム領域PC1を互いに離間するように形成し、遷移領域TRでは、複数の第2p型カラム領域PC2を互いに離間するように形成する。なお、遷移領域TRでは、互いに隣り合う第2p型カラム領域PC2で挟まれたエピタキシャル層EPI1の部分領域がn型カラム領域となる。
セル領域CRの複数の第1p型カラム領域PC1および遷移領域TRの複数の第2p型カラム領域PC2のそれぞれは、例えば注入エネルギーを変えたイオン注入を複数回実施することにより、エピタキシャル層EPI1の下面から上面にわたる略柱形状に形成される。
セル領域CRの第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度、幅およびピッチは、セル領域CRにおいてチャージバランスがとれるように設定される。実施の形態1による半導体装置では、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の幅とn型カラム領域NCの幅の比を1:1とした場合を例示する。この場合、第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)とn型カラム領域NCの総電荷量(CQn)とが同じ(CQp=CQn)となるように、第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度が設定される。従って、第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度は、n型カラム領域NCのn型不純物濃度と同じ、例えば3.0×1015/cm3程度である。
同様に、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度、幅およびピッチは、遷移領域TRにおいてチャージバランスがとれるように設定される。さらに、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)をセル領域CRの第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)よりも小さく設定する必要がある(CQp>TQp)。また、遷移領域TRのエピタキシャル層EPI1からなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)をセル領域CRのn型カラム領域NCの総電荷量(CQn)よりも小さく設定する必要がある(CQn>TQn)。
そこで、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2とセル領域CRの第1p型カラム領域PC1とは同じ工程で形成されることから、第2p型カラム領域PC2の幅を第1p型カラム領域PC1の幅よりも小さくした。さらに、遷移領域TRでは、エピタキシャル層EPI1の部分領域がn型カラム領域となるので、第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)とエピタキシャル層EPI1からなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)とが同じとなるように(TQp=TQn)、エピタキシャル層EPI1からなるn型カラム領域の幅(すなわち第2p型カラム領域PC2のピッチ)を調整した。
なお、ここでは、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の幅をセル領域CRの第1p型カラム領域PC1の幅よりも小さくしたが、これに限定されるものではない。例えば遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の幅とセル領域CRの第1p型カラム領域PC1の幅とを同じとして、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度をセル領域CRの第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度よりも低くしてもよい。
次に、図7に示すように、レジスト膜FR2を除去した後、エピタキシャル層EPI1上にパターニングしたレジスト膜FR3を形成する。レジスト膜FR3は、周辺領域PERの第3p型カラム形成領域を露出し、セル領域CRおよび遷移領域TRを含むその他の領域のエピタキシャル層EPI1の上面を覆うように形成される。
そして、パターニングしたレジスト膜FR3をマスクにしたイオン注入法により、周辺領域PERのエピタキシャル層EPI1の内部に、例えばボロン(B)などのp型不純物を導入することにより、複数の第3p型カラム領域PC3を互いに離間するように形成する。なお、周辺領域PERでは、互いに隣り合う第3p型カラム領域PC3で挟まれたエピタキシャル層EPI1の部分領域がn型カラム領域となる。
周辺領域PERの複数の第3p型カラム領域PC3のそれぞれは、例えば注入エネルギーを変えたイオン注入を複数回実施することにより、エピタキシャル層EPI1の下面から上面にわたる略柱形状に形成される。
周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度、幅およびピッチは、周辺領域PERにおいてチャージバランスがとれるように設定される。実施の形態1による半導体装置では、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3の幅とエピタキシャル層EPI1からなるn型カラム領域の幅との比を1:1とした場合を例示する。この場合、第3p型カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)とエピタキシャル層EPI1からなるn型カラム領域の総電荷量(PEQn)とが同じ(PEQp=PEQn)となるように、第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度が設定される。従って、第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度は、エピタキシャル層EPI1のn型不純物濃度と同じ、例えば2.4×1015/cm3程度である。
さらに、周辺領域PERの第3カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)を遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)よりも小さく設定する必要がある(TQp>PEQp)。また、周辺領域PERのエピタキシャル層EPI1からなるn型カラム領域の総電荷量(PEQn)を遷移領域TRのエピタキシャル層EPI1からなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)よりも小さく設定する必要がある(TQn>PEQn)。
そこで、周辺領域PERと遷移領域TRのそれぞれn型カラム領域は同じエピタキシャル層EPI1からなることから、周辺領域PERのエピタキシャル層EPI1からなるn型カラム領域の幅を遷移領域TRのエピタキシャル層EPI1からなるn型カラム領域の幅よりも小さくした。さらに、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3と遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2とは互いに異なる工程で形成されるので、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度を遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度よりも低くした。
なお、ここでは、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度を遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度よりも低くしたが、これに限定されるものではない。例えば周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度と遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度とを同じとして、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3の幅を遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の幅よりも小さくしてもよい。
次に、図8に示すように、1層目のエピタキシャル層EPI1上に、さらに、2層目のエピタキシャル層EPI2を形成する。エピタキシャル層EPI2の不純物濃度は、例えば2.4×1015/cm3程度であり、エピタキシャル層EPI2の厚さは、例えば22μm〜25μm程度である。
次に、図9に示すように(前記図5を用いて説明した工程と同様)、エピタキシャル層EPI2上にパターニングしたレジスト膜FR4を形成し、このレジスト膜FR4をマスクにしたイオン注入法により、セル領域CRのエピタキシャル層EPI2の内部に、例えばリン(P)または砒素(As)などのn型不純物を導入する。これにより、エピタキシャル層EPI1に形成された複数のn型カラム領域NCとそれぞれ電気的に接続する複数のn型カラム領域NCをエピタキシャル層EPI2に互いに離間するように形成する。n型カラム領域NCのn型不純物濃度は、例えば3.0×1015/cm3程度である。
次に、図10に示すように(前記図6を用いて説明した工程と同様)、レジスト膜FR4を除去した後、エピタキシャル層EPI2上にパターニングしたレジスト膜FR5を形成し、このレジスト膜FR5をマスクにしたイオン注入法により、セル領域CRおよび遷移領域TRのエピタキシャル層EPI2の内部に、例えばボロン(B)などのp型不純物を導入する。これにより、セル領域CRでは、エピタキシャル層EPI1に形成された複数の第1p型カラム領域PC1とそれぞれ電気的に接続する複数の第1p型カラム領域PC1をエピタキシャル層EPI2に互いに離間するように形成する。また、遷移領域TRでは、エピタキシャル層EPI1に形成された複数の第2p型カラム領域PC2とそれぞれ電気的に接続する複数の第2p型カラム領域PC2をエピタキシャル層EPI2に互いに離間するように形成する。第1p型カラム領域PC1および第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度は、例えば3.0×1015/cm3程度であり、セル領域CRおよび遷移領域TRにおいてそれぞれチャージバランスがとれるように第1p型カラム領域PC1および第2p型カラム領域PC2は形成される。
この結果、実施の形態1によれば、セル領域CRでは、第1p型カラム領域PC1とn型カラム領域NCとが交互に形成されたスーパージャンクション構造が形成され、遷移領域TRでは、第2p型カラム領域PC2とエピタキシャル層EPI1,EPI2からなるn型カラム領域とが交互に形成されたスーパージャンクション構造が形成される。
次に、図11に示すように(前記図7を用いて説明した工程と同様)、レジスト膜FR5を除去した後、エピタキシャル層EPI2上にパターニングしたレジスト膜FR6を形成し、このレジスト膜FR6をマスクにしたイオン注入法により、周辺領域PERのエピタキシャル層EPI2の内部に、例えばボロン(B)などのp型不純物を導入する。これにより、周辺領域PERに、エピタキシャル層EPI1に形成された複数の第3p型カラム領域PC3とそれぞれ電気的に接続する複数の第3p型カラム領域PC3をエピタキシャル層EPI2に互いに離間するように形成する。第3p型カラム領域PC3の不純物濃度は、例えば2.4×1015/cm3程度であり、周辺領域PERにおいてチャージバランスがとれるように第3p型カラム領域PC3は形成される。
この結果、実施の形態1によれば、周辺領域PERでは、第3p型カラム領域PC3とエピタキシャル層EPI1,EPI2からなるn型カラム領域とが交互に形成されたスーパージャンクション構造が形成される。
なお、実施の形態1では、エピタキシャル層EPI1,EPI2を2層に分けて形成する「マルチエピタキシャル法」を説明したが、これに限定されるものではない。例えばソース・ドレイン間耐圧(BVdss)が600Vの製品では、エピタキシャル層を6層〜7層に分けて形成している。
また、実施の形態1では、エピタキシャル層EPI1,EPI2のそれぞれの厚さを22μm〜25μmとしたが、それぞれの厚さは設計するセルピッチにも依存する。一般に高エネルギーでイオン打ち込みを行った場合は、x方向(セルピッチ)、y方向(深さ)およびz方向(奥行き)でイオン分布が大きくなり、フォトリソグラフィ技術で使用するマスクの幅を小さくしてもp型カラム領域の幅が拡がってしまう。オン抵抗を下げるためにセルピッチを小さくしたい場合は、例えばエピタキシャル層EPI1,EPI2のそれぞれの厚さを3μm〜5μm程度として、その分イオン注入のエネルギーを下げることで狭いセルピッチを維持することができる。しかし、その際には、耐圧を確保するため、エピタキシャル層EPIを3層以上の多段とし、イオン注入の回数を増やす必要がある。さらに、3層以上の多段のエピタキシャル層EPIのトータルの厚さは、耐圧を確保するために必要とされる厚さ、例えば実施の形態1では40μm〜50μm程度とする必要がある。
以上のようにして、実施の形態1によれば、「マルチエピタキシャル法」によって、エピタキシャル層EPI1,EPI2にスーパージャンクション構造を形成することができる。
次に、スーパージャンクション構造を形成したエピタキシャル層EPI1,EPI2の上面に素子部を形成する工程について説明する。
まず、図12に示すように、エピタキシャル層EPI2の上面を平坦化する。
次に、図13に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法により、セル領域CRと遷移領域TRにチャネル領域CHを形成する。このチャネル領域CHは、エピタキシャル層EPI2の内部に、例えばボロン(B)などのp型不純物を導入することにより形成されたp型半導体領域である。続いて、エピタキシャル層EPI2の上面にゲート絶縁膜GOXを形成し、このゲート絶縁膜GOX上に導体膜PF1を形成する。ゲート絶縁膜GOXは、例えば酸化シリコン膜からなり、例えば熱酸化法により形成される。ただし、ゲート絶縁膜GOXは酸化シリコン膜に限らず、例えば酸化ハフニウム膜に代表される酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜であってもよい。一方、ゲート絶縁膜GOX上に形成される導体膜PF1は、例えば多結晶シリコン膜からなり、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。
次に、図14に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、導体膜PF1をパターニングする。これにより、セル領域CRに複数のゲート電極GEが形成され、遷移領域TRにゲート引き出し部GPUが形成され、周辺領域PERに複数の電極(ダミー電極)FFPが形成される。ゲート引き出し部GPUは、複数のゲート電極GEと電気的に接続されるように形成される。
次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法により、セル領域CRにゲート電極GEに整合する複数のソース領域SRを形成し、遷移領域TRにソース引き出し領域SPRを形成する。ソース領域SRおよびソース引き出し領域SPRは、エピタキシャル層EPI2の内部に、例えばリン(P)または砒素(As)などのn型不純物を導入することにより形成されたn型半導体領域である。セル領域CRに形成されている複数のソース領域SRは、遷移領域TRに形成されているソース引き出し領域SPRと電気的に接続されている。
次に、図15に示すように、複数のゲート電極GEと、ゲート引き出し部GPUと、複数の電極(ダミー電極)FFPとを覆う層間絶縁膜ILをエピタキシャル層EPI2上に形成する。この層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜からなり、例えばCVD法により形成される。
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、セル領域CRの隣り合うゲート電極GE間において、底部がソース領域SRに達する開口部を層間絶縁膜ILに形成するとともに、遷移領域TRのゲート引き出し部GPUの一部を露出する開口部を形成する。また、遷移領域TRにおいては、層間絶縁膜ILに開口部を形成することにより、ソース引き出し領域SPRを露出する。
次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法により、セル領域CRの複数のソース領域SRのそれぞれの中央部に、底部がチャネル領域CHに達するボディコンタクト領域BCを形成する。このボディコンタクト領域BCは、エピタキシャル層EPI2の内部に、例えばボロン(B)などのp型不純物を導入することにより形成されたp型半導体領域であり、ボディコンタクト領域BCの不純物濃度がチャネル領域CHの不純物濃度よりも高くなるように形成される。
次に、図16に示すように、ソース領域SRを露出する開口部と、ゲート引き出し部GPUを露出する開口部と、ソース引き出し領域SPRを露出する開口部とを含む層間絶縁膜IL上に金属膜を形成する。この金属膜は、例えばチタンタングステン膜とアルミニウム膜との積層膜からなり、例えばスパッタリング法により形成される。
そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、上記金属膜をパターニングする。これにより、セル領域CRには、ソース領域SRとボディコンタクト領域BCとに電気的に接続するソース電極SEが形成される。遷移領域TRには、ゲート引き出し部GPUと電気的に接続するゲート引き出し電極GPEおよびソース引き出し領域SPRと電気的に接続するソース引き出し電極SPEが形成される。
次に、図17に示すように、ソース電極SEと、ゲート引き出し電極GPEと、ソース引き出し電極SPEとを覆うように表面保護膜PASを形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、表面保護膜PASをパターニングして、ソース電極SEの一部領域と、ゲート引き出し電極GPEの一部領域と、ソース引き出し電極SPEの一部領域とを表面保護膜PASから露出させる。これにより、表面保護膜PASから露出した領域を外部接続領域として機能させることができる。
次に、図18に示すように、半導体基板1Sの主面と反対側の裏面から半導体基板1Sを研削して、半導体基板1Sを薄くする。そして、半導体基板1Sの裏面に、ドレイン電極DEとなる金属膜をスパッタリング法または蒸着法により形成する。以上のようにして、実施の形態1によるスーパージャンクション構造のパワーMOFETを有する半導体装置を製造することができる。
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、「マルチエピタキシャル法」によって形成されるスーパージャンクション構造を有するパワーMOSFETに新規な技術的思想を適用する例ついて説明した。実施の形態2では、「トレンチフィル法」によって形成されるスーパージャンクション構造を有するパワーMOSFETに新規な技術的思想を適用する例について説明する。
<半導体装置の構成>
図19は、実施の形態2による半導体装置(パワーMOSFET)の構成を示す断面図である。図19に示す実施の形態2によるパワーMOSFETの構成は、前記図2に示した前記実施の形態1によるパワーMOSFETの構成とほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明する。
実施の形態2による半導体装置では、セル領域CRに形成されている複数の第1p型カラム領域PC1、遷移領域TRに形成されている複数の第2p型カラム領域PC2および周辺領域PERに形成されている複数の第3p型カラム領域PC3を溝(トレンチ)にp型半導体膜を埋め込むことにより形成している。この点が、第1p型カラム領域PC1、第2p型カラム領域PC2、第3p型カラム領域PC3およびn型カラム領域NCをイオン注入法で形成する前記実施の形態1による半導体装置(図2参照)と相違する。ただし、第1p型カラム領域PC1、第2p型カラム領域PC2および第3p型カラム領域PC3の機能自体は、前記実施の形態1による半導体装置と同様である。
実施の形態2による半導体装置においても、セル領域CRの第1n型カラム領域NC1のn型不純物濃度(Nn)を周辺領域PERの第3n型カラム領域NC3のn型不純物濃度(Nep)よりも高くすること、並びにセル領域CR、遷移領域TRおよび周辺領域PERにおいてそれぞれチャージバランスをとることが特徴となる。さらに、セル領域CRの総電荷量(CQp、CQn)が遷移領域TRの総電荷量(TQp、TQn)よりも大きくなり、遷移領域TRの総電荷量(TQp、TQn)が周辺領域PERの総電荷量(PEQp、PEQn)よりも大きくなるように各総電荷量が設定されていることが特徴となる。
すなわち、実施の形態1と同様、実施の形態2によるスーパージャンクション構造のパワーMOSFETを含む半導体装置の信頼性を向上することができる。
<半導体装置の製造方法>
実施の形態2による半導体装置(パワーMOSFET)の製造方法の一例について図20〜図32を用いて説明する。図20〜図32は、実施の形態2による半導体装置の製造工程を示す断面図である。実施の形態2では、所謂「トレンチフィル法」と呼ばれる製造方法について説明する。また、セル領域のpn接合の耐圧が600V〜650V、周辺領域のpn接合の耐圧が700V〜750Vの半導体装置を例示する。すなわち、周辺領域のpn接合の耐圧がセル領域のpn接合の耐圧よりも50V〜150V程度高い半導体装置を例示する。また、セル領域、遷移領域および周辺領域にそれぞれ形成されるカラム領域の奥行および深さは、同じとしている。
まず、図20に示すように、主面(表面、上面)上にn型半導体層からなる低濃度のエピタキシャル層EPILを形成した半導体基板1Sを用意する。例えば半導体基板1Sは、リン(P)または砒素(As)などのn型不純物を単結晶シリコンに導入することにより形成されている。また、エピタキシャル層EPILのn型不純物濃度は、例えば2.4×1015/cm3程度であり、エピタキシャル層EPILの厚さは、例えば40μm〜50μm程度である。
次に、図21に示すように、エピタキシャル層EPIL上にパターニングしたレジスト膜FR7を形成する。レジスト膜FR7は、周辺領域PERのエピタキシャル層EPILの上面を覆うように形成される。
そして、パターニングしたレジスト膜FR7をマスクにしたイオン注入法により、セル領域CRおよび遷移領域TRのエピタキシャル層EPILの内部に、例えばリン(P)などのn型不純物を導入する。続いてアニール処理を行うことにより、エピタキシャル層EPILの内部に導入されたn型不純物を拡散させて、セル領域CRおよび遷移領域TRに高濃度のエピタキシャル層EPIHを形成する。エピタキシャル層EPIHのn型不純物濃度は、例えば3.0×1015/cm3程度である。
次に、図22に示すように、レジスト膜FR7を除去した後、エピタキシャル層EPIH,EPIL上にパターニングしたレジスト膜FR8を形成する。レジスト膜FR8は、遷移領域TRの第2p型カラム形成領域および周辺領域PERの第3p型カラム形成領域を露出し、セル領域CRを含むその他の領域のエピタキシャル層EPIH,EPILの上面を覆うように形成される。
そして、パターニングしたレジスト膜FR8をマスクとしたエッチング技術により、遷移領域TRのエピタキシャル層EPIHおよび周辺領域PERのエピタキシャル層EPILに複数の溝(トレンチ)DTPを形成する。溝DTPのテーパ角は、例えば88.0度〜90度程度である。
このとき、遷移領域TRでは、互いに隣り合う溝DTPで挟まれたエピタキシャル層EPIHの部分領域が第2n型カラム領域NC2となり、周辺領域PERでは、互いに隣り合う溝DTPで挟まれたエピタキシャル層EPILの部分領域が第3n型カラム領域NC3となる。
次に、図23に示すように、レジスト膜FR8を除去する。その後、例えば埋め込みエピタキシャル成長法により、遷移領域TRのエピタキシャル層EPIHに形成された溝DTPの内部にp型半導体領域からなる第2p型カラム領域PC2を形成し、周辺回路領域PERのエピタキシャル層EPILに形成された溝DTPの内部にp型半導体領域からなる第3p型カラム領域PC3を形成する。
周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度、幅およびピッチは、周辺領域PERにおいてチャージバランスがとれるように設定される。実施の形態2による半導体装置では、周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3の幅と第3n型カラム領域NC3の幅の比を1:1とした場合を例示する。この場合、第3p型カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)と第3n型カラム領域NC3の総電荷量(PEQn)とが同じ(PEQp=PEQn)となるように、第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度が設定される。従って、第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度は、第3n型カラム領域NC3を構成するエピタキシャル層EPILのn型不純物濃度と同じ、例えば2.4×1015/cm3程度である。
同様に、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度、幅およびピッチは、遷移領域TRにおいてチャージバランスがとれるように設定される。遷移領域TRの第2n型カラム領域NC2のn型不純物濃度は、例えば3.0×1015/cm3程度である。一方、第2p型カラム領域PC2と第3p型カラム領域PC3とは同じ工程で形成されるので、第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度は、例えば2.4×1015/cm3程度である。しかし、第2p型カラム領域PC2の幅を、例えば第2n型カラム領域NC2の幅よりも大きくすることで、第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)と第2n型カラム領域NC2の総電荷量(TQn)とを同じ(TQp=TQn)とすることができる。
さらに、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)を周辺領域PERの第3カラム領域PC3の総電荷量(PEQp)よりも大きく設定する必要がある(TQp>PEQp)。また、遷移領域TRのエピタキシャル層EPIHからなるn型カラム領域の総電荷量(TQn)を周辺領域PERのエピタキシャル層EPILからなるn型カラム領域の総電荷量(PEQn)よりも大きく設定する必要がある(TQn>PEQn)。
しかし、遷移領域TRの第2n型カラム領域NC2のn型不純物濃度を周辺領域PERの第3n型カラム領域NC3のn型不純物濃度よりも高くし、遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の幅を周辺領域PERの第3p型カラム領域PC3の幅よりも大きくすることにより、上記設定(TQp>PEQp,TQn>PEQn)を実現することができる。
この結果、実施の形態2によれば、遷移領域TRでは、第2p型カラム領域PC2と第2n型カラム領域NC2とが交互に形成されたスーパージャンクション構造が形成され、周辺領域PERでは、第3p型カラム領域PC3と第3n型カラム領域NC3とが交互に形成されたスーパージャンクション構造が形成される。
次に、図24に示すように、エピタキシャル層EPIH,EPIL上にパターニングしたレジスト膜FR9を形成する。レジスト膜FR9は、セル領域CRの第1p型カラム形成領域を露出し、遷移領域TRおよび周辺領域PERを含むその他の領域のエピタキシャル層EPIH,EPILの上面を覆うように形成される。
そして、パターニングしたレジスト膜FR9をマスクとしたエッチング技術により、セル領域CRのエピタキシャル層EPIHに複数の溝(トレンチ)DCを形成する。溝DCのテーパ角は、例えば88.0度〜90度程度である。
このとき、セル領域CRでは、互いに隣り合う溝DCで挟まれたエピタキシャル層EPIHの部分領域が第1n型カラム領域NC1となる。
次に、図25に示すように、レジスト膜FR9を除去する。
次に、図26に示すように、例えば埋め込みエピタキシャル成長法により、セル領域CRのエピタキシャル層EPIHに形成された溝DCの内部にp型半導体領域からなる第1p型カラム領域PC1を形成する。
セル領域CRの第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度、幅およびピッチは、セル領域CRにおいてチャージバランスがとれるように設定される。実施の形態2による半導体装置では、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の幅と第1n型カラム領域NC1の幅の比を1:1とした場合を例示する。この場合、第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)と第1n型カラム領域NC1の総電荷量(CQn)とが同じ(CQp=CQn)となるように、第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度が設定される。
また、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1の総電荷量(CQp)は遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2の総電荷量(TQp)よりも大きく(CQp>TQp)、セル領域CRの第1n型カラム領域NC1の総電荷量(CQn)は遷移領域TRの第2n型カラム領域NC2の総電荷量(TQn)よりも大きく設定する必要がある(CQn>TQn)。
そこで、実施の形態2による半導体装置では、セル領域CRの第1n型カラム領域NC1のn型不純物濃度と遷移領域TRの第2n型カラム領域NC2のn型不純物濃度とが同じであることから、セル領域CRの第1n型カラム領域NC1の幅を遷移領域TRの第2n型カラム領域NC2の幅よりも大きくした。また、セル領域CRの第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度を遷移領域TRの第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度よりも高くした。
この結果、実施の形態2によれば、セル領域CRでは、第1p型カラム領域PC1と第1n型カラム領域NC1とが交互に形成されたスーパージャンクション構造が形成される。
次に、スーパージャンクション構造を形成したエピタキシャル層EPIH,EPILの上面に素子部を形成する工程について説明する。
まず、エピタキシャル層EPIH,EPILの上面を平坦化する。
次に、図27に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法により、セル領域CRと遷移領域TRにチャネル領域CHを形成する。このチャネル領域CHは、エピタキシャル層EPIH,EPILの内部に、例えばボロン(B)などのp型不純物を導入することにより形成されたp型半導体領域である。続いて、エピタキシャル層EPIH,EPILの上面にゲート絶縁膜GOXを形成し、このゲート絶縁膜GOX上に導体膜PF1を形成する。ゲート絶縁膜GOXは、例えば酸化シリコン膜からなり、例えば熱酸化法により形成される。ただし、ゲート絶縁膜GOXは酸化シリコン膜に限らず、例えば酸化ハフニウム膜に代表される酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜であってもよい。一方、ゲート絶縁膜GOX上に形成される導体膜PF1は、例えば多結晶シリコン膜からなり、例えばCVD法により形成される。
次に、図28に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、導体膜PF1をパターニングする。これにより、セル領域CRに複数のゲート電極GEが形成され、遷移領域TRにゲート引き出し部GPUが形成され、周辺領域PERに複数の電極(ダミー電極)FFPが形成される。ゲート引き出し部GPUは、複数のゲート電極GEと電気的に接続されるように形成される。
次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法により、セル領域CRにゲート電極GEに整合する複数のソース領域SRを形成し、遷移領域TRにソース引き出し領域SPRを形成する。ソース領域SRおよびソース引き出し領域SPRは、エピタキシャル層EPIH,EPILの内部に、例えばリン(P)または砒素(As)などのn型不純物を導入することにより形成されたn型半導体領域である。セル領域CRに形成されている複数のソース領域SRは、遷移領域TRに形成されているソース引き出し領域SPRと電気的に接続されている。
次に、図29に示すように、複数のゲート電極GEと、ゲート引き出し部GPUと、複数の電極(ダミー電極)FFPとを覆う層間絶縁膜ILをエピタキシャル層EPIH,EPIL上に形成する。この層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜からなり、例えばCVD法により形成される。
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、セル領域CRの隣り合うゲート電極GE間において、底部がソース領域SRに達する開口部を層間絶縁膜ILに形成するとともに、遷移領域TRのゲート引き出し部GPUの一部を露出する開口部を形成する。また、遷移領域TRにおいては、層間絶縁膜ILに開口部を形成することにより、ソース引き出し領域SPRを露出する。
次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法により、セル領域CRの複数のソース領域SRのそれぞれの中央部に、底部がチャネル領域CHに達するボディコンタクト領域BCを形成する。このボディコンタクト領域BCは、例えば、エピタキシャル層EPIH,EPILの内部に、例えばボロン(B)などのp型不純物を導入することにより形成されたp型半導体領域であり、ボディコンタクト領域BCの不純物濃度がチャネル領域CHの不純物濃度よりも高くなるように形成される。
次に、図30に示すように、ソース領域SRを露出する開口部と、ゲート引き出し部GPUを露出する開口部と、ソース引き出し領域SPRを露出する開口部とを含む層間絶縁膜IL上に金属膜を形成する。この金属膜は、例えばチタンタングステン膜とアルミニウム膜との積層膜から形成され、例えばスパッタリング法により形成される。
そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、上記金属膜をパターニングする。これにより、セル領域CRには、ソース領域SRとボディコンタクト領域BCとに電気的に接続するソース電極SEが形成される、遷移領域TRには、ゲート引き出し部GPUと電気的に接続されるゲート引き出し電極GPEおよびソース引き出し領域SPRと電気的に接続されるソース引き出し電極SPEが形成される。
次に、図31に示すように、ソース電極SEと、ゲート引き出し電極GPEと、ソース引き出し電極SPEとを覆うように表面保護膜PASを形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、表面保護膜PASをパターニングして、ソース電極SEの一部領域と、ゲート引き出し電極GPEの一部領域と、ソース引き出し電極SPEの一部領域とを表面保護膜PASから露出させる。これにより、表面保護膜からPASから露出した領域を外部接続領域として機能させることができる。
次に、図32に示すように、半導体基板1Sの主面と反対側の裏面から半導体基板1Sを研削して、半導体基板1Sを薄くする。そして、半導体基板1Sの裏面に、ドレイン電極DEとなる金属膜をスパッタリング法または蒸着法により形成する。以上のようにして、実施の形態2によるスーパージャンクション構造のパワーMOSFETを有する半導体装置を製造することができる。
<トレンチフィル法の利点>
例えばスーパージャンクション構造においては、オン抵抗の低減を図る観点から、p型カラム領域とn型カラム領域との間隔を狭くすることが有効である。なぜなら、オン抵抗の低減を図る観点から、電流通路であるn型カラム領域のn型不純物濃度を高くすることが望ましいからである。すなわち、オン抵抗を低減するために、n型カラム領域のn型不純物濃度を高くすると、n型カラム領域への空乏層の延びが小さくなることから、n型カラム領域全体を空乏化させるためには、n型カラム領域の幅を狭くする必要がある。従って、n型カラム領域のn型不純物濃度を高くして、スーパージャンクション構造のパワーMOSFETにおけるオン抵抗を低減する一方、耐圧も確保することを考慮すると、p型カラム領域とn型カラム領域との間隔を狭くする必要がある。
この点に関し、「マルチエピタキシャル法」では、p型カラム領域をイオン注入法で形成している。このため、不純物拡散効果を考慮すると、p型カラム領域とn型カラム領域との間隔を充分に狭くすることはできないことになる。一方、「トレンチフィル法」では、p型カラム領域は、エピタキシャル層に形成された溝への埋め込みエピタキシャル法で形成される。このため、「トレンチフィル法」では、溝の形成精度によって、p型カラム領域の形成精度が決定されることになる。そして、溝は、フォトリソグラフィ技術によって形成される。このとき、フォトリソグラフィ技術の精度は、イオン注入法の精度よりも高いため、「トレンチフィル法」では、「マルチエピタキシャル法」よりも高い精度で、p型カラム領域を形成できることになる。このことは、「トレンチフィル法」では、「マルチエピタキシャル法」に比べて、p型カラム領域とn型カラム領域との間隔をより狭くすることができることを意味する。この結果、「トレンチフィル法」によれば、「マルチエピタキシャル法」よりもオン抵抗の小さなパワーMOSFETを製造できる利点があるのである。すなわち、耐圧を確保しながらも、よりオン抵抗の小さなパワーMOSFETを製造できる点で、「トレンチフィル法」は、「マルチエピタキシャル法」に比べて優位性を有していることになる。
また、エピタキシャル層に形成される溝にテーパ角を付けることにより、寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作を抑制することができる。以下に、寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作が抑制できる理由について、図33を用いて説明する。
図33は、pn接合の耐圧(BVdss)のチャージバランスを示すグラフ図、pn接合部の総電荷量分布を示す模式図およびpn接合部の電界強度を示す模式図である。図33(a)は、p型カラム領域の総電荷量(Qp)とn型カラム領域の総電荷量(Qn)とが実質的に同じ場合(Qp≒Qn)の電界強度等を示す。図33(b)は、p型カラム領域の総電荷量(Qp)がn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも大きい場合(Qp>Qn)の電界強度等を示す。図33(c)は、p型カラム領域の総電荷量(Qp)がn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも小さい場合(Qp<Qn)の電界強度等を示す。
図33(a)のチャージバランスに示すように、p型カラム領域の総電荷量(Qp)とn型カラム領域の総電荷量(Qn)とが実質的に同じであれば(Qp≒Qn)、pn接合の耐圧(BVdss)の最大値を得ることができる。p型カラム領域の総電荷量(Qp)およびn型カラム領域の総電荷量(Qn)にp型カラム領域の総電荷量(Qp)の±10%程度のばらつきが生じても、pn接合の耐圧(BVdss)の低下は僅かである。
また、図33(a)の総電荷量分布および電界強度に示すように、p型カラム領域が形成される溝にテーパ角を有し、p型カラム領域の総電荷量(Qp)とn型カラム領域の総電荷量(Qn)とが実質的に同じ場合(Qp≒Qn)、p型カラム領域およびn型カラム領域の深さ方向の中間地点で電界強度を最大とすることができる。
図3(b)のチャージバランスに示すように、p型カラム領域の総電荷量(Qp)がn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも大きい場合(Qp>Qn)は、p型カラム領域の総電荷量(Qp)がn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも大きくなるに従い、徐々にpn接合の耐圧(BVdss)は低下する。
しかし、図33(b)の総電荷量分布および電界強度に示すように、p型カラム領域が形成される溝にテーパ角を有し、p型カラム領域の総電荷量(Qp)がn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも大きい場合(Qp>Qn)は、電界強度はp型カラム領域およびn型カラム領域の深さ方向の中間地点よりも深い位置で最大となる。すなわち、p型カラム領域の総電荷量(Qp)がn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも大きい場合(Qp>Qn)の最大電界強度の位置は、p型カラム領域の総電荷量(Qp)とn型カラム領域の総電荷量(Qn)とが実質的に同じ場合(Qp≒Qn)の最大電界強度の位置よりも、エピタキシャル層の上面から離れることになる。
アバランシェ降伏現象が生じるのは、この最大電界強度の位置近傍である。従って、この最大電界強度の位置がエピタキシャル層の上面から離れているので、チャネル領域へ流れるが、ここで発生したアバランシェ電流は奥行き方向に分散しやすいため、アバランシェ電流密度は減少して、ソース領域をエミッタ領域とし、チャネル領域をベース領域とし、n型カラム領域をコレクタ領域とする寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作を抑制することができる。
これに対し、図33(c)のチャージバランスに示すように、p型カラム領域の総電荷量(Qp)がn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも小さい場合(Qp<Qn)は、p型カラム領域の総電荷量(Qp)がn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも小さくなるに従い、徐々にpn接合の耐圧(BVdss)は低下する。
しかし、図33(c)の総電荷量分布および電界強度に示すように、p型カラム領域が形成される溝にテーパ角を有し、p型カラム領域の総電荷量(Qp)がn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも小さい場合(Qp<Qn)は、電界強度はp型カラム領域およびn型カラム領域の深さ方向の中間地点よりも浅い位置で最大となる。すなわち、p型カラム領域の総電荷量(Qp)がn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも小さい場合(Qp<Qn)の最大電界強度の位置は、p型カラム領域の総電荷量(Qp)とn型カラム領域の総電荷量(Qn)とが同じ場合(Qp≒Qn)の最大電界強度の位置よりも、エピタキシャル層の上面に近づくことになる。
アバランシェ降伏現象が生じるのは、この最大電界強度の位置近傍である。従って、この最大電界強度の位置がエピタキシャル層の上面に近づいているので、チャネル領域へ流れるここで発生したアバランシェ電流密度が高いまま流れるため、ソース領域をエミッタ領域とし、チャネル領域をベース領域とし、n型カラム領域をコレクタ領域とする寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作が起こりやすくなる。
以上のことから、「トレンチフィル法」では、エピタキシャル層に形成される溝にテーパ角を付けて、かつp型カラム領域の総電荷量(Qp)をn型カラム領域の総電荷量(Qn)よりも大きくすることにより(Qp>Qn)、寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作を抑制することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、前記実施の形態1で説明した「マルチエピタキシャル法」によって形成されるスーパージャンクション構造を有するパワーMOSFETの変形例について説明する。
前記実施の形態2で説明したように、「トレンチフィル法」では、エピタキシャル層に形成する溝にテーパ角を付けることにより、寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作を抑制することができる。これに対して、「マルチエピタキシャル法」では、p型カラム領域またはn型カラム領域に濃度傾斜を深さ方向に設けることにより、最大電界強度の位置を深さ方向の中間地点よりもエピタキシャル層の上面から離して、寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作を抑制することができる。
<半導体装置の構成>
図34は、実施の形態3による半導体装置(パワーMOSFET)の構成を示す断面図である。図34に示す実施の形態3によるパワーMOSFETの構成は、前記図2に示した前記実施の形態1によるパワーMOSFETの構成とほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明する。
実施の形態3による半導体装置では、セル領域CRに形成されている複数の第1p型カラム領域PC1および複数のn型カラム領域NC、遷移領域TRに形成されている複数の第2p型カラム領域PC2、並びに周辺領域PERに形成されている複数の第3p型カラム領域PC3は、「マルチエピタキシャル法」によって形成される。すなわち、これら各々のカラム領域は、例えば注入エネルギーを変えたイオン注入を複数回実施することにより、エピタキシャル層EPIの下面から上面にわたる略柱形状に形成される。
前記実施の形態1による半導体装置では、これら各々のカラム領域の不純物濃度を、エピタキシャル層EPIの上面から下面へ向かう深さ方向に一定とした。これに対して、実施の形態3による半導体装置では、エピタキシャル層EPIの上面から下面へ向かう深さ方向に、これら各々のカラム領域の不純物濃度に濃度差を設けている。この濃度差は、例えばイオン注入において注入エネルギーを変えると同時にドーズ量を調整することにより、実現することができる。
図34に示すように、セル領域CRでは、エピタキシャル層EPIの上面から下面へ向かう深さ方向(y方向)に、複数のn型カラム領域NCのn型不純物濃度を徐々に高くし、複数の第1p型カラム領域PC1のp型不純物濃度を徐々に低くしている。また、遷移領域TRでは、エピタキシャル層EPIの上面から下面へ向かう深さ方向(y方向)に、複数の第2p型カラム領域PC2のp型不純物濃度を徐々に低くしている。また、周辺領域PERでは、エピタキシャル層EPIの上面から下面へ向かう深さ方向(y方向)に複数の第3p型カラム領域PC3のp型不純物濃度を徐々に低くしている。
図35は、実施の形態3による半導体装置におけるpn接合部の総電荷量分布を示す模式図およびpn接合部の電界強度を示す模式図である。
図35(a)は、p型カラム領域のp型不純物濃度およびn型カラム領域のn型不純物濃度が深さ方向に均一の場合の総電荷量分布および電界強度を示すグラフ図である。
この場合は、深さ方向に対して、全領域でp型カラム領域の総電荷量(Qp)とn型カラム領域の総電荷量(Qn)とが同じとなる(Qp=Qn)。従って、深さ方向に対して、全領域で電界強度は均等になる。このため、アバランシェ降伏現象の深さ方向における発生箇所は、プロセスばらつき(例えば寸法および不純物濃度などの分布)に依存することになる。仮に、電界強度がエピタキシャル層の上面近傍で最大となった場合は、寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作が起こり、パワーMOSFETの破壊が起こる可能性がある。
図35(b)は、n型カラム領域のn型不純物濃度を深さ方向に均一とし、p型カラム領域のp型不純物濃度がエピタキシャル層の上面から下面へ向かう深さ方向に徐々に低くなる場合の総電荷量分布および電界強度を示すグラフ図である。
この場合は、電界強度はp型カラム領域およびn型カラム領域の深さ方向の中間地点よりも深い位置で最大となる。これにより、最大電界強度の位置をよりエピタキシャル層の上面から遠ざけることができるので、寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作を抑制することができる。
図35(c)は、p型カラム領域のp型不純物濃度を深さ方向に均一とし、n型カラム領域のn型不純物濃度がエピタキシャル層の上面から下面へ向かう深さ方向に徐々に高くなる場合の総電荷量分布および電界強度を示すグラフ図である。
この場合は、電界強度はp型カラム領域およびn型カラム領域の深さ方向の中間地点よりも深い位置で最大となる。これにより、最大電界強度の位置をよりエピタキシャル層の上面から遠ざけることができるので、寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作を抑制することができる。
(実施の形態4)
前記実施の形態1では、新規な技術的思想の1つである、セル領域のn型カラム領域のn型不純物濃度を周辺領域のエピタキシャル層のn型不純物濃度よりも高くするという技術的思想のパワーMOSFETを含む半導体装置に適用する例について説明した。実施の形態4では、上記技術的思想をIGBT(Insulate Gate Bipolar Transistor)を含む半導体装置に適用した例について説明する。
<半導体装置の構成>
図36は、実施の形態4による半導体装置(IGBT)の構成を示す断面図である。なお、ここで使用する「+」および「−」は、導電型がn型またはp型の相対的な不純物濃度を表記した符号であり、例えば「n−」、「n」、「n+」の順にn型不純物の不純物濃度が高いことを意味する。
シリコンからなるp型不純物が導入されたp+型基板SUBの主面(表面、上面)上に、シリコンからなるn型不純物が導入されたn+型バッファ層BFが形成されている。
さらに、n+型バッファ層BF上に、シリコンからなるn型不純物が導入されたn+型ドリフト層DRTCおよびn−型ドリフト層DRTPが形成されている。これらn+型ドリフト層DRTCおよびn−型ドリフト層DRTPは、耐圧を確保する役目を担い、その厚さは、例えば5〜40μm程度である。ここで、セル領域CRには、相対的に不純物濃度が高いn+型ドリフト層DRTCが形成され、周辺領域PERには、相対的に不純物濃度が低いn−型ドリフト層DRTPが形成されている。例えば周辺領域PERのn−型ドリフト層DRTPのn型不純物濃度は、セル領域CRのn+型ドリフト層DRTCのn型不純物濃度よりも10%〜20%程度低くなるように、各々のn型不純物濃度は設定される。
セル領域CRのn+型ドリフト層DRTCの内部には、n+型ドリフト層DRTCの上面から所定の深さを有してp型不純物が導入されたp型ベース層PRが形成されている。さらに、p型ベース層PRの内部には、n+型のドリフト層DRTCの上面から所定の深さを有し、p型ベース層PRの端部と離間して、n型不純物が導入されたn+型ソース層NRが形成されている。n+型ソース層NRは、p型ベース層PRの端部とn+型ソース層NRとの間のp型ベース層PRの内部にn+型ドリフト層DRTCの上面から所定の距離を有して形成されるチャネルを介して、n+型ドリフト層DRTCと電気的に接続する。
また、p型ベース層PRの端部とn+型ソース層NRとの間のチャネルが形成されるp型ベース層PR上にはゲート絶縁膜Toxが形成され、ゲート絶縁膜Tox上にはゲート電極GPmが形成されている。
周辺領域PERのn−型ドリフト層DRTPの内部には、n−型ドリフト層DRTPの上面から所定の深さを有してp型不純物が導入された複数のp型フィールドリミッティングリング(Field Limiting Ring)FLRが形成されている。複数のp型フィールドリミッティングリングFLRは、セル領域CRを囲むように形成されており、その電圧は固定されている。このような複数本のp型フィールドリミッティングリングFLRを形成することにより、電界が複数本のp型フィールドリミッティングリングFLRによって分担されるので、半導体装置を高耐圧とすることが可能となる。
また、図示は省略するが、複数のp型フィールドリミッティングリングFLRを取り囲むようにn型ガードリングが形成されており、その電圧は固定されている。n型ガードリングは、半導体ウエハから半導体チップが個片化された後で半導体チップ中のIGBTの素子を保護する機能を有する。
さらに、セル領域CRおよび周辺領域PERには、IGBTの素子、p型フィールドリミッティングリングFLRおよびn型ガードリングなどを覆うように層間絶縁膜ILLが形成されている。この層間絶縁膜ILLには、図示は省略するが、n型+ソース層NR、p型ベース層PR、ゲート電極GPmおよびp型フィールドリミッティングリングFLRなどに達する開口部がそれぞれ形成されている。そして、n+型ソース層NRの表面の一部およびp型ベース層PRの表面の一部と電気的に接続するソース電極SPmが形成され、p+型基板SUBの裏面と電気的に接続するドレイン電極DPmが形成されている。
このように、実施の形態4による半導体装置では、セル領域CRにおけるpn接合部(p型ベース層PRとn+型ドリフト層DRTCとの接合部)のn+型ドリフト層DRTCのn型不純物濃度を周辺領域PERにおけるpn接合部(p型フィールドリミッティングリングFLRとn−型ドリフト層DRTPとの接合部)のn−型ドリフト層DRTPのn型不純物濃度よりも高くしている。これにより、セル領域CRのアバランシェ降伏電圧は、周辺領域PERのアバランシェ降伏電圧よりも低くなるので、セル領域CRでアバランシェ降伏現象を生じさせることができる。従って、IGBTのアバランシェ耐量を超えやすい周辺領域PERでアバランシェ降伏現象を生じる前に、IGBTのアバランシェ耐量を超えにくいセル領域CRでアバランシェ降伏現象を生じさせることができる。この結果、電源電圧を超える電圧がIGBTに印加されてアバランシェ降伏現象が生じる場合であっても、IGBTの破壊にまで至る状況を回避することができる。これにより、実施の形態4によれば、IGBTを含む半導体装置の信頼性を向上することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、前記実施の形態では、パワー半導体素子としてパワーMOSFETおよびIGBTを例に挙げて新規な技術的思想について説明したが、本明細書に記載されている新規な技術的思想は、これに限らず、その他のパワー半導体、例えばダイオードを含む半導体装置に幅広く適用することができる。
前記実施の形態は、以下の形態を含む。
(付記1)
セル領域と、前記セル領域の外側に形成された周辺領域とを有する半導体チップを備えた半導体装置であって、
前記半導体チップは、
(a)第1導電型の半導体基板、
(b)前記半導体基板上に形成された前記第1導電型と異なる第2導電型のバッファ層、
(c)前記セル領域の前記バッファ層上に形成された前記第2導電型の第1ドリフト層、
(d)前記周辺領域の前記バッファ層上に形成された前記第2導電型の第2ドリフト層、
(e)前記セル領域の前記第1ドリフト層内に、前記第1ドリフト層の上面から第1距離を有して形成された前記第1導電型のベース層、
(f)前記ベース層内に、前記第1ドリフト層の上面から前記第1距離よりも短い第2距離を有し、前記ベース層の端部から離間して形成された前記第2導電型のソース層、
(g)前記ベース層上に形成されたゲート絶縁膜、
(h)前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を含み、
前記周辺領域の前記第2ドリフト層の前記第2導電型の不純物濃度は、前記セル領域の前記第1ドリフト層の前記第2導電型の不純物濃度よりも10%〜20%低い、半導体装置。