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JP2015020944A - Li2O−Al2O3−SiO2系結晶性ガラスの評価方法及びこれを用いた結晶化ガラスの製造方法 - Google Patents

Li2O−Al2O3−SiO2系結晶性ガラスの評価方法及びこれを用いた結晶化ガラスの製造方法 Download PDF

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JP2015020944A
JP2015020944A JP2013153240A JP2013153240A JP2015020944A JP 2015020944 A JP2015020944 A JP 2015020944A JP 2013153240 A JP2013153240 A JP 2013153240A JP 2013153240 A JP2013153240 A JP 2013153240A JP 2015020944 A JP2015020944 A JP 2015020944A
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小川 修平
Shuhei Ogawa
修平 小川
晋作 西田
Shinsaku Nishida
晋作 西田
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Abstract

【課題】均一な温度分布を達成するための付帯設備の改良や結晶化処理時間の延長を行わなくとも、反りやたわみ等のないLi2O−Al2O3−SiO2系結晶化ガラスを作製することが可能な方法を提供する。【解決手段】Li2O−Al2O3−SiO2系結晶性ガラスを用意する工程と、前記結晶性ガラスの結晶化時の収縮率が極大となる温度T及び結晶化時の(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xを求める工程と、前記温度T及び値Xに基づき、前記結晶性ガラスの結晶化挙動を評価する。この評価に基づき結晶化条件、或いは組成を調節する。【選択図】図1

Description

本発明は、LiO−Al−SiO系結晶性ガラスの結晶化挙動を評価する方法と、これを利用したLiO−Al−SiO系結晶化ガラスの製造方法に関する。
従来、石油ストーブ、薪ストーブ等の前面窓、カラーフィルターやイメージセンサー用基板等のハイテク製品用基板、電子部品焼成用セッター、電子レンジ用棚板、電磁調理用トッププレート、防火戸用窓ガラスなどの材料として、LiO−Al−SiO系結晶性ガラスを結晶化させたLiO−Al−SiO系結晶化ガラス(以下、LiO−Al−SiO系結晶化ガラスと呼ぶ)が用いられている。例えば特許文献1〜3には、主結晶としてβ−石英固溶体(LiO・Al・nSiO[ただしn≧2])やβ−スポジュメン固溶体(LiO・Al・nSiO[ただしn≧4])等のLiO−Al−SiO系結晶を析出してなるLiO−Al−SiO系結晶化ガラスが開示されている。
LiO−Al−SiO系結晶化ガラスは、熱膨張係数が低く、機械的強度も高いため、優れた熱的特性を有している。また結晶化時に、熱処理条件を適宜調整することにより、析出結晶の種類を制御することが可能であり、透明な結晶化ガラス(β−石英固溶体が析出)や、不透明な結晶化ガラス(β−スポジュメン固溶体が析出)を容易に作製することができる。またガラスバッチに、VやFeに代表される着色剤を含有させることで、有色の透明な結晶化ガラスや、有色の不透明な結晶化ガラスを作製することもできる。
このようなLiO−Al−SiO系結晶化ガラスは、まずLiO−Al−SiO系結晶性ガラスを核形成温度まで昇温し、一定時間保持して結晶性ガラス中に微小な結晶核を析出させ、更に結晶成長温度まで昇温し、一定時間保持して結晶核を成長させるという、多段階の熱処理によって結晶を析出させたものである。
結晶化の際、特に結晶核の析出から成長の過程で、ガラスから結晶への相転移に起因する体積の収縮を生じる。この収縮は結晶性ガラスの組成、結晶化処理時の結晶性ガラスの温度分布、核形成温度と結晶成長温度及びこれらの温度差や保持時間等によって異なる挙動を示す。このため、例えば、結晶化の際に結晶性ガラスの中心部と表面部で温度が異なり、その結果異なる収縮挙動を示す場合、製品の反りやたわみといった外観上好ましくない変形を発生させる可能性がある。
特公昭39−21049号公報 特公昭40−20182号公報 特開平1−308845号公報
収縮に伴う製品の反りやたわみといった外観上好ましくない変形を低減させる手段として、加熱に使用するバーナーや電熱ヒーター等の出力をコントロールし、結晶性ガラスの温度分布を均一にする方法や、結晶化処理の時間を長くすることで、結晶性ガラスの温度分布を均一にする方法などが取られている。
しかしながら、前者の方法は、均一な温度分布を達成するために、バーナーや電熱ヒーター等の出力を緻密にコントロールする必要があり、そのための付帯設備が必要になる結果、設備コストの増加を招く。また後者の方法は、結晶化処理時間の延長によって生産効率の低下を招く。また設備上の制約によって結晶化処理時間の延長を行うことができない場合には、熱処理炉の延伸が必要となるため、設備コストの増加を招いてしまう。
従って、本発明は、均一な温度分布を達成するための付帯設備の改良や結晶化処理時間の延長を行わなくとも、反りやたわみ等のないLiO−Al−SiO系結晶化ガラスを作製することが可能な方法を提供することを課題とする。
本発明者等は種々の検討を行った結果、結晶化前のガラス(結晶性ガラス)の結晶化挙動を予め所定の方法で評価しておくことによって上記目的が達成できることを見いだし、本発明として提案するものである。
即ち、本発明のLiO−Al−SiO系結晶性ガラスの評価方法は、LiO−Al−SiO系結晶性ガラスを用意する工程と、前記結晶性ガラスの結晶化時の収縮率が極大となる温度T及び結晶化時の(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xを求める工程と、前記温度T及び値Xに基づき、前記結晶性ガラスの結晶化挙動を評価する工程とを含むことを特徴とする。
ここで、「LiO−Al−SiO系結晶性ガラス」とは、LiO、Al及びSiOを主成分として含有し、熱処理によってβ−スポジュウメンやβ−石英固溶体を主結晶として析出する性質を有するガラスを意味する。「収縮率」は、Dilatometerを用いて測定したものであり、任意の昇温条件で結晶化した際の収縮量、温度、時間を測定し、これらから算出される任意の温度における{(サンプルの単位時間あたりの収縮量)/(室温におけるサンプルの長さ)×100}式で求められる値を意味する。また、「収縮率が極大となる温度T」は、Dilatometerによって測定された前述の収縮率が極大となる温度に相当し、結晶析出がピークとなる温度を意味する。さらに、「(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値X」は、温度変化に伴う単位時間あたりの結晶析出量の変化量の大小の指標となる。詳述すると結晶化時の収縮挙動及びそれに伴う変形に影響を与える要素としてガラスの温度分布がある。温度分布が変形を引き起こすメカニズムは以下のようなものである。まず、結晶化速度の速い高温部が先に結晶化を終え、この際の高温部の収縮に伴って低温部に発生する応力はガラスの軟化変形により緩和される。その後、低温部の結晶化が進行し、これに伴って高温部に応力が発生するが、高温部は既に結晶化を終えているために軟化変形によって応力を緩和することができず、塑性変形(反り)に繋がるというものである。このように、温度分布に起因する変形は局所的な温度の違いに基づいて発生することから、温度変化に伴う単位時間あたりの結晶析出量の変化が小さい場合は上述の塑性変形を起こし難く、温度変化に伴う単位時間あたりの結晶析出量の変化が大きい場合は変形を起こし易いということになる。単位時間あたりの結晶析出量の変化の大小は(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xと相関があり、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが大きいと温度変化に伴う単位時間あたりの結晶析出量の変化が小さく、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが小さいと温度変化に伴う単位時間あたりの結晶析出量の変化が大きくなる。従って、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xは主にガラスの温度分布に起因する変形の起こりやすさの指標となる。
上記評価方法を採用すれば、評価結果に基づいて、適切な結晶化条件を決定することができる。また所定の結晶化条件に適した組成を選択することも可能になる。
また従来、結晶化挙動の評価には示唆熱分析(DTA)が広く使用されてきたが、この方法は粉末試料を使用するものであり、実際の結晶化挙動と異なる場合がある。これに対し、本発明で採用する収縮率の測定は、バルク試料を用いて行うものであることから、実際の結晶化挙動に近い状態を把握することが可能である。
また収縮率の測定には、結晶化度が高く、且つ結晶化時に殆ど軟化流動しないガラスであることが必要である。本発明で評価の対象とするLiO−Al−SiO系結晶化ガラスは、この条件に適うガラスである。
本発明においては、結晶化時の収縮率が極大となる温度T及び結晶化時の(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xの評価基準が、各々800〜900℃及び8000〜150000℃・s/%であることが好ましい。
上記の基準を採用すれば、結晶化挙動を的確に評価することが可能になる。
本発明のLiO−Al−SiO系結晶性ガラスの結晶化条件調節方法は、上記の評価方法に基づいて、LiO−Al−SiO系結晶性ガラスの結晶化条件を決定することを特徴とする。
本発明のLiO−Al−SiO系結晶化ガラスの製造方法は、LiO−Al−SiO系結晶性ガラスを作製する工程と、上記の方法で決定した結晶化条件で前記結晶性ガラスを結晶化させてLiO−Al−SiO系結晶化ガラスを得る工程とを含むことを特徴とする。
上記方法を採用すれば、核形成と同時に結晶成長が生じて結晶化が制御困難になる、といった事態を効果的に回避することができる。また結晶成長速度に合わせた昇温速度等を設定することが容易になる。
本発明のLiO−Al−SiO系結晶化ガラスの組成設計方法は、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが800〜900℃となり、且つ結晶化時の(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが8000〜150000℃・s/%となるように、LiO−Al−SiO系結晶性ガラスの組成を決定することを特徴とする。
上記方法を採用すれば、適切な結晶析出速度を有する組成を選択できることから、結晶析出の制御が容易であり、且つ結晶化に長時間を要さない結晶化ガラスを作製することが可能になる。また結晶析出のピーク温度を最適化することが可能になる。
本発明のLiO−Al−SiO系結晶化ガラスの製造方法は、上記の方法で決定した組成を有するLiO−Al−SiO系結晶性ガラスを作製する工程と、前記結晶性ガラスを結晶化させてLiO−Al−SiO系結晶化ガラスを得る工程とを含むことを特徴とする。
上記方法を採用すれば、反りやたわみのない結晶化ガラスを効率良く作製することが可能になる。
本発明のLiO−Al−SiO系結晶化ガラスは、上記の方法で作製されてなることを特徴とする。
本発明のLiO−Al−SiO系結晶性ガラスは、組成として質量%で、SiO 55〜75%、Al 20.5〜27%、LiO 2%以上、TiO 1.5〜3%、TiO+ZrO 3.8〜5%、SnO 0.1〜0.5%を含有し、3.7≦LiO+0.741MgO+0.367ZnO≦4.5及びSrO+1.847CaO≦0.5の関係を満たすとともに、結晶化時の収縮率が極大値となる温度が800〜900℃及び結晶化時の(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)が8000〜150000℃・s/%となる性質を有することを特徴とする。
上記した結晶性ガラスを採用すれば、反りやたわみのない結晶化ガラスを効率良く作製することが可能になる。
本発明のLiO−Al−SiO系結晶化ガラスの製造方法は、上記の結晶性ガラスを、600〜800℃の温度域で0.01〜5時間保持して核形成し、800〜1000℃の温度域で0.01〜4時間保持して結晶成長させることを特徴とする。
上記方法を採用すれば、反りやたわみのない結晶化ガラスを効率良く作製することが可能になる。
本発明のLiO−Al−SiO系結晶化ガラスは、上記の結晶性ガラスを結晶化させてなることを特徴とする。
実施例No.5の収縮率を温度に対してプロットしたグラフである。
以下、本発明を詳述する。なお、ガラス組成の各成分の含有範囲の説明において、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を示す。
最初に、本発明の評価方法を説明する。
まずLiO−Al−SiO系結晶性ガラスを用意する。LiO−Al−SiO系結晶性ガラスとしては、熱処理によってβ−スポジュウメンやβ−石英固溶体を主結晶として析出する性質を有するガラスであれば特に制限はない。この種のガラスは、結晶化度が高く、また軟化流動し難いため、容易に収縮率を評価することができる。LiO−Al−SiO系結晶性ガラスの具体的な組成例としては、質量%で、SiO 55〜75%、Al 20.5〜27%、LiO 2%以上、TiO 1.5〜3%、TiO+ZrO 3.8〜5%、SnO 0.1〜0.5%を含有する結晶性ガラス、特に質量%で、SiO 55〜75%、Al 20.5〜27%、LiO 2%以上、TiO 1.5〜3%、TiO+ZrO 3.8〜5%、SnO 0.1〜0.5%を含有し、3.7≦LiO+0.741MgO+0.367ZnO≦4.5及びSrO+1.847CaO≦0.5の関係を満たす結晶性ガラスが好適である。なお組成の限定理由は後述する。
次に、前記結晶性ガラスの結晶化時の収縮率が極大となる温度T及び結晶化時の(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xを求める。収縮率が極大となる温度Tは、次のようにして求める。まず所定の形状に加工した試料を予め設定した昇温スケジュールに従って焼成し、Dilatometerを用いて、昇温過程における温度、収縮量、時間を求め、各温度の収縮率を算出する。ここで収縮率は{(サンプルの単位時間あたりの収縮量)/(室温におけるサンプルの長さ)×100}とする。次いで温度に対して収縮率をプロットしたグラフを作成する。作成したグラフにおいて認められる結晶析出に伴うガラスの収縮ピークに対し、解析ソフトを用いてピークフィットを行う。このピークの頂点を収縮率の極大値とし、この時の温度を収縮率が極大値となる温度Tとする。なお昇温スケジュールは、例えば200℃から550℃まで10℃/分で昇温し、550℃から650℃まで5℃/分で昇温し、650℃で30分間保持(核形成)を行い、650℃から780℃まで5℃/分で昇温し、780℃から900℃まで1℃/分で昇温(結晶成長)する、というスケジュールを採用することができる。
また(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xは、上述のピークフィット結果から収縮率の極大値の半値全幅を算出して求める。
続いて得られた前記温度T及び値Xに基づき、前記結晶性ガラスの結晶化挙動を評価する。本発明においては、例えば結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが800〜900℃の範囲内か否か、また(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが8000〜150000℃・s/%の範囲内か否か、という基準を採用することができる。なお温度Tの基準を810〜890℃、特に820〜880℃とし、値Xの基準を12000〜130000℃・s/%、特に15000〜100000℃・s/%と厳格にしてもよい。
ここで温度Tが基準より低い場合、「結晶化時の核形成温度で保持する際に、核形成と同時に結晶が成長して結晶化挙動の制御が困難になり、外観上好ましくない変形を抑制し難くなる」と評価することができる。温度Tが基準より高い場合、「析出結晶がβ─石英固溶体からβ─スポジュメン固溶体に転移し易くなり、結晶化ガラスの熱膨張係数が高くなって耐熱衝撃性が低下する」と評価することができる。また値Xが基準より低い場合、「温度変化に伴う結晶析出量の変化が大きいことから、結晶化挙動の制御が困難になり、外観上好ましくない変形を抑制し難くなる」と評価することができる。値Xが基準より高い場合、「温度変化に伴う結晶析出量の変化が小さいことから、結晶析出に必要な時間が長くなって、結晶化のコストが高くなる」と評価することができる。
本発明の結晶化条件調節方法は、以上のようにして得られた結晶化挙動の評価結果に基づいて、LiO−Al−SiO系結晶性ガラスの結晶化条件を決定するものである。例えば結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが基準より低い場合は核形成温度を低めに設定すればよく、温度Tが基準より高い場合は結晶析出温度を低めに設定すればよい。また(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが基準より低い場合は昇温速度を低めに設定すればよく、値Xが基準より高い場合は昇温速度を高めに設定すればよい。
本発明の製造方法は、上記の方法で決定した結晶化条件で前記結晶性ガラスを結晶化させてLiO−Al−SiO系結晶化ガラスを得るものである。
本発明の組成設計方法は、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが800〜900℃となり、且つ結晶化時の(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが8000〜150000℃・s/%となるように、LiO−Al−SiO系結晶性ガラスの組成を決定するものである。なお温度T及び値Xの評価方法や評価基準に関する説明は既述の通りであり、ここでは説明を割愛する。
結晶化時の収縮率が極大となる温度Tを高くするには、例えばTiO、ZrO、MgO、ZnO、SnOの含有量を減らすことにより、温度Tを低くするにはLiO、TiO、SnOの含有量を増やすことによりそれぞれ調整することができる。また値Xを高くするにはLiO、MgO、ZnOの含有量を減らしたり、TiO、SnOの含有量を増やしたりすることにより、値Xを低くするにはTiO、ZrO、SnOの含有量を減らすことによりそれぞれ調整することができる。
本発明の製造方法は、上記の方法で決定した組成を有するLiO−Al−SiO系結晶性ガラスを作製し、結晶化させてLiO−Al−SiO系結晶化ガラスを得るものである。
次に本発明のLiO−Al−SiO系結晶性ガラスについて説明する。
本発明のガラスは、ガラス組成として質量%で、SiO 55〜75%、Al 20.5〜27%、LiO 2%以上、TiO 1.5〜3%、TiO+ZrO 3.8〜5%、SnO 0.1〜0.5%を含有し、3.7≦LiO+0.741MgO+0.367ZnO≦4.5及びSrO+1.847CaO≦0.5の関係を満たし、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが800〜900℃で、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが8000〜150000℃・s/%であることを特徴とする。各成分の含有量を上記のように規定した理由を以下に説明する。なお温度T及び値Xの評価方法や評価基準に関する説明は既述の通りであり、ここでは説明を割愛する。
SiOはガラスの骨格を形成するとともに、LiO−Al−SiO系結晶を構成する成分である。SiOの含有量は55〜75%、58〜70%、特に60〜68%であることが好ましい。SiOの含有量が55%より少ないと、結晶化後の熱膨張係数が高くなって、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスを得難くなる。また、化学的耐久性が低下する。一方、SiOの含有量が75%より多いと、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって、外観上好ましくない気泡が残存し易くなったり、ガラスの成形が困難となる。
Alはガラスの骨格を形成するとともに、LiO−Al−SiO系結晶を構成する成分である。またAlは、結晶化ガラス中の残存ガラス相に存在することで、SnOによるTiO及びFeの着色の強まりを低減することができる。Alの含有量は、20.5〜27%、21〜25%、特に21.5〜23%であることが好ましい。Alの含有量が20.5%より少ないと、熱膨張係数が高くなって耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスを得難くなる。また、化学的耐久性が低下する。さらに、SnOによるTiO及びFeの着色の強まりを低減する効果が得難くなる。一方、Alの含有量が27%より多いと、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって、気泡が残存し易くなったり、ガラスの成形が困難になる。また、ムライトの結晶が析出してガラスが失透し易くなり、結果ガラスが破損し易くなる。
LiOはLiO−Al−SiO系結晶を構成する成分であり、結晶の析出挙動に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。LiOの含有量は2%以上、特に2.5%以上であることが好ましい。LiOの含有量が2%より少ないと、ムライトの結晶が析出してガラスが失透し易くなる。また、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが高くなりすぎて、析出結晶がβ─石英固溶体からβ─スポジュメン固溶体に転移し易くなり、その結果、結晶化ガラスの熱膨張係数が高くなって耐熱衝撃性が低下してしまう。さらに、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって、気泡が残存し易くなったり、ガラスの成形が困難になる。一方、LiOの含有量が多すぎると、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが低くなりすぎて、結晶化時に核形成温度で保持する際に、核形成と同時に結晶成長が進行し易くなることから、結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。よって、LiOの含有量は4.5%以下、特に4%以下であることが好ましい。
TiOは結晶化工程で結晶を析出させるための核形成剤となる成分である。TiOの含有量は1.5〜3%、1.6〜2.5%、特に1.7〜2.3%であることが好ましい。TiOの含有量が3%より多いと、ガラスの着色が強まる傾向がある。また結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが低くなりすぎて、結晶化時に核形成温度で保持する際に、核形成と同時に結晶成長が進行し易くなることから、結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。さらに(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが大きくなりすぎて、温度変化に伴う結晶析出量の変化が小さく、結晶析出に必要な時間が長くなって、結晶化のコストが高くなる。一方、TiOの含有量が1.5%より少なくなると、結晶核が十分に形成されないことから、粗大な結晶が析出して白濁したり、破損したりするおそれがある。また、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが高くなりすぎて、析出結晶がβ─石英固溶体からβ─スポジュメン固溶体に転移し易くなり、その結果、結晶化ガラスの熱膨張係数が高くなって耐熱衝撃性が低下してしまう。さらに、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが小さくなりすぎて、温度変化に伴う結晶析出量の変化が大きく、結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。
本発明のLiO−Al−SiO系透明結晶性ガラスにおいて、LiO+0.741MgO+0.367ZnOは3.7〜4.5、3.8〜4.4、特に3.8〜4.3の範囲を満たすことが好ましい。LiO+0.741MgO+0.367ZnOが4.5を超えると、結晶化ガラスにおけるガラス相中のAl量が低減し、Alによる着色抑制の効果が得難くなる。また、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが低くなりすぎて、結晶化時に核形成温度で保持する際に、核形成と同時に結晶成長が進行し易くなることから、結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。さらに、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが小さくなりすぎて、温度変化に伴う結晶析出量の変化が大きくなって結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。一方、LiO+0.741MgO+0.367ZnOが3.7未満になると、結晶化ガラスにおけるLiO−Al−SiO系結晶の粒子径が大きくなって、白濁が生じ易くなる。結果として、結晶性ガラスの透明感が損なわれてしまうおそれがある。また、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが高くなりすぎて、析出結晶がβ─石英固溶体からβ─スポジュメン固溶体に転移し易くなる結果、結晶化ガラスの熱膨張係数が高くなって耐熱衝撃性が低下してしまう。さらに、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが大きくなりすぎて、温度変化に伴う結晶析出量の変化が小さく、結晶析出に必要な時間が長くなって、結晶化のコストが高くなる。
なお、MgO、ZnOの各成分の含有量は、上記範囲を満たしていれば特に限定されないが、例えば下記の範囲に制限することが好ましい。
MgOはLiO−Al−SiO系結晶に固溶し、LiO−Al−SiO系結晶の熱膨張係数を高くする効果を有する成分である。MgOの含有量は0〜2%、0.1〜1.5%、特に0.1〜1.2%であることが好ましい。MgOの含有量が2%より多くなると、結晶性が強くなりすぎて失透し易くなり、その結果ガラスが破損し易くなる。また、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが低くなりすぎて、結晶化時に核形成温度で保持する際に、核形成と同時に結晶成長が進行し易くなることから、結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。さらに、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが小さくなりすぎて、温度変化に伴う結晶析出量の変化が大きくなる結果、結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。
ZnOはMgOと同様に、LiO−Al−SiO系結晶に固溶する成分である。ZnOの含有量は0〜2%、0〜1.5%、特に0〜1.2%であることが好ましい。ZnOの含有量が2%より多くなると、結晶性が強くなりすぎるため、緩やかに冷却しながら成形するとガラスが失透し易くなる。結果として、ガラスが破損し易くなるため、例えばフロート法での成形が難しくなる。また、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが低くなりすぎて、結晶化時に核形成温度で保持する際に、核形成と同時に結晶成長が進行し易くなることから、結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。さらに、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが小さくなりすぎて、温度変化に伴う結晶析出量の変化が大きく、結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。
本発明のLiO−Al−SiO系透明結晶性ガラスにおいて、SrO+1.847CaOは0.5以下、0.4以下、特に0.2以下の範囲を満たすことが好ましい。SrO+1.847CaOが0.5を超えると、結晶性ガラスの着色が強くなると同時に白濁も生じ易くなる。
なお、SrO、CaOの各成分の含有量は、上記範囲を満たしていれば特に限定されないが、例えば、SrOについては0.5%以下、特に0.3%以下、CaOについては0.2%以下、特に0.1%以下に制限することが好ましい。
SnOは清澄剤として働く成分である。SnOの含有量は0.1〜0.5%、0.1〜0.4%、特に0.1〜0.3%であることが好ましい。SnOの含有量が0.1%未満であると、清澄剤としての効果が得難くなる。また、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが高くなりすぎて、析出結晶がβ─石英固溶体からβ─スポジュメン固溶体に転移し易くなる結果、結晶化ガラスの熱膨張係数が高くなって耐熱衝撃性が低下してしまう。さらに、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが小さくなりすぎて、温度変化に伴う結晶析出量の変化が大きくなって結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。一方、SnOの含有量が0.5%を超えると、TiOやFeの着色が強くなりすぎて、結晶性ガラスが黄色味を帯び易くなる。また、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが低くなりすぎて、結晶化時に核形成温度で保持する際に、核形成と同時に結晶成長が進行し易くなることから、結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。さらに、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが大きくなりすぎて、温度変化に伴う結晶析出量の変化が小さくなることから、結晶析出に必要な時間が長くなって、結晶化のコストが高くなる。
着色剤であるNdおよびCoOは、結晶性ガラスの透明度を低下させるため、実質的に含有しないことが好ましい。特に、CoOは微量であっても結晶性ガラスの色調を大きく変化させてしまう。したがって、本発明のLiO−Al−SiO系結晶性ガラスにおいて、着色剤であるNdおよびCoOは実質的に含有しないことが好ましい。これにより、透明感が高く、一定の色調を有するLiO−Al−SiO系結晶化ガラスを得ることが可能となる。また、Ndは希土類元素酸化物であるため原料コストが高くなりやすいが、Ndを実質的に使用しなければ、安価なLiO−Al−SiO系結晶化ガラスを提供し易くなる。ただし、透明感の高さよりも色調の調整を優先させる場合には、例えばNdを500ppm程度添加しても構わない。
不純物成分として混入するFeについても含有量を制限すべきである。Feの含有量は300ppm以下、250ppm以下、特に200ppm以下であることが好ましい。Feについては少なければ少ないほど着色が抑制されるため好ましいが、例えば60ppmを下回るような範囲にするには高価な高純度原料などを使用する必要があり、安価なLiO−Al−SiO系結晶化ガラスを提供することができなくなる。
本発明のLiO−Al−SiO系結晶性ガラスにおいては、上記成分以外にも、下記の種々の成分を添加することが可能である。
ZrOはTiOと同様に、結晶化工程で結晶を析出させるための核形成成分である。ZrOの含有量は0〜3%、0.1〜2.5%、特に0.5〜2.3%であることが好ましい。ZrOの含有量が3%より多くなると、ガラスを溶融する際に失透し易くなり、ガラスの成形が難しくなる。また、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが低くなりすぎて、結晶化時に核形成温度で保持する際に、核形成と同時に結晶成長が進行し易くなることから、結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。さらに、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが大きくなりすぎて、温度変化に伴う結晶析出量の変化が小さくなり、結晶析出に必要な時間が長くなって、結晶化のコストが高くなる。
なお本発明において、TiO+ZrOの含有量は3.8〜5%に制限され、特に4〜4.5%であることが好ましい。TiO+ZrOの含有量が上記範囲であれば、所望の色調を有し、かつ白濁が認められない透明な結晶性ガラスを得ることが可能となる。
はガラス溶融工程においてSiO原料の溶解を促進する成分である。Bの含有量は0〜2%であることが好ましい。Bの含有量が2%を越えると、ガラスの耐熱性が損なわれる傾向がある。
はガラスの分相を促進して結晶核の形成を助ける成分である。Pの含有量は0〜3%、0.1〜3%、特に1〜2%であることが好ましい。Pの含有量が3%を超えると、溶融工程においてガラスが分相し易くなり、所望の組成を有するガラスが得難くなるとともに、不透明となる傾向がある。
また、ガラスの粘性を低下させて溶融性および成形性を向上させるために、NaO、KO、BaOを合量で0〜2%、特に0.1〜2%添加することが可能である。これらの成分の合量が2%を超えると、失透し易くなる。
次に本発明の結晶化ガラスを製造する方法を説明する。
まず、上記組成のガラスとなるようにガラス原料を調合する。ガラス原料としては、主要成分であるLiO、Al、SiOについては、炭酸リチウム、珪砂、珪石、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが挙げられる。また、安価なLiO原料としてスポジュメンがあるが、一般的にFeが多く含まれていることが多いため使用量を制限して用いる必要がある。その他成分では、ZrO原料にはFeが混入しやすいものが多いため、Fe含有量が0.5%以下である珪酸ジルコニウムや高純度のZrOを用いることが好ましい。なおガラス組成の決定に当たっては、既述の評価方法を利用することが好ましい。
次に調合したバッチを、ガラス溶融炉で溶融し、成形、徐冷することでLiO−Al−SiO系結晶性ガラスを得る。溶融温度は特に限定されないが、十分にガラス化を進行させるために、例えば1500〜1900℃であることが好ましい。また、成形方法は特に限定されないが、例えばプレス法、ブロー法、ロールアウト法、フロート法等の方法を適用することが可能である。徐冷条件としては、例えば700℃の予熱炉で1時間保持後、100℃/時の降温速度で室温まで冷却するという条件を適用することが可能である。
本発明のLiO−Al−SiO系結晶化ガラスは、上述の結晶性ガラスを結晶化させることにより得ることができる。結晶化は、核形成と結晶成長の二段階の熱処理で行うことが一般的である。
核形成は、600〜800℃の温度域で0.01〜5時間保持することにより行うことが好ましい。核形成温度が600℃よりも低いと、単位時間あたりの結晶核の析出量が少なく、その後の結晶成長時に結晶が肥大化して結晶化後のガラスが白濁し易くなる。核形成温度が800℃よりも高いと、結晶核の析出と結晶成長が同時に起こり易くなり、結晶化挙動の制御が困難になり、変形を抑制し難くなる。また、核形成時の保持時間が0.01時間よりも短いと、単位時間あたりの結晶核の析出量が少なく、その後の結晶成長時に結晶が肥大化して結晶化後のガラスが白濁し易くなる。核形成時の保持時間が5時間よりも長いと、結晶化にかかるコストが高くなる。なお核形成条件の決定に当たっては、既述の評価方法を用いて決定することが好ましい。
結晶成長は、800〜1000℃の温度域で0.01〜4時間保持する条件で行うことが好ましい。結晶成長温度が800℃よりも低いと、単位時間あたりの結晶成長量が少なく、結晶化後のガラスの熱膨張係数が高くなって耐熱衝撃性が低下する。結晶成長温度が1000℃よりも高いと、析出結晶がβ―石英固溶体からβ─スポジュメン固溶体に転移し易く、結晶化後のガラスの熱膨張係数が高くなって耐熱衝撃性が低下する。また、結晶成長時の保持時間が0.01時間よりも短いと、単位時間あたりの結晶成長量が少なく、結晶化後のガラスの熱膨張係数が高くなって耐熱衝撃性が低下する。結晶成長時の保持時間が4時間よりも長いと、結晶化にかかるコストが高くなる。なお結晶成長条件の決定に当たっては、既述の評価方法を用いて決定することが好ましい。
このようにして得られる本発明のLiO−Al−SiO系結晶化ガラスは、30〜380℃における熱膨張係数が−2.5〜2.5×10−7/℃であることが好ましい。30〜380℃における熱膨張係数が─2.5×10−7/℃よりもマイナス側に高い、あるいは2.5×10−7/℃よりもプラス側に高いと、結晶化ガラスの耐熱衝撃性が低くなる。
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
表1、2は、本発明の実施例(試料No.1〜5)及び比較例(試料No.6)を示している。
[結晶性ガラスの調製]
以下のようにして、各試料を調整した。まず表1〜2に記載の組成を有するガラスとなるように、各原料を酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の形態で調合し、均一に混合した。このようにして調合した原料バッチを白金坩堝を用いて1600℃で20時間溶融した。溶融後、融液を4mmの厚さにロール成形し、さらに徐冷炉を用いて700℃から、100℃/時の降温速度で室温まで冷却することにより試料を得た。
[結晶化挙動の評価]
各試料について、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tと、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xを算出した。
表1〜2から明らかなように、本発明の実施例であるNo.1〜5の試料は、結晶化時の収縮率が極大となる温度Tと(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが所定範囲内であった。
一方、比較例である試料No.6は、(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが所定範囲外であった。このため試料No.6を結晶化させると、温度変化に伴う結晶析出量の変化が大きくなって結晶化挙動の制御が困難になり、外観上好ましくない変形が生じる、と推測した。
なお結晶化時の収縮率が極大となる温度Tは、次のようにして算出した。まず、得られた結晶性ガラス試料を、20mm×3.8mmφの円柱に加工し、Dilatometerを用いて予め200℃で保持した状態でサンプルを入れ、200℃から550℃まで10℃/分で昇温し、550℃から核形成温度まで5℃/分で昇温し、核形成温度で30分保持し、核形成温度から780℃まで5℃/分で昇温し、780℃から900℃まで1℃/分で昇温した。この際、核形成温度は650、690、720、750、780℃のいずれかとした。核形成温度が780℃の場合、30分保持後、直ちに900℃まで1℃/分で昇温した。これらの昇温過程において温度、サンプルの収縮量、時間を測定した。これらのデータから、各温度における収縮率を算出した。収縮率は{(サンプルの単位時間あたりの収縮量)/(室温におけるサンプルの長さ)×100}とした。この収縮率を温度に対してプロットした例を図1に示す。図1は本発明の実施例であるNo.5の収縮率を温度に対してプロットしたものである。図1において認められる結晶析出に伴うガラスの収縮ピークに対し、解析ソフトOriginを用いてピークフィットを行った。このピークの頂点を収縮率の極大値とし、この時の温度を収縮率が極大値となる温度とした。
また(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xは、上述のピークフィット結果から収縮率の極大値の半値全幅を算出して求めた。
[結晶化ガラスの評価]
所定の形状に成形した各結晶性ガラス試料について、25℃から核形成温度である780℃まで400℃/時で昇温し、780℃で3時間保持し、結晶成長温度である890℃まで120℃/時で昇温し、890℃で1時間保持し、25℃まで440℃/時で降温することにより結晶化させた。得られた結晶化ガラス試料について、30〜380℃における熱膨張係数及び反りを評価した。
その結果、実施例であるNo.1〜5の各試料は、熱膨張係数が−1〜1×10−7/℃と極めて低く、しかも反りが認められなかった。一方、比較例である試料No.6は、熱膨張係数が3×10−7/℃と高く、また反りの評価が×となった。
本実施例では、結晶性ガラスの結晶化挙動に関する評価結果を基づいて結晶化条件や組成の変更を行わなかったが、評価結果に基づいて結晶化条件や組成の変更を行ってもよいことは言うまでもない。
なお熱膨張係数は、約5mmφ×50mmのロッド状に成形した結晶化ガラス試料を用い、自己示差熱膨張計により測定した。
また反りは次のようにして評価した。100mm×100mm×4mmtの大きさの板状結晶性ガラス試料を、ローラーハウスキルンにより上記温度条件で結晶化させた。続いて結晶化ガラス試料を定盤の上に乗せ、試料と定盤の隙間に0.5mmのシックネスゲージを挿入し、一部でも挿入できたものを×、全周挿入できなかったものを○とした。
本発明の方法及びこれを利用して作製したLiO−Al−SiO系結晶化ガラスは、石油ストーブや薪ストーブ等の前面窓、調理器用のトッププレート等の耐熱用途、マイクロレンズアレイ基板、DWDM用光波長合分波器基板等の電子部品用部材等の低熱膨張用途に好適に使用できる。

Claims (10)

  1. LiO−Al−SiO系結晶性ガラスを用意する工程と、前記結晶性ガラスの結晶化時の収縮率が極大となる温度T及び結晶化時の(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xを求める工程と、前記温度T及び値Xに基づき、前記結晶性ガラスの結晶化挙動を評価する工程とを含むことを特徴とするLiO−Al−SiO系結晶性ガラスの評価方法。
  2. 結晶化時の収縮率が極大となる温度T及び結晶化時の(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xの評価基準が、各々800〜900℃及び8000〜150000℃・s/%であることを特徴とする請求項1に記載のLiO−Al−SiO系結晶性ガラスの評価方法。
  3. 請求項1又は2に記載の評価方法に基づいて、LiO−Al−SiO系結晶性ガラスの結晶化条件を決定することを特徴とするLiO−Al−SiO系結晶性ガラスの結晶化条件調節方法。
  4. LiO−Al−SiO系結晶性ガラスを作製する工程と、請求項3に記載の方法で決定した結晶化条件で前記結晶性ガラスを結晶化させてLiO−Al−SiO系結晶化ガラスを得る工程とを含むことを特徴とするLiO−Al−SiO系結晶化ガラスの製造方法。
  5. 結晶化時の収縮率が極大となる温度Tが800〜900℃となり、且つ結晶化時の(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)の値Xが8000〜150000℃・s/%となるように、LiO−Al−SiO系結晶性ガラスの組成を決定することを特徴とするLiO−Al−SiO系結晶性ガラスの組成設計方法。
  6. 請求項5に記載の方法で決定した組成を有するLiO−Al−SiO系結晶性ガラスを作製する工程と、前記結晶性ガラスを結晶化させてLiO−Al−SiO系結晶化ガラスを得る工程とを含むことを特徴とするLiO−Al−SiO系結晶化ガラスの製造方法。
  7. 請求項4又は6の方法で作製されてなることを特徴とするLiO−Al−SiO系結晶化ガラス。
  8. 組成として質量%で、SiO 55〜75%、Al 20.5〜27%、LiO 2%以上、TiO 1.5〜3%、TiO+ZrO 3.8〜5%、SnO 0.1〜0.5%を含有し、3.7≦LiO+0.741MgO+0.367ZnO≦4.5及びSrO+1.847CaO≦0.5の関係を満たすとともに、結晶化時の収縮率が極大値となる温度が800〜900℃及び結晶化時の(収縮率の極大値の半値全幅)/(収縮率の極大値)が8000〜150000℃・s/%となる性質を有することを特徴とするLiO−Al−SiO系結晶性ガラス。
  9. 請求項8に記載の結晶性ガラスを、600〜800℃の温度域で0.01〜5時間保持して核形成し、800〜1000℃の温度域で0.01〜4時間保持して結晶成長させることを特徴とするLiO−Al−SiO系結晶化ガラスの製造方法。
  10. 請求項8に記載の結晶性ガラスを結晶化させてなることを特徴とするLiO−Al−SiO系結晶化ガラス。
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