本発明の実施の形態に係る光学部材(以下、「本実施形態の光学部材」という。) は転写面に複数の気泡を配列させたモールドを使用した転写プロセスを用いて形成したマイクロレンズアレイを主表面に有する光学部材である。気泡をモールドの一部として積極的に使用することで、機械研削等の方法では困難な滑らかで歪みの少ない曲面を持つレンズを簡易なプロセスで得ることができる。
本明細書で、「マイクロレンズ」とは、レンズ直径が少なくとも約10mm以下、典型的には約0.1μmから数mmのものをいうものとする。なお、ここでいうレンズ直径とは、凹レンズまたは凸レンズの最大断面におけるレンズ幅をいう。なお、最大断面とは、光学部材主表面方向に対し垂直な断面において、レンズ断面積が最大となる断面をいう。
ここで、「気泡」を構成する気体に、特に限定はない。空気であれば転写プロセスを大気中で行えるため、より簡易なプロセスにすることができるが、窒素やアルゴン等の不活性ガス等を用いてもよい。気泡の形状は、ベースモールドの凹部の形状や材質、及び後述する種々のプロセス条件で調整できる。なお、本明細書において、特に「ベースモールド」という場合は、気泡を転写面に捕捉し、直接気泡を転写させるプロセス(以下、「第1転写プロセス」という)において使用される、モールドのうち気泡を含まない部分というものとする。なお「ベースモールド」は、「第1モールド」と呼ぶこともできる。
転写面に形成される「気泡の配列」とは、転写面に一定の規則性を持って気泡が配置された状態をいい、列状、格子状、千鳥格子状、放射状を始めとする任意の配列パターンが含まれる。また、配列パターンは転写面全体に均一に形成される必要はなく、部分的に形成されてもよく、複数の異なる配列パターンを同一平面内に有しても良い。例えば、後述するように、ディスプレイデバイス等で使用されるブラックマトリックスなど格子状の遮光パターンと組み合わせて使用する場合は、遮光パターンに合わせて、格子状に気泡を転写し、上記格子状に配列した凹レンズもしくは凸レンズを形成できる。
転写面に形成される気泡は、転写時に存在すればよく、転写時にベースモールドと気泡が一体となって転写面を形成するものであればよい。これらの転写面に形成される「気泡の配列」は、本実施形態の光学部材のマイクロレンズアレイの配列に反映できる。
本実施形態の光学部材は、気泡を転写することで得られた凹レンズまたは凸レンズの配列を有することができるが、ここでいう「凹レンズ」または「凸レンズ」とは、転写時において転写面に捕捉されている気泡が取りうる種々の形状が転写され、凸な部分を持つレンズ、または凹な部分を持つレンズを意味する。略球状、略半球状あるいは球状の一部、もしくは複数の曲率を有する球状体が合成された、種々の曲面を有することができる。
また、本実施形態の光学部材は、一例において、実質的に等しい形状と大きさを備えた凹レンズまたは凸レンズを主表面に配列させた光学部材とすることができるが、異なる形状と大きさの凹レンズまたは凸レンズを同一主表面上に配列させた光学部材とすることもできる。
図1(a)〜図1(d)に、本実施形態の光学部材の断面形状の一例を示す。本実施形態の光学部材は、配列された凹部を有するベースモールドと気泡からなる転写面を直接転写することで得られる転写面を反転させた形状、あるいはさらにそれを転写することで得られる形状を有する。
例えば、図1(a)あるいは図1(c)に示すように、本実施形態の光学部材は、主表面上に、配列された複数の凸レンズ112、132と、各レンズに隣接して、各凸レンズ112、132を囲む隔壁113、133とを有することができる。また、図1(b)あるいは図1(d)に示すように、本実施形態の光学部材は、主表面上に、配列された複数の凹レンズ122、142と、各レンズに隣接して、各凹レンズ122、142を囲む溝123、143とを有することができる。
凸レンズ112、132の周囲に形成される隔壁は、使用するベースモールドの種類により、図1(a)に示すように、光学部材の主表面方向Sに対しほぼ垂直な面113Aを持つことも、図1(c)に示すように、主表面方向Sに対し傾斜面、すなわち90度以下の面133Aを持つこともできる。また、凹レンズ122、142の周囲に形成される溝は、使用するベースモールドの種類により、図1(b)に示すように、光学部材の主表面方向Sに対しほぼ垂直な面123Aを持つことも、図1(d)に示すように、主表面方向Sに対し傾斜面、すなわち90度以下の面143Aを持つこともできる。
これらの光学部材は、凸レンズおよび凹レンズのみならず、隔壁部分および溝部分をレンズあるいはその他の機能として積極的に利用することができる。例えば図1(c)および図1(d)に示す光学部材130、140の場合は、傾斜面を有する隔壁部分をプリズムレンズとして効果的に利用することができる。また、プリズムの頂角となる隣接する2つの傾斜面がなす角度θpや傾斜面の幅は容易に変更でき、プリズムの光学特性を調整できる。凹レンズもしくは凸レンズとプリズムとを組み合わせることで、本実施形態の光学部材の光学特性の調整幅を広げることができる。また、凸レンズや凹レンズ部分のみならず、それらの周囲の隔壁および溝を積極的にプリズム等として使用する場合は、光学部材主表面のほぼ全面で光学的機能を発揮させることが可能になる。
本実施形態の光学部材は、後述する製造方法で説明される硬化可能な流体を硬化させた材料で作製されていればよく、特に限定されない。例えば、樹脂やセラミック材等を使用することができる。光学部材として使用するものであるから、主に使用する光を透過もしくは反射する部材として使用される。したがって、使用する光を透過させる場合は、少なくとも使用する光の波長を効率的に透過する材料であることが望ましい。代表的には、可視域(400nm〜800nm)で、少なくとも60%以上、あるいは70%以上の透過率を有することが好ましい。例えば、ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の各種合成樹脂や、酸化ケイ素や酸化チタンあるいは各種ガラス等のセラミックスが使用できる。
また、主表面に入射する光を主表面で反射させる部材として使用する場合は、表面が少なくとも反射性を有していればよく、光学部材は、透明であっても不透明であってもよく、光学部材表面上に、さらに金属膜、誘電体多層膜、あるいは有機多層膜等からなる反射層を備えてもよい。
光学部材の全体形状は、転写プロセスにより主表面に転写ができる形状であればよく、シート状、板状、球面体、立方体、直方体等用途に応じて形状は選択できる。少なくとも主表面上に気泡を転写することで得られる凸レンズもしくは凹レンズを有するが、単一面に限られず、複数の面、例えばシートの主表面および裏面に同様なレンズを形成してもよい。
なお、光学部材をシート状とする場合は、場所をとらないため、種々のディスプレイデバイスや照明光デバイス構造中に組み込みやすい。例えば、用途に応じて、その厚みは調整できるが、厚みを1μm以上、10μm以上、あるいは50μm以上、または5mm以下、2mm以下、1mm以下、500μm以下のシート状光学部材とすることができる。さらに、光学部材として可とう性を有する材料を利用する場合は、用途に応じての変形が可能であり、凹凸を有する立体面や曲面に沿って配置させることもできる。
本実施形態における凸レンズ112、132および凹レンズ122、142は、気泡を転写して得られるものであるため、滑らかな表面を有するものであり、転写される材質にもよるが、一例では、そのレンズ中心部の表面粗さRaを100nm以下、50nm以下、10nm以下、あるいは5nm以下とすることができる。
図2(a)〜図2(c)は、本実施形態の光学部材の他の実施形態を示す。
図2(a)および図2(b)に示す光学部材210および220は、気泡を転写することで得られた凸レンズまたは凹レンズを有する光学部材211に、さらに保護等の目的で、別の部材270、例えば透明樹脂基材を積層したものである。このような場合には、各凸レンズ212周囲に形成されている隔壁214の高さを利用して光学部材211と光学部材に隣接して積層する他の部材270との距離を調整することもできる。即ち、図2(b)に示すように、各凸レンズ光学部材211の主表面に形成されたレンズ212の表面に空気層を維持しながら、部材270がレンズ面に接触しないように、隔壁214をスペーサとして利用することができる。また、部材270は粘着材及び接着剤を用いて光学部材211を固定することもできる。
図2(c)に示す光学部材230は、保護あるいは、光学特性の調整等の目的で光学部材231主表面上に被覆層280を形成したものである。例えば、光学部材231の保護のため、レンズ界面における屈折率の調整のため、隣接する部材とレンズ面との距離の調整のため、あるいは反射層を付与する目的のため等に、被覆層280を備えることができる。
被覆層280としては、例えば、光学部材231の保護や、レンズ界面における屈折率の調整のために使用される場合は、光学部材と同様に少なくとも使用する光の波長を効率的に透過する材料であることが望ましく、代表的には、可視域(400nm〜800nm)で、少なくとも60%以上、あるいは70%以上の透過率を有することが好ましい。一例として、ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の各種合成樹脂や、酸化ケイ素や酸化チタンあるいは各種ガラス等のセラミックス等の中で、使用用途に応じて、光学部材231とは異なる材質を選択して使用することができる。
なお、被覆層280が光学部材231に反射層を付与する目的で使用される場合は、金属膜や誘電体多層膜等を使用することができる。
被覆層280の形成方法は、後述する光学部材の製造で使用されるコーティング方法のほかに、ディップコート法、スプレーコート法、蒸着法、スパッタリング法などの種々の方法を用いることができる。また、後述するように、転写プロセスにおいて用いたモールドをそのまま取り外さずに残すことで、モールドを被覆層280として使用することもできる。被覆層の厚さは限定されず、用途に合わせ数nm以上、あるいは1mm以下程度とすることができる。
本実施形態の光学部材の具体的な態様と形状等については、以下に述べる製造方法においても説明する。また、この光学部材の用途、および各用途に適した光学部材のより具体的な実施形態については後述する。
本実施形態の光学部材は、転写面に気泡を配列させたモールドを使用した転写プロセスを用いることで、凹型または凸型マイクロレンズアレイを作製することを主な特徴とする。特に、第1転写プロセスにおいて、一般的には、(1)配列パターンを備えた型面を有するベースモールド(「第1モールド」ともいう)を準備する工程と、(2)上記各配列パターンに気泡を捕捉するように、型面上に硬化可能な流体を提供する工程と、(3)硬化可能な流体を硬化させる工程と、(4)得られた硬化層をベースモールドより取り外す工程とを有する。
以下、図3〜図6を参照しながら、本実施形態の光学部材の製造方法の工程について説明する。まず、本実施形態の第1転写プロセスについて概略的に説明する。なお、説明の便宜のため、凹部形状の異なる2種類のベースモールドを用いた工程について同時に説明を行う。
本実施形態の第1転写プロセスでは、まず、配列パターンを備えた型面を有するベースモールド310、510を準備する(図3(a)、図5(a)参照)。図3および図4には、角柱または円柱形状の凹部311を有するベースモールド310を使用した工程例を示しており、図5および図6には、角錐または円錐形状の凹部511を有するベースモールド510を使用した工程例を示す。
次に、このベースモールド310、510の各凹部311、511に気泡350、550を捕捉するように、型面上に硬化可能な流体330、530をコーティングする(図3(b)、図5(b)参照)。この後、硬化可能な流体330、530を硬化し(図3(c)、図5(c)参照)、硬化層331A、531Aを得る。その後、ベースモールド310、510より気泡およびベースモールドの型面が転写された硬化層331A、531Aを構造体331B、531Bとして取り外す(離型する)(図3(d)、図5(d)参照)。ベースモールド310、510から取り外された構造体331B、531Bは、複数の凹レンズと、各凹レンズの周囲に形成された溝を主表面に有する光学部材として使用できる。
一方、凸レンズを備えた本実施形態の光学部材を作製する場合は、図4または図6に示す転写プロセス(「第2転写プロセス」という。)をさらに実施する。すなわち上述する工程で得られた構造体331B、531Bを第2モールドとして使用し(図4(e)、図6(e)参照)、硬化可能な流体360、560を転写面上にコーティングし(図4(f)、図6(f)参照)、硬化させる。この後、この硬化物である構造体361、561を第2モールド(構造体331B、531B)から取り外す(図4(g)、図6(g)参照)。これら一連の第2転写プロセスでは、一般的な既存の転写プロセスを使用することができ、転写面に気泡は含まれない。こうして、取り外した構造体361、561は、主表面上に配列された複数の凸レンズと、各凸レンズに隣接して、各凸レンズを囲む隔壁を有する光学部材として使用することができる。なお、第2モールド(構造体331B、531B)から構造体361、561を取り外さずに、積層構造のまま、光学部材として使用することもできる。
本実施形態の第1転写プロセスでは、ベースモールドの型面に提供された気泡と硬化可能な流体とが接する領域において、気泡は、硬化可能な流体との間の界面エネルギーが最少となるように、その界面積が最小となる球形状の凸曲面を形成しようとする。実際には、更に浮力、重力、硬化可能な流体の粘度を始めとするその他のパラメータの影響を受け、気泡がベースモールドの型面と接触する領域の近傍では、気泡と型面との間の界面張力や硬化可能な流体と型面との間の界面張力の影響も受ける。しかし、気泡の凸曲面に対して概略一様、または凸曲面の頂部に対して概略対称に力が加わる場合は、気泡は歪んだ形状に変形することなく、均等で滑らかな凸曲面を形成することができる。従って、本実施形態の第1転写プロセスで得られる気泡を含む転写面を用いて得られる凹レンズは、気泡の外形が反転した滑らかな凹曲面を持つことができる。また、この凹曲面を転写して得られる第2転写プロセスで得られる凸レンズも、滑らかな凸曲面を持つことができる。
本実施形態によれば、転写面に配列された気泡を硬化可能な流体に転写することによって、従来、複雑な工程と多くの作業時間をかけて形成する必要があったマイクロレンズアレイを、簡単なプロセスで製造することができる。また、本実施形態の気泡を用いた転写プロセスは、大面積化の対応も容易であり、例えば1m×1mの大型の光学部材を形成することもできる。
本実施形態の第1転写プロセスでは、気泡を積極的に、すなわち意図的に捕捉し、気泡を転写面の一部として利用する。よって、一般的な転写プロセスのように、気泡を含まないように転写するか、あるいは気泡を含んだ場合は減圧することで脱泡処理を行うものとは異なる。本実施形態の第1転写プロセスでは、気泡を周囲の気体、例えば大気から取り込む場合は、大気中で実施することができるため、真空チャンバーのような特殊な装置を要せず、極めて簡易な製造設備で作製できる。
なお、凸レンズを備えた光学部材を作製する第2転写プロセスは、一般的な転写プロセスを使用することができるが、その具体的な転写方法は限定されない。紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいは二液性の常温硬化性樹脂等を用いて第1転写プロセスと同様な転写方法を使用することもできるし、熱可塑性樹脂を用いた熱プレスや、電鋳等の転写方法を使用することができる。
第2転写プロセスで得た構造体をさらに第3転写プロセスの第3モールドとして使用することもできる。このように、第2転写プロセス以後の転写プロセスは、一般的な転写プロセスを使用することができ、これらのプロセスは何度でも繰り返すことができる。また、これら一連の転写プロセスで得られる凹曲面を持つモールド、およびさらにこれを転写して得られた凸曲面を持つモールドをスタンパとして用いて、多数の光学部材を製造することもできる。いずれのプロセスで得られた光学部材も、本実施形態における気泡を利用した転写プロセスで作製される本実施形態の光学部材に相当するものである。
上述する気泡を用いた転写プロセスによれば、複数の微細な凸レンズもしくは凹レンズを備えたマイクロレンズアレイパターンを持つ光学部材を容易に得ることができる。また、上記転写プロセスで、本実施形態の光学部材を大面積化することも容易である。
また、本実施形態の光学部材は、ベースモールドの型面と気泡が一体となった配列パターンを主表面に備えるため、気泡が転写されたレンズ部分の周囲にベースモールドの型面に対応した隔壁や溝を光学部材の主表面に付与することができる。
以下、再び図面を参照し、本実施形態の光学部材の製造方法の各工程についてより具体的に説明する。
本実施形態の光学部材の製造方法の第1転写プロセスにおいては、まず、図3(a)及び図5(a)に示すように、配列パターンを備えた型面を有するベースモールドを準備する。この工程においては、複数の凹部311、511が所定パターンで配列された型面を備えたベースモールド310、510を準備する。ベースモールドの配列パターンは、光学部材において得られる凸レンズあるいは凹レンズの配置に対応したものとなる。
ここで、ベースモールドの「型面」とは、気泡がない場合に、ベースモールド自身が持つ転写面である。転写時に気泡が存在しない場合には、この型面の形状が被転写物に転写される。本実施形態では、型面上に硬化可能な流体をコーティングする際に、型面を構成する凹部に気泡が捕捉され、型面と気泡が一体となった転写面が形成される。この転写面の形状を光学部材に転写することができる。なお、いいかえれば、ベースモールドの型面と気泡とで、実質的なモールドの転写面が形成され、これが本実施形態の光学部材の主表面に転写される。
本実施形態では、ベースモールドの型面に、予め位置精度の高い配列凹部を備えておくことで、高い位置精度で配列した凹レンズを備えた光学部材を得ることができる。また、ベースモールドの型面に、予め所定形状と大きさの凹部を形成することにより、捕捉される気泡の大きさや形状を調整できる。また、大きさと形状が同じ凹部が配列したベースモールドを使用することで、大きさと形状が略同じ気体を各凹部に捕捉することができ、これにより大きさと形状が略同一の凹レンズを得ることができる。
なお、本実施形態の配列凹部の配列パターンとしては、すでに説明したように、列状配列、正方格子状配列、千鳥格子状配列、放射状配置を始めとする任意の配列パターンを適用することができる。最終的に光学部材に付与するレンズの配列パターンに合わせて選択するとよい。
ベースモールド310、510の材料としては、代表的には樹脂材料を用いることができるが、これに限られるものではなく、任意の有機材料、金属、ガラス、セラミックを始めとする任意の無機材料、または任意の有機無機複合材料を用いることができる。また、ベースモールド310、510の寸法としては、コーティング装置の大きさに応じて任意の寸法を採用することができるが、例えば、縦寸法1mm〜数1000mm、横寸法1mm〜数1000mm、及び厚み寸法10μm〜数10mmを例示することができる。
ベースモールド310、510の型面の形状は、種々の形状をとることができるが、例えば、図3(a)に示すように、断面が矩形の角柱や円柱の凹部311を持つベースモールド310を使用することもできるし、図5(a)に示すように、断面が三角形の角錐や円錐を備えたベースモールド510、すなわち凹部の側面に傾斜面を備えたものを使用することもできる。
図7は、本実施形態で使用できるベースモールドの形状例を示す部分平面図である。図7(a)に示すような四角錘(ピラミッド型)状の凹部711を有するベースモールド710や、図7(b)に示すように、四角錐を底面の一辺に平行に一方向に延伸し、凹部の底部に稜線を有する形状の凹部721を備えるベースモールド720等が例示できる。使用する凹部形状に限定はないが、研削加工等が容易な凹形状を持つベースモールドが使用できる。
ベースモールド310、510の型面に形成できる凹部の大きさの一例として、深さが0.1μm〜数10mm、開口部面積が、0.01μm2〜数100mm2を例示することができるが、これに限られるものではない。
一方、ベースモールド310、510の凹部311、511の形状は、最終的に得られる光学部材の凸レンズもしくは凹レンズ周囲に形成される隔壁や溝の形状に反映する。凸レンズまたは凹レンズ周囲の隔壁や溝が傾斜面を備える場合は、凸レンズ周囲に形成される隔壁をプリズムとして使用することもできる。凹部の壁面の傾斜角度を調整することで、これらのプリズムの頂角を調整できる。
次に、図3(b)及び図5(b)に示すように、ベースモールド310、510をコーティング装置にセットし、硬化可能な流体330、530をベースモールド310、510の型面上にコーティングし、同時に周囲の気体、例えば空気の一部をベースモールド310、510の凹部311、511中に捕捉する。
流体を型面にコーティングする方法に限定はないが、硬化可能な流体の種類、構造体の形状、大きさ等に合わせて最適なコーティング方法を選択することができる。
コーティング装置としては、代表的にはナイフコーターを用いることができるが、これに限られるものではなく、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーターを始めとするその他の様々なコーティング装置を用いることができる。なお、硬化可能な流体として、熱可塑性樹脂を用いる場合には、樹脂が十分な流動性を有するだけの温度に加熱したヒートナイフコーターを用いることもできる。
本実施形態では、例えばナイフコーターを使用する場合、ベースモールド表面の一端に硬化可能な流体を供給し、続いて、エッジを一定高さに固定したブレード340、540を移動させることで、硬化可能な流体をベースモールドの型面全体に押し広げていく。すなわち、本実施形態では、ブレード340、540が矢印Aに示す方向(左から右)へ一定速度で移動することにより、硬化可能な流体をベースモールド310、510の型面上にコーティングする。このとき、矢印Bに示すように、周囲に存在する気体の一部がベースモールド310、510の凹部311、511に、気泡350、550として捕捉される。
捕捉された気泡350、550は、ベースモールド310、510の型面と一体化し、転写面を構成するとともに、この転写面上を、硬化可能な流体331、531のコーティング層が覆う。なお、コーティング層の厚みとしては、例えば、10μm〜数10mm、50μm〜1000μmの厚みが例示できるが、これに限定されるものではなく、用途に応じてその他の任意の厚みを定めることができる。これらの厚みは、ナイフコーターを使用する場合は、ベースモールド表面とナイフエッジとのギャップを調整することで調整可能である。
後述するように、捕捉される気泡の状態は、硬化可能な流体の粘度やベースモールドの型面に対するぬれ性等を含む種々の条件に依存するが、ベースモールド310、510の型面にある凹部311、511としては、硬化可能な流体をコーティングする際に、閉じた空間を作り得る形状、すなわち凹部311、511に残る気体が逃げにくい形状が好ましい。例えば、そのような凹部の形状としては、三角錐、四角錐、五角錐、六角錐、八角錐等の角錐、もしくは角錐台、または、三角柱、四角柱、五角柱、六角柱、八角柱等の角柱、さらに円柱、円錐 円錐台、球状、あるいは、これらを組み合わせた形状、またはその一部を変形させた形状等が挙げられる。これらの場合は、硬化可能な流体をコーティングする際、気泡が逃げにくいため、容易に気泡を捕捉しやすい。また、概して、角錐台形状の凹部の場合、開口部の最大径(Lm)と深さ(D)のアスペクト比(L/D)が、20以下、10以下、あるいは5以下であれば気泡は容易に捕捉される。
捕捉される気泡の大きさや位置については、主に、使用するベースモールドの型面が有する凹部の配置、形状、大きさによりある程度調整されるが、さらに、ベースモールドの材質、コーティング速度、ブレード340、540の移動速度を始めとする様々なパラメータを調整することによって制御することができる。なお、この点に関する更に詳細な説明は後述する。
硬化可能な流体330、530としては、ベースモールド上に提供した際に、型面に塗布できる程度に流動性を有する流体であって、硬化方法を問わず、硬化可能なものであれば使用できる。例えば、流体としては、ゲル状、液状の任意の有機材料、任意の無機材料、または任意の有機無機複合材料を用いることができる。光硬化性樹脂、水溶性樹脂の水溶液、樹脂を各種溶剤に溶かした溶液などの液状樹脂を用いることができ、ベースモールド310、510が十分な耐熱性を有する場合には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることもできる。なお、硬化可能な流体として無機材料を用いる場合には、ガラス、コンクリート、石膏、セメント、モルタル、セラミック、粘土、金属を始めとする様々な無機材料を用いることができる。またこれらの有機材料と無機材料とを複合させた有機無機複合材料を用いることもできる。
紫外線硬化性樹脂としては、光重合開始剤を添加したアクリレート系、メタアクリレート系、エポキシ系を始めとする光重合性モノマーや、アクリレート系、メタクリレート系、ウレタンアクリレ−ト系、エポキシ系、エポキシアクリレ−ト系、エステルアクリレ−ト系を始めとする光重合性オリゴマ−を例示することができる。紫外線硬化性樹脂を用いた場合には、モールド等を高温にさらすことなく、短時間に樹脂を硬化することができる。
熱硬化性樹脂としては、熱重合開始剤を添加したアクリレート系、メタアクリレート系や、エポキシ系、フェノール系、メラミン系、ウレア系、不飽和エステル系、アルキド系、ウレタン系、エボナイトを例示することができる。例えばフェノール系、メラミン系、ウレア系、不飽和エステル系、アルキド系、ウレタン系、エボナイドを用いた場合には耐熱性、耐溶剤性に優れ、充填剤をいれて強靭な成形物を得ることができる。
溶解性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等の水溶性高分子を例示することができる。例えば溶解性樹脂を用いた時は乾燥による溶媒の除去工程に伴い、コーティング層の溶解性樹脂溶液の濃度(粘度)や表面張力が段階的に変化するため、凹曲面の曲率が小さい構造体を得ることができる。
溶解性樹脂を成形のためのベースモールド、あるいは後述する第2モールドとして用いる場合には、これらのモールドを溶解することで、硬化層331A、531Aを損傷させずに取り外す(離型する)こともできる。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等を例示することができる。
なお、上記樹脂のいずれにおいても、各種添加剤、例えば、増粘剤、硬化剤、架橋剤、開始剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、染料等を含むことができる。ただし、本実施形態で用いる樹脂材料は、上記に例示した材料に限られるものではなく、その他のあらゆる樹脂を単独で用いることも、組み合わせて用いることもできる。
次に、図3(c)及び図5(c)に示すように、ベースモールド310、510の凹部311、511に気泡350、550が捕捉された状態の硬化可能な流体330、530のコーティング層を硬化させて、硬化層331A、531Aを形成する。
硬化可能な流体330、530として、紫外線硬化性樹脂を使用した場合は、紫外線をコーティング層に照射することにより、樹脂を重合させて、硬化層331A、531Aを形成することができる。また、硬化可能な流体が、溶解性樹脂の溶液の場合には、乾燥により溶媒を除去して、硬化層331A、531Aを形成することができる。また、硬化可能な流体が熱可塑性樹脂の場合には、樹脂を硬化温度以下に冷却することにより、硬化層331A、531Aを形成することができる。また、硬化可能な流体が熱硬化性樹脂の場合には、樹脂を硬化温度以上に加熱することにより、硬化層331A,531Aを形成することができる。こうして、気泡350とベースモールド310の型面からなる転写面が転写された形状、すなわち複数の微細な凹曲面とその周囲の溝が主表面に配列した硬化層331A,531Aが形成される。
この後、図3(d)及び図5(d)に示すように、硬化層331A、531Aをベースモールド310、510から取り外す。取り外した構造体331B、531Bは、複数の凹レンズが配列したマイクロレンズアレイを有する光学部材としても使用できるし、図3(e)〜図3(g)または図5(e)〜図5(g)に続く複数の凸レンズが配列したマイクロレンズアレイを有する光学部材を製造するための第2転写プロセス用モールド(「第2モールド」という)として使用することもできる。
以上に述べたように、本実施形態で用いる第1転写プロセスにおける転写面は、ベースモールド310、510と気泡350、550により構成される。また、ベースモールド310、510の各凹部に捕捉される気泡350、550の大きさや形状は、気泡と硬化可能な流体との間の界面張力、浮力、重力、気泡とベースモールドの表面との間の界面張力、硬化可能な流体とベースモールドの表面との間の界面張力等のパラメータに基づき決まる。
本実施形態の第1転写プロセスでは、気泡をモールドの一部として使用することによって、従来、多くの作業時間をかけて形成する必要があった実質的に球面状の凸形の転写面を、特別な加工を要しないで得ることができる。特に微細な凹レンズを形成するために必要な滑らかなで歪みの少ない表面を持つ凸曲面を特別な微細加工等を要しないで得ることができる。
なお、こうして得られた光学部材は、図1(b)および図1(d)に示すような、主表面に、複数の凹レンズ122、142とその周囲を溝123、143で囲まれた配列パターンを有するものとなる。溝123、143の形状は、ベースモールド310、510の凹部形状に応じて様々な形状をとることができるが、図1(d)に示すように、溝が主表面方向Sに対し傾斜面を備える場合、これを反射面や屈折面として使用することができる。すなわち、凹レンズ部分のみならず溝部分もプリズムなどの光学機能を持つものとして使用できる。
上述する第1転写プロセスで得られる光学部材(構造体331B、531B)は、ベースモールド310、510の凹部配列パターンと気泡350、550から構成される転写面が転写されたものであり、気泡350、550が転写された凹曲面332、532は、気泡350、550の形状と大きさに対応した曲面となる。得られる曲面は、実質的に球状の一部となる曲面となる場合もあれば、気泡のおかれた条件により変形した曲面となる場合もあるが、ベースモールド310、510の有する凹部311、511の形状や大きさにより、気泡の大きさや形状を調整できる。
得られる凹曲面332、532の寸法としては、例えば、底面部の面積として0.01μm2以上、もしくは1μm2以上、または100mm2以下、もしくは10mm2以下を例示することができ、高さ寸法として0.1μm以上、もしくは10μm以上、または、数10mm以下、もしくは1mm以下を例示することができる。ただし、これに限られるものではなく、用途等に応じて、その他の任意の寸法をとることができる。
気泡の大きさ、形状および位置の制御は、本実施形態の光学部材の用途に合わせて行えば良い。厳密な形状や大きさの精度を要求されない用途もあれば、精度を上げることで、光学部材の性能を向上することが求められる場合もある。そこで、次に、上述した気泡を用いた転写プロセスにおいて、捕捉した気泡の大きさ、形状及び位置を制御する方法について説明する。気泡の大きさ、形状及び位置を制御することによって、光学部材(構造体331B、531B)の凹レンズ332、532の大きさ、形状及び位置を制御することができる。また、後述するように、この構造体331B、531Bを第2転写プロセスでの第2モールドとして使用する場合には、光学部材(構造体361、561)の凸レンズ曲面の大きさ、形状及び位置を制御できる。
気泡350、550の形状、大きさは、例えば、(a)ベースモールドの凹部の大きさや形状、(b)ベースモールドに付加する硬化可能な流体の粘度、(c)硬化可能な流体をベースモールドにコーティングする速度、(d)硬化可能な流体をベースモールドにコーティングする圧力、(e)硬化可能な流体、ベースモールド及び気泡の各々の間の界面張力、(f)硬化可能な流体のコーティングから硬化までの時間、(g)気泡の温度、(h)気泡にかかる圧力等を調整することで制御できる。
気泡350、550は、まず、主にベースモールドの凹部311,511の大きさと形状で調整できる。気泡350、550は、凹部311、511の型面に接するように配置され、硬化可能な流体330、530との界面で、気泡350、550と硬化可能な流体との間の界面張力に大きな影響を受けて、凸曲面を形成しようとする。一方、凹部311、511の型面と接する領域の近傍では、気泡350、550と凹部311、511の型面との間の界面張力や硬化可能な流体330、530と凹部311、511の型面との間の界面張力の影響も受ける。従って、気泡350、550は、硬化可能な流体と接する領域において、滑らかな凸曲面を形成するが、この凸曲面の曲率や形状は、凹部311、511の大きさや形状で調整できる。
ここで、凹部311,511の平面形状としては、様々な形状を有することができるが、凹部311、511の平面形状は対称形(点対称または線対称)またはそれに近い形状を使用すれば、気泡350,550は対称性が良く、収差の少ない凸曲面を得ることができる。つまり、気泡の凸曲面の頂点が、概略対称形の平面形状の中心にくるように配置されるため、レンズに適した、歪みが少なく、滑らかな凸曲面を得ることができる。
たとえば、図7(a)に示すベースモールド710の凹部711は、平面形状が点対称形状の一例であり、図7(b)に示すベースモールド720の凹部720は、線対称形状の一例である。
さらに、ベースモールドは、単一層からなるものばかりでなく、図7(c)に示すような、複数の層で構成されるものも使用することができる。例えば、金属シート731上に樹脂層732を積層したものを準備し、樹脂層のみにレーザ加工等で開口部(凹部)733を形成してもよい。あるいは、二層の構造の積層シートのうちいずれかの層のみをフォトリソグラフィプロセスを用いて選択的にエッチングを行い、配列した開口部(凹部)を形成することもできる。この方法によれば、容易に所定の配列凹部パターンを形成できる。
ベースモールド310、510を水平に設置すること、あるいはベースモールドの凹部の平面形状として対称形を用いることで、浮力、重力を気泡の凸曲面に対して一様にかけることができるので、気泡は実質的に球状の凸曲面を有することができるが、あえて、ベースモールドを水平におかず、傾斜面に設置したり、使用するベースモールドの凹部の平面形状として非対称形を用いたりすることで、気泡の形状を変形させ、光学部材の光学特性を調整することもできる。
また、ベースモールドの型面に形成される凹部は、用途に応じて、単一の形状のみではなく、複数の形状や異なる大きさのものを同一型面上に含んでもよい。また、用途に応じて、複数の異なる配列パターンを同一型面上に形成してもよい。
気泡350、550の大きさと形状は、ベースモールド310、510上にコーティングする硬化可能な流体330、530の粘度を調整することでも制御できる。具体的には、硬化可能な流体330、530の粘度を高くすることによって、気泡350、550を大きくすることができ、硬化可能な流体330、530の粘度を低くすることによって、気泡350,550を小さくすることができる。ここで、硬化可能な流体の粘度は限定されないが、1mPas以上、もしくは10mPas以上、100mPas以上が例示できる。または、100000mPas以下、10000mPas以下、もしくは1000mPas以下を例示することができる。なお、粘度の調整は、硬化可能な流体の濃度の調整によって、または増粘剤の添加等によって行うことができる。
気泡350、550の大きさと形状は、硬化可能な流体をベースモールド310、510にコーティングする速度、つまり図3(b)及び図5(b)の矢印Aで示すブレード340、540の進行速度を調整することにより、制御することもできる。具体的には、コーティング速度を速くすることによって、気泡350、550を大きくすることができ、コーティング速度を遅くすることによって、気泡350、550を小さくすることができる。なお、コーティング速度の調整範囲として、0.01cm/sec〜1000cm/sec、0.5cm/sec〜100cm/sec、0.5cm/sec〜100cm/sec、1cm/sec〜50cm/sec、あるいは1cm/sec〜25cm/secを例示することができるが、これらに限定されるものではない。なお、コーティング速度は、コーティング装置が硬化可能な流体を供給するヘッドを備えている場合は、このヘッドの移動速度、コーティング装置がスピンコータの場合は回転速度で調整できる。
一例として、もしコーティング速度が、硬化可能な流体がベースモールドの型面の凹部に自然に流れ落ちる速度より早ければ、気泡は凹部に捕捉されやすい。なお、この自然に流れ落ちる速度とは、型面の凹部に硬化可能な流体を置いた場合に自然に流れる速度であり、これは、例えば硬化可能な流体の粘度や、硬化可能な流体と気泡と型面との界面張力等によって影響されうるものである。例えば、もし硬化可能な流体の粘度が非常に低い場合は、コーティング速度を上げたり、ベースモールドの型面の材質を変更したりすることで気泡を凹部に捕捉できる。
また、気泡350、550の大きさと形状は、図3(b)または図5(b)に示す工程において、硬化可能な流体330、530とベースモールド310、510の型面との間の界面張力、硬化可能な流体と気泡350、550との間の界面張力、気泡350、550とベースモールド310、510の型面との界面張力を調整することにより、捕捉した気泡350、550の大きさを制御することができる。
図8は、図5(b)に示す工程における、部分断面図を示す。気泡350、550が捕捉されるか否か及び捕捉される気泡の形状や大きさは、図8の断面図に示すように、硬化可能な流体530とベースモールド510の型面との間の界面張力f1、硬化可能な流体530と気泡550との間の界面張力f2、及び気泡550とベースモールド510の型面との間の界面張力f3の影響を受け、更に重力、浮力、温度及び圧力の影響を受ける。その中でも、硬化可能な流体530とベースモールド510の型面との間の界面張力f1を調整することによって、気泡550の捕捉状態、例えば凹部中における気泡の位置を制御することができ、その結果、気泡550の形状や大きさも制御することができる。
具体的には、例えば、硬化可能な流体530とベースモールド310、510の型面との接触角を大きくする(ぬれ性を小さくする)ことによって、気泡350、550の大きさを大きくすることができ、硬化可能な流体530とベースモールド310,510の型面との間の接触角を小さくする(ぬれ性を大きくする)ことによって、気泡350、550の大きさを小さくすることができる。
例えば、一例では、ベースモールド510と同一素材のプレートに対し、硬化可能な流体を滴下した場合に界面張力により得られる流体の液滴の接触角が70度以下、あるいは60度以下の場合、図3(b)または図5(b)に示す工程において、ベースモールド310、510の凹部311、511に気泡が捕捉され、接触角を大きくする程、気泡を大きくできる。なお、これらの条件は、ベースモールドの凹部の形状やその他の条件によっても影響されるため、それらの条件を調整することで、接触角が60度以上、あるいは70度以上の場合でも気泡を捕捉することは可能である。
例えば、硬化可能な流体330、530として、紫外線硬化性樹脂であるポリエステル系ウレタンアクリレートを使用する場合、ベースモールド310、510として、シリコーン樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の樹脂、ニッケル等の金属材を使用する場合に、上述する接触角を得ることで、気泡を捕捉することが可能である。
この硬化可能な流体330、530とベースモールド310、510の型面との接触角の調整は、ベースモールドの型面を処理することでも調整できる。例えば、液体による表面処理やプラズマ処理、あるいはそれ以外の処理方法で接触角を調整できる。
液体による表面処理としては、例えばフッ素系表面処理剤で型面表面を処理する方法がある。一例において、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレン共重合体)等の樹脂性ベースモールドの表面を、フッ素系表面処理剤 Novec(登録商標)EGC-1720、3M社製)で表面処理することで、硬化可能な流体と型面との接触角を大きくし、ぬれ性を小さくすることができる。この結果、気泡を大きくできる。
プラズマ処理としては、市販のプラズマ処理装置を用い、使用するガスの種類や出力条件等を調整することにより硬化可能な流体と型面との接触角を調整できる。一例として、C3F8等のフッ素系ガスを用いて、ニッケル製ベースモールドの表面を処理した場合は、硬化可能な流体と型面との接触角を大きくし、ぬれ性を小さくすることができる。この結果、気泡を大きくできる。また、テトラメチルシラン(TMS)と酸素(O2)混合ガス等を用いてベースモールドの表面を処理する場合は、硬化可能な流体と型面との接触角を小さくし、ぬれ性を大きくできる。この結果、気泡小さくできる。
さらに、気泡350、550の大きさと形状は、図3(c)または図5(c)に示す工程において、コーティングされた硬化可能な流体330、530を硬化するまでの時間を調整することによっても制御することができる。具体的には、例えば、コーティングから硬化までの時間を短くすることによって、気泡350、550の大きさを大きくすることができ、コーティングから硬化までの時間を長くすることによって、気泡350、550の大きさを小さくすることができる。
また、気泡350、550の大きさと形状は、図3(b)〜(c)または図5(b)〜(c)に示す工程において、硬化可能な流体330、530をベースモールド310、510にコーティングした後であって硬化させる前、または硬化させている間の気泡の温度を調整することにより、捕捉した気泡350、550の大きさを制御することができる。具体的には、例えば、気泡の温度を高くすることによって、気泡350、550の大きさを大きくすることができ、気泡の温度を低くすることよって、気泡350、550の大きさを小さくすることができる。この気泡350、550の温度の調整は、気泡350、550を捕捉した後、事後的に気泡350、550の大きさを変更できる制御方法のひとつである。
さらに、気泡350、550の大きさと形状は、図3(b)〜(c)または図5(b)〜(c)に示す工程において、硬化可能な流体330、530をベースモールド310、510にコーティングした後であって硬化させる前、または硬化させている間の気泡にかかる圧力を調整することにより、捕捉した気泡350、550の大きさを制御することができる。具体的には、例えば、気泡にかかる圧力を小さくすることによって、気泡350、550の大きさを大きくすることができ、気泡にかかる圧力を大きくすることよって、気泡350、550の大きさを小さくすることができる。この気泡350、550にかかる圧力の調整も、気泡350、550を捕捉した後、事後的に気泡350、550の大きさを変更できる制御方法の1つである。
一方、気泡350、550の平面上の配列位置は、主にベースモールド310、510の型面にある凹部311、511の位置と、その配列パターンに依存するが、ベースモールド310、510の凹部311、511内での気泡の位置は、例えば、(a)硬化可能な流体330、530とベースモールド310、510の型面との間の界面張力を調整すること、及び(b)硬化可能な流体の粘度や、そのコーティングから硬化までの時間を調整すること等で制御できる。
次に、図4および図6を参照しながら、本実施形態の光学部材の製造方法における第2転写プロセスについて説明する。
この第2転写プロセスでは、一般的な既存の転写プロセスを使用することができる。まず、図4(e)及び図6(e)に示すように、上述する第1転写プロセスで得られた凹曲面を有する構造体331B、531Bを第2モールドとして(以下、必要に応じ、「構造体」を「第2モールド」に読み替える)準備し、図4(f)及び図6(f)に示すように、第2モールド331B、531Bの転写面上に気泡が残らないように、硬化可能な流体360、560をコーティングする。
第2転写プロセスにおける第2モールド331B、531Bは、上述した第1転写プロセスで使用した硬化可能な流体を硬化させたものを使用できるが、紫外線硬化性樹脂、溶解性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、更に、その他の有機材料、無機材料、有機無機複合材料等の中から、用途に応じて最適な材料を用いることができる。
第2モールド331B、531B上にコーティングする硬化可能な流体360、560としては、紫外線硬化性樹脂、溶解性樹脂の溶液を用いることができる。また、第2モールド331B、531Bが十分な耐熱性を有する場合には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることもできる。更に、硬化可能な物質であれば、その他の有機材料、無機材料、有機無機複合材料等を用いることもできる。なお、硬化した後に、第2モールド331B、531Bから硬化層を離型する場合は、取り外しやすい材料を選ぶことが好ましい。
また、硬化可能な流体360、560を第2モールド331B、531Bの転写面上にコーティングする方法としては、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーターを始めとする様々なコーティング装置を用いた方法が例示できる。第2転写プロセスでは、型面に空気を捕捉する必要がなく、一般的な既存の転写条件を使用することができるため、たとえば、減圧条件でコーティングしてもよい。あるいは、コーティング後に減圧処理を行い、脱泡処理を行っても良い。
続いて、コーティング後の硬化可能な流体360、560を硬化させて、図4(g)または図6(g)に示すように、硬化物である構造体361、561を第2モールド331B、531Bから取り外す。なお、第2モールド331B、531Bは、必要に応じてそのまま残すことも可能である。
硬化可能な流体360、560が紫外線硬化性樹脂の場合には、紫外線照射により硬化させることができ、溶解性樹脂溶液の場合には、乾燥により硬化させることができる。また、硬化可能な流体が熱可塑性樹脂の場合には、樹脂を硬化温度以下に冷却することにより、硬化させることができ、熱硬化性樹脂の場合には、樹脂を硬化温度以上になるまで加熱することにより硬化させることができる。
こうして、第1転写プロセスにより得られた第2モールド331B、531Bが転写されることで、凸曲面362、562とこの周囲の隔壁363、563を備えた構造体361、561が得られる。構造体361、561は、凸レンズアレイを備えた光学部材として使用できる。従って、本実施形態では、従来、多くの作業時間をかけて形成する必要があった凸レンズアレイを有する光学部材を、特別な加工を要せず、簡易なプロセスで得ることができる。
なお、第2転写プロセスは、転写面に気泡を配列させる必要がないため、既存の種々の転写プロセスに置き換えることもできる。例えば、第2モールドを用いて、熱プレスや電鋳といった方法で転写することも可能である。
第2転写プロセスで得られた光学部材が主表面に有する凸レンズは、第1転写プロセスで捕捉した気泡350、550に応じた大きさと形状を有する。例えば、底面部の面積として0.01μm2〜数100mm2を例示することができ、高さ寸法として0.1μm〜数10mmを例示することができる。ただし、これに限られるものではなく、凸曲面362、562は、用途等に応じて、その他の任意の寸法をとることができる。
また、構造体361、561である光学部材は、第2モールド331B、531Bの各凹曲面332、532が実質的に同一の場合、実質的に同一の形状の凸レンズが配列されたマイクロレンズアレイを得ることができる。
得られる光学部材は、主表面に、複数の凸レンズが配列されるとともに、各凸レンズの周囲を隔壁363、563で囲まれた形状を有する。この隔壁部分は、例えば、図6(g)に示すように、隔壁563が、傾斜面を有する場合、隔壁563をプリズムとして使用することも可能である。
なお、すでに説明したように、隔壁363、563は、得られた光学部材のうえに別の層を積層して使用する場合、スペーサとして使用することもできる。図2(a)および図2(b)に示すように、隔壁の高さを調整することで、他の部材と凸レンズとの距離を調整することもできる。
このように、隔壁363、563は、その形状的特徴を生かして様々な分野、用途に用いることができる。
こうして気泡を用いた転写プロセスで得られた凹レンズを備えた光学部材や、凸レンズを備えた光学部材は、単独で使用することもできるが、図2(c)に示すように、凹レンズや凸レンズを備えた表面上にさらに、単層あるいは複数の層をコーティングした積層構造の光学部材として使用することもできる。例えば、耐スクラッチ性のある保護層、またはレンズ部分の防汚性を高めるための保護層、あるいは紫外線のカットを目的とする耐候性を高める保護層を積層することもできるし、光学的な屈折率の調整のための樹脂層や透明セラミック層を積層することもできる。
なお、このような積層構造は、例えば図4(g)あるいは、図6(g)に示す工程で、構造体361、561から第2モールド331B、531Bを取り外さずに、そのまま残すことで積層構造を得ることもできる。
なお、第2モールド331B、531Bのみを水溶性樹脂等の特定の溶液に可溶な溶解性樹脂材料で形成した場合は、図4(g)あるいは、図6(g)に示す工程で、光学部材である構造体361、561を物理的に第2モールド331B、531Bから取り外す代わりに、第2モールド331B、531Bを溶媒で溶解する方法で、光学部材を得ることもできる。第2モールド331B、531Bの凹曲面332、532がオーバーハングした断面形状を有し、物理的に構造体361、561を取り外しにくい場合でも、第2モールド331B、531Bを溶媒で溶解することで、損傷を与えずに光学部材を得ることができる。
以上に、気泡を用いた転写プロセスにより得られる本実施形態の凹レンズもしくは凸レンズを備えた光学部材の製造方法について説明したが、上述する方法で得られる光学部材は、気泡の外形を転写した凹レンズもしくは凸レンズとその周囲を隔壁もしくは溝を有するものである。しかし、隔壁部分や溝部分に関しては、用途により必ずしもこれを必要としない場合には、プロセスの途中で、あるいは事後的にこれらを不必要な部分を機械的、物理的または化学的手段によって除去することもできる。
上述する本実施形態の光学部材は、従来のマイクロレンズアレイを代替するものとして拡散部材や、集光部材、あるいはライトガイド(導光板)等の光学部材として種々の用途に使用できる。プロセスが簡易であるとともに、気泡を転写したレンズ形状を有するため、滑らかで歪みの少ないレンズを提供できる。
また、本実施形態にかかる凸レンズと隔壁、あるいは凹レンズと溝を有する光学部材は、レンズのみならず隔壁や溝の形状を生かすことで、一般のマイクロレンズアレイのみでは得られない効果を得ることができる。
以下、本実施形態の光学部材を用いた具体的な用途例について説明する。
まず、本実施形態の光学部材を照明デバイスに適用する例について説明する。本実施形態の照明デバイスは、発光部材とその光出射側に配置された本実施形態の光学部材とを有するものであるが、特に、1よりも高い屈折率を持つ透明基材を介して光を射出する発光部材と、この透明基材上に配置された光学部材とを有する照明デバイスである。
発光部材としては、蛍光灯などの放電管を用いたもののほか、発光ダイオード(以下、「LED」という。)や有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」という。)等の発光素子を備えたものを例示できる。これらの照明デバイスにおいて、多くの場合、光源から射出される光は、ガラスや樹脂等の透明基材を介して大気中に射出される。例えば、放電管の場合は、ガラスの円筒管を介して光が射出される。LEDの場合には、表面実装型LEDと砲弾型LEDがあるが、いずれの場合も、発光光は屈折率約1.5のエポキシ樹脂層や屈折率約1.4のシリコーン層等の透明な封止樹脂を介して外部に射出される。有機ELの場合は、一般的に屈折率約1.5のガラス基板等の透明基材を介して外部に射出される。いずれも空気層の屈折率1に較べ、高い屈折率を持つ透明基材(以下、「高屈折率透明基材」という)を介して大気中に光を射出しているため、空気層との界面で反射が生じ易い。
LEDや有機ELは、その省エネルギー性から蛍光灯にかわる次世代の照明として注目されているが、高屈折率の透明基材と低屈折率の空気との界面において、多くの光を損失している。例えば、主な有機EL素子は、ガラス基板の上に、透明電極層、有機化合物層、背面電極層からなる積層構造を有し、透明電極から注入された正孔と背面電極から注入された電子が有機化合物層で再結合し、蛍光性物質などを励起することにより発光する。発生した光は、直接、または背面電極で反射して、ガラス基板を介して出射される。しかし、有機化合物層の屈折率が約1.7、透明電極の屈折率を約2.0、ガラス基板の屈折率を約1.5とすると、最終的に外部に取り出せる光は約20 %未満でしかない。このような低い光取り出し効率は、実質的な発光効率の低下をもたらしている。
本実施形態の照明デバイスは、発光部材を構成する、高屈折率透明基材上に本実施形態の光学部材を備えたものである。この照明デバイスによれば、上述するような高屈折率透明基材と空気層との界面で生じていた光の反射による光の取り出し効率の低下を改善できる。
図9(a)および図9(b)は、本実施形態の照明デバイス910と920の構成を示す部分的な概略構成図である。本実施形態の照明デバイスでは、発光部材913は、発光光源911からの光を、高屈折率透明基材912を介して外部に射出するが、この高屈折率透明基材912上に本実施形態の光学部材915あるいは916が配置される。
ここで、発光部材913とは、蛍光灯などの放電管、あるいはLEDや有機ELなどの発光素子、あるいは発光素子を構成要素の一部として含むもののいずれをもいうものとする。高屈折透明基材912は、屈折率が少なくとも空気の屈折率である1より大きく、1.3以上あるいは1.4以上の透明基材である。なお、透明基材の形状や厚みは特に限定がなく、板状、シート状、管状、砲弾状のほか、種々の形状をとりうる。また、透明基材の透明性に特に限定はないが、少なくとも発光部材から発光される光のうち、照明光として使用したい光の波長域において、50%以上、70%以上あるいはそれ以上の透明性を有すればよい。
ここで使用する光学部材としては、上述した転写面に複数の気泡を配列させたモールドを使用した本実施形態の転写プロセスを用いて形成したマイクロレンズアレイを主表面に有する光学部材であれば使用することができる。例えば、図9(a)に示すように、高屈折率透明基材912上に、凸レンズと各凸レンズ周囲に隔壁を備えた光学部材915を配置してもよい。あるいは、図9(b)に示すように、高屈折率透明基材912上に、凹レンズのレンズアレイと各凹レンズ周囲に溝を備えた光学部材916を配置してもよい。
図10(a)および図10(b)は、発光素子として有機ELを用いた照明デバイス1010、1020の例を示す。有機EL1015の構造は特に限定されないが、同図に示すように、一例として、ガラス基板1014、透明電極1013、有機化合物層1012、及び背面電極層1011からなる積層構造を有する有機ELを使用できる。この構造において、透明電極1013から注入された正孔と背面電極1011から注入された電子は、有機化合物層1012で再結合し、蛍光性物質などを励起することにより発光する。こうして発生した光は、背面電極層1011で反射した光と併せて、ガラス基板1014を介して出射される。ガラス基板1014上には、本実施形態の凸レンズとその周囲に隔壁を備える光学部材1021あるいは凹レンズとその周囲に溝を備える光学部材1022が配置できる。
本実施形態の照明デバイス1010または1020は、高屈折率透明基材1014上に光学部材1021や1022が配置されることで、凸レンズあるいは凹レンズのレンズアレイおよびそれらのレンズ周囲に形成される隔壁や溝の存在により、光取り出し効率を改善できる。すなわち、発光素子で生じた光が、高屈折率透明基材1014を介して直接空気層に射出される場合は、多くの光が空気層との界面で全反射されるため、光のロスが大きいが、本実施形態の光学部材1021あるいは1022を介して空気層に射出される場合は、光学部材1021あるいは1022の主表面の凹凸の存在により、空気層との界面で全反射される率を減らすことができる。その結果、全反射による光ロスを低減し、実質的な光取り出し効率を上げることができる。
さらに、本実施形態の光学部材1021および1022は、凸レンズあるいは凹レンズの持つ光拡散機能とそれらのレンズ周囲に形成される隔壁や溝の持つプリズムレンズ機能の相乗的な機能を発揮できるため、プリズムのみで構成された光学部材に比べより広い角度で均一な配光分布を持つ照明光を提供できる。すなわち、照明デバイスの中心正面輝度と周囲輝度の差を小さくできる。
また、主表面上に、凸レンズまたは凹レンズとその周囲にあるプリズムが最密充填状態で配列された光学部材1021または1022を使用した場合は、光学部材の主表面のほぼ全面が光学部材として機能するため、効果的に全反射による光ロスを抑制し、光取り出し効率を上げることができる。
なお、本実施形態の照明デバイスに適用する光学部材としては、凸レンズや凹レンズの大きさや形状に限定はなく、図1(a)〜図1(d)に示す光学部材、あるいはそれ以外の本実施形態の気泡を転写したプロセスを利用して作製できる種々の光学部材を使用できる。さらに、レンズ周囲の溝や隔壁をプリズムとして利用できる光学部材を利用すれば、より良好な配光分布を得ることができる。
また、凸レンズあるいは凹レンズの周囲に形成するプリズムの大きさや形状に限定はないが、一例として、プリズムの一頂角が50度以上、または70度以上、あるいは150度以下、または100度以下のプリズムを使用することができる。
なお、これらのプリズムは、本実施形態の光学部材の製造プロセスにおいて使用するベースモールドの型面に四角錐のみならず、三角錐、五角錐、六角錐、八角錐等の多角錐や円錐の凹部を持つものを使用することで得られる。また、例えば、図23に示すように、頂角θが異なる、2種の角錐あるいは円錐を積層した形状の凹部を持つベースモールドを利用することもできる。プリズムの頂角は主にベースモールドの凹部の傾斜面の角度が影響するため、凹部を構成する角錐や円錐の頂角が50度以上、または70度以上、あるいは150度以下、または100度以下のベースモールドを使用できる。
これらの凸レンズ、凹レンズの配列に特に限定はないものの、できるだけ稠密に凸レンズ、または凹レンズあるいはその周囲のプリズムレンズを配置できれば、より高い光利用効率を得ることができる。よって、製造時に使用するベースモールドは、型面に角錐や円錐からなる凹部を稠密に配列させたもの、好ましくは最密充填に配列させたものを使用する。
ここで使用される光学部材1021、1022の材質は、照明光として利用される光の波長において、60%以上、70%以上、あるいは80%以上の透過率を有する材質が使用できる。例えば、このような材質として、ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の各種合成樹脂やガラス等が挙げられる。また、その屈折率は限定されず、例えば1.2以上、もしくは1.3以上、あるいは1.8以下、もしくは1.9以下のものが使用できる。
本実施形態で使用する光学部材は、フレキシブルなシートとすることができ、その厚みは特に限定されないものの、光透過率等の観点からは、例えば、500μm以下、300μm以下の比較的薄いものを使用できる。
さらに、光学部材のシートの裏面上に粘着材層を備えていてもよい。粘着材層を備えることで、容易に光学部材を発光部材上に固定することができる。この場合、粘着材層としては、照明光として利用される光の波長において、60%以上、70%以上の透明性を有するものが望ましい。
粘着材層としては、例えばアクリル系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−酢酸ビニル(EVA)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等を挙げられる。粘着層の形成方法としては、グラビアコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、含浸コート法等の従来公知の方式で形成できる。
なお、光学部材として、一部のシリコーン樹脂のように、自己粘着性を有する材料を使用した場合は、粘着層なしでも光学部材を発光部材上に直接貼り付けることができる。
本実施形態の照明デバイスにおいて、発光素子として使用する有機ELの構造については、特に制限はなく、種々の有機ELに対し、使用できる。例えば、積層構造としては、1)透明電極/有機発光層/背面電極、2)透明電極/有機発光層/電子輸送層/背面電極、3)透明電極/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/背面電極、4)透明電極/正孔輸送層/有機発光層/背面電極、5)透明電極/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/背面電極、6)透明電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/背面電極等の積層構造が挙げられる。これらの有機ELは、ガラスや透明樹脂基板等の透明基板上に形成される。
本実施形態の照明デバイスによれば、有機ELに本実施形態の光学部材を貼り付けることで、例えば、最大発光強度比を1.1倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、あるいは約1.5倍に向上させることができる。また、積分強度比で、1.01倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、あるいは約1.3倍以上に向上させることができる。
以上に説明するように、本実施形態の照明デバイスによれば、本実施形態の光学部材を、照明用発光部材に適用することで、既存の拡散シートやプリズムシートを用いた場合よりも同等、またはそれ以上の輝度と光取り出し効率を得ることができ、発光体の長寿命化・省エネに寄与することができる。また、本実施形態の光学部材は、簡易で、大型化への適用も容易なプロセスで製造可能なため、大型照明デバイスへの適用も容易に可能である。
次に、本実施形態の光学部材をディスプレイデバイスに適用する例について説明する。本実施形態のディスプレイデバイスは、遮光パターンを構成要素のひとつとして有するディスプレイデバイスに、本実施形態の光学部材を集光部材として使用することで、遮光パターンにより生じる光ロスを抑え、光の利用効率を向上させることができる。
このような遮光パターンの代表的なものは、図11に示すような格子状遮光パターン1100であり、透過型液晶ディスプレイデバイスや、背面投射型プロジェクタ用のスクリーンなどで用いられている。例えば、液晶ディスプレイパネルでは、各液晶素子に対応し、赤、緑、青の三色の画素が周期的に配列したカラーフィルタを有し、光が各画素を通過することによりカラー化を実現しているが、各画素の境界での混色によるコントラストの低下を防止するため、画素のパターンに対応した境界部分を遮光する、格子状の遮光パターン、いわゆるブラックマトリックスが広く採用されている。また、背面投射型プロジェクタ用のスクリーンにおいては、外光反射によるコントラストの低下を抑えるためにスクリーン上に遮光パターンが形成されている。
いずれの場合も、遮光パターンの使用が、画像のコントラストを上げることに有効であるが、その一方で、遮光パターンの存在により光の利用効率は低下する。本実施形態のディスプレイデバイスでは、このような遮光パターンを持つディスプレイデバイスにおいて、遮光パターンの入射光側に本実施形態の光学部材を配置することで、光学部材の集光機能を利用し、遮光パターンの開口部を透過する光量を増加させ、光の利用効率を改善することができる。
図12(a)は、本実施形態の光学部材を使用した本実施形態のディスプレイデバイス1200における概略的な部分構成図である。本実施形態のディスプレイデバイス1200では、例えばバックライトデバイス1210とブラックマトリックス1240間に本実施形態の光学部材1230を配置する。
ブラックマトリックス1240上には、液晶素子等の画像素子が二次元に配列されたディスプレイパネル1250が配置される。ディスプレイパネル1250の具体的構成については図示していないが、一対の基板間に液晶層を備え、一方の基板に共通電極層とTFT(Thin Film Transistor)スイッチング素子を備え、他方に透明電極層を備えた液晶ディスプレイパネルが例示できる。なお、ブラックマトリックスの遮光部1241が形成されている基板1242にフィルタ層および共通電極層が形成されてもよい。また、この基板1242は、透明フィルムでもガラス基板でもよい。
バックライトデバイス1210は、冷陰極管やLED等の光源1211と導光板(ライトガイド)1212を有する。なお、光源1211は、図12に示すようにライトガイド1312の端部に配置される場合以外に、ライトガイド1212の直下に配置されてもよい。バックライトデバイス1210と光学部材1230の間には、必要に応じてターニングフィルム1221や位相差板1222、あるいは、拡散板や偏向板(図示せず)等を配置できる。
図12(b)は、ブラックマトリックス1240の遮光部1241と本実施形態の光学部材の構成例を示す部分断面図である。同図に示すように、凸レンズ1231およびその周囲の隔壁部であるプリズム部1232を持つ光学部材1230を使用する場合は、凸レンズ1231の中心がほぼブラックマトリックス1240の開口部1243にくるよう配置される。バックライトデバイス1210から射出し、ターニングフィルム1221等により指向性をもった光は、光学部材1230の凸レンズ1231、およびプリズム部1232でそれぞれ集光され、従来は遮光部1241により吸収または反射され、有効に利用されていなかった光をブラックマトリックス1240の開口部1243に導き、ブラックマトリックスを透過させる。こうして、ブラックマトリックスの実質的な透過率を向上させる結果、光利用効率を改善することができる。
図13は、ブラックマトリックス1240の格子状遮光パターンと光学部材1230の配置関係を示す部分的な正面図である。同図に示すように、ブラックマトリックスの遮光部1241の格子パターンに対応したレンズ配列パターンを有する光学部材1230を使用することが望ましい。例えば、ブラックマトリックスの格子状遮光パターンの図中縦横二方向の格子パターンピッチPB1、PB2が、光学部材1230の凸レンズ1231の図中縦横二方向の配列パターンそれぞれのピッチPL1、PL2の整数倍になるように調整し、両者のパターンが前後で揃うように配置させることが好ましい。
例えば、図13において、ブラックマトリックスの横方向の遮光部1241の格子パターンピッチをPB1、縦方向の遮光部1241の格子パターンピッチをPB2とする場合に、光学部材として、ピッチPL1の正方格子配列パターンを有し、横方向において、遮光部1241の格子パターンピッチPB1と同一ピッチPL1を有し(PB1=PL1)、縦方向において、遮光部1241の格子パターンピッチPB1の1/3のピッチPL1(PB2=3*PL1)を有するものを使用すれば、ブラックマトリックスの格子状遮光パターンと光学部材のレンズ配列パターンを揃えて配置できる。
なお、本実施形態のディスプレイデバイスに適用する光学部材としては、図12(b)等に示す凸レンズとその周囲に隔壁を有する形状のものだけでなく、同様な集光機能が発揮できるものであれば、図1(a)、図1(b)および図1(d)に示す光学部材、またはそれ以外の本実施形態の気泡を転写したプロセスで作製できる種々の光学部材を使用できる。
本実施形態の光学部材は、ディスプレイで使用される光の波長域で透明であることが望ましい。例えば、可視域(400nm〜800nm)の波長域において、50%以上、70%以上、あるいは80%以上の透過率を示すものを利用できる。
また、本実施形態のディスプレイデバイスにおいて、使用する光学部材の配置は、図12(b)に示すものに限られず、集光機能を引き出せればよく、レンズが形成されている光学部材の主表面がバックライト1210側を向いて配置しているものばかりでなく、ディスプレイパネル1250側に向いて配置しているものも使用できる。
なお、本実施形態のディスプレイデバイスで、より光利用効率をあげるには、光学部材の焦点距離を、ブラックマトリックスとの距離に応じて、調整することが望ましい。凹レンズ、凸レンズの焦点距離の調整は、レンズの曲率を変えることやレンズを構成する材料の屈折率を調整することで可能であり、これらは転写プロセスにおいて、ベースモールドに捕捉される気泡の大きさと形状を調整することで制御することが可能である。また、凹レンズ、および凸レンズ周囲の溝や隔壁で構成されるプリズムによる集光機能は、ベースモールドの凹部の傾斜面の角度を調整することやプリズムを構成する材料の屈折率を調整することで制御することが可能である。
一方、図2(c)に示すように、光学部材の主表面上に屈折率の異なる被覆層を設けることで、焦点距離を調整することも可能である。例えば、光学部材より低屈折率の層を被覆層として積層した場合は、空気層と光学部材との界面での屈折角より被覆層と光学部材との界面での屈折角を小さくできるため、凸レンズおよびプリズムの焦点距離を長くすることができる。例えば、光学部材を屈折率1.5のアクリル樹脂で形成し、この主表面上に屈折率1.4のシリコーン樹脂を積層することで実質的な焦点距離を長くすることができる。
以上に説明するように、本実施形態のディスプレイデバイスでは、透過型液晶ディスプレイデバイスや、背面投射型プロジェクタ用のスクリーンなどで用いられているブラックマトリックスと本実施形態の光学部材を組み合わせることで、ブラックマトリックスの実質的な透過率を上げ、ディスプレイの光利用効率を向上させることができる。
次に、本実施形態の光学部材を導光部材(ライトガイド)として使用する例について説明する。特に、入力デバイス用のライトガイドとして使用する例について説明する。
一般に、ライトガイドとは、端部より入射した、冷陰極管などの線光源や,発光ダイオード(LED)など点光源からの光を所定方向に導くものをいう。液晶ディスプレイのバックライトデバイスで使用されている板状のライトガイドは、点光源や線光源からの光を面発光に変更するために用いられている。また、最近では、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の入力キー部分の照明等にも利用されている。
これらのライトガイドの表面には、通常、光を所定方向に導出する機能を備える微細な凹凸が形成されている。従来これらの凹凸は、印刷によりドットを形成する方法、エンボスをプレス形成する方法、研削加工で形成した金型を用いて凹凸を転写する方法が知られているが、本実施形態のライトガイドは、本実施形態の光学部材をライトガイドとして使用するものである。ライトガイド表面の凹凸として、気泡を転写して得られる凹レンズまたは凸レンズ、あるいは各レンズの周囲の溝や隔壁を利用できる。気泡を転写して形成するレンズ面は、プロセスが簡易なうえ、極めて滑らかなレンズ面を提供でき、レンズ表面の粗れによる光の散乱ロスも少ない。
図14(a)〜図14(c)に、本実施形態の光学部材を用いたライトガイドの一例として、携帯電話用の入力キーの照明に使用されるライトガイドを示す。図14(a)は、ライトガイドの構成例を示す斜視図である。ライトガイド1400は、携帯電話の入力キーの位置に対応した場所に光導出領域1410を持つ。各光導出領域1410は、対応する入力キーと略同様な平面形状と面積を有し、領域内には、図14(b)に示すように、例えば、多数の微細な凹レンズ1420が配列されている。
図14(c)は、光導出領域1410の形状の一例を示す部分断面図である。同図に示すように、光導出領域1410には、気泡を用いた転写プロセスで形成された複数の凹レンズ1420とその周囲の溝1430が形成されている。なお、溝1430の側面1431は、傾斜面を有し、プリズム機能を発揮できる。例えばここで使用できる凹レンズの径としては、約10μm以上、1mm以下、代表的には、約30μm以上、100μm以下を例示できる。各光導出領域1410内には、これらの凹レンズが数十以上、あるいは100以上、必要に応じて形成される。
図15は、本実施形態の光学部材を用いた上述するライトガイドを、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の入力キーを必要とする携帯端末で使用される入力デバイスに実装した例を示す、入力デバイスの部分断面図である。同図に示す入力デバイス1500では、複数の入力キー1510が配列された入力面の下に、各入力キーに対応して、入力キー1510が押圧されると変形するドーム状の金属部材(メタルドーム)1560が配置されている。さらにこれらのメタルドーム1560は、メタルドームに沿ったドーム状形状を持つドームシート1550により被覆されている。同図に示すように、例えば、ライトガイド1520は、入力キー1510とドームシート1550の間に配置できる。このライトガイドの端面横には、1または複数の発光ダイオード等の光源1530が配置される。光源1530から出た光は、ライトガイド1520の端面よりライトガイド1520内に入り、複数の凹レンズ1521を有する光導出領域で、入力キー1510領域方向に導出され、各入力キー1510を照明する。
ここで使用される本実施形態のライトガイド1520としては、光源1530から生じた光の波長に対し透明性を有し、入力キー1510の押圧により上下に移動するメタルドーム1560の動きに応じて変形可能な可とう性を有する、シート状の本実施形態の光学部材が使用できる。
また、本実施形態のライトガイドとして使用する光学部材のように、入力キーの配置に対応して、所定領域に高密度に複数の凹レンズまたは凸レンズを配置する場合は、製造時に使用するベースモールドとして、これに対応する凹部パターンを有するものを使用できる。例えば、金属シートと樹脂層から構成される二層構造シートのうち、樹脂層の所定部分をレーザ加工で開口して凹部を作製する方法等を用いれば、容易に所望の凹部パターンを有する、図7(c)に示すようなベースモールドを準備できる。
以上に説明するように、本実施形態の光学部材をライトガイドとして使用することができる。特に、入力キー等の特定部位を照明するためのライトガイドとして使用する場合等は、複数の凹レンズまたは凸レンズの集合パターンを所定領域に配置したシート状の本実施形態の光学部材をライトガイドとして提供できる。また、本実施形態の光学部材は、個々の凹レンズおよび凸レンズが、気泡を転写する方法で形成された滑らかなレンズ曲面を有するため、光の散乱ロスが少なく、光利用効率の高いライトガイドを提供できる。
なお、ライトガイドは、上述する携帯電話やパーソナル用コンピュータ以外でも、種々の用途で使用されている。用途に応じて必要となるレンズの配列パターンを変更することで、本実施形態の光学部材を種々の他の用途のライトガイドとして使用することも可能である。
以上に、本実施形態の光学部材の具体的な用途例について説明したが、本実施形態の光学部材は、上述された記載の用途に限定されるものではなく、光学部材単独で、あるいは他の部材と組み合わせることで、様々な光学用途で使用できる。例えば、各種ディスプレイデバイスや投射型スクリーン等の光学用途など、一般のマイクロレンズアレイシートや、プリズムシート等が用いられる用途でも使用することができる。また、ガラスビーズを用いた光拡散材の代替や、再帰性反射材等の光学用途にも使用することができる。
以下に、本発明の光学部材およびそれらを用いたデバイスの実施例について説明するが、本発明の範囲がこれらに限定されるものではないことはいうまでもない。
<実施例1−1>
凹レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。
硬化可能な流体として、紫外線硬化性樹脂を使用した。この紫外線硬化性樹脂は、ポリエステル系ウレタンアクリレートモノマー(商品名:EBECRYL8402、ダイセルサイテック(株)製)90重量部と、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε−カプロラクトン(商品名:Placcel(商標) FA2D、ダイセル化学(株)製)10重量部と、光重合開始剤(商品名:Irgacure 2959、CIBA Specialty Chem. Inc.製)1重量部を混合することで調製した。
一方、ポリプロピレン製ベースモールドを以下の方法で準備した。まず、カッティングマシンにより、銅板表面に溝を形成した。この銅板を酸化剤中に浸漬し、銅板表面を酸化した後、電着法を用いて、酸化した銅板表面にニッケル層を形成した。この後、このニッケル層を銅板から取り外し(離型し)、型面に凹部を有するニッケル製モールドを得た。その後、このニッケル製モールド表面に電着法を用いて、ニッケル層を形成した。この後、ニッケル層をニッケル製モールドから離型し、型面に凸部を有するニッケル製モールドを得た。ポリプロピレン樹脂(商品名:POLYPRO3445、エクソンモービル社製)を200℃〜250℃の温度で溶融したものを、型面に凸部を有するニッケル製モールドの型面に流し入れ、室温(約25℃)まで冷却し、ポリプロピレン樹脂を硬化させ、硬化層を形成した。この硬化層をニッケル製モールドから離型し、ポリプロピレン製ベースモールドを得た。こうして、深さ50μm、頂角90度、底面が一辺100μmの正方形である四角錐状の凹部が100μmピッチで正方格子状に配列したパターンを型面に持つ、可とう性のあるポリプロピレン製シート状ベースモールドを準備した。
このシート状ベースモールドから、幅8cm、長さ10cmの矩形小片を切り出した。このベースモールド小片を、厚み50μm、幅15cm、長さ30cmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:TEIJIN TETRON FILM A31、帝人デュポン社製)上に、型面が露出するように、両面テープ(商品名:スコッチ(登録商標)テープ ST-416、3M社製)で貼り付けた。
厚み50μm、幅15cm、長さ30cmの上述と同じ材質のPETフィルムを、透明なカバーフィルムとして準備し、上述するPET上のベースモールドの型面に被せるように置いた後、2枚のPETフィルムの片側端部をマスキングテープ(商品名:スコッチ(登録商標)シーリング・マスキングテープ 2479S、3M社製)で貼りあわせた。
カバーフィルムの片側端部を上述するPETフィルムに固定したまま、カバーフィルムを開いて、ベースモールドの型面を露出させ、液状の紫外線硬化性樹脂をベースモールドの凹部が形成されている領域に沿って、約10cc滴下した。紫外線硬化性樹脂の粘度は、約10,000mPas (B型粘度計で測定)であった。
この状態で、ベースモールドを貼り付けたPETフィルムとカバーフィルムをナイフコーター装置にセッティングした。ベースモールド表面とブレード(ナイフ)のエッジとのギャップを200μmとなるようにブレードのエッジ高さを調整し、約16cm/secの一定速度(「コーティングスピード」という)でブレードの下を移動させながら、紫外線硬化性樹脂をベースモールドの凹部のある型面上に塗り広げた。コーティング速度にあわせ、カバーフィルムも一緒にブレードの下を移動させることで、コーティング層をカバーフィルムでラミネートした。このコーティング中、ベースモールドの各凹部には気泡が捕捉された。コーティング後のベースモールド表面には、紫外線硬化性樹脂のコーティング層が形成されるとともに、コーティング層の上をカバーフィルムでラミネートした状態が得られた。
その後、紫外線ランプ(ウシオ電機製)を用いて、透明カバーフィルムを介してコーティングされた紫外線硬化性樹脂に対し、3450mJ/cm2の紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を重合硬化させた。この後、この硬化層をカバーフィルムとともにポリプロピレン製のベースモールドから離型した。こうして、気泡が転写された凹レンズを有する光学部材(配列凹部パターンを有する構造体)を得た。得られた光学部材の表面のSEM撮像写真を図16に示す。
<実施例1−2>
凸レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。
硬化可能な流体として、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(商品名:クラレポバールPVA-217、(株)クラレ製)を20重量部、蒸留水80重量部を混合し、PVA−217の20wt%水溶液を調製した。実施例1−1で製造した配列凹部パターンを有する構造体を第2モールドとして用いた。この第2モールドの上に硬化可能な流体としてPVA−217の20wt%水溶液を、配列凹部パターン上に滴下した。この後、気泡欠陥を防ぐため、周囲を約15分、1000Pa以下に減圧することで脱泡を行った。続けて、ナイフコーターを用いて硬化可能な流体を塗り広げ、厚み200μmのコーティング層を得た。得られたコーティング層を、60℃のオーブンの中で2時間乾燥させた後、更に室温(約25℃)で、一晩(約12時間)乾燥させて硬化層を形成した。この後、第2モールドから硬化層を離型した。こうして、気泡形状が転写された凸レンズを有する光学部材(配列凸部パターンを有する構造体)を得た。得られた配列凸部パターンのSEM撮像写真を図17に示す。
<実施例1−3>
凹レンズアレイを有する光学部材を作製した。
実施例1−1と同じ紫外線硬化性樹脂を用い、ただし硬化開始までの時間、すなわち紫外線硬化性樹脂をコーティング後、紫外線照射させるまでの時間を0分、30分、60分とする硬化条件で3種の光学部材を作製した。それ以外は、実施例1−1と同様な製造条件を使用した。こうして得られた3種の光学部材を走査型電子顕微鏡(VE-7800、キーエンス(株))で撮影し、この画像(以下、SEM画像という)から凹レンズの平均直径を測定した。得られた凹レンズをほぼ垂直上方から観察したSEM画像における、凹レンズの最大直径を5箇所以上で測定し、その平均値を凹レンズの平均直径とした。
硬化開始までの時間が0分、30分、60分の場合、得られた凹レンズの平均直径はそれぞれ、78.7μm、78.4μmおよび78.0μmであった。
<実施例1−4>
凹レンズアレイを有する光学部材を作製した。
ベースモールドとして、凹部形状が四角柱のニッケル製シートを使用した。具体的には、底面が一辺115μmの正方形、深さ80μmの四角柱形状の凹部が、ピッチ140μmで正方格子状に配列されたパターンを型面に持つニッケル製シートを準備した。なおニッケル製シートは、実施例1−1で記載した方法で作製した。
ニッケル製ベースモールドを用いた以外は実施例1−1と同様の条件で光学部材を作製した。得られた光学部材(配列凹部パターンを有する構造体)は、実質的に同一形状の凹レンズが複数配列したパターンを有し、各凹レンズ周囲は溝で囲まれていた。
<実施例1−5>
実施例1−4で得られた光学部材(配列凹部パターンを有する構造体)を第2モールドとして使用し、実施例1−2と同様の条件を用いて、気泡を転写した凸レンズアレイを有する光学部材を作製した。
得られた光学部材は、実質的に同一形状の凸レンズが複数配列したパターンを有し、各凸レンズ周囲には隔壁が形成されており、隔壁の側面は、ほぼ光学部材の主表面方向に対し略垂直なものであった。
<実施例1−6>
凹レンズアレイを有する光学部材を作製した。
ベースモールドとして、四角錐台の凹部形状を持つ、ニッケル製シートを使用した。具体的には、底面が一辺25μmの正方形であり、上面が一辺50μmの正方形である四角錐台からなる凹部を、50μmピッチで正方格子状に配列されたパターンを型面に有するニッケル製ベースモールドを使用した。なおニッケル製シートは、実施例1−1に記載した方法で作製した。それ以外は、実施例1−1と同様の条件を使用して、気泡が転写された凹レンズアレイを有する光学部材を作製した。
<実施例1−7>
実施例1−6で得られた光学部材(配列凹部パターンを有する構造体)を第2モールドとして使用し、凸レンズアレイを有する光学部材を作製した。
硬化可能な流体として、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(商品名:クラレポバールPVA−205、(株)クラレ製)を15重量部、蒸留水85重量部を混合し、PVA−205の15wt%水溶液を調製した。このPVA−205の15wt%水溶液を使用し、それ以外の条件は実施例1−2と同様の条件を用いて、気泡が転写された凸レンズアレイを有する光学部材を作製した。
<比較例1>
紫外線硬化性樹脂をコーティングした後、真空下で15分間放置することにより、コーティング時に捕捉した気泡の脱泡処理を行なった。それ以外は実施例1−1と同様の条件で構造体を作製した。得られた構造体には、気泡が転写された凹レンズは形成されず、ベースモールドの凹部形状がそのまま転写された凸状四角錐(ピラミッド形状)が形成された。
<実施例2−1>
凹レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。
硬化可能な流体として、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(商品名:クラレポバールPVA-205、(株)クラレ製)を20重量部、蒸留水80重量部を混合し、PVA−205の20wt%水溶液を調製した。樹脂の種類以外は実施例1−1と同様の条件を用いて、ベースモールド上に樹脂をコーティングし、コーティング層を形成した。具体的には、ナイフコーターを使用し、16cm/secのコーティング速度で、ベースモールドの周囲の空気を捕捉しながら、ベースモールドの上に水溶性樹脂の水溶液をコーティングして、コーティング層を形成した。
続いて、このコーティング層を、60℃のオーブンの中で2時間乾燥させ、更に室温(約25℃)で、一晩(約12時間)乾燥させて硬化層を形成した。その後、硬化層をベースモールドから離型し、水溶性樹脂からなる凹レンズアレイを有する光学部材(配列凹パターンを有する構造体)を得た。得られた光学部材の凹レンズの曲率は、実施例1−1と比較し小さかった。
<実施例2−2>
凸レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。
上記実施例2−1で製造した凹曲面を有する構造体を第2モールドとして用い、この第2モールド上に、実施例1−1で使用したものと同じ紫外線硬化性樹脂を200μmの厚さにコーティングし、その上に剥離処理をした厚み50μmのPETフィルムをラミネートした。
実施例1−1で用いたものと同様の紫外線ランプを用いて、剥離処理PETフィルム側から3450mJ/cm2の紫外線を照射させることにより、紫外線硬化性樹脂を重合させて、硬化層を形成した。その後、硬化層を第2モールドから離型させて、紫外線硬化性樹脂からなる凸レンズ配列を有する光学部材を得た。
<実施例2−3>
大きさの異なる6種の凹レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。
硬化可能な流体として、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(商品名:クラレポバールPVA-205、(株)クラレ製)と蒸留水とを混合し、それぞれPVA−205の5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%の各水溶液を調製した。カタログ値から算出した各水溶液の粘度を表1に示す。各水溶液の調製後、実施例2−1と同様の条件で、ポリプロピレン製のベースモールド上に、16cm/secのコーティング速度で、ベースモールド周囲の空気を捕捉しながら、各濃度の水溶性樹脂の水溶液を200μmの厚さにコーティングして、コーティング層を形成した。その後、コーティング層を60℃のオーブンの中で2時間乾燥させた後、更に室温(約25℃)で、一晩(約12時間)乾燥させて、硬化層を形成した。その後、硬化層をベースモールドから離型し、凹レンズアレイを有する6種の水溶性樹脂からなる光学部材を得た。
こうして得られた各光学部材のSEM画像を撮影し、撮影画像から、得られた凹レンズの平均直径を実施例1−3と同じ方法で測定した。結果を表1に示す。
<実施例2−4>
大きさの異なる6種の凹レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。
硬化可能な流体として、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(商品名:クラレポバールPVA−205、(株)クラレ製)の20wt%の水溶液を調製した。実施例1−1と同じポリプロピレン製のベースモールドを用いて、16cm/secのコーティング速度で、モールドの周囲の空気を捕捉しながら、ベースモールドの上に水溶性樹脂の水溶液を200μmの厚さにコーティングした6つのサンプルを準備した。
その後、各サンプルを表2に示す各温度条件に調整したオーブンで2時間乾燥し、さらに室温(約25℃)で、一晩(約12時間)乾燥し、硬化層を形成した。その後、硬化層をベースモールドから離型させて、水溶性樹脂からなる凹曲面を有する6種類の光学部材を得た。こうして得られた各光学部材のSEM画像を各光学部材の上面から撮影し、撮影画像から、得られた凹レンズの上面から観察した平均直径を実施例1−3と同じ方法で測定した。結果を表2に示す。
<実施例2−5>
大きさの異なる3種の凹レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。
硬化可能な流体として、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(商品名:クラレポバールPVA205、(株)クラレ製)の20wt%の水溶液を調製した。この水溶液を、表3に示すコーティング速度で、ベースモールドの周囲の空気を捕捉しながらコーティングして、コーティング層を形成した。コーティング速度以外のコーティング条件は、実施例2−1と同様の条件を用いた。このコーティング層を60℃のオーブンの中で2時間乾燥させ、更に室温(約25℃)で、一晩(約12時間)乾燥させて、硬化層を形成した。その後、この硬化層をベースモールドから離型させて、水溶性樹脂からなる凹レンズアレイを有する光学部材(配列凹パターンを有する構造体)を得た。
こうして得られた各光学部材のSEM画像を撮影し、撮影画像から得られた凹レンズの平均直径を実施例2−3と同様の方法で求めた。結果を表3に示す。
<実施例3−1>
凹レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。
硬化可能な流体として、熱可塑性樹脂であるポリエチレン(商品名:LDPE C13、イーストマンケミカルジャパン(株)製)3gを準備した。ベースモールドとして、型面に、深さ25μm、頂角90度、底面が一辺50μmの正方形である四角錐状の凹部を50μmピッチで、正方格子状に配列したパターンを型面に持つニッケル製シートを用いた。なお、このベースモールドは実施例1−1に記載する方法で作製した。
ヒートナイフコーターを用いて、このベースモールドの上に加熱溶融させた上記の熱可塑性樹脂をコーティングして、コーティング層を形成した。具体的には、樹脂が十分な流動性を有するだけの温度(140℃)に加熱し、16cm/secのコーティング速度で、ベースモールドの周囲の空気を捕捉しながら、ベースモールドの上に厚さ200μmのコーティング層を形成した。
その後、ベースモールドと共にこのコーティング層を、室温(約25℃)まで冷却して硬化層を形成した。その後、この硬化層をニッケル製ベースモールドから離型させて、熱可塑性樹脂からなる凹レンズアレイを有する光学部材(配列凹部パターンを有する構造体)を得た。
<実施例3−2>
凸レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。
実施例3−1で製造した光学部材(配列凹部パターンを有する構造体)を第2モールドとして用い、この第2モールドの上に、実施例1−1と同様の紫外線硬化性樹脂を200μmの厚さにコーティングし、更に厚み50μmの剥離処理されたPETフィルムでラミネートした。
実施例1−1と同じ紫外線ランプを用いて、剥離処理されたPETフィルム側から3450mJ/cm2の紫外線を照射することにより、紫外線硬化性樹脂を重合させて、硬化層を形成した。その後、この硬化層を第2モールドから離型させて、紫外線硬化性樹脂からなる凸レンズアレイを有する光学部材(配列凸部パターンを有する構造体)を得た。
<実施例4−1>
各レンズの平面形状が一方向に伸びた形状の凹レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。
ベースモールドとして、短辺長さ80μm、長辺長さ320μmの長方形であり、深さ120μmの凹部が格子状(短辺方向ピッチ:120μmに、長辺方向ピッチ:360μm)に配列されたパターンを持つシリコーン樹脂(商品名:TSE3466、GE東芝シリコーン社製)製ベースモールド(凹部パターン形成エリア面積:691mm×378mm)を使用した。なお、このベースモールドは、実施例1−1と同様な手順で研削加工によりSUS製の板に溝を形成したものを用いて作製した。
硬化可能な流体として、紫外線硬化性樹脂を使用した。この紫外線硬化性樹脂は、ポリエステル系ウレタンアクリレートモノマー(商品名:EBECRYL8402、ダイセルサイテック(株)製)90重量部と、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε−カプロラクトン(商品名:Placcel(商標)FA2D、ダイセル化学(株)製)10重量部と、光重合開始剤(商品名:Irgacure 2959、CIBA Specialty Chem.Inc.製)1重量部を混合して調製した。
コーティング装置として、ラミネートローラーを使用した。ベースモールド表面に上記紫外線硬化性樹脂を滴下し、その上にPETフィルムをラミネートし、このPETフィルム上にローラを回転させながら相対的にベースモールド凹部の長辺と平行な方向に移動させ、紫外線硬化性樹脂をベースモールド全面に塗り広げた。なお、ローラの荷重が直接ベースモールドにかからないよう、スペーサを使用しPETフィルムとローラとのギャップを500μmに調整した。ローラの移動速度は、100mm/secとした。こうして、ベースモールドの各凹部に気泡を捕捉するとともに、ベースモールド上にコーティング層を形成した。この後、PETフィルムを介して3450mJ/cm2の紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を重合硬化し、硬化層を形成した。この後、硬化層をシリコーン製ベースモールドから離型し、凹レンズとその周囲に溝を有する光学部材(配列凹パターンを有する構造体)を得た。
得られた光学部材のSEM撮像写真を図18に示した。ベースモールドの各凹部形状に応じた一方向に伸びた凹曲面を持つレンズアレイが得られた。
<実施例4−2>
実施例4−1で作製した光学部材(配列凹パターンを有する構造体)を第2モールドとして使用し、各レンズの平面形状が一方向に伸びた凸レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。
常温硬化型シリコーン樹脂(商品名:ELASTSIL RT601、2液タイプ(混合重量比:A液:B液=90:10)、旭化成ワッカーシリコーン社製)を第2モールド上に実施例1−2と同様な条件で、コーティングし、コーティング層を室温(約25℃)で、一昼夜(約24時間)放置することで硬化した。硬化層を第2モールドから離型し、配列凹部パターンを反転させた配列凸部パターンを有する光学部材を得た。得られた光学部材のSEM撮像写真を図19に示した。ベースモールドの各凹部形状に応じた一方向に伸びた形状の凸レンズアレイが得られた。
<実施例5−1>
気泡を転写して得られた凸レンズアレイを有する光学部材を有機ELパネルにラミネートした照明デバイスを作製した。光学部材は、以下の条件で作製した。
ベースモールドとして、頂角90度、底面が一辺100μmの正方形である四角錐状の凹部を100μmピッチで正方格子状に配列させたパターンを型面に持つ50mm角の大きさのニッケル製ベースモールドを準備した。なお、このニッケル製ベースモールドは、実施例1−1に記載の方法で作製した。
このニッケル製ベースモールド表面を以下の条件でプラズマ処理を行った。すなわち、まず真空RFプラズマ処理装置(商品名:WAF’R/BATCH7000シリーズ、Plasma-Therm社製)のチャンバー内の試料台に上記ベースモールドを設置し、チャンバーを密閉した。チャンバー内圧をロータリーポンプで、10mTorr(1.333Pa)以下に減圧した後、マスフローメータを用いて、チャンバー内にテトラメチルシラン(TMS)を300SCCM(Standard CC per min)および酸素(O2)を30SCCM流した。なお、ここで、「SCCM」とは、1気圧(1,013hPa)、25℃における流量(CC/min)を意味する。流量が安定した後、バタフライバルブを調整して、チャンバー内を約100mTorr(13.33Pa)に調整した後、1000Wの出力でプラズマ処理を30秒間行った。チャンバー内を大気に開放し、プラズマ処理されたベースモールドを取りだした。
硬化可能な流体として、実施例1−1で使用したものと同じ紫外線硬化性樹脂を使用し、上述の条件でプラズマ処理を行ったベースモールド上にコーティングした。なお、コーティングは、実施例1−1と同様に、ナイフコーターを用いて、16cm/secのコーティング速度で、150μmの厚さにコーティングし、プライマー(商品名:N−200、住友スリーエム株式会社製)をコーティングした250μm厚のPETフィルムでラミネートした。その後、プライマー処理済のPETフィルム側よりUVランプを用いて3450mJ/cm2の紫外線を照射することによって、紫外線硬化性樹脂を硬化させた。この後、ニッケル製ベースモールドから硬化層を離型し、気泡が転写された配列凹部パターンを有する構造体(第1構造体)を得た。
次に上述するプロセスで得られた配列凹部パターンを有する第1構造体を第2モールドとして使用し、実施例1−2で使用したものと同様の水溶性樹脂である20wt%PVA−217水溶液を調製し、第2モールド上にコーティングし、脱泡を行った。コーティングは、実施例1−2と同様に、ナイフコーターを用いて、16cm/secのコーティング速度で、500μmの厚さにコーティングした。この後、60℃のオーブン中で2時間乾燥させた後に、室温(約25℃)で、一晩(約12時間)放置し、乾燥させた。乾燥後の硬化層を第2モールドより離型し、第1構造体を反転させた配列凸部パターンを有する構造体(第2構造体)を得た。
さらに、上述するプロセスで得られた配列凸部パターンを有する第2構造体を第3モールドとして使用し、第3モールド上に、常温硬化型シリコーン樹脂(商品名:ELASTSIL RT601、2液タイプ(混合重量比:A液:B液=90:10)、旭化成ワッカーシリコーン社製)をコーティングし、脱泡した。コーティングは、実施例1−2と同様に、ナイフコーターを用いて、16cm/secのコーティング速度で150μmの厚さにコーティングし、厚さ38μmの離型剤付きPETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム社製)でラミネートした。コーティング後、室温(25℃)で24時間放置し、硬化させた。硬化層を第3モールドから離型し、配列凹部パターンを有する構造体(第3構造体)を得た。
この第3構造体を第4モールドとして使用するとともに、硬化時の屈折率が1.56となるように調製されたウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化性樹脂を使用し、実施例1−2と同様な条件で、コーティングおよびコーティング後の樹脂の硬化を行い、第4モールドから離型することで、屈折率1.56の配列凸部パターンを有するアクリル樹脂からなる光学部材を得た。得られた光学部材のSEM撮像写真を図20に示した。
図22(a)に、得られた光学部材2400の平面概略図、図24(b)に、断面概略図を示す。同図に示すように、光学部材2400には、ベースモールドを用いた最初の転写工程で気泡を転写して得られた、ほぼ半球状の凸レンズ2410とともに、その周囲にベースモールドの凹部を構成する四角錐の傾斜面が転写されたプリズム部2420が形成された。SEM画像より、図22(a)および図22(b)中に示す光学部材2400の各寸法を測定した。レンズ最大直径dlensが63.0μm、レンズ曲率半径rが32.3μm、プリズム部最少幅Lprismが18.5μm、レンズ高さhlensが42.9μm、プリズム頂角θpが90度、プリズム高さhprismが21.0μm、光学部材の厚みtが150μmであった。それぞれの数値は、顕微鏡写真からランダムに五か所を抽出して測定し、その平均値をとったものである。
一方、大きさ140mm×140mmの有機ELパネル((財)有機エレクトロニクス研究所製)を入手した。この有機ELパネルは、照明用途のため開発された面発光体であり、発光色は赤色であった。屈折率1.53のソーダガラス基板上に有機発光素子が形成されており、この有機EL素子層は、ガラス基板側より透明電極(ITO層)/有機正孔注入層/有機正孔輸送層/有機発光層/有機電子注入・輸送層/金属電極層、の順に配置された積層構造を持つものであった。
上記有機ELパネルのガラス基板上に、まず屈折率1.56の屈折液(商品名:接触液、株式会社島津デバイス製)を発光体表面に数滴滴下し、ローラを用いて手動で発光面全体に塗り広げた。続いて、屈折液を介して界面に空気が入らないよう注意しながら、ガラス基板上に上述した屈折率1.56のアクリル樹脂からなる光学部材を、レンズ形成面(主表面)が光射出側になるよう(図10(a)と同様な配置)貼り付け、照明デバイスを得た。
この照明デバイスの有機ELパネルに、9.5Vで0.03Aの電流を流し発光させ、輝度および配光特性を光学測定装置(商品名:EZ Contrast 160R、ELDIM社製)を用いて測定した。なお、比較のため、上述する光学部材を取り付けず、有機ELパネルのみで発光させた場合の全光束と最大発光強度比をそれぞれ100%とした。光学部材を取り付けた照明デバイスでは、取り付け前と比較して積分強度比で126%、最大発光強度比で146%の値に向上した。測定した結果を表4及び図21に示す。
<実施例5−2>
気泡を転写して得られた凸レンズアレイを有する光学部材を有機ELパネルにラミネートした照明デバイスを作製した。
光学部材は、次の条件で作製した。まず、実施例5−1と同じ条件でプラズマ処理されたニッケル製モールドをベースモールドとして使用し、実施例1−1で使用したものと同じ紫外線硬化性樹脂をベースモールド上に実施例1−1と同様な条件でニッケル製モールドの各凹部に気泡を捕捉するようにコーティングを行った後、コーティング層に紫外線照射し、硬化層を形成した。ニッケル製ベースモールドから硬化層を離型し、配列凹部パターンを有する構造体(第1構造体)を得た。
次に、上述するプロセスで得られた配列凹部パターンを有する第1構造体を第2モールドとして使用し、常温硬化型シリコーン樹脂(商品名:ELASTSIL RT601、2液タイプ(混合重量比:A液:B液=90:10)、旭化成ワッカーシリコーン社製)を第2モールド上に実施例1−2と同様な条件で、コーティングし、コーティング層を室温(約25℃)で、一昼夜(約24時間)放置することで硬化した。硬化層を第2モールドから離型し、配列凹部パターンを反転させた配列凸部パターンを有する光学部材を得た。得られた光学部品の寸法は、ほぼ実施例5−1の光学部材と同じであった。得られた光学部材は、自己粘着性があり、その屈折率は1.41であった。
得られた粘着性のある光学部材を実施例5−1と同じ有機ELパネルの発光面であるガラス基板上に、界面に空気が入らないように注意しながら屈折液を用いずに貼り付け、照明デバイスを得た。
この照明デバイスに実施例5−1と同様に、9.5Vで0.03Aの電流を流し発光させ、輝度および配光特性を光学測定装置(商品名:EZ Contrast 160R、ELDIM社製)を用い測定した。光学部材を取り付けた照明デバイスでは、取り付け前と比較して積分強度比で125%、最大発光強度比で142%の値に向上した。測定した結果を表4及び図21に示す。
<実施例5−3>
気泡を転写して得られた凹レンズアレイを有する光学部材を有機ELパネルにラミネートした照明デバイスを作製した。
光学部材は、次の条件で作製した。実施例5−1と同じ条件でプラズマ処理されたニッケル製モールドをベースモールドとして使用し、実施例1−1で使用したものと同様な紫外線硬化性樹脂をベースモールド上に実施例1−1と同様な条件でニッケル製モールドの各凹部に気泡を捕捉するようにコーティングを行った後、コーティング層に紫外線照射し、硬化層を形成した。ニッケル製ベースモールドから硬化層を離型し、配列凹部パターンを有する構造体(第1構造体)を得た。
上述するプロセスで得られた配列凹部パターンを有する第1構造体を第2モールドとして使用し、実施例2−1で使用したものと同様な水溶性樹脂である20wt%PVA-217水溶液を調製し、第2モールド上にコーティングし、脱泡を行った。コーティングは、実施例1−2と同様に、ナイフコーターを用いて、16cm/secのコーティング速度で、500μmの厚さにコーティングした。この後、60℃のオーブン中で2時間乾燥させた後に、室温(約25℃)で、一晩(約12時間)放置し、乾燥させた。乾燥後の硬化層を第2モールドより離型し、第1構造体を反転させた配列凸部パターンを有する構造体(第2構造体)を得た。
上述するプロセスで得られた配列凹部パターンを有する第2構造体を第3モールドとして使用し、常温硬化型シリコーン樹脂(商品名:ELASTSIL RT601、2液タイプ(混合重量比:A液:B液=90:10)、旭化成ワッカーシリコーン社製)を第3モールド上に実施例1−2と同様な条件で、コーティングし、脱泡を行った。コーティング層を室温(約25℃)で、一昼夜(約24時間)放置することで硬化させた。硬化層を第3モールドから離型し、配列凹部パターンを反転させた配列凹部パターンを有する光学部材を得た。得られた光学部品の寸法は、ほぼ実施例5−1の光学部材と同じであった。得られた光学部材は、自己粘着性があり、屈折率は1.41であった。
得られた粘着性のある光学部材を実施例5−1と同じ有機ELパネルの発光面であるガラス基板上に、界面に空気が入らないように注意しながら屈折液を用いずに貼り付け、照明デバイスを得た。
この照明デバイスに実施例5−1と同様に、9.5Vで0.03Aの電流を流し発光させ、輝度及び配光特性を光学測定装置(商品名:EZ Contrast 160R、ELDIM社製)を用い測定した。光学部材を取り付けた照明デバイスでは、取り付け前と比較して積分強度比で117%、最大発光強度比で117%の値に向上した。測定した結果を表4及び図21に示す。
<比較例5−1>
通常の転写プロセスで得た、四角錐状の凹部が配列したプリズムシートを有機ELパネルにラミネートした照明デバイスを作製した。
プリズムシートは、以下の条件で作製した。底面が1辺100μmの正方形であり、高さが50μmの四角錐(ピラミッド形状)がピッチ100μmで配列されたニッケル製の凸型モールドを用い、実施例4−2で使用したものと同様な常温硬化型シリコーン樹脂(商品名:ELASTSIL RT601、2液タイプ(混合重量比:A液:B液=90:10)、旭化成ワッカーシリコーン社製)をモールド上に実施例1−2と同様な条件で、コーティングし、脱泡した後、コーティング層を室温(約25℃)で、一昼夜(約24時間)放置することで硬化させた。硬化層をモールドから離型し、プリズムシートを得た。得られたプリズムシートは、モールドの型面を反転した形状と大きさを持ち、厚みは150μmであった。また、プリズムシートは、自己粘着性があり、屈折率は1.41であった。
得られた粘着性のあるプリズムシートを実施例5−1と同じ有機ELパネルの発光面であるガラス基板上に、界面に空気が入らないように注意しながら屈折液を用いずに貼り付け、照明デバイスを得た。
この照明デバイスに実施例5−1と同様に、9.5Vで0.03Aの電流を流し発光させ、輝度および配光特性を光学測定装置(商品名:EZ Contrast 160R、ELDIM社製))を用い測定した。プリズムシートを取り付けた照明デバイスでは、取り付け前と比較して積分強度比で112%、最大発光強度比で150%の値を示した。測定した結果を表4及び図21に示す。
<比較例5−2>
通常の転写プロセスで得た、四角錐状の凸部が配列したプリズムシートを有機ELパネルにラミネートした照明デバイスを作製した。
プリズムシートは、以下の条件で作製した。底面が1辺100μmの正方形であり、高さが50μmの四角錐(ピラミッド形状)がピッチ100μmで格子状に配列されたニッケル製の凹型モールドを用い、実施例4−2で使用したものと同様な常温硬化型シリコーン樹脂(商品名:ELASTSIL RT601、2液タイプ(混合重量比:A液:B液=90:10)、旭化成ワッカーシリコーン社製)をモールド上に実施例1−2と同様な条件で、コーティングし、脱泡した後、コーティング層を室温(約25℃)で、一昼夜(約24時間)放置し、硬化させた。硬化層をモールドから離型し、プリズムシートを得た。得られたプリズムシートは、モールドの型面形状を反転した形状と大きさを持ち、厚みは150μmであった。また、プリズムシートは、自己粘着性があり、屈折率は1.41であった。
得られた粘着性のあるプリズムシートを実施例5−1と同じ有機ELパネルの発光面であるガラス基板上に、界面に空気が入らないように注意しながら屈折液を用いずに貼り付け、照明デバイスを得た。
この照明デバイスに実施例5−1と同様に、9.5Vで0.03Aの電流を流し発光させ、輝度・配光特性を光学測定装置(商品名:EZ Contrast 160R、ELDIM社製)を用い測定した。プリズムシートを取り付けた照明デバイスでは、取り付け前と比較して積分強度比で118%、最大発光強度比で147%の値を示した。測定した結果を表4及び図23に示す。
<実施例6−1>
気泡を転写して得られた凹レンズアレイを有する光学部材をブラックマトリックス等 の格子状遮光パターンを有するデバイスに適用した実施例を示す。
凹レンズアレイを有する光学部材を以下の条件で作製した。硬化可能な流体として、実施例1−1で使用したものと同様な紫外線硬化性樹脂を使用した。ベースモールドとして、凹部が正方格子状に配列されたニッケル製モールドを使用した。図23(a)に各凹部の平面形状および図23(b)にその断面図を示す。同図に示すように、凹部は底辺の一辺が100μmで頂角が異なる2種の四角錐を凹部の深さ方向で積層させた構造であり、凹部の傾斜面角度を2段階に調整したものを用意した。凹部の底部側に、断面における頂角θ1が60度の四角錐、凹部の浅い側、すなわち開口付近に断面における頂角θ2が130度の四角錐を形成した。なお、ニッケル製ベースモールドは、実施例1−1で記載したものと同様な手順で作製したものを使用した。すなわち、銅板にカッティングマシンにより溝を形成し、次に、銅板を酸化剤中に浸漬し、銅板表面を酸化した。電着法により、銅板表面にニッケル層を形成した後、このニッケル層を銅板から剥離し、ニッケル製モールドを得た。
上述した紫外線硬化性樹脂とベースモールドを使用し、実施例1−1と同様な条件でベースモールド上に紫外線硬化性樹脂をコーティングした。即ち、ナイフコーターを用いて、16cm/secのコーティングスピードで、ベースモールドの各凹部に気泡を捕捉しながら、150μmの厚さに塗布した。同時に、プライマー処理(N-200:住友スリーエム株式会社)済みの250μm厚のPETフィルムでラミネートした。その後、プライマー処理済のPETフィルム側よりUVランプを用いて3450mJ/cm2の紫外線を照射することによって、紫外線硬化性モノマーを重合硬化させた。重合後、ニッケル製モールドからPETフィルムとともに硬化層を離型し、紫外線硬化性樹脂からなる凹レンズアレイを有する光学部材(配列凹部パターンを有する構造体)を得た。なお、気泡を転写した各凹レンズの周囲には、ニッケル製モールドの開口部の形状が転写された傾斜面であるプリズム部分が形成された。
一方、格子状遮光パターンを持つ部材(ブラックマトリックス)として、表面に、黒色インクで短辺100μm、長辺300μm、線幅20μmの格子状遮光パターンが印刷され、裏面をプライマー(商品名:X34−1802、信越化学工業株式会社製)処理されたPETフィルム(商品名:フジプロッターフィルムHG FF R175、富士フィルム株式会社製)を準備した。なお、このPETフィルムは、フィルム自身の厚みが175μmであるが、裏面および表面の印刷層上にそれぞれ、厚み4μmおよび5μmの保護層が被覆されており、総厚で184μmのものであった。
次に上述するプロセスで得られた配列凹部パターンを有する構造体を第2モールドとして使用し、実施例4−2で使用したものと同様な常温硬化型シリコーン樹脂を第2モールド上に実施例1−2と同様な条件で、ナイフコーターを用いて、コーティングし、同時に、上記格子状遮光パターンを備えたPETフィルムでコーティング層をラミネートした。この際、格子状遮光パターンが形成されていない側のPETフィルム表面が光学部材との接着面となるように配置するとともに、正面から見た場合に、格子状遮光パターンの開口部に光学部材の凹レンズ部分が配置されるように調整し、遮光部と光学部材のプリズム部分がほぼ前後で揃うように調整した。このコーティング層を室温(約25℃)で、一晩(約12時間)硬化させ、その後第2モールドからPETフィルムとともに硬化層を離型した。こうして、配列凸部パターンを有する光学部材と格子状遮光パターンとの複合部材を得た。得られた光学部材の屈折率は1.41であった。作製した光学部材のみのSEM撮像写真を図25に示す。
得られた複合部材を、図12(a)と同様なデバイス構成(液晶ディスプレイ1250を除く)を用いて、指向性のある光を複合部材に入射させ、光学測定装置(商品名:EZ Contrast 160R、ELDIM社製)を用いて光学測定を行った。評価結果を表5に示す。実施例にて調製したレンズとプリズムを併せ持つ光学部材を、格子状遮光パターンを持つ部材に適用した場合の利用効率は、適用しなかった場合(比較例6−1)と比較して約20%以上向上した。
<比較例6−1>
実施例6−1で使用したものと同じ、片面に格子状遮光パターンが形成され、他方の面がプライマー処理されたPETフィルムを用意した。このPETフィルムのプライマー処理された面上に、実施例6−1で使用したものと同じシリコーン樹脂を150μmの厚みでコーティングした。その後、このコーティング層を室温(約25℃)で、一昼夜(約24時間)硬化させた。こうして、格子状遮光パターンを持つPETフィルムの裏面に、凹凸のない平坦なシリコーン樹脂層を形成した。得られた部材を、光学測定装置(商品名:EZ Contrast 160R、ELDIM社製)を用いて行った光学測定の評価結果を表5に示す。
<実施例7>
気泡を転写して得られた凹レンズアレイを有する光学部材をライトガイドとして使用した携帯電話用の入力デバイスサンプルを作製した。
実施例の光学部材は以下の方法で作製した。
まず、ベースモールドとして、厚み20μmの銅箔が厚み75μmのポリイミド上にラミネートされた二層構造の積層シート(商品名:TWO LAYER COPPER CLAD SUBSTRATE、日本インターコネクションシステムズ株式会社製)を準備した。この積層シートのポリイミド層にレーザ加工により、穴あけ加工を行い(東成エレクトロビーム株式会社にて加工)、穴径約30μm〜50μmの円形の円柱状凹部を形成した。こうして、図14(a)および図14(b)に示すような、標準的な携帯電話の入力キーの配置にあわせた凹部配列パターンを持つベースモールドを作製した。なお、図14(b)の光導出領域1410に対応するベースモールドの各領域に形成した凹部の数は、対応するキーの位置に応じて異なるが、一領域に少なくとも100個以上の凹部を二次元に配列させた。
このベースモールドを使用し、他は実施例1−1と同様の条件で、硬化可能な流体として紫外線硬化性樹脂を用いて凹レンズアレイを有する光学部材を作製した。得られた光学部材は、上述するベースモールドの凹部に対応する位置に気泡が転写された凹レンズを有するものであった。
この光学部材を、図15に示す構成を有する、入力デバイスサンプルに、ライトガイドとして組み込み、動作試験を行った。入力面に配置されたほぼ全ての入力キーにおいて、良好な正面輝度を提供できることが確認できた。