以下、図面を参照しながら、本発明に係る睡眠深度判定装置、及び当該睡眠深度判定装置を備えた睡眠深度維持装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
睡眠深度維持装置1は、図1に示すように、睡眠深度判定装置2及び維持制御部(維持制御手段)3を備え、例えば、自動車などの車両に装備されている。睡眠深度維持装置1は、車両の運転者である対象者Mが運転中に眠気を感じて車両を駐車した後、睡眠状態となった対象者Mの睡眠深度を睡眠深度判定装置2で判定すると共に維持制御部3で対象者Mの睡眠深度を仮眠に好適な睡眠深度に維持する。
睡眠深度とは、所定段階の睡眠の深さをレベルで示すものであり、本実施形態では、例えば、睡眠の浅いレベルから深いレベルに向かって、S1,S2,S3,S4の4段階に分けるようにしている(図2参照)。睡眠状態となった対象者Mの睡眠深度を最大レベルの睡眠深度S4よりも浅い中間レベルの睡眠深度S2に維持すると、例えば、好適な仮眠を対象者Mに提供できる。
睡眠深度判定装置2は、所定の睡眠深度で睡眠状態にある対象者Mが知覚し得る最小の刺激強度である感覚閾値を利用して、対象者Mの睡眠深度を判定する装置である。睡眠深度判定装置2は、判定された対象者Mの睡眠深度を維持制御部3に出力する。維持制御部3では、判定された睡眠深度が、維持したい睡眠深度(例えば睡眠深度S2)でない場合、対象者Mに覚醒刺激や誘眠刺激を付与し、睡眠深度判定装置2に、再度、睡眠深度の判定を行わせる。
睡眠深度判定装置2は、睡眠深度データベース(以下「睡眠深度DB」と記す)4、刺激付与部(刺激付与手段)5、知覚検出部(知覚検出手段)6、及び睡眠深度判定部(睡眠深度判定手段)7を備える。
睡眠深度DB4は、睡眠状態にある対象者Mの睡眠深度S1〜S4と当該睡眠深度S1〜S4に対応する感覚閾値T1〜T4とが段階的に設定された感覚閾値情報(図2参照)を対象者Mごとに格納する格納部である。睡眠深度DB4に格納される感覚閾値情報は、統計処理などを用いて予め実験的に算出される。図2に示される感覚閾値と睡眠深度との関係は、各睡眠深度で睡眠状態にある対象者Mが、各感覚閾値T1〜T4より弱い刺激強度に対しては知覚せず(図中「知覚なし」の部分)、各感覚閾値T1〜T4以上の刺激強度に対しては知覚することを示している。なお、図2におけるWは、対象者Mの覚醒を意味する。
刺激付与部5は、対象者Mに対して物理的な刺激を付与する部分であり、第1の刺激強度T2aを有する第1の刺激P1と、第1の刺激強度T2aよりも強い第2の刺激強度T2bを有する第2の刺激P2とを対象者Mに付与する。刺激付与部5としては、例えば音による聴覚刺激を付与するスピーカがあり、音圧を調整することで刺激強度が変更される。スピーカは、例えば座席のヘッドレスト部などに内蔵されている。
刺激付与部5によって付与される第1及び第2の両刺激P1,P2は、維持したい睡眠深度である睡眠深度S2に対応する感覚閾値T2に応じた刺激強度を有する刺激である。図2に示されるように、一方の刺激である第1の刺激P1は、感覚閾値T2よりも弱い刺激強度T2aを有し、他方の刺激である第2の刺激P2は、感覚閾値T2よりも強い刺激強度T2bを有する。
刺激付与部5には、所定の開始条件を満たして睡眠深度の判定が開始されると、睡眠深度判定部7から、睡眠深度DB4に格納された感覚閾値情報に基づいた第1の刺激強度T2a及び第2の刺激強度T2bの刺激強度情報を含む、刺激付与の指示情報が入力される。刺激付与部5は、刺激付与の指示情報が入力されると、刺激強度情報に基づいて、第1の刺激強度T2aを有する第1の刺激P1を、例えば1秒間隔で20回といったように間隔tで複数回連続して対象者Mに付与する(図3(a)参照)。
刺激付与部5は、第1の刺激P1を付与した後、刺激強度情報に基づいて、第2の刺激強度T2bを有する第2の刺激P2を、第1の刺激と同様に、間隔tで複数回連続して対象者Mに付与する。刺激付与部5は、刺激付与の際、弱い方の刺激を先に付与することで、刺激付与による対象者Mの睡眠状態への影響を軽減させる。刺激付与部5は、第1の刺激P1を付与した後及び第2の刺激P2を付与した後それぞれにおいて、刺激付与の終了を示す終了情報を睡眠深度判定部7に出力する。なお、刺激付与部5は、上述した覚醒刺激や誘眠刺激、及び後述する維持刺激等を維持制御部3からの指示情報に基づいて対象者Mに付与する。
知覚検出部6は、刺激を付与された対象者Mが第1及び第2の刺激P1,P2を知覚したか否かを検出する部分である。知覚検出部6としては、例えば対象者Mの脳波Wを検出する脳波計である。知覚検出部6では、図3(b)に示されるように、刺激付与部5で同一の刺激(例えば、第1の刺激P1)として複数回付与された各刺激に対する脳波Wを脳波データとして検出し、これらを加算平均したものを加算平均脳波データ(図3(c)参照)として算出する。
知覚検出部6は、加算平均脳波データにおける振幅Hが所定の閾値より小さければ、付与された刺激に対して対象者Mが知覚していないと検出する。一方、知覚検出部6は、加算平均脳波データにおける振幅Hが所定の閾値以上であれば、付与された刺激に対して対象者Mが知覚したと検出する。知覚検出部6は、検出された知覚の有無を示す知覚情報を睡眠深度判定部7に出力する。なお、知覚検出部6は、維持制御部3からの指示情報に基づいて刺激付与部5が維持刺激を付与した際の対象者Mの知覚の有無も検出する。
睡眠深度判定部7は、知覚検出部6によって、対象者Mが第1の刺激P1を知覚せず且つ第2の刺激P2を知覚したことが検出された場合に、対象者Mの睡眠深度が、第1の刺激強度T2aと第2の刺激強度T2bとの間の感覚閾値T2に対応する睡眠深度S2であると判定する部分である。睡眠深度判定部7は、前述したように、所定の開始条件を満たして睡眠深度の判定が開始されると、睡眠深度DB4にアクセスし、格納された感覚閾値情報に基づき、第1の刺激強度T2a及び第2の刺激強度T2bの刺激強度情報を含む、刺激付与の指示情報を生成して、刺激付与部5に出力する。
睡眠深度判定部7は、刺激付与の指示情報を出力した後、刺激付与部5から第1及び第2の刺激P1,P2の付与終了を示す各終了信号が入力され、且つ、知覚検出部6から第1及び第2の刺激P1,P2の付与に対する知覚の有無を示す知覚情報が入力されると、対象者Mの睡眠深度を判定する。具体的には、睡眠深度判定部7は、知覚検出部6によって、対象者Mが第1の刺激P1を知覚せず且つ第2の刺激P2を知覚したことが検出された場合に、対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2であると判定する。
睡眠深度判定部7は、知覚検出部6によって、対象者Mが第1及び第2の両刺激P1,P2を知覚したことが検出された場合には、対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2よりも更に浅い睡眠深度(例えば睡眠深度S1)であると判定する。また、睡眠深度判定部7は、対象者Mが第1及び第2の両刺激P1,P2を知覚しないことが検出された場合には、対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2よりも深い睡眠深度(例えば睡眠深度S3)であると判定する。睡眠深度判定部7は、睡眠深度についての判定結果を維持制御部3に出力する。
維持制御部3は、睡眠深度判定部7によって対象者Mの睡眠深度が中間レベルである睡眠深度S2であると判定された後、仮眠時間として予め定められた時間内において、対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2に維持されるように維持制御を行う部分である。維持制御部3は、睡眠深度判定部7によって対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2であると判定された後、睡眠深度S2における感覚閾値に基づいて維持刺激の付与条件(例えば睡眠深度S2における感覚閾値よりやや強い刺激を間欠的に付与)を決定し、当該付与条件に基づいて刺激付与部5によって対象者Mに維持刺激P3を所定間隔tで間欠的に付与させる(図4(a)参照)。このように感覚閾値に基づいた維持刺激P3の付与により、睡眠状態にある対象者Mは、睡眠深度S2に維持され、睡眠深度S2よりも深い睡眠深度S3,S4になることが一定の範囲で抑制される。
維持制御部3は、対象者Mに上述した維持刺激P3を付与した場合に対象者Mが知覚したか否かを知覚検出部6によって検出させる(図4(b)参照)。知覚検出部6は、対象者Mの脳波データ(加算平均処理なし)の振幅H1が所定の閾値以上である場合には、対象者Mが維持刺激P3に対して知覚したと検出する。一方、知覚検出部6は、対象者Mの脳波データ(加算平均処理なし)の振幅H1が所定の閾値より小さい場合(例えば図4(b)の領域Nで示される脳波Wの場合)には、対象者Mが維持刺激P3に対して知覚しなかったと検出する。これら知覚検出の際には、睡眠深度判定装置2で行った加算平均処理を行わず、検出された脳波データをそのまま使用しているため、知覚検出の応答速度が速くなっている。
維持制御部3は、対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2であると判定されて維持制御を開始した後、維持刺激P3に対する対象者Mの知覚がなくなったと知覚検出部6によって検出された場合には、対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2よりも深くなったと判定する。維持制御部3は、対象者Mの睡眠深度が深くなったと判定した場合には、対象者Mの睡眠深度が浅くなるように対象者Mに付与する維持刺激P3の刺激強度を増加させて維持刺激P4とするように付与条件を調整する。付与条件の調整としては、例えば、睡眠深度が深くなる前の対象者Mの睡眠状態に応じてその増加量を算出し、付与条件を調整する方法がある。維持制御部3は、対象者Mに対し、調整後の付与条件に基づいた維持刺激P4を刺激付与部5によって付与させる。
維持制御部3は、調整後の付与条件に基づいた維持刺激P4を対象者Mに付与した場合にも、知覚検出部6による対象者Mの知覚の有無の検出を継続させる。維持制御部3は、調整後の付与条件に基づいた維持刺激P4に対して対象者Mが知覚したと検出された場合には、維持刺激P4の刺激強度を低下させて維持刺激P3とし、付与条件を調整前の付与条件に戻す処理を行う。一方、維持制御部3は、調整後の付与条件に基づいた維持刺激P4に対して対象者Mが知覚しなかったと検出された場合には、維持刺激P4の刺激強度をさらに増加させるように付与条件を再調整し、対象者Mが知覚するまで刺激量の増加処理を繰り返す。
維持制御部3は、予め定められた仮眠時間が経過するまで上述したような維持制御を行う。維持制御部3は、仮眠時間が経過したら、対象者Mを一気に覚醒させる強力な覚醒刺激を付与して、対象者Mを仮眠状態から覚醒させ、処理を終了する。
次に、上述した睡眠深度維持装置1の動作について、図5及び図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。以下に示す一連の制御処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
まず、刺激付与部5によって、第1の刺激P1が所定間隔で複数回連続して対象者Mに付与される(S11)。ステップS11で第1の刺激P1が対象者Mに連続して付与されると、知覚検出部6は、対象者Mの各脳波Wを検出し(S12)、複数の脳波データを加算平均して、加算平均脳波データを算出する(S13)。知覚検出部6は、算出した加算平均脳波データにおける振幅Hを所定の閾値と比較して、振幅Hが所定の閾値以上であれば「知覚あり」と、振幅Hが所定の閾値より小さければ「知覚なし」と検出し、第1の刺激P1に対する知覚の有無を示す知覚情報として睡眠深度判定部7に出力する(S14)。
続いて、刺激付与部5によって、第1の刺激P1よりも強い第2の刺激P2が所定間隔で複数回連続して対象者Mに付与されると(S15)、第1の刺激P1を付与した場合と同様に、知覚検出部6は、対象者Mの各脳波Wの検出、加算平均脳波データの算出、及び第2の刺激P2に対する知覚の有無を示す知覚情報の出力を行う(S15〜S18)。
刺激付与部5から第1及び第2の刺激P1,P2の付与に対する知覚情報が入力されると、睡眠深度判定部7は、対象者Mの睡眠深度が、第1及び第2の刺激P1,P2の刺激強度間の感覚閾値に対応する睡眠深度S2であるか否かを入力された知覚情報に基づいて判定する(S19)。睡眠深度S2であるか否かの判定では、対象者Mが第1の刺激P1を知覚せず且つ第2の刺激P2を知覚したことが検出されたものであることを知覚情報が示した場合に、睡眠深度判定部7は、対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2であると判定する。
ステップS19で対象者の睡眠深度が睡眠深度S2であると判定された場合には、ステップS20に進み、予め定められた仮眠時間の間、睡眠深度S2の維持制御が行われる(S20)。
一方、ステップS19で対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2であると判定されなかった場合には、ステップS21に進み、第1及び第2の刺激P1,P2の付与に対する知覚情報から対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2よりも浅いか否かを睡眠深度判定部7が判定する。維持制御部3は、対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2よりも浅いと判定された場合には、対象者Mに誘眠刺激を付与して対象者Mの睡眠深度を深くし(S22)、対象者Mの睡眠深度が睡眠深度S2よりも深い場合には、対象者Mに覚醒刺激を付与して対象者Mの睡眠深度を浅くする(S23)。その後、ステップS11に戻り、所定の処理を繰り返し実行する。
次に、睡眠深度の維持制御について、図6を参照して、詳細に説明する。以下に示す維持制御は、所定の周期で繰り返し実行される。
睡眠深度S2の維持制御が開始されると、まず、維持制御部3は、維持刺激の付与条件に基づき、刺激付与部5によって、対象者Mに維持刺激P3を付与させる(S30)。この付与条件では、ステップS30で付与される維持刺激P3が睡眠深度S2における感覚閾値に基づいた維持刺激となっている。ステップS30で維持刺激P3が付与されると、維持制御部3は、維持刺激P3に対する対象者Mの脳波Wの脳波データを知覚検出部6に加算平均処理を行わずに算出させ、その振幅H1が所定の閾値以上であるか否かを検出させる(S31)。
維持制御部3は、ステップS31の検出において、脳波データの振幅H1が所定の閾値以上であれば、予め定められた仮眠時間が経過するまで、刺激付与部5による維持刺激の付与を継続させる(S30〜S32)。一方、維持制御部3は、脳波データの振幅H1が所定の閾値よりも小さければ、ステップS33に進み、維持刺激の刺激強度を増加させるように付与条件を調整する。
維持制御部3は、ステップS33で維持刺激の刺激強度を増加させるように付与条件を調整した後(S33)、調整後の付与条件に基づき、刺激強度が増加された維持刺激P4を刺激付与部5によって対象者Mに付与させる(S34)。ステップS34で刺激強度が増加された維持刺激P4が付与されると、維持制御部3は、ステップS31と同様に、この維持刺激P4に対する対象者Mの脳波データを知覚検出部6に算出させ、その振幅H1が所定の閾値以上であるか否かを検出させる(S35)。
維持制御部3は、ステップS35の検出において、脳波データの振幅H1が所定の閾値以上であれば、ステップS1に戻り、予め定められた仮眠時間が経過するまで、刺激付与部5による維持刺激P3の付与を継続させる(S30〜S32)。一方、維持制御部3は、脳波データの振幅H1が所定の閾値よりも小さければ、ステップS33に戻り、維持刺激の刺激強度を再度、増加させて、脳波データの振幅H1が所定の閾値以上を示すまで、同様の処理を繰り返す。維持制御部3は、上述した維持制御を繰り返し、仮眠時間が経過したら、対象者Mを一気に覚醒させる強力な覚醒刺激を付与して(S36)、対象者Mを仮眠状態から覚醒させ、処理を終了する。
このように、本実施形態に係る睡眠深度判定装置2では、第1の刺激P1の付与に対して対象者Mが知覚せず、且つ、第1の刺激P1よりも強い第2の刺激P2の付与に対して対象者Mが知覚したと検出された場合に、睡眠状態にある対象者Mが知覚し得る最小の刺激強度である感覚閾値が第1及び第2の刺激P1,P2の2つの刺激強度T2a,T2bの間にあるとされ、これにより、対象者Mの睡眠深度が、2つの刺激強度T2a,T2bの間にあるとされた感覚閾値T2に対応する睡眠深度S2であると判定されるようになっている。このため、第1及び第2の刺激P1,P2といった2つの刺激付与とそれに対する対象者の知覚の有無を検出するといった簡易な処理で対象者Mの睡眠深度を判定することが可能となる。また、対象者Mの実際の知覚の有無を検出しているため、対象者Mごとに感覚閾値が多少異なる場合や同一の対象者Mの感覚閾値が外部環境等によって多少変化する場合であっても、第1及び第2の刺激P1,P2の刺激強度を微増減させることで、これら変化を吸収し、対象者Mの睡眠深度を精度よく判定することができる。
睡眠深度DB4には、睡眠深度と当該睡眠深度に対応する感覚閾値とが予め段階的に設定されており、刺激付与部5は、所定レベルの睡眠深度(例えば睡眠深度S2)に対応するように予め設定された所定の感覚閾値よりも弱い刺激強度の刺激を第1の刺激P1として対象者に付与すると共に、所定の感覚閾値よりも強い刺激強度の刺激を第2の刺激P2として対象者に付与している。本実施形態に係る睡眠深度判定装置2では、予め設定された感覚閾値とそれに対応する睡眠深度とを利用するため、睡眠深度の判定における応答速度を向上させることができる。また、対象者Mに対する第1及び第2の刺激P1,P2の付与回数を少なくできるので、刺激付与が対象者Mの睡眠深度に与える影響を軽減することが可能となる。
本実施形態に係る睡眠深度維持装置1では、上述した睡眠深度判定装置2で精度よく睡眠深度を判定した後、睡眠深度を中間レベルである睡眠深度S2に維持するため対象者Mに付与する維持刺激P3の付与条件を睡眠深度S2における感覚閾値に基づいて決定している。このため、対象者Mの睡眠深度を睡眠深度S2に精度よく維持することができる。しかも、睡眠深度判定装置2において、睡眠深度と当該睡眠深度に対応する感覚閾値とが予め段階的に設定されていることから、上述したように睡眠深度が応答性よく判定されるため、対象者Mの睡眠深度の維持も応答性よく行うことができる。また、このように段階的に設定されていることから、上述したように対象者Mに対する刺激付与回数が少なくなるため、刺激付与による対象者Mの睡眠深度の変化(例えば覚醒等)を低減し、対象者Mの睡眠深度の維持をより容易に行うことが可能となる。
維持制御部3は、対象者Mに維持刺激を付与した場合に対象者Mが知覚したか否かを知覚検出部6によって検出させ、対象者Mが維持刺激P3を知覚しなかったと検出された場合に、維持刺激P3の刺激強度を増加させるように付与条件を調整している。このため、対象者Mの睡眠深度を簡易な処理で睡眠深度S2に継続的に維持することができる。
上述した実施形態は、本発明に係る睡眠深度判定装置2や睡眠深度維持装置1の一例を示すものである。本発明に係る睡眠深度判定装置2や睡眠深度維持装置1は、このようなものに限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しないものであれば、実施形態に係る各装置を変形し、又は車両以外のものに適用したものであってもよい。例えば、上記実施形態では、知覚検出部6で脳波Wに基づいて対象者Mの知覚の有無を判定しているが、皮膚電位水準や心拍変動を検出し、これらに基づいて対象者Mの知覚の有無を判定するようにしてもよい。皮膚電位水準や心拍変動などに基づく判定の場合、加算平均処理を行わなくても、精度よく睡眠深度が判定できる。
また、上記実施形態では、睡眠の深度を示すレベルとして睡眠深度という用語を用いたが、国際的な指標である睡眠段階という用語を用いて睡眠の深度を表わすようにしてもよい。
また、上記実施形態では、刺激付与部5が付与する第1及び第2の刺激P1,P2として、維持したい睡眠深度である睡眠深度S2に対応する感覚閾値T2に応じた刺激強度の刺激を用いているが、対象者Mが睡眠深度S1でも知覚できないような小さな刺激強度の刺激を第1及び第2の刺激として対象者Mに付与し、その後、徐々に付与する第1及び第2の刺激の刺激強度を強めるようにしてもよい。この場合でも、付与した第1及び第2の刺激に対する知覚の有無を段階的な感覚閾値に基づいて何度か判定することで、対象者Mの睡眠深度を判定することが可能となる。
また、上記実施形態では、対象者Mの睡眠深度が浅くなるように対象者Mに付与する維持刺激P3の刺激強度を増加させるように維持制御部3が付与条件を調整する際、睡眠深度が深くなる前の対象者Mの睡眠状態に応じてその増加量を算出しているが、例えば、知覚検出部6によって対象者Mが維持刺激を知覚したと検出された維持時間を算出する維持時間算出部を睡眠深度維持装置1が更に備え、維持制御部3は、図7に示されるように、維持刺激P5に対する対象者Mの知覚がなくて(領域Nで示される脳波W)、維持刺激P5の刺激強度を増加させる際、睡眠深度が深くなる前の対象者Mの維持時間の長さに反比例して維持刺激P5の刺激強度を所定量ΔP1増加させ、維持刺激P6とするように付与条件を調整してもよい。この場合、維持時間の長さに反比例して刺激強度を増加させているため、維持刺激P5から維持刺激P6への刺激強度の増加量ΔP1は、維持時間がなかった場合である維持刺激P7から維持刺激P5への刺激強度の増加量ΔP2に比べて少なくなっている。なお、反比例する維持時間と強度増加量との関係としては、例えば、図8(a)に示されるように、維持時間に応じて二次関数的に増加量が小さくなるようにしてもよいし、図8(b)に示されるように、維持時間に応じて一時関数的に増加量が小さくなるようにしてもよい。
また、対象者Mに付与された維持刺激の刺激付与回数のうち、知覚検出部6によって対象者Mが維持刺激を知覚したと検出された検出回数(脳波出現回数)の比率である維持比率を算出する維持比率算出部を睡眠深度維持装置1が更に備え、維持制御部3は、図9に示されるように、維持刺激P5の刺激強度を増加させる際、維持比率の大きさに反比例して維持刺激P5の刺激強度を所定量ΔP3増加させ、維持刺激P8とするように付与条件を調整してもよい。なお、反比例する維持時間と強度増加量との関係としては、例えば、図10(a)に示されるように、シグモイド関数的に増加量が小さくなるようにしてもよいし、図10(b)に示されるように、維持時間に応じて一次関数的に増加量が小さくなるようにしてもよい。このように、維持時間や維持比率に反比例して維持刺激の刺激強度を増加させることにより、対象者Mの睡眠深度が中間レベルである睡眠深度S2より若干深くなったような場合に過度に増加させた刺激強度の刺激を付与して対象者Mを完全に覚醒させてしまったりすることを防ぐことができる。これにより、対象者Mの睡眠深度を睡眠深度S2等に継続的に維持することが更に可能となる。なお、付与条件を調整する際、刺激間隔や刺激時間や刺激提示のDuty比などの刺激強度以外の要素を変更して、付与条件を調整するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、睡眠深度維持装置1を車両に適用させた実施形態について説明したが、本発明に係る睡眠深度維持装置1を車両以外のベッドや安楽イスなどに適用させて、通常の仕事におけるリフレッシュ用途に用いたり、警察や消防といった長時間の仮眠がとれない仕事における仮眠用途に用いたりしてもよい。