以下、本発明を画像形成装置である電子写真方式のカラー複写機(以下、単に複写機という)に適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。同図において、本複写機は、プリンタ部100、操作・表示装置90、給紙装置40、自動画像読取装置200、紙補給装置300等を有している。
プリンタ部100は、紙搬送路43Aを境にして、その上方に配設された第1画像形成部と、下方に配設された第2画像形成部とを有している。第1画像形成部は、図中矢印方向に無端移動する第1像担持ベルトたる第1中間転写ベルト21を有する第1転写ユニット20を備えている。また、第2画像形成部は図中矢印方向に無端移動する第2像担持ベルトたる第2中間転写ベルト31を有する第2転写ユニット30を備えている。
第1中間転写ベルト21の上部張架面の上方には、4個の第1プロセスユニット80Y,C,M,Kが配置されている。また、第2中間転写ベルト31の側部張架面の側方には、4個の第2プロセスユニット81Y,C,M,Kが配置されている。これら第1、第2プロセスユニットの番号に付したY,C,M,Kという添字は、それぞれ取り扱われるトナーの色を示している。プロセスユニット内の各機器にも同様の添字を付している。
各プロセスユニット(80Y,C,M,K、81Y,C,M,K)は、それぞれ潜像担持体たる感光体(1Y,C,M,K)を有している。第1プロセスユニット80Y,C,M,Kの感光体1Y,C,M,Kは等間隔に配設され、少なくとも画像形成時にはそれぞれ第1中間転写ベルト21の上部張架面に接触する。以下、このように接触するベルト面を第1受像面という。
一方、第2プロセスユニット81Y,C,M,Kの感光体1Y,C,M,Kも等間隔に配設され、少なくとも画像形成時にはそれぞれ第2中間転写ベルト21の上部張架面に接触する。以下、このように接触するベルト面を第2受像面という言う。
第1中間転写ベルト21は、複数の張架ローラにより、鉛直方向よりも水平方向にスペースをとる横長の姿勢であり、且つその第1受像面をほぼ水平に延在させる姿勢で張架されている。第1プロセスユニット80Y,C,M,Kは、このようなほぼ水平の第1受像面に接するように、互いにほぼ水平な状態で並列配設されている。
一方、第2中間転写ベルト31は、複数の張架ローラにより、水平方向よりも鉛直方向にスペースをとる縦長の姿勢であり、且つその第2受像面を図中左上から右下にかけて傾斜させる姿勢で張架されている。第2プロセスユニット81Y,C,M,Kは、このように傾斜している第2受像面に接するように、第2中間転写ベルト31の図中左側方にて、図中左上から右下にかけての斜めの配列になるように配設されている。
このように、片方の中間転写ベルトを横長の姿勢で張架する一方で、他方の中間転写ベルトを縦長の姿勢で張架することにより、縦横にバランスのとれたレイアウトにすることができる。
図2は、4つの第1プロセスユニット80Y,C,M,Kのうちの1つを示す拡大構成図である。4つの第1プロセスユニット80Y,C,M,Kは、それぞれ扱うトナーの色が異なる点の他がほぼ同様の構成になっているので、同図では「80」に付すY,C,M,Kという添字を省略している。同図において、感光体1は、プリンタ部(100)の動作時に、図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動される。かかる感光体1の周囲には、帯電手段であるスコロトロンチャージャー3、露光装置4、現像装置5、クリーニング装置2、光除電装置Q等の作像部材や、電位センサS1、画像センサS2等が配設されている。
ドラム状の感光体1は、例えば直径30〜120[mm]程度のアルミニウム円筒表面に光導電性物質である有機感光層(OPC)が被覆されたものである。アモルファスシリコン(a−Si)層を被覆したものであってもよい。また、ドラム状ではなく、ベルト状のものであってもよい。
クリーニング装置2は、クリーニングブラシ2a、クリーニングブレード2b、回収部材2c等を有し、後述の1次転写ニップを通過した後の感光体表面に残留する転写残トナーを除去、回収する。
スコロトロンチャージャー3は、回転駆動される感光体1の表面を例えばマイナス極性に一様帯電せしめるものである。かかる一様帯電を行う帯電手段として、スコロトロンチャージャーの代わりに、コロトロンチャージャーを用いても良い。また、帯電バイアスが印加される帯電バイアス部材を感光体1の表面に接触させる方式のものでもよい。
露光装置4は、各色のうちの1色に対応する画像データに基づいて生成した光で、一様帯電後の感光体1の表面を光走査して、感光体1の表面に静電潜像を形成する。図示の例では、露光装置4として、LED(発光ダイオード)アレイと結像素子からなるものを用い。レーザ光源やポリゴンミラー等を用いて、形成すべき画像データに応じて変調したビーム光によるレーザスキャン方式のものでもよい。
現像装置5は、トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤を用いて感光体1上の静電潜像を現像する二成分現像方式のものである。かかる二成分現像剤を2つの搬送スクリュウ5cによって攪拌しながら、図中奥行き方向に搬送する。これら2つの搬送スクリュウ5cの現像剤搬送方向は互いに逆方向である。例えば、図中左側の搬送スクリュウ5cの現像剤搬送方向が図中奥側から手前側であれば、図中右側の搬送スクリュウ5cの現像剤搬送方向は図中手前側から奥側である。前者の搬送スクリュウ5cによって現像装置5の図中奥行き方向端部まで搬送された二成分現像剤は、後者の搬送スクリュウ5cに受け渡される。そして、その端部から反対側の端部に向けて攪拌搬送される過程で、一部が後述の現像ロール5bに担持される。また、担持されなかったり、現像ロール5bから右側の搬送スクリュウ5cに戻されたりした二成分現像剤は、上記反対側の端部で左側の搬送スクリュウ5cに受け渡される。このようにして、二成分現像剤が現像装置5内で循環搬送される。なお、現像装置5として、磁性キャリアを含まずにトナーを主成分とする一成分現像剤による一成分現像方式のものを用いてもよい。
現像ロール5aは、ステンレスやアルミニュウム等からなる非磁性円筒であって図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動せしめられるスリーブと、これに連れ回らないように内部固定されたマグネットローラとを有している。マグネットローラは、スリーブの内部にて、その周方向に分かれる複数の磁極を有している。図中右側の搬送スクリュウ5cによって搬送される二成分現像剤は、このマグネットローラの発する磁力によって引き寄せられて、回転駆動されるスリーブの表面で汲み上げられる。そして、スリーブ表面に連れ回って感光体1に対向する現像領域に搬送されるのに先立ち、ブレード5bとの対向位置である規制位置を通過する。
ブレード5bは、所定の間隙を介してその先端をスリーブ表面に近接させるように配設されている。そして、スリーブ表面上の二成分現像剤がその直下である規制位置を通過する際に、二成分現像剤の厚みを所定の大きさに規制する。
このようにして層厚が規制された二成分現像剤は、スリーブの回転に伴って感光体1との対向位置である現像領域に搬送される。マイナス極性に一様帯電せしめられた感光体1の表面に対する光走査によって電荷が減衰せしめられて形成された静電潜像は、現像領域にてスリーブ表面上の二成分現像剤に摺擦せしめられる。そして、潜像と同極性であるマイナス帯電性のトナーの付着によって、Y,C,M,Kの何れかの色に現像される。第1プロセスユニット80においては、いわゆる反転現像が行われるのである。これにより、感光体1上には、Y,C,M,Kの何れかの色のトナー像が形成される。
トナーとしては、従来から公知の方法で得られる球形や不定形のトナーが用いられる。体積平均粒径が20[μm]以下、好ましくは10[μm]以下、4[μm]以上のものがよい。また、磁性キャリアも従来から公知の方法で得られるものが用いられる。体積平均粒径が25[μm]〜60[μm]程度のものがよい。
上記現像領域でトナーを消費した二成分現像剤は、上記スリーブの回転に伴って現像装置5内に戻る。そして、上記マグネットローラの互いに同極で隣り合う磁極によって形成される反発磁界の影響を受けて、スリーブ表面から離脱して、図中右側の搬送スクリュウ5c上に戻された後、図中左側の搬送スクリュウ5cに受け渡される。
図中左側の搬送スクリュウ5cの下方には、トナー濃度センサ5eが配設されており、左側の搬送スクリュウ5cによって搬送される二成分現像剤の透磁率を検知する。二成分現像剤の透磁率は、トナー濃度と相関があるので、トナー濃度センサ5eは、トナー濃度を検知していることになる。
図示しない制御部は、このトナー濃度センサ5eからの出力信号に基づいて二成分現像剤のトナー濃度を所定の閾値未満であると判断すると、図示しない8つのトナー供給手段のうち、その二成分現像剤に対応するものを所定時間駆動する。これら8つのトナー供給手段は、それぞれ、第1プロセスユニット(80Y,C,M,K)の4つの現像装置、あるいは、第2プロセスユニット(81Y,C,M,K)の4つの現像装置の何れか1つに対応するものである。プリンタ部(100)の上部のボトル収納部85に着脱可能にセットされた4つのY,C,M,Kトナーボトル(図1の86Y,C,M,K)の何れかに接続されている。そして、接続されたトナーボトルから、対応する現像装置内における図中左側の搬送スクリュウ5c上に、所定色のトナーを供給する。これにより、現像によってトナーを消費した二成分現像剤のトナー濃度が回復する。かかる構成のトナー供給手段としては、従来から公知のモーノポンプによる吸引力で、トナーボトル内のトナーを吸引して現像装置内まで搬送する方式のものがよい。この方式によれば、トナーボトルの設置場所の制約が少ないため、プリンタ部(100)内部のスペース配分に有利である。またトナーが適時補給できるため、現像装置5に大きなトナー貯留スペースを設けなくてすみ、現像装置5の小型化を図ることができる。
図3は、4つの第2プロセスユニット(81Y,C,M,K)のうちの1つを示す拡大構成図である。4つの第2プロセスユニット(81Y,C,M,K)も、それぞれ扱うトナーの色が異なる点の他がほぼ同様の構成になっているので、第2プロセスユニット81は、第1プロセスユニット(80)と構成部材が同じであるが、感光体1の回転方向が異なっている。しかし互いに、感光体1の回転軸1aを通るy軸に対し対象の形をしている。この形状は、感光体1の周囲に設ける部材の配置にも関係するが、重要な事項である。具体的には、プリンタ部100本体との結合部、たとえば駆動手段との結合部、電気的接続部、トナー供給部、トナー排出部の結合方法を配慮している。これにより、第1プロセスユニット(80Y,C,M,K)と、第2プロセスユニット(81Y,C,M,K)とに互換性をもたせることができる。従って第1プロセスユニットと第2プロセスユニット用に個別に現像装置、クリーニング装置、部品を製造する必要がなく、部品製造、部品の管理上での効率が高く、全体のコスト低減化を図ることができる。
先に示した図1において、第1画像形成部は、複数の第1プロセスユニット(80Y,C,M,K)と、第1転写ユニット20とから構成されている。また、第2画像形成部は、複数の第2プロセスユニット(81Y,C,M,K)と、第2転写ユニット30とから構成されている。プリンタ部100においては、第1転写ユニット20と第2転写ユニット30とにより、両面転写装置が構成されている。
第1転写ユニット20は、第1中間転写ベルト21を複数の張架ローラ22Y,C,M,K,23a,b,c,d,e,f,g,hに張架しながら、図中時計回りに無端移動せしめる。そして、第1中間転写ベルト21を第1プロセスユニット80Y,C,M,Kの感光体1Y,C,M,Kに接触させている。この接触により、第1転写ユニット20では、感光体1Y,C,M,K上のY,C,M,Kトナー像を、第1中間転写ベルト21上に重ね合わせて転写するためのY,C,M,K用の1次転写ニップが形成される。各1次転写ニップでは、図示しない電源によって1次転写バイアスが印加される4つの1次転写ローラ22Y,C,M,Kが、感光体1Y,C,M,Kとの間に第1中間転写ベルト21を挟み込んでいる。各1次転写ニップでは、1次転写バイアスやニップ圧の影響により、各色のトナー像が第1中間転写ベルト21に重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、第1中間転写ベルト21には第1可視像たる4色の第1トナー像が形成される。
第1中間転写ベルト21の外周部には、張架ローラ23dに対向する位置にクリーニング装置20Aが設けられている。このクリーニング装置20Aは、各1次転写ニップを通過した後の第1中間転写ベルト21の表面に残留する転写残トナーや、紙粉などの異物を拭い去る。第1中間転写ベルト21に関連する部材は、第1転写ユニット20として一体的に構成してあり、プリンタ部100に対し着脱が可能となっている。
一方、第2転写ユニット30は、第2中間転写ベルト31を複数の張架ローラ32Y,C,M,K,33a,b,c,d,e,f,gに張架しながら、図中反時計回りに無端移動せしめる。そして、第2中間転写ベルト31を第2プロセスユニット81Y,C,M,Kの感光体1Y,C,M,Kに接触させている。この接触により、第2転写ユニット30では、感光体1Y,C,M,K上のY,C,M,Kトナー像を、第2中間転写ベルト31上に重ね合わせて転写するY,C,M,K用の1次転写ニップが形成される。各1次転写ニップでは、図示しない電源によって1次転写バイアスが印加される4つの1次転写ローラ32Y,C,M,Kが、感光体1Y,C,M,Kとの間に第2中間転写ベルト31を挟み込んでいる。この1次転写バイアスやニップ圧の影響により、各1次転写ニップで各色のトナー像が第2中間転写ベルト31に重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、第2中間転写ベルト31には第2可視像たる4色の第2トナー像が形成される。
第2中間転写ベルト31の外周部には、ローラ33に対向する位置にクリーニング装置30Aが設けられている。このクリーニング装置30Aは、各1次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31の表面に残留する不要なトナーや、紙粉などの異物を拭い去る。第2中間転写ベルト31に関連する部材も、第2転写ユニット30として一体的に構成してあり、プリンタ部100に対し着脱が可能となっている。
従来、2つの中間転写ベルト(21,31)としては、それぞれ、次のようなものを用いるのが一般的であった。即ち、フッ素樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリイミド樹脂等からなる基層の上に、トナーとの離型性の良好なフッ素樹脂等からなる表面層を被覆したものである。しかしながら、かかる構成のベルトは、硬度が比較的高いことから、トナー像を圧縮して文字の転写中抜け現象等を発生させ易かった。また、和紙などと言った表面平滑性に劣る記録体との密着性が悪いことからも、転写中抜け等を発生させ易かった。更には、密着性を高めるべく、ニップ圧を高めると、トナーを強く凝集させて転写中抜けをより一層引き起こし易くなってしまう。
そこで、本複写機では、第1中間転写ベルト21や第2中間転写ベルト31(以下、これらをまとめて単に中間転写ベルトという)として、図4に示すような構造のものを用いている。同図において、中間転写ベルトは、基層21a,31aと、これの上に被覆された弾性層21b,31bと、更にこの上に被覆された表面層21c,31cとからなる三層構造になっている。
基層21a,31aは、例えば伸縮性に劣る樹脂などからなる厚さ50〜600[μm]程度の層である。伸縮性に優れたゴム材料に帆布などの伸縮性に劣る材料を固定したものでもよい。伸縮性に劣る材料としては、ポリカーボネート、フッ素樹脂(ETFE、PVDF等)、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等が挙げられる。これらを2種類以上混合して使用してもよい。なお、基層とは、多層構造のベルト部材における最も厚い層のことである。
弾性層21b,31bは、弾性ゴムやエラストマーからなる。弾性ゴムとしては、ウレタンゴム、フッ素系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴムなどが挙げられる。また、エラストマーとしては、熱可塑性のポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系等のものが挙げられる。これら材料を2種類以上混合して使用してもよい。
弾性層21b,31bについては、層全体の硬度にもよるが、厚くし過ぎるとベルト全体に対する弾性層の伸縮率を大きくし過ぎて亀裂を発生させたり、伸縮による画像への悪影響を引き起こしたりといった事態が発生し易くなる。よって、極端に厚くし過ぎないようにすることが望ましい。
また、弾性層21b,31bについては、硬度HSを、10〜65[度](JIS−A)に調整することが望ましい。層厚によって最適な硬度は異なってくるが、10度より低いと寸法精度良く成型することが困難になる。これは成型時に収縮・膨張を受け易い事に起因する。また硬度を下げる方法として基材にオイル成分を含有させることが一般的に行われるが、加圧状態で連続作動させるとオイル成分が滲みだしてしまう。そして、滲みだしたオイル成分により、転写ベルト表面に接触する感光体等を汚染して画像に横帯状ムラ等を発生させることがある。
弾性層21b,31bの上にはトナー離型促進のために表面層21c,31cを設けているが、弾性層かららのオイル浸みだしを表面層によって防止するためには非常には耐久性に優れた表面層材質を選ばなくてはならない。このため、表面層21c,31cの材料選択の自由度を大きく悪化させてしまう。一方、硬度を65度(JIS−A)よりも高くすると、上述したような転写中抜け等を発生させ易くなってしまう。また、自由な形状で張架するといった形状自由度も悪化させてしまう。
弾性層21b,31bについては、必要に応じて可能な伸びを抑える対策を講ずることが望ましい。かかる対策としては、例えば、基層21a,31aとして、伸縮性に劣るものを形成する方法が挙げられる。伸縮性に劣る基層21a,31aとしては、上述したように、伸縮性に劣る材料を用いたものや、伸縮性に優れたなゴム等の材料に帆布などの伸縮性に劣る芯材を混ぜたものなどが挙げられる。かかる芯材としては、天然繊維(綿や絹)、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等の無機繊維、鉄繊維、銅繊維等の金属繊維から選ばれる1種以上の材料からなる糸状や織布状のものが挙げられる。糸状のものについては、1本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸など、どのような撚り方であってもよい。また、上述した繊維を混紡してもよい。もちろん糸に適当な導電処理を施して使用することもできる。一方、織布状のものについては、メリヤス織り等どのような織り方の織布でも使用可能であり、もちろん交織した織布も使用可能であり当然導電処理を施すことも可能である。
基層21a,31aや、弾性層21b,31bには、必要に応じて電気抵抗調整剤を分散せしめてもよい。かかる電気抵抗調整剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物が挙げられる。また、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。
表面層21c,31cは、トナー離型性に優れた材料からなり、優れた表面平滑性を発揮する。かかるのよい層からなるものである。トナー離型性に優れた材料としては、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、何らかの基材にフッ素化合物、フッ化炭素、酸化チタン、シリコンカーバイド等を分散したものでもよい。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素層を形成させ、表面エネルギーを小さくさせたものでもよい。
中間転写ベルト(21,31)は、106〜1012[Ωcm]程度の電気抵抗を発揮するようになっている。ベルトの走行を安定させるためのベルト寄り止めリブが、ベルト片側あるいは両側端部に設けられている。
以上のような3層構造の中間転写ベルトを製造する方法としては、回転する円筒形の型に材料を流し込んでベルト状に成型する遠心成型法が挙げられる。また、表層の薄い膜を形成させるスプレー塗工法、円筒形の型を溶液の中に浸けて引き上げるディッピング法、内型、外型の中に注入する注型法、円筒形の型にコンパウンドを巻き付け、加硫研磨を行う方法などでもよい。
かかる構成の中間転写ベルトを用いる本複写機では、2次転写ニップ(後述の1次転写部)にて、弾性層21b,31bの優れた弾性により、ベルト表面側をニップ圧によって転写紙P表面にならわせて自在に変形させる。そして、この変形により、過剰な圧力を加えることなく、ベルト表面と転写紙P表面との密着性を高めることができる。よって、和紙等の表面平滑性に劣る記録体を用いた場合でも、転写中抜けのない良好な画像を得ることができる。
第1転写ユニット20の1次転写手段たる4つの1次転写ローラ22Y,C,M,Kや、第2転写ユニット30の1次転写手段たる4つの1次転写ローラ32Y,C,M,Kとしては、例えば次のような構成のものを用いることができる。即ち、芯金たる金属ローラの表面に、導電性ゴム材料を被覆したもので、芯金部に、不図示の電源からバイアスが印加されるものである。本実施形態では、導電性ゴム材料として、ウレタンゴムにカーボンを分散したものを用い、体積抵抗を105Ωcm程度に調整している。
プリンタ部100は、Kトナーだけによるモノクロ画像の出力も可能である。モノクロ画像を出力する場合には、第1転写ユニット20におけるY,C,M用のプロセスユニット80Y,C,Mを使用しない。そして、プロセスユニット80Y,C,Mを稼動させないだけでなく、これらと第1中間転写ベルト21とを非接触に保つための機構を備えている。ローラ26と1次転写ローラ22を支持する内部フレーム(不図示)を設けておき、ある点を中心に回動可能に支持している。そして、感光体から遠ざかる方向に回動させることにより、感光体1Kだけを第1中間転写ベルト21と接触させて、作像工程を実行することにより、ブラックトナーによるモノクロ画像を作成する。かかる構成では、感光体の寿命向上の点で有利である。なお、第2転写ユニット30も同様に、モノクロ画像出力時にプロセスユニット81Y,C,Mを第2中間転写ベルト31から待避させるようになっている。
第1中間転写ベルト21の外周には、ローラ部材たる2次転写ローラ46が当接している。これにより、第1転写ユニット20においては、第1中間転写ベルト21と2次転写ローラ46とが当接する2次転写ニップが形成されている。この2次転写ニップが、第1転写ユニット20と第2転写ユニット30とからなる両面転写装置における第1転写部になっている。
2次転写ローラ46は芯金たる金属ローラの表面に、導電性ゴムを被覆したもので、芯金部に対して、図示しない電源から2次転写バイアスが印加される。導電性ゴムはカーボンの分散によって体積抵抗が107Ωcm程度に調整されたものである。
上述の2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対45が配設されている。このレジストローラ対45は、プリンタ部100の図中右側方に配設された給紙装置40から送られて来る転写紙Pをローラ間に挟み込んだ後、両ローラの回転を一時中断する。そして、第1中間転写ベルト21上の重ね合わせトナー像である4色トナー像に同期させ得るタイミングで、転写紙Pを第1転写部たる2次転写ニップに向けて送り出す。送り出された転写紙Pは、2次転写ニップでその一方の面である第1面(図中上側を向く面)に4色の第1トナー像が密着せしめられる。そして、2次転写バイアスやニップ圧の影響により、第1中間転写ベルト21上の第1トナー像が転写紙Pの第1面に一括2次転写される。2次転写ニップを通過した転写紙Pは、第1中間転写ベルト21や2次転写ローラ46から離れて、第2中間転写ベルト31に受け渡される。
第2転写ユニット30では、転写チャージャー47が、第2中間転写ベルト31を張架している複数の張架ローラのうち、図中最も左側に位置する第2転写部張架ローラ33cによるベルト掛け回し箇所に所定の間隙を介して対向している。第2中間転写ベルト31を介した転写チャージャー47と第2転写部張架ローラ33cとの対向領域が、本複写機における第2転写部となっている。
転写チャージャー47は公知のタイプで、タングステンや金の細い線を放電電極とし、ケーシングで保持し、放電電極に不図示の電源から転写電流が印加される。第1転写部から第2中間転写ベルト31に受け渡された転写紙Pは、その第2面を第2中間転写ベルト31に密着させながら、ベルトの無端移動に伴って図中右側から左側に向けて搬送される。そして、上述の第2転写部を通過する際に、その第1面に転写チャージャー47から電荷が付与されることで、第2中間転写ベルト31上の4色の第2トナー像が第2面に一括2次転写せしめられる。上述の2次転写バイアスや、転写チャージャー47による付与電荷は、何れもトナーの極性と逆のプラス極性である。
プリンタ部100の図中右側方には転写紙を供給可能に収納した給紙装置40が配備されている。複数段、例えば上段に大量の転写紙を収納した給紙装置(トレイ)40a、その下方に3段の給紙カセット40b,40c、40dがそれぞれ紙面に対し直角手前側(操作面側)に引出し可能に配設されている。これらの給紙トレイ40aや給紙カセット40b,40c、40d内にそれぞれ異なる種類の転写紙が収納されている。このうち、最上位置の転写紙は、対応する給紙・分離手段41A〜41Dにより選択的に給紙、分離され、確実に一枚だけが複数の搬送ローラ対42Bにより紙搬送路43Bや43Aに送られる。
紙搬送路43Aには、転写紙Pを両面転写装置の第1転写部や第2転写部へ送り出す給送タイミングをとるための、一対のレジストローラ45が設けられている。さらに転写紙Pの搬送方向に対し直角方向の位置を正規の位置にするための横レジ補正機構44が、紙搬送路43Aに設けられている。横レジ補正機構44としては、次のものを例示することができる。即ち、図示しない横方向の基準ガイドと斜行コロ対から構成され、転写紙の横方向端部を該基準ガイドに押付けるように転写紙をスライド搬送する。そして、転写紙を所定の位置に整合させる。この基準ガイドは転写紙のサイズにより、所定の位置に移動、配置される。なお、横レジ補正機構44は転写紙の搬送方向に対し転写紙の両方の横方向から、転写紙の両辺を短時間及び複数回押し、転写紙を所定の位置に整合させる規制部材から構成されるジョガー方式でもよい。
給紙装置40においては、複数の給紙トレイのうち、最も上に配設されている給紙トレイ40aから排出される転写紙Pが、プリンタ部100の紙搬送路43Aに対して、曲げられることなくほぼ水平に真直ぐ搬送されるようになっている。このため厚い転写紙Pや剛性の高い板紙でも、給紙トレイ40a内に収容すれば、プリンタ部100の紙搬送炉43Aに確実に給紙することができる。なお、給紙トレイ40aには、多様な特性の転写紙が収納されても確実に給紙できるよう、バキューム機構からなるエアー給紙を採用すると好都合である。図示を省略しているが、紙搬送路43Aの要所には転写紙Pを検知するためのセンサを設けており、転写紙Pの存在を基準とする各種信号のトリガーとしている。
最も上側に配設されている給紙カセット40aの上方には、第2給紙路43Cが設けられている。この第2給紙路43Cに対しては、給紙装置40の図中右側方に設置されている第2給紙装置300から、転写紙Pを供給することができる。
第2転写ユニット30の図中左側方には、複数の張架ローラ52,53,54,55,56によって紙搬送ベルト51を張架しながら、図中反時計回りに無端移動させる紙搬送ユニット50が配設されている。紙搬送ベルト51は、第2転写ユニット30の第2転写部から排出される転写紙Pを、複数の張架ローラの1つである受入ローラ52によるベルト掛け回し箇所にて、紙搬送ベルト51上に受け取る。この受け取りよりも早いタイミングで、紙搬送ベルト51のおもて面には、静電吸着チャージャー57によって電荷が付与される。これより、紙搬送ユニット50は、第2転写部から排出されてくる転写紙Pを紙搬送ベルト51のおもて面に静電吸着させることができる。
転写紙Pをおもて面に静電吸着させた紙搬送ベルト51は、その無端移動に伴って転写紙Pを図中右側から左側へと搬送する。そして、紙搬送ユニット50の図中左側方に配設されている定着手段たる定着装置60に向けて、転写紙Pを受け渡す。この受け渡しよりも早いタイミングで、紙搬送ベルト51のおもて面に静電吸着せしめられている転写紙Pに対して、分離チャージャー58によって電荷が付与される。これにより、それまで紙搬送ベルト51のおもて面に静電吸着していた転写紙Pがベルトから容易に分離されるようになる。そして、複数の張架ローラのうち、定着装置60の最も近くに配設されている分離ローラ54によるベルト掛け回し箇所で、分離ローラ54の曲率にならって急激に移動方向を変えようとするベルトから転写紙Pが分離して、定着装置60に受け渡される。
定着装置60としては、定着ローラ内部にヒータを備える方式のもの、加熱されるベルトを走行させる方式のもの、誘導加熱を採用した方式のものなどを採用することができる。同図においては、2つの定着ローラを当接して形成した定着ニップで、転写紙Pを両面側からそれぞれ加熱して第1トナー像及び第2トナー像を定着させる方式のものを採用している。転写紙P両面の画像の色合い、光沢度を同じにするため、2つの定着ローラについては、ベルト材質、硬度、表面性などを上下同等にしてある。また、フルカラーとモノクロ画像、あるいは片面か両面かにより、それぞれの面に対して最適な定着条件をつくりだすように、定着装置60の各種パラメータが制御されるようになっている。
定着装置60による定着処理が終了した転写紙Pは、排出路に向けて送り出される。この排出路には、定着処理後の転写紙Pを冷却して、不安定なトナーの状態を早期に安定させる目的で、冷却機能を有した冷却ベルトユニット対70が配設されている。この冷却ベルトユニット対70としては、放熱部を有するヒートパイプ構造のローラによってベルトを冷却せしめるベルトユニットの対を採用することができる。冷却ベルトユニット対70は、それぞれのユニットのベルトを当接させながら、当接部で互いに同方向に表面移動させる。そして、ベルト間に挟み込んだ転写紙Pを図中右側から左側に搬送するのに伴って、ベルトでの熱吸収によって転写紙Pを冷却する。
冷却ベルトユニット対70によって冷却された転写紙Pは、排紙ローラ対71により、プリンタ部100の左側に設けられた排紙スタック部75に排紙、スタックされる。この排紙スタック部は、大量の転写紙をスタック可能にすべく、不図示のエレベータ機構により、スタックレベルに応じて、受け部材が上下する機構を採用している。なお排紙スタック部75を通過させ、別の後処理装置に向けて転写紙を搬送させることもできる。別の後処理装置として、穴あけ、断裁、折、綴じなど製本のための装置などを設けることもできる。
プリンタ部100の上面には、未使用のトナーが収納された各色のトナーボトル86Y,C,M,Kが、着脱可能にボトル収納部85に収納されている。このボトル収容部85は、プリンタ部100上面で操作方向から見て奥側にあって、プリンタ部100上面の手前側は平面部分が確保されているため、作業台として利用することができる。上述のトナー供給手段により、各現像装置に必要に応じトナーを供給するようになっている。本実施形態では、上下に配設した第1画像形成部と第2画像形成部とで、互いに同色のトナーを扱う現像装置に対しては、共通のトナーボトルからトナーを供給するようになっているが、別々にすることもできる。消耗の多いブラックトナー用のトナーボトル86Kは、特に大容量としておくことも可能である。
プリンタ部100の上面に設けられた操作・表示ユニット90には、キーボード等を設けてあり、画像形成のための条件などをインプットすることができる。また、ディスプレイ等からなる表示部に各種の情報を表示することもでき、操作者とプリンタ部100との情報交換を容易なものとする。
プリンタ部100内部に設けられた廃トナー収納部87は、クリーニング装置2や、中間転写ベルトのクリーニング装置20A,30Aなどと連結されている。そして、これらから送られる廃トナーや紙粉等の異物を一括して回収して収納する。これらのクリーニング装置(2,20A,30A,50A)に大容量の廃トナー収納部を備えないため、クリーニング装置が小型にでき、さらに廃トナーの廃棄の操作性も良好となっている。満杯センサ(不図示)を使って廃トナー収納部87内のトナー廃棄、あるいは容器交換などの警告を発する。
プリンタ部100内部に設けられた制御部95には、各種電源や制御基板などが板金フレームに保護され収納されている。定着装置60による熱や電装装置からの発熱により、画像形成装置内部は高温になるが、その対策としてファンFを設けて、内部部材の熱による機能低下を防止している。またこのファンFは冷却ベルトユニット対70の放熱部と結合してあり、冷却ベルトユニット対70の冷却効果を確実にしている。
給紙装置40の上部には、周知の技術によって原稿を自動搬送しながらその原稿の画像を読み取る自動画像読取装置(ADF)200が設けられており、これによる読取情報が制御部95に送られる。送られた読取情報に基づいて、プリンタ部100が駆動制御されて、原稿と同じ画像が出力される仕組みである。また、プリンタ部100に対しては、図示しないパーソナルコンピュータ等からの画像情報を送って、その画像情報に対応する画像を出力させることもできる。更に、図示しない電話回線から送られてくる画像情報を送って、その画像情報に対応する画像を出力させることもできる。給紙装置40の図中右側方には、上述のように、給紙装置40に転写紙Pを補給する第2紙補給装置300が配設されている。
レジストローラ対45による給紙位置から、排紙ローラ対71による排紙位置に至るまでの紙搬送路は、図示のように、上下に殆ど曲がりのない直線搬送路になっている。このような直線搬送路にすることにより、転写工程及び定着工程でのジャムを大幅に抑えることができる。
次にプリンタ部100において、転写紙の片面にフルカラー画像を形成する片面記録時の動作について説明する。
片面記録の方法は基本的に2種類あって、選択が可能となっている。2種類のうちの1つは、第1中間転写ベルト21に転写した4色トナー像を転写紙の第1面に一括2次転写する方法である。また、もう1つの方法は、第2中間転写ベルト31に転写した4色トナー像を転写紙の第2面に一括2次転写する方法である。画像データが複数の頁になるケースでは、排紙スタック部75上で頁が揃うように作像順序を制御するのが好都合である。そこで、最後の頁の画像データから順に記録して頁順を揃わせることができる、前者の方法について説明する。
プリンタ部100を稼動させると、第1中間転写ベルト21と第1プロセスユニット80Y,C,M,Kにおける感光体1Y,C,M,Kが回転する。同時に第2中間転写ベルト31が無端移動するが、第2プロセスユニット81Y,C,M,Kにおける感光体1Y,C,M,Kは第2中間転写ベルト31と離間されるとともに不回転状態にされる。そして、第1プロセスユニット80Yによる画像形成が開始される。LED(発光ダイオード)アレイと結像素子からなる露光装置4の作動により、LEDから出射されたイエロー用の画像データ対応の光が、帯電装置3によって一様帯電された感光体1Yの表面に照射されて静電潜像が形成される。
この静電潜像は、Y用の第1プロセスユニット81Yの現像装置によってYトナー像に現像され、Y用の1次転写ニップで第1中間転写ベルト21上に静電的に1次転写される。このような潜像形成、現像、1次転写動作が感光体1C,M,K側でもタイミングをとって順次同様に行われる。そして、第1中間転写ベルト21上のYトナー像に対して、C,M,K用の1次転写ニップでC,M,Kトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、第1中間転写ベルト21上に4色トナー像が形成される。
一方、給紙装置40は、内部の給紙トレイ40aあるいは給紙カセット40bc,dから、画像データに対応する転写紙を給紙・分離手段41A,B,C,Dの何れか1つのよって送り出す。そして、搬送ローラ対42B,42Cによってプリンタ部100の紙搬送路43Cに向けて搬送する。そして、横レジ補正機構44に送られる。
横レジ補正機構44は、記録体供給手段たる給紙装置40から両面転写装置(第1、第2転写ユニット)に向けて搬送されている途中の転写紙Pにおける搬送方向からの姿勢の傾きを補正する傾き補正手段である。レジストローラ対45よりも搬送方向上流側で、搬送方向に直交する紙面方向に並べられたガイド板対を、転写紙Pの搬送方向に直交する両端に突き当てることで、転写紙Pの姿勢の傾きを補正する。ガイド板対の2つのガイド板は、搬送方向に直交する紙面方向に移動可能になっており、給紙された転写紙Pの幅に合わせて移動することで、板間距離を転写紙Pの幅に合わせることができる。
横レジ補正機構44によって姿勢の傾きが補正された転写紙Pは、レジストローラ対45のローラ間に至り、そこでタイミングが計られて第1転写部に送り出される。そして、第1転写部の2次転写ニップにて、第1中間転写ベルト21上の4色トナー像が第1面に一括2次転写される。2次転写ニップを通過した第1中間転写ベルト21のおもて面は、ベルトクリーニング装置20Aによって転写残トナーがクリーニングされる。
各第1プロセスユニット80Y,C,M,Kでは、それぞれ、1次転写ニップを通過した後の感光体1Y,C,M,K上に残留する転写残トナーが、クリーニング装置(2)によってクリーニングされる。このクリーニング装置(2)は、先に図2に示したように、クリーニングブラシ2aやクリーニングブレード2bによって第1中間転写ベルト21から転写残トナーを除去するものである。除去したトナー等の異物については、回収手段2cによって回収部87に送る。なおセンサS1、S2は、感光体表面の露光後の表面電位と、現像工程後の感光体表面に付着しているトナーの濃度が適切なものであるかを検知し、適宜作像条件の設定、制御のために不図示の制御手段に情報を出す。また、クリーニング後の感光体1の表面は除電装置Qによって残留電荷が除電されて初期化せしめられる。
第1転写部の2次転写ニップで第1面に4色トナー像が2次転写された転写紙は、第2転写ユニット30の第2中間転写ベルト31に受け渡された後、紙搬送ユニット50に送られる。そして、紙搬送ユニット50から定着装置60に受け渡されるが、この受け渡しに先立って、転写紙Pに対して分離チャージャー58による電荷が付与される。この付与により、第2中間転写ベルト31に静電吸着していた転写紙がベルトから容易に分離されるようになる。
定着装置60内では、転写紙Pの第1面に担持されているフルカラー画像中の各色トナーが、加熱によって溶融、混色される。転写紙Pはその第1面だけにトナーを有しているので、両面にトナーを有している両面記録時に比べ、定着に要する熱エネルギーが少なくて済む。制御部95が画像に応じて定着装置60の使用する電力を最適に制御する。定着処理が施された後であっても、転写紙P上で完全に固着するまでは、トナー像は搬送路のガイド部材等にこすられ、画像が欠落したり、乱れたりする。この不具合を防止するべく、定着装置60を通過した転写紙は、冷却手段である冷却ベルトユニット対70が設けられているのである。
本複写機においては、排紙スタック部75で若い頁の転写紙が順次上に重ねられるように、作像順序がプログラムされているので、スタック部75で頁順が揃う。排紙スタック部75は、排紙される転写紙の増加に従って、下降するので、転写紙は整然と確実にスタックでき、頁順が乱れることがない。記録済みの転写紙を排紙スタック部75に直接スタックする代わりに、穴あけ加工処理を実施したり、ソータ、コレータや綴じ装置や折り装置など後処理装置に搬送することもできる。
転写紙の片面に画像を形成させる他の方法では、第1プロセスユニット80Y,C,M,Kでの画像の形成をおこなわないようにするのと、頁揃えのために若い頁の画像データから順に像形成をさせる点が異なる。しかし、基本的には上述の片面記録の工程と同じなので、説明を省略する。
次に転写紙の両面に画像を形成する両面記録時の動作について説明する。
プリンタ部100に画像信号が入力されると、片面記録の動作で説明した第1プロセスユニット80Y,C,M,Kの感光体1Y,C,M,Kに、Y,C,M,Kトナー像が形成される。そして、これらは、Y,C,M,K用の1次転写ニップで第1中間転写ベルト21に順次重ね合わせて1次転写される。この工程とほぼ並行して、第2プロセスユニット81Y,C,M,Kの感光体1Y,C,M,Kに、Y,C,M,Kトナー像が形成される。そして、これらは、Y,C,M,K用の1次転写ニップで第2中間転写ベルト31に順次重ね合わせて1次転写される。このようにして、第1中間転写ベルト21、第2中間転写ベルト31上に、それぞれ4色トナー像が形成される。
第2プロセスユニット81Y,C,M,Kのユニット間隔は、第1プロセスユニット80Y,C,M,Kのユニット間隔よりも小さくなっている。これにより、第2転写ユニット30では、第1転写ユニット20よりも速く重ね合わせ1次転写が終了する。
タイミングが計られてレジストローラ対45から第1転写部の2次転写ニップに送られた転写紙Pは、その第1面に第1中間転写ベルト21上の4色トナー像が2次転写された後、第2転写部に受け渡される。そして、第2中間転写ベルト31と転写チャージャー47とが所定の間隙を介して対向している第2転写部にて、第2中間転写ベルト31上の4色トナー像が第2面に2次転写される。
このようにして両面にフルカラー画像が形成された転写紙Pは、紙搬送ユニット50を経由して定着装置60に受け渡される。そして、定着装置60内で加熱や加圧による定着処理が行われて、両面のトナー画像がそれぞれ溶融、混合される。更に、冷却ベルトユニット対70と排紙ローラ71とを経た後、排紙スタック部75上に排紙される。
複数の頁の転写紙に両面記録する場合、若い頁の画像が下面となって排紙スタック部75にスタックされるように作像順序を制御する。これにより排紙スタック部75から取り出し、上下面を逆にしたとき記録物は上から順に1頁、その裏に2頁、2枚目が3頁、その裏が4頁となり頁順が揃う。このような作像順序の制御や、定着装置に入力する電力を片面記録時より増やすなどの制御は、制御部95によって実行される。
片面記録動作、両面記録動作に関して、フルカラー記録を実行させる例で説明したが、ブラックトナーだけによるモノクロ記録も可能である。メンテナンスや部品交換等の必要性が生じた場合には、不図示の外装カバー等を開放し、メンテナンスをおこなう。
静電潜像をトナー像に現像するトナーとしては、平均円形度が0.93〜1.00であるものを用いることが好ましい。この平均円形度とは、トナー粒子1個あたりの円形度について、所定数のトナー粒子の平均を求めた数値である。円形度は、粒子の凹凸の度合を表す指標であり、粒子が真球の場合には1.00となる。凹凸のある粒子ほど、円形度が1.00よりも小さな値となる。トナー粒子1個あたりの円形度については、次式に基づいて求めることができる。
トナーの平均円形度については、次のようにして測定することができる。即ち、まず、被検トナーのトナー粒子を含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的にその2次元投影像を撮影する。そして、個々の2次元投影像について、それと面積の等しい真円の周囲長(L0)を、2次元投影像の周囲長(L)で除した値を求めたものの1万個あたりの平均値を算出する。この平均値が平均円形度である。かかる平均円形度を測定するには、例えばフロー式粒子像分析装置FPIA−2100(東亜医用電子株式会社製)などを用いるとよい。この装置を用いる場合には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150[ml]中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に被検トナーを0.1〜0.5[g]程度加える。そして、この懸濁液を超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、分散液濃度を3000〜1[万個/μl]に調整したものを、上記装置にかけてトナーの形状及び分布を測定する。
平均円形度が0.93〜1.00であるトナーは、各トナー粒子の表面の滑らかさにより、粒子同士や、トナー粒子と感光体との接触面積が小さくなるため、優れた転写性を発揮することができる。また、各トナー粒子の表面に角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクを小さく抑え、攪拌速度を安定させる。これにより、過度攪拌による性状の変化を抑えて、安定した画像を形成することができる。また、形成画像のドット中に角張ったトナー粒子が存在しないことにより、転写工程においてトナー像が転写体に圧接する際に、その圧がドット中のトナー粒子に均一にかかるので、転写中抜けが生じ難い。また、トナー粒子が角張っていないことから、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、感光体や耐電部材等の表面の傷付きや摩耗を抑えることができる。
また、トナーとしては、形状係数SF−1が100〜180であって、且つ形状係数SF−2が100〜180のものを用いることが好ましい。形状係数SF−1や形状係数SF−2は、トナーの形状を表すパラメータの一つである。形状係数SF−1は、トナー粒子等の球形物質における丸さの度合いを示す値である。図5に示すように、球形物質を2次元平面上に投影して得られる楕円状図形の最大径箇所の長さMXLNGの二乗を面積AREAで除算し、更に100π/4を乗じた値である。つまり、下記の数2の式によって表すことができる。なお、πは円周率である。形状係数SF−1の値が100の球形物質は真球であり、SF−1の値が大きくなるほど、球形物質の形状は不定形となる。また、形状係数SF−2は、球形物質の表面における凹凸の度合いを示す数値である。図6に示すように、球形物質を2次元平面上に投影して得られる図形の周長PERIの二乗を面積AREAで除算し、更に100/4πを乗じて求められる値である。つまり、形状係数SF−2は、下記の数3の式によって表すことができる。なお、形状係数SF−2の値が100である球形物質は、その表面に凹凸が全く存在しない。形状係数SF−2の値が大きくなるほど、球形物質の表面の凹凸は顕著となる。
トナーの形状が真球に近づく(SF−1、SF−2ともに100に近づく)ほど、転写効率が高くなることが本発明者の検討により明らかになっている。これは、真球に近づくほど、トナー粒子とこれに接触するモノ(トナー粒子同士、像担持体など)との間の接触面積が小さくなって、トナー流動性が高まったり、モノに対する吸着力(鏡映力)が弱まって転写電界の影響を受け易くなったりするためと考えられる。本発明者の研究によれば、形状係数SF−1、形状係数SF−2で180がそれぞれ超えると、転写効率を急激に悪化させ始める。180以下のものであれば、転写チリのない良好な画像を形成することができる。
形状係数SF−1や形状係数SF−2については、次のようにして求めることが可能である。即ち、日立製作所製FE−SEM(S−800)を用い、トナー粒子を無作為に100個選んで順次その画像を撮影し、その画像情報をニレコ社製画像解析装置(LUSEX3)に導入してMXLING、AREA、PERIを求める。そして、上述した式によって得た形状係数の100個あたりの平均値として算出するのである。
また、トナーとしては、重量平均粒径Dmが3〜8[μm]であり、且つ、重量平均粒径Dm/個数平均粒径Dnが1.00〜1.40であるものを用いることが好ましい。かかるトナーでは、次のようなメリットがある。即ち、600[dpi]以上の高解像度のドットを再現する場合に、感光体上における微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を付着させることで、優れたドット再現性を実現することができる。重量平均粒径Dmが3[μm]未満になると、転写効率やブレードクリーニング性が急激に低下してしまう。また、重量平均粒径が8[μm]を超えると、文字画像やライン画像の周囲へのトナー飛び散りが急激に発生し易くなる。
重量平均粒径Dm/個数平均粒径Dnは、トナー中におけるトナー粒子の粒径分布のシャープ性を示す。この値が1.00に近いほど、粒径分布が狭くなる。そして、個々のトナー粒子の帯電量分布が均一になって、地汚れのない高品質の画像を得ることができる。また、静電転写効率も向上する。
トナーの粒径分布については、コールターカウンター法による測定装置、例えば、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)によって測定することができる。具体的には、まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。電解水溶液としては1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)を用いることができる。得られた溶液に更に測定試料を2〜20mg加える。そして、その溶液を超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、上述した測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナーの重量、個数を測定して、重量分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径Dm、個数平均粒径Dnを求めることができる。なお、チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上40.30μm未満のトナー粒子を対象とする。なお、Dm、Dnはともに1万個あたりの平均である。
次に、本複写機の特徴的な構成について説明する。
本複写機においては、先に図1を用いて説明したように、第1中間転写ベルト21と第2中間転写ベルト31とを互いに非接触に配設している。このような配設では、両ベルトをそれぞれ必要なときにだけ個別に作動させて、両ベルトの消耗を抑えることができる。
図7は、本複写機における第1転写部及び第2転写部とその周囲構成とを示す拡大構成図である。同図において、ニップ上流ローラ23b、ニップ下流ローラ23cは、第1中間転写ベルト21を張架する複数の張架ローラのうちで互いに隣り合うように配設された2つのローラである。このニップ上流ローラ23bとニップ下流ローラ23cとの間に張られた第1中間転写ベルト21展張領域は、そのおもて面側からローラ部材たる2次転写ローラ46が押圧せしめられている。そして、この押圧により、ベルトループ内側に湾曲している。第1中間転写ベルト21と2次転写ローラ46との当接によって形成されている。2次転写ニップは、本複写機の両面転写装置における第1転写部となっており、ここに転写紙Pが挟み込まれている間に、第1中間転写ベルト21上の第1トナー像が転写紙Pの第1面に2次転写される。
上述のように、第1中間転写ベルト21は2次転写ローラ46に押圧されてベルトループ内側に向けて湾曲する移動軌道を辿る。第1中間転写ベルトと2次転写ローラ46とが当接している2次転写ニップは、その湾曲している移動貴重軌道中で最もベルト内側に位置している。このような2次転写ニップでは、そこを通過した転写紙Pがたとえその腰の強さによって真っ直ぐに進もうとしても、その先にはベルト表面が存在するため、真っ直ぐ方向への進行が阻まれる。そして、第1中間転写ベルト21の表面に密着しながら、ベルト進行方向に案内される。図中右上から左下に向けての進行方向である。このようにして第1中間転写ベルトの表面に密着しながら搬送される転写紙Pは、やがて、ニップ下流ローラ23cによるベルト掛け回し箇所にさしかかる。ここでは、ニップ下流ローラ23cに掛け回された第1中間転写ベルト21が、ニップ下流ローラ23cの周面に沿って移動方向を急激に変化させる。転写紙Pは、この急激な変化に追従することができず、第1中間転写ベルト21表面から離間して、図中右上から左下に向けての移動を続ける。そして、図中一点鎖線で示すように、第2中間転写ベルト31の表面に突き当たった後、第2中間転写ベルト31の表面に密着しながら、第2転写部に向けて搬送される。
本複写機では、転写チャージャー47と、第2中間転写ベルト31を張架している複数の張架ローラの1つである第2転写部張架ローラ33cとの間であって、且つチャージャーとベルトが対向している領域Rが第2転写部となっている。第2中間転写ベルト31の無端移動に伴ってこの第2転写部に進入した転写紙Pの第2面には、上述のようにして第2中間転写ベルト31上の第2トナー像が2次転写される。
第1転写部である2次転写ニップを通過した転写紙Pは、第2中間転写ベルト31における第2転写部よりも移動方向上流側の箇所である第2転写部上流領域に向けて進むように、第1中間転写ベルト21に案内される。そして、図中の接触開始点P1にて、第2中間転写ベルト31に突き当たる。この接触開始点P1は、第2転写部上流領域の中でも、次に説明するベルト展張領域となっている。即ち、第2中間転写ベルト31を張架する複数の張架ローラのうち、ベルトを第2転写部で張架している第2転写部張架ローラ33cと、これに対して上流側で隣り合っている第2転写部上流側張架ローラ33bと、の間に張られたベルト展張領域である。このベルト展張領域は、張架ローラに巻き掛けられたベルト領域とは異なり、図示のように真っ直ぐに移動する。このため、第2中間転写ベルト31に押し付けられた転写紙Pは、真っ直ぐに移動するベルトに良好に密着しながら、第2転写部に向けて搬送される。第2転写部は、かかるベルト展張領域から転写紙Pの第2面に第2トナー像を転写するようになっている。よって、転写紙Pを張架ローラに巻き掛けられたベルト領域に密着させてから第2転写部に搬送する場合に比べて、転写紙Pをより良好に第2中間転写ベルトに密着させながら、第2トナー像を転写することができる。
転写紙Pとして、普通紙や厚紙などといった比較的腰の強いものを用いる場合には、上述のように第1転写部たる2次転写ニップを通過した転写紙Pを、第1中間転写ベルト21の表面に密着させて、第2中間転写ベルト31のベルト展張領域に向けて案内することができる。しかしながら、転写紙Pとして、トレッシングペーパーや薄紙などといった比較的腰の弱いものを用いる場合には、2次転写ニップを通過した転写紙Pを重力方向に撓ませてしまい、第2中間転写ベルト31のベルト展張領域に向けて案内することができなくなるおそれがある。そこで、本複写機においては、2次転写ニップと第2転写部との間に、転写紙Pをその第2面で支えながら、第2中間転写ベルト31のベルト展張領域に向けて案内する案内部材たるガイド板25を設けている。これにより、たとえ腰の弱い転写紙Pを2次転写ニップ通過後に重力方向に撓ませたとしても、ガイド板25によってベルト展張領域に確実に案内することができる。
本複写機においては、第2中間転写ベルト31に対する転写紙Pの突き当たり角度γを3〜30[°]に設定している。この突き当たり角度γとは、第2中間転写ベルト31上における転写紙Pの接触開始点P1を中心にして、接触開始点P1よりも上流側の第2中間転写ベルト31表面と、転写紙P裏面(第2面)とのなす角である。突き当たり角度γを3〜30[°]に設定するのは、次の理由による。即ち、突き当たり角度γが3[°]未満であると、転写紙Pを第2中間転写ベルト31に押し付ける力が不足して、転写紙Pと第2中間転写ベルト31との密着不良を起こすからである。また、突き当たり角度γが30[°]を超えると、第2中間転写ベルト31に転写紙P先端の引っ掛けて転写紙Pをある程度湾曲させた後、転写紙P先端側を跳ね上げることによる第2トナー像の乱れを急激に起こし易くなるからである。
第2中間転写ベルト31における接触開始点P1から第2転写部入口点P2に至るまでの距離L1については、30[mm]以上に設定することが望ましい。これは次に説明する理由による。即ち、第2中間転写ベルト31に対する転写紙Pの押し付け力は、主に転写紙Pの腰によって発揮される。転写紙Pの先端が第2中間転写ベルト31に接触し始めた直後は、僅かな接触領域が撓むだけなので、十分な押し付け力が発揮されていない。転写紙Pの先端側がある程度の面積でベルトに接触しないと、ベルトに対する十分な密着力が発揮されないのである。本発明者らは、鋭意研究を行った結果、転写紙P(普通紙)を先端側から後端側にかけてベルトに対して30[mm]密着させれば、突き当たり角度γが3[°]の場合であっても転写紙Pをベルトに良好に密着させ得ることを見出した。
次に、実施形態に係る複写機の各変形例装置について説明する。
[第1変形例装置]
図8は、第1変形例装置における第1転写部及び第2転写部とその周囲構成とを示す拡大構成図である。同図においては、第1中間転写ベルト21を張架する複数の張架ローラの1つであるニップ部ローラ23iに対する第1中間転写ベルト21巻き掛け領域に、2次転写ローラ46を当接させて、第1転写部たる2次転写ニップを形成している。そして、この2次転写ニップを通過した転写紙Pを、第2中間転写ベルト31における上述のベルト展張領域に接触させるようになっている。かかる構成では、図7に示した構成とは異なり、2次転写ニップの出口付近に第2中間転写ベルト31のベルト展張領域を位置させることが可能になる。そして、転写紙Pとしてトレッシングペーパーや薄紙などといった腰の弱いものを用いたとしても、それを重力方向に撓ませる前に、第2中間転写ベルト31のベルト展張領域に接触させる。このため、第1転写部たる2次転写ニップと、第2転写部との間にガイド板を設けなくても、転写紙Pを確実に第2中間転写ベルト31のベルト展張領域に接触させることができる。
第1中間転写ベルト21のニップ部ローラ23iに対する巻き掛け領域に圧接せしめるローラ部材たる2次転写ローラ46としては、張架ローラたるニップ部ローラ23iよりも高硬度のものを用いている。これは次に説明する理由による。即ち、実施形態に係る複写機のように、第1中間転写ベルト21と第2中間転写ベルト31とを非接触に配設したものにおいては、第1転写部を通過して第1中間転写ベルト21の表面から離間した転写紙Pを、次に説明する方向に移動させる必要がある。即ち、第1中間転写ベルト21の表面から離れる方向であって、且つ、第2中間転写ベルト31の表面に近づける方向である。そして、転写紙Pを第1中間転写ベルト21の表面から大きく離すほど、第2中間転写ベルト31に対する転写紙Pの押圧力を高めることができる。よって、2次転写ニップの出口において、転写紙Pに対して、できるだけ第1中間転写ベルト21表面から大きく離す方向の搬送力を付与することが望ましい。ここで、第1中間転写ベルト21を介して互いに当接しているニップ部ローラ23iと2次転写ローラ46とが互いに同じ硬度であると、2次転写ニップ出口において、両ローラの共通接線方向の搬送力を転写紙Pに付与することになる。これに対し、2次転写ローラ46としてニップ部ローラ23iよりも高硬度のものを用いると、ニップ部ローラ23iの変形(弾性変形)によって2次転写ニップで2次転写ローラ46をニップ部ローラ23iに食い込ませることになる。すると、2次転写ニップの断面形状は、2次転写ローラ46の周面に沿った形状となる。このような形状の2次転写ニップでは、転写紙Pに対してニップ出口で2次転写ローラ46の接線方向への搬送力を付与することになる。これにより、両ローラの硬度を同じにしたり、ニップ部ローラ23iをより高硬度にしたりする場合に比べて、2次転写ニップ出口で転写紙Pを第1中間転写ベルト21から大きく離して、第2中間転写ベルト31のベルト展張領域により強く押し付けることができる。
なお、本第1変形例装置においても、第2中間転写ベルト31に対する転写紙Pの突き当たり角度γが3〜30[°]に設定されている。
[第2変形例装置]
図9は、第2変形例装置における2次転写部以降の構成を示す拡大構成図である。同図において、第2中間転写ベルト31の上側張架面は、次工程の紙搬送ユニット50に向けてほぼ水平に直線状に移動する。よって、2次転写ニップを通過した後、2中間転写ベルト31から分離されるまでの転写紙Pは、ほぼ水平に直線状に搬送される。一方、紙搬送ユニット50において、第2中間転写ベルト31から受け取った転写紙Pを表面に保持しながら定着装置60に向けて搬送する搬送ベルト351の上側張架面の大部分も、ほぼ水平に直線状に移動するようになっている。しかも、2次転写ニップ出口第2中間転写ベルトの上側張架面の延長線上に位置している。よって、転写紙Pは、第2中間転写ベルト31から搬送ベルト51への受け渡し途中で、先端側が搬送ベルト51上に保持されつつ後端側が第2中間転写ベルト31に保持されている状態でも、水平方向に延びる一直線上の姿勢を維持する。
このように、第2中間転写ベルト31の上側張架面と、搬送ベルト51の上側張架面の大部分とが、互いに延長線上に位置しながら水平方向に直線状に移動することで、受け渡し途中の転写紙Pの姿勢を真っ直ぐに維持する。但し、搬送ベルト51の上側張架面の全領域のうち、第2中間転写ベルト31の近傍に位置する僅かな領域は、水平方向に直線状に移動するのではなく、鉛直方向下側から上側に向けて僅かに斜めに移動するようになっている。搬送ベルト51を張架する複数の張架ローラのうち、両面転写装置の第2中間転写ベルト31の最も近くに位置する入口ローラ52が、第2中間転写ベルト31の上側張架面よりも低い位置にあり、且つ、入口ローラ52よりも下流側に位置する張架ローラ53が入口ローラ52よりも高い位置にあることで、このような斜めの移動が実現される。搬送ベルト51における第2中間転写ベルト31近傍の僅かな領域が図中θという斜めの角度で移動することにより、第2中間転写ベルト31から分離した転写紙先端がその腰の弱さによって重力方向に撓んだとしても、撓んだ部分をその領域で捉えることができる。そして、第2中間転写ベルト31と同程度のレベルまで持ち上げつつ、定着装置60に向けて搬送することができる。よって、転写紙Pとして、比較的腰の弱い薄紙を用いても、両面転写装置から搬送ベルトユニット50に確実に受け渡すことができる。
このように、搬送ベルト51を両面転写装置の近傍でθという斜めの角度で移動させるようにしているが、この角度θについては、5〜20[°]にすることが望ましい。また、第2中間転写ベルト31と搬送ベルト51との間のギャップL3については、10〜30[mm]の範囲に設定することが望ましい。このようにすることで、転写紙Pとして、腰の弱い45キロ紙を用いた場合でも、その先端側を円滑に第2中間中間転写ベルト31上から搬送ベルト51上に受け渡しすることができるからである。
搬送ベルト51は、第2中間転写ベルト31から転写紙Pを受け取るのに先立って、吸着用チャージャー57によってトナーの帯電極性と同極性(例えばマイナス)の電荷が付与される。そして、これにより、第2中間転写ベルト31から受け取った転写紙Pをおもて面に静電吸着させる。吸着用チャージャー57の代わりに、ベルトと接触する帯電ローラを採用することもできる。また、ベルトの帯電量を転写紙Pの種類や、画像のトナー付着量に応じて変化させ、適切な吸着力を発揮させるようにすると好都合である。一般的にアート紙、コート紙は平滑性に優れ、搬送ベルトに吸着しやすく、過度のベルト帯電により、下流での分離が困難となる。またフルカラー画像であるとか、用紙前面にフルカラー画像があると、トナー付着量が多いことから、用紙がベルトに吸着し難いからである。
搬送ベルト51としては、基材がポリイミド又はポリアミドからなるものが用いられている。この基材とは、搬送ベルト51が単層構造である場合にはベルトそのもののことである。また、搬送ベルト51が多層構造である場合には、最も厚みの大きい層のことである。ポリイミドやポリアミドは非常に耐熱性に優れた材料であるため、搬送ベルト51の基材にそれらを用いることにより、紙受け渡しのために定着装置60の近傍に配設しなければならない搬送ベルト51に優れた耐熱性を発揮させる。そして、定着装置60からの熱の影響による搬送ベルト51の伸縮や寿命低下を抑えることができる
また、紙搬送ベルト51としては、基材のおもて面側にNi等の導電性材料からなる導電層を被覆し、且つその導電層の上に、表層として非導電性材料からなるものを被覆している。かかる構成では、非導電性の表層を良好に帯電せしめて、紙搬送ベルト51に対して転写紙Pを確実に静電吸着させることができる。
搬送ベルト51によって搬送される転写紙Pは、紙搬送ユニット50の図中左側方に配設された定着装置60に受け渡される。この定着装置60は、内部にヒータ等の発熱源を有する定着ローラ61と、定着ベルト63とを当接させて定着ニップを形成している。定着ベルト63は、内部にヒータ等の発熱源を有する加熱ローラ62と、張架ローラ64とによって張架されながら、図中反時計回りに無端移動せしめられる。定着ニップは、この加熱ローラ62による定着ベルト63掛け回し箇所に、定着ローラ61が圧接せしめられることによって形成されている。定着ニップに進入した転写紙Pは、その第1面が定着ローラ61によって加熱されて、第1トナー像が第1面に定着せしめられる。また、その第2面が定着ベルト63を介して加熱ローラ62に加熱されて、第2トナー像が第2面に定着せしめられる。定着ローラ61、加熱ローラ62はともに高熱を発するので、定着装置60を紙搬送ユニット50に近づけ過ぎると、これらローラからの熱によって搬送ベルト51を熱して、搬送ベルト51で搬送中の転写紙Pにおける第2面の第2トナー像を軟化させる。そして、この軟化によって転写紙Pの搬送ベルト51からの分離が困難になってジャムを発生させるおそれがある。よって、定着ローラ61や加熱ローラ62については、紙搬送ユニット50からできるだけ遠ざけることが望ましい。
しかしながら、遠ざけすぎると、紙搬送ベルト51から定着装置60への転写紙Pの受け渡しが良好に行われなくなる。そこで、この第2変形例装置においては、定着ベルト方式を採用している。これにより、定着ローラ61と加熱ローラ62とを紙搬送ベルト51から遠ざけつつ、搬送ベルト51から送り出される転写紙Pを定着ベルト63に受け取らせて、定着ニップに向けて良好に搬送することができる。
定着ベルト63は、紙搬送ベルト51から転写紙Pを受け取るのに先立って、帯電ローラ65との接触位置を通過する。この帯電ローラ65には、図示しない電源によって帯電バイアスが印加されており、帯電ローラ65との接触位置にて紙搬送ベルト51の表面が帯電せしめられる。この帯電により、定着ベルト63は、紙搬送ベルト51から受け取った転写紙Pを静電吸着させる。かかる定着ベルト63の材料としては、上述した紙搬送ベルト51の材料と同じものを用いることができる。但し、その表層の材料については、定着ローラ61の表面材料と同じものを用いることが望ましい。定着ベルト63の表層の材料と、定着ローラ61の表面材料とを同じにすることで、両材料の違いによる定着後の第1トナー像と第2トナー像との光沢性の差を回避することができるからである。
なお、第2転写部の出口から定着ニップの入口までの距離L2を、図示しない給紙カセット等の記録体収容手段に収容され得る最大サイズの転写紙Pの長さよりも大きくすれば、両面転写装置と定着装置60との間の紙搬送を、両面転写装置から独立させることができる。具体的には、第2転写部を通過した転写紙Pを、第2中間転写ベルト31から完全に離間させ、且つ定着ニップに進入させない状態をつくりだすことができる。このような状態では、各中間転写ベルトや各感光体の線速であるプロセス線速と、紙搬送ベルト51の線速とを異ならせても、転写紙Pを良好に搬送することができる。よって、紙搬送ベルト51による紙搬送速度を、プロセス線速とは別に完全に独立に制御して、転写紙Pの定着ニップ通過時間である定着時間を自在にコントロールして、トナー付着量や紙特性に応じた加熱量で定着処理を行うことができるようになる。
[第3変形例装置]
図10は第3変形例装置を示す概略構成図である。この第3変形例装置では、紙搬送ユニット50と定着装置60とを一体的に構成している。具体的には、定着装置60の定着ローラ61を紙搬送ベルト51に密着させて定着ニップを形成している。この定着ニップでは、紙搬送ベルト51の裏面に当接している定着装置60の加熱ローラ62によって紙搬送ベルト51がバックアップされている。定着装置60の定着ローラ61と加熱ローラ62との間に紙搬送ベルト51を挟み込んで定着ニップを形成しているのである。
かかる構成では、転写紙Pを紙搬送ユニット50から定着装置60に受け渡すといった工程を実施しないで、紙搬送ユニット50の搬送ベルト51で搬送中の転写紙Pの両面に対してそれぞれ定着処理を施す。よって、未定着トナー像を担持した転写紙Pを紙搬送ユニット50から定着装置60に受け渡す際に転写紙Pを擦ってしまうことによる未定着トナー像の乱れを回避することができる。
これまで、電子写真方式のプリンタに本発明を適用した例について説明したが、直接記録方式など、他の方式によってトナー像を形成する画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。この直接記録方式とは、潜像担持体によらず、トナー飛翔装置からドット状に飛翔させたトナー群を記録体や中間記録体に直接付着させて画素像を形成することで、記録体や中間記録体に対してトナー像を直接形成する方式である。また、粉体としてトナーを搬送するトナー搬送装置を用いるプリンタについて説明したが、トナーとは異なる粉体を用いる粉体搬送装置にも本発明の適用が可能である。
以上、実施形態に係る複写機においては、第1転写部たる2次転写ニップと、第2転写部との間に、記録体たる転写紙Pをその第2面で支えながら、第2中間転写ベルト31の上記ベルト展張領域に向けて案内する案内部材たるガイド板25を設けている。かかる構成では、上述した理由により、たとえ腰の弱い転写紙Pを2次転写ニップ通過後に重力方向に撓ませたとしても、ガイド板25によってベルト展張領域に確実に案内することができる。
また、実施形態に係る複写機においては、第1像担持体として、複数の張架ローラに張架されて無端移動せしめられる第1像担持ベルトたる第1中間転写ベルト21を用いている。そして、これら複数の張架ローラのうちで互いに隣り合うように配設された2つの張架部材であるニップ上流ローラ23bとニップ下流ローラ23cとの間に張られたベルト展張領域に、ローラ部材たる2次転写ローラ46をベルトおもて面側から圧接せしめることで、そのベルト展張領域をベルトループ内側に向けて湾曲させている。更に、このベルト展張領域と2次転写ローラ46との接触部である2次転写ニップを第1転写部として機能させている。かかる構成では、上述したように、2次転写ニップを通過した転写紙Pを第1中間転写ベルト21に密着せしめて、第1中間転写ベルト21によって第2中間転写ベルト31のベルト展張領域に向けて案内することができる。
また、第1変形例装置においては、第1像担持体として、複数の張架ローラに張架されて無端移動せしめられる第1像担持ベルトたる第1中間転写ベルト21を用いている。そして、複数の張架ローラの何れか1つであるニップ部ローラ23iに対する第1中間転写ベルト21巻き掛け領域に、ローラ部材たる2次転写ローラ46をベルトおもて面側から圧接せしめて、且つ、その巻き掛け領域と2次転写ローラ46との接触部である2次転写ニップを第1転写部として機能させている。かかる構成では、上述したように、第1転写部たる2次転写ニップと、第2転写部との間にガイド板を設けなくても、転写紙Pを確実に第2中間転写ベルト31のベルト展張領域に接触させることができる。
また、第1変形例装置においては、第1中間転写ベルト21を張架する複数の張架ローラのうち、2次転写ニップで第1中間転写ベルト21を巻き掛ける張架部材として、張架ローラたるニップ部ローラ23iを用いている。そして、その巻き掛け領域に圧接せしめるローラ部材たる2次転写ローラ46として、ニップ部ローラ23iよりも高硬度のものを用いている。かかる構成では、上述したように、両ローラの硬度を同じにしたり、ニップ部ローラ23iをより高硬度にしたりする場合に比べて、2次転写ニップ出口で転写紙Pを第1中間転写ベルト21から大きく離して、第2中間転写ベルト31のベルト展張領域により強く押し付けることができる。
また、実施形態に係る複写機や、第1変形例装置においては、第2中間転写ベルト31のベルト展張領域に対する転写紙Pの突き当たり角度γを、3〜30[°]に設定している。かかる構成では、上述したように、転写紙Pを第2中間転写ベルト31に十分に押し付けて、第2転写部での転写紙Pと第2中間転写ベルト31との密着不良による第2トナー像の転写不良を更に確実に抑えることができる。また、第2中間転写ベルト31に転写紙P先端の引っ掛けて転写紙Pをある程度湾曲させた後、転写紙P先端側を跳ね上げて第2トナー像を乱してしまうといった事態を抑えることもできる。