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JP2004200632A - 位置検出方法、露光方法及び露光装置、デバイス製造方法、並びにプログラム及び情報記録媒体 - Google Patents

位置検出方法、露光方法及び露光装置、デバイス製造方法、並びにプログラム及び情報記録媒体 Download PDF

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JP2004200632A
JP2004200632A JP2003030252A JP2003030252A JP2004200632A JP 2004200632 A JP2004200632 A JP 2004200632A JP 2003030252 A JP2003030252 A JP 2003030252A JP 2003030252 A JP2003030252 A JP 2003030252A JP 2004200632 A JP2004200632 A JP 2004200632A
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JP2003030252A
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Shinichi Nakajima
伸一 中島
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Nikon Corp
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Publication date
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Abstract

【課題】物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求める。
【解決手段】複数のマークを計測して得られるn個の実測位置情報の中から、k個の仮異常値と(n−k)個の仮正常値との情報の組み合わせを複数抽出する。次いで、抽出した各組み合わせに対応する統計モデルそれぞれについて、所定のモデルパラメータ及びAICの算出、並びに該AICに基づくモデルの確からしさの推定を行う(ステップ124、132、140)。次に、その推定結果に基づいて、全統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択し、その選択された統計モデルのモデルパラメータを、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出するためのモデル式のモデルパラメータの統計的に最も妥当な値として決定する(ステップ142)。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、位置検出方法、露光方法及び露光装置、デバイス製造方法、並びにプログラム及び情報記録媒体に係り、更に詳しくは、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を検出する位置検出方法、該位置検出方法を用いる露光方法及び露光装置、これら露光方法及び露光装置を用いるデバイス製造方法、並びに露光装置の制御用コンピュータに前記位置検出方法を実行させるプログラム及び該プログラムが記録された情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子等のデバイスの製造工程では、ステップ・アンド・リピート方式、又はステップ・アンド・スキャン方式等の露光装置、ウエハプローバ、あるいはレーザリペア装置等が用いられている。これらの装置では、基板上に規則的(マトリックス状)に配列された複数のチップパターン領域(ショット領域)の各々を、基板の移動位置を規定する静止座標系(すなわちレーザ干渉計によって規定される直交座標系)内の所定の基準点(例えば、各種装置の加工処理点)に対して極めて精密に位置合わせ(アライメント)する必要がある。
【0003】
特に、露光装置では、マスク又はレチクル(以下、「レチクル」と総称する)に形成されたパターンの投影位置に対して基板(半導体ウエハやガラスプレート等)を位置合わせ(アライメント)するに際して、製造段階のチップでの不良品の発生による歩留りの低下を防止するため、その位置合わせ精度を常に高精度かつ安定に維持しておくことが望まれている。
【0004】
通常、露光工程では、ウエハ上に10層以上の回路パターン(レチクルパターン)を重ね合わせて転写するが、各層間での重ね合わせ精度が悪いと、回路上の特性に不都合が生じることがある。このような場合、チップが所期の特性を満足せず、最悪の場合にはそのチップが不良品となり、歩留りを低下させてしまう。そこで、露光工程では、ウエハ上の複数のショット領域の各々に予めアライメントマークを付設しておき、ステージ座標系上におけるそのマーク位置(座標値)を検出する。しかる後、このマーク位置情報と既知のレチクルパターンの位置情報(これは事前測定される)とに基づいてウエハ上の1つのショット領域をレチクルパターンに対して位置合わせ(位置決め)するウエハアライメントが行われる。
【0005】
ウエハアライメントには大別して2つの方式があり、1つはウエハ上のショット領域毎にそのアライメントマークを検出して位置合わせを行うダイ・バイ・ダイ(D/D)アライメント方式である。もう1つは、ウエハ上のいくつかのショット領域のみのアライメントマークを検出してショット領域の配列の規則性を求めることで、各ショット領域を位置合わせするグローバル・アライメント方式である。現在のところ、デバイス製造ラインではスループットとの兼ね合いから、主にグローバル・アライメント方式が使用されている。特に現在では、ウエハ上のショット領域の配列の規則性を統計的手法によって精密に特定するエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)方式が主流となっている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。
【0006】
EGA方式とは、1枚のウエハにおいて予め特定ショット領域として選択された複数個(3個以上必要であり、通常7〜15個程度)のショット領域のみの位置座標を計測し、これらの計測値から統計演算処理(最小二乗法等)を用いてウエハ上の全てのショット領域の位置座標(ショット領域の配列)を算出した後、この算出したショット領域の配列に従ってウエハステージをステッピングさせていくものである。このEGA方式は計測時間が短くて済み、ランダムな計測誤差に対して平均化効果が期待できるという長所がある。
【0007】
ここで、EGA方式で行われている統計処理方法について簡単に説明する。ウエハ上のm(m≧3なる整数)個の特定ショット領域(「サンプルショット領域」又は「アライメントショット領域」とも呼ばれる)の設計上の配列座標を(X、Y)(n=1、2、……、m)とし、設計上の配列座標からのずれ(ΔX、ΔY)について次式(1)で示されるような線形モデルを仮定する。
【0008】
【数1】
Figure 2004200632
【0009】
さらに、m個のサンプルショット領域の各々の実際の配列座標の設計上の配列座標からのずれ(計測値)を(Δx、Δy)としたとき、このずれと上記線形モデルで仮定される設計上の配列座標からのずれとの残差の二乗和Eは次式(2)で表される。
【0010】
【数2】
Figure 2004200632
【0011】
そこで、この式を最小にするようなパラメータa、b、c、d、e、fを最小二乗法などの統計演算により求めれば良い。EGA方式では、上記の如くして算出されたパラメータa〜fと設計上の配列座標とに基づいて、ウエハ上の全てのショット領域の配列座標が算出されることになる。
【0012】
ところで、上記のEGA方式のウエハアライメントでは、マークの欠陥などの影響で、著しく精度の悪い計測値が混入する場合があるが、このような場合、その精度の悪い計測値の影響を軽減して上記のパラメータa〜fを算出することが、ショット領域の配列座標を精度良く求めるためには好ましい。従来、このような精度の悪い計測値の影響を軽減する方法として、以下のような方法が提案されている。
【0013】
第1の方法として、計算された統計モデルからのフィッティング残差に閾値を設定し、絶対値がその閾値以上大きい計測値は異常値として除外し、残りの正常値だけでモデルを計算し直す方法がある(例えば、特許文献3参照)。
【0014】
第2の方法として、予め除外数を決定し、(計測数−除外数)個の集合を作る組み合わせの数だけモデルを仮定し、これらモデルに対応する計測値の標準偏差(フィッティング残差)をモデルの確からしさの指標値とし、その確からしさの指標値によって重み付け平均を取ったモデルを採用する方法がある(例えば、特許文献4参照)。
【0015】
【特許文献1】
特開昭61−44429号公報
【特許文献2】
特開昭62−84516号公報
【特許文献3】
特開平8−97123号公報
【特許文献4】
国際公開第00/49367号パンフレット
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記第1の方法では、残差の絶対値を閾値として使用するため、正常値集合のばらつきに依存して閾値を変更する必要があるが、そのような閾値の変更を適切に行う簡易な方法が見当たらない。
【0017】
一方、上記第2の方法では、そのような閾値の変更の困難性はなく、定性的にいわゆる跳びショット(他のショット領域のアライメント誤差(計測誤差)と比べて特にアライメント誤差が大きなショット領域)の影響を軽減することができる。この第2の方法では、モデルの確からしさをフィッティング残差によって評価している。しかるに、正常値集合から残差最大の計測値を除外すると標準偏差は必ず小さくなる。この点を考慮すると、第2の方法は、必然的に除外数を固定したモデルに適用した場合にのみ効果を発揮すると考えられるが、除外数の妥当性を考慮することができないという不都合があった。
【0018】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求めることができる位置検出方法を提供することにある。
【0019】
また、本発明の第2の目的は、物体上の複数の区画領域に精度良くパターンを形成することができる露光方法及び露光装置を提供することにある。
【0020】
また、本発明の第3の目的は、デバイスの生産性を向上させることができるデバイス製造方法を提供することにある。
【0021】
また、本発明の第4の目的は、露光装置の制御用コンピュータによって実行され、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求めることを可能とするプログラム及び該プログラムが記録された情報記録媒体を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、物体(W)上の複数の区画領域(SAu,v)の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を検出する位置検出方法であって、前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る計測工程と;前記各実測位置情報が従う複数の確率分布モデルの線形結合から成る少なくとも2つの統計モデルを推定し、その確からしさを推定する推定工程と;前記推定結果に基づいて、前記少なくとも2つの統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択する選択工程と;前記選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する算出工程と;を含む位置検出方法である。
【0023】
本明細書において、「マークの実測位置情報」は、マークの座標値に限らず、マークに関する位置情報であって統計処理に適切な情報であれば如何なる情報であっても良い。また、物体上の複数のマークの配置(又はレイアウト)と複数の区画領域の配置(又はレイアウト)との間には、一定の関係があることは必要であるが、区画領域それぞれに対応してマークが設けられていることまでは必要ではない。要は、複数のマークの検出結果に基づいて複数の区画領域の位置情報が得られれば良い。
【0024】
これによれば、計測工程において、物体上に複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る。すなわち、このn個の実測位置情報を用いることにより、統計的な手法により前記モデル式のm個の未知パラメータを決定することが可能である。
【0025】
次いで、推定工程において、n個の実測位置情報が従う複数の確率分布モデルの線形結合から成る少なくとも2つの統計モデルを推定し、その確からしさを推定する。そして、選択工程において、上記の統計モデルの確からしさの推定結果に基づいて、確からしさが推定された少なくとも2つの統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択し、算出工程において、その選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する。
【0026】
すなわち、各統計モデル間において確からしさが比較され、その比較結果に基づいて比較された統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルが選択されることとなる。従って、n個の実測位置情報が従う統計モデルの最尤推定が自動的に行われ、n個の実測位置情報についての正常値及び異常値の区別を行う際の困難性を伴うことなく、尤も確からしい、すなわち尤も妥当な統計モデルを機械的に選択することが可能となり、その選択された統計モデルに対応する未知パラメータとモデル式とに基づいて物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を精度良く算出することができる。従って、本発明の位置検出方法によれば、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求めることが可能となる。
【0027】
この場合、請求項2に記載の位置検出方法のごとく、前記推定工程は、前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する工程と;前記抽出した各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する工程と;を含むこととすることができる。
【0028】
これによれば、前記推定工程において、前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の仮異常値(異常値と仮定した値)と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の仮正常値(正常値と仮定した値)との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する。この場合、いずれの組み合わせについても、仮正常値の数(n−k)は、m<n−k≦nを満たす。すなわち、仮正常値の位置情報のみで、前述のモデル式のm個の未知パラメータを統計的手法により決定することが可能である。
【0029】
そこで、その抽出した各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する。これにより、仮異常値の数、すなわち未知パラメータの決定から除かれる除外数の値の如何にかかわらず、抽出した組み合わせに対応する全ての統計モデルについて、未知パラメータを含む全てのモデルパラメータが算出されるとともに、確からしさが推定される。
【0030】
そして、上記の統計モデルの確からしさの推定結果に基づいて、確からしさが推定された少なくとも2つの統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択する。すなわち、前述の除外数(自由度)が同じ統計モデル間のみならず、除外数が異なる統計モデル間においても確からしさが比較され、その比較結果に基づいて比較された統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルが選択されることとなる。従って、前述の除外数の決定が自動的に行われ、その決定に伴なう困難性とは無縁となる。
【0031】
請求項3に記載の発明は、物体(W)上の複数の区画領域(SAu,v)の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を検出する位置検出方法であって、前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る工程と;前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する工程と;前記抽出した各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する工程と;前記推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値を推定し、その推定した未知パラメータの値と前記モデル式とを用いて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する工程と;を含む位置検出方法である。
【0032】
これによれば、物体上に複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個(統計的な手法により前記モデル式のm個の未知パラメータを決定することが可能な数)の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る。
【0033】
次いで、前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の仮異常値(異常値と仮定した値)と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の仮正常値(正常値と仮定した値)との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する。この場合、いずれの組み合わせについても、仮正常値の数(n−k)は、m<n−k≦nを満たす。すなわち、仮正常値の位置情報のみで、前述のモデル式のm個の未知パラメータを統計的手法により決定することが可能である。
【0034】
そこで、その抽出した各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する。これにより、仮異常値の数、すなわち未知パラメータの決定から除かれる除外数の値の如何にかかわらず、抽出した組み合わせに対応する全ての統計モデルについて、未知パラメータを含む全てのモデルパラメータが算出されるとともに、確からしさが推定される。
【0035】
そして、推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値を推定し、その推定した未知パラメータの値と前記モデル式とを用いて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する。すなわち、推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値が推定されるので、より確からしい統計モデルに対応する未知パラメータの算出値には大きな重みが付され、確からしさが劣る統計モデルに対応する未知パラメータの算出値には小さな重みが付されて重み付け平均演算が行われる。このため、前述の除外数(自由度)が同じ統計モデル間のみならず、除外数が異なる統計モデル間においても確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算が行われ、未知パラメータの統計的に妥当な値が推定される。従って、除外数の決定に伴う困難性とは無縁であるとともに、未知パラメータの統計的に妥当な値を機械的に推定することが可能となり、その推定された未知パラメータの値とモデル式とに基づいて物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を精度良く算出することができる。従って、本発明の位置検出方法によれば、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求めることが可能となる。
【0036】
この場合において、請求項4に記載の位置検出方法の如く、前記推定されたモデルの確からしさに基づいて前記抽出した各組み合わせに対応する少なくとも2つの統計モデルを、2つの集合に分類する工程を更に含み、前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する工程では、前記分類の結果、より確からしい統計モデルの集合に属する統計モデルに対応する情報のみを、前記重み付け平均演算に用いることとすることができる。
【0037】
上記請求項3に記載の位置検出方法において、請求項5に記載の位置検出方法の如く、前記統計モデルの確からしさを推定する工程では、kの値が小さい統計モデルから順に前記モデルパラメータの算出と確からしさの推定とを行い、前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する工程では、前記推定の結果、k=k1に属する全統計モデルのうちの最も確からしい統計モデルの確からしさを示す規準と、k=k1+α(αは自然数)に属する全統計モデルのうち最も確からしい統計モデルの確からしさを示す規準との差が所定の閾値以下である場合、k=k1+αに属する全統計モデルのうちの最も確からしい統計モデルに対応する情報のみを、前記重み付け平均演算に用いることとすることができる。
【0038】
上記請求項2〜5に記載の各位置検出方法において、前述のモデルの確からしさを示す規準としては種々の規準が考えられ、この規準に応じてモデルの確からしさも種々の概念を用いて表すことができる。例えば請求項6に記載の位置検出方法の如く、前記規準は、仮正常値の位置情報から求められる前記各統計モデルの残差及び該統計モデルのパラメータ数に対して確からしさを単調に減少させる関数であり、前記統計モデルの確からしさは、上記関数と所定の事前確率との積であることとすることができる。あるいは、請求項7に記載の位置検出方法の如く、前記規準は、カルバックライブラー情報量(Kullback−Leibler information:KLI)のデータ数倍であり、前記モデルの確からしさは、カルバックライブラー情報量の前記データ数倍の符号反転の指数関数及びこの関数と所定の事前確率との積のいずれかであることとすることができる。あるいは、請求項8に記載の位置検出方法の如く、前記規準は、赤池情報量規準(AIC:Akaike’s information criterion)であり、その値をAICとした場合に、前記統計モデルの確からしさは、−AIC/2の指数関数及び該関数と所定の事前確率との積のいずれかであることとすることができる。なお、本明細書においては、赤池情報量規準の略称AICを、該情報量規準の値としても用いるものとする。
【0039】
上記請求項6〜8に記載の各位置検出方法において、請求項9に記載の位置検出方法の如く、前記事前確率は、過去に得られた前記実測位置情報に基づいて求められる異常値の起こり得る確率であることとすることができる。
【0040】
上記請求項2〜5に記載の各位置検出方法において、請求項10に記載の位置検出方法のごとく、前記規準は、前記未知パラメータの数及び前記実測位置情報の数に関して前記統計モデルの確からしさを単調に減少させる関数を含む規準であることとすることができる。かかる場合には、統計モデルの確からしさを単調に減少させる関数の大きさが、未知パラメータの数だけでなく、実測位置情報の数(データ数)によっても左右されるようになり、本発明の位置検出方法のように、混合分布モデルの確からしさを推定する場合においても、例えば未知パラメータ数の多いモデルを選択する傾向が強くなるような、前記規準によるモデル推定の偏りをデータ数による成分で補正することができるようになるので、結果的にそのモデルの確からしさをより精度良く推定することができるようになる。
【0041】
この場合、請求項11に記載の位置検出方法のごとく、前記関数は、前記n個の実測位置情報に異常値が無いという仮説を帰無仮説とし、前記n個の実測位置情報に異常値が有るという仮説を対立仮説として尤度比検定を行った場合の有意水準が所定の水準以下となるような関数であることとすることができる。かかる場合には、n個の実測位置情報の中に異常値が無い(帰無仮説)のに有るという過誤(第1種の過誤)を犯す確率である有意水準を所定の水準以下に抑制するような関数、例えば帰無仮説と対立仮説との間の尤度比検定の際の両者の対数尤度比の閾値の半分としているので、第1種の過誤を犯す確率を低減し、統計モデルの確からしさの推定を行うことができるので、統計モデルの確からしさを精度良く推定することができるようになる。
【0042】
この場合、請求項12に記載の位置検出方法のごとく、前記関数は、前記未知パラメータの数に関する比例関数であることとすることができる。かかる場合には、前記関数を未知パラメータの数に比例させ、未知パラメータと実測位置情報との組合せ数が多数あっても、帰無仮説と、その帰無仮説に最も近い対立仮説(例えば異常値が1つあるいは異常値の確率密度モデルが1つの統計モデル)とで例えば、シミュレーション等でその比例係数を算出しておけば、実際に統計モデルの確からしさの推定を行う際には、未知パラメータの数とその比例係数との積によって確からしさの規準のバイアス補正を行うだけで、その関数を帰無仮説と対立仮説との間の尤度比検定を行う際の閾値の半分に近似させることができるので、統計モデルの推定に要する時間を短縮することができるようになる。この場合、請求項13に記載の位置検出方法のごとく、前記規準は、ベイジアン情報量規準であることとすることができる。
【0043】
請求項2に記載の位置検出方法において、請求項14に記載の位置検出方法の如く、前記確からしさを推定する工程では、kの値が小さい統計モデルから順に、前記全てのモデルパラメータの算出及び前記確からしさの推定を行い、k=k1に属する全統計モデルのうちの最良の統計モデルの確からしさの規準が、k=k1+α(αは自然数)に属する全統計モデルのうち最良のモデルの前記確からしさの規準よりも良い場合に、前記統計モデルの確からしさの推定演算を終了し、それまでに確からしさが推定された全ての統計モデルのうちの最良の統計モデルを選択することとすることができる。かかる場合には、検出精度を殆ど低下させることなく、計算時間を短縮することが可能となる。
【0044】
上記請求項2〜14のいずれか一項に記載の位置検出方法において、請求項15に記載の位置検出方法のごとく、前記統計モデルは、前記仮正常値が属する正規分布と、その正規分布とは標準偏差が同一で平均値が異なる前記各仮異常値に対応する正規分布との混合分布であることとすることができる。また、請求項16に記載の位置検出方法のごとく、前記統計モデルは、前記仮正常値が属する正規分布と、その正規分布とは平均値が同一で標準偏差が異なる前記仮異常値が属する正規分布との混合分布であることとすることができる。
【0045】
上記請求項1に記載の位置検出方法において、請求項17に記載の位置検出方法のごとく、前記推定工程では、前記各実測位置情報が前記確率密度分布モデルへの帰属度を示す事後確率に基づいて前記統計モデルのモデルパラメータの最尤推定を行い、最尤推定されたモデルパラメータに基づいて、前記事後確率を再計算する処理を、そのモデルパラメータによって決定される統計モデルの確からしさの変動が収束するまで繰り返し実行することによって、モデルパラメータが異なる少なくとも2つの統計モデルの確からしさを推定し、前記選択工程では、最終的に推定された統計モデルを、尤も確からしい統計モデルとして選択することとすることができる。
【0046】
これによれば、推定工程において、それらの実測位置情報が従う統計モデルを、複数の確率密度分布モデルの線形結合からなる混合分布モデルとして、各実測位置情報が各確率密度モデルに所属する事後確率の算出、その事後確率に基づいて決定されるモデルパラメータの推定値の算出、さらにその推定値による前述の事後確率の算出を繰り返すことによって、統計モデルの尤度が単調に増加することが保証されている処理、いわゆるEM(Expectation and Maximization)アルゴリズムを実行することによって統計モデルのモデルパラメータの最適解を逐次接近的に求める。このようにすれば、誤差を含む各実測位置情報を、正常値と異常値とに完全に区別せず、その所属を確率論的に取り扱うことができるようになるため、それらの実測位置情報が従う統計モデルを精度良く推定することができる。
【0047】
この場合、請求項18に記載の位置検出方法のごとく、前記各確率密度分布モデルは、互いの標準偏差が同一で平均値が異なる正規分布であることとしても良いし、請求項19に記載の位置検出方法のごとく、前記各確率密度分布モデルは、互いの平均値が同一で標準偏差が異なる正規分布であることとしても良い。
【0048】
請求項20に記載の発明は、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を検出する位置検出方法であって、前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る工程と;前記n個の実測位置情報を全て仮正常値とした場合の前記モデル式のモデルパラメータの値を算出し、算出されたモデルパラメータを用いた前記モデル式の計算によって得られるn個の位置情報とそれらに対応する前記各実測位置情報との残差を実測位置情報毎に算出する工程と;前記n個の実測位置情報のうち、前記残差の大きさが大きい方から上位k番目までの実測位置情報を、k(0≦k<n−m)個の仮異常値とみなし、該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを各kの値についてそれぞれ1つずつ抽出する工程と;前記抽出した組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、その確からしさを推定する工程と;前記推定結果に基づいて、前記統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択し、その選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する工程と;を含む位置検出方法である。
【0049】
これによれば、同一の仮異常値の数を有する統計モデルのうち、全ての実測位置情報が正常値であると仮定した場合に算出されるモデルパラメータに基づくモデル式の計算によって得られるn個の位置情報と、それらに対応する各実測位置情報との残差が最も大きい統計モデルだけについて、確からしさを推定する。かかる場合には、仮正常値と仮異常値との全ての組合せについての統計モデルの確からしさを算出する必要がなくなるので、検出精度を殆ど低下させることなく、計算時間を短縮することが可能となる。
【0050】
請求項21に記載の発明は、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を検出する位置検出方法であって、前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る工程と;前記n個の実測位置情報を全て正常値と仮定した場合の前記モデル式のモデルパラメータの値を算出し、算出されたモデルパラメータを用いた前記モデル式の計算によって得られるn個の位置情報とそれらに対応する前記各実測位置情報との残差の絶対値を実測位置情報毎に算出する工程と;前記n個の実測位置情報のうち、異常値として除外されていない実測位置情報の中で前記残差の絶対値が最大である実測位置情報について、正常値の絶対最大値の分布に従うのが尤もらしいとする尤度と、異常値の分布に従うのが尤もらしいとする尤度とを比較した結果、その実測位置情報が前記異常値の分布に従うのが尤もらしいと判断した場合には、その実測位置情報を異常値として除外する処理を、その実測位置情報が正常値の絶対最大値の分布に従うのが尤もらしいと判断されるまで、前記残差の絶対値が大きい順に実行する工程と;異常値として除外されなかった正常値を用いて算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する工程と;を含む位置検出方法である。
【0051】
これによれば、n個の実測位置情報にそれぞれ対応する各実測位置情報との残差の絶対値に基づいて、そのn個の実測位置情報の中で、残差の絶対値が最大である実測位置情報が、正常値の絶対最大値の分布に含まれるのか、異常値の分布に含まれるのかをそれらの尤度によって判断する。その判断において、異常値の分布に含まれる場合には、その実測位置情報を正常値集合から除外し、正常値の絶対最大値の分布に含まれる場合には、その実測位置情報と、残差の絶対値がその実測位置情報よりも小さい実測位置情報とを正常値として確定することができる。従って、本発明の位置検出方法によれば、n個の実測位置情報の中から正常値を、統計的手法を用いて精度良く抽出することができるようになるため、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求めることが可能となる。
【0052】
請求項22に記載の発明は、物体上の複数の区画領域を順次露光して各区画領域に所定のパターンを形成する露光方法であって、請求項1〜21のいずれか一項に記載の位置検出方法により前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を検出する工程と;前記検出した位置情報に基づいて、前記物体を移動して前記各区画領域を露光する工程と;を含む露光方法である。
【0053】
これによれば、請求項1〜21のいずれか一項に記載の位置検出方法により複数の区画領域の所定点と位置合わせに用いられる位置情報を検出するので、その位置情報を簡易にかつ精度良く検出される。そして、この精度良く検出された位置情報に基づいて、物体を移動して物体上の複数の各区画領域を露光する。従って、物体上の複数の区画領域が所定点、例えば露光基準位置(パターン転写位置)などに対して精度良く位置合わせされるように物体が移動され、複数の区画領域が露光される。従って、物体上の複数の区画領域に精度良くパターンを形成することが可能となる。
【0054】
請求項23に記載の発明は、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、前記リソグラフィ工程では、請求項22に記載の露光方法を用いることを特徴とするデバイス製造方法である。
【0055】
請求項24に記載の発明は、物体(W)上の複数の区画領域(SAu,v)を順次露光して各区画領域に所定のパターンを形成する露光装置であって、マークを検出するマーク検出系(AS)と;前記物体が載置されるステージと;前記ステージの位置を計測する計測装置(18)と;前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、該複数のマークを、前記ステージを順次移動して前記マーク検出系を用いて順次検出し、その検出結果と各マーク検出時の前記計測装置の計測結果とに基づいて前記n個の実測位置情報を算出する検出制御系(20)と;前記各実測位置情報の確率分布モデルとしての複数の確率分布モデルの線形結合から成る少なくとも2つの統計モデルを推定し、その確からしさを推定する推定装置と;前記推定結果に基づいて、前記少なくとも2つの統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択する選択装置と;前記選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する算出装置(20)と;前記算出装置で算出された位置情報に基づいて、前記ステージを介して物体を移動して、前記各区画領域を露光する露光制御系(20)と;を備える露光装置である。
【0056】
これによれば、検出制御系において、物体上に複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る。すなわち、このn個の実測位置情報を用いることにより、統計的な手法により前記モデル式のm個の未知パラメータを決定することが可能である。
【0057】
次いで、推定装置において、n個の実測位置情報が従う複数の確率分布モデルの線形結合から成る少なくとも2つの統計モデルを推定し、その確からしさを推定する。そして、選択装置において、上記の統計モデルの確からしさの推定結果に基づいて、確からしさが推定された少なくとも2つの統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択し、算出装置において、その選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する。
【0058】
すなわち、各統計モデル間において確からしさが比較され、その比較結果に基づいて比較された統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルが選択されることとなる。従って、n個の実測位置情報が従う統計モデルの最尤推定が自動的に行われ、n個の実測位置情報についての正常値及び異常値の区別を行う際の困難性を伴うことなく、尤も確からしい、すなわち尤も妥当な統計モデルを機械的に選択することが可能となり、その選択された統計モデルに対応する未知パラメータとモデル式とに基づいて物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を精度良く算出することができる。従って、本発明の位置検出方法によれば、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求めることが可能となる。
【0059】
そして、露光制御系が、算出装置で算出された位置情報に基づいて、ステージを介して物体を移動して、前記各区画領域を露光する。この場合、上記の如く精度良く検出された位置情報に基づいて、物体上の複数の区画領域が所定点、例えば露光基準位置(パターン転写位置)などに対して精度良く位置合わせされるように物体が移動され、複数の区画領域が露光される。従って、物体上の複数の区画領域に精度良くパターンを形成することが可能となる。
【0060】
この場合、請求項25に記載の露光装置のごとく、前記推定装置は、前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する抽出装置と;前記抽出された各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する装置と;を備えることとすることができる。
【0061】
これによれば、抽出装置は、前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の仮異常値(異常値と仮定した値)と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の仮正常値(正常値と仮定した値)との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する。この場合、いずれの組み合わせについても、仮正常値の数(n−k)は、m<n−k≦nを満たす。すなわち、仮正常値の位置情報のみで、モデル式のm個の未知パラメータを統計的手法により決定することが可能である。
【0062】
そこで、確からしさを推定する装置は、前記抽出された各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する。これにより、仮異常値の数、すなわち未知パラメータの決定から除かれる除外数の如何にかかわらず、抽出した組み合わせに対応する全ての統計モデルについて、未知パラメータを含む全てのモデルパラメータが算出されるとともに、確からしさが推定される。
【0063】
次いで、選択装置が、そして、上記の統計モデルの確からしさの推定結果に基づいて、確からしさが推定された少なくとも2つの統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択する。すなわち、前述の除外数(自由度)が同じ統計モデル間のみならず、除外数が異なる統計モデル間においても確からしさが比較され、その比較結果に基づいて比較された統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルが選択されることとなる。従って、前述の除外数の決定が自動的に行われ、その決定に伴なう困難性とは無縁となる。
【0064】
上記請求項24に記載の露光装置において、請求項26に記載の露光装置のごとく、前記推定装置は、前記各実測位置情報の前記複数の確率分布モデルへの帰属度を示す事後確率に基づいて前記統計モデルのモデルパラメータの最尤推定を行い、最尤推定されたモデルパラメータに基づいて、前記事後確率を再計算する処理を、そのモデルパラメータによって決定される統計モデルの確からしさの変動が収束するまで繰り返し実行し、前記選択装置は、最終的に推定された統計モデルを、尤も確からしい統計モデルとして選択することとすることができる。
【0065】
これによれば、推定装置において、それらの実測位置情報が従う統計モデルを、複数の確率密度分布モデルの線形結合からなる混合分布モデルとして、各実測位置情報が各確率密度モデルに所属する事後確率の算出、その事後確率に基づいて決定されるモデルパラメータの推定値の算出、さらにその推定値による前述の事後確率の算出を繰り返すことによって、統計モデルの尤度が単調に増加することが保証されている処理、いわゆるEMアルゴリズムを実行することによって統計モデルのモデルパラメータの最適解を逐次接近的に求める。このようにすれば、誤差を含む各実測位置情報を、正常値と異常値とに完全に区別せず、その所属を確率論的に取り扱うことができるようになるため、それらの実測位置情報が従う統計モデルを精度良く推定することができる。
【0066】
請求項27に記載の発明は、物体(W)上の複数の区画領域(SAu,v)を順次露光して各区画領域に所定のパターンを形成する露光装置であって、マークを検出するマーク検出系(AS)と;前記物体が載置されるステージ(WST)と;前記ステージの位置を計測する計測装置(18)と;前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、該複数のマークを、前記ステージを順次移動して前記マーク検出系を用いて順次検出し、その検出結果と各マーク検出時の前記計測装置の計測結果とに基づいて前記n個の実測位置情報を算出する検出制御系(20)と;前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する抽出装置(20)と;前記抽出された各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する推定装置(20)と;前記推定装置で推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値を推定し、その推定した未知パラメータの値と前記モデル式とを用いて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する算出装置(20)と;前記算出装置で算出された位置情報に基づいて、前記ステージを介して物体を移動して、前記各区画領域を露光する露光制御系(20)と;を備える露光装置である。
【0067】
これによれば、検出制御系が、物体上に複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、該複数のマークを、前記ステージを順次移動して前記マーク検出系を用いて順次検出し、その検出結果と各マーク検出時の前記計測装置の計測結果とに基づいて前記n個(統計的な手法により前記モデル式のm個の未知パラメータを決定することが可能な数)の実測位置情報を算出する。
【0068】
次いで、抽出装置は、前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の仮異常値(異常値と仮定した値)と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の仮正常値(正常値と仮定した値)との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する。この場合、いずれの組み合わせについても、仮正常値の数(n−k)は、m<n−k≦nを満たす。すなわち、仮正常値の位置情報のみで、前述のモデル式のm個の未知パラメータを統計的手法により決定することが可能である。
【0069】
そこで、推定装置は、前記抽出された各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する。これにより、異常値の数、すなわち未知パラメータの決定から除かれる除外数の如何にかかわらず、抽出した組み合わせに対応する全ての統計モデルについて、未知パラメータを含む全てのモデルパラメータが算出されるとともに、確からしさが推定される。
【0070】
そして、算出装置は、推定装置で推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値を推定し、その推定した未知パラメータの値と前記モデル式とを用いて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する。すなわち、推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値が推定されるので、より確からしい統計モデルに対応する未知パラメータの算出値には大きな重みが付され、確からしさが劣る統計モデルに対応する未知パラメータの算出値には小さな重みが付されて重み付け平均演算が行われる。このため、前述の除外数(自由度)が同じ統計モデル間のみならず、除外数が異なる統計モデル間においても確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算が行われ、未知パラメータの統計的に妥当な値が推定される。この場合、未知パラメータの統計的に妥当な値を機械的に推定することが可能となり、その推定された未知パラメータの値とモデル式とに基づいて物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を精度良く算出することができる。
【0071】
そして、露光制御系が、算出装置で算出された位置情報に基づいて、ステージを介して物体を移動して、前記各区画領域を露光する。この場合、上記の如く精度良く検出された位置情報に基づいて、物体上の複数の区画領域が所定点、例えば露光基準位置(パターン転写位置)などに対して精度良く位置合わせされるように物体が移動され、複数の区画領域が露光される。従って、物体上の複数の区画領域に精度良くパターンを形成することが可能となる。
【0072】
請求項28に記載の発明は、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、前記リソグラフィ工程では、請求項24〜27のいずれか一項に記載の露光装置を用いて露光を行うことを特徴とするデバイス製造方法である。
【0073】
請求項29に記載の発明は、物体上の複数の区画領域を順次露光して各区画領域に所定のパターンを形成する露光装置で用いられるプログラムであって、前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る計測手順と;前記各実測位置情報が従う複数の確率分布モデルの線形結合から成る少なくとも2つの統計モデルを推定し、その確からしさを推定する推定手順と;前記推定結果に基づいて、前記少なくとも2つの統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択する選択手順と;前記選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する算出手順と;を、前記露光に先立って前記露光装置の制御用コンピュータに実行させるプログラムである。
【0074】
このプログラムが露光装置の制御用コンピュータにインストールされると、制御用コンピュータが、上記各手順を実行する。これにより、請求項1に記載の位置検出方法が、制御用コンピュータによって実行される。従って、請求項1と同様に、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求めることが可能となる。
【0075】
この場合、請求項30に記載のプログラムのごとく、前記推定手順として、
前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する手順と;前記抽出した各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する手順と;を前記制御用コンピュータに実行させることとすることができる。
【0076】
また、上記請求項29に記載のプログラムにおいて、請求項31に記載のプログラムのごとく、前記推定手順として、前記各実測位置情報が前記確率密度分布モデルに所属していたとする事後確率に基づいて前記モデルパラメータの最尤推定を行い、最尤推定されたモデルパラメータに基づいて、前記事後確率を再計算する処理を、計算されるモデルパラメータによって決定される統計モデルの確からしさの変動が収束するまで繰り返し実行することによって、モデルパラメータが異なる少なくとも2つの統計モデルの確からしさを推定する手順を、前記選択手順として、最終的に推定された統計モデルを、尤も確からしい統計モデルとして選択する手順を前記制御用コンピュータに実行させることとすることができる。
【0077】
請求項32に記載の発明は、物体上の複数の区画領域を順次露光して各区画領域に所定のパターンを形成する露光装置で用いられるプログラムであって、前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る手順と;前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する手順と;前記抽出した各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する手順と;前記推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値を推定し、その推定した未知パラメータの値と前記モデル式とを用いて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する手順と;を前記露光に先立って前記露光装置の制御用コンピュータに実行させるプログラムである。
【0078】
このプログラムが露光装置の制御用コンピュータにインストールされると、制御用コンピュータが、上記各手順を実行する。これにより、請求項3に記載の位置検出方法が、制御用コンピュータによって実行される。従って、請求項3と同様に、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求めることが可能となる。
【0079】
上記請求項30又は32に記載の各プログラムにおいて、請求項33に記載のプログラムの如く、前記規準は赤池情報量規準であり、その値をAICとした場合に、前記統計モデルの確からしさは、−AIC/2の指数関数及び該関数と所定の事前確率との積のいずれかであることとすることができる。
【0080】
上記請求項30又は32に記載のプログラムにおいて、請求項34に記載のプログラムのごとく、前記規準は、前記未知パラメータの数及び前記実測位置情報の数に関して前記統計モデルの確からしさを単調に減少させる関数を含む規準であることとすることができる。
【0081】
この場合、請求項35に記載のプログラムのごとく、前記関数は、前記n個の実測位置情報に異常値が無いという仮説を帰無仮説とし、前記n個の実測位置情報に異常値が有るという仮説を対立仮説として尤度比検定を行った場合の有意水準が所定の水準以下となるような閾値のほぼ半分となる関数であることとすることができる。
【0082】
この場合、請求項36に記載のプログラムのごとく、前記関数は、前記未知パラメータの数に関する比例関数であることとすることができる。
【0083】
この場合、請求項37に記載のプログラムのごとく、前記規準は、ベイジアン情報量規準であることとすることができる。
【0084】
請求項38に記載の発明は、請求項29〜37のいずれか一項に記載のプログラムが記録されたコンピュータによる読み取りが可能な情報記録媒体である。
【0085】
【発明の実施の形態】
≪第1の実施形態≫
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。
【0086】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る露光装置100の概略構成が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。この露光装置100は、照明系10、マスクとしてのレチクルRを保持するレチクルステージRST、投影光学系PL、物体としてのウエハWが搭載されるウエハステージWST、マーク検出系としてのアライメント検出系AS、及び装置全体を統括制御する主制御装置20等を備えている。
【0087】
前記照明系10は、例えば特開平6−349701号公報等の開示されるように、光源、オプティカル・インテグレータを含む照度均一化光学系、リレーレンズ、可変NDフィルタ、可変視野絞り(レチクルブラインド又はマスクキング・ブレードとも呼ばれる)、及びダイクロイックミラー等(いずれも不図示)を含んで構成されている。オプティカル・インテグレータとしては、フライアイレンズ、ロッドインテグレータ(内面反射型インテグレータ)、あるいは回折光学素子などが用いられる。
【0088】
この照明系10では、回路パターン等が描かれたレチクルR上で、レチクルブラインドで規定されたスリット状の照明領域(X軸方向に細長い長方形状の照明領域)部分を照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの遠紫外光、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、あるいはFレーザ光(波長157nm)などの真空紫外光などが用いられる。照明光ILとして、超高圧水銀ランプからの紫外域の輝線(g線、i線等)を用いることも可能である。
【0089】
前記レチクルステージRST上にはレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、リニアモータ、ボイスコイルモータ等を駆動源とする不図示のレチクルステージ駆動部によって、照明系10の光軸(後述する投影光学系PLの光軸AXに一致)に垂直なXY平面内で微少駆動可能であるとともに、所定の走査方向(ここでは図1における紙面内左右方向であるY軸方向とする)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
【0090】
レチクルステージRSTのステージ移動面内の位置はレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)16によって、移動鏡15を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。ここで、実際には、レチクルステージRST上にはY軸方向に直交する反射面を有する移動鏡とX軸方向に直交する反射面を有する移動鏡とが設けられ、これらの移動鏡に対応してレチクルY干渉計とレチクルX干渉計とが設けられているが、図1ではこれらが代表的に移動鏡15、レチクル干渉計16として示されている。なお、例えば、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡15の反射面に相当)を形成しても良い。また、レチクルステージRSTの走査方向(本実施形態ではY軸方向)の位置検出に用いられるX軸方向に伸びた反射面の代わりに、少なくとも1つのコーナーキューブ型ミラーを用いても良い。ここで、レチクルY干渉計とレチクルX干渉計の少なくとも一方、例えばレチクルY干渉計は、測長軸を2軸有する2軸干渉計であり、このレチクルY干渉計の計測値に基づきレチクルステージRSTのY位置に加え、θz方向(Z軸回りの回転方向)の回転量(ヨーイング量)も計測できるようになっている。レチクル干渉計16からのレチクルステージRSTの位置情報(ヨーイング量などの回転情報を含む)はステージ制御装置19及びこれを介して主制御装置20に供給される。ステージ制御装置19では、主制御装置20からの指示に応じて、レチクルステージRSTの位置情報に基づいてレチクルステージ駆動部を介してレチクルステージRSTを駆動制御する。
【0091】
レチクルRの上方には、X軸方向に所定距離隔てて一対のレチクルアライメント顕微鏡22(但し、図1においては紙面奥側のレチクルアライメント顕微鏡22は不図示)が配置されている。各レチクルアライメント顕微鏡22は、ここでは図示が省略されているが、それぞれ露光光ILと同じ波長の照明光にて検出対象のマークを照明するための落射照明系と、その検出対象のマークの像を撮像するための顕微鏡とを含んで構成されている。顕微鏡は結像光学系と撮像素子とを含んでおり、この顕微鏡による撮像結果(すなわちレチクルアライメント顕微鏡22によるマークの検出結果)は主制御装置20に供給されている。この場合、レチクルRからの検出光をレチクルアライメント顕微鏡22に導くための不図示の偏向ミラーが移動自在に配置されており、露光シーケンスが開始されると、主制御装置20からの指令に基づいて不図示の駆動装置により偏向ミラーはそれぞれレチクルアライメント顕微鏡22と一体的に露光光ILの光路外に退避される。
【0092】
前記投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向とされている。投影光学系PLとしては、両側テレセントリックで所定の縮小倍率(例えば1/5、又は1/4)を有する屈折光学系が使用されている。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルRの照明領域が照明されると、レチクルRの回路パターンの照明領域部分の縮小像(部分倒立像)が投影光学系PLを介してウエハW上の前記照明領域に共役な投影光学系の視野内の投影領域に投影され、ウエハW表面のレジスト層に転写される。
【0093】
前記ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における下方で、不図示のベース上に配置されている。このウエハステージWST上にウエハホルダ25が載置されている。このウエハホルダ25上にウエハWが例えば真空吸着等によって固定されている。
【0094】
ここで、ウエハステージWSTは、実際には、不図示のリニアモータ等によってXY面内で自在に駆動されるXYステージと、該XYステージ上に載置され、ウエハホルダ25を投影光学系PLの光軸AX方向(Z軸方向)及び光軸に直交する面に対する傾斜方向に不図示の駆動系(ボイスコイルモータなどを含む)を介して駆動するZチルトステージとを備えている。このように、ウエハステージWSTは、複数のステージから構成され、駆動系もそれぞれ設けられるが、以下においては、ウエハステージWSTは、図1のウエハステージ駆動部24により、X、Y、Z、θz(Z軸回りの回転方向)、θx(X軸回りの回転方向)、及びθy(Y軸回りの回転方向)の5自由度方向に駆動可能な単一のステージであるものとして説明する。なお、残りのθz方向については、ウエハステージWST(具体的には、ウエハホルダ25)を回転可能に構成しても良いし、このウエハステージWSTのヨーイング誤差をレチクルステージRST側の回転により補正することとしても良い。
【0095】
前記ウエハステージWST(正確にはZチルトステージ)の側面には、位置計測装置としてのウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」という)18からのレーザビームを反射する移動鏡17が固定され、外部に配置されたウエハ干渉計18により、ウエハステージWSTのX方向、Y方向及びθz方向(Z軸回りの回転方向)の位置が例えば、0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。
【0096】
ここで、ウエハステージWST上には、実際には、X軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とY軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡とが設けられている。また、これに対応して、ウエハ干渉計もX移動鏡、Y移動鏡にそれぞれレーザ光を照射してウエハステージWSTのX軸方向、Y軸方向の位置をそれぞれ計測するX軸干渉計、Y軸干渉計がそれぞれ設けられている。
【0097】
本実施形態では、X軸及びY軸干渉計は測長軸を複数有する多軸干渉計で構成され、ウエハステージWSTのX、Y位置の他、回転(ヨーイング(Z軸回りの回転であるθz回転)、ピッチング(X軸回りの回転であるθx回転)、ローリング(Y軸回りの回転であるθy回転))も計測可能となっている。
【0098】
このようにウエハ干渉計、及び移動鏡はそれぞれ複数設けられているが、図1ではこれらが代表的に移動鏡17、ウエハ干渉計18として示されている。ここで、例えば、ウエハステージWSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡の反射面に相当)を形成しても良い。
【0099】
また、ウエハステージWST上のウエハWの近傍には、基準マーク板FMが固定されている。この基準マーク板FMの表面は、ウエハWの表面と同じ高さに設定され、この表面には少なくとも一対のレチクルアライメント用基準マーク、及びアライメント検出系ASのベースライン計測用の基準マーク等が形成されている。
【0100】
前記アライメント検出系ASは、投影光学系PLの側面に配置された、オフアクシス方式のアライメントセンサである。このアライメント検出系ASとしては、例えばウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標の像とを撮像素子(CCD)等を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系のセンサが用いられている。なお、FIA系に限らず、コヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出する、あるいはその対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数)を干渉させて検出するアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。このアライメント検出系ASの撮像結果が不図示のアライメント信号処理系を介して主制御装置20へ出力されている。
【0101】
制御系は、図1中、主制御装置20及びこの配下にあるステージ制御装置などによって主に構成される。主制御装置20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含んで構成され、装置全体を統括して制御する。
【0102】
主制御装置20には、例えばハードディスクから成る記憶装置、キーボード,マウス等のポインティングデバイス等を含んで構成される入力装置、及びCRTディスプレイ(又は液晶ディスプレイ)等の表示装置(いずれも図示省略)、並びにCD(compact disc),DVD(digital versatile disc),MO(magneto−optical disc)あるいはFD(flexible disc)等の情報記録媒体のドライブ装置46が、外付けで接続されている。ドライブ装置46にセットされた情報記録媒体(以下では、CDであるものとする)には、後述するフローチャートで示されるウエハアライメント及び露光動作時の処理アルゴリズムに対応するプログラム(以下、便宜上、「特定プログラム」と呼ぶ)、その他のプログラム、並びにこれらのプログラムに付属するデータベースなどが記録されている。
【0103】
主制御装置20は、例えば露光動作が的確に行われるように、前述の特定プログラムに従った処理を実行し、例えばレチクルRとウエハWの同期走査、ウエハWのステッピング等を制御する。
【0104】
具体的には、前記主制御装置20は、例えば走査露光時には、レチクルRがレチクルステージRSTを介して+Y方向(又は−Y方向)に速度V=Vで走査されるのに同期して、ウエハステージWSTを介してウエハWが前述の照明領域に共役な投影領域に対して−Y方向(又は+Y方向)に速度V=β・V(βはレチクルRからウエハWに対する投影倍率)で走査されるように、レチクル干渉計16、ウエハ干渉計18の計測値に基づいて不図示のレチクルステージ駆動部、ウエハステージ駆動部24をそれぞれ介してレチクルステージRST、ウエハステージWSTの位置及び速度をそれぞれ制御する。また、ステッピングの際には、主制御装置20ではウエハ干渉計18の計測値に基づいてウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTの位置を制御する。
【0105】
さらに、本実施形態の露光装置100は、投影光学系PLの最良結像面に向けて複数のスリット像を形成するための結像光束を光軸AX方向に対して斜め方向より供給する不図示の照射系と、その結像光束のウエハWの表面での各反射光束を、それぞれスリットを介して受光する不図示の受光系とから成る斜入射方式の多点フォーカス検出系を備えている。この多点フォーカス検出系としては、例えば特開平6−283403号公報などに開示されるものと同様の構成のものが用いられ、この多点フォーカス検出系の出力が主制御装置20に供給されている。主制御装置20では、この多点フォーカス検出系からのウエハ位置情報に基づいてステージ制御装置19及びウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ方向及び傾斜方向に駆動する。
【0106】
次に、上述のようにして構成された本実施形態の露光装置100により、ウエハWに対して第2層目(セカンドレイヤ)以降の層の露光処理を行う際の動作について説明する。
【0107】
前提として、ドライブ装置46にセットされたCD−ROM内の特定プログラム及びその他のプログラムは、記憶装置にインストールされているものとする。さらに、そのうちのレチクルアライメント及びベースライン計測処理のプログラムが、主制御装置20内部のCPUによって記憶装置からメインメモリにロードされているものとする。
【0108】
まず、不図示のレチクルローダにより、レチクルステージRST上にレチクルRがロードされる。このレチクルロードが終了すると、主制御装置20(より正確には、CPU)では、レチクルアライメント及びベースライン計測を前述のレチクルアライメント及びベースライン計測処理のプログラムに従って以下のようにして実行する。
【0109】
すなわち、主制御装置20では、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWST上の基準板FMを投影光学系PLの直下の所定位置(以下、便宜上「基準位置」と呼ぶ)に位置決めし、基準板FM上の一対の第1基準マークと対応するレチクルR上の一対のレチクルアライメントマークとの相対位置を前述の一対のレチクルアライメント顕微鏡22を用いて検出する。そして、主制御装置20では、レチクルアライメント顕微鏡22の検出結果と、その検出時の干渉計16、18の計測値とをメモリに記憶する。次いで、主制御装置20では、ウエハステージWST及びレチクルステージRSTを、それぞれ所定距離だけY軸方向に沿って相互に逆向きに移動して、基準板FM上の別の一対の第1基準マークと対応するレチクルR上の別の一対のレチクルアライメントマークとの相対位置を前述の一対のレチクルアライメント顕微鏡22を用いて検出する。そして、主制御装置20では、レチクルアライメント顕微鏡22の検出結果と、その検出時の干渉計16、18の計測値とをメモリに記憶する。次いで、上記と同様にして、基準板FM上の更に別の一対の第1基準マークと対応するレチクルアライメントマークとの相対位置関係を更に計測しても良い。
【0110】
そして、主制御装置20では、このようにして得られた少なくとも2対の第1基準マークと対応するレチクルアライメントマークとの相対位置関係の情報と、それぞれの計測時の干渉計16、18の計測値とを用いて、干渉計16の測長軸で規定されるレチクルステージ座標系と干渉計18の測長軸で規定されるウエハステージ座標系との相対位置関係を求める。これにより、レチクルアライメントが終了する。
【0111】
次いで、主制御装置20では、ウエハステージWSTを前述の基準位置に戻し、その基準位置から所定量、例えばベースラインの設計値だけXY面内で移動して、アライメント検出系ASを用いて基準板FM上の第2基準マークを検出する。主制御装置20では、このとき得られるアライメント検出系ASの検出中心と第2基準マークの相対位置関係の情報及び先にウエハステージWSTが基準位置に位置決めされた際に計測した一対の第1基準マークと対応する一対のレチクルアライメントマークと相対位置関係の情報と、それぞれの計測時のウエハ干渉計18の計測値とに基づいて、アライメント検出系ASのベースライン、すなわちレチクルパターンの投影中心とアライメント検出系ASの検出中心(指標中心)との距離(位置関係)を算出する。
【0112】
次いで、主制御装置20では、不図示のウエハローダの制御系にウエハWのロードを指示する。これにより、ウエハローダによって、ウエハWがウエハステージWST上のウエハホルダ25上にロードされる。ここで、本実施形態では、ウエハWのロードに先立って、不図示のプリアライメント装置により、ウエハWは、その回転ずれと中心位置ずれが高精度に調整されており、いわゆるサーチアライメントが不要となっているものとする。
【0113】
このような一連の準備作業が終了すると、主制御装置20では、前述のレチクルアライメント及びベースライン計測処理のプログラムをメインメモリからアンロードするとともに、前述の特定プログラムをメインメモリにロードする。以後、この特定プログラムに従って、ウエハアライメント、ここではEGA方式のウエハアライメント及びウエハW上の各ショット領域に対する露光が行われる。
【0114】
以下、このEGA方式のウエハアライメント及び露光動作について、上記特定プログラムに従って実行される、主制御装置20内のCPUの処理アルゴリズムを示す図3〜図5のフローチャットに沿って適宜他の図面を参照しつつ説明する。
【0115】
前提として、ウエハW上には、図2に示されるように、前層までの処理工程で複数(例えばN個)のショット領域SAu,vがマトリック状の配置で形成されるとともに、隣接するショット領域間の100μm幅程度のストリートライン上に、ウエハアライメントXマーク(ウエハXマーク)MX、ウエハアライメントYマーク(ウエハYマーク)MYがそれぞれ形成されている。このうち、ウエハXマークMXのX位置は、ショット領域SA(の中心C)のX座標に設計上一致し、ウエハYマークMYのY位置は、ショット領域SA(の中心C)のY座標に設計上一致するようになっている。すなわち、設計上は、ウエハXマークMXのX位置とウエハYマークMYのY位置とにより、ショット領域SA(の中心C)の位置座標が求められるようになっている。
【0116】
この場合、ウエハXマークMXとしては、例えばX軸方向を周期方向とするラインアンドスペースマークが用いられ、ウエハYマークMYとしては、例えばY軸方向を周期方向とするラインアンドスペースマークが用いられている。これらのマークとしては、一例としてラインパターンを3本有するマークが用いられているが、ラインパターンの数は何本でも良い。
【0117】
ところで、ウエハWに形成されたウエハXマーク、ウエハYマークが、設計位置からずれる(すなわちショット領域SAが設計値からずれる)のは、ウエハステージWSTの移動位置を規定するウエハステージ座標系(X,Y)と設計座標系であるショット領域の配列座標系すなわちウエハ座標系(α,β)との不整合が原因であり、かかる不整合が生じる主要因は、次の4つであると考えられる。
【0118】
▲1▼ウエハの回転:これはウエハステージ座標系(X,Y)に対するウエハの座標系(α,β)の残留回転誤差θで表される。
▲2▼ウエハステージ座標系(X,Y)の直交度:これはX軸方向及びY軸方向のウエハステージWSTの送りが正確に直交していないことにより生じ、直交度誤差wで表される。
▲3▼ウエハ座標系(α,β)におけるα軸方向及びβ軸方向の線形伸縮(ウエハスケーリング):これはウエハWが加工プロセス等によって全体的に伸縮することである。この伸縮量はα軸方向及びβ軸方向についてそれぞれウエハスケーリングR及びRで表される。ただし、α軸方向のウエハスケーリングRはウエハW上のα方向の2点間の距離の実測値と設計値との比、β軸方向のウエハスケーリングRはβ方向の2点間の実測値と設計値との比で表すものとする。
▲4▼ウエハ座標系(α,β)のステージ座標系(X,Y)に対するオフセット:これはウエハWがウエハステージWSTに対して全体的に微小量だけずれることにより生じ、オフセット量O,Oで表される。
【0119】
上記の▲1▼〜▲4▼の誤差要因が加わった場合、ウエハ座標系(α,β)における設計上の位置(DX,DY)に転写されるパターンは、次式(3)によって求められるウエハステージ座標系(X,Y)上の位置(EX,EY)に転写されることになる。
【0120】
【数3】
Figure 2004200632
【0121】
なお、実際の転写にあたっては、上記の誤差要因以外にも様々な誤差要因があると考えられるので、位置(EX,EY)は予想転写位置として位置づけられる。
【0122】
一般に、直交度誤差w及び残留回転誤差θは微小量であるとみなして良いので、式(3)中の三角関数を1次近似で表した次の式(4)によって、設計上の転写位置(DX,DY)と予想転写位置(EX,EY)とが関係付けられることになる。
【0123】
【数4】
Figure 2004200632
【0124】
なお、以下の説明では、式(4)は次の式(5)のような形式でも表すことにする。
【0125】
【数5】
Figure 2004200632
【0126】
ここで、
a=R …(6)
b=−R・(w+θ) …(7)
c=R・θ …(8)
d=R …(9)
e=Ox …(10)
f=Oy …(11)
である。
【0127】
すなわち、ショット領域SAの配列を一義的に規定するEGAパラメータは、a、b、c、d、e、及びfの6つのパラメータであるということができる。
【0128】
ここで、前述したサンプルショット領域(アライメントショット領域)に付設されたウエハアライメントマーク(以下、「サンプルマーク」とも呼ぶ)、すなわち前述のウエハXマークMX、ウエハYマークMYのうちの、選択された各h個、合計2h(=n)個のサンプルマークM(q=1、2、……、n(n>6))の設計上の位置座標のうちの、ウエハXマークのX座標は、該マークが付設されたショット領域中心のX座標と一致し、ウエハYマークのY座標は、該マークが付設されたショット領域中心のY座標と一致している。従って、これらのサンプルマークの配列座標を用いて統計演算により求められる、ウエハマークの配列座標は、ショット領域の配列座標と正確に一致する。
【0129】
従って、以下ではサンプルマークのX座標、Y座標が、それらのマークが付設されたサンプルショット領域の座標を示すものとして、サンプルショット領域の設計上の配列座標を(X、Y)(p=1、2、……、h)とし、設計上の配列座標からのずれ(dX、dY)について、次式(12)、(13)で示されるような前述の式(1)と等価な線形モデルを仮定する。
【0130】
dX=a・X+b・Y+e ……(12)
dY=c・X+d・Y+f ……(13)
【0131】
なお、本実施形態では、サンプルショット領域として、同一直線状に位置しないh=8個のショット領域がウエハWの全領域に渡って予め選択されているものとする。また、この8個のサンプルショット領域に付設されたX,Y両方のサンプルマーク(合計2h=n(=16)個のサンプルマーク)について、計測が行われるものとする。
【0132】
但し、上の仮定は、説明の便宜上からのもので、サンプルマークの数は、XマークとYマークとを必ず含み、全てのXマーク、全てのYマークがともに同一直線状になく、全体として7個以上であればその数は問わない。すなわち、前述の式(5)又は式(12)及び式(13)などを用いる場合、サンプルショット領域は、少なくとも4個以上であれば良い。
【0133】
以下、フローチャートに沿って説明する。まず、図3のステップ102において、後述する異常値の数(除外すべきサンプルマークの数)を示すカウンタkを「0」に初期化するとともに、サンプルショットの番号を示すカウンタpを「1」に初期化する。なお、本実施形態で説明する異常値は、実際の異常値(跳びショットの計測値)であるかどうかに拘わらず、異常値として仮定した値、すなわち仮異常値であるが、以下においては、単に「異常値」と記述するものとする。同様に、正常値は、実際の正常値であるかどうかに拘わらず、正常値として仮定した値、すなわち仮正常値であるが、以下においては、単に「正常値」と記述するものとする。
【0134】
次のステップ104では、第p番目(ここでは第1番目)のサンプルショット領域のウエハXマークMXがアライメント検出系ASの検出視野(撮像視野)内に位置する目標位置へウエハステージWSTを移動するようにステージ制御装置19に対して指示する。この指示に応じてステージ制御装置19では、ウエハ干渉計18の計測値をモニタしつつウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTを上記目標位置へ移動する。
【0135】
次のステップ106では、その第p番目(ここでは第1番目)のサンプルショット領域のウエハXマークMXを、アライメント検出系ASを用いて撮像する。この撮像の結果、不図示のアライメント処理装置からアライメント検出系ASの指標中心を基準とするウエハXマークMXのX位置座標XM(ここでは、XM)が主制御装置20に送られる。この場合、アライメント処理装置では、ウエハXマークMXの撮像信号に基づいて、ウエハXマークMXの各ラインパターンの両端のエッジ位置を、公知のスライス法、あるいは最大傾斜位置検出法などの手法により検出する。次いで、アライメント処理装置では、検出した各ラインパターンの両端のエッジ位置の平均値を該ラインパターンの位置とし、全てのラインパターン位置の平均値を算出する。そして、アライメント処理装置では、この算出した平均値を、指標中心を基準とする値に変換して、上述のX位置座標XMとして主制御装置20に供給する。なお、ウエハXマークの位置の検出方法自体は、上記の他にも公知の種々のマーク位置検出方法の適用が可能であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0136】
次のステップ108では、第p番目(ここでは第1番目)のサンプルショット領域のウエハXマークMXのウエハステージ座標系上におけるX位置x、すなわちこの場合ウエハXマークMXのX位置xを、アライメント検出系ASの撮像結果であるX位置座標(XM)とその検出時のウエハ干渉計18の計測値とに基づいて算出するとともに、ウエハXマークMXのY座標値として当該サンプルショット領域の設計上のY座標値(Y=Y)を用いて、第1番目のウエハXマークの位置座標を(x、Y)として、不図示のメモリに記憶する。
【0137】
次のステップ110では、第p番目(ここでは第1番目)のサンプルショット領域のウエハYマークMYがアライメント検出系ASの検出視野(撮像視野)内に位置する目標位置へウエハステージWSTを移動するようにステージ制御装置19に対して指示する。この指示に応じてステージ制御装置19では、ウエハ干渉計18の計測値をモニタしつつウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTを上記目標位置へ移動する。
【0138】
次のステップ112では、その第p番目(ここでは第1番目)のサンプルショット領域のウエハYマークMYを、アライメント検出系ASを用いて撮像する。この撮像の結果、不図示のアライメント処理装置からアライメント検出系ASの指標中心を基準とするウエハYマークMYのY位置座標YM(ここでは、YM)が主制御装置20に送られる。この場合も、アライメント処理装置では、前述のウエハXマークの場合と同様の処理を行う。
【0139】
次のステップ114では、第p番目(ここでは第1番目)のサンプルショット領域のウエハYマークMYのウエハステージ座標系上におけるY位置y、すなわちこの場合ウエハYマークMYのY位置yを、アライメント検出系ASの撮像結果であるY位置座標(YM)とその検出時のウエハ干渉計18の計測値とに基づいて算出するとともに、ウエハYマークMYのY座標値として当該サンプルショット領域の設計上のX座標値(X=X)を用いて、第1番目のウエハYマークの位置座標を(X、y)として、不図示のメモリに記憶する。
【0140】
次のステップ116では、カウンタpを参照してp=hであるか否かを判断することにより、h個(8個)のサンプルショット領域におけるウエハXマーク及びウエハYマークの位置座標の検出が完了したか否か判断する。この場合、第1番目のサンプルショット領域におけるマークの位置座標の検出が終了したのみなので、ここでの判断は否定され、ステップ118に移行してカウンタpを1インクリメント(p←p+1)した後、ステップ104に戻る。
【0141】
その後、ステップ116の判断が肯定されるまで、上記ステップ104→106→108→110→112→114→116→118のループの処理、判断を繰り返して、第2番目〜第h番目のサンプルショット領域のウエハXマークMX〜MXの位置座標(x、Y)、(x、Y)、……、(x、Y)、及びウエハYマークMY〜MYの位置座標(X、y)、(X、y)、……、(X、y)を、ウエハXマークMX及びウエハYマークMYと同様にして順次検出(算出)し、メモリに記憶する。
【0142】
そして、h個(8個)のサンプルショット領域のマークの位置座標の検出、記憶が終了すると、ステップ116の判断が肯定され、図4のステップ120のk=0に対応するX側、Y側の統計モデルのAIC(赤池情報量規準)を算出するサブルーチンに移行する。なお、以下の説明では、上述のようにして得られたサンプルマークの座標値(x、Y)、(x、Y)、(x、Y)、……、(x、Y)、及び(X、y)、(X、y)、(X、y)、……、(X、y)を、サンプルマークの計測値とも呼ぶものとする。
【0143】
このステップ120のサブルーチンでは、図6に示されるように、まず、ステップ202において、n=2h=16個全てのサンプルマークの位置座標(実測位置情報)を用いて、前述のEGAパラメータ(a〜f)を演算して、不図示のメモリに記憶する。
【0144】
以下、このEGAパラメータの算出について簡単に説明する。この場合、サンプルショット領域としては、h=n/2(=8)個のショット領域が選択されているので、それらのサンプルショット領域の設計値(X、Y)を、前述の式(12)、(13)にそれぞれ代入して、EGAパラメータ込みで、サンプルショット領域の設計上の配列座標からのずれ(dX、dY)(p=1〜h)を求める。
【0145】
次いで、先に検出した各サンプルショット領域についてウエハXマークのX座標x(p=1、2、……、h)、及びウエハYマークのY座標y(p=1,2、……、h)によって定まるサンプルショット領域の実際の配列座標(x、y)の設計上の配列座標からのずれ(εX、εY)を求め、次式(14)で示される、ずれ(εX、εY)と上記線形モデルで仮定される設計上の配列座標からのずれとの残差の二乗和Eが最小となるEGAパラメータa,b,c,d,e,fを最小二乗法により求める。すなわち、式(14)によって求められるEを、6個のパラメータa,b,c,d,e,fそれぞれで偏微分したものを0として得られる6つの方程式から成る連立方程式を解くことによって、EGAパラメータa,b,c,d,e,fを求める。
【0146】
【数6】
Figure 2004200632
【0147】
上述の説明から明らかなように、本実施形態では、ウエハXマークからはX位置、ウエハYマークからはY位置のみを実測位置情報として検出している(すなわち、ウエハXマークのY位置、ウエハYマークのX位置としては設計値をそのまま用いている)ので、パラメータa,b,eは、h個のウエハXマークからなるサンプル集合(Sとする)から得られ、パラメータc,d,fは、h個のウエハYマークからなるサンプル集合(Sとする)から得られたものと考えても問題ない。
【0148】
そこで、次のステップ204では、サンプル集合Sの要素である各ウエハXマークの分布を示す統計モデル、サンプル集合Sの要素である各ウエハYマークの分布を示す統計モデルを算出し、メモリ内に記憶する。ここでは、h個のウエハXマーク、h個のウエハYマークの全てを正常値と考えている、すなわち前述の除外数k=0の場合であるから、実測値の誤差(εX)、(εY)は、正規分布に従うものと仮定する。
【0149】
すなわち、次式(15)、(16)であらわされるような統計モデルを算出し、メモリ内に記憶する。
【0150】
dX=a・X+b・Y+e+εX
=a・X+b・Y+e+N(0,σ ) ……(15)
dY=c・X+d・Y+f+εY
=c・X+d・Y+f+N(0,σ ) ……(16)
ただし、N(μ,σ)は、平均値μ、分散σの正規分布である。
【0151】
ここで、分散σ 、σ は、次式(17)、(18)のように表される。
【0152】
【数7】
Figure 2004200632
【0153】
ここで、σ、σは、それぞれ、式(15)、(16)の統計モデルの標準偏差である。
【0154】
次のステップ206では、それぞれ式(15)、(16)で表されるX側、Y側の統計モデル(M、Mとする)のAICを算出し、メモリ内に記憶する。
【0155】
ここで、AICについて簡単に説明する。計測によってモデルが得られたとき、これが真の分布と一致する対数尤度を表す量として、カルバックライブラー情報量(KLI)がある。KLIのデータ数(n)倍の、モデルを表現するパラメータ数の増加に伴う偏りを修正した推定値(の2倍)がAICである。統計モデルMのAICは、次式(19)で表される。
【0156】
AIC(M)=−2MLL(M)+2k …(19)
ここで、MLL(M)は統計モデルMの下での最大対数尤度であり、kは統計モデルMの未知パラメータの数である。
【0157】
正規分布の最大対数尤度は意味をもたない定数項を除いて、次式(20)で表される。
【0158】
MLL(M)=−hlogσ …(20)
ここで、hは計測値の数、σは統計モデルMの標準偏差(パラメータの1つ)である。
【0159】
従って、統計モデルMのAICは、次式(21)で表される。
【0160】
AIC(M)=2hlogσ+2k …(21)
上述の如く、kは統計モデルMの未知パラメータの数であるから、厳密に言えば、kはEGAパラメータの数、正常値の分布により定まる平均値、及び分散(又は標準偏差)をも含むものであるが、本実施形態では、便宜上、kは前述の異常値の数k、すなわちカウンタkの値であるものとして説明する。このようにしても、EGAパラメータ、正常値の分布により定まる平均値、及び分散(又は標準偏差)などは、後述するAICを用いた比較の対象となるいずれの統計モデルにも含まれているので、何ら問題はない。
【0161】
すなわち、ステップ206では、統計モデルM、Mのそれぞれについて上式(19)を用いて、AIC(M)=2hlogσ、及びAIC(M)=2hlogσが算出され、メモリ内に記憶される。その後、メインルーチンのステップ122(図4参照)に戻る。
【0162】
ステップ122では、カウンタkを1インクリメント(k←k+1)するとともに、異常値として除外すべきマークの番号を規定するカウンタiを「1」に初期化する。
【0163】
次のステップ124では、k=1に対応する(異常値を1つ含む)X側統計モデルのAICを算出するサブルーチンの処理を行う。
【0164】
このサブルーチン124では、まず、図7のステップ210において、第i番目(ここでは、第1番目)のウエハXマークの計測値を除く、ウエハXマークの計測値の副集合SXi(この場合SX1)を作成し、メモリに記憶する。
【0165】
次のステップ212では、上記ステップ210で作成した副集合SXi(この場合SX1)の要素である(h−1)個のウエハXマークの計測値を用いて、前述のステップ202と同様の手順で最小二乗法を用いて式(12)中の未知パラメータa、b、eの推定値a、b、e(この場合、a、b、e)を算出する。
【0166】
次のステップ214では、第i番目(ここでは第1番目)ウエハXマークの計測値を異常値とし、残りのウエハXマークの計測値を正常値とする統計モデルMXi(この場合MX1)を算出し、メモリに記憶する。
【0167】
ここで、異常値を含む統計モデルを、以下のように仮定する。
a) 前述の如く、正常値の計測値の誤差の分布は正規分布に従う。
b) 各異常値の分布も、それぞれが平均値μとなる正規分布(集合の要素は1つである)に従う。異常値の集合(要素は1つだが)の分散(及び標準偏差)は正常値と同じであると仮定する。
【0168】
上記の仮定によれば、異常値の数を1としたときの統計モデルMXiは、次式(22)で表される。
【0169】
【数8】
Figure 2004200632
【0170】
ここで、分散σx は、次式(23)のようになる。
【0171】
【数9】
Figure 2004200632
【0172】
この場合のΣは、pがi以外の場合の総和をとることを意味する。また、この分散σx の計算には、不偏分散(正常値の数、h−1で除算した分散)を用いず、最尤推定による分散(全計測点数hで除算した分散)を用いる。なお、異常値の数による偏りは、AICのパラメータ数に依存する項で補正される。
【0173】
また、異常値の分布は、平均値μ、分散σXi の正規分布に従うものとする。
【0174】
従って、上記統計モデルMXiを式で表すと、次式(24)のように表すことができる。
【0175】
Xi=M(μXi、σXi、μ) …(24)
上式において、μXiは、次式(25)で表される正常値の計測値の平均値である。なお、σXiは、統計モデルMXiの標準偏差、すなわち、上記式(23)で表される分散の平方根である。
【0176】
ΜXi=a・X+b・Y+e …(25)
【0177】
すなわち、この場合のステップ214では、第1番目のウエハXマークの計測値を異常値とし、残りのウエハXマークの計測値を正常値とする次式(26)で示される統計モデルMX1が、算出され、メモリ内に記憶される。
【0178】
X1=M(μX1、σX1、μ) …(26)
【0179】
次のステップ216では、上記ステップ216で算出した統計モデルMXi(この場合MX1)のAICを算出し、メモリに記憶する。
【0180】
この結果、メモリ内には、次式(27)で示されるAIC(MX1)が記憶される。
【0181】
AIC(MX1)=−2(h−1)log(h−1)+2hlogσX1+2…(27)ここで、最後の項の2は、異常値(の平均値μ)の数である1の2倍という意味である。
【0182】
次のステップ218では、カウンタiを参照して、その値数iがh(=8)であるか否かを判断する。この場合、カウンタi=1であるから、ここでの判断は否定され、ステップ220に移行して、カウンタiを1インクリメント(i←i+1)した後、ステップ210に戻る。以後、ステップ218における判断が肯定されるまで、ステップ210→212→214→216→218→220のループの処理、判断を繰り返す。
【0183】
これにより、▲1▼第2番目、第3番目、……、第h番目のウエハXマークの計測値を除く、ウエハXマークの計測値の副集合SX2、SX3、……、SXhの作成、記憶、▲2▼これらの副集合SXi(i=2〜h)の要素である(h−1)個のウエハXマークの計測値を用いたEGAパラメータの推定値a、b、e(i=2〜h)の算出、▲3▼第i番目のウエハXマークの計測値を異常値とし、残りのウエハXマークの計測値を正常値とする統計モデルMXi=M(μXi、σXi、μ)(i=2〜h)の算出、記憶、並びに▲4▼上記統計モデルMXi=M(μXi、σXi、μ)(i=2〜h)についてのAICの算出、記憶が行われる。この結果、メモリ内には、i=1〜hについて、
AIC(MXi)=−2(h−1)log(h−1)+2hlogσXi+2…(28)が記憶される。
【0184】
このようにしてAIC(MXi)(i=1〜h)の算出が終了すると、ステップ218における判断が肯定され、メインルーチンのステップ126(図4参照)にリターンする。
【0185】
このステップ126では、メモリ内に記憶されているk=1に対応するX側の統計モデルMXi=M(μXi、σXi、μ)(i=1〜h)の中から尤も確からしい統計モデルを選択する。
【0186】
このステップ126における選択は、AICに基づいて、次のようにして行われる。
【0187】
一般に、AICでは、その値が小さいほどその統計モデルが確からしいと判断され、尤度(統計モデルの確からしさ)は、exp(−AIC/2)に比例すると考えることができる。すなわち、
統計モデルの尤度∝(1/σ)×exp(−k)
が成り立つ。パラメータ数(k)が多ければ標準偏差は小さくなるので(1/σ)は大きくなるが、パラメータを増やしたことにより尤度はexp(−k)だけ低下する。
【0188】
従って、ステップ126では、AIC(MXi)(i=1〜h)の中から最小であるAIC(MXiminを選択し、そのAIC(MXiminに対応する統計モデルを選択する。
【0189】
次のステップ128では、ステップ126で選択した1つの異常値を含む統計モデルのAICであるAIC(MXiminと、前述のステップ206で算出された全計測値が正常値であると見なした場合の統計モデルMについてのAIC(M)=2h・logσとの間に、
AIC(MXimin<AIC(M
の関係が成り立つか否かを判断することにより、統計モデルの確からしさが改善したか否かを判断する。そして、この判断が否定された場合、すなわち統計モデルの確からしさが改善していない場合には、後述するステップ142にジャンプする。この一方、ステップ126の判断が肯定された場合、すなわち統計モデルの確からしさが改善している場合には、ステップ130に進む。
【0190】
ステップ130では、異常値として除外すべき1つ目のマークの番号を規定する前述のカウンタiを「1」に初期化するとともに、異常値として除外すべき2つ目のマークの番号を規定するカウンタjを「2」に初期化する。同時に、カウンタkを1インクリメント(k←k+1)する。
【0191】
次のステップ132では、k=2に対応する(異常値を2つ含む)X側統計モデルのAICを算出するサブルーチンの処理を行う。
【0192】
このサブルーチン132では、まず、図8のステップ222において、第i番目(ここでは、第1番目)と第j番目(ここでは、第2番目)のウエハXマークの計測値を除く、ウエハXマークの計測値の副集合SXij(この場合SX12)を作成し、メモリに記憶する。
【0193】
次のステップ224では、上記ステップ222で作成した副集合SXij(この場合SX12)の要素である(h−2)個のウエハXマークの計測値を用いて、前述のステップ202と同様の手順で最小二乗法を用いて式(12)中の未知パラメータa、b、eの推定値aij、bij、eij(この場合、a12、b12、e12)を算出する。
【0194】
次のステップ226では、第i番目(ここでは第1番目)と第j番目(ここでは第2番目)のウエハXマークの計測値を異常値とし、残りのウエハXマークの計測値を正常値とする統計モデルMXij(この場合MX12)を算出し、メモリに記憶する。
【0195】
この場合の統計モデルは、前述のk=1の場合と基本的には同様の仮定のモデルであるが、異常値を複数含むので、それらの異常値は平均値μ、μの分布(集合の要素は1つである)をするとともに、それらの異常値同士は、相関がなく、また同じ分布に属すると考えないものとする。
【0196】
上記の統計モデルMXijは、正常値の計測値が、次式(29)で示される分布をする。
【0197】
dX=aij・X+bij・Y+eij+N(0,σXij ) …(29)
ここで、分散σXij は、次式(30)のようになる。
【0198】
【数10】
Figure 2004200632
【0199】
この場合のΣは、pがi、j以外の場合の総和をとることを意味する。
【0200】
また、各異常値の分布は、それぞれ平均値μ、分散σXij の正規分布、平均値μ、分散σXij の正規分布に従う。
【0201】
従って、上記統計モデルMXijを式で表すと、次式(31)のように表せる。
【0202】
Xij=M(μXij、σXij、μ、μ) …(31)
上式において、μXijは、次式(32)で表される正常値の計測値の平均値である。また、σXijは、統計モデルMXijの標準偏差、すなわち、上記式(30)で表される分散の平方根である。
【0203】
ΜXij=aij・X+bij・Y+eij …(32)
【0204】
なお、統計モデルMXijのAICは、以下の(33)式で表される。
AIC(MXij)=−2(h−2)log(h−2)+2hlogσXij+2・2 …(33)
【0205】
まず、ステップ226では、第1番目、第2番目のウエハXマークの計測値を異常値とする。すなわち、残りのウエハXマークの計測値を正常値とする次式(34)で示される統計モデルMX12が算出され、メモリ内に記憶される。
【0206】
X12=M(μX12、σX12、μ、μ) ……(34)
【0207】
次のステップ228では、上記ステップ226で算出した統計モデルMXij(この場合MX12)のAICを算出し、メモリに記憶する。
【0208】
この結果、メモリ内には、上述の式(32)に基づく次式(35)で示されるAIC(MX12)が記憶される。
【0209】
AIC(MX12)=−2(h−2)log(h−2)+2hlogσX12+4 …(35)
ここで、4は、異常値(の平均値μ、μ)の数である2の2倍の意味である。
【0210】
次のステップ230では、カウンタjを1インクリメントした(j←j+1)後、ステップ232に進んでカウンタjを参照して、j≦hであるか否かを判断する。この場合、j=3であるからここでの判断は肯定され、ステップ222に戻る。以後、ステップ232における判断が否定されるまで、ステップ222→224→226→228→230→232のループの処理、判断を繰り返す。
【0211】
これにより、▲5▼第1番目と第j番目(j=3〜h)のウエハXマークの計測値を除く、(h−2)個のウエハXマークの計測値から成る副集合SX13、SX14、……、SX1hの作成、記憶、▲6▼これらの副集合SX1j=3〜h)の要素である(h−2)個のウエハXマークの計測値を用いたEGAパラメータの推定値a1j、b1j、e1j(j=3〜h)の算出、▲7▼j=3〜hそれぞれの場合に関する、第1番目と第j番目とのウエハXマークの計測値を異常値とし、残りのウエハXマークの計測値を正常値とする統計モデルMX1j=M(μX1j、σX1j、μ、μ)の算出、記憶、並びに▲8▼上記統計モデルMX1j=M(μX1j、σX1j、μ、μ)(j=3〜h)についてのAICの算出、記憶が行われる。
【0212】
そして、統計モデルMX1hのAICの算出が終了すると、j>hとなってステップ232の判断が否定され、ステップ234に移行する。
【0213】
ステップ234では、カウンタiを1インクリメント(i←i+1)した後、ステップ236に進んでカウンタiを参照して、i≦h−1が成立するか否かを判断する。この場合、i=2であるからここでの判断は肯定され、ステップ238に移行する。
【0214】
ステップ238では、カウンタjをi+1に設定(j←i+1)した後、ステップ222に戻る。以後、ステップ232における判断が否定されるまで、ステップ222→224→226→228→230→232のループの処理、判断を繰り返す。これにより、上記▲5▼〜▲8▼の処理が、i=2の場合について行われ、第2番目と第j番目とのウエハXマークの計測値を異常値とし、残りのウエハXマークの計測値を正常値とする統計モデルMX2j=M(μX2j、σX2j、μ、μ)(j=3〜h)についてのAICがメモリ内に記憶される。
【0215】
このようにして、i=2、j=hの場合の統計モデルMX2hのAICの算出が終了すると、ステップ232における判断が否定され、ステップ234に移行して、カウンタiを1インクリメントする。次のステップ236では、前述と同様の判断が行われるが、このときi=3なので、ここでの判断は肯定され、ステップ238に移行する。このステップ238では、カウンタjをi+1=4に設定した後、ステップ222に戻り、以後ステップ236における判断が否定されるまで、上記ステップ222以下の処理、判断を繰り返す。
【0216】
このようにして、k=2の場合の=h(h−1)/2(=28)個全ての統計モデルMXij=M(μXij、σXij、μ、μ)についてのAICの算出が終了してi=hとなると、ステップ236における判断が否定され、このサブルーチンの処理を終了して、メインルーチンのステップ134(図4参照)にリターンする。このとき、メモリ内には、統計モデルMXijのそれぞれについての上述の式(33)で示されるAICが記憶された状態となっている。
【0217】
ステップ134では、前述のステップ126と同様にして、それぞれの統計モデルのAICに基づいて、メモリ内に記憶されているk=2に対応する個のX側の統計モデルMXij=M(μXij、σXij、μ、μ)の中から尤も確からしい統計モデル、すなわちAICが最小となる統計モデルを選択する。この統計モデルのAICを、AIC(MXijminと記述する。
【0218】
次のステップ136では、ステップ134で選択した統計モデルのAICと、前述のステップ126で選択された統計モデルのAICとの間に、AIC(MXijmin<AIC(MXiminの関係が成り立つか否かを判断することにより、統計モデルの確からしさが改善したか、否かを判断する。そして、この判断が否定された場合、すなわち統計モデルの確からしさが改善していない場合には、後述するステップ142にジャンプする。この一方、上記ステップ136の判断が肯定された場合、すなわち統計モデルの確からしさが改善している場合には、ステップ138に進む。
【0219】
ステップ138では、前述のカウンタiを「1」に、カウンタjを「2」に、それぞれ初期化するとともに、異常値として除外すべき3つ目のマークの番号を規定するカウンタlを「3」に初期化する。同時に、カウンタkを1インクリメント(k←k+1)する。
【0220】
次のステップ140では、k=3に対応する(異常値を3つ含む)X側統計モデルのAICを算出するサブルーチンの処理を行う。
【0221】
このサブルーチン140では、まず、図9のステップ242において、第i番目(ここでは、第1番目)、第j番目(ここでは、第2番目)及び第l番目(ここでは、第3番目)のウエハXマークの計測値を除く、ウエハXマークの計測値の副集合SXijl(この場合SX123)を作成し、メモリに記憶する。
【0222】
次のステップ244では、上記ステップ242で作成した副集合SXijl(この場合SX123)の要素である(h−3)個のウエハXマークの計測値を用いて、前述のステップ202と同様の手順で最小二乗法を用いて式(A)中の未知パラメータa、b、eの推定値aijl、bijl、eijl(この場合、a123、b123、e123)を算出する。
【0223】
次のステップ246では、第i番目(ここでは第1番目)、第j番目(ここでは第2番目)及び第l番目(ここでは第3番目)のウエハXマークの計測値を異常値とし、残りのウエハXマークの計測値を正常値とする統計モデルMXijl(この場合MX123)を算出し、メモリに記憶する。
【0224】
この場合の統計モデルは、前述のk=2の場合と同様の仮定のモデルである。
【0225】
上記の統計モデルMXijlは、正常値の計測値が、次式(36)のように表される。
【0226】
dX=aijl・X+bijl・Y+eijl+N(0,σXijl )…(36)
ここで、分散σXijl は、次式(37)のようになる。
【0227】
【数11】
Figure 2004200632
【0228】
この場合のΣは、pがi、j、l以外の場合の総和をとることを意味する。
【0229】
また、3つの異常値は、それぞれ平均値μ、分散σXijl の正規分布、平均値μ、分散σXijl の正規分布、平均値μ、分散σXijl の正規分布に従うものとする。
【0230】
従って、上記統計モデルMXijlを式で表すと、次式(38)のように表せる。
【0231】
Xijl=M(μXijl、σXijl、μ、μ、μ) ……(38)
上式において、μXijlは、次式(39)で表される正常値の計測値の平均値である。また、σXijlは、統計モデルMXijlの標準偏差、すなわち、上記式(39)で表される分散の平方根である。
【0232】
μXijl=aijl・X+bijl・Y+eijl …(39)
【0233】
なお、統計モデルMXijlのAICは、以下の(40)式で表される。
AIC(MXijl)=−2(h−3)log(h−3)+2hlogσXijl+2・3 …(40)
【0234】
すなわち、この場合のステップ246では、第1番目、第2番目及び第3番目のウエハXマークの計測値を異常値とし、残りのウエハXマークの計測値を正常値とする次式(41)で示される統計モデルMX123が算出され、メモリ内に記憶される。
【0235】
X123=M(μX123、σX123、μ、μ、μ) …(41)
【0236】
次のステップ248では、上記ステップ246で算出した統計モデルMXijl(この場合MX123)のAICを前述のステップ206と同様にして算出し、メモリに記憶する。
【0237】
この結果、メモリ内には、次式(42)で示されるAIC(MX123)が記憶される。
【0238】
AIC(MX123)=−2(h−3)log(h−3)+2hlogσX123+6 …(42)
ここで、6は、各異常値の正規分布(の平均値μ、μ、μ)の数である3の2倍の意味である。
【0239】
次のステップ250では、カウンタlを1インクリメントした(l←l+1)後、ステップ252に進んでカウンタlを参照して、l≦hであるか否かを判断する。この場合、l=4であるからここでの判断は肯定され、ステップ242に戻る。以後、ステップ252における判断が否定されるまで、ステップ242→244→246→248→250→252のループの処理、判断を繰り返す。
【0240】
これにより、a.第1番目、第2番目及び第l番目(l=4〜h)のウエハXマークの計測値を除く、(h−3)個のウエハXマークの計測値から成る副集合SX124、SX125、……、SX12hの作成、記憶、b.これらの副集合SX12l(l=4〜h)の要素である(h−3)個のウエハXマークの計測値を用いたEGAパラメータの推定値a12l、b12l、e12l(l=4〜h)の算出、c.l=4〜hそれぞれの場合に関する、第1番目、第2番目及び第l番目のウエハXマークの計測値を異常値とし、残りのウエハXマークの計測値を正常値とする統計モデルMX12l=M(μX12l、σX12l、μ、μ、μ)の算出、記憶、並びにd.上記統計モデルMX12l=M(μX12l、σX12l、μ、μ、μ)(l=4〜h)についてのAICの算出、記憶が行われる。
【0241】
そして、統計モデルMX12hのAICの算出が終了すると、l>hとなってステップ252の判断が否定され、ステップ254に移行する。
【0242】
ステップ254では、カウンタjを1インクリメント(j←j+1)した後、ステップ256に進んでカウンタjを参照して、j≦h−1が成立するか否かを判断する。この場合、j=3であるからここでの判断は肯定され、ステップ258に移行する。
【0243】
ステップ258では、カウンタlをj+1に設定(l←j+1)した後、ステップ242に戻る。以後、ステップ252における判断が否定されるまで、ステップ242→244→246→248→250→252のループの処理、判断を繰り返す。これにより、上記a〜dの処理が、i=1、j=3の場合について行われ、第1番目、第3番目と第l番目とのウエハXマークの計測値を異常値とし、残りのウエハXマークの計測値を正常値とする統計モデルMX13l=M(μX13l、σX13l、μ、μ、μ)(l=4〜h)についてのAICがメモリ内に記憶される。
【0244】
このようにして、i=1、j=3、l=hの場合の統計モデルMX13hのAICの算出が終了すると、ステップ252における判断が否定され、ステップ254に移行して、カウンタjを1インクリメントする。次のステップ256では、前述と同様の判断が行われるが、このときj=4なので、ここでの判断は肯定され、ステップ258に移行する。このステップ258では、カウンタlをj+1=5に設定した後、ステップ242に戻り、以後ステップ256における判断が否定されるまで、上記ステップ222以下の処理、判断を繰り返す。これにより、i=1の場合で、j=5〜h−1の場合について、前述のa〜dの処理が行われる。
【0245】
そして、i=1、j=h−1、l=hの場合の統計モデルMX1(h−1)hのAICの算出が終了すると、j=hとなって、ステップ256における判断が否定され、ステップ260に進んでカウンタiを1インクリメント(i←i+1)した後、ステップ262に進む。
【0246】
ステップ262では、カウンタiを参照して、i≦h−2が成立するか否かを判断する。この場合、i=2であるから、ここでの判断は肯定され、ステップ264に進んで、カウンタjにi+1を設定するとともに、カウンタlにi+2を設定した後、ステップ242に戻り、以後ステップ262における判断が否定されるまで、上記ステップ242以下の処理、判断を繰り返す。
【0247】
このようにして、k=3の場合の=h(h−1)(h−2)/3(=168)個全ての統計モデルMXijl=M(μXijl、σXijl、μ、μ、μ)についてのAICの算出が終了し、i=h−1となると、ステップ262における判断が否定され、このサブルーチンの処理を終了して、メインルーチンのステップ142(図4)にリターンする。このとき、メモリ内には、統計モデルMXijlのそれぞれについてのAIC、すなわちAIC(MXijl)=2(h−3)log(h−3)+2hlogσXijl+6(i=1〜h−2、i<j=2〜h−1、j<l=3〜h)が記憶されている。
【0248】
図4のステップ142では、それまでに算出した全てのX側統計モデルの中からAICが最小の統計モデルを選択して、その統計モデルのモデルパラメータa,b,e推定値をEGAモデル式のパラメータa,b,eの推定値として決定した後、図5のステップ144に移行して、前述のカウンタk、カウンタiをともに、「1」に初期化した後、ウエハYマークMYの計測値を用いて、ステップ146〜ステップ164の処理を行う。このステップ146〜164の処理は、前述したX側の処理(ステップ124〜142)と全く同様であるので、詳細説明は省略する。
【0249】
この場合、ステップ164において、それまでに算出した全てのY側統計モデルの中からAICが最小の統計モデルが選択され、その統計モデルのモデルパラメータb,e,fの推定値がEGAモデル式のパラメータb,e,fの推定値として決定される。これにより、EGA方式のウエハアライメントが終了する。
【0250】
以上により、前述の式(12)、(13)のモデルパラメータa,b,c,d,e,f(式(5)のEGAモデル式のパラメータ)の全てが決定され、各ショット領域の設計上の配列座標(DX、DY)を、式(12)、(13)又は式(5)に代入することにより、ウエハWの各ショット領域の配列座標(ウエハステージ座標系上の配列座標、すなわち予想転写位置(EX、EY))が求まることとなる。
【0251】
そして、次のステップ166では、上記のウエハアライメントの結果に基づいて、ウエハW上の各ショット領域に対する露光動作を行うサブルーチンに移行する。
【0252】
このサブルーチンでは、まず、図10のステップ272において、ショット領域の番号を示すカウンタsを「1」に初期化する。
【0253】
次のステップ274において、前述のウエハアライメント結果に基づいて算出した第s番目(この場合第1番目)のショット領域の配列座標、すなわち前述の予想転写位置(EX,EY)と、前述のベースラインの計測結果とに基づいて、当該ショット領域に対する露光のための加速開始位置(走査開始位置)にウエハWを移動するとともに、レチクルステージRSTを加速開始位置に移動し、前述した走査露光を行って、レチクルR上の回路パターンをウエハW上の第s番目(この場合第1番目)のショット領域に転写する。
【0254】
次のステップ276では、カウンタsを参照して、s>Nであるか否かを判断して、全てのショット領域に対する露光が終了したか否かを判断する。ここでは、s=1であるからここでの判断は否定され、ステップ278に移行して、カウンタsを1インクリメントした後、ステップ274に戻る。その後、ステップ276における判断が肯定されるまで、ステップ274→276→278の処理、判断を繰り返して、第2ショット領域〜第Nショット領域に対して、ステップ・アンド・スキャン方式でレチクルR上の回路パターンを転写する。
【0255】
そして、このようにして、ウエハ上のN個のショット領域に対する露光が終了すると、本ルーチンの一連の処理を終了する。但し、実際には、この1枚目ウエハの露光が終了すると、ウエハ交換が行われ、次のウエハ以降のウエハに対して上記と同様の処理が行われることは言うまでもない。
【0256】
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、検出制御系、抽出装置、推定装置、選択装置、算出装置及び露光制御系が、主制御装置20、より具体的にはCPUとソフトウェアプログラムとによって実現されている。すなわち、CPUが行うステップ102〜118の処理によって検出制御系が実現され、ステップ120、124、132、140、146、154、及び162の処理によって抽出装置及び推定装置が実現され、ステップ142及び164によって選択装置及び算出装置が実現され、ステップ166の処理によって露光制御系が実現されている。なお、上記のCPUとソフトウェアプログラムとによって実現された構成分の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良い。
【0257】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る露光装置及びその位置検出方法(EGA方式のウエハアライメント)によると、主制御装置20(検出制御系)が、ウエハW上に複数のショット領域(区画領域)に対応して形成された複数のマーク(MXu,v、MYu,v)の中からウエハW上の複数のショット領域の所定点(この場合、レチクルパターンの投影位置と既知の位置関係にある各ショット領域の露光のための加速開始位置)との位置合わせに用いられる位置情報を算出するためのモデル式(式(5)又は式(12)、(13))の未知パラメータの総数m(6個)よりも多いn=2h個(本実施形態では16個)の位置情報が得られる複数のマーク(サンプルマーク)を選択し、該複数のサンプルマークを、ウエハステージWSTを順次移動してアライメント検出系ASを用いて順次検出し、その検出結果と各サンプルマーク検出時のウエハ干渉計18の計測結果とに基づいてn個(16個)のサンプルマークのウエハステージ座標系上での位置情報(実測位置情報)を算出する。
【0258】
次に、主制御装置20(抽出装置)は、前記n個の実測位置情報、すなわちh(=8)個のウエハXマークの位置情報とh(=8)個のウエハYマークの位置情報それぞれの中から、異常値の数k=0に対応する位置情報の組み合わせ、すなわち8個のX側の正常値と8個のY側の正常値の位置情報(又は16個の正常値の位置情報)、異常値の数k=1に対応する位置情報の組み合わせ(すなわち1個の異常値と7個の正常値とから成るそれぞれ通りのX側の位置情報の組み合わせ及びY側の位置情報の組み合わせ)、異常値の数k=2に対応する位置情報の組み合わせ(すなわち2個の異常値と6個の正常値とから成るそれぞれ通りのX側の位置情報の組み合わせ及びY側の位置情報の組み合わせ)、異常値の数k=3に対応する位置情報の組み合わせ(すなわち3個の異常値と5個の正常値とから成るそれぞれ通りのX側の位置情報の組み合わせ及びY側の位置情報の組み合わせ)を順次抽出する。この場合、いずれのX側、Y側の組み合わせについても、正常値の数(8−k)は、3<8−k≦8を満たす。すなわち、正常値の位置情報のみで、モデル式(12)、(13)の各3個、総計6(=m)個の未知パラメータを統計的手法により決定することが可能である。
【0259】
そこで、主制御装置20(推定装置)は、前記抽出された位置情報の組み合わせ毎に対応する統計モデル(これは上記未知パラメータをモデルパラメータとして含む)それぞれについて、正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準であるAICを算出し、その算出したAICを用いて、確からしさ(統計モデルの確からしさ)を推定する。これにより、異常値の数k、すなわち未知パラメータの決定から除かれる除外数kの如何にかかわらず、抽出した組み合わせに対応する全ての統計モデルについて、未知パラメータを含む全てのモデルパラメータが算出されるとともに、確からしさが推定される。
【0260】
次いで、主制御装置20(選択装置)は、上記の推定結果に基づいて、確からしさを推定した統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデル(この場合、AICが最小となる統計モデル)を選択する。
【0261】
従って、本実施形態によると、前述の除外数(自由度)が同じ統計モデル間のみならず、除外数が異なる統計モデル間においても確からしさが比較され、その比較結果に基づいて比較された統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルが選択される。この結果、従来から課題となっていた前述の除外数の決定が不要となり、その決定に伴う困難性とは無縁であるとともに、尤も確からしい、すなわち尤も妥当な統計モデルを機械的に選択することが可能となる。
【0262】
そして、主制御装置(算出装置)は、選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータ(a、b、e)及び(c、d、f)と前記モデル式(12)及び(13)とに基づいて、ウエハW上の複数のショット領域の前述の所定点との位置合わせに用いられる位置情報(ショット領域の配列座標)を算出する。
【0263】
従って、本実施形態の露光装置及びその位置検出方法によると、尤も妥当な統計モデルに対応する未知パラメータとモデル式とに基づいてウエハ上の複数のショット領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報(ショット領域の配列座標)を精度良く算出することができる。この結果、ウエハW上の複数のショット領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報(ショット領域の配列座標)を簡易にかつ精度良く求めることが可能となり、EGAウエハアライメントを簡易かつ精度良く行うことが可能となる。
【0264】
また、本実施形態に係る露光装置100によると、露光の際には、主制御装置20(露光制御系)が、上述のEGAウエハアライメントによって精度良く算出された位置情報(ショット領域の配列座標)に基づいて、ウエハステージWSTを介してウエハWを移動して、各ショット領域を露光する(ステップ・アンド・スキャン方式の露光を行う)。すなわち、上記の如く精度良く検出された位置情報に基づいて、ウエハW上の複数のショット領域が所定点、例えば露光基準位置(この場合各ショット領域の露光のための加速開始位置)に対して精度良く位置合わせされるようにウエハWが移動され、複数のショット領域が露光される。従って、ウエハW上の複数のショット領域に精度良く重ね合わせてレチクルパターンを形成することが可能となっている。
【0265】
また、本実施形態では、前述の如く、kの値が小さい統計モデルから順に、全てのモデルパラメータの算出及び統計モデルの確からしさの推定を行うとともに、ステップ126(及びステップ148)、及びステップ136(及びステップ158)などで、k=k1(例えばk1=0又は1)に属する全統計モデルのうちの最良の統計モデルのAICが、k=k1+1に属する全統計モデルのうち最良の統計モデルのAICよりも小さい場合に、統計モデルの確からしさの推定演算を終了し、それまでに確からしさが推定された全ての統計モデルのうちの最良の統計モデルを選択することとしている(ステップ142(及びステップ164))。このため、EGAモデルパラメータの算出から除外する位置情報の数を増やしていっても統計モデルの確からしさが期待できない場合には、それを認識した段階で統計モデルの確からしさの推定演算が打ち切られることになる。従って、無意味に計算時間を費やすのを防止することができるとともに、計算時間の短縮が可能となる。
【0266】
なお、本実施形態では、kの値を1ずつ増加させるアルゴリズムを採用しているが、計測点数(サンプルショット数)によってはkの値を2あるいは3ずつ増加させるアルゴリズムを採用しても良く、このような場合には、k=k1に属する全統計モデルのうちの最良の統計モデルとk=k1+α(α=2又は3など)に属する全統計モデルのうちの最良の統計モデルとの確からしさの比較を行い、その結果に応じて推定演算の続行、打ち切りを決定することとしても良い。
【0267】
但し、上述したモデルの確からしさの改善の判断、その結果に基づく推定演算の続行、打ち切りの決定などは、必ずしも行わなくても良い。すなわち、ステップ126、128、134、136などは省略しても構わない。
【0268】
また、前述のように、本実施形態では、各異常値は、それぞれが平均値であり、標準偏差が、正常値分布の標準偏差と同じである別々の正規分布にそれぞれ従うとし、それらの正規分布の標準偏差は、正常値の正規分布の標準偏差と同一であると仮定(以下、この仮定を「仮定A」と呼称する)し、異常値を含む統計モデルをその混合分布として規定した。
【0269】
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、異常値を含む統計モデルは、その他の仮定に基づくものであっても良い。
【0270】
例えば、異常値を含む統計モデルMを以下の条件に基づいて仮定することができる(仮定B)。
a) 前述の如く、正常値の計測値の誤差の分布は正規分布に従う(これを正規分布A(μ、σ )とする)。
b) 異常値集合も正規分布に従う(これを正規分布B(μ、σ )とする)が、その平均値μは正規分布A(μ、σ )の平均値と同一(これを単にμとする)であり、その標準偏差σは、正規分布Aの標準偏差σよりも著しく大きい(σ《σ)。
【0271】
例えば、統計モデルMxについて、h個の計測値に含まれる異常値の数がkであったとすると、その確率密度関数m(x)は、以下の式(43)で表される。
【0272】
【数12】
Figure 2004200632
【0273】
なお、各正規分布A,Bの平均値μ、標準偏差σ、σの最尤推定値は、以下の式(44)、(45)、(46)で表される。ただし、以下の式では、計測値x〜xのうち、x〜xh−kを正常値であるとし、xh−k+1〜xを異常値であるとしている。
【0274】
【数13】
Figure 2004200632
【0275】
なお、上述の式(44)に示されるように、平均値μは、正常値の平均値とする。
【0276】
さらに、この統計モデルMのAICは、以下の式(47)で表される。
【0277】
【数14】
Figure 2004200632
【0278】
なお、式(47)においては、k≧1の場合には、k=0の場合よりも、未知パラメータの数が2つ増加するため(異常値の数k及び正規分布Bの標準偏差σが増える)、最後の項に2・2が追加されている。なお、統計モデルMのAICも、統計モデルMのAICと同様、式(47)によって算出される。
【0279】
この統計モデルにおいても、主制御装置20は、本第1の実施形態と同様に、前記n個の実測位置情報、すなわちh(=8)個のウエハXマークの位置情報とh(=8)個のウエハYマークの位置情報それぞれの中から、異常値の数k=0〜3にそれぞれ対応する位置情報の組み合わせを順次抽出し、抽出された位置情報の組み合わせ毎に対応する統計モデルそれぞれについて、正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準であるAICを算出する。そして、主制御装置20は、その算出したAICを用いて、確からしさ(統計モデルの確からしさ)を推定し、その推定結果に基づいて、確からしさを推定した統計モデルのうちから最も確からしい統計モデル(この場合、AICが最小となる統計モデル)を選択すれば良い。
【0280】
また、上記実施形態では、h個の計測値のうち、k個(k=1〜3)の異常値を取るすべての組合せ(とおり)についてAICを求めたが、本発明はこれに限定されるものではなく、全計測値の中から異常値の候補となる計測値を特定し、AICの算出回数を削減して、演算時間を短縮するようにしても良い。
【0281】
例えば、まず、主制御装置20は、全計測値が正常値である場合(k=0)のEGAパラメータ(a,b,c,d,e,f)を計算し、実際の配列座標(x、y)(p=1、2、……、h)の中で、最も残差が大きかった計測値、すなわち最も尤度を下げている計測値を抽出する。そして、主制御装置20は、その計測値を異常値として特定した場合のAICを算出する。さらに、主制御装置20は、前述の残差最大の計測値とともに、2番目、さらには3番目に残差が大きかった計測値を異常値として含む統計モデルを順次作成し、それぞれのAICを算出する。そして、各k毎にそれぞれ算出されたAICの値を比較して、最も妥当な統計モデル、すなわちAICの値が最も小さい値を決定する。このようにすれば、異常値数毎のAICの算出回数が1回ずつとなるので、AICの算出回数を削減して、演算時間を短縮することができる。
【0282】
なお、上述した一連のAICの算出式は、種々の変形を加え得る。例えば、AICの算術式を以下の式(48)に示されるように変更しても良い。
【0283】
【数15】
Figure 2004200632
【0284】
ここで、式(48)では、本第1の実施形態において用いたAICの算出式の未知パラメータの項の値を補正係数ηで補正することができるようになっている。式(48)は、ηの値を0とすれば、それらのAICの算出式と等価となる。なお、実際には、ηの初期値を0とし、必要に応じてηの値を調整するようにしても良いが、ηの値を調整するに際し、過去に得られた実測位置情報に基づいて求められた異常値の起こり得る確率(事前確率)や、統計モデルの選択の間違いによる過誤などを考慮することとしても良い。
【0285】
≪第2の実施形態≫
次に、本発明の第2の実施形態を、図11〜図13に基づいて説明する。この第2の実施形態に係る露光装置は、EGA方式のウエハアライメント及び露光動作の際の主制御装置20内のCPUの処理アルゴリズムが前述の第1の実施形態と相違するのみで、装置構成などは、第1の実施形態の露光装置100と同一になっている。従って、以下においては、重複説明を避ける観点から上記の相違点を中心に説明する。また、同様の趣旨から同一若しくは同等の構成部分について同一の符号を用いるとともに、その説明を省略するものとする。
【0286】
以下、本第2の実施形態の露光装置により、ウエハWに対して第2層目(セカンドレイヤ)以降の層の露光処理を行う際の動作について説明する。
【0287】
前提として、ドライブ装置46にセットされたCD−ROM内のEGA方式のウエハアライメント及び露光動作に関する特定プログラム及びその他のプログラムは、記憶装置にインストールされているものとする。さらに、そのうちのレチクルアライメント及びベースライン計測処理のプログラムが、主制御装置20内部のCPUによって記憶装置からメインメモリにロードされているものとする。
【0288】
まず、不図示のレチクルローダにより、レチクルステージRST上にレチクルRがロードされる。このレチクルロードが終了すると、主制御装置20(より正確にはCPU)により、レチクルアライメント及びベースライン計測処理のプログラムに従って、前述と同様の手順で、レチクルアライメント及びベースライン計測が実行される。次いで、主制御装置20により、不図示のウエハローダの制御系を介してウエハWがウエハステージWST上のウエハホルダ25上にロードされる。
【0289】
このような一連の準備作業が終了すると、主制御装置20では、前述のレチクルアライメント及びベースライン計測処理のプログラムをメインメモリからアンロードするとともに、前述の特定プログラムをメインメモリにロードする。以後、この特定プログラムに従って、EGA方式のウエハアライメント及びウエハW上の各ショット領域に対する露光が行われる。
【0290】
以下、このEGA方式のウエハアライメント及び露光動作について、上記特定プログラムに従って実行される、主制御装置20内のCPUの処理アルゴリズムを示す図11〜図13のフローチャートに沿って説明する。
【0291】
この場合も前提として、ウエハW上には、図2に示されるように、前層までの処理工程で複数(例えばN個)のショット領域SAu,vがマトリック状の配置で形成されるとともに、隣接するショット領域間の100μm幅程度のストリートライン上に、ウエハアライメントXマーク(ウエハXマーク)MX、ウエハアライメントYマーク(ウエハYマーク)MYがそれぞれ形成されているものとする。
【0292】
なお、本第2の実施形態においても、異常値は、実際の異常値(跳びショットの計測値)であるかどうかに拘わらず、異常値として仮定した値、すなわち仮異常値であるが、以下においては、単に「異常値」と記述するものとする。同様に、正常値は、実際の正常値であるかどうかに拘わらず、正常値として仮定した値、すなわち仮正常値であるが、以下においては、単に「正常値」と記述するものとする。
【0293】
まず、図11のステップ302において、異常値の数(除外すべきサンプルマークの数)を示すカウンタkを「0」に初期化するとともに、サンプルショットの番号を示すカウンタpを「1」に初期化する。
【0294】
次いで、ステップ302→304→306→308→310→312→314→316→318のループにおいて、前述のステップ102〜118のループと同様の処理、判断が行われ、このループの処理を、h回(8回)繰り返すことにより、h個(8個)のサンプルショット領域のマークの位置座標の検出、記憶が終了する。その後、図12のステップ320に移行する。
【0295】
ステップ320では、k=0に対応するX側、Y側の統計モデルのAICを算出するサブルーチンの処理が行われる。このサブルーチンの処理は、前述の第1の実施形態のステップ120と全く同様である(図6参照)。このステップ220の処理により、前述の式(12)、(13)のk=0に対応する統計モデルM、M及びこれらのモデルのAIC(AIC(M)、AIC(M))がメモリ内に記憶される。
【0296】
ステップ322では、カウンタkを1インクリメント(k←k+1)するとともに、異常値として除外すべきマークの番号を規定するカウンタiを「1」に初期化する。
【0297】
次のステップ324では、k=1に対応する(異常値を1つ含む)X側統計モデルのAICを算出するサブルーチンの処理を行う。このサブルーチンの処理は、前述のステップ124と全く同様である(図7参照)。これにより、前述の式(24)で表される統計モデルMXi(i=1〜h)及び式(27)で表されるその統計モデルのAICであるAIC(MXi)(i=1〜h)が、メモリ内に記憶される。
【0298】
ステップ330では、異常値として除外すべき1つ目のマークの番号を規定する前述のカウンタiを「1」に初期化するとともに、異常値として除外すべき2つ目のマークの番号を規定するカウンタjを「2」に初期化する。同時に、カウンタkを1インクリメント(k←k+1)する。
【0299】
次のステップ332では、k=2に対応する(異常値を2つ含む)X側統計モデルのAICを算出するサブルーチンの処理を行う。このサブルーチンの処理は、前述のステップ132と全く同様である(図8参照)。これにより、前述の式(35)で表されるk=2に対応するX側統計モデルMXij(i=1〜h−1、i<j=2〜h)及び該統計モデルに対応するAIC、すなわちAIC(MXij)=−2(h−2)log(h−2)+2hlogσXij+4(i=1〜h−1、i<j=2〜h)が記憶される。
【0300】
次のステップ338では、前述のカウンタiを「1」に、カウンタjを「2」に、それぞれ初期化するとともに、異常値として除外すべき3つ目のマークの番号を規定するカウンタlを「3」に初期化する。同時に、カウンタkを1インクリメント(k←k+1)する。
【0301】
次のステップ340では、k=3に対応する(異常値を3つ含む)X側統計モデルのAICを算出するサブルーチンの処理を行う。このサブルーチンの処理は、前述のステップ140と全く同様である(図9参照)。これにより、前述の式(39)で表されるk=3に対応するX側の統計モデルMXijl(i=1〜h−2、i<j=2〜h−1、j<l=3〜h)、及び該統計モデルに対応するAIC、すなわちAIC(MXijl)=−2(h−3)log(h−3)+2hlogσXijl+2・3(i=1〜h−2、i<j=2〜h−1、j<l=3〜h)がメモリ内に記憶される。
【0302】
次のステップ342では、この時点でメモリ内に記憶されている全てのX側統計モデルの中から、k=0に対応するX側統計モデルMと、該統計モデルMよりAICが小さな、すなわち、より確からしい統計モデルとを選択する。これは、前述の如く、尤度(統計モデルの確からしさ)は、exp(−AIC/2)に比例すると考えることができるので、AICの小さいモデルほど尤度が大きい、すなわちより確からしいとの前提に基づくものである。
【0303】
このステップ342の処理により、k=0、k=1、k=2及びk=3に対応する全てのX側の統計モデルが、確からしさが統計モデルMと同等以上の第1グループと、確からしさが統計モデルMより小さな第2グループとに分類され、より確からしい第1グループに属する全ての統計モデルが選択されることになる。
【0304】
次のステップ343では、ステップ342で選択した全ての統計モデル、すなわち、上記第1グループに属する全ての統計モデルの事後確率を重みとして、重み付け演算により、モデルパラメータa,b,eの推定値a00、b00、e00を決定する。すなわち、ベイズ推定の手法により、モデルパラメータa,b,eを推定する。
【0305】
これを更に詳述すると、各統計モデルMの事後確率P(M|X)は、次式のように表すことができる。
【0306】
P(M|X)=P(X|M)・P(M)
ここで、Xは計測結果であり、P(X|M)は、確率密度関数、すなわち統計モデルの尤度L(M|X)である。また、P(M)は統計モデルMの事前確率である。
【0307】
従って、ステップ343では、次式(49)〜(51)に基づいて、モデルパラメータa,b,eを推定することになる。
【0308】
【数16】
Figure 2004200632
【0309】
本実施形態では、基本的には、想定した全ての統計モデルの事前確率は等しく、想定しない統計モデルの事前確率は零とする。従って、重みは、統計モデルの尤度L(M|X)そのものとなる。
【0310】
しかるに、統計モデルの尤度は、exp(−AIC(M)/2)に比例するので、上式(49)〜(51)のL(M|X)に、exp(−AIC(M)/2)を、それぞれ代入して、上述の重み付け平均演算を行うことにより、kの値(異常値の数、すなわち除外数)が異なる統計モデル相互間における重み付け平均演算により、モデルパラメータa,b,eの推定値a00、b00、e00を決定することができる。
【0311】
次のステップ344(図13)では、前述のカウンタk、カウンタiをともに、「1」に初期化した後、ウエハYマークMYの計測値を用いて、ステップ346、352、354、360、362、364、365の処理を行う。このステップ346〜365の処理は、前述したX側ステップ324〜343の処理と全く同様であるので、詳細説明は省略する。
【0312】
この場合、ステップ364において、次式(52)〜(54)の重み付け平均演算により、モデルパラメータc、d、fの推定値c00、d00、f00が決定される。これにより、EGA方式のウエハアライメントが終了する。
【0313】
【数17】
Figure 2004200632
【0314】
以上により、前述の式(12)、(13)のモデルパラメータa,b,c,d,e,f(式(5)のEGAモデル式のパラメータ)の全てが決定され、各ショット領域の設計上の配列座標(DX、DY)を、式(12)、(13)又は式(5)に代入することにより、ウエハWの各ショット領域の配列座標(ウエハステージ座標系上の配列座標、すなわち予想転写位置(EX、EY))が求まることとなる。
【0315】
そして、次のステップ366では、上記のウエハアライメントの結果に基づいて、ウエハW上の各ショット領域に対する露光動作を行うサブルーチンに移行する。このサブルーチンの処理は、前述のステップ166(図10参照)と全く同様であるので詳細説明は省略する。
【0316】
この場合も、上記ステップ366の処理、すなわち1枚目ウエハの露光が終了すると、ウエハ交換が行われ、次のウエハ以降のウエハに対して上記と同様の処理が行われる。
【0317】
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、検出制御系、抽出装置、推定装置、算出装置及び露光制御系が、主制御装置20、より具体的にはCPUとソフトウェアプログラムとによって、実現されている。すなわち、CPUが行うステップ302〜318の処理によって検出制御系が実現され、ステップ320、324、332、340、346、354、及び362の処理によって抽出装置及び推定装置が実現され、ステップ342及び343並びにステップ364及び365によって算出装置が実現され、ステップ366の処理によって露光制御系が実現されている。なお、この場合においても、上記のCPUとソフトウェアプログラムとによって実現された構成分の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良い。
【0318】
以上説明したように、本第2の実施形態に係る露光装置及びその位置検出方法によると、主制御装置20(検出制御系)は、前述の第1の実施形態と同様の手順で、ウエハW上の複数のショット領域の所定点(この場合、レチクルパターンの投影位置と既知の位置関係にある各ショット領域の露光のための加速開始位置)との位置合わせに用いられる位置情報を算出するためのモデル式(式(5)又は式(12)、(13))の未知パラメータの総数m(6個)よりも多いn=2h個(本実施形態では16個)のサンプルマークのウエハステージ座標系上での位置情報(実測位置情報)を算出する。
【0319】
次に、主制御装置20(抽出装置)は、前記n個の実測位置情報、すなわちh(=8)個のウエハXマークの位置情報とh(=8)個のウエハYマークの位置情報それぞれの中から、異常値の数k=0に対応する位置情報の組み合わせ、すなわち8個のX側の正常値と8個のY側の正常値の位置情報(又は16個の正常値の位置情報)、異常値の数k=1に対応する位置情報の組み合わせ(すなわち1個の異常値と7個の正常値とから成るそれぞれ通りのX側の位置情報の組み合わせ及びY側の位置情報の組み合わせ)、異常値の数k=2に対応する位置情報の組み合わせ(すなわち2個の異常値と6個の正常値とから成るそれぞれ通りのX側の位置情報の組み合わせ及びY側の位置情報の組み合わせ)、異常値の数k=3に対応する位置情報の組み合わせ(すなわち3個の異常値と5個の正常値とから成るそれぞれ通りのX側の位置情報の組み合わせ及びY側の位置情報の組み合わせ)を順次抽出する。この場合、いずれのX側、Y側の組み合わせについても、正常値の数(8−k)は、3<8−k≦8を満たす。すなわち、正常値の位置情報のみで、モデル式(12)、(13)の各3個、総計6(=m)個の未知パラメータを統計的手法により決定することが可能である。
【0320】
そこで、主制御装置20(推定装置)は、前記抽出された位置情報の組み合わせ毎に対応する統計モデル(これは上記未知パラメータをモデルパラメータとして含む)それぞれについて、正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準であるAICを算出し、その算出したAICを用いて、確からしさ(統計モデルの確からしさ)を推定する。これにより、異常値の数k、すなわち未知パラメータの決定から除かれる除外数kの如何にかかわらず、抽出した組み合わせに対応する全ての統計モデルについて、未知パラメータを含む全てのモデルパラメータが算出されるとともに、確からしさが推定される。
【0321】
そして、主制御装置20(算出装置)は、推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値を推定し、その推定した未知パラメータの値と前記モデル式とを用いて複数のショット領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する。
【0322】
すなわち、推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値が推定されるので、より確からしい統計モデルに対応する未知パラメータの算出値には大きな重みが付され、確からしさが劣る統計モデルに対応する未知パラメータの算出値には小さな重みが付されて重み付け平均演算が行われる。このため、前述の除外数(自由度)が同じ統計モデル間のみならず、除外数が異なる統計モデル間においても確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算が行われ、未知パラメータの統計的に妥当な値が推定される。従って、未知パラメータの統計的に妥当な値を機械的に推定することが可能となり、その推定された未知パラメータの値とモデル式とに基づいてウエハ上の複数のショット領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を精度良く算出することができる。
【0323】
そして、主制御装置(算出装置)は、選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータ(a、b、e)及び(c、d、f)と前記モデル式(12)及び(13)とに基づいて、ウエハW上の複数のショット領域を前述の所定点と位置合わせするのに用いられる位置情報(ショット領域の配列座標)を算出する。
【0324】
従って、本実施形態の露光装置及びその位置検出方法によると、ウエハ上の複数のショット領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報(ショット領域の配列座標)を精度良く算出することができる。この結果、ウエハW上の複数のショット領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報(ショット領域の配列座標)を簡易にかつ精度良く求めることが可能となり、EGAウエハアライメントを簡易かつ精度良く行うことが可能となる。
【0325】
また、本第2の実施形態に係る露光装置によると、露光の際には、主制御装置20(露光制御系)が、上述のEGAウエハアライメントによって精度良く算出された位置情報(ショット領域の配列座標)に基づいて、ウエハステージWSTを介してウエハWを移動して、各ショット領域を露光する(ステップ・アンド・スキャン方式の露光を行う)。すなわち、上記の如く精度良く検出された位置情報に基づいて、ウエハW上の複数のショット領域が所定点、例えば露光基準位置(この場合各ショット領域の露光のための加速開始位置)に対して精度良く位置合わせされるようにウエハWが移動され、複数のショット領域が露光される。従って、ウエハW上の複数のショット領域に精度良く重ね合わせてレチクルパターンを形成することが可能となっている。
【0326】
また、本第2の実施形態では、推定されたモデルの確からしさに基づいて抽出した位置情報の各組み合わせに対応する統計モデルを、ステップ342、364の処理により、X側の統計モデル、Y側の統計モデルのそれぞれについて、k=0に対応する統計モデル以上に確からしい第1グループと、残りの統計モデルから成る第2グループとの2つの集合に、それぞれ分類し、その分類の結果より確からしい第1グループに属する統計モデルに対応する情報のみを、EGAパラメータの推定値の演算(前記重み付け平均演算)に用いることとしているので、第1、第2グループに属する全ての統計モデルに対応する情報を用いる場合に比べて、より精度の高いEGAパラメータの算出が可能となっている。但し、必ずしもこのようにする必要はなく、確からしさを推定した全ての統計モデルに対応する情報を用いて重み付け演算を行っても良い。すなわち、ステップ342、364の分類及び選択処理は省略しても良い。
【0327】
なお、上記第2の実施形態と同様に、統計モデルの確からしさを推定する工程では、kの値が小さい統計モデルから順にモデルパラメータの算出と確からしさの推定とを行う場合に、前記推定の結果、k=k1(k1は、例えば0、1、2のいずれか)に属する全統計モデルのうちの最も確からしい統計モデルのAICと、k=k1+1に属する全統計モデルのうち最も確からしい統計モデルのAICとの差を算出し、その差を所定の閾値と比較することとしても良い。そして、この比較の結果、前記差が閾値以下である場合には、k=k1+1に属する全統計モデルのうちの最も確からしい統計モデルに対応する情報のみを、前記重み付け平均演算に用いて、EGAパラメータを算出することとしても良い。
【0328】
勿論、計測点数(サンプルショット数)によってはkの値を2あるいは3ずつ増加させるアルゴリズムを採用する場合には、k=k1に属する全統計モデルのうちの最良の統計モデルとk=k1+α(α=2又は3など)に属する全統計モデルのうちの最良の統計モデルとのAICの差を、所定の閾値と比較することとしても良い。
【0329】
なお、上記第2の実施形態では、想定した全ての統計モデルの事前確率は等しいものとしたが、これに限らず、例えば過去に処理したウエハについて、異常値の数k=0、k=1、k=2、k=3などの統計モデルがどの位の確率で採用されたかを記憶しておき、その記憶結果に基づいて、kの値毎にその採用された確率を事前確率としても良い。あるいは、異常値数だけでなく、異常値がウエハ上のどこで発生するかに傾向があることを考慮して、異常値が同数のモデル同士でも、計測結果の選択の仕方、異常値、正常値の仮定の仕方に応じて事前確率に差をつけることとしても良い。
【0330】
また、上記第2の実施形態では、異常値を含む統計モデルMの仮定として仮定Aを採用したが、上記第1の実施形態と同様に、仮定Bを採用するようにしても良い。
【0331】
≪第3の実施形態≫
上記第1の実施形態では、各計測値を、正常値及び異常値のいずれか一方に明確に区別した統計モデルを適用した。そのようにしたのは、このような統計モデルを採用すれば、その統計モデルの確からしさを推定する計算が容易となるなどの利点があるからである。しかしながら、本発明では、各計測値を、正常値と異常値とに明確に区別せず、混合分布モデルのそれぞれの分布の重なり具合も考慮し、各計測値の正常度及び異常度を確率的に取り扱うことによって、位置情報をより精度良く求めることも可能である。ここでは、その方法について、本発明の第3の実施形態として説明する。
【0332】
この第3の実施形態に係る露光装置は、EGA方式のウエハアライメント及び露光動作の際の主制御装置20内のCPUの処理アルゴリズムが前述の第1の実施形態と相違するのみで、装置構成などは、第1の実施形態の露光装置100と同一になっている。従って、以下においては、重複説明を避ける観点から上記の相違点を中心に説明する。また、同様の趣旨から同一若しくは同等の構成部分について同一の符号を用いるとともに、その説明を省略するものとする。
【0333】
以下、本第3の実施形態の露光装置により、ウエハWに対して第2層目(セカンドレイヤ)以降の層の露光処理を行う際の動作について説明する。本第3の実施形態の露光装置では、まず、図3〜図9に示された各ステップを、上記第1の実施形態で説明したのとほぼ同様に実行する。ここでは、本第3の実施形態においては、図4のステップ142の代わりに、図14に示されるサブルーチン142’を実行し、図5のステップ164の代わりに、同じく図14に示されるサブルーチン164’を実行する点が上記第1の実施形態と異なっているので、ここでは、上記第1の実施形態と共通する動作については、説明を省略する。すなわち、図14を参照して、サブルーチン142’及びサブルーチン164’における動作についてのみ説明する。
【0334】
上記第1の実施形態で説明したように、ステップ140(又はステップ128、ステップ136)を実行した後では、それまでに算出した全てのX側統計モデルの中からAICが最小の統計モデルが選択可能な状態となっている。本第3の実施形態では、ステップ140実行後に、この選択された統計モデルに基づいて、モデルの確からしさを単純増加させるEMアルゴリズムを用いて各計測値の正常度及び異常度を確率的に取り扱い、統計モデルの推定精度をさらに高める。
【0335】
本第3の実施形態においても、上記第1の実施形態における仮定A及び仮定Bと同様に、統計モデルについてある程度の仮定を設ける必要がある。そこで、本第3の実施形態では、ステップ140までの動作が、仮定Aの下で実行されていた場合には、サブルーチン142’においても、仮定Aとほぼ同等の仮定により得られる混合分布モデルに基づいてEMアルゴリズムを実行し、ステップ140までの動作が、仮定Bで実行されている場合には、サブルーチン142’においても、仮定Bとほぼ同等の仮定により得られる混合分布モデルに基づいて、EMアルゴリズムを実行する。すなわち、前述の仮定Aは、統計モデルを、標準偏差が同一であり、平均値が異なる混合正規分布モデルとしているので、仮定Aの場合には、EMアルゴリズムに用いる統計モデルを次式で仮定する。
【0336】
【数18】
Figure 2004200632
【0337】
ただし、K=1,2,…k+1であり、kは異常値数である。すなわち、上式(55)では、平均値がμで標準偏差がσである正規分布を正常値が従う分布とし、その後、異常値が従う分布がk個ある(平均値がそれぞれμ〜μで、標準偏差がすべてσの分布)ものとし、πを、各分布の重みとする。これによれば、πN(μ,σ)が、各計測値の正常度を示す確率密度関数モデルとなり、πN(μ,σ)〜πN(μ,σ)が、各計測値の異常度を示す確率密度関数モデルとなる。
【0338】
また、仮定Bは、その統計モデルを、標準偏差が異なり、平均値が同一である混合正規分布モデルとしているので、仮定Bの場合には、EMアルゴリズムに用いる統計モデルを次式で仮定する。
【0339】
【数19】
Figure 2004200632
【0340】
ただし、K=1,2である。すなわち、上式(56)では、平均値がμで標準偏差がσである正規分布を正常値が従う分布とし、平均値がμで標準偏差がσである正規分布を異常値が従う分布とする。πは、各分布の重みである。これによれば、πN(μ,σ )が、各計測値の正常度を示す確率密度関数モデルとなり、πN(μ,σ )が、各計測値の異常度を示す確率密度関数モデルとなる。なお、以降では、各計測値x(t=1〜h)についての各分布N()を、成分h(x;μ {s},σ 2{s})として表すものとする。{s}は、EMアルゴリズムによる統計モデルのパラメータの再帰回数(サイクル数)を示す。
【0341】
まず、図14に示されるように、ステップ501において、再起回数をカウントするカウンタsを「0」に初期化する。
【0342】
次に、ステップ503において、パラメータ群θ{s}=(π {s},μ {s},σ {s},…)をθに初期化する。なお、θの各パラメータの値には、選択された統計モデルの各パラメータを用いる。すなわち、仮定Aの場合には、
【0343】
【数20】
Figure 2004200632
【0344】
の組み合わせがパラメータ群θとしてθ{s}に設定され、仮定Bの場合には、
【0345】
【数21】
Figure 2004200632
【0346】
の組合せがパラメータ群θとしてθ{s}に設定される。なお、式(57)〜式(63)においては、計測値のうち、x〜xh−kが仮正常値であり、xh−k+1〜xが仮異常値であるものとしている。
【0347】
次に、ステップ505において、計測値x(t=1〜h)が、混合分布モデルのどの分布にどの程度所属するかを示す確率τi,t {s}を、次式を用いて算出する。
【0348】
【数22】
Figure 2004200632
【0349】
なお、τi,t {s}は、各計測値x(t=1〜h)が各成分に属する事後確率である。
【0350】
次に、ステップ507において、上式により求めたτi,t {s}に基づいてパラメータ群θの推定値θ{s+1}を求める。すなわち仮定Aの場合には、
【0351】
【数23】
Figure 2004200632
【0352】
【数24】
Figure 2004200632
【0353】
【数25】
Figure 2004200632
【0354】
を算出し、仮定Bの場合には、
【0355】
【数26】
Figure 2004200632
【0356】
【数27】
Figure 2004200632
【0357】
【数28】
Figure 2004200632
【0358】
を算出する。なお、これまでの仮定Bの表記にならって、σ =σ 、σ =σ とすると、μ {s+1}は、下式のようになる。
【0359】
【数29】
Figure 2004200632
【0360】
次に、ステップ509において、新しく推定されたパラメータ群θ{s+1}の統計モデルの対数尤度を、次式を用いて求め、その対数尤度を記憶装置に記憶する。
【0361】
【数30】
Figure 2004200632
【0362】
次に、ステップ511では、カウンタsをインクリメントし(s←s+1)、ステップ513では、カウンタsの値が所定の値以上となった否か、あるいは、上式で表される対数尤度L(x,θ)の向上量が所定の値以下となったか否かを判断する。カウンタsの値が所定の値以上でなく、対数尤度L(x,θ)の向上量が所定の値以上である間は、この判断は否定され、処理は、ステップ505に戻る。ここでは、まだ、s=1であり、対数尤度L(x,θ)が収束しておらず、その向上量もまだ、所定の値以上であったとして、ステップ505に戻るものとする。
【0363】
以降、ステップ513において、カウンタsの値が所定の値以上となるか、対数尤度L(x,θ)の向上量が所定の値以下となるまでステップ505→ステップ507→ステップ509→ステップ511→ステップ513→ステップ505のループ処理を繰り返し実行する。EMアルゴリズムでは、このループ処理が繰り返されることによって対数尤度が単調増加することが保証されている。
【0364】
ステップ513において、カウンタsの値が所定の値以上となるか、あるいは対数尤度L(x,θ)の向上量が所定の値以下となった場合、その判断は肯定され、処理はステップ515に進む。
【0365】
ステップ515において、最終的に推定されたパラメータθ{s}を用いて、EGAパラメータa,b,eを推定した後、図5のステップ144に移行して、前述のカウンタk、カウンタiをともに、「1」に初期化した後、ウエハYマークMYの計測値を用いて、ステップ146〜ステップ162の処理を行う。このステップ146〜162の処理は、前述したX側の処理(ステップ124〜140)と全く同様であるので、詳細説明を省略する。また、ステップ162(または、ステップ150、ステップ158)実行後、前述したように、サブルーチン164’を実行するが、サブルーチン164’は、前述したX側のサブルーチン142’とほぼ同様であるので(ただし、ステップ515では、Y側統計モデルのパラメータθについてEMアルゴリズムが実行され、EGAパラメータb,e,fが推定される)、詳細説明を省略する。サブルーチン164’では、結果的に、EMアルゴリズムによってパラメータθ{s}が推定され、その統計モデルのモデルパラメータb,e,fの推定値がEGAモデル式のパラメータb,e,fの推定値として決定される。これにより、EGA方式のウエハアライメントが終了する。以降の、露光動作も、上記第1の実施形態と同様に行われる。なお、ステップ515において、パラメータa〜fを求める際には、計測値x,y(t=1〜h)についてのそれぞれの正常値及び異常値への所属している確率を示す統計モデルを用いているので、上記第1の実施形態のように、計測値x,y(t=1〜h)の中から異常値をリジェクトして、パラメータa〜fを求める必要がないことはいうまでもない。
【0366】
なお、本第3の実施形態のように、EMアルゴリズムを用いてπまで推定する場合には、これも未知パラメータ数にカウントする必要がある。すなわち、仮定Aの場合には、AICの計算時における、異常値数kに対する未知パラメータ数は、その2倍(2k)となり、仮定Bの場合には、異常値数k=0の場合には増加しないが、k>0の場合には、未知パラメータ数は、やはり2倍(2k)としてAICの式を計算する必要がある。
【0367】
以上詳細に説明したように、本第3の実施形態に係る露光装置及びその位置検出方法(EGA方式のウエハアライメント)によると、サブルーチン142’,164’において、計測値x,y(t=1〜h)が従う統計モデルを、複数の確率密度分布モデルの線形結合からなる混合分布モデルとして、計測値x,y(t=1〜h)が各確率密度分布モデルに所属する事後確率τi,t {s}の算出、その事後確率τi,t {s}に基づいて決定されるモデルパラメータの推定値の算出、さらにその推定値による前述の事後確率τi,t {s}の算出を繰り返すことによって、統計モデルの尤度L(x,θ)が単調に増加することが保証されている処理、いわゆるEMアルゴリズムを実行することによって統計モデルのモデルパラメータの最適解を逐次接近的に求める。このようにすれば、誤差を含む計測値x,y(t=1〜h)を、正常値と異常値とに完全に区別せず、その所属を確率論的に取り扱うことができるようになるため、計測値x,y(t=1〜h)が従う統計モデルを精度良く推定することができる。従って、本実施形態の露光装置及びその位置検出方法によると、尤も妥当な統計モデルに対応する未知パラメータとモデル式とに基づいてウエハ上の複数のショット領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報(ショット領域の配列座標)を精度良く算出することができる。この結果、ウエハW上の複数のショット領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報(ショット領域の配列座標)を簡易にかつ精度良く求めることが可能となり、EGAウエハアライメントを簡易かつ精度良く行うことが可能となる。
【0368】
なお、本第3の実施形態では、推定するパラメータ群θの初期値θを、上記第1の実施形態で最終的に求めた統計モデルのパラメータとしたが、本発明は、これに限定されるものではなく、パラメータ群θの初期値θは、どのような値が設定されていても良い。ただし、EMアルゴリズムは、統計モデルの最尤推定値の単調増加を保証しているが、その最尤推定値が局所解に収束していまう可能性も有しているため、本第3の実施形態のように、ある程度、精度良く、最尤推定値に近いθを初期値として設定するのが望ましい。
【0369】
なお、上記第1〜第3の実施形態では、情報量規準AICを用いて各統計モデルM、Mの確からしさを推定したが、他の情報量規準、例えばベイジアン情報量規準(Bayesian Information Criterion:BIC)を用いて、それらの確からしさを推定するようにしても良い。上述した統計モデルMのBICは、次式(73)で表される。
【0370】
BIC(M)=−2MLL(M)+klogh …(73)
ここで、MLL(M)は、統計モデルMの下での最大対数尤度であり、AICと同様に、MLL(M)=−hlogσである。kは統計モデルMの未知パラメータの数であり、hは、計測値の数である。BICは、第2項(未知パラメータの項)がAICと異なっており、BICでは、第2項に、計測値の数というファクタを含んでいるので、AICよりも、パラメータ数の多い統計モデルを選択する傾向が低減されるように設定されている。AIC、BICのような情報量規準(これを例えばBCLL(Bias Corrected Log Likelihood)と記述する)の一般式は、次式(74)で表される。
【0371】
BCLL(M)=−2MLL(M)+f(k,h) …(74)
【0372】
情報量規準として、第2項が定式化されたAIC、BIC以外を用いる場合には、第2項の関数f(k,h)をどのように定めるかが問題となるが、このような情報量規準による確からしさの推定は、尤度比検定と等価であるので、f(k,h)は、シミュレーションによってLRTS(Likelyhood Ratio Test Statistic:尤度比検定統計量)の帰無分布から定めれば良い。なお、帰無仮説(異常値無しモデル)の尤度をLとし、対立仮説(異常値有りモデル)の尤度をLとすると、LRTSは、
【0373】
【数31】
Figure 2004200632
【0374】
となり、この帰無分布とは、帰無仮説(異常値無しモデル)を真のモデルとした時の上記統計量の分布となる。この量がある閾値を超えたときに対立仮説(異常値有りモデル)を採用する方法が尤度比検定である。この閾値を超える確率は、異常値が無いのに有ると間違ってしまう第1種の過誤を犯す確率、すなわち有意水準(危険率)である。上述したAIC、BICは、この尤度比検定の閾値を定めたものとなっており、それらの第2項は、有意水準が例えば0.05程度になるように、その閾値の2倍となっている。したがって、情報量規準として、BCLLを用いる場合にも、f(k,h)の大きさを、閾値の2倍となるようにすれば良い。
【0375】
したがって、f(k,h)を決定する際には、シミュレーションによって閾値を決定する。まず、異常値無しモデルとしての1つの正規分布に従う乱数を発生させ、異常値有りモデルと異常値無しモデルとの混合モデルについてEGA計算を行ったうえで、LRTSを計算し、有意水準が0.05程度となるような閾値を決定し、大きさがその半分となる条件を満たす関数をf(k,h)として決定する。
【0376】
なお、上述の条件を満たす関数を決定するための、未知パラメータ数をkと計測値数hとの全ての組合せについて上述のようなシミュレーションを行うのは、処理に時間を要するので、f(k,h)の代わりに、第2項を、未知パラメータの数と、その比例係数(hの関数)との積、すなわちk・f(h)で近似するようにしても良い。このようにすれば、異常値が無いという帰無仮説に対する最小の対立仮説である「異常値が1つである」あるいは「異常成分が1つである」といったモデルに対してシミュレーションを実行してf(h)を決定し、その他のモデルに対しては、そのf(h)に未知パラメータの数を、そのf(h)に掛け合わせて、情報量規準のバイアス補正を行なえば良い。
【0377】
また、上記第1〜第3の実施形態では、統計モデルの確からしさを示す規準として、AIC(M)を用いるとともに、統計モデルの確からしさがexp(−AIC(M)/2)である場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。AICが、計算を容易にするために、カルバックライブラー情報量(以下、「KLI」と略称する)に大胆な近似を用いて導出された量であることから明らかなように、統計モデルの確からしさを示す規準としてKLI(M)を用いるとともに、統計モデルの確からしさが、関数exp(−KLI(M))及び該関数と前述の所定の事前確率の積とのいずれかであることとしても良い。
【0378】
あるいは、統計モデルの確からしさを示す規準として、前述の仮正常値の位置情報から求められる各統計モデルの残差及び該統計モデルのパラメータ数に対して確からしさを単調に減少させる関数(これは、前述の式(47)、式(48)で表される関数などを含む)を用いるとともに、統計モデルの確からしさが、上記の単調減少関数と所定の事前確率との積であることとしても良い。
【0379】
また、AICやKLI等の規準を用いることなく、他の統計的手法、例えば順序統計を用いることとしても良い。この順序統計を用いる方法について簡単に説明する。
【0380】
この方法では、まず、全計測値が正常値である場合(k=0)のEGAパラメータ(a,b,c,d,e,f)を計算し、実際の配列座標(x、y)(p=1、2、……、h)を、残差の絶対値が小さい順に入れ替え、その順にx(i=1〜h、|x|≦|x|≦・・・≦|xh−1|≦|x|)、y(i=1〜h、|y|≦|y|≦・・・≦|yh−1|≦|y|)とする。そして、残差の絶対値が最大である計測値が、正常値の絶対最大値分布に属しているとみなすか、異常値の正規分布に属しているとみなすか、どちらが尤もらしいのかを検出し、異常値に属しているのが尤もらしいと判断した場合には、その計測値を異常値とみなし、正常値集合から除外していく処理を、正常値の最大値の分布に属しているのが尤もらしいと判断する計測値が表れるまで、残差が大きい順に実行する。
【0381】
この順序統計による方法についてさらに詳細に説明する。なお、X側の統計モデルとY側の統計モデルとでは処理が同一であるため、ここでは、Xの統計モデルのみを処理対象とした場合のみ説明する。正常値集合が正規分布に従うとすると、正常値の絶対最大値の分布fabs(x)は、以下の式(75)によって表される。
【0382】
【数32】
Figure 2004200632
【0383】
すると、正常値の絶対最大値の確率密度関数fabs,n,n(x)は、以下の式(76)によって表される。
【0384】
【数33】
Figure 2004200632
【0385】
なお、Fabs(x)は分布関数であり、fabs(x)を[−∞,x]の範囲で積分したものである。一方、計測値xを異常値であるとみなした場合の確率密度関数g1(x)を、その計測値xを平均値とし、標準偏差を正常値とする正規分布に従うものとする。
【0386】
この方法では、まず、k=1とし、残差が最も大きかった計測値xh−k(ここではx)が、絶対最大値分布に従うのか、異常値分布に従うのか、いずれが尤もらしいのかをその尤度比を示す以下の式(77)によって判断する。
【0387】
【数34】
Figure 2004200632
【0388】
ここで、{x}の表記は、その関数の標準偏差をx〜xの標準偏差から推定することを意味している。すなわち、k=1の場合には、異常値分布に従うとした場合の尤度は、x〜xh−1の標準偏差から推定され、正常値の絶対最大値分布に従うとした場合の尤度は、x〜xの標準偏差から推定されることによって、L/Lが算出される。そして、L/Lの値が1以上の場合、その計測値xは、正常値の絶対最大値ではなく、異常値であることが尤もらしいということになる。その場合には、計測値xが正常値集合から除外される。
【0389】
そして、kの値がインクリメントされ(k←k+1)、計測値xh−1について、上述の式(77)が演算される。そして、その結果(L/L)の値が1以上であった場合、その計測値xh−1が、異常値として計測値から除外される。
【0390】
以降、式(77)の結果が1より小さくなるまで、kがインクリメントされ、計測値xh−kについて式(77)が実行され、結果的に、正常値及び異常値の判別が完了する。そして、異常値として除外されなかった計測値を用いて算出されたパラメータ(a〜f)と式(5)等のモデル式とに基づいてウエハアライメントに用いられる位置情報が算出される。
【0391】
この順序統計を用いた方法によれば、n個の計測値の中から正常値を、統計的手法を用いて精度良く抽出することができるようになるため、ウエハアライメントに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求めることが可能となる。
【0392】
また、上記第1〜第3の実施形態では、各サンプルショットにおいてペアとなっているウエハXマーク、ウエハYマークの実測位置情報を計測し、その計測の結果得られたX計測値、Y計測値とを完全に分離して扱い、X計測値を用いて統計的に推定された式(12)のモデルパラメータの推定値と、Y計測値を用いて統計的に推定された式(13)のモデルパラメータとを最終的に使用するものとした。しかしながら、これに限らず、X計測値、Y計測値をセットで取り扱っても良い。この場合には、例えば残差(分散)の計算に際して、X計測値に基づく分散とY計測値に基づく分散との和を、トータルの残差とするとともに、同一のショット領域のX計測値とY計測値の両方を同時に除外することとすれば良い。
【0393】
また、上記各実施形態では、アライメント方式を、投影光学系を介することなくウエハ上のアライメントマークの位置を直接計測するオフアクシス方式としたが、投影光学系を介してウエハ上のアライメントマークの位置を計測するTTL(スルー・ザ・レンズ)方式や、投影光学系を介してウエハとレチクルとを同時に観察するTTR(スルー・ザ・レチクル)方式を採用することも可能である。なお、TTR方式の場合には、サンプルアライメントでは、観察時において、レチクルに形成されたレチクルマークとウエハに形成されたウエハマークとのずれが零となるときのウエハマークの位置を検出する。
【0394】
また、上記各実施形態では、ウエハ上の複数のショット領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報として、各ショット領域の座標を算出したが、これに限らず、ショット領域間のステップピッチや、レチクルに対するウエハの位置を算出しても良い。
【0395】
なお、上記各実施形態では、本発明がスキャニング・ステッパ(スキャナ)に適用された場合について説明したが、これに限らず、例えばステップ・アンド・リピート方式の静止型露光装置、ステップ・アンド・スティッチング方式の露光装置などにも適用することができる。
【0396】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、プラズマディスプレイや有機ELなどの表示装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0397】
また、上記各実施形態の露光装置では、露光用照明光は、Fレーザ光、ArFエキシマレーザ光、KrFエキシマレーザ光などの紫外パルス光や、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などなどに限らず、EUV光、あるいは電子線やイオンビームなどの荷電粒子線などでも良い。
【0398】
また、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、投影光学系は縮小系のみならず等倍系あるいは拡大系でも良いし、屈折系のみならず反射屈折系あるいは反射系でも良い。
【0399】
また、上記各実施形態では、露光装置におけるウエハ上の位置合わせマークの位置検出及びウエハの位置合わせの場合を説明したが、本発明の位置検出方法は、レチクル上の位置合わせマークの位置検出やレチクルの位置合わせに用いることもでき、更に、露光装置以外の装置、例えば顕微鏡等を使用した物体の観察装置、工場の組み立てライン、加工ライン、検査ラインにおける対象物の位置決め装置等における物体の位置検出やその物体の位置合わせに用いることもできる。
【0400】
≪デバイス製造方法≫
次に上述した露光装置及びその露光方法をリソグラフィ工程で使用したデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
【0401】
図15には、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。図15に示されるように、まず、ステップ401(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップ402(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。一方、ステップ403(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0402】
次に、ステップ404(ウエハ処理ステップ)において、ステップ401〜ステップ403で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップ405(デバイス組立てステップ)において、ステップ404で処理されたウエハを用いてデバイス組立てを行う。このステップ405には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
【0403】
最後に、ステップ406(検査ステップ)において、ステップ405で作成されたデバイスの動作確認テスト、耐久テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
【0404】
図16には、半導体デバイスにおける、上記ステップ404の詳細なフロー例が示されている。図16において、ステップ411(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ412(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ413(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ414(イオン打ち込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ411〜ステップ414それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0405】
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ415(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップ416(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置)及び露光方法によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップ417(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップ418(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップ419(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
【0406】
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0407】
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光工程(ステップ416)において上記実施形態の露光装置及び露光方法が用いられるので、精度良くレチクルのパターンをウエハ上に重ね合わせ精度良く転写することができる。この結果、高集積度のデバイスの生産性(歩留まりを含む)を向上させることが可能になる。
【0408】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る位置検出方法によると、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求めることができるという効果がある。
【0409】
また、本発明の露光方法及び露光装置によると、物体上の複数の区画領域に精度良くパターンを形成することができるという効果がある。
【0410】
また、本発明のデバイス製造方法によると、デバイスの生産性を向上させることができるという効果がある。
【0411】
また、本発明のプログラム及び情報記録媒体によると、露光装置の制御用コンピュータによって実行され、物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を簡易にかつ精度良く求めることを可能とするプログラム該プログラムが記録された情報記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】ウエハ上のショット領域及びこれに付設されたアライメントマークの配置の一例を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る露光装置における、ウエハアライメント及び露光動作の際の主制御装置内CPUの処理アルゴリズムを示すフローチャート(その1)である。
【図4】第1の実施形態に係る露光装置における、ウエハアライメント及び露光動作の際の主制御装置内CPUの処理アルゴリズムを示すフローチャート(その2)である。
【図5】第1の実施形態に係る露光装置における、ウエハアライメント及び露光動作の際の主制御装置内CPUの処理アルゴリズムを示すフローチャート(その3)である。
【図6】図4のステップ120のサブルーチンにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図4のステップ124のサブルーチンにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】図4のステップ132のサブルーチンにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】図4のステップ140のサブルーチンにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】図5のステップ166のサブルーチンにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に係る露光装置における、ウエハアライメント及び露光動作の際の主制御装置内CPUの処理アルゴリズムを示すフローチャート(その1)である。
【図12】第2の実施形態に係る露光装置における、ウエハアライメント及び露光動作の際の主制御装置内CPUの処理アルゴリズムを示すフローチャート(その2)である。
【図13】第2の実施形態に係る露光装置における、ウエハアライメント及び露光動作の際の主制御装置内CPUの処理アルゴリズムを示すフローチャート(その3)である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る露光装置におけるEMアルゴリズムの処理を示すフローチャートである。
【図15】本発明のデバイス製造方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【図16】図15のステップ404の具体的処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
W…ウエハ(物体)、SAu,v…ショット領域(区画領域)、100…露光装置、AS…アライメント検出系(マーク検出系)、WST…ウエハステージ(ステージ)、18…ウエハレーザ干渉計(計測装置)、20…主制御装置(検出制御系、抽出装置、推定装置、選択装置、算出装置、露光制御系)、100…露光装置。

Claims (38)

  1. 物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を検出する位置検出方法であって、
    前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る計測工程と;
    前記各実測位置情報が従う複数の確率分布モデルの線形結合から成る少なくとも2つの統計モデルを推定し、その確からしさを推定する推定工程と;
    前記推定結果に基づいて、前記少なくとも2つの統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択する選択工程と;
    前記選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する算出工程と;を含む位置検出方法。
  2. 前記推定工程は、
    前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する工程と;
    前記抽出した各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する工程と;を含むことを特徴とする請求項1に記載の位置検出方法。
  3. 物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を検出する位置検出方法であって、
    前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る工程と;
    前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する工程と;
    前記抽出した各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する工程と;
    前記推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値を推定し、その推定した未知パラメータの値と前記モデル式とを用いて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する工程と;を含む位置検出方法。
  4. 前記推定されたモデルの確からしさに基づいて前記抽出した各組み合わせに対応する少なくとも2つの統計モデルを、2つの集合に分類する工程を更に含み、
    前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する工程では、前記分類の結果、より確からしい統計モデルの集合に属する統計モデルに対応する情報のみを、前記重み付け平均演算に用いることを特徴とする請求項3に記載の位置検出方法。
  5. 前記統計モデルの確からしさを推定する工程では、kの値が小さい統計モデルから順に前記モデルパラメータの算出と確からしさの推定とを行い、
    前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する工程では、前記推定の結果、k=k1に属する全統計モデルのうちの最も確からしい統計モデルの確からしさを示す規準と、k=k1+α(αは自然数)に属する全統計モデルのうち最も確からしい統計モデルの確からしさを示す規準との差が所定の閾値以下である場合、k=k1+αに属する全統計モデルのうちの最も確からしい統計モデルに対応する情報のみを、前記重み付け平均演算に用いることを特徴とする請求項3に記載の位置検出方法。
  6. 前記規準は、仮正常値の位置情報から求められる前記各統計モデルの残差及び該統計モデルのパラメータ数に関して確からしさを単調に減少させる関数であり、前記統計モデルの確からしさは、上記関数と所定の事前確率との積であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の位置検出方法。
  7. 前記規準は、カルバックライブラー情報量のデータ数倍であり、前記モデルの確からしさは、カルバックライブラー情報量の前記データ数倍の符号反転の指数関数及びこの関数と所定の事前確率との積のいずれかであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の位置検出方法。
  8. 前記規準は赤池情報量規準であり、その値をAICとした場合に、前記統計モデルの確からしさは、−AIC/2の指数関数及び該関数と所定の事前確率との積のいずれかであることを特徴とする請求項2〜5に記載の位置検出方法。
  9. 前記事前確率は、過去に得られた前記実測位置情報に基づいて求められる異常値の起こり得る確率であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の位置検出方法。
  10. 前記規準は、前記未知パラメータの数及び前記実測位置情報の数に関して前記統計モデルの確からしさを単調に減少させる関数を含む規準であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の位置検出方法。
  11. 前記関数は、
    前記n個の実測位置情報に異常値が無いという仮説を帰無仮説とし、前記n個の実測位置情報に異常値が有るという仮説を対立仮説として尤度比検定を行った場合の有意水準が所定の水準以下となるような関数であることを特徴とする請求項10に記載の位置検出方法。
  12. 前記関数は、前記未知パラメータの数に関する比例関数であることを特徴とする請求項11に記載の位置検出方法。
  13. 前記規準は、ベイジアン情報量規準であることを特徴とする請求項12に記載の位置検出方法。
  14. 前記確からしさを推定する工程では、kの値が小さい統計モデルから順に、前記全てのモデルパラメータの算出及び前記確からしさの推定を行い、k=k1に属する全統計モデルのうちの最良の統計モデルの確からしさの規準が、k=k1+α(αは自然数)に属する全統計モデルのうち最良のモデルの前記確からしさの規準よりも良い場合に、前記統計モデルの確からしさの推定演算を終了し、それまでに確からしさが推定された全ての統計モデルのうちの最良の統計モデルを選択することを特徴とする請求項2に記載の位置検出方法。
  15. 前記統計モデルは、前記仮正常値が属する正規分布と、その正規分布とは標準偏差が同一で平均値が異なる前記仮異常値に対応する正規分布との混合分布であることを特徴とする請求項2〜14のいずれか一項に記載の位置検出方法。
  16. 前記統計モデルは、前記仮正常値が属する正規分布と、その正規分布とは平均値が同一で標準偏差が異なる前記仮異常値が属する正規分布との混合分布であることを特徴とする請求項2〜14のいずれか一項に記載の位置検出方法。
  17. 前記推定工程では、
    前記各実測位置情報が前記確率密度分布モデルへの帰属度を示す事後確率に基づいて前記統計モデルのモデルパラメータの最尤推定を行い、最尤推定されたモデルパラメータに基づいて、前記事後確率を再計算する処理を、そのモデルパラメータによって決定される統計モデルの確からしさの変動が収束するまで繰り返し実行することによって、モデルパラメータが異なる少なくとも2つの統計モデルの確からしさを推定し、
    前記選択工程では、
    最終的に推定された統計モデルを、尤も確からしい統計モデルとして選択することを特徴とする請求項1に記載の位置検出方法。
  18. 前記各確率密度分布モデルは、互いの標準偏差が同一で平均値が異なる正規分布であることを特徴とする請求項17に記載の位置検出方法。
  19. 前記各確率密度分布モデルは、互いの平均値が同一で標準偏差が異なる正規分布であることを特徴とする請求項17に記載の位置検出方法。
  20. 物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を検出する位置検出方法であって、
    前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る工程と;
    前記n個の実測位置情報を全て仮正常値とした場合の前記モデル式のモデルパラメータの値を算出し、算出されたモデルパラメータを用いた前記モデル式の計算によって得られるn個の位置情報とそれらに対応する前記各実測位置情報との残差を実測位置情報毎に算出する工程と;
    前記n個の実測位置情報のうち、前記残差の大きさが大きい方から上位k番目までの実測位置情報を、k(0≦k<n−m)個の仮異常値とみなし、該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを各kの値についてそれぞれ1つずつ抽出する工程と;
    前記抽出した組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、その確からしさを推定する工程と;
    前記確からしさが推定された統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択し、その選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する工程と;を含む位置検出方法。
  21. 物体上の複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を検出する位置検出方法であって、
    前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る工程と;
    前記n個の実測位置情報を全て正常値と仮定した場合の前記モデル式のモデルパラメータの値を算出し、算出されたモデルパラメータを用いた前記モデル式の計算によって得られるn個の位置情報とそれらに対応する前記各実測位置情報との残差の絶対値を実測位置情報毎に算出する工程と;
    前記n個の実測位置情報のうち、異常値として除外されていない実測位置情報の中で前記残差の絶対値が最大である実測位置情報について、正常値の絶対最大値の分布に従うのが尤もらしいとする尤度と、異常値の分布に従うのが尤もらしいとする尤度とを比較した結果、その実測位置情報が前記異常値の分布に従うのが尤もらしいと判断した場合には、その実測位置情報を異常値として除外する処理を、その実測位置情報が正常値の絶対最大値の分布に従うのが尤もらしいと判断されるまで、前記残差の絶対値が大きい順に実行する工程と;
    異常値として除外されなかった実測位置情報を用いて算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する工程と;を含む位置検出方法。
  22. 物体上の複数の区画領域を順次露光して各区画領域に所定のパターンを形成する露光方法であって、
    請求項1〜21のいずれか一項に記載の位置検出方法により前記複数の区画領域の所定点と位置合わせに用いられる位置情報を検出する工程と;
    前記検出した位置情報に基づいて、前記物体を移動して前記各区画領域を露光する工程と;を含む露光方法。
  23. リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
    前記リソグラフィ工程では、請求項22に記載の露光方法を用いることを特徴とするデバイス製造方法。
  24. 物体上の複数の区画領域を順次露光して各区画領域に所定のパターンを形成する露光装置であって、
    マークを検出するマーク検出系と;
    前記物体が載置されるステージと;
    前記ステージの位置を計測する計測装置と;
    前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、該複数のマークを、前記ステージを順次移動して前記マーク検出系を用いて順次検出し、その検出結果と各マーク検出時の前記計測装置の計測結果とに基づいて前記n個の実測位置情報を算出する検出制御系と;
    前記各実測位置情報の確率分布モデルとしての複数の確率分布モデルの線形結合から成る少なくとも2つの統計モデルを推定し、その確からしさを推定する推定装置と;
    前記推定結果に基づいて、前記少なくとも2つの統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択する選択装置と;
    前記選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する算出装置と;
    前記算出装置で算出された位置情報に基づいて、前記ステージを介して物体を移動して、前記各区画領域を露光する露光制御系と;を備える露光装置。
  25. 前記推定装置は、
    前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する抽出装置と;
    前記抽出された各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する装置と;を備えることを特徴とする請求項24に記載の露光装置。
  26. 前記推定装置は、
    前記各実測位置情報の前記複数の確率分布モデルへの帰属度を示す事後確率に基づいて前記統計モデルのモデルパラメータの最尤推定を行い、最尤推定されたモデルパラメータに基づいて、前記事後確率を再計算する処理を、そのモデルパラメータによって決定される統計モデルの確からしさの変動が収束するまで繰り返し実行し、
    前記選択装置は、
    最終的に推定された統計モデルを、尤も確からしい統計モデルとして選択することを特徴とする請求項24に記載の露光装置。
  27. 物体上の複数の区画領域を順次露光して各区画領域に所定のパターンを形成する露光装置であって、
    マークを検出するマーク検出系と;
    前記物体が載置されるステージと;
    前記ステージの位置を計測する計測装置と;
    前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、該複数のマークを、前記ステージを順次移動して前記マーク検出系を用いて順次検出し、その検出結果と各マーク検出時の前記計測装置の計測結果とに基づいて前記n個の実測位置情報を算出する検出制御系と;
    前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する抽出装置と;
    前記抽出された各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する推定装置と;
    前記推定装置で推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値を推定し、その推定した未知パラメータの値と前記モデル式とを用いて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する算出装置と;
    前記算出装置で算出された位置情報に基づいて、前記ステージを介して物体を移動して、前記各区画領域を露光する露光制御系と;を備える露光装置。
  28. リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
    前記リソグラフィ工程では、請求項24〜27のいずれか一項に記載の露光装置を用いて露光を行うことを特徴とするデバイス製造方法。
  29. 物体上の複数の区画領域を順次露光して各区画領域に所定のパターンを形成する露光装置で用いられるプログラムであって、
    前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る計測手順と;
    前記各実測位置情報が従う複数の確率分布モデルの線形結合から成る少なくとも2つの統計モデルを推定し、その確からしさを推定する推定手順と;
    前記推定結果に基づいて、前記少なくとも2つの統計モデルのうちから尤も確からしい統計モデルを選択する選択手順と;
    前記選択された統計モデルに対応する前記算出された未知パラメータと前記モデル式とに基づいて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する算出手順と;を、前記露光に先立って前記露光装置の制御用コンピュータに実行させるプログラム。
  30. 前記推定手順として、
    前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値と仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する手順と;
    前記抽出した各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する手順と;を前記制御用コンピュータに実行させることを特徴とする請求項29に記載のプログラム。
  31. 前記推定手順として、
    前記各実測位置情報が前記確率密度分布モデルに所属していたとする事後確率に基づいて前記モデルパラメータの最尤推定を行い、最尤推定されたモデルパラメータに基づいて、前記事後確率を再計算する処理を、計算されるモデルパラメータによって決定される統計モデルの確からしさの変動が収束するまで繰り返し実行することによって、モデルパラメータが異なる少なくとも2つの統計モデルの確からしさを推定する手順を、
    前記選択手順として、
    最終的に推定された統計モデルを、尤も確からしい統計モデルとして選択する手順を前記制御用コンピュータに実行させることを特徴とする請求項29に記載のプログラム。
  32. 物体上の複数の区画領域を順次露光して各区画領域に所定のパターンを形成する露光装置で用いられるプログラムであって、
    前記物体上に前記複数の区画領域に対応して形成された複数のマークの中から前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出するための所定のモデル式の未知パラメータの数mよりも多いn個の位置情報が得られる複数のマークを選択し、それらのマークを検出してn個の実測位置情報を得る手順と;
    前記n個の実測位置情報の中から、k(0≦k<n−m)個の異常値と仮定した仮異常値と該k個の仮異常値を除外した(n−k)個の正常値仮定した仮正常値との位置情報の組み合わせを少なくとも2つ抽出する手順と;
    前記抽出した各組み合わせに対応する、前記未知パラメータをモデルパラメータとして含む少なくとも2つの統計モデルそれぞれについて、前記仮正常値の位置情報のみで求められる前記未知パラメータを含む全てのモデルパラメータを算出するとともに、前記モデルパラメータに関連する統計モデルの確からしさを示す規準を用いて、確からしさを推定する手順と;
    前記推定された各統計モデルの確からしさに応じた重みを用いた重み付け平均演算により前記未知パラメータの統計的に妥当な値を推定し、その推定した未知パラメータの値と前記モデル式とを用いて前記複数の区画領域の所定点との位置合わせに用いられる位置情報を算出する手順と;を前記露光に先立って前記露光装置の制御用コンピュータに実行させるプログラム。
  33. 前記規準は赤池情報量規準であり、その値をAICとした場合に、前記統計モデルの確からしさは、−AIC/2の指数関数及び該関数と所定の事前確率との積のいずれかであることを特徴とする請求項30又は32に記載のプログラム。
  34. 前記規準は、前記未知パラメータの数及び前記実測位置情報の数に関して前記統計モデルの確からしさを単調に減少させる関数を含む規準であることを特徴とする請求項30又は32に記載のプログラム。
  35. 前記関数は、
    前記n個の実測位置情報に異常値が無いという仮説を帰無仮説とし、前記n個の実測位置情報に異常値が有るという仮説を対立仮説として尤度比検定を行った場合の有意水準が所定の水準以下となるような閾値のほぼ半分となる関数であることを特徴とする請求項34に記載のプログラム。
  36. 前記関数は、前記未知パラメータの数に関する比例関数であることを特徴とする請求項35に記載のプログラム。
  37. 前記規準は、ベイジアン情報量規準であることを特徴とする請求項36に記載のプログラム。
  38. 請求項29〜37のいずれか一項に記載のプログラムが記録されたコンピュータによる読み取りが可能な情報記録媒体。
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