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JP2004002958A - ノンクロム処理亜鉛系めっき鋼板とその製造方法 - Google Patents

ノンクロム処理亜鉛系めっき鋼板とその製造方法 Download PDF

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JP2004002958A JP2002347599A JP2002347599A JP2004002958A JP 2004002958 A JP2004002958 A JP 2004002958A JP 2002347599 A JP2002347599 A JP 2002347599A JP 2002347599 A JP2002347599 A JP 2002347599A JP 2004002958 A JP2004002958 A JP 2004002958A
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Abstract

【課題】クロムを使用せずに、耐食性、耐擦り傷性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供する。
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板の表面に、処理液(M)の第1層と、処理液(N)の第2層を形成する。処理液(M):一般式(I)の樹脂(a)と、官能基含有シランカップリング剤(b)と、水溶性チタン化合物および/またはジルコニウム化合物(c)を含有するpH2.0〜6.5の水溶液。
Figure 2004002958

およびYは、H、またはアミノメチルもしくはアンモニウムメチルからなる置換基Zを意味。処理液(N):(A)ガラス転移温度が−40〜0℃のウレタン樹脂、(B)水溶性エポキシ樹脂、(C)コロイダルシリカ、(D)一般式(IV)の分散剤化合物により水に分散されたポリエチレンワックス、(E)水溶性の有機溶剤。
Figure 2004002958

はアルキルまたはアルケニル基、Rは (EO)m−(PO)n(式中、Eはエチレン基、Pはプロピレン基、m、nは0整数)、RはHまたはSOM、RはH、アルキルまたはアルケニル基。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、亜鉛系めっき鋼板の表面に、平面部耐食性、擦り傷部耐食性および塗装密着性に優れた樹脂皮膜を形成した、ノンクロム (クロムを含まない)処理亜鉛系めっき鋼板とその製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
家庭電化製品や建材等には、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、5%アルミニウム含有亜鉛めっき鋼板などの、亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板 (本発明では、これらを総称して亜鉛系めっき鋼板という)が広く用いられている。亜鉛系めっき鋼板は、そのままでは耐食性や塗装密着性(上塗り塗装性)が不十分であるため、クロメート化成処理やりん酸塩化成処理が施され、その後にプレス加工や折り曲げ加工等の成形加工や塗装等が施されることが多い。しかし、用途によっては、塗装せずにそのまま用いられる場合も少なくない。
【0003】
塗装せずに用いられる場合、耐食性のよいクロメート化成処理鋼板を使用することが多いが、成形加工や組立時の指紋の付着、クロメート皮膜量の違いによる色調のバラツキなどの問題点を有している。そこで、これらの問題点を解決するためにクロメート皮膜上に有機皮膜を形成した耐指紋鋼板が用いられるようになってきた。この耐指紋鋼板は、指紋の付着を防ぐ目的で、クロメート処理した亜鉛系めっき鋼板の表面に、厚さ1μm前後の有機樹脂層を有する。この耐指紋鋼板は、耐指紋性以外に、耐食性、耐溶剤性、塗装密着性、耐擦り傷性など種々の皮膜性能が要求される。
【0004】
これらの性能のうち、近年、耐擦り傷性に対する要求が強くなってきている。耐擦り傷性が要求される理由は、成形加工後に製品を運搬する際に生じる振動により、成形物同士あるいは成形物を納めている容器(ダンボール箱など)と成形物とが擦れ合い、成形物の表面に傷が生じるためである。この擦り傷部は、通常の有機被覆部より耐食性が劣るため、品質の低下を免れない。
【0005】
このため、耐食性、塗装密着性に加えて、耐擦り傷性も考慮した表面処理鋼板に関する技術がいくつか提案されている。このような技術は、例えば、特許文献1〜3に記載されている。
【0006】
特許文献4には、ウレタン変性ポリオレフィン樹脂にフッ素系樹脂粒子およびシリカ粒子を配合した樹脂皮膜が開示されている。その特徴は、フッ素系樹脂粒子を使用することで擦り傷部を保護するところにあり、フッ素系粒子を水溶液中で均一に分散させるために界面活性剤の使用が必要不可欠となる。しかし、界面活性剤の使用により耐食性のレベルが全体的に低くなるので、満足できる耐食性を得ることができなかった。
【0007】
特許文献2には、ポリエステル系樹脂と架橋剤と平均分子量2000〜8000のポリエチレン系ワックスを含有する皮膜が開示されている。この皮膜は、ベース樹脂にポリエステル樹脂を使用しているため、皮膜自体の耐加水分解性が不十分で、満足できる耐食性を得ることができなかった。
【0008】
クロメート処理について、近年環境保全に対する意識の高まりにより、人体に直接的な悪影響をおよぼす欠点があるクロメート処理液中の6価クロムが敬遠されがちである。また、6価クロムを含む排水には、水質汚濁防止法に規定されている特別な処理を施す必要があり、これが全体としてかなりのコストアップの原因になっている。また、クロメート処理を施した鋼板は、それがクロム含有の産業廃棄物となったとき、リサイクルができないという大きな欠点を有し、このことは社会的に問題になっている。
【0009】
クロメート処理以外に表面処理方法としては、多価フェノールカルボン酸を含有するタンニン酸を含む表面処理液による処理がよく知られている。タンニン酸の水溶液によって金属材料を処理すると、タンニン酸と金属材料表面との反応によって形成される保護皮膜が、腐食物質の侵入に対しバリアーとなるので、当該金属材料の耐食性が向上すると考えられている。しかし、近年、金属製品の高品質化に伴い、皮膜自体の高耐食性が要求されており、そのため、タンニン酸単独、若しくはこれに無機成分を併用して得られる皮膜では、耐食性が不十分であり、現状における実用化は不可能である。
【0010】
金属材料の耐食性を向上させる処理方法として、特許文献5には、水分散性シリカと、アルキド樹脂と、トリアルコキシシラン化合物とを含む水溶液を金属表面に塗布し乾燥して形成した皮膜で鋼板を被覆することが開示されている。特許文献6等には、ヒドロキシスチレン化合物の水溶性または水分散性重合体を用いて、金属材料に耐食性を付与する方法が開示されている。
【0011】
しかし、上記の何れの方法も、クロメート皮膜に代替できるような高い耐食性を付与し得る皮膜を形成し得るものではなく、現実問題として前記問題点は、未だ解決されていないのである。
【0012】
このように、現状ではクロムを使用せずに耐食性、塗装密着性に優れ、かつ、擦り傷部の耐食性が良好な表面処理鋼板は得られていないのである。
なお、冷延鋼板、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系の金属板に樹脂皮膜を形成させる目的で使用される、ウレタン樹脂および/またはエポキシ樹脂、シリカもしくはシリカ粒子、およびポリエチレンワックスを含有する(水系)潤滑性塗料としては、特許文献7〜9に記載のものが知られているが、これらの発明は、構成要件および発明の効果において、以下に示す本発明とは異なるものである。
【0013】
【特許文献1】特開平3−2562055号公報
【特許文献2】特公平6−104799号公報
【特許文献3】特開平6−2622927号公報
【特許文献4】特開平3−17189号公報
【特許文献5】特開昭53−121034号公報
【特許文献6】特開平1−177380号公報
【特許文献7】特開平5−117550号公報
【特許文献8】特許第2719571号明細書
【特許文献9】特許第261838号明細書
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術が抱える問題点を解決するためのものであり、耐食性、塗装密着性はもちろんのこと、クロムを使用せずに擦り傷部の耐食性に優れた有機樹脂皮膜を設けた、ノンクロム処理亜鉛系めっき鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術が抱える課題を解決するための手段について鋭意検討を重ねた結果、第1層に、特定の水溶性樹脂(a)と、シランカップリング剤(b)と、チタン化合物およびジルコニウム化合物の少なくとも一方(c)とを含有する表面処理液の塗布乾燥により形成した皮膜を設け、第2層に、ウレタン樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、コロイダルシリカ(C)、水に分散された特定粒径のポリエチレンワックス(D)、および水溶性の有機溶剤(E)と、水とを含有する水系表面処理液の塗布乾燥により形成された皮膜を設けることによって、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明により、亜鉛系めっき鋼板の少なくとも片面に、第1層として下記表面処理液(M)の乾燥皮膜を有し、その上に第2層として下記表面処理液(N)の乾燥皮膜を有することを特徴とする、耐擦り傷性に優れたノンクロム処理亜鉛系めっき鋼板が提供される。
【0017】
表面処理液(M):一般式(I)で表される反復単位を有する重合体分子からなる水溶性樹脂(a)と、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基およびメタクリロキシ基から選ばれた少なくとも1つの官能基を有する1種以上のシランカップリング剤(b)と、チタン化合物およびジルコニウム化合物の少なくとも一方(c)とを含有する、pH 2.0〜6.5の水溶液。
【0018】
【化4】
Figure 2004002958
【0019】
式中、YおよびYは、それぞれ独立して、水素原子または下記式(II)もしくは(III)で表されるZ基を意味し、
【0020】
【化5】
Figure 2004002958
【0021】
前記式(II)および(III)中のR、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、C〜C10 アルキル基またはC〜C10 ヒドロキシアルキル基を表し、
前記重合体分子中のベンゼン環当たりの前記Z基の平均置換数は 0.2〜1.0である。
【0022】
表面処理液(N): (A)ビスフェノールA型骨格を有し、ガラス転移温度が−40〜0℃の範囲であるウレタン樹脂と、(B)エポキシ基を1分子中に3個以上有する水溶性エポキシ樹脂と、(C)コロイダルシリカと、(D)一般式(IV)で示される化合物からなる分散剤により平均粒径0.01〜0.2μmとなるように水に分散されたポリエチレンワックスと、(E)水溶性有機溶剤と、水とを含有し、全固形分に対して、(A)+(B)の固形分割合が50〜95質量%、(C)の固形分割合が3〜40質量%、(D)の固形分割合が2〜20質量%であり、処理液全量に対する(E)の割合が1〜10質量%である水系表面処理液。
【0023】
【化6】
Figure 2004002958
【0024】
式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基または炭素数2〜20のアルケニル基を表し、Rは (EO)m−(PO)n(式中、Eはエチレン基、Pはプロピレン基、mは5〜20の整数、nは0または1〜10の整数である)を表し、Rは水素原子またはSOM(式中、Mは水素原子、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンである)を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基を表す。
【0025】
前記第1層に用いる皮膜層の付着量は50〜500 mg/m2 であるのが好ましく、前記第2層に用いる樹脂皮膜層の付着量は 0.1〜3g/mであるのが好ましい。
本発明によればまた、亜鉛系めっき鋼板の少なくとも片面に、上記表面処理液(M)を塗布し、乾燥して第1層皮膜を形成した後、上記表面処理液(N)を塗布し、乾燥して第2層皮膜を形成することを特徴とする、ノンクロム処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法も提供される。
【0026】
表面処理液(M)および(N)の塗布後の乾燥は、いずれも50〜200℃の温度で行うことが好ましい。ここで、乾燥温度は、鋼板の到達板温度を意味する。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明において第1層に用いる下地の表面処理液(M)および第2層に用いる水系表面処理液(N)についてより詳しく説明する。
【0028】
第1層の形成に用いる表面処理液(M)
第1層の形成に用いる表面処理液(M)は、一般式(I)で表される反復単位を有する重合体分子からなる水溶性樹脂(a)と、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基およびメタクリロキシ基から選ばれた少なくとも1つの官能基を有する1種以上のシランカップリング剤(b)と、チタン化合物およびジルコニウム化合物の少なくとも一方(c)とを含有するpH 2.0〜6.5の水溶液である。
【0029】
【化7】
Figure 2004002958
【0030】
式中、YおよびYは、それぞれ独立して、水素原子、または下記式(II)もしくは(III)により表されるZ基を意味し、
【0031】
【化8】
Figure 2004002958
【0032】
前記式(II)および(III)中のR、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、C〜C10 アルキル基またはC〜C10 ヒドロキシアルキル基を表し、
前記重合体分子中のベンゼン環当たりの前記Z基の平均置換数は 0.2〜1.0である。
【0033】
本発明で使用する表面処理液(M)(水溶液)のpHは 2.0〜6.5の範囲である。処理液のpHが2.0より小さいと、塗布される処理液と基体表面 (亜鉛系めっき)との反応性が過度に高くなり、被覆不良が発生しやすくなるため、得られる金属板材料の耐食性、塗装性、加工性などが不十分になる。pHが6.5を超えると、水溶性樹脂(a)が処理液中から沈殿析出し易くなり、処理液の寿命が短くなる。
【0034】
水溶性樹脂(a)は、前記式(I)で示される反復単位を含むオリゴマーまたはポリマーであり、式(I)の反復単位の平均重合度(n)は2〜50である。
式(I)において、ベンゼン環に結合しているYおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、または式(II)もしくは(III)により表されるZ基を意味する。式(II)および(III)の中のR、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、C〜C10 アルキル基またはC〜C10 ヒドロキシアルキル基を表し、前記重合体分子中のベンゼン環当たりの前記Z基の平均置換数は 0.2〜1.0である。
【0035】
Z基の平均置換数が0.2未満であると、樹脂の基体表面への密着性が不十分となり、塗装性が悪くなる。また、それが1.0を越えると、樹脂の親水性が大きくなりすぎ、表面処理した鋼板の耐食性が不十分となる。
【0036】
式(II)および(III)の中のR、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、C〜C10 のアルキル基またはCからC10 のヒドロキシアルキル基を表す。これらの基の炭素数が11以上になると、形成される表面処理液の成膜性が低下し、耐食性、塗装性、、加工性などが不十分になる。
【0037】
表面処理液(M)に用いるシランカップリング剤(b)は、1分子中に反応性の官能基として、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基及びメタクリロキシ基から選ばれた少なくとも1つの官能基を含むものであれば、特に構造は限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0038】
▲1▼アミノ基を有するもの
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、 N−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン;
▲2▼エポキシ基を有するもの
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、 2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン;
▲3▼ビニル基を有するもの
ビニルトリエトキシシラン;
▲4▼メルカプト基を有するもの
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;
▲5▼メタクリロキシ基を有するもの
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン。
【0039】
表面処理液(M)に用いるシランカップリング剤(b)は、1つ以上の活性水素含有基 (例、アミノ基、メルカプト基)を有する1種以上のシランカップリング剤(ア)と、1つ以上のエポキシ基を有する1種以上のシランカップリング(イ)とからなる、シランカップリング剤の混合物であることが好ましい。この場合、活性水素含有基を含有するシランカップリング剤(ア)とエポキシ基含有シランカップリング剤(イ)の配合割合は、シランカップリング剤の混合物中に含まれる活性水素含有基のエポキシ基に対する当量比が、3:1〜1:3の範囲となるようにすることが好ましい。当量比が3:1〜1:3の範囲を超えた場合、成膜性が悪くなり、耐食性、塗装性、加工性が不十分になる。
【0040】
第1層に用いる表面処理液(M)において、水溶性樹脂(a)とシランカップリング剤(b)の合計量に対するシランカップリング剤(b)の含有量は、質量%で10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜50%である。シランカップリング剤(b)の含有量が10%より少ないと、基体表面との接着力が低下するため、耐食性、塗装性が不十分になる。また、シランカップリング剤(b)の含有量が90%より多いと、表面処理液(M)の成膜性が低下するため、耐食性、塗装性が不十分となる。
【0041】
表面処理液(M)に用いるチタン化合物およびジルコニウム化合物(c)は、いずれも水溶性の化合物である。チタン化合物については、たとえば硫酸チタン、オキシ硫酸チタン、チタンフッ化水素酸、チタンフツ化アンモニウムなどの水溶性無機チタン化合物や、しゅう酸チタンカリウム、クエン酸チタンなどの有機酸チタン塩やチタンのアルコキシドなどが挙げられる。チタネート系カップリング剤も使用できる。ジルコニウム化合物については、硫酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、ジルコンフッ化水素酸、ジルコンフッ化アンモニウムなどの水溶性無機ジルコニウム化合物や、プロピオン酸ジルコニウムのほか、酢酸ジルコニウムなどの有機酸ジルコニウム塩や、ジルコニウムのアルコキシド、ジルコネートカップリング剤などが挙げられる。
【0042】
チタン化合物およびジルコニウム化合物の少なくとも一方(c)の合計量は、処理液1kgあたりに0.0010モル以上であることが好ましい。チタン化合物およびジルコニウム化合物(c)の含有量が0.0010モル未満では、その添加効果、即ち、耐食性の改善効果が十分に発現せず、表面処理鋼板の耐食性が不十分となる。
【0043】
チタン化合物とジルコニウム化合物を比較すると、耐食性に及ぼす影響はほぼ同等であるが、チタン化合物を含有すると、皮膜がわずかながら黄色味を帯びるようになる。無色の外観が要求される場合は、ジルコニウム化合物のみ、もしくはできるだけジルコニウム化合物のチタン化合物に対する割合が大きい方が好ましい。
【0044】
第2層に用いる水系表面処理液(N)
本発明の第2層に用いる水系表面処理液(N)の特徴は、特定の成分(A)ないし(E)を一定の質量比で含有することである。
【0045】
ウレタン樹脂 (A)
本発明では、皮膜を形成するベース樹脂として、ビスフェノールA型骨格を有し、ガラス転移温度が−40〜0℃の範囲であるウレタン樹脂(A)を使用するが、それは、この樹脂が耐食性、耐摩耗性、耐薬品性のバランスに優れているからである。
【0046】
本発明に使用するウレタン樹脂(A)は、ビスフェノールA型骨格を有していることが必要である。ビスフェノールA型骨格は、素材との密着性、耐薬品性に優れており、この骨格をウレタン樹脂中に導入することにより、優れた耐食性を得ることができる。ウレタン樹脂に対するビスフェノールA型骨格の導入量は、樹脂固形分100%に対して10〜50質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは15〜40質量%である。ビスフェノールA型骨格の導入量が10質量%未満であると、その導入による耐食性の向上効果が乏しく、一方50質量%を超えると、ビスフェノールA型骨格が剛直な骨格であるため、皮膜が硬くなり過ぎて、密着性が低下する。
【0047】
本発明で用いるウレタン樹脂(A)のガラス転移温度は−40〜0℃であり、好ましくは−35〜−5℃、より好ましくは−35〜−10℃の範囲である。ガラス転移温度が−40℃未満であると、形成される皮膜の耐ブロッキング性が劣る。また、樹脂の皮膜物性はガラス転移温度を境に大きく変化する傾向にある。通常、成形加工後の製品が取り扱われる温度は、10〜50℃の範囲であるが、この温度範囲内にガラス転移温度がある場合は、気温により樹脂の皮膜物性の変化が起こり、皮膜の耐擦り傷性が劣る可能性が高い。さらに、ガラス転移温度が50℃を超える場合は、皮膜の造膜性が低下するため、塗布後の乾燥温度を高くする必要があり、経済的に無駄となる。従って、樹脂のガラス転移温度は−40〜0℃の範囲にするのが好ましい。
【0048】
樹脂のガラス転移温度は、市販の動的粘弾性測定装置(例えば、東洋精機製作所製レオログラフソリッドS−1)で測定できる。試験片は、100℃で30分間乾燥させた膜厚100μm、幅8mm、長さ30 mmのものを用い、周波数100 Hzにて測定を行い、弾性損失率の変曲点からガラス転移温度を求めた。
【0049】
ウレタン樹脂(A)は、乳化剤と呼ばれる界面活性剤を使用していないものが好ましい。界面活性剤を使用して水に分散しているウレタン樹脂は、界面活性剤の影響で得られる皮膜の耐水性が低下することがある。従って、本発明に好適なウレタン樹脂(A)としては、カルボキシル基を樹脂中に導入し、このカルボキシル基をアンモニア、アミンなどで中和することにより、水分散性あるいは水溶性にしたものである。
【0050】
エポキシ樹脂 (B)
ウレタン樹脂(A)単独でもある程度の耐食性を得ることはできるが、耐食性をさらに高めるため、エポキシ基を1分子中に3個以上含有する水溶性エポキシ樹脂(B)を処理液中に配合する。
【0051】
このような水溶性エポキシ樹脂(B)の例としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、などが挙げられる。
【0052】
水系表面処理液(N)中の成分 (A)〜(D)の全固形分に対する(A)+(B)の固形分の割合は50〜95質量%であり、60〜85質量%であることが好ましく、より好ましくは65〜80質量%である。この割合が50質量%未満であると、皮膜自体の耐水性が低下する。一方、この割合が 95質量%を超えると、擦り傷部の耐食性が低下する。
【0053】
コロイダルシリカ (C)
コロイダルシリカ(C)は、粒径、形状、種類については特に限定するものではないが、粒径に関しては3〜30 nmの範囲であることが好ましい。水系表面処理液(N)中の成分 (A)〜(D)の全固形分に対するコロイダルシリカの固形分の割合は3〜40質量%であり、10〜30質量%が好ましい。この割合が3質量%未満であると、耐食性の向上効果が乏しく、40質量%の超えると、樹脂(A)のバインダー効果が小さくなり、耐食性が低下する。
【0054】
ポリエチレンワックス (D)
ポリエチレンワックス(D)は、耐擦り傷性のレベルを向上させるために配合する。その平均粒径は0.01〜0.2μmであり、0.05〜0.18μmであることが好ましい。
【0055】
一般に、潤滑性の指標として用いられる摩擦係数は、ワックス粒径が大きくなると低くなる傾向にある。しかし、この摩擦係数と耐擦り傷性は必ずしも一致せず、摺動回数 (あるいは摺動距離)と摩擦係数との関係(耐かじり性)の方が重要である。本発明者らは、ワックスの平均粒径と摺動回数との関係を鋭意検討した結果、ワックスの平均粒径を0.01〜0.2μmとすることにより、優れた耐擦り傷性が得られることを見出した。ワックスの平均粒径が0.01μm未満であると、ワックスの製造により高性能の機械を使用する必要があるため、経済的でない。一方、ワックスの平均粒径が0.2μmを超えると、皮膜表面から突出したワックスが摺動時に取れやすくなり、結果として連続摺動性が低下する。
【0056】
ポリエチレンワックスの分子量、融点については特に限定はないが、酸価は5〜50 (NaOH mg/g)の範囲が好ましく、10〜30 (NaOH mg/g)の範囲がより好ましい。酸価が5NaOH mg/g未満の場合は、ワックスと樹脂とがほとんど相溶しないため、皮膜形成時にワックスが皮膜表面に完全に配向し、耐擦り傷性および塗装密着性の低下を引き起こすので好ましくない。一方、酸価が50 NaOH mg/gを超える場合は、ワックスの親水性が強くなるため、ワックス自体が持つ滑性が低下し、耐擦り傷性が低下するので好ましくない。
【0057】
通常、樹脂や顔料等の分散には、分散剤と呼ばれる界面活性剤が使用される。界面活性剤は、樹脂や顔料に対する配合量が少ない場合は分散不良(樹脂や顔料が凝集して分離沈降あるいは浮上する)を生じ、一方、配合量が多い場合は得られる皮膜の耐水性を低下させる。
【0058】
本発明者らは、ポリエチレンワックスの分散剤について鋭意検討した結果、下記式(IV)で示される化合物を用いてポリエチレンワックスを水に分散させることにより、優れた均一分散安定性と耐水性を得ることができた。
【0059】
【化9】
Figure 2004002958
【0060】
式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基または炭素数2〜20のアルケニル基を表し、Rは (EO)m−(PO)n(式中、Eはエチレン基、Pはプロピレン基、mは5〜20の整数、nは0または1〜10の整数である)を表し、Rは水素原子またはSOM(式中、Mは水素原子、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンである)を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基を表す。
【0061】
ポリエチレンワックスの分散剤として使用する、式(IV)で示される化合物において、Rは炭素数5〜20のアルキル基または炭素数2〜5のアルケニル基であることが好ましい。Rとしては水素原子またはSONHであることが好ましく、Rとしては水素原子または炭素数2〜4のアルケニル基であることが好ましい。
【0062】
ポリエチレンワックスを水に分散させる方法については特に限定はなく、工業的に用いる方法によれば良い。前述したポリエチレンワックスの平均粒径は、こうして得られる水分散体中での値である。
【0063】
得られた水分散体の全固形分 (ワックス+分散剤)に対する化合物(IV)の固形分の割合は5〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。上記割合が5質量%未満では、ポリエチレンワックスの分散が不十分となるので好ましくない。また、上記割合が40質量%を超える場合は、得られる皮膜の耐水性が低下するので好ましくない。
【0064】
本発明の水系表面処理液中の成分 (A)〜(D)の全固形分に対する上記水分散体の割合は、(D)の固形分の割合として2〜20質量%であり、3〜20質量%であることが好ましく、3〜18質量%であることがさらに好ましい。この割合が2質量%未満では、耐擦り傷性の改善効果が乏しく、一方、20質量%を超える場合は、上塗り塗装性が低下するため好ましくない。
【0065】
水溶性有機溶剤 (E)
水系表面処理液は、造膜性を向上させる目的で、水溶性有機溶剤(E)を表面処理液中に1〜10質量%配合する。水溶性有機溶剤は水と共沸可能なものが好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジオキサン、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、この中ではN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0066】
表面処理液中の有機溶剤(E)の配合量は、処理液全体の1〜10質量%の範囲であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましい。上記割合が1質量%未満の場合は、造膜性向上の効果が乏しく、一方、10質量%を超える場合は造膜性向上効果が飽和するため経済的でない。
【0067】
本発明の表面処理液には、任意成分として、被塗面に均一な皮膜を形成させるための濡れ性向上剤と称せられる界面活性剤や、溶接性向上のための導電性物質、意匠性向上のための着色顔料などを含有させても良い。
【0068】
上記成分(A), (B), (C), (D)および(E)を適宜量の水と混合して、溶解ないし分散させることにより、本発明の表面処理液(N)を得ることができる。成分の添加順序は特に限定はないが、混合は、例えばプロペラ式攪拌機などを用いて攪拌することにより行うのが適当である。
【0069】
得られる本発明の表面処理液(N)は、固形分濃度が5〜50質量%の範囲内であることが好ましく、5〜40質量%の範囲内であることがより好ましい。固形分濃度が5質量%未満の場合は、乾燥時間が長くなるので好ましくない。一方、固形分濃度が50質量%を超える場合は、表面処理液自体の粘度が高く、取り扱い上支障を来す恐れがある。
【0070】
本発明の第1層および第2層の表面処理液を塗布する亜鉛系めっき鋼板は、亜鉛または亜鉛合金を電気めっきまたは溶融めっきした任意の鋼板でよい。好ましい亜鉛系めっき鋼板の例としては、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、5%アルミニウム含有亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板が挙げられる。
【0071】
これらの表面処理液(M)および(N)を塗布する方法は、特に限定されないが、ロールコータ法、浸漬法、静電塗布法などを用いることができる。
好ましい処理方法において、表面処理液(M)を10〜50℃で塗布し、到達板温度で50〜200℃、より好ましくは60〜180℃の温度で乾燥させて第1層の皮膜を形成し、次に表面処理液(N)を同様に10〜50℃で塗布し、到達板温度50〜200℃、より好ましくは60℃〜180℃の温度で乾燥させて第2層の皮膜を形成することにより、クロムを含まずに、優れた耐食性、耐擦り傷性を有する皮膜を亜鉛系めっき鋼板の表面に形成することができる。
【0072】
第1層および第2層の乾燥温度が50℃より低いと、満足できる耐食性を得ることができず、この乾燥温度が200℃を超えると、乾燥にかかるコストが高くなるため経済的ではない。
【0073】
第1層の皮膜の付着量は0.05〜1g/m (=50〜1000 mg/m)、好ましくは 0.1〜0.5 g/mである。第1層の付着量が0.05 g/m2 未満であると、満足できる耐食性を得ることができず、一方、1g/mを超えると、耐食性の効果が飽和するため経済的でない。
【0074】
第2層の皮膜の付着量は 0.1〜3g/mであり、好ましくは 0.2〜2g/mであり、より好ましくは 0.3〜2g/mである。第2層の付着量が0.1 g/m未満であると満足できる耐食性を得ることができず、3g/mを超えると耐食性の効果が飽和するため経済的でない。
【0075】
本発明の表面処理液は、酸洗、りん酸塩化成処理などのクロムを含まない処理方法にて処理した亜鉛系めっき鋼板に塗布しても構わない。
本発明によって得られる耐擦り傷性に優れた亜鉛系めっき鋼板は、平面部耐食性、擦り傷部耐食性および塗装密着性に優れている。
【0076】
本発明にかかるクロムを含まない皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板は、そのままで使用してもよいが、通常は、塗装して使用される。そのときの耐擦り傷性に優れた亜鉛系めっき鋼板に塗布する上塗り塗料としては特に限定はないが、例えば、常乾型メラミンアルキッド系塗料、焼き付け型メラミンアルキッド系塗料、アクリル樹脂系塗料、紫外線硬化型樹脂系塗料などが挙げられる。
【0077】
【実施例】
以下の実施例および比較例により、本発明の作用効果を具体的に例示する。実施例は本発明の例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。実施例中、%は特に指定しない限り、質量%である。
【0078】
[試験板の作製]
(1) 供試材
下記の示した市販の両面亜鉛系めっき鋼板を供試材として使用した。なお、供試材のサイズは200 mm×300 mmである。
【0079】
・電気亜鉛めっき鋼板 (EG)
板厚0.8 mm、目付量= 20/20 (g/m
・溶融亜鉛めっき鋼板 (GI)
板厚0.8 mm、目付量= 60/60 (g/m
・5%アルミニウム含有亜鉛めっき鋼板 (GF)
板厚0.8 mm、目付量= 90/90 (g/m
(2)脱脂処理
上記の各供試材をシリケート系アルカリ脱脂剤のファインクリーナー4336(登録商標:日本パーカライジング製)で脱脂処理した。濃度20 g/Lの脱脂剤を用いて、温度60℃で2分間スプレー処理した後、水道水で洗浄した。
【0080】
(3) 第1層皮膜の形成
脱脂処理した供試材の片面に、表1に記載の表面処理液 (M1〜M4)を室温にてバーコートにより塗布し、到達板温度100℃で乾燥して、第1層の皮膜を形成した。表1の記号M4の表面処理液は、水溶性樹脂を含有せず、記号M2の処理液に使用したのと同じ種類および量のシランカップリング剤およびチタン化合物だけを含有していた。付着量の調整は、表面処理液の固形分濃度およびバーコータの種類を適宜変更することで行った。比較として反応型クロメート処理液であるジンクロム357(登録商標:日本パーカライジング製)を用い、液温度50℃で5秒間スプレー処理を行って、水道水で洗浄後に風乾した。
【0081】
(4) 第2層皮膜の形成
(4−1)水系表面処理液の調製
室温にて、表2記載のウレタン樹脂(A)、表3記載のエポキシ樹脂(B)、表4記載のコロイダルシリカ(C)、表5記載のワックス水分散体(D)、および表6記載の有機溶剤(E)を、この順にプロペラ攪拌機を用いて攪拌しながら混合し、蒸留水を加えて固形分濃度を調整し、表7に示す組成の第2層形成用の水系表面処理液(1〜12)を調製した。ワックス水分散体(D)は、表5に示すワックスと分散剤化合物(IV)および水を、全量オートクレーブに入れて、温度130℃に加熱して攪拌することにより調製した。
【0082】
(4−2)塗布と乾燥
調製した各表面処理液を、室温にてバーコータにより、上記試験板の第1層皮膜の上に塗布し、240℃の雰囲気温度で10秒間乾燥した。この際の到達板温度は120℃であった。付着量の調整は、表面処理液の固形分濃度およびバーコータの種類を適宜変更することで行った。
【0083】
(5) 性能試験
(5−1)平面部耐食性
JIS−Z−2371による塩水噴霧試験を、EG材の場合は240時間、GF材の場合は480時間行い、白錆発生状況を観察し、下記基準により評価した。
【0084】
<評価基準>
◎:白錆発生面積が全面積の3%未満、
○:白錆発生面積が全面積の3%以上10%未満、
△:白錆発生面積が全面積の10%以上30%未満、
×:白錆発生面積が全面積の30%以上。
【0085】
(5−2)擦り傷部耐食性
試験片を30 mm×300 mmのサイズに切断し、ドロービード試験(ビード先端1mmR、ビード高さ4mm、ダイス肩1mmR、圧着荷重500 kg、温度30℃)を行った。この試験片の摺動部分についてJIS−Z−2371による塩水噴霧試験を、EG材の場合は120時間、GF材の場合は240時間行い、白錆発生状況を観察し、下記基準により評価した。
【0086】
<評価基準>
◎:白錆発生面積が全面積の 3%未満、
○:白錆発生面積が全面積の 3%以上10%未満、
△:白錆発生面積が全面積の10%以上30%未満、
×:白錆発生面積が全面積の30%以上。
【0087】
(5−3)塗装密着性
メラミンアルキッド系塗料(登録商標アミラックNo.1000、関西ペイント製)を焼付け乾燥後の膜厚が25μmになるように塗布して、125℃で20分間焼き付けた。焼付け後24時間経過した試験片を用い、JIS−Z−5400により1mm碁盤目を100個描画してから、セロテープ(登録商標)により塗膜を剥離し、下記基準により評価した。
【0088】
<評価基準>
◎:塗膜剥離なし、塗膜残個数100個、
○:極僅かに塗膜剥離あり、塗膜残個数100個、
△:塗膜残個数95〜99個、
×:塗膜残個数94個以下。
【0089】
(5−4)表面色調
一部の試験片について、試験片の表面色調 (黄色味の指標であるJIS Z8729のb*値)を測定した。
【0090】
試験結果を表8および表9に示す。
【0091】
【表1】
Figure 2004002958
【0092】
【表2】
Figure 2004002958
【0093】
【表3】
Figure 2004002958
【0094】
【表4】
Figure 2004002958
【0095】
【表5】
Figure 2004002958
【0096】
【表6】
Figure 2004002958
【0097】
【表7】
Figure 2004002958
【0098】
【表8】
Figure 2004002958
【0099】
【表9】
Figure 2004002958
【0100】
表8からわかるように、本発明の表面処理液を用いた実施例1〜24では、平面部耐食性、擦り傷部耐食性および塗装密着性の何れも良好であり、比較例19の従来のクロメート処理を行った場合と同等であった。これに対し、本発明の範囲外である表面処理液を用いた比較例1〜18では、平面部耐食性、擦り傷部耐食性および塗装密着性のすべての性能を満足するものは得られなかった。
【0101】
第1層皮膜がチタン化合物を含有する実施例4と、ジルコニウム化合物を含有する実施例15について、表面外観 (黄色味)を光学検査装置で比較したところ、表9に示すように、チタン化合物を含有する実施例4の方が黄色みが強かった。ただし、実施例4の皮膜でもそれほど黄色みは強くない。目視で観察した場合の実施例4と実施例15の試験片の表面色調の差は、それぞれ単独では判断しづらく、並べて観察した時に実施例4の皮膜がわずかに黄色味を帯びていることを認識できる程度である。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したように、亜鉛系めっき鋼板表面の第1層、第2層にそれぞれ、本発明の表面処理液を塗布し、乾燥することにより、クロムを使用せず平面部耐食性、擦り傷部耐食性および塗装密着性に優れた耐擦り傷性に優れた亜鉛系めっき鋼板を得ることができる。

Claims (5)

  1. 亜鉛系めっき鋼板の少なくとも片面に、第1層として下記表面処理液(M)の乾燥皮膜を有し、その上に第2層として下記表面処理液(N)の乾燥皮膜を有することを特徴とする、ノンクロム処理亜鉛系めっき鋼板。
    表面処理液(M):一般式(I)で表される反復単位を有する重合体分子からなる水溶性樹脂(a)と、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基およびメタクリロキシ基から選ばれた少なくとも1つの官能基を有する1種以上のシランカップリング剤(b)と、チタン化合物およびジルコニウム化合物の少なくとも一方(c)とを含有する、pH 2.0〜6.5の水溶液。
    Figure 2004002958
    式中、YおよびYは、それぞれ独立して、水素原子または下記式(II)もしくは(III)で表されるZ基を意味し、
    Figure 2004002958
    前記式(II)および(III)中のR、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、C〜C10 アルキル基またはC〜C10 ヒドロキシアルキル基を表し、
    前記重合体分子中のベンゼン環当たりの前記Z基の平均置換数は 0.2〜1.0である。
    表面処理液(N): (A)ビスフェノールA型骨格を有し、ガラス転移温度が−40〜0℃の範囲であるウレタン樹脂と、(B)エポキシ基を1分子中に3個以上有する水溶性エポキシ樹脂と、(C)コロイダルシリカと、(D)一般式(IV)で示される化合物からなる分散剤により平均粒径0.01〜0.2μmとなるように水に分散されたポリエチレンワックスと、(E)水溶性有機溶剤と、水とを含有し、全固形分に対して、(A)+(B)の固形分割合が50〜95質量%、(C)の固形分割合が3〜40質量%、(D)の固形分割合が2〜20質量%であり、処理液全量に対する(E)の割合が1〜10質量%である水系表面処理液。
    Figure 2004002958
    式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基または炭素数2〜20のアルケニル基を表し、Rは (EO)m−(PO)n(式中、Eはエチレン基、Pはプロピレン基、mは5〜20の整数、nは0または1〜10の整数である)を表し、Rは水素原子またはSOM(式中、Mは水素原子、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンである)を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基を表す。
  2. 前記第1層の皮膜付着量が50〜1000 mg/mである請求項1に記載の亜鉛系めっき鋼板。
  3. 前記第2層の皮膜付着量が 0.1〜3g/mである請求項1または2に記載の亜鉛系めっき鋼板。
  4. 亜鉛系めっき鋼板の少なくとも片面に、請求項1記載の表面処理液(M)を塗布し、乾燥して第1層皮膜を形成した後、請求項1記載の表面処理液(N)を塗布し、乾燥して第2層皮膜を形成することを特徴とする、ノンクロム処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  5. 表面処理液(M)および(N)の塗布後の乾燥を、いずれも50〜200℃の温度で行う、請求項4記載のノンクロム処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
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