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JP2002237388A - 有機電界発光素子 - Google Patents

有機電界発光素子

Info

Publication number
JP2002237388A
JP2002237388A JP2001033771A JP2001033771A JP2002237388A JP 2002237388 A JP2002237388 A JP 2002237388A JP 2001033771 A JP2001033771 A JP 2001033771A JP 2001033771 A JP2001033771 A JP 2001033771A JP 2002237388 A JP2002237388 A JP 2002237388A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thin film
layer
organic
light emitting
type
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001033771A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasuo Imanishi
泰雄 今西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Ltd filed Critical Hitachi Ltd
Priority to JP2001033771A priority Critical patent/JP2002237388A/ja
Publication of JP2002237388A publication Critical patent/JP2002237388A/ja
Pending legal-status Critical Current

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 有機電界発光素子における発光層の発光効率
の向上、素子特性の向上を図ることにある。 【解決手段】 有機電界発光素子は、透明基板(6)上
に透明陽極(5)、その上に正孔輸送層(4)、この上
に発光層(7)を形成し、その上に陰極(1)を形成す
ることによって構成する。発光層(7)は、正孔と電子
の再結合によって直接光を発生する有機発光物質を含む
第1種類の薄膜即ち有機発光材料薄膜(3)と有機発光
物質を含有しない無機物質からなる第2種類の薄膜層即
ち無機障壁層(2)を交互に積層する。また、第1種類
の薄膜層の厚みが第2種類の薄膜層の厚みよりも大き
く、かつ、第1種類の薄膜層の厚みが10nm以下であ
り、かつ、1nmよりも大きくする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機電界発光素子
に係り、特に、発光層に対して陽極電極から正孔を、陰
極電極から電子を注入可能であり、前記発光層内部で正
孔と電子の再結合によって光を放出する有機電界発光素
子に関する
【0002】
【従来の技術】
【0003】昨今、各種携帯電話や移動体端末、モバイ
ルコンピュータ、カーナビゲ−ション等の普及により、
軽量、高精彩、高輝度でかつ安価な小型平面ディスプレ
イへの要求は高まっている。、また、家庭内やオフィス
においても、省スペース型のデスクトップディスプレイ
や壁掛けテレビ等の平面ディスプレイが従来のCRT管
ディスプレイから置き換わりつつある。特に、高速イン
ターネットの普及やデジタル放送の進展により、数百〜
数ギガビット/秒級のデジタル信号伝送が有線、無線の
双方で実用化され、一般利用者が極めて大容量の情報を
リアルタイムにやり取りする時代に移りつつある。この
ことから、これら平面ディスプレイに対する要求は、従
来以上の軽量性、高精彩、低価格に加えてデジタル信号
処理可能な高速表示性が求められている。このような平
面ディスプレイとしては、液晶ディスプレイ(Liqu
id Crystal Display,LCD)やプ
ラズマディスプレイ(Plasma Display,
PD)、フィ−ルドエミッションディスプレイ(Fie
ld Emission Display,FED)等
が検討されているが、これら各種平面ディスプレイに加
えて近年有機電界発光素子(Organic Elec
troluminescense Device,OE
LD)または有機発光ダイオード(Organic L
ight Emitted Diode,OLED)と
呼ばれる新しい型の平面ディスプレイが着目されつつあ
る。有機電界発光素子とは、陰極と陽極の間に挾んだ有
機化合物に電流を流すことにより、その中に含まれる蛍
光性または燐光性の有機分子を発光させることで表示す
る素子である。文献(有機エレクトロニクス材料研究会
編、『有機LED素子の残された重要な課題と実用化戦
略』、ぶんしん出版、1999年中、第1〜11頁、佐
藤佳晴著、『序章 材料・デバイスの現状と課題』)に
よると、有機電界発光素子の研究は古くはアントラセン
やペリレン等の有機半導体単結晶を中心に検討が進めら
れていたが、1987年にTangらが発光性の有機化
合物薄膜と正孔輸送性の有機化合物薄膜とを積層した2
層型の有機電界発光素子を提案(C.W.Tang a
nd S.A.VanSlyke, Appl. Ph
ys. Lett.51,913,1987年)し、発
光特性の大幅な向上が可能(発光効率1.5lm/W、
駆動電圧10V、輝度1000cd/m2)になったこ
とがその研究の出発点である。その後、色素ド−プ技術
や、高分子OLED、低仕事関数電極、マスク蒸着法等
々の要素技術が研究開発され、1997年に単純マトリ
ックス方式と呼ばれる電荷注入方式での有機電界発光素
子が一部実用化されている。更に、アクティブマトリッ
クス方式と呼ばれる新しい電荷注入方式での有機電界発
光素子の開発も検討されつつある。
【0004】このような有機電界発光素子は、以下のよ
うな原理で駆動されている。すなわち、蛍光性または燐
光性の有機発光材料を一対の電極間に薄膜化させて正負
の電極から電子と正孔を注入させる。有機発光材料中に
おいて、注入電子は発光性分子の最低非占有分子軌道
(Lowest unoccupied molecu
lar orbital,LUMO)に入った1電子化
有機分子(単に、電子という)となり、また、注入正孔
は発光性分子の最高占有分子軌道(Highest o
ccupied molecular orbita
l,HOMO)に入った1正孔化有機分子(単に、ホー
ルという)となって有機材料中をそれぞれ対向電極に向
けて移動する。その途中で電子とホールが出会うと発光
性分子の一重項または三重項励起状態が形成され、それ
が光を輻射しながら失活することで光を放出する。一般
に、有機発光材料には各種レーザ色素のように光励起に
対する量子効率の高い材料が数多く知られているが、そ
れらを電荷注入により発光させようとすと、多くの有機
化合物が絶縁体であるために電子とホールの電荷輸送性
が低く、数百V級の高電圧が初期の有機電界発光素子に
は必要であったが、複写機の感光体として用いられてい
る有機電子写真感光体の電荷輸送性能の高さを利用し、
電荷(ホール)を輸送する薄膜と発光する薄膜とに機能
分離することで発光特性を向上させたものが先に述べた
Tangの2層型の有機電界発光素子であり、今日では
もう一つの電荷の電子の輸送性を別の有機薄膜に担わせ
た3層型の有機電界発光素子が報告されている。これ以
外に、ホールと電子の有機材料への注入特性を向上させ
るための電荷注入層や両者の再結合確率を上げるための
ホール停止層等各種機能を担わせた薄膜を追加すること
で、機能分離型、多層膜型の有機電界発光素子が提案さ
れている。しかしながら、その発光のもととなる部分
は、有機発光層に含まれる有機発光分子からの励起状態
の失活過程における光輻射であることには変わりがな
い。
【0005】文献(有機エレクトロニクス材料研究会
編、『有機LED素子の残された重要な課題と実用化戦
略』、ぶんしん出版、1999年中、第25〜38頁、
浜田裕次著、『第2節 発光材料の現状と課題』)によ
ると、蛍光または燐光を発する有機発光材料は、イン
キ、染料、シンチレ−タ等様々な用途で開発されたもの
が数多く知られており、有機電界発光素子にはこれらの
有機発光材料が利用されている。その種類は、分子量で
分けると、大きく低分子系と高分子系に分類され、低分
子系は真空蒸着法等のドライプロセスで、高分子系はキ
ャスト法で薄膜形成されている。Tang以前の初期の
有機電界発光素子で高効率な素子を得られなかった理由
の一つが良質な有機薄膜を形成することができなかった
ことによると言われ、特に低分子系で必要な条件とし
て、(1)真空蒸着法にて薄膜(100nmレベル)の
作製可能、(2)製膜後均一薄膜構造維持可能(結晶の
析出なし)、(3)固体状態での高蛍光量子収率、
(4)適度なキャリア輸送性、(5)耐熱性、(6)精
製容易、(7)電気化学的に安定等が挙げられている。
また、発光過程の分類から直接電子とホールの再結合に
よって発光する発光材料と発光材料から発生した光励起
によって発光する蛍光材料(または、ド−パント材料)
等に分けられる場合もある。また、化学構造上の違いか
らは、金属錯体型発光材料(配位子として8−キノリノ
−ル、ベンゾオキサゾ−ル、アゾメチン、フラボン等。
中心金属としてはAl、Be、Zn、Ga、Eu、Pt
等)と蛍光色素系発光材料(オキサジアゾ−ル、ピラゾ
リン、ジスチリルアリレ−ン、シクロペンタジエン、テ
トラフェニルブタジエン、ビススチリルアントラセン、
ペリレン、フェナントレン、オリゴチオフェン、ピラゾ
ロキノリン、チアジアゾロピリジン、層状ペロプスカイ
ト、p−セキシフェニル、スピロ化合物等)等が知られ
ている。このような正負の電荷の有機材料への注入、輸
送及び再結合という一連の電荷の流れにおいて、第1に
問題となるのが電極(金属材料)から有機材料への電荷
注入過程である。導電性の電極と絶縁性の有機材料の接
合部分にはその電子構造の違いによるポテンシャル障壁
が存在し、これを乗越えて電荷が注入されるためには、
一定のエネルギが必要とされる。文献(J.Kalin
owski: Electron processes
in organic electrolumine
scence: R. W. Munn, A. Mi
niewicz, and B. Kuchta(ed
s): Electrical and relate
d properties of organic s
olids:NATO ASI series, 3/
24, Kluwer Academic Publi
shers, p.167−206(1997).)に
よると、少なくとも2つの電荷注入機構が関与している
といわれる。第1は、熱電子放出(Thermioni
c emission)機構と呼ばれ、電荷が熱的に励
起されて界面でのポテンシャル障壁を乗越えて有機層中
に浸入する過程である。金属や半導体等のバンド幅の広
い物質では1段階の励起で障壁を乗越えていくことがで
き、その電流はRichardson−Schottk
y放出モデルで説明することができる。しかしながら、
有機物質のような絶縁性のバンド幅の狭い物質では界面
からの深さXmの位置にあるポテンシャル極大に到達す
る前に拡散運動を行う必要があり、その電流は一次元O
nsagerモデルに従う。両者のモデルは特に高電圧
印加時には同じ形式となり、電流密度jは次式で与えら
れる。
【数1】 ここで、β=e2/16πεε0kT、 A(F)=co
nst.、Fは印加電場、Xはポテンシャル障壁、kは
Boltzmann定数、Tは温度、eは電荷、ε0
真空中の誘電率、εは物質の比誘電率を示す。この時、
活性化エネルギ△Eは次式で与えられる。
【数2】 ここで、αE=(e3/4πεε01´2ある。障壁を乗
超えることができる電圧Fは、上式で△E=0と置く
と、求めることができ、例えば代表的な有機固体でε=
4とすると、ポテンシャル障壁X=0.6eVを乗越え
るにはF=107V/cmが必要である。多くの有機電
界発光素子では有機層は100nm程度であるから、こ
の時は100V程度の電圧が必要となる。第2の電荷注
入機構は、電場放出(Field emission)
と呼ばれるもので、界面障壁のトンネリングによって絶
縁体内に電荷が浸入する機構である。この機構には2つ
のモデルがあり、一つは古典的Fowler−Nord
heim近似と呼ばれる。これは鏡像力や熱電子効果を
無視した時の三角形障壁をトンネリングする過程を表
し、この時、
【数3】 ここで、b=4(2m*)1´23´2/3(h/2π)
eである。これはlogj対Fをプロットすると、十分
大きなFの領域では直線関係を与え、その傾きから障壁
Xを求めることができる。もう一つは絶縁体により形成
されたポテンシャルステップとの量子力学的相互作用に
よるもので、電荷は減衰された一次元Bloch波のよ
うに隣接する絶縁体の禁制帯に浸入する。この時、
【数4】 ここで、cqe,h=(h/2π)~1(em*e,he,h1´
2/(2πεε01´2である。また、le,hは絶縁体中
への電荷の平均浸入長を示し、これはステップの高さX
e,h、有効質量m*e,hと電子波動ベクトル対電子エネル
ギの関数形に依存する。即ち、
【数5】 この場合も、高電圧時のlogj対F~1´2プロットは
熱電子放出の時と同じ依存性となるが、その係数の違い
によって実験的に区別されている。これら2つの機構、
熱電子放出と電場放出が共に電子注入過程では働いてい
るが、低電圧の場合は電場放出が高電圧の場合は熱電子
放出が中心的役割を果たすと言われている。各機構の電
場の依存性は異なるが、界面でのポテンシャル障壁の大
きさXが重要な役割を果たしており、電子の注入の場合
はXが小さい程、正孔の注入の場合はXが大きい程、電
流密度は増大する。このため、実際の材料探索において
は電極と有機層との間に電荷注入層を設けることが検討
されており、電子注入される陰極には低仕事関数材料の
超薄膜または電極材料との合金(例えば、Mg:Ag、
Li:Al、Cs:Al、LiF/Al、MgO/Al
等)、正孔注入される陽極には高仕事関数材料の超薄膜
(例えば、Au、Pt、Se、CuPc等)が検討され
ている。このように、注入された電荷は有機材料中を輸
送されて行くが、有機材料自体は絶縁性であり、化合物
半導体や金属材料のように自由に電荷が流れるのに比べ
て一般に抵抗が大きい。有機材料のうち、非晶質な低分
子化合物やランダム高分子ではその電導性は電荷が物質
中のサイト間を飛び移り行くポッピング電導を示すのに
対して、π電子共役構造を持つ結晶性低分子や高分子で
は一部にπ電子共役性に由来するバンド構造を介した電
導性を示すが化合物半導体に比べてその電導性は低い。
また、その導電性も一様ではなく、電荷を受入れやすい
サイトや各種の欠陥、配向性の乱れ、ドメインの形成等
に由来する電荷トラップが存在するために、注入された
電荷のうち一定割合の電荷が対向電極に到達することな
く、有機層中に蓄えられている。このトラップ電子が充
填されるまでは十分な電流が流れられないため、有機電
界発光素子が発光を始める閾値電圧が高くなり、また、
電圧印加を停止した後も内部に蓄えら得た電荷が完全に
放電されるまで一定の時間を要するため、素子としての
動作速度の律速となる。
【0006】このような有機層自身の電荷輸送性を向上
させる手段は、大部分が有機層を構成する有機化合物自
身の化学構造設計によっている。すなわち、正孔輸送性
を高めるためにはアモルファス性の3級アミン構造を含
む材料が多く使われており、電子輸送性を高めるために
は有機金属錯体や有機塩等が使われている。これら材料
上の工夫を図ることによって、より多くの電荷が有機層
中を流れることが可能となっている。しかしながら、有
機材料自身に本質的に形成される電荷トラップを取り除
くものではなく、また、実際に電子と正孔が出会って再
結合する領域は高々数十nmの薄膜領域に限定されるた
め、全有機層にわたって光を発生させるものではなかっ
た。これは、電子と正孔の異動度が一般に正孔の方が高
速であるために、再結合できる部分は限られていること
に由来する。このため、単層型の有機電界発光素子では
正孔が電子と再結合する前に大部分が陰極まで行き過ぎ
てしまう。これを回避するために、正孔が有機層中央部
で留まるように改良したものが正孔輸送層と発光層から
なる二層型有機電界発光素子であり、より積極的に正孔
の輸送性を中央部で停止させるために、正孔輸送層と発
光層の間に正孔ブロック層という数nm程度の薄膜が挿
入される場合もある。逆に、電子の輸送性が高い有機層
を発光層とは別に設けて多層化した有機電界発光素子も
報告されている。係る各種電荷注入、移動機構に関して
有機化合物と無機化合物との複合化による手法として、
以下のようなものが開示されている。例えば、文献(特
開平11−40366号公報)によれば、陰極と有機層
との間に誘電体層を発光部分のみトンネル電流可能な膜
厚に制御して画素を形成する方法が開示されている。こ
の方法によると、先にも説明した原理により、トンネル
電導可能な数Å程度の超薄膜化した無機化合物を電極と
有機層との間に介在させることによって電荷注入特性は
向上させることはできるが、注入後の電荷は絶縁性の有
機化合物層内部に蓄えられるため、その導電性を向上さ
せることができなかった。また、文献(特開平8−10
2360号公報)によれば、有機化合物と無機化合物を
複合化させた発光層として、無機化合物媒体中に有機化
合物を分散させた膜や無機化合物と有機化合物の超格子
膜を用いた例が記載されている。しかしながら、この中
では無機化合物による熱的安定化を効果とするために、
隣接する有機化合物との距離をホッピング電導可能な距
離として50Å以下にすることが示されているが、有機
化合物内部での導電性の改善方法については記載されて
いない。このような導電性では有機層内部での導電性が
悪いことは同等であるため、有機物と無機物の界面がホ
ッピングされた電荷のトラップサイトとなり、確かに無
機物との複合化による耐熱性の向上は期待できるが、充
分な発光を起こすための電圧が余分に必要となり、素子
の駆動電圧の上昇、特に発光が開始し始める閾値電圧の
上昇が発生するため、素子駆動上余分な電力を必要とす
る等の問題があった。以上のように、有機電界発光素子
においては既に有機材料自身や金属電極、その界面の電
荷注入層或いは正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送
層等の工夫により性能向上か図られている。しかしなが
ら、その有機層自身が絶縁性のホッピング電導に由来す
る電気的性質であることには変化がない。
【発明が解決しようとする課題】このように有機電界発
光素子の電気的特性向上のためには、各種の手法が検討
されてきた。しかしながら、有機電界発光素子を構成す
る発光層の有機材料が本質的に抱える課題、即ち、電気
的絶縁性、電子と正孔の輸送性のアンバランス、その薄
膜内部に形成される電気的トラップ準位の存在等につい
ては、分子設計上の工夫以外に、特に解決すべき手段が
なかった。このため、有機電界発光素子駆動時の閾値電
圧の存在や実用発光量を確保する電圧での各種電荷注入
機構が並存するために、駆動電圧を一定電圧値で常時固
定する必要があり、数百万画素以上の領域に区分されて
電圧がそれぞれに印加されるような画像表示素子として
用いた場合の電圧制御回路を複雑にしてきた。また、内
部に蓄積される電荷に由来する浮遊容量がもたらす電気
的遅延の発生は、有機電界発光素子に用いられている材
料自身が持つ電界発光の高速点灯、高速失活性とは異な
り、発光素子駆動上の律速となるため、特に10インチ
以上の大画面表示素子や小面積でも高精細な画像表示素
子として駆動させる場合に、特に動画表示の上での問題
となっていた。これは従来、有機材料を用いる上での本
質的な事柄と考えられてきたため、高密度な画像表示素
子としての利用は制限され、高々8インチまでの画像表
示素子が提案されたに過ぎなかった。
【0007】本発明の課題は、上記事情に鑑み、有機電
界発光素子における発光層の発光効率の向上、素子特性
の向上を図ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、有機電界発光素子の発光層が少なくとも2種類以上
の薄膜を積層した多層膜からなり、発光層を形成する多
層膜のうち、少なくとも第1種類の薄膜層は正孔と電子
の再結合によって直接光を発生する有機発光物質を含む
薄膜層であり、かつ、第2種類の薄膜層は有機発光物質
を含有しない無機物質からなる薄膜層であり、第1種類
の薄膜層と第2種類の薄膜層を隣接して形成する。ここ
で、第1種類の薄膜層と第2種類の薄膜層を交互に積層
する。また、第1種類の薄膜層の厚みが第2種類の薄膜
層の厚みよりも大きく、かつ、第1種類の薄膜層の厚み
が10nm以下であり、かつ、1nmよりも大きくす
る。また、正孔輸送性有機物質を含む第3種類の薄膜層
を形成し、発光層と第3種類の薄膜層との間に第2種類
の薄膜層を積層する。また、正孔輸送性有機物質を含む
第3種類の薄膜層を形成し、発光層と第3種類の薄膜層
との間に第2種類の薄膜層を積層すると共に、第3種類
の薄膜層自体を第2種類の無機物質によって超格子化す
る。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を
用いて説明する。図1は、本発明の実施形態1による有
機電界発光素子の基本構造を示す。本実施形態の有機電
界発光素子は、ガラスや高分子等の透明基板(6)上に
ITO(indium tin oxide)やIZO
(indium zincoxide)等の透明陽極
(5)が形成され、その上に正孔輸送層(4)が形成さ
れる。正孔輸送層(4)にはTPD(N,N’−dip
hyny1−N,N’−bis(3−methylph
enyl)−1,1’−biphenyl−4,4’−
diamine)やα−NPD(4,4’−bis[N
−(1−naphthyl)−N−phenylami
no]biphenyl)、或いはPEDT:PSS:
PXT混合高分子(PEDT=poly(3,4−et
hylenedioxythiophene),PSS
=poly(4−styrenesulphonat
e),PXT=poly(p−xylylene−α−
tetrahydrothiophenium)等の正
孔輸送性材料を用いる。この上に、本実施形態の特徴を
有する発光層(7)を形成し、その上にAl、In、M
g:Ag等の陰極(1)を形成することによって構成さ
れる。発光層(7)は、第1種類の薄膜層が正孔と電子
の再結合によって直接光を発生する有機発光物質を含む
薄膜層であり、図1では有機発光材料薄膜(3)として
示す。有機発光物質としては、Alq3(alumin
ium tris(8−hydroquinolin
e))やジスチリルアリレ−ンが挙げられる。この有機
発光材料薄膜(3)に対して、第2種類の薄膜層は有機
発光物質を含有しない無機物質からなる薄膜層であっ
て、図1ではLiFやCaF2等を無機障壁層(2)と
して示す。通常、Alq3等の有機発光材料薄膜の最適
膜厚は60nm程度であることが、文献(H.Schm
idt,C.Schmiz,P.Posch,M.Th
elakkat:Abstract Int.Con
f.on Sci.& Tech.Adv.Poly
m.(ICAP99,Yamagata),Yamad
aga,Japan,29P08(1999))によっ
て示されているが、本実施形態においては、後に示すよ
うに用いる材料によって異なるが、3nm以上70nm
以下の範囲が本実施形態の有機発光材料薄膜(3)の膜
厚としては望ましい。また、無機障壁層(2)の最適膜
厚は、後に示すように用いる材料によって異なるが、
0.1nm以上10nm以下の範囲が本実施形態の無機
障壁層(2)の膜厚としては望ましい。その理由は現段
階では明確ではないが、トンネル効果に基づく電荷移動
が発光層(7)全体にわったて可能となるためではない
かと、推定される。
【0010】次に、本実施形態の有機電界発光素子の具
体的な作製手順を説明する。透明基板(6)には硼珪酸
ガラス(サイズ40×40×0.8mm、両面研磨)を
用い、その片面にITOをスパッタ蒸着した後、パター
ニングエッチングしたものを透明陽極層(5)とした。
ITOの膜厚は100nm、基板温度200℃で形成し
た多結晶性ITOであり、シート抵抗は20Ω/□であ
った。これを中性洗剤中で超音波洗浄を15分行い、純
水流水下で1時間洗浄後、純水中で15分超音波洗浄を
2回繰り返した後、アセトン(和光純薬製、特級)中で
15分超音波洗浄し、乾燥窒素を吹き付けて乾燥させ
た。これを150℃のホットプレ−ト上で、大気中で紫
外線ランプを5分間照射した後、モリブデン製基板ホル
ダ(日本バックスメタル製)に装着し、手早く後に示す
分子線蒸着装置の交換室に基板ホルダごと装着した。図
2には、本実施形態の試料作製に用いた分子線蒸着装置
の構成を示す。正孔輸送層(4)及び発光層(6)及び
陰極(1)は、分子線蒸着装置(日電アネルバ製、型式
OMBE,IMBE−620)内にて蒸着形成した。分
子線蒸着装置は基板ホルダを交換、装着するための交換
室、交換室内の基板を搬送して最高1300℃まで加熱
することが可能な前処理室、正孔輸送層、有機発光材料
層及び無機障壁層を形成するための第1成長室、金属電
極を形成するための第2成長室、形成された薄膜の表面
状態をESCA、AESで分析するための分析室から成
り、各室のベース圧力は交換室以外は10~10Torr
台、交換室は10~9Torr台であり、各室の間はゲー
トバルブによって仕切られ、必要に応じて基板ホルダご
と基板を超高真空下で移動することができる構造になっ
ている。また、交換室への基板の装着や製膜された試料
の取出しは、ゲートバルブで仕切られたグローブボック
ス(美和製作所製)を介して大気圧下、但し酸素及び水
分を除去した乾燥窒素の環境下でやりとりすることが可
能となっている。蒸着に際しては、必要に応じて第1及
び第2成長室に基板を移動させて行った。蒸着時には該
当する成長室チャンバを液体窒素で冷却しつつ、各成長
室に予め装着した原料物質を加熱昇華または蒸発させて
基板上に蒸着し、薄膜を形成した。原料物質は有機物質
は石英製るつぼ(日電アネルバ製)、無機物質は窒化硼
素製るつぼ(信越化学製)に収納して各成長室に装着
し、真空状態にし、ヒータ加熱によって原料物質を気化
させる。るつぼの出口には機械式のシャッタが取り付け
られ、所定の時間シャッタを開くことで気化した原料物
質を基板上に蒸着させる。蒸着された原料の膜厚は基板
近くに置かれた水晶振動子型膜厚計にて計測して所定の
膜厚の薄膜を形成した。また、基板の温度は−90℃か
ら150℃の範囲で所定の温度に保存することが可能で
ある。蒸着速度は、有機物及び無機障壁層は0.1nm
/s、陰極材料は30nm/s程度になるようにるつぼ
温度を設定した。蒸着手順は、まず第1成長室にて正孔
輸送層を所定の膜厚形成した後、同じチャンバ内で有機
発光材料層と無機障壁層からなる発光層を所定の膜厚形
成した後、一旦交換室に試料を搬送する。そこで、ステ
ンレス製の金属マスクを装着した基板ホルダに試料を載
せ換えた後、第2成長室に試料を搬送してそこで陰極を
形成した。合金性陰極の混合比は分析室のXPSによっ
て各元素の存在比率から決定した。陰極形成時の基板温
度は−90℃から30℃の範囲の所定の温度に設定し
た。陰極まで形成した試料は交換室まで移動し、そこか
らグローブボックスに取出し、グローブボックス内部に
てガラス板にてカバーし、その端部を紫外線硬化樹脂に
て封止した。最終的な試料は、発光層エリアが封止さ
れ、その外部に陽極、陰極が引き出される。これら電極
に対してはブローバを用いて外部から電圧を印加させる
ことができる。
【0011】次に、図3を用いて、作製した本実施形態
の有機電界発光素子の発光特性を評価する発光特性評価
系のダイアグラムについて説明する。作製した有機電界
発光素子(8)に対して、電圧を供給し、同時に流れる
電圧量を測定する電圧供給、電流測定装置(11)(H
ewlett−Packard社製、pA Meter
/DC Voltage Source 4140B)
から電圧を印加し、陽極から陰極に向けて素子内部に電
流を流すことで該素子を電界発光させた。発光した光の
量は、該素子中央部の正面位置に設置された輝度計カメ
ラ(9)及びそれを制御する輝度計制御器(10)(P
hotoresearch社製、Spectra Pr
itchard Photometer, Model
1980A−PL)によってその輝度測定を行った。
これら輝度計制御器(10)及び電圧供給、電流測定装
置(11)はその制御及び計測を制御パソコン(12)
によって動作制御する。測定はすべて室温で行い、特に
温度制御は行ってない。
【0012】図4に、有機電界発光素子の代表的な輝度
−印加電圧特性を示す。電圧を印加し始めると、最初ノ
イズレベルの発光が観測されるが数V(図では3V程
度)から急速に発光量が増大する(この電圧を閾値電圧
とした)。更に電圧を印加すると、発光量も増大する
が、輝度が100cd/m2となった時の電圧を特性電
圧とした。更に電圧を印加し続けると、最大の輝度に達
するが、その近辺で素子の絶縁破壊が起こり、素子が破
壊される。この電圧を破壊電圧とした。これら4つの指
標、即ち、閾値電圧、特性電圧、最大輝度、破壊電圧で
作製された素子の性能を比較した。
【0013】次に、本実施形態の有機電界発光素子を具
体的に作製し、その特性を評価した結果を[表1](図
5)から[表8](図12)を用いて説明する。まず、
[表1]には、その特性評価に用いた有機電界発光素子
の素子構成をまとめた。ここでは、代表的な素子構成と
して、陽極(A)には先に説明した多結晶ITO(厚さ
100nm)付のガラス基板を用いた。この上に、先に
説明した分子線蒸着装置によって順次、正孔輸送層(H
TL)、発光層、陰極(K)を蒸着して行くが、発光層
は有機発光材料(OL)と無機障壁材料(IW)を用い
て所定の厚さで有機発光材料/無機障壁材料の順に蒸着
し、その積層を繰り返し数nだけ繰り返して蒸着した。
また、比較のために、従来例として無機障壁材料を含ま
ない有機発光材料単独の発光層の試料も作製した。ここ
で、正孔輸送層(HTL)にはα−NPDを用い、その
厚みは50nmとした。また、陰極(K)にはAlを用
い、その厚みは100nmとした。有機発光材料(O
L)と無機障壁材料(IW)の厚みはそれぞれx n
m、y nmとし、[表2]から[表8]の各場合に応
じて所定の厚み蒸着した。ここでは、有機発光材料(O
L)と無機障壁材料(IW)が交互に積層された超格子
の場合の素子構成をA/HTL/(OL/IW)n/K
と記載し、一方、従来例の素子構成をA/HTL/OL
/Kと記載することにする。
【0014】次に、繰り返し数が1の場合の有機電界発
光素子の素子特性について、[表2]を用いて説明す
る。ここでは有機発光材料(OL)の膜厚は50nmと
し、無機障壁材料(IW)の膜厚を0.1nmから4.
0nmまで変化させた試料を作製し、その特性を評価し
た。無機障壁材料(IW)を含まない場合の従来例で
は、閾値電圧6.0V、特性電圧15.6V、破壊電圧
25.0V、最大輝度1560cd/m2であった。こ
れに対して、無機障壁材料(IW)の薄膜を形成した場
合、その膜厚の違いによって発光特性が変化した。ま
ず、無機障壁材料(IW)の厚み0.1nmでは閾値電
圧、特性電圧が少し低下し、破壊電圧が少し上昇し、更
に最大輝度も少し上昇した。無機障壁材料(IW)の厚
み0.5nmから2.5nmでは閾値電圧、特性電圧が
更に低下し、破壊電圧が上昇し、更に最大輝度も上昇し
た。特に、最大輝度では、無機障壁材料(IW)の厚み
1.0nmから2.0nm範囲が大きな値となった。し
かしながら、無機障壁材料(IW)の厚み3.0nm以
上では閾値電圧、特性電圧が上昇し始め、4.0nmで
は従来例よりも特性が低下した。これは、有機発光材料
(OL)と陰極(K)との間の電荷注入特性の向上に由
来するものと考えられる。これに対して、繰り返し数n
を増やし、5、10、12、20、50、100と増加
した試料の特性を[表3]から[表8]にまとめた。こ
こで、無機障壁材料(IW)の厚みの変化は[表2]の
場合と同じとし、有機発光材料(OL)の厚み×繰り返
し数nがほぼ50nmとなるように、それぞれ10、
5、4、2.5、1.0、0.5nmとした。繰り返し
数nが増加すると、まず発光可能な無機障壁材料(I
W)の厚みが4.0nmよりも薄い場合に限られ、4.
0nm以上では絶縁破壊するまで電圧を印加しても発光
を確認するこができなかった。同じ繰り返し数nの場合
の中では、[表2]の場合と大まかに言って同様の傾向
を示した。即ち、無機障壁材料(IW)の厚み0.1n
mでは閾値電圧、特性電圧が少し低下し、破壊電圧が少
し上昇し、更に最大輝度も少し上昇した。無機障壁材料
(IW)の厚み0.5nmから2.5nmでは閾値電
圧、特性電圧が更に低下し、破壊電圧が上昇し、更に最
大輝度も上昇した。特に、最大輝度では、無機障壁材料
(IW)の厚み1.0nmから2.0nm範囲が大きな
値となった。しかしながら、無機障壁材料(IW)の厚
み3.0nmでは閾値電圧、特性電圧が上昇し始めた。
破壊電圧、最大輝度は繰り返し数10(OL 膜厚5n
m)で最大となるが、その前後ではやや低めとなり、繰
り返し数50以上では著しく低下した。これは、有機発
光材料の膜厚が1.0nm以下となると、充分な被覆率
を保つことができなくなり、トンネル電流から絶縁体中
のホッピング電導に戻るためと考えられる。特に著しい
効果を示すのが閾値電圧である。これも繰り返し数10
の場合のIW膜厚1.0から1.5nmで最小3.0V
を示し、その前後で閾値電圧が上昇する。この時、従来
例に比較して、閾値電圧は1/2となっており、特性電
圧8.4Vに低減されている。このことは、より少ない
消費電力で実用的な発光を得ることができることを示し
ている。また、破壊電圧も2倍近くになっており、最大
輝度も4000cd/m2と大幅に増大している。これ
らのことから、有機発光材料(OL)と無機障壁材料
(IW)との超格子化により電界発光特性向上が認めら
れるのは、有機発光材料(OL)膜厚が2.5から5.
0nmの範囲、無機障壁材料(IW)膜厚が0.5から
2.0nmの範囲が最適である。また、有機発光材料
(OL)膜厚が10nm以上では返って[表2]の場合
に比べて特性は低下しており、超格子化により特性向上
を図ることができない。また、1nm以下となり、多層
膜が不完全となる場合にも特性は悪化している。
【0015】本発明の実施形態2による有機電界発光素
子は、実施形態1(図1)の発光層(7)と正孔輸送層
(4)との間にも無機障壁材料(IW)の薄膜を挿入し
た場合の素子であり、素子構成をA/HTL/IW/
(OL/IW)n/Kと記載する。実施形態1との違い
は、正孔輸送層(4)と発光層(7)との間に、同じ無
機障壁材料(IW)を一層加えた点にある。これを素子
積層順序で示すと、実施形態1がA/HTL/(OL/
IW)n/Kであるのに対して、実施形態2はA/HT
L/IW/(OL/IW)n/Kとなる。これは、実施
形態1では正孔輸送層(4)に直接接している有機発光
材料(OL)があるのに対して、実施形態2ではすべて
の有機発光材料(OL)が無機障壁材料(IW)で狭ま
れた構造となる。次に、実施形態1で判明した最適膜厚
の組み合わせに対して、実施形態2による有機電界発光
素子の素子特性について説明する。この場合の素子構成
を[表9](図13)にまとめた。透明陽極(5)、陰
極(1)、正孔輸送層(4)は実施形態1と同じ構成で
あり、ここでは有機発光材料(OL)膜厚が2.5nm
の場合について、同じく無機障壁材料(IW)膜厚が
0.1から4.0nmの範囲で変化させた。このような
構成の素子特性を[表10](図14)にまとめた。こ
の場合の対応する素子特性は実施形態1の[表6]であ
る。両者を比較すると、いずれの膜厚の場合も閾値電圧
と特性電圧は低下すると共に、破壊電圧と最大輝度は上
昇し、電界発光素子特性は向上した。このように、すべ
ての有機発光材料を同等に無機障壁材料で狭むことによ
り、素子特性を向上させることができた。これは、正孔
輸送層(4)と有機発光材料(OL)との間の電荷移動
性が向上したことに由来するものと考えられる。
【0016】本発明の実施形態3による有機電界発光素
子は、実施形態2([表9]に示した素子構成)の発光
層(7)と正孔輸送層(4)との間に無機障壁材料(I
W)を一層加えた点に加えて正孔輸送層(4)自身も同
じ無機障壁材料(IW)によって超格子化した素子であ
る。素子構成をA/(IW/HTL)n/IW/(OL
/IW)n/Kと記載する。実施形態1、実施形態2と
の違いは、素子積層順序で示すと、実施形態1がA/H
TL/(OL/IW)n/K、実施形態2がA/HTL
/IW/(OL/IW)n/Kであるのに対し、実施形
態3はA/(IW/HTL)n/IW/(OL/IW)
n/Kとなる。これは、実施形態1では正孔輸送層
(4)に直接接している有機発光材料(OL)があるの
に対して、実施形態2ではすべての有機発光材料(O
L)が無機障壁材料(IW)で狭まれた構造となり、こ
れらに対して実施形態3では正孔輸送層(4)も有機発
光材料(OL)と同じ膜厚と繰り返し数nで超格子化さ
れている構造となる。次に、実施形態1、実施形態2で
判明した最適膜厚の組み合わせに対して、実施形態3に
よる有機電界発光素子の素子特性について説明する。こ
の場合の素子構成を[表11](図15)にまとめた。
陽極(A)、陰極(K)は実施形態1と同じ構成であ
り、ここでは有機発光材料(OL)膜厚は2.5nmの
場合について、同じく無機障壁材料(IW)膜厚を0.
1から4.0nmの範囲で変化させた。このような構成
の素子特性を[表12](図16)にまとめた。この場
合の対応する素子特性は実施形態2の[表10]であ
る。両者を比較すると、いずれの膜厚の場合も閾値電圧
と特性電圧は低下する共に、破壊電圧と最大輝度は上昇
し、電界発光素子特性は向上した。特に、無機障壁材料
(IW)膜厚1.0nmの時、閾値電圧1.2V、特性
電圧5.6V、破壊電圧45.0V、最大輝度4600
cd/m2と極めて高い特性を示した。このように、す
べての有機発光材料(OL)だけでなく、正孔輸送層
(4)も同等に無機障壁材料(IW)で狭むことによ
り、素子特性を向上させることができる。これは、正孔
輸送層(4)内部の電荷移動性が向上したことに由来す
るものと考えられる。更に、有機発光材料(OL)から
正孔輸送層(4)まですべて無機障壁層(2)による超
格子化を施すことでヘテロ界面でのトンネル効果に加え
て、本来絶縁性の有機分子層中においてもトンネル電流
が期待でき、特性の著しい向上が図られたものと考えら
れる。
【0017】ここで、本発明の有機電界発光素子の発光
層(7)は、単一層であっても、または、多層であって
もよい。また、発光層(7)は、正孔と電子の再結合に
より光を放射する有機発光分子以外に、有機発光分子か
ら発生した光を吸収して別の光を発生することが可能な
蛍光物質(または、燐光物質)を含んでいてもよい。ま
た、発光層(7)は、正孔または電子の発光層内部での
易動度を高めることが可能な正孔輸送物質または電子輸
送物質を含んでいてもよい。また、発光層(7)は、特
定の空間的位置に正孔または電子を補足するまたは輸送
性を低下させるための正孔捕捉物質または電子捕捉物質
を含んでいてもよい。更に、これら有機発光分子、蛍光
物質(または、燐光物質)、正孔輸送物質、電子輸送物
質、正孔捕捉物質、電子捕捉物質は、同一の層に含まれ
てもよく、または、別個の層に分離されていてもよい。
また、本発明の発光層(7)と、発光層(7)に正孔ま
たは電子を注入する陽極(5)または陰極(1)との間
には、正孔または電子の注入効率を向上させるための正
孔注入層または電子注入層を設けていてもよい。また、
発光層(7)、陽極(5)、陰極(1)、正孔注入層、
電子注入層を保持するための基板を設けてもよく、それ
ら以外の中間層を便宜設けていてもよい。そのような中
間層としては、光の反射特性を変調するための反射鏡や
部分透過鏡、特定光を透過するフィルタ、光の出射タイ
ミングを調整する光スイッチ、光の位相特性を調整する
ために波長板、光の出射方向を拡散するための拡散板、
素子を構成する物質の外部光や熱、酸素、水分等による
劣化を防ぐための保護膜等が挙げられる。これら中間層
は、発光層(7)、陽極(5)、陰極(1)、正孔注入
層、電子注入層、基板との間、または、その外部に素子
特性を著しく劣化させないような仕様で便宜設けること
ができる。また、本発明に用いることが可能な電界発光
材料としては、各種金属錯体型発光材料(配位子として
8−キノリノ−ル、ベンゾオキサゾ−ル、アゾメチン、
フラボン等。中心金属としてはAl、Be、Zn、G
a、Eu、Ru、Pt等)や蛍光色素系発光材料(オキ
サジアゾ−ル、ピラゾリン、ジスチリルアリレ−ン、シ
クロペンタジエン、テトラフェニルブタジエン、ビスス
チリルアントラセン、ペリレン、フェナントレン、オリ
ゴチオフェン、ピラゾロキノリン、チアジアゾロピリジ
ン、層状ペロプスカイト、p−セキシフェニル、スピロ
化合物等)を用いることができる。或いは、各種高分子
材料(ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾ−
ル、ポリフルオレン等)を発光材料としたり、または、
非発光性の高分子材料(ポリエチレン、ポリスチレン、
ポリオキシエチレン、ポリビニルアルコ−ル、ポリメタ
クリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリイソプレ
ン、ポリイミド、ポリカ−ボネ−ト等)をマトリックス
として、各種発光材料または蛍光材料を混合したり共重
合したりすることも可能である。また、各種有機正孔ま
たは電子輸送材料(トリフェニルアミン等)を介在させ
ることもできる。更には、各種正孔または電子注入層
(例えば、Li、Ca、Mg、Cs、CuPc等)を介
在させることも可能であり、素子構成に合わせて便宜材
料を選ぶことができる。
【0018】また、本発明の有機電界発光素子の基板
(6)には、ガラス、シリコン、ガリウム砒素等の無機
物質からなる基板や、ポリカ−ボネ−ト、ポリエチレ
ン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸
メチル等の有機物質からなる基板、或いは、両者を複合
化させた基板を用いることができる。これら基板は、そ
の母材からの切り出し研磨、射出成形等の手法によって
形成することができる。また、発光状態を制御するため
に、薄膜トランジスタを形成した基板を用いることも可
能であり、係る薄膜トランジスタを形成した基板上に有
機電界発光層を形成したり、或いは、薄膜トランジスタ
を形成した基板と有機電界発光層を形成した基板とをそ
れぞれ別々に形成した後に、両者を接合させることによ
って一体化させることも可能である。また、本発明の有
機電界発光素子は、駆動させるための電子回路と近接さ
せて高密度実装させることも可能であり、外部との信号
の授受のインタ−フェ−スやアンテナ等と一体化するこ
ともできる。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の有機電界
発光素子を用いることにより、無機障壁層にナノスケー
ルで狭まれた有機超格子構造を有する有機電界発光素子
を形成することができる。また、特に、特定のエネルギ
準位を有する有機物質と無機物質の組み合わせ及びその
膜厚の最適化を図ることにより、無機障壁層を用いない
場合に比べ、閾値電圧、特性電圧、破壊電圧、最大輝度
の素子特性に優れた有機電界発光素子を得ることができ
る。また、材料膜厚の最適化によって著しく閾値電圧の
低い有機電界発光素子が得られ、トンネル電流によって
電荷注入及び移動が可能な有機電界発光素子を形成する
ことができる。また、これら素子電気特性の向上によっ
て素子駆動の低電圧化、高輝度化、長寿命化を図ること
が可能となり、引いては有機電界発光素子を画像表示素
子として用いた場合の大画面化、高精細化が容易となる
効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1による有機電界発光素子の
基本構造図
【図2】本発明の有機電界発光素子の作製に用いる分子
線蒸着装置の構成図
【図3】本発明の有機電界発光素子の発光特性評価系の
ダイアグラム
【図4】本発明の有機電界発光素子の代表的な輝度−印
加電圧特性を示す図
【図5】本発明の有機電界発光素子の実施形態1による
素子構成表[表1]
【図6】本発明の実施形態1にの素子特性表[表2]
【図7】本発明の実施形態1の素子特性表[表3]
【図8】本発明の実施形態1の素子特性表[表4]
【図9】本発明の実施形態1の素子特性表[表5]
【図10】本発明の実施形態1の素子特性表[表6]
【図11】本発明の実施形態1の素子特性表[表7]
【図12】本発明の実施形態1の素子特性表[表8]
【図13】本発明の有機電界発光素子の実施形態2によ
る素子構成表[表9]
【図14】本発明の実施形態2の素子特性表[表10]
【図15】本発明の有機電界発光素子の実施形態3によ
る素子構成表[表11]
【図16】本発明の実施形態3の素子特性表[表12]
【符号の説明】
1…陰極、2…無機障壁層、3…有機発光材料薄膜、4
…正孔輸送層、5…透明陽極、6…透明基板、7…発光
層、8…有機電界発光素子、9…輝度計カメラ、10…
輝度計制御器、11…電圧供給、電流測定装置、12…
制御パソコン

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 発光層に対して陽極電極から正孔を、陰
    極電極から電子を注入可能であり、前記発光層内部で正
    孔と電子の再結合によって光を放出する有機電界発光素
    子であって、前記発光層が少なくとも2種類以上の薄膜
    を積層した多層膜からなり、前記発光層を形成する多層
    膜のうち、少なくとも第1種類の薄膜層は正孔と電子の
    再結合によって直接光を発生する有機発光物質を含む薄
    膜層であり、かつ、第2種類の薄膜層は前記有機発光物
    質を含有しない無機物質からなる薄膜層であり、前記第
    1種類の薄膜層と第2種類の薄膜層を隣接して形成する
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記第1種類の薄膜
    層と第2種類の薄膜層を交互に積層することを特徴とす
    る有機電界発光素子。
  3. 【請求項3】 請求項2において、前記第1種類の薄膜
    層の厚みが第2種類の薄膜層の厚みよりも大きく、か
    つ、前記第1種類の薄膜層の厚みが10nm以下であ
    り、かつ、1nmよりも大きいことを特徴とする有機電
    界発光素子。
  4. 【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれかにおい
    て、正孔輸送性有機物質を含む第3種類の薄膜層を形成
    し、前記発光層と前記第3種類の薄膜層との間に前記第
    2種類の薄膜層を積層することを特徴とする有機電界発
    光素子。
  5. 【請求項5】 請求項1から請求項3のいずれかにおい
    て、正孔輸送性有機物質を含む第3種類の薄膜層を形成
    し、前記発光層と前記第3種類の薄膜層との間に前記第
    2種類の薄膜層を積層すると共に、前記第3種類の薄膜
    層自体を前記第2種類の無機物質によって超格子化する
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
  6. 【請求項6】 請求項1から請求項5のいずれかにおい
    て、前記発光層を形成する第2種類の無機物質は、アル
    カリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、
    硫化物、沃化物、セレン化物を含有することを特徴とす
    る有機電界発光素子。
  7. 【請求項7】 請求項1から請求項6のいずれかにおい
    て、前記発光層は、アモルファスシリコン薄膜トランジ
    スタまたは多結晶シリコン薄膜トランジスタを形成した
    基板上に形成し、または、有機薄膜トランジスタを形成
    した基板上に形成することを特徴とする有機電界発光素
    子。
  8. 【請求項8】 請求項1から請求項6のいずれかにおい
    て、前記発光層は、アモルファスシリコン薄膜トランジ
    スタまたは多結晶シリコン薄膜トランジスタを形成した
    基板、または、有機薄膜トランジスタを形成した基板と
    別個に形成した後、一体化することを特徴とする有機電
    界発光素子。
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