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JPH10267917A - 鋼材中の析出物予測方法 - Google Patents

鋼材中の析出物予測方法

Info

Publication number
JPH10267917A
JPH10267917A JP9072004A JP7200497A JPH10267917A JP H10267917 A JPH10267917 A JP H10267917A JP 9072004 A JP9072004 A JP 9072004A JP 7200497 A JP7200497 A JP 7200497A JP H10267917 A JPH10267917 A JP H10267917A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
precipitation
transformation
rate
steel
phase
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9072004A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Nakamura
浩史 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP9072004A priority Critical patent/JPH10267917A/ja
Publication of JPH10267917A publication Critical patent/JPH10267917A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Investigating And Analyzing Materials By Characteristic Methods (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】γから変態する組織中の析出現象を精度良く簡
便に予測する方法の提供。 【解決手段】(I)オーステナイト(γ)から変態する
組織中での析出現象を予測する方法であって、γ中の合
金元素の固溶濃度を定め、かつ予測対象領域を微小領域
に分割し、下記(1)、(2)、(3)の計算を微小領
域ごとに行い、全体の析出率が一定値を超えず、かつ冷
却終了温度に至らないときは、時間刻みを加えた時刻に
ついて、さらに(1)、(2)、(3)を行い、全体の
析出率が一定値を超えたとき、または冷却終了温度に到
達したときに計算を終了する鋼材中の析出物予測方法。
(1)その時刻の温度を定める。(2)γから変態する
相の種類を定め、変態率を計算する。(3)その変態率
に対応させて組織を変態相に変化させ、変態相中の析出
核密度およびその析出物の成長を計算する。(II)析出
核密度の計算において、転位密度ρ、拡散定数D、また
はそれらの両方をγからの変態相に応じて増減させる
(I)の析出物予測方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼材の品質管理、
製造方法の改善等に有益な、相変態を経て製造される鋼
材中の析出物の状態を計算によって高精度かつ簡便に予
測する鋼材中の析出物予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼材の化学組成と製造条件からその鋼材
の組織や機械的性質を定量的に予測することができれ
ば、試験片を採取して実際に試験を行う必要が無くなる
ので、歩留まり向上に直接役立つだけでなく製造方法の
改善等にも有益である。このため、鋼材の材質予測方法
の開発が精力的に行われてきた。
【0003】これら材質予測方法においては、鋼材製造
中の個々の冶金現象ごとに計算モデルを作成し、それら
全体を統合することにより、鋼材の組織や機械的性質を
算出する方法が採用されるのが一般的である。析出物の
予測もこの中において重要な役割を担う。この析出物の
予測においては、オーステナイト(以後、「γ」と記
す)からフェライト等への変態中および変態後に析出す
る粒子、例えば、Nb、Ti、Vの炭化物などの析出物
の平均径、析出率等が算出される。
【0004】一般に、高温でγ中に析出する粒子は析出
物の粒子径が大きすぎるため、変態後の鋼を大きく強化
するにはいたらない。しかし、γからの変態中および変
態後に析出する粒子は非常に微細で鋼を強化し、その結
果、靭性を変化させるなどの作用を引き起こす。このた
め、変態中および変態後に生じる析出現象の予測方法が
重視される。冷却速度等に依存して、γから変態する組
織にはフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテン
サイト等があるが、これらを総称して“変態相”とい
う。
【0005】これらの鋼材中の析出物の予測方法として
は、例えば、特開平5−72200号公報に焼きならし
を施して製造される鋼板の材質予測方法の中に概括的に
開示されている。しかし、この開示においては、各モデ
ルの具体的な構造は明らかではなく、どのように計算を
すべきか、当業者にとって知りようがない。これ以外の
他の公知文献においても、γからの変態中および変態後
の析出現象を精度良く計算するモデルが具体的に示され
た例はない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、γか
らの変態中および変態後の析出現象、すなわち平均析出
粒子密度、平均析出粒子径、析出物量等を精度良く簡便
に計算する具体的な方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、γからの変
態中および変態後の析出現象を予測するモデルに下記の
事項を取り入れることにより、析出物の予測が高精度か
つ簡便になることを確認することができた。
【0008】(a)析出物の核生成サイトはγから変態
した変態相中の転位上に限られる。(b)マトリックス
を微小領域に分割し、析出物を構成する合金元素の拡散
は微小領域内に限定される。
【0009】(c)上記の合金元素の拡散速度を変態相
の転位密度に依存して変化させる。すなわち、フェライ
ト中の拡散速度よりもより転位密度の高いベイナイト中
の拡散速度を大きくする。
【0010】図1は、上記の事項を取り入れた本発明方
法の析出現象の予測方法の概略を例示する図である。同
図に例示された方法は、時間の経過につれて変態相の変
態率が、後記するJohnson-Mehl-Avrami の式によって計
算され、変態した微小領域ごとに析出核密度およびその
析出核から成長した析出物径等が計算され、全体の析出
率が求められるという方法である。
【0011】本発明は上記(a)、(b)、(c)の事
項を取り入れ、多くの検証を経て完成されたもので、そ
の要旨は下記の析出物予測方法にある(図1参照)。
【0012】(I)オーステナイトから変態する組織中
での析出現象を予測する方法であって、オーステナイト
中の合金元素の固溶濃度を定め、かつ鋼中の予測対象領
域を微小領域に分割し、下記(1)、(2)、および
(3)の計算を微小領域ごとに行い、各微小領域の析出
量から全体の析出率を算出し、全体の析出率が一定値を
超えず、かつ冷却終了温度に至らないときは、その時刻
に時間刻みを加えた時刻について、さらに下記(1)、
(2)および(3)の計算を行い、全体の析出率が一定
値を超えたとき、または冷却終了温度に到達したときに
計算を終了する鋼材中の析出物予測方法(〔発明1〕と
する)。
【0013】(1)その時刻の温度を定める。
【0014】(2)オーステナイトから変態する相の種
類を定め、変態率を計算する。
【0015】(3)その変態率に対応させて組織を変態
相に変化させ、変態相中の析出核密度およびその析出物
の成長を計算する。
【0016】(II)析出核密度の計算において、転位密
度ρもしくは拡散定数D、またはそれらの両方をオース
テナイトからの変態相に応じて増減させる〔発明1〕の
鋼材中の析出物予測方法(〔発明2〕とする)。
【0017】ここで、〔発明1〕および〔発明2〕の対
象とする析出現象は、析出核発生から成長初期までの段
階を対象にするものであり、それ以降の析出物が凝集粗
大化する、いわゆる Ostwald ripening が生じる段階は
含まない。「変態相」は各予測において単一組織には限
定されず、例えば、フェライトとベイナイトの混合組織
であってもよい。対象とする「鋼材」は、厚鋼板、熱延
鋼板、条鋼、棒鋼、継目無鋼管等が該当する。
【0018】つぎに本発明の基本をなす事項である上記
(a)、(b)、(c)について詳細に説明する。
【0019】(a)析出物の核生成サイト 析出物の核生成サイトはγから変態した変態相中の転位
上に限られることとする。その理由は、γ温度域では析
出速度の最も大きな温度はAr3 点よりも高い温度にあ
り、変態の起こる温度域では析出速度は非常に遅いので
γ中の核生成を考慮する必要は無いからである。また、
γと変態相との界面上およびその近傍は有力な核生成サ
イトであるが、今回のモデルでは析出物の核生成サイト
は全て変態相中の転位上として、界面が関係する効果は
析出核密度を計算する式に含まれる定数A1の中に含ま
せることとした。
【0020】(b)マトリックスの分割 今回のモデルでは変態後、析出物の核が生じると仮定す
る。例えば、一つのフェライト粒の中でも各部分によっ
て核の生成時間にずれが生じる。合金元素が移動できる
距離はフェライト粒径に比べて小さく、早く生成した析
出物の核がまだ核の無い部分から合金元素を取り寄せて
成長を続けるには限度があるということを簡便にモデル
に反映させる必要がある。そこで本発明における最も重
要な工夫の一つを考案した。すなわち、合金元素が移動
できる距離はフェライト粒径に比べて小さく、早期に生
成した析出物の核がまだ核の無い部分から合金元素を取
り寄せて成長を続けるには限度があるということを簡便
に計算に取り入れるために、マトリックスを微小領域に
分割して計算することにした。
【0021】適切な分割数は次のように見積もることが
できる。例えば、700℃における変態相、すなわちフ
ェライトの粒径のオーダーは10μmであり、一方合金
元素の1時間の移動距離のオーダーは0.1μmとフェ
ライト粒径の100分の1である。600℃ではフェラ
イト粒径、合金元素の移動距離共にオーダーが1桁小さ
くなる。そこで、マトリックスを100分割することと
する。
【0022】なお、蛇足ながらつぎのことを付言して、
本発明におけるマトリックス分割が新しい技術的思想に
基づいていることを明確にする。すなわち、前記の特開
平5−72200号公報にメッシュ分割をする記載があ
るが、このメッシュ分割は鋼板の各部分での機械的性質
のばらつきを調査することを目的としており、本発明の
メッシュ分割とは質的に相違する。したがって、同公報
でいうm点の大きさは、引張試験片やシャルピー衝撃試
験片を切り出せる大きさ(10mm×10mm×100
mm程度)であり、本発明方法で行われる10μm以下
の微小領域の分割とは、分割のオーダーが異なる。
【0023】(c)変態相の種類に応じた拡散定数等の
設定(〔発明2〕の場合) 本発明者は、ベイナイトが生成すると、同一温度で生成
すると仮定したフェライト中に比べて、析出速度が速い
ということを実験的に見いだした。この原因は、ベイナ
イト中ではフェライト中に比べて転位密度が高く、この
転位密度の高いことが核生成密度の増加や、各元素の拡
散速度の増加につながり、析出が促進されるからであ
る。そこで、析出現象の精度良い予測のためには、この
転位密度の増加、拡散速度の増加の一方または両方を考
慮したモデル作成が必要である。
【0024】
【発明の実施の形態】つぎに、図1にしたがって本発明
方法の限定項目について説明する。
【0025】1.時刻および温度 温度はあらかじめ冷却カーブによって時刻ごとに定めら
れているものとする。時刻の開始は任意でよいが、γか
ら変態が起きていない時点を時刻の開始とする。冷却カ
ーブは、等温保持、連続冷却、圧延後の強制冷却、圧延
後の緩冷却、圧延後の調整冷却等が対象となる。ただ
し、600℃以上の温度域で加熱されている時間が長い
ために、析出物の凝集粗大化が無視できない炉冷のよう
な冷却カーブは本発明の対象ではない。本発明はあくま
でも強度靭性に大きな影響を及ぼす析出物の析出率が0
%から一定値、たとえば95%程度まで、または冷却終
了温度にいたるまでの析出初期の段階を扱うものであ
る。
【0026】2.変態相の変態率の計算 本発明においては、γから変態する相の変態率が時間の
経過につれてどのように変化するかという情報が必要で
ある。この変態率の算出には、下記式(Johnson-Mehl
-Avramiの式)を用いることができる。
【0027】 f(t)=1-exp(-k・tn)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ここで、 t:時間(s) k、n:定数 上記式において、kとnは定数であり、kとnを通して簡
便に実験事実を反映させ、精度よく変態率を予測するこ
とが出来る。nとkの具体的な数値は後記する実施例にお
いて述べる。
【0028】3.析出核密度 析出核密度の計算には、大きく分けて2種類の方法があ
る。一つは、有限の核生成速度を与える方法であり、こ
の場合は析出終了時まで核数が増え続ける。もう一つ
は、核の密度は時間に依らず一定とする方法(zero nuc
leation rate)である。今回の析出の計算の場合は、後
者がより望ましいと判断した。その理由は、a)核生成場
所は転位上やγと変態相との界面上などあらかじめ限ら
れた場所であり、b)γの熱間加工中の場合と異なり、加
工を終了して冷却中においては、有力な核生成場所であ
る転位密度の時間変化は小さく、c)核の密度は一定とし
て計算したほうが実験結果に良く合うからである。変態
相中の析出核密度、I(/m3)の計算には式を用いる。
【0029】 I=A1・ρ・D・C・σ0.5・V・(kT)-0.5・a-4・exp(-ΔG*/kT)・・ ここでA1は定数、ρは転位密度(1/m2)、DおよびCは、そ
れぞれ対象となる合金元素の拡散定数(m2/s)および固溶
濃度(モル分率)、σは析出物とマトリックス間の界面エ
ネルギー(J/m2)、Vは析出物のモル体積(m3)、kはボルツ
マン定数(1.38×10-23J/K)、Tは絶対温度(K)、aはマト
リックスの格子定数(m)である。またΔG*は析出核生成
の活性化エネルギー(J)である。
【0030】式では、析出が生じる相中の転位密度、
界面エネルギー、拡散定数等が考慮されており、γから
変態した相の種類に応じて、転位密度もしくは拡散定
数、または転位密度と拡散定数の積を変化させて実際の
現象に近似させることができる(〔発明2〕)。
【0031】なお、上記式におけるΔG*は、下記式
で表される析出核生成に伴う自由エネルギー変化ΔG(r)
の極大値である。
【0032】 ΔG(r)=(4/3)・π・r3・ΔGv + ΔEd(r) + 4π・r2・σ・・・ ここでrは析出物の半径(m)、ΔGvは単位体積当たりの析
出駆動力(J/m3)、ΔEd(r)は析出核が生成したことによ
って変化した転位の弾性エネルギーであり、下記式で
表される。
【0033】 ΔEd(r) = (G・b2・r/2π)・ln(2r/r0) + G・b2・r/5・・・・・ ここでGは剛性率(N/m2)、bは転位のバーガースベクトル
(m)、r0は転位芯の半径(m)を表す。
【0034】4.析出物の成長速度 本発明においては析出物の凝集粗大化は無視できる析出
の初期段階を扱うので全ての析出核は消滅するものはな
く析出物として成長するものとする。析出物の成長速度
の計算には、合金元素の拡散が成長を律速するとし、球
状粒子の成長の式を用いる。ある時刻u(s)に生じた核の
時刻t(s)における半径(m)は、式および式によって
求めることができる。
【0035】 r(t) = β・(t-u)1/2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ β = {2(C0-Cr)/(Cp-Cr)・D}1/2・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ここでCp、Crはそれぞれ界面で平衡する析出物中、およ
びマトリックス中の合金元素の濃度(モル分率)、C0は合
金元素の初期固溶濃度(モル分率)である。Tiが0.0
5wt%固溶している場合、モル分率は5.8×10-4
と近似される。
【0036】式および式を用いるのは、析出物の形
状を球状とすることにより、簡便な近似が可能となり、
かつ析出物の平均径等を導出するのに十分な精度をもた
らすからである。
【0037】5.析出物の体積率 拡張体積の概念を用いて、平衡状態での析出量に対して
析出がどれだけ進行したかの割合、XS(t)を下記式で
求めることができる。図1に示すように、このXS が一
定値を超えたとき、または冷却終了温度に到達したとき
に計算を終了する。このXS の一定値としては、たとえ
ば95%等とするのがよい。
【0038】 XS(t) = 1 - exp(-XE(t)/XF)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ここでXE(t) (m3)は個々の析出物が孤立して成長する場
合の析出物の総体積(拡張体積)であり、下記式で求
める。
【0039】
【数1】
【0040】また、XFは平衡析出率(体積分率)であ
り、下記式で求める。
【0041】 XF = (C0-Cr)/(Cp-Cr)・Vp/Vm ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Vp、Vmはそれぞれ析出物およびフェライトのモル体積(m
3)である。
【0042】各合金元素の初期固溶量に対する析出量の
割合XKは、XK = XS・(C0-Cr)/C0 によって求める。
【0043】XS(t)>(一定値)を析出完了の条件とし、
そこで析出粒子の成長計算を止める。
【0044】
【実施例】つぎに実施例により、本発明の効果を説明す
る。
【0045】表1は、実施例に用いた供試鋼の化学組成
を示す。
【0046】
【表1】
【0047】これらの鋼を1200℃に加熱してγ化し
た後、550〜800℃に等温保持している間の炭化物
の析出の予測を本発明方法により実施した。析出物の実
測は、表1に示す鋼の試験片(直径10mm、長さ50
mm)に、同じ熱処理を施した後、この種の鋼に常用さ
れる条件にて電解し、抽出残さを分析することにより行
った。
【0048】表2は、γから変態するベイナイトの変態
率のパラメータkの実測値を示す。
【0049】
【表2】
【0050】前記式におけるk以外の他のパラメータn
は、ほぼ1であった。γからの変態の進行はこれらパラ
メータを用いて式により行った。γからの変態におい
て合金元素の分配はなくγと変態した相とにおいて合金
元素の濃度は同じであり、一方、炭素原子はγと変態し
た相間で分配が行われるとした。すなわち、パラ平衡が
成り立つと仮定して、フェライト中の固溶炭素濃度を求
めた。
【0051】表3は、Fe−1.5%Mn系におけるフ
ェライト中の固溶炭素濃度を示す。
【0052】
【表3】
【0053】また、表4は、このフェライト中の固溶炭
素濃度の計算に用いた溶解度積の定数AおよびBを示
す。
【0054】
【表4】
【0055】つぎに、フェライト中の合金元素の拡散定
数については、キュリー温度以下でフェライトが強磁性
体になることの影響を受ける。Ti、Vのフェライト中
における格子拡散定数には、鉄の自己拡散定数が強磁性
の効果により低下する効果が加味されなければならな
い。
【0056】表5は、強磁性の効果を加味したフェライ
ト中でのTi、Vの格子拡散定数である。
【0057】
【表5】
【0058】Nbのフェライト中の拡散定数はないが、
γ中においてNbとVの拡散定数の値が近似しているこ
とから類推し、Vのフェライト中の拡散定数の値で代用
した。
【0059】図2は、Ti鋼の場合における本発明方法
を用いた予測結果を示す。750℃から650℃の温度
では表1の各鋼種ともフェライトが生成する。本予測に
おいては、式中のA1および式、式中のσとを、予
測結果を実験結果に一致させるフィッティングパラメー
タとした。図2においてはσの値を0.8J/m2 にお
き、析出の実験結果と計算値が合うようにA1の値を5×
10-3に選んだ。以降、このA1の値は全ての鋼種につい
て一定とし、σの値のみを鋼種により変化させた。図中
の黒丸で示した実験値と実線で示す計算値を比べて分か
るように、TiCの析出現象を精度良く再現することが
できた。
【0060】図3は、比較例として、マトリックスを微
小領域に分割しなかった場合のTi鋼についての予測結
果を示す。Tiの拡散範囲を制限していないため、析出
量の変化を示す曲線が実験データに合わなかった。
【0061】図4は、Nb鋼についての予測結果を示
す。σ=0.50J/m2 の値を用いて実験結果を良く
再現できた。
【0062】図5は、V鋼の場合の予測結果を示す。σ
=0.48J/m2 の値を用いて実験結果を良く再現で
きることが分かった。
【0063】図6(a)は、ベイナイトが生成する60
0℃での本発明方法による予測結果を示す。ベイナイト
におけるTiの見かけの拡散速度がフェライト中の5.
4倍になるとしてして計算を行った(〔発明2〕)。こ
の結果、析出率は実験値と非常に良く一致した。
【0064】図6(b)は、比較例として、ベイナイト
中の拡散速度がフェライト中と同じとして計算した析出
率を示す。この比較例における予測値は、実験値の析出
率が0.3を超えているのに、析出率はほとんどゼロで
あり、実験値との一致は全く認められなかった。
【0065】
【発明の効果】本発明方法によれば、鋼材中の析出物の
状態を精度良く簡便に予測できるので、鋼板の材質予測
技術の向上、ひいては鋼材製造における品質管理、さら
に製造方法の改善に資することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の概略を示す図である。
【図2】本発明方法を用いた、Ti鋼のフェライト中に
析出するTiCの析出率の予測結果を示す図である。
【図3】マトリックスを微小領域に分割しなかった場合
のTi鋼のフェライト中に析出するTiCの析出率の予
測結果を示す図である。
【図4】本発明方法を用いた、Nb鋼のフェライト中に
析出するNbCの析出率の予測結果を示す図である。
【図5】本発明方法を用いた、V鋼のフェライト中に析
出するVCの析出率の予測結果を示す図である。
【図6】(a)本発明方法を用いた、Ti鋼においてベ
イナイト中に析出するTiCの析出率の予測結果を示す
図である。 (b)Ti鋼においてベイナイト中のTiの拡散速度を
フェライト中と同じとして予測したTiCの析出率を示
す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】オーステナイトから変態する組織中での析
    出現象を予測する方法であって、オーステナイト中の合
    金元素の固溶濃度を定め、かつ鋼中の予測対象領域を微
    小領域に分割し、下記(1)、(2)、および(3)の
    計算を微小領域ごとに行い、各微小領域の析出量から全
    体の析出率を算出し、全体の析出率が一定値を超えず、
    かつ冷却終了温度に至らないときは、その時刻に時間刻
    みを加えた時刻について、さらに下記(1)、(2)お
    よび(3)の計算を行い、全体の析出率が一定値を超え
    たとき、または冷却終了温度に到達したときに計算を終
    了することを特徴とする鋼材中の析出物予測方法。 (1)その時刻の温度を定める。 (2)オーステナイトから変態する相の種類を定め、変
    態率を計算する。 (3)その変態率に対応させて組織を変態相に変化さ
    せ、変態相中の析出核密度およびその析出物の成長を計
    算する。
  2. 【請求項2】析出核密度の計算において、転位密度ρも
    しくは拡散定数D、またはそれらの両方をオーステナイ
    トからの変態相に応じて増減させることを特徴とする請
    求項1の鋼材中の析出物予測方法。
JP9072004A 1997-03-25 1997-03-25 鋼材中の析出物予測方法 Pending JPH10267917A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012047599A (ja) * 2010-08-26 2012-03-08 Kobe Steel Ltd ベイナイト相の組織予測方法
JP2012167361A (ja) * 2011-01-26 2012-09-06 Jfe Steel Corp 高強度熱延鋼板の製造方法
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