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JPH08264279A - 有機薄膜発光素子 - Google Patents

有機薄膜発光素子

Info

Publication number
JPH08264279A
JPH08264279A JP7093023A JP9302395A JPH08264279A JP H08264279 A JPH08264279 A JP H08264279A JP 7093023 A JP7093023 A JP 7093023A JP 9302395 A JP9302395 A JP 9302395A JP H08264279 A JPH08264279 A JP H08264279A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
thin film
metal
electrode
light emitting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP7093023A
Other languages
English (en)
Inventor
Noriyoshi Nanba
憲良 南波
Kenji Nakatani
賢司 中谷
Michio Arai
三千男 荒井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TDK Corp filed Critical TDK Corp
Priority to JP7093023A priority Critical patent/JPH08264279A/ja
Publication of JPH08264279A publication Critical patent/JPH08264279A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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  • Electroluminescent Light Sources (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 仕事関数3.0eV以下のLi等の金属を電子
注入用の金属電極に安定して使用することができ、電子
注入効率の高い有機薄膜発光素子とする。 【構成】 金属電極として仕事関数3.0eV以下の金属
を含む導電性の炭素層間化合物の薄膜を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はフラットパネルディスプ
レイ、あるいは光源としての面状発光体などとして利用
できる電荷注入型の有機薄膜発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】発光層としての有機薄膜に隣接して電荷
注入および輸送を容易にするための薄膜を使用した積層
型有機薄膜発光素子は低電圧で高輝度が得られることか
ら盛んに開発が進められている。このような有機薄膜発
光素子はホール注入用および発光光の取出し口としての
透明電極と電子注入用の仕事関数の小さな金属電極の蒸
着膜とによって、複数の有機薄膜層を挟んだ構造として
実現される。
【0003】このように金属電極は、仕事関数の小さな
金属材料で構成する方が有利であり、金属電極材料とし
ては仕事関数が小さいほど、電子の注入効率が高く、低
電圧駆動が可能となり、一定の輝度を得る場合にあって
は寿命が長くなることが予想される。しかしながら、仕
事関数が小さなアルカリ金属は水分と激しく反応するこ
と、蒸着による薄膜を形成し難いことなどの点で、極め
て使用し難い。一般には比較的安定であり、扱いやすい
銀と共蒸着したMgあるいはIn,Alなどが主に使用
されている。これらの金属は、アルカリ金属と比較する
と仕事関数が大きく、電子注入効率が低いので駆動電圧
が高くなるなど不利な点が多い。また、安定化されてい
るとはいえ、Mgは十分に安定であるとはいえず、徐々
に酸化されて劣化してしまう。このため、発光寿命が十
分ではなかった(松村他、第41回応用物理学関係連合
講演会(1994)予稿集P1072参照)。
【0004】一方、上記構造の有機薄膜発光素子では、
透明電極側からは金属電極が外部から入射した光を反射
する鏡として作用する。従って、発光画素からの発光光
量が金属電極からの反射光を含んで増大することが知ら
れている。特に膜厚を調整することによって光の共振現
象を利用した微小共振器とする研究も進められている。
しかしながら、このような金属電極からの反射光は実用
上難点となることも知られている。すなわち、暗所にて
の表示では全く問題とならないばかりか、上記のように
発光強度の増加という有利になっている現象も、強い外
部光の下での表示では画素からの発光光よりも金属電極
からの外部光の反射が強くなり、全く表示が見えないこ
とがある。また、さほど強力な光でなくとも明所におい
ては、発光光と反射光との強度差が小さく、発光による
表示が非常に見えにくいことがしばしば生じる。外光に
勝る発光を得ることは、より高電圧、大電流とすること
で可能ではあるが、消費電力の点で問題となり、また素
子寿命を短くすることとなって有効な方法とはいえな
い。
【0005】従って、より電子注入効率が高く、かつ外
光反射の問題が生じない新しいタイプの金属電極を得る
ことが望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、第一
に、仕事関数の小さなLi等の金属を電子注入用の金属
電極に安定して使用することができ、電子注入効率の高
い有機薄膜発光素子を提供することである。第二に、上
記目的に加え、電子注入用の金属電極からの外光反射が
少なく、素子からの発光による表示が見やすい有機薄膜
発光素子を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(6)の本発明により達成される。 (1)基板と、第1の電極と、第2の透明電極と、これ
らの電極に挟まれて設けられたそれぞれ少なくとも1層
の電荷輸送層および発光層と、保護層とを有し、前記第
1の電極が仕事関数3.0eV以下の金属を含む導電性の
炭素層間化合物で構成されている有機薄膜発光素子。 (2)前記炭素層間化合物がアルカリ金属を含む炭素質
材料である上記(1)の有機薄膜発光素子。 (3)前記炭素質材料が難黒鉛化炭素である上記(2)
の有機薄膜発光素子。 (4)前記アルカリ金属がリチウムである上記(1)〜
(3)のいずれかの有機薄膜発光素子。 (5)前記第1の電極の表面光反射率が40%以下であ
る上記(1)〜(4)のいずれかの有機薄膜発光素子。 (6)前記第1の電極が表面光反射率40%以下の絶縁
性の基板上に形成されている上記(1)〜(5)のいず
れかの有機薄膜発光素子。
【0008】
【作用】本発明では、電子注入用の金属電極としての第
1の電極の電極材料として仕事関数3.0eV以下の金属
を含む導電性の炭素層間化合物を用い、この薄膜を電子
注入用の金属電極としている。このため、電子注入効率
が高い金属電極となり、駆動電圧を低下させることがで
きる。また、このようなLi等の金属は層間に存在する
ことによって無垢の金属に比較して十分な安定性を得る
ことができる。さらには、いわゆる金属光沢をなくすこ
とができ、画素からの発光が見にくくなる外光の反射を
防止または低減することができる。膜厚が小さい場合に
は透明に近くなるために、下地に光反射率の小さな材料
を用いることによっても同様の効果を得ることができ
る。すなわち、材料および構造の選択の幅を広げること
ができ、素子とした場合、見やすい表示となり、かつ寿
命が大幅に向上する。
【0009】なお、Liをインサートないしドープした
炭素層間化合物はLi電池の電極材料として実用化され
ている。しかし、この場合の層間化合物はバルク状態で
用いるものであり、本発明のように薄膜状態で用いるも
のではない。
【0010】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細
に説明する。
【0011】本発明において、電子注入用の金属電極と
しての第1の電極の電極材料としては仕事関数3.0eV
以下の金属を含む導電性の炭素層間化合物が用いられ
る。この炭素層間化合物は、少なくとも一部が層状とな
っている炭素質材料と上記金属とから構成され、上記金
属は炭素質材料における層と層との間にドープないしイ
ンサートされ、原子状またはイオン状で存在する。用い
る炭素質材料には特に制限はないが、面の配向が不完全
で3000℃程度の温度で熱処理しても黒鉛にならない
難黒鉛化炭素(ハードカーボン)が好ましい。ハードカ
ーボンとしては、フェノール系樹脂やフルフリルアルコ
ール系樹脂を熱処理して得られたポリアセン系があり、
そのH/Cは0.01〜0.5程度である。また、気相
法による成膜でもハードカーボンを得ることができる。
これらにおいて、炭素質材料は、分子のフラグメント間
に上記金属がもぐりこむのに十分な隙間を有するもので
あればよく、分子のフラグメントで構成されるシート
(例えばグラファイトにおける六方網目構造のシートな
ど)が所定の規則性をもって積み重なっている構造を有
するものであってもよいし、分子のフラグメントが十分
な隙間を有してランダムに配置された、いわゆるアモル
ファス構造を有するものであってもよいが、少なくとも
一部にランダムに配置された構造が存在することが好ま
しい。これにより層間のみならずランダム配置により形
成される微細孔にも金属の収納が可能になり、金属の存
在割合が増す。
【0012】一方、仕事関数3.0eV以下、好ましくは
1.5〜3.0eVの金属としては、Li,Na,K,C
s,Eu,Sm等のアルカリ金属やランタノイド元素な
どが挙げられ、なかでもLi,Na,K等、特にはLi
等が好ましい。なお、これらの金属の仕事関数を示せ
ば、Li(2.93eV),Na(2.36eV),K
(2.28eV),Cs(1.95eV),Eu(2.5e
V),Sm(2.1eV)である。これらの値は、化学便
覧基礎編2−493(日本化学会編、1984年)に記
載されている。
【0013】このような層間化合物を電極材料に用いる
ことによって、Li等の金属が水分と反応したりするの
を防止することができる。このため、安定に使用するこ
とができ、仕事関数が小さいというこれらの金属の特性
上の利点をそのまま生かすことができ、電子注入効率に
優れた金属電極を得ることができる。
【0014】本発明に用いられる層間化合物においてL
i等の金属の占める割合は、炭素質材料を構成する炭素
原子6個(すなわちC6 )当たり0.3〜5個程度、さ
らには0.5〜5個程度であることが好ましい。このよ
うな金属の割合とすることで電子注入電極として十分に
作用する。より好ましくは、難黒鉛化材料では、層間だ
けでなく黒鉛化していない部分にある微細孔にLi等の
金属を取り込んでいることが好ましく、特にC6 当たり
Li等の金属が1個以上存在することが好ましい。これ
により電子注入電極としての作用がより向上する。
【0015】また、層間化合物は導電性を有するが、そ
の導電率は10-4〜102 Scm-1 程度である。そして、
炭素質材料自体も導電性を示し、その導電率は10-12
〜10-5Scm-1 程度である。
【0016】本発明の有機薄膜発光素子における金属電
極は、薄膜状であり、仕事関数3.0eV以下の金属を含
む層間化合物の薄膜は以下のように形成される。
【0017】まず、炭素質材料の薄膜を形成する。この
ときの薄膜の形成は、真空成膜法や塗布法によればよ
い。真空成膜法としては、真空蒸着法、イオンプレーテ
ィング法、スパッタ法、CVD(化学的気相成長)法、
プラズマ分解法などがあり、CVD法が好ましい。
【0018】例えば、CVD法により炭素質材料を得る
場合は、ベンゼン、トルエン、デカリン等をソースと
し、公知の方法に準じて行えばよい。
【0019】炭素質材料のなかでもポリアセン系の場合
は、米国特許第4601849号等に記載の方法でポリ
アセンの薄膜を形成することが好ましい。具体的には、
ガラス基板等の基体上にフェノール系樹脂やフルフリル
アルコール(フラン)系樹脂の塗膜を所定厚に形成し、
不活性ガス雰囲気中で熱縮合反応させることによってポ
リアセンの薄膜を得る。この反応は電気炉などを用い
て、室温(15〜30℃程度)から500〜800℃程
度の温度まで30℃/hr 〜50℃/hr の昇温速度で昇温
することによって行う。また、エキシマ−レーザー光を
照射することによってもよい(西尾他、第55回応用物
理学術講演会(1994年)秋季大会予稿集20a−H
−1、等参照)。
【0020】このようにしていずれかの方法により炭素
質材料の薄膜を形成した後、膜中に仕事関数3.0eV以
下の金属をドープする。仕事関数3.0eV以下の金属の
ドープは層間化合物の合成方法として知られている一般
的方法(例えばTwo−bulb法、混合法、電気化学
的方法等)に従って行えばよい(稲垣他、炭素材料学会
編、アドバンスト・カーボン シリーズ2「黒鉛層間化
合物」(1990年)リアライズ社刊、等参照)。
【0021】これらには気相からの方法および液相から
の方法がある。気相からの方法では、炭素質材料の薄膜
に金属蒸気を接触させることでドーピングができる。こ
の場合、Liであれば400℃程度に加熱する必要があ
るが、減圧下で行うことでより低温下で行うことも可能
である。
【0022】なお、素子の製造上、駆動系を設置してか
ら成膜する場合があるが、このような製造法をとる場
合、一般に加熱(200℃以上の温度)は好ましくな
い。
【0023】また、液相でドーピングするには、Li塩
等の金属塩(ハロゲン化物、ClO4 塩など)の水溶液
または有機溶剤溶液中で、酸化剤を使用して酸化的にド
ープしてもよく、また金属Li等の仕事関数3.0eV以
下の金属を対極として電気化学的に酸化しながらドープ
することもできる。さらには、Li塩等の金属塩の水溶
液または有機溶剤溶液中でカーボン等を対極として通電
してドープする方法も好ましい。このときの通電条件は
0.01〜5mAの低電流としてよく、はじめ0.01〜
0.5mAで10〜20分間ほど通電した後、2〜5mAと
して1〜2時間程度通電すればよい。
【0024】このほか、Li等の金属を溶融して塗布し
てもよい。また場合によってはイオン注入法によってL
i等の金属を導入してもよい。
【0025】さらに、直接、層間化合物の薄膜を形成す
る方法としては、イオンプレーティング法や炭素質材料
とLi等の金属とをターゲットとして交互スパッタする
方法、あるいは同時スパッタする方法などがある。
【0026】これらの方法のいずれにおいても、ほぼ同
様の層間化合物が得られ、電子注入電極として使用でき
る。
【0027】Li等の金属を含む層間化合物の生成は、
X線回折により層間距離が広がることによって確認する
ことができる。例えば炭素質材料を難黒鉛化炭素とし、
Liをドープする場合を示せば、ドープ前は0.34〜
0.36nm程度であるが、Liドープにより0.371
nmになる。なお、金属は、通常イオン状で存在している
とされているが、前記のように、例えば難黒鉛化炭素の
微細孔に導入された場合は原子状で存在するものもあ
り、100%イオン化しているわけではない。本発明で
は原子状で存在する割合が多いほど好ましい。
【0028】このような層間化合物の薄膜の厚さは、電
子注入を十分行える一定以上の厚さとすればよく、50
nm以上、好ましくは100nm以上とすればよい。また、
その上限値には特に制限はないが、あまり厚いと剥離な
どの心配が生じることから、1000μm 以下、好まし
くは100μm 以下でよい。
【0029】本発明における金属電極は、見やすい発光
表示を得るためには、光吸収が大きく、外光を反射しな
いものとする方が好ましい。この場合の層間化合物の薄
膜の表面反射率は波長によって異なるが、可視光の波長
領域における平均値で40%以下、さらには0〜30%
であることが好ましい。このような表面反射率を得るた
めに、その膜厚は300nm以上、さらには500nm以上
とすることが好ましい。
【0030】一方、可撓性を重視する場合には、膜厚を
小さくする方がよく、その膜厚は50〜200nm程度と
することが好ましい。この場合の層間化合物の薄膜は透
明となってしまうので、光反射率の小さい絶縁性の基板
上に薄膜を形成することが好ましい。下地となる絶縁性
基板は、表面反射率40%以下、さらには0〜30%の
ものを用いることが好ましい。通常、このような基板材
料としては、表面を酸化したSi,SiC,SiN、ガ
ラスなどがよく、特に制限はない。一般に用いる基板の
厚さは0.01〜1mm程度である。
【0031】本発明の有機薄膜発光素子(以下「EL素
子」ともいう。)は、基板上に第1の電極としての金属
電極と第2の透明電極とを有し、これらの電極に挟まれ
て、それぞれ少なくとも1層の電荷輸送層および発光層
を有し、さらに最上層として保護層を有する。そして、
金属電極は、前述のとおり、アルカリ金属を含む層間化
合物で構成されたものである。
【0032】このようなEL素子の構成例を図1に示
す。図1のEL素子1は、透明基板2上に、陽極である
透明電極3、電荷輸送層4、発光層5、陰極である金属
電極6、保護層7を順次有する。
【0033】また、図2の構成であってもよく、図2の
EL素子11は、基板12上に、陰極である金属電極1
3、発光層14、電荷輸送層15、陽極である透明電極
16、透明保護層17を順次有する。
【0034】本発明のEL素子は、図示例に限らず、種
々の構成とすることができ、例えば発光層と金属電極と
の間に電子注入輸送層を介在させた構成とすることもで
きる。
【0035】金属電極は前述のように成膜し、発光層等
の有機物層は真空蒸着等により、陽極は蒸着やスパッタ
等により成膜することができるが、これらの膜のそれぞ
れは、必要に応じてマスク蒸着または膜形成後にエッチ
ングなどの方法によってパターニングでき、これによっ
て、所望の発光パターンを得ることができる。さらに
は、基板が薄膜トランジスタ(TFT)であって、その
パターンに応じて各膜を形成することでそのまま表示お
よび駆動パターンとすることもできる。最後に、SiO
2 ,SiC,SiN2 ,Al23 ,SIALONなど
の無機材料からなる保護層を形成すればよい。
【0036】保護層は、表示の関係上、図1の構成では
透明でも不透明であってもよいが、図2の構成では透明
にする必要がある。透明にする場合は、透明な材料(例
えばSiO2 、SIALON等)を選択して用いるか、
あるいは厚さを制御して透明(好ましくは発光光の透過
率が80%以上)となるようにすればよい。
【0037】一般に、保護層の厚さは50〜1200nm
程度とする。保護層はスパッタ等により形成すればよ
い。
【0038】次に、本発明のEL素子に設けられる有機
物層について述べる。
【0039】発光層は、正孔(ホール)および電子の注
入機能、それらの輸送機能、正孔と電子の再結合により
励起子を生成させる機能を有する。発光層には比較的電
子的にニュートラルな化合物を用いることが好ましい。
【0040】電荷輸送層は、陽極からの正孔の注入を容
易にする機能、正孔を輸送する機能および電子を妨げる
機能を有し、正孔注入輸送層とも称される。
【0041】このほか、必要に応じ、例えば発光層に用
いる化合物の電子注入輸送機能がさほど高くないときな
ど、前述のように、発光層と陰極との間に、陰極からの
電子の注入を容易にする機能、電子を輸送する機能およ
び正孔を妨げる機能を有する電子注入輸送層を設けても
よい。
【0042】正孔注入輸送層および電子注入輸送層は、
発光層へ注入される正孔や電子を増大・閉じ込めさせ、
再結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。
【0043】なお、正孔注入輸送層および電子注入輸送
層は、それぞれにおいて、注入機能を持つ層と輸送機能
を持つ層とに別個に設けてもよい。
【0044】発光層の厚さ、正孔注入輸送層の厚さおよ
び電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、形成方法に
よっても異なるが、通常、5〜1000nm程度、特に1
0〜200nmとすることが好ましい。
【0045】正孔注入輸送層の厚さおよび電子注入輸送
層の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光層
の厚さと同程度もしくは1/10〜10倍程度とすれば
よい。電子もしくは正孔の、各々の注入層と輸送層を分
ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は20nm以上と
するのが好ましい。このときの注入層、輸送層の厚さの
上限は、通常、注入層で100nm程度、輸送層で100
0nm程度である。このような膜厚については注入輸送層
を2層設けるときも同じである。
【0046】また、組み合わせる発光層や電子注入輸送
層や正孔注入輸送層のキャリア移動度やキャリア密度
(イオン化ポテンシャル・電子親和力により決まる)を
考慮しながら、膜厚をコントロールすることで、再結合
領域・発光領域を自由に設計することが可能であり、発
光色の設計や、両電極の干渉効果による発光輝度・発光
スペクトルの制御や、発光の空間分布の制御を可能にで
きる。
【0047】本発明のEL素子の発光層には発光機能を
有する化合物である蛍光性物質を含有させる。この蛍光
性物質としては、例えば、特開昭63−264692号
公報に開示されているような化合物、例えばキナクリド
ン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物から選択され
る少なくとも1種が挙げられる。その他トリス(8−キ
ノリノラト)アルミニウム等の金属錯体色素、テトラフ
ェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネ
ン、12−フタロペリノン誘導体等が挙げられる。発光
層は電子注入輸送層を兼ねたものであってもよく、この
ような場合はトリス(8−キノリノラト)アルミニウム
等を使用することが好ましい。これらの蛍光性物質を蒸
着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させてコー
ティングすることにより、発光層を所定の厚さに形成す
る。
【0048】また、必要に応じて設けられる電子注入輸
送層には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等
の有機金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘
導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノリン誘
導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、
ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることができる。
上述のように、電子注入輸送層は発光層を兼ねたもので
あってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム等を使用することも好ましい。電子
注入輸送層の形成も発光層と同様に蒸着等によればよ
い。
【0049】なお、電子注入輸送層を電子注入層と電子
輸送層とに分けて設層する場合は、電子注入輸送層用の
化合物のなかから好ましい組合せを選択して用いること
ができる。このとき、陰極側から電子親和力の値の大き
い化合物の層の順に積層することが好ましい。このよう
な積層順については電子注入輸送層を2層以上設けると
きも同様である。
【0050】また、正孔注入輸送層には、例えば、特開
昭63−295695号公報、特開平2−191694
号公報、特開平3−792号公報等に記載されている各
種有機化合物を用いることができる。例えば、芳香族三
級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、ト
リアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有
するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等であ
る。これらの化合物は2種以上を併用してもよく、併用
するときは別層にして積層したり、混合したりすればよ
い。
【0051】正孔注入輸送層を正孔注入層と正孔輸送層
とに分けて設層する場合は、正孔注入輸送層用の化合物
のなかから好ましい組合せを選択して用いることができ
る。このとき、陽極(ITO等)側からイオン化ポテン
シャルの小さい化合物の層の順に積層することが好まし
い。また陽極表面には薄膜性の良好な化合物を用いるこ
とが好ましい。このような積層順については、正孔注入
輸送層を2層以上設けるときも同様である。このような
積層順とすることによって、駆動電圧が低下し、電流リ
ークの発生やダークスポットの発生・成長を防ぐことが
できる。また、素子化する場合、蒸着を用いているので
1〜10nm程度の薄い膜も、均一かつピンホールフリー
とすることができるため、正孔注入層にイオン化ポテン
シャルが小さく、可視部に吸収をもつような化合物を用
いても、発光色の色調変化や再吸収による効率の低下を
防ぐことができる。
【0052】なかでも、芳香族三級アミンとポリチオフ
ェンとの併用が好ましく、薄膜性の良好な正孔注入層も
しくは第一正孔注入輸送層としてポリチオフェンを陽極
上に蒸着した後に、芳香族三級アミンを正孔輸送層もし
くは第二正孔注入輸送層として積層することはイオン化
ポテンシャルの点からさらに好ましい。
【0053】本発明に用いることが好ましいポリチオフ
ェンとしては、化1で示される構造単位を有する重合体
(以下、「重合体A」ともいう。)、化1で示される構
造単位と化2で示される構造単位とを有する共重合体
(以下、「共重合体B」ともいう。)および化3で示さ
れる重合体(以下、「重合体C」)から選択されるもの
が挙げられる。
【0054】
【化1】
【0055】
【化2】
【0056】
【化3】
【0057】まず、重合体Aについて説明する。重合体
Aは化1の構造単位を有し、例えば化4で示されるもの
である。
【0058】
【化4】
【0059】化1、化4について記すと、R31およびR
32はそれぞれ水素原子、芳香族炭化水素基または脂肪族
炭化水素基を表し、これらは同一でも異なるものであっ
てもよい。
【0060】R31およびR32で表される芳香族炭化水素
基としては、無置換であっても置換基を有するものであ
ってよく、炭素数6〜15のものが好ましい。置換基を
有するときの置換基としてはアルキル基、アルコキシ
基、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。芳香族炭化水
素基の具体例としては、フェニル基、トリル基、メトキ
シフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げら
れる。
【0061】R31およびR32で表される脂肪族炭化水素
基としては、アルキル基、シクロアルキル基等が挙げら
れ、これらのものは無置換でも、置換基を有するもので
あってもよい。なかでも、炭素数1〜6のものが好まし
く、具体的には、メチル基、エチル基、i−プロピル
基、t−ブチル基などが挙げられる。
【0062】R31、R32としては、水素原子、芳香族炭
化水素基が好ましく、特には水素原子が好ましい。
【0063】層中における重合体Aの平均重合度(化4
のm)は4〜100、好ましくは5〜40、さらに好ま
しくは5〜20である。この場合、化1で示される繰り
返し単位が全く同一の重合体(ホモポリマー)であって
も、化1においてR31とR32の組合せが異なる構造単位
から構成される共重合体(コポリマー)であってもよ
い。共重合体としては、ランダム共重合体、交互共重合
体、ブロック共重合体等のいずれであってもよい。
【0064】また、層中における重合体Aの重量平均分
子量は300〜10000程度である。
【0065】重合体Aの末端基(化4のX1 およびX
2 )は、水素原子、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原
子である。この末端基は、一般に、重合体Aの合成の際
の出発原料に依存して導入される。さらには重合反応の
最終段階で他の置換基を導入することもできる。
【0066】なお、重合体Aは化1の構造単位のみで構
成されることが好ましいが、10モル%以下であれば他
のモノマー成分を含有していてもよい。
【0067】重合体Aの具体例を化5に示す。化5には
化1ないし化4のR31、R32の組合せで示している。
【0068】
【化5】
【0069】次に、共重合体Bについて説明する。共重
合体Bは化1の構造単位と化2の構造単位とを有し、例
えば化6で示されるものである。
【0070】
【化6】
【0071】化1については重合体Aのものと同様であ
る。従って、化6中のR31、R32は化1のものと同様で
ある。
【0072】また化2について記すと、R33およびR34
は、それぞれ水素原子、芳香族炭化水素基または脂肪族
炭化水素基を表し、これらは同一でも異なるものであっ
てもよい。
【0073】R33、R34で表される芳香族炭化水素基、
脂肪族炭化水素基の具体例は、化1のR31、R32のとこ
ろで挙げたものと同様のものを挙げることができる。ま
た、R33、R34の好ましいものもR31、R32と同様であ
る。さらに、R33とR34とは互いに結合して環を形成
し、チオフェン環に縮合してもよい。この場合の縮合環
としては、ベンゼン環等が挙げられる。このR33、R34
については、化6においても同様である。
【0074】層中における共重合体Bの平均重合度(化
6におけるv+w)は、重合体Aと同様に、4〜10
0、好ましくは5〜40、さらに好ましくは5〜20で
ある。また、化1の構造単位と化2の構造単位との比率
は、化1の構造単位/化2の構造単位が、モル比で10
/1〜1/10程度である。
【0075】層中における共重合体Bの重量平均分子量
は300〜10000程度である。
【0076】また、共重合体Bの末端基(化6における
1 およびX2 )は重合体Aと同様のものであり、一般
に、共重合体Bの合成の際の出発原料ないしその比率に
依存する。
【0077】なお、共重合体Bは、重合体Aと同様に、
化1の構造単位と化2の構造単位とで構成されることが
好ましいが、10モル%以下であれば他のモノマー成分
を含有していてもよい。また、共重合体Bは、ランダム
共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれ
であってもよく、化6の構造式はこのような構造を包含
するものである。さらに、化1、化2の構造単位同士
は、それぞれ同一であっても異なるものであってもよ
い。
【0078】共重合体Bの具体例を化7に示す。化7に
は化1のR31、R32の組合せ、化2のR33、R34の組合
せ、すなわち化6のR31、R32、R33、R34の組合せで
示している。
【0079】
【化7】
【0080】さらに、化3の重合体Cについて説明す
る。化3について記すと、R33およびR34は化2のもの
と同義であり、好ましいものも同様である。
【0081】X1 およびX2 は、それぞれ同一でも異な
るものであってもよく、重合体A、共重合体Bの末端基
と同様に、水素原子または塩素、臭素、ヨウ素等のハロ
ゲン原子である。X1 およびX2 は重合体Cの合成の際
の出発原料に依存する。
【0082】nは平均重合度を表し、層中では重合体
A、共重合体Bと同様に4〜100、好ましくは5〜4
0、さらに好ましくは5〜20である。この場合、R33
とR34の組合せが同一の重合体(ホモポリマー)であっ
ても、R33とR34の組合せが異なる共重合体(コポリマ
ー)であってもよい。共重合体としては、ランダム共重
合体、交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれであ
ってもよい。
【0083】また、層中における重合体Cの重量平均分
子量は300〜10000程度である。
【0084】なお、重合体Cは化3に示すような構造で
あることが好ましいが、重合体A、共重合体Bと同様
に、10モル%以下であれば他のモノマー成分を含有し
ていてもよい。
【0085】重合体Cの具体例を化8、化9に示す。化
8は化3と同じであり、化9には化8のR33、R34の組
合せで示している。
【0086】
【化8】
【0087】
【化9】
【0088】本発明では、ポリチオフェンとして、上記
重合体のうち重合体Cを用いることが特に好ましい。
【0089】ポリチオフェンは1種のみを用いても2種
以上を併用してもよい。
【0090】本発明に用いるポリチオフェンの融点は3
00℃以上、または融点を持たないものであり、真空蒸
着によりアモルファス状態あるいは微結晶状態の良質な
膜が得られる。
【0091】正孔注入輸送層は、発光層等と同様に上記
の化合物を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分
散させてコーティングして形成すればよい。特に蒸着を
行えば良好なアモルファス膜が得られる。
【0092】また、上記の有機物層には、一重項酸素ク
エンチャーが含有されていてもよい。このようなクエン
チャーとしては、ルブレンやニッケル錯体、ジフェニル
イソベンゾフラン、三級アミン等が挙げられる。
【0093】本発明において、陽極として用いられる透
明電極は、好ましくは発光光の透過率が80%以上とな
るように陽極の材料および厚さを決定することが好まし
い。具体的には、例えば、ITO、SnO2 、Ni、A
u、Pt、Pd、ドーパントをドープしたポリピロール
などを陽極に用いることが好ましい。また、陽極の厚さ
は10〜500nm程度とすることが好ましい。また、素
子の信頼性を向上させるために駆動電圧が低いことが必
要であるが、好ましいものとして10〜30Ω/cm2のI
TOが挙げられる。
【0094】基板材料としては、図1の構成とする場
合、基板側から発光光を取り出すため、ガラスや樹脂等
の透明ないし半透明材料を用いる。また、基板に色フィ
ルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体
反射膜を用いて発光色をコントロールしてもよい。ま
た、図2の構成では不透明基板であってもよく、この場
合はガラス等のほか、アルミナ等のセラミックス、ステ
ンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施し
たもの、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリカーボ
ネート等の熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0095】次に、本発明のEL素子の製造方法を説明
する。
【0096】陰極は前記のように形成し、陽極は、蒸着
法やスパッタ法等の気相成長法により形成することが好
ましい。
【0097】正孔注入輸送層、発光層および電子注入輸
送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから真空
蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場
合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm 以下
(通常、下限値は0.001μm 程度である。)の均質
な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μm を超えている
と、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高くしなけ
ればならなくなり、電荷の注入効率も著しく低下する。
【0098】真空蒸着の条件は特に限定されないが、1
-3Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.1〜1nm/se
c 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続して
各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形成
すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げるた
め、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低くす
ることができる。
【0099】これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場
合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化
合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着する
ことが好ましいが、予め混合してから蒸着してもよい。
またこの他、溶液塗布法(スピンコート、ディップ、キ
ャスト等)、ラングミュア・ブロジェット(LB)法な
どを用いることもできる。溶液塗布法では、ポリマー等
のマトリクス物質中に所定の化合物を分散させる構成と
してもよい。
【0100】本発明のEL素子は、通常、直流駆動型の
EL素子として用いられるが、交流駆動またはパルス駆
動することもできる。印加電圧は、通常、2〜20V 程
度とされる。
【0101】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を比較例ととも
に示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0102】<実施例1>ガラス基板上に厚さ200nm
のITOが形成された透明電極をパターニングし、中性
洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、次
いで煮沸エタノール中から引き上げて乾燥した。この透
明電極表面をUV/O3 洗浄した後、真空蒸着装置の基
板ホルダーに固定して、槽内を1×10-4Pa以下まで減
圧した。
【0103】まず、ポリ(チオフェン−2,5−ジイ
ル)を蒸着速度0.1nm/secで20nmの厚さに蒸着し、
第一正孔注入輸送層とした。
【0104】次いで減圧状態を保ったまま、N,N’−
ジフェニル−N,N’−m−トリル−4,4’−ジアミ
ノ−1,1’−ビフェニル(TPD)を蒸着速度0.2
nm/secで55nmの厚さに蒸着し、第二正孔注入輸送層と
した。
【0105】さらに、減圧を保ったまま、トリス(8−
キノリノラト)アルミニウムを蒸着速度0.2nm/secで
50nmの厚さに蒸着して、電子注入輸送・発光層とし
た。
【0106】さらに、減圧を保ったまま、グラファイト
様炭素層状化合物をCVD法にて200nmの厚さに成膜
した。CVDはベンゼンをソースとし、キャリアガスに
Arを用い、1×10-4Paの圧力下で100℃の温度の
条件下で行った。
【0107】次いで、真空装置から取り出して素早く、
LiClO4 を溶解した乾燥エチレンカーボネート(L
iClO4 の1モル/リットル溶液)中に浸し、金属L
iを対向電極とし、グラファイトを負極として通電する
ことによって、電気化学的に酸化しながらLiをドープ
して陰極とした。このときの通電は0.02mAで15分
間、ついで3mAで2時間行った。これをアセトンで3回
洗浄し、室温、減圧下で乾燥した。
【0108】最後にSiO2 を1000nmの厚さにスパ
ッタして保護層として、有機薄膜発光素子(EL素子)
を得た。
【0109】この有機薄膜発光素子に直流電圧を印加
し、10mA/cm2の一定電流密度で連続駆動させた。初期
には、5.6V 、380cd/cm2の黄緑色(発光極大波長
λmax=500nm)の発光が確認できた。輝度の半減時
間は2500時間で、その間の駆動電圧の上昇は1.3
V であった。また、ダークスポットの出現および成長は
全くなかった。さらにその後も電流リークを起こさず、
安定した発光を継続した。
【0110】Liの仕事関数は2.93eV(文献値)で
ある。
【0111】上記素子の表面は濃青色となり、表面反射
率は0〜30%(可視領域)の範囲にあり、MgAgの
鏡状の銀白色に比較して見やすい発光表示であった。
【0112】なお、Liをドープした炭素質材料の生成
はX線回折による層間距離の広がりによって確認した。
このものにおける炭素6個当たりのLiの数は1.8個
程度であった。
【0113】<実施例2>実施例1のEL素子におい
て、Liをドープした炭素質材料の薄膜の形成を以下の
ように行うほかは同様にしてEL素子を得た。
【0114】フルフリルアルコール系樹脂(フラン系樹
脂)を窒素気流中で1200℃で焼成し粉砕したものと
ポリカーボネート樹脂の10%トルエン溶液を樹脂の乾
重量比が90対10になるように混合してペースト状に
した。これをガラス基板上に塗布設層した。溶剤を十分
に乾燥させた後、プロピレンカーボネート(PC):
1,2−ジメトキシエタン(DME)=1:1(容積
比)にLiClO4 を1M溶液となるように溶解したも
のを電解液として、電流密度0.5mA/cm2の定電流で通
電して電極とした。なお、薄膜の導電率は10-4〜10
-1Scm-1 であった。
【0115】このEL素子について、実施例1と同様に
特性を評価したところ、実施例1と同等の良好な結果が
得られた。
【0116】このものの表面色はほぼ黒色であり、反射
率はどの波長でも低く、表面反射率は0〜30%(可視
領域)であり、金属性の反射はなかった。発光表示は見
やすいものであった。なお、Liをドープした炭素質材
料の生成は実施例1と同様にして確認でき、炭素6個当
たりのLiの数は実施例1と同程度であった。
【0117】<実施例3> 1)Liをドープしたポリアセン系フィルムの形成 ノボラック−タイプのフェノール樹脂、メタノール、ホ
ルマリン(37%水溶液)の重量比3:3:1の溶液を
ガラス基板上にアプリケータを用いて塗布し、空気中で
30分間乾燥させて、メタノールを留去した。ガラス基
板のまま5N塩酸中に入れた後、70℃、90分間キュ
アさせた。
【0118】硬化させたフィルムを温水を用いて完全に
洗浄し、空気中で約1日間乾燥させ、約20μm の厚み
を持つフェノール樹脂フィルムを得た。
【0119】このフィルムを窒素を流した電気炉中で、
室温から40℃/hr の速度で700℃まで熱処理を行い
フィルムを得た。導電率は約10-6Scm-1 であった。
【0120】次いで、LiClO4 の1モル/リットル
のプロピレンカーボネート溶液中に作成したフィルムを
アノードとし、カーボン板をカソードとして浸漬し、電
圧を印加したところ、すぐに電流値は0.01mAほどと
なった。電流を0.2mAとして15分間、さらに約3mA
まで2時間通電した。3mAに達してすぐに、フィルムを
電解液から取り出し、アセトンで3回洗浄し、次いで室
温、減圧下で乾燥して、暗青色のフィルム(30μm
厚)を得た。このものは、10-3Scm-1 の導電率を示し
た。
【0121】2)EL素子の作成 上記で得られたLiをドープしたポリアセン系フィルム
を必要に応じてドライエッチングによりパターンを形成
した後、このものを真空蒸着装置の基板ホルダーに固定
して、槽内を1×10-4Pa以下まで減圧した。
【0122】トリス(8−キノリノラト)アルミニウム
を蒸着速度0.2nm/secで50nmの厚さに蒸着して、電
子注入輸送・発光層とした。
【0123】次いで減圧状態を保ったまま、N,N’−
ジフェニル−N,N’−m−トリル−4,4’−ジアミ
ノ−1,1’−ビフェニル(TPD)を蒸着速度0.2
nm/secで55nmの厚さに蒸着し、第二正孔注入輸送層と
した。
【0124】さらに、減圧を保ったまま、ポリ(チオフ
ェン−2,5−ジイル)を蒸着速度0.1nm/secで20
nmの厚さに蒸着し、第一正孔注入輸送層とした。
【0125】次いで、ITOをスパッタにて200nm厚
に成膜した。最後に全体でSiO2をスパッタして80
0nm厚の透明保護層を形成し、EL素子を得た。
【0126】このEL素子について、実施例1と同様に
して特性を評価したところ、初期において、5V で30
0cd/m2 の発光が確認できた。また、発光の安定性も十
分であった。
【0127】さらに、Liをドープしたポリアセン系フ
ィルム表面の表面反射率を調べたところ8%(可視領
域)であり、発光表示は見やすいものであった。
【0128】なお、Liをドープしたポリアセン系フィ
ルムの生成は実施例1と同様にして確認できた。このも
のにおける炭素6個当たりのLiの数は4.9個であっ
た。
【0129】<実施例4>実施例3のEL素子におい
て、Liをドープしたポリアセン系フィルムを以下のよ
うにして形成するほかは同様にしてEL素子を得た。
【0130】Liをドープしたポリアセン系フィルムの
形成 キシレン変成のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂(フ
ェノール:キシレン=1:1、三菱瓦斯化学製PR−1
440M)をアプリケータにてガラス基板に塗布した。
室温にて2時間乾燥させた後、さらに150℃で2時間
処理した。次いで窒素雰囲気にした電気炉にて室温から
610℃まで40℃/hr の昇温速度で熱処理を加えた。
【0131】このフィルムを実施例3と同様に電気化学
的にLiをドープして、最終的に10-2Scm-1 の導電率
を示す黒色フィルムを得た。
【0132】このEL素子について実施例1と同様に特
性を評価したところ、初期において、5V で320cd/m
2 の発光が確認された。また、発光の安定性も十分であ
った。
【0133】さらに、Liをドープしたポリアセン系フ
ィルム表面の表面反射率を調べたところ9%であり、発
光表示は見やすいものであった。
【0134】なお、Liをドープしたポリアセン系フィ
ルムの生成は実施例1と同様にX線回折によって確認し
た。このものにおける炭素6個当たりのLiの数は2個
程度であった。
【0135】<実施例5>実施例3のEL素子におい
て、Liをドープしたポリアセン系フィルムを以下のよ
うにして形成するほかは同様にしてEL素子を得た。
【0136】Liをドープしたポリアセン系フィルムの
形成 フラン系樹脂(日立化成製ヒタフラン302)をガラス
基板にアプリケータで塗布した。2時間乾燥させた後、
100℃で2時間前処理した。次いで、室温から640
℃まで40℃/hr の昇温速度で熱処理を行った。
【0137】このフィルムを実施例3と同様に電気化学
的にLiをドープして、青黒色で10-2Scm-1 の導電性
フィルムを得た。
【0138】このEL素子について実施例1と同様に特
性を評価したところ、実施例3、4とほぼ同等の良好な
結果が得られた。
【0139】さらに、Liをドープしたポリアセン系フ
ィルム表面の表面反射率を調べたところ6%であり、発
光表示は見やすいものであった。
【0140】なお、Liをドープしたポリアセン系フィ
ルムの生成は実施例1と同様にX線回折によって確認し
た。このものにおける炭素6個当たりのLiの数は4.
6個程度であった。
【0141】実施例3において、ドープする金属をLi
からNa,K,Cs,Eu,Smのそれぞれにかえたと
ころ、発光が認められた。
【0142】<比較例1>実施例1のEL素子におい
て、陰極材料として層間化合物を用いるかわりに、減圧
状態を保ったまま、MgAg(重量比10:1)を蒸着
速度0.2nm/secで約200nmの厚さに蒸着して陰極と
するほかは同様にしてEL素子を得た。
【0143】このEL素子について実施例1と同様に特
性を評価したところ、初期において、5V で10cd/m2
の発光しか確認できなかった。また、発光の安定性も、
実施例1〜5に比較して劣るものであった。
【0144】なお、Mgの仕事関数は3.66eV(文献
値)である。
【0145】
【発明の効果】本発明によれば、Li等の仕事関数3.
0eV以下の金属を電子注入用の金属電極に安定して使用
することができ、高輝度で安定した発光が得られる。ま
た、金属電極からの外光反射なく、発光表示が見やす
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のEL素子の一構成例を示す側面図であ
る。
【図2】本発明のEL素子の他の構成例を示す側面図で
ある。
【符号の説明】
1、11 EL素子 2、12 基板 3、16 透明電極 4、15 電荷輸送層 5、14 発光層 6、13 金属電極 7、17 保護層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板と、第1の電極と、第2の透明電極
    と、これらの電極に挟まれて設けられたそれぞれ少なく
    とも1層の電荷輸送層および発光層と、保護層とを有
    し、 前記第1の電極が仕事関数3.0eV以下の金属を含む導
    電性の炭素層間化合物で構成されている有機薄膜発光素
    子。
  2. 【請求項2】 前記炭素層間化合物がアルカリ金属を含
    む炭素質材料である請求項1の有機薄膜発光素子。
  3. 【請求項3】 前記炭素質材料が難黒鉛化炭素である請
    求項2の有機薄膜発光素子。
  4. 【請求項4】 前記アルカリ金属がリチウムである請求
    項1〜3のいずれかの有機薄膜発光素子。
  5. 【請求項5】 前記第1の電極の表面光反射率が40%
    以下である請求項1〜4のいずれかの有機薄膜発光素
    子。
  6. 【請求項6】 前記第1の電極が表面光反射率40%以
    下の絶縁性の基板上に形成されている請求項1〜5のい
    ずれかの有機薄膜発光素子。
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