以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。本開示では、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
本開示において、タイヤのサイド部とは、路面と接触するトレッド部と、リムに嵌め合わされるビード部との間を架け渡す、タイヤの部位を意味する。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイド部を備える。
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の硬さは、JIS K6253の規定に準じて、23℃の温度条件下でタイプAデュロメータを用いて測定される。
本開示において、「偏平比の呼び」とは、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」に含まれる、「偏平比の呼び」を意味する。「タイヤの呼び」は、タイヤサイズとも称される。
本開示において、並列したコードを含む要素5cm幅あたりに含まれるコードの本数がコードの密度(単位は、エンズ/5cmである。)として表される。
図1は、本開示の一実施形態に係る重荷重用タイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック及びバス用タイヤである。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。図1においてタイヤ2は、リムR(正規リム)に組まれている。
軸方向に延びる実線BBLは、ビードベースラインである。このビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
タイヤ2は、多数の要素を組み合わせて構成される。このタイヤ2は、要素として、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のチェーファー8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、クッション層16、一対の補強層18、インナーライナー20及びインスレーション22を備える。
トレッド4は、その外面(すなわちトレッド面24)において路面と接触する。トレッド4は、架橋ゴムからなる。図示されないが、トレッド4は、ベース部と、このベース部の径方向外側に位置するキャップ部とを備える。ベース部は低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
このタイヤ2のトレッド4には、周方向に連続して延びる溝26(すなわち、周方向溝26)が刻まれる。これにより、トレッド4に、軸方向に並列した複数の陸部28が構成される。トレッド4は、周方向溝26によって区画された複数の陸部28を有する。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6は耐カット性が考慮された架橋ゴムからなる。
それぞれのチェーファー8は、サイドウォール6の径方向内側に位置する。チェーファー8はリムRと接触する。チェーファー8は耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
それぞれのビード10は、チェーファー8の軸方向内側に位置し、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。ビード10は、コア30と、エイペックス32とを有する。
コア30は、周方向に延びる。コア30は、コア本体34と、カバー36とを備える。コア本体34は、周方向に延びるスチール製のワイヤ38を含む。コア本体34は、ワイヤ38を巻き回すことにより構成される。このコア本体34の断面形状は六角形である。この断面形状が四角形であってもよい。
図1において、符号αはコア本体34の底面が軸方向に対してなす角度である。このタイヤ2では、この角度αは15°以上25°以下である。この角度αは、正規状態のタイヤ2において測定される。
カバー36は、コア本体34を囲む。カバー36はコア本体34を包囲し、螺旋状に巻かれたワイヤ38を束ねる。このカバー36は、巻き回されたワイヤ38の束がばらけることを防止する。
エイペックス32は、コア30の径方向外側に位置する。エイペックス32は、径方向外向きに先細りである。
エイペックス32は、第一エイペックス40と、第二エイペックス42とを備える。第一エイペックス40は、コア30の径方向外側に位置する。第一エイペックス40は、径方向外向きに先細りである。第二エイペックス42は、第一エイペックス40の径方向外側に位置する。図1に示されるように、第二エイペックス42は、第一エイペックス40の端44の付近において、厚く、この厚い部分から径方向内向きに先細りであり、径方向外向きに先細りである。このタイヤ2では、第二エイペックス42の外端46が、エイペックス32の端48である。第一エイペックス40と第二エイペックス42との境界は、第一エイペックス40の端44と第二エイペックス42の内端50とを結ぶ。
第一エイペックス40及び第二エイペックス42はそれぞれ、架橋ゴムからなる。第二エイペックス42は、第一エイペックス40よりも軟質である。このタイヤ2では、第一エイペックス40の硬さは80以上95以下である。第二エイペックス42の硬さは50以上70以下である。第一エイペックス40の硬さと第二エイペックス42の硬さとの差は10以上40以下である。
カーカス12は、トレッド4、サイドウォール6及びチェーファー8の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード10と他方のビード10との間を架け渡す。
カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ52を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ52からなる。カーカスプライ52は、それぞれのビード10の周りにて折り返される。カーカスプライ52は、一方のコア30と他方のコア30との間を架け渡すプライ本体54と、このプライ本体54に連なり、それぞれのコア30の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される、一対の折り返し部56とを備える。
カーカスプライ52は並列した多数のカーカスコードを含む。前述したように、このカーカス12はカーカスプライ52からなる。このカーカス12は並列した多数のカーカスコードを含む。カーカス12において、これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。このタイヤ2では、カーカスコードの材質はスチールである。すなわち、カーカスコードはスチールコードである。このタイヤ2では、カーカスプライ52におけるカーカスコードの密度は、20エンズ/5cm以上60エンズ/5cm以下である。
カーカスコードは赤道面と交差する。カーカスコードが赤道面に対してなす角度は、75°以上90°以下である。このタイヤ2のカーカス12は、ラジアル構造を有する。
ベルト14は、トレッド4の径方向内側に位置する。このベルト14は、カーカス12の径方向外側に位置する。ベルト14は、径方向に積層された複数の層58で構成される。このタイヤ2のベルト14は4枚の層58で構成される。
図示されないが、それぞれの層58は並列した多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
それぞれのクッション層16は、ベルト14の端部において、このベルト14とカーカス12との間に位置する。クッション層16は、架橋ゴムからなる。
それぞれの補強層18は、ビード10の部分に位置する。補強層18は、カーカス12の内側においてビード10の周りで軸方向内側から外側に向かってカーカス12に沿って折り返される。補強層18は、軸方向において、折り返し部56の外側に位置する外側部60と、プライ本体54の内側に位置する内側部62とを備える。外側部60の端64は、径方向において、第二エイペックス42の内端50よりも外側に位置する。内側部62の端66は、径方向において、第一エイペックス40の端44よりも内側に位置する。
補強層18は、並列した多数の多数のフィラーコードを含む。これらフィラーコードは、トッピングゴムで覆われる。このタイヤ2では、フィラーコードの材質はスチールである。この補強層18はスチールフィラーとも称される。
インナーライナー20は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー20は、タイヤ2の内面を構成する。インナーライナー20は、空気等の気体の透過係数が低い架橋ゴムからなる。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
インスレーション22は、インナーライナー20とカーカス12との間に位置する。インスレーション22は、接着性に優れる架橋ゴムからなる。インスレーション22は、インナーライナー20をカーカス12に接合する。
図1において、符号PCで示される位置は、カーカス12の外面と赤道面との交点である。この交点PCは、カーカス12の径方向外端である。両矢印CHで示される長さは、カーカス12の断面高さである。この断面高さCHは、ビードベースラインから径方向外端PCまでの径方向距離により表される。
図1において、符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端である。一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離は、タイヤ2の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。この外端PWは、タイヤ2が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置PW)である。最大幅位置PWは、タイヤ2の外面の輪郭に基づいて特定される。模様や文字等の装飾が外面にある場合、この最大幅位置PWは、この装飾がないと仮定して得られる仮想外面の輪郭に基づいて特定される。
図1において、両矢印WHで示される長さは最大幅位置PWの径方向高さである。この径方向高さWHは、ビードベースラインから最大幅位置PWまでの径方向距離により表される。
このタイヤ2では、最大幅位置PWの径方向高さWHの、カーカス12の断面高さCHに対する比(WH/CH)は0.45以上0.60以下である。好ましくは、この比(WH/CH)は0.50以上0.55以下である。
図1において、符号PAで示される位置はカーカス12の軸方向外端である。一方の外端PAから他方の外端PAまでの軸方向距離は、このカーカス12の最大幅である。この外端PAは、カーカス12が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置PA)である。カーカス12の最大幅位置PAは、プライ本体54の外面の輪郭に基づいて特定される。
このタイヤ2では、径方向において、カーカス12の最大幅位置PAはタイヤ2の最大幅位置PWよりも外側に位置する。径方向において、最大幅位置PAと最大幅位置PWとが一致していないので、サイド部Sが撓むことによって生じる歪が効果的に分散される。後述するように、このタイヤ2のフレキシブルゾーンは狭い。狭いフレキシブルゾーンを有するタイヤ2では、この最大幅位置PWに対する最大幅位置PAの配置は耐久性の確保に貢献する。
図1において、両矢印DHで示される長さはタイヤ2の最大幅位置PWからカーカス12の最大幅位置PAまでの径方向距離である。このタイヤ2では、良好な耐久性確保の観点から、この距離DHは5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましい。この距離DHは、15mm以下が好ましく、13mm以下がより好ましい。
図1において、両矢印AHで示される長さはエイペックス32の径方向高さである。この径方向高さAHは、ビードベースラインからエイペックス32の端48までの径方向距離により表される。
このタイヤ2では、エイペックス32の端48は、径方向において、最大幅位置PWの近くに位置する。図1に示されるように、このタイヤ2では、エイペックス32の端48は、径方向において、最大幅位置PWよりも内側に位置する。
このタイヤ2では、ビード10部の剛性確保の観点から、エイペックス32の径方向高さAHの、最大幅位置PWの径方向高さWHに対する比(AH/WH)は0.80以上が好ましく、0.85以上がより好ましい。サイド部Sの柔軟性確保の観点から、この比(AH/WH)は0.98以下が好ましく、0.95以下がより好ましい。
図1において、両矢印Nで示される長さは折り返し部56の径方向高さである。この径方向高さNは、ビードベースラインから折り返し部56の端68までの径方向距離により表される。
このタイヤ2では、折り返し部56の径方向高さNの、カーカス12の断面高さCHに対する比(N/CH)は0.14以上0.27以下である。
比(N/CH)が0.14以上であるので、折り返し部56の高さが確保され、折り返し部56がビード部Bの支持に貢献する。ビード部Bの変形が抑えられるので、折り返し部56の端68への歪の集中が抑えられる。この観点から、この比(N/CH)は0.15以上が好ましく、0.16以上がより好ましい。
比(N/CH)が0.27以下であるので、ビード部Bに作用する力が折り返し部56全体に効果的に分散される。この場合においても、折り返し部56の端68への歪の集中が抑えられる。この観点から、この比(N/CH)は0.26以下が好ましく、0.24以下がより好ましい。
図1において、両矢印NSで示される長さは、折り返し部56の端68から外側部60の端64までの径方向距離である。このタイヤ2では、外側部60の端64が径方向において折り返し部56の端68の内側に位置する場合、この径方向距離NSは正の数で表される。外側部60の端64が径方向において折り返し部56の端68の外側に位置する場合、この径方向距離NSは負の数で表される。
このタイヤ2では、図1に示されるように、径方向において、外側部60の端64は折り返し部56の端68よりも内側に位置する。径方向距離NSは6mm以上14mm以下である。
径方向距離NSが6mm以上であるので、外側部60の端64が、折り返し部56の端68から適切な距離をあけて配置される。このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が抑えられる。この観点から、この径方向距離NSは7mm以上が好ましく、9mm以上がより好ましい。
径方向距離NSが14mm以下であるので、外側部60によるビード部Bの補強効果が効果的に発揮される。このタイヤ2では、折り返し部56だけでなく外側部60もビード部Bの支持に貢献する。ビード部Bの変形が抑えられるので、折り返し部56の端68への歪の集中が抑えられる。この観点から、この径方向距離NSは13mm以下が好ましく、12mm以下がより好ましい。
図2は、補強層18に含まれるフィラーコード70の配列を、カーカス12に含まれるカーカスコード72の配列とともに示す。図2には、タイヤ2の外面からビード部Bを見た場合の、フィラーコード70の配列が示される。図2において、左右方プライ向はタイヤ2の周方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図2においては、説明の便宜のために、カーカスプライ52においてトッピングゴム74で覆われるカーカスコード72と、補強層18においてトッピングゴム76で覆われるフィラーコード70とは実線で表される。
図2において、βで表される角度はフィラーコード70とカーカスコード72とがなす角度を表す。この角度βは、外側部60の端64におけるフィラーコード70がカーカスコード72に対してなす角度により表される。
図2に示されるように、フィラーコード70はカーカスコード72に対して傾斜する。このタイヤ2では、フィラーコード70とカーカスコード72とがなす角度βは、20°以上50°以下である。
角度βが20°以上であるので、フィラーコード70がカーカスコード72間に入り込むことが防止される。補強層18が折り返し部56の支持に貢献できるので、ビード部Bの変形が抑えられる。このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が抑えられる。この観点から、この角度βは30°以上が好ましく、40°以上がより好ましい。
角度βが50°以下であるので、1本のフィラーコード70が各カーカスコード72と交差する位置が径方向に効果的に分散される。この場合においても、補強層18が折り返し部56の支持に貢献できるので、ビード部Bの変形が抑えられる。このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が抑えられる。この観点から、この角度βは49°以下が好ましく、48°以下がより好ましい。
このタイヤ2では、偏平比の呼びは70%以下である。偏平比の呼びが70%を超えるタイヤに比べて、このタイヤ2のフレキシブルゾーンは狭い。
図1において、両矢印FZで示される長さはフレキシブルゾーンの幅を表す。このフレキシブルゾーンの幅FZは、クッション層16の内端78からエイペックス32の端48までの径方向距離により表される。このタイヤ2では、フレキシブルゾーンの幅FZの、カーカス12の断面高さCHに対する比(FZ/CH)は0.15以上0.30以下である。詳細には、この比(FZ/CH)は0.20以上0.25以下である。これに対して、偏平比の呼びが70%を超えるタイヤでは、このフレキシブルゾーンの幅の、カーカスの断面高さに対する比は0.30を超える。
このタイヤ2では、偏平比の呼びが70%を超えるタイヤに比べて、フレキシブルゾーンが狭いので、サイド部Sは高い剛性を有する傾向にある。このため、折り返し部56の端68への歪の集中を抑えることが難しく、良好な耐久性を確保できない恐れがある。
しかし、このタイヤ2では、(1)折り返し部56の径方向高さNの、カーカス12の断面高さCHに対する比(N/CH)が0.14以上0.27以下であり、(2)径方向において、外側部60の端64は折り返し部56の端68よりも内側に位置し、折り返し部56の端68から外側部60の端64までの径方向距離NSが6mm以上14mm以下であり、そして、(3)フィラーコード70はカーカスコード72に対して傾斜し、フィラーコード70とカーカスコード72とがなす角度βが20°以上50°以下である。このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が抑えられ、この折り返し部56の端68を起点とする亀裂の発生が抑えられる。このタイヤ2では、良好な耐久性が確保される。
図3は、図1に示されたタイヤ2の一部を示す。この図3には、このタイヤ2のビード部Bが示される。図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図3において、両矢印A1で示される長さは折り返し部56の端68におけるエイペックス32の厚さである。この厚さA1は、折り返し部56の端68を通るプライ本体54の法線に沿って計測される。両矢印A2で示される長さは、外側部60の端64におけるエイペックス32の厚さである。この厚さA2は、外側部60の端64を通るプライ本体54の法線に沿って計測される。両矢印A3で示される長さは、エイペックス32とコア30との境界におけるエイペックス32の厚さである。この厚さA3は、コア30に接する、プライ本体54の法線に沿って計測される。プライ本体54の法線は、プライ本体54の外面において特定される。
このタイヤ2では、折り返し部56の端68におけるエイペックス32の厚さA1に対する、外側部60の端64におけるエイペックス32の厚さA2の比(A2/A1)は、1.00以上が好ましく、1.15以下が好ましい。
比(A2/A1)が1.00以上に設定されることにより、外側部60の端64におけるエイペックス32の特異な変形が防止される。このタイヤ2では、エイペックス32がしなやかに撓むので、折り返し部56の端68への歪の集中が効果的に抑えられる。この観点から、この比(A2/A1)は1.07以上がより好ましく、1.12以上がさらに好ましい。
比(A2/A1)が1.15以下に設定されることにより、折り返し部56の端68におけるエイペックス32の特異な変形が防止される。この場合においても、エイペックス32がしなやかに撓むので、折り返し部56の端68への歪の集中が効果的に抑えられる。この観点から、この比(A2/A1)は1.14以下がより好ましく、1.13以下がさらに好ましい。
このタイヤ2では、折り返し部56の端68におけるエイペックス32の厚さA1に対する、エイペックス32とコア30との境界におけるエイペックス32の厚さA3の比(A3/A1)は、1.20以上が好ましく、1.25以下が好ましい。
比(A3/A1)が1.20以上に設定されることにより、エイペックス32とコア30との境界におけるエイペックス32の特異な変形が防止される。このタイヤ2では、エイペックス32がしなやかに撓むので、折り返し部56の端68への歪の集中が効果的に抑えられる。
比(A3/A1)が1.25以下に設定されることにより、折り返し部56の端68におけるエイペックス32の特異な変形が防止される。この場合においても、エイペックス32がしなやかに撓むので、折り返し部56の端68への歪の集中が効果的に抑えられる。この観点から、この比(A2/A1)は1.24以下がより好ましく、1.22以下がさらに好ましい。
このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中がより効果的に抑えられる観点から、比(A2/A1)が1.00以上1.15以下であり、比(A3/A1)が1.20以上1.25以下であるのが好ましい。より好ましくは、比(A2/A1)が1.12以上1.13以下であり、比(A3/A1)が1.20以上1.22以下である。
図3において、両矢印F1で示される長さは折り返し部56の端68における第一エイペックス40の厚さである。この厚さF1は、折り返し部56の端68を通るプライ本体54の法線に沿って計測される。両矢印F2で示される長さは、外側部60の端64における第一エイペックス40の厚さである。この厚さF2は、外側部60の端64を通るプライ本体54の法線に沿って計測される。
このタイヤ2では、折り返し部56の端68におけるエイペックス32の厚さA1に対する、この折り返し部56の端68における第一エイペックス40の厚さF1の比(F1/A1)は0.30以下が好ましい。
比(F1/A1)が0.30以下に設定されることにより、折り返し部56の端68の部分における、エイペックス32の剛性への第一エイペックス40の影響が抑えられる。このタイヤ2では、折り返し部56の端68におけるエイペックス32の特異な変形が防止されるので、エイペックス32がしなやかに撓む。このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が効果的に抑えられる。この観点から、この比(F1/A1)は0.25以下がより好ましく、0.20以下がさらに好ましい。
このタイヤ2では、第一エイペックス40の端44が、径方向において、折り返し部56の端68を通るプライ本体54の法線よりも内側に位置してもよい。この場合、比(F1/A1)は0.00である。第一エイペックス40の端44が、径方向において、折り返し部56の端68を通るプライ本体54の法線よりも内側に位置する場合であっても、エイペックス32の剛性確保の観点から、第一エイペックス40の端44は、径方向において、外側部60の端64を通るプライ本体54の法線よりも外側に位置するのが好ましい。同様の観点から、第一エイペックス40の端44は、径方向において、折り返し部56の端68を通るプライ本体54の法線よりも外側に位置するのがより好ましい。この場合、比(F1/A1)は0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましい。
このタイヤ2では、外側部60の端64におけるエイペックス32の厚さA2に対する、この外側部60の端64における第一エイペックス40の厚さF2の比(F2/A2)は0.40以上が好ましく、0.55以下が好ましい。
比(F2/A2)が0.40以上に設定されることにより、第一エイペックス40がエイペックス32の剛性確保に貢献する。このタイヤ2では、外側部60の端64におけるエイペックス32の特異な変形が防止されるので、エイペックス32がしなやかに撓む。このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が効果的に抑えられる。この観点から、この比(F2/A2)は0.42以上がより好ましく、0.45以上がさらに好ましい。
比(F2/A2)が0.55以下に設定されることにより、外側部60の端64の部分における、エイペックス32の剛性への、第一エイペックス40の影響が抑えられる。このタイヤ2では、折り返し部56の端68におけるエイペックス32の特異な変形が防止されるので、エイペックス32がしなやかに撓む。このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が効果的に抑えられる。この観点から、この比(F2/A2)は0.53以下がより好ましく、0.50以下がさらに好ましい。
図3において、両矢印J1で示される長さは折り返し部56の端68からタイヤ2の外面までの厚さを表す。この厚さJ1は、折り返し部56の端68を通るタイヤ2の外面の法線に沿って計測される。なお、タイヤ2の外面に模様や文字等の装飾がある場合、この折り返し部56の端68を通るタイヤ2の外面の法線は、この装飾がないと仮定して得られる仮想外面の輪郭に基づいて特定される。
このタイヤ2では、折り返し部56の端68におけるエイペックス32の厚さA1に対する、この折り返し部56の端68からタイヤ2の外面までの厚さJ1の比(J1/A1)は0.75以上が好ましく、0.85以下が好ましい。
比(J1/A1)が0.75以上に設定されることにより、主に、チェーファー8により構成される折り返し部56の外側部分が、エイペックス32の支持に貢献する。このタイヤ2では、折り返し部56の端68におけるエイペックス32の特異な変形が防止されるので、エイペックス32がしなやかに撓む。このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が効果的に抑えられる。この観点から、この比(J1/A1)は0.76以上がより好ましく、0.77以上がさらに好ましい。
比(J1/A1)が0.85以下に設定されることにより、折り返し部56の外側部分のボリュームが適切に維持される。このタイヤ2では、質量の増加が抑えられる。この観点から、この比(J1/A1)は0.84以下がより好ましく、0.83以下がさらに好ましい。
図3において、両矢印Sで示される長さは外側部60の径方向高さである。両矢印Uで示される長さは、内側部62の径方向高さである。
図3に示されるように、このタイヤ2では、径方向において、内側部62の端66は外側部60の端64よりも外側に位置する。図示されていないが、このタイヤ2では、径方向において、内側部62の端66の位置と外側部60の端64の位置とが一致していてもよい。このタイヤ2では、内側部62がビード部Bの剛性確保に貢献する。ビード部Bの変形が抑えられるので、折り返し部56の端68への歪の集中が抑えられる。この観点から、径方向において、内側部62の端66の位置と外側部60の端64の位置とが一致する、又は、内側部62の端66が外側部60の端64よりも外側に位置するのが好ましい。この場合、内側部62の端66でのルースの発生が抑えられる観点から、内側部62の径方向高さUと外側部60の径方向高さSとの差(U-S)は、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。ビード部Bの剛性確保の観点から、この差(U-S)は0mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。
このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が効果的に抑えられる観点から、径方向において、内側部62の端66は、折り返し部56の端68と外側部60の端64との間に位置するのが好ましい。
図4には、図2と同様、補強層18に含まれるフィラーコード70の配列が、カーカス12に含まれるカーカスコード72の配列とともに示される。この図4には、タイヤ2の内面からビード部Bを見た場合の、フィラーコード70の配列が示される。図4において、左右方向はタイヤ2の周方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図4と図2との対比から明らかなように、このタイヤ2では、内側部62におけるフィラーコード70間の間隔は、外側部60におけるフィラーコード70間の間隔よりも広い。言い換えれば、外側部60におけるフィラーコード70の密度は内側部62におけるフィラーコード70の密度よりも高い。このタイヤ2では、フィラーコード70の密度が高い外側部60は、折り返し部56の支持に貢献し、フィラーコード70の密度が低い内側部62は、しなやかなビード10の撓みに貢献する。このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が効果的に抑えられる。この観点から、外側部60におけるフィラーコード70の密度は内側部62におけるフィラーコード70の密度よりも高いのが好ましい。
このタイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が効果的に抑えられる観点から、外側部60におけるフィラーコード70の密度と、内側部62におけるフィラーコード70の密度との差は、2エンズ/5cm以上が好ましく、3エンズ/5cm以上がより好ましい。補強層18によるタイヤ2の質量増加が抑えられる観点から、外側部60におけるフィラーコード70の密度と、内側部62におけるフィラーコード70の密度との差は、5エンズ/5cm以下が好ましく、4エンズ/5cm以下がより好ましい。
このタイヤ2では、補強層18の外側部60が折り返し部56の支持に貢献できる観点から、外側部60におけるフィラーコード70は、折り返し部56におけるカーカスコード72よりも密に配置されるのが好ましい。この観点から、外側部60におけるフィラーコード70の密度と、折り返し部56におけるカーカスコード72の密度との差は、4エンズ/5cm以上がより好ましく、5エンズ/5cm以上がさらに好ましい。補強層18によるタイヤ2質量への影響が抑えられる観点から、外側部60におけるフィラーコード70の密度と、折り返し部56におけるカーカスコード72の密度との差は、8エンズ/5cm以下がより好ましく、7エンズ/5cm以下がさらに好ましい。
以上の説明から明らかなように、本発明の重荷重用タイヤ2では、折り返し部56の端68への歪の集中が抑えられ、この折り返し部56の端68を起点とする亀裂の発生が抑えられる。このタイヤ2では、良好な耐久性が確保される。
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用タイヤ(タイヤサイズ=245/70R19.5)を得た。
この実施例1では、折り返し部の径方向高さNの、カーカスの断面高さCHに対する比(N/CH)は0.212であった。フィラーコードとカーカスコードとがなす角度βは、25°であった。折り返し部の端から外側部の端までの径方向距離NSは、10mmであった。折り返し部の端におけるエイペックスの厚さA1に対する、外側部の端におけるエイペックスの厚さA2の比(A2/A1)は、1.12であった。折り返し部の端におけるエイペックスの厚さA1に対する、エイペックスとコアとの境界におけるエイペックスの厚さA3の比(A3/A1)は、1.20であった。折り返し部の端におけるエイペックスの厚さA1に対する、折り返し部の端における第一エイペックスの厚さF1の比(F1/A1)は、0.10であった。
表1には示されていないが、この実施例1では、外側部の端におけるエイペックスの厚さA2に対する、外側部の端における第一エイペックスの厚さF2の比(F2/A2)は、0.50であった。内側部の径方向高さUと外側部の径方向高さSとの差(U-S)は、7mmであった。折り返し部の端における、エイペックスの厚さA1に対する、折り返し部の端からタイヤの外面までの厚さJ1の比(J1/A1)は、0.77であった。
[実施例2-3及び比較例1-2]
折り返し部の径方向高さNを変えて比(N/CH)及び径方向距離NSを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-3及び比較例1-2のタイヤを得た。
[実施例4]
角度βを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4のタイヤを得た。
[実施例5-6及び比較例3-4]
外側部の径方向高さSを変えて径方向距離NSを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5-6及び比較例3-4のタイヤを得た。
[実施例7-9]
厚さA1及び厚さA2を変えて比(A2/A1)及び比(A3/A1)を下記の表3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7-9のタイヤを得た。
[実施例10-11]
厚さF1を変えて比(F1/A1)を下記の表3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例10-11のタイヤを得た。
[実施例12]
比(N/CH)、比(A2/A1)、比(A3/A1)及び比(F1/A1)を下記の表3に示される通りとし、この表3には示されていないが、比(F2/A2)を0.45、差(U-S)を0mm、そして比(J1/A1)を0.83とした他は実施例1と同様にして、実施例12のタイヤを得た。
[歪指数]
有限要素法(Finite Element Method(FEM))により、折り返し部の端に生じる歪を算出した。この算出では、試作タイヤを組むリムのサイズは7.50×19.5とした。タイヤの内圧は1050kPaとした。タイヤに付与する荷重は56.02kNとした。速度は20km/hとした。この結果が、比較例2の歪指数を100とした指数で、下記の表1-3に示されている。数値が小さいほど折り返し部の端に生じる歪は小さい。
[耐久性]
試作タイヤをリム(サイズ=7.50×19.5)に組み、空気を充填しタイヤの内圧を1050kPaに調整した。このタイヤをドラム試験機に装着して、56.02kNの荷重を付与して、時速20km/hの速度でドラム(ドラム径=1707mm)上を走行させた。ビード部に膨れが生じるまでの走行時間を測定した。この結果が、比較例2の走行時間を100とした指数で、下記の表1-3に示されている。数値が大きいほど走行時間が長く、ビード耐久性に優れる。
表1-3に示されるように、実施例では、折り返し部の端への歪の集中が抑えられ、良好な耐久性が確保されることが確認される。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。