以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
また、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、車両装着時での回転方向が指定された空気入りタイヤ1になっており、即ち、車両の前進時において回転軸を中心に指定された回転方向に回転するように車両に装着される空気入りタイヤ1になっている。また、空気入りタイヤ1は、回転方向を示す回転方向表示部(図示省略)を有する。回転方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部8に付されたマークや凹凸によって構成される。以下の説明では、タイヤ回転方向における先着側とは、空気入りタイヤ1を指定方向に回転させた際における回転方向側であり、空気入りタイヤ1を車両に装着して指定方向に回転させて走行する場合において、先に路面に接地したり先に路面から離れたりする側である。また、タイヤ回転方向における後着側とは、空気入りタイヤ1を指定方向に回転させた際における回転方向の反対側であり、空気入りタイヤ1を車両に装着して指定方向に回転させて走行する場合において、先着側に位置する部分の後に路面に接地したり、先着側に位置する部分の後に路面から離れたりする側である。
図1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム層4を有している。また、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、踏面3として形成され、踏面3は、空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成している。トレッド部2には、踏面3にタイヤ周方向に延びる周方向主溝30が複数形成されており、この複数の周方向主溝30により、トレッド部2の表面には複数の陸部20が画成されている。このようにトレッド部2に形成される複数の陸部20は、タイヤ幅方向に並んで配置されている。本実施形態1では、周方向主溝30は4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、4本の周方向主溝30は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側にそれぞれ2本ずつ配設されている。つまり、トレッド部2には、タイヤ赤道面CLの両側に配設される2本のセンター主溝31と、2本のセンター主溝31のそれぞれのタイヤ幅方向外側に配設される2本のショルダー主溝32との、計4本の周方向主溝30が形成されている。
なお、周方向主溝30とは、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいい、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する。本実施形態1では、周方向主溝30は、タイヤ赤道面CLと踏面3とが交差するタイヤ赤道線(センターライン)と実質的に平行である。周方向主溝30は、タイヤ周方向に直線状に延在してもよいし、波形状又はジグザグ状に設けられてもよい。
周方向主溝30によって画成される陸部20のうち、2本のセンター主溝31同士の間に位置し、タイヤ赤道面CL上に位置する陸部20は、センター陸部21になっている。また、隣り合うセンター主溝31とショルダー主溝32との間に位置し、センター陸部21のタイヤ幅方向外側に配置される陸部20はセカンド陸部22になっている。また、セカンド陸部22のタイヤ幅方向外側に位置し、ショルダー主溝32を介してセカンド陸部22に隣り合う陸部20はショルダー陸部23になっている。即ち、陸部20は、4本の周方向主溝30によって区画されることにより、1列のセンター陸部21と、2列のセカンド陸部22と、2列のショルダー陸部23との、合計5列がタイヤ幅方向に並んで配置されている。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両外側端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、サイドウォール部8が配設されている。即ち、サイドウォール部8は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に配設されている。換言すると、サイドウォール部8は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されており、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出した部分を形成している。
タイヤ幅方向における両側に位置するそれぞれのサイドウォール部8のタイヤ径方向内側には、ビード部10が位置している。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されており、即ち、ビード部10は、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配設されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤを束ねて円環状に形成される環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材になっている。
また、トレッド部2のタイヤ径方向内側には、ベルト層14が設けられている。ベルト層14は、複数のベルト141、142が積層される多層構造によって構成されており、本実施形態1では、2層のベルト141、142が積層されている。ベルト層14を構成するベルト141、142は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。また、2層のベルト141、142は、タイヤ周方向に対するベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が互いに異なっている。このため、ベルト層14は、2層のベルト141、142が、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成されている。つまり、2層のベルト141、142は、それぞれのベルト141、142が有するベルトコードが互いに交差する向きで配設される、いわゆる交差ベルトとして設けられている。トレッド部2が有するトレッドゴム層4は、トレッド部2におけるベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されている。
ベルト層14のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このため、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、いわゆるラジアルタイヤとして構成されている。カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設される一対のビード部10間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。
詳しくは、カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。ビードフィラー12は、このようにカーカス層13がビード部10で折り返されることにより、ビードコア11のタイヤ径方向外側に形成される空間に配置されるゴム材になっている。また、ベルト層14は、このように一対のビード部10間に架け渡されるカーカス層13における、トレッド部2に位置する部分のタイヤ径方向外側に配置されている。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成されている。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設されている。
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス層13の内側、或いは、当該カーカス層13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ16がカーカス層13に沿って形成されている。インナーライナ16は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成している。
図2は、図1のA-A矢視図である。図3は、図1のB-B矢視図である。トレッド部2には、周方向主溝30に開口し、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40が複数形成されており、ラグ溝40は、複数がタイヤ周方向に並んで形成されている。このため、陸部20は、周方向主溝30とラグ溝40とによって区画されている。例えば、本実施形態1では、センター陸部21は、タイヤ幅方向における両側が周方向主溝30によって区画され、センター陸部21を区画するラグ溝40は、センター陸部21のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の周方向主溝30に開口している。セカンド陸部22も同様に、タイヤ幅方向における両側が周方向主溝30によって区画され、セカンド陸部22を区画するラグ溝40は、セカンド陸部22のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の周方向主溝30に開口している(図示省略)。このため、センター陸部21とセカンド陸部22は、タイヤ幅方向における両側が周方向主溝30によって他の陸部20と分断され、タイヤ周方向における両側がラグ溝40によって他の陸部20と分断された、いわゆるブロック形状の陸部20として形成されている。
これに対し、ショルダー陸部23は、タイヤ幅方向における内側が周方向主溝30によって区画され、ショルダー陸部23を区画するラグ溝40は、一端が周方向主溝30に開口し、他端がショルダー陸部23内で終端している。このため、ショルダー陸部23は、タイヤ周方向に分断されることなく、タイヤ周方向に連続して形成される、いわゆるリブ形状の陸部20として形成されている。
これらのように形成される陸部20には、周方向主溝30のエッジ部35とラグ溝40のエッジ部45との交差部25に、面取り部50が形成されている。面取り部50は、交差部25から、当該交差部25を形成する周方向主溝30のエッジ部35側とラグ溝40のエッジ部45側との双方にかけて形成されている。周方向主溝30のエッジ部35とラグ溝40のエッジ部45との交差部25は、周方向主溝30に対するラグ溝40の開口部における、ラグ溝40の溝幅方向の両側2箇所に形成されているが、交差部25に形成される面取り部50は、各交差部25に独立して形成されている。つまり、面取り部50は、交差部25と同様に、周方向主溝30に対するラグ溝40の開口部における、ラグ溝40の溝幅方向の両側2箇所に形成されている。
陸部20に複数される面取り部50は、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝40同士のそれぞれのエッジ部45うち、互いに他方のラグ溝40側に位置するエッジ部45に形成される面取り部50同士で、大きさが異なっている。或いは、陸部20に複数される面取り部50は、1つのラグ溝40の溝幅方向における当該ラグ溝40の両側に形成される面取り部50同士で、大きさが異なっている。即ち、面取り部50は、ラグ溝40の溝幅方向における両側に形成される面取り部50のうち、一方の面取り部50は蹴出側面取り部51になっており、他方の面取り部50は踏込側面取り部52になっており、面取り部50は、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とで、面取りの大きさが異なっている。
ここでいう蹴出側面取り部51は、ラグ溝40の溝幅方向における両側の陸部20に形成される面取り部50のうち、面取り部50が形成されるラグ溝40のエッジ部45が、陸部20におけるタイヤ周方向に隣り合うラグ溝40によって区画される部分において、タイヤ回転方向における蹴出側に位置するエッジ部45である面取り部50になっている。また、踏込側面取り部52は、ラグ溝40の溝幅方向における両側の陸部20に形成される面取り部50のうち、面取り部50が形成されるラグ溝40のエッジ部45が、陸部20におけるタイヤ周方向に隣り合うラグ溝40によって区画される部分において、タイヤ回転方向における踏込側に位置するエッジ部45である面取り部50になっている。
タイヤ回転方向における蹴出側に位置するエッジ部45とは、陸部20における、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝40の間に位置してタイヤ周方向における両側がこれらのラグ溝40によって区画される部分のタイヤ周方向における両端に位置するラグ溝40のエッジ部45のうち、タイヤ回転方向における後着側に位置するエッジ部45になっている。また、タイヤ回転方向における踏込側に位置するエッジ部45とは、陸部20における、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝40の間に位置してタイヤ周方向における両側がこれらのラグ溝40によって区画される部分のタイヤ周方向における両端に位置するラグ溝40のエッジ部45のうち、タイヤ回転方向における先着側に位置するエッジ部45になっている。
即ち、蹴出側面取り部51は、陸部20におけるタイヤ周方向に隣り合うラグ溝40によって区画される部分のタイヤ周方向における両側に位置する面取り部50のうち、タイヤ回転方向における後着側に位置する面取り部50になっている。また、踏込側面取り部52は、陸部20におけるタイヤ周方向に隣り合うラグ溝40によって区画される部分のタイヤ周方向における両側に位置する面取り部50のうち、タイヤ回転方向における先着側に位置する面取り部50になっている。このため、ラグ溝40を基準として面取り部50を見た場合、ラグ溝40の溝幅方向における両側に位置する面取り部50同士では、蹴出側面取り部51が相対的にタイヤ回転方向における先着側に位置し、踏込側面取り部52が相対的にタイヤ回転方向における後着側に位置している。
これらのように規定される蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、周方向主溝30のエッジ部35の位置での蹴出側面取り部51のタイヤ周方向における幅である蹴出側面取り部端部幅W1が、周方向主溝30のエッジ部35の位置での踏込側面取り部52のタイヤ周方向における幅である踏込側面取り部端部幅W2よりも大きくなっている。つまり、蹴出側面取り部端部幅W1と踏込側面取り部端部幅W2とは、W2<W1の関係を満たしている。さらに、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、蹴出側面取り部端部幅W1と踏込側面取り部端部幅W2との関係が、1.05≦(W1/W2)≦3.5の範囲内になっている。
これらのように規定される面取り部50のタイヤ周方向における幅に対して、タイヤ幅方向における面取り部50の幅、或いは、ラグ溝40のエッジ部45に沿った方向における面取り部50の幅は、それぞれの面取り部50のタイヤ周方向における幅と同程度になっている。例えば、蹴出側面取り部51は、タイヤ幅方向における幅である蹴出側面取り部幅方向幅W1eと、蹴出側面取り部端部幅W1との関係が、0.5≦(W1e/W1)≦2の範囲内になっている。また、踏込側面取り部52は、タイヤ幅方向における幅である踏込側面取り部幅方向幅W2eと、踏込側面取り部端部幅W2との関係が、0.5≦(W2e/W2)≦2の範囲内になっている。
また、蹴出側面取り部51は、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝40同士のピッチPと、蹴出側面取り部端部幅W1との関係が、0.02≦(W1/P)≦0.3の範囲内になっている。また、踏込側面取り部52は、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝40同士のピッチPと、踏込側面取り部端部幅W2との関係が、0.01≦(W2/P)≦0.25の範囲内になっている。
また、蹴出側面取り部51は、タイヤ幅方向における陸部20の接地幅WBと、蹴出側面取り部幅方向幅W1eとの関係が、0.1≦(W1e/WB)≦0.5の範囲内になっている。また、踏込側面取り部52は、タイヤ幅方向における陸部20の接地幅WBと、踏込側面取り部幅方向幅W2eとの関係が、0.05≦(W2e/WB)≦0.4の範囲内になっている。
なお、ここでいう接地幅WBは、陸部20の踏面3のタイヤ幅方向における幅になっている。このため、センター陸部21やセカンド陸部22のように、タイヤ幅方向における両側が周方向主溝30によって区画される陸部20では、接地幅WBは、陸部20のタイヤ幅方向における最大幅とほぼ同じ大きさになる。また、タイヤ幅方向における内側のみが周方向主溝30によって区画されるショルダー主溝32では、接地幅WBは、陸部20のタイヤ幅方向における内側の端部から、陸部20上に位置する接地端Tまでのタイヤ幅方向における距離になっている。
ここでいう接地端Tは、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みして規定内圧を充填し、静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に相当する荷重を加えられたときの、踏面3における平板に接触する領域のタイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。ここでいう規定リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、規定内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、規定荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
図4は、図2、図3のC-C矢視図である。蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、周方向主溝30やラグ溝40の深さ方向における深さ、或いは、タイヤ径方向における深さが、互いに異なっており、踏込側面取り部52よりも、蹴出側面取り部51の方がタイヤ径方向における深さが深くなっている。つまり、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、蹴出側面取り部51のタイヤ径方向における深さH1と、踏込側面取り部52のタイヤ径方向における深さH2との関係が、H2<H1を満たしている。さらに、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、蹴出側面取り部51のタイヤ径方向における深さH1と、踏込側面取り部52のタイヤ径方向における深さH2との関係が、1.05≦(H1/H2)≦3.5の範囲内になっている。
面取り部50を有するラグ溝40は、踏面3への開口部側から溝底42側に向かうに従って、溝幅が小さくなる方向に、溝壁41がタイヤ径方向に対して傾斜している。つまり、ラグ溝40は、踏面3への開口部側から溝底42側に向かうに従って、対向する溝壁41同士の距離が近づく方向に、溝壁41がタイヤ径方向に対して傾斜している。
このように、溝壁41がタイヤ径方向に対して傾斜しているラグ溝40は、タイヤ径方向に対する溝壁41の角度θが、1°以上10°以下の範囲内になっている。この場合における溝壁41は、ラグ溝40における面取り部50よりもタイヤ径方向内側に位置する部分の溝壁41になっており、面取り部50よりもタイヤ径方向内側に位置する溝壁41のタイヤ径方向に対する角度θが、1°以上10°以下の範囲内になっている。
本実施形態1に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、ビード部10にリムホイールを嵌合することによってリムホイールに空気入りタイヤ1をリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。その際に、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、回転方向が指定されているため、車両の前進時に回転する空気入りタイヤ1が、指定された回転方向で回転をする向きで空気入りタイヤ1を車両に装着する。具体的には、面取り部50が形成される陸部20の向きが、踏込側面取り部52がタイヤ回転方向における陸部20の先着側に位置し、蹴出側面取り部51がタイヤ回転方向における陸部20の後着側に位置する向きで装着する。
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド部2の踏面3のうち下方に位置する踏面3が路面に接触しながら空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主に踏面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、踏面3と路面との間の水が周方向主溝30やラグ溝40等の溝に入り込み、これらの溝で踏面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、踏面3は路面に接地し易くなり、踏面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
また、車両の走行時には、路面上に散乱している砂が空気入りタイヤ1のトレッド部2の踏面3に付着することがある。踏面3に付着した砂は、回転する空気入りタイヤ1の遠心力によって飛び散り、車両のタイヤハウス等に当たることによって、車両の走行時における騒音の一種である砂はね音が発生することがある。
砂はね音は、路面上の砂が、このように空気入りタイヤ1の踏面3に砂が付着することに発生するが、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、陸部20の周方向主溝30のエッジ部35とラグ溝40のエッジ部45との交差部25に面取り部50が形成されるため、踏面3への砂の付着を抑制することができる。つまり、空気入りタイヤ1の回転時は、陸部20における周方向主溝30のエッジ部35やラグ溝40のエッジ部45付近で接地圧が高くなり易くなるが、高い接地圧で路面に接地した場合、路面上の砂が付着し易くなる。これに対し、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、陸部20の周方向主溝30のエッジ部35とラグ溝40のエッジ部45との交差部25に、面取り部50が形成されているため、陸部20において接地圧が高くなり易い部分の接地圧を抑えることができる。これにより、踏面3への砂の付着を低減することができ、砂が飛び散ることを抑制することができる。
また、陸部20におけるタイヤ周方向に隣り合うラグ溝40によって区画される部分における、踏込側に位置するラグ溝40のエッジ部45と周方向主溝30のエッジ部35との交差部25には、踏込側面取り部52が形成されているため、空気入りタイヤ1の回転時に踏面3における踏込側に位置するラグ溝40のエッジ部45付近が接地した際に、路面上の砂を、踏込側面取り部52によって周方向主溝30側に押し退けることができる。これにより、踏面3への砂の付着を低減することができ、砂が飛び散ることを抑制することができる。
また、陸部20におけるタイヤ周方向に隣り合うラグ溝40によって区画される部分における、蹴出側に位置するラグ溝40のエッジ部45と周方向主溝30のエッジ部35との交差部25には、蹴出側面取り部51が形成されているため、陸部20が巻き上げる砂の巻き上げ量を少なくすることができる。つまり、空気入りタイヤ1に駆動力が作用している状態では、踏面3が接地している陸部20は、陸部20におけるタイヤ径方向内側寄りの部分に対して、踏面3側がタイヤ回転方向における後着側に位置する方向に変形した状態になっており、踏面3が路面から離れる際に、変形した形状から元の形状に急激に戻る。具体的には、駆動力が作用しながら踏面3が接地している陸部20は、踏面3における蹴出側に位置するラグ溝40のエッジ部45付近が路面から離れた際に、陸部20における当該エッジ部45付近がタイヤ回転方向における先着方向に急激に移動することにより、陸部20の変形が元に戻る。
その際に、路面上の砂は、変形している陸部20が元の形状に戻る際における陸部20の形状の変化により、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近に位置する砂が巻き上げられ易くなるが、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、蹴出側のラグ溝40のエッジ部45と周方向主溝30のエッジ部35との交差部25に蹴出側面取り部51が形成されている。これにより、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近の接地面積を小さくすることができ、蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で陸部20が巻き上げる砂の量を少なくすることができる。
また、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、蹴出側面取り部端部幅W1と、踏込側面取り部端部幅W2との関係が、W2<W1を満たすため、陸部20が巻き上げる砂の巻き上げ量をより確実に少なくすることができる。つまり、蹴出側面取り部端部幅W1と踏込側面取り部端部幅W2との関係が、W2≧W1である場合は、蹴出側面取り部端部幅W1の大きさを確保し難くなるため、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近の接地面積を小さくし難くなる。この場合、空気入りタイヤ1の回転時に、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で巻き上げる砂の量を少なくし難くなる。
これに対し、蹴出側面取り部端部幅W1と、踏込側面取り部端部幅W2との関係が、W2<W1を満たす場合は、蹴出側面取り部端部幅W1の大きさをより確実に確保することができ、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近の接地面積を小さくすることができる。これにより、空気入りタイヤ1の回転時に、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で巻き上げる砂の量を、より確実に少なくすることができる。
また、蹴出側面取り部端部幅W1と踏込側面取り部端部幅W2の関係は、1.05≦(W1/W2)≦3.5の範囲内であるため、踏面3への砂の付着を低減すると共に、空気入りタイヤ1の回転時に巻き上げる砂の量を少なくすることができる。つまり、蹴出側面取り部端部幅W1と踏込側面取り部端部幅W2の関係が、(W1/W2)<1.05である場合は、蹴出側面取り部端部幅W1が小さ過ぎるため、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近の接地面積を小さくし難くなる。この場合、空気入りタイヤ1の回転時に、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で巻き上げる砂の量を少なくし難くなる。また、蹴出側面取り部端部幅W1と踏込側面取り部端部幅W2の関係が、(W1/W2)>3.5である場合は、踏込側面取り部端部幅W2が小さ過ぎるため、踏面3における踏込側に位置するラグ溝40のエッジ部45付近が接地した場合でも、路面上の砂を、踏込側面取り部52によって周方向主溝30側に押し退け難くなる。
これに対し、蹴出側面取り部端部幅W1と踏込側面取り部端部幅W2の関係が、1.05≦(W1/W2)≦3.5の範囲内である場合は、蹴出側面取り部端部幅W1と踏込側面取り部端部幅W2とを、いずれも適切な大きさにすることができる。これにより、陸部20における踏込側のラグ溝40のエッジ部45付近では、踏込側面取り部52によって路面上の砂を周方向主溝30側に押し退けることにより、踏面3への砂の付着を低減することができ、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近では、空気入りタイヤ1の回転時に巻き上げる砂の量を少なくすることができる。これらの結果、車両の走行時における砂はねを低減することができ、砂はね音を抑制することができる。
また、蹴出側面取り部51は、ラグ溝40同士のピッチPと蹴出側面取り部端部幅W1との関係が、0.02≦(W1/P)≦0.3の範囲内であるため、陸部20の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、空気入りタイヤ1の回転時に巻き上げる砂の量を少なくすることができる。つまり、ラグ溝40同士のピッチPと蹴出側面取り部端部幅W1との関係が、(W1/P)<0.02である場合は、ラグ溝40のピッチPに対して蹴出側面取り部端部幅W1が小さ過ぎるため、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近の接地面積を小さくし難くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1の回転時に、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で巻き上げる砂の量を少なくし難くなる虞がある。また、ラグ溝40同士のピッチPと蹴出側面取り部端部幅W1との関係が、(W1/P)>0.3である場合は、ラグ溝40のピッチPに対して蹴出側面取り部端部幅W1が大き過ぎるため、陸部20の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20の剛性が低いことに起因して、操縦安定性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、ラグ溝40同士のピッチPと蹴出側面取り部端部幅W1との関係が、0.02≦(W1/P)≦0.3の範囲内である場合は、陸部20の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、空気入りタイヤ1の回転時に巻き上げる砂の量を少なくすることができる。この結果、操縦安定性の低下を抑えつつ、砂はね音を抑制することができる。
また、踏込側面取り部52は、ラグ溝40同士のピッチPと踏込側面取り部端部幅W2との関係が、0.01≦(W2/P)≦0.25の範囲内であるため、陸部20の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、路面上の砂を周方向主溝30側に押し退けることができる。つまり、ラグ溝40同士のピッチPと踏込側面取り部端部幅W2との関係が、(W2/P)<0.01である場合は、ラグ溝40のピッチPに対して踏込側面取り部端部幅W2が小さ過ぎるため、踏面3における踏込側に位置するラグ溝40のエッジ部45付近が接地した場合でも、路面上の砂を踏込側面取り部52によって周方向主溝30側に押し退け難くなる虞がある。また、ラグ溝40同士のピッチPと踏込側面取り部端部幅W2との関係が、(W2/P)>0.25である場合は、ラグ溝40のピッチPに対して踏込側面取り部端部幅W2が大き過ぎるため、陸部20の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20の剛性が低いことに起因して、操縦安定性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、ラグ溝40同士のピッチPと踏込側面取り部端部幅W2との関係が、0.01≦(W2/P)≦0.25の範囲内である場合は、陸部20の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、踏込側面取り部52によって路面上の砂を周方向主溝30側に押し退け、踏面3への砂の付着を低減することができる。この結果、操縦安定性の低下を抑えつつ、砂はね音を抑制することができる。
また、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、蹴出側面取り部51のタイヤ径方向における深さH1と、踏込側面取り部52のタイヤ径方向における深さH2との関係が、H2<H1を満たすため、陸部20が巻き上げる砂の巻き上げ量をより効果的に少なくすることができる。つまり、蹴出側面取り部51の深さH1と踏込側面取り部52の深さH2との関係が、H2≧H1である場合は、蹴出側面取り部51の深さH1を確保し難くなるため、蹴出側面取り部51を形成しても、空気入りタイヤ1の回転時に陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で巻き上げる砂の量を、効果的に少なくし難くなる虞がある。
これに対し、蹴出側面取り部51の深さH1と踏込側面取り部52の深さH2との関係が、H2<H1を満たす場合は、蹴出側面取り部51の深さH1をより確実に確保することができ、空気入りタイヤ1の回転時に陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で巻き上げる砂の量を、より効果的に少なくすることができる。
また、蹴出側面取り部51のタイヤ径方向における深さH1と、踏込側面取り部52のタイヤ径方向における深さH2との関係は、1.05≦(H1/H2)≦3.5の範囲内であるため、踏面3への砂の付着を低減すると共に、空気入りタイヤ1の回転時に巻き上げる砂の量を少なくすることができる。つまり、蹴出側面取り部51の深さH1と踏込側面取り部52の深さH2との関係が、(H1/H2)<1.05である場合は、蹴出側面取り部51の深さH1が浅過ぎるため、蹴出側面取り部51を形成しても、空気入りタイヤ1の回転時に陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で巻き上げる砂の量を効果的に少なくし難くなる虞がある。また、蹴出側面取り部51の深さH1と踏込側面取り部52の深さH2との関係が、(H1/H2)>3.5である場合は、踏込側面取り部52の深さH2が浅過ぎるため、踏面3における踏込側に位置するラグ溝40のエッジ部45付近が接地した場合でも、路面上の砂を踏込側面取り部52によって周方向主溝30側に押し退け難くなる。
これに対し、蹴出側面取り部51の深さH1と踏込側面取り部52の深さH2との関係が、1.05≦(H1/H2)≦3.5の範囲内である場合は、蹴出側面取り部51の深さH1と踏込側面取り部52の深さH2とを、いずれも適切な大きさにすることができる。これにより、陸部20における踏込側のラグ溝40のエッジ部45付近では、踏込側面取り部52によって路面上の砂を周方向主溝30側に押し退けることにより、踏面3への砂の付着を低減することができ、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近では、空気入りタイヤ1の回転時に巻き上げる砂の量を、効果的に少なくすることができる。これらの結果、車両の走行時における砂はねを低減することができ、砂はね音を抑制することができる。
また、ラグ溝40は、タイヤ径方向に対する溝壁41の角度θが、1°以上10°以下の範囲内であるため、排水性を確保しつつ、面取り部50によって体積が小さくなった陸部20の剛性を高めることができる。つまり、タイヤ径方向に対するラグ溝40の溝壁41の角度θが、1°未満である場合は、溝壁41の傾斜角度θが小さ過ぎるため、溝壁41を傾斜させていないのと実質的に同等になり、陸部20の剛性を効果的に高め難くなる虞がある。また、タイヤ径方向に対するラグ溝40の溝壁41の角度θが、10°より大きい場合は、溝壁41の傾斜角度θが大き過ぎるため、ラグ溝40の溝底42寄りの位置での溝幅が狭くなり過ぎる虞があり、ラグ溝40での排水性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、タイヤ径方向に対するラグ溝40の溝壁41の角度θが、1°以上10°以下の範囲内である場合は、面取り部50を形成することにより体積が小さくなり、剛性が低くなり易い陸部20の剛性を、ラグ溝40の溝幅が狭くなり過ぎることを抑制しつつ効果的に高めることができる。この結果、排水性と操縦安定性とを確保しつつ、砂はね音を抑制することができる。
[実施形態2]
実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と略同様の構成であるが、面取り部50が、陸部20のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の周方向主溝30同士の間に亘って形成される点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図5は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1が有する陸部20の平面模式図である。実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と同様に、陸部20には、周方向主溝30のエッジ部35とラグ溝40のエッジ部45との交差部25に、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とが形成されており、蹴出側面取り部端部幅W1は、踏込側面取り部端部幅W2よりも大きくなっている。
また、実施形態2においても、センター陸部21及びセカンド陸部22は、タイヤ幅方向における両側が周方向主溝30によって区画されており、センター陸部21やセカンド陸部22を区画するラグ溝40は、これらの陸部20のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の周方向主溝30に開口している。これにより、センター陸部21及びセカンド陸部22は、ブロック形状の陸部20になっている。実施形態2では、このようにブロック形状で形成される陸部20に形成される面取り部50は、陸部20のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の周方向主溝30同士の間に亘って形成されている。つまり、実施形態2は、ブロック形状で形成される陸部20に形成される面取り部50は、陸部20のタイヤ幅方向に一端側から他端側にかけて連通し、陸部20のタイヤ幅方向における全域に亘って形成されている。
具体的には、蹴出側面取り部51は、タイヤ回転方向における陸部20の蹴出側を区画するラグ溝40のエッジ部45に沿って、陸部20のタイヤ幅方向における全域に亘って形成されている。同様に、踏込側面取り部52は、タイヤ回転方向における陸部20の踏込側を区画するラグ溝40のエッジ部45に沿って、陸部20のタイヤ幅方向における全域に亘って形成されている。
このように、陸部20のタイヤ幅方向における全域に亘って形成される面取り部50は、タイヤ幅方向における位置によってタイヤ周方向における幅が異なっており、タイヤ幅方向における両端部よりも、タイヤ幅方向における中央付近の方が、タイヤ周方向における幅が狭くなっている。このため、蹴出側面取り部51は、蹴出側面取り部51のタイヤ幅方向における中央の位置でのタイヤ周方向における幅である蹴出側面取り部中央部幅W1bと、蹴出側面取り部端部幅W1との関係が、W1b<W1になっている。同様に、踏込側面取り部52は、踏込側面取り部52のタイヤ幅方向における中央の位置でのタイヤ周方向における幅である踏込側面取り部中央部幅W2bと、踏込側面取り部端部幅W2との関係が、W2b<W2になっている。
さらに、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、蹴出側面取り部端部幅W1及び踏込側面取り部端部幅W2と同様に、蹴出側面取り部中央部幅W1bと踏込側面取り部中央部幅W2bとの大きさが異なっている。つまり、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、蹴出側面取り部中央部幅W1bと踏込側面取り部中央部幅W2bとの関係が、1.05≦(W1b/W2b)≦3.5の範囲内になっている。
実施形態2に係る空気入りタイヤ1では、面取り部50が、陸部20のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の周方向主溝30同士の間に亘って形成されるため、陸部20における面取り部50が形成される範囲を大きくすることができる。これにより、タイヤ回転方向における陸部20の踏込側では、路面上の砂を、踏込側面取り部52によってより確実に周方向主溝30側に押し退けることができ、踏面3への砂の付着をより確実に低減することができる。また、タイヤ回転方向における陸部20の蹴出側では、蹴出側面取り部51によってより確実に接地面積を小さくすることができるため、蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で陸部20が巻き上げる砂の量を、より確実に少なくすることができる。この結果、より確実に砂はね音を抑制することができる。
また、蹴出側面取り部51は、蹴出側面取り部中央部幅W1bと蹴出側面取り部端部幅W1との関係が、W1b<W1になっているため、路面上の砂を、陸部20のタイヤ幅方向における中央寄りの位置から周方向主溝30側に向けて、踏込側面取り部52によってより確実に押し退けることができる。これにより、踏面3への砂の付着をより確実に低減することができる。また、踏込側面取り部52は、踏込側面取り部中央部幅W2bと踏込側面取り部端部幅W2との関係が、W2b<W2になっているため、タイヤの回転時に陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で砂を巻き上げる際に、陸部20のタイヤ幅方向における両側に砂を向かわせ易くすることができる。これにより、砂が巻き上げられた際でも、砂が車両のタイヤハウスに当たることを抑制することができる。これらの結果、より確実に砂はね音を抑制することができる。
また、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、蹴出側面取り部中央部幅W1bと踏込側面取り部中央部幅W2bとの関係が、1.05≦(W1b/W2b)≦3.5の範囲内であるため、踏面3への砂の付着をより確実に低減すると共に、空気入りタイヤ1の回転時に巻き上げる砂の量を少なくすることができる。つまり、蹴出側面取り部中央部幅W1bと踏込側面取り部中央部幅W2bとの関係が、(W1b/W2b)<1.05である場合は、蹴出側面取り部中央部幅W1bが小さ過ぎるため、蹴出側面取り部51を2本の周方向主溝30同士の間に亘って形成しても、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近の接地面積を効果的に小さくし難くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1の回転時に、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で巻き上げる砂の量を効果的に少なくし難くなる虞がある。また、蹴出側面取り部中央部幅W1bと踏込側面取り部中央部幅W2bとの関係が、(W1b/W2b)>3.5である場合は、踏込側面取り部中央部幅W2bが小さ過ぎるため、踏込側面取り部52を2本の周方向主溝30同士の間に亘って形成しても、踏面3における踏込側に位置するラグ溝40のエッジ部45付近が接地した際に、路面上の砂を、踏込側面取り部52によって周方向主溝30側に効果的に押し退け難くなる虞がある。
これに対し、蹴出側面取り部中央部幅W1bと踏込側面取り部中央部幅W2bとの関係が、1.05≦(W1b/W2b)≦3.5の範囲内である場合は、蹴出側面取り部中央部幅W1bと踏込側面取り部中央部幅W2bとを、いずれも適切な大きさにすることができる。これにより、陸部20における踏込側のラグ溝40のエッジ部45付近では、2本の周方向主溝30同士の間に亘って形成される踏込側面取り部52によって路面上の砂を周方向主溝30側に効果的に押し退けることができ、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近では、空気入りタイヤ1の回転時に巻き上げる砂の量を効果的に少なくすることができる。これらの結果、車両の走行時における砂はねを低減することができ、砂はね音を抑制することができる。
[実施形態3]
実施形態3に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と略同様の構成であるが、面取り部50が、ラグ溝40のエッジ部45の長さ方向における両端のうち、一端側にのみ形成される点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図6は、実施形態3に係る空気入りタイヤ1が有する陸部20の平面模式図である。実施形態3に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と同様に、陸部20には、周方向主溝30のエッジ部35とラグ溝40のエッジ部45との交差部25に、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とが形成されており、蹴出側面取り部端部幅W1は、踏込側面取り部端部幅W2よりも大きくなっている。また、実施形態3においても、センター陸部21及びセカンド陸部22は、タイヤ幅方向における両側が周方向主溝30によって区画され、タイヤ周方向における両側がラグ溝40によって区画された、ブロック形状の陸部20になっている。
また、実施形態3に係る空気入りタイヤ1では、陸部20を区画するラグ溝40は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜している。また、陸部20のタイヤ周方向における両側を区画する2本のラグ溝40は、略平行になっている。このため、陸部20は、平面視における形状が平行四辺形状の形状になっている。
このように形成される陸部20に形成される面取り部50は、1つのラグ溝40のエッジ部45のタイヤ幅方向両側に位置する2本の周方向主溝30のエッジ部35との2箇所の交差部25のうち、一方の交差部25に形成されている。具体的には、面取り部50は、1つのラグ溝40のエッジ部45のタイヤ幅方向両側に位置する2箇所の交差部25のうち、タイヤ周方向における相対的な位置が、ラグ溝40を挟んでタイヤ周方向に隣り合う陸部20側に位置する側の交差部25に形成されている。これに対し、陸部20における1つのラグ溝40のエッジ部45のタイヤ幅方向両側に位置する2箇所の交差部25のうち、面取り部50が形成されている側の交差部25の反対側の交差部25には、面取り部50が形成されていない。
つまり、実施形態3では、面取り部50は、1つのラグ溝40のエッジ部45のタイヤ幅方向両側に位置する2箇所の交差部25のうち、陸部20のタイヤ周方向における端部に位置する側の交差部25にのみ形成され、他方の交差部25には形成されていない。
ここで、ラグ溝40は、タイヤ幅方向に対して傾斜しているため、ラグ溝40の溝幅方向における両側のエッジ部45では、エッジ部45の長さ方向の両側に位置する交差部25のうち、陸部20のタイヤ周方向における端部に位置する側の交差部25がタイヤ幅方向において位置する側が、ラグ溝40の溝幅方向における両側のエッジ部45同士で、互いに異なる側になっている。即ち、ラグ溝40の溝幅方向における両側のエッジ部45では、タイヤ幅方向において面取り部50が形成される交差部25が位置する側が、一方のエッジ部45と他方のエッジ部45とで互いに異なっている。
また、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、ラグ溝40の溝幅方向における両側のエッジ部45のうち、互いに異なるエッジ部45側に形成されている。このため、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、ラグ溝40の溝幅方向における両側のエッジ部45のそれぞれの長さ方向の両側に位置する交差部25のうち、タイヤ幅方向において互いに異なる側に位置する交差部25にそれぞれ形成されている。換言すると、ラグ溝40の溝幅方向における両側に形成される蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、陸部20を区画する2本の周方向主溝30のうち、互いに異なる周方向主溝30側の交差部25に、それぞれ形成されている。
実施形態3に係る空気入りタイヤ1では、ラグ溝40はタイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜して形成され、面取り部50は、1つのラグ溝40のエッジ部45の長さ方向における両側の交差部25のうち、タイヤ周方向における相対的な位置が、ラグ溝40を挟んでタイヤ周方向に隣り合う陸部20側に位置する側の交差部25に形成されるため、より確実に砂はね音を抑制することができる。つまり、踏込側面取り部52は、陸部20におけるタイヤ回転方向の最も先着側に位置するため、空気入りタイヤ1が回転しながら陸部20が接地する際に、路面上の砂を、踏込側面取り部52によって最初に周方向主溝30側に押し退けることができる。これにより、踏面3への砂の付着をより確実に低減することができる。また、蹴出側面取り部51は、陸部20におけるタイヤ回転方向の最も後着側に位置するため、接地している陸部20が、空気入りタイヤ1の回転に伴って路面から離れる際における砂の巻き上げを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に砂はね音を抑制することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態2では、面取り部50は、周方向主溝30のエッジ部35の位置でのタイヤ周方向における幅W1、W2と、タイヤ幅方向における中央の位置でのタイヤ周方向における幅W1b、W2bとの相対関係を規定しているが、面取り部50は、これ以外の位置での相対関係が、所定の範囲内であってもよい。図7は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、面取り部50の幅についての説明図である。蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、例えば、図7に示すように、陸部20のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の周方向主溝30同士の間に亘って形成され、タイヤ周方向における幅が、いずれも周方向主溝30のエッジ部35以外の位置で最も小さくなっていてもよい。この場合、蹴出側面取り部51のタイヤ周方向における幅が最も小さい位置での幅である蹴出側面取り部最小幅W1cと、踏込側面取り部52のタイヤ周方向における幅が最も小さい位置での幅である踏込側面取り部最小幅W2cとの関係が、1.05≦(W1c/W2c)≦3.5の範囲内であるのが好ましい。
つまり、実施形態2では、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、各面取り部50のタイヤ幅方向における中央の位置でのタイヤ周方向における幅である蹴出側面取り部中央部幅W1bと、踏込側面取り部中央部幅W2bとの関係が規定されているが、実施形態3で規定する蹴出側面取り部最小幅W1cと踏込側面取り部最小幅W2cとのタイヤ幅方向における位置は、各面取り部50のタイヤ幅方向における中央の位置以外であってもよい。
これらのように、蹴出側面取り部51の蹴出側面取り部最小幅W1cと、踏込側面取り部52の踏込側面取り部最小幅W2cとの関係を、1.05≦(W1c/W2c)≦3.5の範囲内にすることにより、踏面3への砂の付着をより確実に低減すると共に、空気入りタイヤ1の回転時に巻き上げる砂の量を少なくすることができる。つまり、蹴出側面取り部最小幅W1cと踏込側面取り部最小幅W2cとの関係が、(W1c/W2c)<1.05である場合は、蹴出側面取り部最小幅W1cが小さ過ぎるため、蹴出側面取り部51を2本の周方向主溝30同士の間に亘って形成しても、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近の接地面積を効果的に小さくし難くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1の回転時に、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で巻き上げる砂の量を効果的に少なくし難くなる虞がある。また、蹴出側面取り部最小幅W1cと踏込側面取り部最小幅W2cとの関係が、(W1c/W2c)>3.5である場合は、踏込側面取り部最小幅W2cが小さ過ぎるため、踏込側面取り部52を2本の周方向主溝30同士の間に亘って形成しても、踏面3における踏込側に位置するラグ溝40のエッジ部45付近が接地した際に、路面上の砂を、踏込側面取り部52によって周方向主溝30側に効果的に押し退け難くなる虞がある。
これに対し、蹴出側面取り部最小幅W1cと踏込側面取り部最小幅W2cとの関係が、1.05≦(W1c/W2c)≦3.5の範囲内である場合は、蹴出側面取り部最小幅W1cと踏込側面取り部最小幅W2cとを、いずれも適切な大きさにすることができる。これにより、陸部20における踏込側のラグ溝40のエッジ部45付近では、2本の周方向主溝30同士の間に亘って形成される踏込側面取り部52によって路面上の砂を周方向主溝30側に効果的に押し退けることができ、陸部20における蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近では、空気入りタイヤ1の回転時に巻き上げる砂の量を効果的に少なくすることができる。これらの結果、車両の走行時における砂はねを低減することができ、砂はね音を抑制することができる。
また、上述した実施形態1では、面取り部50は、タイヤ幅方向における幅とタイヤ周方向における幅とが同程度になっているが、面取り部50は、タイヤ幅方向における幅とタイヤ周方向における幅とで大きく異なっていてもよい。図8は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、一端が陸部20内で終端するラグ溝40に形成される面取り部50についての説明図である。一端が周方向主溝30に開口し、他端が陸部20内で終端するラグ溝40のエッジ部45と周方向主溝30のエッジ部35との交差部25に形成される面取り部50は、例えば、図8に示すように、面取り部50のタイヤ幅方向における幅が、面取り部50のタイヤ周方向における幅より大きくなっていてもよい。この場合、面取り部50は、周方向主溝30のエッジ部35とラグ溝40のエッジ部45との交差部25からのタイヤ幅方向における幅WCと、ラグ溝40のタイヤ幅方向における幅WLとの関係が、0.55≦(WC/WL)≦1.0の範囲内であるのが好ましい。
なお、面取り部50のタイヤ幅方向における幅WCは、面取り部50同士で同じ大きさででもよく、面取り部50同士で大きさが異なっていてもよい。また、ラグ溝40の一端が周方向主溝30に開口し、他端が陸部20内で終端する場合は、ラグ溝40のタイヤ幅方向における幅WLは、陸部20のタイヤ幅方向における接地幅WBに対して、0.3≦(WL/WB)≦0.7の範囲内であるのが好ましい。
また、図8に示すように、面取り部50のタイヤ幅方向における幅が、面取り部50のタイヤ周方向における幅より大きくなって形成される場合は、面取り部50のタイヤ周方向における幅は、ラグ溝40のタイヤ幅方向における中央の位置の大きさを用いて規定するのが好ましい。つまり、この場合、蹴出側面取り部51は、蹴出側面取り部51におけるラグ溝40のタイヤ幅方向における中央の位置でのタイヤ周方向における幅である蹴出側面取り部ラグ溝中央位置幅W1dと、蹴出側面取り部端部幅W1との関係が、W1d<W1になっているのが好ましい。同様に、踏込側面取り部52は、踏込側面取り部52におけるラグ溝40のタイヤ幅方向における中央の位置でのタイヤ周方向における幅である踏込側面取り部ラグ溝中央位置幅W2dと、踏込側面取り部端部幅W2との関係が、W2d<W2になっているのが好ましい。また、蹴出側面取り部51と踏込側面取り部52とは、蹴出側面取り部ラグ溝中央位置幅W1dと踏込側面取り部ラグ溝中央位置幅W2dとの関係が、1.05≦(W1d/W2d)≦3.5の範囲内であるのが好ましい。
一方の端部が陸部20内で終端するラグ溝40のエッジ部45と周方向主溝30のエッジ部35との交差部25に形成される面取り部50の、交差部25からのタイヤ幅方向における幅WCを、ラグ溝40のタイヤ幅方向における幅WLに対して、0.55≦(WC/WL)≦1.0の範囲内にすることにより、ラグ溝40が陸部20内で終端する場合でも、陸部20における面取り部50が形成される範囲を大きくすることができる。これにより、タイヤ回転方向における陸部20の踏込側では、路面上の砂を、踏込側面取り部52によってより確実に周方向主溝30側に押し退けることができ、踏面3への砂の付着をより確実に低減することができる。また、タイヤ回転方向における陸部20の蹴出側では、蹴出側面取り部51によってより確実に接地面積を小さくすることができるため、蹴出側のラグ溝40のエッジ部45付近で陸部20が巻き上げる砂の量を、より確実に少なくすることができる。この結果、ラグ溝40の一方の端部が陸部20内で終端する場合でも、より確実に砂はね音を抑制することができる。
また、上述した実施形態1では、面取り部50は、複数の陸部20の全てに形成されているが、面取り部50は、全ての陸部20に形成されていなくてもよい。面取り部50は、タイヤ幅方向における異なる位置に配置される複数の陸部20のうち、少なくともセンター陸部21を区画する周方向主溝30とラグ溝40との交差部25に形成されていればよい。この場合、センター陸部21は、タイヤ赤道面CL上に位置していなくてもよく、複数の陸部20のうち、タイヤ赤道面CLに最も近い陸部20であればよい。つまり、面取り部50は、タイヤ赤道面CLに最も近い陸部20を区画する周方向主溝30とラグ溝40との交差部25に形成されていればよい。タイヤ赤道面CLに最も近い陸部20は、ショルダー部5寄りの陸部20と比較して接地圧が高いため、接地圧が高い陸部20に面取り部50を形成することにより、より確実に踏面3への砂の付着を低減することができ、また、陸部20が巻き上げる砂の量を少なくすることができる。この結果、より確実に砂はね音を抑制することができる。
また、上述した実施形態1では、センター陸部21とセカンド陸部22は、ブロック形状の陸部20として形成され、ショルダー陸部23は、リブ形状の陸部20として形成されているが、陸部20は、これ以外の形態で形成されていてもよい。例えば、センター陸部21やセカンド陸部22は、ラグ溝40が陸部20内で終端することによりリブ形状の陸部20として形成されていてもよく、ショルダー陸部23は、ラグ溝40が陸部20のタイヤ幅方向における両側に亘って形成されることによりブロック形状の陸部20として形成されていてもよい。
また、上述した実施形態1では、周方向主溝30は4本が形成されており、これにより、陸部20は、5列がタイヤ幅方向に並んで配置されているが、周方向主溝30や陸部20は、これ以外の数で配置されていてもよい。陸部20の数に関わらず、周方向主溝30のエッジ部35とラグ溝40のエッジ部45との交差部25に面取り部50が形成され、蹴出側面取り部51の蹴出側面取り部端部幅W1と、踏込側面取り部52の踏込側面取り部端部幅W2との関係が、W2<W1を満たし、且つ、1.05≦(W1/W2)≦3.5の範囲内であれば陸部20の構成は問わない。
[実施例]
図9A、図9Bは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能評価試験について説明する。性能評価試験は、砂はね音についての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが215/45R18 89Wサイズの空気入りタイヤ1を、リムサイズ18×7JのJATMA標準のリムホイールにリム組みし、空気圧を250kPaに調整して、排気量2000ccクラスの乗用車の評価車両に装着して評価車両で走行をすることにより行った。
砂はね音の試験方法は、新品の試験タイヤを、試験車両にて乾燥路面において新品時から100kmの慣らし走行を実施した後、延長50mで幅3mの乾燥路面の試験路に対してエアブローの実施後に砂を撒き、ほうきにて砂をまんべんなくならして試験車両で試験路を走行し、走行時における砂はね音を車内で測定した。評価方法は、周回路のテストコースを2周した後に1回目の砂はね音を計測し、また、周回路を1周回った後、2回目の砂はね音を計測し、さらに、周回路を1周回った後、3回目の砂はね音を計測し、3回計測した砂はね音を平均化し、平均化した砂はね音の逆数を後述する従来例を100とする指数で表した。この数値が大きいほど砂はね音が小さく、砂はね音が発生し難いことを示している。
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~16と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1、2との19種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例は、陸部20の周方向主溝30のエッジ部35とラグ溝40のエッジ部45との交差部25に面取り部50が形成されていない。また、比較例1、2は、陸部20の周方向主溝30のエッジ部35とラグ溝40のエッジ部45との交差部25に面取り部50が形成されているものの、蹴出側面取り部端部幅W1と踏込側面取り部端部幅W2との関係が、1.05≦(W1/W2)≦3.5の範囲内になっていない。
これらに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~16は、全て陸部20の周方向主溝30のエッジ部35とラグ溝40のエッジ部45との交差部25に面取り部50が形成され、蹴出側面取り部端部幅W1と踏込側面取り部端部幅W2との関係が、1.05≦(W1/W2)≦3.5の範囲内になっている。さらに、実施例1~16に係る空気入りタイヤ1は、面取り部50が周方向主溝30同士の間に亘って形成されているか否かや、蹴出側面取り部中央部幅W1bと踏込側面取り部中央部幅W2bとの比(W1b/W2b)、蹴出側面取り部51の深さH1と踏込側面取り部52の深さH2との比(H1/H2)、ラグ溝40の溝壁41の角度θが、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図9A、図9Bに示すように、実施例1~16に係る空気入りタイヤ1は、従来例や比較例1、2に対して、砂はね音を低下させることができることが分かった。つまり、実施例1~16に係る空気入りタイヤ1は、砂はね音を抑制することができる。