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JP7225282B2 - 正極活物質および該正極活物質を備えたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

正極活物質および該正極活物質を備えたリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、正極活物質と、該正極活物質を備えたリチウムイオン二次電池に関する。
近年、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
リチウムイオン二次電池の正極には、一般的にリチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極活物質が備えられている。正極活物質としては、一般的に、リチウム遷移金属酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物)が用いられており、コスト削減の観点から、かかる遷移金属として資源量が豊富な遷移金属の使用が検討されている。その代表的な遷移金属として、マンガンが挙げられる。所定の元素比のリチウムマンガン複合酸化物は、典型的な結晶構造の一種として知られるスピネル型結晶構造を有しており、良好なリチウムイオン拡散性を発揮することができる。しかし、その一方で、充放電の繰り返し(特に、高温環境下での充放電の繰り返し)等においてマンガン原子が溶出し易いため、電池寿命が低下し易い課題がある。そこで、特許文献1には、立方晶のスピネル型結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物の表面に、リン酸リチウムおよび立方晶の金属酸化物を備える正極材料(正極活物質)が開示されている。かかる構成によれば、マンガン原子の溶出を抑制できるため、二次電池の長寿命化が可能となる。
特開2010-123466号公報
しかしながら、本発明者の検討によると、特許文献1に開示される技術では、リチウムマンガン複合酸化物からなる粒子の粒子径が十分に増大しないため、粒子の比表面積が増大する。これにより、電解質と粒子との接触面積が増大するため、マンガン原子が溶出し易くなり、マンガン原子の溶出抑制効果が不十分となる。この結果、サイクル特性(例えば、容量維持率および抵抗増加率の低減率等)の向上効果が不十分となるため、サイクル特性には改善の余地がある。
そこで、本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、優れたサイクル特性を実現するスピネル型構造を有する正極活物質を提供することを主な目的とする。また、かかる正極活物質を備えたリチウムイオン二次電池を提供することを他の目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するためリチウムマンガン複合酸化物を含むスピネル型結晶構造の粒子の平均粒子径に着目した。その結果、かかる粒子の平均粒子径を従来よりも大きい所定の範囲に調整し、さらに、少なくともニッケルまたはコバルトのいずれかを含むリン含有リチウム遷移金属複合酸化物粒子を混合して加熱処理を行うことで、サイクル特性が向上することを見出した。また、サイクル特性に加え、初期抵抗が低減することを見出した。
即ち、ここで開示される正極活物質は、リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質であって、第1の粒子が複数集合した第2の粒子を含み、上記第1の粒子のSEM像に基づく平均粒子径は5μm以上10μm以下であり、上記第2の粒子のSEM像に基づく平均粒子径は12μm以上22μm以下であり、上記第1の粒子は、少なくともリチウム原子とマンガン原子とを含有するスピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物を含み、上記第2の粒子の表面には、ニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方の遷移金属原子を備えたリン含有リチウム遷移金属複合酸化物で構成される第3の粒子が存在しており、上記正極活物質を構成する化合物全体に対する上記第3の粒子を構成する上記リン含有リチウム遷移金属複合酸化物の割合は0.3mol%以上5mol%以下であり、上記第2の粒子の表面から3μm以下の表層部には、上記遷移金属原子が偏在している。
かかる構成によれば、第1の粒子の比表面積が小さくなるため、電解質とマンガン原子との接触面積が減少し、マンガン原子が溶出し難くなる。また、第2の粒子の表層部および第3の粒子にニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方が存在することで、これらの原子がマンガン原子よりも優先的に溶出するため、マンガン原子の溶出を抑制することができる。さらに、ニッケル原子およびコバルト原子の少なくとも一方が偏在する第2の粒子の表層部は、充放電に伴う膨張収縮による体積変化が第2の粒子の内部よりも小さくなるため、充放電による粒子の割れが生じにくくなる。これにより、優れたサイクル特性を実現することができる。
また、ここに開示される正極活物質の好ましい一態様では、上記正極活物質を構成する化合物全体に対する上記第3の粒子を構成する上記リン含有リチウム遷移金属複合酸化物の割合は、0.3mol%以上3mol%以下である。かかる構成によれば、より優れたサイクル特性を実現することができる。
また、ここに開示される正極活物質の好ましい一態様では、上記遷移金属原子が偏在する上記第2の粒子の表層部は、上記第2の粒子の表面から2μm以下の範囲である。かかる構成によれば、さらに優れたサイクル特性を実現することができる。
また、ここに開示される正極活物質の好ましい一態様では、上記リチウムマンガン複合酸化物は、少なくともアルミニウム原子およびマグネシウム原子のどちらか一方を備える。かかる構成によれば、より高いレベルで優れたサイクル特性を実現することができる。
また、ここに開示される正極活物質の好ましい一態様では、上記リン含有リチウム遷移金属複合酸化物として、LiMePO(MeはNiおよびCoの少なくともどちらか一方を含む)を含む。かかる構成によれば、さらに高いレベルで優れたサイクル特性を実現することができる。
また、上記課題を解決するべく、ここで開示される正極活物質を備えたリチウムイオン二次電池が提供される。即ち、ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、非水電解質と、を備えており、上記正極は、正極活物質層を備え、該正極活物質層は、ここで開示される正極活物質を備えている。
かかる構成によれば、優れたサイクル特性が付与されたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す断面図である。 一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式分解図である。 一実施形態に係る正極活物質粒子の構造を模式的に示す斜視図である。 一実施形態に係る正極活物質粒子を構成する第2の粒子の構造を模式的に示す斜視図である。
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
また、本明細書において数値範囲をA~B(ここでA,Bは任意の数値)と記載している場合は、一般的な解釈と同様であり、A以上B以下を意味するものである。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスをいい、いわゆる蓄電池、および電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。また、本明細書において「活物質」とは、電荷担体を可逆的に吸蔵・放出する材料をいう。以下、ここで開示される正極活物質を備えたリチウムイオン二次電池の一実施形態について説明する。
図1に示すリチウムイオン二次電池100は、電池ケース30の内部に、扁平形状の電極体(捲回電極体)20と、非水電解質(図示せず)とが収容されることで構築される角型の密閉型電池である。電池ケース30には、外部接続用の正極端子42および負極端子44が備えられている。また、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36が設けられている。さらに、電池ケース30には、非水電解質を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。電池ケース30の材質は、高強度であり軽量で熱伝導性が良い金属材料が好ましく、このような金属材料として、例えば、アルミニウムやスチール等が挙げられる。
電極体20は、図1および図2に示されるように、長尺シート状の正極50と、長尺シート状の負極60とが、2枚の長尺シート状のセパレータ70を介して積層され、捲回軸を中心として捲回された捲回電極体であってよい。正極50は、正極集電体52と、該正極集電体52の片面または両面の長手側方向に形成された正極活物質層54とを備えている。正極集電体52の捲回軸方向(即ち、上記長手側方向に直交するシート幅方向)の片側の縁部には、該縁部に沿って帯状に正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分(即ち、正極集電体露出部52a)が設けられている。また、負極60は、負極集電体62と、該負極集電体62の片面または両面の長手側方向に形成された負極活物質層64とを備えている。負極集電体62の上記捲回軸方向の片側の反対側の縁部には、該縁部に沿って帯状に負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分(即ち、負極集電体露出部62a)が設けられている。正極集電体露出部52aと負極集電体露出部62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。正極集電板42aは、外部接続用の正極端子42と電気的に接続されており、電池ケース30の内部と外部との導通を実現している。同様に、負極集電板44aは、外部接続用の負極端子44と電気的に接続されており、電池ケース30の内部と外部との導通を実現している。
正極50を構成する正極集電体52としては、例えば、アルミニウム箔が挙げられる。正極活物質層54は、後述するここで開示される正極活物質を備えている。また、正極活物質層54は、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
正極活物質層54は、例えば、正極活物質と必要に応じて用いられる材料(導電材、バインダ等)とを適当な溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン:NMP)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を正極集電体52の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
負極60を構成する負極集電体62としては、例えば、銅箔等が挙げられる。負極活物質層64は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。また、負極活物質層64は、バインダ、増粘剤等をさらに含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
負極活物質層64は、例えば、負極活物質と必要に応じて用いられる材料(バインダ等)とを適当な溶媒(例えばイオン交換水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を負極集電体62の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
セパレータ70としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様の各種微多孔質シートを用いることができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる微多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、セパレータ70の表面には、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
非水電解質は従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用可能であり、典型的には有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させたものを用いることができる。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を好適に採用し得る。あるいは、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)のようなフッ素化カーボネート等のフッ素系溶媒を好ましく用いることができる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、特に限定されるものではないが、0.7mol/L以上1.3mol/L以下程度が好ましい。
なお、上記非水電解質は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分を含んでいてもよく、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
図3Aは、ここで開示される正極活物質を構成する正極活物質粒子10の構成を模式的に示す斜視図である。また、図3Bは、正極活物質粒子10を構成する第2の粒子14の構造を模式的に示す斜視図である。正極活物質粒子10には、第1の粒子12が複数集合した第2の粒子14が含まれる。また、第2の粒子14の表面には、第3の粒子16が存在している。
第1の粒子12は、少なくともスピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物を含んでいる。スピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物とは、スピネル型結晶構造を有しており、構成元素として、少なくともLi、Mn、Oを含有する酸化物のことである。典型的には、第1の粒子12はスピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物のみで構成されている。
第1の粒子12を構成する典型的なスピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物としては、
一般式(化学式):Li1+zMn2-x-z
(上記化学式中、Mは1種以上の金属元素を表す。x、zはそれぞれ正の実数であり、x≦0.25、z≦0.15を具備する)で表される化合物が挙げられる。ここで、上記Mは、例えば、Al、Mg、Ni、Co、Ca、Ti、V、Cr,Si,Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等であり得る。上記リチウムマンガン複合酸化物は、Mg及び/又はAlを含むことが好ましい。MgおよびAlは充放電時に価数変化を起こさないため、充放電に伴う膨張収縮を緩和することができる。これにより、充放電による正極活物質の割れを抑制することができるため、サイクル特性(例えば、抵抗増加率の低減率、容量維持率等)が向上する。また、後述するように、第2の粒子14の表層部には、ニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方が偏在している。そのため、少なくとも第2の粒子14の表層部に位置に対応する第1の粒子12の表層部では、ニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方を備えるリチウムマンガン複合酸化物が含まれる。
また、正極活物質の平均化学組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により測定することができる。
第1の粒子12のSEM像に基づく平均粒子径は、5μm以上10μm以下であることが好ましく、5μm以上8μm以下であることがさらに好ましい。第1の粒子12の平均粒子径が小さくなるほど、第1の粒子12の比表面積がより増大する。これにより、第1の粒子12と非水電解質との接触面積が増大し、第1の粒子12からマンガン原子が溶出し易くなるため、サイクル特性の観点において好ましくない。一方で、第1の粒子12の平均粒子径が大きすぎる場合、リチウムイオンの固相内拡散が低下するとともに、充放電に伴う膨張収縮により割れが生じやすくなるため好ましくない。したがって、第1の粒子12の平均粒子径を上述した範囲とすることにより、マンガン原子の溶出および充放電に伴う膨張収縮の割れの両方を適切に抑制することができるため、サイクル特性を向上させることができる。さらに、上述した範囲であれば、第1の粒子12におけるリチウムイオンの固相内拡散が好適に向上し、粒子内の拡散抵抗が低減する。これにより、初期抵抗を低減することができる。
第2の粒子14のSEM像に基づく平均粒子径は、12μm以上22μm以下であることが好ましく、12μm以上16μm以下であることがより好ましい。かかる範囲とすることにより、第2の粒子14におけるリチウムイオンの固相内拡散性が良好になる。これにより、第2の粒子14に含まれる第1の粒子12の平均粒子径を上述の好適な範囲としたときの効果に加え、さらに初期抵抗を低減することができる。
ここで開示される正極活物質の第2の粒子14の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察された画像(SEM像)に基づいて測定することができる。具体的には、まず、第2の粒子14の平均粒子径の基準とするため、レーザー回折・光散乱法に基づくレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、第2の粒子の体積基準の粒度分布を測定し、小さな粒子側からの累積50体積%に相当する粒子径(メジアン径:D50)を測定する。次に、正極活物質をSEMで複数箇所観察し、複数のSEM像を取得した後、D50に相当する大きさの第2の粒子を無作為に複数個(例えば30個以上)選択する。次に、上記選択した複数の第2の粒子それぞれのSEM像における最長の径の長さを長径とし、該長径と直角に交わる線のうち最長の径の長さを短径とする。そして、該長径と該短径とからなる楕円の面積を用いて円相当径を換算する。これにより、上記選択した複数の第2の粒子の粒子径をそれぞれ算出する。その後、上記選択した複数の第2の粒子の粒子径の平均値を算出する。このようにして算出した平均値を、本明細書における「第2の粒子の平均粒子径」という。
また、本明細書において「第1の粒子の平均粒子径」とは、上記選択した複数の第2の粒子において、それぞれの第2の粒子を構成する第1の粒子のうち、SEM像で粒子径全長が視認できる(即ち、他の第1の粒子により隠れている部分のない)第1の粒子の粒子径の平均値のことをいう。なお、上記選択した複数の第2の粒子それぞれから粒子径を算出する第1の粒子を1つ以上選択する。第1の粒子の粒子径の算出方法は上述した第2の粒子の粒子径の算出方法と同様であり、長径および短径を決定し、該長径と該短径とからなる楕円の面積を用いて円相当径を換算することによって算出することができる。
第2の粒子14の表層部には、ニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方の遷移金属原子が偏在していることが好ましい。具体的には、かかる遷移金属原子が第2の粒子14の表面から3μm以下の範囲(厚み)に偏在することが好ましく、さらに、2μm以下の範囲(厚み)に偏在することがより好ましい。かかる遷移金属が偏在する表層部では、充放電に伴う膨張収縮の体積変化が他の領域よりも小さくなる。そのため、充放電に伴う第2の粒子14の膨張収縮が粒子表面で抑制され、かかる膨張収縮に伴う粒子の割れの発生を抑制することができる。この結果、かかる粒子の割れよって生じ得るサイクル特性の低下を抑制する(即ち、サイクル特性を向上させる)ことができる。また、かかる構成により、第3の粒子16が第2の粒子14の表面に固定され易くなる。これにより、後述する第3の粒子16が第2の粒子14の表面に存在することによる効果を高めることができる。
また、特に制限されるものではないが、上記表層部の厚みが小さすぎる場合、上述した膨張収縮抑制効果が十分に得られない。そのため、上記厚みは、例えば1.0μm以上であるとよく、1.5μm以上であることが好ましい。
なお、本明細書において、ニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方が偏在する第2の粒子14の表層部の範囲(厚み)は、以下のように測定したものをいう。
まず、正極活物質を樹脂埋めし、例えば機械研磨等により粗断面を作製後、クロスセクションポリッシャー(CP)法により断面加工を行う。次に、断面加工後の断面をSEMで観察し、D50に相当する大きさの第2の粒子を無作為に複数(少なくとも20個以上)選択する。そして、選択した複数の第2の粒子それぞれを例えば3000倍~5000倍の倍率で撮影し、断面SEM像を得る。その後、選択した複数の第2の粒子の断面SEM像それぞれをエネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて平面分析を行い、第2の粒子におけるNiおよびCoの強度分布を調べる。そして、各断面SEM像において、第2の粒子の表面から内部に向かって引いた法線のうち、NiおよびCoの存在距離が最大となる法線をそれぞれ選択する。そして、選択した法線それぞれにおいて、NiおよびCoの最大強度および該最大強度の30%の強度となる点を求める。そして、かかる法線に沿って、第2の粒子表面から上記最大強度の30%の強度となる点までの長さ(NiおよびCoが偏在する表層部の厚み)を測定する。このようにして上記選択した複数の第2の粒子それぞれのかかる長さを測定する。そして、かかる長さの平均値を、ニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方が偏在する第2の粒子14の表層部の厚みとする。
第3の粒子16は、第2の粒子14の表面に存在している。本明細書において、「第2の粒子の表面に存在」とは、第3の粒子16が第2の粒子14の表面と接している状態(例えば、固定されている状態)であってもよく、第3の粒子16が第2の粒子14の表面の近傍(例えば、第2の粒子14の表面から1μm~3μm以内)に配置されている状態であってもよい。
第3の粒子16は、ニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方の遷移金属原子を備えたリン含有リチウム遷移金属複合酸化物で構成されている。ここで、リン含有リチウム遷移金属複合酸化物とは、構成元素として少なくともLi、P、Oを含有し、NiおよびCoの少なくとも一方を含有する酸化物のことをいう。第3の粒子16に含まれる典型的なリン含有リチウム遷移金属複合酸化物としては、LiMePO(MeはNiおよびCoのうち少なくとも一方を含む)で表される化合物が挙げられ、例えば、LiNiPOおよびLiCoPOが好ましく採用される。また、リン含有リチウム遷移金属複合酸化物はFe、F等の元素を有していてもよい。第3の粒子16の結晶構造については特に限定されるものではないが、例えば、オリビン型結晶構造を有し得る。
第3の粒子16を構成するリン含有リチウム遷移金属複合酸化物は、ここで開示される正極活物質を構成する化合物全体を100mol%としたとき、0.3mol%以上5mol%以下の割合で存在していることが好ましい。かかる割合によれば、第2の粒子14に含まれるマンガン原子の溶出よりも、第3の粒子16に含まれるニッケル原子及び/又はコバルト原子が優先的に溶出するため、マンガン原子の溶出を抑制することができる。これにより、サイクル特性を向上させることができる。一方で、第3の粒子16の上記割合が上記範囲よりも高い場合、活物質コストの上昇や容量の低下が起こり好ましくない。また、第3の粒子16の上記割合が上記範囲よりも低い場合、マンガン原子の溶出抑制効果が十分に得ることができない。そのため、上記割合を適切な範囲とすることがよく、例えば、0.3mol%以上3mol%以下であることがより好ましく、2mol%以上3mol%以下であることがさらに好ましい。
第3の粒子16の平均粒子径は特に制限されるものではないが、例えば、1μm~10μm程度であればよい。かかる平均粒子径は、レーザー回折・光散乱法に基づいて測定することができる。
次に、ここで開示される正極活物質の好適な製造方法について説明する。なお、ここで開示される正極活物質の製造方法は下記に限られない。
ここで開示される正極活物質粒子の好適な製造方法は、少なくともマンガンを含む水酸化物粒子を前駆体粒子として析出する工程(以下、「前駆体析出工程」ともいう)と、当該前駆体粒子とリチウム化合物との混合物を得る工程(以下、「混合工程」ともいう)と、当該混合物を焼成してリチウムマンガン複合酸化物粒子を得る工程(以下、「焼成工程」ともいう)と、該リチウムマンガン複合酸化物粒子と、ニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方の遷移金属原子を備えたリチウムリン複合酸化物を含む粒子とを混合する工程(以下、「第2混合工程」ともいう)と、第2混合工程で調製した混合物を熱処理する工程(以下、「熱処理工程」)とを包含する。
まず、前駆体析出工程について説明する。前駆体析出工程は、通常の正極活物質の製造における公知方法と同様であってよい。まず、少なくともマンガン化合物が溶解した水溶液を準備する。マンガン化合物としては、例えば硫酸マンガン、硝酸マンガン、ハロゲン化マンガン等の水溶性化合物を用いることができる。また、アルカリ化合物の水溶液を準備する。アルカリ化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができるが、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。また、アンモニア水を準備する。
次に、所定温度(例えば、30℃~60℃)の反応容器中に水(好ましくはイオン交換水)を加え、撹拌する。雰囲気を不活性ガス(例えばNガス、Arガスなど)で置換しながら撹拌を続け、アルカリ化合物の水溶液を加えpHを調整する(例えばpH10~13)。
撹拌を続けながら、マンガン化合物の水溶液とアンモニア水とを反応容器に添加する。このとき、これらの添加により反応容器中のpHが低下するため、アルカリ化合物の水溶液により反応容器中のpHを10~13の範囲に調整する。その後、反応容器を静置して、前駆体粒子(水酸化物粒子)を十分に沈殿させる。その後、吸引濾過等によって上記前駆体粒子を回収し、水洗後、乾燥(例えば、120℃で一晩乾燥)を行うことにより、前駆体粉末を得ることができる。
次に、混合工程について説明する。ここで用いるリチウム化合物としては、例えば、炭酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム等の焼成により酸化物に変換される化合物を用いることができる。
得られた前駆体粉末と、リチウム化合物の粉末とに加え、所定濃度の融剤(典型的には、該粉末の混合物に対して、0.1質量%以上50質量%以下)を添加し混合する。融剤を添加して混合することにより、後述する焼成工程において第1の粒子の粒子成長を促進することができるため、第1の粒子の粒子径を増大することができる。融剤の種類は特に限定されるものではなく、公知の融剤(例えばB粉末)を用いることができる。なお、混合する融剤の量(濃度)を調整することにより、第1の粒子の粒子径を調整することができる。
混合には、公知の混合装置(例えば、シェーカミキサ、Vブレンダ、リボンミキサ、ジュリアミキサ、レーディゲミキサ等)を用いて、公知方法に従って混合することにより、混合物を得ることができる。
なお、前駆体粉末と、リチウム化合物との混合比を調整することにより、所望する正極活物質の元素比とすることができる。
また、例えば、正極活物質にアルミニウム原子及び/又はマグネシウム原子を含有させる場合には、混合工程において、前駆体粉末と、リチウム化合物の粉末と、融剤とに加えて、さらにアルミニウム化合物の粉末及び/又はマグネシウム化合物を混合することによって製造することができる。アルミニウム化合物およびマグネシウム化合物は焼成により酸化物に変換される化合物を好ましく用いることができる。アルミニウム化合物としては、例えば、炭酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム等を使用し得る。また、マグネシウム化合物としては、例えば、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等を使用し得る。また、かかる化合物の混合量を調整することにより、所望の元素比の正極活物質を得ることができる。
次に、焼成工程について説明する。得られた混合物の焼成は、例えば、バッチ式の電気炉、連続式の電気炉等を用いて行うことができる。得られた混合物を加圧成型した後、例えば、大気雰囲気中で500℃~600℃で6時間~12時間加熱する。その後冷却し、加圧成型された混合物を粉砕し、再度成型する。再度成型した混合物を例えば900℃~1000℃で6時間~24時間焼成する。その後、例えば700℃で12時間~48時間のアニール処理を行う。アニール処理後、冷却し、再度混合物を粉砕することでリチウムマンガン複合酸化物粒子を得ることができる。なお、焼成時の昇温速度は例えば5℃/分~40℃/分(典型的には10℃/分)とすることができる。また、特に限定する意図はないが、冷却方法としては、例えば、焼成に用いた電気炉の電源を切り、自然放冷させればよい。
なお、融剤の濃度、焼成温度、焼成時間を調整することにより、第1の粒子の平均粒子径を調整することができる。
次に、第2混合工程について説明する。リチウムマンガン複合酸化物粒子と、ニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方の遷移金属原子を備えたリン含有リチウム遷移金属複合酸化物粒子とを混合する。かかるリン含有リチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、LiNiPOおよびLiCoPOを好適に用いることができる。混合方法は、上述の混合工程と同様に、公知の混合装置および公知方法に従えばよい。なお、上記リチウムマンガン複合酸化物粒子と上記リン含有リチウム遷移金属複合酸化物との混合比を所望の割合に調整することができる。
次に、熱処理工程について説明する。上記第2混合工程で得られた混合物を加熱処理することにより、上記リチウムマンガン複合酸化物粒子の表層部に上記リン含有リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方の遷移金属原子に置換させることができる。熱処理は、例えば、バッチ式の電気炉、連続式の電気炉等を用いて行うことができる。熱処理の条件は、例えば、大気雰囲気下で400℃~800℃で2時間~20時間とすることできる。なお、上記リン含有リチウム遷移金属複合酸化物の混合量、熱処理温度および熱処理時間を調整することにより、ニッケル原子及び/又はコバルト原子に置換されるリチウムマンガン複合酸化物粒子の表層部の厚みを変更することができる。
リチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。例えば、車両に搭載されるモーター用の高出力動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、典型的には自動車、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等が挙げられる。リチウムイオン二次電池100は、複数個が電気的に接続された組電池の形態で使用することもできる。
以上、一例として扁平形状の捲回電極体を備えた角型のリチウムイオン二次電池について説明した。しかしながら、これは一例に過ぎず限定されるものではない。例えば、捲回電極体の代わりに、シート状の正極とシート状の負極とがセパレータを介して交互に積層された積層型電極体を備えたリチウムイオン二次電池であってもよい。また、非水電解液の代わりにゲル状電解質を使用してもよい。また、角型電池ケースの代わりに、円筒型、コイン型等の形状の電池ケースを用いてもよく、電池ケースの代わりにラミネートフィルムを用いたラミネート型二次電池であってもよい。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<正極活物質の作製>
(例1)
イオン交換水に硫酸マンガンを溶解させ、所定の濃度となるように硫酸マンガン水溶液を調製した。また、イオン交換水を用いて水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水溶液をそれぞれ調製した。
イオン交換水を30℃~60℃の範囲内に保ちながら撹拌し、上記水酸化ナトリウム水溶液により所定のpH(pH10~13)に調整した。そして、該所定のpHに制御しながら、上記硫酸マンガン水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水溶液を加えることにより、共沈生成物(水酸化物)を得た。得られた水酸化物をろ過し、水洗した後、120℃のオーブン内で乾燥させて水酸化物粉末(正極活物質前駆体粉末)を得た。なお、ここで用いたイオン交換水は、あらかじめ不活性ガスを通気させて溶存酸素を取り除いてから使用した。
得られた水酸化物粉末と、水酸化リチウム粉末とを、リチウム(Li)とマンガン(Mn)とのモル比がLi:Mn=1.1:1.9となるように準備した。次に、準備した粉末全体に対して、0.1質量%~50質量%となるようにBを添加し、混合した。かかる混合物を加圧成型して、大気雰囲気中550℃で12時間加熱し、冷却後、粉砕した。粉砕した混合物を再成型し、900℃~1000℃で6時間~24時間焼成後、700℃で12時間~48時間アニール処理を行った。なお、上記焼成時の昇温速度は10℃/分とした。かかるアニール処理後、冷却し、得られた混合物を粉砕することで、例1の正極活物質を得た。
(例2)
上述した例1の正極活物質の作製方法のうち、Bを用いなかったこと以外は同様にして例2の正極活物質を得た。
(例3)
上述した例1の正極活物質の作製方法のうち、水酸化物粉末と、水酸化リチウム粉末を準備する工程を変更した。例3では、水酸化物粉末と、水酸化リチウム粉末と、水酸化物アルミニウム粉末とを、Li:Al:Mn=1.1:0.05:1.85のモル比となるように準備した。他の工程は、例1と同様に行い、例3の正極活物質を得た。
(例4~11)
上述した例3の正極活物質の製造方法と同様にして正極活物質を得た。かかる正極活物質に対し、LiCoPO粉末(株式会社豊島製作所製)を混合した。このとき、混合物全体に対し、LiCoPO粉末が0.1mol%~6mol%となるようにした。かかる混合物を空気中で400℃~800℃で2時間~20時間加熱処理をし、例4~11の正極活物質を得た。なお、各例において、かかる加熱処理温度および時間を変更することで、Co原子が置換した第2の粒子の表層部の範囲(厚み)を変更した。また、例1に記載のBの添加量、焼成温度、焼成時間を各例で変更することにより第1の粒子および第2の粒子の平均粒子径を変更した。
(例12)
上述した例4~11の正極活物質の作製方法のうち、水酸化物粉末と、水酸化リチウム粉末と、水酸化物アルミニウム粉末とのモル比を変更した。例12では、Li:Al:Mn=1.05:0.1:1.85のモル比となるように上記粉末を準備した。他の工程は例4~11と同様に行い、例12の正極活物質を得た。
(例13)
上述した例4~11の正極活物質の作製方法のうち、水酸化物粉末と、水酸化リチウム粉末と、水酸化物アルミニウム粉末とのモル比を変更した。例12では、Li:Al:Mn=1.15:0.05:1.8のモル比となるように上記粉末を準備した。他の工程は例4~11と同様に行い、例13の正極活物質を得た。
(例14)
上述した例4~11の正極活物質の作製方法のうち、LiCoPO粉末をLiNiPO粉末(株式会社豊島製作所製)に変更し、混合物全体に対し、LiNiPO粉末が2mol%となるようにした。他の工程は、例4~11と同様に行い、例14の正極活物質を得た。
(例15)
上述した例4~11の正極活物質の作製方法のうち、水酸化アルミニウム粉末を水酸化物マグネシウム粉末に変更した。水酸化物粉末と、水酸化物マグネシウム粉末と、水酸化リチウム粉末とをLi:Mg:Mn=1.1:0.05:1.85のモル比となるように準備した。他の工程は、例4~11と同様に行い、例15の正極活物質を得た。
(例16)
上述した例1の正極活物質の製造方法と同様にして正極活物質を得た。かかる正極活物質に対し、LiCoPO粉末を混合した。このとき、混合物全体に対し、LiCoPO粉末が2mol%となるようにした。かかる混合物を空気中で400℃~800℃で2時間~20時間加熱処理をし、例16の正極活物質を得た。
<第1の粒子および第2の粒子の平均粒子径の算出>
上記製造した各例の正極活物質それぞれにおいて、LiCoPO粉末またはLiNiPO粉末を混合する前の粒子(即ち、リチウムマンガン複合酸化物からなる第1の粒子および第2の粒子)のメジアン径(D50)をレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した。次に、かかる粒子のSEM像を取得した。得られたSEM像の中から、それぞれD50に相当する大きさの第2の粒子を任意(無作為)に30個選択した。そして、該30個の第2の粒子の粒子径を上述した方法で算出し、それらの平均値を第2の粒子の平均粒子径とした。
また、上記選択した30個の第2の粒子それぞれにおいて、該第2の粒子に含まれる第1の粒子の中から、SEM像において粒子全体が視認できる(即ち、他の粒子に隠れている部分がない)第1の粒子を選択し、上述した方法で該第1の粒子の粒子径を算出し、それらの平均値を第1の粒子の平均粒子径とした。
<正極活物質の組成分析>
上記作製した正極活物質それぞれにおいて、LiCoPO粉末またはLiNiPO粉末を混合する前の粒子に対して誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析を行い、各元素の含有量を測定した。
<第2の粒子表層部における遷移金属Me(Me:NiまたはCo)含有厚みの測定>
上記作製した正極活物質それぞれを樹脂埋めし、粗断面を作製後、クロスセクションポリッシャー(CP)法による断面加工を行った。かかる断面をSEMで1000倍の倍率で複数箇所観察し、D50に相当する大きさの第2の粒子を無作為に20個選択した。選択した20個の第2の粒子を3000倍または5000倍の倍率で撮影し、断面SEM像を得た。そして、選択した第2の粒子それぞれにおいて、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いた平面分析により、NiまたはCoの強度分布を測定した。そして、NiまたはCoの存在距離が最大となる法線を選択した。かかる法線に沿ってEDXにより測定されたNiまたはCo強度の最大値に対して、NiまたはCo強度が30%となる点を求めた。そして、二次粒子の表面からかかる点までの長さを算出した。このようにして、選択した第2の粒子それぞれで求めた長さの平均値を「Me偏在表層部(μm)」として表1に示す。
<評価用リチウムイオン二次電池の作製>
評価用リチウム二次電池として、上記作製した正極活物質と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、正極活物質:AB:PVDF=90:8:2の質量比となるようにN-メチル-2-ピロリドン中で混合し、正極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストをアルミニウム箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させることで塗布シートを作製した。そして、かかる塗布シートをロールプレスすることにより高密度化させ、正極シートを作製した。
負極活物質として、天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=98:1:1の質量比となるようにイオン交換水中で混合して、負極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストを銅箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させることで塗布シートを作製した。そして、かかる塗布シートをロールプレスすることにより、負極シートを作製した
また、セパレータとしてPP/PE/PPの三層構造を有する多孔性ポリオレフィンシートを用意した。
作製した正極シートおよび負極シートをセパレータを介して対向させて積層し、積層型電極体を作製した。該積層型電極体に集電端子を取り付け、アルミラミネート型袋に収容した。そして、積層電極体に非水電解液を含浸させ、アルミラミネート袋の開口部を封止し密閉することによって評価用リチウムイオン二次電池を作製した。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
<活性化処理および初期放電容量の測定>
上記作製した各評価用リチウムイオン二次電池を0.1Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、定電圧充電時の電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。その後、定電流方式により、各評価用リチウムイオン二次電池を0.1Cの電流値で3.0Vまで放電し、このときの放電容量を初期放電容量とした。なお、かかる充放電の操作は25℃で行った。なお、ここで「1C」とは、1時間でSOC(state of charge)を0%から100%まで充電できる電流の大きさのことをいう。
<初期抵抗の測定>
各評価用リチウムイオン二次電池を、電池容量の50%(SOC=50%)の状態に調整した。次に、-10℃の環境下で種々の電流値で電流を流し、2秒後の電池電圧を測定した。上記流した電流と電圧変化を直線補間し、その傾きから抵抗値(初期抵抗)を算出した。そして、例1の初期抵抗を1.0としたときの各例の初期抵抗の相対値を算出した。その結果を表1に示す。
<高温耐久後抵抗増加率および高温耐久後容量維持率の測定>
初期抵抗を測定した各評価用リチウムイオン二次電池に対し、60℃の環境下でサイクル試験を実施した。具体的には、1Cで4.2Vまで定電流充電を行った後、1Cで3.0Vまで定電流放電を行うことを1サイクルとして、50サイクル繰り返した。そして、50サイクル後の放電容量および抵抗を上記と同じ方法で測定した。そして、高温耐久後容量維持率を以下の式1:
(50サイクル後の放電容量)/(初期放電容量)×100・・・式1
により算出した。また、高温耐久後抵抗増加率を以下の式2:
(50サイクル後の抵抗)/(初期抵抗)×100・・・式2
により算出した。これら算出した高温耐久後容量維持率および高温耐久後抵抗増加率それぞれにおいて、例1を1.0としたときの各例の相対値を算出した。その結果を表1に示す。なお、高温耐久後容量維持率は値が高いほど優れたサイクル特性を示しており、高温耐久後抵抗増加率の値は低いほど優れたサイクル特性であることを示している。
Figure 0007225282000001
表1に示すように、例5~8、例12~16は例1および例3よりもサイクル特性に優れており、さらに、初期抵抗が低減していた。例1、例3、例5~8、例12~16では、いずれも第1の粒子の平均粒子径が5μm以上10μm以下であり、第2の粒子の平均粒子径が12μm以上22μm以下であることを具備しているが、例5~8、例12~16では、第3の粒子(ここではLiMeO粒子)の存在割合が0.3mol%以上5mol%以下であり、Me存在厚みが3μm以下であることを具備している。即ち、かかる割合の第3の粒子の存在と、かかる厚みの第2の粒子の表層部にMeが偏在することにより、サイクル特性を向上させ、かつ、初期抵抗を低減できることがわかる。また、このなかでも、例5~7、例12~16では、より優れたサイクル特性を示した。これにより、第3の粒子(LiMePO)の存在割合が0.3mol%以上3mol%以下であり、Me偏在表層部が2μm以下であるとき、さらに優れたサイクル特性が実現されることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 正極活物質粒子
12 第1の粒子
14 第2の粒子
16 第3の粒子
20 電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極
52 正極集電体
52a 正極集電体露出部
54 正極活物質層
60 負極
62 負極集電体
62a 負極集電体露出部
64 負極活物質層
70 セパレータ
100 リチウムイオン二次電池

Claims (6)

  1. リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質であって、
    第1の粒子が複数集合した第2の粒子を含み、
    前記第1の粒子のSEM像に基づく平均粒子径は5μm以上10μm以下であり、
    前記第2の粒子のSEM像に基づく平均粒子径は12μm以上22μm以下であり、
    前記第1の粒子は、少なくともリチウム原子とマンガン原子とを含有するスピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物を含み、
    前記第2の粒子の表面には、ニッケル原子およびコバルト原子のうち少なくとも一方の遷移金属原子を備えたリン含有リチウム遷移金属複合酸化物で構成される第3の粒子が存在しており、
    前記正極活物質を構成する化合物全体に対する前記第3の粒子を構成する前記リン含有リチウム遷移金属複合酸化物の割合は、0.3mol%以上5mol%以下であり、
    前記第2の粒子の表面から3μm以下の表層部には、前記遷移金属原子が偏在している、
    正極活物質。
  2. 前記正極活物質を構成する化合物全体に対する前記第3の粒子を構成する前記リン含有リチウム遷移金属複合酸化物の割合は、0.3mol%以上3mol%以下である、請求項1に記載の正極活物質。
  3. 前記遷移金属原子が偏在する前記第2の粒子の表層部は、前記第2の粒子の表面から2μm以下の範囲である、請求項1または2に記載の正極活物質。
  4. 前記リチウムマンガン複合酸化物は、少なくともアルミニウム原子およびマグネシウム原子のどちらか一方を備える、請求項1~3の何れか一項に記載の正極活物質。
  5. 前記リン含有リチウム遷移金属複合酸化物として、LiMePO(MeはNiおよびCoのうち少なくともどちらか一方を含む)を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の正極活物質。
  6. 正極と、負極と、非水電解質と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、
    前記正極は、正極活物質層を備え、
    前記正極活物質層は、請求項1~5の何れか一項に記載の正極活物質を備える、
    リチウムイオン二次電池。
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