以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、赤外線とは、波長700〜2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
<組成物>
本発明の組成物は、後述する式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料と、
上記金属アゾ顔料以外の色材であって、波長400〜700nmの範囲に吸収極大を有する色材と、
エチレン性不飽和結合基を有する化合物、および、環状エーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む組成物であり、
組成物の波長400〜600nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1000〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上であることを特徴とする。
本発明者が、アゾバルビツール酸と2種以上の金属イオンとメラミン化合物とを含む金属アゾ顔料について鋭意検討を進めたところ、この金属アゾ顔料は硬度が低い傾向にあり、微細化し易いものの、活性面が生じて凝集し易い傾向にあることが分かった。また、金属アゾ顔料におけるニッケルイオン(Ni2+)の含有量が少ないか、あるいは金属アゾ顔料がニッケルイオンを含まない場合においては、エネルギー的に不安定な状態であると推測され、金属アゾ顔料がより凝集し易い傾向にあると推測される。また、この金属アゾ顔料は、2種以上の金属イオンを含むが、金属イオンの種類により、上述したアニオンと金属イオンとで構成される金属アゾ化合物(金属錯体)の配座が異なる。例えば、Cu2+の場合は平面配座の金属錯体を形成し、Zn2+の場合は正八面体配座の金属錯体を形成する。このため、上述した金属アゾ顔料は、不安定な状態で存在していると推測される。そのため、上述した金属アゾ顔料は、高温高湿環境下において凝集が促進されやすい傾向にあると推測される。
本発明者の検討によれば、上述した金属アゾ顔料と、上述した金属アゾ顔料以外の色材であって波長400〜700nmの範囲に吸収極大を有する色材(以下他の色材ともいう)とを併用して、波長400〜600nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1000〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上である組成物を調製したところ、驚くべきことに、この組成物を用いて得られる膜を高温高湿環境下に曝しても、異物欠陥が生じにくいことを見出した。この様な効果が得られた理由としては、推測であるが、金属アゾ顔料以外の他の色材が金属アゾ顔料のアゾ部位と相互作用して金属アゾ顔料の安定性を向上できたためであると考えられる。
一方、上述した金属アゾ顔料と他の色材とを含む組成物を塗布して膜を形成した場合、膜厚のばらつきが生じやすい傾向にあることが分かった。他の色材等の影響で、組成物中における金属アゾ顔料の分散状態が不安定化していることが原因と考えられる。また、上述した分光特性を有する組成物は、色材を比較的多く含む傾向にあるため、金属アゾ顔料の分散状態がより不安定化し易く、膜厚のばらつきが生じやすい傾向にあることが分かった。しかしながら、本発明の組成物は、上述した金属アゾ顔料と、他の色材との他に、さらに、エチレン性不飽和結合基を有する化合物、および、環状エーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有させたことにより、このような膜厚のばらつきも効果的に抑制できた。このような効果が得られる理由としては以下によるものであると推測される。すなわち、組成物中にエチレン性不飽和結合基を有する化合物を含む場合においては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が金属アゾ顔料の顔料活性面(特にアゾ部位)と相互作用して、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が金属アゾ顔料の表面に吸着され、金属アゾ顔料を安定化させることができると推測される。また、組成物中に環状エーテル基を有する化合物を含む場合においては、環状エーテル基が金属アゾ顔料に対して配位してキレート剤として作用すると推測され、その結果、金属アゾ顔料を安定化させることができると推測される。このため、本発明の組成物によれば、膜厚の均一性が良化したと推測される。
このため、本発明の組成物によれば、膜厚均一性が高く、高温高湿環境下での異物欠陥の発生が抑制された膜を製造できる。また、この組成物を用いて得られる膜は、波長400〜600nmの光の遮光性が高く、かつ、波長1000〜1300nmの光の透過性に優れるので、赤外線透過フィルタなどに好ましく用いることができる。また、本発明の組成物に含まれる上記金属アゾ顔料は、着色力の高い色材である。このため、本発明の組成物を用いることで、膜厚が薄くても、波長400〜600nmの範囲における遮光性の高い膜を形成することができる。また、組成物中の色材の含有量を低減させることもできるので、処方設計の自由度にも優れる。
本発明の組成物は、波長400〜600nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1000〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。上記の吸光度比が4.5以上であれば、波長400〜600nmの光の遮光性が高く、かつ、波長1000〜1300nmの光の透過性に優れる膜を形成することができる。
ある波長λにおける吸光度Aλは、以下の式(1)により定義される。
Aλ=−log(Tλ/100) ・・・(1)
Aλは、波長λにおける吸光度であり、Tλは、波長λにおける透過率(%)である。
本発明において、吸光度の値は、溶液の状態で測定した値であってもよく、組成物を用いて製膜した膜の値であってもよい。膜の状態で吸光度を測定する場合は、ガラス基板上にスピンコート等の方法によって組成物を塗布し、ホットプレート等を用いて100℃、120秒間乾燥して得られた膜を用いて測定することが好ましい。
また、吸光度は従来公知の分光光度計を用いて測定できる。吸光度の測定条件は特に限定はないが、波長400〜600nmの範囲における吸光度の最小値Aが、0.1〜3.0になるように調整した条件で、波長1000〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bを測定することが好ましい。このような条件で吸光度を測定することで、測定誤差をより小さくできる。波長400〜600nmの範囲における吸光度の最小値Aが、0.1〜3.0になるように調整する方法としては、特に限定はない。例えば、溶液の状態で吸光度を測定する場合は、試料セルの光路長を調整する方法が挙げられる。また、膜の状態で吸光度を測定する場合は、膜厚を調整する方法などが挙げられる。
本発明の組成物は、以下の(1)〜(3)のいずれかの分光特性を満たしていることが好ましく、高温高湿環境下での異物欠陥の発生がより抑制された膜を製造し易いという理由から、(2)または(3)の分光特性を満たしていることがより好ましく、(3)の分光特性を満たしていることが更に好ましい。このような効果が得られる理由としては以下によるものであると推測される。(1)、(2)、(3)の順に、より長波長側までの光を遮光できる膜を形成することができるが、より長波長までの光を遮光させるには、他の色材としてより長波長に吸収のある色材が用いられたり、更に近赤外線吸収色素を含有させることがある。このような素材は、広い共役系を有していることが多く、金属アゾ顔料と相互作用し易い傾向にあると推測される。そのため、金属アゾ顔料をより安定化させることができ、その結果、高温高湿環境下での異物欠陥の発生がより抑制された膜を製造することができると推測される。
(1):波長400〜600nmの範囲における吸光度の最小値A1と、波長800〜1300nmの範囲における吸光度の最大値B1との比であるA1/B1が4.5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。この態様によれば、波長400〜600nmの範囲の光を遮光して、波長650nmを超える光を透過可能な膜を形成することができる。
(2):波長400〜720nmの範囲における吸光度の最小値A2と、波長900〜1300nmの範囲における吸光度の最大値B2との比であるA2/B2が4.5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。この態様によれば、波長400〜750nmの範囲の光を遮光して、波長800nmを超える光を透過可能な膜を形成することができる。
(3):波長400〜830nmの範囲における吸光度の最小値A3と、波長1000〜1300nmの範囲における吸光度の最大値B3との比であるA3/B3が4.5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。この態様によれば、波長400〜830nmの範囲の光を遮光して、波長900nmを超える光を透過可能な膜を形成することができる。
本発明の組成物は、乾燥後の膜厚が10.0μm以下(好ましくは5.0μm以下であり、より好ましくは3.0μm以下であり、更に好ましくは2.5μm以下であり、より一層好ましくは2.0μm以下であり、特に好ましくは1.5μm以下である。また、下限値は、0.4μm以上とすることができ、0.5μm以上とすることもでき、0.6μm以上とすることもでき、0.7μm以上とすることもでき、0.8μm以上とすることもでき、0.9μm以上とすることもできる。)の膜を製膜した際に、前述の膜厚の少なくとも1つにおいて、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜600nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である分光特性を満たしていることが好ましい。
また、本発明の組成物は、以下の(11)〜(13)のいずれかの分光特性を満たしていることが好ましく、高温高湿環境下での異物欠陥の発生がより抑制された膜を製造し易いという理由から、(12)または(13)の分光特性を満たしていることがより好ましく、(13)の分光特性を満たしていることが更に好ましい。
(11):本発明の組成物を用いて乾燥後の膜厚が0.4〜3.0μm(好ましくは0.5〜2.5μm、より好ましくは0.6〜2.0μm、更に好ましくは0.7〜1.5μm)の膜を製造した際に、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜600nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長800〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。
(12):本発明の組成物を用いて乾燥後の膜厚が0.5〜5.0μm(好ましくは0.6〜3.0μm、より好ましくは0.7〜2.5μm、更に好ましくは0.8〜2.0μm)の膜を製造した際に、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜720nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長900〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。
(13):本発明の組成物を用いて乾燥後の膜厚が0.6〜10μm(好ましくは0.7〜5.0μm、より好ましくは0.8〜3.0μm、更に好ましくは0.9〜2.5μm)の膜を製造した際に、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜830nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。
以下、本発明の組成物に用いられる各成分について説明する。
<<金属アゾ顔料A>>
本発明の組成物は、下記式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料Aを含む。
式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、OHまたはNR5R6であり、R3およびR4はそれぞれ独立して、=Oまたは=NR7であり、R5〜R7はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R5〜R7が表すアルキル基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれであってもよいが、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、後述の置換基Tが挙げられ、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基およびアミノ基が好ましい。
式(I)において、R1およびR2はOHであることが好ましい。また、R3およびR4は=Oであることが好ましい。
金属アゾ顔料Aにおけるメラミン化合物は、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
式中R11〜R13は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。アルキル基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれであってもよいが、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、後述の置換基Tが挙げられ、ヒドロキシ基が好ましい。R11〜R13の少なくとも一つは水素原子であることが好ましく、R11〜R13の全てが水素原子であることがより好ましい。
金属アゾ顔料Aは、式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンの1モル当たり、メラミン化合物(好ましくは式(II)で表される化合物)を0.05〜4モル含有することが好ましく、0.5〜2.5モル含有することがより好ましく、1.0〜2.0モル含有することが更に好ましい。
金属アゾ顔料Aの比表面積は20〜200m2/gであることが好ましい。下限は60m2/g以上であることが好ましく、90m2/g以上であることがより好ましい。上限は、160m2/g以下であることが好ましく、150m2/g以下であることがより好ましい。金属アゾ顔料Aの比表面積の値は、BET(Brunauer、EmmettおよびTeller)法に準じてDIN 66131:determination of the specific surface area of solids by gas adsorption(ガス吸着による固体の比表面積の測定)に従って測定した値である。
(置換基T)
上述の置換基Tとして、次の基が挙げられる。アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルキニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30のアリール基)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30のアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールオキシ基)、ヘテロアリールオキシ基、アシル基(好ましくは炭素数1〜30のアシル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基)、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30のアシルオキシ基)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアシルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30のスルファモイル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30のカルバモイル基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30のアルキルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1〜30)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30)、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1〜30)。これらの基は、さらに置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよい。さらなる置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
金属アゾ顔料Aは、式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと金属イオンとで金属錯体が形成されていることが好ましい。例えば、2価の金属イオンMeの場合は、上記のアニオンと金属イオンMeとで下記式(Ia)で表される構造の金属錯体を形成することができる。金属イオンMeは、式(Ia)の互変異性表記における窒素原子を介して結合して錯体を形成していてもよい。
金属アゾ顔料Aの好ましい態様としては、以下の(Az1)〜(Az4)の態様の金属アゾ顔料が挙げられ、本発明の効果がより顕著に得られやすく、更には、分光特性をより向上できるという理由から(Az1)の態様の金属アゾ顔料であることが好ましい。
(Az1) 上述した式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、Zn2+およびCu2+を少なくとも含む金属イオンと、メラミン化合物とを含む態様の金属アゾ顔料。この態様においては、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、Zn2+およびCu2+を合計で95〜100モル%含有することが好ましく、98〜100モル%含有することがより好ましく、99.9〜100モル%含有することが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。また、金属アゾ顔料中のZn2+とCu2+とのモル比は、Zn2+:Cu2+=199:1〜1:15であることが好ましく、19:1〜1:1であることがより好ましく、9:1〜2:1であることが更に好ましい。また、この態様において、金属アゾ顔料は、更にZn2+およびCu2+以外の二価もしくは三価の金属イオン(以下、金属イオンMe1ともいう)を含んでいてもよい。金属イオンMe1としては、Ni2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd2+、Nd3+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Yb2+、Yb3+、Er3+、Tm3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Mn2+、Y3+、Sc3+、Ti2+、Ti3+、Nb3+、Mo2+、Mo3+、V2+、V3+、Zr2+、Zr3+、Cd2+、Cr3+、Pb2+、Ba2+が挙げられ、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Yb3+、Er3+、Tm3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Mn2+およびY3+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Tb3+、Ho3+およびSr2+から選ばれる少なくとも1種であることが更に好ましく、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+およびCo3+から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。金属イオンMe1の含有量は、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることが更に好ましい。
(Az2) 上述した式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、金属イオンと、メラミン化合物とを含み、金属イオンは、Ni2+、Zn2+および少なくとも1種のさらなる金属イオンMe2を含み、金属イオンMe2は、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd2+、Nd3+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb2+、Yb3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ti2+、Ti3+、Zr2+、Zr3+、V2+、V3+、Nb3+、Cr3+、Mo2+、Mo3+、Mn2+、Cd2+、およびPb2+から選ばれる少なくとも1種である態様の金属アゾ顔料。金属イオンMe2は、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Y3+、およびMn2+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Tb3+、Ho3+、およびSr2+から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。この態様においては、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、Zn2+およびNi2+を合計で75〜99.5モル%含有し、かつ、金属イオンMe2を0.5〜25モル%含有することが好ましく、Zn2+およびNi2+を合計で78〜95モル%含有し、かつ、金属イオンMe2を5〜22モル%含有することがより好ましく、Zn2+およびNi2+を合計で82〜90モル%含有し、かつ、金属イオンMe2を10〜18モル%含有することが更に好ましい。また、金属アゾ顔料中のZn2+とNi2+とのモル比は、Zn2+:Ni2+=90:3〜3:90であることが好ましく、80:5〜5:80であることがより好ましく、60:33〜33:60であることが更に好ましい。
(Az3) 上述した式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、金属イオンと、メラミン化合物とを含み、金属イオンは、Ni2+、Cu2+および少なくとも1種のさらなる金属イオンMe3を含み、金属イオンMe3がLa3+、Ce3+、Pr3+、Nd2+、Nd3+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Yb2+、Yb3+、Er3+、Tm3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Mn2+、Y3+、Sc3+、Ti2+、Ti3+、Nb3+、Mo2+、Mo3+、V2+、V3+、Zr2+、Zr3+、Cd2+、Cr3+、Pb2+およびBa2+から選ばれる少なくとも1種である態様の金属アゾ顔料。金属イオンMe3は、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Yb3+、Er3+、Tm3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Mn2+、およびY3+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Tb3+、Ho3+、およびSr2+から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。この態様においては、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、Cu2+およびNi2+を合計で70〜99.5モル%含有し、かつ、金属イオンMe3を0.5〜30モル%含有することが好ましく、Cu2+およびNi2+を合計で75〜95モル%含有し、かつ、金属イオンMe3を5〜25モル%含有することがより好ましく、Cu2+およびNi2+を合計で80〜90モル%含有し、かつ、金属イオンMe3を10〜20モル%含有することが更に好ましい。また、金属アゾ顔料中のCu2+とNi2+とのモル比は、Cu2+:Ni2+=42:1〜1:42であることが好ましく、10:1〜1:10であることがより好ましく、3:1〜1:3であることが更に好ましい。
(Az4) 上述した式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、金属イオンと、メラミン化合物とを含み、金属イオンは、Ni2+と金属イオンMe4aを含み、金属イオンMe4aがLa3+、Ce3+、Pr3+、Nd2+、Nd3+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb2+およびYb3+から選ばれる少なくとも1種である態様の金属アゾ顔料。金属イオンMe4aは、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+およびYb3+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Tb3+およびHo3+から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。この態様においては、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、Ni2+および金属イオンMe4aを合計で95〜100モル%含有することが好ましく、98〜100モル%含有することがより好ましく、99.9〜100モル%含有することが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。また、金属アゾ顔料中のNi2+と金属イオンMe4aとのモル比は、Ni2+:金属イオンMe4a=1:1〜19:1であることが好ましく、2:1〜4:1であることがより好ましく、2.3:1〜3:1であることが更に好ましい。また、この態様において、金属アゾ顔料は、更にNi2+および金属イオンMe4a以外の金属イオン(以下、金属イオンMe4bともいう)を含んでいてもよい。金属イオンMe4bとしては、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ti2+、Ti3+、Zr2+、Zr3+、V2+、V3+、Nb3+、Cr3+、Mo2+、Mo3+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Al3+およびPb2+が挙げられ、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Y3+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Cu2+、Zn2+およびAl3+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、Sr2+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Cu2+、Zn2+およびAl3+から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。また、金属イオンMe4bの含有量は、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることが更に好ましい。
金属アゾ顔料Aは、上述した式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと金属イオンとで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物(好ましくは上記式(II)で表される化合物)とで付加体が形成されていることが好ましい。付加体とは、分子集合体を意味すると理解される。これらの分子間の結合は、例えば、分子間相互作用によるものであってもよく、ルイス酸−塩基相互作用によるものであってもよく、配位結合または鎖結合によるものであってもよい。また、付加体は、ゲスト分子がホスト分子を構成する格子に組み込まれている包接化合物(クラスレート)のような構造であっても良い。また、付加体は、複合層間結晶(格子間化合物を含む)のような構造であってもよい。複合層間結晶とは、少なくとも2つの要素からなる化学的な非化学量論的結晶化合物のことである。また、付加体は、2つの物質が共同結晶を形成し、第一の成分の規則的な格子の位置に第二の成分の原子が位置しているような混合置換結晶であってもよい。
本発明で用いられる金属アゾ顔料は、物理的混合物であってもよく、化学的複合化合物であってもよい。好ましくは、物理的混合物である。
上記の(Az1)の態様の金属アゾ顔料の場合における物理的混合物の好ましい例としては、以下の(Az1−1)、(Az1−2)が挙げられる。また、(Az1)の態様の金属アゾ顔料が化学的複合化合物である場合、Zn2+、Cu2+ならびに任意のさらなる金属イオンMe1は、共通の結晶格子に組み込まれていることが好ましい。
(Az1−1)上記アニオンとZn2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体1aと、上記アニオンとCu2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体1bの物理的混合物。
(Az1−2) (Az1−1)の物理的混合物において、更に、上記アニオンと金属イオンMe1とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体1cを含む物理的混合物。
上記の(Az2)の態様の金属アゾ顔料の場合における物理的混合物の好ましい例としては、以下の(Az2−1)が挙げられる。また、(Az2)の態様の金属アゾ顔料が化学的複合化合物である場合、Ni2+、Zn2+および金属イオンMe2は、共通の結晶格子に組み込まれていることが好ましい。
(Az2−1)上記アニオンとNi2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体2aと、上記アニオンとZn2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体2bと、上記アニオンと金属イオンMe2とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体2cを含む物理的混合物。
上記の(Az3)の態様の金属アゾ顔料の場合における物理的混合物の好ましい例としては、以下の(Az3−1)が挙げられる。また、(Az3)の態様の金属アゾ顔料が化学的複合化合物である場合、Ni2+、Cu2+および金属イオンMe3は、共通の結晶格子に組み込まれていることが好ましい。
(Az3−1)上記アニオンとNi2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体3aと、上記アニオンとCu2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体3bと、上記アニオンと金属イオンMe3とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体3cを含む物理的混合物。
上記の(Az4)の態様の金属アゾ顔料の場合における物理的混合物の好ましい例としては、以下の(Az4−1)、(Az4−2)が挙げられる。また、(Az4)の態様の金属アゾ顔料が化学的複合化合物である場合、Ni2+、金属イオンMe4aならびに任意のさらなる金属イオンMe4bは、共通の結晶格子に組み込まれていることが好ましい。
(Az4−1)上記アニオンとNi2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体4aと、上記アニオンと金属イオンMe4aとで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体4bの物理的混合物。
(Az4−2) (Az4−1)の物理的混合物において、更に、上記アニオンと、金属イオンMe4bとで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体4cを含む物理的混合物。
上記の(Az1)の態様の金属アゾ顔料は、式(III)またはその互変異性体の化合物を、メラミン化合物(好ましくは式(II)で表される化合物)の存在下で、亜鉛塩および銅塩、ならびに任意で更に、上述した金属イオンMe1の塩と反応させることによって製造することができる。亜鉛塩の使用量は、式(III)またはその互変異性体の化合物の1モルに対して、0.05〜0.995モルであることが好ましく、0.05〜0.5モルであることがより好ましく、0.1〜0.3モルであることが更に好ましい。また、銅塩の使用量は、式(III)またはその互変異性体の化合物の1モルに対して、0.005〜0.95モルであることが好ましく、0.49〜0.95モルであることがより好ましく、0.7〜0.9モルであることが更に好ましい。また、金属イオンMe1の塩の使用量は、式(III)またはその互変異性体の化合物の1モルに対して、0.05モル以下であることが好ましく、0.01モル以下であることがより好ましい。また、式(III)の化合物1モルに対して、亜鉛塩と銅塩と金属イオンMe1の塩との合計量は1モルであることが好ましい。また、メラミン化合物の使用量は、式(III)またはその互変異性体の化合物の1モルに対して、0.05〜4モルであることが好ましく、0.5〜2.5モルであることがより好ましく、1.0〜2.0モルであることが更に好ましい。
式中、X1およびX2はそれぞれ独立して水素原子またはアルカリ金属イオンであり、X1およびX2の少なくとも一方がアルカリ金属イオンである。R1およびR2はそれぞれ独立して、OHまたはNR5R6である。R3およびR4はそれぞれ独立して、=Oまたは=NR7であり、R5〜R7はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R1〜R7については、式(I)のR1〜R7と同義であり、好ましい範囲も同様である。X1およびX2が表すアルカリ金属イオンとしては、Na+およびK+が好ましい。
また、上記の(Az1)の態様の金属アゾ顔料は、上述した付加体1aと、付加体1bと、付加体1cとを混合することによって製造することもできる。
上記の(Az2)の態様の金属アゾ顔料、(Az3)の態様の金属アゾ顔料、および(Az4)の態様の金属アゾ顔料についても上述した方法等と同様の方法で製造することができる。
上記の金属アゾ顔料については、特開2017−171912号公報の段落番号0011〜0062、0137〜0276、特開2017−171913号公報の段落番号0010〜0062、0138〜0295、特開2017−171914号公報の段落番号0011〜0062、0139〜0190、特開2017−171915号公報の段落番号0010〜0065、0142〜0222の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の組成物において、金属アゾ顔料Aの含有量は、本発明の組成物の全固形分中1〜50質量%であることが好ましい。下限は、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。本発明の組成物が金属アゾ顔料Aを2種以上含む場合はそれらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
<<他の色材>>
本発明の組成物は、上述した金属アゾ顔料A以外の色材であって、波長400〜700nmの範囲に吸収極大を有する色材(以下、他の色材ともいう)を含有する。他の色材としては、有彩色着色剤、黒色着色剤などが挙げられる。他の色材として用いられる有彩色着色剤としては、上述した金属アゾ顔料A以外の色材であれば特に限定は無く、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤などが挙げられる。本発明の組成物は、他の色材を2種以上含むことが好ましい。この態様によれば、金属アゾ顔料Aをより安定化でき、高温高湿環境下での異物欠陥の発生をより効果的に抑制できる。また、本発明の組成物が他の色材を2種以上含む場合、異なる色相の色材を2種以上含むことが好ましい。
本発明の組成物は、他の色材として青色着色剤および紫色着色剤から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの色相の色材は、可視光の波長領域において長波長側に吸収極大を有するので、比較的広い共役系を有している。このため、これらの色材は、金属アゾ顔料Aと相互作用し易く、金属アゾ顔料Aをより安定化でき、高温高湿環境下での異物欠陥の発生をより効果的に抑制できる。さらには、波長400〜600nmの範囲における吸光度の最小値Aと、波長1000〜1300nmの範囲における吸光度の最大値Bとの比であるA/Bが4.5以上の分光特性を有する組成物が得られやすい。青色着色剤としては、トリアリールメタン化合物、フタロシアニン化合物等が挙げられ、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由からフタロシアニン化合物が好ましい。紫色着色剤としては、キサンテン化合物、トリアリールメタン化合物、アントラキノン化合物、オキサジン化合物、キナクリドン化合物、ベンズイミダゾロン化合物等が挙げられ、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由からオキサジン化合物が好ましい。
本発明の組成物が、他の色材として青色着色剤および紫色着色剤から選ばれる少なくとも1種を含む場合、他の色材の全量中における青色着色剤の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。上限は特に限定はない。100質量%とすることができ、90質量%以下とすることもでき、80質量%以下とすることもできる。また、他の色材の全量中における紫色着色剤の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。上限は特に限定はない。100質量%とすることができ、90質量%以下とすることもでき、80質量%以下とすることもできる。また、他の色材の全量中における青色着色剤と紫色着色剤との合計の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。上限は特に限定はない。100質量%とすることができ、90質量%以下とすることもでき、80質量%以下とすることもできる。
(有彩色着色剤)
他の色材として用いられる有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよく、顔料であることが好ましい。顔料としては、有機顔料および無機顔料が挙げられ、有機顔料が好ましい。有機顔料としては以下のものが挙げられる。
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)、
また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子または窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。このような化合物としては、式(DPP1)で表される化合物であることが好ましく、式(DPP2)で表される化合物であることがより好ましい。
上記式中、R11およびR13はそれぞれ独立して置換基を表し、R12およびR14はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、n11およびn13はそれぞれ独立して0〜4の整数を表し、X12およびX14はそれぞれ独立して酸素原子、硫黄原子または窒素原子を表し、X12が酸素原子または硫黄原子の場合は、m12は1を表し、X12が窒素原子の場合は、m12は2を表し、X14が酸素原子または硫黄原子の場合は、m14は1を表し、X14が窒素原子の場合は、m14は2を表す。R11およびR13が表す置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基が挙げられ、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、スルホキシド基、スルホ基などが好ましい具体例として挙げられる。
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。例えば、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。
また、他の色材として色素多量体を用いることもできる。色素多量体は、溶剤に溶解して用いられる染料であることが好ましいが、色素多量体は、粒子を形成していてもよく、色素多量体が粒子である場合は通常溶剤に分散した状態で用いられる。粒子状態の色素多量体は、例えば乳化重合によって得ることができ、特開2015−214682号公報に記載されている化合物および製造方法が具体例として挙げられる。色素多量体は、特開2011−213925号公報、特開2013−041097号公報、特開2015−028144号公報、特開2015−030742号公報等に記載されている化合物を用いることもできる。
(黒色着色剤)
他の色材として用いられる黒色着色剤としては、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などの有機黒色着色剤が挙げられる。黒色着色剤は、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010−534726号公報、特表2012−515233号公報、特表2012−515234号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平1−170601号公報、特開平2−34664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。ビスベンゾフラノン化合物は、下記式で表される化合物およびこれらの混合物が好ましい。
式中、R1およびR2はそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表し、R3およびR4はそれぞれ独立して置換基を表し、aおよびbはそれぞれ独立して0〜4の整数を表し、aが2以上の場合、複数のR3は、同一であってもよく、異なってもよく、複数のR3は結合して環を形成していてもよく、bが2以上の場合、複数のR4は、同一であってもよく、異なってもよく、複数のR4は結合して環を形成していてもよい。R1〜R4が表す置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−OR301、−COR302、−COOR303、−OCOR304、−NR305R306、−NHCOR307、−CONR308R309、−NHCONR310R311、−NHCOOR312、−SR313、−SO2R314、−SO2OR315、−NHSO2R316または−SO2NR317R318を表し、R301〜R318は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。ビスベンゾフラノン化合物の詳細については、特表2010−534726号公報の段落番号0014〜0037の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の組成物においては、金属アゾ顔料Aと他の色材との組み合わせで黒色が形成されていることが好ましい。金属アゾ顔料Aと他の色材との好ましい組み合わせとしては、以下の(C1)〜(C6)が挙げられる。以下の(C1)の組み合わせの場合、上述した(1)の分光特性の組成物が得られやすい。以下の(C2)〜(C6)の組み合わせの場合、上述した(2)の分光特性の組成物が得られやすい。
(C1)金属アゾ顔料Aと紫色着色剤とを含有する態様。更に、他の色材としての黄色着色剤を含んでいてもよい。
(C2)金属アゾ顔料Aと赤色着色剤と青色着色剤と紫色着色剤とを含有する態様。更に、他の色材としての黄色着色剤を含んでいてもよい。
(C3)金属アゾ顔料Aと赤色着色剤と青色着色剤とを含有する態様。更に、他の色材としての黄色着色剤を含んでいてもよい。
(C4)金属アゾ顔料Aと青色着色剤と紫色着色剤とを含有する態様。更に、他の色材としての黄色着色剤を含んでいてもよい。
(C5)金属アゾ顔料Aと紫色着色剤と黒色着色剤とを含有する態様。更に、他の色材としての黄色着色剤を含んでいてもよい。
(C6)金属アゾ顔料Aと青色着色剤と黒色着色剤とを含有する態様。更に、他の色材としての黄色着色剤を含んでいてもよい。
金属アゾ顔料Aとしては、上述した(Az1)の態様の金属アゾ顔料であることが好ましい。紫色着色剤としては、C.I.Pigment Violet 23が好ましい。黄色着色剤としては、C.I.Pigment Yellow 139,150,185が好ましく、C.I.Pigment Yellow 139,150がより好ましく、C.I.Pigment Yellow 139が更に好ましい。赤色着色剤としては、Pigment Red 122,177,224,254,264が好ましく、Pigment Red 122,177、254,264がより好ましく、Pigment Red 254が更に好ましい。青色着色剤としては、C.I.Pigment Blue 15:6,16が好ましい。黒色着色剤としては、Irgaphor Black(BASF社)、C.I.Pigment Black 31、32が好ましい。
上記(C1)の組み合わせにおいては、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して紫色着色剤を50〜500質量部含有することが好ましく、75〜400質量部含有することがより好ましく、100〜350質量部含有することが更に好ましい。また、他の色材としての黄色着色剤をさらに含む場合は、他の色材としての黄色着色剤の含有量は、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがより好ましい。他の色材としての黄色着色剤は含有しない態様とすることもできる。
上記(C2)の組み合わせにおいては、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して赤色着色剤を100〜800質量部含有することが好ましく、200〜700質量部含有することがより好ましい。また、青色着色剤を100〜1000質量部含有することが好ましく、200〜800質量部含有することがより好ましい。また、紫色着色剤を50〜500質量部含有することが好ましく、70〜400質量部含有することがより好ましい。また、他の色材としての黄色着色剤をさらに含む場合は、他の色材としての黄色着色剤の含有量は、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがより好ましい。他の色材としての黄色着色剤は含有しない態様とすることもできる。
上記(C3)の組み合わせにおいては、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して赤色着色剤を100〜800質量部含有することが好ましく、200〜700質量部含有することがより好ましい。また、青色着色剤を100〜1000質量部含有することが好ましく、200〜800質量部含有することがより好ましい。また、他の色材としての黄色着色剤をさらに含む場合は、他の色材としての黄色着色剤の含有量は、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがより好ましい。他の色材としての黄色着色剤は含有しない態様とすることもできる。
上記(C4)の組み合わせにおいては、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して青色着色剤を100〜1000質量部含有することが好ましく、200〜800質量部含有することがより好ましい。また、紫色着色剤を50〜500質量部含有することが好ましく、75〜400質量部含有することがより好ましい。また、他の色材としての黄色着色剤をさらに含む場合は、他の色材としての黄色着色剤の含有量は、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがより好ましい。他の色材としての黄色着色剤は含有しない態様とすることもできる。
上記(C5)の組み合わせにおいては、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して紫色着色剤を50〜500質量部含有することが好ましく、75〜400質量部含有することがより好ましい。また、黒色着色剤を50〜1000質量部含有することが好ましく、100〜800質量部含有することがより好ましい。また、他の色材としての黄色着色剤をさらに含む場合は、他の色材としての黄色着色剤の含有量は、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがより好ましい。他の色材としての黄色着色剤は含有しない態様とすることもできる。
上記(C6)の組み合わせにおいては、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して青色着色剤を100〜1000質量部含有することが好ましく、200〜800質量部含有することがより好ましい。また、黒色着色剤を50〜1000質量部含有することが好ましく、100〜800質量部含有することがより好ましい。また、他の色材としての黄色着色剤をさらに含む場合は、他の色材としての黄色着色剤の含有量は、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがより好ましい。他の色材としての黄色着色剤は含有しない態様とすることもできる。
本発明の組成物において、他の色材の含有量は、本発明の組成物の全固形分中10〜80質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。上限は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。また、他の色材の含有量は、金属アゾ顔料Aの100質量部に対して50〜1000質量部であることが好ましい。下限は、70質量部以上であることが好ましく、100質量部以上であることがより好ましい。上限は、500質量部以下であることが好ましい。また、金属アゾ顔料Aと他の色材との合計の含有量は、本発明の組成物の全固形分中10〜70質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。本発明の組成物が他の色材を2種以上含む場合はそれらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
<<近赤外線吸収色素>>
本発明の組成物は近赤外線吸収色素を含有することができる。赤外線透過フィルタにおいて、近赤外線吸収色素は、透過する光(赤外線)をより長波長側に限定する役割を有している。本発明の組成物が近赤外線吸収色素を含有する場合においては、上述した(3)の分光特性の組成物が得られやすい。特に、金属アゾ顔料Aと他の色材を上記の(C2)〜(C6)の組み合わせで含む場合において、更に近赤外線吸収色素を含有することで、上述した(3)の分光特性の組成物が得られやすい。また、本発明の組成物が近赤外線吸収色素を含有する場合においては、高温高湿環境下での異物欠陥の発生をより効果的に抑制できる。
本発明において、近赤外線吸収色素としては、近赤外領域(好ましくは、波長700〜1100nm、より好ましくは波長700〜1000nm、更に好ましくは波長800〜900nm)の範囲に吸収極大を有する化合物が挙げられる。近赤外線吸収色素は、顔料であってもよく、染料であってもよい。
近赤外線吸収色素は、単環または縮合環の芳香族環を含むπ共役平面を有する化合物を好ましく用いることができる。近赤外線吸収色素が有するπ共役平面を構成する水素以外の原子数は、14個以上であることが好ましく、20個以上であることがより好ましく、25個以上であることが更に好ましく、30個以上であることが特に好ましい。上限は、例えば、80個以下であることが好ましく、50個以下であることがより好ましい。また、近赤外線吸収色素が有するπ共役平面は、単環または縮合環の芳香族環を2個以上含むことが好ましく、前述の芳香族環を3個以上含むことがより好ましく、前述の芳香族環を4個以上含むことが更に好ましく、前述の芳香族環を5個以上含むことが特に好ましい。上限は、100個以下が好ましく、50個以下がより好ましく、30個以下が更に好ましい。前述の芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、クアテリレン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾリン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、トリアジン環、ピロール環、インドール環、イソインドール環、カルバゾール環、および、これらの環を有する縮合環が挙げられる。
近赤外線吸収色素は、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、ジイモニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、インジゴ化合物およびジベンゾフラノン化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クロコニウム化合物およびインジゴ化合物から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物およびスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール化合物が特に好ましい。ジイモニウム化合物としては、例えば、特表2008−528706号公報に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。フタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006−343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013−195480号公報の段落番号0013〜0029に記載の化合物、特許第6081771号公報に記載のバナジウムフタロシアニンが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ナフタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。インジゴ化合物は、インジゴホウ素錯体化合物が好ましい。インジゴ化合物としては、特許第5642013号公報に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、近赤外線吸収色素は、特開2016−146619号公報に記載された化合物、特開2016−79331号公報に記載された化合物、特開2017−82029号公報に記載された化合物、特開2015−40176号公報に記載された化合物、特許第5539676号公報に記載された化合物を用いることもできる。また、近赤外線吸収色素は下記構造の化合物を用いることもできる。
ピロロピロール化合物としては、式(PP)で表される化合物であることが好ましい。
式中、R
1aおよびR
1bは、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R
2およびR
3は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R
2およびR
3は、互いに結合して環を形成してもよく、R
4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR
4AR
4B、または金属原子を表し、R
4は、R
1a、R
1bおよびR
3から選ばれる少なくとも一つと共有結合もしくは配位結合していてもよく、R
4AおよびR
4Bは、各々独立に置換基を表す。式(PP)の詳細については、特開2009−263614号公報の段落番号0017〜0047、特開2011−68731号公報の段落番号0011〜0036、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010〜0024の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
式(PP)において、R1aおよびR1bは、各々独立に、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。また、R1aおよびR1bが表すアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、特開2009−263614号公報の段落番号0020〜0022に記載された置換基や、上述した置換基Tが挙げられる。また、R1aおよびR1bが表すアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基が2個以上の置換基を有している場合、置換基同士が結合して環を形成していてもよい。
R1a、R1bで表される基の具体例としては、アルコキシ基を置換基として有するアリール基、水酸基を置換基として有するアリール基、アシルオキシ基を置換基として有するアリール基などが挙げられる。
式(PP)において、R2およびR3は、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。R2およびR3の少なくとも一方は電子求引性基が好ましい。ハメットの置換基定数σ値(シグマ値)が正の置換基は、電子求引性基として作用する。ここで、ハメット則で求められた置換基定数にはσp値とσm値がある。これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。本発明においては、ハメットの置換基定数σ値が0.2以上の置換基を電子求引性基として例示することができる。σ値は、0.25以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.35以上が更に好ましい。上限は特に制限はないが、好ましくは0.80以下である。電子求引性基の具体例としては、シアノ基(−CN:σp値=0.66)、カルボキシル基(−COOH:σp値=0.45)、アルコキシカルボニル基(例えば、−COOMe:σp値=0.45)、アリールオキシカルボニル基(例えば、−COOPh:σp値=0.44)、カルバモイル基(例えば、−CONH2:σp値=0.36)、アルキルカルボニル基(例えば、−COMe:σp値=0.50)、アリールカルボニル基(例えば、−COPh:σp値=0.43)、アルキルスルホニル基(例えば、−SO2Me:σp値=0.72)、アリールスルホニル基(例えば、−SO2Ph:σp値=0.68)などが挙げられ、シアノ基が好ましい。ここで、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、ハメットの置換基定数σ値については、例えば、特開2011−68731号公報の段落番号0017〜0018を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
式(PP)において、R2は電子求引性基(好ましくはシアノ基)を表し、R3はヘテロアリール基を表すことが好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示される。ヘテロアリール基は、窒素原子を1個以上有することが好ましい。式(PP)における2個のR2同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、式(PP)における2個のR3同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(PP)において、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基または−BR4AR4Bで表される基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基または−BR4AR4Bで表される基であることがより好ましく、−BR4AR4Bで表される基であることが更に好ましい。R4AおよびR4Bが表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または、ヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アリール基、または、ヘテロアリール基がより好ましく、アリール基が特に好ましい。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。式(PP)における2個のR4同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。R4AおよびR4Bは互いに結合して環を形成していてもよい。
式(PP)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。また、ピロロピロール化合物としては、特開2009−263614号公報の段落番号0016〜0058に記載の化合物、特開2011−68731号公報の段落番号0037〜0052に記載の化合物、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010〜0033に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
スクアリリウム化合物としては、下記式(SQ)で表される化合物が好ましい。
式(SQ)中、A
1およびA
2は、それぞれ独立に、アリール基、ヘテロアリール基または式(A−1)で表される基を表す;
式(A−1)中、Z
1は、含窒素複素環を形成する非金属原子団を表し、R
2は、アルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、dは、0または1を表し、波線は連結手を表す。式(SQ)の詳細については、特開2011−208101号公報の段落番号0020〜0049、特許第6065169号公報の段落番号0043〜0062、国際公開WO2016/181987号公報の段落番号0024〜0040の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
なお、式(SQ)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
スクアリリウム化合物としては、下記構造の化合物が挙げられる。また、特開2011−208101号公報の段落番号0044〜0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060〜0061に記載の化合物、国際公開WO2016/181987号公報の段落番号0040に記載の化合物、国際公開WO2013/133099号公報に記載の化合物、国際公開WO2014/088063号公報に記載の化合物、特開2014−126642号公報に記載の化合物、特開2016−146619号公報に記載の化合物、特開2015−176046号公報に記載の化合物、特開2017−25311号公報に記載の化合物、国際公開WO2016/154782号公報に記載の化合物、特許第5884953号公報に記載の化合物、特許第6036689号公報に記載の化合物、特許第5810604号公報に記載の化合物、特開2017−068120号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
シアニン化合物は、式(C)で表される化合物が好ましい。
式(C)
式中、Z
1およびZ
2は、それぞれ独立に、縮環してもよい5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子団であり、
R
101およびR
102は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
L
1は、奇数個のメチン基を有するメチン鎖を表し、
aおよびbは、それぞれ独立に、0または1であり、
aが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが二重結合で結合し、bが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが単結合で結合し、
式中のCyで表される部位がカチオン部である場合、X
1はアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位がアニオン部である場合、X
1はカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、cは0である。
シアニン化合物としては、特開2009−108267号公報の段落番号0044〜0045に記載の化合物、特開2002−194040号公報の段落番号0026〜0030に記載の化合物、特開2015−172004号公報に記載の化合物、特開2015−172102号公報に記載の化合物、特開2008−88426号公報に記載の化合物、特開2017−031394号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、近赤外線吸収色素は市販品を用いることもできる。例えば、SDO−C33(有本化学工業(株)製)、イーエクスカラーIR−14、イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーTX−EX−801B、イーエクスカラーTX−EX−805K((株)日本触媒製)、ShigenoxNIA−8041、ShigenoxNIA−8042、ShigenoxNIA−814、ShigenoxNIA−820、ShigenoxNIA−839(ハッコーケミカル社製)、EpoliteV−63、Epolight3801、Epolight3036(EPOLIN社製)、PRO−JET825LDI(富士フイルム(株)製)、NK−3027、NK−5060((株)林原製)、YKR−3070(三井化学(株)製)、FDN−003(山田化学工業(株)製)などが挙げられる。
本発明の組成物が近赤外線吸収色素を含有する場合、近赤外線吸収色素の含有量は、本発明の組成物の全固形分中1〜30質量%であることが好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。下限は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、近赤外線吸収色素の含有量は、金属アゾ顔料Aと他の色材との合計100質量部に対し5〜50質量部であることが好ましい。上限は、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、金属アゾ顔料Aと、他の色材と、近赤外線吸収色素との合計の含有量は、本発明の組成物の全固形分中10〜70質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましい。本発明の組成物は、近赤外線吸収色素を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。近赤外線吸収色素を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<硬化性化合物>>
本発明の組成物は、エチレン性不飽和結合基を有する化合物、および、環状エーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。以下、両者を合わせて硬化性化合物ともいう。エチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
(エチレン性不飽和結合基を有する化合物)
本発明において用いられるエチレン性不飽和結合基を有する化合物は、モノマーであってもよく、ポリマーであってもよい。以下、エチレン性不飽和結合基を有するモノマーを重合性モノマーともいう。また、エチレン性不飽和結合基を有するポリマーを重合性ポリマーともいう。
重合性モノマーの分子量は、3000未満であることが好ましい。上限は、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。重合性モノマーは、エチレン性不飽和結合基を3個以上含む化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合基を3〜15個含む化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合基を3〜6個含む化合物であることが更に好ましい。また、重合性モノマーは、3〜15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3〜6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性モノマーの具体例としては、特開2009−288705号公報の段落番号0095〜0108、特開2013−29760号公報の段落0227、特開2008−292970号公報の段落番号0254〜0257に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
重合性モノマーのC=C当量(重合性モノマーの分子量[g/mol]/重合性モノマーに含まれるエチレン性不飽和結合基の数)は、50〜1000であることが好ましい。下限は、60以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましい。上限は、700以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、200以下であることが更に好ましく、150以下であることがより一層好ましく、140以下であることが特に好ましい。重合性モノマーのC=C当量が上記範囲であれば、顔料活性面に効果的に吸着でき、金属アゾ顔料Aの凝集をより顕著に抑制できる。
重合性モノマーとして、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D−330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D−320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D−310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA−DPH−12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)、NKエステルA−TMMT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD RP−1040、DPCA−20(日本化薬(株)製)などが挙げられる。また、重合性化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM−309、M−310、M−321、M−350、M−360、M−313、M−315、M−306、M−305、M−303、M−452、M−450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A−GLY−9E、A−GLY−20E、A−TMM−3、A−TMM−3L、A−TMM−3LM−N、A−TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO−303、TMPTA、THE−330、TPA−330、PET−30(日本化薬(株)製)、TMPEOTA(ダイセル・オルネクス(株)製)などが挙げられる。
重合性モノマーとして、酸基を有する重合性モノマーを用いることも好ましい。酸基を有する重合性モノマーを用いることで、現像時に未露光部の組成物層が除去されやすく、現像残渣の発生を効果的に抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性モノマーの市販品としては、アロニックスM−510、M−520、アロニックスTO−2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性モノマーの酸価は、0.1〜40mgKOH/gであることが好ましく、5〜30mgKOH/gがより好ましい。重合性モノマーの酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する溶解性が良好であり、より優れた現像性が得られる。重合性モノマーの酸価が40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。
重合性モノマーとして、下記式(MO−1)〜(MO−6)で表される化合物を用いることも好ましい。なお、式中、Tがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がRに結合する。
上記の式において、nは0〜14であり、mは1〜8である。一分子内に複数存在するR、T、は、各々同一であっても、異なっていてもよい。
上記式(MO−1)〜(MO−6)で表される化合物の各々において、複数のRの内の少なくとも1つは、−OC(=O)CH=CH2、−OC(=O)C(CH3)=CH2、−NHC(=O)CH=CH2または−NHC(=O)C(CH3)=CH2を表す。上記式(MO−1)〜(MO−6)で表される重合性化合物の具体例としては、特開2007−269779号公報の段落0248〜0251に記載されている化合物が挙げられる。
また、重合性モノマーとして、カプロラクトン構造を有する化合物を用いることも好ましい。カプロラクトン構造を有する化合物としては、分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸及びε−カプロラクトンとをエステル化することにより得られる、ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。カプロラクトン構造を有する化合物は、下記式(Z−1)で表される化合物が好ましい。
式(Z−1)中、6個のRの全てが式(Z−2)で表される基であるか、又は6個のRのうち1〜5個が式(Z−2)で表される基であり、残余が式(Z−3)で表される基、酸基またはヒドロキシ基である。
式(Z−2)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2の数を示し、「*」は結合手であることを示す。
式(Z−3)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、「*」は結合手であることを示す。
重合性モノマーとして、式(Z−4)又は(Z−5)で表される化合物も挙げられる。
式(Z−4)及び(Z−5)中、Eは、各々独立に、−((CH2)yCH2O)−、又は−((CH2)yCH(CH3)O)−を表し、yは、各々独立に0〜10の整数を表し、Xは、各々独立に、(メタ)アクリロイル基、水素原子、又はカルボキシル基を表す。式(Z−4)中、(メタ)アクリロイル基の合計は3個又は4個であり、mは各々独立に0〜10の整数を表し、各mの合計は0〜40の整数である。式(Z−5)中、(メタ)アクリロイル基の合計は5個又は6個であり、nは各々独立に0〜10の整数を表し、各nの合計は0〜60の整数である。
式(Z−4)中、mは、0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましい。また、各mの合計は、2〜40の整数が好ましく、2〜16の整数がより好ましく、4〜8の整数が特に好ましい。
式(Z−5)中、nは、0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましい。また、各nの合計は、3〜60の整数が好ましく、3〜24の整数がより好ましく、6〜12の整数が特に好ましい。
また、式(Z−4)又は式(Z−5)中のE、すなわち、−((CH2)yCH2O)−又は−((CH2)yCH(CH3)O)−は、酸素原子側の末端がXに結合する形態が好ましい。
重合性モノマーとして、アルキレンオキシ基を有する化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性モノマーは、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する化合物であることが好ましく、エチレンオキシ基を有する化合物であることがより好ましく、エチレンオキシ基を4〜20個有する3〜6官能(メタ)アクリレート化合物であることがさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性モノマーの市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR−494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA−330などが挙げられる。
重合性モノマーとして、特公昭48−41708号公報、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載されているエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載されている分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する化合物も挙げられ、これらの化合物を用いることも好ましい。市販品としては、UA−7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA−40H(日本化薬(株)製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社化学(株)製)などが挙げられる。
また、重合性モノマーは、8UH−1006、8UH−1012(以上、大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB−A0(共栄社化学(株)製)などを用いることも好ましい。
また、重合性モノマーは、特開2017−48367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物を用いることもできる。
重合性ポリマーの重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましく、7000以上であることが更に好ましく、10000以上であることが特に好ましい。また、重合性ポリマーの重量平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。
重合性ポリマーのC=C当量(重合性ポリマーの分子量/重合性ポリマーに含まれるエチレン性不飽和結合基の数)は、100〜5000であることが好ましい。下限は、150以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましい。上限は、4500以下であることが好ましく、4000以下であることがより好ましい。重合性ポリマーのC=C当量が上記範囲であれば、顔料活性面に効果的に吸着でき、金属アゾ顔料Aの凝集をより顕著に抑制できる。
重合性ポリマーは、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましく、下記式(A−1−1)で表される繰り返し単位を含むことがより好ましい。また、重合性ポリマーは、エチレン性不飽和結合基を有する繰り返し単位を重合性ポリマーの全繰り返し単位中10モル%以上含有することが好ましく、10〜80モル%含有することがより好ましく、20〜70モル%含有することが更に好ましい。
式(A−1−1)において、X
1は繰り返し単位の主鎖を表し、L
1は単結合または2価の連結基を表し、Y
1はエチレン性不飽和結合基を表す。
式(A−1−1)において、X1が表す繰り返し単位の主鎖としては、特に限定はない。公知の重合可能なモノマーから形成される連結基であれば特に制限ない。例えば、ポリ(メタ)アクリル系連結基、ポリアルキレンイミン系連結基、ポリエステル系連結基、ポリウレタン系連結基、ポリウレア系連結基、ポリアミド系連結基、ポリエーテル系連結基、ポリスチレン系連結基などが挙げられ、原料素材の入手性や製造適性の観点からポリ(メタ)アクリル系連結基、ポリアルキレンイミン系連結基が好ましく、ポリ(メタ)アクリル系連結基がより好ましい。
式(A−1−1)において、L1が表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルキレンオキシ基)、オキシアルキレンカルボニル基(好ましくは炭素数1〜12のオキシアルキレンカルボニル基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜20のアリーレン基)、−NH−、−SO−、−SO2−、−CO−、−O−、−COO−、OCO−、−S−およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。
式(A−1−1)において、Y1が表すエチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がより好ましい。
重合性ポリマーは、更にグラフト鎖を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。重合性ポリマーがグラフト鎖を有する繰り返し単位を含むことにより、グラフト鎖による立体障害によって金属アゾ顔料Aなどの凝集などをより効果的に抑制できる。重合性ポリマーは、グラフト鎖を有する繰り返し単位を、重合性ポリマーの全繰り返し単位中1.0〜60モル%含有することが好ましく、1.5〜50モル%含有することがより好ましい。グラフト鎖を有する繰り返し単位を含む重合性ポリマーは分散剤として好ましく用いられる。
本発明において、グラフト鎖とは、繰り返し単位の主鎖から枝分かれして伸びるポリマー鎖のことを意味する。グラフト鎖の長さについては特に制限されないが、グラフト鎖が長くなると立体反発効果が高くなり、金属アゾ顔料Aなどの分散性を高めることができる。グラフト鎖としては、水素原子を除いた原子数が40〜10000であることが好ましく、水素原子を除いた原子数が50〜2000であることがより好ましく、水素原子を除いた原子数が60〜500であることが更に好ましい。
重合性ポリマーが有するグラフト鎖は、ポリエステル構造、ポリエーテル構造、ポリ(メタ)アクリル構造、ポリウレタン構造、ポリウレア構造およびポリアミド構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含むことが好ましく、ポリエステル構造、ポリエーテル構造およびポリ(メタ)アクリル構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含むことがより好ましく、ポリエステル構造を含むことが更に好ましい。ポリエステル構造としては、下記の式(G−1)、式(G−4)または式(G−5)で表される構造が挙げられる。また、ポリエーテル構造としては、下記の式(G−2)で表される構造が挙げられる。また、ポリ(メタ)アクリル構造としては、下記の式(G−3)で表される構造が挙げられる。
上記式において、RG1およびRG2は、それぞれアルキレン基を表す。RG1およびRG2で表されるアルキレン基としては特に制限されないが、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜16の直鎖状又は分岐状のアルキレン基がより好ましく、炭素数3〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が更に好ましい。
上記式において、RG3は、水素原子またはメチル基を表す。
上記式において、QG1は、−O−または−NH−を表し、LG1は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルキレンオキシ基)、オキシアルキレンカルボニル基(好ましくは炭素数1〜12のオキシアルキレンカルボニル基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜20のアリーレン基)、−NH−、−SO−、−SO2−、−CO−、−O−、−COO−、OCO−、−S−およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。
上記式において、RG4は、水素原子または置換基を表す。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。
グラフト鎖の末端構造としては、特に限定されない。水素原子であってもよく、置換基であってもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。なかでも、色材などの分散性向上の観点から、立体反発効果を有する基が好ましく、炭素数5〜24のアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。
本発明において、グラフト鎖としては、下記式(G−1a)、式(G−2a)、式(G−3a)、式(G−4a)または式(G−5a)で表される構造であることが好ましい。
上記式において、RG1およびRG2はそれぞれ独立してアルキレン基を表し、RG3は水素原子またはメチル基を表し、QG1は−O−または−NH−を表し、LG1は単結合または2価の連結基を表し、RG4は水素原子または置換基を表し、W100は水素原子または置換基を表す。n1〜n5はそれぞれ独立して2以上の整数を表す。RG1〜RG4、QG1、LG1については、式(G−1)〜(G−5)で説明したRG1〜RG4、QG1、LG1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(G−1a)〜(G−5a)において、W100は、置換基であることが好ましい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。なかでも、色材などの分散性向上の観点から、立体反発効果を有する基が好ましく、炭素数5〜24のアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。
式(G−1a)〜(G−5a)において、n1〜n5はそれぞれ独立して2以上の整数を表し、3以上であることがより好ましく、5以上であることが更に好ましい。上限は例えば、100以下が好ましく、80以下がより好ましく、60以下が更に好ましい。
グラフト鎖を有する繰り返し単位としては、下記式(A−1−2)で表される繰り返し単位が挙げられる。
式(A−1−2)において、X2は繰り返し単位の主鎖を表し、L2は単結合または2価の連結基を表し、W1はグラフト鎖を表す。
式(A−1−2)におけるX2が表す繰り返し単位の主鎖としては、式(A−1−1)のX1で説明した構造が挙げられ、好ましい範囲も同様である。式(A−1−2)におけるL2が表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜20のアリーレン基)、−NH−、−SO−、−SO2−、−CO−、−O−、−COO−、OCO−、−S−およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。式(A−1−2)におけるW1が表すグラフト鎖としては、上述したグラフト鎖が挙げられる。
重合性ポリマーがグラフト鎖を有する繰り返し単位を含む場合、グラフト鎖を有する繰り返し単位の重量平均分子量(Mw)は、1000以上であることが好ましく、1000〜10000であることがより好ましく、1000〜7500であることが更に好ましい。なお、本発明において、グラフト鎖を有する繰り返し単位の重量平均分子量は、同繰り返し単位の重合に用いた原料モノマーの重量平均分子量から算出した値である。例えば、グラフト鎖を有する繰り返し単位は、マクロモノマーを重合することで形成できる。ここで、マクロモノマーとは、ポリマー末端に重合性基が導入された高分子化合物を意味する。マクロモノマーを用いてグラフト鎖を有する繰り返し単位を形成した場合においては、マクロモノマーの重量平均分子量がグラフト鎖を有する繰り返し単位の重量平均分子量に該当する。
重合性ポリマーは、更に酸基を有する繰り返し単位を含むことも好ましい。重合性ポリマーが更に酸基を有する繰り返し単位を含むことで、金属アゾ顔料Aなどの分散性をより向上できる。更には、現像性を向上させることもできる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基が挙げられる。
酸基を有する繰り返し単位としては、下記式(A−1−3)で表される繰り返し単位が挙げられる。
式(A−1−3)において、X3は繰り返し単位の主鎖を表し、L3は単結合または2価の連結基を表し、A1は酸基を表す。
式(A−1−3)におけるX3が表す繰り返し単位の主鎖としては、式(A−1−1)のX1で説明した構造が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
式(A−1−3)におけるL3が表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルキレンオキシ基)、オキシアルキレンカルボニル基(好ましくは炭素数1〜12のオキシアルキレンカルボニル基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜20のアリーレン基)、−NH−、−SO−、−SO2−、−CO−、−O−、−COO−、OCO−、−S−およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。アルキレン基、アルキレンオキシ基におけるアルキレン基、オキシアルキレンカルボニル基におけるアルキレン基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。また、アルキレン基、アルキレンオキシ基におけるアルキレン基、オキシアルキレンカルボニル基におけるアルキレン基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。
式(A−1−3)におけるA1が表す酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基が挙げられる。
重合性ポリマーの酸価は、20〜150mgKOH/gであることが好ましい。上限は、100mgKOH/g以下であることがより好ましい。下限は、30mgKOH/g以上であることが好ましく、35mgKOH/g以上であることがより好ましい。重合性ポリマーの酸価が上記範囲であれば、特に優れた分散性が得られやすい。さらには、優れた現像性が得られやすい。
また、重合性ポリマーは、他の繰り返し単位として、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むことができる。
式(ED1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1〜30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010−168539号公報の記載を参酌できる。
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013−29760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
(環状エーテル基を有する化合物)
本発明において用いられる環状エーテル基を有する化合物としては、1分子内に環状エーテル基を2個以上有する化合物が挙げられる。環状エーテル基を有する化合物に含まれる環状エーテル基の数は、100個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましく、5個以下であることが更に好ましい。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられ、エポキシ基であることが好ましい。すなわち、環状エーテル基を有する化合物は、エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ともいう)であることが好ましい。
エポキシ化合物のエポキシ当量(=エポキシ基を有する化合物の分子量/エポキシ基の数)は、500以下であることが好ましく、100〜400であることがより好ましく、100〜300であることがさらに好ましい。エポキシ化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)であってもよい。エポキシ化合物の分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)は、200〜100000が好ましく、500〜50000がより好ましい。分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)の上限は、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。
エポキシ化合物は、特開2013−011869号公報の段落番号0034〜0036、特開2014−043556号公報の段落番号0147〜0156、特開2014−089408号公報の段落番号0085〜0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。エポキシ化合物の市販品としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、jER825、jER827、jER828、jER834、jER1001、jER1002、jER1003、jER1055、jER1007、jER1009、jER1010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC(株)製)等であり、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、jER806、jER807、jER4004、jER4005、jER4007、jER4010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC(株)製)、LCE−21、RE−602S(以上、日本化薬(株)製)等であり、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、jER152、jER154、jER157S70、jER157S65(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON N−740、EPICLON N−770、EPICLON N−775(以上、DIC(株)製)等であり、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−690、EPICLON N−695(以上、DIC(株)製)、EOCN−1020(日本化薬(株)製)等であり、脂肪族エポキシ樹脂としては、ADEKA RESIN EP−4080S、同EP−4085S、同EP−4088S(以上、(株)ADEKA製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、(株)ダイセル製)、デナコール EX−212L、EX−214L、EX−216L、EX−321L、EX−850L(以上、ナガセケムテックス(株)製)等である。その他にも、ADEKA RESIN EP−4000S、同EP−4003S、同EP−4010S、同EP−4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC−2000、NC−3000、NC−7300、XD−1000、EPPN−501、EPPN−502(以上、(株)ADEKA製)、jER1031S(三菱化学(株)製)、マープルーフG−0150M、G−0105SA、G−0130SP、G−0250SP、G−1005S、G−1005SA、G−1010S、G−2050M、G−01100、G−01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。
本発明の組成物において、エチレン性不飽和結合基を有する化合物の含有量は、組成物の全固形分中1〜50質量%であることが好ましい。下限は3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。また、エチレン性不飽和結合基を有する化合物の含有量は、上述した金属アゾ顔料Aの100質量部に対して30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることが更に好ましい。上限は、750質量部以下であることが好ましく、700質量部以下であることがより好ましく、650質量部以下であることが更に好ましく、600質量部以下であることが特に好ましい。金属アゾ顔料Aとエチレン性不飽和結合基を有する化合物の割合が上記範囲であれば、本発明の効果がより顕著に得られる。また、エチレン性不飽和結合基を有する化合物として、重合性モノマーと重合性ポリマーとを併用する場合、重合性ポリマーの含有量は、重合性モノマーの100質量部に対して5〜500質量部であることが好ましい。下限は8質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。上限は、450質量部以下であることが好ましく、400質量部以下であることがより好ましい。
本発明の組成物において、環状エーテル基を有する化合物の含有量は、組成物の全固形分中1〜50質量%であることが好ましい。下限は3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。また、環状エーテル基を有する化合物の含有量は、上述した金属アゾ顔料Aの100質量部に対して30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることが更に好ましい。上限は、750質量部以下であることが好ましく、700質量部以下であることがより好ましく、650質量部以下であることが更に好ましく、600質量部以下であることが特に好ましい。金属アゾ顔料Aと環状エーテル基を有する化合物の割合が上記範囲であれば、本発明の効果がより顕著に得られる。
本発明の組成物において、エチレン性不飽和結合基を有する化合物と環状エーテル基を有する化合物との合計の含有量は、組成物の全固形分中1〜50質量%であることが好ましい。下限は3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。また、エチレン性不飽和結合基を有する化合物と環状エーテル基を有する化合物との合計の含有量は、上述した金属アゾ顔料Aの100質量部に対して30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることが更に好ましい。上限は、750質量部以下であることが好ましく、700質量部以下であることがより好ましく、650質量部以下であることが更に好ましく、600質量部以下であることが特に好ましい。含有量が上記範囲であれば、本発明の効果がより顕著に得られる。また、本発明の組成物が、エチレン性不飽和結合基を有する化合物と環状エーテル基を有する化合物とを含有する場合、エチレン性不飽和結合基を有する化合物100質量部に対して環状エーテル基を有する化合物を1〜50質量部含有することが好ましい。上限は、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。下限は、5質量部以上であることが好ましく、7質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが更に好ましい。
<<他の樹脂>>
本発明の組成物は、上述した硬化性化合物以外の樹脂(以下、他の樹脂ともいう)をさらに含有することができる。他の樹脂は、例えば、顔料などの粒子を組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。
他の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2000〜2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
他の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、樹脂は、国際公開WO2016/088645号公報の実施例に記載された樹脂、特開2017−57265号公報に記載された樹脂、特開2017−32685号公報に記載された樹脂、特開2017−075248号公報に記載された樹脂、特開2017−066240号公報に記載された樹脂を用いることもできる。また、フルオレン骨格を有する樹脂を用いることもできる。フルオレン骨格を有する樹脂としては、下記構造の樹脂が挙げられる。以下の構造式中、Aは、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物から選択されるカルボン酸二無水物の残基であり、Mはフェニル基またはベンジル基である。フルオレン骨格を有する樹脂については、米国特許出願公開第2017/0102610号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
他の樹脂は、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。
酸基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましい。具体例としては、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有するポリマーに酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。また他のモノマーは、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミドモノマーを用いることもできる。これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
酸基を有する樹脂は、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
酸基を有する樹脂は、上述したエーテルダイマーを含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むポリマーであることも好ましい。
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
式(X)において、R
1は、水素原子またはメチル基を表し、R
2は炭素数2〜10のアルキレン基を表し、R
3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは1〜15の整数を表す。
酸基を有する樹脂については、特開2012−208494号公報の段落番号0558〜0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685〜0700)の記載、特開2012−198408号公報の段落番号0076〜0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。
酸基を有する樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。
本発明の組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40〜105mgKOH/gが好ましく、50〜105mgKOH/gがより好ましく、60〜105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、画素の下地に発生する残渣をより低減することができる。
分散剤として用いる樹脂は、側鎖にグラフト鎖を有する繰り返し単位を含む樹脂(以下、グラフト樹脂ともいう)であることが好ましい。この態様によれば、金属アゾ顔料Aなどの分散性をより向上させることができる。ここで、グラフト鎖とは、繰り返し単位の主鎖から枝分かれして伸びるポリマー鎖のことを意味する。グラフト鎖の長さについては特に制限されないが、グラフト鎖が長くなると立体反発効果が高くなり、顔料などの分散性を高めることができる。グラフト鎖においては、水素原子を除いた原子数が40〜10000であることが好ましく、水素原子を除いた原子数が50〜2000であることがより好ましく、水素原子を除いた原子数が60〜500であることが更に好ましい。
グラフト鎖は、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリ(メタ)アクリル鎖、ポリウレタン鎖、ポリウレア鎖およびポリアミド鎖から選ばれる少なくとも1種の構造を含むことが好ましく、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖およびポリ(メタ)アクリル鎖から選ばれる少なくとも1種の構造を含むことがより好ましく、ポリエステル鎖を含むことが更に好ましい。
グラフト鎖の末端構造としては、特に限定されない。水素原子であってもよく、置換基であってもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。なかでも、金属アゾ顔料Aなどの分散性向上の観点から、立体反発効果を有する基が好ましく、炭素数5〜24のアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。
グラフト樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。また、グラフト樹脂の詳細は、特開2012−255128号公報の段落番号0025〜0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系樹脂であることも好ましい。オリゴイミン系樹脂としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40〜10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子としては、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。オリゴイミン系樹脂については、特開2012−255128号公報の段落番号0102〜0166の記載を参酌でき、本明細書には上記内容が組み込まれる。オリゴイミン系樹脂の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。また、特開2012−255128号公報の段落番号0168〜0174に記載の樹脂を用いることができる。
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製のDisperbykシリーズ(例えば、Disperbyk−111など)、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパースシリーズ(例えば、ソルスパース76500など)などが挙げられる。また、特開2014−130338号公報の段落番号0041〜0130に記載された顔料分散剤を用いることもできる。また、上述した酸基を有する樹脂や重合性ポリマーなどを分散剤として用いることもできる。なお、上記分散剤として説明した樹脂は、分散剤以外の用途で使用することもできる。例えば、バインダーとして用いることもできる。
本発明の組成物が他の樹脂を含む場合、他の樹脂の含有量は、本発明の組成物の全固形分中1〜50質量%であることが好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。下限は、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。また、他の樹脂を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本発明の組成物は、他の樹脂を実質的に含まないこともできる。本発明の組成物が他の樹脂を実質的に含まない場合とは、本発明の組成物の全固形分中における他の樹脂の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
また、上述した硬化性化合物と他の樹脂との合計の含有量は、本発明の組成物の全固形分中5〜50質量%であることが好ましい。下限は8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。また、他の樹脂を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<溶剤>>
本発明の組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤は有機溶剤が好ましい。溶剤は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば特に制限はない。
有機溶剤の例としては、例えば、以下の有機溶剤が挙げられる。エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸シクロヘキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3−アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3−アルキルオキシプロピオン酸メチル、3−アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等))、2−アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2−アルキルオキシプロピオン酸メチル、2−アルキルオキシプロピオン酸エチル、2−アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル))、2−アルキルオキシ−2−メチルプロピオン酸メチル及び2−アルキルオキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(例えば、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等が挙げられる。エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等が挙げられる。芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン等が好適に挙げられる。また、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドも溶解性向上の観点から好ましい。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、溶剤として金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましい。溶剤中の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて金属含有量が質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
溶剤には、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
本発明で用いられる有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
溶剤の含有量は、組成物の固形分濃度(全固形分)が5〜50質量%となる量であることが好ましい。上限は45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。下限は8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが好ましい。
また、本発明の組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。環境規制物質は、例えばベンゼン;トルエン、キシレン等のアルキルベンゼン類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類等が挙げられる。これらは、REACH(Registration Evaluation Authorization and Restriction of CHemicals)規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、VOC(Volatile Organic Compounds)規制等のもとに環境規制物質として登録されており、使用量や取り扱い方法が厳しく規制されている。これらの化合物は、本発明の組成物に用いられる各成分などを製造する際に溶媒として用いられることがあり、残留溶媒として組成物中に混入することがある。人への安全性、環境への配慮の観点よりこれらの物質は可能な限り低減することが好ましい。環境規制物質を低減する方法としては、系中を加熱や減圧して環境規制物質の沸点以上にして系中から環境規制物質を留去して低減する方法が挙げられる。また、少量の環境規制物質を留去する場合においては、効率を上げる為に該当溶媒と同等の沸点を有する溶媒と共沸させることも有用である。また、ラジカル重合性を有する化合物を含有する場合、減圧留去中にラジカル重合反応が進行して分子間で架橋してしまうことを抑制するために重合禁止剤等を添加して減圧留去してもよい。これらの留去方法は、原料の段階、原料を反応させた生成物(例えば重合した後の樹脂溶液や多官能モノマー溶液)の段階、またはこれらの化合物を混ぜて作製した組成物の段階いずれの段階でも可能である。
<<光重合開始剤>>
本発明の組成物は、更に光重合開始剤を含むことができる。特に、本発明の組成物がエチレン性不飽和結合基を有する化合物を含む場合においては、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3−アリール置換クマリン化合物が好ましく、オキシム化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。光重合開始剤としてオキシム化合物を用いることで優れた硬化性が得られる。更には、低温環境下で組成物を長期間保管した場合であっても、欠陥がより抑制された膜を製造することができる。このような効果が得られる理由としては以下によるものであると推測される。本発明の組成物に含まれる金属アゾ顔料Aは、2種以上の金属イオンを含むが、金属イオンの種類により、上述したアニオンと金属イオンとで構成される金属アゾ化合物(金属錯体)の配座が異なる。例えば、Cu2+の場合は平面配座の金属錯体を形成し、Zn2+の場合は正八面体配座の金属錯体を形成する。このため、溶剤などを含む組成物中において、上述した金属アゾ顔料Aは、会合し難く不安定な状態で存在していると推測され、組成物の保管時に金属アゾ顔料Aが凝集し易い傾向にあると推測される。また、特に、金属アゾ顔料Aにおけるニッケルイオン(Ni2+)の含有量が少ないか、あるいは金属アゾ顔料Aがニッケルイオンを含まない場合においては、エネルギー的に不安定であると推測され、組成物の保管時に金属アゾ顔料Aがより凝集し易い傾向にあると推測される。しかしながら、オキシム化合物を配合することでオキシム化合物が金属アゾ顔料Aに対して配位してキレート剤として作用すると推測され、その結果、金属アゾ顔料Aを安定化させることができ、金属アゾ顔料Aの凝集などをより効果的に抑制できると推測される。そのため、低温環境下で組成物を長期間保管した場合であっても、欠陥がより抑制された膜を製造することができると推測される。
α−ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE−184、DAROCUR−1173、IRGACURE−500、IRGACURE−2959、IRGACURE−127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α−アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE−907、IRGACURE−369、IRGACURE−379、及び、IRGACURE−379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE−819、DAROCUR−TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
オキシム化合物としては、例えば、特開2001−233842号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、特開2006−342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653−1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156−162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202−232)に記載の化合物、特開2000−66385号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、特表2004−534797号公報に記載の化合物、特開2006−342166号公報に記載の化合物、特開2017−19766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開WO2015/152153号公報に記載の化合物、国際公開WO2017/051680公報に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、例えば、3−ベンゾイルオキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、および2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02、IRGACURE−OXE03、IRGACURE−OXE04(以上、BASF社製)、TRONLY TR−PBG−304、TRONLY TR−PBG−309、TRONLY TR−PBG−305(常州強力電子新材料有限公司(CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD)製)、アデカアークルズNCI−930、アデカオプトマーN−1919(特開2012−14052号公報の光重合開始剤2)((株)ADEKA製)などが挙げられる。
また上記以外のオキシム化合物として、カルバゾール環のN位にオキシムが連結した特表2009−519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号公報に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010−15025号公報および米国特許公開2009−292039号公報に記載の化合物、国際公開WO2009/131189号公報に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物、405nmに吸収極大を有し、g線光源に対して良好な感度を有する特開2009−221114号公報に記載の化合物などが挙げられる。
本発明は、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014−137466号公報に記載の化合物が挙げられる。
本発明は、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載の化合物OE−01〜OE−75が挙げられる。
本発明は、光重合開始剤として、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開WO2013/083505号公報に記載の化合物が挙げられる。
本発明は、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報に記載の化合物、特表2014−500852号公報に記載の化合物24、36〜40、特開2013−164471号公報に記載の化合物(C−3)などが挙げられる。
本発明は、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体であることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013−114249号公報の段落番号0031〜0047、特開2014−137466号公報の段落番号0008〜0012、0070〜0079に記載の化合物、特許4223071号公報の段落番号0007〜0025に記載の化合物、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)などが挙げられる。
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
オキシム化合物は、波長350〜500nmの範囲に吸収極大を有する化合物であることが好ましく、波長360〜480nmの範囲に吸収極大を有する化合物であることがより好ましい。また、オキシム化合物は、365nmおよび405nmの吸光度が高い化合物であることが好ましい。
オキシム化合物の365nmまたは405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000〜300,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましく、5,000〜200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary−5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
本発明は、2官能あるいは3官能以上の光重合開始剤を用いてもよい。このような光重合開始剤を用いることにより、光重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光重合開始剤の具体例としては、特表2010−527339号公報、特表2011−524436号公報、国際公開WO2015/004565号公報、特表2016−532675号公報の段落番号0417〜0412、国際公開WO2017/033680号公報の段落番号0039〜0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013−522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開WO2016/034963号公報に記載されているCmpd1〜7、特表2017−523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017−167399号公報の段落番号0020〜0033に記載されている光開始剤、特開2017−151342号公報の段落番号0017〜0026に記載されている光重合開始剤(A)などが挙げられる。
本発明の組成物が光重合開始剤を含有する場合、光重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分中0.1〜30質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
また、光重合開始剤の含有量は、上述した金属アゾ顔料Aの100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましい。下限は、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることが更に好ましい。上限は、100質量部以上であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。
また、光重合開始剤としてオキシム化合物を用いた場合、オキシム化合物の含有量は、上述した金属アゾ顔料Aの100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましい。下限は、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることが更に好ましい。上限は、100質量部以上であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。この態様によれば、上述した本発明の効果がより顕著に得られる傾向にある。
本発明の組成物は、光重合開始剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。光重合開始剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<多官能チオール>>
本発明の組成物は多官能チオールを含有することができる。多官能チオールは、チオール(SH)基を2個以上有する化合物である。多官能チオールは上述の光重合開始剤とともに使用することにより、光照射後のラジカル重合過程において、連鎖移動剤として働き、酸素による重合阻害を受けにくいチイルラジカルが発生するので、組成物の感度を高めることができる。特にSH基がメチレン、エチレン基等の脂肪族基に結合した多官能脂肪族チオールが好ましい。
多官能チオールとしては、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンなどが挙げられる。また、下記構造の化合物も挙げられる。
多官能チオールの含有量は、本発明の組成物の全固形分に対し0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が更に好ましい。本発明の組成物は、多官能チオールを、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。多官能チオールを2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<顔料誘導体>>
本発明の組成物は顔料誘導体を含有することができる。この態様によれば、温度変化に対して分光の変動が抑制された膜を形成できる。顔料誘導体としては、顔料の一部が、酸基、塩基性基又はフタルイミド基などで置換された構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体は下記式(syn1)で表される化合物であることが好ましい。
式(syn1)中、Pは色素構造を表し、Lは単結合または連結基を表し、Xは酸基、塩基性基またはフタルイミド基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なってもよい。
式(syn1)におけるPが表す色素構造としては、ピロロピロール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キノリン色素構造、キナクリドン色素構造、イソインドリン色素構造、イソインドリノン色素構造、アントラキノン色素構造、ジアントラキノン色素構造、ベンゾイソインドール色素構造、チアジンインジゴ色素構造、アゾ色素構造、キノフタロン色素構造、フタロシアニン色素構造、ナフタロシアニン色素構造、ジオキサジン色素構造、ペリレン色素構造、ペリノン色素構造、ベンゾイミダゾロン色素構造、ベンゾチアゾール色素構造、ベンゾイミダゾール色素構造およびベンゾオキサゾール色素構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キナクリドン色素構造およびベンゾイミダゾロン色素構造から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール色素構造が特に好ましい。
式(syn1)においてLが表す連結基としては、炭化水素基、複素環基、−NR−、−SO2−、−S−、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、もしくはこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とを組み合わせた基であってもよい。炭化水素基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。複素環基は、5員環または6員環であることが好ましい。複素環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。縮合環の縮合数は、2〜8が好ましく、2〜4がより好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられ、窒素原子が好ましい。
式(syn1)中、Xは、酸基、塩基性基またはフタルイミド基を表す。Xが表す酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基等が挙げられる。カルボン酸アミド基としては、−NHCORX1で表される基が好ましい。スルホン酸アミド基としては、−NHSO2RX2で表される基が好ましい。イミド酸基としては、−SO2NHSO2RX3、−CONHSO2RX4、−CONHCORX5または−SO2NHCORX6で表される基が好ましい。RX1〜RX6は、それぞれ独立に、炭化水素基または複素環基を表す。RX1〜RX6が表す、炭化水素基および複素環基は、置換基を有してもよい。置換基としては、上述した置換基Tが挙げられ、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。Xが表す塩基性基としては、アミノ基が挙げられる。アミノ基は、−NR100R101で表される基が好ましい。R100およびR101は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基または複素環基を表す。R100およびR101が表す、炭化水素基および複素環基は、置換基を有してもよい。置換基としては、上述した置換基Tが挙げられる。Xが表すフタルイミド基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基Tが挙げられる。
式(syn1)において、mは1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。式(syn1)において、nは1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。
顔料誘導体としては、下記構造の化合物が挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。また、顔料誘導体としては、特開昭56−118462号公報、特開昭63−264674号公報、特開平1−217077号公報、特開平3−9961号公報、特開平3−26767号公報、特開平3−153780号公報、特開平3−45662号公報、特開平4−285669号公報、特開平6−145546号公報、特開平6−212088号公報、特開平6−240158号公報、特開平10−30063号公報、特開平10−195326号公報、国際公開WO2011/024896号公報の段落番号0086〜0098、国際公開WO2012/102399号公報の段落番号0063〜0094、国際公開WO2017/038252号公報の段落番号0082、特許第5299151号公報に記載が挙げられる。
本発明の組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、組成物に含まれる顔料の100質量部に対し、1〜30質量部が好ましく、3〜20質量部がさらに好ましい。また、顔料誘導体の含有量は、金属アゾ顔料Aの100質量部に対し、1〜30質量部が好ましく、3〜20質量部がさらに好ましい。本発明の組成物は、顔料誘導体を、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。顔料誘導体を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<界面活性剤>>
本発明の組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0238〜0245の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられ、フッ素系界面活性剤が好ましい。本発明の組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)が向上し、省液性をより改善できる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、7〜25質量%が更に好ましい。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的である。
フッ素系界面活性剤としては、特開2014−41318号公報の段落番号0060〜0064(対応する国際公開WO2014/17669号公報の段落番号0060〜0064)に記載の界面活性剤、特開2011−132503号公報の段落番号0117〜0132に記載の界面活性剤などが挙げられる。また、フッ素系界面活性剤の市販品としては、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS−330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、SC−101、SC−103、SC−104、SC−105、SC−1068、SC−381、SC−383、S−393、KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造のアクリル系化合物であって、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物を用いることができる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(例えばメガファックDS−21)が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との共重合体を用いることができる。このようなフッ素系界面活性剤については、特開2016−216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることができる。ブロックポリマーとしては、例えば特開2011−89090号公報に記載された化合物が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素共重合体を用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する繰り返し単位を含む含フッ素共重合体を用いることができる。具体例としては、特開2010−164965号公報の段落番号0050〜0090および段落番号0289〜0295に記載された化合物、DIC(株)製のメガファックRS−101、RS−102、RS−718K、RS−72−K等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、特開2015−117327号公報の段落番号0015〜0158に記載の化合物を用いることもできる。
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW−101、NCW−1001、NCW−1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD−6112、D−6112−W、D−6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
界面活性剤の含有量は組成物の全固形分中、0.001〜5質量%が好ましい。上限は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。下限は、0.05質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。本発明の組成物は、界面活性剤を、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。界面活性剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<紫外線吸収剤>>
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012−208374号公報の段落番号0052〜0072、特開2013−68814号公報の段落番号0317〜0334、特開2016−162946号公報の段落番号0061〜0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の具体例としては、下記構造の化合物などが挙げられる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV−503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。
本発明の組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有量は、組成物の全固形分中、0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が特に好ましい。本発明の組成物は、紫外線吸収剤を1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。紫外線吸収剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<シランカップリング剤>>
本発明の組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤は、特開2009−288703号公報の段落番号0018〜0036に記載の化合物、特開2009−242604号公報の段落番号0056〜0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
シランカップリング剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分中、0.001〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。本発明の組成物は、シランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。シランカップリング剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<重合禁止剤>>
本発明の組成物は、重合禁止剤を含有することが好ましい。本発明の組成物が重合禁止剤を含有することにより、低温環境下で組成物を長期間保管した場合であっても、欠陥がより抑制された膜を製造することができる。このような効果が得られる詳細な理由は不明であるが、以下によるものであると推測される。すなわち、本発明の組成物に含まれる金属アゾ顔料Aは、2種以上の金属イオンを含むので、組成物の保管時において、上述したアニオンと金属イオンとで構成される金属アゾ化合物同士で金属交換が生じて析出物が生じると推測されるが、重合禁止剤を含有させることにより、金属アゾ化合物の活性化度を低下させて金属アゾ化合物同士で金属交換が生じにくくなると推測され、その結果、上述した効果が得られたと推測される。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)等、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルなどが挙げられる。
本発明の組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、組成物中0.0001〜1質量%が好ましい。下限は、0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましい。上限は、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。本発明の組成物は重合禁止剤を1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。重合禁止剤を2種以上含む場合はそれらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<その他添加剤>>
本発明の組成物には、必要に応じて、各種添加剤、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、潜在酸化防止剤、熱重合開始剤等を配合することができる。これらの添加剤については、特開2012−003225号公報の段落番号0183(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008−250074号公報の段落番号0101〜0104、0107〜0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011−90147号公報の段落番号004
2に記載の化合物)、チオエーテル化合物などを用いることができる。市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−50F、AO−60、AO−60G、AO−80、AO−330など)が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100〜250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80〜200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開WO2014/021023号公報、国際公開WO2017/030005号公報、特開2017−008219号公報に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、アデカアークルズGPA−5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。熱重合開始剤としては、ピナコール化合物、有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられ、ピナコール化合物が好ましい。ピナコール化合物としては、ベンゾピナコール、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メチルフェニル)エタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メトキシフェニル)エタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリエチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタンなどが挙げられる。また、ピナコール化合物については、特表2014−521772号公報、特表2014−523939号公報、および、特表2014−521772号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の組成物の固形分濃度は、5〜50質量%であることが好ましい。上限は45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。下限は8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが好ましい。
本発明の組成物の粘度(23℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1〜100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上が更に好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が更に好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
本発明の組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015−123351号公報に記載の容器が挙げられる。
本発明の組成物は、赤外線透過フィルタの形成用の組成物として好ましく用いることができる。
<組成物の調製方法>
本発明の組成物は、前述の成分を混合して調製できる。組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解または分散して組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物として調製してもよい。
また、組成物の調製に際しては、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスを実施するための手段の具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセスおよび分散機については、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」、「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015−157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を使用することができる。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて顔料を微細化処理してもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015−194521号公報、特開2012−046629号公報の記載を参酌できる。
組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン−6、ナイロン−6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.01〜7.0μmが好ましく、0.01〜3.0μmがより好ましく、0.05〜0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)および株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
<膜>
次に、本発明の膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の組成物から得られるものである。本発明の膜は、赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。
本発明の膜は、膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜600nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である分光特性を満たしていることが好ましい。
本発明の膜は、以下の(111)〜(113)のいずれかの分光特性を満たしていることがより好ましい。
(111):膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜600nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長800〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。この態様によれば、波長400〜600nmの範囲の光を遮光して、波長650nmを超える光を透過可能な膜とすることができる。
(112):膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜720nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長900〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。この態様によれば、波長400〜750nmの範囲の光を遮光して、波長800nmを超える光を透過可能な膜とすることができる。
(113):膜の厚み方向における光の透過率の、波長400〜830nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000〜1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である態様。この態様によれば、波長400〜830nmの範囲の光を遮光して、波長900nmを超える光を透過可能な膜とすることができる。
本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。10.0μm以下が好ましく、5.0μm以下がより好ましく、3.0μm以下が更に好ましく、2.5μm以下がより一層好ましく、2.0μm以下が更に一層好ましく、1.5μm以下が特に好ましい。膜厚の下限は、0.4μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.6μm以上が更に好ましく、0.7μm以上がより一層好ましく、0.8μm以上が更に一層このましく、0.9μm以上が特に好ましい。
<膜の製造方法>
次に、本発明の膜の製造方法について説明する。本発明の膜は、本発明の組成物を塗布する工程を経て製造できる。
本発明の膜の製造方法において、組成物は支持体上に塗布することが好ましい。支持体としては、例えば、シリコン、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスなどの材質で構成された基板が挙げられる。これらの基板には、有機膜や無機膜など形成されていてもよい。有機膜の材料としては、例えば上述した組成物の欄で説明した樹脂が挙げられる。また、支持体は、樹脂で構成された基板を用いることもできる。また、支持体には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、支持体には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、支持体には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。また、支持体としてガラス基板を用いる場合においては、ガラス基板上に無機膜を形成したり、ガラス基板を脱アルカリ処理して用いることが好ましい。
組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコート法);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009−145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの塗布としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット−特許に見る無限の可能性−、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115〜133ページ)や、特開2003−262716号公報、特開2003−185831号公報、特開2003−261827号公報、特開2012−126830号公報、特開2006−169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、スピンコート法での塗布は、1000〜2000rpmの回転数で行うことが好ましい。また、スピンコート法での塗布については、特開平10−142603号公報、特開平11−302413号公報、特開2000−157922号公報に記載されているように、回転速度を塗布中に高めても良い。また「最先端カラーフィルターのプロセス技術とケミカルス」2006年1月31日、シーエムシー出版記載のスピンコートプロセスも好適に使用することができる。また、組成物の塗布方法については、国際公開WO2017/030174号公報、国際公開WO2017/018419号公報に記載の方法が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
組成物を塗布して形成した組成物層(塗布膜)は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスにより膜を製造する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10秒〜3000秒が好ましく、40〜2500秒がより好ましく、80〜220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
膜の製造方法において、更にパターンを形成する工程を含むことも好ましい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法が挙げられ、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法が好ましい。なお、本発明の膜を平坦膜として用いる場合には、パターンを形成する工程を行わなくてもよい。以下、パターンを形成する工程について詳細に説明する。
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本発明の組成物を塗布して形成した組成物層に対しパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。必要に応じて、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。以下、各工程について説明する。
<<露光工程>>
露光工程では組成物層をパターン状に露光する。例えば、組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180〜300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。照射量(露光量)は、例えば、0.03〜2.5J/cm2が好ましく、0.05〜1.0J/cm2がより好ましく、0.08〜0.5J/cm2が最も好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができる。例えば、大気下で露光してもよく、酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することができ、1000〜100000W/m2の範囲から選択することが好ましい。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
<<現像工程>>
次に、露光後の組成物層における未露光部の組成物層を現像除去してパターンを形成する。未露光部の組成物層の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが支持体上に残る。現像液の温度は、例えば、20〜30℃が好ましい。現像時間は、20〜180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上させるため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
現像液は、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5〜100倍の範囲に設定することができる。なお、アルカリ性水溶液を現像液として使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。また、リンスは、現像後の組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。ポストベークは、膜の硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度は、例えば100〜240℃が好ましい。膜硬化の観点から、200〜230℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜に対して、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、本発明の組成物を支持体上に塗布して形成した組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013−064993号公報の段落番号0010〜0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
<赤外線透過フィルタ>
次に、本発明の赤外線透過フィルタについて説明する。本発明の赤外線透過フィルタは、上述した本発明の膜を有する。
本発明の赤外線透過フィルタは、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、本発明の組成物で説明した有彩色着色剤が挙げられる。着色組成物は、硬化性化合物、樹脂、光重合開始剤、界面活性剤、溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤などを更に含有することができる。これらの詳細については、本発明の組成物で説明した材料が挙げられ、それらを用いることができる。
また、本発明の赤外線透過フィルタは、本発明の膜の画素と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒および無色から選ばれる画素とを有する態様も好ましい態様である。
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を含む。固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明における膜を有する構成である。さらに、デバイス保護膜上であって、本発明における膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明における膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素を形成する膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012−227478号公報、特開2014−179577号公報に記載の装置が挙げられる。
<光センサ>
本発明の光センサは、上述した本発明の膜を含む。光センサの構成としては、光センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本発明の光センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、近赤外線カットフィルタ111と、赤外線透過フィルタ114とを有する。また、近赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112および赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
近赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過及び吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014−043556号公報の段落番号0214〜0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、近赤外線カットフィルタ111とは別の近赤外線カットフィルタ(他の近赤外線カットフィルタ)がさらに配置されていてもよい。他の近赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有するものなどが挙げられる。これらの詳細については、上述したものが挙げられる。また、他の近赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
<重量平均分子量の測定>
樹脂の重量平均分子量は、以下の条件に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定した。
カラムの種類:TOSOH TSKgel Super HZM−Hと、TOSOH TSKgel Super HZ4000と、TOSOH TSKgel Super HZ2000とを連結したカラム
展開溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流量(サンプル注入量):1.0μL(サンプル濃度0.1質量%)
装置名:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
検出器:RI(屈折率)検出器
検量線ベース樹脂:ポリスチレン樹脂
<金属アゾ顔料の製造>
(金属アゾ顔料1の製造)
46.2gのジアゾバルビツール酸および38.4gのバルビツール酸を、85℃の蒸留水の1100g中に添加した。次いで、この溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした後、90分間攪拌してアゾバルビツール酸前駆体を製造した。
次いで、上記の方法に従って製造されたアゾバルビツール酸前駆体に、82℃の蒸留水の1500gを添加した。次いで、10gの30%塩酸を滴下により添加した。次いで、79.4gのメラミンを添加した。次いで、0.282モルの約25%塩化亜鉛溶液と、0.0015モルの約30%塩化銅(II)溶液との混合物を滴下により添加した。次いで、これらを添加した溶液を82℃の温度で3時間保持した後、KOHを添加してpHを約5.5とした。次いで、この溶液の温度を90℃に昇温し、90℃の温度を維持しつつ、100gの蒸留水を添加して希釈した。次いで、この溶液に21gの30%塩酸を滴下により添加した後、90℃の温度で12時間加熱処理した。次いで、加熱処理後の溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした。次いで、この溶液から顔料を吸引フィルタ上で単離し、洗浄し、80℃での真空乾燥キャビネット中で乾燥させた後、標準実験室ミルで約2分間すり潰して金属アゾ顔料1を製造した。
(金属アゾ顔料2の製造)
154.1gのジアゾバルビツール酸および128.1gのバルビツール酸を、85℃の蒸留水の3600g中に添加した。次いで、この溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした後、90分間攪拌してアゾバルビツール酸前駆体を製造した。
次いで、上記の方法に従って製造されたアゾバルビツール酸前駆体に、82℃の蒸留水の5000gを添加した。次いで、252.2gのメラミンを添加した。次いで、0.68モルの約30%塩化ニッケル(II)溶液、0.02モルの約30%塩化銅(II)溶液、および0.200モルの約20%塩化ランタン(III)溶液の混合物を滴下により添加した。次いで、これらを添加した溶液を82℃で3時間保持した後、KOHを添加してpHを約5.5とした。次いで、この溶液の温度を90℃に昇温し、90℃の温度を維持しつつ、1000gの蒸留水を添加して希釈した。次いで、この溶液に113gの30%塩酸を滴下により添加した後、90℃の温度で12時間加熱処理した。次いで、加熱処理後の溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした。次いで、この溶液から顔料を吸引フィルタ上で単離し、洗浄し、80℃での真空乾燥キャビネット中で乾燥させた後、標準実験室ミルで約2分間すり潰して金属アゾ顔料2を製造した。
(金属アゾ顔料3の製造)
154.1gのジアゾバルビツール酸および128.1gのバルビツール酸を、85℃の蒸留水の3600g中に添加した。次いで、この溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした後、90分間攪拌してアゾバルビツール酸前駆体を製造した。
次いで、上記の方法に従って製造されたアゾバルビツール酸前駆体に、82℃の蒸留水の5000gを添加した。次いで、252.2gのメラミンを添加した。次いで、0.70モルの約30%塩化ニッケル(II)溶液、0.05モルの約30%塩化亜鉛(II)溶液、および0.167モルの約20%塩化ランタン(III)溶液の混合物を滴下により添加した。次いで、これらを添加した溶液を82℃で3時間保持した後、KOHを添加してpHを約5.5とした。次いで、この溶液の温度を90℃に昇温し、90℃の温度を維持しつつ、1000gの蒸留水を添加して希釈した。次いで、この溶液に113gの30%塩酸を滴下により添加した後、90℃の温度で12時間加熱処理した。次いで、加熱処理後の溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした。次いで、この溶液から顔料を吸引フィルタ上で単離し、洗浄し、80℃での真空乾燥キャビネット中で乾燥させた後、標準実験室ミルで約2分間すり潰して金属アゾ顔料3を製造した。
(金属アゾ顔料4の製造)
46.2gのジアゾバルビツール酸および38.4gのバルビツール酸を、85℃の蒸留水の1100g中に添加した。次いで、この溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした後、90分間攪拌してアゾバルビツール酸前駆体を製造した。
次いで、上記の方法に従って製造されたアゾバルビツール酸前駆体に、82℃の蒸留水の5000gを添加した。次いで、252.2gのメラミンを添加した。次いで、0.285モルの約25%塩化ニッケル溶液と0.010モルの約10%塩化ガドリニウム(III)溶液との混合物を滴下により添加した。次いで、これらを添加した溶液を82℃で3時間保持した後、KOHを添加してpHを約5.5とした。次いで、この溶液の温度を90℃に昇温し、90℃の温度を維持しつつ、1000gの蒸留水を添加して希釈した。次いで、この溶液に113gの30%塩酸を滴下により添加した後、90℃の温度で12時間加熱処理した。次いで、加熱処理後の溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした。次いで、この溶液から顔料を吸引フィルタ上で単離し、洗浄し、80℃での真空乾燥キャビネット中で乾燥させた後、標準実験室ミルで約2分間すり潰して金属アゾ顔料4を製造した。
<環境規制物質の留去方法>
(製造例1) 重合性モノマーD5の製造
フラスコに、残留溶媒としてトルエンを238質量ppm含有する多官能アクリレート(KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)の50gと、プロピレングリコールモノメチルアセテート(PGMEA)の50gと、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル(TEMPO)の80mgとを入れ、外設温度を90℃に設定し、フラスコ内部の圧力を常圧から徐々に減圧して68mmHgにし、4時間かけて減圧留去を行った。その後、系内の重量を100gになるようPGMEAで調整して、多官能アクリレート溶液1(重合性モノマーD5)を得た。ガスクロマトグラフィーにて多官能アクリレート溶液1中に含まれる残留溶媒(トルエン)量を測定したところ11質量ppmに低減されていることを確認した。また、1H−NMR(nuclear magnetic resonance)にて多官能アクリレート(KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)由来のピークが検出され、ラジカル重合による架橋反応が生じていないことを確認した。
(製造例2) 分散剤C5の製造
フラスコに残留溶媒としてトルエンを835質量ppm含有するアクリレート化合物(アロニックスM−5300、東亞合成(株)製)の50gと、PGMEAの50gと、TEMPOの40mgとを入れ、外設温度を90℃に設定し、フラスコ内部の圧力を常圧から徐々に減圧して66mmHgにし、4時間かけて減圧留去を行った。その後、系内の重量を100gになるようPGMEAで調整し、モノマー溶液1を得た。ガスクロマトグラフィーにてモノマー溶液1中に含まれる残留溶媒(トルエン)量を測定したところ、9質量ppmに低減されていることを確認した。また、1H−NMRにてアクリレート化合物(アロニックスM−5300、東亞合成(株)製)由来のピークが検出され、ラジカル重合による架橋反応が生じていないことを確認した。
三口フラスコに、ε−カプロラクトンの1044.2gと、δ−バレロラクトンの184.3gと、2−エチル−1−ヘキサノールの71.6gとを導入し、混合物を得た。次に、窒素を吹き込みながら、上記混合物を攪拌した。次に、混合物にモノブチル錫オキシドの0.61gを加え、得られた混合物を90℃に加熱した。6時間後、
1H−NMRを用いて、混合物中における2−エチル−1−ヘキサノールに由来するシグナルが消失したのを確認後、混合物を110℃に加熱した。窒素下にて110℃で12時間重合反応を続けた後、
1H−NMRでε−カプロラクトン及びδ−バレロラクトンに由来するシグナルの消失を確認した後、得られた化合物について、GPC法により分子量測定を行った。化合物の分子量が所望の値に到達したことを確認した後、上記化合物を含有する混合物に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールの0.35gを添加した。更にその後、得られた混合物に対して、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネートの87.0gを30分かけて滴下した。滴下終了から6時間後、
1H−NMRにて2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート(MOI)に由来するシグナルが消失したのを確認後、PGMEAの1387.0gを混合物に添加し、濃度が50質量%のマクロモノマーA−1溶液の2770gを得た。マクロモノマーA−1の構造(式(A−1)に示した)は、
1H−NMRにより確認した。得られたマクロモノマーA−1の重量平均分子量は6,000であった。
三口フラスコに、上記マクロモノマーA−1溶液の120gと、上記モノマー溶液1の280gと、PGMEAの266.7gとを添加して、混合物を得た。窒素を吹き込みながら、上記混合物を攪拌した。次に、窒素をフラスコ内に流しながら、混合物を75℃まで昇温した。次に、混合物に、ドデシルメルカプタンの1.65gと、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)(以下「V−601」ともいう。)の0.83gを添加し、重合反応を開始した。混合物を75℃で2時間加熱した後、更にV−601の0.83gを混合物に追加した。2時間後、更にV−601の0.83gを混合物に追加した。更に2時間反応後、混合物を90℃に昇温し、3時間攪拌した。上記操作により、重合反応を終了した。
反応終了後、空気下でジメチルドデシルアミンの6.0gと、TEMPOの2.46gを加えた後、メタクリル酸グリシジルの15.7gを添加した。空気下、90℃で24時間反応を続けた後、酸価測定により反応終了を確認した。60℃まで冷却した後、得られた混合物に更に2−イソシアナトエチルアクリラート(AOI)の15.6gを添加し、60℃で6時間反応させた。1H−NMR測定によりAOIの消失を確認した。得られた混合物に適量のPGMEAを加えることで分散剤C−5の20質量%溶液を得た。得られた樹脂C−5の重量平均分子量は25000、酸価は80mgKOH/mg、C=C価は0.9mmol/gであった。また、樹脂C−5中に含まれるトルエン量を測定したところ5質量ppm以下であることを確認した。
[試験例1]
<顔料分散液の製造>
下記の表1に記載の原料を混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して顔料分散液を製造した。下記の表に記載の数値は質量部である。
<組成物の調製>
下記の表2〜5に記載の原料を混合して、実施例1〜25、比較例1〜3の組成物を調製した。下記の表に記載の数値は質量部である。
上記表1〜5に記載の原料は以下の通りである。
(色材)
金属アゾ顔料1〜4:上述した金属アゾ顔料1〜4
PR254 : C.I.Pigment Red 254
PY139 : C.I.Pigment Yellow 139
PV23 : C.I.Pigment Violet 23
PB15:6 : C.I.Pigment Blue 15:6
PB16 : C.I.Pigment Blue 16
IB: Irgaphor Black(BASF社製)
PBk32: C.I.Pigment Black 32
(近赤外線吸収色素)
K1、K2、K5、K6、K7、K8、K10:下記構造の化合物。以下の式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
K9:FDN−003(山田化学工業(株)製)
(顔料誘導体)
B1、K3、K4:下記構造の化合物。以下の構造式中、Phはフェニル基を表し、Meはメチル基を表す。
(分散剤)
C1:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=20,000)
C2:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=24,000)
C3:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=20,000)
C4:BYK2000(固形分濃度40質量%、ビックケミージャパン(株)製)
C5:上述の製造例2で製造した分散剤C5(固形分濃度20質量%)
(樹脂)
P1:下記構造の樹脂(Mw=11000、主鎖に付記した数値はモル比である。Meはメチル基である。)
P2:下記構造の樹脂。(Mw=4400、酸価=95mgKOH/g、以下の構造式中、Mはフェニル基であり、Aはビフェニルテトラカルボン酸無水物残基である。)
P3:サイクロマーACA250(固形分濃度45質量%、(株)ダイセル製)
P4:下記構造の樹脂(Mw=30000、主鎖に付記した数値はモル比である。)
(重合性モノマー)
D1:下記構造の化合物(a+b+c=3)
D2:下記構造の化合物(a+b+c=4)
D3:下記構造の化合物の混合物(a+b+c=5の化合物:a+b+c=6の化合物=3:1(モル比))
D4:下記構造の化合物
D5:上記製造例1で製造した重合性モノマーD5(固形分濃度50質量%)
D6:アロニックスM−520(東亞合成(株)製)
(シランカップリング剤)
H1:下記構造の化合物(以下の構造式中、Etはエチル基である)
(光重合開始剤)
I1〜I5:下記構造の化合物(オキシム化合物)
I6:アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製、オキシム化合物)
I7:IRGACURE−379(BASF社製、α−アミノケトン化合物)
I8:特表2017−523465号公報の段落番号0007に記載された化合物NO.12
I9:特開2017−151342号公報の段落番号0025に記載された式(2)の化合物
I10:特開2017−167399号公報の段落番号0031に記載された化合物6
(紫外線吸収剤)
L1:下記構造の化合物
(多官能チオール)
M1:トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)
(界面活性剤)
F1:下記混合物(Mw=14000)。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
(エポキシ化合物)
N1:EHPE3150((株)ダイセル製)
(重合禁止剤)
G1:p−メトキシフェノール
(溶剤)
J1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
J2:シクロヘキサノン
J3:3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド
J4:3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド
<分光特性の評価>
各組成物を、ガラス基板上にポストベーク後の膜厚が下記表に記載の膜厚になるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間プリベークした。次いで、プリベーク後の塗布膜の全面に、i線を1000mJ/cm2の露光量で照射して露光した後、ホットプレートを用いて220℃で5分間ポストベークを行って膜を形成した。
分光光度計(U−4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、得られた膜の波長400〜1300nmの吸光度及び透過率を測定して、波長400〜600nmの範囲における透過率の最大値(透過率T1)、波長1000〜1300nmの範囲における透過率の最小値(透過率T2)、波長400〜600nmの範囲における吸光度の最小値(吸光度A)、波長1000〜1300nmの範囲における吸光度の最大値(吸光度B)、波長400〜600nmの範囲における吸光度の最小値と波長1000〜1300nmの範囲における吸光度の最大値との比(吸光度A/吸光度B)を測定した。
<膜厚均一性>
各組成物を8インチ(20.32cm)のシリコンウエハ上にスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。得られた膜を光学式膜厚計(フィルメトリクス(株)、F50)を用い、膜厚を測定し、最も薄い部分の膜厚と最も厚い部分の膜厚の差(以下、膜厚差という)を算出した。膜厚差が小さいほど膜厚均一性が良好であるといえる。
5:膜厚差が0.02μm以下である。
4:膜厚差が0.02μmより大きく0.03μm以下である
3:膜厚差が0.03μmより大きく0.04μm以下である
2:膜厚差が0.04μmより大きく0.05μm以下である
1:膜厚差が0.05μmより大きい
<耐湿性>
各組成物を、ガラス基板上にポストベーク後の膜厚が下記表に記載の膜厚になるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間プリベークした。次いで、プリベーク後の塗布膜の全面に、i線を1000mJ/cm2の露光量で照射して露光した後、ホットプレートを用いて220℃で5分間ポストベークを行って膜を形成した。得られた膜を、温度135℃、湿度85%の条件下で300時間保管して高温高湿試験を行った。高温高湿試験後の膜について、1cm四方の部分を光学顕微鏡で観察し、0.5μm以上のサイズの結晶状の欠陥の数をカウントして耐湿性を評価した。
5:欠陥の数が0個
4:欠陥の数が1〜4個
3:欠陥の数が5〜9個
2:欠陥の数が10〜15個
1:欠陥の数が16個以上
上記表に示すように、実施例は膜厚均一性および耐湿性に優れていた。また、実施例の組成物は、波長400〜600nmの範囲の光の遮光性に優れており、赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができた。
また、実施例1〜4の組成物は、波長400〜600nmの範囲の光を遮光して、波長650nmを超える光を透過可能な膜を形成できた。
また、実施例5〜13の組成物は、波長400〜720nmの範囲の光を遮光して、波長800nmを超える光を透過可能な膜を形成できた。
また、実施例14〜25の組成物は、波長400〜830nmの範囲の光を遮光して、波長900nmを超える光を透過可能な膜を形成できた。
各実施例において、更にベンゾピナコールを組成物の全固形分中に1質量%、2質量%、3質量%、4質量%または5質量%含有させた場合であっても、各実施例と同様の効果が得られる。
[試験例2]
実施例1〜25の組成物をシリコンウエハ上にポストベーク後の膜厚がそれぞれ表6に記載の膜厚になるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間プリベークした。次いで、プリベーク後の塗布膜の全面に、i線を1000mJ/cm2の露光量で照射して露光した後、ホットプレートを用いて220℃で5分間ポストベークを行って膜を形成した。次に、得られた膜の表面に、以下の吸収層形成用組成物をスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間プリベークした。次いで、プリベーク後の塗布膜の全面に、i線を1000mJ/cm2の露光量で照射して露光した後、ホットプレートを用いて220℃で5分間ポストベークを行って吸収層を形成して積層体を形成した。この積層体は、試験例1と同様の波長範囲の光を遮光および透過できた。更には、耐光性にも優れていた。
(吸収層形成用組成物)
C.I.Pigment Yellow 150の12質量部と、分散剤C5の37質量部と、PGMEAの51質量部とを、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部に加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離してYellow顔料分散液を製造した。
得られたYellow顔料分散液の35質量部と、樹脂P1の12質量部と、重合性モノマーD5の4質量部と、光重合開始剤I1の1.8質量部と、PGMEAの47.2質量部とを混合して吸収層形成用組成物を製造した。
[試験例3]
IR組成物を、製膜後の膜厚が1.0μmになるように、シリコンウエハ上にスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置(FPA−3000i5+、Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量にて、2μm四方のベイヤーパターンを有するマスクを介して露光した。
次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで2μm四方のベイヤーパターン(近赤外線カットフィルタ)を形成した。
次に、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターン上に、Red組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用い、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置(FPA−3000i5+、Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量にて、2μm四方のパターンを有するマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用い、200℃で5分間加熱することで、近赤外線カットフィルタのBayerパターン上にRed組成物をパターニングした。同様にGreen組成物、Blue組成物を順次パターニングし、赤、緑および青の着色パターンを形成した。
次に、上記パターン形成した膜上に、実施例14〜25の組成物を、製膜後の膜厚が2.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置(FPA−3000i5+、Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量にて、2μm四方のパターンを有するマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、近赤外線カットフィルタのBayerパターンの抜け部分に、実施例14〜25の組成物の膜(赤外線透過フィルタ)を形成した。これを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。
得られた固体撮像素子について、低照度の環境下(0.001Lux)で赤外発光ダイオード(赤外LED)光源から光を照射し、画像の取り込みを行い、画像性能を評価した。画像上で被写体をはっきりと認識できた。また、入射角依存性が良好であった。また、赤外線透過フィルタは、多層塗布で記載の膜厚を達成しても同様の効果が得られる。例えば実施例14の場合、組成物をスピンコート法で塗布して塗布膜を形成し、次いで、塗布膜を100℃で120秒加熱し、次いで、露光および現像を行い、次いで、200℃で5分加熱する一連の操作を複数回繰り返して膜厚を2.0μmに調整してもよい。
試験例3で使用したRed組成物、Green組成物、Blue組成物およびIR組成物は以下の通りである。
(Red組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Red組成物を調製した。
Red顔料分散液 ・・51.7質量部
樹脂P1 ・・・0.6質量部
重合性モノマーD6 ・・・0.6質量部
光重合開始剤I1 ・・・0.4質量部
界面活性剤F1 ・・・0.2質量部
紫外線吸収剤(UV−503、大東化学(株)製) ・・・0.3質量部
PGMEA ・・・46.6質量部
(Green組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Green組成物を調製した。
Green顔料分散液 ・・・73.7質量部
樹脂P1 ・・・0.3質量部
重合性モノマーD6 ・・・1.2質量部
光重合開始剤I1 ・・・0.6質量部
界面活性剤F1 ・・・0.2質量部
紫外線吸収剤(UV−503、大東化学(株)製) ・・・0.5質量部
PGMEA ・・・23.5質量部
(Blue組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Blue組成物を調製した。
Blue顔料分散液 44.9質量部
樹脂P1 ・・・2.1質量部
重合性モノマーD6 ・・・2.2質量部
光重合開始剤I1 ・・・0.8質量部
界面活性剤F1 ・・・0.2質量部
紫外線吸収剤(UV−503、大東化学(株)製) ・・・0.3質量部
PGMEA ・・・49.8質量部
(IR組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、IR組成物を調製した。
IR顔料分散液 ・・・85質量部
重合性モノマーD6 ・・・1.8質量部
樹脂P1 ・・・1.1質量部
光重合開始剤I1 ・・・0.9質量部
界面活性剤F1 ・・・0.2質量部
重合禁止剤(p−メトキシフェノール) ・・・0.001質量部
PGMEA ・・・11.0質量部
Red組成物、Green組成物、Blue組成物およびIR組成物に使用した顔料分散液は以下の通りである。
・Red顔料分散液
C.I.Pigment Red 254の9.6質量部と、C.I.Pigment Yellow 139の4.3質量部と、分散剤(Disperbyk−161、BYKChemie社製)の6.8質量部と、PGMEAの79.3質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Red顔料分散液を得た。
・Green顔料分散液
C.I.Pigment Green 36の6.4質量部と、C.I.Pigment Yellow 150の5.3質量部と、分散剤(Disperbyk−161、BYKChemie社製)の5.2質量部と、PGMEAの83.1質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Green顔料分散液を得た。
・Blue顔料分散液
C.I.Pigment Blue 15:6の9.7質量部と、C.I.Pigment Violet 23の2.4質量部と、分散剤(Disperbyk−161、BYKChemie社製)の5.5質量部と、PGMEAの82.4質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Blue顔料分散液を得た。
・IR顔料分散液
近赤外線吸収色素K2の6.25質量部と、顔料誘導体K4の1.25質量部と、分散剤C3の6質量部と、PGMEAの86.5質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、IR顔料分散液を得た。