以下、本発明の実施形態に係る光変調素子について説明する。
以下の各実施形態の光変調素子は、入射される再生光の位相を変調して光像を再生する位相変調型のホログラム構造体によって構成されており、特にフーリエ変換ホログラムによって構成される要素素子を含む。フーリエ変換ホログラムは、原画像のフーリエ変換像の波面情報を記録することで作製されるホログラムであり、いわゆるフーリエ変換レンズとして機能する。特に位相変調型のフーリエ変換ホログラムは、フーリエ変換像の位相情報を多値化して深さとして媒体に記録することで作製される凹凸面を有するホログラムであり、媒体の光路長差に基づく回折現象を利用して再生光から原画像の光像を再生する。このフーリエ変換ホログラムは、例えば、所望の光像(すなわち原画像)を精度良く再生できる一方で、比較的簡単に作製することができる点で有利である。こうした位相変調型の光変調素子はキノフォームとも言われる。ただし、本発明を適用可能な光変調素子の要素素子は、フーリエ変換ホログラムには限定されず、他の方法で光像を再生するホログラムや他の構造を有する光変調素子に対しても本発明を適用することが可能である。
以下の説明では、ホログラム構造体に入射させる再生光として様々な波長を含む白色光を例として挙げているが、再生光は必ずしも白色光である必要はない。すなわち、ホログラム構造体によって再生される光像の色に対応する波長の光が含まれていれば、再生光に含まれる波長は特に限定されない。また以下の説明では、特に断りがない限り、ホログラム構造体に対する再生光の入射角度が0°(すなわちホログラム構造体の入射面の法線方向に沿った角度)の場合を想定している。また本明細書において示される屈折率の具体的な値は、特に断りがない限り、波長589.3nmの光を基準としている。また以下の説明では、ホログラム構造体11に関して示される屈折率や凹凸面の特性値は、特に断りがない限り、屈折率が1.0の空気環境下においてホログラム構造体11が使用される場合を想定して導き出された値である。
また本明細書において、「同一の形状を有する2以上の光像」の概念には、サイズが相互に同一であり且つ形状(全体の形)が同じ2以上の光像だけではなく、サイズが相互に異なり且つ形状が同じ2以上の光像も含まれる。すなわち、同一の形状を有する2以上の光像は、形状が同じであれば、サイズが互いに同じか否かは問われず、互いに相似の関係性を有する2以上の光像は「同一の形状を有する2以上の光像」に該当する。したがって、光像の構成波長が異なるために再生される大きさが相互に異なる2以上の光像は、全体の形が同じであれば、「互いに同一形状を有する2以上の光像」に該当する。
また本明細書において、「点対称」の関係を有する2つの光像の概念には、サイズが相互に同一であり且つ形状(全体の形)が同じ2つの光像だけではなく、サイズが相互に異なり且つ形状が同じ2つの光像も含まれる。すなわち、同一の形状を有する2つの光像は、形状が同じであり、且つ再生位置及び再生向きが点対称性を有していれば、サイズが互いに同じか否かは問われない。そのため、例えば互いに相似の関係性を有する2つの光像であって、再生位置及び再生向きが点対称性を有する2つの光像は「互いに点対称の関係を有する2つの光像」に該当する。したがって、光像の構成波長が異なるために再生される大きさが相互に異なる2以上の光像は、形状が同じであり、再生位置及び光像の向きが点対称性を有していれば、「互いに点対称の関係を有する2以上の光像」に該当する。
[第1の実施形態]
図1は、ホログラム保持体10の典型例を示す概略平面図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
図1および図2に示すホログラム保持体10は、ホログラム層1と、ホログラム層1の一方の面上に積層される反射層2と、ホログラム層1の他方の面上に積層された基材4とを備える。このホログラム保持体10の一部には反射型のホログラム構造体11が設けられている。このホログラム構造体11では、ホログラム層1の一方の面が凹凸面1aを形成し、この凹凸面1aを被覆する反射層2も凹凸形状を有する。ホログラム構造体11が有する凹凸面1aは、原画像のフーリエ変換画像に対応した凹凸パターンを有し、フーリエ変換画像の画素毎に対応の凹凸深さを有する。例えば、基材4(例えばPET:ポリエチレンテレフタラート)上にホログラム層1を構成する樹脂(例えばUV硬化樹脂や熱可塑性樹脂)を塗布などで形成し、当該ホログラム層1に対して、UV硬化処理や熱圧処理とともに原版の凹凸面を押し当てる凹凸賦形処理が行われ、その後、当該ホログラム層1の凹凸面1a上に反射層2(例えばAl、ZnS、或いはTiO2など)を形成することにより、図1および図2に示すホログラム保持体10を製造することができる。なお図示は省略するが、反射層2上に、粘着材、接着剤、及び/又はヒートシール層等の他の部材が更に形成されてもよい。
このようなホログラム構造体11に対して点光源や平行光源から光が入射すると、凹凸面1aの凹凸パターンに応じた光像(すなわち原画像)が再生される。この種の光変調素子は、光像を投影するためのスクリーン等が不要であり、また点光源や平行光源等の特定の光源からの光が入射する場合にとりわけ良好に光像を再生するため、意匠用途、セキュリティ用途、或いはその他の用途に対して利便性良く広範に利用可能である。このような光変調素子によって再生可能な光像は特に限定されず、例えば文字、記号、線画、絵柄、模様(パターン)およびこれらの組み合わせ等を、原画像および再生可能な光像としうる。
上述のように光変調素子として機能するホログラム構造体11と、ホログラム構造体11を支持する基材4とを備える図1および図2に示すホログラム保持体10は、一例として、パスポート等の情報記録媒体を好適に構成しうる。例えば、ホログラム構造体11によって再生される光像が文字、記号および絵柄のうちの少なくともいずれか1つに基づく情報を表すようにホログラム構造体11を設計することで、ホログラム構造体11を真贋判定等のセキュリティ用途に好適に用いることができる。なお、図1および図2に示すホログラム保持体10では、透明の基材4が用いられているが、不透明な基材が代わりに用いられてもよい。その場合、例えば、基材に所定サイズの開口部4a(図2参照)を形成し、光変調素子として設けられるホログラム構造体11の少なくとも一部を当該開口部4aに対応する位置に配置することで、ホログラム保持体10はパスポート等の情報記録媒体を好適に構成することが可能である。なお、開口部4aには穴(空間)が設けられていてもよいし、穴(空間)とともに又は穴(空間)を設ける代わりに、開口部4aだけ透明体(すなわち透明な基材)によって構成してもよい。また透明な基材4を用いる場合であっても、例えば基材4のうち開口部4a以外の部分に光の透過を規制する印刷体を設けることによって、基材4のうち基本的に開口部4aのみを光が透過するようにホログラム保持体10が構成されてもよい。またパスポート等の情報記録媒体に開口箇所を形成し、当該開口箇所にホログラム保持体10が配置されてもよい。この場合、情報記録媒体の開口箇所には穴(空間)及び/又は透明体が設けられていてもよく、情報記録媒体のうち開口箇所以外の箇所に光の透過を規制する印刷体が設けられてもよく、情報記録媒体のうち開口箇所のみを光が透過するように情報記録媒体が構成されてもよい。
ホログラム構造体11は、図3に示すように観察者50および光源51aがホログラム構造体11に対して同じ側に配置される反射型ホログラム構造体と、図4に示すように観察者50および光源51bがホログラム構造体11を介して相互に異なる側に配置される透過型ホログラム構造体とに分類できる。反射型ホログラム構造体としては、例えば図2に示す反射層2のような再生光を反射するための追加の層が設けられる構造体の他に、追加の反射層を設けずにホログラム層1の凹凸面1aを空気に露出させて、UV硬化樹脂などのホログラム層1と空気との間の屈折率の差を利用して再生光を反射させる構造体がある。一方、透過型ホログラム構造体にはそのような反射層が設けられない。ただし、ホログラム層1に凹凸面1aが形成され、その凹凸面1aの光路長差に起因する回折現象によって所望の光像を再生する点で、反射型ホログラム構造体および透過型ホログラム構造体は共通する。なお凹凸面1aの具体的な凹凸深さについては、透過型ホログラム構造体および反射型ホログラム構造体のそれぞれに関して最適な値が存在する。以下において、反射型ホログラム構造体および透過型ホログラム構造体のいずれか一方についてのみ説明されている内容は、特に断りがない限り、基本的に反射型ホログラム構造体および透過型ホログラム構造体の両方に対して応用が可能である。
図5は、ホログラム構造体11の平面構造を示す概念図である。本実施形態のホログラム構造体11は、二次元的に規則的に配置された複数の要素素子(「ホログラムセル」とも呼ばれる)21を含む。各要素素子21は、上述の凹凸面1aを有するとともに、数nm〜数mm四方(例えば2mm四方)の平面サイズを有し、再生光の位相を変調して光像を再生する。
凹凸面1aは多段形状(すなわち2段以上の段形状)を有し、凹凸面1aの段数は特に限定されない。複数色によって光像を再生する場合、凹凸面1aは3段以上の段数を有することが好ましく、特に4段以上の段数を有する凹凸面1aによれば複雑な構図を持つ原画像を高精細に再生することが可能である。図6および図7は、凹凸面1aの段構造の概略を示す要素素子21の断面図であり、図6は8段タイプの凹凸面1aを示し、図7は4段タイプの凹凸面1aを示す。なお図6および図7には、相互に同じ段形状の凹凸面1aを有する要素素子21が示されているが、実際の凹凸面1aは再生される光像(すなわち原画像)に応じた段形状を有する。なお凹凸面1aの凹凸パターンのピッチ(すなわち画素ピッチ(図6および図7に示す符合「P」参照))は、光像を精度良く再生する観点からは0.1μm〜80.0μmの範囲にあることが好ましく、通常は1μm以上であることが好ましい。
図8は、各要素素子21の1次回折光の波長分布と回折効率との関係例を示すグラフである。図8において横軸は波長を示し、縦軸は回折効率を示す。回折効率は、ある方向へ回折する光の放射束を各要素素子21に入射する光の放射束で割った量で表され、ある方向への回折放射束をPで表し、入射放射束をP0で表した場合、回折効率ηは「η=P/P0」で表される無次元数である。各要素素子21は、波長に応じて特有の回折効率を示し、図8に示す例では、580nm付近の波長(図8の符合「H1」参照)を持つ光が1次回折光に関して最大回折効率Dmaxを示す。なお図8は1次回折光の波長分布の一例を示すが、−1次回折光の波長分布も波長に応じた特有の回折効率を示すとともに特定の波長において最大回折効率を示す。
本実施形態では、各要素素子21についての1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率Dmaxが、当該最大回折効率Dmaxを含む回折効率の波長分布において、200nm以下の半値全幅FWHMを持つ極大値を形成する。ここでいう半値全幅FWHMとは、回折効率の波長分布において、最大回折効率Dmaxの半分の値(Dmax/2)を持つ位置での波長帯域(波長幅)を示す(図8参照)。
各要素素子21がこのような回折特性を有することによって、最大回折効率Dmaxに対応する波長およびその近傍の波長の光が、他の波長帯域の光よりも効率良く回折され、再生像に寄与する。そのため、様々な波長の光を含む白色光が各要素素子21に入射した場合であっても、各要素素子21は、最大回折効率Dmaxに対応する波長およびその近傍の波長の光によって、白色以外の色で光像を再生する。したがって、各要素素子21の回折特性(特に1次回折光の波長分布および−1次回折光の波長分布)を調整し、最大回折効率Dmaxに対応する波長を再生像の色に対応させることで、白色光を各要素素子21に入射させても特定色で光像を再生することが可能になる。
なお各要素素子21の凹凸面1aは、3段階以上の異なる高さを含み、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域に、最大回折効率の半分以上の回折効率となる他の極大値が存在しないことが好ましい。すなわち、各要素素子21の1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での二番目に大きい回折効率(図8の符合「H2」参照)の極大値は、最大回折効率Dmaxの半分未満であることが好ましい。この場合、再生像における色のにじみやラインの太りを効果的に防ぐことができ、光像を高精細に再生できる。
図9は、一般的なホログラム構造体11によって再生される光像100を説明するための概略図である。図10〜図12は、第1の実施形態のホログラム構造体11によって再生される光像100を説明するための概略図である。なお図9〜図12の各々において反射型のホログラム構造体11で用いられる光源が符合「51a」で示され、透過型のホログラム構造体11で用いられる光源が符合「51b」で示されている。また以下の説明では、これらの光源51a、51bを符合「51」を使って集合的に表す。
一般に、回折現象において、入射光の波長が大きくなるほど、0次回折光以外の回折光の回折角が大きくなる。そのため、可視光波長帯域の全体にわたって同程度の回折効率を有する一般的なホログラム構造体11に対して光源51から白色光が入射した場合、ホログラム構造体11は図9に示すような虹色の光像100を再生する。一方、380nm以上780nm以下となる波長帯域において上述の最大回折効率を有する本実施形態のホログラム構造体11に対し、光源51から白色光が入射した場合、ホログラム構造体11は図10〜12に示すような単色の光像100を再生する。すなわち本実施形態のホログラム構造体11(特に凹凸面1a)は、特定の波長およびその近傍の波長帯域の光に最適化された回折構造を有し、様々な波長を持つ光のうち特定の波長およびその近傍の波長帯域の光を選択的に使って特定色の光像100を再生する。例えば図10のホログラム構造体11は、青系の波長帯域において最大回折効率を示し、青色の光像100を再生する。図11のホログラム構造体11は、緑系の波長帯域において最大回折効率を示し、緑色の光像100を再生する。図12のホログラム構造体11は、赤系の波長帯域において最大回折効率を示し、赤色の光像100を再生する。なお図10〜図12の光像100は相互に大きさが異なっているが、これは光像100を構成する光(すなわち1次回折光および/または−1次回折光)の波長の違いによってもたらされる回折角の相違に基づくものである。
このように本実施形態のホログラム構造体11は、白色光が入射される場合でも単色の光像100を再生することができる。このようにして再生される光像100は、色分散によるボケが殆ど含まれず、鮮明な像となる。また特定色で光像100を再生できるため、観察者50に対して、色に基づく特定の印象を与えることも可能であり、例えば光像100によって表される具体的な概念に通念上合った色で光像100を再生し、観察者50に対して光像100が示す概念を明確に伝えることも可能である。さらに、特定の単色の光像100を再生するようにホログラム構造体11が構成されるため、例えば真贋判定では、判定の基礎として、再生される光像100の「絵柄」だけではなく、当該光像100の「色」を用いることができ、信頼性の高い真贋判定を可能にする。また本実施形態のホログラム構造体11は、特定波長帯域の光を選択的に透過または反射する層を追加する必要がないため、製造コストを低減できるとともに、観察者50がホログラム構造体11を通して周囲を観察しても観察像に違和感がない。
[ホログラム構造体11の製造方法]
次に、ホログラム構造体11(特に凹凸面1a)の製造方法の一例について説明する。以下に説明する方法は一例に過ぎず、所望の凹凸面1aを含むホログラム構造体11を適切に製造可能な他の方法を採用することが可能である。また反射型のホログラム構造体11(図3参照)および透過型のホログラム構造体11(図4参照)のいずれに対しても、以下に説明する製造方法は適用可能である。
まず、原画像の2次元画像がコンピュータによって読み込まれる(Step1)。そしてコンピュータは、読み込んだ2次元画像の各画素値を振幅値とするとともに、各画素に対して0から2πの間のランダムな値を位相値として割り当てることにより、2次元複素振幅画像を得る(Step2)。そしてコンピュータは、この2次元複素振幅画像の2次元フーリエ変換を行うことによって、2次元フーリエ変換画像を得る(Step3)。なおコンピュータは、必要に応じて、繰り返しフーリエ変換法や遺伝的アルゴリズムなどの任意の最適化処理を行ってもよい(Step4)。そしてコンピュータは、2次元フーリエ変換画像の各画素の位相値を、複数段階(例えば「0」、「π/2」、「π」および「3π/2」の4段階、或いは「0」、「π/4」、「π/2」、「3π/4」、「π」、「5π/4」、「3π/2」および「7π/4」の8段階)に離散化する(Step5)。
そして、離散化された対応の位相値に応じた深さを各画素が有するように、2次元フーリエ変換画像に対応するホログラム構造体11(特に凹凸面1a)が作製される(Step6)。例えば、上述のStep5において2次元フーリエ変換画像の画素値が4段階に離散化された場合には、Step6において4段階の深さを持つ凹凸面1a(図7参照)がホログラム層1に形成される。凹凸面1aの深さは、実現しようとする回折効率特性だけではなく、様々な他の関連パラメータ(例えばホログラム構造体11(特にホログラム層1)を構成する材料の屈折率)も考慮されてコンピュータにより決定される。例えば青色の光像を再生するための反射型ホログラム構造体11として、凹凸面1aの段数が4段であり、当該凹凸面1aが1段当たり330nmの光路長を持つホログラム構造体11を作製することができる。なお、反射型のホログラム構造体11および透過型のホログラム構造体11はそれぞれ特有の凹凸面1aの深さ構造を有し、例えば同様の回折特性を実現しようとする場合であっても、ホログラム構造体11の凹凸面1aの深さの具体的な値は反射型と透過型との間で異なる。
ホログラム構造体11の製造装置は特に限定されず、例えば上述のStep1〜5を実行するコンピュータによって制御される装置であってもよいし、当該コンピュータとは別個に設けられた装置であってもよい。また必要に応じて、上述のホログラム構造体11(特に凹凸面1a)の構造に対応する母型(すなわちマスター原版)を、フォトリソグラフィ技術に基づく露光装置や電子線描画装置等により作ってもよい(Step7)。例えば、母型に液状の紫外線硬化性樹脂を滴下し、基材フィルム(例えばPETフィルム(ポリエチレンテレフタラートフィルム))と母型とによって挟まれた状態の紫外線硬化性樹脂に対して紫外線を照射して硬化させ、その後、基材フィルムとともに紫外線硬化性樹脂を母型から剥離することによって、所望の凹凸面1aを有するホログラム構造体11を作製できる。他の方法として、例えば、熱可塑性の紫外線硬化性樹脂を用いる方法、熱可塑性樹脂を用いる方法、熱硬化性樹脂を用いる方法、および電離放射線硬化性樹脂を用いる方法が採用されてもよい。このように母型を使うことで、所望の凹凸面1aを有するホログラム構造体11を簡単且つ大量に複製することが可能である。
反射型のホログラム構造体11の場合、凹凸面1a上に反射層2(例えばAlによって構成される反射層或いはZnSやTiO2によって構成される反射層(高屈折率層))が製造装置によって更に形成されてもよい。ただし、ホログラム層1と空気との間の屈折率の差を利用して再生光を反射させるホログラム構造体11の場合には、反射層2を追加的に設けることなく、ホログラム層1の凹凸面1aを空気に露出させたままでもよい。さらに必要に応じて、接着層等の他の機能層(例えばヒートシール層や隣接層間の密着性を高めるためのプライマー層など)がホログラム層1に対して形成されてもよい。また例えば、ホログラム層1の凹凸面1a上に反射層2を形成する場合、凹凸形状を有する反射層2の表面(ホログラム層1とは反対側の表面)上に接着層を形成し、当該接着層によって反射層2の表面の凹部を埋めるようにしてもよい。
[凹凸面の深さ]
一例として、反射型ホログラム構造体11において、ホログラム層1の屈折率が1.5であり、凹凸面1aの1段当たりの深さ(図6および図7の符合「d」参照)が110nmの場合、凹凸面1aの1段当たりの光路長は330nmとなる。この場合、凹凸面1aが4段の深さ構造を有することによって、ホログラム構造体11は青系の波長帯域において上述の最大回折効率を示し、青色の光像を再生する。
他の例として、反射型のホログラム構造体11において、ホログラム層1の屈折率が1.5であり、凹凸面1aが8段の深さ構造を有し、1段当たりの深さが130nmの場合、ホログラム構造体11は青色の光像を再生する。また透過型のホログラム構造体11において、ホログラム層1の屈折率が1.5であり、凹凸面1aが4段の深さ構造を有し、1段当たりの深さが660nmの場合、ホログラム構造体11は青色の光像を再生する。また反射型のホログラム構造体11において、ホログラム層1の屈折率が1.5であり、凹凸面1aが8段の深さ構造を有し、1段当たりの深さが230nmの場合、ホログラム構造体11は赤色の光像を再生する。また反射型のホログラム構造体11において、ホログラム層1の屈折率が1.5であり、凹凸面1aが6段の深さ構造を有し、1段当たりの深さが220nmの場合、ホログラム構造体11は緑色の光像を再生する。
なお上述の透過型のホログラム構造体11によって再生される光像の色(波長帯域)は、屈折率が1.0の空気環境下で使用される場合を想定している。また観察者が上述の反射型ホログラム構造体11によって再生される光像100を観察する場合、ホログラム層1の凹凸面1aが観察者とは反対側に配置され、観察者はホログラム層1を通して凹凸構造(すなわち凹凸面1a)を観察することになる。なお、ホログラム層1の凹凸面1aが観察者と同じ側に配置される場合、観察者が観察するホログラム構造体11からの反射像は、ホログラム層1を通過することなく表面で反射した光によって構成される。例えばカード型のホログラム保持体10の表面に凹凸面1aが形成される場合、ホログラム層1を通過することなく凹凸面1aで反射した光を観察者は観察することになる。このような場合、ホログラム層1の屈折率ではなく、ホログラム層1よりも観察者側の媒体の屈折率、例えば空気の屈折率1.0、に基づいた光路長で、凹凸面1aの1段当たりの深さを設定する必要がある。したがって、ホログラム層1(ホログラム構造体11)の屈折率を空気の屈折率1.0と仮定しつつ、凹凸面1aの構造を設計することで、観察者は所望像を観察することが可能である。具体的には、空気の屈折率を1.0として、凹凸面1aの1段当たりの深さを165nmとした場合、凹凸面1aの1段当たりの光路長は330nmとなる。この場合、凹凸面1aが4段の深さ構造を有することによって、ホログラム構造体11は青系の波長帯域において最大回折効率を示し、青色の光像を再生する。
[凹凸面の深さと回折光のピーク波長の関係]
ホログラム構造体11の凹凸面1aの段数をNで表し、凹凸面1aの1段当たりで変調される光路長をlで表し、自然数をmで表した場合、回折光のピーク波長λは、以下の式で表される。
λ=N・l/(mN±1)
上述のように本実施形態のホログラム構造体11は、白色光が入射した場合であっても、単色で光像を再生することができる。これは、例えば、任意の自然数mに対して、ホログラム構造体11の1次回折光および−1次回折光のいずれか一方が、可視光波長帯域の範囲においてピーク波長λを1つのみ有する場合に実現可能である。例えば光路長lが330nmであり、凹凸面1aの段数Nが4である場合、λ=1320/(4m±1)が成り立つ。したがって、m=1に対してはλ=440nmおよび264nm、m=2に対してはλ=188nmおよび146nm、m=3に対してλ=120nmおよび101nmとなる。mが4以上の場合のピーク波長λはさらに小さな値となる。これらのうち可視光波長帯域に含まれるピーク波長λは、m=1の場合のλ=440nmのみである。したがって、凹凸面1aの段数N=4であり、1段当たりの光路長がl=330nmであるホログラム構造体11を用いる場合、440nmの波長およびその近傍の波長の光によって、観察者50が視認可能な単色の光像を再生することができる。
[変形例1−1]
本変形例のホログラム構造体11は、380nm以上780nm以下となる波長帯域で最大回折効率を示す波長が異なる複数種類の要素素子21が組み合わせられており、白色光が入射した場合に複数色で光像を再生することができる。すなわちホログラム構造体11が少なくとも2種類以上の要素素子21を含み、これらの少なくとも2種類以上の要素素子21の最大回折効率を示す波長(特に可視光波長帯域(とりわけ380nm以上780nm以下となる波長帯域)における波長)が相互に異なる場合、各種類の要素素子21の最大回折効率を示す波長に応じた色で光像を再生することができる。
図13は、変形例1−1に係る透過型ホログラム構造体11の平面構造の一例を示す概念図である。図14は、図13の透過型ホログラム構造体11によって再生される光像100を説明するための概略図である。図13および図14に示すホログラム構造体11は、市松模様状に配置された複数の第1の要素素子21aおよび複数の第2の要素素子21bを含む。例えば、複数の第1の要素素子21aは青色の「O」の文字の光像100を再生することを可能にする凹凸面1a(すなわち上述の最大回折効率)を有し、複数の第2の要素素子21bは赤色の「K」の文字の光像100を再生することを可能にする凹凸面1aを有する。この場合、ホログラム構造体11に白色光が入射すると図14に示すようにホログラム構造体11は青色の「O」および赤色の「K」を再生する。このように本変形例のホログラム構造体11は、2種類の単色の光像100を視認可能に再生することができる。なお図14に示す例では、第1の要素素子21aおよび第2の要素素子21bがそれぞれ独立した光像100を再生するが、第1の要素素子21aによって再生される光像と第2の要素素子21bによって再生される光像とが少なくとも一部において重なっていてもよい。この場合、重なり部分の光像は、第1の要素素子21aによって再生される光像の色と第2の要素素子21bによって再生される光像の色とが混ざった色を有する。
図15は、変形例1−1に係る透過型ホログラム構造体11の平面構造の他の例を示す概念図である。図16は、図15の透過型ホログラム構造体11によって再生される光像100を説明するための概略図である。図15および図16に示すホログラム構造体11は、市松模様状に配置された複数の第1の要素素子21a、複数の第2の要素素子21bおよび複数の第3の要素素子21cを含む。例えば、複数の第1の要素素子21aは青色の光像100を再生することを可能にする凹凸面1a(すなわち上述の最大回折効率)を有し、複数の第2の要素素子21bは赤色の光像100を再生することを可能にする凹凸面1aを有し、複数の第3の要素素子21cは緑色の光像100を再生することを可能にする凹凸面1aを有する。この場合、ホログラム構造体11は、赤青緑の光像100だけではなく、これらの光像100のうちの2以上を重ね合わせることによって他の色の光像100を再生することも可能である。例えば図16に示すように、赤色円の光像100、緑色円の光像100および青色円の光像100を重ねて再生することによって、赤色円および緑色円が重なった部分は黄色の光像100となり、緑色円および青色円が重なった部分は水色の光像100となり、青色円および赤色円が重なった部分は紫色の光像100となり、赤色円、緑色円および青色円が重なった部分は白色の光像100となる。
図17は、変形例1−1に係る透過型ホログラム構造体11の他の例によって再生される光像100を説明するための概略図である。各要素素子21は、任意の階調を持つ色によって光像を再生することも可能であり、赤色の光像を再生する第1の要素素子21a、青色の光像を再生する第2の要素素子21bおよび緑色の光像を再生する第3の要素素子21cの各々が、階調の異なる複数種類の要素素子を含むことができる。また任意の階調を持つ原画像に基づいて各要素素子21を設計する場合にも、任意の階調を持つ色によって光像を再生することが可能である。これらの場合、ホログラム構造体11は、白色光が入射した場合に図17に示すようなフルカラーの光像100を再生することも可能である。
なお上述の図13および図15に示すホログラム構造体11は、縦方向および横方向の双方に関して隣接配置される要素素子21の種類が互いに異なっているが、複数種類の要素素子21の配置態様は特に限定されない。例えば、ホログラム構造体11は、ストライプ状に配置された複数種類の要素素子21を含んでいてもよく、縦方向および横方向のうちの一方に関しては隣接して配置される要素素子21の種類が異なっているが、他方に関しては隣接して配置される要素素子21の種類が同じであってもよい。また上述の市松模様状配置およびストライプ状配置が組み合わされた配置態様によって、複数種類の要素素子21が配置されてもよい。
[変形例1−2]
ホログラム構造体11は、異なる領域に異なるタイプの要素素子21が配置されていてもよく、当該異なるタイプの要素素子21は380nm以上780nm以下となる波長帯域での1次回折光および/または−1次回折光の最大回折効率を示す波長が互いに異なっていてもよい。その一方で、異なる領域に配置される異なるタイプの要素素子21によって再生される光像は、互いに形状の関連性を有していてもよい。ここでいう形状の関連性を有する光像には、例えば、視覚上同じ形状またはほぼ同じ形状を有する光像のペアが含まれ、これらの光像の大きさは相互に同じであってもよいし異なっていてもよい。また形状の関連性を有する光像には、例えば、互いの光像が組み合わされることで、特定の意図を持った絵柄や文字等を形成する光像のペアも含まれる。例えば図13〜図17に示すホログラム構造体11は、観察者に対してホログラム構造体11を相対的に移動させなくても1つの絵柄や文字等を光像として再生することができる。一方、以下に説明する図18A〜図18Bに示すホログラム構造体11および図19A〜図19Bに示すホログラム構造体11では、観察者に対してホログラム構造体11を相対的に連続的に往復移動させることで、第1の領域25の要素素子21によって再生される光像の残像及び第2の領域26の要素素子21によって再生される光像の残像の組み合わせによって、上述の「形状の関連性を有する光像」を構成することができる。
図18Aは、変形例1−2に係るホログラム構造体11の一例によって再生される光像100を説明するための概略図であり、第1の領域25を介して再生される光像100を示す。図18Bは、図18Aのホログラム構造体11の第2の領域26を介して再生される光像100を示す。図18Aおよび図18Bのホログラム構造体11は、第1の領域25および第2の領域26を含む。第1の領域25には、少なくとも第1タイプの要素素子を含む複数の要素素子21が配置され、第2の領域26には、少なくとも第2タイプの要素素子を含む複数の要素素子21が配置される。380nm以上780nm以下となる波長帯域において、第1タイプの要素素子についての最大回折効率を示す波長は、第2タイプの要素素子についての最大回折効率を示す波長とは異なる。図18Aおよび図18Bに示すホログラム構造体11では、最大回折効率を示す波長が青系波長帯域に含まれる第1タイプの要素素子21が第1の領域25に配置され、最大回折効率を示す波長が赤系波長帯域に含まれる第2タイプの要素素子21が第2の領域26に配置されている。そして、第1の領域25に配置される複数の要素素子21が再生する光像100は、第2の領域26に配置される複数の要素素子21が再生する光像100と、形状の関連性を有する。具体的には、同じ星形状を有し且つ色が異なる光像100を、第1の領域25の要素素子21および第2の領域26の要素素子21は再生する。
図19Aは、変形例1−2に係るホログラム構造体11の他の例によって再生される光像100を説明するための概略図であり、第1の領域25を介して再生される光像100を示す。図19Bは、図19Aのホログラム構造体11の第2の領域26を介して再生される光像100を示す。図19Aおよび図19Bのホログラム構造体11は、図18Aおよび図18Bのホログラム構造体11とほぼ同じ構造を有する。ただし、図18Aおよび図18Bのホログラム構造体11では、第1の領域25の要素素子21が再生する光像100と第2の領域26の要素素子21が再生する光像100とは相互に大きさが異なっているのに対し、図19Aおよび図19Bのホログラム構造体11では、第1の領域25の要素素子21が再生する光像100と第2の領域26の要素素子21が再生する光像100とは相互にほぼ大きさを有する。
第1の領域25の要素素子21の凹凸面1aおよび第2の領域26の要素素子21の凹凸面1aが同一サイズの原画像に基づいて作製される場合、回折光の波長(色)の相違に応じて、再生される光像100の大きさが第1の領域25と第2の領域26との間で異なる(図18Aおよび図18B参照)。一方、回折光の波長の相違に基づく光像100の大きさの差を考慮して第1の領域25の要素素子21および第2の領域26の要素素子21を作製することにより、図19Aおよび図19Bに示すように、第1の領域25の要素素子21が再生する光像100と第2の領域26の要素素子21が再生する光像100とをほぼ同じ大きさにすることが可能である。具体的には、第1の領域25の要素素子21を設計する際に用いる原画像の大きさを、第2の領域26の要素素子21を設計する際に用いる原画像の大きさと変えることによって、光像100の大きさを第1の領域25と第2の領域26との間でほぼ同じにできる。また各要素素子21の画素の大きさに応じて回折角を変えることができるので、要素素子21を構成する各画素のサイズを第1の領域25と第2の領域26との間で変えることによって、光像100の大きさを第1の領域25と第2の領域26との間でほぼ同じにできる。
上述のように本変形例のホログラム構造体11には、図18A、図18B、図19Aおよび図19Bに示すように、形状が相互に関連し且つ色の異なる光像100を再生する第1の領域25および第2の領域26が並んで設けられる。観察者50は、そのホログラム構造体11を移動させながら、第1の領域25を介した光像100の観察および第2の領域26を介した光像100の観察を連続的に繰り返し行うことによって、光像100の形状の同一性を認識しつつ光像100の色の変化を認識することができる。このようなホログラム構造体11は、意匠用途に用いることもできるが、特に真贋判定などのセキュリティ用途に適している。観察者50は、白色光を使って光像100の形状の同一性の有無および光像100の色の変化の有無を確認することで、ホログラム保持体10(図1参照)の真贋を容易且つ確実に判定することが可能である。特に図19Aおよび図19Bに示すホログラム構造体11によれば、光像100の色の変化および形状の同一性だけではなく、光像100の大きさの同一性も確認することができるため、より精度の高い真贋判定を行うことができる。
[第2の実施形態]
本実施形態において、上述の第1の実施形態およびその変形例と同一または類似の要素には同一の符合を付し、その詳細な説明は省略する。また上述の第1の実施形態およびその変形例に関する説明事項のうち、本実施形態のホログラム構造体11に対しても同様に適用可能な事項についての詳細な説明は省略する。
本実施形態に係るホログラム保持体10およびホログラム構造体11は、上述の第1の実施形態と同様の構成を有し、ホログラム構造体11は、図1、図2および図5〜図7に示すような要素素子21および凹凸面1aを有し、また反射型(図3参照)および透過型(図4参照)のいずれであってもよい。またホログラム構造体11の各要素素子21についての1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率は、当該最大回折効率を含む回折効率の波長分布において、200nm以下の半値全幅を持つ極大値を形成する。
本実施形態の一モードに係るホログラム構造体11では、上述の最大回折効率が、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布のうちの一方に含まれる。また、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布のうちの他方における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が、当該他方の回折効率の波長分布において、200nm以下の半値全幅を持つ極大値を形成する。また本実施形態の他のモードに係るホログラム構造体11では、上述の最大回折効率が、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布の両方に含まれる。すなわち、当該他のモードに係るホログラム構造体11では、1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率と、−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率と、が互いに等しい。これらのモードに係るホログラム構造体11は、白色光が入射された場合、1次回折光および−1次回折光によって白色以外の色で第1光像および第2光像を再生することができる。
なお、上述の本実施形態のホログラム構造体11は、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布のうちの一方において、380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率を示す波長と、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布のうちの他方において、380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率を示す波長との差が、100nm以下であることが好ましい。この場合、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、1次回折光の最大回折効率を示す波長と−1次回折光の最大回折効率を示す波長とが非常に近く、1次回折光によって再生される光像の色と−1次回折光によって再生される光像の色とが同じまたは非常に似た色系に含まれる。
なお、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布のうちの一方における380nm以上780nm以下となる波長帯域に、当該一方の回折効率の波長分布での最大回折効率の半分以上の回折効率となる他の極大値が存在しないことが好ましい。すなわち、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布のうちの一方における380nm以上780nm以下となる波長帯域での二番目に大きい回折効率の極大値は、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布のうちの一方における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率の半分未満であることが好ましい。また、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布のうちの他方における380nm以上780nm以下となる波長帯域に、当該他方の回折効率の波長分布での最大回折効率の半分以上の回折効率となる他の極大値が存在しないことが好ましい。すなわち、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布のうちの他方における380nm以上780nm以下となる波長帯域での二番目に大きい回折効率の極大値は、1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布のうちの他方における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率の半分未満であることが好ましい。
これらの条件を満たすホログラム構造体11は、色のにじみ(色の変化)やラインの太りを効果的に防いで、高精細な第1光像および第2光像を相互に異なる色で再生することが可能である。
以下、本実施形態のホログラム構造体11によって再生される光像100の具体例について説明する。なお以下の説明において「最大回折効率」とは、可視光波長帯域に含まれる380nm以上780nm以下となる波長帯域における最大の回折効率を指す。
図20は、第2の実施形態に係る反射型のホログラム構造体11の一例に係る0次回折光、1次回折光および−1次回折光の各々の波長分布を示すグラフであり、横軸が波長を示し、縦軸が回折効率を示す。図20等の各図面(特にグラフ)では、0次回折光の波長分布は「W0」で示され、1次回折光の波長分布は「W1」で示され、−1次回折光の波長分布は「W−1」で示されている。図21は、図20に示す特性を有するホログラム構造体11によって再生される光像100の例を示す。以下の説明および各図面において、0次回折光による再生像を「0次回折光像100a」とも称し、1次回折光による再生像を「1次回折光像100b」とも称し、−1次回折光による再生像を「−1次回折光像100c」とも称し、これらの光像100a、100b、100cを集合的に表す場合には符合「100」が使われる。
例えば、ホログラム構造体11の凹凸面1aにおける段数を8段にして、1段当たりの深さを200nm(最大深さ1400nm(図6の符合「D」参照))にした場合、図20に示すように、0次回折光の最大回折効率を示す波長を600nmに設定し、1次回折光の最大回折効率を示す波長を533nmに設定し、−1次回折光の最大回折効率を示す波長を685nmに設定することができる。このホログラム構造体11により白色光の再生光から再生される光像100は、図21に示すように、黄系〜橙系の0次回折光像100aを中心に点対称に配置された緑色の1次回折光像100bおよび赤色の−1次回折光像100cを含む。また1次回折光像100bおよび−1次回折光像100cは同一の形状(図示の例では「F」形状)を有する。なお0次回折光像100aは、非回折波長および回折効率に依存した色を有する。
またホログラム構造体11の凹凸面1aにおける段数を4段にして、1段当たりの深さを190nm(最大深さ570nm(図7の符合「D」参照))にした場合、図22に示すように、0次回折光の最大回折効率を示す波長を570nmに設定し、1次回折光の最大回折効率を示す波長を456nmに設定し、−1次回折光の最大回折効率を示す波長を760nmに設定することができる。このホログラム構造体11により白色光の再生光から再生される光像100は、図23に示すように、0次回折光像100aを中心に点対称に配置された同一形状の青色の1次回折光像100bおよび赤色の−1次回折光像100cを含む。
またホログラム構造体11の凹凸面1aにおける段数を4段にして、1段当たりの深さを280nm(最大深さ840nm)にした場合、図24に示すように、0次回折光の最大回折効率を示す波長を420nmに設定し、1次回折光の最大回折効率を示す波長を672nmに設定し、−1次回折光の最大回折効率を示す波長を480nmに設定することができる。このホログラム構造体11により白色光の再生光から再生される光像100は、図25に示すように、0次回折光像100aを中心に点対称位置に配置された同一形状の赤色の1次回折光像100bおよび青色の−1次回折光像100cを含む。なお、0次回折光の最大回折効率を示す波長を可視光波長帯域外に設定することで、0次回折光像100aが視認されないようにすることも可能である。
またホログラム構造体11の凹凸面1aにおける段数を4段にして、1段当たりの深さを400nm(最大深さ1200nm)にした場合、図26に示すように、0次回折光の最大回折効率を示す波長を600nmに設定し、1次回折光の最大回折効率を示す波長を533nmに設定し、−1次回折光の最大回折効率を示す波長を436nmに設定することができる。なお本例では、−1次回折光の2番目に大きい回折効率を示す波長が可視光波長帯域内(具体的には685nm)に設定され且つその回折効率も0.6以上の高い値を示す。したがって、−1次回折光像100cの色は、436nmおよびその近傍の波長に対応する色(すなわち青色)と685nmおよびその近傍の波長に対応する色(すなわち赤色)とが混ざった色(すなわち紫色)となる。したがって、このホログラム構造体11により白色光の再生光から再生される光像100は、図27に示すように、0次回折光像100aを中心に点対称位置に配置された同一形状の緑色の1次回折光像100bおよび紫色の−1次回折光像100cを含む。
なお上述の図20〜図27に示した光像100は、本実施形態のホログラム構造体11によって再生可能な光像100の例に過ぎず、ホログラム構造体11の回折特性を調整することによって、他の色で光像100を再生することも可能である。ホログラム構造体11の回折特性は任意の方法で調整することができ、例えば凹凸面1aの段数、凹凸深さおよびホログラム構造体11(特にホログラム層1)の屈折率を適宜選択することによって、0次回折光、1次回折光および−1次回折光の波長分布を調整できる。
このように本実施形態のホログラム構造体11によれば、白色光を再生光として用いた場合にも、1次回折光および−1次回折光によって、特定波長(すなわち特定色)の光像100を再生することができる。特に、1次回折光の最大回折効率を示す波長および−1次回折光の最大回折効率を示す波長を、相互に異なる色系の波長帯域に含まれるようにすることで、0次回折光像100aを中心とした点対称位置に、異なる色の1次回折光像100bおよび−1次回折光像100cを再生することができる。なお、本実施形態のホログラム構造体11も、上述の第1の実施形態のホログラム構造体11と同様に、虹色以外の特定色で光像100を再生するため、高精細な光像100を再生することができるとともに、特定色に基づく特定の印象を観察者50に付与することができる。また1次回折光の最大回折効率を示す波長および−1次回折光の最大回折効率を示す波長を、相互に同じ色系に含まれる波長に設定してもよい。この場合、0次回折光像100aを中心とした点対称位置に、同じ色系の1次回折光像100bおよび−1次回折光像100cを再生することができる。
[変形例2−1]
図28Aおよび図28Bは、変形例2−1に係るホログラム構造体11によって再生される1次回折光による光像100bの一例を示す図である。なお図28Aは、後述の第1の要素素子21aによって再生される0次回折光による光像100aおよび1次回折光による光像100bを示し、図28Bは、後述の第2の要素素子21bによって再生される0次回折光による光像100aおよび1次回折光による光像100bを示す。図29は、変形例2−1に係るホログラム構造体11の平面構造と、当該ホログラム構造体11によって再生される光像100とを概略的に示す図である。
本変形例に係るホログラム構造体11は第1の領域28および第2の領域29を含み、第1の領域28には複数の第1タイプの要素素子21(以下「第1の要素素子21a」とも称する)が配置され、第2の領域29には複数の第2タイプの要素素子21(以下「第2の要素素子21b」とも称する)が配置される。380nm以上780nm以下の波長帯域において、第1の要素素子21aについての1次回折光の回折効率の波長分布は、第2の要素素子21bについての1次回折光の回折効率の波長分布と同じであり、第1の要素素子21aについての−1次回折光の回折効率の波長分布は、第2の要素素子21bについての−1次回折光の回折効率の波長分布と同じである。また第1の要素素子21aによって再生される1次回折光像100bは、第2の要素素子21bによって再生される−1次回折光像100cと同一の形状を有し、第1の要素素子21aによって再生される−1次回折光像100cは、第2の要素素子21bによって再生される1次回折光像100bと同一の形状を有する。そして、第1の要素素子21aの1次回折光によって再生される光像と−1次回折光によって再生される光像との相対位置は、第2の要素素子21bの1次回折光によって再生される光像と−1次回折光によって再生される光像との相対位置と逆になっている。
図28A、図28Bおよび図29に示すホログラム構造体11の場合、第1の要素素子21aは、0次回折光像100aの一方側(図面右側)に1次回折光像100bを再生するとともに他方側(図面左側)に−1次回折光像100cを再生する。一方、第2の要素素子21bは、0次回折光像100aの一方側(図面右側)に−1次回折光像100cを再生するとともに他方側(図面左側)に1次回折光像100bを再生する。このように、1次回折光像100bおよび−1次回折光像100cの0次回折光像100aに対する相対位置の関係は、第1の要素素子21aと第2の要素素子21bとの間で逆になっている。なお、第1の要素素子21aの回折角は第2の要素素子21bの回折角と同じに設定される。一方、第1の要素素子21aの1次回折光および−1次回折光の波長分布は第2の要素素子21bの1次回折光および−1次回折光の波長分布と同じである。そのため図29に示すように、第1の要素素子21aによって再生される1次回折光像100bは、第2の要素素子21bによって再生される1次回折光像100bと同じ色(図29では緑色)を有し、第1の要素素子21aによって再生される−1次回折光像100cは、第2の要素素子21bによって再生される−1次回折光像100cと同じ色(図29では赤色)を有する。
上述の構成を有する第1の領域28および第2の領域29を並べて配置することによって、0次回折光像100aを中心とした点対称の位置に反転色の光像100を再生する回折素子(すなわち第1の要素素子21aおよび第2の要素素子21b)が隣り合うことになる。したがって、白色光によって照明する領域を第1の領域28および第2の領域29との間で切り換えることによって、0次回折光像100aの両サイドに再生される光像については、形状の同一性をほぼ保ちつつ色を切り換えることができる。
なお、上述のホログラム構造体11は、相互に同一形状および同一色を有し且つ点対称に配置された2つの原画像を用いて、第1の領域28の第1の要素素子21aおよび第2の領域29の第2の要素素子21bを作ることにより実現されうる。また第1の要素素子21aの凹凸面1aの段数および1段当たりの深さは、第2の要素素子21bの凹凸面1aの段数および1段当たりの深さと同一にすることができる。また第1の領域28の第1の要素素子21aによって光像100が再生される位置と、第2の領域29の第2の要素素子21bによって光像100が再生される位置とは、少なくとも部分的に重なっていてもよいし、互いに異なっていてもよい。
[変形例2−2]
図30は、変形例2−2に係る透過型ホログラム構造体11の平面構造の一例を示す概念図である。図31Aは、図30の透過型ホログラム構造体11によって再生される光像100の一例を説明するための概略図であり、第1の要素素子21aによって再生される光像100を示す。図31Bは、図30のホログラム構造体11の第2の要素素子21bによって再生される光像100を示す。図31Cは、図31Aに示す光像および図31Bに示す光像が重なることで再生される光像100を示す。
本変形例のホログラム構造体11を構成する要素素子21は、複数の第1タイプの要素素子(すなわち第1の要素素子21a)と複数の第2タイプの要素素子(すなわち第2の要素素子21b)とを含む。これらの第1の要素素子21aおよび第2の要素素子21bが同一領域内において混在し、図示の例では、第1の要素素子21aおよび第2の要素素子21bが市松模様状に配置される。380nm以上780nm以下の波長帯域において、第1の要素素子21aについての1次回折光の回折効率の波長分布は、第2の要素素子21bについての1次回折光の回折効率の波長分布と同じであり、第1の要素素子21aについての−1次回折光の回折効率の波長分布は、第2の要素素子21bについての−1次回折光の回折効率の波長分布と同じである。また第1の要素素子21aによって再生される1次回折光の光像100b−1および−1次回折光の光像100c−1は同一の形状を有し、且つ、0次回折光の光像100a−1を中心とする点対称の関係を有する。同様に、第2の要素素子21bによって再生される1次回折光の光像100b−2および−1次回折光の光像100c−2は同一形状を有し、且つ、0次回折光の光像100a−2を中心とする点対称の関係を有する。
また第1の要素素子21aによって再生される1次回折光の光像100b−1は、第2の要素素子21bによって再生される−1次回折光の光像100c−2と同一の形状を有し、第1の要素素子21aによって再生される−1次回折光の光像100c−1は、第2の要素素子21bによって再生される1次回折光の光像100b−2と同一の形状を有する。第1の要素素子21aによって再生される1次回折光の光像100b−1は、第2の要素素子21bによって再生される−1次回折光の光像100c−2と重なり、第1の要素素子21aによって再生される−1次回折光の光像100c−1は、第2の要素素子21bによって再生される1次回折光の光像100b−2と重なる。なお、第1の要素素子21aによって再生される1次回折光の光像100b−1は、第2の要素素子21bによって再生される−1次回折光の光像100c−2とほぼ同じサイズを有し且つ大部分において(例えば1次回折光の光像100b−1および−1次回折光の光像100c−2の各々の50%以上において)重なることが好ましい。同様に、第1の要素素子21aによって再生される−1次回折光の光像100c−1は、第2の要素素子21bによって再生される1次回折光の光像100b−2とほぼ同じサイズを有し且つ大部分において(例えば−1次回折光の光像100c−1および1次回折光の光像100b−2の各々の50%以上において)重なることが好ましい。
上述の構成を有する本変形例のホログラム構造体11によって最終的に再生される光像100は、図31Cに示すように、第1の要素素子21aによって再生される光像(図31A参照)と第2の要素素子21bによって再生される光像(図31B)とが重なった合成像となる。すなわち、0次回折光像100aを中心とした点対称位置に同一形状且つ同色の光像が再生される。本変形例のホログラム構造体11によれば、0次回折光像100aを中心とした点対称位置に、同色の光像を簡単に再生することが可能である。
なおホログラム保持体10は、本変形例のホログラム構造体11を複数含んでいてもよく、各ホログラム構造体11に含まれる第1の要素素子21aおよび第2の要素素子21bの1次回折光の波長分布および−1次回折光の波長分布を、ホログラム構造体11間で変えてもよい。この場合、それぞれのホログラム構造体11によって複数種類の光像100(例えば相互に異なる色を有する光像100)を再生することが可能である。
なお上述の例では、1次回折光および−1次回折光の回折効率の波長分布が第1の要素素子21aおよび第2の要素素子21b間で同じであるが、これらの波長分布が第1の要素素子21aおよび第2の要素素子21b間で異なっていてもよい。すなわち380nm以上780nm以下の波長帯域において、第1の要素素子21aについての1次回折光の回折効率の波長分布は、第2の要素素子21bについての1次回折光の回折効率の波長分布と異なっていてもよく、また第1の要素素子21aについての−1次回折光の回折効率の波長分布は、第2の要素素子21bについての−1次回折光の回折効率の波長分布と異なっていてもよい。この場合、上述の例と同様に、第1の要素素子21aによって再生される1次回折光の光像100b−1は、第2の要素素子21bによって再生される−1次回折光の光像100c−2と同一の形状を有し重なってもよく、また第1の要素素子21aによって再生される−1次回折光の光像100c−1は、第2の要素素子21bによって再生される1次回折光の光像100b−2と同一の形状を有し重なってもよい。特に、第1の要素素子21aによって再生される1次回折光の光像100b−1は、第2の要素素子21bによって再生される−1次回折光の光像100c−2とほぼ同じサイズを有し且つ大部分において(例えば1次回折光の光像100b−1および−1次回折光の光像100c−2の各々の50%以上において)重なることが好ましい。同様に、第1の要素素子21aによって再生される−1次回折光の光像100c−1は、第2の要素素子21bによって再生される1次回折光の光像100b−2とほぼ同じサイズを有し且つ大部分において(例えば−1次回折光の光像100c−1および1次回折光の光像100b−2の各々の50%以上において)と重なることが好ましい。
この場合、図32Aに示すような第1の要素素子21aによって再生される光像100a−1、100b−1、100c−1と、図32Bに示すような第2の要素素子21bによって再生される光像100a−2、100b−2、100c−2とが重なり、図32Cに示すような光像100が再生される。すなわち、0次回折光像100aを中心とした点対称位置に同一形状且つ異なる色の光像を再生することができる。
例えば、上述の本変形例に係る反射型のホログラム構造体11において、第1の要素素子21aの凹凸面1aにおける段数を8段にして1段当たりの深さを200nm(最大深さ1400nm)にする一方で、第2の要素素子21bの凹凸面1aにおける段数を4段にして1段当たりの深さを190nm(最大深さ570nm)にすることができる。この場合、第1の要素素子21aの1次回折光像100b−1を緑色で再生し且つ−1次回折光像100c−1を赤色で再生しつつ、第2の要素素子21bの1次回折光像100b−2を青色で再生し且つ−1次回折光像100c−2を赤色で再生する。そして、これらの光像が合成されて、最終的には、0次回折光像100aを中心とした点対称位置に赤紫色の光像と黄色の光像とが再生される。なお図32A〜図32Cに示す例では、第1の要素素子21aによって再生される−1次回折光像100c−1と第2の要素素子21bによって再生される−1次回折光像100c−2とが同系色の色(すなわち赤色)を有するが、相互に異なる系統の色を有していてもよい。
また別の形態として、380nm以上780nm以下の波長帯域において、第1の要素素子21aについての1次回折光の回折効率の波長分布は、第2の要素素子21bについての−1次回折光の回折効率の波長分布と異なっていてもよく、また第1の要素素子21aについての−1次回折光の回折効率の波長分布は、第2の要素素子21bについての1次回折光の回折効率の波長分布と異なっていてもよい。この場合、第1の要素素子21aによって再生される1次回折光の光像は、第2の要素素子21bによって再生される1次回折光の光像と同一の形状を有し、第1の要素素子21aによって再生される−1次回折光の光像は、第2の要素素子21bによって再生される−1次回折光の光像と同一の形状を有し、第1の要素素子21aによって再生される1次回折光の光像は、第2の要素素子21bによって再生される1次回折光の光像と重なり、第1の要素素子21aによって再生される−1次回折光の光像は、第2の要素素子21bによって再生される−1次回折光の光像と重なってもよい。特に、第1の要素素子21aによって再生される1次回折光の光像100b−1は、第2の要素素子21bによって再生される1次回折光の光像100b−2とほぼ同じサイズを有し且つ大部分において(例えば1次回折光の光像100b−1および1次回折光の光像100b−2の各々の50%以上において)重なることが好ましい。同様に、第1の要素素子21aによって再生される−1次回折光の光像100c−1は、第2の要素素子21bによって再生される−1次回折光の光像100c−2とほぼ同じサイズを有し且つ大部分において(例えば−1次回折光の光像100c−1および−1次回折光の光像100c−2の各々の50%以上において)と重なることが好ましい。
この場合、図32Aに示すような第1の要素素子21aによって再生される光像100a−1、100b−1、100c−1と、図32Bにおいて括弧を伴って符合が示されている第2の要素素子21bによって再生される光像100a−2、100b−2、100c−2とが重なり、図32Cに示すような光像100が再生される。すなわち、0次回折光像100aを中心とした点対称位置に同一形状且つ異なる色の光像を再生することができる。
なお本変形例のホログラム構造体11において、第1の要素素子21aおよび第2の要素素子21bの配置態様は上述の市松模様状には限定されない。例えば、ストライプ状配置や、市松模様状配置およびストライプ状配置を組み合わせた配置態様によって、第1の要素素子21aおよび第2の要素素子21bが配置されてもよい。
[変形例2−3]
本変形例のホログラム構造体11は、上述のホログラム構造体11と同様に、入射される再生光の位相を変調することで光像を再生するフーリエ変換ホログラムとして構成された複数の要素素子21を備える。各要素素子21は、3段階以上の異なる高さを含む凹凸面1aを有し、第1波長帯域の光(すなわち第1波長(上述の最大回折効率を示す波長)の光を含む1次回折光)により第1光像を再生し、第1波長帯域とは異なる第2波長帯域の光(すなわち第1波長とは異なる第2波長(上述の最大回折効率を示す波長)の光を含む−1次回折光)により第1光像と点対称な第2光像を再生する。とりわけ第1光像および第2光像のうちの一方は、赤色に再生される。
すなわち各要素素子21についての1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布の一方における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率は、当該一方の回折効率の波長分布における680nm以上780nm以下の波長帯域に極大値を形成する。また各要素素子21への再生光の入射角度を変化させることで、各要素素子21についての1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布の他方における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率は、当該他方の回折効率の波長分布における680nmよりも小さい波長帯域に極大値を形成することができる。
図33は、変形例2−3に係る反射型のホログラム構造体11の一例に係る0次回折光(W0)、1次回折光(W1)および−1次回折光(W−1)の各々の波長分布を示すグラフであり、特に、再生光の入射角度が0°の場合を示す。図34は、再生光の入射角度が0°の場合に図33に示す特性を有するホログラム構造体11によって再生される光像100の例を示す。図35は、図33のホログラム構造体11に係る0次回折光(W0)、1次回折光(W1)および−1次回折光(W−1)の各々の波長分布を示すグラフであり、特に、再生光の入射角度が30°の場合を示す。図36は、再生光の入射角度が30°の場合に図35に示す特性を有するホログラム構造体11によって再生される光像100の例を示す。なお図33および図35において、横軸が波長を示し、縦軸が回折効率を示す。
例えば、反射型のホログラム構造体11の各要素素子21の凹凸面1aにおける段数を8段にして、1段当たりの深さを207nm(最大深さ1449nm)にした場合、ホログラム構造体11は図33および図35に示す回折特性を有するホログラム構造体11を実現することができる。すなわち、ホログラム構造体11に対する再生光の入射角度が0°の場合、0次回折光が621nmにピーク波長を有し、1次回折光が552nmにピーク波長を有し、−1次回折光が709nmにピーク波長を有しうる。一方、ホログラム構造体11に対する再生光の入射角度が30°の場合、0次回折光が540nm近辺にピーク波長を有し、1次回折光が473nmにピーク波長を有し、−1次回折光が624nmにピーク波長を有しうる。
図33および図35から明らかなように、一般に、ホログラム構造体11に対する再生光の入射角度が0°から増大するにしたがって、各回折光のピーク波長は短波長側にシフトする。一方、可視光波長帯域における各色系統の波長帯域の幅は色系統間で均等ではなく、特に赤系に対応する波長帯域は他の色系統に対応する波長帯域よりも広い。そのため、赤系の波長帯域においてピーク波長を有する回折光による光像は、再生光の入射角度が変わっても、再生像の色味が赤色のまま変化しにくい傾向がある。一方、赤系以外の他の色系統の波長帯域においてピーク波長を有する回折光による光像は、再生光の入射角度が変わると、再生像の色が短波長側の色に変化しやすい傾向がある。
したがってホログラム構造体11の回折特性(特に上述の最大回折効率)を調整して、1次回折光による光像(すなわち第1光像)および−1次回折光による光像(すなわち第2光像)のうちの少なくとも一方を、主として赤色光(とりわけ680nm以上780nm以下の波長に対応する光)によって再生することにより、再生光の入射角度が変わっても、当該少なくとも一方の光像を赤色で再生しうる。
特に、1次回折光による再生像および−1次回折光による再生像のうちの一方を赤色(とりわけ680nm以上780nm以下の波長に対応する色)に設定するとともに、他方を赤以外の色に設定してもよい。例えば図33および図35に示す回折特性を有するホログラム構造体11では、再生光の入射角度が0°の場合には図33及び図34に示すように−1次回折光像100cは赤色を有し且つ1次回折光像100bは緑色を有するが、再生光の入射角度が30°の場合には図35及び図36に示すように−1次回折光像100cは赤色を維持するが1次回折光像100bは青色になる。
このように本変形例のホログラム構造体11によれば、再生光の入射角度を変えても、1次回折光による光像および−1次回折光による光像のうちの少なくとも一方を赤色で再生することが可能である。このようなホログラム構造体11は、意匠用途に用いることもできるが、特に真贋判定などのセキュリティ用途に適している。観察者50は、ホログラム構造体11に対する白色光の入射角度を変えながら1次回折光像100bおよび−1次回折光像100cを観察し、1次回折光像100bおよび−1次回折光像100cの一方または両方が赤色の状態を維持するか否かに応じてホログラム保持体10の真贋を容易且つ確実に判定することが可能である。
なお、上述の一方の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域には、最大回折効率の半分以上の回折効率となる極大値が存在しないことが好ましい。すなわち、上述の一方の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での二番目に大きい回折効率の極大値は、最大回折効率の半分未満であることが好ましい。この場合、ラインの周縁における色のにじみや太りを効果的に防いで、高精細な光像再生することが可能である。
[第3の実施形態]
本実施形態において、上述の第1の実施形態、第2の実施形態およびそれらの変形例と同一または類似の要素には同一の符合を付し、その詳細な説明は省略する。また上述の第1の実施形態、第2の実施形態およびそれらの変形例に関する説明事項のうち、本実施形態のホログラム構造体11に対しても同様に適用可能な事項についての詳細な説明は省略する。
本実施形態に係るホログラム保持体10およびホログラム構造体11は、上述の第1の実施形態と同様の構成を有し、ホログラム構造体11は、図1、図2および図5〜図7に示すような要素素子21および凹凸面1aを有し、また反射型(図3参照)および透過型(図4参照)のいずれであってもよい。
本実施形態のホログラム構造体11は、再生される光像において0次回折光の影響を従来の光変調素子よりも実質的に低くすることで、視認性の高い再生像を提供することができる。
図37は、光の波長(横軸)および比視感度(縦軸)の関係を示すグラフである。比視感度は、人の目が感じる明るさの強さを表し、人の目が最大感度となる波長で感じる明るさの強さを「1」として、他の波長の明るさを感じる度合いを1以下の相対比によって表した無次元数である。
人の目で実際に観察される再生像の明るさは、ホログラム構造体11に入射させる再生光の波長強度分布と回折効率を掛け合わせたものに、更に比視感度を掛け合わせたものに相当する。したがって0次回折光のピーク波長を、比視感度が0.005以下を示す波長帯域(具体的には421nm以下または697nm以上)に設定することによって、従来の光変調素子と比べ、0次回折光を視覚上著しく目立たなくすることができる。
したがって本実施形態のホログラム構造体11では、各要素素子21についての0次回折光の最大回折効率が、421nm以下の波長または697nm以上の波長で得られる。この場合、0次回折光によって再生される光像を目立たなくさせることができるため、他の回折光によって再生される光像の視認性を向上させることができる。またホログラム構造体11では、各要素素子21についての0次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が、421nm以下の波長または697nm以上の波長で得られてもよい。なお、本実施形態のホログラム構造体11は、上述の第1の実施形態および第2の実施形態のホログラム構造体11と同様に、各要素素子21が凹凸面1aを有し、各要素素子21についての1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が、当該最大回折効率を含む回折効率の波長分布において、200nm以下の半値全幅を持つ極大値を形成する。
なお、各要素素子21についての0次回折光の最大回折効率は、200nm以下の半値全幅を持つ極大値を形成することが好ましい。この場合、0次回折光の大部分(すなわちピーク回折効率の半分以上の回折効率が確保される波長帯域の0次回折光)が、視認されにくい421nm以下の波長または697nm以上に含まれる。そのため、0次回折光によって再生される光像を顕著に目立たなくさせることができる。また各要素素子21についての0次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率は、200nm以下の半値全幅を持つ極大値を形成してもよい。
また各要素素子21についての1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布の少なくとも一方が、456nm以上663nm以下となる波長帯域に、回折効率の極大値を有することが好ましい。この場合、比視感度の高い波長帯域において1次回折光および−1次回折光のうちの少なくとも一方により光像が再生され、当該光像の鮮明性を向上させることができる。
また特に、各要素素子21についての0次回折光の回折効率の波長分布における456nm以上663nm以下となる波長帯域での最大回折効率が、各要素素子21についての1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布の少なくとも一方の456nm以上663nm以下となる波長帯域に含まれる極大値の25%未満であることが好ましい。この場合、比視感度の高い波長帯域において、0次回折光の回折効率と比較し、1次回折光および−1次回折光のうちの少なくとも一方の回折効率を十分に大きくすることができる。これにより、1次回折光および−1次回折光のうちの少なくとも一方によって再生される光像の視認性を、より効果的に改善することができる。
以下に説明する本実施形態のホログラム構造体11は、再生光の位相を変調することで光像を再生するフーリエ変換ホログラムとして構成された複数の要素素子21を備え、各要素素子21は、3段階以上の異なる高さを含む凹凸面1aを有する。そして上述のように、各要素素子21についての0次回折光の最大回折効率が、421nm以下の波長または697nm以上の波長で得られる。また各要素素子21についての0次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が、421nm以下の波長または697nm以上の波長で得られてもよい。
図38は、一般的なホログラム構造体11の波長(横軸)および回折効率(縦軸)の関係の一例を示す図である。図39は、図38の回折特性を持つホログラム構造体11によって再生される光像100の一例を示す図である。図40は、第3の実施形態に係るホログラム構造体11の波長(横軸)および回折効率(縦軸)の関係の一例を示す図である。図41は、図40の回折特性を持つホログラム構造体11によって再生される光像100の一例を示す図である。なお図38および図40において、0次回折光の波長分布は「W0」で示され、1次回折光の波長分布は「W1」で示され、−1次回折光の波長分布は「W−1」で示されている。
図38の回折特性を持つホログラム構造体11は、反射型であり、上述の図5と同様の構成を有し、各要素素子21の凹凸面1aは、4段の凹凸構造を有し、1段当たりの深さが180nmに設定され、屈折率が1.5であるホログラム層1に形成されている。この場合、図38に示すように0次回折光の回折効率の波長分布において、回折効率は可視光波長帯域内(具体的には540nm近辺)においてピークを有する。そのため図39に示すように、1次回折光像100bと−1次回折光像100cとの間において、0次回折光によって再生される光像100aが緑色で視認可能に出現する。
一方、図40の回折特性を持つホログラム構造体11は、反射型であり、上述の図5と同様の構成を有し、各要素素子21の凹凸面1aは、4段の凹凸構造を有し、1段当たりの深さが277.5nmに設定され、屈折率が1.5であるホログラム層1によって形成されている。この場合、図40に示すように、各要素素子21についての0次回折光の最大回折効率(図40の符合「H0」参照)が、421nm以下の波長で得られる。また各要素素子21についての0次回折光の当該最大回折効率が、200nm以下の半値全幅を持つ極大値を形成する。また各要素素子21についての0次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が、421nm以下の波長で得られてもよく、各要素素子21についての0次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での当該最大回折効率が、200nm以下の半値全幅を持つ極大値を形成してもよい。また各要素素子21についての1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布の少なくとも一方が、456nm以上663nm以下となる波長帯域に、回折効率の極大値(図40の符合「H1」および「H−1」参照)を有する。また各要素素子21についての0次回折光の回折効率の波長分布における456nm以上663nm以下となる波長帯域での最大回折効率が、各要素素子21についての1次回折光の回折効率の波長分布および−1次回折光の回折効率の波長分布の少なくとも一方の456nm以上663nm以下となる波長帯域に含まれる極大値(図40の符合「H1」および「H−1」参照)の25%未満である。
上述の図40に示す回折特性を有するホログラム構造体11によれば、図41に示すように、1次回折光像100bと−1次回折光像100cとの間において、0次回折光による光像は視認可能なようには出現しない。
以上説明したように本実施形態のホログラム構造体11によれば、0次回折光によって再生される光像は視認されず或いは視認できても目立たないように出現するため、原画像を工夫することなく、1次回折光および−1次回折光による光像100を視認性良く再生することができる。したがって、例えば中心に明部がない光像(すなわち原画像)を再生する場合にも、0次回折光により再生される光像が気にならないように、他の回折光によって光像を見やすく鮮明に再生することができる。
なお本実施形態のホログラム構造体11は、0次回折光による再生像が目立つ従来の光変調素子よりも視認性に優れた光像を再生できるため、意匠用途に適するとともに、真贋判定等のセキュリティ用途にも適している。特に、ホログラム構造体11の回折特性を調整し、可視光波長帯域(例えば380nm以上780nm以下の波長帯域)において0次回折光のピーク波長を±1次回折光のピーク波長と異ならせることによって、0次回折光のピーク波長をカットするフィルターをホログラム構造体11と併用することができる。一例として、380nm以上780nm以下となる波長帯域で、0次回折光の回折効率の波長分布において最大回折効率の半分以上の回折効率を示す波長帯域が、±1次回折光の回折効率の波長分布において最大回折効率の半分以上の回折効率を示す波長帯域と重ならない場合に、そのような0次回折光のピーク波長をカットするフィルターを使用することが可能である。そのようなフィルターを用いる場合、0次回折光によって光像が再生されることをより確実に防ぐことができる。したがって、例えばセキュリティ用途において機器を使用してホログラム構造体11の再生像の適否を判定する場合に、精度の高い判定を行うことができ、認証の信頼性を向上させられる。
[凹凸面の深さ]
本実施形態のホログラム構造体11は、上述の第1の実施形態のホログラム構造体11の製造方法と同様の方法により製造することができ、0次回折光による光像を目立たないようにするための特有の凹凸深さを有する凹凸面1aをホログラム層1に形成することができる。
例えば、本実施形態の回折特性を持つ反射型のホログラム構造体11は、上述の図5と同様の構成を有し、各要素素子21の凹凸面1aが4段の凹凸構造を有し、1段当たりの深さが277.5nmに設定され、ホログラム層1の屈折率が1.5の場合に形成可能である。この場合、凹凸面1aの1段当たりの光路長が832.5nmとなり、−1次回折光によって青色の光像が再生され、1次回折光によって赤色の光像が再生され、0次回折光によって再生される光像は非常に暗く再生されて殆ど目立たない。
また他の例として、反射型のホログラム構造体11において、ホログラム層1の屈折率が1.5であり、各要素素子21の凹凸面1aが8段の凹凸構造を有し、1段当たりの深さが277.5nmに設定される場合、−1次回折光によって青色の光像が再生され、1次回折光によって赤色の光像が再生され、0次回折光によって再生される光像は非常に暗く再生されて殆ど目立たない。また透過型のホログラム構造体11において、ホログラム層1の屈折率が1.5であり、各要素素子21の凹凸面1aが4段の凹凸構造を有し、1段当たりの深さが1665nmに設定され、屈折率が1.0の空気環境下で使用される場合、−1次回折光によって青色の光像が再生され、1次回折光によって赤色の光像が再生され、0次回折光によって再生される光像は非常に暗く再生されて殆ど目立たない。
一方、反射型のホログラム構造体11において、ホログラム層1の屈折率が1.5であり、各要素素子21の凹凸面1aが4段の凹凸構造を有し、1段当たりの深さが180nmに設定される場合、−1次回折光によって赤色の光像が再生され、1次回折光によって青色の光像が再生され、0次回折光によって再生される光像は明るい緑で再生されて目立つ(図39参照)。
[凹凸面の深さと再生像のピーク波長の関係]
凹凸面1aの1段当たりで変調される光路長をlで表し、自然数をmで表した場合、ホログラム構造体11によって再生される0次回折光のピーク波長λ0は、以下の式で表され、凹凸面1aの段数Nには依存しない。
λ0=l/m
上述のように本実施形態のホログラム構造体11の特徴の一つは、0次回折光によって再生される光像が視覚上目立たないことである。これは、比視感度が0.005以上の波長帯域(すなわち421nm〜697nm)において0次回折光のピーク波長λ0が存在しない場合に実現することが可能である。例えば反射型のホログラム構造体11において光路長lが832.5nmの場合、0次回折光のピーク波長λ0を832.5/mにすることができる。この場合、m=1に対してはλ0=832.5nmとなり、m=2に対してはλ0=416.25nmとなり、m=3に対してはλ0=277.5nmとなる。m=4以降の場合にはλ0はさらに小さな値となる。これらの0次回折光のピーク波長λ0は、比視感度が0.005以上の波長帯域(421nmより大きく且つ697nmよりも小さい波長帯域)に含まれないため、光路長lを832.5nmとすることで、0次回折光の目立たない光像100を観察することができる。
[変形例3−1]
ホログラム構造体11は複数の領域を含んでいてもよく、上述の本実施形態に係る複数の要素素子21が配置される領域と、他の回折特性を有する複数の要素素子21が配置される領域とが互いに並べられて配置されてもよい。
図42Aは、変形例3−1に係る反射型ホログラム構造体11の一例によって再生される光像100を説明するための概略図であり、第1の領域25を介して再生される光像100を示す。図42Bは、図42Aのホログラム構造体11の第2の領域26を介して再生される光像100を示す。
図42Aおよび図42Bのホログラム構造体11は、第1の領域25および第2の領域26を含む。第1の領域25には複数の第1タイプの要素素子21が配置され、第2の領域26には複数の第2タイプの要素素子21が配置される。また第1タイプの要素素子21によって再生される1次回折光の光像および−1次回折光の光像は、第2タイプの要素素子21によって再生される1次回折光の光像および−1次回折光の光像と関連性のある形状を有する。ここでいう形状の関連性を有する光像には、例えば、視覚上同じ形状またはほぼ同じ形状を有する光像のペアが含まれ、これらの光像の大きさは相互に同じであってもよいし異なっていてもよい。また形状の関連性を有する光像には、例えば、互いの光像が組み合わされることで、特定の意図を持った絵柄や文字等を形成する光像のペアも含まれる。そして第1タイプの要素素子21についての0次回折光の最大回折効率が、421nm以下の波長または697nm以上の波長で得られる。一方、第2タイプの要素素子21についての0次回折光の最大回折効率が、421nmよりも大きく且つ697nmよりも小さい波長で得られる。また第1タイプの要素素子21についての0次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が、421nm以下の波長または697nm以上の波長で得られてもよく、第2タイプの要素素子21についての0次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が、421nmよりも大きく且つ697nmよりも小さい波長で得られてもよい。
さらに第1タイプの要素素子21および第2タイプの要素素子21に白色光が入射した場合に、第1タイプの要素素子21の1次回折光像100bおよび第2タイプの要素素子21の−1次回折光像100cは同系色(例えば赤色)を有し、第1タイプの要素素子21の−1次回折光像100cおよび第2タイプの要素素子21の1次回折光像100bは同系色(例えば青色)を有する。
上述の第1の領域25に白色光が入射されると、図42Aに示すように、第1タイプの要素素子21による1次回折光像100bおよび−1次回折光像100cは視認可能に再生されるが、0次回折光の光像は視認されないように或いは目立たないように再生される。一方、上述の第2タイプの要素素子21が配置される第2の領域26に白色光が入射されると、図42Bに示すように、1次回折光像100bおよび−1次回折光像100cとともに0次回折光像100aが視認可能に再生される。
そして図42Aおよび図42Bに示すホログラム構造体11では、第1の領域25および第2の領域26が相互に隣り合って設けられる。観察者50は、ホログラム構造体11を移動させながら、第1の領域25を介して再生される光像100の観察および第2の領域26を介して再生される光像100の観察を連続的に繰り返すことによって、1次回折光像100bおよび−1次回折光像100cの形状および色の同一性を認識しつつ、0次回折光像100aの有無の変化を認識することができる。このようなホログラム構造体11は、意匠用途に用いることもできるが、特に真贋判定等のセキュリティ用途に適している。観察者50は、白色光を使って0次回折光像100aの変化の有無に応じて、ホログラム保持体10の真贋を容易且つ確実に判定することが可能である。
[用途]
上述のホログラム構造体11(光変調素子)およびホログラム保持体10の使用形態や用途は特に限定されず、例えば、キャラクター像を再生するなどエンターテイメント用途および意匠用途として使用することが可能である。またセキュリティ用途では、例えば以下の対象に対してホログラム構造体11(光変調素子)を適用可能である。ホログラム保持体10を情報記録媒体として使用する場合、例えばパスポート、ID証、紙幣、クレジットカード、金券、商品券、その他のチケット、公的文書、個人情報や機密情報などの各種の情報を記録したその他の媒体、および金銭的価値のある他の媒体等に対し、本発明に係る光変調素子および情報記録媒体を応用することが可能であり、これらの偽造を防ぐことができる。ここでいうID証には、例えば国民ID証、免許証、会員証、社員証および学生証などが含まれる。ホログラム保持体10において、ホログラム構造体11を保持する基材(図2の符合「4」参照)は、例えば紙、樹脂、金属、合成繊維、或いはこれらの組み合わせによって構成可能である。また基材に開口部(図2の符合「4a」参照)が形成される場合、当該開口部の全域をホログラム構造体11で覆っていてもよいし、当該開口部の一部のみをホログラム構造体11を配置してもよい。このホログラム構造体11は、外観上は、透明部材として構成されうる。例えば、透過型のホログラム構造体11を保持するホログラム保持体10の裏面側に点光源を配置し、観察者がホログラム保持体10の表面側からホログラム構造体11を通して点光源を観察することで、観察者は、ホログラム構造体11に記録されたセキュリティ情報を視認することができる。このセキュリティ情報は、例えば、ホログラム保持体10の真贋判定などに利用できる。
また、上述のホログラム保持体10に対して本発明に係る光変調素子を任意の方法で適用することが可能であり、例えば、ホログラム保持体10の表面への凹凸形成、転写、貼付、挟み込み、或いは埋め込み等の技法を使って、本発明に係る光変調素子を任意の物(すなわちホログラム保持体10)に保持させることができる。したがって、ホログラム保持体10を構成する部材の一部を利用してホログラム構造体11を形成してもよいし、ホログラム保持体10に対してホログラム構造体11を付加的に設けてもよい。
また上述のホログラム構造体11は、単独で各種用途に利用されてもよいし、印刷層等の他の機能層と一緒に使用されて各種用途に利用されてもよい。
[ホログラム層の構成材料]
ホログラム層1を構成する材料は特に限定されないが、上述のように、各種樹脂によってホログラム層1を構成することが可能である。以下に、各種樹脂の具体例について列挙する。
ホログラム層1を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、ホログラム層1を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独重合体であっても2種以上の構成成分からなる共重合体であってもよい。また、これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上述の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂は、各種イソシアネート化合物、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の金属石鹸、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の有機過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルスルフィド等の熱或いは紫外線硬化剤を含んでいてもよい。
ホログラム層1を構成する電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等が挙げられ、中でもウレタン変性アクリレート樹脂が好ましく、特に特開2007−017643号公報で示される化学式で表されるウレタン変性アクリル系樹脂が好ましい。
上記電離放射線硬化性樹脂を硬化させる際には、架橋構造、粘度の調整等を目的として、単官能または多官能のモノマー、オリゴマー等を併用することができる。上記単官能モノマーとしては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等のモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、2官能以上のモノマーとしては、骨格構造で分類するとポリオール(メタ)アクリレート(例えば、エポキシ変性ポリオール(メタ)アクリレート、ラクトン変性ポリオール(メタ)アクリレート等)、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、その他ポリブタジエン系、イソシアヌール酸系、ヒダントイン系、メラミン系、リン酸系、イミド系、ホスファゼン系等の骨格を有するポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、紫外線、電子線硬化性である種々のモノマー、オリゴマー、ポリマーが利用できる。
更に詳しくは、2官能のモノマーやオリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。3官能のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。4官能のモノマーやオリゴマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。5官能以上のモノマーやオリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、ホスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。官能基数は特に限定されるものではないが、官能基数が3より小さいと耐熱性が低下する傾向があり、また、20を超える場合には柔軟性が低下する傾向があるため、特に官能基数が3〜20の範囲内のものが好ましい。
上記のような単官能または多官能のモノマーやオリゴマーの含有量は適宜調整可能だが、通常、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して50重量部以下とすることが好ましく、中でも0.5重量部〜20重量部の範囲内が好ましい。
また、ホログラム層1には必要に応じて、光重合開始剤、重合禁止剤、劣化防止剤、可塑剤、滑剤、染料や顔料などの着色剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、およびチクソトロピー性付与剤等の添加剤が適宜加えられてもよい。
ホログラム層1の膜厚は、ホログラム層1が自己支持性を有する場合、0.05mm〜5mmの範囲内が好ましく、中でも0.1mm〜3mmの範囲内であることが好ましい。一方、ホログラム層1が自己支持性を有さずに透明基材上に形成される場合、ホログラム層1の膜厚は、0.1μm〜50μmの範囲内が好ましく、中でも2μm〜20μmの範囲内とすることが好ましい。また、ホログラム層1のサイズ(例えば平面視サイズ)は、ホログラム構造体11の用途に応じて適宜設定可能である。
[他の変形例]
上述の各実施形態および各変形例で用いられるホログラム構造体11は、図5に示すように複数の要素素子21から構成されているが、単一の要素素子21によってホログラム構造体11が構成されていてもよい。
また各要素素子21の平面視サイズおよび平面視形状も特に限定されず、各要素素子21は任意のサイズおよび形状を有しうる。例えば、各要素素子21の平面視形状を、正方形、長方形、台形等の四角形、他の多角形状(例えば三角形、五角形、六角形等)、真円、楕円、他の円形、星型形状、或いはハート型形状等であってもよく、ホログラム構造体11は2種類以上の平面視形状の要素素子21を有していてもよい。
またホログラム構造体11には、任意の機能層が付加されてもよく、例えば透明蒸着層によってホログラム構造体11を覆ってもよい。特に光沢を持たない透明蒸着層を設けることによって、ホログラム構造体11が光沢を持つことを防いで、ホログラム構造体11を隠蔽することもできる。ホログラム構造体11を隠蔽する観点から、そのような透明蒸着層の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、とりわけ90%以上であることがより好ましい。また反射型のホログラム構造体11では反射性の蒸着層(図2の反射層2参照)によってホログラム構造体11を覆うことができる。反射性蒸着層の構成材料として、例えばMg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Rb、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Au、Pb、もしくはBi等の金属が挙げられる。また、透明蒸着層の構成材料として、例えば、ZnSやTiO2などをはじめとする上記金属の酸化物及び硫化物が挙げられる。これらの材料を単独で用いて蒸着層が構成されてもよいし、2以上の材料が組み合わされて蒸着層が構成されてもよい。
ホログラム層1上(特に凹凸面1a上)に設けられる蒸着層の厚みは、所望の反射性、色調、デザインおよび用途等の観点から適宜に設定でき、例えば50Å〜1μmの範囲内であることが好ましく、中でも100Å〜1000Åの範囲内であることが好ましい。特に、蒸着層の透明性を優先する場合には蒸着層の厚みは200Å以下であることが好ましい一方で、蒸着層の隠蔽性を優先する場合には蒸着層の厚みは200Åを超える厚みであることが好ましい。また蒸着層の形成方法としては、蒸着層の一般的な形成方法を採用でき、例えば真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法等が挙げられる。
本発明は、上述の実施形態および変形例には限定されない。例えば、上述の実施形態および変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また、上述の構成要素および/または方法以外の構成要素および/または方法を含む形態も、本発明の実施形態に含まれうる。また、上述の構成要素および/または方法のうちの一部の要素が含まれない形態も、本発明の実施形態に含まれうる。また、本発明のある実施形態に含まれる一部の構成要素および/または方法と、本発明の他の実施形態に含まれる一部の構成要素および/または方法とを含む形態も、本発明の実施形態に含まれうる。したがって、上述の実施形態および変形例、および上述以外の本発明の実施形態の各々に含まれる構成要素および/または方法同士が組み合わされてもよく、そのような組み合わせに係る形態も本発明の実施形態に含まれうる。また、本発明によって奏される効果も上述の効果に限定されず、各実施形態の具体的な構成に応じた特有の効果も発揮されうる。このように、本発明の技術的思想および趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲、明細書、要約書および図面に記載される各要素に対して種々の追加、変更および部分的削除が可能である。