以下、図面を参照して本開示の実施の形態に係る光変調素子について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や、長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
以下の各実施形態の光変調素子は、入射光の位相を変調することで光像を再生する要素素子を備えている。要素素子は、凹凸面を有している。図示の例では、要素素子は、回折格子である。具体的には、要素素子は、ホログラム構造体によって構成されており、特にフーリエ変換ホログラムによって構成されている。フーリエ変換ホログラムは、原画像のフーリエ変換像の波面情報を記録することで作製されるホログラムであり、いわゆるフーリエ変換レンズとして機能する。特に位相変調型のフーリエ変換ホログラムは、フーリエ変換像の位相情報を多値化して深さとして媒体に記録することで作製される凹凸面を有するホログラムであり、媒体の光路長差に基づく回折現象を利用して再生光から原画像の光像を再生する。このフーリエ変換ホログラムは、例えば、所望の光像(すなわち原画像)を精度良く再生できる一方で、比較的簡単に作製することができる点で有利である。ただし、本発明を適用可能な光変調素子の要素素子は、フーリエ変換ホログラムには限定されず、他の方法で光像を再生するホログラムや他の構造を有する光変調素子に対しても本発明を適用することが可能である。
以下の説明では、要素素子への入射光として様々な波長を含む白色光を例として挙げているが、入射光は必ずしも白色光である必要はない。また本明細書において示される屈折率の具体的な値は、特に断りがない限り、波長589.3nmの光を基準としている。また以下の説明では、要素素子に関して示される屈折率や凹凸面の特性値は、特に断りがない限り、屈折率が1.0の空気環境下において要素素子が使用される場合を想定して導き出された値である。
また、要素素子で回折された回折光を観察する方法としては、例えば図12Aに示すように観察者および光源が要素素子に対して同じ側に配置され、要素素子についての反射による回折光を観察する反射観察と、図12Bに示すように観察者および光源が要素素子を介して相互に異なる側に配置され、要素素子についての透過による回折光を観察する透過観察と、がある。以下の説明では、特に断りがない限り、反射観察および透過観察の両方の場合とも、要素素子への入射光の入射角度が0°(すなわち要素素子の入射面の法線方向に沿った角度)の場合を想定している。
また本明細書において、「同一の形状を有する2以上の光像」の概念には、大きさが相互に同一であり且つ形状(全体の形)が同じ2以上の光像だけではなく、光像の構成波長が異なるために再生される大きさが相互に僅かに異なる2以上の光像も含まれる。
[第1の実施形態]
図1は、光変調素子保持体10の典型例を示す概略平面図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
図1および図2に示す光変調素子保持体10は、ホログラム層1と、ホログラム層1の一方の面上に積層される透明性を有する反射層2と、ホログラム層1の他方の面上に積層された透明基材4とを備える。この光変調素子保持体10の一部にはホログラム構造体として構成された光変調素子11が設けられている。この光変調素子11では、ホログラム層1の一方の面が凹凸面1aを形成し、この凹凸面1aを被覆する反射層2も凹凸形状を有する。光変調素子11が有する凹凸面1aは、原画像のフーリエ変換画像に対応した凹凸パターンを有し、フーリエ変換画像の画素毎に対応の凹凸深さを有する。例えば、透明基材4(例えばPET:ポリエチレンテレフタラート)上にホログラム層1を構成する樹脂(例えばUV硬化樹脂や熱可塑性樹脂)を塗布などで形成し、当該ホログラム層1に対して、UV硬化処理や熱圧処理とともに原版の凹凸面を押し当てる凹凸賦形処理が行われ、その後、当該ホログラム層1の凹凸面1a上に反射層2(例えばZnSやTiO2など)を形成することにより、図1および図2に示す光変調素子保持体10を製造することができる。なお図示は省略するが、反射層2上に、粘着材、接着剤、及び/又はヒートシール層等の他の部材が更に形成されてもよい。
このような光変調素子11に対して点光源や平行光源から光が入射すると、凹凸面1aの凹凸パターンに応じた光像(すなわち原画像)が再生される。この種の光変調素子は、光像を投影するためのスクリーン等が不要であり、また点光源や平行光源等の特定の光源からの光が入射する場合にとりわけ良好に光像を再生するため、意匠用途、セキュリティ用途、或いはその他の用途に対して利便性良く広範に利用可能である。このような光変調素子によって再生可能な光像は特に限定されず、例えば文字、記号、線画、絵柄、模様(パターン)およびこれらの組み合わせ等を、原画像および再生可能な光像としうる。
図3は、光変調素子11の平面構造を示す概念図である。本実施形態の光変調素子11は、二次元的に規則的に配置された複数の要素素子(「ホログラムセル」とも呼ばれる)21を含む。各要素素子21は、上述の凹凸面1aを有するとともに、数nm〜数mm四方(例えば2mm四方)の平面サイズを有し、入射光の位相を変調して光像を再生する。
凹凸面1aは多段形状(すなわち2段以上の段形状)を有し、凹凸面1aの段数は特に限定されない。複数色によって光像を再生する場合、凹凸面1aは3段以上の段数を有することが好ましく、特に4段以上の段数を有する凹凸面1aによれば複雑な構図を持つ原画像を高精細に再生することが可能である。図4および図5は、凹凸面1aの段構造の概略を示す要素素子21の断面図であり、図4は8段タイプの凹凸面1aを示し、図5は4段タイプの凹凸面1aを示す。なお図4および図5には、相互に同じ段形状の凹凸面1aを有する要素素子21が示されているが、実際の凹凸面1aは再生される光像(すなわち原画像)に応じた段形状を有する。なお凹凸面1aの凹凸パターンのピッチ(すなわち画素ピッチ(図4および図5に示す符合「P」参照))は、光像を精度良く再生する観点からは0.1μm〜80.0μmの範囲にあることが好ましく、通常は1μm以上であることが好ましい。
ところで、一般に、入射光の位相を変調することで光像を再生する光変調素子では、反射観察でも透過観察でも光像が再生される。再生される光像は、光変調素子の凹凸のパターンに応じたものであり、図12Aおよび図12Bに示すように、反射観察でも透過観察でも同じ光像が観察される。しかしながら、第1の実施形態による光変調素子は、図6Aおよび図6Bに示すように、反射観察では光像が観察されるが、透過観察では光像が観察されないようにするための工夫がなされている。
以下、要素素子21の構造について、更に詳細に説明する。
図6Aおよび図6Bは、それぞれ、第1の実施形態の光変調素子を反射観察した場合と透過観察した場合とを説明するための図である。図6Aおよび図6Bにおいて、符合「51」は、光源を示している。また、図6Aにおいて、符号「100a」は、光変調素子によって再生されるべき光像を示している。また、図7Aおよび図7Bは、図6Aおよび図6Bに示す光変調素子を構成する各要素素子の回折効率特性を示すグラフである。
まず、要素素子21で回折される光のうち、意図された光像100aの再生に主として寄与するのは1次回折光および−1次回折光である。要素素子21での2次以上の高次の回折光は、光像100aの明瞭な再生には寄与しない。また、要素素子21に入射する入射光の一部は、要素素子21で回折されることなく要素素子21を透過して0次光となるが、0次光は点の光像を生成するだけであり、光像100aの再生に寄与しない。
第1の実施形態の要素素子21は、反射観察では光像が観察されるが、透過観察では光像が観察されない、というように設計されている。各要素素子21がこのような回折特性を有することによって、当該要素素子21によって構成される光変調素子11は、反射観察では光像100aが観察されるが、透過観察では光像100aが観察されない、という特性を備えることができる。図6Aに示すように、各要素素子21は、各要素素子21についての反射による回折光により、図3に示す複数の要素素子21全体で星の図形の光像100aを再生するようになっている。
具体的には、各要素素子21は、以下のような回折効率特性を有する。すなわち、各要素素子21は、各要素素子21についての反射による1次回折光の回折効率の波長分布および反射による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が20%以上となるように設計されている。また、各要素素子21は、各要素素子21についての透過による1次回折光の回折効率の波長分布および透過による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が10%以下となるように設計されている。
このような回折効率特性を有する要素素子21は、例えば、各要素素子21での反射光の光路長差が1段階当たり45nmとなるように設計することにより実現される。
図7Aおよび図7Bを参照して、要素素子21での反射光の光路長差が1段階当たり45nmとなるように設計された要素素子21についての、反射および透過による1次回折光および−1次回折光の波長分布と回折効率との関係を説明する。
図7Aは、要素素子21についての反射による1次回折光および−1次回折光の波長分布と回折効率との関係を示すグラフである。また、図7Bは、要素素子21についての透過による1次回折光および−1次回折光の波長分布と回折効率との関係を示すグラフである。図7Aおよび図7Bにおいて横軸は波長[単位:nm]を示し、縦軸は回折効率[単位:%]を示す。回折効率は、ある方向へ回折する光の放射束[単位:μWもしくはμJ/cm2]を要素素子21に入射する光の放射束で割った量で表され、ある方向への回折放射束をPで表し、入射放射束をP0で表した場合、回折効率ηは「η=P/P0」で表される無次元数である。
図7Aおよび図7Bに示す例では、要素素子21は、屈折率nが1.5の材料で構成され、その凹凸面1aは8段の段数を有し、その凹凸面1aの1段当たりの段差dは15nmである。このように構成された要素素子21での反射光の光路長差は、1段階当たり45nmとなる。
図7Aから理解されるように、要素素子21についての反射による1次回折光の回折効率の波長分布および反射による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率は、20%以上である。一方、図7Bから理解されるように、要素素子21についての透過による1次回折光の回折効率の波長分布および透過による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率は、10%以下である。
具体的には、図7Aから理解されるように、要素素子21についての反射による1次回折光は、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100aを再生するのに十分な回折効率で回折される。一方、図7Bから理解されるように、要素素子21についての透過による1次回折光および−1次回折光は、いずれも380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100aを再生するのに十分な回折効率で回折されない。このことは、光変調素子11を反射観察した場合、光像100aを観察することが可能であるが、光変調素子11を透過観察した場合、光像100aを観察することができないことを意味する。
なお、上述の回折効率特性を満たす要素素子21は、要素素子21での反射光の光路長差が1段階当たり45nmとなるように設計されたものに限られない。例えば、要素素子21での反射光の光路長差が1段階当たり15nmとなるように設計された要素素子21によっても、上述の条件を満たすことができる。したがって、例えば、要素素子21を、屈折率nが1.5の材料で構成し、その凹凸面1aの段数を8段とし、1段当たりの段差dを5nmとした場合であっても、要素素子21は上述の回折効率特性を備えることができる。
また、要素素子21は、5段階以上の異なる高さを含む凹凸面1aを有するように設計されることが好ましい。ここで、本件発明者らの得た知見によれば、凹凸面1aが5段階以上の異なる高さを含む場合、上述の回折効率特性を満たす要素素子21を得ることが容易である。
次に、光変調素子11(特に凹凸面1a)の製造方法の一例について説明する。以下に説明する方法は一例に過ぎず、所望の凹凸面1aを含む光変調素子11を適切に製造可能な他の方法を採用することが可能である。
まず、原画像の2次元画像がコンピュータによって読み込まれる(Step1)。そしてコンピュータは、読み込んだ2次元画像の各画素値を振幅値とするとともに、各画素に対して0から2πの間のランダムな値を位相値として割り当てることにより、2次元複素振幅画像を得る(Step2)。そしてコンピュータは、この2次元複素振幅画像の2次元フーリエ変換を行うことによって、2次元フーリエ変換画像を得る(Step3)。なおコンピュータは、必要に応じて、繰り返しフーリエ変換法や遺伝的アルゴリズムなどの任意の最適化処理を行ってもよい(Step4)。そしてコンピュータは、2次元フーリエ変換画像の各画素の位相値を、複数段階(例えば「0」、「π/2」、「π」および「3π/2」の4段階、或いは「0」、「π/4」、「π/2」、「3π/4」、「π」、「5π/4」、「3π/2」および「7π/4」の8段階)に離散化する(Step5)。
そして、離散化された対応の位相値に応じた深さを各画素が有するように、2次元フーリエ変換画像に対応する光変調素子11(特に凹凸面1a)が作製される(Step6)。例えば、上述のStep5において2次元フーリエ変換画像の画素値が4段階に離散化された場合には、Step6において4段階の深さを持つ凹凸面1a(図5参照)がホログラム層1に形成される。凹凸面1aの深さは、実現しようとする回折効率特性だけではなく、様々な他の関連パラメータ(例えば光変調素子11(特にホログラム層1)を構成する材料の屈折率)も考慮されてコンピュータにより決定される。なお、図6Aおよび図6Bに示す反射観察でのみ光像が観察される光変調素子11(特に凹凸面1a)と、後述する図8Aおよび図8Bに示す透過観察でのみ光像が観察される光変調素子111(特に凹凸面101a)とは、同様の方法により作製することが可能であるが、それぞれ特有の凹凸面1a,101aの深さ構造を有し、例えば同様の回折特性を実現しようとする場合であっても、光変調素子の凹凸面1a,101aの深さの具体的な値は、反射観察でのみ光像が観察される光変調素子11と透過観察で光像が観察される光変調素子111との間で異なる。
光変調素子11の製造装置は特に限定されず、例えば上述のStep1〜5を実行するコンピュータによって制御される装置であってもよいし、当該コンピュータとは別個に設けられた装置であってもよい。また必要に応じて、上述の光変調素子11(特に凹凸面1a)の構造に対応する母型(すなわちマスター原版)を、フォトリソグラフィ技術に基づく露光装置や電子線描画装置等により作ってもよい(Step7)。例えば、母型に液状の紫外線硬化性樹脂を滴下し、基材フィルム(例えばPETフィルム(ポリエチレンテレフタラートフィルム))と母型とによって挟まれた状態の紫外線硬化性樹脂に対して紫外線を照射して硬化させ、その後、基材フィルムとともに紫外線硬化性樹脂を母型から剥離することによって、所望の凹凸面1aを有する光変調素子11を作製できる。他の方法として、例えば、熱可塑性の紫外線硬化性樹脂を用いる方法、熱可塑性樹脂を用いる方法、熱硬化性樹脂を用いる方法、および電離放射線硬化性樹脂を用いる方法が採用されてもよい。このように母型を使うことで、所望の凹凸面1aを有する光変調素子11を簡単且つ大量に複製することが可能である。
上述のようにして得られた光変調素子11の凹凸面1a上に、透明性を有する反射層2(例えばZnSやTiO2によって構成される反射層)が製造装置によって更に形成される。ただし、ホログラム層1と空気との間の屈折率の差を利用して再生光を反射させる光変調素子11の場合には、反射層2を追加的に設けることなく、ホログラム層1の凹凸面1aを空気に露出させたままでもよい。さらに必要に応じて、接着層等の他の機能層(例えばヒートシール層や隣接層間の密着性を高めるためのプライマー層)がホログラム層1に対して形成されてもよい。また、例えばホログラム層1の凹凸面1a上に反射層2を形成する場合、凹凸形状を有する反射層2の表面(ホログラム層1とは反対側の表面)上に接着層を形成し、当該接着層によって反射層2の表面の凹部を埋めるようにしてもよい。
以上のような第1の実施形態によれば、光変調素子11は、入射光の位相を変調することで光像100aを再生する要素素子21を備えている。要素素子21は、凹凸面1aを有している。そして、要素素子21についての反射による1次回折光の回折効率の波長分布および反射による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が20%以上である。また、要素素子21についての透過による1次回折光の回折効率の波長分布および透過による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が10%以下である。
このような光変調素子11によれば、構成する要素素子21についての反射による1次回折光および/または−1次回折光は、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100aを再生するのに十分な回折効率で回折される。したがって、光変調素子11を反射観察した場合、光像100aを観察することが可能である。一方、要素素子21についての透過による1次回折光および−1次回折光は、いずれも、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100aを再生するのに十分な回折効率で回折されない。したがって、光変調素子11を透過観察した場合、光像100aを観察することができない。
また、本実施形態の光変調素子11において、各要素素子21は、フーリエ変換ホログラムとして構成されている。これにより、所望の光像(すなわち原画像)を精度良く再生可能な要素素子21を、比較的簡単に作製することができる。
[第2の実施形態]
次に、図8A〜図9Bを参照して、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態による光変調素子111は、図8Aおよび図8Bに示すように、透過観察では光像100bが観察されるが、反射観察では光像100bが観察されないようにするための工夫がなされている。
以下の説明および以下の説明で用いる図面は、上述した第1の実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の第1の実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図8Aおよび図8Bは、それぞれ、第2の実施形態の光変調素子を反射観察した場合と透過観察した場合とを説明するための図である。図8Bにおいて、符号「100b」は、光変調素子によって再生されるべき光像を示している。また、図9Aおよび図9Bは、図8Aおよび図8Bに示す光変調素子を構成する各要素素子の回折効率特性を示すグラフである。
図6A〜図7Bに示す場合と同様に、要素素子121で回折される光のうち、意図された光像100bの再生に主として寄与するのは1次回折光および−1次回折光である。要素素子121での2次以上の高次の回折光は、光像100bの明瞭な再生には寄与しない。また、要素素子121に入射する入射光の一部は、要素素子121で回折されることなく要素素子121を透過して0次光となるが、0次光は点の光像を生成するだけであり、光像100bの再生に寄与しない。
以下、要素素子121の構造について、更に詳細に説明する。
第2の実施形態の各要素素子121は、反射観察では光像が観察されないが、透過観察では明確な光像が観察される、というように設計されている。各要素素子121がこのような回折効率特性を有することによって、当該要素素子121によって構成される光変調素子111は、透過観察では光像100bが観察されるが、反射観察では光像100bが観察されない、という特性を備えることができる。図8Bに示すように、各要素素子121は、各要素素子121についての透過による回折光により、図3に示す複数の要素素子121全体で「OK」の文字の図形の光像100bを再生するようになっている。
具体的には、要素素子121は、以下のような回折効率特性を有する。すなわち、要素素子121は、要素素子121についての透過による1次回折光の回折効率の波長分布および透過による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が20%以上となるように設計されている。また、要素素子121は、要素素子121についての反射による1次回折光の回折効率の波長分布および反射による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が10%以下となるように設計されている。また、要素素子121は、5段階以上の異なる高さを含む凹凸面101aを有するように設計されている。ここで、本件発明者らの得た知見によれば、凹凸面101aが5段階以上の異なる高さを含む場合、上述の回折効率特性を満たす要素素子121を得ることが容易である。
このような回折効率特性を有する要素素子121は、例えば、要素素子121での透過光の光路長差が1段階当たり35nmとなるように設計することにより実現される。
図9Aおよび図9Bを参照して、要素素子121での透過光の光路長差が1段階当たり35nmとなるように設計された要素素子121についての、反射および透過による1次回折光および−1次回折光の波長分布と回折効率との関係を説明する。
図9Aは、各要素素子121についての反射による1次回折光および−1次回折光の波長分布と回折効率との関係を示すグラフである。また、図9Bは、各要素素子121についての透過による1次回折光および−1次回折光の波長分布と回折効率との関係を示すグラフである。図9Aおよび図9Bにおいて横軸は波長[単位:nm]を示し、縦軸は回折効率[単位:%]を示す。
図9Aおよび図9Bに示す例では、要素素子121は、屈折率nが1.5の材料で構成され、その凹凸面101aは8段の段数を有し、その凹凸面101aの1段当たりの段差dは70nmである。このように構成された要素素子121での透過光の光路長差は、屈折率が1.0の空気環境下において使用される場合、1段階当たり35nmとなる。
図9Bから理解されるように、要素素子121についての透過による1次回折光の回折効率の波長分布および透過による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率は、20%以上である。一方、図9Aから理解されるように、要素素子121についての反射による1次回折光の回折効率の波長分布および反射による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率は、10%以下である。
具体的には、図9Bから理解されるように、要素素子121についての透過による1次回折光は、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100bを再生するのに十分な回折効率で回折される。一方、図9Aから理解されるように、要素素子121についての反射による1次回折光および−1次回折光は、いずれも、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100bを再生するのに十分な回折効率で回折されない。このことは、光変調素子111を透過観察した場合、光像100bを観察することが可能であるが、光変調素子11を反射観察した場合、光像100bを観察することができないことを意味する。
なお、上述の回折効率特性を満たす要素素子121は、要素素子121での透過光の光路長差が1段階当たり35nmとなるように設計されたものに限られない。例えば、要素素子121での反射光の光路長差が1段階当たり70nmとなるように設計された要素素子121によっても、上述の条件を満たすことができる。したがって、例えば、要素素子121が屈折率1.0の空気環境下において使用される場合、要素素子121を、屈折率nが1.5の材料で構成し、その凹凸面101aの段数を8段とし、1段当たりの段差dを140nmとした場合であっても、要素素子121は、上述の回折効率特性を備えることができる。
なお、当然のことながら、光変調素子111が空気環境以外の環境下で使用される場合や、光変調素子111の凹凸面101aの凹部が接着層等で埋められる場合には、当該環境中の媒体の屈折率や当該接着層等を構成する材料の屈折率なども考慮して、光変調素子111(要素素子121)を構成する材料の屈折率、凹凸面101aの段数および凹凸面101aの1段当たりの段差dを決定すべきである。
このように本実施形態の光変調素子111は、入射光の位相を変調することで光像100bを再生する要素素子121を備えている。要素素子121は、5段階以上の異なる高さを含む凹凸面101aを有している。そして、要素素子121についての透過による1次回折光の回折効率の波長分布および透過による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が20%以上である。また、要素素子121についての反射による1次回折光の回折効率の波長分布および反射による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が10%以下である。
このような光変調素子111によれば、構成する要素素子121についての透過による1次回折光および/または−1次回折光は、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100bを再生するのに十分な回折効率で回折される。したがって、光変調素子111を透過観察した場合、光像100bを観察することが可能である。一方、要素素子121についての反射による1次回折光および−1次回折光は、いずれも、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100bを再生するのに十分な回折効率で回折されない。したがって、光変調素子11を反射観察した場合、光像100bを観察することができない。
[第3の実施形態]
次に、図10A〜図11を参照して、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態による光変調素子は、図10Aおよび図10Bに示すように、反射観察でも透過観察でも光像が観察されるが、反射観察で観察される光像と透過観察で観察される光像とが異なるものとなるようにするための工夫がなされている。
以下の説明および以下の説明で用いる図面は、上述した第1の実施形態または第2の実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の第1の実施形態または第2の実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図10Aおよび図10Bは、それぞれ、第3の実施形態の光変調素子を反射観察した場合と透過観察した場合とを説明するための図である。また、図11は、図10Aおよび図10Bに示す光変調素子の構成を示す図である。
以下、第3の実施形態による光変調素子の構造について、更に詳細に説明する。
上述のように、第3の実施形態の光変調素子211は、反射観察でも透過観察でも光像が観察されるが、反射観察で観察される光像100aと透過観察で観察される光像100bとが異なるように設計されている(図10Aおよび図10B参照)。
図11に示すように、光変調素子211は、入射光の位相を変調することで光像を再生する第1要素素子21および第2要素素子121を備えている。第1要素素子21は、図6A〜図7Bに示す要素素子と同様に構成され、第2要素素子121は、図8A〜図9Bに示す要素素子と同様に構成されている。図11に示す例においては、複数の第1要素素子21および複数の第2要素素子121が、同一平面上に市松模様状に並べて配置されている。
より具体的には、各第1要素素子21は、凹凸面1aを有している。各第1要素素子21は、各第1要素素子21についての反射による1次回折光の回折効率の波長分布および反射による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が20%以上であり、各第1要素素子21についての透過による1次回折光の回折効率の波長分布および透過による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が10%以下であるように設計されている。そして、各第1要素素子21は、各第1要素素子21についての反射による回折光により、図11に示す複数の第1要素素子21全体で星の図形の光像100aを再生するようになっている。
また、各第2要素素子121は、5段階以上の異なる高さを含む凹凸面101aを有している。各第2要素素子121は、各第2要素素子121についての透過による1次回折光の回折効率の波長分布および透過による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が20%以上であり、各第2要素素子121についての反射による1次回折光の回折効率の波長分布および反射による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が10%以下であるように設計されている。そして、各第2要素素子121は、各第2要素素子121についての透過による回折光により、図11に示す複数の第2要素素子121全体で「OK」の文字の図形の光像100bを再生するようになっている。
光変調素子211が上述のような第1要素素子21および第2要素素子121を備えることにより、反射観察と透過観察とで異なる光像100a,100bが観察される光変調素子211を実現することができる。
なお上述の図11に示す光変調素子211において第1要素素子21および第2要素素子121は、同一平面上に市松模様状に並べて配置されているが、第1要素素子21および第2要素素子121の配置態様は特に限定されない。例えば、光変調素子11は、同一平面上にストライプ状に並べて配置された第1要素素子21および第2要素素子121を含んでいてもよい。さらに、第1要素素子21と第2要素素子121とは、光変調素子211の厚み方向に並んで配置されていてもよい。
このように第3の実施形態の光変調素子211は、入射光の位相を変調することで光像100a,100bを再生する第1要素素子21および第2要素素子121を備えている。第1要素素子21は、凹凸面1aを有し、第2要素素子121は、5段階以上の異なる高さを含む凹凸面101aを有している。第1要素素子21についての反射による1次回折光の回折効率の波長分布および反射による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が20%以上であり、第1要素素子21についての透過による1次回折光の回折効率の波長分布および透過による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が10%以下である。また、第2要素素子121についての透過による1次回折光の回折効率の波長分布および透過による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が20%以上であり、第2要素素子121についての反射による1次回折光の回折効率の波長分布および反射による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率が10%以下である。
このような光変調素子211によれば、第1要素素子21についての反射による1次回折光および/または−1次回折光は、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100aを再生するのに十分な回折効率で回折される。一方、第2要素素子121についての反射による1次回折光および−1次回折光は、いずれも、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100bを再生するのに十分な回折効率で回折されない。したがって、光変調素子211を反射観察した場合、光像100aのみを観察することができる。
また、第2要素素子121についての透過による1次回折光および/または−1次回折光は、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100bを再生するのに十分な回折効率で回折される。一方、第1要素素子21についての透過による1次回折光および−1次回折光は、いずれも、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100aを再生するのに十分な回折効率で回折されない。したがって、光変調素子211を透過観察した場合、光像100bのみを観察することができる。
[用途]
上述の光変調素子11,111,211および光変調素子保持体10の使用形態や用途は特に限定されず、例えば、キャラクター像を再生するなどエンターテイメント用途および意匠用途として使用することが可能である。またセキュリティ用途では、例えば以下の対象に対して光変調素子11,111,211を適用可能である。光変調素子保持体10を情報記録媒体として使用する場合、例えばパスポート、ID証、紙幣、クレジットカード、金券、商品券、その他のチケット、公的文書、個人情報や機密情報などの各種の情報を記録したその他の媒体、および金銭的価値のある他の媒体等に対し、本発明に係る光変調素子を応用することが可能であり、これらの偽造を防ぐことができる。ここでいうID証には、例えば国民ID証、免許証、会員証、社員証および学生証などが含まれる。光変調素子保持体10において、光変調素子11,111,211を保持する基材(図2の符合「4」参照)は、例えば紙、樹脂、金属、合成繊維、或いはこれらの組み合わせによって構成可能である。
また、上述の光変調素子保持体10に対して本発明に係る光変調素子を任意の方法で適用することが可能であり、例えば、光変調素子保持体10の表面への凹凸形成、転写、貼付、挟み込み、或いは埋め込み等の技法を使って、本発明に係る光変調素子を任意の物(すなわち光変調素子保持体10)に保持させることができる。したがって、光変調素子保持体10を構成する部材の一部を利用して光変調素子11,111,211を形成してもよいし、光変調素子保持体10に対して光変調素子11,111,211を付加的に設けてもよい。
また上述の光変調素子11,111,211は、単独で各種用途に利用されてもよいし、印刷層等の他の機能層と一緒に使用されて各種用途に利用されてもよい。
[ホログラム層の構成材料]
ホログラム層1を構成する材料は特に限定されないが、上述のように、各種樹脂によってホログラム層1を構成することが可能である。以下に、各種樹脂の具体例について列挙する。
ホログラム層1を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリ塩化ビニル(PVC)、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、ホログラム層1を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独重合体であっても2種以上の構成成分からなる共重合体であってもよい。また、これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上述の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂は、各種イソシアネート化合物、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の金属石鹸、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の有機過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルスルフィド等の熱或いは紫外線硬化剤を含んでいてもよい。
ホログラム層1を構成する電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等が挙げられ、中でもウレタン変性アクリレート樹脂が好ましく、特に特開2007−017643号公報で示される化学式で表されるウレタン変性アクリル系樹脂が好ましい。
上記電離放射線硬化性樹脂を硬化させる際には、架橋構造、粘度の調整等を目的として、単官能または多官能のモノマー、オリゴマー等を併用することができる。上記単官能モノマーとしては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等のモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、2官能以上のモノマーとしては、骨格構造で分類するとポリオール(メタ)アクリレート(例えば、エポキシ変性ポリオール(メタ)アクリレート、ラクトン変性ポリオール(メタ)アクリレート等)、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、その他ポリブタジエン系、イソシアヌール酸系、ヒダントイン系、メラミン系、リン酸系、イミド系、ホスファゼン系等の骨格を有するポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、紫外線、電子線硬化性である種々のモノマー、オリゴマー、ポリマーが利用できる。
更に詳しくは、2官能のモノマーやオリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。3官能のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。4官能のモノマーやオリゴマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。5官能以上のモノマーやオリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、ホスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。官能基数は特に限定されるものではないが、官能基数が3より小さいと耐熱性が低下する傾向があり、また、20を超える場合には柔軟性が低下する傾向があるため、特に官能基数が3〜20の範囲内のものが好ましい。
上記のような単官能または多官能のモノマーやオリゴマーの含有量は適宜調整可能だが、通常、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して50重量部以下とすることが好ましく、中でも0.5重量部〜20重量部の範囲内が好ましい。
また、ホログラム層1には必要に応じて、光重合開始剤、重合禁止剤、劣化防止剤、可塑剤、滑剤、染料や顔料などの着色剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、およびチクソトロピー性付与剤等の添加剤が適宜加えられてもよい。
ホログラム層1の膜厚は、ホログラム層1が自己支持性を有する場合、0.05mm〜5mmの範囲内が好ましく、中でも0.1mm〜3mmの範囲内であることが好ましい。一方、ホログラム層1が自己支持性を有さずに透明基材上に形成される場合、ホログラム層1の膜厚は、0.1μm〜50μmの範囲内が好ましく、中でも2μm〜20μmの範囲内とすることが好ましい。また、ホログラム層1のサイズ(例えば平面視サイズ)は、光変調素子11,111,211の用途に応じて適宜設定可能である。
[他の変形例]
上述の各実施形態で用いられる光変調素子11,111は、図3に示すように複数の要素素子21,121から構成されているが、単一の要素素子21,121によって光変調素子11,111が構成されていてもよい。また、第3の実施形態で用いられる光変調素子211は、図11に示すように複数の第1要素素子21および複数の第2要素素子121から構成されているが、単一の第1要素素子21および単一の第2要素素子121によって光変調素子211が構成されてもよい。
また各要素素子21,121の平面視サイズおよび平面視形状も特に限定されず、各要素素子21,121は任意のサイズおよび形状を有しうる。例えば、各要素素子21,121の平面視形状を、正方形、長方形、台形等の四角形、他の多角形状(例えば三角形、五角形、六角形等)、真円、楕円、他の円形、星型形状、或いはハート型形状等であってもよく、光変調素子11,111,211は2種類以上の平面視形状の要素素子21,121を有していてもよい。
また光変調素子11,111,211には、任意の機能層が付加されてもよく、例えば透明蒸着層によって光変調素子11,111,211を覆ってもよい。特に光沢を持たない透明蒸着層を設けることによって、光変調素子11,111,211が光沢を持つことを防いで、光変調素子11,111,211を隠蔽することもできる。光変調素子11,111,211を隠蔽する観点から、そのような透明蒸着層の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、とりわけ90%以上であることがより好ましい。また反射性の蒸着層によって光変調素子11,111,211を覆うことにより、透明性を有する反射層を形成することができる。反射性蒸着層の構成材料として、例えばZnSやTiO2等が挙げられる。これらの材料を単独で用いて蒸着層が構成されてもよいし、2以上の材料が組み合わされて蒸着層が構成されてもよい。
ホログラム層1上(特に凹凸面1a,101a上)に設けられる蒸着層の厚みは、所望の反射性、色調、デザインおよび用途等の観点から適宜に設定でき、例えば50Å〜1μmの範囲内であることが好ましく、中でも100Å〜1000Åの範囲内であることが好ましい。特に、蒸着層の透明性を優先する場合には蒸着層の厚みは200Å以下であることが好ましい一方で、蒸着層の隠蔽性を優先する場合には蒸着層の厚みは200Åを超える厚みであることが好ましい。また蒸着層の形成方法としては、蒸着層の一般的な形成方法を採用でき、例えば真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法等が挙げられる。
[比較例]
次に、図12A〜図13Bを参照して、上述の実施形態の比較例について説明する。
図12Aおよび図12Bは、本比較例の光変調素子を示す図である。図13Aおよび図13Bは、本比較例の光変調素子を構成する要素素子の回折効率特性を示すグラフである。
図12Aおよび図12Bに示す光変調素子311は、従来型の光変調素子であり、反射観察でも透過観察でも同じ光像100cが観察される。図13Aおよび図13Bに示す例において、光変調素子311を構成する要素素子321は、屈折率nが1.5の材料で構成され、その凹凸面301aは4段の段数を有し、その凹凸面301aの1段当たりの段差dは150nmである。このように構成された要素素子321の反射光の光路長差は、1段階当たり450nmとなる。また、このように構成された要素素子321の透過光の光路長差は、屈折率が1.0の空気環境下において使用される場合、1段階当たり75nmとなる。
図13Aから理解されるように、要素素子321についての反射による1次回折光の回折効率の波長分布および反射による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率は、20%以上である。また、図13Bから理解されるように、要素素子321についての透過による1次回折光の回折効率の波長分布および透過による−1次回折光の回折効率の波長分布における380nm以上780nm以下となる波長帯域での最大回折効率は、20%以上である。
具体的には、図13Aから理解されるように、要素素子321についての反射による1次回折光および−1次回折光は、いずれも、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100cを再生するのに十分な回折効率で回折される。一方、図13Bから理解されるように、要素素子121についての透過による1次回折光は、380nm以上780nm以下となる波長帯域において、光像100cを再生するのに十分な回折効率で回折される。このことは、光変調素子311を反射観察した場合も透過観察した場合も、光像100cを観察することが可能であることを意味する。
そして、図12Aおよび図12Bに示すように、光変調素子311を反射観察した場合に観察される光像と、光変調素子311を透過観察した場合に観察される光像とは、同じ光像100cである。
本発明は、上述の実施形態には限定されない。例えば、上述の実施形態および変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また、上述の構成要素および/または方法以外の構成要素および/または方法を含む形態も、本発明の実施形態に含まれうる。また、上述の構成要素および/または方法のうちの一部の要素が含まれない形態も、本発明の実施形態に含まれうる。また、本発明のある実施形態に含まれる一部の構成要素および/または方法と、本発明の他の実施形態に含まれる一部の構成要素および/または方法とを含む形態も、本発明の実施形態に含まれうる。したがって、上述の実施形態および変形例、および上述以外の本発明の実施形態の各々に含まれる構成要素および/または方法同士が組み合わされてもよく、そのような組み合わせに係る形態も本発明の実施形態に含まれうる。また、本発明によって奏される効果も上述の効果に限定されず、各実施形態の具体的な構成に応じた特有の効果も発揮されうる。このように、本発明の技術的思想および趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲、明細書、要約書および図面に記載される各要素に対して種々の追加、変更および部分的削除が可能である。