以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図面は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。便宜上、層状の部材の表面(すなわち断面でない面)にハッチングを付すことがある。
本開示の水晶振動子又は水晶振動素子は、いずれが上方又は下方とされてもよいものであるが、以下では、便宜上、図1及び図2の紙面上方(Y′軸方向の正側)を上方として上面又は下面等の用語を用いることがある。また、単に平面視又は平面透視という場合においては、特に断りがない限りは、上記のように便宜的に定義した上下方向において見ることをいうものとする。
<第1実施形態>
(水晶振動子の全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係る水晶振動子1(以下、「水晶」は省略することがある。)の概略構成を示す分解斜視図である。また、図2は、振動子1の構成を示す、図1のII−II線における断面図である。
振動子1は、例えば、全体として、概略、薄型の直方体状とされる電子部品である。その寸法は適宜に設定されてよい。例えば、比較的小さいものでは、長辺(X軸方向)又は短辺(Z′軸方向)の長さが1〜2mmであり、厚さ(Y′軸方向)が0.2〜0.4mmである。
振動子1は、例えば、凹部3aが形成された素子搭載部材3と、凹部3aに収容された水晶振動素子5(以下、「水晶」は省略することがある。)と、凹部3aを塞ぐ蓋7とを有している。
振動素子5は、発振信号の生成に利用される振動を生じる部分である。素子搭載部材3及び蓋7は、振動素子5をパッケージングするパッケージ8を構成している。素子搭載部材3の凹部3aは蓋7により封止され、その内部は、例えば、真空とされ、又は適宜なガス(例えば窒素)が封入されている。
素子搭載部材3は、例えば、素子搭載部材3の主体となる基体9と、振動素子5を実装するための1対の素子搭載パッド11と、振動子1を不図示の回路基板等に実装するための複数(図示の例では4つ)の外部端子13とを有している。
基体9は、セラミック等の絶縁材料からなり、上記の凹部3aを構成している。素子搭載パッド11は、金属等からなる導電層により構成されており、凹部3aの底面に位置している。外部端子13は、金属等からなる導電層により構成されており、基体9の下面に位置している。素子搭載パッド11及び外部端子13は、基体9内に配置された導体(図2。符号省略)によって互いに接続されている。蓋7は、例えば、金属から構成され、素子搭載部材3の上面にシーム溶接等により接合されている。
振動素子5は、例えば、水晶片15と、水晶片15に電圧を印加するための第1励振電極17A(図2)及び第2励振電極17B(以下、これらを区別せずに単に「励振電極17」ということがある。)と、振動素子5を1対の素子搭載パッド11に実装するための1対の引出電極19とを有している。
振動素子5は、概略板状であり、凹部3aの底面に対向するように凹部3aに収容される。そして、1対の引出電極19が1対のバンプ21(図2)により1対の素子搭載パッド11に接合される。これにより、振動素子5は、素子搭載部材3に片持ち梁のように支持される。また、1対の励振電極17は、1対の引出電極19を介して1対の素子搭載パッド11と電気的に接続され、ひいては、複数の外部端子13のいずれか2つと電気的に接続される。バンプ21は、例えば、導電性接着剤からなる。導電性接着剤は、例えば、導電性のフィラーが熱硬化性樹脂に混ぜ込まれて構成されている。
このようにして構成された振動子1は、例えば、不図示の回路基板の実装面に素子搭載部材3の下面を対向させて配置され、外部端子13が半田などにより回路基板のパッドに接合されることによって回路基板に実装される。回路基板には、例えば、発振回路23(図2)が構成されている。発振回路23は、外部端子13及び素子搭載パッド11を介して1対の励振電極17に交流電圧を印加して発振信号を生成する。この際、発振回路23は、例えば、水晶片15の厚みすべり振動のうち基本波振動を利用する。オーバートーン振動が利用されてもよい。
(水晶振動素子の構成)
水晶片15は、例えば、いわゆるATカット板である。すなわち、図1に示すように、水晶において、X軸(電気軸)、Y軸(機械軸)及びZ軸(光軸)からなる直交座標系XYZを、X軸回りに30°以上40°以下(一例として35°15′)回転させて直交座標系XY′Z′を定義したときに、水晶片15はXZ′平面に平行に切り出された板状である。
水晶片15は、例えば、平板状である。すなわち、水晶片15は、概ね全体が一定の厚さの板状とされており、特に符号を付さないが、1対の主面(符号省略)と、1対の主面を結ぶ複数の側面とを有している。主面の語は、最も広い面(板状部材の表裏)を指す。
なお、水晶片の外形がエッチングによって形成される場合、エッチングに対する水晶の異方性等によって比較的大きな誤差(系統誤差のようなもの)が生じる。当該誤差は、意図的に利用されていることもある。本開示の説明においては、このような誤差の存在は無視するものとする。例えば、実際の水晶片15においては、側面が主面に直交せずに傾斜していたり、側面が平面にならずに外側に膨らむ形状になっていたりすることがあるが、そのような傾斜及び/又は膨らみの図示及び説明は省略する。第三者の製品が本開示の技術に関わるか否か判断する場合においてもそのような誤差は無視されてよい。なお、偶然誤差のようなものが無視されてよいことはもちろんである。
図1に示すように、水晶片15の平面視における形状は矩形である。当該矩形は、例えば、長方形(本開示では正方形を含まないものとする。励振電極17等についても同様。)であり、1対の長辺と、1対の長辺の両端同士を結ぶ1対の短辺とを有している。なお、本開示において、矩形又は長方形(1対の長辺及び1対の短辺を有する形状)は、角部が面取りされた形状を含むものとする(励振電極17等についても同様。)。ATカット板では、主面はXZ′平面に略平行な面であり、長辺はX軸に略平行な辺であり、短辺はZ′軸に略平行な辺である。
水晶片15の厚みは、厚みすべり振動についての所望の固有振動数に基づいて設定される。例えば、基本波振動を用いる場合において、固有振動数をF(MHz)とすると、この固有振動数Fに対応する水晶片15の厚みt(μm)を求める基本式は、t=1670/Fである。なお、実際には、水晶片15の厚みは、励振電極17の重さ等も考慮して、基本式の値から微調整された値とされる。
水晶片15の各種の寸法は、等価直列抵抗の低減等の種々の観点から、シミュレーション計算及び実験等に基づいて適宜に設定されてよい。一例を挙げると、例えば、長辺の長さは550μm以上1.1mm以下、短辺の長さは350μm以上750μm以下(ただし長辺の長さより短い)、厚さは20μm以上70μm以下である。
1対の励振電極17及び1対の引出電極19は、水晶片15の表面に重なる導電層により構成されている。導電層は、例えば、Au(金)、Ag(銀)又はAu−Ag合金等の金属である。導電層は、互いに材料が異なる複数の層から構成されていてもよい。導電層の厚みは適宜に設定されてよいが、一例を示すと、0.05μm以上0.3μm以下である。なお、図2等では、導電層は、その厚さが実際の厚さよりも厚く示されている。
1対の励振電極17は、水晶片15の1対の主面に位置しており、水晶片15を挟んで互いに対向している。励振電極17の平面形状については後述する。
1対の引出電極19は、例えば、1対の励振電極17からX軸方向の一方側(本実施形態では+X側)に延び出ており、水晶片15の1対の主面のうち少なくとも一方の主面に、1対のバンプ21と接合される1対のパッド19aを有している。図示の例では、1対の主面のいずれを凹部3aの底面に対向させてもよいように、1対の引出電極19は、1対の主面のそれぞれにおいて1対のパッド19a(合計で2対のパッド19a)を有している。
互いに同一の主面に位置しているとともに互いに接続されるべきパッド19aと励振電極17とは、その主面に位置している配線部19bによって接続されている。配線部19bは、例えば、パッド19aよりも幅(Z′方向)が小さく、概ね一定の幅でX軸方向に直線状に延びている。互いに異なる主面に位置し、互いに同一の励振電極17に接続されるべき2つのパッド19aは、水晶片15の側面(短辺及び/又は長辺)を介して互いに接続されている。
(励振電極の形状の詳細)
以下の説明では、第1励振電極17Aに係る構成の符号にAの付加符号を付すとともに第2励振電極17Bに係る構成の符号にBの付加符号を付すことがあり、また、この場合において、適宜にA、Bを省略することがある。
図3(a)は、図1とは逆側から振動素子5を示す斜視図である。図3(b)は、振動素子5の平面図である。図3(b)では、第1励振電極17Aの外縁のうち、第2励振電極17Bの外縁と一致していない部分を点線で示している。
図1、図3(a)及び図3(b)に示すように、第1励振電極17Aと第2励振電極17Bとは互いに形状(平面形状。以下同じ。)が異なっている。具体的には、例えば、以下のとおりである。
第1励振電極17Aの形状は矩形である。当該矩形は、例えば、長方形であり、1対の長辺(1対の長縁29A)と、1対の長辺の両端同士を結ぶ1対の短辺(自由短縁25A及び固定短縁27A)とを有している。長縁29Aは、例えば、水晶片15の長辺と平行であり、自由短縁25A及び固定短縁27Aは水晶片15の短辺に平行である。自由短縁25Aは、振動素子5の自由端側(引出電極19とは反対側)に位置する短辺であり、固定短縁27Aは、振動素子5の固定端側(引出電極19側)に位置する短辺である。
第1励振電極17Aは、例えば、その図形重心が水晶片15の図形重心に対して、Z′方向においては一致し、X方向においては自由端側へずれている。従って、1対の長縁29Aは、例えば、X軸に平行で水晶片15の図形重心を通る中心線Lxに対して線対称である。その一方で、自由短縁25A及び固定短縁27Aは、例えば、Z′軸に平行で水晶片15の図形重心を通る不図示の中心線に対して非対称である。ただし、これらは線対称とされてもよい。
なお、図形重心は、図形内における1次のモーメントの総和が0になる点である。本実施形態では、中心線Lxは、第1励振電極17A(及び第2励振電極17B)の中心線でもあり、以下の説明では、励振電極17の中心線として言及することがある。
第2励振電極17Bの形状は、平面透視において、第1励振電極17Aの1対の長縁29Aに一致する1対の長縁29Bと、第1励振電極17Aの自由短縁25A及び固定短縁27Aに対して外側に膨らむ自由短縁25B及び固定短縁27Bとを有する形状である。従って、第2励振電極17Bは、第1励振電極17Aよりも広く、また、第1励振電極17Aの全体に重なっている。
なお、矩形又は長方形の第1励振電極17Aの角部が面取りされている場合、平面透視において1対の長縁29Bが1対の長縁29Aに一致する(位置、形状及び長さが同じ)か否かに関して、面取り部分は無視してよい。他の実施形態における短縁等についても同様である。
自由短縁25Bは、例えば、自由短縁25Aに対して外側に膨らむ曲線状である。同様に、固定短縁27Bは、例えば、固定短縁27Aに対して外側に膨らむ曲線状である。自由短縁25B及び固定短縁27Bの各曲線は、例えば、中心線Lxを対称軸として線対称の形状である(ただし、固定短縁27Bの引出電極19との接続部分は除く。)。このような線対称の曲線としては、例えば、中心線Lx上に位置する不図示の点を中心とする円弧が挙げられる。円弧の半径は適宜に設定されてよい。また、自由短縁25B及び固定短縁27Bの形状は、互いに同一であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。
このような1対の励振電極17では、第1励振電極17Aの外縁から第2励振電極17Bの外縁までの距離は、第1励振電極17Aの外縁に沿う位置によって異なっている。ここでいう距離は、例えば、第1励振電極17Aの外縁上の各位置から第2励振電極17Bの外縁への最短距離である。距離が位置によって異なっていることについて具体的に述べると、例えば、長縁29Aから長縁29Bまでの距離が0であるのに対して、自由短縁25Aから自由短縁25Bまでの距離、及び固定短縁27Aから固定短縁27Bまでの距離は0でない。また、自由短縁25Aから自由短縁25Bまでの距離、及び固定短縁27Aから固定短縁27Bまでの距離はZ′軸方向の位置に関して一定でない。
また、短縁に着目すると、第2励振電極17Bの外縁は、平面透視において、第1励振電極17Aの外縁のうちの所定部分(点ではなく、線であるものとする。)の外側に位置し、前記所定部分に対して傾斜する部分を有しているということができる。具体的には、自由短縁25Bは、直線状の自由短縁25Aに対して傾斜している部分(本実施形態では厳密には中心線Lx上の1点を除く)となっている。同様に、固定短縁27Bは、直線状の固定短縁27Aに対して傾斜している部分(本実施形態では厳密には中心線Lx上の1点を除く)となっている。
特に図示しないが、自由短縁25A及び自由短縁25Bの少なくとも一方は、X方向を伝搬方向とする屈曲振動(不要振動)による定在波の節に位置してよい。同様に、固定短縁27A及び固定短縁27Bの少なくとも一方は、X方向を伝搬方向とする屈曲振動による定在波の節に位置してよい。同様に、長縁29は、Z′方向を伝搬方向とする屈曲振動による定在波の節に位置してよい。このように励振電極17の外縁を屈曲振動の定在波の節に位置させることにより、定在波が振動素子5の特性に及ぼす影響が低減される。なお、外縁の曲線状部分(本実施形態では自由短縁25B又は固定短縁27B)に関して、定在波の節に位置するか否かは、例えば、長さ方向(Z′方向)の中心位置を基準に判定してよい。
ここでいう定在波は、X方向又はZ′方向を伝搬方向とする屈曲振動による定在波のうち、利用対象の厚みすべり振動と最も結合しやすいものをいい、シミュレーション計算又は実験によって求められてよい。なお、励振電極17の外縁は、定在波の節からずれてもよく、例えば、そのずれは、定在波の波長をλとしたときに、λ/8以下又はλ/16以下である。もちろん、そのような定在波の腹若しくは節とは無関係に外縁の位置が設定されてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、水晶振動素子5は、板状の水晶片15と、水晶片15を挟んで互いに対向している1対の励振電極17とを有している。平面透視において、第2励振電極17Bは、第1励振電極17Aよりも広く、第1励振電極17Aの全体に重なっており、第1励振電極17Aの外縁から第2励振電極17Bの外縁までの距離は、第1励振電極17Aの外縁に沿う位置によって異なっている。
また、別の観点では、本実施形態では、水晶振動子1は、上記のような振動素子5と、振動素子5をパッケージングしているパッケージ8とを有している。
従って、例えば、まず、不要振動である屈曲振動が振動素子5の特性に及ぼす影響を低減することが可能である。このことは、本実施形態に係る構成の振動素子5について本願発明者が行った実験によって確認されている。そのような作用が得られる理由としては、例えば、1対の励振電極17の外縁の位置が互いに異なり、さらに、両者の距離が外縁に沿う位置に応じて変化していることから、励振電極17の外縁の位置に依存する屈曲振動の位相等が揃うおそれが低減されることが挙げられる。屈曲振動の影響を低減できることにより、例えば、等価直列抵抗値を低減することができる。
その一方で、本実施形態に係る1対の励振電極17における静電容量は、第2励振電極17Bの形状が第1励振電極17Aの形状と同一である態様における静電容量に比較して、大きくは違わない。その結果、例えば、振動素子5の設計変更が容易化される。
具体的には、例えば、振動素子5を小型化する(例えば水晶片15の長手方向の長さを1.1mm以下にする)と、不要振動である屈曲振動の影響が大きくなる。一方、屈曲振動の影響を低減するために互いに同一の形状の1対の励振電極の形状又は寸法を変更すると、水晶振動素子の電気等価定数が変化する。特に容量が変化しやすい。その結果、例えば、水晶デバイス(水晶振動子)の設計の見直しが必要になる。しかし、本実施形態では、第1励振電極17Aの形状及び寸法はそのままとし、第2励振電極17Bの形状及び/又は寸法を調整することによって、屈曲振動の影響を低減しつつ、容量の変化を抑えることができる。その結果、水晶デバイスの設計を見直す必要性が生じるおそれが低減される。
また、本実施形態では、第2励振電極17Bの外縁は、平面透視において、第1励振電極17Aの所定部分(25A及び/又は27A)の外側に位置するとともに前記所定部分に対して傾斜している部分(25B及び/又は27B)を有している。
従って、例えば、より屈曲振動が振動素子5の特性に及ぼす影響を低減することができる。具体的には、例えば、第2励振電極17Bの外縁の前記傾斜している部分(25B及び/又は27B)は、第1励振電極17Aの直線部分(25A及び/又は27A)に直交する方向の位置が、前記直線部分に沿う方向の位置に対して徐々に変化していることになるから、前記直線部分に直交する方向に伝搬する屈曲振動の位相等が揃うおそれがより確実に低減される。また、例えば、水晶片15の外縁に対して、前記直線部分及び前記傾斜している部分の少なくとも一方が傾斜することになるから、水晶片15の外縁と励振電極17の外縁との距離も徐々に変化することになり、当該距離に依存する屈曲振動が低減される。
また、本実施形態では、第1励振電極17Aは平面視において矩形である。第2励振電極17Bの外縁は、平面透視において、前記矩形の一辺に対して外側に膨らむ曲線部分(25B及び/又は27B)を有している。
従って、例えば、比較的一般的な形状である第1励振電極17Aに対して、上述した各種の作用乃至は効果を得ることができる。その結果、例えば、本実施形態の有用性が向上する。また、例えば、一般に、厚みすべり振動のエネルギーの分布(エネルギーの等高線)は、励振電極17を中心とする楕円形となるから、第2励振電極17Bが外側に膨らむ曲線部分を有していることにより、第2励振電極17Bの形状をエネルギーの分布に近づけることができる。その結果、例えば、効率的にエネルギーの閉じ込め効果を得ることができる。
また、本実施形態では、第2励振電極17Bは、平面透視において、第1励振電極17Aの矩形の互いに対向する1対の第1辺(25A及び27B)に対して外側に膨らむ1対の曲線部分(25B及び27B)と、前記矩形の互いに対向する1対の第2辺(29A)に一致する1対の直線部分(29B)と、を有している。
従って、例えば、第2励振電極17Bの外縁全体を第1励振電極17Aの外縁全体に対してずらす態様(この態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、1対の励振電極が互いに同一形状である態様からの調整量が抑えられる。その結果、例えば、デバイス(振動子1)の設計を見直す必要性が生じるおそれを低減できる。その一方で、例えば、1対の第1辺(25A及び27B)に直交する方向に伝搬する屈曲振動の影響を重点的に低減することができる。従って、例えば、当該方向における屈曲振動の影響が大きい場合において好適に特性を向上させることができる。
また、本実施形態では、前記1対の第1辺が1対の短辺(25A及び27A)であり、前記1対の第2辺が1対の長辺(29B)である。
従って、例えば、短辺に直交する方向の屈曲振動の影響を重点的に低減することができる。また、例えば、長辺を外側に膨らむ曲線状にする態様(この態様も本開示に係る技術に含まれる。図4(a)参照)に比較して、曲率半径を小さくできるから、第1励振電極17Aの外縁から第2励振電極17Bの外縁までの距離の変化に対して容量の変化を小さくしやすい。その結果、例えば、デバイスの設計の見直しの必要性が生じるおそれを低減しつつ、特性を向上させる効果が得やすくなる。なお、本願発明者が行った実験では、自由短縁25B及び固定短縁27Bを外側に膨らむ曲線状にした方が、1対の長縁29Bを外側に膨らむ曲線状にする場合よりも等価直列抵抗値を小さくすることができた。
また、本実施形態では、水晶片15は平板状である。このような水晶片15においては、メサ型の水晶片(図5参照)等に比較して、水晶片15の外縁付近へエネルギーが漏れて励振電極17の外側で不要な振動が生じやすい。従って、励振電極17の形状が互いに異なることによる不要振動の抑制効果が現れやすい。
<第2実施形態>
図4(a)は、第2実施形態に係る振動素子205を示す、図3(b)と同様の平面図である。
振動素子205は、第2励振電極の形状のみが第1実施形態の振動素子5と相違する。具体的には、振動素子205の第2励振電極217Bは、短縁ではなく、長縁が外側に膨らむ形状とされている。すなわち、第2励振電極217Bは、平面透視において、第1励振電極17Aの1対の自由短縁25A及び固定短縁27Aに一致する自由短縁225B及び固定短縁227Bと、第1励振電極17Aの1対の長縁29Aに対して外側に膨らむ1対の長縁229Bとを有している。
具体的には、例えば、長縁229Bは、長縁29Aに対して外側に膨らむ曲線状である。当該曲線は、例えば、第1励振電極17A(又は第2励振電極17B)の図形重心を通り、Z′軸に平行な中心線Lzを対称軸として線対称の形状である。このような線対称の曲線としては、例えば、中心線Lz上に位置する不図示の点を中心とする円弧が挙げられる。円弧の半径は適宜に設定されてよい。1対の長縁229Bの形状は、例えば、互いに同一である。ただし、1対の長縁229Bの形状は互いに異なっていてもよい。
上記のような構成の振動素子205においても、第2励振電極217Bは、平面透視において、第1励振電極17Aよりも広く、第1励振電極17Aの全体に重なっている。第1励振電極17Aの外縁から第2励振電極217Bの外縁までの距離は、第1励振電極17Aの外縁に沿う位置によって異なっている。また、長縁に着目すると、第2励振電極217Bの外縁は、平面透視において、第1励振電極17Aの所定部分(29A)の外側に位置し、当該直線部分に対して傾斜する部分(229B)を有している。
なお、第1実施形態と同様に、自由短縁225B及び固定短縁227Bは、X方向に伝搬する屈曲振動による定在波の節(当該節からλ/8又はλ/16の範囲内)に位置してよい。また、長縁229B(そのうちの例えばX方向における中央位置)は、Z′方向に伝搬する屈曲振動による定在波の節(当該節からλ/8又はλ/16の範囲内)に位置してよい。
以上のとおり、本実施形態においても、平面透視において、第2励振電極217Bは、第1励振電極17Aよりも広く、第1励振電極17Aの全体に重なっており、第1励振電極17Aの外縁から第2励振電極217Bの外縁までの距離は、第1励振電極17Aの外縁に沿う位置によって異なっている。
従って、例えば、第1実施形態と同様の効果が得られる。例えば、屈曲振動が特性に及ぼす影響を低減することができ、その一方で、容量の変化を抑えることができる。
また、本実施形態では、第2励振電極217Bは、第1励振電極17Aの1対の短辺(25A及び27A)に一致する1対の直線部分(225B及び227B)と、第1励振電極17Aの1対の長辺(29A)に対して外側に膨らむ1対の曲線部分(229B)とを有している。
従って、例えば、長辺に直交する方向の屈曲振動の影響を重点的に低減することができる。また、例えば、固定短縁227Bと引出電極19との距離が固定短縁27Aと同様に確保されることから、例えば、固定短縁227Bと引出電極19との間で形成される電界によって意図しないスプリアスが生じるおそれが低減される。
<第3実施形態>
図4(b)は、第3実施形態に係る振動素子305を示す、図3(b)と同様の平面図である。
振動素子305は、第2励振電極の形状のみが第1実施形態の振動素子5と相違する。具体的には、振動素子305の第2励振電極317Bは、第1実施形態の自由短縁25B及び固定短縁27Bと、第2実施形態の1対の長縁229Bとを有している。
別の観点では、第2励振電極317Bの外縁は、その全体(厳密には第1励振電極17Aの頂点除く)が第1励振電極17Aの外縁に対して外側に膨らむ曲線状となっている。なお、自由短縁25B及び固定短縁27Bと、1対の長縁229Bとの接続点における変化をよりなだらかにしてもよい。換言すれば、第2励振電極317Bは、楕円形(必ずしも数学上の楕円でなくてよい)又は円形であってもよい。また、第2励振電極317Bの外縁は、第1励振電極17Aの頂点から離れていてもよい。
以上のとおり、本実施形態においても、平面透視において、第2励振電極317Bは、第1励振電極17Aよりも広く、第1励振電極17Aの全体に重なっており、第1励振電極17Aの外縁から第2励振電極317Bの外縁までの距離は、第1励振電極17Aの外縁に沿う位置によって異なっている。
従って、例えば、第1実施形態と同様の効果が得られる。例えば、屈曲振動が特性に及ぼす影響を低減することができ、その一方で、容量の変化を抑えることができる。
また、本実施形態では、第2励振電極317Bの外縁は、平面透視において前記矩形の4辺に対して外側に膨らむ曲線部分(25B、27B及び229B)を有している。
従って、例えば、X方向に伝搬する屈曲振動及びZ′方向に伝搬する屈曲振動のいずれの影響も低減することができる。また、例えば、第2励振電極317Bの形状が厚みすべり振動のエネルギーの分布の形状により近づくことになり、よりエネルギーの閉じ込め効果が向上する。
<第4実施形態>
図4(c)は、第4実施形態に係る振動素子405を示す、図3(b)と同様の平面図である。
振動素子405は、第2励振電極の形状のみが第1実施形態の振動素子5と相違する。具体的には、振動素子405の第2励振電極417Bは、第1実施形態の自由短縁25B及び1対の長縁29Bと、第2実施形態の固定短縁227Bとを有している。すなわち、第2励振電極417Bは、第1励振電極17Aに対して、自由短縁25Bのみが外側に膨らむ形状となっている。
このような構成においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。例えば、屈曲振動が特性に及ぼす影響を低減することができ、その一方で、容量の変化を抑えることができる。
また、第2励振電極417Bの外縁のうち、第1励振電極17Aの1辺に対応する部分のみを外側に膨らませることから、例えば、容量の変化を抑制する効果が高い。また、例えば、固定短縁227Bと引出電極19との距離が固定短縁27Aと同様に確保されることから、例えば、固定短縁227Bと引出電極19との間で形成される電界によって意図しないスプリアスが生じるおそれが低減される。
<第5実施形態>
図4(d)は、第5実施形態に係る振動素子505を示す、図3(b)と同様の平面図である。
振動素子505は、第2励振電極の形状のみが第1実施形態の振動素子5と相違する。具体的には、振動素子505の第2励振電極517Bは、第1実施形態の固定短縁27B及び1対の長縁29Bと、第2実施形態の自由短縁225Bとを有している。すなわち、第2励振電極517Bは、第1励振電極17Aに対して、固定短縁27Bのみが外側に膨らむ形状となっている。
このような構成においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。例えば、屈曲振動が特性に及ぼす影響を低減することができ、その一方で、容量の変化を抑えることができる。
<第6実施形態>
図5は、第6実施形態に係る振動素子605を示す、図1の一部に相当する斜視図である。
振動素子605は、水晶片の形状のみが第2実施形態の振動素子205と相違する。具体的には、振動素子605の水晶片615は、いわゆるメサ型とされている。第1励振電極17A(ここでは不図示)、第2励振電極217B及び引出電極19は、基本的に第2実施形態のものと同様である。ただし、振動素子605がメサ型であることによって、引出電極19は段差を有している。振動素子605がメサ型であることに応じて具体的な寸法が適宜に設定されてよいことはもちろんである。
メサ型である水晶片615は、メサ部631と、平面視においてメサ部631を囲み、1対の主面間(Y′軸方向)の厚みがメサ部631よりも薄い外周部633とを有している。このような形状により、例えば、エネルギー閉じ込め効果が向上する。
メサ部631の形状は、例えば、互いに平行な1対の主面を有する板状である。メサ部631の平面形状は、例えば、矩形(例えば長方形)である。ただし、メサ部631の平面形状は、例えば、楕円形又は長円形(長方形の短辺を円弧にした形状)であってもよい。
外周部633の形状は、例えば、メサ部631を無視すると、互いに平行な1対の主面を有する板状である。外周部633の外縁の形状は、水晶片615全体としての平面形状であり、また、第1実施形態における水晶片15の平面形状と同様である。すなわち、外周部633(水晶片615)は、例えば、長方形である。
平面視において、メサ部631は、例えば、水晶片615(外周部633)の外縁に対して、Z′軸方向においては中心に位置し、X軸方向においては一方側(引出電極19とは反対側)にずれて位置している。ただし、メサ部631は、X軸方向において水晶片15の中心に位置してもよい。
Y′軸方向において外周部633は、メサ部631の中央に位置している。すなわち、メサ部631の外周部633からの高さ(水晶片615をメサ型にするための外周部633における掘り込み量)は、水晶片615の1対の主面同士で同等である。
メサ部631の厚みは、第1実施形態における水晶片15の厚みと同様に、厚みすべり振動についての所望の固有振動数に基づいて設定される。外周部633の厚みは、エネルギー閉じ込め効果の観点などから適宜に設定される。例えば、水晶片615の1対の主面の一方側における、メサ部631の主面と外周部633の主面との高さの差(外周部633における掘り込み量)は、メサ部631の厚みの5%以上15%以下であり、例えば20%程度である。
水晶片615の各種の寸法は、第1実施形態と同様に、適宜に設定されてよい。一例を挙げると、水晶片615の長辺の長さは550μm以上1.1mm以下、水晶片615の短辺の長さは350μm以上750μm以下(ただし長辺の長さより短い)、メサ部631の厚みは20μm以上70μm以下、メサ部631の長辺の長さは400μm以上750μm以下(ただし水晶片615の長辺の長さより短い)、メサ部631の短辺の長さは300μm以上650μm以下(ただし、水晶片615の短辺の長さ及びメサ部631の長辺の長さより短い)である。
平面視において、第1励振電極17A及び第2励振電極217Bは、メサ部631よりも小さく、メサ部631の主面に収まっている。また、1対の引出電極19は、パッド19aが外周部633に位置しており、配線部19bは、メサ部631から外周部633に亘っている。なお、第2励振電極217B、又は第1励振電極17A及び第2励振電極217Bは、メサ部631よりも広くてもよい。
このような構成においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。例えば、屈曲振動が特性に及ぼす影響を低減することができ、その一方で、容量の変化を抑えることができる。
なお、ここでは、第2実施形態の第2励振電極217Bをメサ型の水晶片615に組み合わせる態様を例にとって説明したが、第2励振電極217Bに代えて、他の実施形態の第2励振電極(17B、317B、417B及び517B)が組み合わされても構わない。
また、本実施形態では、一対の第1辺が一対の長辺であり、一対の第2辺が一対の短辺となっていてもよい。このような構成においても、第一実施形態と同様の効果が得られる。例えば、屈曲振動が特性に及ぼす影響を低減することができる。また、このようにすることで、第1励振電極と第2励振電極とで挟まれたメサ部631の主振動である厚みすべり振動が、第1励振電極と第2励振電極とで挟まれている部分から漏れ伝搬した振動がメサ部631の側面で反射し、この漏れ伝搬しメサ部631の側面で反射した振動が主振動である厚みすべり振動と結合し等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
圧電振動素子を有する圧電振動デバイスは、圧電振動子に限定されない。例えば、圧電振動デバイスは、圧電振動素子に加えて、圧電振動素子に電圧を印加して発振信号を生成する集積回路素子(IC:Integrated Circuit)を有する発振器であってもよい。また、例えば、圧電振動デバイス(圧電振動子)は、圧電振動素子の他に、サーミスタ等の他の電子素子を有するものであってもよい。また、圧電振動デバイスは、恒温槽付のものであってもよい。圧電振動デバイスにおいて、圧電振動素子をパッケージングするパッケージの構造は、適宜な構成とされてよい。例えば、パッケージは、上面及び下面に凹部を有する断面H型のものであってもよい。
圧電片は、水晶片に限定されない。例えば、圧電片は、水晶に金属等からなるドーパントを注入した材料からなるものであってもよい。ただし、このような水晶にドーパントを注入した材料からなる圧電片は、水晶片の一種と捉えられてもよい。また、圧電片は、例えば、セラミックからなるものであってもよい。
圧電振動素子は、厚みすべり振動を利用するものに限定されない。厚みすべり振動を利用する場合において、圧電片(水晶片)は、ATカット板に限定されない。どのような振動モードを利用するものであっても、1対の励振電極の外縁の距離が変化していることによって、不要振動を低減しつつ、容量の変化を抑制することが可能である。例えば、厚みすべり振動を利用する場合において、水晶片は、BTカット板であってもよい。
水晶片がATカット板である場合において、第1励振電極から第2励振電極への方向と、Y′軸の正負との関係は、実施形態と逆であってもよい。また、引出電極が延び出る方向と、X軸の正負との関係は、実施形態と逆であってもよい。なお、実施形態では、引出電極19のパッド19aが水晶片15の両主面に設けられ、振動素子5の1対の主面のいずれも凹部3aの底面に対向可能であった。このことから明らかなように、第1励振電極から第2励振電極への方向と、振動素子との実装方向との関係は適宜に設定されてよい。
圧電振動素子は、1対のパッド(引出電極)が一主面に設けられて片持ち梁状に支持されるものに限定されない。例えば、1対の引出電極が1対の励振電極から互いに逆方向に延び、圧電振動素子の両端が支持されてもよい。また、圧電振動素子は、ばね端子等によって立てられた状態で支持されるものであってもよい。
第1励振電極の形状は矩形に限定されない。例えば、第1励振電極の形状は、第1〜第5実施形態で示した第2励振電極のような形状とされ、第2励振電極は、そのような形状の第1励振電極よりも広い矩形又はその他の第1励振電極とは異なる形状とされてもよい。また、例えば、1対の励振電極の双方が曲線の外縁のみからなるものであってもよい。これらの場合においても、第1励振電極の外縁から第2励振電極の外縁までの距離を第1励振電極の外縁に沿う位置によって異ならせたり、第1励振電極の外縁の所定部分に対してその外側に位置する第2励振電極の外縁の一部を前記所定部分に対して傾斜させることができる。
第2励振電極の外縁の一部が第1励振電極の外縁の直線部分に対して外側に膨らむ形状である場合において、この膨らむ形状は、円弧(曲率が全体に亘って一定の曲線)に限定されない。例えば、膨らむ形状は、一部に直線を含んでいてもよいし、曲率が長さ方向の位置によって変化していてもよい。また、膨らむ形状は、その両端の中間となる位置を通る線に対して非対称の形状であってもよい。
水晶片は、平板状のもの及びメサ型のものに限定されない。例えば、水晶片は、いわゆるコンベックス型又はべベル型のものであってもよい。なお、べベル型のものは、面取り量が小さければ、平板状の一種とされてもよい。