以下、本開示の技術の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以降の説明において、上下方向などの方向は、図面の記載に従ったものとする。また、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
<第1の実施形態>
本開示の技術の分析用具1および分析装置2が適用された分析システムASは、病院や動物病院に設置され、蛍光分析または化学発光分析により、生体試料S中に含まれる特定成分を分析するために用いられる。図1に示すように、分析システムASは、分析用具1と分析装置2とを備えている。生体試料Sは、本開示の技術でいう試料の一例に相当する。生体試料Sとしては、体液などの液体や糞便などの固形物が使用される。液体試料を用いる場合は、必要に応じて、希釈液により希釈する前処理が行われる。固体試料を分析する場合は、必要に応じて、溶解液により溶解したり、懸濁液により懸濁したりすることにより前処理が行われる。生体試料Sとして、具体的には、例えば、ヒトや動物の血液、尿、唾液、血清、血漿、または糞便が挙げられる。
[分析用具]
図2Aおよび図2Bに示すように、分析用具1は、例えば、基板10、反応槽11、複数の槽12、および測光ウェル13を備えている。分析用具1は、例えば、生体試料S中の特定成分を免疫学的測定法により検査するためのものである。免疫学的測定法として、例えば、酵素抗体法が採用される。酵素抗体法として、例えば、ELISA法が採用される。ELISA法として、例えば、サンドイッチ法が採用される。また、分析される特定成分として、例えば、リウマチ因子(RF)、癌胎児性抗原(CEA)、α−フェトプロテイン(AFP)、HIV抗体が挙げられる。これらは、生体試料Sの一例である血清中に含まれる。
図2Bに示すように、基板10は、反応槽11、複数の槽12、および測光ウェル13を装着して一体化するためのものである。図2Aおよび図2Bに示すように、基板10の表面は、後述する光学系5から光が漏れるのを防止するため、黒く着色または黒いシールが貼付されている。基板10は、合成樹脂により成形される。合成樹脂として、具体的には、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、またはポリプロピレン(PP)が使用される。基板10は、反応槽11を装着するための装着孔10c、複数の槽12を装着するための装着孔10d、および測光ウェル13を装着するための装着孔10fを備えている。
反応槽11は、複数種類の液体(R1〜R6)を順次交換して生体試料S中の特定成分を分析するための分析反応を行わせるための容器である。一例として図3A及び図3Bに示すように、反応槽11は、本体11aとシール11bとを備えている。本体11aは、合成樹脂により成形されている。合成樹脂として、具体的には、例えば、ポリスチレン(PS)が使用される。ポリスチレン以外に、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ乳酸(PLA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、またはポリプロピレン(PP)等の透明または半透明樹脂が使用される。
シール11bは、本体11aの鍔部11cの上面に貼り付けられている。シール11bは、例えば、アルミ箔、アルミ箔を備えた多層フィルム、または合成樹脂フィルム製である。シール11bは、後述するピペットチップ先端部71aにより、破断可能に形成されている。本体11aとシール11bとは、例えば、熱溶着により接着される。一例として図3Bに示すように、反応槽11は、鍔部11cの下面に嵌合突起11dを有している。一例として図1、図2A、および図2Bに示すように、反応槽11は、本体11aを装着孔10cに挿入し、嵌合突起11dを嵌合穴10bに嵌め込むことにより、基板10に装着される。
一例として図3に示すように、本体11aの内面11eには、前記特定成分に対する抗体が固相化されている。固相化抗体11fとして、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が使用される。固相化抗体11fは、例えば、ヤギ(Goat)、マウス(Mouse)、ウマ(Horse)、ウシ(Bovine)、ニワトリ(Chicken)、イヌ(Dog)、ヒト(Human)、ブタ(Porcine)、ウサギ(Rabbit)、ラット(Rat)、ゴールデンハムスター(Syrian Hamster)、またはアフリカツメガエル(Xenopus)由来である。本体11aの内面11eへの、抗体の固相化は、通常の方法により行われる。反応槽11は、抗体の固相化を行った後に、基板10に装着される。また、本体11aの内面11eに抗体を固相化するのではなく、抗体感作磁性粒子溶液を別試薬として準備してもよい。
本体11aの材料として選択される合成樹脂には、物理吸着による抗体の固相化が困難なものもある。その場合は、VUV処理やプラズマ処理、化学処理などを施したうえでカルボキシル基やアミノ基を本体11aの内面11eに導入し、これらの官能基との共有結合により抗体の固相化を行う。その他に、自己組織化単分子膜(SAM)などのコーティングの上に固相化を行ってもよい。
一例として図1、図2A、および図2Bに示すように、複数の槽12は、生体試料希釈槽12a、生体試料希釈液槽12b、一次抗体液槽12c、二次抗体液槽(酵素標識抗体液槽)12d、酵素基質液槽12e、反応停止液槽12f、洗浄緩衝液槽12g、および廃液槽12hを含む。複数の槽12は、合成樹脂により成形されている。合成樹脂として、具体的には、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、またはポリプロピレン(PP)が使用される。これらの槽の上面には、シール12iが貼り付けられている。シール12iは、例えば、アルミ箔、アルミ箔を備えた多層フィルム、または合成樹脂フィルム製であり、後述するピペットチップ先端部71aにより、破断可能に形成されている。一例として図2Bに示すように、複数の槽12は、装着孔10dに嵌め込まれることにより、基板10に装着される。
生体試料希釈槽12aは、所定量の生体試料Sを分注し、適切な濃度に希釈した混和液R1を調整するために使用される。生体試料希釈液槽12bは、生体試料Sを希釈するための生体試料希釈液R2が充填される槽である。この生体試料希釈液R2により、生体試料希釈槽12aに分注された生体試料Sが所定の濃度に希釈される。生体試料希釈液R2として、例えば、リン酸緩衝液が使用される。
一次抗体液槽12cは、一次抗体液R3が収容される槽である。一次抗体は、前記固相化抗体11fと同様、前記特定成分に対する抗体であり、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が使用される。一次抗体は、固相化抗体11fと同様、例えば、上記の動物種から得られる。一次抗体は、例えば、リン酸緩衝液に溶解されている。
二次抗体液槽12dは、二次抗体(酵素標識抗体)液R4が収容される槽である。酵素標識抗体は、例えば、リン酸緩衝液に溶解されている。二次抗体は、一次抗体に対する抗体であり、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が使用される。二次抗体は、固相化抗体11fと同様、例えば、上記の動物種から得られる。二次抗体は、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)で標識される。また、二次抗体は、HRP以外に、例えば、アルカリフォスファターゼ(AP)で標識される。
酵素基質液槽12eは、前記特定成分を検出するための試薬として、酵素基質液R5が収容される槽である。酵素基質として、例えば、蛍光基質または化学発光基質が挙げられる。標識酵素が、HRPである場合は、上記の他に過酸化水素(H2O2)が添加される。酵素基質液R5は、種類に応じて、所定のpHに調整される。なお、H2O2は、別試薬として準備してもよい。
蛍光基質は、前記特定成分の蛍光検出に使用される。蛍光検出では、蛍光基質が前記標識酵素により分解される際に生じる蛍光物質に励起光を照射した際に発せられる蛍光発光を検出することにより、前記特定成分の有無や量を検出する。標識酵素がHRPである場合、蛍光基質の具体例として、例えば、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル酢酸、還元型フェノキサジン、還元型ベンゾチアジン、または還元型ジヒドロキサンテンが挙げられる。標識酵素がAPである場合、蛍光基質の具体例として、例えば、4−メチルウンベリフェリルホスフェート(4−MUP)、2−(5’−クロロ−2’−ホスホリルオキシフェニル)−6−クロロ−4−(3H)−キナゾリノン(CPPCQ)、3,6−フルオレセインジホスフェート(3,6−FDP)、ファストブルー−BB(Fast Blue−BB)、ファストレッドTR、またはファストレッドバイオレットLBジアゾニウム塩が挙げられる。
一方で、化学発光基質は、前記特定成分の化学発光検出に使用される。化学発光検出では、化学発光基質が、前記標識酵素により分解される際に生じる化学発光物質が発する化学発光を検出することにより、前記特定成分の有無や量を検出する。標識酵素がHRPである場合、化学発光基質の具体例として、例えば、ルミノールベースの化学発光基質が挙げられる。標識酵素がAPである場合、化学発光基質の具体例として、例えば、3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3’−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン・二ナトリウム塩(AMPPD)、2−クロロ−5−{4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]−4−イル}フェニルホスフェート・二ナトリウム塩(CDP−Star(登録商標))、3−{4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]−4−イル}フェニルホスフェート・二ナトリウム塩(CSPD(登録商標))、[10−メチル−9(10H)−アクリジニルイデン]フェノキシメチルリン酸・二ナトリウム塩(Lumigen(登録商標)、APS−5)、または9−(4−クロロフェニルチオホスホリルオキシメチリデン)−10−メチルアクリダン・二ナトリウム塩が挙げられる。
反応停止液槽12fは、反応停止液R6を収容するための槽である。反応停止液R6は、二次抗体標識酵素と酵素基質との反応を停止するためのものである。反応停止液R6として、例えば、硫酸水溶液または水酸化ナトリウム水溶液が使用される。
洗浄緩衝液槽12gは、洗浄緩衝液R7を収容するための槽である。洗浄緩衝液R7には、ピペットチップ71を洗浄するものと、反応槽11を洗浄するものとが用意されている。洗浄緩衝液R7として、例えば、リン酸緩衝液またはトリス緩衝液が用いられる。これらの緩衝液には、界面活性剤Tween20(登録商標)が添加されている。洗浄緩衝液槽12gは、使用量に応じて複数設けてもよい。
廃液槽12hは、反応槽11において使用された前記試薬液(R1〜R6)または洗浄緩衝液R7を後述する廃棄液R8として廃棄するための槽である。廃液槽12hは、廃棄する液量に応じて複数設けてもよい。
なお、以後、混和液R1、生体試料希釈液R2、一次抗体液R3、二次抗体液R4、酵素基質液R5、反応停止液R6、および洗浄緩衝液R7を総称する際には、液体Lという。
測光ウェル13は、反応槽11において液体Lを順次交換し、反応が完了して生成した測定液L1を所定量分注し、測定液L1から発せられる蛍光発光や化学発光などの被測定光の測定を行うための容器である。測光ウェル13は、透明の合成樹脂により成形される。合成樹脂として、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、またはポリプロピレン(PP)が使用される。
一例として図4Aおよび図4Bに示すように、測光ウェル13は、鍔部13aおよびウェル本体13bを備えている。ウェル本体13bは、上部開口13c、測定液収容部13d、底壁部13e、および側壁部13fを備えている。底壁部13eは、下方突出部13gに含まれる。
測光ウェル13は、一例として図2Bに示す基板10に設けられた装着孔10fに下方突出部13gを嵌め込むことにより、基板10に装着される。一例として図4Aおよび図4Bに示すように、上部開口13cは、測定液L1を分注するための分注口である。上部開口13cは、本開示の技術でいう開口部の一例に相当する。測定液収容部13dは、測定液L1を収容するための部分である。測定液収容部13dは、底壁部13eと側壁部13fとに囲まれて形成される。上部開口13cおよび測定液収容部13dは、平面視において円形状である。なお、基板10、反応槽11、複数の槽12、測光ウェル13および生体試料Sが入ったマイクロチューブ30は任意の組み合わせで一体成形されてよい。
一例として図4Bに示すように、測光ウェル13を用いて、蛍光検出を行う場合は、壁部を有していない上部開口13cから照射方向N1に沿って励起光を直接照射し、底壁部13eの下面13hから受光方向N2に沿って発せられる蛍光発光を検出する。よって、測光ウェル13を用いる蛍光検出は、TOP−BOTTOM測光によって行われる。この場合、励起光の照射方向N1は、蛍光発光の受光方向N2と一致する。蛍光発光は、本開示の技術でいう被測定光の一例に相当する。また、測光ウェル13を用いて、化学発光検出を行う場合は、底壁部13eの下面13hから発せられた化学発光を検出する。化学発光は、本開示の技術でいう被測定光の一例に相当する。
一例として図4Bに示すように、測定液収容部13dの形状は、受光方向N2に対して扁平形状とされる。測光ウェル13においては、測定液収容部13dの形状は、例えば、ウェル本体13bに分注された測定液L1の高さ(深さ)とウェル本体13bの内径とによって規定される。測定液収容部13dの高さ(深さ)が、測光ウェル13のセル長D1である。具体的には、前記扁平形状の断面の短手方向における、測定液収容部13dに分注された測定液L1の高さ(深さ)が、測光ウェル13のセル長D1を規定する。また、ウェル本体13bの内径は、測定液収容部13dの直径D2である。ここで、ウェル本体13bおよび測光ウェル13の形状は、測定液収容部13dの形状に合わせて、全体として扁平形状としてもよい。この場合、底壁部13eの下面13hは、扁平面である。この扁平面は水平面に限らず、緩い凹凸面や曲面であってもよい。なお、下面13hは、本開示の技術でいう出射部の一例に相当する。
測光ウェル13のセル長D1は、例えば、3.0mm以下、1.5mm〜3.0mm、1.9mm〜2.5mm、2.5mm、2.0mm、1.5mm〜2.0mm、1.9mm〜2.0mm、2.0mm〜2.5mm、2.0mm〜3.0mm、または2.0mm以下である。測定液収容部13dの直径D2は、例えば、8.0mm以下、11.3mm〜8.0mm、10.0mm〜8.8mm、9.8mm、10.0mm、10.0mm〜9.8mm、9.8mm〜8.8mm、10.0mm〜9.8mm、9.8mm〜8.8mm、または3.0mm〜5.0mmである。
分析用具1の測光ウェル13は、測定液収容部13dに分注された測定液L1の液量を変更することにより、セル長D1を変更できるように構成してもよい。測光ウェル13をこのような構成にすれば、後述する分析装置2は、受光素子52eの出力値が飽和した場合に、測定液L1の液量を減らし、セル長D1を短くした後に、再度測定を実施するように構成される。
なお、測光ウェル13の材料として、PSを使用する場合は、自家蛍光の発光強度が低いグレードのGPPSを採用する。成形材料として、具体的には、例えば、PSジャパン社製のHF77、HH102、またはSGP10(商品名)が好ましい。更に、測光ウェル13の底壁部13eおよび側壁部13f(励起光が当たる箇所)の肉厚を1.0mm以下、好ましくは部分的にでも肉厚が0.5mmの部位を作るなどして、散乱光や自家蛍光の発生を可能な限り抑制する。
図5Aは、測光ウェル13に収容された測定液L1の最上部における蛍光発光箇所の視野角αの一例を示す断面図である。また、図5Bは、図5Aに示す測光ウェル13と同量の測定液L1をセル長の長い測光ウェル13’に収容した場合の測定液L1の最上部における蛍光発光箇所の視野角βの一例を示す断面図である。この場合は、セル長D1<セル長D1’、直径D2>直径D2’の関係となる。また、測光ウェル13と受光素子52eとの距離D3は、測光ウェル13’と受光素子52eとの距離D3’と同一となっている。図5Aおよび図5Bから明らかなように、視野角に関しては、視野角α>視野角βの関係となる。すなわち、セル長が短いことで蛍光発光または化学発光の視野角が大きくなる。従って、測定液L1が同量の場合には、測光ウェル13のセル長D1は、短い方が集光効率を上げる上で有利となる。さらに、被測定光が蛍光発光である場合、セル長D1を短くすることで励起光が蛍光基質を含む測定液L1に吸収され難く、効率良く蛍光発光させることが可能となる。
図6には、分光光度計により10mmセルを用いて、蛍光基質の一例である4−MUP溶液(0.6mM)の透過率特性を測定した結果の一例が示されている。4−MUPが分解されて生じる4−MUの励起波長は、おおよそ365nm〜370nmである。後述するように、検出部5において、発光素子51aとして、例えば、LEDである日亜化学工業製NSHU591B(商品名)が採用される。NSHU591Bは、中心波長365nm、中心波長誤差±3nm、半値幅12nmの特性をもつ。よって、中心波長誤差が−3nmである場合、短波長側の半値波長は、350nmとなる。図6から明らかなように、350nmでは、透過率が15%前後まで落ちる。従って、NSHU591Bを用いた場合には、励起光が4−MUPを含む測定液L1に吸収されるため、蛍光の発光効率が悪化し、集光効率が悪くなることが起こり得る。このような場合、測光ウェル13のセル長D1を短くすることで、図6中の矢印で示すように透過率を上昇させることができる。これにより、励起光が蛍光基質を含む測定液L1に吸収され難くなり、効率良く蛍光発光させることが可能となる。
[分析装置]
一例として図1に示すように、分析装置2は、内部の所定箇所に分析用具1をセットし、生体試料Sに含まれる特定成分を分析するためのものである。分析装置2は、生体試料ラック3、制御部40、入力部42、表示部43、検出部5、および分注部6を備えている。
生体試料ラック3は、生体試料Sが入ったマイクロチューブ30および使用前後のピペットチップ71を載置するためのものである。生体試料ラック3は、合成樹脂により成形されている。合成樹脂として、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、またはポリプロピレン(PP)が使用される。後述するように、生体試料ラック3は、分析用具1と共に載置台53に載置される。
一例として図1に示すように、検出部5は、光源部51、受光部52、及びX軸モータ9bを有し、分注部6は、Z軸モータ8b及びポンプ70を有する。
一例として図1及び図17に示すように、制御部40は、制御線41を介して、分注部6と、検出部5と、入力部42と、表示部43とに接続されている。一例として図17に示すように、制御部40は、中央演算処理装置であるCPU100、ランダムアクセスメモリであるRAM102、及び読み出し専用メモリであるROM104を有する。なお、ここでは、ROM104を例示しているが、これはあくまでも一例に過ぎず、ROM104に代えて、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリを適用することも可能である。
ROM104は、後述の測定処理(図20参照)を実現するために実行される測定プログラム106を含む各種プログラム、及び各種パラメータ等を記憶している。CPU100は、ROM104から各種プログラムを読み出して、上記各部の制御処理を行ったり、分析データの演算処理を行ったりする。また、CPU100は、これらの処理を行う際に、RAM102をワーキングメモリとして使用する。
入力部42は、分析に必要なデータを入力したり、後述する表示部43に表示された選択項目を選択したりするために使用される部分である。入力部42の具体例としては、キーボード、マウス、タッチパネル、及びバーコードリーダ等が挙げられる。入力データの具体例としては、例えば、患者のID番号、分析項目、分析に必要なパラメータが挙げられる。
表示部43は、例えば、分析に必要な選択事項や分析結果を表示するためのものである。表示部の具体例としては、例えば、液晶モニタが挙げられる。
一例として図1および図7に示すように、検出部5は、光学系50、載置台53、および水平方向駆動部9を備えている。光学系50は、光源部51および受光部52を有している。光源部51は、例えば、酵素基質として蛍光基質を使用する場合に、分析用具1の測光ウェル13にN1で示す照射方向に励起光を照射するためのものである。励起光は、壁部を有していない上部開口13cから照射方向N1に沿って直接照射される。励起光照射のタイミングは、制御部40により制御される。受光部52は、測光ウェル13の底壁部13eからN2で示す受光方向に発せられる蛍光を受光するためのものである。上記したように、励起光の照射方向N1は、例えば、蛍光発光の受光方向N2と一致する。制御部40は、受光部52が取得したデータに基づいて、分析結果を算出する。なお、酵素基質として化学発光基質を使用する場合には、光源部51による測光ウェル13への光の照射は必要ない。受光部52は、測光ウェル13からN2で示す受光方向に発せられる化学発光を受光する。
一例として図7に示すように、光源部51は、発光素子51a、色ガラスフィルタ51b、ビームスプリッタ51c、アパーチャ51d、参照用フォトダイオード51e、およびアパーチャ51fを備えている。受光部52は、ライトガイド52aおよび受光素子52eを備えている。
発光素子51aは、測光ウェル13に励起光を照射するためのものである。発光素子51aとして、発光ダイオード(LED)が使用される。LEDとして、例えば、上記した日亜化学工業社製NSHU591B(商品名)が挙げられる。上記したように、NSHU591Bの中心波長は、365nmである。なお、発光素子51aのLED以外の具体例として、例えば、レーザダイオード、キセノンランプ、ハロゲンランプが挙げられる。なお、発光素子51aは、本開示の技術でいう光源の一例に相当する。
色ガラスフィルタ51bは、励起光の波長を選択するためのものである。色ガラスフィルタ51bは、本開示の技術でいう励起光波長選択フィルタの一例に相当する。色ガラスフィルタ51bとして、具体的には、例えば、HOYA社製U340(商品名)が使用される。U340は、紫外域の光を透過し、可視域の光を吸収するフィルタであり、紫外線のみを取り出す際に用いられる。U340の厚みは、例えば2.5mmである。ここで、励起光波長選択フィルタは、特定波長吸収特性を有する光学部品である。励起光波長選択フィルタの具体例として、色ガラスフィルタ51bのほかに、特定波長吸収フィルム、着色水溶液、着色オイルなどが挙げられる。
ビームスプリッタ51cは、色ガラスフィルタ51bを透過した紫外光から参照用の光を分離するためのものである。分離された紫外光は、アパーチャ51dに設けられた開口51gを通過して、参照用フォトダイオード51eに受光される。参照用フォトダイオード51eに受光された紫外光は、発光素子51aから出射される光量のばらつきを補正するのに使用される。
アパーチャ51fは、開口51hを有しており、ビームスプリッタ51cによって分離されず、通過した紫外光を、測光ウェル13中の測定液L1に誘導するための部品である。ビームスプリッタ51cを通過した紫外光は、アパーチャ51fに設けられた開口51hを通過し、測光ウェル13中の測定液L1に照射される。
ライトガイド52aは、測光ウェル13の底壁部13eから出射する蛍光発光または化学発光を集光するための部品であり、例えば、上部開口の直径13mm、下部開口の直径8mm、高さ15mmの中空反射鏡筒である。ライトガイド52aの内壁面52dは、金属薄膜(図示略)を有しており、前記金属薄膜はアルミニウム(Al)層の上にフッ化マグネシウム(MgF2)層がオーバーコートされたものである。なお、前記金属薄膜層は、Al層の上にSiO層がオーバーコートされているものであってもよい。ライトガイド52aの上部開口および下部開口には、色ガラスフィルタ52bおよび52cが嵌め込まれている。色ガラスフィルタ52bおよび52cとして、具体的には、五鈴精工硝子社製ITY425(商品名)が採用される。ITY425のカット波長は425nmであり、425nm以下の光をカットし、425nm以上の光を透過する。また、ITY425の厚みは、例えば1.1mmである。なお、ITY425は、厚みが例えば2.2mmのものを1枚のみライトガイド52aの前記上部開口に配置するようにしてもよい。ライトガイド52aは、本開示の技術でいう集光部材の一例に相当する。色ガラスフィルタ52bは、本開示の技術でいう被測定光波長選択フィルタの一例に相当する。また、色ガラスフィルタ52cは、本開示の技術でいう被測定光波長選択フィルタの一例に相当する。ここで、被測定光波長選択フィルタは、特定波長吸収特性を有する光学部品である。被測定光波長選択フィルタの具体例として、色ガラスフィルタ52b,52cのほかに、特定波長吸収フィルム、着色水溶液、着色オイルなどが挙げられる。
受光素子52eは、ライトガイド52aによって集光された蛍光発光または化学発光を受光するための部品である。受光素子52eは、本開示の技術でいう検出素子の一例に相当する。受光素子52eとして、例えば、フォトダイオード(PD)が使用される。PDとしては、具体的には、例えば、浜松ホトニクス社製S1337−1010BR(商品名)が使用される。受光素子52eの具体例として、PD以外に、例えば、アバランシェフォトダイオード、ホトマル、CCD、CMOSが挙げられる。
一例として図1に示すように、載置台53は、分析用具1と生体試料ラック3とを載置するための台である。載置台53は、反応槽11、複数の槽12、および測光ウェル13の上部開口が上向きになるように、分析用具1を保持している。また、載置台53は、マイクロチューブ30の開口部が上向きになるように生体試料ラック3を保持している。
図1に示すように、水平方向駆動部9は、載置台53をZ軸方向と直交するX軸方向(水平方向)に移動させるためのものである。すなわち、水平方向駆動部9は、必要に応じて、分析用具1上の反応槽11、複数の槽12、および測光ウェル13ならびに生体試料ラック3を後述するノズル7に対して水平方向に移動させる。ここで、X軸方向は、横方向を示している。水平方向駆動部9は、リニアステージ9aとX軸モータ9bとを備えている。リニアステージ9aは、送りネジ90と、ガイド部材91と、移動台92とを備えている。移動台92は、X軸方向に延びる送りネジ90およびガイド部材91に係合している。また、移動台92は、載置台53の底面53aと接合し、載置台53を保持する。X軸モータ9bは、分析装置2の筐体(図示略)に固定されており、送りネジ90を回転させることにより、移動台92をガイド部材91に沿ってX軸方向に移動させる。X軸モータ9bは、制御部40に接続され、制御部40によって動作制御される。
図1に示すように、分注部6は、ノズル7、ポンプ70、圧縮バネ73、および昇降駆動部8を備えている。分注部6は、生体試料S、液体L、または測定液L1の吸引、移動、および分注を行うことにより、生体試料ラック3、反応槽11、複数の槽12、および測光ウェル13の間で生体試料S、液体L、または測定液L1の移送を行うためのものである。また、液体Lまたは測定液L1の吸引および吐出を繰り返し行うことにより、液体Lまたは測定液L1の攪拌を行う。
ノズル7は、ノズル本体72とピペットチップ71とを備えている。ピペットチップ71は、ノズル本体72に着脱可能に取り付けられている。ノズル7は、ピペットチップ71のピペットチップ先端部71aに設けられた小孔71bから生体試料S、液体L、または測定液L1を吐出または吸引する。
ピペットチップ71は、使い捨てであり、素材として、例えば、ポリプロプレンが使用される。ピペットチップ先端部71aは、平らであり、その外周形状は、円形状である。ピペットチップ先端部71aは、例えば、直径1.0mmである。小孔71bは、例えば、直径0.5mmである。分注部6は、ピペットチップ先端部71aにより、反応槽11のシール11bおよび複数の槽12のシール12iを穿孔する。ピペットチップ71は、その内部にピペットチップ先端部71aの小孔71bから上方に向かって延び、かつ生体試料S、液体L、または測定液L1を貯留するための液体貯留部71cを有している。また、ピペットチップ71は、液体貯留部71cの上方に、ノズル本体72に取り付けるための取り付け部71dを有している。
ノズル7は、ピペットチップ71を構成要素として採用せず、ノズル本体72だけで構成してもよい。例えば、ノズル本体72のノズル本体先端部72aによって、生体試料Sなどの液体を吸引または吐出するようにし、ノズル本体先端部72aを必要に応じて洗浄する構成とすることもできる。この場合、ノズル本体先端部72aは、先細りの形状とされ、シール11bおよび12iを穿孔可能に構成される。
ノズル本体72は、例えば、ステンレス製である。ノズル本体72は、後述するノズル支持部84によって周囲を囲まれるように保持されている。ノズル支持部84の下方には、圧縮バネ73が、配置されている。圧縮バネ73の上端部は、ノズル支持部84の下端部に当接している。ノズル本体72は、圧縮バネ73の内側を通っており、下端に位置するノズル本体先端部72aにピペットチップ71を装着するためのピペットチップ装着部72bを有している。ピペットチップ装着部72bには、環状凹部が形成されており、Oリング72cが嵌め込まれている。ノズル本体72のピペットチップ装着部72bが、ピペットチップ71の取り付け部71dに差し込まれることにより、両者は嵌合する。一方で、ピペットチップ71の軸方向において、ピペットチップ71に対してノズル本体72からピペットチップ71を離間させる方向に力を加えることにより、ノズル本体72からピペットチップ71を取り外すことができる。
ノズル本体72には、中ほどの位置に第1環状溝部および第2環状溝部(図示略)が形成されている。これらの環状溝部のそれぞれには、第1Eリング72dおよび第2Eリング72eが嵌め込まれている。第1Eリング72dは、第2Eリング72eよりも上方に配置されている。第1Eリング72dと第2Eリング72eとは、ノズル支持部84と圧縮バネ73とを重ねて挟むように配置されている。第2Eリング72eの上面は、圧縮バネ73の下端部に当接している。これにより、圧縮バネ73は、落下しないように保持される。また、第1Eリング72dの下面は、ノズル支持部84の上面に当接している。これにより、ノズル7は、落下することなくノズル支持部84に支持される。ノズル本体72は、中空管状であり、ピペットチップ71と後述するポンプ70とを繋いでいる。
圧縮バネ73は、ピペットチップ71が、何らかの要因で、例えば、生体試料ラック3のマイクロチューブ30、反応槽11、複数の槽12、または測光ウェル13に衝突した場合に、収縮することにより、ノズル7を上方に移動させ、衝撃を吸収するためのものである。
ポンプ70は、生体試料S、液体L、または測定液L1をピペットチップ71に吸引したり、ピペットチップ71から吐出を行うためのものである。ポンプ70は、チューブ74を介して、ノズル本体72の上端部72fと繋がっている。ポンプ70は、制御部40と接続されており、吸引および吐出の動作は、制御部40によって制御される。
昇降駆動部8は、ピペットチップ先端部71aが下方を向いた状態で、ノズル7をZ軸方向に昇降させるためのものである。ここで、Z軸方向は、上下方向を示している。昇降駆動部8は、ノズル本体72を介して、ピペットチップ71を保持している。昇降駆動部8は、ノズル7を往復移動させることにより、ピペットチップ先端部71aをZ軸方向に昇降させる。昇降駆動部8は、リニアステージ8aとZ軸モータ8bとを備えている。リニアステージ8aは、送りネジ80と、Z軸方向に延びるガイド部材81と、移動台82とを備えている。移動台82は、移動台本体83とノズル支持部84とを備えている。移動台本体83は、送りネジ80およびガイド部材81に係合し、かつノズル7をノズル支持部84を介して所定の範囲内で上下動可能に保持する。ノズル支持部84は、接合部85により移動台本体83に接合され、一体化されている。Z軸モータ8bは、分析装置2の筐体(図示略)に固定されており、リニアステージ8aの送りネジ80を回転させることにより、移動台82をガイド部材81に沿ってZ軸方向に往復移動させる。このZ軸モータ8bは、制御部40に接続されており、制御部40によって動作制御される。
一例として図1に示すように、分注部6は、反応槽11のシール11bおよび複数の槽12のシール12iを穿孔する際に、矢印N3で示す穿孔方向(第1の方向)にピペットチップ先端部71aを移動させる。なお、図1において、矢印N3で示す穿孔方向は、例えば、Z軸に沿う方向である。ノズル支持部84はスリーブ状であり、ノズル支持部84の内部をノズル本体72が通っている。上記したように、ノズル支持部84は、ノズル本体72の周囲を取り囲むようにして、ノズル本体72を支持している。ノズル支持部84は、内部において、ノズル本体72との間に隙間84aが生じるように形成されている。
隙間84aを設けることにより、ノズル7は、ノズル支持部84に対して遊びを有する。そのため、ノズル7は、矢印N3で示す穿孔方向に交差する方向(第2の方向)に自由度をもって変位することが可能である。そのため、ピペットチップ先端部71aもまた、この方向に変位することになる。一例として図1に示すように、ノズル7が変位する方向は、穿孔方向に交差する矢印N4で示す方向である。なお、矢印N4は、一方向ではなく、矢印N3で示す穿孔方向に交差するあらゆる方向を示す。
生体試料ラック3のマイクロチューブ30、反応槽11、複数の槽12、または測光ウェル13が、何らかの要因で、矢印N4で示す方向にずれてセットされた場合、ピペットチップ先端部71aは、そのずれを解消する方向(矢印N4で示す方向に沿って、前記ずれと逆方向)にスライド移動する。これにより、ピペットチップ先端部71aと生体試料ラック3のマイクロチューブ30、反応槽11、複数の槽12、または測光ウェル13との衝突を回避することが可能となる。また、これらの部材の破損を回避することができる。
次に、図1、図7および図8を参照して、分析システムASにおいて、分析装置2が、分析用具1の槽間で液体Lおよび測定液L1を移送し、検出部5において測定液L1を測定する動作の一例を説明する。液体Lおよび測定液L1の移送は、図1に示す制御部40による昇降駆動部8および水平方向駆動部9の動作制御に従って実行される。
一例として図8に示すように、先ず、生体試料ラック3が、X軸に沿って移動し、基準位置Bに配置される。ノズル本体72が下降移動し、ピペットチップ71がノズル本体72に装着される。その後、ピペットチップ71は、基準位置Bにおいて、所定の高さに配置される。次に、洗浄緩衝液槽12gが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、洗浄緩衝液槽12gに向けて下降移動し、ポンプ70の駆動により、洗浄緩衝液槽12gから所定量の洗浄緩衝液R7を吸引し、上昇移動する。続いて、反応槽11が、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、下降移動し、反応槽11に洗浄緩衝液R7を吐出する。所定時間経過後、ピペットチップ71は、反応槽11から洗浄緩衝液R7を吸引し、上昇移動する。続いて、廃液槽12hが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、廃液槽12hに向けて下降移動し、洗浄緩衝液R7を廃棄液R8として吐出する。
次に、生体試料希釈液槽12bが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、下降移動し、生体試料希釈液槽12bから生体試料希釈液R2を所定量吸引し、上昇移動する。続いて、生体試料希釈槽12aが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、生体試料希釈槽12aに向けて下降移動し、生体試料希釈液R2を吐出した後、上昇移動する。次に、生体試料ラック3が、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、下降移動し、マイクロチューブ30から所定量の生体試料Sを吸引し、上昇移動する。その後、生体試料希釈槽12aが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、生体試料希釈槽12aに向けて下降移動し、生体試料Sを吐出する。そして、ピペットチップ71は、吸引・吐出(吸排)により、生体試料Sと生体試料希釈液R2とを混和し、混和液R1を調整する。この動作により、生体試料Sは、所定倍率に希釈される。
次に、ピペットチップ71は、生体試料希釈槽12aから混和液R1を所定量吸引する。その後、反応槽11が、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、反応槽11に向けて下降移動して混和液R1を吐出し、上昇移動する。続いて、所定温度で所定時間インキュベートする。これにより、混和液R1中の前記特定成分が、反応槽11に固相化された抗体と結合する。その後、ピペットチップ71は、下降移動し、混和液R1を反応槽11から吸引し、上昇移動する。この後、廃液槽12hが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、下降移動し、混和液R1を廃棄液R8として廃液槽12hに廃棄し、その後、上昇移動する。次に、洗浄緩衝液槽12gが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、洗浄緩衝液槽12gに向けて下降移動し、所定量の洗浄緩衝液R7を吸引し、上昇移動する。続いて、反応槽11が、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、反応槽11に向けて下降移動し、洗浄緩衝液R7を吐出する。その後、ピペットチップ71は、速やかに洗浄緩衝液R7を吸引し、上昇移動する。続いて、廃液槽12hが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、廃液槽12hに向けて下降移動して、洗浄緩衝液R7を廃棄液R8として廃棄する。ピペットチップ71は、この洗浄動作を所定回数繰り返す。
次に、一次抗体液槽12cが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、一次抗体液槽12cに向けて下降移動し、所定量の一次抗体液R3を吸引し、上昇移動する。続いて、反応槽11が、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、反応槽11に向けて下降移動し、一次抗体液R3を吐出する。これにより、一次抗体は、前記固相化抗体11fに捕捉された前記特定成分と結合する。所定時間インキュベート後、ピペットチップ71は、一次抗体液R3を反応槽11から吸引し、上昇移動する。その後、廃液槽12hが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、下降移動して、一次抗体液R3を廃棄液R8として廃液槽12hに廃棄する。次に、洗浄緩衝液槽12gが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、洗浄緩衝液槽12gに向けて下降移動し、所定量の洗浄緩衝液R7を吸引し、上昇移動する。続いて、反応槽11が、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、反応槽11に向けて下降移動し、洗浄緩衝液R7を吐出する。その後、ピペットチップ71は、速やかに洗浄緩衝液R7を吸引し、上昇移動する。続いて、廃液槽12hが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、廃液槽12hに向けて下降移動して、洗浄緩衝液R7を廃棄液R8として廃棄し、上昇移動する。ピペットチップ71は、この洗浄動作を所定回数繰り返す。
次に、二次抗体液槽12dが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、二次抗体液槽12dに向けて下降移動し、所定量の二次抗体液R4を吸引し、上昇移動する。続いて、反応槽11が、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、反応槽11に向けて下降移動し、二次抗体液R4を吐出する。これにより、二次抗体は、前記特定成分に結合した前記一次抗体と結合する。所定時間インキュベート後、ピペットチップ71は、二次抗体液R4を反応槽11から吸引し、上昇移動する。その後、廃液槽12hが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、廃液槽12hに向けて下降移動して、二次抗体液R4を廃棄液R8として廃棄し、上昇移動する。次に、洗浄緩衝液槽12gが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、下降移動し、洗浄緩衝液槽12gから所定量の洗浄緩衝液R7を吸引し、上昇移動する。続いて、反応槽11が、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、反応槽11に向けて下降移動し、洗浄緩衝液R7を吐出する。その後、ピペットチップ71は、速やかに洗浄緩衝液R7を吸引し、上昇移動する。続いて、廃液槽12hが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、廃液槽12hに向けて下降移動して洗浄緩衝液R7を廃棄液R8として廃棄し、上昇移動する。ピペットチップ71は、この洗浄動作を所定回数繰り返す。
次に、酵素基質液槽12eが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、酵素基質液槽12eに向けて下降移動し、所定量の酵素基質液R5を吸引した後、上昇移動する。続いて、反応槽11が、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、反応槽11に向けて下降移動し、酵素基質液R5を吐出する。これにより、二次抗体の標識酵素が、酵素基質液R5中に含まれる酵素基質と反応する。所定時間インキュベート後、反応停止液槽12fが、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、反応停止液槽12fに向けて下降移動し、所定量の反応停止液R6を吸引し、上昇移動する。そして、反応槽11が、基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、反応槽11に向けて下降移動し、反応停止液R6を吐出する。これにより、標識酵素が変性することにより、酵素反応が停止し、測定液L1が生成される。その後、ピペットチップ71は、反応槽11からこの測定液L1を吸引し、上昇移動する。続いて、測光ウェル13が基準位置Bに移動する。ピペットチップ71は、測光ウェル13に向けて下降移動し、測定液L1を測光ウェル13に移送する。
次に、測光ウェル13は、光学系50の位置に移動する。光学系50は、測光ウェル13から出射する被測定光を測定する。
ここで、光学系50により被測定光が測定される場合、測定液L1の濃度が高くなるに従って測定液L1から発せられる蛍光発光及び/又は化学発光等の被測定光の光量が過多状態になることがある。この場合、測定液L1の濃度に対する受光素子52eの出力値の挙動パターンとして、例えば、第1挙動パターンと第2挙動パターンとが考えられる。
第1挙動パターンでは、一例として図18に示すように、測定液L1の濃度が高くなるに従って受光素子52eの出力値が線形的に大きくなり、特定の濃度以上で飽和値(例えば、256)になる。
第2挙動パターンでは、一例として図19に示すように、測定液L1の濃度について“第1濃度<第2濃度”の大小関係が成立している。この場合、第2挙動パターンでは、一例として図19に示すように、第1濃度以下の濃度範囲において、受光素子52eの出力値は、測定液L1の濃度が高くなるに従って第1濃度まで線形的に大きくなる。また、第2挙動パターンでは、受光素子52eの出力値は、第1濃度から第2濃度にかけて指数関数的に徐々に小さくなり、第2濃度で飽和値に達する。そして、第2挙動パターンでは、第2濃度よりも高い濃度範囲において、受光素子52eの出力値は、濃度が高くなるに従って指数関数的に徐々に小さくなる。このように受光素子52eの出力値が指数関数的に徐々に小さくなると、測定液L1から発せられる光についての受光素子52eによる受光量が不足してしまう。
そこで、分析装置2は、受光素子52eの出力値が飽和した場合に、ピペットチップ71により測定液L1の液量を減らし、セル長D1を短くした後に、再度測定を実施する。この結果、第1挙動パターン及び第2挙動パターンは改善される。すなわち、一例として図18の二点鎖線で示すように、第1挙動パターンは、受光素子52eの出力値が特定の濃度で飽和することがなく、かつ、線形性が維持されるように改善される。また、一例として図19の二点鎖線で示すように、第2挙動パターンも、受光素子52eの出力値の線形性が第1濃度を超えた濃度範囲でも維持され、かつ、第2濃度よりも高い濃度範囲においても受光素子52eの出力値が線形的に大きくなるように改善される。
ここで、被測定光の再測定を実現するための具体的な処理として図20に示す測定処理を例に挙げて説明する。
一例として図20に示す測定処理は、CPU100が測定プログラム106(図17参照)に従うことでCPU100によって実行される。
図20に示す測定処理では、ステップ200で、CPU100は、光学系50に対して被測定光の測定を開始させ、その後、ステップ202へ移行する。
ステップ202で、CPU100は、受光素子52eの出力値が“0”を超えているか否かを判定する。ステップ202において、受光素子52eの出力値が“0”を超えている場合は、判定が肯定されて、ステップ204へ移行する。ステップ202において、受光素子52eの出力値が“0”の場合は、判定が否定されて、ステップ206へ移行する。
ステップ204で、CPU100は、受光素子52eの出力値が非飽和状態であるか否かを判定する。ここで、非飽和状態とは、例えば、受光素子52eの出力値(デジタルの出力値)が“256”未満であることを意味する。
ステップ204において、受光素子52eの出力値が非飽和状態である場合は、判定が肯定されて、ステップ206へ移行する。ステップ204において、受光素子52eの出力値が飽和状態である場合は、判定が否定されて、ステップ208へ移行する。
ステップ206で、CPU100は、光学系50が被測定光の測定を終了する条件(以下、「終了条件」と称する)を満足したか否かを判定する。終了条件の具体例としては、CPU100が受光素子52eの出力値として“0”を超える出力値を所定時間(例えば、1秒)以上継続して取得したとの条件が挙げられる。また、終了条件の他の具体例としては、入力部42を介して本測定処理を強制終了させる指示が入力されたとの条件が挙げられる。
ステップ206において、終了条件を満足していない場合は、判定が否定されて、ステップ202へ移行する。ステップ206において、終了条件を満足した場合は、判定が肯定されて、本測定処理を終了する。
ステップ208で、CPU100は、光学系50に対して被測定光の測定を終了させ、その後、ステップ210へ移行する。
ステップ210で、CPU100は、受光素子52eによって被測定光が受光されてから受光素子52eの出力値が飽和状態に至るまでに要した時間に基づいて減量を導出する。ここで、「受光素子52eによって被測定光が受光されてから受光素子52eの出力値が飽和状態に至るまでに要した時間」とは、例えば、ステップ202において判定が肯定されてから現時点までに要した時間を指す。また、ここで、「減量」とは、測定液L1を減らす量を指す。なお、以下では、説明の便宜上、「受光素子52eによって被測定光が受光されてから受光素子52eの出力値が飽和状態に至るまでに要した時間」を、単に「飽和状態に至るまでに要した時間」と称する。
減量は、減量導出用演算式を用いて導出される。減量導出用演算式は、飽和状態に至るまでに要した時間を独立変数とし、減量を従属変数とした演算式である。ここで、従属変数として用いられる減量は、被測定光が再測定された場合に一例として図18又は図19に示す二点差線に示す挙動が実現できる減量として、実機による試験及び/又はコンピュータ・シミュレーションによって予め得られた値である。
なお、ここでは、減量導出用演算式を用いて減量が導出される場合を例示しているが、本開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、飽和状態に至るまでに要した時間と減量とを対応付けた減量導出用テーブルを用いて減量が導出されるようにしてもよい。
また、ここでは、飽和状態に至るまでに要した時間と減量との1対1の関係が減量導出用演算式で規定されている場合を例示したが、本開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、従属変数、第1独立変数、及び第2独立変数を有する減量導出用演算式を用いて減量が導出されるようにしてもよい。ここで、従属変数とは、減量を指す。また、第1独立変数とは、飽和状態に至るまでに要した時間を指す。更に、第2独立変数とは、測定液L1の発光初期、すなわち、測定液L1の反応初期として予め定められた期間内での受光素子52eの出力値の立ち上がりの度合いを指す。なお、飽和状態に至るまでに要した時間と、被測定光の発光初期の出力値の立ち上がりの度合いと、減量とが対応付けられた減量導出用テーブルを用いて減量が導出されるようにしてもよい。
また、飽和状態に至るまでに要した時間を独立変数とせずに、測定液L1の反応初期として予め定められた期間内での受光素子52eの出力値の立ち上がりの度合いを独立変数とし、減量を従属変数として規定された減量導出用演算式を用いて減量が導出されるようにしてもよい。なお、被測定光の発光初期の出力値の立ち上がりの度合いと、減量とが対応付けられた減量導出用テーブルを用いて減量が導出されるようにしてもよい。
次のステップ212で、CPU100は、ステップ210の処理で導出した減量で測定液L1を減らすように分注部6を制御し、その後、ステップ200へ移行する。
使用する酵素基質が蛍光基質(例えば、4−MUP)の場合は、一例として図7に示すように、発光素子51aが、所定の波長(例えば、365nm)の励起光を照射方向N1に沿って上部開口13cから測定液L1に対し直接照射し、受光部52が、底壁部13eの下面13hから受光方向N2に沿って出射する蛍光発光(例えば、450nm)を受光する。使用する基質が化学発光基質の場合は、底壁部13eの下面13hから受光方向N2に沿って出射する化学発光を受光部52によって受光する。受光部52の受光素子52eによって出力されたデータは、図1に示す制御部40に送られる。制御部40は、そのデータに基づいて、分析結果を算出する。
本実施形態によれば、測光ウェル13の測定液収容部13dは、受光素子52eの受光方向N2に対して扁平形状を有している。セル長が短いことで、励起光が蛍光基質を含む測定液L1に吸収され難い。そのため、測定液L1全体に強い励起光が当たることになる。また、セル長が短いことで、測定液L1の最上部から受光素子52eへの視野角がより大きくなる。これにより、集光効率が改善され、生体試料S中の特定成分を高い精度で分析することが可能となる。また、セル長を短くできることで、試薬量を抑えることができる。これにより、分析用具1の製造コストの削減を図ることができる。
分析用具1は、生体試料Sに含まれる特定成分に対する抗体または抗原が固相化され、かつ測定液L1を生成するための反応槽11を備えている。これにより、分析用具1は、生体試料S中の特定成分を高精度に分析することができる。
分析用具1においては、被測定光が蛍光発光である場合、前記蛍光発光を発生させるための励起光は、上部開口13cから測定液L1に対して直接照射される。そのため、測定液L1に対し、強い励起光を当てることができる。これにより、集光効率が改善され、生体試料S中の特定成分を高い精度で分析することが可能となる。
分析装置2は、被測定光波長選択フィルタまたは励起光波長選択フィルタとして色ガラスフィルタ51b,52b,52cを備える。色ガラスフィルタ51b,52b,52cを使用することで、被測定光のシグナルを大きくすることができる。これにより、集光効率が改善され、生体試料S中の特定成分を高い精度で分析することが可能となる。
分析装置2の検出部5は、中空で、かつ内壁面に金属薄膜層を有するライトガイドを備える。そのため、被測定光のシグナルを大きくすることができる。これにより、集光効率が改善され、生体試料S中の特定成分を高い精度で分析することが可能となる。
なお、上記第1の実施形態では、図20に示す測定処理が実行されることによってステップ210の処理で測定液L1の減量が導出される場合について説明したが、これはあくまでも一例である。例えば、図21に示す測定処理がCPU100によって実行されるようにしてもよい。
一例として図17に示すように、ROM104には測定プログラム108が記憶されており、CPU100がROM104から測定プログラム108を読み出し、読み出した測定プログラム108に従うことでCPU100によって図21に示す測定処理が実行される。なお、図21に示す測定処理は、図20に示す測定処理に比べ、ステップ210及びステップ212に代えてステップ300を有する点が異なる。そこで、図21に示す測定処理については、図20に示す測定処理と異なる部分についてのみ説明する。
図21に示す測定処理では、ステップ300で、CPU100は、測定液L1を所定量だけ減らし、その後、ステップ200へ移行する。ここで、所定量とは、例えば、現時点での測定液L1の液量の5%に相当する液量を指す。よって、本ステップ300の処理が1回実行されることで測定液L1が減らされたとしても再び受光素子52eの出力値が飽和状態に達すると、本ステップ300の処理が再び実行されることとなる。
また、上記では測定プログラム106、108(以下、符号を付さずに「測定プログラム」と称する)をROM104から読み出す場合を例示したが、必ずしも最初からROM104に記憶させておく必要はない。例えば、図22に示すように、SSD(Solid State Drive)USB(Universal Serial Bus)メモリ、又はCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの任意の可搬型の記憶媒体400に先ずは測定プログラムを記憶させておいてもよい。この場合、記憶媒体400の測定プログラムが分析装置2にインストールされ、インストールされた測定プログラムがCPU100によって実行される。
また、通信網(図示省略)を介して分析装置2に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶部に測定プログラムを記憶させておき、測定プログラムが分析装置2の要求に応じてダウンロードされるようにしてもよい。この場合、ダウンロードされた測定プログラムがCPU100によって実行される。
また、上記で説明した測定処理(図20及び図21参照)はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。また、測定処理に含まれる各処理は、FPGA(Field−Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア構成のみで実現されてもよいし、コンピュータを利用したソフトウェア構成とハードウェア構成との組み合わせで実現されてもよい。
<第2の実施形態>
次に、図9A、図9B、図10A、および図10Bを参照して、本開示の技術の第2の実施形態に係る分析用具1Aを説明する。分析用具1Aにおいて、第1の実施形態の分析用具1の構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素には、同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。なお、分析用具1Aは、分析装置2Aおよび分析システムAS1に適用される。分析装置2Aおよび分析システムAS1において、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態の分析装置2および分析システムASと実質的に同一であり、その詳細な説明を省略する。
一例として図9Aおよび図9Bに示すように、分析用具1Aは、上部基板10A、固相化プレート15、および接着層14を備えている。上部基板10Aは、本開示の技術でいう第1基板の一例に相当する。上部基板10Aは、例えば、ポリプロピレン製射出成形品であり、分析用具1と同様、複数の槽12が装着、または一体的に成形されている。上部基板10Aの上面10Aaには、筒状突起17が設けられている。筒状突起17は、側壁部17aおよび第1開口部17bを備えている。側壁部17aの上端部17cには、第1開口部17bを塞ぐためのシール17dが貼り付けられている。第1開口部17bは、ピペットチップ71が挿入される部位である。ピペットチップ71が挿入される際、シール17dは、ピペットチップ先端部71aによって破断される。
上部基板10Aの上面10Aaには、更に、筒状突起18が設けられている。筒状突起18は、側壁部18aおよび第2開口部18bを備えている。側壁部18aの上端部18cには、第2開口部18bを塞ぐためのシール18dが貼り付けられている。第2開口部18bは、後述する吸排ノズル19が挿入される部位である。側壁部18aの内面18eの一部は、下方に向けて湾曲した形状に形成されている。
固相化プレート15は、固相化抗体14cおよび測光ウェル13Aを備えている。固相化プレート15は、例えば、ポリスチレン製射出成形品である。なお、ポリスチレン製固相化プレート15の材料として、自家蛍光の発光強度が低いグレードのGPPSが採用される。成形材料として、具体的には、例えば、PSジャパン社製のHF77、HH102、またはSGP10(商品名)が好ましい。なお、固相化プレート15は、本開示の技術でいう第2基板の一例に相当する。
固相化プレート15の材質には、ポリスチレン(PS)だけではなく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ乳酸(PLA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリプロピレン(PP)等の透明または半透明樹脂を用いてもよい。抗体を物理吸着しにくい材質の場合には、例えば、真空紫外線(VUV)処理、プラズマ処理、または化学処理を施した上でカルボキシル基やアミノ基を表面に導入する。これらの官能基との共有結合により抗原または抗体の固相化を行う。また、例えば、自己組織化単分子膜(SAM)をコーティングし、抗体を固相化してもよい。
測光ウェル13Aは、固相化プレート15上に一体成形により形成されている。測光ウェル13Aは、ウェル本体13Abを備えている。ウェル本体13Abは、上部開口13Acおよび測定液収容部13Adを備えている。上部開口13Acは、本開示の技術でいう開口部の一例に相当する。上部開口13Acの上方には、上部基板10Aおよび接着層14にそれぞれ設けられた開口10Abおよび14bが重なるように設けられており、上部基板10Aの開口10Aaからピペットチップ71が挿入される。測定液収容部13Adの形状は、第1の実施形態の分析用具1における測光ウェル13の測定液収容部13dと同様に形成されている。測定液L1は、ウェル本体13Abの測定液収容部13Adに収容される。測定液収容部13Adは、側壁部13Afおよび底壁部13Aeに囲まれて形成されている。測光ウェル13Aの側壁部13Afおよび底壁部13Ae(励起光が当たる箇所)の肉厚は、1.0mm以下に形成される。部分的に肉厚0.5mmの部位を作るなどして散乱光や自家蛍光の発生を可能な限り抑制することが好ましい。
図9Bに示すように、測定液収容部13Adの形状は、受光方向N2に対して扁平形状とされる。測光ウェル13Aにおいては、測定液収容部13Adの形状は、例えば、ウェル本体13Abに分注された測定液L1の高さ(深さ)とウェル本体13Abの内径とによって規定される。測定液収容部13Adの高さ(深さ)が、測光ウェル13Aのセル長D1である。具体的には、前記扁平形状の断面の短手方向における、測定液収容部13Adに分注された測定液L1の高さ(深さ)が、測光ウェル13Aのセル長D1を規定する。また、ウェル本体13Abの内径は、測定液収容部13Adの直径D2である。ここで、ウェル本体13Abおよび測光ウェル13Aの形状は、測定液収容部13Adの形状に合わせて、全体として扁平形状としてもよい。この場合、底壁部13Aeの下面13hは、扁平面である。この扁平面は水平面に限らず、緩い凹凸面や曲面であってもよい。なお、下面13hは、本開示の技術でいう出射部の一例に相当する。
測光ウェル13Aのセル長D1は、例えば、3.0mm以下、1.5mm〜3.0mm、1.9mm〜2.5mm、2.5mm、2.0mm、1.5mm〜2.0mm、1.9mm〜2.0mm、2.0mm〜2.5mm、2.0mm〜3.0mm、または2.0mm以下である。測定液収容部13Adの直径D2は、例えば、8.0mm以下、11.3mm〜8.0mm、10.0mm〜8.8mm、9.8mm、10.0mm、10.0mm〜9.8mm、9.8mm〜8.8mm、10.0mm〜9.8mm、9.8mm〜8.8mm、または3.0mm〜5.0mmである。150uLの測定液L1を測光ウェル13Aに分注したときの測定液収容部13Adの形状は、例えば、φ9.8×2.0mmとする。この場合、測光ウェル13Aの形状は、φ9.8以上、および高さ(深さ)2mm以上となる。
分析用具1Aは、測定液収容部13Adに分注された測定液L1の液量を変更することにより、セル長D1を変更できるように構成してもよい。分析用具1Aをこのような構成にすれば、後述する分析装置2Aは、受光素子52eの出力値が飽和した場合に、測定液L1の液量を減らし、セル長D1を短くした後に、再度測定を実施するように構成される。
接着層14は、上部基板10Aと固相化プレート15とを接着するための部材である。接着層14は、例えば、両面テープを用いて形成されており、反応流路14aを備えている。反応流路14aは、接着層14を打ち抜くことにより形成されている。反応流路14aは、筒状突起17の内部17eと筒状突起18の内部18fとを繋いでいる。反応流路14aの内部で、抗原抗体反応および酵素反応が行われる。また、反応流路14aの内部で、液体Lおよび測定液L1が、後述する吸排ノズル19によって往復送液される。反応流路14aのサイズは、直方体近似して、例えば、長さ30mm×幅5mm×高さ(深さ)0.15mmに設定されている。この場合は、反応流路14aの流路容積は、22.5μLとなる。固相化抗体14cの固相化面積は、例えば、150mm2である。生体試料Sと固相化抗体14cとの反応性、標識酵素の反応性、および蛍光発光強度を考慮し、例えば、反応流路14aで往復送液する液量は200μLであり、酵素反応後に測光ウェル13Aに移送する測定液L1の量は150μLと設定される。接着層14は、黒色に着色されている。接着層14によって、固相化プレート15に一体形成された測光ウェル13Aの形状に沿った周囲をマスクすることによって、測光ウェル13Aに照射される励起光を遮光する。
一例として図10Aに示すように、分析システムAS1を構成する分析装置2Aは、分注部6Aを備えている。分注部6Aは、吸排ノズル19および切替え弁75を有している。切替え弁75は、ポンプ70の連結をノズル7と吸排ノズル19の空気孔19bとの間で切替える。吸排ノズル19は、第2開口部18bにO−リング19aを介して嵌め込まれる。吸排ノズル19は、分析用具1Aの内部と外部とを繋ぐ空気孔19bを有している。ポンプ70は、例えば、シリンジポンプである。制御部40は、ピペットチップ71に液体Lを筒状突起17の内部17eに分注させた後、吸排ノズル19に切り替えて、矢印で示す空気の吸排により反応流路14a内において液体Lの往復送液を行わせる。なお、液体Lの往復送液は、ピペットチップ71による液体Lの吸排と吸排ノズル19による空気の吸排とを組み合わせて行ってもよい。液体Lを順次交換して最終的に得られた測定液L1は、ピペットチップ71により測光ウェル13Aに移送される。
一例として図10Bに示すように、第1の実施形態と同様にして、検出部5により測定液L1の測定が行われる。第1の実施形態と同様、受光部52の受光素子52eによって出力されたデータは制御部40に送られる。制御部40は、そのデータに基づいて分析結果を算出する。
本実施形態によれば、測光ウェル13Aの測定液収容部13Adは、受光素子52eの受光方向に対して扁平形状を有している。これにより、第1の実施形態と同様の効果を有することができる。
分析用具1Aの反応流路14aは、生体試料Sに含まれる特定成分に対する抗体または抗原が固相化され、測定液L1を生成する。これにより、分析用具1Aは、生体試料S中の特定成分を高精度に分析することができる。
分析装置2Aは、反応流路14a中の液体Lや測定液L1を、吸排ノズル19により往復送液するように構成されている。これにより、測定反応の均一化や洗浄能力の向上を図ることができ、生体試料S中の特定成分を高精度に分析することができる。この他、分析装置2Aは、第1の実施形態と同様の効果を有することができる。
<第3の実施形態>
次に、図11を参照して、本開示の技術の第3の実施形態に係る分析用具1Bを説明する。分析用具1Bにおいて、第2の実施形態の分析用具1Aの構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素には、同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。なお、分析用具1Bは、分析装置2B、および分析システムAS2に適用される。分析装置2Bおよび分析システムAS2において、以下に説明する以外の構成は、第2の実施形態の分析装置2Aおよび分析システムAS1と実質的に同一であり、その詳細な説明を省略する。
分析用具1Bは、プレート15Bを備えている点で分析用具1Aと異なっている。プレート15Bは、本開示の技術でいう第2基板の一例に相当する。プレート15Bには、測光ウェル13Aが、一体成形により形成されている。分析用具1Bにおいて、プレート15Bには、抗体が直接固相化されておらず、反応流路14a内のプレート15B上に、固相化磁性粒子14Bcが配置されている。分析装置2Bには、分析用具1Bの下方に磁石530が設置されている。磁石530は、測定液L1を測光ウェル13Aに移送する際に、磁力によって固相化磁性粒子14Bcを反応流路14a内に留め、測光ウェル13Aに固相化磁性粒子14Bcを移送しないようにするためのものである。なお、磁石530の具体例として、例えば、電磁石または永久磁石が挙げられる。なお、固相化磁性粒子14Bcを当初から配置するのではなく、抗体感作磁性ビーズ溶液を別試薬として準備してもよい。
分析用具1Bは、固相化磁性粒子14Bcを反応流路14a内に有している。固相化磁性粒子14Bcを使用することにより、分析用具1Bは、バイオセパレーションを迅速かつ簡便に行える。これにより、操作の自動化をより容易に行うことができる。この他、本実施形態の分析用具1Bおよび分析装置2Bは、第2の実施形態と同様の効果を有することができる。
<第4の実施形態>
次に、図12Aおよび図12Bを参照して、本開示の技術の第4の実施形態に係る分析用具1Cを説明する。分析用具1Cにおいて、第2の実施形態の分析用具1Aの構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素には、同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。なお、分析用具1Cは、分析装置2C、および分析システムAS3に適用される。分析装置2Cおよび分析システムAS3において、以下に説明する以外の構成は、第2の実施形態の分析装置2Aおよび分析システムAS1と実質的に同一であり、その詳細な説明を省略する。
一例として図12Aに示すように、分析用具1Cは、上部基板10C、接着層14C、固相化プレート15C、および測光ウェル14Caを備えている点で分析用具1Aと異なっている。また、分析用具1Cは、固相化プレート15Cに測光ウェルを有しない点で、また、上部基板10Cおよび接着層14Cに開口を有していない点で分析用具1Aと異なっている。
上部基板10Cは、測光ウェル14Caの上壁部を形成している。一例として図12Bに示すように、光源部51は、測定液L1に対し、矢印N1で示す照射方向に励起光を照射する。よって、上部基板10Cは、励起光を透過させる材料を使用して形成される。上部基板10Cの材料として、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ乳酸(PLA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、またはポリプロピレン(PP)等の透明または半透明樹脂が挙げられる。なお、上部基板10Cは、本開示の技術でいう第1基板の一例に相当する。
一例として図12Aに示すように、固相化プレート15Cには、生体試料S中の特定成分に対する抗体が、固相化抗体14cとして固相化されている。固相化プレート15Cの材料として、分析用具1Aの固相化プレート15と同様の材料が挙げられる。また、前記特定成分に対する抗体の固相化は、分析用具1Aの固相化プレート15と同様に行われる。固相化プレート15Cは、本開示の技術でいう第2基板の一例に相当する。
接着層14Cは、上部基板10Cと固相化プレート15Cとを接着するための部材である。接着層14Cは、例えば、両面テープを用いて形成されている。接着層14Cは、黒色に着色されている。
測光ウェル14Caは、接着層14Cを打ち抜き、打ち抜き部分を上部基板10Cと固相化プレート15Cとにより挟むことにより形成される。測光ウェル14Caは、筒状突起17の内部17eと筒状突起18の内部18fとを繋いでいる。分析用具1Cにおいては、測光ウェル14Caの内部で、抗原抗体反応および酵素反応が行われる。測光ウェル14Caのサイズは、直方体近似して、例えば、長さ30mm×幅5mm×高さ(深さ)0.15mmに設定される。この場合、測光ウェル14Caの流路容積は、22.5μLである。固相化抗体14cの固相化面積は、例えば、150mm2である。生体試料Sと固相化抗体14cとの反応性、標識酵素の反応性、および蛍光発光強度を考慮すれば、測光ウェル14Caで往復送液する液量は、例えば、200μLが適切である。
一例として図12Bに示すように、測光ウェル14Caは、受光素子52eの受光方向N2に対して扁平に形成されている。測光ウェル14Caにおいては、接着層14Cの厚みがセル長D1となる。セル長D1は、例えば、3.0mm以下、1.5mm〜3.0mm、1.9mm〜2.5mm、2.5mm、2.0mm、1.5mm〜2.0mm、1.9mm〜2.0mm、2.0mm〜2.5mm、2.0mm〜3.0mm、または2.0mm以下に設定される。
分析用具1Cにおいて、測光ウェル14Ca中の液体Lまたは測定液L1は、分析用具1Aの反応流路14aと同様にして、吸排ノズル19による往復送液により攪拌される。第2開口部18bは、吸排ノズル19が挿入される部位である。空気の吸排により測光ウェル14Ca内において液体Lまたは測定液L1の往復送液が行われる。なお、液体Lまたは測定液L1の往復送液は、ピペットチップ71による液体Lまたは測定液L1の吸排と吸排ノズル19による空気の吸排とを組み合わせて行ってもよい。第2開口部18bは、本開示の技術でいう送液用開口部の一例に相当する。
測光ウェル14Ca中の測定液L1は、一例として図12Bに示すように、分析装置2Cの検出部5Cによって行われる。検出部5Cは、アパーチャ51fを備えている点で、分析装置2Aと相違している。発光素子51aから出射された励起光は、測光ウェル14Ca中の測定液L1に対し、照射方向N1に沿って照射される。励起光により励起された測定液L1中の蛍光物質から発せられる蛍光発光は、測定液L1から受光方向N2に沿って出射され、受光素子52eによって受光される。蛍光発光は、本開示の技術でいう被測定光の一例に相当する。被測定光は、化学発光であってもよい。この場合は、励起光の照射は必要ない。なお、被測定光は、固相化プレート15Cの下面15Chから出射する。下面15Chは、本開示の技術でいう出射部の一例に相当する。
分析用具1Cは、測光ウェル14Caにおいて、往復送液と測定液L1の測定の両方ができるように構成されている。そのため、分析用具1Cは、構造の簡易化を図ることができる。これにより、分析用具1Cは、小型化、製造コストの削減を図ることができる。この他、分析用具1Cおよび分析装置2Cは、第2の実施形態と同様の効果を有することができる。
<第5の実施形態>
次に、図13を参照して、本開示の技術の第5の実施形態に係る分析用具1Dを説明する。分析用具1Dにおいて、第4の実施形態の分析用具1Cの構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素には、同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。なお、分析用具1Dは、分析装置2D、および分析システムAS4に適用される。分析装置2Dおよび分析システムAS4において、以下に説明する以外の構成は、第4の実施形態の分析装置2Cおよび分析システムAS3と実質的に同一であり、その詳細な説明を省略する。
分析用具1Dは、プレート15D、測光ウェル14Da、および固相化磁性粒子14Dcを備えている点で分析用具1Cと異なっている。プレート15Dは、本開示の技術でいう第1基板の一例に相当する。分析用具1Dにおいて、プレート15Dには、抗体が直接固相化されていない。測光ウェル14Da中のプレート15D上に、固相化磁性粒子14Dcが配置されている。なお、測光ウェル14Da内のプレート15D上に固相化磁性粒子14Dcを当初から配置するのではなく、抗体感作磁性粒子溶液を別試薬として準備してもよい。
分析装置2Dにおいて、分析用具1Dの下方に磁石530が設置されている。磁石530は、液体Lおよび測定液L1を移送したり往復送液する際に、磁力によって固相化磁性粒子14Dcを測光ウェル14Da内に留めるためのものである。なお、磁石530は、具体的には、例えば、電磁石または永久磁石である。
分析用具1Dの測光ウェル14Da内における液体Lや測定液L1の移送や往復送液は、分析用具1Cと同様に、分析装置2Dにより行われる。また、分析用具1Dの測定液L1から発せられる蛍光発光の測定は、分析用具1Cと同様に、分析装置2Dにより行われる。蛍光発光は、本開示の技術でいう被測定光の一例に相当する。被測定光は、化学発光であってもよい。この場合は、励起光の照射は必要ない。なお、被測定光は、プレート15Dの下面15Dhから出射する。下面15Dhは、本開示の技術でいう出射部の一例に相当する。
分析用具1Dは、固相化磁性粒子14Dcを測光ウェル14Da内に有している。固相化磁性粒子14Dcを使用することにより、分析用具1Dは、バイオセパレーションを迅速かつ簡便に行える。これにより、操作の自動化をより容易に行うことができる。この他、本実施形態の分析用具1Dおよび分析装置2Dは、第4の実施形態と同様の効果を有することができる。
本開示の技術は、上述した実施の形態の内容に限定されない。本開示の技術に係る分析用具、分析装置の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
上記したように、本開示の技術においては、蛍光測定だけではなく、化学発光測定に適用することも可能である。この場合、分析装置2,2A,2B,2C,2Dにおいて、測定液L1に対し励起光を照射する必要はない。
第1〜第5の実施形態において、分析装置2,2A,2B,2C,2Dの測光方式は、TOP−BOTTOM測光である。しかし、本開示の技術においては、測光方式をBOTTOM−TOP測光にすることも可能である。このような構成によれば、測光ウェルの材料の合成樹脂によって蛍光発光や化学発光などの被測定光の減衰が生じないという技術的効果が得られる。
第1〜第5の実施形態において、被測定光が蛍光発光である場合に、励起光の照射方向が、蛍光発光の受光方向と一致する例について説明した。励起光の照射方向はこれに限らず、励起光は、測光ウェル13,13A,14Ca,14Daの前記出射部を除く方向から測定液L1に対して照射されるようにしてもよい。具体的には、例えば、励起光を受光方向と交差する方向から測定液L1に対して照射する構成としてもよい。さらに具体的には、励起光を受光方向と直交する方向から測定液L1に照射する構成としてもよい。
第1〜第5の実施形態において、反応槽11の内面11e、固相化プレート15,15C、および固相化磁性粒子14Bc,14Dcは、抗体を固相化するものとして説明した。しかし、例えば、分析用具1,1A,1B,1C,1Dが生体試料S中の特定成分として抗体を分析するものである場合は、プレートまたは磁性粒子に前記抗体に対する抗原を固相化する構成とすることもできる。
第2〜第5の実施形態においては、分析システムAS1,AS2,AS3,AS4は、固相化プレートと固相化磁性粒子を使い分け、どちらも測定できる構成とすることができる。例えば、複数の測定チャンネルを備える分析システムの場合、特定の測定チャンネルのみ固相化磁性粒子に対応できるようにしておけば分析装置のコストアップが抑制可能となる。
本開示の技術において、測光ウェルを、例えば、幅2.0mm×長さ9.0mm×高さ(深さ)9.0mmとし縦型の形状にした場合に、励起光に対して90°の角度を持たせて被測定光を検出する方法も可能である。この場合にも、被測定光は、扁平面を出射部として出射する。
第1〜第5の実施形態においては、分析装置AS,AS1,AS2,AS3,AS4は、ライトガイド52aを備えている。しかし、本開示の技術においては、ライトガイド52aを省く構成とすることができる。このような構成によれば、構成部品を削減をすることができるので、分析装置の製造コストの削減を図ることができる。
以下、実施例に基づいて第1〜第5の実施形態の効果を具体的に説明する。なお、本開示の技術はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
第1の実施形態において、測光ウェル13の直径D2を11.3mm、10.0mm、9.8mm、8.8mm、8.0mmとし、対応するセル長D1をそれぞれ1.5mm、1.9mm、2.0mm、2.5mm、3.0mmとしたときの蛍光取得率を測定した結果を表1および図14に示す。蛍光物質として0.6mMの4−MU(標識酵素APの蛍光基質4−MUPの分解物質)を含む溶液を使用した。分注量は、150μLとした。励起光の中心波長を365nm、検出波長を450nmとした。
表1および図14から明らかなように、直径D2が大きく、セル長D1が短いほど蛍光取得率が大きかった。これにより、測光ウェル13に分注された測定液L1の形状は、受光方向に対して扁平であることが好ましく、セル長D1を3.0mm以下とすることが適切であることが明らかとなった。特に、測定液L1が入る部分の形状をφ9.8×2mmとすることが好ましい。このことは、第2〜第5の実施形態の分析用具1A,1B,1C,1Dにも当てはまる。
[実施例2]
第1の実施形態において、測光ウェル13に分注された測定液L1の形状を受光方向N2に対して扁平にした場合に、蛍光基質が過剰時にプロゾーン現象が生じるか否かの確認を行った。測定液L1として、4−MU希釈液を使用した。4−MU希釈液の濃度は、0.4、4、40、400、4000μMとした。分注量は、150μLとした。励起光の波長を365nm、検出波長を450nmとして測定を行った。測光ウェル13に分注された4−MU希釈液の形状は、直径(D2)9.8mm×セル長(D1)2.0mmの扁平円盤型とした。なお、条件1は、受光部におけるAD出力の帰還抵抗を47MΩとした場合である。また、条件2は、受光部におけるAD出力の帰還抵抗を4.7MΩとした場合である。
図15に示すように、条件1および2ともに4−MU濃度が4000μMに至っても、出力電圧値は、約4600mVで飽和したままであった。よって、測光ウェル13では、4−MUの現実的な濃度範囲内において、プロゾーン現象による低値化(偽陰性)が生じないことが明らかになった。これは、測光ウェル13を扁平形状とした結果、セル長D1が十分短くなっているため、励起光の吸光損失が生じにくいからである。このことは、第2〜第5の実施形態の分析用具1A,1B,1C,1Dにも当てはまる。
[実施例3]
第1の実施形態において、測光ウェル13に分注された測定液L1の形状を受光方向に対して扁平にした場合に、セル長D1とダイナミックレンジ上限との関係を確認した。測定液L1として、4−MU希釈液を使用した。測光ウェル13の内径を9.8mmとし、4−MU希釈液の分注量を150uL、100uL、75uLの3通りとした。これらの場合、測光ウェル13に分注した時のセル長D1は、それぞれ、2.0mm、1.33mm、1.0mmとなる。各分注量について、4−MU希釈液の濃度は、0、4、40、400、4000、40000nMとした。各濃度におけるAD出力電圧値[mV]の平均値から求めた線形近似式の傾き(a’)、y切片(b’)、およびADの最大出力値4500mVを用い、下の数式Iによってセル長D1におけるダイナミックレンジ上限(HL)を求めた。
図16にセル長とダイナミックレンジ上限との関係を示す。セル長D1を2.0mmから1.0mmに変更にした場合、ダイナミックレンジが、約1.8倍拡大した。これにより、セル長を短くすることによってダイナミックレンジ上限を引き上げることができることが明らかとなった。上記実施例3の結果から明らかなように、測光ウェル13では、プロゾーン現象による低値化(偽陰性)が生じないため、ADの出力値が飽和することは、ダイナミックレンジ上限を超えた高濃度値であることが保障される。そのため、通常測定時はセル長D1を2.0mmとし、ADの出力値が飽和した場合に、装置が自動的に判断し、ノズル7を用いて測光ウェル13から測定液L1の一部を吸引除去し、予め規定されたセル長D1に変更して再測定し、定量することが可能であることが明らかとなった。このことは、第2〜第3の実施形態の分析用具1A,1Bにも当てはまる。
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