以下、この発明に係る回転電機の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。なお、各図間の図示では、対応する各構成部のサイズおよび縮尺は、それぞれ独立している。また、この発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
実施の形態1.
図1は、この実施の形態1に係る回転電機を示す斜視図、図2は、この実施の形態1に係る回転電機を示す片側断面図、図3は、この実施の形態1に係る回転電機におけるパワーモジュールをヒートシンクに取り付けた状態を示す斜視図、図4は、この実施の形態1に係る回転電機におけるパワーモジュールをヒートシンクに取り付けた状態を示す側面図、図5は、この実施の形態1に係る回転電機における制御部を取り除いた状態の電力供給ユニットを示す平面図、図6は、この実施の形態1に係る回転電機の電力供給ユニットにおけるパワーモジュールの配置を説明する平面図である。なお、図5および図6は、カバーおよび制御部を取り外した状態を図1のA方向から見た平面図である。また、説明の便宜上、回転子の回転軸の軸心と平行な方向を軸方向とし、回転軸の半径方向を径方向とし、回転軸の軸心を中心とする回転方向を周方向とする。また、電動機のフロント側を軸方向の第1方向とし、リヤ側を軸方向の第2方向とする。
図1および図2において、回転電機は、電動機200と、電動機200に電力を供給する電力供給ユニット300と、を備える。電動機200と電力供給ユニット300とは、電動機200を軸方向の第1方向に位置させて軸方向に並んで配置されている。
電動機200は、鉄などの金属材料で作製されたフロントブラケット1およびリヤブラケット2を有するハウジングと、固定子鉄心31および固定子巻線32を有する固定子3と、回転軸4、界磁巻線5および回転子鉄心6を有する回転子7と、を備えている。
フロントブラケット1とリヤブラケット2とは、固定子鉄心31を軸方向から挟んで配置され、締結ボルト8により締め付けられて一体に構成されている。これにより、固定子3は、固定子鉄心31をフロントブラケット1とリヤブラケット2とにより加圧状態に挟まれて、ハウジングに保持されている。
界磁巻線5は、回転子鉄心6に装着されている。回転子鉄心6は、軸心位置に挿入された回転軸4に固定されている。回転軸4は、フロントブラケット1およびリヤブラケット2の軸心位置に設けられた軸受71,72に回転可能に支持されている。これにより、回転子7は、固定子3の径方向の内方に、かつ固定子3と同軸に、ハウジング内に配置されている。
回転子鉄心6の軸方向の第1方向の端部には、冷却ファン81が固定されている。回転子鉄心6の軸方向の第2方向の端部には、冷却ファン82が固定されている。フロントブラケット1から軸方向の第1方向に突出する回転子7の端部には、プーリー9が固定されている。プーリー9は、図示されていないが、ベルトを介してエンジンの回転軸に連結されて、回転エネルギーをエンジンに伝達する。回転軸4のリヤブラケット2から軸方向の第2方向に突出する回転軸4の端部には、図示されていないが、ブラシ、ブラシを保持するブラシホルダおよび回転センサが配置されている。回転センサには、ホール素子、レゾルバ、磁気センサ、電磁誘導方式センサなどが用いられる。なお、電動機200の軸方向の第1方向が負荷側となり、軸方向の第2方向が反負荷側となる。
回転子鉄心6と軸方向に相対するフロントブラケット1の面には、フロントブラケット用吸気口11が設けられている。冷却ファン81の径方向の外方に位置するフロントブラケット1の側面には、フロントブラケット用排気口12が設けられている。一方、回転子鉄心6と軸方向に相対するリヤブラケット2の面には、リヤブラケット用吸気口21が設けられている。冷却ファン82の径方向の外方に位置するリヤブラケット2の側面には、リヤブラケット用排気口22が設けられている。リヤブラケット2の軸心位置には、リヤベアリング格納空間23が設けられている。リヤブラケット用吸気口21は、リヤブラケット用排気口22とリヤベアリング格納空間23との間のリヤブラケット2の径方向領域内に形成される。
電力供給ユニット300は、後述するパワーモジュール160と、パワーモジュール160で発生した熱を放熱するヒートシンク110と、パワーモジュール160の動作を制御する制御部104と、カバー101と、を備える。
カバー101は、周壁部101aと底部101bとを有する椀状に形成され、電動機200のリヤブラケット2に取り付けられて、電力供給ユニット300の外殻を構成する。カバー101内には、パワーモジュール160、ヒートシンク110、制御部104に加えて、ブラシホルダおよび回転センサが収納されている。カバー101には、外部のバッテリに接続される正極側バッテリ端子151および負極側バッテリ端子152、さらに外部のECU(Electronic Central Unit)などの外部部品に接続される制御用コネクタ153が設けられている。
カバー101が金属で作製された場合には、外部から電力供給ユニット300内に入るノイズを反射、あるいは吸収して電力供給ユニット300への影響を軽減できる。また、電力供給ユニット300から出るノイズを反射、あるいは吸収して、周辺機器への影響を軽減できる。さらに、カバー101の放射率を低くすることで、周囲の熱源からの受熱を低減し、電力供給ユニット300の温度上昇を抑制できる。カバー101の強度が高められるので、電力供給ユニット300に外力が加わったときに変形しにくくなり、変形による故障を防ぐことができる。
ここで、カバー101は、金属に限定されず、樹脂、セラミックなどで作製されてもよい。また、カバー101は、金属をインサート成形、あるいはアウトサート成形した樹脂成型品、金属および樹脂の2つ以上の材料からなる複合材料などで構成してもよい。また、カバー101は、リヤブラケット2ではなく、底部101bを電動機200と相対させて、電力供給ユニット300を構成する部品に取り付けられてもよい。
制御部104は、プリント基板、セラミック基板、金属基板などの材料で構成されており、制御回路を構成する部品が搭載された制御基板103と、制御基板103が収納されるケース102と、を備える。制御部104は、制御基板103の部品実装面が軸方向と直交し、かつケース102を電動機200に向けて、カバー101内の軸方向の第2方向に収納されている。制御基板103は、ねじ、熱加締め、リベット、接着などの固定手段でケース102に固定されているが、製品の使用上で壊れなければ、固定手段はこれらの手段に限定されない。また、ケース102に対する制御基板103の固定点の数は、振動条件、製品形状に合わせて最適化される。
ケース102には、図示していないが、パワーモジュール160、回転センサなどと制御基板103とを接続するための開口部が設けられている。回転軸4の軸方向の第2方向の端部が、制御基板103に実装されている部品よりも軸方向の第1方向に位置している。そこで、回転軸4の軸方向の第2方向の端部とのぶつかりを回避するための開口部を制御基板103に設ける必要がなくなる。これにより、電動機200を軸方向から制御基板103に投影した時の投影面積内のほとんどの領域に部品を配置できる。そこで、制御基板103の投影面積内の部品を配置できない無駄な面積が少なくなり、制御部104の小型化、低コスト化が可能となる。
なお、電動機200を軸方向から制御基板103に投影した時の投影面積内の回転軸4と相対する領域を除く面積に部品が配置可能な場合には、回転軸4が貫通するようにケース102および制御基板103を構成してもよい。制御基板103は、円形の外形に形成されているが、カバー101内に収まれば外形は円形に限定されない。制御基板103は、1枚の基板で構成されてもよく、2枚以上の基板により構成されてもよい。さらに、制御基板103は、1種類の材料で構成されてもよく、複数の材料で構成されてもよい。また、冷媒流路を構成する凹凸をケース102の電動機200と相対する面に設けてもよい。これにより、制御基板103に搭載される発熱部品での発熱が、ケース102の電動機200と相対する面に構成された冷媒流路を流通する冷却風に放熱される。また、冷媒流路を構成する凹凸をリヤブラケット2のケース102と相対する面に設けてもよい。これにより、固定子鉄心31を介してリヤブラケット2に伝達された固定子巻線32での発熱が、リヤブラケット2のケース102と相対する面に構成された冷媒流路を流通する冷却風に放熱される。
パワーモジュール160は、図3および図4に示されるように、例えば、上アームおよび下タームを構成する2つの電力用半導体素子が直列に接続された状態で封止樹脂165により樹脂封止されて構成されている。パワーモジュール160は、正極端子161、負極端子162、交流端子163および制御端子164を備える。パワーモジュール160は、正極端子161および負極端子162とバッテリとを接続して、直流電力を授受している。パワーモジュール160は、交流端子163と固定子巻線32とを接続して、交流電力を授受している。パワーモジュール160は、制御端子164と制御基板103とを接続し、電力用半導体素子の動作を制御する電気信号を授受している。正極端子161、負極端子162、交流端子163および制御端子164は、例えば、銅、銅合金などの導電性が良好で熱伝導性の高い金属が用いられる。さらに、これら端子の表面は、Au、Ni、Snなどの金属材料でめっきされてもよい。また、これらの端子の材料およびめっきの材料は、2種類以上の材料で構成してもよい。
封止樹脂165は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などのポッティング樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)などの成形材料などで構成される。また、電力用半導体素子の表面がフッ素樹脂によりコーティングされていてもよい。電力用半導体素子および他の実装部品が封止樹脂165で覆われることにより、異物が混入したり、塩、泥などが含まれた水がかかっても、電力用半導体素子および他の実装部品の絶縁性を確保することができる。また、封止樹脂165にエポキシなどの高硬度の材料を用いることで、電力用半導体素子および他の実装部品を強固に固定でき、耐振性を向上することができる。なお、封止樹脂165以外の方法で電力用半導体素子および他の実装部品を絶縁状態に固定できれば、封止樹脂165は省略することができる。
電力用半導体素子は、電力用電界効果トランジスタ(パワーMOSFET:Power Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などで構成される。これらは、モータなどの機器を駆動するインバータ回路に用いられるもので、数アンペアから数百アンペアの定格電流を制御するものである。電力用半導体素子の材料として、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムナイトライド(GaN)などが用いられる。
電力用半導体素子は、アルミまたは銅のベース材料で構成された金属基板、アルミナ、窒化アルミ、窒化ケイ素などからなるセラミック基板の配線パターン、鉄、アルミ、銅などのバスバーなどに、はんだ、銀ペーストなどの導電性材料で接合されている。ここで、金属基板、セラミック基板の配線パターンおよびバスバーをリードと呼ぶ。
パワーモジュール160は、図3および図4に示されるように、ヒートシンク110の基部111のパワーモジュール搭載面111aに搭載されている。そして、電力用半導体素子が接合されたリードの非搭載面が、ヒートシンク110の基部111に熱的に接続される。なお、リードの搭載面は、電力半導体素子が接合されている面であり、リードの非搭載面は、搭載面と反対側の面である。
また、電力用半導体素子とヒートシンク110の基部111との間の接触熱抵抗を低減するため、伝熱材がリードとパワーモジュール搭載面111aとの間に配置されている。伝熱材には、グリース、接着剤、シート、ゲルなどの絶縁性を有する材料、はんだ、銀ペーストなどの導電性部材などが用いられる。また、リードと基部111との間に絶縁性を確保する必要がある場合には、絶縁性の伝熱材が用いられる。これにより、電力用半導体素子と基部111とが低熱抵抗な状態に接続される。
また、リードとヒートシンク110とが同電位の場合には、リードと基部111とは、半田、銀ペーストなどの導電性部材により接続される。あるいは、ばね、ねじなどによりリードを基部111に機械的に押し付けてもよい。接続方式を接合から機械的な押し付けに変えることで、リードと基部111との間の熱抵抗を低減しつつ、温度サイクルおよび高温によるリードと基部111との間の接続状態の劣化が抑えられ、当該接続状態の長期信頼性が向上される。
ヒートシンク110は、電力用半導体素子および通電経路に電流が流れるときに発生する熱を冷却風に放熱する役割を有する。ヒートシンク110は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などの金属、樹脂、セラミック等の材料であって、5W/m・K以上の熱伝導率を有する材料で構成される。基部111のパワーモジュール搭載面111aと反対側の面であるパワーモジュール非搭載面111bには、パワーモジュール非搭載面111bから直角に突出するフィン112が互いに離れて、相対して、平行に複数本形成されている。冷媒流路113が、フィン112間に形成される。冷媒である冷却風がフィン112に沿って流れる冷媒流路113の流路方向が、冷媒流路113の長さ方向、すなわちヒートシンク110の長さ方向となる。封止樹脂165からの正極端子161および負極端子162の突出方向、封止樹脂165からの制御端子164の突出方向、および冷媒流路の長さ方向は,互いに直交している。冷却風がフィン112の表面に接しながら冷媒流路113を流れることで、電力用半導体素子で発生する熱が冷却風に放熱される。基部111とフィン112とからなるヒートシンク110は、押し出し加工、かしめ、圧入、切削、ダイキャスト、鋳造、鍛造、切おこし、ろう付け、摩擦撹拌接合などによって製造される。
基部111のパワーモジュール非搭載面111bに複数本のフィン112が形成されているが、フィン112は1本以上あればよい。また、パワーモジュール搭載面111aとパワーモジュール非搭載面111bとが平行な平坦面である場合について説明しているが、パワーモジュール搭載面111aとパワーモジュール非搭載面111bとの間の面間距離は、基部111の各部において一定でなくてもよい。すなわち、基部111の板厚は、一定でなくてもよい。パワーモジュール搭載面111aとパワーモジュール非搭載面111bとは平坦面である必要はなく、湾曲する面であってもよい。
リードの非搭載面がヒートシンク110の基部111を熱的に接続されているが、リードの搭載面を基部111を熱的に接続してもよく、リードの搭載面と非搭載面との両面に基部111を熱的に接続してもよい。つまり、電力半導体素子で発生する発熱を冷却風に放熱できれば、ヒートシンク110の基部111におけるリードの取り付け位置、リードの個数および形状などは特定されない。
つぎに、パワーモジュール160の配置について図5および図6を参照しつつ説明する。ここで、リヤブラケット2には3つのリヤブラケット用吸気口21が形成されている。説明の便宜上、3つのリヤブラケット用吸気口を添え字a,b,cによって区別し、リヤブラケット用吸気口を総称するときには、参照符号のみを用いる。また、電力供給ユニット300は、6つのパワーモジュール160を備える。説明の便宜上、6つのパワーモジュールを添え字a,b,c,d,e,fによって区別し、パワーモジュールを総称するときには、参照符号のみを用いる。
6つのパワーモジュール160は、それぞれ、ヒートシンク110の基部111のパワーモジュール搭載面111aに搭載されている。パワーモジュール160a,160dが搭載されたヒートシンク110は、フィン112同士を隙間なく相対させて、制御端子164を軸方向の第2方向に向けて、リヤブラケット2の軸方向の第2方向に配置されている。ヒートシンク110に搭載されたパワーモジュール160a,160dは、軸方向から見た時に、リヤベアリング格納空間23の径方向外方の領域に配置されている。ヒートシンク110は、パワーモジュール搭載面111aが回転軸4の軸方向と平行となるように配置されている。さらに、ヒートシンク110は、フィン112間に形成される冷媒流路113の流路方向が、回転軸4の軸心と直交する平面と平行に、かつ回転軸4の軸心を通る径方向に対して傾斜するように配置されている。すなわち、冷媒流路113の流路方向は、回転軸4と交差していない。なお、図示されていないが、リヤブラケット2又はケース102に固定部が設けられており、ヒートシンク110が当該固定部に固定されている。
パワーモジュール160b,160eおよびパワーモジュール160c,160fは、パワーモジュール160a,160dと同様に配置されている。これにより、パワーモジュール160a,160d、パワーモジュール160b,160eおよびパワーモジュール160c,16fは、電動機200と制御部104との間に、回転軸4の軸心を中心として90度の等角ピッチに配置されている。制御端子164は、封止樹脂165から軸方向の第2方向に延びている。ここで、90度で等角ピッチ配置されるとは、図5において、回転電機を回転軸4の軸心まわりに時計回りに90度回転させる前のヒートシンク110に搭載されたパワーモジュール160b,160eと90度回転させた後のヒートシンク110に搭載されたパワーモジュール160a,160dとが重なることを意味する。
図1に示されるように、開口部105が、フィン112同士を隙間なく相対して配置されたヒートシンク110の各対の外径側端部と径方向に相対するように、カバー101の周壁部101aに形成されている。開口部105は、ヒートシンク110の対の外径側外部の端面と同じ大きさを有している。これにより、冷媒流路113の外径側端部が流路入口となり、冷媒流路113の内径側端部が流路出口となる。3つのリヤブラケット用吸気口21a,21b,21cが、軸方向の第2方向を向くリヤブラケット2の面のリヤベアリング格納空間23の径方向外方の領域に形成されている。リヤブラケット用吸気口21a,21b,21cは、カバー101の底部101bと相対するリヤブラケット2の領域内に形成されている。そして、図5に示されるように、ヒートシンク110の各対の冷媒流路113の流路出口は、軸方向から見た時に、リヤブラケット用吸気口21a,21b,21c内に位置している。また、冷媒流路113の流路入口は、流路出口に対して径方向外方に位置している。
ここで、図6に示されるように、無限平面Iがヒートシンク110の冷媒流路113の流路出口と交わる任意の点において、冷却風が冷媒流路113を流れる方向Hと無限平面Iの回転方向Jの前方の垂線Qとのなす角Gが0°より大きく、90°以下となっている。無限平面Iは、回転子7の回転軸4の軸心を全て含む平面である。また、冷媒流路113の流路入口は、流路出口に対して径方向外方に位置している。さらに、冷媒流路113の流路出口は、軸方向から見た時に、リヤブラケット用吸気口21内に位置している。これにより、冷媒流路113の流路出口から排出された冷却風が、その流速ベクトルを消失することなく、リヤブラケット用吸気口21に吸い込まれる。そのため、冷却風量を増加させることができ、電力供給ユニット300の冷却性を向上させることができる。
このように構成された回転電機では、回転子7が回転駆動されると、冷却ファン81,82が回転駆動される。これにより、電動機200のフロント側では、図2中矢印W1で示されるように、冷却風がフロントブラケット用吸気口11からフロントブラケット1内に流入する。
一方、電動機200のリヤ側では、図2中矢印W2で示されるように、冷却風が開口部105からカバー101内に流入する。カバー101内に流入した冷却風は、ヒートシンク110のフィン112間の冷媒流路113の流路入口に流入する。冷媒流路113内に流入した冷却風は、冷媒流路113内を外径側から内径側に流れて、流路出口から流出する。冷媒流路113の流路出口から流出した冷却風は、流れ方向が軸方向に変えられて、リヤブラケット用吸気口21からリヤブラケット2内に流入する。パワーモジュール160の電力用半導体素子で発生した熱が、ヒートシンク110の基部111に伝熱され、フィン112間の冷媒流路113を流れる冷却風に放熱される。これにより、パワーモジュール160の電力用半導体素子が冷却される。
実施の形態1では、パワーモジュール搭載面111aが軸方向と平行となり、冷媒流路113の流路方向が回転軸4の軸心と直交する平面と平行、かつ回転軸4と交差しないように、ヒートシンク110が配置されている。これにより、冷媒流路113の流路方向は、径方向に対して傾斜している。
冷媒流路の流路方向が径方向となっている特許文献1では、冷媒流路の長さを長くすると、電力供給ユニットの径方向の寸法が大きくなる。実施の形態1では、冷媒流路113の流路方向が径方向に対して傾斜しているので、電力供給ユニット300の径方向寸法を大きくすることなく、冷媒流路113の長さを長くすることができる。その結果、電力供給ユニット300の径方向の寸法を大きくすることなく、ヒートシンク110の放熱面積を大きくでき、パワーモジュール160の冷却性を向上させることができる。
特許文献2では、ヒートシンクは、パワーモジュール搭載面を電動機の軸方向と平行とし、かつ放熱面を径方向の内方に向けて設置される。放熱面に形成される冷媒流路の流路方向が軸方向となっている。そのため、制御部などの部品は、冷媒流路の流路入口から軸方向の第2方向に離して配置される必要があり、電力供給ユニットの軸方向寸法が増大する。実施の形態1では、パワーモジュール搭載面111aが軸方向と平行となり、冷媒流路113の流路方向が回転軸4の軸心と直交する平面と平行となっている。これにより、制御部104などの部品をヒートシンク110に近づけてヒートシンク110の軸方向の第2方向に配置できるので、特許文献2に比べて、電力供給ユニット300の軸方向寸法を小さくすることができる。
これらのことから、搭載スペースが僅かしか確保できない車種の自動車に実施の形態1による回転電機を搭載しても、部品が干渉する、外部機器との接続コネクタおよび固定用のねじを取り付けるための作業空間を確保できないという不具合の発生が抑制される。そこで、実施の形態1による回転電機は、エンジンルーム内のレイアウトによって取り付けが制約されるような自動車用の回転電機として好適である。
開口部105は、ヒートシンク110の冷媒流路113の外径側端部と径方向に相対するように形成されている。そこで、開口部105からカバー101内に流入した冷却風が流路入口から冷媒流路113内に効率よく流入する。これにより、冷媒流路113を流れる冷却風の流量が確保され、パワーモジュール160の冷却性を向上させることができる。そこで、冷却風を効率よく冷媒流路113に流入させるためには、流路入口が開口部105に近づくようにヒートシンク110を配置することが望ましい。
冷媒流路113の流路出口は、軸方向から見た時に、リヤブラケット用吸気口21内に位置している。これにより、冷媒流路113の流路出口から排出された冷却風が、その流速ベクトルを消失することなく、リヤブラケット用吸気口21に吸い込まれる。そのため、冷却風量を増加させることができ、電力供給ユニット300の冷却性を向上させることができる。また、冷媒流路113の流路出口から排出された冷却風が、リヤブラケット用吸気口21の近傍に集められて、パワーモジュール160の冷却に寄与する。そのため、パワーモジュール160の冷却性がさらに向上される。
リヤブラケット用吸気口21は、リヤベアリング格納空間23の径方向外方の領域に形成される。そこで、冷却風の通風抵抗を下げるには、リヤベアリング格納空間23を避けて、リヤブラケット用吸気口21を径方向外方に拡張して面積を大きくすることになる。
特許文献1では、ヒートシンクの冷媒流路の流路方向が径方向となっている。そこで、冷媒流路の流路出口とリヤベアリング格納空間との間の径方向距離を変えずに、リヤブラケット用吸気口を径方向外方に拡張しても、冷却風の通風抵抗を効果的に下げられない。つまり、リヤブラケット用吸気口の径方向外方への拡張分だけ冷媒流路の流路出口を径方向外方にシフトさせる必要がある。これにより、冷媒流路の冷媒出口から流出した冷却風は、流れ方向を軸方向に変えられて、拡張されたリヤブラケット用吸気口に効率的に流入することができる。その結果、冷却風の通風抵抗が下がり、冷却風の流量が多くなり、パワーモジュールの冷却性が向上される。このように、特許文献1では、冷却風の通風抵抗を下げてパワーモジュールの冷却性を向上させるには、電力供給ユニットの径方向寸法が大きくなってしまう。
実施の形態1では、冷媒流路113の流路方向は、径方向に対して傾斜し、かつ回転軸4と交差していない。さらに、冷媒流路113の流路出口は、軸方向から見た時に、リヤブラケット用吸気口21内に位置している。そして、径方向に対する冷媒流路113の流路方向の傾斜角度を大きくすることで、冷媒流路113の流路入口の径方向位置を変えることなく、流路出口とリヤベアリング格納空間23との間の径方向距離を大きくできる。そのため、径方向に対する冷媒流路113の流路方向の傾斜角度を調整することにより、冷媒流路113の冷媒出口から流出して流れ方向を軸方向に変えられた冷却風を、拡張されたリヤブラケット用吸気口21に効率的に流入させることができる。これにより、冷媒流路113の流路入口の径方向位置を変えることなく、リヤブラケット用吸気口21の面積を大きくでき、冷却風の通風抵抗を小さくできる。その結果、冷媒流路113を流れる冷却風の流量が増大し、電力供給ユニット300を大径化することなく、パワーモジュール160の冷却性を向上させることができる。
実施の形態1では、パワーモジュール160が搭載された2つのヒートシンク110は、フィン112同士を隙間なく相対させて配置されている。これにより、フィン112間の冷媒流路113を流れる冷却風の風速が増大され、パワーモジュール160の冷却効率が高められる。
実施の形態1では、パワーモジュール160が搭載された3対のヒートシンク110が90度で等角ピッチに配置されているので、3対のヒートシンク110の冷媒流路113のそれぞれに均等に冷却風が導かれる。これにより、パワーモジュール160が均等に冷却される。
なお、上記実施の形態では、パワーモジュール160が搭載された2つのヒートシンク110は、フィン112同士を隙間なく相対させて配置されているが、2つのヒートシンク110は、フィン112同士を隙間をあけて相対させて配置されてもよい。この場合、相対して配置されたフィン112間の隙間が冷媒流路となる。そこで、冷媒流路の断面積が大きくなり、冷媒流路を流れる冷却風の流量が増大されるので、冷媒流路を流れる冷却風の温度上昇が低減される。これにより、冷却風の通風経路の後段に位置する部品群を効果的に冷却することができる。
また、上記実施の形態1では、パワーモジュール160が搭載された3対のヒートシンク110が90度で等角ピッチに配置されているが、3対のヒートシンク110は、等角ピッチに配置される必要はない。例えば、回転軸4の軸心を中心として、60度、120度の間隔で3対のヒートシンク110を配置してもよい。つまり、回転電機を回転軸4の軸心まわりに60度回転させたパワーモジュール160a,160dおよびh−とシンク110が回転させる前のパワーモジュール160b,160eおよびヒートシンク110に重なり、さらに120度回転させた後のパワーモジュール160a,160dおよびヒートシンク110が回転させる前のパワーモジュール160c,160fおよびヒートシンク110に重なるように、3対のヒートシンク110を配置してもよい。
本発明では、パワーモジュール160が搭載された3対のヒートシンク110がこのように配置されることを、回転軸4の軸心を対称軸とする回転対称に配置されているとする。つまり、パワーモジュール160が搭載された3対のヒートシンク110が回転軸4の軸心を対称軸とする回転対称に配置されている場合、回転電機を回転軸4の軸心まわりに任意の角度回転させたときに、3対のパワーモジュール160の任意の1対のパワーモジュール160およびヒートシンク110が、回転させる前の他の2対のパワーモジュール160およびヒートシンク110に一致する。
実施の形態2.
図7は、この実施の形態2に係る回転電機における制御部を取り除いた状態の電力供給ユニットを示す平面図である。
図7において、パワーモジュール160a,160dが搭載されたヒートシンク110は、フィン112同士を隙間なく相対させて、制御端子164を軸方向の第2方向に向けて、リヤブラケット2の軸方向の第2方向に配置されている。ヒートシンク110に搭載されたパワーモジュール160a,160dは、軸方向から見た時に、リヤベアリング格納空間23の径方向外方の領域に配置されている。ヒートシンク110は、パワーモジュール搭載面111aが回転軸4の軸方向と平行となるように配置されている。さらに、ヒートシンク110は、フィン112間に形成される冷媒流路113の流路方向が、回転軸4の軸心と直交する平面と平行に、かつ回転軸4の軸心を通る径方向に対して傾斜するように配置されている。すなわち、冷媒流路113の流路方向は、回転軸4と交差していない。
パワーモジュール160b,160eおよびパワーモジュール160c,160fは、パワーモジュール160a,160dと同様に配置されている。これにより、パワーモジュール160a,160d、パワーモジュール160b,160eおよびパワーモジュール160c,16fは、電動機200と制御部104との間に、回転軸4の軸心を中心として等角ピッチに配置されている。制御端子164は、封止樹脂165から軸方向の第2方向に延びている。
ここで、ヒートシンク110に搭載されたパワーモジュール160a,160dの対、ヒートシンク110に搭載されたパワーモジュール160b,160eの対およびヒートシンク110に搭載されたパワーモジュール160c,16fの対は、径方向位置および冷媒流路113の径方向に対する傾斜角度が互いに異なっている。
このように、実施の形態2による回転電機は、ヒートシンク110に搭載されたパワーモジュール160の3対の径方向位置および冷媒流路113の径方向に対する傾斜角度が互いに異なっている点を除いて、上記実施の形態1による回転電機と同様に構成されている。
したがって、実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
実施の形態2では、ヒートシンク110に搭載されたパワーモジュール160の3対の径方向位置および冷媒流路113の径方向に対する傾斜角度が互いに異なっている。そこで、パワーモジュール160の対毎に、ヒートシンク110の大きさを変えることができる。また、パワーモジュール160の対毎に、リヤブラケット用吸気口21の大きさを変えることができる。そのため、パワーモジュール160の対の冷却効率を対毎に変えることができる。これにより、パワーモジュール160の電力用半導体素子の発熱量が異なった場合でも、電力用半導体素子の発熱量に応じてパワーモジュール160の冷却効率を調整することにより、電力半導体素子のそれぞれが同じ温度となるように冷却できる。その結果、電力供給ユニット300の信頼性を向上させることができる。
なお、上記各実施の形態では、固定子巻線32が2組の三相巻線から構成されていることを想定して6つのパワーモジュール160を配置しているが、パワーモジュール160の個数は、固定子巻線32の構成に応じて変更される。例えば、固定子巻線32が1組の三相巻線で構成されている場合には、3つのパワーモジュール160が配置される。
また、上記各実施の形態では、パワーモジュール160は、上アームと下アームの2つの電力用半導体素子を封止樹脂165で封止して構成されているが、パワーモジュールは、1つの電力用半導体素子を封止樹脂で封止して構成されてもよい。
また、上記各実施の形態では、ヒートシンク110に搭載された3対のパワーモジュール160が互いに離れて回転軸4と直交する平面上に配置されているが、ヒートシンク110に搭載された6つのパワーモジュール160を互いに離れて回転軸4と直交する平面上に配置してもよい。そして、6つのパワーモジュール160は、回転軸4を対称軸として回転対称に配置されてもよく、6つのパワーモジュール160を径方向位置および冷媒通路の流路方向を変えて配置されてもよい。
また、上記各実施の形態では、開口部105は、冷媒流路113の流路入口と径方向に相対するように周壁部101aに形成されているが、冷媒流路113を流れる冷却風の流量を十分確保できれば、開口部105と冷媒流路113の流路入口とが周方向にずれていてもよい。
また、上記各実施の形態では、リヤブラケット用吸気口21がパワーモジュール160の対数、すなわち3つ設けられているが、リヤブラケット用吸気口21は、パワーモジュール160の対数より多く設けられてもよい。
また、上記各実施の形態において、リヤブラケット用吸気口21は、冷却ファン82の最外径位置よりも径方向内方に位置していることが望ましい。これにより、リヤブラケット2内で冷却ファン82に遠心方向に曲げられた冷却風が、リヤブラケット用吸気口21からカバー101内に流入することが防止される。そこで、リヤブラケット用吸気口21からカバー101内への冷却風の流入による冷却効率の低下が抑制される。