以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である有機金属錯体について説明する。
本発明の一態様である有機金属錯体は、金属と配位子とを有し、配位子はベンゾ[h]キナゾリン骨格であり、ベンゾ[h]キナゾリン骨格は、ベンゾ[h]キナゾリンの5位と6位との炭素−炭素結合を共有して形成される縮合環を有し、ベンゾ[h]キナゾリン骨格が金属に結合した有機金属錯体である。なお、本実施の形態で説明する有機金属錯体の一態様は、下記一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体である。
一般式(G1)において、Mは第9族又は第10族に属する金属を表し、R1乃至R4は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6乃至10のアリール基を表し、R5は、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。また、環Xは、置換もしくは無置換の、炭素又は窒素で形成される六員環芳香環を表す。
また、本実施の形態で説明する有機金属錯体の一態様は、下記一般式(G2)で表される有機金属錯体である。
一般式(G2)において、Mは第9族又は第10族に属する金属を表し、Lはモノアニオン性の配位子を表し、R1乃至R4は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6乃至10のアリール基を表し、R5は、水素又は置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。また、環Xは、置換もしくは無置換の、炭素又は窒素で形成される六員環芳香環を表す。また、Mが第9族に属する金属を表すとき、mは3を表しnは1乃至3を表し、Mが第10族に属する金属を表すとき、mは2を表しnは1または2を表す。
なお、一般式(G2)におけるモノアニオン性の配位子は、β−ジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、カルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、フェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、又は二つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子であることが好ましい。特に、β−ジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子であると、β−ジケトン構造を有することで、有機金属錯体の有機溶媒への溶解性が高まり、精製が容易となり好ましい。
具体的にモノアニオン性の配位子は、一般式(L1)乃至(L7)のいずれか一であることが好ましい。
但し、式中R71乃至R109は、それぞれ独立に水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、ハロゲン基、ビニル基、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルコキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキルチオ基を表す。また、A1乃至A3は、それぞれ独立に窒素、水素と結合するsp2混成炭素、又は置換基を有するsp2混成炭素を表し、前記置換基は炭素数1乃至6のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1乃至6のハロアルキル基、又はフェニル基を表す。
なお、本発明の一態様である有機金属錯体は、ベンゾ[h]キナゾリン骨格において縮合環を有する。このように、ベンゾ[h]キナゾリン骨格に縮合環を有することにより、有機金属錯体の耐熱性を向上させることができ、発光素子に用いた場合に素子の信頼性を向上させることができる。また、ベンゾ[h]キナゾリン骨格を含むことで発光効率を高めることができる。また、本発明の一態様である有機金属錯体により、発光効率の高い青緑色から黄緑色発光材料が得られる。
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G4)で表される有機金属錯体である。
一般式(G4)において、R1乃至R4は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6乃至10のアリール基を表し、R5は、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。また、環Xは、置換もしくは無置換の、炭素又は窒素で形成される六員環芳香環を表す。
なお、上記一般式(G1)、(G2)、(G4)中の、R1乃至R5における炭素数1乃至6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、ネオヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基等が挙げられる。
次に、上述した本発明の一態様である有機金属錯体の具体的な構造式を示す(下記構造式(100)〜(119))。ただし、本発明はこれらに限定されることはない。
なお、上記構造式(100)〜(119)で表される有機金属錯体は、燐光を発光することが可能な新規物質である。なお、これらの物質は、配位子の種類によっては幾何異性体と立体異性体が存在しうるが、本発明の一態様である有機金属錯体にはこれらの異性体も全て含まれる。
次に、本発明の一態様である有機金属錯体の合成方法の一例について説明する。
≪一般式(G0)で表されるキナゾリン誘導体の合成法≫
まず、下記一般式(G0)で表されるキナゾリン誘導体の合成方法の一例について説明する。
一般式(G0)において、R1乃至R4は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6乃至10のアリール基を表し、R5は、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。また、環Xは、置換もしくは無置換の、炭素又は窒素で形成される六員環芳香環を表す。
一般式(G0)で表されるキナゾリン誘導体は、以下のような簡便な合成スキーム(A)または(A’)により合成できる。下記合成スキーム(A)に示すように、ピリミジン化合物(A1)と酸化剤または、酸または、その両方とを反応させることにより得られる。
あるいは、下記合成スキーム(A’)に示すように、ハロゲン化ピリミジン化合物(A1’)とスズ化合物とをダブルカップリングすることにより得られる。なお、合成スキーム(A’)において、Qはハロゲンを表す。
上述の化合物(A1)、(A1’)は、様々な種類が市販されているか、あるいは合成可能であるため、一般式(G0)で表されるキナゾリン誘導体は数多くの種類を合成することができる。したがって、本発明の一態様である有機金属錯体は、その配位子のバリエーションが豊富であるという特徴がある。
≪一般式(G2)で表される本発明の一態様の有機金属錯体の合成方法≫
次に、一般式(G2)で表される本発明の一態様の有機金属錯体の合成方法の一例について説明する。まず、下記合成スキーム(B−1)に示すように、一般式(G0)で表されるキナゾリン誘導体と、ハロゲンを含む金属化合物(塩化パラジウム、塩化イリジウム、臭化イリジウム、ヨウ化イリジウム、テトラクロロ白金酸カリウムなど)とを、不活性ガス雰囲気にて加熱することにより、ハロゲンで架橋された構造を有する有機金属錯体の一種であり新規物質である複核錯体(P)を得ることができる。また、上述の反応はアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールなど)、あるいはアルコール系溶媒1種類以上と水との混合溶媒を用いてもよい。加熱手段として特に限定はなく、オイルバス、サンドバス、又はアルミブロックを用いてもよい。また、マイクロ波を加熱手段として用いることも可能である。なお、合成スキーム(B−1)において、Mは第9族または第10族に属する金属を表す。また、Mが第9族に属する金属のときはn=2であり、Mが第10族に属する金属のときはn=1である。
合成スキーム(B−1)において、Qはハロゲンを表し、R1乃至R4は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6乃至10のアリール基を表し、R5は、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。また、環Xは、置換もしくは無置換の、炭素又は窒素で形成される六員環芳香環を表す。また、Mが第9族に属する金属を表すとき、nは2を表し、Mが第10族に属する金属を表すとき、nは1を表す。
さらに、下記合成スキーム(B−2)に示すように、上述の合成スキーム(B−1)で得られる複核錯体(P)と、モノアニオン性の配位子の原料HLとを、不活性ガス雰囲気にて加熱することにより、HLのプロトンが脱離してLが中心金属Mに配位し、一般式(G2)で表される本発明の一態様である有機金属錯体が得られる。加熱手段として特に限定はなく、オイルバス、サンドバス、又はアルミブロックを用いてもよい。また、マイクロ波を加熱手段として用いることも可能である。なお、合成スキーム(B−2)において、Mは第9族または第10族に属する金属を表す。また、Mが第9族に属する金属のときはm=3、n=2であり、Mが第10族に属する金属のときはm=2、n=1である。
合成スキーム(B−2)において、Lはモノアニオン性の配位子を表し、Qはハロゲンを表し、R1乃至R4は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6乃至10のアリール基を表し、R5は、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。また、環Xは、置換もしくは無置換の、炭素又は窒素で形成される六員環芳香環を表す。また、Mが第9族に属する金属を表すとき、mは3を表しnは2を表し、Mが第10族に属する金属を表すとき、mは2を表しnは1を表す。
本発明においては、一般式(G0)で表される誘導体を配位子とするオルトメタル錯体を得るために、R5に置換基を導入するほうが好ましい。特にR5として、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、または置換もしくは無置換のフェニル基を用いているのが好ましい。これにより、R5として水素を用いた場合と比較して、合成スキーム(B−1)において生成したハロゲンで架橋された複核金属錯体が合成スキーム(B−2)で表される反応中に分解してしまうことを抑制し、飛躍的に高い収率を得ることができる。また、これにより溶解性が高まり溶液を用いた精製が容易になるため、材料の純度を高めることができる。ゆえに発光素子のドーパントに使用したとき、特性が安定し、信頼性が良くなる。また、これにより発光素子のドーパントに使用したとき、分散性が良くなるため消光を防ぎ、効率が高くなる。
なお、一般式(G2)中におけるモノアニオン性の配位子Lは、β−ジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、カルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、フェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、又は2つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子であることが好ましい。特に、β−ジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子であると、β−ジケトン構造を有することで、有機金属錯体の有機溶媒への溶解性が高まり、精製が容易となり好ましい。また、β−ジケトン構造を有することで、発光効率の高い有機金属錯体を得ることができるため好ましい。また、β−ジケトン構造を有することで昇華性が高まり、蒸着性能に優れるという利点がある。
また、モノアニオン性の配位子は、一般式(L1)乃至(L7)のいずれか一であることが好ましい。これらの配位子は、配位能力が高く、また、安価に入手することができるため有効である。
但し、式中R71乃至R109は、それぞれ独立に水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、ハロゲン基、ビニル基、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルコキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキルチオ基を表す。また、A1乃至A3は、それぞれ独立に窒素、水素と結合するsp2混成炭素、又は置換基を有するsp2混成炭素を表し、前記置換基は炭素数1乃至6のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1乃至6のハロアルキル基、又はフェニル基を表す。
≪一般式(G2’)で表される本発明の一態様の有機金属錯体の合成方法≫
一般式(G2’)で表される本発明の一態様の有機金属錯体の合成方法の一例について説明する。下記合成スキーム(C)に示すように、一般式(G0)で表される誘導体と、ハロゲンを含む第9族もしくは第10族の金属化合物(塩化ロジウム水和物、塩化パラジウム、塩化イリジウム水和物、ヘキサクロロイリジウム酸アンモニウム、テトラクロロ白金酸カリウム等)、または第9族もしくは第10族の有機金属錯体化合物(アセチルアセトナト錯体、ジエチルスルフィド錯体等)とを混合した後、加熱することにより、一般式(G2’)で表される構造を有する有機金属錯体を得ることができる。また、この加熱プロセスは、一般式(G0)で表されるキナゾリン誘導体と、ハロゲンを含む第9族もしくは第10族の金属化合物、または第9族もしくは第10族の有機金属錯体化合物とをアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等)に溶解した後に行ってもよい。なお、合成スキーム(C)において、Mは第9族または第10族に属する金属を表す。また、Mが第9族に属する金属のときはn=3であり、Mが第10族に属する金属のときはn=2である。
合成スキーム(C)において、R1乃至R4は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6乃至10のアリール基を表し、R5は、水素、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。また、環Xは、置換もしくは無置換の、炭素又は窒素で形成される六員環芳香環を表す。また、Mが第9族に属する金属を表すとき、nは3を表し、Mが第10族に属する金属を表すとき、nは2を表す。
本発明においては、一般式(G0)で表される誘導体を配位子とするオルトメタル錯体を得るために、R5に置換基を導入するほうが好ましい。特にR5として、置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、または置換もしくは無置換のフェニル基を用いているのが好ましい。これにより、R5として水素を用いた場合と比較して、合成スキーム(C)における収率を高めることができる。
以上、本発明の一態様である有機金属錯体の合成方法の一例について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、他のどのような合成方法によって合成されても良い。
なお、上述した本発明の一態様である有機金属錯体は、燐光を発光することが可能であるため、発光材料や発光素子の発光物質として利用できる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る有機金属錯体について、分子構造に起因する発光波長の短波長化について説明する。
シクロメタル化配位子は、ベンゼン環を縮環させることにより耐熱性を向上させることができるが、縮環により共役は広がり、発光波長は長波長化することが多い。しかし、配位子がベンゾ[h]キナゾリン骨格である場合において、ベンゼン環を縮環させる位置によっては、共役の広がりが抑えられ、発光波長が短波長化する。すなわち、耐熱性を向上させ、発光波長の短波長化が実現できる。そこで、後述の通り分子軌道計算を行ったところ、スピン密度分布の広がりが抑えられていることがわかる。ゆえに、T1準位が高くなり、発光波長の短波長化が可能となる。
計算により求めた分子軌道分布について説明する。なお、用いる有機金属錯体は下記構造式(500)で表される有機金属錯体、ビス(ジベンゾ[f,h]キナゾリン‐12‐イル‐κC,κN)(2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dbqz)2(acac)])とする。
また、比較として、下記構造式(600)で表される有機金属錯体、ビス(ベンゾ[h]キナゾリン−10−イル−κC,κN)(2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(bqn)2(acac)])を用いる。[Ir(bqn)2(acac)]は黄色発光を示す材料である。
≪計算例≫
本発明の一態様に係る有機金属錯体[Ir(dbqz)2(acac)]と比較材料である[Ir(bqn)2(acac)]の一重項基底状態(S0)と最低励起三重項状態(T1)における最安定構造を、密度汎関数法(DFT)を用いて計算した。さらに、それぞれの最安定構造において振動解析をおこない、S0とT1の全エネルギーの差からT1準位を計算した。DFTの全エネルギーはポテンシャルエネルギー、電子間静電エネルギー、電子の運動エネルギーと複雑な電子間の相互作用を全て含む交換相関エネルギーの和で表される。DFTでは、交換相関相互作用を電子密度で表現された一電子ポテンシャルの汎関数(関数の関数の意)で近似しているため、計算は高速である。ここでは、混合汎関数であるB3PW91を用いて、交換相関エネルギーに係る各パラメータの重みを規定した。
また、基底関数として、H、C、N、O原子には6−311G(それぞれの原子価軌道に三つの短縮関数を用いたtriple split valence基底系の基底関数)を、Ir原子にはLanL2DZを用いた。上述の基底関数により、例えば、水素原子であれば、1s〜3sの軌道が考慮され、また、炭素原子であれば、1s〜4s、2p〜4pの軌道が考慮されることになる。さらに、計算精度向上のため、分極基底系として、水素原子にはp関数を、水素原子以外にはd関数を加えた。なお、分極連続体モデルにより溶媒効果を取り込み、ジクロロメタン溶媒に相当する誘電率(ε=8.93)を考慮して計算した。また、量子化学計算プログラムとしては、Gaussian 09を使用した。計算は、ハイパフォーマンスコンピュータ(SGI社製、Altix4700)を用いて行った。
構造式(500)で表される有機金属錯体[Ir(dbqz)2(acac)]と、構造式(600)で表される有機金属錯体[Ir(bqn)2(acac)]のそれぞれにおけるS0とT1について構造最適化を行い、T1準位とスピン密度分布を計算した。スピン密度分布を図13に示す。
算出したT1準位は、[Ir(dbqz)2(acac)]が2.22eV、[Ir(bqn)2(acac)]が2.13eVであった。[Ir(bqn)2(acac)]に比べ、[Ir(dbqz)2(acac)]において、発光波長が短波になることがわかる。
また、スピン密度分布を示す図13において領域401(a)及び領域401(b)に示すように、[Ir(dbqz)2(acac)]の領域401(a)は、[Ir(bqn)2(acac)]の領域401(b)に比べ、スピン密度分布が少なく、スピン密度分布の広がりが抑えられていることがわかる。この原因として、C−C結合距離の違いが挙げられる。
図14に、[Ir(dbqz)2(acac)]におけるベンゼン環YのC−C結合402(Y)とC−C結合403(Y)、及び[Ir(bqn)2(acac)]におけるベンゼン環ZのC−C結合402(Z)とC−C結合403(Z)として表したC−C結合の位置を示す。[Ir(dbqz)2(acac)]のベンゼン環YにおけるC−C結合402(Y)のC−C結合距離は0.1465nm、C−C結合403(Y)のC−C結合距離は0.1457nmであり、[Ir(bqn)2(acac)]のベンゼン環ZにおけるC−C結合402(Z)のC−C結合距離は0.1438nm、C−C結合403(Z)のC−C結合距離は0.1432nmである。C−C結合402(Z)及びC−C結合403(Z)に比べ、C−C結合402(Y)及びC−C結合403(Y)のC−C結合距離が長くなっていることがわかる。この原因として、共鳴構造を考慮した場合に、C−C結合402(Y)と403(Y)は、C−C結合402(Z)と403(Z)に比べ、二重結合より一重結合状態となる割合が高いことが考えられる。このことから、C−C結合402(Y)と403(Y)のC−C結合距離は、C−C結合402(Z)と403(Z)のC−C結合距離よりも長くなり、[Ir(dbqz)2(acac)]では、共役の広がりが抑えられ、スピン密度分布の広がりが抑えられた。そのため、[Ir(dbqz)2(acac)]はT1準位が高くなり、発光波長が短波長化する。
また、表1に[Ir(dbqz)2(acac)]と[Ir(bqn)2(acac)]それぞれの各部位におけるスピン密度分布の割合の計算結果を示す。
表1から、[Ir(dbqz)2(acac)]では、中心金属であるIrのスピン密度分布の割合は25.0%、[Ir(bqn)2(acac)]ではIrのスピン密度分布の割合は19.9%であることから、[Ir(dbqz)2(acac)]は[Ir(bqn)2(acac)]と比較し、Irのスピン密度分布の割合が大きいことがわかる。このことから、[Ir(dbqz)2(acac)]は、中心金属であるIrのスピン密度分布の割合が高いため、配位子への電荷移動であるMLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)性が高くなると考えられる。一般的に高効率な燐光発光遷移金属錯体の発光メカニズムはMLCTであることが知られており、そのため、[Ir(dbqz)2(acac)]は発光効率が向上することが計算結果より示される。
上記の事から、[Ir(bqn)2(acac)]のシクロメタル化配位子にベンゼン環を縮環させた[Ir(dbqz)2(acac)]とすることでスピン密度分布の広がりが抑えられ、T1準位が高くなる。その結果、[Ir(dbqz)2(acac)]は、[Ir(bqn)2(acac)]が発光する黄色の発光波長を短波長化し、青緑色から黄緑色を発光する耐熱性と発光効率の優れた有機金属錯体となることが示される。
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様として実施の形態1で示した有機金属錯体を発光層に用いた発光素子について図1を用いて説明する。
図1は、第1の電極101と第2の電極103との間にEL層102を有する発光素子を示した図である。EL層102は、発光層113を含み、発光層113は、実施の形態1で説明した有機金属錯体を含む。また、EL層102には発光層113の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114、電子注入層115などを含んで形成される。
このような発光素子に対して、電圧を印加することにより、第1の電極101側から注入された正孔と、第2の電極103側から注入された電子とが、発光層113において、再結合し、有機金属錯体を励起状態にする。そして、励起状態の有機金属錯体が基底状態に戻る際に発光する。このように、本発明の一態様である有機金属錯体は、発光素子における発光物質として機能する。なお、本実施の形態に示す発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極103は陰極として機能する。
なお、EL層102における正孔注入層111は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含んでなる層であり、アクセプター性物質によって正孔輸送性の高い物質から電子が引き抜かれることにより正孔(ホール)が発生する。従って、正孔注入層111から正孔輸送層112を介して発光層113に正孔が注入される。
以下に本実施の形態に示す発光素子を作製する上での具体例について説明する。
陽極として機能する、第1の電極101は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。なお、EL層102のうち、第1の電極101に接して形成される層が、後述する有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いて形成される場合には、第1の電極101に用いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。
第1の電極101は、例えばスパッタリング法や蒸着法(真空蒸着法を含む)等により形成することができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
第1の電極101上に形成されるEL層102は、少なくとも発光層113を有しており、また、実施の形態1にて説明した有機金属錯体を含んで形成される。EL層102の一部には様々な物質を用いることもでき、低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもできる。なお、EL層102を形成する物質には、有機化合物のみからなるものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。
正孔注入層111、および正孔輸送層112に用いる正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等が挙げられる。その他、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)等のカルバゾール誘導体、等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物を用いることもできる。
また、正孔注入層111に用いるアクセプター性物質としては、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化モリブデンが特に好ましい。
発光層113は、発光物質を含む層である。なお、発光物質としては、実施の形態1で示した有機金属錯体を用いることができ、さらにこの有機金属錯体(ゲスト材料)よりも三重項励起エネルギーの大きい物質をホスト材料として含む層であってもよい。また、発光物質に加えて、発光層におけるキャリア(電子及びホール)の再結合の際に励起錯体(エキサイプレックスとも言う)を形成することができる組み合わせとなる2種類の有機化合物(上記ホスト材料のいずれかであってもよい)を含む構成としてもよい。
ホスト材料、及び励起錯体を形成することができる2種類の有機化合物に用いることができる有機化合物としては、例えば、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、NPBのようなアリールアミン骨格を有する化合物の他、CBP、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)等のカルバゾール誘導体や、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)等の金属錯体が好ましい。また、PVKのような高分子化合物を用いることもできる。
なお、発光層113において、有機金属錯体(ゲスト材料)と、上述したホスト材料あるいは上述した励起錯体を形成することができる2種類の有機化合物とを含んで形成することにより、発光層113からは、発光効率の高い燐光発光を得ることができる。
また、発光層113は、本発明の一態様である有機金属錯体とともに一重項励起エネルギーを発光に変える発光物質、または三重項励起エネルギーを発光に変える発光物質を用いることもできる。この場合、これらの発光物質は上記有機金属錯体と同一の層に存在しても良く、異なる層に存在していても良い。なお、これらの発光物質の発光色を異なるものにすることで、素子全体として所望の色の発光を得ることができる。例えば、3つの発光層が存在する場合、第1の発光層の発光色が赤色、第2の発光層の発光色が緑色、第3の発光層の発光色が青色とすることで、発光素子全体としては白色発光を得ることができる。なお、上記発光物質としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
一重項励起エネルギーを発光に変える発光物質としては、例えば、蛍光を発する物質(蛍光性化合物)が挙げられる。
蛍光を発する物質としては、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙げられる。
三重項励起エネルギーを発光に変える発光物質としては、例えば、燐光を発する物質(燐光性化合物)や熱活性化遅延蛍光(TADF)材料が挙げられる。なお、TADF材料における遅延蛍光とは、通常の蛍光と同様のスペクトルを持ちながら、寿命が著しく長い発光をいう。その寿命は、10−6秒以上、好ましくは10−3秒以上である。
燐光を発する物質としては、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF3ppy)2(pic)])、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)3])、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)2(acac)])、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)3(Phen)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)2(acac)])、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(dpo)2(acac)])、ビス{2−[4’−(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(p−PF−ph)2(acac)])、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bt)2(acac)])、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(btp)2(acac)])、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−iPr)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(acac)])、ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)3(Phen)])、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)3(Phen)])などが挙げられる。
また、TADF材料としては、例えば、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル−フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III−4Me))、オクタエチルポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン−塩化白金錯体(PtCl2OEP)等が挙げられる。さらに、2−(ビフェニル−4−イル)−4,6−ビス(12−フェニルインドロ[2,3−a]カルバゾール−11−イル)−1,3,5−トリアジン(PIC−TRZ)等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物を用いることもできる。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強く、S1とT1のエネルギー差が小さくなるため、特に好ましい。
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質(電子輸送性化合物ともいう)を含む層である。電子輸送層114には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などの金属錯体を用いることができる。また、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4’−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4’’−ビフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。また、ポリ(2,5−ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層114として用いてもよい。
また、電子輸送層114は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が2層以上積層された構造としてもよい。
電子注入層115は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層115には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF3)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層115にエレクトライドを用いてもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。なお、上述した電子輸送層114を構成する物質を用いることもできる。
また、電子注入層115に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
なお、上述した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、印刷法(例えば、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法、平版印刷法、孔版印刷法等)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
陰極として機能する、第2の電極103は、仕事関数の小さい(好ましくは3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウムやセシウム等のアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、及びこれらを含む合金(例えば、Mg−Ag、Al−Li)、ユーロピウム、イッテルビウム等の希土類金属及びこれらを含む合金の他、アルミニウムや銀などを用いることができる。但し、EL層102のうち、第2の電極103に接して形成される層が、上述する有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いる場合には、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を用いることができる。
なお、第2の電極103を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
上述した発光素子は、第1の電極101および第2の電極103との間に与えられる電位差により電流が流れ、EL層102において正孔と電子とが再結合することにより発光する。そして、この発光は、第1の電極101および第2の電極103のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101および第2の電極103のいずれか一方、または両方が透光性を有する電極となる。
以上により説明した発光素子は、有機金属錯体に基づく燐光発光が得られることから、蛍光性化合物のみを用いた発光素子に比べて、高効率な発光素子を実現することができる。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様である有機金属錯体をEL材料としてEL層に用い、電荷発生層を挟んでEL層を複数有する構造の発光素子(以下、タンデム型発光素子という)について説明する。
本実施の形態に示す発光素子は、図2(A)に示すように一対の電極(第1の電極201および第2の電極204)間に、複数のEL層(第1のEL層202(1)、第2のEL層202(2))を有するタンデム型発光素子である。
本実施の形態において、第1の電極201は陽極として機能する電極であり、第2の電極204は陰極として機能する電極である。なお、第1の電極201および第2の電極204は、実施の形態3と同様な構成を用いることができる。また、複数のEL層(第1のEL層202(1)、第2のEL層202(2))は、実施の形態3で示したEL層と両方とも同様な構成であっても良いが、いずれか一方が同様の構成であっても良い。すなわち、第1のEL層202(1)と第2のEL層202(2)は、同じ構成であっても異なる構成であってもよく、その構成は実施の形態3と同様なものを適用することができる。
また、複数のEL層(第1のEL層202(1)、第2のEL層202(2))の間には、電荷発生層205が設けられている。電荷発生層205は、第1の電極201と第2の電極204に電圧を印加したときに、一方のEL層に電子を注入し、他方のEL層に正孔を注入する機能を有する。本実施の形態の場合には、第1の電極201に第2の電極204よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層205から第1のEL層202(1)に電子が注入され、第2のEL層202(2)に正孔が注入される。
なお、電荷発生層205は、光の取り出し効率の点から、可視光に対して透光性を有する(具体的には、電荷発生層205の可視光の透過率が、40%以上)ことが好ましい。また、電荷発生層205は、第1の電極201や第2の電極204よりも低い導電率であっても機能する。
電荷発生層205は、正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体(アクセプター)が添加された構成であっても、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体(ドナー)が添加された構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体が添加された構成とする場合において、正孔輸送性の高い有機化合物としては、例えば、NPBやTPD、TDATA、MTDATA、BSPBなどの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
一方、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体が添加された構成とする場合において、電子輸送性の高い有機化合物としては、例えば、Alq、Almq3、BeBq2、BAlqなど、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他、Zn(BOX)2、Zn(BTZ)2などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBDやOXD−7、TAZ、BPhen、BCPなども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
また、電子供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第2、第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
なお、上述した材料を用いて電荷発生層205を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
本実施の形態では、EL層を2層有する発光素子について説明したが、図2(B)に示すように、n層(ただし、nは、3以上)のEL層(202(1)〜202(n))を積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数のEL層を有する場合、EL層とEL層との間にそれぞれ電荷発生層(205(1)〜205(n−1))を配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での発光が可能である。電流密度を低く保てるため、長寿命素子を実現できる。また、大きな発光面を有する発光装置、電子機器、及び照明装置等に応用した場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。
また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色の光を互いに混合すると、白色発光を得ることができる。
また、3つのEL層を有する発光素子の場合でも同様であり、例えば、第1のEL層の発光色が赤色であり、第2のEL層の発光色が緑色であり、第3のEL層の発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様である有機金属錯体をEL層に用いた発光素子を有する発光装置について説明する。
なお、上記発光装置は、パッシブマトリクス型の発光装置でもアクティブマトリクス型の発光装置でもよい。また、本実施の形態に示す発光装置には、他の実施形態で説明した発光素子を適用することが可能である。
本実施の形態では、まずアクティブマトリクス型の発光装置について図3を用いて説明する。
なお、図3(A)は発光装置を示す上面図であり、図3(B)は図3(A)を一点鎖線A−A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置は、素子基板301上に設けられた画素部302と、駆動回路部(ソース線駆動回路)303と、駆動回路部(ゲート線駆動回路)304a及び304bと、を有する。画素部302、駆動回路部303、及び駆動回路部304a及び304bは、シール材305によって、素子基板301と封止基板306との間に封止されている。
また、素子基板301上には、駆動回路部303、及び駆動回路部304a及び304bに外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、又はリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線307が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC308を設ける例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
次に、断面構造について図3(B)を用いて説明する。素子基板301上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、ソース線駆動回路である駆動回路部303と、画素部302が示されている。
駆動回路部303はFET309とFET310とを組み合わせた構成について例示している。なお、駆動回路部303は、単極性(N型またはP型のいずれか一方のみ)のトランジスタを含む回路で形成されても良いし、N型のトランジスタとP型のトランジスタを含むCMOS回路で形成されても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に駆動回路を形成することもできる。
また、画素部302はスイッチング用FET311と、電流制御用FET312と電流制御用FET312の配線(ソース電極又はドレイン電極)に電気的に接続された第1の電極313とを含む複数の画素により形成される。また、本実施の形態においては、画素部302はスイッチング用FET311と、電流制御用FET312との2つのFETにより画素部302を構成する例について示したが、これに限定されない。例えば、3つ以上のFETと、容量素子とを組み合わせた画素部302としてもよい。
FET309、310、311、312としては、例えば、スタガ型や逆スタガ型のトランジスタを適用することができる。FET309、310、311、312に用いることのできる半導体材料としては、例えば、第13族半導体、第14族半導体、化合物半導体、酸化物半導体、有機半導体を用いることができる。また、該半導体材料の結晶性については、特に限定されず、例えば、非晶質半導体膜、または結晶性半導体膜を用いることができる。特に、FET309、310、311、312としては、酸化物半導体を用いると好ましい。該酸化物半導体としては、例えば、In−Ga酸化物、In−M−Zn酸化物(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)等が挙げられる。FET309、310、311、312として、例えば、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは3eV以上の酸化物半導体材料を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
また、第1の電極313の端部を覆って絶縁物314が形成されている。ここでは、絶縁物314として、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。また、本実施の形態においては、第1の電極313を陽極として用いる。
また、絶縁物314の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。絶縁物314の形状を上記のように形成することで、絶縁物314の上層に形成される膜の被覆性を良好なものとすることができる。例えば、絶縁物314の材料として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれかを使用することができ、有機化合物に限らず無機化合物、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等を使用することができる。
発光素子317は、第1の電極(陽極)313、EL層315及び第2の電極(陰極)316との積層構造であり、EL層315は、少なくとも発光層が設けられている。また、EL層315には、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等を適宜設けることができる。
なお、第1の電極313、EL層315及び第2の電極316に用いる材料としては、実施の形態3に示す材料を用いることができる。また、ここでは図示しないが、第2の電極316は外部入力端子であるFPC308に電気的に接続されている。
また、図3(B)に示す断面図では発光素子317を1つのみ図示しているが、画素部302において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。画素部302には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子の他に、例えば、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)等の発光が得られる発光素子を形成してもよい。例えば、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子に上述の数種類の発光が得られる発光素子を追加することにより、色純度の向上、消費電力の低減等の効果が得ることができる。また、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。さらに、量子ドットとの組み合わせにより発光効率を向上させ、消費電力を低減させた発光装置としてもよい。
さらに、シール材305で封止基板306を素子基板301と貼り合わせることにより、素子基板301、封止基板306、およびシール材305で囲まれた空間318に発光素子317が備えられた構造になっている。なお、空間318には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材305で充填される構成も含むものとする。また、シール材を塗布して貼り合わせる場合には、UV処理や熱処理等のいずれか、またはこれらを組み合わせて行うのが好ましい。
なお、シール材305にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板306に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。シール材としてガラスフリットを用いる場合には、接着性の観点から素子基板301及び封止基板306はガラス基板であることが好ましい。
以上のようにして、アクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
また、本発明の一態様である有機金属錯体をEL層に用いた発光素子を有する発光装置としては、上述したアクティブマトリクス型の発光装置のみならずパッシブマトリクス型の発光装置とすることもできる。
パッシブマトリクス型の発光装置の場合における画素部の断面図を図3(C)に示す。
図3(C)に示すように、基板351上には、第1の電極352と、EL層354と、第2の電極353とを有する発光素子350が形成される。なお、図に示さないが、基板351上に第1の電極352は、縞状(ストライプ状)に複数形成されており、第1の電極352上および第1の電極352の端部を埋めるように絶縁膜355が形成されている。なお、この絶縁膜355は、第1の電極352上の一部に開口部を有している。
また、絶縁膜355上には絶縁材料を用いてなる隔壁356が設けられる。隔壁356の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなるような傾斜を有する。つまり、隔壁356の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁膜355の面方向と同様の方向を向き、絶縁膜355と接する辺)の方が上辺(絶縁膜355の面方向と同様の方向を向き、絶縁膜355と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁356を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことができる。なお、隔壁356を形成した後、EL層354を形成することにより、第1の電極352上の一部に有する開口部において、第1の電極352と接するEL層354が形成される。
さらに、EL層354形成後、第2の電極353が形成される。従って、第2の電極353はEL層354上(場合によっては絶縁膜355上)に、第1の電極352と接することなく形成される。なお、EL層354と第2の電極353は、隔壁356を形成した後に形成されるので、隔壁356上にも順次積層される。
なお、封止の方法については、アクティブマトリクス型の発光装置の場合と同様に行うことができるので、説明は省略する。
以上のようにして、パッシブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
例えば、本明細書等において、様々な基板を用いて、トランジスタまたは発光素子を形成することが出来る。基板の種類は、特定のものに限定されることはない。その基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、ステンレス・スチル基板やタングステン基板などの金属基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどの可撓性基板が挙げられる。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板の一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ樹脂などに代表されるプラスチックがある。または、アクリル等の合成樹脂などがある。さらに、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
また、半導体基板、単結晶基板、又はSOI基板などを用いてトランジスタを製造することによって、特性、サイズ、又は形状などのばらつきが少なく、サイズの小さいトランジスタを製造することができる。このようなトランジスタによって回路を構成すると、回路の低消費電力化、又は回路の高集積化を図ることができる。
また、基板として、上述した可撓性基板を用いる場合には、可撓性基板上にトランジスタや発光素子を直接形成してもよい。または、基板上に剥離層を介してトランジスタや発光素子を一部あるいは全部形成した後、基板より分離し、他の基板に転載してもよい。このように剥離層を用いて別の基板に転載して作製することにより、耐熱性の劣る基板や直接形成が難しい可撓性基板上にトランジスタや発光素子を形成することができる。上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の有機樹脂膜等を用いることができる。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置を適用して完成させた様々な電子機器の一例について、図4を用いて説明する。
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの固定型ゲーム機などが挙げられる。
図4(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。なお、本発明の一態様である発光装置を表示部7103に用いることができる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成としてもよい。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
図4(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、コンピュータは、本発明の一態様である発光装置をその表示部7203に用いることにより作製することができる。また、表示部7203は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。
図4(C)は、スマートウオッチであり、筐体7302、表示パネル7304、操作ボタン7311、7312、接続端子7313、バンド7321、留め金7322、等を有する。
ベゼル部分を兼ねる筐体7302に搭載された表示パネル7304は、非矩形状の表示領域を有している。表示パネル7304は、時刻を表すアイコン7305、その他のアイコン7306等を表示することができる。また、表示パネル7304は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。
なお、図4(C)に示すスマートウオッチは、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。
また、筐体7302の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定するあるいは検知機能を含むもの)、マイクロフォン等を有することができる。なお、スマートウオッチは、発光装置をその表示パネル7304に用いることにより作製することができる。
図4(D)は、携帯電話機(スマートフォンを含む)の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に、表示部7402、マイク7406、スピーカ7405、カメラ7407、外部接続部7404、操作用ボタン7403などを備えている。また、本発明の一態様に係る発光素子を、可撓性を有する基板に形成して発光装置を作製した場合、図4(D)に示すような曲面を有する表示部7402に適用することが可能である。
図4(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボード又は番号ボタンを表示させることが好ましい。
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロセンサや加速度センサ等の検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作用ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサを用い、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ないと判断される場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
さらに、携帯電話機(スマートフォンを含む)の別の構成として、図4(D−1)や図4(D−2)のような構造を有する携帯電話機に適用することもできる。
なお、図4(D−1)や図4(D−2)のような構造を有する場合には、文字情報や画像情報などを筐体7500(1)、7500(2)の第1面7501(1)、7501(2)だけでなく、第2面7502(1)、7502(2)に表示させることができる。このような構造を有することにより、携帯電話機を胸ポケットに収納したままの状態で、第2面7502(1)、7502(2)などに表示された文字情報や画像情報などを使用者が容易に確認することができる。
また、図5(A)〜(C)に、折りたたみ可能な携帯情報端末9310を示す。図5(A)に展開した状態の携帯情報端末9310を示す。図5(B)に展開した状態又は折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末9310を示す。図5(C)に折りたたんだ状態の携帯情報端末9310を示す。携帯情報端末9310は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
表示パネル9311はヒンジ9313によって連結された3つの筐体9315に支持されている。なお、表示パネル9311は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。また、表示パネル9311は、ヒンジ9313を介して2つの筐体9315間を屈曲させることにより、携帯情報端末9310を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態様の発光装置を表示パネル9311に用いることができる。表示パネル9311における表示領域9312は折りたたんだ状態の携帯情報端末9310の側面に位置する表示領域である。表示領域9312には、情報アイコンや使用頻度の高いアプリやプログラムのショートカットなどを表示させることができ、情報の確認やアプリなどの起動をスムーズに行うことができる。
以上のようにして、本発明の一態様である発光装置は、本実施の形態に示したものに限らず、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子を適用して作製される照明装置の構成について図6を用いて説明する。
図6(A)、(B)、(C)、(D)には、照明装置の断面図の一例を示す。なお、図6(A)、(B)は基板側に光を取り出すボトムエミッション型の照明装置であり、図6(C)、(D)は、封止基板側に光を取り出すトップエミッション型の照明装置である。
図6(A)に示す照明装置4000は、基板4001上に発光素子4002を有する。また、基板4001の外側に凹凸を有する基板4003を有する。発光素子4002は、第1の電極4004と、EL層4005と、第2の電極4006を有する。
第1の電極4004は、電極4007と電気的に接続され、第2の電極4006は電極4008と電気的に接続される。また、第1の電極4004と電気的に接続される補助配線4009を設けてもよい。なお、補助配線4009上には、絶縁層4010が形成されている。
また、基板4001と封止基板4011は、シール材4012で接着されている。また、封止基板4011と発光素子4002の間には、乾燥剤4013が設けられていることが好ましい。なお、基板4003は、図6(A)のような凹凸を有するため、発光素子4002で生じた光の取り出し効率を向上させることができる。
また、基板4003に代えて、図6(B)の照明装置4100のように、基板4001の外側に拡散板4015を設けてもよい。
図6(C)の照明装置4200は、基板4201上に発光素子4002を有する。発光素子4002は第1の電極4204と、EL層4205と、第2の電極4206とを有する。
第1の電極4204は、電極4207と電気的に接続され、第2の電極4206は電極4208と電気的に接続される。また第2の電極4206と電気的に接続される補助配線4209を設けてもよい。また、補助配線4209の下部に、絶縁層4210を設けてもよい。
基板4201と凹凸のある封止基板4202は、シール材4212で接着されている。また、封止基板4202と発光素子4002の間にバリア膜4213および平坦化膜4214を設けてもよい。なお、封止基板4202は、図6(C)のような凹凸を有するため、発光素子4002で生じた光の取り出し効率を向上させることができる。
また、封止基板4202に代えて、図6(D)の照明装置4300のように、発光素子4002の上に拡散板4215を設けてもよい。
なお、本実施の形態で示すEL層4005、4205に、本発明の一態様である有機金属錯体を適用することができる。この場合、消費電力の低い照明装置を提供することができる。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置を適用した応用品である照明装置の一例について、図7を用いて説明する。
図7は、発光装置を室内の照明装置8001として用いた例である。なお、発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置8002を形成することもできる。本実施の形態で示す発光装置に含まれる発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置を形成することができる。さらに、室内の壁面に大型の照明装置8003を備えても良い。
また、発光装置をテーブルの表面に用いることによりテーブルとしての機能を備えた照明装置8004とすることができる。なお、その他の家具の一部に発光装置を用いることにより、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
以上のように、発光装置を適用した様々な照明装置が得られる。なお、これらの照明装置は本発明の一態様に含まれるものとする。
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態9)
本実施の形態においては、本発明の一態様の発光素子または本発明の一態様の発光装置を有するタッチパネルについて、図8〜図12を用いて説明を行う。
図8(A)(B)は、タッチパネル2000の斜視図である。なお、図8(A)(B)において、明瞭化のため、タッチパネル2000の代表的な構成要素を示す。
タッチパネル2000は、表示部2501とタッチセンサ2595とを有する(図8(B)参照)。また、タッチパネル2000は、基板2510、基板2570、及び基板2590を有する。なお、基板2510、基板2570、及び基板2590はいずれも可撓性を有する。
表示部2501は、基板2510上に複数の画素及び該画素に信号を供給することができる複数の配線2511を有する。複数の配線2511は、基板2510の外周部にまで引き回され、その一部が端子2519を構成している。端子2519はFPC2509(1)と電気的に接続する。
基板2590には、タッチセンサ2595と、タッチセンサ2595と電気的に接続する複数の配線2598とを有する。複数の配線2598は、基板2590の外周部に引き回され、その一部は端子2599を構成する。そして、端子2599はFPC2509(2)と電気的に接続される。なお、図8(B)では明瞭化のため、基板2590の裏面側(基板2510と対向する面側)に設けられるタッチセンサ2595の電極や配線等を実線で示している。
タッチセンサ2595として、例えば静電容量方式のタッチセンサを適用できる。静電容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。
投影型静電容量方式としては、主に駆動方式の違いから自己容量方式、相互容量方式などがある。相互容量方式を用いると同時多点検出が可能となるため好ましい。
まず、投影型静電容量方式のタッチセンサを適用する場合について、図8(B)を用いて説明する。なお、投影型静電容量方式の場合には、指等の検知対象の近接または接触を検知することができる、様々なセンサを適用することができる。
投影型静電容量方式のタッチセンサ2595は、電極2591と電極2592とを有する。電極2591と電極2592は、複数の配線2598のうちのそれぞれ異なる配線と電気的に接続する。また、電極2592は、図8(A)(B)に示すように、一方向に繰り返し配置された複数の四辺形が角部で配線2594により、一方向に接続される形状を有する。電極2591も同様に複数の四辺形が角部で接続される形状を有するが、接続される方向は、電極2592が接続される方向と交差する方向となる。なお、電極2591が接続される方向と、電極2592が接続される方向とは、必ずしも直交する関係にある必要はなく、0度を超えて90度未満の角度をなすように配置されてもよい。
なお、配線2594の電極2592との交差部の面積は、できるだけ小さくなる形状が好ましい。これにより、電極が設けられていない領域の面積を低減でき、透過率のバラツキを低減できる。その結果、タッチセンサ2595を透過する光の輝度のバラツキを低減することができる。
なお、電極2591及び電極2592の形状はこれに限定されず、様々な形状を取りうる。例えば、複数の電極2591をできるだけ隙間が生じないように配置し、絶縁層を介して電極2592を複数設ける構成としてもよい。このとき、隣接する2つの電極2592の間に、これらとは電気的に絶縁されたダミー電極を設けると、透過率の異なる領域の面積を低減できるため好ましい。
次に、図9を用いて、タッチパネル2000の詳細について説明する。図9は、図8(A)に示す一点鎖線X1−X2間の断面図に相当する。
タッチセンサ2595は、基板2590上に千鳥格子状に配置された電極2591及び電極2592と、電極2591及び電極2592を覆う絶縁層2593と、隣り合う電極2591を電気的に接続する配線2594とを有する。
また、配線2594の下方には、接着層2597が設けられる。接着層2597は、タッチセンサ2595が表示部2501に重なるように、基板2590を基板2570に貼り合わせている。
電極2591及び電極2592は、透光性を有する導電材料を用いて形成する。透光性を有する導電性材料としては、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物を用いることができる。なお、グラフェンを含む膜を用いることもできる。グラフェンを含む膜は、例えば膜状に形成された酸化グラフェンを含む膜を還元して形成することができる。還元する方法としては、熱を加える方法等を挙げることができる。
例えば、透光性を有する導電性材料を基板2590上にスパッタリング法により成膜した後、フォトリソグラフィ法等の様々なパターニング技術により、不要な部分を除去して、電極2591及び電極2592を形成することができる。
また、絶縁層2593に用いる材料としては、例えば、アクリル、エポキシなどの樹脂、シリコーンなどのシロキサン結合を有する樹脂の他、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることもできる。
また、絶縁層2593に設けられた開口部に配線2594を形成することにより、隣接する電極2591が電気的に接続される。透光性の導電性材料は、タッチパネルの開口率を高めることができるため、配線2594に好適に用いることができる。また、電極2591及び電極2592より導電性の高い材料は、電気抵抗を低減できるため配線2594に好適に用いることができる。
一対の電極2591は、配線2594により電気的に接続されている。また、一対の電極2591の間には、電極2592が設けられている。
また、配線2598は、電極2591または電極2592と電気的に接続される。なお、配線2598の一部は、端子として機能する。配線2598には、例えば、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、またはパラジウム等の金属材料や、該金属材料を含む合金材料を用いることができる。
また、端子2599により、配線2598とFPC2509(2)とが電気的に接続される。なお、端子2599には、様々な異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)などを用いることができる。
また、接着層2597は、透光性を有する。例えば、熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂を用いることができ、具体的には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、またはシロキサン系樹脂を用いることができる。
表示部2501は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する。該画素は表示素子と、該表示素子を駆動する画素回路とを有する。
基板2510及び基板2570としては、例えば、水蒸気の透過率が10−5g/(m2・day)以下、好ましくは10−6g/(m2・day)以下である可撓性を有する材料を好適に用いることができる。または、基板2510の熱膨張率と、基板2570の熱膨張率とが、およそ等しい材料を用いると好適である。例えば、線膨張率が1×10−3/K以下、好ましくは5×10−5/K以下、より好ましくは1×10−5/K以下である材料を好適に用いることができる。
また、封止層2560は、空気より大きい屈折率を有すると好ましい。また、図9に示すように、封止層2560側に光を取り出す場合は、封止層2560は光学素子を兼ねることができる。
また、表示部2501は、画素2502Rを有する。また、画素2502Rは発光モジュール2580Rを有する。
画素2502Rは、発光素子2550Rと、発光素子2550Rに電力を供給することができるトランジスタ2502tとを有する。なお、トランジスタ2502tは、画素回路の一部として機能する。また、発光モジュール2580Rは、発光素子2550Rと、着色層2567Rとを有する。
発光素子2550Rは、下部電極と、上部電極と、下部電極と上部電極の間にEL層とを有する。
また、封止層2560が光を取り出す側に設けられている場合、封止層2560は、発光素子2550Rと着色層2567Rに接する。
着色層2567Rは、発光素子2550Rと重なる位置にある。これにより、発光素子2550Rが発する光の一部は着色層2567Rを透過して、図中に示す矢印の方向の発光モジュール2580Rの外部に射出される。
また、表示部2501には、光を射出する方向に遮光層2567BMが設けられる。遮光層2567BMは、着色層2567Rを囲むように設けられている。
また、表示部2501は、画素に重なる位置に反射防止層2567pを有する。反射防止層2567pとして、例えば円偏光板を用いることができる。
表示部2501には、絶縁層2521が設けられる。絶縁層2521はトランジスタ2502tを覆う。なお、絶縁層2521は、画素回路に起因する凹凸を平坦化するための機能を有する。また、絶縁層2521に不純物の拡散を抑制できる機能を付与してもよい。これにより、不純物の拡散によるトランジスタ2502t等の信頼性の低下を抑制できる。
また、発光素子2550Rは、絶縁層2521の上方に形成される。また、発光素子2550Rが有する下部電極には、該下部電極の端部に重なる隔壁2528が設けられる。なお、基板2510と、基板2570との間隔を制御するスペーサを、隔壁2528上に形成してもよい。
走査線駆動回路2503g(1)は、トランジスタ2503tと、容量素子2503cとを有する。なお、駆動回路を画素回路と同一の工程で同一基板上に形成することができる。
また、基板2510上には、信号を供給することができる配線2511が設けられる。また、配線2511上には、端子2519が設けられる。また、端子2519には、FPC2509(1)が電気的に接続される。また、FPC2509(1)は、画像信号及び同期信号等の信号を供給する機能を有する。なお、FPC2509(1)にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。
また、表示部2501には、様々な構造のトランジスタを適用することができる。なお、図9(A)においては、ボトムゲート型のトランジスタを適用する場合について、例示している。図9(A)に示す、トランジスタ2502t及びトランジスタ2503tには、酸化物半導体を含む半導体層をチャネル領域として用いることができる。または、トランジスタ2502t及びトランジスタ2503tには、アモルファスシリコンを含む半導体層をチャネル領域として用いることができる。または、トランジスタ2502t及びトランジスタ2503tには、レーザーアニールなどの処理により結晶化させた多結晶シリコンを含む半導体層をチャネル領域として用いることができる。
また、トップゲート型のトランジスタを適用する場合の表示部2501の構成を図9(B)に示す。
トップゲート型のトランジスタの場合、ボトムゲート型のトランジスタに用いることのできる半導体層と同様の構成の他、多結晶シリコン基板または単結晶シリコン基板から転置された膜等を含む半導体層をチャネル領域として用いてもよい。
次に、図9に示す構成と異なる構成のタッチパネルについて、図10を用いて説明する。
図10は、タッチパネル2001の断面図である。図10に示すタッチパネル2001は、図9に示すタッチパネル2000と、表示部2501に対するタッチセンサ2595の位置が異なる。ここでは異なる構成について詳細に説明し、同様の構成を用いることができる部分は、タッチパネル2000の説明を援用する。
着色層2567Rは、発光素子2550Rと重なる位置にある。また、図10(A)に示す発光素子2550Rは、トランジスタ2502tが設けられている側に光を射出する。これにより、発光素子2550Rが発する光の一部は、着色層2567Rを透過して、図中に示す矢印の方向の発光モジュール2580Rの外部に射出される。
表示部2501は、光を射出する方向に遮光層2567BMを有する。遮光層2567BMは、着色層2567Rを囲むように設けられている。
タッチセンサ2595は、表示部2501の基板2510側に設けられている(図10(A)参照)。
接着層2597は、基板2510と基板2590の間にあり、表示部2501とタッチセンサ2595を貼り合わせる。
また、表示部2501には、様々な構造のトランジスタを適用することができる。なお、図10(A)においては、ボトムゲート型のトランジスタを適用する場合について例示している。また、図10(B)には、トップゲート型のトランジスタを適用する場合について例示している。
次に、タッチパネルの駆動方法の一例について、図11を用いて説明を行う。
図11(A)は、相互容量方式のタッチセンサの構成を示すブロック図である。図11(A)では、パルス電圧出力回路2601、電流検出回路2602を示している。なお、図11(A)では、パルス電圧が与えられる電極2621をX1−X6として、電流の変化を検知する電極2622をY1−Y6として、それぞれ6本の配線で例示している。また、図11(A)は、電極2621と、電極2622とが重畳することで形成される容量2603を示している。なお、電極2621と電極2622とはその機能を互いに置き換えてもよい。
パルス電圧出力回路2601は、X1−X6の配線に順にパルス電圧を印加するための回路である。X1−X6の配線にパルス電圧が印加されることで、容量2603を形成する電極2621と電極2622との間に電界が生じる。この電極間に生じる電界が遮蔽等により容量2603の相互容量に変化を生じさせることを利用して、被検知体の近接、または接触を検出することができる。
電流検出回路2602は、容量2603での相互容量の変化による、Y1−Y6の配線での電流の変化を検出するための回路である。Y1−Y6の配線では、被検知体の近接、または接触がないと検出される電流値に変化はないが、検出する被検知体の近接、または接触により相互容量が減少する場合には電流値が減少する変化を検出する。なお電流の検出は、積分回路等を用いて行えばよい。
次に、図11(B)には、図11(A)で示す相互容量方式のタッチセンサにおける入出力波形のタイミングチャートを示す。図11(B)では、1フレーム期間で各行列での被検知体の検出を行うものとする。また図11(B)では、被検知体を検出しない場合(非タッチ)と被検知体を検出する場合(タッチ)との2つの場合について示している。なおY1−Y6の配線については、検出される電流値に対応する電圧値とした波形を示している。
X1−X6の配線には、順にパルス電圧が与えられ、該パルス電圧にしたがってY1−Y6の配線での波形が変化する。被検知体の近接または接触がない場合には、X1−X6の配線の電圧の変化に応じてY1−Y6の波形が一様に変化する。一方、被検知体が近接または接触する箇所では、電流値が減少するため、これに対応する電圧値の波形も変化する。このように、相互容量の変化を検出することにより、被検知体の近接または接触を検知することができる。
また、図11(A)ではタッチセンサとして配線の交差部に容量2603のみを設けるパッシブマトリクス型のタッチセンサの構成を示したが、トランジスタと容量とを備えたアクティブマトリクス型のタッチセンサとしてもよい。図12にアクティブマトリクス型のタッチセンサに含まれる一つのセンサ回路の例を示している。
図12に示すセンサ回路は、容量2603と、トランジスタ2611と、トランジスタ2612と、トランジスタ2613とを有する。
トランジスタ2613はゲートに信号G2が与えられ、ソースまたはドレインの一方に電圧VRESが与えられ、他方が容量2603の一方の電極およびトランジスタ2611のゲートと電気的に接続する。トランジスタ2611は、ソースまたはドレインの一方がトランジスタ2612のソースまたはドレインの一方と電気的に接続し、他方に電圧VSSが与えられる。トランジスタ2612は、ゲートに信号G1が与えられ、ソースまたはドレインの他方が配線MLと電気的に接続する。容量2603の他方の電極には電圧VSSが与えられる。
次に、図12に示すセンサ回路の動作について説明する。まず信号G2としてトランジスタ2613をオン状態とする電位が与えられることで、トランジスタ2611のゲートが接続されるノードnに電圧VRESに対応した電位が与えられる。次に、信号G2としてトランジスタ2613をオフ状態とする電位が与えられることで、ノードnの電位が保持される。続いて、指等の被検知体の近接または接触により、容量2603の相互容量が変化することに伴い、ノードnの電位がVRESから変化する。
読み出し動作は、信号G1にトランジスタ2612をオン状態とする電位を与える。ノードnの電位に応じてトランジスタ2611に流れる電流、すなわち配線MLに流れる電流が変化する。この電流を検出することにより、被検知体の近接または接触を検出することができる。
トランジスタ2611、トランジスタ2612、及びトランジスタ2613としては、酸化物半導体層をチャネル領域が形成される半導体層に用いることが好ましい。とくにトランジスタ2613にこのようなトランジスタを適用することにより、ノードnの電位を長期間に亘って保持することが可能となり、ノードnにVRESを供給しなおす動作(リフレッシュ動作)の頻度を減らすことができる。
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
≪合成例1≫
本実施例では、実施の形態1で構造式(100)として示したビス(4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン−12−イル−κC,κN)(2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(mdbqz)2(acac)])の合成方法について説明する。[Ir(mdbqz)2(acac)]の構造を以下に示す。
<ステップ1; 5−(2−ビフェニル)−4−メチルピリミジンの合成>
5−ブロモ−4−メチルピリミジン2.9g(16.8mmol)、2−ビフェニルボロン酸3.6g(18.0mmol)、リン酸三カリウム9.6g(45.0mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(S−phos)0.369g(0.900mmol)、トルエン40mLを300mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した後、減圧しながら攪拌することで脱気した。脱気後、フラスコ内を窒素置換し、酢酸パラジウム(II)0.101g(0.450mmol)を加え、窒素気流下、100℃で13時間攪拌した。得られた反応溶液に水を加え、有機層と水層に分液し、水層をクロロホルムで抽出した。有機層と得られた抽出溶液を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して固体を得た。固体はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、ヘキサン:酢酸エチル=4:1の混合溶媒を用いた。得られた目的物のフラクションを濃縮して、白色固体を4.1g、収率98%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により得られた白色固体が5−(2−ビフェニル)−4−メチルピリミジンであることを確認した。ステップ1の合成スキームを下記式(a−0)に示す。
<ステップ2; 4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン(略称:Hmdbqz)の合成>
ステップ1で合成した5−(2−ビフェニル)−4−メチルピリミジン4.1g(16.4mmol)を100mL三口フラスコに入れ、減圧下で攪拌することにより脱気し、フラスコ内を窒素置換した。この固体に脱水ジクロロメタン40mL、濃硫酸1.2g(12.3mmol)を加えた。この混合溶液に塩化鉄(III)10.6g(65.6mmol)を加えて室温で20時間撹拌した。所定時間経過後、得られた混合物をメタノールに注ぎ入れ、室温で16時間撹拌した。この反応溶液に水とジクロロメタンを加えて有機層と水層に分液し、水層をジクロロメタンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせ水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して固体を得た。得られた固体にメタノール1Lを加えて、1時間加熱還流し、自然ろ過することで不溶物を取り除いた。得られたろ液を濃縮して固体を得た。得られた固体をメタノールで再結晶し、白色固体を2.2g、収率54%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により得られた白色固体が4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリンであることを確認した。ステップ2の合成スキームを下記式(b−0)に示す。
<ステップ3; ジ−μ−クロロ−テトラキス(4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン−12−イル−κC,κN)ジイリジウム(III)(略称:[Ir(mdbqz)2Cl]2)の合成>
ステップ2で合成した4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン(略称:Hmdbqz)2.2g(8.9mmol)、塩化イリジウム水和物0.266g(0.89mmol)、エチレングリコール40mLを100mL丸底フラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz 100W)を1時間照射することで、反応させた。反応後、反応溶液を吸引ろ過し、得られた固体をメタノール、水、ジクロロメタンで洗浄し、黄色固体を0.37g、収率58%で得た。ステップ3の合成スキームを下記式(c−0)に示す。
<ステップ4; ビス(4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン−12−イル−κC,κN)(2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(mdbqz)2(acac)])の合成>
2−エトキシエタノール15mL、ステップ3で合成した[Ir(mdbqz)2Cl]20.370g(0.26mmol)、アセチルアセトン0.260g(2.6mmol)、炭酸ナトリウム0.276g(2.6mmol)を50mLナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz 120W)を2時間照射することで、反応させた。反応後、得られた反応混合物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた抽出溶液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過してろ液を得た。このろ液を濃縮して固体を得た。得られた固体をジクロロメタン/エタノールの混合溶媒で再結晶し、黄色固体を160mg、収率40%で得た。ステップ4の合成スキームを下記式(d−0)に示す。
上記ステップ4で得られた黄色固体のプロトン(1H)を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。以下に得られた値を示す。また、1H−NMRチャートを図15に示す。このことから、本合成例1において、上述の構造式(100)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(mdbqz)2(acac)]が得られたことがわかった。
1H−NMR.δ(CDCl3):1.80(s,6H),3.56(s,6H),5.31(s,1H),6.45(d,2H),7.06(t,2H),7.71−7.76(m,4H),7.89(d,2H),8.64(d,2H),8.80(d,2H),9.28(s,2H).
続いて、[Ir(mdbqz)2(acac)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.010mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気した、ジクロロメタン溶液(0.010mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図16に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。なお、図16に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.010mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
図16に示す通り、本実施例で説明した有機金属錯体[Ir(mdbqz)2(acac)]は、557nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは黄緑色の発光が観測された。
次に、本実施例で得られた[Ir(mdbqz)2(acac)]を液体クロマトグラフ質量分析(Liquid Chromatography Mass Spectrometry(略称:LC/MS分析))によって質量(MS)分析した。
LC/MS分析は、LC(液体クロマトグラフィー)分離をウォーターズ社製Acquity UPLC(登録商標)により、MS分析(質量分析)をウォーターズ社製Xevo G2 Tof MSにより行った。LC分離で用いたカラムはウォーターズ社製Acquity UPLC(登録商標) BEH C8 (2.1×100mm 1.7μm)、カラム温度は40℃とした。移動相は移動相Aをアセトニトリル、移動相Bを0.1%ギ酸水溶液とした。また、サンプルは任意の濃度の[Ir(mdbqz)2(acac)]をクロロホルムに溶解し、アセトニトリルで希釈して調整し、注入量は5.0μLとした。
LC分離には移動相の組成を変化させるグラジエント法を用い、測定開始後0分から1分までが、移動相A:移動相B=40:60、その後組成を変化させ、10分における移動相Aと移動相Bとの比が移動相A:移動相B=95:5となるようにした。比率はリニアに変化させた。
MS分析では、エレクトロスプレーイオン化法(ElectroSpray Ionization(略称:ESI))によるイオン化を行った。この時のキャピラリー電圧は3.0kV、サンプルコーン電圧は30Vとし、検出はポジティブモードで行った。以上の条件でイオン化されたm/z=779.20の成分を衝突室(コリジョンセル)内でアルゴンガスと衝突させてプロダクトイオンに解離させた。アルゴンを衝突させる際のエネルギー(コリジョンエネルギー)は30eVとした。なお、測定する質量範囲はm/z=100〜1200とした。図17に、解離させたプロダクトイオンを飛行時間(TOF)型MSで検出した結果を示す。
図17の結果から、[Ir(mdbqz)2(acac)]は、主としてm/z=679付近にプロダクトイオンが検出されることがわかった。なお、図17に示す結果は、[Ir(mdbqz)2(acac)]に由来する特徴的な結果を示すものであることから、混合物中に含まれる[Ir(mdbqz)2(acac)]を同定する上での重要なデータであるといえる。
なお、m/z=679付近のプロダクトイオンは、[Ir(mdbqz)2(acac)]におけるアセチルアセトンが離脱した状態のカチオンと推定され、[Ir(mdbqz)2(acac)]が、アセチルアセトンを含んでいることを示唆するものである。
≪合成例2≫
本実施例では、実施の形態1で構造式(101)として示したビス(4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン−12−イル−κC,κN)(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(mdbqz)2(dpm)])の合成方法について説明する。[Ir(mdbqz)2(dpm)]の構造を以下に示す。
<ステップ1; ジ−μ−クロロ−テトラキス(4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン−12−イル−κC,κN)ジイリジウム(III)(略称:[Ir(mdbqz)2Cl]2)の合成>
4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン(略称:Hmdbqz)2.0g(8.2mmol)、塩化イリジウム水和物1.2g(4.0mmol)、 2−エトキシエタノール30mL、水10mLを100mL丸底フラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz 100W)を2時間照射することで、反応させた。反応後、反応溶液を吸引ろ過し、得られた固体をメタノールで洗浄し、茶色固体を2.5g、収率86%で得た。ステップ1の合成スキームを下記式(c−1)に示す。
<ステップ2; ビス(4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン−12−イル−κC,κN)(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(mdbqz)2(dpm)])の合成>
2−エトキシエタノール40mL、ステップ1で合成した[Ir(mdbqz)2Cl]22.5g(1.7mmol)、ジピバロイルメタン3.1g(17mmol)、炭酸ナトリウム1.8g(17mmol)を100mL丸底フラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz 120W)を2時間照射することで、反応させた。反応後、得られた反応混合物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた抽出溶液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過してろ液を得た。このろ液を濃縮して固体を得た。得られた固体にジクロロメタンを加えて、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)と酸化アルミニウム(アルミナ)の積層物を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し、固体を得た。得られた固体をジクロロメタン/エタノールの混合溶媒で再結晶し、黄色固体を190mg、収率6%で得た。ステップ2の合成スキームを下記式(d−2)に示す。
上記ステップ2で得られた黄色固体のプロトン(1H)を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。以下に得られた値を示す。また、1H−NMRチャートを図18に示す。このことから、本合成例2において、上述の構造式(101)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(mdbqz)2(dpm)]が得られたことがわかった。
1H−NMR.δ(CDCl3):0.87(s,18H),3.54(s,6H),5.61(s,1H),6.52(d,2H),7.06(t,2H),7.70−7.75(m,4H),7.89(d,2H),8.64(d,2H),8.79(d,2H),9.17(s,2H).
続いて、[Ir(mdbqz)2(dpm)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.0096mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気した、ジクロロメタン溶液(0.0096mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図19に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。なお、図19に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.0096mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
図19に示す通り、本実施例で説明した有機金属錯体[Ir(mdbqz)2(dpm)]は、557nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは黄緑色の発光が観測された。
次に、本実施例で得られた[Ir(mdbqz)2(dpm)]を液体クロマトグラフ質量分析(Liquid Chromatography Mass Spectrometry(略称:LC/MS分析))によって質量(MS)分析した。
LC/MS分析は、LC(液体クロマトグラフィー)分離をウォーターズ社製Acquity UPLC(登録商標)により、MS分析(質量分析)をウォーターズ社製Xevo G2 Tof MSにより行った。LC分離で用いたカラムはウォーターズ社製Acquity UPLC(登録商標) BEH C8 (2.1×100mm 1.7μm)、カラム温度は40℃とした。移動相は移動相Aをアセトニトリル、移動相Bを0.1%ギ酸水溶液とした。また、サンプルは任意の濃度の[Ir(mdbqz)2(dpm)]をクロロホルムに溶解し、アセトニトリルで希釈して調整し、注入量は5.0μLとした。
LC分離には移動相の組成を変化させるグラジエント法を用い、測定開始後0分から1分までが、移動相A:移動相B=70:30、その後組成を変化させ、10分における移動相Aと移動相Bとの比が移動相A:移動相B=95:5となるようにした。比率はリニアに変化させた。
MS分析では、エレクトロスプレーイオン化法(ElectroSpray Ionization(略称:ESI))によるイオン化を行った。この時のキャピラリー電圧は3.0kV、サンプルコーン電圧は30Vとし、検出はポジティブモードで行った。以上の条件でイオン化されたm/z=863.29の成分を衝突室(コリジョンセル)内でアルゴンガスと衝突させてプロダクトイオンに解離させた。アルゴンを衝突させる際のエネルギー(コリジョンエネルギー)は30eVとした。なお、測定する質量範囲はm/z=100〜1200とした。図20に、解離させたプロダクトイオンを飛行時間(TOF)型MSで検出した結果を示す。
図20の結果から、[Ir(mdbqz)2(dpm)]は、主としてm/z=679付近にプロダクトイオンが検出されることがわかった。なお、図20に示す結果は、[Ir(mdbqz)2(dpm)]に由来する特徴的な結果を示すものであることから、混合物中に含まれる[Ir(mdbqz)2(dpm)]を同定する上での重要なデータであるといえる。
なお、m/z=679付近のプロダクトイオンは、[Ir(mdbqz)2(dpm)]におけるジピバロイルメタンが離脱した状態のカチオンと推定され、[Ir(mdbqz)2(dpm)]が、ジピバロイルメタンを含んでいることを示唆するものである。
≪合成例3≫
本実施例では、実施の形態1で構造式(104)として示したビス(4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン−12−イル−κC,κN)(2,8−ジメチル−4,6−ノナンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(mdbqz)2(divm)])の合成方法について説明する。[Ir(mdbqz)2(divm)]の構造を以下に示す。
<ビス(4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン−12−イル−κC,κN)(2,8−ジメチル−4,6−ノナンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(mdbqz)2(divm)])の合成>
2−エトキシエタノール40mL、[Ir(mdbqz)2Cl]22.1g(1.5mmol)、ジイソバレリルメタン1.7g(9.2mmol)、炭酸ナトリウム1.6g(15mmol)を100mL丸底フラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz 120W)を1時間照射することで、反応させた。反応後、反応溶液にジクロロメタンを加えて、吸引ろ過し、固体を取り除き、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮し、固体を得た。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、ジクロロメタンを用いた。得られた目的物のフラクションを濃縮して、固体を得た。得られた固体を酢酸エチル/ヘキサンの混合溶媒で再結晶し、黄色固体を110mg、収率9%で得た。合成スキームを下記式(d−1)に示す。
上記ステップで得られた黄色固体のプロトン(1H)を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。以下に得られた値を示す。また、1H−NMRチャートを図21に示す。このことから、本合成例3において、上述の構造式(104)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(mdbqz)2(divm)]が得られたことがわかった。
1H−NMR.δ(CDCl3):0.57(d,6H),0.63(d,6H),1.63−1.71(m,2H),1.84−1.92(m,4H),3.54(s,6H),5.27(s,1H),6.51(d,2H),7.07(t,2H),7.72−7.77(m,4H),7.91(d,2H),8.65(d,2H),8.80(d,2H),9.27(s,2H).
続いて、[Ir(mdbqz)2(divm)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.0099mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、絶対PL量子収率測定装置((株)浜松ホトニクス製 C11347−01)を用い、グローブボックス((株)ブライト製 LABstarM13(1250/780)にて、窒素雰囲気下でジクロロメタン脱酸素溶液(0.0099mmol/L)を石英セルに入れ、密栓し、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図22に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。なお、図22に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.0099mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
図22に示す通り、本実施例で説明した有機金属錯体[Ir(mdbqz)2(divm)]は、553nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは黄緑色の発光が観測された。
≪合成例4≫
本実施例では、実施の形態1で構造式(114)として示したトリス(4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン−12−イル−κC,κN)イリジウム(III)(略称:[Ir(mdbqz)3])の合成方法について説明する。[Ir(mdbqz)3]の構造を以下に示す。
<トリス(4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン−12−イル−κC,κN)イリジウム(III)(略称:[Ir(mdbqz)3])の合成>
4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン(略称:Hmdbqz)1.1g(4.5mmol)、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.44g(0.90mmol)を、三方コックを付けた反応容器に入れ、アルゴン気流下、250℃にて42時間加熱した。得られた反応混合物にジクロロメタンを加えて、吸引ろ過し、固体を得た。得られた固体にトルエン200mlを加えて、30分加熱還流した。この混合物をろ過して固体を得た。得られた固体に1,1,2,2−テトラクロロエタン100mlを加えて、140℃で30分加熱した。この混合物をろ過して、橙色固体を0.39g、収率47%で得た。合成スキームを下記式(c−2)に示す。
上記ステップで得られた橙色固体のEI−MS測定(Electron Impact−Mass Spectrometry)を行った。イオン化には70eVの加速電子を用いた。質量スペクトルを図23に示す。なお、図23において、横軸はm/z(質量電荷比)を、縦軸は強度(任意単位)をそれぞれ表す。図23に示すスペクトルより、m/z=922が分子イオンに由来する。4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン(略称:Hmdbqz)配位子由来のフラグメントm/z=243が基準ピークとなり、分子イオン由来のピーク(m/z=922)があまり見られないことは、この分裂が非常に起こりやすいことを示している。また、m/z=679は分子イオンから同時に二つの結合が切れ、4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン(略称:Hmdbqz)配位子を一つ失ってできたフラグメントである。また、4−メチルジベンゾ[f,h]キナゾリン(略称:Hmdbqz)配位子はさらに開裂してフラグメントを生じていることがわかる。このことから、本合成例4において、上述の構造式(114)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(mdbqz)3]が得られたことがわかった。
本実施例では、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(mdbqz)2(acac)](構造式(100))を発光層に用いた発光素子1を作製し、動作特性について測定した。また、作製した発光素子1の発光スペクトルの測定を行った。なお、発光素子1の作製については、図24を用いて説明する。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
≪発光素子1の作製≫
まず、ガラス製の基板900上にインジウム錫酸化物(ITO)をスパッタリング法により成膜し、陽極として機能する第1の電極901を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
次に、基板900上に発光素子1を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板900を30分程度放冷した。
次に、第1の電極901が形成された面が下方となるように、基板900を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。本実施例では、真空蒸着法により、EL層902を構成する正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、電子注入層915が順次形成される場合について説明する。
真空蒸着装置内を10−4Paに減圧した後、1,3,5−トリ(ジベンゾチオフェン−4−イル)ベンゼン(略称:DBT3P−II)と酸化モリブデンとを、DBT3P−II:酸化モリブデン=4:2(質量比)となるように共蒸着することにより、第1の電極901上に正孔注入層911を形成した。膜厚は20nmとした。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。
次に、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20nm蒸着することにより、正孔輸送層912を形成した。
次に、正孔輸送層912上に発光層913を形成した。2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)、N−(1,1’−ビフェニル−4−イル)−9,9−ジメチル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]−9H−フルオレン−2−アミン(略称:PCBBiF)、[Ir(mdbqz)2(acac)]を、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:[Ir(mdbqz)2(acac)]=0.8:0.2:0.025(質量比)となるように共蒸着した。なお、膜厚は、40nmの膜厚とした。
次に、発光層913上に2mDBTBPDBq−IIを20nm蒸着した後、バソフェナントロリン(略称:BPhen)を10nm蒸着することにより、電子輸送層914を形成した。さらに電子輸送層914上に、フッ化リチウムを1nm蒸着することにより、電子注入層915を形成した。
最後に、電子注入層915上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着し、陰極となる第2の電極903形成し、発光素子1を得た。なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
以上により得られた発光素子1の素子構造を表2に示す。
また、作製した発光素子1は、大気に曝されないように窒素雰囲気のグローブボックス内において封止した(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、及び80℃にて1時間熱処理)。
≪発光素子1の動作特性≫
作製した発光素子1の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
発光素子1の電圧−輝度特性を図25、発光素子1の輝度−電流効率特性を図26にそれぞれ示す。
これらの結果より、本発明の一態様である発光素子1は、高効率な素子であることがわかった。また、1000cd/m2付近における発光素子1の主な初期特性値を以下の表3に示す。
上記結果から、本実施例で作製した発光素子1は、高輝度であり、良好な電流効率を示していることが分かる。
また、発光素子1に2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、図27に示す。図27に示す通り、発光素子1の発光スペクトルは544nm付近にピークを有しており、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(mdbqz)2(acac)]の発光に由来していることが示唆される。
本実施例では、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(mdbqz)2(dpm)](構造式(101))を発光層に用いた発光素子2を作製し、動作特性について測定した。また、作製した発光素子2の発光スペクトルの測定を行った。なお、発光素子2は、実施例5で示した発光素子1と同じ構造を有しており、図24を用いて説明する。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
≪発光素子2の作製≫
まず、ガラス製の基板900上にインジウム錫酸化物(ITO)をスパッタリング法により成膜し、陽極として機能する第1の電極901を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
次に、基板900上に発光素子2を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板900を30分程度放冷した。
次に、第1の電極901が形成された面が下方となるように、基板900を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。本実施例では、真空蒸着法により、EL層902を構成する正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、電子注入層915が順次形成される場合について説明する。
真空蒸着装置内を10−4Paに減圧した後、1,3,5−トリ(ジベンゾチオフェン−4−イル)ベンゼン(略称:DBT3P−II)と酸化モリブデンとを、DBT3P−II:酸化モリブデン=4:2(質量比)となるように共蒸着することにより、第1の電極901上に正孔注入層911を形成した。膜厚は20nmとした。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。
次に、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20nm蒸着することにより、正孔輸送層912を形成した。
次に、正孔輸送層912上に発光層913を形成した。2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)、N−(1,1’−ビフェニル−4−イル)−9,9−ジメチル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]−9H−フルオレン−2−アミン(略称:PCBBiF)、[Ir(mdbqz)2(dpm)]を、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:[Ir(mdbqz)2(dpm)]=0.7:0.3:0.05(質量比)を20nmとなるように共蒸着した後、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:[Ir(mdbqz)2(dpm)]=0.8:0.2:0.05(質量比)を20nmとなるように共蒸着した。
次に、発光層913上に2mDBTBPDBq−IIを20nm蒸着した後、バソフェナントロリン(略称:BPhen)を10nm蒸着することにより、電子輸送層914を形成した。さらに電子輸送層914上に、フッ化リチウムを1nm蒸着することにより、電子注入層915を形成した。
最後に、電子注入層915上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着し、陰極となる第2の電極903形成し、発光素子2を得た。なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
以上により得られた発光素子2の素子構造を表4に示す。
また、作製した発光素子2は、大気に曝されないように窒素雰囲気のグローブボックス内において封止した(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、及び80℃にて1時間熱処理)。
≪発光素子2の動作特性≫
作製した発光素子2の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
発光素子2の電圧−輝度特性を図28、発光素子2の輝度−電流効率特性を図29にそれぞれ示す。
これらの結果より、本発明の一態様である発光素子2は、高効率な素子であることがわかった。また、1000cd/m2付近における発光素子2の主な初期特性値を以下の表5に示す。
上記結果から、本実施例で作製した発光素子2は、良好な電流効率を示していることが分かる。
また、発光素子2に2.5mA/cm2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、図30に示す。図30に示す通り、発光素子2の発光スペクトルは553nm付近にピークを有しており、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(mdbqz)2(dpm)]の発光に由来していることが示唆される。
また、発光素子2についての信頼性試験の結果を図31に示す。図31において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。なお、信頼性試験は、初期輝度を5000cd/m2に設定し、電流密度一定の条件で発光素子2を駆動させた。その結果、発光素子2は、長寿命な発光素子であることがわかった。