ところで、操舵支援処理を実行するためには走行車線を画定する一対の車線区画線(具体的には、車道中央線、車線境界線、及び、車道外側線等の組合せ)を前方画像から精度良く取得(抽出)する必要がある。例えば、車線区画線の一部が剥がれていたり汚損していたりすると、車線区画線の取得精度が低くなる。
車線区画線の取得精度が低くなると、取得された車線区画線の位置と、実際の車線区画線の位置と、の間の誤差が大きくなり、以て、自車両の走行位置と、実際の走行車線の左右方向中心と、の離間量が大きくなる可能性が高くなる。この場合、運転者が操舵ハンドルを把持していない状態が継続するのは好ましくない。しかしながら、従来装置は、判定時間を決定するに際して車線区画線の取得状況(具体的には、車線区画線の取得精度)を考慮していなかった。
そこで、本発明の目的の一つは、車線区画線の取得状況に応じて判定時間(時間閾値)を適切に決定することができる運転支援装置を提供することである。
上記目的を達成するための本発明に係る運転支援装置(以下、「本発明装置」とも称呼される。)は、撮像装置、車線取得部、先行車両取得部、車線維持制御部、把持判定部、及び、警告処理部を備える。
前記撮像装置(前方カメラ42)は、自車両(10)の「前方画像」を撮影する。
前記車線取得部(運転支援ECU20)は、
前記自車両が走行する車線である走行車線を画定する一対の車線区画線(左区画線LL及び右区画線LR)の位置を前記前方画像から取得すると共にその「取得の精度」が高いか低いか(類似度Dsが精度閾値Dth2以上であるか否かの判定)を判定する。
前記先行車両取得部(運転支援ECU20、ミリ波レーダ41及び前方カメラ42)は、
前記走行車線内にあって前記自車両の直前を走行する「先行車両」の位置を取得する。
前記車線維持制御部(運転支援ECU20及びEPS−ECU33)は、
前記自車両に前記走行車線内を走行させるため、
前記車線取得部によって取得された前記一対の車線区画線に基づいて「目標走行経路(Ld)」を決定し且つ前記自車両が前記目標走行経路を走行するように前記自車両の操舵角度(θs)を変更する「車線維持制御」を実行する。
前記把持判定部(運転支援ECU20、EPS−ECU33及びトルクセンサ67)は、
前記自車両の運転者が前記操舵角度を変更するために操作する操舵ハンドル(51)を前記運転者が把持しているか否かを判定する(図5のステップ515)。
前記警告処理部(運転支援ECU20)は、
前記車線維持制御部が前記車線維持制御を実行しているとき、
前記把持判定部により前記運転者が前記操舵ハンドルを把持していないと判定された状態が所定の時間閾値(時間閾値Tth、及び、時間閾値Tthに警告時間Twを加えた時間)以上継続すると、
前記運転者への警告を行う処理(図5のステップ560)及び前記車線維持制御部による前記車線維持制御を停止させる処理(図5のステップ555)の少なくとも一方を実行する。
更に、前記車線維持制御部は、
前記車線維持制御の実行時に前記一対の車線区画線が取得できないとき、
前記先行車両が前記自車両前方の所定の範囲(追従対象車両エリア)内を走行する追従対象車両であれば、
前記追従対象車両の走行軌跡(先行車両移動軌跡Lm)に基づいて前記目標走行経路を決定する「追随走行処理」を実行する。
前記警告処理部は、
前記車線維持制御部により前記追随走行処理が実行されておらず且つ前記車線取得部により前記取得の精度が低いと判定されている場合(経路取得の信頼度が中である場合)、
前記自車両の任意の車速(Vs)に対し、前記車線維持制御部により前記追随走行処理が実行されておらず且つ前記車線取得部により前記取得の精度が高いと判定されている場合(経路取得の信頼度が高である場合)と比較して前記時間閾値を小さい値に設定する(図3の実線L1及び実線L2)。
加えて、前記警告処理部は、
前記車線維持制御部により前記追随走行処理が実行されており(経路取得の信頼度が低である場合)且つ前記車速が所定の速度閾値(Vth)よりも高い場合、
任意の前記車速に対し、前記車線維持制御部により前記追随走行処理が実行されておらず且つ前記車線取得部により前記取得の精度が低いと判定されている場合と比較して前記時間閾値を小さい値に設定する(図3の実線L2及び破線L3)。
更に、前記警告処理部は、
前記車線維持制御部により前記追随走行処理が実行されており且つ前記車速が前記速度閾値以下である場合、
任意の前記車速に対し、前記時間閾値を前記車線維持制御部により前記追随走行処理が実行されておらず且つ前記車線取得部により前記取得の精度が低いと判定されている場合と等しい値に設定する(図3の実線L2及び破線L3)。
一般に、車線維持制御は運転者による運転を支援するために実行されるので、車線維持制御の実行中であっても運転者が自車両を運転する意思を維持している必要がある。そのため、本発明装置は、運転者が操舵ハンドルを把持していない状態が継続すると、運転者が運転意思を欠いていると判断し、運転者への警告及び/又は車線維持制御の停止を行う「警告処理」を実行する。警告処理の実行によって本発明装置は、運転者に運転意思の持続を促す。
ところで、車線維持制御の実行中、自車両の走行位置が走行車線の左右方向中心から大きく離間すると、運転者が操舵ハンドルを操作(操舵)して走行位置を修正する必要がある。そのため、自車両の走行位置と、走行車線の左右方向中心と、の離間量が大きくなる可能性が高いとき、運転者が操舵ハンドルを把持していない状態が継続することは望ましくない。
車線区画線の取得精度が低いと、取得された車線区画線の位置と実際の車線区画線の位置との間に差分(誤差)が生じ、以て、自車両の走行位置と、走行車線の左右方向中心と、の離間量が大きくなる可能性が高くなる。そこで、本発明装置は、車線区画線の取得精度が低いと、車線区画線の取得精度が高いときと比較して時間閾値を短くする。
一方、追随走行処理が実行されているとき、追従対象車両の走行位置と、走行車線の左右方向中心と、の離間量が大きくなると、自車両の走行位置と、走行車線の左右方向中心と、の離間量が大きくなる。そこで、本発明装置は、追随走行処理が実行されているとき、上述した車線区画線の取得精度が低いときと比較して時間閾値を短くする。
ただし、自車両の車速が低いと、本発明装置は、時間閾値を車線区画線の取得精度が低いときと同じ値に設定する。そのため、車速が低いために自車両の走行位置と、走行車線の左右方向中心と、の離間量が急速に増加しないとき、時間閾値が短くなり過ぎることが回避される。その結果、運転者が操舵ハンドルから短時間だけ手を離したときに警告処理が実行され、以て、運転者が煩わしいと感じる事象の発生を回避できる可能性が高くなる。
従って、本発明装置によれば、車線区画線の取得状況に応じて判定時間(時間閾値)を適切に決定するこができる。
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る運転支援装置(以下、「本支援装置」とも称呼される。)について説明する。図1にブロック図を示した本支援装置は、図2に示した車両10(以下、他の車両と区別するために「自車両10」とも称呼する。)に適用される。本支援装置は、それぞれが電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である「運転支援ECU20、エンジンECU31、ブレーキECU32及びEPS−ECU33」を含んでいる。
運転支援ECU20は、CPU、ROM及びRAMを備えている。CPUは、所定のプログラム(ルーチン)を逐次実行することによってデータの読み込み、数値演算、及び、演算結果の出力等を行う。ROMは、CPUが実行するプログラム及びルックアップテーブル(マップ)等を記憶する。RAMは、データを一時的に記憶する。
エンジンECU31、ブレーキECU32及びEPS−ECU33のそれぞれは、運転支援ECU20と同様に、CPU、ROM及びRAMを備えている。これらのECUは、CAN(Controller Area Network)34を介して互いにデータ通信可能(データ交換可能)となっている。加えて、これらのECUは、他のECUに接続されたセンサの出力値をその「他のECU」からCAN34を介して受信することができる。
運転支援ECU20は、ミリ波レーダ41、前方カメラ42、車速センサ43、ヨーレートセンサ44、操作スイッチ45、表示装置46及びスピーカー47と接続されている。
ミリ波レーダ41は、自車両10の前方に対してミリ波(周波数が30G〜300GHzに含まれる電磁波)を送信し、その反射波を受信する。ミリ波レーダ41は、送信波と反射波とに基づいて、自車両10の前方にある物標の自車両10に対する位置(相対位置)及び当該物標の自車両10に対する速度(相対速度)を物標情報として取得し、取得された物標情報を運転支援ECU20へ出力する。
前方カメラ42は、自車両10の車室内のルームミラー(不図示)近傍の位置に配設されている。前方カメラ42は、自車両10の前方領域を撮影した画像(以下、「前方画像」とも称呼される。)を取得し、前方画像を表す信号を出力する。前方カメラ42の水平方向の画角(視野)は、図2に示された直線FLと直線FRとがなす角度に等しい。
車速センサ43は、自車両10の車速Vsを検出し、車速Vsを表す信号を出力する。
ヨーレートセンサ44は、自車両10のヨーレートYRaを検出し、ヨーレートYRaを表す信号を出力する。
操作スイッチ45は、操舵ハンドル51の前面(運転者側の面)に配設された複数のスイッチ(不図示)から構成される。運転者は、操作スイッチ45を操作することによって後述される運転支援制御(具体的には、追従車間距離制御、及び、車線維持制御)を運転支援ECU20に実行させるか否かの選択、及び、追従車間距離制御に反映される目標車速Vtgtの設定を行うことができる。
表示装置46は、自車両10の車室内のセンターコンソール(不図示)に配設された液晶ディスプレイ(LCD)である。表示装置46は、運転支援ECU20の指示に応じて文字及び記号等を表示し、自車両10の運転者へ情報を提供する。
スピーカー47は、自車両10の左右のフロントドア(不図示)のそれぞれの内側(車室内側)に配設されている。スピーカー47は、運転支援ECU20の指示に応じて警告音の再生及びアナウンス等を行うことができる。
エンジンECU31は、複数のエンジンセンサ61と接続され、これらのセンサの検出信号を受信するようになっている。エンジンセンサ61は、自車両10の駆動源であるエンジン62の運転状態量を検出するセンサである。エンジンセンサ61は、アクセルペダル操作量センサ、スロットル弁開度センサ、機関回転速度センサ、及び、吸入空気量センサ等を含んでいる。
更に、エンジンECU31は、スロットル弁アクチュエータ及び燃料噴射弁等のエンジンアクチュエータ63、及び、トランスミッション64と接続されている。エンジンECU31は、エンジンアクチュエータ63及びトランスミッション64を制御することによってエンジン62が発生するトルクTq及びトランスミッション64のギア比を変更し、以て、自車両10の駆動力を調整して加速度As(車速Vsの単位時間あたりの変化量)を制御するようになっている。
ブレーキECU32は、複数のブレーキセンサ65と接続され、これらのセンサの検出信号を受信するようになっている。ブレーキセンサ65は、図示しない「自車両10に搭載された制動装置(油圧式摩擦制動装置)」を制御する際に使用されるパラメータを検出するセンサである。ブレーキセンサ65は、ブレーキペダル(不図示)の操作量センサ、及び、各車輪の回転速度を検出する車輪速度センサ等を含んでいる。
更に、ブレーキECU32は、ブレーキアクチュエータ66と接続されている。ブレーキアクチュエータ66は油圧制御アクチュエータである。ブレーキアクチュエータ66は、ブレーキペダルの踏力によって作動油を加圧するマスタシリンダと、各車輪に設けられる周知のホイールシリンダを含む摩擦ブレーキ装置と、の間の油圧回路(何れも、不図示)に配設される。ブレーキアクチュエータ66はホイールシリンダに供給する油圧を調整する。ブレーキECU32は、ブレーキアクチュエータ66を駆動することにより各車輪に制動力(摩擦制動力)Bfを発生させ、自車両10の加速度As(この場合、負の加速度、即ち、減速度)を制御するようになっている。
EPS−ECU33は、トルクセンサ67及び操舵角センサ68と接続され、これらのセンサの検出信号を受信するようになっている。トルクセンサ67及び操舵角センサ68のそれぞれは、操舵ハンドル51に連結されたステアリングシャフト(不図示)に配設されている。トルクセンサ67は、運転者が操舵ハンドル51に加える操舵トルクTsを表す信号を出力する。操舵角センサ68は、操舵ハンドル51のステアリングシャフトの回転角度である操舵角度θsを表す信号を出力する。
更に、EPS−ECU33は、駆動回路69と接続されている。駆動回路69は、電動機71に電力を供給する。電動機71は、操舵ハンドル51のステアリングシャフトを回転させるトルクTmを発生する。EPS−ECU33は、運転者による操舵ハンドル51の操舵操作を補助するため、トルクTmが「操舵トルクTs、操舵角度θs及び車速Vs等に基づいて決定される目標アシストトルクTa*」と等しくなるように駆動回路69を制御するようになっている。
(運転支援制御−追従車間距離制御)
次に、運転支援ECU20が実行する運転支援制御について説明する。運転支援制御は、追従車間距離制御と車線維持制御とを含んでいる。先ず、追従車間距離制御について説明する。追従車間距離制御が実行されていないとき、運転者が操作スイッチ45を介して追従車間距離制御の実行を選択すると、運転支援ECU20は、追従車間距離制御を開始する。
追従車間距離制御は、「走行車線内にあって自車両10の直前を走行する先行車両」であって自車両10が追従するべき車両(以下、「追従対象車両」とも称呼される。)が存在していれば、追従対象車両との車間距離が目標車間距離Dtgtと一致するように自車両10の目標加速度Ac*を設定するとともに、自車両10の実際の加速度Asを目標加速度Ac*に一致させる制御である。
より具体的に述べると、運転支援ECU20は、ミリ波レーダ41から取得した物標情報及び前方カメラ42から取得した前方画像に基づいて自車両10の前方領域にある物標(n)の横距離(左右方向の距離)Dfy(n)、縦距離(車間距離)Dfx(n)、相対横速度Vfy(n)及び相対縦速度Vfx(n)を取得する。更に、運転支援ECU20は、自車両10との縦距離が大きくなるほど横方向の長さが小さくなるように予め定められた追従対象車両エリア内に所定時間以上継続して存在する物標(n)を追従対象車両として特定する。
更に、運転支援ECU20は、目標加速度Ac*を下式(1)及び下式(2)の何れかに従って算出する。(1)式及び(2)式において、Vfx(a)は追従対象車両(a)の相対縦速度であり、k1及びk2は所定の正のゲイン(係数)である。ΔD1は「追従対象車両(a)の車間距離Dfx(a)」から目標車間距離Dtgtを減じて得られる車間偏差である(即ち、ΔD1=Dfx(a)−Dtgt)。
値(k1・ΔD1+k2・Vfx(a))が正又は「0」の場合、運転支援ECU20は、(1)式を使用して目標加速度Ac*を決定する。ka1は、加速用の正のゲイン(係数)であり、本例において、「1」以下の値に設定されている。
値(k1・ΔD1+k2・Vfx(a))が負の場合、運転支援ECU20は、(2)式を使用して目標加速度Ac*を決定する。kd1は、減速用の正のゲイン(係数)であり、本例において、「1」に設定されている。
Ac*(加速用)=ka1・(k1・ΔD1+k2・Vfx(a)) …(1)
Ac*(減速用)=kd1・(k1・ΔD1+k2・Vfx(a)) …(2)
なお、追従対象車両エリアに物標が存在しない場合(即ち、追従対象車両が存在しない場合)、運転支援ECU20は、車速Vsが「運転者による操作スイッチ45の操作によって設定される目標車速Vtgt」に一致するように目標加速度Ac*を決定する。
運転支援ECU20は、実際の加速度Asが目標加速度Ac*と等しくなるように、エンジンECU31及びブレーキECU32に要求信号を送信する。概して、目標加速度Ac*が正の値であるとき、運転支援ECU20はエンジンECU31に対してトルクTqを増加させることを要求する要求信号を送信する。目標加速度Ac*が負の値であるとき、運転支援ECU20はエンジンECU31に対してトルクTqを減少させることを要求する要求信号を送信する。目標加速度Ac*が負の値であり且つその絶対値が比較的大きな値であれば、運転支援ECU20は、エンジンECU31に対してトルクTqを「0」にすることを要求する要求信号を送信すると共に、ブレーキECU32に対して制動力Bfを発生させることを要求する要求信号を送信する。この結果、自車両10の実際の加速度Asが目標加速度Ac*に一致するように、自車両10の走行が制御される。
上述した追従車間距離制御は、例えば、特開2014−148293号公報、特開2006−315491号公報、特許第4172434号明細書、及び、特許第4929777号明細書等により詳細に記載されている。
(運転支援制御−車線維持制御)
次に、車線維持制御について説明する。追従車間距離制御が実行され且つ車線維持制御が実行されていないとき、運転者が操作スイッチ45を介して車線維持制御の実行を選択すると、運転支援ECU20は、車線維持制御を開始する。車線維持制御は、自車両10が走行車線内の目標走行経路Ld上を走行するように電動機71が発生させるトルクTmによって操舵角度θsを調整する制御である。
目標走行経路Ldを決定するため、運転支援ECU20は、前方画像に含まれる走行車線の「左区画線LL及び右区画線LR」を認識(取得)する。一対の車線区画線(即ち、左区画線LL及び右区画線LR)を取得するとき、運転支援ECU20は、前方画像を予め記憶している多数の車線区画線のテンプレートと比較する。
運転支援ECU20は、テンプレートのうちの1つと類似する前方画像の一部(即ち、前方画像内の車線区画線が写された部分)が見つかれば、そのテンプレートと前方画像の一部とが類似している度合いを類似度Dsとして数値化する。類似度Dsは、テンプレートと前方画像の一部とが類似している度合いが高いほど大きな値となる。
類似度Dsが所定の取得閾値Dth1よりも高ければ、運転支援ECU20は、その前方画像の一部を車線区画線(左区画線LL及び右区画線LRの何れか)として取得する。自車両10から自車両10の前方に至る充分な長さの一対の車線区画線が取得されると、運転支援ECU20は、これら一対の車線区画線の左右方向中心を目標走行経路Ldとして決定(取得)する。
一方、目標走行経路Ldを決定するための充分な長さの一対の車線区画線が取得されていないとき、運転支援ECU20は、追従対象車両の走行軌跡である先行車両移動軌跡Lmに基づいて目標走行経路Ldを決定する。
より具体的に述べると、運転支援ECU20は、車線維持制御の実行中、追従対象車両が存在していれば、所定の単位時間が経過する毎に先行車両移動軌跡Lmを取得(更新)する。充分な長さの一対の車線区画線が取得されておらず且つ先行車両移動軌跡Lmが取得されていれば、運転支援ECU20は、先行車両移動軌跡Lmに基づいて目標走行経路Ldを決定する。先行車両移動軌跡Lmに基づいて目標走行経路Ldを決定する処理は、「追随走行処理」とも称呼される。
運転支援ECU20は、「物標情報に基づいて取得される単位時間あたりの追従対象車両の相対位置の変化を表すベクトル」と「車速Vs及びヨーレートYRaに基づいて取得される自車両10のその単位時間あたりの走行位置(絶対位置)の変化を表すベクトル」との和を、その単位時間における追従対象車両の移動軌跡(即ち、追加(更新)される先行車両移動軌跡Lmの一部)として取得する。
充分な長さの一対の車線区画線が取得されない一方で先行車両移動軌跡Lmが取得される状況の例が図2に示される。図2において、追従対象車両である他車81が自車両10の前方であって走行車線内を走行している。左区画線LL及び右区画線LRが他車81によって隠されるので、前方画像に含まれる左区画線LL及び右区画線LRの長さが短くなる。
本例において他車81は大型車両(具体的には、トラック)であり、他車81の左右方向(車幅方向)の長さは普通車両(例えば、乗用車両)よりも長い。そのため、他車81によって隠れる左区画線LL及び右区画線LRの長さは、追従対象車両が普通車両であるときと比較して長くなる。
具体的には、前方カメラ42の水平方向の画角のうちの図2に示された直線BLから直線BRまでの範囲は、他車81によって左区画線LL及び右区画線LRの位置が確認できなくなっている。そのため、取得できる左区画線LL及び右区画線LRの長さは、図2に示された長さLsに限られる。
図2の例のように、追従対象車両によって左区画線LL及び右区画線LRが隠されるために充分な長さの一対の車線区画線が取得できない一方、先行車両移動軌跡Lmが取得されている場合、運転支援ECU20は追随走行処理を実行する。
一方、充分な長さの一対の車線区画線が取得されておらず且つ先行車両移動軌跡Lmが取得されていなければ、運転支援ECU20は、表示装置46に警告表示を表示させ且つスピーカー47に警告音を再生させたうえで車線維持制御を停止する。
目標走行経路Ldが取得されると、運転支援ECU20は、目標走行経路Ldのカーブ半径(曲率半径)Rと、左区画線LL及び右区画線LRによって画定される走行車線における自車両10の位置及び向きと、を算出する。加えて、運転支援ECU20は、自車両10の前端中央位置と目標走行経路Ldとの間の左右方向の距離であるセンター距離Dcと、目標走行経路Ldの方向と自車両10の進行方向と間の角度差分θyと、を算出する。
更に、運転支援ECU20は、センター距離Dcと角度差分θyと道路曲率ν(道路曲率ν=1/曲率半径R)とに基づいて、下式(3)より、目標ヨーレートYRc*を所定の演算周期にて算出する。(3)式において、K1、K2及びK3は所定の制御ゲインである。目標ヨーレートYRc*は、自車両10が目標走行経路Ldに沿って走行するように設定されるヨーレートである。
YRc*=K1・Dc+K2・θy+K3・ν …(3)
運転支援ECU20は、この目標ヨーレートYRc*と実際のヨーレートYRaとに基づいて、目標ヨーレートYRc*を実現するために必要となる電動機71の目標発生トルクTg*を所定の演算周期にて決定する。より具体的に述べると、運転支援ECU20は、目標ヨーレートYRc*と実際のヨーレートYRaとの差分であるヨーレート差分ΔYRを算出する(即ち、ΔYR=YRc*−YRa)。加えて、運転支援ECU20は、予め記憶している「ヨーレート差分ΔYRと目標発生トルクTg*との関係を規定したルックアップテーブル」にヨーレート差分ΔYRを適用することによって目標発生トルクTg*を決定する。
更に、運転支援ECU20は、電動機71が発生させるトルクTmが目標発生トルクTg*と等しくなるようにEPS−ECU33に要求信号を送信する。
上述した車線維持制御は、例えば、特開2008−195402号公報、特開2009−190464号公報、特開2010−6279号公報、及び、特許第4349210号明細書等により詳細に記載されている。
(警告処理)
車線維持制御の目的は運転者による操舵ハンドル51の操作を支援することである。そのため、車線維持制御の実行中、運転者が運転意思を欠いた状態にあるのは望ましくない。運転者が操舵ハンドル51を把持していない状態(以下、「非把持状態」とも称呼される。)が継続すれば、運転者が運転意思を欠いていると判断することができる。
そこで、運転支援ECU20は、非把持状態が時間閾値Tth以上継続すると、表示装置46に警告表示を表示させ且つスピーカー47に警告音を再生させる。加えて、運転支援ECU20は、警告音の再生が開始された後、非把持状態が更に警告時間Tw以上継続すれば、車線維持制御を停止する。非把持状態が継続したときに行われる運転者への警告及び車線維持制御の停止は、「警告処理」とも称呼される。
ところで、車線維持制御の実行中、自車両10の走行位置が走行車線の左右方向中心から大きく離間すると、運転者による操舵ハンドル51の操作によって走行位置を修正する必要があるので、非把持状態が継続するのは望ましくない。
充分な長さの一対の車線区画線が取得され(即ち、追随走行処理が実行されておらず)且つ車線区画線の取得精度が高ければ、走行車線の実際の左右方向中心と目標走行経路Ldとの間の差分(以下、「走行経路差分」とも称呼される。)が大きくなる可能性は低い。そのため、自車両10の実際の走行位置と走行車線の左右方向中心との離間量が大きくなる可能性は低い。追随走行処理が実行されておらず且つ車線区画線の取得精度が高いとき、以下、「経路取得の信頼度が高である」とも称呼される。
一方、充分な長さの一対の車線区画線が取得され且つ車線区画線の取得精度が低い場合、経路取得の信頼度が高である場合と比較して実際の車線区画線の位置と取得された車線区画線の位置との間の誤差が大きくなる可能性が高くなる。その結果、走行経路差分が大きくなり、以て、自車両10の走行位置と走行車線の左右方向中心との離間量が大きくなる可能性が経路取得の信頼度が高である場合と比較して高くなる。
運転支援ECU20は、類似度Dsが、取得閾値Dth1よりも大きく且つ「取得閾値Dth1よりも大きい精度閾値Dth2」よりも小さければ(即ち、Dth1<Ds<Dth2)、車線区画線の取得は可能であるが、車線区画線の取得精度が低いと判定する。例えば、車線区画線の取得精度の低下は、車線区画線の一部の剥がれ及び汚損によって発生する。追随走行処理が実行されておらず且つ車線区画線の取得精度が低いとき、以下、「経路取得の信頼度が中である」とも称呼される。
更に、充分な長さの一対の車線区画線が取得できないために追随走行処理が実行されている場合、追従対象車両が走行車線の左右方向中心を走行していなければ、走行経路差分が大きくなる。そのため、走行経路差分が大きくなる可能性が経路取得の信頼度が中である場合と比較して高くなる。追随走行処理が実行されているとき、以下、「経路取得の信頼度が低である」とも称呼される。
そこで、運転支援ECU20は、走行経路差分が大きくなる可能性が高くなるほど時間閾値Tthを短くする。具体的には、運転支援ECU20は、経路取得の信頼度が中であるとき、時間閾値Tthを経路取得の信頼度が高であるときと比較して小さい値に設定する。
加えて、運転支援ECU20は、経路取得の信頼度が低であるとき、時間閾値Tthを経路取得の信頼度が中であるときと比較して小さい値に設定する。ただし、車速Vsが所定の速度閾値Vthよりも低いとき、運転支援ECU20は、時間閾値Tthを経路取得の信頼度が中であるときと同じ値に設定する。
経路取得の信頼度に応じて車速Vs毎に設定される時間閾値Tthが、図3の実線L1、実線L2及び破線L3によって示される。経路取得の信頼度が高であるとき、運転支援ECU20は、「図3の実線L1によって表される車速Vsと時間閾値Tthとの関係を規定したルックアップテーブル(Map1)」に車速Vsを適用することによって時間閾値Tthを決定する。具体的には、経路取得の信頼度が高であるとき、運転支援ECU20は、時間閾値Tthを時間T1に設定する。
経路取得の信頼度が中であるとき、運転支援ECU20は、「図3の実線L2によって表される車速Vsと時間閾値Tthとの関係を規定したルックアップテーブル(Map2)」に車速Vsを適用することによって時間閾値Tthを決定する。具体的には、経路取得の信頼度が中であるとき、運転支援ECU20、時間閾値Tthを時間T2に設定する。
経路取得の信頼度が低であるとき、運転支援ECU20は、「図3の破線L3によって表される車速Vsと時間閾値Tthとの関係を規定したルックアップテーブル(Map3)」に車速Vsを適用することによって時間閾値Tthを決定する。具体的には、経路取得の信頼度が低であるとき、車速Vsが所定の速度閾値Vth以下であれば、運転支援ECU20は、時間閾値Tthを時間T2に設定する。車速Vsが速度閾値Vthよりも高く且つ速度V1以下であれば、運転支援ECU20は、時間閾値Tthを時間T2と時間T3の範囲で車速Vsが高くなるほど小さな値に設定する。車速Vsが速度V1よりも高ければ、運転支援ECU20は、時間閾値Tthを時間T3に設定する。
(具体的作動)
運転支援ECU20の具体的作動について説明する。運転支援ECU20のCPU(以下、単に「CPU」とも称呼される。)は、所定の時間が経過する毎に図4にフローチャートにより表された「運転支援制御ルーチン」を実行する。加えて、CPUは、所定の実行周期Δt(固定値)が経過する毎に図5にフローチャートにより表された「警告処理ルーチン」を実行する。
先ず、運転支援制御ルーチンについて説明する。適当なタイミングとなると、CPUは、図4のステップ400から処理を開始し、ステップ405に進み、操作スイッチ45を介して追従車間距離制御の実行が選択され且つ追従車間距離制御の実行条件が成立しているか否かを判定する。
追従車間距離制御の実行条件は、車速Vsが所定の速度V2よりも高いときに成立する条件である。例えば、追従車間距離制御の実行中に追従対象車両の車速が速度V2よりも低くなり(その結果、車速Vsが速度V2よりも低くなり)且つその追従対象車両が車線変更を行って走行車線以外の車線に移ると、追従車間距離制御の実行条件が成立しなくなる。
追従車間距離制御の実行が選択され且つ追従車間距離制御の実行条件が成立していれば、CPUは、ステップ405にて「Yes」と判定してステップ410に進み、追従車間距離制御を実行する。即ち、現時点において追従車間距離制御が実行されていなければ、CPUは、追従車間距離制御を開始する。一方、現時点において追従車間距離制御が既に実行されていれば、CPUは、追従車間距離制御の実行を継続する。
次いで、CPUは、ステップ415に進み、操作スイッチ45を介して車線維持制御の実行が選択されているか否かを判定する。車線維持制御の実行が選択されていなければ、CPUは、ステップ415にて「No」と判定してステップ470に進み、車線維持制御の実行を停止する。即ち、現時点において車線維持制御が実行されていれば、CPUは、表示装置46及びスピーカー47を介して運転者への通知を行ったうえで車線維持制御の実行を停止する。一方、現時点において車線維持制御が実行されていなければ、CPUは、車線維持制御が実行されていない状態を継続させる。
一方、車線維持制御の実行が選択されていれば、CPUは、ステップ415にて「Yes」と判定してステップ420に進み、前方画像から充分な長さの一対の車線区画線が取得されているか否かを判定する。充分な長さの一対の車線区画線が取得されていれば、CPUは、ステップ420にて「Yes」と判定してステップ425に進み、一対の車線区画線に基づいて目標走行経路Ldを取得する。
次いで、CPUは、ステップ430に進み、前方画像から一対の車線区画線を取得したときにおける類似度Dsが精度閾値Dth2以上であるか否かを判定する。類似度Dsが精度閾値Dth2以上であれば、CPUは、ステップ430にて「Yes」と判定してステップ435に進み、経路取得の信頼度が高であると判定する。
次いで、CPUは、ステップ445に進み、車線維持制御を実行する。即ち、現時点において車線維持制御が実行されていなければ、CPUは、車線維持制御を開始する。一方、現時点において車線維持制御が実行されていれば、CPUは、車線維持制御の実行を継続する。次いで、CPUは、ステップ495に進み、本ルーチンを終了する。
一方、ステップ430の判定条件が成立していなければ(即ち、類似度Dsが精度閾値Dth2よりも小さければ)、CPUは、ステップ430にて「No」と判定してステップ440に進み、経路取得の信頼度が中であると判定する。次いで、CPUは、ステップ445に進む。
加えて、ステップ420の判定条件が成立していなければ(即ち、前方画像から充分な長さの一対の車線区画線が取得されていなければ)、CPUは、ステップ420にて「No」と判定してステップ455に進み、先行車両移動軌跡Lmが取得されているか否かを判定する。
先行車両移動軌跡Lmが取得されていれば、CPUは、ステップ455にて「Yes」と判定してステップ460に進み、先行車両移動軌跡Lmに基づいて目標走行経路Ldを取得する。次いで、CPUは、ステップ465に進み、経路取得の信頼度が低であると判定する。次いで、CPUは、ステップ445に進む。
一方、先行車両移動軌跡Lmが取得されていなければ、CPUは、ステップ455にて「No」と判定してステップ470に進む。
更に、ステップ405の判定条件が成立していなければ(即ち、追従車間距離制御の実行が選択されていない、或いは、追従車間距離制御の実行条件が成立していなければ)、CPUは、ステップ405にて「No」と判定してステップ450に進み、追従車間距離制御の実行を停止する。即ち、現時点において追従車間距離制御が実行されていれば、CPUは、表示装置46及びスピーカー47を介して運転者への通知を行ったうえで追従車間距離制御の実行を停止する。一方、現時点において追従車間距離制御が実行されていなければ、CPUは、追従車間距離制御が実行されていない状態を継続させる。
次に、警告処理ルーチンについて説明する。適当なタイミングとなると、CPUは、図5のステップ500から処理を開始し、ステップ505に進み、車線維持制御が実行中であるか否かを判定する。車線維持制御が実行されていなければ、CPUは、ステップ505にて「No」と判定してステップ510に進み、手放し時間Thrの値を「0」に設定する。手放し時間Thrの値は運転支援ECU20の始動時にCPUが実行するイニシャルルーチン(不図示)において「0」に設定される。次いで、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを終了する。
一方、車線維持制御が実行されていれば、CPUは、ステップ505にて「Yes」と判定してステップ515に進み、自車両10の運転者が操舵ハンドル51を把持していないか否かを判定する。CPUは、操舵トルクTsの大きさが略「0」であれば(即ち、操舵トルクTsの大きさが微小なトルク閾値Tsth以下であれば)、運転者が操舵ハンドル51を把持していないと判定する。運転者が操舵ハンドル51を把持していれば、CPUは、ステップ515にて「No」と判定してステップ510に進む。
一方、運転者が操舵ハンドル51を把持していなければ、CPUは、ステップ515にて「Yes」と判定してステップ520に進み、手放し時間Thrの値を実行周期Δtだけ増加させる。
次いで、CPUは、ステップ525に進み、図4の運転支援制御ルーチンが前回実行されたときに判定された経路取得の信頼度(高、中、及び、低のいずれか)を取得する。次いで、CPUは、ステップ530に進み、経路取得の信頼度に応じて時間閾値Tthを決定するために参照されるルックアップテーブル(Map1、Map2及びMap3のいずれか)を選択する。次いで、CPUは、ステップ535に進み、選択されたルックアップテーブルに車速Vsを適用することによって時間閾値Tthを決定する。
次いで、CPUは、ステップ540に進み、手放し時間Thrが時間閾値Tth以上であるか否かを判定する。手放し時間Thrが時間閾値Tth以上であれば、CPUは、ステップ540にて「Yes」と判定してステップ545に進み、手放し時間Thrが「時間閾値Tthに警告時間Twを加えた時間」以上であるか否かを判定する。
手放し時間Thrが「時間閾値Tthに警告時間Twを加えた時間」より小さければ、CPUは、ステップ545にて「No」と判定してステップ560に進み、運転者に操舵ハンドル51が把持されていない状態が継続していることに対する警告(非把持警告)を行う。具体的には、CPUは、表示装置46に運転者に操舵ハンドル51の把持を促す記号を表示させると共にスピーカー47に警告音を再生させる。既に非把持警告が実行されていれば、CPUは、非把持警告を継続する。次いで、CPUは、ステップ595に進む。
一方、手放し時間Thrが「時間閾値Tthに警告時間Twを加えた時間」以上であれば、CPUは、ステップ545にて「Yes」と判定してステップ550に進み、運転者に運転支援制御の停止を通知する。具体的には、CPUは、表示装置46に運転支援制御を停止する旨の記号を表示させると共にスピーカー47に「非把持警告の実行時に再生される警告音」とは異なる警告音を再生させる。
次いで、CPUは、ステップ555に進み運転支援制御を停止する。更に、CPUは、ステップ595に進む。
なお、ステップ540の判定条件が成立していなければ(即ち、手放し時間Thrが時間閾値Tthよりも小さければ)、CPUは、ステップ540にて「No」と判定してステップ595に直接進む。
以上、説明したように、本支援装置は、経路取得の信頼度が中であるとき、時間閾値Tthを、経路取得の信頼度が高であるときの値(時間T1)よりも小さい時間T2に設定する。加えて、本支援装置は、経路取得の信頼度が低であるとき、車速Vsが速度V1よりも高ければ、時間閾値Tthを「時間T2よりも短い時間T3」に設定する。更に、本支援装置は、経路取得の信頼度が低であるとき、車速Vsが速度V1から速度閾値Vthに向かって小さくなるほど時間閾値Tthを時間T3から時間T2へ向けて大きくなる値に設定し、車速Vsが速度閾値Vth以下であると、時間閾値Tthを時間T2に設定する。
そのため、目標走行経路Ldと、一対の車線区画線(即ち、左区画線LL及び右区画線LR)の左右方向中心と、の離間量が大きくなる可能性が高いとき、時間閾値Tthが短い値に設定される。加えて、追随走行処理が実行されているとき、車速Vsが速度閾値Vth以下であれば、時間閾値Tthが車速Vsが速度閾値Vthよりも高いときと比較して長く設定される。そのため、車速Vsが低いために自車両の走行位置と、走行車線の左右方向中心と、の離間量が急速に増加しないとき、時間閾値Tthが短くなり過ぎることが回避される。従って、本支援装置によれば、車線区画線の取得状況に応じて時間閾値Tthを適切に決定することができる。
(変形例)
次に、本支援装置の変形例について説明する。上述した実施形態において、運転支援ECU20は、図3の実線L1、実線L2及び破線L3のそれぞれによって表される車速Vsと時間閾値Tthとの関係に基づいて時間閾値Tthを決定していた。これに対し、本変形例に係る運転支援ECU20は、図6の実線L4、実線L5及び破線L6のそれぞれによって表される車速Vsと時間閾値Tthとの関係に基づいて時間閾値Tthを決定する点のみにおいて上述した実施形態と相違する。以下、この相違点を中心に説明する。
経路取得の信頼度が高であるとき、実線L4(Map4)に示されるように時間閾値Tthが設定される。即ち、経路取得の信頼度が高であるとき、車速Vsが高くなるほど時間閾値Tthは小さい値に設定される。一方、経路取得の信頼度が中であるとき、実線L5(Map5)に示されるように時間閾値Tthが設定される。即ち、経路取得の信頼度が中であるとき、経路取得の信頼度が高であるときと比較して時間閾値Tthは所定量だけ小さい値に設定される。
経路取得の信頼度が低であるとき、破線L6(Map6)に示されるように時間閾値Tthが設定される。即ち、経路取得の信頼度が低であるとき、車速Vsが速度V1よりも高いとき、時間閾値Tthは経路取得の信頼度が中であるときの時間閾値Tthに対して所定量だけ小さい値に設定される。一方、経路取得の信頼度が低であるとき、車速Vsが速度V1以下であり且つ速度閾値Vthよりも高いとき、車速Vsが速度V1から速度閾値Vthに向けて低くなるほど「経路取得の信頼度が低であるときに設定される時間閾値Tth」と「経路取得の信頼度が中であるときときに設定される時間閾値Tth」との差分が小さくなるように「経路取得の信頼度が低であるときに設定される時間閾値Tth」が設定される。更に、追随走行処理の実行中、車速Vsが速度閾値Vth以下であると、「経路取得の信頼度が低であるときに設定される時間閾値Tth」は「経路取得の信頼度が中であるときに設定される時間閾値Tth」と等しい値に設定される。
以上、本発明に係る運転支援装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、本実施形態における警告時間Twは固定値であった。しかし、警告時間Twは、自車両10の走行状態に応じて設定されても良い。例えば、警告時間Twは、車速Vsが大きくなるほど小さな値に設定されても良い。
加えて、本実施形態に係る運転支援ECU20は、非把持状態が時間閾値Tth以上継続すると運転者への警告を開始し、更に非把持状態が警告時間Twだけ継続すると車線維持制御を停止していた。即ち、運転支援ECU20は、運転者への警告及び車線維持制御の停止の両方を実行していた。しかし、運転者への警告及び車線維持制御の停止の一方は割愛されても良い。或いは、運転支援ECU20は、車線維持制御の停止を行うとき、追従車間距離制御も停止しても良い。
加えて、本実施形態に係る運転支援ECU20は、追従車間距離制御の実行中にのみ車線維持制御を実行していた。しかし、運転支援ECU20は、追従車間距離制御が実行されていないときに車線維持制御を実行しても良い。
加えて、本実施形態に係る目標車間距離Dtgtは固定値であった。しかし、目標車間距離Dtgtは車速Vsに応じて変化する値であっても良い。例えば、目標車間距離Dtgtは、所定の目標車間時間Ttgtに車速Vsを乗じることにより算出されても良い(即ち、Dtgt=Ttgt・Vs)。
加えて、本実施形態係る運転支援ECU20は、操舵トルクTsの大きさが略「0」であれば、運転者が操舵ハンドル51を把持していないと判定していた。しかし、運転支援ECU20は、これとは異なる方法によって運転者が操舵ハンドル51を把持しているか否かを判定しても良い。例えば、運転支援ECU20は、操舵ハンドル51に配設されたタッチセンサからの出力信号に基づいて運転者が操舵ハンドル51を把持しているか否かを判定しても良い。この場合、タッチセンサは、例えば、静電容量式センサであって、運転者が操舵ハンドル51を把持しているときにハイレベル信号を出力し、運転者が操舵ハンドル51を把持していないときにローレベル信号を出力するセンサであればよい。