以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るタイヤ1が装着される車両500の一例を示す側面図である。図2は、本実施形態に係るタイヤ1が装着される車両500の一例を後方から見た図である。図1及び図2に示すように、車両500は、タイヤ1を含む走行装置501と、走行装置501に支持される車体502と、走行装置501を駆動するためのエンジン503とを備える。タイヤ1は、空気入りタイヤである。
走行装置501は、タイヤ1を支持するホイール504と、ホイール504を支持する車軸505と、走行装置501の進行方向を変えるための操舵装置506と、走行装置501を減速又は停止させるためのブレーキ装置507とを有する。
車体502は、運転者が搭乗する運転室を有する。運転室に、エンジン503の出力を調整するためのアクセルペダルと、ブレーキ装置507を作動するためのブレーキペダルと、操舵装置506を操作するためのステアリングホイールとが配置される。運転者は、アクセルペダル、ブレーキペダル、及びステアリングホイールを操作する。運転者の操作により、車両500は走行する。
タイヤ1は、乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤとは、JATMA YEAR BOOK 2012(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められるタイヤをいう。なお、タイヤ1は、B章に定められる小型トラック用タイヤでもよいし、C章に定められるトラック及びバス用タイヤでもよい。
タイヤ1は、車両500のホイール504のリムに装着される。タイヤ1は、車両500に装着された状態で、回転軸AXを中心に回転して、路面RSを走行する。
以下の説明においては、タイヤ1の回転軸AXと平行な方向を適宜、タイヤ幅方向、と称し、タイヤ1の回転軸AXに対する放射方向を適宜、タイヤ径方向、と称し、タイヤ1の回転軸AXを中心とする回転方向を適宜、タイヤ周方向、と称する。
また、以下の説明においては、タイヤ幅方向のタイヤ1の中心を適宜、タイヤ中心CL、と称する。タイヤ中心CLは、トレッド部10の表面においてタイヤ赤道面とタイヤ1のトレッド部10の表面とが交差するセンターラインを含む。タイヤ赤道面とは、タイヤ1のタイヤ幅方向の中心を通り、回転軸AXと直交する平面をいう。
また、以下の説明においては、タイヤ幅方向においてタイヤ中心CLから遠い位置又は離れる方向を適宜、タイヤ幅方向外側、と称し、タイヤ幅方向においてタイヤ中心CLに近い位置又は近付く方向を適宜、タイヤ幅方向内側、と称し、タイヤ径方向において回転軸AXから遠い位置又は離れる方向を適宜、タイヤ径方向外側、と称し、タイヤ径方向において回転軸AXに近い位置又は近付く方向を適宜、タイヤ径方向内側、と称する。
また、以下の説明においては、車両500の車幅方向内側を適宜、車両内側、と称し、車両500の車幅方向外側を適宜、車両外側、と称する。車両内側とは、車両500の車幅方向において車両500の中心に近い位置又は近付く方向をいう。車両外側とは、車両500の車幅方向において車両500の中心から遠い位置又は離れる方向をいう。
車両500は、4輪車両である。走行装置501は、車体502の左側に設けられる左前輪及び左後輪と、車体502の右側に設けられる右前輪及び右後輪とを有する。タイヤ1は、車体502の左側に装着される左タイヤ1Lと、車体502の右側に装着される右タイヤ1Rとを含む。
タイヤ1は、トレッドパターンが形成されたトレッド部10と、トレッド部10のタイヤ幅方向両側に設けられ、車両500に対する装着方向を示す表示部600を有するサイド部7とを備える。タイヤ1の走行において、トレッド部10が路面RSと接触する。
トレッド部10のトレッドパターンは、非対称パターンである。タイヤ1について、車両500に対する装着方向が指定されている。左タイヤ1Lは、2つのサイド部7のうち指定された一方のサイド部7が車両内側を向き、他方のサイド部7が車両外側を向くように、車両500の左側に装着される。右タイヤ1Rは、2つのサイド部7のうち指定された一方のサイド部7が車両内側を向き、他方のサイド部7が車両外側を向くように、車両500の右側に装着される。
表示部600は、2つのサイド部7のうち少なくとも一方のサイド部7に設けられる。サイド部600は、車両500に対するタイヤ1の装着方向を示すセリアル記号を含む。表示部600は、マーク、文字、符号、及び模様の少なくとも一つを含む。車両500に対するタイヤ1の装着方向を示す表示部600の例として、例えば「OUTSIDE」のような文字が挙げられる。ユーザは、サイド部7に設けられている表示部600に基づいて、車両500に対するタイヤ1の装着方向を認識することができる。表示部600に基づいて、左タイヤ1Lが車両500の左側に装着され、右タイヤ1Rが車両500の右側に装着される。
図3は、本実施形態に係るタイヤ1の一部を示す断面図である。図3は、タイヤ1の回転軸AXを通る子午断面を示す。タイヤ1は、車両500に装着された状態で回転軸AXを中心に回転可能である。タイヤ1の回転軸AXは、タイヤ中心CL(タイヤ赤道面)と直交する。
図3に示すように、タイヤ1は、トレッドパターン40が形成されたトレッド部10と、トレッド部10のタイヤ幅方向両側に設けられたサイド部7と、サイド部7に接続されたビード部5とを備える。
また、タイヤ1は、カーカスプライ層2と、ベルト層3と、ビードコア16とを備える。カーカスプライ層2、ベルト層3、及びビードコア16は、タイヤ1の強度部材(骨格部材)として機能する。
また、タイヤ1は、トレッドゴム6と、サイドゴム8と、ビードフィラーゴム22と、リムクッションゴム24と、インナーライナゴム26とを備える。トレッド部10は、トレッドゴム6を含む。サイド部7は、サイドゴム8を含む。
カーカスプライ層2は、タイヤ1の骨格を形成する強度部材である。カーカスプライ層2は、タイヤ1に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。カーカスプライ層2は、有機繊維のカーカスコードと、そのカーカスコードを被覆するゴムとを含む。カーカスプライ層2は、ビード部5のビードコア16に支持される。ビードコア16は、タイヤ幅方向においてカーカスプライ層2の一側及び他側のそれぞれに配置される。カーカスプライ層2は、ビードコア16において折り返される。
ベルト層3は、タイヤ1の形状を保持する強度部材である。ベルト層3は、カーカスプライ層2とトレッドゴム6との間に配置される。ベルト層3は、例えばスチールなどの金属繊維のベルトコードと、そのベルトコードを被覆するゴムとを含む。ベルト層3は、第1ベルトプライ3Aと、第2ベルトプライ3Bとを含む。第1ベルトプライ3Aと第2ベルトプライ3Bとは、第1ベルトプライ3Aのコードと第2ベルトプライ3Bのコードとが交差するように積層される。ベルト層3の一部は、ベルトカバー層30で覆われる。ベルトカバー層30は、有機繊維のベルトカバーコードと、そのベルトカバーコードを被覆するゴムとを含む。
ビード部5は、カーカスプライ層2の両端を固定する強度部材である。ビード部5は、タイヤ1をリムに固定させる。ビード部5は、ビードコア16と、ビードフィラーゴム22と、リムクッションゴム24と、ビード補強材28とを有する。ビードコア16は、ビードワイヤがリング状に巻かれた部材である。ビードワイヤは、スチールワイヤである。ビードフィラーゴム22は、カーカスプライ層2のタイヤ幅方向端部がビードコア16の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。リムクッションゴム24は、タイヤ1が装着されるリムと接触する。ビード補強材28は、ビードコア16に巻かれたカーカスプライ層2とビードフィラーゴム22との間に配置される。
サイド部7は、タイヤ幅方向においてトレッド部10の一側及び他側のそれぞれに設けられる。サイド部7は、トレッド部10の接地端T1,T2よりもタイヤ幅方向外側に配置される。
トレッドゴム6は、カーカスプライ層2を保護する。トレッドゴム6に、トレッド部10が形成される。サイドゴム8は、カーカスプライ層2を保護する。サイドゴム8は、タイヤ幅方向においてトレッドゴム6の一側及び他側のそれぞれに配置される。サイドゴム8に、サイド部7が形成される。インナーライナゴム26は、空気が充填されるタイヤ1の内部空間に面するように配置される。
トレッド部10の接地幅を示すトレッド接地幅TWとは、タイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、平面上に垂直に置いて、正規荷重を加えた負荷状態のときに測定される、タイヤ幅方向に関する接地幅の最大値をいう。すなわち、トレッド接地幅TWとは、タイヤ幅方向においてタイヤ中心CLの一方側のトレッド部10の接地端T1と他方側のトレッド部10の接地端T2との距離をいう。
トレッド部10の接地端T1,T2とは、タイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、平面上に垂直に置いて、正規荷重を加えた負荷状態のときにトレッド部10が接地する部分のタイヤ幅方向の端部をいう。
「正規リム」とは、タイヤ1についての規格がタイヤ1毎に定めているリムであり、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”である。但し、タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、このタイヤ1が組まれる純正ホイールを用いる。
「正規内圧」とは、タイヤ1についての規格がタイヤ1毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。但し、タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、車両に表示された空気圧とする。
「正規荷重」とは、タイヤ1についての規格がタイヤ1毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”である。但し、タイヤ1が乗用車である場合にはタイヤ1毎に定められている荷重の88[%]に相当する荷重とする。タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、車両の車検証記載の前後軸重をそれぞれタイヤの数で除して求めた輪荷重とする。
本実施形態において、接地端T1は、車両内側に配置され、接地端T2は、車両外側に配置される。
図4は、本実施形態に係るタイヤ1のトレッド部10の一部を示す展開図である。タイヤ1のトレッド部10には、トレッドパターン40が形成されている。
トレッド部10は、タイヤ幅方向に複数設けられ、それぞれがタイヤ周方向に延在する周方向主溝50と、周方向主溝50によって区画される複数の陸部60と、陸部60に設けられるラグ溝70とを有する。周方向主溝50及びラグ溝70は、トレッドゴム6に形成される。陸部60は、路面RSと接触可能な表面60A(接地面、踏面)を有する。
周方向主溝50は、タイヤ周方向に延在する。周方向主溝50は、タイヤ赤道面とトレッド部10とが交差するセンターライン(タイヤ赤道線)と実質的に平行である。周方向主溝50は、タイヤ周方向に直線状に延在する。なお、周方向主溝50が、タイヤ周方向に波形状又はジグザグ状に設けられてもよい。
周方向主溝50とは、1.0[mm]以上の溝幅を有し、4.0[mm]以上の溝深さを有し、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。なお、一般に、周方向主溝50は、6.0[mm]以上の溝幅を有し、7.0[mm]以上の溝深さを有する。周方向主溝50は、内部にトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を有する。トレッドウェアインジケータは、摩耗末期を示す。
ラグ溝70は、少なくとも一部がタイヤ幅方向に延在する。ラグ溝70の少なくとも一部が、タイヤ幅方向と平行でもよい。ラグ溝70は、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向のそれぞれに対して傾斜していてもよい。ラグ溝70の少なくとも一部が、周方向主溝50と接続されてもよい。
ラグ溝70とは、2.0[mm]以上の溝幅を有し、3.0[mm]以上の溝深さを有し、少なくとも一部がタイヤ幅方向に延在する横溝をいう。ラグ溝70は、陸部60をタイヤ幅方向に貫通するオープン構造でもよいし、一方の端部が陸部60で終端するセミクローズド構造でもよいし、両方の端部が陸部60で終端するクローズド構造でもよい。
本実施形態において、周方向主溝50は、タイヤ幅方向に4つ設けられる。周方向主溝50は、タイヤ中心CLに対してタイヤ幅方向両側に1つずつ設けられるセンター主溝51,52と、タイヤ幅方向においてセンター主溝51,52それぞれの外側に設けられるショルダー主溝53,54と、を含む。タイヤ幅方向において、センター主溝51,52は、ショルダー主溝53とショルダー主溝54との間に設けられる。
以下の説明においては、センター主溝51を適宜、第1センター主溝51、と称し、センター主溝52を適宜、第2センター主溝52、と称し、ショルダー主溝53を適宜、第1ショルダー主溝53、と称し、ショルダー主溝54を適宜、第2ショルダー主溝54、と称する。
第1センター主溝51、第2センター主溝52、第1ショルダー主溝53、及び第2ショルダー主溝54のうち、第2ショルダー主溝54が最も車両外側に設けられ、第2ショルダー主溝54に次いで第2センター主溝52が車両外側に設けられ、第2センター主溝52に次いで第1センター主溝51が車両外側に設けられ、第1ショルダー主溝53が最も車両内側に設けられる。
第1センター主溝51及び第1ショルダー主溝53は、タイヤ中心CLよりも車両内側に設けられる。第2センター主溝52及び第2ショルダー主溝54は、タイヤ中心CLよりも車両外側に設けられる。
タイヤ幅方向における第1センター主溝51の中心位置を示す溝中心は、タイヤ中心CLと接地端T1との間の半トレッド領域において、タイヤ中心CLからトレッド接地幅TWの10[%]以上15[%]以下の位置に配置される。
タイヤ幅方向における第2センター主溝52の中心位置を示す溝中心は、タイヤ中心CLと接地端T2との間の半トレッド領域において、タイヤ中心CLからトレッド接地幅TWの10[%]以上15[%]以下の位置に配置される。
タイヤ幅方向における第1ショルダー主溝53の中心位置を示す溝中心は、タイヤ中心CLと接地端T1との間の半トレッド領域において、タイヤ中心CLからトレッド接地幅TWの30[%]以上35[%]以下の位置に配置される。
タイヤ幅方向における第2ショルダー主溝54の中心位置を示す溝中心は、タイヤ中心CLと接地端T2との間の半トレッド領域において、タイヤ中心CLからトレッド接地幅TWの30[%]以上35[%]以下の位置に配置される。
本実施形態において、陸部60は、タイヤ幅方向に5つ設けられる。陸部60は、第1センター主溝51と第2センター主溝52との間に設けられるセンター陸部61と、第1センター主溝51と第1ショルダー主溝53との間に設けられる第1ミドル陸部62と、第2センター主溝52と第2ショルダー主溝54との間に設けられる第2ミドル陸部63と、第1ショルダー主溝53よりも車両内側に設けられる第1ショルダー陸部64と、第2ショルダー主溝54よりも車両外側に設けられる第2ショルダー陸部65とを含む。
タイヤ幅方向において、第1ミドル陸部62は、センター陸部61と第1ショルダー陸部64との間に設けられる。タイヤ幅方向において、第2ミドル陸部63は、センター陸部61と第2ショルダー陸部65との間に設けられる。
第1センター陸部61、第1ミドル陸部62、第2ミドル陸部63、第1ショルダー陸部64、及び第2ショルダー陸部65のうち、第2ショルダー陸部65が最も車両外側に設けられ、第2ショルダー陸部65に次いで第2ミドル陸部63が車両外側に設けられ、第2ミドル陸部63に次いでセンター陸部61が車両外側に設けられ、センター陸部61に次いで第1ミドル陸部62が車両外側に設けられ、第1ショルダー陸部64が最も車両内側に設けられる。
センター陸部61は、タイヤ中心CLに設けられる。タイヤ中心CL(センターライン)は、センター陸部61を通過する。第1ミドル陸部62及び第1ショルダー陸部64は、タイヤ中心CLよりも車両内側に設けられる。第2ミドル陸部63及び第2ショルダー陸部65は、タイヤ中心CLよりも車両外側に設けられる。
第1センター陸部61、第1ミドル陸部62、第2ミドル陸部63、第1ショルダー陸部64、及び第2ショルダー陸部65のうち、第1ショルダー陸部64が、トレッド部10の一方の接地端T1に最も近い位置に設けられ、第2ショルダー陸部65が、トレッド部10の他方の接地端T2に最も近い位置に設けられる。
第1ショルダー陸部64は、第1ショルダー主溝53と接地端T1との間に設けられる。第2ショルダー陸部65は、第2ショルダー主溝54と接地端T2との間に設けられる。
タイヤ1は、第1ショルダー陸部64が第2ショルダー陸部65よりも車両内側に配置されるように、車両500に装着される。
路面と接触可能な陸部60の表面60Aは、センター陸部61の表面61A、第1ミドル陸部62の表面62A、第2ミドル陸部63の表面63A、第1ショルダー陸部64の表面64A、及び第1ショルダー陸部65の表面65Aを含む。
ラグ溝70は、センター陸部61に設けられる傾斜溝71と、第1ミドル陸部62に設けられる傾斜溝72と、第2ミドル陸部63に設けられる傾斜溝73と、第1ショルダー陸部64に設けられる傾斜溝74と、第2ショルダー陸部65に設けられる傾斜溝75とを含む。
傾斜溝71は、センター陸部61においてタイヤ周方向に複数設けられる。傾斜溝71の一方の端部は、第1センター主溝51と接続され、傾斜溝71の他方の端部は、第2センター主溝52と接続されずにセンター陸部61で終端する。すなわち、傾斜溝71は、セミクローズド構造である。傾斜溝71は、第1センター主溝51からタイヤ幅方向に対して傾斜した方向に延在する。タイヤ幅方向に対する傾斜溝71の傾斜角度は、例えば20[°]以上50[°]以下である。
傾斜溝72は、第1ミドル陸部62においてタイヤ周方向に複数設けられる。傾斜溝72の一方の端部は、第1ショルダー主溝53と接続され、傾斜溝72の他方の端部は、第1センター主溝51と接続されずに第1ミドル陸部62で終端する。すなわち、傾斜溝72は、セミクローズド構造である。傾斜溝72は、第1ショルダー主溝53からタイヤ幅方向に対して傾斜した方向に延在する。傾斜溝72の傾斜方向は、傾斜溝71の傾斜方向と同じである。タイヤ幅方向に対する傾斜溝72の傾斜角度は、例えば20[°]以上50[°]以下である。
傾斜溝73は、第2ミドル陸部63においてタイヤ周方向に複数設けられる。傾斜溝73の一方の端部は、第2センター主溝52と接続され、傾斜溝73の他方の端部は、第2ショルダー主溝54と接続されずに第2ミドル陸部63で終端する。すなわち、傾斜溝73は、セミクローズド構造である。傾斜溝73は、第2センター主溝52からタイヤ幅方向に対して傾斜した方向に延在する。傾斜溝73の傾斜方向は、傾斜溝71の傾斜方向及び傾斜溝72の傾斜方向と同じである。タイヤ幅方向に対する傾斜溝73の傾斜角度は、例えば20[°]以上55[°]以下である。
傾斜溝74は、第1ショルダー陸部64においてタイヤ周方向に複数設けられる。傾斜溝74の一方の端部は、接地端T1よりも車両内側のサイド部7まで延在し、傾斜溝74の他方の端部は、第1ショルダー主溝53と接続されずに第1ショルダー陸部64で終端する。すなわち、傾斜溝74は、セミクローズド構造である。傾斜溝74の開口端部に面取り74Cが設けられている。
傾斜溝75は、第2ショルダー陸部65においてタイヤ周方向に複数設けられる。傾斜溝75の一方の端部は、第2ショルダー主溝54と接続され、傾斜溝75の他方の端部は、接地端T2よりも車両外側のサイド部7まで延在する。すなわち、傾斜溝75は、オープン構造である。傾斜溝75の開口端部に面取り75Cが設けられている。
傾斜溝71はセミクローズド構造であり、センター陸部61は傾斜溝71によって分断されていない。すなわち、センター陸部61は、タイヤ周方向において表面61Aが途切れずに繋がっているリブ(連続陸部)である。
傾斜溝72はセミクローズド構造であり、第1ミドル陸部62は傾斜溝72によって分断されていない。すなわち、第1ミドル陸部62は、タイヤ周方向において表面62Aが途切れずに繋がっているリブ(連続陸部)である。
傾斜溝73はセミクローズド構造であり、第2ミドル陸部63は傾斜溝73によって分断されていない。すなわち、第2ミドル陸部63は、タイヤ周方向において表面63Aが途切れずに繋がっているリブ(連続陸部)である。
傾斜溝74はセミクローズド構造であり、第1ショルダー陸部64は傾斜溝74によって分断されていない。すなわち、第1ショルダー陸部64は、タイヤ周方向において表面64Aが途切れずに繋がっているリブ(連続陸部)である。
傾斜溝75はオープン構造であり、第2ショルダー陸部65は傾斜溝75によって分断されている。すなわち、第2ショルダー陸部65は、タイヤ周方向において表面65Aが途切れているブロック列(断続陸部)である。
本実施形態においては、第2ショルダー主溝54の溝幅をW1、第2センター主溝52の溝幅をW2、第1センター主溝51の溝幅をW3、第1ショルダー主溝53の溝幅をW4としたとき、溝幅W1、溝幅W2、溝幅W3、及び溝幅W4のうち、溝幅W1が最も小さく、溝幅W2が最も大きい。
溝幅W1と溝幅W2の比[W2/W1]は4以上5以下である。また、タイヤ中心CLと接地端T1との間のトレッド部10の溝面積比率をSinとし、タイヤ中心CLと接地端T2との間のトレッド部10の溝面積比率をSoutとしたとき、比[Sin/Sout]は、1.1以上1.2以下である。なお、溝面積比率とは、トレッド部10の表面における[溝の開口面積]/[溝の開口面積+陸部の面積]をいう。すなわち、溝が無いと想定した場合のトレッド部10の所定領域の面積を総面積と定義し、その所定領域に存在する溝の開口面積を溝面積と定義した場合、溝面積比率とは、[溝面積]/[総面積]である。
本実施形態において、トレッドパターン40は、タイヤ周方向に設けられた複数のパターンエレメントによって構成される。パターンエレメントは、ピッチとも呼ばれる。
パターンエレメント(ピッチ)とは、タイヤ周方向に沿って同一の又は類似するパターンが繰り返されるときの、パターン構成要素の最小単位をいう。換言すれば、パターンエレメントとは、タイヤ周方向に同一の又は類似するデザインのパターンが複数設けられている場合において、1つのパターンでタイヤ1のトレッド部10に規定される部分をいう。パターンは、ラグ溝、サイプ、及びカーフの少なくとも一つを含む。ラグ溝及びサイプは、陸部を貫通していない切欠きや切れ込み状のものを含む。パターンエレメントは、タイヤ周方向に配置された2つのラグ溝70によって区画される。なお、パターンエレメントは、タイヤ周方向に配置された2つのサイプで区画されてもよい。パターンエレメントは、タイヤ周方向に配置された第1の幅のラグ溝と第1の幅とは異なる第2の幅のラグ溝とで区画されてもよいし、タイヤの周方向に配置されたラグ溝とサイプとで区画されてもよい。
サイプとは、1.5[mm]未満の溝幅を有する溝である。サイプの少なくとも一部は、タイヤ幅方向に延在してもよいし、タイヤ周方向に延在してもよい。
センター陸部61は、傾斜溝71によって区画された複数のパターンエレメント81を有する。本実施形態において、パターンエレメント81は、タイヤ周方向に設けられた複数の傾斜溝71のうち、隣り合う2つの傾斜溝71によって区画される。パターンエレメント81は、タイヤ周方向に複数設けられる。
第1ミドル陸部62は、傾斜溝72によって区画された複数のパターンエレメント82を有する。本実施形態において、パターンエレメント82は、タイヤ周方向に設けられた複数の傾斜溝72のうち、隣り合う2つの傾斜溝72によって区画される。パターンエレメント82は、タイヤ周方向に複数設けられる。
第2ミドル陸部63は、傾斜溝73によって区画された複数のパターンエレメント83を有する。本実施形態において、パターンエレメント83は、タイヤ周方向に設けられた複数の傾斜溝73のうち、隣り合う2つの傾斜溝73によって区画される。パターンエレメント83は、タイヤ周方向に複数設けられる。
第1ショルダー陸部64は、傾斜溝74によって区画された複数のパターンエレメント84を有する。本実施形態において、パターンエレメント84は、タイヤ周方向に設けられた複数の傾斜溝74のうち、隣り合う2つの傾斜溝74によって区画される。パターンエレメント84は、タイヤ周方向に複数設けられる。
第2ショルダー陸部65は、傾斜溝75によって区画された複数のパターンエレメント85を有する。本実施形態において、パターンエレメント85は、タイヤ周方向に設けられた複数の傾斜溝75のうち、隣り合う2つの傾斜溝75によって区画される。パターンエレメント85は、タイヤ周方向に複数設けられる。
本実施形態においては、バリアブルピッチ法に基づいて、トレッドパターン40が設計される。バリアブルピッチ法とは、パターンエレメントのタイヤ周方向の寸法であるピッチ長に差異を設けてノイズの周波数を分散させることによって、ノイズを抑制する技術である。
本実施形態において、トレッド部10は、ピッチ長が異なる複数のパターンエレメントを有するピッチバリエーション構造を採用する。ピッチ長とは、タイヤ1を規定リムにリム組みして、正規内圧を充填して、タイヤ1に荷重を加えない無負荷状態のときの、1つのパターンエレメントのタイヤ周方向の寸法をいう。
本実施形態においては、第1ショルダー陸部64において、異なるピッチ長の複数のパターンエレメント84がタイヤ周方向に設けられる。また、第2ショルダー陸部65において、異なるピッチ長の複数のパターンエレメント85がタイヤ周方向に設けられる。
図5は、本実施形態に係る第1ショルダー陸部64を示す展開図である。図6は、本実施形態に係る第2ショルダー陸部65を示す展開図である。
図5に示すように、第1ショルダー陸部64は、異なるピッチ長Laのパターンエレメント84を複数有する。図5に示す例では、第1ショルダー陸部64は、ピッチ長La1のパターンエレメント84と、ピッチ長La1よりも長いピッチ長La2のパターンエレメント84と、ピッチ長La2よりも長いピッチ長La3のパターンエレメント84と、ピッチ長La3よりも長いピッチ長La4のパターンエレメント84とを有する。
図5は、パターンエレメント84の種類の総数を示すピッチ数が4である例を示す。なお、ピッチ数は、4種類に限られず、任意の複数(N数)でよい。また、図5に示す例では、ピッチ長La1のパターンエレメント84の隣にピッチ長La2のパターンエレメント84が配置され、ピッチ長La2のパターンエレメント84の隣にピッチ長La3のパターンエレメント84が配置され、ピッチ長La3のパターンエレメント84の隣にピッチ長La4のパターンエレメント84が配置されている例を示す。すなわち、図5は、異なるピッチ長Laがタイヤ周方向に昇順又は降順で配置されるように、複数のパターンエレメント84にタイヤ周方向に配置されている例を示す。例えば、ピッチ長La1のパターンエレメント84の隣にピッチ長La3のパターンエレメント84が配置され、ピッチ長La3のパターンエレメント84の隣にピッチ長La2パターンエレメント84が配置され、ピッチ長La2のパターンエレメント84の隣にピッチ長La4のパターンエレメント84が配置されてもよい。すなわち、異なるピッチ長Laがタイヤ周方向にランダムに配置されるように、複数のパターンエレメント84がタイヤ周方向に配置されてもよい。
以下の説明においては、第1ショルダー陸部64の複数のパターンエレメント84のピッチ長Laのうち、最も長いピッチ長Laを適宜、最長ピッチ長Lamax、と称し、最も短いピッチ長Laを適宜、最短ピッチ長Lamin、と称する。図5に示す例では、最長ピッチ長Lamaxは、ピッチ長La4であり、最短ピッチ長Laminは、ピッチ長La1である。
図6に示すように、第2ショルダー陸部65は、異なるピッチ長Lbのパターンエレメント85を複数有する。図6に示す例では、第2ショルダー陸部65は、ピッチ長Lb1のパターンエレメント85と、ピッチ長Lb1よりも長いピッチ長Lb2のパターンエレメント85と、ピッチ長Lb2よりも長いピッチ長Lb3のパターンエレメント85と、ピッチ長Lb3よりも長いピッチ長Lb4のパターンエレメント85とを有する。
図6は、パターンエレメント85の種類の総数を示すピッチ数が4である例を示す。なお、ピッチ数は、4種類に限られず、任意の複数(N数)でよい。また、第1ショルダー部64のピッチ数と第2ショルダー部65のピッチ数とが異なってもよい。また、図6に示す例では、ピッチ長Lbがタイヤ周方向に昇順又は降順で配置されるように、複数のパターンエレメント85にタイヤ周方向に配置されている例を示す。異なるピッチ長Lbがタイヤ周方向にランダムに配置されるように、複数のパターンエレメント85がタイヤ周方向に配置されてもよい。
以下の説明においては、第2ショルダー陸部65の複数のパターンエレメント85のピッチ長Lbのうち、最も長いピッチ長Lbを適宜、最長ピッチ長Lbmax、と称し、最も短いピッチ長Lbを適宜、最短ピッチ長Lbmin、と称する。図6に示す例では、最長ピッチ長Lbmaxは、ピッチ長Lb4であり、最短ピッチ長Lbminは、ピッチ長Lb1である。
第1ショルダー陸部64の複数のパターンエレメント84のうち最長ピッチ長Lamaxと最短ピッチ長Laminとの比を示すピッチ比をPin、第2ショルダー陸部65の複数のパターンエレメント85のうち最長ピッチ長Lbmaxと最短ピッチ長Lbminとの比を示すピッチ比をPout、としたとき、以下の(1)式の条件を満足するように、トレッドパターン40が設計されている。
Pin>Pout …(1)
但し、
Pin=Lamax/Lamin …(2)
Pout=Lbmax/Lbmin …(3)
本実施形態において、ピッチ比Pinは、1.4以上1.7以下である。ピッチ比Poutは、1.2以上1.5以下である。
また、本実施形態においては、第2ショルダー陸部65の平均ピッチ長Lbaveは、第1ショルダー陸部64の平均ピッチ長Laaveよりも長い。
第1ショルダー陸部64の平均ピッチ長Laaveとは、複数のパターンエレメント84のピッチ長Laの平均値である。本実施形態において、平均ピッチ長Laaveは、タイヤ周方向における第1ショルダー陸部64の寸法(所謂、周長)を、傾斜溝74の総数で割った値である。
第2ショルダー陸部65の平均ピッチ長Lbaveとは、複数のパターンエレメント85のピッチ長Lbの平均値である。本実施形態において、平均ピッチ長Lbaveは、タイヤ周方向における第2ショルダー陸部65の寸法(所謂、周長)を、傾斜溝75の総数で割った値である。
本実施形態において、第2ショルダー陸部65の平均ピッチ長Lbaveは、第1ショルダー陸部64の平均ピッチ長Laaveの1.15[倍]以上1.25[倍]以下である。
また、本実施形態においては、第1ショルダー陸部64のパターンエレメント84の総数、第2ショルダー陸部65のパターンエレメント85の総数よりも多い。
図7は、本実施形態に係るトレッドプロファイルラインを示す図である。図7は、回転軸AXを通るトレッド部10の子午断面を示す。図8は、図7の一部を拡大した図であり、本実施形態に係るトレッドプロファイルラインのうちセンター陸部61のトレッドプロファイルラインを示す図である。図9は、図7の一部を拡大した図であり、本実施形態に係るトレッドプロファイルラインのうち第2ミドル陸部63及び第2ショルダー陸部65のトレッドプロファイルラインを示す図である。
なお、以下で説明するトレッド部10のトレッドプロファイルライン及び基準プロファイルラインPL0は、タイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、タイヤ1に荷重を加えない無負荷状態のときのトレッドプロファイルライン及び基準プロファイルラインPL0である。
トレッドプロファイルラインは、回転軸AXを通るトレッド部10の子午断面におけるタイヤ1のトレッド部10の陸部60の表面60A(接地面、踏面)の輪郭を示す。なお、本実施形態において、第1ミドル陸部62のトレッドプロファイルラインと第2ミドル陸部63のトレッドプロファイルラインとは実質的に等しい。第1ショルダー陸部64のトレッドプロファイルラインと第2ショルダー陸部64のトレッドプロファイルラインとは実質的に等しい。以下の説明においては、センター陸部61、第2ミドル陸部63、及び第2ショルダー陸部65のトレッドプロファイルラインについて主に説明し、第1ミドル陸部62及び第1ショルダー陸部64のトレッドプロファイルラインについての説明は簡略又は省略する。
図7、図8、及び図9に示すように、回転軸AXを通るトレッド部10の子午断面において、周方向主溝50の少なくとも3つの開口端部を通る円弧状の基準プロファイルラインPL0が規定される。第1ショルダー陸部64の表面64A及び第2ショルダー陸部65の表面65Aはそれぞれ、基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出する。
また、本実施形態においては、センター陸部61の表面61A、第1ミドル陸部62の表面62A、及び第2ミドル陸部63の表面63Aのそれぞれも、基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出する。
本実施形態において、センター陸部61の表面61Aの基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E61、第1ミドル陸部62の表面62Aの基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E62、第2ミドル陸部63の表面63Aの基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E63は、いずれも、0.1[mm]以上1.0[mm]以下である。
本実施形態において、センター陸部61の表面61Aの基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E61は、0.2[mm]以上0.5[mm]以下である。なお、最大突出量E61は、0.2[mm]以上0.4[mm]以下であることがより好ましい。
本実施形態において、第1ショルダー陸部64の表面64Aの基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E64、及び第2ショルダー陸部65の表面65Aの基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E65は、0.3[mm]以上1.0[mm]以下である。なお、最大突出量E64及び最大突出量E65は、0.5[mm]以上0.7[mm]以下であることがより好ましい。
なお、最大突出量とは、基準プロファイルラインPL0から陸部60の表面60Aまでのタイヤ径方向における最大寸法をいう。
なお、第1ショルダー陸部64の表面64Aの基準プロファイルラインPL0からの突出量は、第1ショルダー主溝53からタイヤ幅方向外側に向かって増大し、最大突出量E64に到達した後、タイヤ幅方向外側に向かって減少することが好ましい。同様に、第2ショルダー陸部65の表面65Aの基準プロファイルラインPL0からの突出量は、第2ショルダー主溝54からタイヤ幅方向外側に向かって増大し、最大突出量E65に到達した後、タイヤ幅方向外側に向かって減少することが好ましい。
次に、図10を参照して、基準プロファイルラインPL0について説明する。基準プロファイルラインPL0は、対象となる陸部60のそれぞれについて設定される。すなわち、センター陸部61について第1の基準プロファイルラインPL0が設定され、第1ミドル陸部62について第2の基準プロファイルラインPL0が設定され、第2ミドル陸部63について第3の基準プロファイルラインPL0が設定され、第1ショルダー陸部64について第4の基準プロファイルラインPL0が設定され、第2ショルダー陸部65について第5の基準プロファイルラインPL0が設定される。
図10を用いる以下の説明においては、第2ミドル陸部63について設定される基準輪郭線PLについて説明する。
図10に示すように、第2ミドル陸部63の両隣に第2センター主溝52及び第2ショルダー主溝54が設けられる。第2ショルダー主溝54は、開口端部K1及び開口端部K2を有する。第2センター主溝52は、開口端部K3及び開口端部K4を有する。
開口端部K1は、第2ショルダー主溝54の内壁面と第2ショルダー陸部65の表面65Aとの境界である。開口端部K2は、第2ショルダー主溝54の内壁面と第2ミドル陸部63の表面63Aとの境界である。開口端部K3は、第2センター主溝52の内壁面と第2ミドル陸部63の表面63Aとの境界である。開口端部K4は、第2センター主溝52の内壁面とセンター陸部61の表面61Aとの境界である。
すなわち、周方向主溝50の開口端部とは、周方向主溝50の内壁面と陸部60の表面60A(接地面、踏面)とで形成される角部の頂点をいう。なお、周方向主溝50の内壁面と陸部60の表面60Aとで形成される角部が面取りされている場合、周方向主溝50の開口端部とは、面取面と表面60Aとの交点をいう。
第2ミドル陸部63についての基準プロファイルラインPL0とは、第2ミドル陸部63の両隣に設けられる2つの周方向主溝50(第2ショルダー主溝54及び第2センター主溝52)の4つの開口端部K1,K2,K3,K4のうち、第2ミドル陸部63の表面63Aとの境界に配置される第1の開口端部K2及び第2の開口端部K3と、残りの2つの開口端部K1,K4のうちトレッド部10のタイヤ幅方向の中心部であるタイヤ中心CLに近い第3の開口端部K4とを通り、4つの開口端部K1,K2,K3,K4よりもタイヤ径方向内側に中心が位置する最大曲率半径で描かれる円弧である。
以上、第2ミドル陸部63についての基準プロファイルラインPL0について説明した。センター陸部61、第1ミドル陸部62、第1ショルダー陸部64、及び第2ショルダー陸部65のそれぞれについても、上述の方法と同様の方法で基準プロファイルラインPL0が設定される。
なお、基準プロファイルラインPL0が、5つの周方向主溝50の開口端部の全部を通過する円弧状のラインでもよい。
図11は、本実施形態に係るタイヤ1の接地形状の一例を示す図である。図12は、従来例に係るタイヤの接地形状を示す図である。本実施形態に係るタイヤ1の接地形状の測定条件と、従来例に係るタイヤの接地形状の測定条件とは、同一である。従来例に係るタイヤのトレッドパターンは、従来例に係るタイヤのトレッドプロファイルラインは基準プロファイルラインと一致する。すなわち、従来例に係るタイヤの陸部の表面は、基準プロファイルラインから突出していない。なお、従来例に係るタイヤのトレッドパターンは、図4を参照して説明したトレッドパターン40と同等である。図12に示すように、従来例に係るタイヤの陸部の接地長は短い。図11に示すように、本実施形態に係るタイヤ1の陸部60(61,62,63,64,65)の接地長は長く、接地面積が増加していることが分かる。
以上説明したように、本実施形態によれば、バリアブルピッチ法に基づいてトレッドパターン40が設計され、ピッチ長が異なる複数のパターンエレメントを有するピッチバリエーション構造がトレッド部10に採用されているので、タイヤ1の走行においてノイズが発生することが抑制される。また、最も車両内側に配置される第1ショルダー陸部64のピッチ比Pin、及び最も車両外側に配置される第2ショルダー陸部65のピッチ比Poutに着目し、(1)式の条件を満足するように、トレッドパターン40が形成されることにより、タイヤ1の操縦安定性能及びノイズ抑制性能の両立を図ることができる。ピッチ比が小さい場合、タイヤ1の走行においてタイヤ周方向におけるトレッド部10の剛性の変動は小さくなるため、操縦安定性能が向上する。一方、ピッチ比が大きい場合、ノイズの周波数が分散されるので、ノイズ抑制性能が向上する。タイヤ1の操縦安定性能を向上させるためには、車両内側のタイヤ1の第1ショルダー陸部64の剛性を高めるよりも車両外側のタイヤ1の第2ショルダー陸部65の剛性を高めた方が効果的である。一方、運転室に搭乗しているユーザに対するノイズ低減性能を向上させるためには、車両外側のタイヤ1の第2ショルダー陸部65で発生するノイズを低減するよりも車両内側のタイヤ1の第1ショルダー陸部64で発生するノイズを低減する方が効果的である。そのため、第1ショルダー陸部64のピッチ比Pinを大きくし、第2ショルダー陸部65のピッチ比Poutを小さくすることにより、タイヤ1の操縦安定性能及びノイズ抑制性能の両立を図ることができる。
また、本実施形態によれば、第1ショルダー陸部64の表面64A及び第2ショルダー陸部65の表面65Aのそれぞれが基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出している。そのため、第1ショルダー陸部64の接地領域におけるタイヤ周方向の先着部及び後着部においてタイヤ幅方向中央部が凹むように変形することが抑制され、第1ショルダー陸部64の接地形状は均一化される。同様に、第2ショルダー陸部65の接地形状も均一化される。したがって、タイヤ1の操縦安定性能及び耐偏摩耗性能を向上することができる。
また、本実施形態によれば、第2ショルダー陸部65の平均ピッチ長Lbaveは、第1ショルダー陸部64の平均ピッチ長Laaveよりも長い。これにより、タイヤ1の操縦安定性能を更に向上することができる。例えば、車両500が左方向にコーナーリングするとき、車両500の右側に装着されている右タイヤ1Rの第2ショルダー陸部65が路面RSから受ける接地圧及び横力は大きくなる。第2ショルダー陸部65の平均ピッチ長Lbaveを長くすることによって、大きな接地圧及び横力を受けても第2ショルダー陸部65は耐えることができる。そのため、タイヤ1の操縦安定性能が向上する。車両500が右方向にコーナーリングするときの左タイヤ1Lについても同様である。
また、本実施形態によれば、ピッチ比Pinは、1.4以上1.7以下であり、ピッチ比Poutは、1.2以上1.5以下である。ピッチ比Pinが1.4よりも小さい場合、十分なノイズ低減性能が得られない可能性がある。ピッチ比Pinが1.7よりも大きい場合、十分な耐偏摩耗性能が得られない可能性がある。また、ピッチ比Poutが1.2よりも小さい場合、ノイズが発生する可能性が高くなる。ピッチ比Poutが1.5よりも大きい場合、操縦安定性能が悪化する可能性がある。ピッチ比Pinを1.4以上1.7以下とし、ピッチ比Poutを1.2以上1.5以下とすることにより、操縦安定性能、ノイズ低減性能、及び耐偏摩耗性能を得ることができる。
また、本実施形態においては、センター陸部61の表面61Aの基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E61は、0.2[mm]以上0.5[mm]以下である。これにより、偏摩耗が抑制され操縦安定性能が向上する。
また、本実施形態においては、第1ショルダー陸部64の表面64Aの基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E64、及び第2ショルダー陸部65の表面65Aの基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E65は、0.3[mm]以上1.0[mm]以下である。これにより、偏摩耗が抑制され操縦安定性能が向上する。
なお、本実施形態においては、第1ショルダー陸部64のパターンエレメント84のピッチ長Laがそれぞれ異なり、第2ショルダー陸部65のパターンエレメント85のピッチ長Lbがそれぞれ異なることとした。センター陸部61のパターンエレメント81のピッチ長がそれぞれ異なってもよいし、第1ミドル陸部62のパターンエレメント82のピッチ長がそれぞれ異なってもよいし、第2ミドル陸部63のパターンエレメント83のピッチ長がそれぞれ異なってもよい。
例えば、第1ミドル陸部62の表面62A及び第2ミドル陸部63の表面63Aがそれぞれ、基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出している場合において、第1ミドル陸部62の複数のパターンエレメント82のうち最長ピッチ長と最短ピッチ長との比を示すピッチ比と、第1ショルダー陸部64のピッチ比Pinとが等しく、第2ミドル陸部63の複数のパターンエレメント83のうち最長ピッチ長と最短ピッチ長との比を示すピッチ比と、第2ショルダー陸部65のピッチ比Poutとが等しくなるように、トレッドパターン40が設計されてもよい。これにより、操縦安定性能及びノイズ低減性能をより向上することができる。
なお、本実施形態において、第1ショルダー陸部64の表面64A及び第2ショルダー陸部65の表面65Aのみならず、センター陸部61の表面61A、第1ミドル陸部62の表面62A、及び第2ミドル陸部63の表面63Aも、基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出することとした。センター陸部61の表面61A、第1ミドル陸部62の表面62A、及び第2ミドル陸部63の表面63Aの少なくとも一つは、基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出しなくてもよい。例えば、センター陸部61の表面61Aが基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出し、第1ミドル陸部62の表面62A及び第2ミドル陸部63の表面63Aが基準プロファイルラインPL0と一致してもよい。
なお、本実施形態においては、周方向主溝50が4つ設けられ、陸部60が5つ設けられることとした。周方向主溝50が3つ設けられ、陸部60が4つ設けられてもよい。周方向主溝50が2つ設けられ、陸部60が3つ設けられてもよい。この場合においても、トレッド部10の一方の接地端T1に最も近い陸部60のピッチ比Pinとトレッド部10の他方の接地端T2に最も近い陸部60のピッチ比Poutとが(1)式の条件を満足し、それら陸部60の表面60Aがそれぞれ基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出することにより、操縦安定性能及びノイズ低減性能の両立を図ることができる。
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図13は、本実施形態に係るトレッドプロファイルライン及び基準プロファイルラインの一例を示す図である。図14は、本実施形態に係るトレッドプロファイルラインのうちセンター陸部61のトレッドプロファイルラインを示す図である。図13及び図14は、タイヤ1の回転軸AXを通るトレッド部10の子午断面を示す。
図13に示すように、第1センター主溝51は、タイヤ幅方向において2つの開口端部K5,K6を有する。第2センター主溝52は、タイヤ幅方向において2つの開口端部K3,K4を有する。第1ショルダー主溝53は、タイヤ幅方向において2つの開口端部K7,K8を有する。第2ショルダー主溝54は、タイヤ幅方向において2つの開口端部K1,K2を有する。
本実施形態において、基準プロファイルラインPL0は、第1,第2センター主溝51,52の全部の開口端部K3,K4,K5,K6を通るように規定される。タイヤ1の回転軸AXを通るトレッド部10の子午断面において、基準プロファイルラインPL0は、円弧状である。
センター陸部61の表面61Aが基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出する。
第1センター主溝51の2つの開口端部K5,K6のうち一方の接地端T1に近い1つの開口端部K6と、第1ショルダー主溝53の2つの開口端部K7,K8と、第1ミドル陸部62の表面62Aと、第1ショルダー陸部64の表面64Aとを含む円弧状の第1トレッドプロファイルラインPL1が、基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出する。第1トレッドプロファイルラインPL1は、第1センター主溝51と、第1ミドル陸部62と、第1ショルダー陸部64との共通プロファイルラインである。すなわち、第1ミドル陸部62の表面62Aの輪郭と第1ショルダー陸部64の表面64Aの輪郭とは、同一曲線に配置される。
第2センター主溝52の2つの開口端部K3,K4のうち他方の接地端T2に近い1つの開口端部K3と、第2ショルダー主溝54の2つの開口端部K1,K2と、第2ミドル陸部63の表面63Aと、第2ショルダー陸部65の表面65Aとを含む円弧状の第2トレッドプロファイルラインPL2が、基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出する。第2トレッドプロファイルラインPL2は、第2センター主溝52と、第2ミドル陸部63と、第2ショルダー陸部65との共通プロファイルラインである。すなわち、第2ミドル陸部63の表面63Aの輪郭と第2ショルダー陸部65の表面65Aの輪郭とは、同一曲線に配置される。
上述のように、基準プロファイルラインPL0は、開口端部K3,K4,K5,K6を通る円弧状である。タイヤ径方向においてタイヤ1の最も内側の内端部と最も外側の外端部との距離を示すタイヤ断面高さをSHとしたとき、基準プロファイルラインPL0の曲率半径は、5×SH以上20×SH以下の範囲に定められる。基準プロファイルラインPL0の中心は、基準プロファイルラインPL0よりもタイヤ径方向内側であって、タイヤ赤道面上に規定される。
第1トレッドプロファイルラインPL1は、開口端部K6,K7,K8、第1ミドル陸部62の表面62A、第1ショルダー陸部64の表面64Aを通る円弧状である。また、第1トレッドプロファイルラインPL1は、接地端T1からタイヤ幅方向外側に規定された点P1を通る。点P1は、トレッド接地幅TWの3[%]以上[5%]以下の距離だけ接地端T1からタイヤ幅方向外側の位置に規定される。第1トレッドプロファイルラインPL1の曲率半径は、基準プロファイルラインPL0の曲率半径よりも小さい。第1トレッドプロファイルラインPL1の中心は、第1トレッドプロファイルラインPL1よりもタイヤ径方向内側であって、タイヤ赤道面上に規定される。
第2トレッドプロファイルラインPL2は、開口端部K1,K2,K3、第2ミドル陸部63の表面63A、第2ショルダー陸部65の表面65Aを通る円弧状である。また、第2トレッドプロファイルラインPL2は、接地端T2からタイヤ幅方向外側に規定された点P2を通る。点P2は、トレッド接地幅TWの3[%]以上[5%]以下の距離だけ接地端T2からタイヤ幅方向外側の位置に規定される。第2トレッドプロファイルラインPL2の曲率半径は、基準プロファイルラインPL0の曲率半径よりも小さい。第2トレッドプロファイルラインPL2の中心は、第2トレッドプロファイルラインPL2よりもタイヤ径方向内側であって、タイヤ赤道面上に規定される。
本実施形態においても、第1ショルダー部64のピッチ比Pinは、第2ショルダー陸部65のピッチ比Poutよりも大きい。また、第1ミドル陸部62のピッチ比と第1ショルダー陸部64のピッチ比Pinとは等しく、第2ミドル陸部63のピッチ比と第2ショルダー陸部65のピッチ比とは等しい。
また、本実施形態においても、ピッチ比Pinは、1.4以上1.7以下であり、ピッチ比Poutは、1.2以上1.5以下である。
図14に示すように、センター陸部61の表面61Aの基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E61は、0.2[mm]以上0.5[mm]以下である。なお、最大突出量E61は、0.3[mm]以上0.4[mm]以下であることがより好ましい。
また、図13に示すように、第1トレッドプロファイルラインPL1の基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E1、及び第2トレッドプロファイルラインPL2の基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E2は、0.6[mm]以上2.0[mm]以下である。第2トレッドプロファイルラインPL2の最大突出量E2は、第1トレッドプロファイルラインPL1の最大突出量E1よりも大きい。なお、最大突出量E1,E2は、0.9[mm]以上1.7[mm]以下であることがより好ましい。
図15は、本実施形態に係るタイヤ1の接地形状の一例を示す図である。なお、図11及び図12を参照して説明した接地形状の測定条件と、図15に示すタイヤ1の接地形状の測定条件とは、同一である。図15に示すように、本実施形態においても、タイヤ1の陸部60(61,62,63,64,65)の接地長は長く、接地面積が増加していることが分かる。
以上説明したように、本実施形態においても、センター陸部61の表面61A、第1ミドル陸部62の表面62A、第3ミドル陸部63の表面63A、第1ショルダー陸部64の表面64A、及び第2ショルダー陸部65の表面65Aのそれぞれが、基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出し、ピッチ比Pin及びピッチ比Poutが(1)式の条件を満足するので、操縦安定性能、ノイズ低減性能、及び耐偏摩耗性能が向上する。
また、本実施形態においては、第1トレッドプロファイルラインPL1及び第2トレッドプロファイルラインが規定され、センター陸部61の表面61A、第1トレッドプロファイルラインPL1、及び第2トレッドプロファイルラインPL2のそれぞれが、基準プロファイルラインPL0からタイヤ径方向外側に突出する。第1トレッドプロファイルラインPL1及び第2トレッドプロファイルラインが規定されることにより、タイヤ幅方向における接地性が改善される。すなわち、第1ミドル陸部62と第1ショルダー陸部64とが単一の第1トレッドプロファイルラインPL1で規定されることにより、第1ミドル陸部62と第1ショルダー陸部64との間における接地性は、タイヤ幅方向において滑らかに変化することとなる。そのため、特に、第1ショルダー陸部64における接地性が向上する。第2ミドル陸部63及び第2ショルダー陸部65についても同様である。
第1ミドル陸部62及び第1ショルダー陸部64の接地性が改善され、第2ミドル陸部63及び第2ショルダー陸部65の接地性が改善されることにより、直進性能及び旋回性能を含む操縦安定性能が更に向上し、耐偏摩耗性能も更に向上する。
また、本実施形態においては、センター陸部61の表面61Aの基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E61は、0.2[mm]以上0.5[mm]以下に定められる。最大突出量E61が0.2[mm]以上に定められることにより、センター陸部61について、タイヤ幅方向中央部における接地圧とタイヤ幅方向両端部における接地圧とのより均一化することができる。これにより、センター陸部61と路面RSとのグリップ力が増大するので、車両500の直進時における操舵性能が改善され、直進性能を含む操縦安定性能が更に向上する。
また、最大突出量E61が0.5[mm]以下に定められることにより、センター陸部61について、タイヤ幅方向中央部におけるタイヤ径方向外側への突出量が抑制される。これにより、耐偏摩耗性能が更に改善される。
また、本実施形態においては、第1トレッドプロファイルラインPL1の基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E1、及び第2トレッドプロファイルラインPL2の基準プロファイルラインPL0からの最大突出量E2は、0.6[mm]以上2.0[mm]以下であり、第2トレッドプロファイルラインPL2の最大突出量E2は、第1トレッドプロファイルラインPL1の最大突出量E1よりも大きい。
最大突出量E1,E2が0.6[mm]以上に定められることにより、第1,第2ミドル陸部62,63、及び第1,第2ショルダー陸部64,65のそれぞれにについて、タイヤ幅方向中央部における接地圧とタイヤ幅方向両端部における接地圧とをより均一化することができる。これにより、第1,第2ミドル陸部62,63、及び第1,第2ショルダー陸部64,65のそれぞれと路面RSとのグリップ力が増大するので、車両500の直進時における操舵性能が改善され、直進性能を含む操縦安定性能が更に向上する。
また、最大突出量E1,E2が2.0[mm]以下に定められることにより、第1,第2ミドル陸部62,63、及び第1,第2ショルダー陸部64,65のそれぞれにについて、タイヤ幅方向中央部におけるタイヤ径方向外側への突出量が抑制される。これにより、耐偏摩耗性能が更に改善される。
また、第2トレッドプロファイルラインPL2の最大突出量E2が、第1トレッドプロファイルラインPL1の最大突出量E1よりも大きいので、耐偏摩耗性能が更に向上する。第2トレッドプロファイルラインPL2を形成する第2ミドル陸部63及び第2ショルダー陸部65は、車両外側に配置される。例えば、車両500が左方向にコーナーリングするとき、車両500の右側に装着されている右タイヤ1Rの第2ミドル陸部63及び第2ショルダー陸部65が路面RSから受ける接地圧及び横力は大きくなる。車両500が右方向にコーナーリングするときの左タイヤ1Lについても同様である。そのため、第2ミドル陸部63及び第2ショルダー陸部65の摩耗量は、車両内側に配置される第1ミドル陸部62及び第1ショルダー陸部64の摩耗量に比べて大きくなる。第2トレッドプロファイルラインPL2の最大突出量E2を、第1トレッドプロファイルラインPL1の最大突出量E1よりも大きくすることにより、第2ミドル陸部63及び第2ショルダー陸部65が摩耗しても、回転軸AXと車両外側におけるトレッド部10の表面までの距離と、回転軸AXと車両内側におけるトレッド部10の表面までの距離との差が大きくなることが抑制される。これにより、操縦安定性能及び耐偏摩耗性能が更に向上する。
また、本実施形態によれば、タイヤ径方向においてタイヤ1の最も内側の内端部と最も外側の外端部との距離を示すタイヤ断面高さをSHとしたとき、基準プロファイルラインPL0の曲率半径は、5×SH以上20×SH以下の範囲に定められる。基準プロファイルラインPL0の曲率半径をタイヤ断面高さSHの5倍以上とすることで、基準プロファイルラインPL0がタイヤ径方向外側に過度に突出する形状になることが抑制される。これにより、第1トレッドプロファイルラインPL1の曲率半径及び第2トレッドプロファイルラインPL2の曲率半径が過度に小さくなることが抑制され、陸部60の接地性の低下が抑制される。また、基準プロファイルラインPL0の曲率半径をタイヤ断面高さSHの20倍以下とすることで、基準プロファイルラインPL0は、タイヤ径方向外側に適度に突出する形状になる。これにより、第1トレッドプロファイルラインPL1の曲率半径及び第2トレッドプロファイルラインPL2の曲率半径が適度に設定され、陸部60の接地性の低下が抑制される。
<実施例>
本実施形態に係るタイヤ1について、操縦安定性能、ノイズ低減性能、及び耐偏摩耗性能の評価試験を行った。
タイヤサイズを235/40ZR18(95Y)とし、図4に示したトレッドパターン40を有するとともに、図13に示した第1,第2トレッドプロファイルラインPL1,PL2を有する実施例1から実施例4のタイヤ1を作製した。なお、実施例1から実施例4のタイヤ1のセンター陸部61の表面61Aの最大突出量E61[mm]、第1トレッドプロファイルラインPL1の最大突出量E1[mm]、第2トレッドプロファイルラインPL2の最大突出量E2[mm]、第1ショルダー陸部64のピッチ比Pin、及び第2ショルダー陸部65のピッチ比Poutは、以下の表1に示すとおりである。
従来例及び比較例に係るタイヤは、図4に示したトレッドパターン40と同じトレッドパターンを有し、タイヤサイズも実施例1から実施例4と同等である。
従来例に係るタイヤは、複数の陸部の表面が基準プロファイルラインPL0から突出していない。また、従来例に係るタイヤのピッチ比Pinとピッチ比Poutとは等しい。
比較例に係るタイヤは、センター陸部の表面、第1トレッドプロファイルライン、及び第2トレッドプロファイルラインが基準プロファイルラインPL0から突出するものの、ピッチ比Pinとピッチ比Poutとは等しい。
実施例1に係るタイヤは、センター陸部の表面、第1トレッドプロファイルライン、及び第2トレッドプロファイルラインが基準プロファイルラインPL0から突出する。また、ピッチ比Pinはピッチ比Poutよりも大きい。ピッチ比Poutが1.2であり、ピッチ比Pinが1.8である。第1トレッドプロファイルラインの最大突出量と、第2トレッドプロファイルラインの最大突出量とは、等しい。
実施例2に係るタイヤは、センター陸部の表面、第1トレッドプロファイルライン、及び第2トレッドプロファイルラインが基準プロファイルラインPL0から突出する。また、ピッチ比Pinはピッチ比Poutよりも大きい。ピッチ比Poutが1.1であり、ピッチ比Pinが1.6である。なお、第2トレッドプロファイルラインの最大突出量は、第1トレッドプロファイルラインの最大突出量よりも小さい。
実施例3に係るタイヤは、センター陸部の表面、第1トレッドプロファイルライン、及び第2トレッドプロファイルラインが基準プロファイルラインPL0から突出する。また、ピッチ比Pinはピッチ比Poutよりも大きい。ピッチ比Poutが1.1であり、ピッチ比Pinが1.6である。第2トレッドプロファイルラインの最大突出量は、第1トレッドプロファイルラインの最大突出量よりも大きい。
実施例4に係るタイヤは、センター陸部の表面、第1トレッドプロファイルライン、及び第2トレッドプロファイルラインが基準プロファイルラインPL0から突出する。また、ピッチ比Pinはピッチ比Poutよりも大きい。ピッチ比Poutが1.2であり、ピッチ比Pinが1.4である。第1トレッドプロファイルラインの最大突出量と、第2トレッドプロファイルラインの最大突出量とは、等しい。
実施例5に係るタイヤは、センター陸部の表面、第1トレッドプロファイルライン、及び第2トレッドプロファイルラインが基準プロファイルラインPL0から突出する。また、ピッチ比Pinはピッチ比Poutよりも大きい。ピッチ比Poutが1.2であり、ピッチ比Pinが1.6である。第1トレッドプロファイルラインの最大突出量と、第2トレッドプロファイルラインの最大突出量とは、等しい。
実施例1,2,3,4,5に係るタイヤ1、従来例に係るタイヤ、比較例に係るタイヤのそれぞれを、18×8.5Jのリムにリム組みして、230[kPa]の内圧を充填して、排気量2000[cc]のセダン型の試験車両に装着し、操縦安定性能、ノイズ低減性能、及び耐偏摩耗性能についての評価を行った。
操縦安定性能の評価試験は、タイヤが装着された試験車両を乾燥路面において走行させ、直進時及び旋回時の車両安定性についての官能性評価を行った。そして、この評価結果に基づいて従来例1を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、操縦安定性能が優れていることを示す。
ノイズ低減性能の評価試験は、試験車両が粗い路面を有するテストコースを100[km/h]で走行し、テストドライバーが車内騒音に関する官能評価を行う。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほどノイズ低減性能が優れていることを示す。
耐偏摩耗性能の評価試験は、乾燥路面を1000[km]走行し、センター陸部61の摩耗量と、第1,第2ショルダー陸部64,65の摩耗量とをそれぞれ測定した。ショルダー陸部の摩耗量は、第1ショルダー陸部64の摩耗量と第2ショルダー陸部65の摩耗量との平均値を算出した。そして、センター陸部61の摩耗量と、ショルダー陸部の摩耗量との比を算出した。そして、この算出結果に基づいて従来例1を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、耐偏摩耗性能が優れていることを示す。
表1によれば、本発明の技術的範囲に属する実施例1から実施例5に係るタイヤ1については、本発明の技術的範囲に属しない、従来例に係るタイヤに比べて、操縦安定性能、ノイズ低減性能、及び耐偏摩耗性能が優れていることが分かる。
実施例2に係るタイヤ1は、第2トレッドプロファイルラインの最大突出量が、第1トレッドプロファイルラインの最大突出量よりも小さい。一方、実施例3に係るタイヤ1は、第2トレッドプロファイルラインの最大突出量が、第1トレッドプロファイルラインの最大突出量よりも大きい。実施例3に係るタイヤ1は、実施例2に係るタイヤ1に比べて、耐偏摩耗性能が優れていることが分かる。
また、実施例1に係るタイヤ1は、ピッチ比Pinが1.7よりも大きい。実施例2,3に係るタイヤ1は、ピッチ比Poutが1.2よりも小さい。一方、実施例4,5に係るタイヤ1は、ピッチ比Pinが1.4以上1.7以下であり、ピッチ比Poutが1.2以上1.5以下である条件を満足する。実施例4,5に係るタイヤ1は、操縦安定性能、ノイズ低減性能、及び耐偏摩耗性能がより優れていることが分かる。