(第1の実施の形態)
まず、凹凸パターン付き不織布の製造方法に使用される製造装置について説明する。
図1は凹凸パターン付き不織布の製造方法に使用される製造装置の構成例の一部を模式的に示している。製造装置1は、ウェブ7を搬送しながら加工することにより、ウェブ7から凹凸パターン付き半製品8を形成し、その凹凸パターン付き半製品8から凹凸パターン付き不織布9を最終的に製造する製造装置である。凹凸パターンとしては、ウェブ7、半製品8及び不織布9の少なくとも一方の面から突出した凸部、窪んだ凹部、他方の面へ貫通する開孔、又はそれらの組み合わせを有し、意匠性や機能性を付与する模様が挙げられる。製造装置1は、上流側搬送装置13と、第1のサクションドラム5と、水供給装置2と、第1の噴射ノズル3と、第2のサクションドラム6と、第2の噴射ノズル4と、下流側搬送装置14と、脱水機25とを備えている。
上流側搬送装置13は、上流側搬送ベルト13aと方向転換用ロール12とを備えており、上流側搬送ベルト13a上に載置されたウェブ7の搬送方向を方向転換用ロール12により上方向きに転換させて、該ウェブ7を第1のサクションドラム5へ搬送する。このとき、ウェブ7の第1の面7aが上流側搬送装置13の外側に向き、第1の面7aと反対側の第2の面7bが上流側搬送ベルト13aに接するようにして搬送される。
第1のサクションドラム5は、表面に凹凸パターンを有する第1の支持体を外周面5aに備えており、その第1の支持体を軸線A1まわりに回転させながら、上流側搬送装置13から搬送されてきたウェブ7を第1の支持体を介して吸引して、外周面5aに保持しつつ、第2のサクションドラム6へ搬送する。このとき、ウェブ7は、第1の面7aが第1のサクションドラム5の外側に向き、第2の面7bが第1のサクションドラム5の内側に向いて外周面5aに接するようにして、第1の支持体の表面に沿って搬送される。
水供給装置2は、第1のサクションドラム5の外周面5aに保持されたウェブ7に対して第1の面7a側から水を供給して、ウェブ7を湿潤にする。第1のサクションドラム5は、湿潤にされたウェブ7に対して第2の面7b側から水を吸引して、ウェブ7を脱水する。
第1の噴射ノズル3は、第1のサクションドラム5の外周面5aに保持されたウェブ7に対して第1の面7a側から水(第1の水流)を噴射し、ウェブ7の繊維同士を交絡させつつウェブ7を第1の支持体の凹凸パターンに押し付けることで、凹凸パターンをウェブ7に転写して凹凸パターン付き半製品8を形成する。本実施の形態では、第1の噴射ノズル3として、ウェブ7の搬送方向に沿って上流側から順に2台の第1の噴射ノズル3−1及び3−2が設けられている。第1のサクションドラム5は、交絡及び転写中のウェブ7に対して第2の面7b側から水を吸引する。半製品8には、凹凸パターンが存在する領域である凹凸パターン存在領域と、凹凸パターンが存在しない領域である凹凸パターン非存在領域とが形成される。
第2のサクションドラム6は、表面に凹凸パターンを有さない第2の支持体を外周面6aに備えており、その第2の支持体を軸線A2まわりに回転させながら、第1のサクションドラム5から搬送された半製品8を第2の支持体を介して吸引して、外周面6aに保持しつつ、下流側搬送装置14へ搬送する。このとき、半製品8は、第1の面8aが第2のサクションドラム6の内側に向いて外周面6aに接し、第1の面8aと反対側の第2の面8bが第2のサクションドラム6の外側に向くようにして、第2の支持体の表面に沿って搬送される。ただし、半製品8の第1の面8aがウェブ7の第1の面7aに対応し、半製品8の第2の面8bがウェブ7の第2の面7bに対応する。
第2の噴射ノズル4は、第2のサクションドラム6の外周面6aに保持された半製品8における凹凸バターン存在領域に対して水(第2の水流)を噴射せずに凹凸パターン非存在領域に対して第2の面8b側から水(第2の水流)を噴射し、転写された凹凸パターンの視認性を維持しつつ半製品8の繊維同士を更に交絡させて凹凸パターン付き不織布9を形成する。本実施の形態では、第2の噴射ノズル4として、1台の第2の噴射ノズル4が設けられている。
下流側搬送装置14は、下流側搬送ベルト14aを備えており、第2のサクションドラム6によって搬送された不織布9を、第2のサクションドラム6の略上方側における第1のサクションドラム5寄りの位置において受け取って、下流側搬送ベルト14aにより脱水機25に搬送する。
脱水機25は、搬送ベルト25aと複数のサクションボックス25bとを備えており、下流側搬送装置14から搬送されてきた不織布9を搬送ベルト25aにより次工程の設備へ搬送しつつ、複数のサクションボックス25bにより搬送ベルト25a上の不織布9から水分を吸引する。
以下、製造装置1について具体的に説明する。
図2は製造装置1の第1のサクションドラム5の構成例の断面を模式的に示す図である。第1のサクションドラム5は、中空軸部50と、中空軸部50の外側に形成されたセル部52とを備えている。中空軸部50とセル部52とは、軸線A1を中心軸として同軸円筒状に形成されている。中空軸部50は製造装置1の基台(図示せず)に固定され、セル部52は軸線A1まわりに回転可能に中空軸部50に結合される。それにより、固定された中空軸部50の周囲をセル部52が回転できるように構成されている。
セル部52の外周面には液体や気体が通過可能な複数の貫通孔53が形成されており、更にセル部52の外周面に支持体54(第1の支持体)が設けられている。支持体54は軸線をA1とする円筒状の部材であり、セル部52に固定されており、セル部52と一体で軸線A1まわりに回転する。第1のサクションドラム5は軸線A1まわりに回転すると見ることができる。
図3は支持体54の構成例の断面の一部を模式的に示す図である。図3に示すように支持体54は、基材56と、基材56の表面に形成された凹凸パターン55とを備えている。基材56は、セル部52の外周面に接し、液体や気体が通過可能なメッシュ状の複数の開孔を有する。凹凸パターン55は、模様の形状を有する凹部や凸部であり、本実施の形態では所定の模様の形状を有する凸部である。ここで、凸部の高さhは、製造される不織布の用途や模様の形状等によって任意に選択することができるが、例えば0.1〜10mmが挙げられる。
このとき、支持体54の外周面は第1のサクションドラム5の外周面5aを構成していると見ることができる。すなわち第1のサクションドラム5は外周面5aに凹凸パターン55を有する支持体54を備えているということができる。
中空軸部50には液体や気体を吸引可能なポンプ(図示せず)が接続されており、更に図2に示すように中空軸部50の外周面50aには吸引管51−1〜51−3が設けられている。吸引管51−1〜51−3は、一端を中空軸部50の内部空間50bに連通し、他端をセル部52側に開口しており、それによりセル部52及び支持体54を介して他端側の開口部から一端側の中空軸部50へ液体や気体を吸引することができる。吸引管51−1は、第1のサクションドラム5の外周面5aにおける鉛直方向の上側の頂部71のやや上流側の位置に他端側の開口部が向くように配設されている。吸引管51−2は、第1のサクションドラム5の外周面5aにおける鉛直方向の上側の頂部71のやや下流側の位置に他端側の開口部が向くように配設されている。吸引管51−3は、第1のサクションドラム5の外周面5aにおける吸引管51−1の他端側の開口部よりも上流側の位置に他端側の開口部が向くように配設されている。言い換えると、吸引管51−1、51−2及び51−3の他端の開口部は、第1の噴射ノズル3−1、3−2及び水供給装置2に対向する外周面5aの対向位置にそれぞれ設けられている。吸引管51−1、51−2及び51−3の他端の開口部は矩形の形状である。その矩形における、中空軸部50の周方向に平行な一辺の長さは例えばウェブ7に供給される水が周方向に移動し得る距離分の長さであり、中空軸部50の軸線方向に平行な一辺の長さは第1のサクションドラム5の長さよりやや小さい程度である。
したがって、吸引管51−1〜51−3は、搬送中のウェブ7を第2の面7b側から中空軸部50へ向って吸引して支持体54上に確実に保持しつつ、第1の噴射ノズル3−1、3−2及び水供給装置2からウェブ7の第1の面7aに供給される水をウェブ7の第2の面7b側から中空軸部50へ吸引するようになっている。
図4は製造装置1の水供給装置2の構成例を模式的に示す図である。ただし、製造装置1において、ウェブ7の搬送方向をMDとし、ウェブ7の搬送方向MDに垂直な方向、すなわちウェブ7の幅方向をCDとする(本明細書において同じ。)。水供給装置2は、第1のサクションドラム5の外周面5aに保持されているウェブ7の第1の面7a側に対して水30を掛けてウェブ7を湿潤にし、ウェブ7の繊維間に存在する空間を水で埋める。水供給装置2は、例えば幅方向CDと平行な方向に直線的に設けられた開口2aを備えており、図示しない流体源から送られてきた低圧の水を加圧せずにそのまま開口2aから水30として放出する。この水30はそのまま自由落下によりウェブ7に掛けられる。水供給装置2は、第1のサクションドラム5の外周面5aにおける吸引管51−3の開口部の位置又はそのやや上流側に水30が供給されるように配設されている。
ここで、水供給装置2は、ウェブ7の繊維同士を水で交絡させることが目的でなく、ウェブ7に水を含ませることが目的であるため、水供給装置2は水を高圧で噴射することはせず、ウェブ7に水を掛けるようにしている。したがって、図4に示すようにウェブ7近傍の位置からウェブ7に水を自由落下させてもよいし、スプレーで噴霧された水をウェブ7に掛けてもよい。
第1の噴射ノズル3−1は、第1のサクションドラム5の外周面5aにおける鉛直方向の上側の頂部71のやや上流側の位置、すなわち吸引管51−1の開口部の位置に水を噴射するように配設されている。第1の噴射ノズル3−2は、第1のサクションドラム5の外周面5aにおける鉛直方向の上側の頂部71のやや下流側の位置、すなわち吸引管51−2の開口部の位置に対して水を噴射するように配設されている。
逆に言えば、第1のサクションドラム5は、第1の噴射ノズル3−1〜3−2及び水供給装置2の各々から噴射、供給された水がウェブ7に当たる地点の上流側の位置から下流側の位置までの所定範囲について、第1の噴射ノズル3−1〜3−2及び水供給装置2からの水を吸引しつ、ウェブ7を確実に吸引し、安定的に保持することが可能である。
図5は製造装置1の第1の噴射ノズル3の構成例を模式的に示す図である。本実施の形態では、第1の噴射ノズル3としては、搬送方向MDに沿って上流側から順に第1の噴射ノズル3−1及び3−2の2台が設けられるが、図5では最も上流側の第1の噴射ノズル3−1のみを示し、他の図示を省略している。第1の噴射ノズル3−1及び3−2は、第1のサクションドラム5の外周面5aに保持されているウェブ7に対して、ウェブ7の第1の面7a側から水を高圧で噴射し、凹凸パターン55が転写された凹凸パターン40をウェブ7上に形成すると共に、ウェブ7の繊維同士を交絡させる。それにより、ウェブ7は、凹凸パターン存在領域及び凹凸パターン非存在領域を有する凹凸パターン付き半製品8となる。
図6は第1の噴射ノズル3のノズル穴の構成例を模式的に示す図である。第1のサクションドラム5の外周面5aに対向する第1の噴射ノズル3の部材42は、幅方向CDに平行な方向CD1に直線的且つ一定のピッチで配設された一列の複数のノズル穴43を備えている。部材42における方向CD1のノズル穴43の存在する幅d1は、ウェブ7の幅d2よりも大きい。第1の噴射ノズル3は、図示しない流体源から送られてきた高圧の水をウェブ7の幅方向CD全体に亘って複数のノズル穴43から噴射するように構成されている。
ノズル穴43の穴径としては、スパンレース用の噴射ノズルの一般的な仕様を使用することができるが、例えば50〜200μmが挙げられ、好ましくは70μm〜150μmが挙げられる。ノズル穴43の穴径が小さ過ぎると、ノズル穴が詰まる場合がある。ノズル穴43の穴径が大き過ぎると、水流の圧力が上がり難くなり、エネルギー効率が低下する。
ノズル穴43のピッチ(方向CD1に隣接するノズル穴43中心間の距離)としては、スパンレース用の噴射ノズルの一般的な仕様を使用することができるが、例えば0.2〜2.0mmが挙げられ、好ましくは0.4〜1.0mmが挙げられる。ノズル穴43のピッチが小さ過ぎると、ノズルの耐圧が低下し、破損する場合がある。ノズル穴43のピッチが大き過ぎると、繊維同士の交絡が不十分となる。
本実施の形態では、第1の噴射ノズル3−1〜3−2は、鉛直方向に関して、第1のサクションドラム5の軸線A1よりも上方の位置から水流をウェブ7に噴射する。それにより、第1の噴射ノズル3−1〜3−2は、ウェブ7に対して水流を下向き又は斜め下向きに噴射すればよく、上向き又は斜め上向きに噴射しなくてよいので、水流のエネルギーをウェブ7に効率的に伝達することができ、第1の噴射ノズル3−1〜3−2の水流の噴射圧を低くすることができる。それにより、生産効率をより向上できる。
また、本実施の形態では、水供給装置2は、鉛直方向に関して、隣接する第1の噴射ノズル3−1よりも下側に配置されている。それにより、水供給装置2の水がウェブ7に掛かった後にウェブ7の表面を伝って第1の噴射ノズル3−1下のウェブ7へ達することを抑制できる。その結果、第1の噴射ノズル3−1で噴射された水が、ウェブ7の表面を伝ってきた水に衝突して、噴射された水のエネルギーを有効にウェブ7に伝達できなくなることを抑制できる。
図7は凹凸パターン付き半製品8の構成例を模式的に示す図である。半製品8は、搬送方向MDと平行な方向MD2に沿って延びる凹凸パターン40を有する凹凸パターン存在領域8gと、方向MD2に沿って延びる凹凸パターン40を有さない凹凸パターン非存在領域8hとを有している。この図の例では、幅方向CDに平行な方向CD2の両端及び中央に凹凸パターン非存在領域8hが形成され、両端の凹凸パターン非存在領域8hと中央の凹凸パターン非存在領域8hとの間に凹凸パターン存在領域8gが形成されている。なお、本発明の凹凸パターン40及び支持体54の凹凸パターン55による模様は、図7の模様に特に限定されるものでは無い。
図8は製造装置1の第2のサクションドラム6の構成例の断面を模式的に示す図である。第2のサクションドラム6は、中空軸部60と、中空軸部60の外側に形成されたセル部62とを備えている。中空軸部60とセル部62とは、軸線A2を中心軸として同軸円筒状に形成されている。中空軸部60は製造装置1の基台(図示せず)に固定され、セル部62は軸線A2まわりに回転可能に中空軸部60に結合される。それにより、固定された中空軸部60の周囲をセル部62が回転できるように構成されている。
セル部62の外周面には液体や気体が通過可能な複数の貫通孔63が形成されており、更に、セル部62の外周面に支持体64(第2の支持体)が設けられている。支持体64は軸線をA2とする円筒状の部材であり、セル部62に固定されており、セル部62と一体で軸線A2まわりに回転する。全体として第2のサクションドラム6は軸線A2まわりに回転すると見ることができる。
このとき、支持体64の外周面は第2のサクションドラム6の外周面6aを構成していると見ることができる。すなわち、第2のサクションドラム6は外周面6aに凹凸パターンを有さない支持体64を備えているということができる。
中空軸部60には液体や気体を吸引可能なポンプ(図示せず)が接続されており、更に、図8に示すように中空軸部60の外周面60aには吸引管61−1〜61−2が設けられている。吸引管61−1〜61−2は、一端を中空軸部60の内部空間60bに連通し、他端をセル部62側に開口しており、それによりセル部62及び支持体64を介して他端側の開口部から一端側の中空軸部60へ液体や気体を吸引することができる。吸引管61−1は、第2のサクションドラム6の外周面6aにおける水平方向の下流側の頂部74のやや下流側の位置に他端側の開口部が向くように配設されている。吸引管61−2は、第1のサクションドラム5から搬送される半製品8が第2のサクションドラム6の外周面6aに接する位置に他端側の開口部が向くように配設されている。言い換えると、吸引管61−1及び61−2の他端の開口部は、第2の噴射ノズル4及び第2のサクションドラム6に最初に接触する半製品8に対向する外周面6aの対向位置にそれぞれ設けられている。吸引管61−1及び61−2の他端の開口部は矩形の形状である。その矩形における、中空軸部60の周方向に平行な一辺の長さは例えばウェブ7に供給された水が周方向に移動し得る距離分の長さであり、中空軸部60の軸線方向に平行な一辺の長さは第2のサクションドラム6の長さよりやや小さい程度である。
したがって、吸引部61−1は、搬送中の半製品8を第1の面8a側から中空軸部60へ向って吸引して支持体64上に確実に保持しつつ、第2の噴射ノズル4から半製品8の第2の面8bに噴射される水を半製品8の第1の面8a側から中空軸部60へ吸引するようになっている。
第2の噴射ノズル4は、第2のサクションドラム6の外周面6aにおける水平方向の下流側の頂部74のやや下流側の位置、すなわち吸引管61−1の開口部の位置に水を噴射するように配設されている。
逆に言えば、第2のサクションドラム6は、第2の噴射ノズル4から噴射された水が半製品8に当たる地点よりも上流側の位置から下流側の位置までの所定の範囲について、第2の噴射ノズル4からの水を吸引しつつ、半製品8を確実に吸引し、安定的に保持することが可能である。
図9は製造装置1の第2の噴射ノズル4の構成例を模式的に示す図である。本実施の形態では、第2の噴射ノズル4としては、1台の第2の噴射ノズル4が設けられる。第2の噴射ノズル4は、第2のサクションドラム6の外周面6aに保持されている半製品8の凹凸パターン非存在領域に対して、半製品8の第2の面8b側から水を高圧で噴射し、半製品8の繊維同士を更に交絡させる。それにより、半製品8は、強度を高められて、凹凸パターン付き不織布9となる。
図10は第2の噴射ノズル4のノズル穴の構成例を模式的に示す図である。第2のサクションドラム6の外周面6aに対向する第2の噴射ノズル4の部材45は、幅方向CDに平行な方向CD2に直線的且つ一定のピッチで配設された一列の複数のノズル穴46を備えている。部材45における方向CD3のノズル穴46の存在する幅d3は、半製品8の幅d4よりも大きい。ただし、部材45は、半製品8の凹凸パターン存在領域8gに対向する領域45aにはノズル穴46を有さない。第2の噴射ノズル4は、図示しない流体源から送られてきた高圧の水を半製品8の凹凸パターン非存在領域8h(図9)に向けて複数のノズル穴46から噴射するが、半製品8の凹凸パターン存在領域8g(図9)に向けては対応する複数のノズル穴46が存在しないため水を噴射できないように構成されている。
ノズル穴46の穴径、ピッチ(方向CD3に隣接するノズル穴46中心間の距離)、及び、列間の距離(方向MD3に隣接する列のノズル穴46中心間の距離)については、ノズル穴43の場合と同じである。
本実施の形態では、第2の噴射ノズル4は、第2のサクションドラム6の軸線A2よりも鉛直上方の位置から水流を半製品8に噴射する。それにより、第2の噴射ノズル4は、半製品8に対して水流を下向き又は斜め下向きに噴射すればよく、上向き又は斜め上向きに噴射しなくてよいので、水流のエネルギーを半製品8に効率的に伝達することができ、第2の噴射ノズル4の水流の噴射圧を低くすることができる。それにより、生産効率をより向上できる。
また、第1のサクションドラム5及び第2のサクションドラム6は、互いに非接触の状態、すなわち半製品8が第1のサクションドラム5の外周面5aと第2のサクションドラム6の外周面6aとの間に挟まれて圧縮されることなく搬送自在であってある程度の間隔が空けられた状態で、且つそれぞれの軸線A1、A2が相互に平行となるように配設されている。したがって、これらの第1のサクションドラム5及び第2のサクションドラム6を、それぞれの軸線A1、A2まわりに相反する方向に回転させることにより、第1のサクションドラム5が保持していた半製品8を、長さ方向(搬送方向)に適度に緊張させた状態で第2のサクションドラム6に受け渡して、搬送方向の上流側から下流側に向けて搬送することができるようになっている。
また、本実施の形態においては、第1のサクションドラム5及び第2のサクションドラム6は同形同大に形成され、したがって第1のサクションドラム5の外周径と第2のサクションドラム6の外周径とは相互に同径である。ただし、第1のサクションドラム5及び第2のサクションドラム6の各外周径は、製造する不織布の用途や必要とする大きさに応じた任意の大きさとすることができ、例えば200〜1700mm程度のものを使用することができる。さらに、第1のサクションドラム5及び第2のサクションドラム6の各回転速度の関係については、ウェブ7の搬送速度や構成繊維の種類、また第1のサクションドラム5及び第2のサクションドラム6の位置関係等によって任意に設定されるが、例えば、第2のサクションドラム6の回転速度が第1のサクションドラム5の回転速度の1〜1.1倍程度の回転速度とすることができる。
また、本実施の形態においては、第2のサクションドラム6は、第2のサクションドラム6の軸線A2が第1のサクションドラム5の軸線A1よりも鉛直方向の下方に位置するように配置される。その理由は以下の通りである。すなわち、第1の噴射ノズル3からの水の噴射によって水分を含んで重くなった半製品8が、第1のサクションドラム5から離れて自重で鉛直下方向に移動する現象を利用して、半製品8に必要以上の引っ張り力を作用させることなく、且つ半製品8を適度に緊張させた状態で第2のサクションドラム6に受け渡すためである。言い換えると、半製品8の安定搬送のためにこれらの第1のサクションドラム5と第2のサクションドラム6との間において半製品8を搬送方向に必要以上に引っ張ると、その引っ張り力によって半製品8が長さ方向に伸びて幅方向に縮む、いわゆる幅入り現象が発生しやすく、それを防止するためである。
図11は凹凸パターン付き不織布の製造方法に使用される製造装置全体の構成例を模式的に示す図である。製造装置1は、本実施の形態では、上流側搬送装置13よりも上流側にウェブ7を製造するウェブ製造装置20を更に備えている。ウェブ製造装置20は、第1のカード機21と、エアレイド機22と、第2のカード機23とを備えている。第1のカード機21は、第1の繊維積層体7−1を構成する繊維をフィーダーから投入して第1の繊維積層体7−1を形成する。エアレイド機22は、第2の繊維積層体7−2を構成する繊維をフィーダーから投入して第2の繊維積層体7−2を形成する。第2のカード機23は、第3の繊維積層体7−3を構成する繊維をフィーダーから投入して第3の繊維積層体7−3を形成する。そして、これらの第1〜第3の繊維積層体7−1〜7−3を積層することによりウェブ7を形成することができる。第1〜第3の繊維積層体7−1〜7−3を積層させたウェブ7は、ウェブ搬送装置11のウェブ搬送ベルト11aから上流側搬送装置13の上流側搬送ベルト13aへ受け渡される。
また、製造装置1は、脱水機25よりも下流側に、更に、脱水機25により水分が吸引された不織布9を乾燥させて不織布9中の繊維を熱融着させる乾燥機26と、乾燥機26から搬出された不織布9を巻き取る巻取機28を備えている。なお、巻取機28で巻き取られた不織布9は、例えば、巻き出されて切断された後に所定の処理を行い、吸収性物品、清掃用品及び医療用品などで使用される。
次に、凹凸パターン付き不織布の製造方法について説明する。
凹凸パターン付き不織布の製造方法は、ウェブ製造装置20によりウェブ7を製造するウェブ製造工程と、ウェブ7を湿潤にし、脱水する湿潤・脱水工程と、ウェブ7を交絡しつつ凹凸パターンを転写して半製品8を形成する前交絡・転写工程と、半製品8を更に交絡して不織布を形成する後交絡工程とを備えている。
まず、ウェブ製造工程では、ウェブ製造装置20によりウェブ7が製造される。ここで、ウェブ製造装置20で製造されるウェブ7は、複数の繊維積層体を積層したもので、繊維同士を交絡させるための交絡処理を行っていないものである。本実施の形態では、カード法で形成された繊維積層体と、エアレイド法で形成された繊維積層体と、カード法で形成された繊維積層体とを順に積層したものを用いる。ただし、ウェブ7を構成する各繊維積層体は、製造される不織布の用途等によって任意に選択することができる。例えば、カード法で形成された繊維積層体、エアレイド法で形成された繊維積層体、湿式法で形成された繊維積層体、スパンボンド法で形成された繊維積層体、メルトブローン法で形成された繊維積層体、又は、その他の方法で形成された繊維積層体を用いることができる。
ウェブ7の繊維としては、製造される不織布の用途等によって任意に選択することができる。ウェブ7の繊維密度は、例えば2.8〜3.5×10−3g/cm3程度である。そのウェブ7の坪量は、例えば20〜70g/m2程度である。そのウェブ7の厚みは、例えば7〜20mm程度である。また、ウェブ7の繊維の繊維長は、例えば1〜100mmであり、好ましくは2〜70mmである。ウェブ7の繊維の繊度は、例えば0.1〜6dtexであり、好ましくは0.5〜4dtexである。
ウェブ7の繊維としては、熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)、及び、これらを主体とした共重合体等が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンタレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレタレート(PBT)、及び、これらを主体とした共重合体等が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6等が挙げられる。アクリルとしては、ポリアクリルニトリル(PAN)等が挙げられる。熱可塑性樹脂繊維を用いるときには親水化処理を行ってもよく、この親水化処理としては例えば界面活性剤や親水剤等を利用した処理等が挙げられる。
ウェブ7の繊維としては、熱可塑性樹脂繊維に加えて、又は、その代わりに他の繊維を用いることができる。その他の構成繊維としては、例えば、天然繊維(例えば、パルプ、羊毛、コットン等)、再生繊維(例えば、レーヨン、アセテート等)、無機繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維等)等が挙げられる。また、不織布には、芯・鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維、中空タイプの繊維、扁平、Y型、C型等の異型繊維、潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維、水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維等が混合されていてもよい。
次に、湿潤・脱水工程では、ウェブ製造装置20で製造されたウェブ7は、上流側搬送装置13の上流側搬送ベルト13aにより第1のサクションドラム5に搬送され、第1のサクションドラム5により吸引・保持されつつ第2のサクションドラム6へ搬送される。
このとき第1のサクションドラム5上のウェブ7は、水供給装置2により水を掛けられて湿潤になる。そして、湿潤にされたウェブ7は、第1のサクションドラム5により水を吸引され脱水される。すなわち、ウェブ7の繊維間の空間を埋める水は、第1のサクションドラム5の吸引管51−3により吸引されて概ね取り除かれる。
ここで、水供給装置2により掛けられる水の圧力(供給装置4の開口2aからの放出される時の水圧)については、ウェブ7の厚さや構造繊維の種類によって決定されるが、ウェブ7を湿潤にすればよく、ウェブ7を実質的に交絡させないため、0.1MPa(大気圧)より大きく、0.8MPa以下が挙げられ、好ましくは0.1MPa(大気圧)より大きく、0.6MPaであり、より好ましくは、0.1MPa(大気圧)より大きく、0.5MPaである。ウェブ7に供給する水の量については、ウェブ7の厚さや構造繊維の種類によって決定されるが、ウェブ7を湿潤にすればよく、100〜150L/minが挙げられる。
このように水供給装置2から掛けられる水の圧力を低く抑えることで、繊維同士を交絡させる処理をしていないウェブ7から水供給装置2の水により繊維が飛散したり地合が乱れたりすることを防止できる。
図12はウェブ7が水供給装置2で湿潤にされ第1のサクションドラム5で脱水される様子を模式的に示す断面図である。まず、図12の(a)において、ウェブ7は、第1のサクションドラム5の外周面5a上に配置される。このとき、ウェブ7は、繊維間に空間を多く含んでおり、嵩高い状態、すなわち厚い状態にある。次に、図12(b)において、水供給装置2によりウェブ7に水が掛けられる。このとき、ウェブ7の繊維間の空間が水で満たされるが、嵩高い状態(厚い状態)は変わらない。そして、図12(c)において、第1のサクションドラム5によりウェブ7に含まれる水が吸引されることにより、ウェブ7が脱水される。このとき、ウェブ7に含まれる水とウェブ7の繊維とは化学的に結合(水素結合)しているため、第1のサクションドラム5内へ吸引される水にウェブ7の繊維が引っ張られて第1のサクションドラム5側へ向かう。あるいは第1のサクションドラム5内に吸引される水にウェブ7の繊維が物理的に押されて第1のサクションドラム5側へ向かう。このようにウェブ7の繊維が水の移動に伴って第1のサクションドラム5側に引き付けられて、ウェブ7の繊維間の空間が急激に減少して、全体としてウェブ7の嵩が減少する(厚みが減少する)ことにより、ウェブ7の繊維密度が高まる。
水供給装置2で湿潤にされ、第1のサクションドラム5で脱水された直後のウェブ7の繊維密度は、4〜8×10−2g/cm3程度である。ただし、その上限は、好ましくは7.5g×10−2/cm3であり、より好ましくは7×10−2g/cm3である。一方、その下限は、好ましくは4.5×10−2g/cm3であり、より好ましくは5.0×10−2g/cm3である。繊維密度が高過ぎると、後工程の第1の噴射ノズル3の水流によるウェブ7の繊維の移動が難くなり、第1の噴射ノズル3の水流のエネルギーを高くしなければならず、生産効率が低下する。繊維密度が低過ぎると、第1の噴射ノズル3の水流の衝撃でウェブ7の繊維が飛散して地合が乱れる等の悪影響がある。この繊維密度は、水供給装置2で処理される前の繊維密度よりも高くなっている。また、例えば、そのウェブ7の坪量は20〜70g/m2程度であり、そのウェブ7の厚みは0.5〜0.9mm程度である。
このように水供給装置2からウェブ7に水を供給し、第1のサクションドラム5でウェブ7を脱水することで、ウェブ7を薄くして、ウェブ7の繊維密度を上記の所定範囲に容易に高めることが可能となる。また、ウェブ7が脱水され、ウェブ7に含まれる水が非常に少なくなることで、後工程において第1の噴射ノズル3から噴出される水のエネルギーをウェブ7に効率よく伝達することができる。
このようにウェブ7の繊維密度を上記の所定範囲にすると、繊維同士が密接することにより、ウェブ7を形成した直後よりは繊維同士の結合が強くなる(ただしウェブ7を交絡した場合と比べると結合は弱い)。そのため、後工程においてウェブ7の繊維同士を交絡しつつウェブ7に凹凸パターンを転写するとき、第1の噴射ノズル3から噴射される水流の衝撃でウェブ7の繊維が飛散してウェブ7の繊維密度が不均一になり、ウェブ7の地合が乱れる、ということを抑制できる。
特に、水供給装置2の水でウェブ7を湿潤にして第1のサクションドラム5でウェブ7を脱水した場合、何ら乾燥処理を行っていないので、ウェブ7の繊維間には少量の水が残存している。そのため、ウェブ7が乾燥している場合と比較して、ウェブ7の繊維間での水を介した水素結合により繊維同士の結合力が強くなる(ただしウェブ7を交絡した場合と比べると結合は弱い)。加えて、ウェブ7の表面の繊維はほとんど毛羽立たずに表面に沿うように寝ている状態になる。これらのため、第1の噴射ノズル3の水流でウェブ7を交絡するとき、水流の衝撃によるウェブ7の繊維の飛散をより確実に抑制できる。
図13は図12の湿潤及び脱水の工程における凹凸パターン55上のウェブ7の様子を模式的に示す断面図である。ウェブ7が支持体54の凹凸パターン55上に配置されているとき、水供給装置2で湿潤にされ第1のサクションドラム5で吸引、脱水されることで、ウェブ7は凹凸パターン55の形状におおよそ対応した変形をされ、それによりウェブ7には仮パターン41が形成される。仮パターン41では、凹凸パターン55とウェブ7との間に隙間Sなどが存在し、凹凸パターン55がウェブ7に転写されたとは言えない。しかし、仮パターン41と凹凸パターン55とは互いに概ね嵌り合う形状を有しているので、凹凸パターン55の上にウェブ7を固定した状態にすることができる。
このようにウェブ7に仮パターン41を形成することで、後工程において、第1の噴射ノズル3により水流をウェブ7に噴射するときには、より小さいエネルギーの噴射で凹凸パターン55をウェブ7に転写でき、生産効率をより向上できる。また、仮パターン41を用いて凹凸パターン55上にウェブ7を固定することで、後工程において、第1の噴射ノズル3により水流をウェブ7に噴射するときには、噴流によりウェブ7が移動することを防止できる。
なお、上記所定範囲の繊維密度(4〜8×10−2g/cm3)を有するウェブ7を別途準備できるのであれば、上記の水供給装置2を用いなくてもよい。その場合、例えば上流側搬送装置13によりその所定範囲の繊維密度を有するウェブ7を第1のサクションドラム5に供給し、供給されたウェブ7に対して直ちに第1の噴射ノズル3で水を噴射する。それにより、水供給装置2を省略でき、生産コストを削減できる。また、その場合、ウェブ製造工程と湿潤・脱水工程とは、所定範囲の繊維密度を有するウェブ7を準備することから、ウェブ準備工程ということができる。
続いて、前交絡・転写工程では、第1のサクションドラム5上のウェブ7は、第1の噴射ノズル3−1〜3−2により水を噴射されて、ウェブ7の繊維同士が交絡されつつ、ウェブ7上に凹凸パターンが転写される。それにより、凹凸パターン付き半製品8が形成される。
第1の噴射ノズル3−1〜3−2の水流の噴射圧は、ウェブ7の搬送方向MDに進むに連れて高くなる。具体的には、第1の噴射ノズル3−1の水流の噴射圧(第1の噴射ノズル3−1のノズル穴43から放出される時の水圧)P11については、凹凸パターン55を有する支持体54上において、ウェブ7の交絡を開始しつつ、ウェブ7に凹凸パターン55の転写を開始するために、1.0MPa≦P11≦6.0MPaが好ましい。また、第1の噴射ノズル3−2の水流の噴射圧(第1の噴射ノズル3−2のノズル穴43から放出される時の水圧)P12については、凹凸パターン55を有する支持体54上において、ウェブ7の交絡を進めつつ、ウェブ7に凹凸パターン55の転写を進めるために、3.0MPa≦P12≦7.0MPaが好ましい。ただし、P11<P12である。
このように第1の噴射ノズル3−1〜3−2の水流の噴射圧を搬送方向MDに沿って上流側から下流側に向かって段階的に上げることで、繊維同士の交絡の処理をしていない強度の弱い初期的なウェブ7に対しては交絡の程度を低く抑えつつ凹凸パターンの転写を進めることができ、交絡が進み強度が増加してきたウェブ7に対しては交絡の程度を高めつつ凹凸パターンの転写を更に進めることができる。それにより、凹凸パターンの転写(形成)と、繊維同士の交絡とを両立できる。言い換えると、水流の噴射圧を低圧から高圧に徐々に増加させることで、急激に高圧な水流がウェブ7に噴射されてウェブ7の繊維が飛散してしまうなどウェブ7が損傷することがないようにしながら、凹凸パターンの転写を無理なく少しずつ進めて視認性の高い凹凸パターンを形成することができる。
図14は、支持体54上の半製品8の構成例の一部の断面を模式的に示す図である。半製品8において、支持体54の凹凸パターン55が転写されて形成された凹凸パターン40では、半製品8と凹凸パターン55との間には、図13のような隙間Sが無くなり、凹凸パターン55に沿った形が形成され、すなわち視認性の高い凹凸パターン40が形成される。
ウェブを交絡した後よりもウェブを交絡する前の方が、ウェブに含まれる繊維の移動の自由度が高い。そのため、ウェブを交絡した後に支持体の凹凸パターン(模様)をウェブに転写するよりも、ウェブを交絡しながら支持体の凹凸パターンをウェブに転写する方が、凹凸パターンに応じてウェブの繊維が移動し易く凹凸パターンの転写が容易である。本実施の形態では、ウェブ7を交絡しながら支持体の凹凸パターンをウェブ7に転写しているので、転写された凹凸パターンの視認性を高くできると共に、第1の噴射ノズル3の水流のエネルギーを小さくでき、よって生産効率を向上できる。また、そのとき、ウェブ7の繊維密度を所定範囲(4〜8×10−2g/cm3)にしておくことで、凹凸パターンをウェブ7に転写するときに第1の噴射ノズル3の水流の衝撃でウェブ7の繊維が飛散し、地合が乱れるのを防ぐことができる。また、半製品8において、凹凸パターン存在領域を避け、それ以外の領域である凹凸パターン非存在領域を第2の噴射ノズル4の水流で交絡するので、転写された凹凸パターンの視認性を落とすことなく、適切な強度を有する不織布を製造できる。
特に、図14に示すような支持体54の凹凸パターン55の上部が外側に露出しないように、すなわち半製品8(及び不織布9)に貫通孔を開けないように凹凸パターン40の模様を形成する場合には、ウェブ7の繊維を特に繊細に移動させる必要がある。本発明では、交絡処理をされていないがある程度高い繊維密度を有するウェブ7を用い、水の噴射圧を初期的には低くしてウェブ7の繊維同士の交絡と凹凸パターンの転写を行っている。具体的には、第1の噴射ノズル3−1を、後続の第1の噴射ノズル3−2及び第2の噴射ノズル4の噴射圧よりも低くしている。そのため、凹凸パターン55の上部で厚みが薄くなり過ぎたり貫通孔が開いたりする前に、ウェブ7の繊維を繊細に移動させて繊維の再配置を進めることができる。それにより貫通孔を有さない凹凸パターン40の模様を視認性良く形成することができる。
次に、後交絡工程では、第1のサクションドラム5から搬送された半製品8は、第2のサクションドラム6により吸引・保持されつつ下流側搬送装置14へ搬送される。
このとき第2のサクションドラム6上の半製品8は、第2の噴射ノズル4により凹凸パターン存在領域に水を噴射されずに凹凸パターン非存在領域に水を噴射されて、凹凸パターンを乱されずに繊維同士が更に交絡される。それにより、強度が向上した凹凸パターン付き不織布9が形成される。
第2の噴射ノズル4の水流の噴射圧(第2の噴射ノズル4−1のノズル穴46から放出される時の水圧)P21については、半製品8の凹凸パターン非存在領域8hの交絡を進めるために、5.0MPa≦P21≦10.0MPaが好ましい。ただし、P12≦P21である。
また、第1の噴射ノズル3の水流の噴射圧を第2の噴射ノズル4の水流の噴射圧よりも低くする場合、第2の噴射ノズル4の水流と比較して、第1の噴射ノズル3の水流によるウェブ7の繊維同士の交絡の動きが小さくなる。そのため、繊維同士の交絡は少ないが、凹凸パターンに対応して繊維が繊細に移動して再配置できる。すなわち、交絡の程度を抑えながら模様の形成を進めることができる。一方、その後の第2の噴射ノズル4の水流の噴射圧は高いため、繊維同士の交絡の動きが大きくなる。そのため、繊維同士の交絡は多くなり、すなわち交絡を更に進めることができる。それにより、模様の視認性を落とすことなく、適切なシート強度を有するように繊維を交絡できる。
このように、第2のサクションドラム6に保持された半製品8の凹凸パターン存在領域に対して水を噴射せず凹凸パターン非存在領域に対して水を噴射することにより、凹凸パターン存在領域の凹凸パターンを乱さずに、半製品8に含まれる繊維同士を交絡してその強度を高めることが可能となる。すなわち、転写凹凸パターンの視認性を落とすことなく、適切なシート強度を有する凹凸パターン付き不織布9を製造できる。
以上のようにして、凹凸パターン付き不織布9が製造される。
なお、水供給装置2の位置は、図1に示す位置に限定されるものでは無く、ウェブ7が第1の噴射ノズル3から水を噴射される前に水を供給できる位置であれば、任意の位置に設けることができる。例えば、水供給装置2は、上流側搬送ベルト13a上で搬送中のウェブ7に水を供給可能なように、上流側搬送装置13の外側におけるウェブ7の第1の面7aの近傍の位置に配置されていてもよい。その場合、上流側搬送装置13の内側における水供給装置2に対向する位置に、ウェブ7に掛けられた水を吸引するサクションボックスが配置される。それにより、水供給装置2と第1の噴射ノズル3とを離すことができ、水供給装置2の水がウェブ7に掛かった後にウェブ7の表面を伝って第1の噴射ノズル3下のウェブ7へ達することを抑制できる。
なお、本実施の形態においては、水供給装置2は、第1のサクションドラム5の外周面5aの上方に1台配設されているが、ウェブ7の搬送方向の上流側から下流側に向かって複数の水供給装置を並べて配設されてもよい。それにより、ウェブ7に確実に水を吸収させることができる。
なお、本実施の形態においては、第1の噴射ノズル3−1〜3−2は、図1に示すような位置にそれぞれ配設されているが、これらの第1の噴射ノズル3−1〜3−2の各位置については、ウェブ7が第1のサクションドラム5によって吸引、保持されている範囲においてウェブ7に対して確実に水を噴射できる位置であれば、任意の位置に設けることができる。その場合、第1のサクションドラム5の吸引管51−1〜51−2の位置は第1の噴射ノズル3−1〜3−2に対向する位置に適宜変更される。
同様に、本実施の形態においては、第2の噴射ノズル4は、図1に示すような位置に配設されているが、この第2の噴射ノズル4の各位置については、ウェブ7が第2のサクションドラム6によって吸引、保持されている範囲において半製品8に対して確実に水を噴射できる位置であれば、任意の位置に設けることができる。その場合、第2のサクションドラム6の吸引管61の位置は第2の噴射ノズル4に対向する位置に適宜変更される。
なお、本実施の形態においては第1の噴射ノズル3は2台、第2の噴射ノズル4は1台であるが、各噴射ノズルの台数はそれぞれ上記の例に限定されるものでは無く、任意の台数とすることができる。例えば、第1の噴射ノズル3は1台であってもよく、3台以上であってもよく、第2の噴射ノズル4は2台以上であってもよい。
ここで、第2の噴射ノズル4が複数台の場合、複数の第2の噴射ノズル4の水流の噴射圧は、半製品8の搬送方向MDに進むに連れて高くなるようにすることが好ましい。このように複数の第2の噴射ノズル4水流の噴射圧を搬送方向MDに沿って上流側から下流側に向かって段階的に上げるようにした場合、交絡が無理なく徐々に進み、強度を無理なく増加させることができる。
なお、本実施の形態では、第1の噴射ノズル3の部材42のノズル穴43や第2の噴射ノズル4の部材45のノズル穴46は一列であるが、各ノズル穴の列はそれぞれ上記の例に限定されるものでは無く、搬送方向MDに平行な方向MD1、MD2に複数列備えていてもよい。その場合、それら複数列の複数のノズル穴43、46は千鳥状に配置されることが好ましい。列間の距離(方向MD1、MD2に隣接する列のノズル穴43中心間の距離)としては、スパンレース用の噴射ノズルの一般的な仕様を使用することができるが、例えば0.1〜1.5mmが挙げられ、好ましくは0.3〜1.0mmが挙げられる。列間の距離が小さ過ぎると、ノズルの耐圧が低下し、破損する場合がある。列間の距離が大き過ぎると、繊維同士の交絡が不十分となる。
なお、本実施の形態では、ウェブ7は3層の繊維積層体から構成されるが、本発明はこの例に限定されるものではない。ウェブ7は1〜2層の繊維積層体から構成されてもよいし、4層以上の繊維積層体から構成されていてもよい。
(第2の実施の形態)
図15は凹凸パターン付き不織布の製造方法に使用される製造装置の構成例の一部を模式的に示す図である。製造装置1は、第1の実施の形態の製造装置1と比較して、上流側搬送装置13、第1のサクションドラム5、水供給装置2、第1の噴射ノズル3、第2のサクションドラム6、第2の噴射ノズル4、下流側搬送装置14及び脱水機25の機能はほぼ同じであるが、図15に示すようにこれら各機器の配置が主に相違する。以下その相違点について主に説明する。
本実施の形態では、水供給装置2は上流側搬送装置13内に配置され、第1のサクションドラム5は水供給装置2(及び上流側搬送装置13)の鉛直上方に配置され、第2のサクションドラム6は第1のサクションドラム5の鉛直上方に配置されている。
ウェブ7は、上流側搬送装置13のメッシュ状の上流側搬送ベルト13aにウェブ7の第1の面7aが接し、ウェブ7の第2の面7bが上流側搬送装置13の外側を向くようにして上流側搬送装置13により搬送される。ウェブ7は、上流側搬送ベルト13aのメッシュを介して第1の面7aに水供給装置2から水を供給される。
この場合、水供給装置2は、ウェブ7の鉛直下方の位置から鉛直上方の位置にあるウェブ7へ向かってメッシュ越しに水を供給する必要がある。そのため、水を所定の水圧で噴射する必要がある。しかし、ウェブ7に対してメッシュ越しに水流を噴射すると、水流がメッシュに当たることにより、水流の水圧が低下すると共に、水流が広く分散してウェブ7上に到達することになる。水圧が低下するため水流によりウェブ7の繊維が交絡することはなく、かつ、水流が広く分散するためウェブ7の広い面積を効率的に湿潤にすることができる。
続いて、ウェブ7は第1のサクションドラム5の外周面5aの鉛直方向の下側の頂部近傍にて第1のサクションドラム5に受け渡される(巻き上げられる)。そして、第1のサクションドラム5の外周面5aにウェブ7の第2の面7bが接し、ウェブ7の第1の面7aが第1のサクションドラム5の外側に向くようにして第1のサクションドラム5により吸引、保持される。このとき、水供給装置2でウェブ7に水を噴射する位置と、第1のサクションドラム5でウェブ7を巻き上げる位置とは概ね同じ位置である。なお、第1のサクションドラム5でウェブ7から水を吸引する吸引管51−1の中心の位置は、水供給装置2でウェブ7に水を噴射する位置と同じ位置であってもよいし、搬送方向のやや下流側の位置にあってもよい。同じ位置の場合、第1のサクションドラム5上の支持体の凹凸パターンの上にウェブ7を載置しつつ、水供給装置2でウェブ7に水を供給するので、ウェブ7を凹凸パターンに固定した状態にすることができる。
第1の噴射ノズル3は2台、すなわち第1の噴射ノズル3−1〜3−2が設けられる。第1の噴射ノズル3−1は、第1のサクションドラム5の外周面5aにおける水平方向の下流側の頂部に対して水を噴射することができるように配設されている。第1の噴射ノズル3−2は、第1のサクションドラム5の外周面5aにおける水平方向の下流側の頂部と鉛直方向の上側の頂部との概ね中間の位置に対して水を噴射することができるように配設されている。したがって、ウェブ7は第1のサクションドラム5で吸引、搬送されつつ第1の噴射ノズル3−1〜3−2に水を噴射される。それにより、ウェブ7に含まれる繊維同士が交絡されつつ、凹凸パターンが転写された凹凸パターン付き半製品8が形成される。
続いて、半製品8は、第1のサクションドラム5の鉛直方向の上側の頂部近傍にて第1のサクションドラム5から離れ、第2のサクションドラム6の鉛直方向の下側の頂部近傍にて第2のサクションドラム6に巻き上げられる。そして、第2のサクションドラム6の外周面6aに半製品8の第1の面8aが接し、半製品8の第2の面8bが第2のサクションドラム6の外側に向くようにして第2のサクションドラム6により吸引、保持される。
第2の噴射ノズル4は2台、すなわち第2の噴射ノズル4−1〜4−2が設けられる。第2の噴射ノズル4−1は、第2のサクションドラム6の外周面6aにおける水平方向の上流側の頂部と鉛直方向の上側の頂部との概ね中間の位置に対して水を噴射することができるように配設されている。第1の噴射ノズル3−2は、第1のサクションドラム5の外周面5aにおける鉛直方向の上側の頂部に対して水を噴射することができるように配設されている。したがって、半製品8は第2のサクションドラム6で吸引、搬送されつつ第2の噴射ノズル4−1〜4−2に水を噴射される。それにより、半製品8に含まれる繊維同士が更に交絡されて強度が向上した凹凸パターン付き不織布9が形成される。
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
なお、上記各実施の形態並びに下記実施例及び比較例において、ウェブなどの繊維シートの坪量、厚み及び繊維密度は以下の方法で測定又は算出している。
(繊維シートの坪量)
上流側搬送装置13上のウェブ、及び、水供給装置2で水を掛け第1のサクションドラム5で脱水されたウェブを、それぞれ30cm×30cmの大きさに切り出して試料として、質量を測定する。そして、測定した質量を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。ここでは、10個の試料の坪量を平均した値を実施例又は比較例の坪量とする。なお、測定の前に、100℃以上の雰囲気での乾燥処理は特に行っていない。
(繊維シートの厚み)
15cm2の測定子を備えた厚み計((株)大栄化学精器製作所製 型式FS−60DS)を使用し、3g/cm2の測定荷重の測定条件で、上流側搬送装置13上のウェブ、及び、水供給装置2で水を掛け第1のサクションドラム5で脱水されたウェブの厚みを測定する。ここでは、1つの測定用試料について3か所の厚みを測定し、それら3か所の厚みの平均値を実施例又は比較例の厚みとする。
(繊維シートの密度)
上流側搬送装置13上のウェブ、及び、水供給装置2で水を掛け第1のサクションドラム5で脱水されたウェブの繊維密度は、上記方法で求めた繊維シートの秤量を、上記方法で求めた繊維シートの厚みで割り算して算出する。
(繊維シートの引張強度及び引張伸度)
水供給装置2で水を掛け第1のサクションドラム5で脱水された直後のウェブから長手方向がウェブの搬送方向MDである長さ150mm×幅25mmの短冊状の試験片と、長手方向がウェブの幅方向CDである長さ150mm×幅25mmの短冊状の試験片とを切り取って、測定用試料とした。そして、搬送方向MDおよび幅方向CDの測定用試料を、最大荷重容量が50Nであるロードセルを備えた引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ、型式AGS−1kNG)を使用して、それぞれ3つの測定用試料について、100mmのチャック間距離、100mm/分の引張速度の条件で引張強度及び引張伸度を測定した。搬送方向MDおよび幅方向CDの測定用試料のそれぞれ3つの測定用試料の引張強度及び引張伸度の平均値を搬送方向MDおよび幅方向CDの引張強度及び引張伸度とした。
[実施例1]
本発明の凹凸パターン付き不織布の製造方法による効果を確認するため、本発明に係る製造方法と本発明に依らない製造方法とについて、生産効率(エネルギー効率)を比較する比較実験を行った。
(1)試料の作製
(1−1)実施例1の試料
ウェブ7として、繊維密度3.0×10−3g/cm3程度(坪量30g/m2程度、厚み10mm程度)のPET/PP/PETで形成された繊維積層体を準備した。次に、製造装置1において、第1のサクションドラム5上で、水供給装置2から水圧0.5MPaでウェブ7に水を供給し、続いて第1の噴射ノズル3−1及び3−2から噴射圧3.0MPa及び6.0MPaでウェブ7に水を供給した。それにより、ウェブ7の繊維同士が交絡されつつ凹凸パターン55がウェブ7に転写されて、凹凸パターン存在領域に凹凸パターン40が付された半製品8が形成された。その後、第2のサクションドラム6上では、凹凸パターン存在領域での凹凸パターン40の形成に影響を与えない第2の噴射ノズル4からの水の噴射を省略して、形成された半製品8をそのまま実施例1の不織布9とした。ただし、水供給装置2から水圧0.5MPaでウェブ7に水を供給した直後の最大引張強度及び最大引張伸度は、搬送方向MDではそれぞれ0.091N/25mm及び11.9%であり、幅方向CDではそれぞれ0.020N/25mm及び0.0501%であった。
(1−2)比較例1の試料
実施例1と同じウェブ7を準備し、製造装置1において、第1のサクションドラム5の支持体54に凹凸パターン55を配置しないで、第2のサクションドラム6の支持体64に凹凸パターン55を配置した。そのような状態の製造装置1において、第1のサクションドラム5上で、水供給装置2から水圧0.5MPaでウェブ7に水を供給し、第1の噴射ノズル3−1及び3−2から噴射圧3.0MPa及び6.0MPaでウェブ7に水を供給した。それにより、ウェブ7の繊維同士は交絡されたが、凹凸パターンは付されていない半製品が形成された。その後、第2のサクションドラム6上で、第2の噴射ノズル4から噴射圧9.0MPaで半製品に水を噴射した。それにより、半製品の繊維同士が交絡されつつ凹凸パターン55が半製品に転写されて、凹凸パターン存在領域に凹凸パターンが付された比較例1の不織布が形成された。したがって、比較例1では繊維同士の交絡が既に行われた半製品に対して、第2のサクションドラム6上で第2の噴射ノズル4により凹凸パターンの転写が行われた。すなわち、比較例1は本発明に依らない製造方法ということができる。ただし、水供給装置2から水圧0.5MPaでウェブ7に水を供給した直後の最大引張強度及び最大引張伸度は、実施例1と同じであった。
(2)凹凸パターンの出来栄えの評価
(2−1)評価方法
製造装置1を用いて形成された凹凸パターン(模様)付き不織布の試料について、その不織布の凹凸パターンの出来栄えの評価を以下の方法で行った。ここでは凹凸パターンとして、不織布を貫通する開孔で構成されたパターンを用いた。
まず、試料をスキャナ(スキャナ:Canon image Runner ADVANCE iR−ADVC 5255F,二値化ソフト:スカラ株式会社 USB Digital Scale 1,1J)で読み込んで画像化する。この場合、開孔がより適切に形成される程、画像はより黒くなる。次に、得られた画像のうち、凹凸パターンを含む所定領域(凹凸パターン存在領域)の所定面積(100mm×25mm=2500mm2)の領域について、その画像を二値化処理する。そして、二値化された画像のうち、黒色部分を開孔部、すなわち凹凸パターンが形成された箇所と定義し、所定面積(2500mm2)に対する黒色部分の面積の割合、すなわち面積率を求める。その不織布の黒色部分の面積率を、支持体での凹凸パターンの面積率と比較して、その不織布の出来栄えとした。すなわち、(不織布の凹凸パターンの出来栄え)=(不織布の黒色部分の面積率)/(支持体での凹凸パターンの面積率)×100(%)である。例えば、(不織布の凹凸パターンの出来栄え)が高い場合、出来栄えが良く、不織布の凹凸パターンが支持体の凹凸パターンに近くなる、すなわち視認性が高くなる。
(2−2)評価結果
実施例1及び比較例1における凹凸パターンの出来栄え評価の評価結果を下記の表1に示す。ただし、「黒色個数」は所定面積の領域内の凹凸パターンによる黒色部分の個数を示す。「黒色総面積」はそれら黒色部分の総面積を示す。「1個の面積」はそれら黒色部分の1個あたりの平均の面積を示す。「面積率」は所定面積に対する黒色総面積の割合を示す。「出来栄え」は上記の式で計算される(不織布の凹凸パターンの出来栄え)を示す。
表1に示すように、実施例1の試料の方が、比較例1の試料よりも黒色部分の「総面積」が多く、1個あたりの平均の「面積」が多く、「出来栄え」が良いことが分った。言い換えると、実施例1の試料の方が、比較例1の試料よりも凹凸パターンが視認性良く形成されていることが分る。
(3)生産効率(エネルギー効率)
実施例1では、第1の噴射ノズル3−1及び3−2から噴射圧3.0MPa及び6.0MPaでウェブ7に水を噴射している。したがって、実施例1では、第1の噴射ノズル3が9.0MPaの噴射圧に対応したエネルギーで凹凸パターンの転写(及び交絡)を行っていると見ることができる。一方、比較例1では、第2の噴射ノズル4から噴射圧9.0MPaで半製品に水を噴射している。したがって、比較例1では、第2の噴射ノズル4が9.0MPaの噴射圧に対応したエネルギーで凹凸パターンの転写を行っていると見ることができる。したがって、実施例1と比較例1とでは、凹凸パターンを形成するために噴射ノズルから供給される水流のエネルギーはほぼ同一であると見ることができる。このとき、表1に示すように、実施例1の試料の方が、比較例1の試料と比較して、出来栄え良く凹凸パターンが転写されていることが分った。すなわち、ほぼ同じエネルギーの水流で凹凸パターンの転写を行う場合、繊維同士を交絡する処理を行わずに凹凸パターンの転写を行う方(実施例1)が、繊維同士を交絡する処理を行ってから凹凸パターンの転写を行う方(比較例1)より凹凸パターンの出来栄えが良いことが分った。言い換えると、同じ出来栄えの凹凸パターンを形成しようとすれば、繊維同士を交絡する処理を行わずに凹凸パターンの転写を行う方が、繊維同士を交絡する処理を行ってから凹凸パターンの転写を行う方よりも水流のエネルギーを低減することができる。したがって、繊維同士を交絡する処理を行わずに凹凸パターンの転写を行う本発明の不織布の製造方法は、繊維同士を交絡する処理を行ってから凹凸パターンの転写を行う不織布の製造方法と比較して、生産効率(エネルギー効率)を高めることができた。