以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施形態のみに限らず、本発明の概念に帰属する他の吸収性物品も包含するものである。
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る展開型使い捨ておむつ(いわゆるテープ型使い捨ておむつ)における正面側から見た斜視図を図1に示す。図1に示すおむつを展開し、肌当接面側から見た平面図を図2に示す。図2のIII−III線破断断面図を図3に示す。さらに、図1および図2に示す展開型使い捨ておむつを破断展開した分割状態を図4に示す。
本実施形態における展開型使い捨ておむつ(以下、単におむつと記述する場合がある)10は、前身頃領域10Fと、後身頃領域10Rと、これら前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rをつなぐ股下領域10Cとを有する。また、着用時に前身頃領域10Fと後身頃領域10Rとで着用者のウエストの部分を取り囲むウエスト周り開口部10Wが形成されている。同様に、前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rの下端部股下領域10Cとで着用者の両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lが形成されている。
おむつ10の着用時に前身頃領域10Fは、着用者の腹側に位置し、後身頃領域10Rは着用者の背側に位置する。そして、股下領域10Cは、着用者の股下を覆い、左右一対の脚周り開口部10Lに、着用者の脚がそれぞれ通された形となる。したがって、脚周り開口部10Lは、着用者の両脚の付け根から太ももあたりのいずれかに位置することとなる。
おむつ10を適正な向きで着用した際に、着用者の頭から股下への体の中心軸に沿う線を仮想線Pとして、必要に応じ、以下の説明で用いる。図1に示すように、仮想線Pは、おむつ10の中央部において腹側から背側に向かって、股下部分を通って延びるものである。具体的には、仮想線Pは、例えば、おむつ10のウエスト側を上、股下側を下とすると、おむつ10の表面に沿って、かつ上下方向に延びると共に、股下部分を経由して、背側においても上下方向に延びるものである。言い換えれば、この上下方向とは、着用者の頭から股下への体の中心軸に沿う方向であり、仮想線Pは、体の中心軸に沿って延びるものである。
おむつ10の外側に位置するカバーシート11の後身頃領域10Rの左右両端縁部には、着用時に前身頃領域10Fの左右両端縁部に重ね合わせてこれらをつなぎ、脚周り開口部10Lを形成し得る左右一対のファスニングテープ10Aが接合されている。このファスニングテープ10Aは、前身頃領域10Fのカバーシート11上に接合されたフロントパッチシート10Bに対して繰り返し剥離可能に接合される。また、カバーシート11の後身頃領域10Rの上端部には、カバーシート11の幅方向に沿って延在し、着用者に対してウエスト周りに適度な着用感を与えるための弾性シート10Dが接合されている。
図2ないし図4に示されるように、本実施形態におけるおむつ10は、着用者の肌側から見て、外側から順にカバーシート11と、液不透過性のバックシート12と、親水性の薄いシートであるコアラップ(ティシュ)15で包まれた吸収体13(以下、単に吸収体13ともいう。)と、着用者の肌に触れる液透過性のトップシート14とを順に重ねて接合したものである。なお、バックシート12、コアラップ15で包まれた吸収体13およびトップシート14で、下着等に取り付けて液体を吸収する吸収性物品を形成することもできる。
カバーシート11の股下領域10Cの左右両側には、それぞれ脚周り開口部10Lとなる半円弧状をなす一対の切欠き部11Aが形成されている。液不透過性のバックシート12は、このカバーシート11に接合され、先の吸収体13は、このバックシート12と液透過性のトップシート14との間に配され、この吸収体13を介してトップシート14がバックシート12に接合される。バックシート12の幅方向の左右両側縁部の中央付近には、脚周りギャザーを形成するための糸ゴム16がそれぞれ伸長状態で接合されている。
本実施形態における液透過性のトップシート14の幅方向の左右両側縁部には、立体ギャザーを形成する液不透過性の一対のサイドシート18が備えられている。一対のサイドシート18は、外側端縁部がカバーシート11の一対の切欠き部11Aと同様の形状に形成され、着用時に吸収体13の左右両側縁部に沿って起立し、着用者が排泄した尿の横漏れを防止するための部材である。一対のサイドシート18のそれぞれには、その内側端縁部を吸収体13側に折り返して把持させる形で立体ギャザー伸縮材としての糸ゴム19が伸張状態で配置され、糸ゴム19が収縮した際に、着用者の肌当接方向に向かって立ち上がる。立体ギャザーは従来の使い捨ておむつに用いられている公知の構成を採用することができる。例えば、撥水性シートの層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材を挟み込んで固定することにより、形成することができる。
図2に示されるように、サイドシート18は糸ゴム19の伸縮によって、長手方向に引き寄せられる。そして、図3に示されるように、内側端縁部が立ち上がった立体ギャザーとなる。
なお、本実施形態におけるおむつ10は、吸収体13が仮想線Pに沿って長くなるものであり、その長手方向は仮想線Pに平行である。そして、仮想線Pに対して直交する方向を幅方向とする。なお、おむつ10の長手方向と幅方向の比率は本実施形態に限定されない。着用者の体型に応じてこの比率は適宜変更されるものである。
次に本実施形態における吸収体部分の構造を説明する。
図5は、吸収体13およびトップシート14が位置する部分を、トップシート14側から見た部分上面図である。
トップシート14の下に位置する本実施形態の吸収体13は、主にパルプとSAPとからなるものである。吸収体13は、前身頃、股下、後身頃にわたるように、細長い形状をしている。そして、前身頃部分M1、股下部分M2、後身頃部分M3に三区分されている。股下部分M2には、両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lに合わせて、円弧状をなす一対の切欠き部13Aが形成されている。なお、この切欠き部13Aは、吸収体13の大きさに応じて形成しなくてもよい。また、本実施形態の吸収体13は、切欠き部13Aが設けられており、中央部の幅が前後端に比べて狭い砂時計型のものであるが、本発明の吸収体の形状はこれに限らない。前身頃部分から後身頃部分を前後(上下)方向とし、それに直交する方向を左右方向とすると、例えば、前後(上下)端の角が丸く落とされているもの、前後(上下)に延びる楕円形のもの、円形のもの、前後(上下)左右の長さが同程度の矩形のものなど、さまざまな形状を含む。
また、吸収体13は、細長い形状であり、その形状を保持するために、例えば、端部同士が糊づけで接合された親水性の薄いシートであるコアラップ15で包まれている。コアラップ15で包まれた吸収体13は、バックシート12とトップシート14との間に配される。トップシート14は、コアラップ15で包まれた吸収体13を介してバックシート12に接合される。なお、本実施形態では、コアラップ15で包まれた吸収体13を用いているが、本発明における吸収体は、コアラップで包まれていなくてもよい。
そして、図5に示されるように、おむつ10は、トップシート14表面から吸収体13に向かって規則的なエンボス加工による圧縮を施した圧縮部形成領域(エンボスパターン形成領域)N1を有する。圧縮部形成領域N1には、圧縮して形成された複数の凹部21が斜め格子状のパターンに配置された圧縮列22が複数延在している。また、圧縮部形成領域N1のち、圧縮列22が形成されていない領域には、主吸収領域25が設けられている。主吸収領域25は、圧縮されない非圧縮領域であってもよいし、一部圧縮される準圧縮領域と非圧縮領域とを有してもよい。
なお、エンボスパターンは上下端、すなわち前身頃部分M1の上端部および後身頃部分M3の下端部まで形成されていてもよい。このように、エンボスパターンを上下端まで形成することにより、おむつ10の通気性が高まるとともに、吸収体13が折れ曲がりやすくなり着用者の体におむつ10がフィットするという効果が生じる。
本実施形態における凹部21は、おむつ着用時に着用者の体の中心軸に沿う仮想線Pに対し、傾斜したものである。具体的には、凹部21は、仮想線Pに対し、所定角度αで、第1方向である図中右方向に傾斜した右向き凹部21aと、所定角度βで、第2方向である図中左方向に傾斜した左向き凹部21bとが設けられている。そして、同方向に傾斜した凹部21は,格子1つの枡の対角線が長さL1で列を形成するように配置されており、遠視的にそれぞれ斜めに伸びる格子状となるエンボスパターンを形成している。図5には示されていないが、凹部21は、トップシート14表面から、コアラップ15、吸収体13を共に圧縮して形成されている。
なお、図5に示されるように、エンボスパターンは、吸収体13の両端には形成されていない。したがって、吸収体13は圧縮部形成領域(エンボスパターン形成領域)N1の両側に、圧縮部非形成領域(エンボスパターン非形成領域)N2が位置するものである。これは、エンボスパターンを伝って、体液が脚周り開口部10Lから漏れることを防ぐためである。
図5に示されるように、右向き凹部21aが複数並ぶ列を第1圧縮列22aとし、左向き凹部21bが複数並ぶ列を第2圧縮列22bとする。これらの圧縮列22は、仮想線Pに対して凹部21の傾斜角度と同じ角度傾いた直線状となるものである。第1圧縮列22aは、互いに間隔S1をあけて平行に延在している。また、第2圧縮列22bは、互いに間隔S2をあけて平行に延在している。このように、第1圧縮列22aと第2圧縮列22bとを延在させて、斜め格子状のエンボスパターンを形成している。本実施形態では、第1圧縮列22aと第2圧縮列22bとが互いに交差することで、交差領域23が形成されている。本実施形態においては、間隔S1とS2は同じ値としたが、両者は異なる値であってもよい。また、本実施形態においては、所定角度αと所定角度βは同じ値としたが、両者は異なる値であってもよい。
図6は、図5における円Q部分の圧縮列22の一部を拡大した模式図である。図7は、図6のVII−VII線による断面を示す図である。図8は、図7のVIII−VIII線による断面を示す図である。
図6ないし図8に示されるように、凹部21は、第1凹部211と、第1凹部211よりもさらに深く凹んだ第2凹部212とから構成されている。第1凹部211は、圧縮列22の幅方向の中央に配置され、圧縮列22の延在方向に延在して形成されている。第1凹部211の平面形状は、複数の圧縮列22で形成された格子形状の辺の部分で長円形を成し、その格子形状の交差領域23で円形を成している。ここで、長円形とは半径の等しい2つの円を共通外接線で繋いだものをいう。第2凹部212は、第1凹部211よりも吸収体13の厚み方向に深く圧縮され、圧縮列22の延在方向の両側縁部に形成された連続する溝である。
図7および図8に示されるように、凹部21において、最も深い地点に第2凹部212が位置し、第2凹部212の底部からわずかに上がった位置に第1凹部211が位置する。本実施形態では、第1凹部211が曲面で形成され、第1凹部211および第2凹部212は、連続した曲面で連なっている。本実施形態のおむつ10は、第1凹部211が曲面で形成されているため、従来の角を有する凹部が形成されているおむつよりも着用者への肌触りを良くすることができる。また、図7に示される第1凹部211の断面形状は、開口端部が底部よりも広がっている。
ここで、第1凹部211のコアラップ15で包まれた吸収体13とトップシート14からなる厚みをD1とし、凹部21の最も深い位置、すなわち第2凹部212のコアラップ15で包まれた吸収体13とトップシート14からなる厚みをD2とする。厚みD1から厚みD2を引いた差分である厚みD3は、第1凹部211の厚みD1の約30%〜50%程度である。そして、主吸収領域25におけるコアラップ15で包まれた吸収体13とトップシート14からなる最大の厚みをD4とすると、第1凹部211の厚みD1は、厚みD4の3%〜15%程度である。そして、第2凹部212の厚みD2は、厚みD4の2%〜8%程度である。このように、本実施形態における凹部21は吸収体13をバックシート12方向へ深く圧縮して形成されている。そして、二段階の深さを有する形状となっている。
凹部21を形成するエンボス加工は、トップシート14と吸収体13との間に接着剤を介在させて、トップシート14表面からトップシート14と吸収体13とを共に圧縮するものである。凹部21は、エンボスロールに形成された所定の型によって、トップシート14の表面からトップシート14と吸収体13とを共に圧縮して形成されたものである。そして、第2凹部212は、圧縮列22の延在方向の両側縁部に形成された連続する溝であるため、第2凹部212の底面積は、平面形状が長円形の第1凹部211の底面積よりも小さい。したがって、エンボスロールによる押圧において、第2凹部212に圧力が集中し、吸収体13とトップシート14は強く圧縮される。この圧縮の際に、吸収体13のパルプ繊維とトップシート14の繊維とがしっかりと絡み合い、両者が一体となった状態で接合される。このように、第1凹部211の面積が広く、かつ、伝熱領域が広いため、その分シートが伸びることができ、第2凹部212に送り込まれるシートの負荷が小さくなり、破れにくくなる。
次に、第1凹部211においても圧縮の際に同じ押圧力が加わるが、第2凹部212よりも底面積が広く浅いため、圧力は第2凹部212ほど集中しない。そのため、吸収体13とトップシート14との接合は第2凹部212に比べるとわずかに弱いが、第1凹部211の形状を形成するには十分である。このように、第2凹部212において吸収体13が強く圧縮されているとともに、吸収体13とトップシート14とがしっかりと接合することにより、凹部21の形状がくっきりと維持される。例えば、着用者が着座するなどして、吸収体13表面に着用者の体重による圧力が加わった際にも、この凹部21はへたることなく、その形状を維持する。そして、脚の様々な動きによって、おむつ10が強く引っ張られたりしても、トップシート14と吸収体13がしっかりと接合し、凹部21はその形状を維持する。
一方、第1凹部211と第2凹部212の二段階構造とするのではなく、凹部21全体に強い圧縮力を加えて形成することも考えられる。すなわち、エンボス加工において、表面が平らな圧縮列22を形成するような突起のみの型を用いて圧縮することも考えられる。しかしながら、そのような型では圧力が集中する箇所が作られていないので、全体的に強く圧力を加えないと表面シートと吸収体とが繊維が絡み合った状態で接合する箇所を作り出せない。したがって、必要な押圧力は大変強くなり、トップシート14が破れてしまう場合がある。また、全体に弱い押圧力での圧縮では、着用者の体重や様々な動きに耐えられる凹部21を形成することができない。本実施形態では、エンボス加工の型において第2凹部212に対応する突起を設けて、部分的に強く圧縮することにより、トップシート14と吸収体13とがしっかりと接合する箇所を作るとともに、製造時にトップシート14が破れるなどの不良発生を防ぐ。なお、本実施形態では、凹部21は、二段階構造となっているが、三段階以上の複数階構造としてもよい。
図7に示されるように、吸収体13は、第2凹部212の底面部分の密度が最も高い高密度部13Dである。そして、主吸収領域25は、吸収体の密度が最も低い低密度部13Gである。そして、第1凹部211の底面部分は、中密度部13Eである。
ここで、吸収体13は、上述したように、主にSAPとパルプからなるものであり、密度は主にパルプ繊維密度が関与している。したがって、高密度部13Dはパルプが圧縮され、パルプ間の隙間が少ない状態である一方、低密度部13Gは、パルプ間の隙間が高密度部13Dに比べて多い状態である。
加えて、凹部21は、合成繊維であるトップシート14と主成分がパルプの吸収体13とを共に圧縮接合してフィルム状に形成されているので、凹部21の底面は、体液を吸収するまでは、圧縮列22の延在方向へ体液が拡散するのを促進する。
一方、凹部21で体液を吸収した場合、凹部21の厚みが急激に増加する。同時に、低密度部13Gの主吸収領域25の厚みも増加するため、主吸収領域25には凹部21に吸収された体液を引き込む力が発生する。主吸収領域25に引き込まれた体液は、その主吸収領域25に隣接する他の圧縮列22に浸透し、さらにその圧縮列22内の凹部21の厚みを増加させ、連続的に体液拡散を促進させる。その引き込み速度が速いため、体液が通過した領域のSAPは、吸収余力を持った状態で維持される。
一定時間経過後、最初に体液を吸収した凹部21に再び体液が浸透したとき、凹部21の膨潤により凹部21と主吸収領域25とが一体平面化したおむつ表面を素早く体液が流れることで、体液の未浸透領域(体液の通過していない領域)に体液が達する。同時に、体液の通過した領域のSAPは吸収余力を持つため、素早く体液を吸収する。また、未浸透領域に達した体液は、さらに他の圧縮列22の凹部21の底面に浸透し、上述の機構により体液が拡散する。
本実施形態では、斜め格子状のエンボスパターンの凹部21は、凹部21にあわせた型が表面に形成されているエンボスロールを回転させながら押し当てることにより形成される。図5に示されるように、エンボスロールが回転しながら矢印W方向(前身頃部分M1から後身頃部分M3へ向かう方向)に進行すると、エンボスロールの進行方向Wに対して直交する方向に並ぶ凹部21部分は全て同時に押圧されることとなる。本実施形態では、エンボスロールの円周は、吸収体13の長手方向の長さに相当するように、エンボスロールの大きさが決定されているが、これに限るものではない。
なお、本実施形態では、エンボスロールの進行方向Wは、おむつ10が完成した際に、先の仮想線Pとなる方向に平行である。上述したように、トップシート14と吸収体13とをともにエンボスロールで圧縮した後、必要な他のシート等を積層するなどして、おむつ10のサイズに切断される。切断は、おむつ10の前身頃、股下、後身頃にわたる長さで成されるため、エンボスロールの進行方向Wも仮想線Pと平行とすることにより、仮想線Pに対して傾斜した斜め格子状のエンボスパターンを形成できる。
したがって、右向き凹部21aは、進行方向Wに対しても右方向に傾斜し、左向き凹部21bは、左方向に傾斜することとなる。このため、進行方向Wにエンボスロールが進むにつれて、交差部分23に向かって隣接する右向き凹部21aと左向き凹部21b間の距離が短くなっていく。
ここで、凹部21を形成するエンボスロールの押圧の際、トップシート14は凹部21内に引き込まれるように引っ張られることになる。隣接する右向き凹部21aと左向き凹部21bは同時に押圧して形成されるので、その間に位置するトップシート14は左右から引っ張られることになる。つまり、図6において、矢印Aで示す引き込み力が左右同時に加わってトップシート14が引っ張られることになる。隣接する右向き凹部21aと左向き凹部21bの距離が短くなるほど、トップシート14の引き込み力Aの引っ張りに対する余裕部分が少なくなるため、トップシート14が強く張った状態となっていく。このため、吸収体13中のSAPがトップシート14に当たり、トップシート14表面がごつごつとした手触りとなる。これは、着用者の肌に対して刺激となるため、好ましくない。
また、いきなり深くまで凹部21を形成するとトップシート14が伝熱等で伸ばされていないうちにエンボスロールを深く押圧することになるため、トップシート14が破れてしまうおそれがある。ただし、単にエンボスロールを浅く押圧して凹部21を形成しただけでは、トップシート14と吸収体13との間の接着効果が弱まり、トップシート14が吸収体13からはがれやすくなってしまい、くっきりとしたエンボスパターンを形成することもできなくなってしまう。
そこで、本実施形態の凹部21は、エンボスロールを浅く押圧して、低圧縮部である中密度部13Eの第1凹部211が形成され、エンボスロールからの熱が伝わってトップシート14が伸ばされて、高圧縮部である高密度部13Dの第2凹部212が形成される。低圧縮部である第1凹部211を形成したことにより、トップシート14の引き込み力Aに対して交差領域23に余裕を持たせることができ、吸収体13を押さえこまないため、トップシート14の表面が手触りよく滑らかな仕上がりとなる。さらに、トップシート14および吸収体13の柔らかさを保ちつつ、トップシート14が吸収体13からはがれるのを防止することができる。
さらに、例えば、二段階構造の凹部において、長円形または円形の第1凹部の中心部をさらに深く押圧して第2凹部を形成すると、凹部中央の最も厚みが薄い第2凹部で屈曲性が高まり、曲げ伸ばしが容易となる。しかし、吸収体は、凹部が配列された圧縮列の延在方向の両側縁部で屈曲性を高めることが望ましい。
したがって、本実施形態の凹部21は、長円形または円形の第1凹部211の周囲にさらに深く押圧した溝からなる第2凹部212を形成しているため、図7のように圧縮列22の延在方向の両側縁部(高密度部13D)で最も厚みが薄く屈曲性を高めることができる。これにより、圧縮列22の両側縁部で吸収体13が折れ曲がりやすく柔軟性をさらに向上させることができ、おむつ10の着用者に柔らかい肌触りを与えることができる。
また、本実施形態の長円形の第1凹部211は面積が広くなだらかに形成されていることから、トップシート14が破れにくく、より伸びやすくなる。加えて、長円形の第1凹部211が曲面で形成されていることから、圧縮列22の表面においても着用者の手触りを向上させることができる。
また、本実施形態の第2凹部212は、圧縮列22の延在方向の両側縁部に形成された連続する溝であることから、圧縮列22の延在方向の両側縁部全てに第2凹部212が形成されていることになる。これにより、本実施形態のおむつ10は、間欠的に配置される第2凹部を形成する場合に比べて、圧縮列22の延在方向の両側縁部での折れ曲がりやすさおよび柔軟性を向上させることができる。そのため、圧縮列22を軸として圧縮列22の延在方向の左右どちらにも折れ曲がりやすくなり、おむつ10の着用者により柔らかい肌触りを与えることができる。
なお、本実施形態では、エンボス加工はエンボスロールを用いて行うものを説明したが、この方法に限らず、おむつの大きさに合わせた板状のエンボス板によって、おむつの大きさ単位でエンボスを押していくものなどでもよい。
加えて、吸収体13を親水性シートによってくるんだ後トップシート14を配したものだけでなく、吸収体13の上に直接、トップシート14を配したものであってもよい。また、トップシート14と親水性シートとの間に、液拡散性を向上させる液拡散シートを設けてもよい。このシートにより、体液はより拡散しやすくなる。また、親水性シートは、吸収体13をくるむように取り付けられてもよいし、単に、吸収体13の端部をくるむことなく、表、裏に重ねて配置されたものであってもよい。
次にエンボス加工によるエンボスパターンの実施例について、説明する。
図5に示すように、本実施例のエンボスパターンは、連続的に延在した凹部21を複数並べた格子形状であり、格子1つの枡の対角線L1の長さが42mm(4.2cm)となるように凹部21が配置されている。また、図6に示すように、圧縮列22の幅Q1は、3mmである。また、第1凹部211の幅Q2は2.1mmであり、第1凹部211の延在方向の長さQ3は、24.7mmであり、交差領域23を挟む2つの隣接した第1凹部211間の距離Q4は、5mmである。交差領域23における円形の第1凹部211の直径Q5は、4mmである。さらに、エンボス加工をする前の吸収体13とトップシート14との厚さは、8.0mmである。なお、エンボス加工前の吸収体13とトップシート14との厚さは、5.0mm〜20.0mmが好ましい。また、この吸収体13とトップシート14の構成に対しては、圧縮列22の幅Q1は、2mm〜5mmが好ましく、第1凹部211の幅Q2は、1.0mm〜4.0mmが好ましく、第1凹部211の延在方向の長さQ3は、10mm〜50mmが好ましい。そして、第1凹部211間の距離Q4は、2mm〜5mmが好ましい。交差領域23における円形の第1凹部211の直径Q5は、2mm〜7mmが好ましい。
また、図5および図6に示されるように、本実施例のエンボスパターンは、第1圧縮列22aが間隔S1で平行に配置され、第2圧縮列22bが間隔S2で平行に配置される。そして、これら第1圧縮列22aと第2圧縮列22bとによって、遠視的に斜め格子状となるエンボスパターンが形成される。本実施例における格子の1辺の長さS1およびS2は等しく、27.0mmである。格子の間隔は、13.0mm以上54.0mm以下が好ましい。
また、図7に示されるように、第1凹部211のコアラップ15で包まれた吸収体13とトップシート14からなる厚みD1は0.7mmである。第2凹部212のコアラップ15で包まれた吸収体13とトップシート14からなる厚みD2は0.4mmである。そして、主吸収領域25の最大の厚みは8.0mmである。なお、第1凹部211の厚みD1は、0.3mm〜1.1mmが好ましい。そして、第1凹部211の厚みD1と第2凹部212の厚みD2との差の厚みD3は、0.1mm〜0.5mmが好ましい。また、主吸収領域25の最大の厚みは、5.0mm〜20.0mmが好ましい。
各凹部21をこのような深さおよび間隔で形成することにより、体重が加わっても、その溝を維持することができるとともに、おむつの股下部の肌当接面において、柔らかい肌触りを維持することができる。したがって、斜め格子状のエンボスパターンにより、脚の様々な動きに対しておむつがよれるなど変形を抑制できるとともに、その肌触りを柔らかいものとして、肌への刺激を極力抑えることができる。
また、本実施形態では、複数の凹部21によって格子形状の圧縮列22を形成しているが、圧縮列22方向に延在した一つの第1凹部211によって、格子形状の枡の一辺を形成するようにしてもよい。なお、本実施形態では、第1凹部211の平面形状は、複数の圧縮列22で形成された格子形状の辺の部分で長円形を成し、その格子形状の交差領域23で円形を成しているが、本発明ではこれらの形状に限らず、三角形、四角形、楕円形、卵形、角丸長方形など様々な形状をそれぞれ取り得る。
本発明の上記実施形態に係る使い捨ておむつ10は、大人用、子供用のいずれにも適用可能である。また、本実施形態では、展開型おむつ10(いわゆるテープ型おむつ)を例にして説明したが、パンツ型おむつにも適用可能であるのはいうまでもない。また、本発明の吸収性物品はおむつのみに特定されるものではなく、吸収パッドや尿漏れパッド等、他の一般的な各種吸収性物品全般に適用されるものである。例えば、図5に示されるように、吸収体13およびトップシート14部分の構造から、本発明は、吸収パッド等にも適用可能であり、おむつと同様の作用効果を有するものである。