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JP6386700B2 - 構造体、光学部材、反射防止膜、撥水性膜、質量分析用基板、位相板、構造体の製造方法、及び反射防止膜の製造方法 - Google Patents

構造体、光学部材、反射防止膜、撥水性膜、質量分析用基板、位相板、構造体の製造方法、及び反射防止膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、反射防止材料、センサー、超撥水材料、超親水材料などさまざまな用途に用
いられる、複数の錐体部もしくは凸部を有する、構造体、光学部材、反射防止膜、撥水性膜、質量分析用基板、位相板、構造体の製造方法、反射防止膜の製造方法に関する。
従来、光の波長よりも小さいスケールでの、微細な凸部を複数有する構造体(以下、微細構造体とも呼ぶ)は、超撥水材料、超親水材料、電池材料、摩擦防止材料、反射防止材料などさまざまな構造材料として用いられている。
このような光の波長よりも小さいスケールでの微細な凸部を複数有する微細構造体の製造方法は、大別して以下のような3つの手段に分類する事ができる。
1)被加工物上にマスクとなる物をあらかじめ形成後、被加工物をエッチングする方法。
(マスク配置工程およびエッチング工程からなる)
2)被加工物をエッチングする方法(エッチング工程のみ)。
3)1)、2)等により作製した微細構造体を型として、被加工物に転写成形する方法。
1)のマスク配置工程およびエッチング工程を有する従来の製造例としては、リソグラフィーを中心とした半導体プロセスでの製造が試みられている(特許文献3)。微細構造形成に用いる基板にレジストを塗布し、フォトマスクを介して露光、現像を行い、マスクパターンを得て、エッチングにより前記マスクパターンを微細構造形成用の基板に転写させる方法であり。リソグラフィー技術は精密に設計された微細パターンを形成できる方法
としては利点がある(特許文献1)。
また、リソグラフィー技術を用いることなく、上記マスクパターンを自発的に形成する技術も提案されている。例えば、基板上に配列させた微粒子や、島状の金属薄膜等をマスクとする事で、簡便に光の波長よりも小さいスケールでの微細構造体を作製できる技術が開示されている(特許文献2、3)。
2)の「エッチング工程のみ」からなる従来の製造例としては、Siのプラズマエッチング(反応性イオンエッチング)過程において針状の形状が形成される現象が知られており、この材料は「ブラックシリコン」と呼ばれる(非特許文献1)。
3)の微細構造体を型として転写する従来の製造例としては、プラズマエッチング装置を用いて形成した微細な突起群を有する炭素材料を型として光硬化性樹脂などに微細突起形状を転写する方法などが提案されている。(特許文献4)
特に、上記微細構造体における凸部の形状が錐体状、すなわち、上記凸部が、底部から先端に向う方向に垂直な断面の面積が当該方向に沿って小さくなる形状の場合には、反射防止膜、撥水性膜、超親水性膜、質量分析用基板、電池材料、摩擦防止材等として用いることができる。
反射防止膜に関する技術としては、屈折率の異なる光学膜を数十〜数百nmの厚みで単層あるいは複数層を積層する事による光の干渉効果により反射を抑制する技術が一般的で、上記光学膜を形成するためには、蒸着、スパッタリング等の真空成膜法やディップコート、スピンコート等の湿式成膜法が用いられる。これら一般的な反射防止膜は、光線入射角が0度で、使用する波長域が比較的狭い波長領域で優れた反射防止効果を有する設計がされている。しかし、口径の大きなレンズや曲率半径の小さな面を有するレンズ等に用いられる反射防止膜には、広い波長領域に対して優れた反射防止機能を有し、且つ光束の入射角度特性の良いものが望まれる。広い波長領域で、かつ入射角度特性の良い反射防止策としては、入射光の波長よりも短いピッチの微細構造体(SWS ;Sub-Wavelength Structure、もしくはMoth−eye構造などと呼ばれる)を配置する事が知られている(特許文献5、6)。特に、前記微細構造が、先鋭化した構造を有する場合には、空間における物質が占める体積が凸構造の上部から下部に向けて徐々に増していくことになり、界面における急峻な屈折率の変化が抑制される結果、反射が大きく低減されることになる。
複数の凸部から成る微細構造体を表面に有する膜が、高い撥水性を示すことは、蓮の葉効果(Lotus Effect)として知られている(特許文献7、非特許文献2)。前記凸部の形状、配置、疎水性修飾基などの条件を適切に設計することで、膜表面での水滴の接触角が150度を超えるような超撥水性を実現ことも可能である。このような超撥水性を示す膜は、各種光学部材や建築部材の表面コーティング等への応用が期待されている。
複数の凸部から成る微細構造体を表面に有する膜は、また、質量分析用の基板として用いることができる。これは微細構造を有する半導体薄膜の上に分析対象の材料を保持し、レーザーやイオンビームの照射により、構造を破壊せずに分析対象物をイオン化し、その質量を高感度で測定することにより、成分の同定を行う技術であり、マトリクス支援質量分析法に類似した、表面支援質量分析法(SALDI−MS)として知られている(特許文献8)基板表面の微細構造は、主としてイオン化に伴う検体試料の破壊を防ぐ役割を有し、それ故に10nm程度のサイズであることが必要である。この、表面支援質量分析に用いられる基板としては、シリコンの陽極化成によって作製されるポーラスシリコンが最も一般的である。また、空気中の酸化によるポーラスシリコン電気伝導度低下に起因する特性劣化の課題を解決し得る材料として、ポリエチレングリコールの共存化、ゾル−ゲル法によって作製される、表面に微細な構造を有する酸化チタン薄膜等が提案されている(非特許文献3)。これに用いられる酸化チタン薄膜には、10ナノメートル程度のランダムな形状の微細な孔が存在しており、これらの微細孔は、主としてイオン化に伴う検体試料の破壊を防ぐ役割を有する。
特開2001−272505号公報 特開2000−71290号公報 特開2009−215104号公報 特開2010−186198号公報 特開2005−157119号公報 特開2006−10831号公報 特開2010−188584号公報 US6288390B1
Adv. Mater. 2011, 23, 122−126 ACS NANO, 2012,6, 3789‐3799 Rapid Communication in Mass Spectrometry,18,1956-1964
しかし、上記従来の技術にはいくつかの課題があった。
まず、上記複数の凸部を有する微細構造体の作製に関する課題としては、被加工物上にマスクとなる物をあらかじめ形成後、被加工物をエッチングする方法の場合、マスク配置のための工程が必要となるため、製造方法が複雑で安価に製造する事が難しいということがある。また、マスクを用いることなくエッチングのみでの作製法は、適用可能な材料が極めて少ないため、用途が限定されるという課題があった。例えば、上記のブラックシリコンや微細構造を有するカーボンは、可視光を透過しないため、レンズのような部材への反射防止膜としては適用することができない。このため、広範囲の材料、特にバンドギャップの広い、透明且つ安定な材料に、マスクを用いることなく錐体状の微細な複数の凸部を形成する技術が求められていた。
また、各凸部の表面のみに疎水性の化学修飾を施したような、従来報告されている撥水性材料膜においては、膜表面に外力がかかって凸部形状が破壊された際に、新たに露出する断面部は疎水性の修飾基を有していない。その結果、膜面内において局所的に撥水性が著しく劣化する箇所が生じるという課題があった。このため、破断面が発生しても撥水性の低下しない、撥水性材料膜が求められていた。
また、表面に微細構造を有する従来の質量分析用基板は、その構造のサイズが、イオン化に用いられるプローブ(レーザー光等)の波長に比較して著しく小さいために、膜表面におけるプローブ光の反射が、膜中に注入されるエネルギーを低下させ、その結果としてイオン化効率を低下させることがあるという課題があった。このため、イオン化に伴う検体試料の破壊を防ぐ役割を有する微細な構造を保持したままで、反射を防止し得るように膜の形態を微細加工することのできる技術が求められていた。
本発明は、基体と、前記基体の表面に存在する反射防止膜と、を有する光学部材であって、前記反射防止膜が表面に複数の錐体部を有、前記錐体部がメソ構造を有し、前記メソ構造がメソ孔を有する構造であり、前記メソ孔の内部に、前記メソ孔を形成する壁部の材料よりも屈折率が高い無機材料が存在し、前記メソ孔の内部に前記無機材料が存在することにより、前記錐体部の実効的な屈折率と前記基体の屈折率との差が低減されることを特徴とする光学部材である。
また、別の本発明は、基体と、前記基体の表面に存在する反射防止膜と、を有する光学部材であって、前記反射防止膜が表面に複数の凸部を有する構造体を有し、前記凸部が、前記凸部の底部から先端に向かう方向に垂直な面で前記凸部を切断した時の断面の面積が、前記方向に沿って小さくなる形状を有し、前記凸部がメソ孔を有するメソ構造を有し、
前記凸部の先端に金属元素が存在しており、前記凸部の底辺の長さをD、前記凸部の高さをHとした時、H/Dが2.0以上であり、前記メソ孔の内部に、前記メソ孔を形成する壁部の材料よりも屈折率が高い無機材料が存在し、前記メソ孔の内部に前記無機材料が存在することにより、前記凸部の実効的な屈折率と前記基体の屈折率との差が低減されることを特徴とする光学部材である。
また、別の本発明は、メソ孔を有するメソ構造体を形成する工程と、マスクは用いずにプラズマエッチング装置のエッチングチャンバーの一部を構成する材料を有する物質を堆積させながら前記メソ構造体をプラズマエッチングして、前記メソ構造体に凸部であって底部から先端に向かう方向に垂直な面で前記凸部を切断した時の断面の面積が、前記方向に沿って小さくなる形状を有する凸部を複数形成する工程と、を有することを特徴とする構造体の製造方法である。
本発明によれば、反射防止効果が高い反射防止膜およびその製造方法、反射防止効果に優れた光学部材、優れた撥水性を有する撥水性膜、検出感度の高い質量分析用基板、高精度な位相板、それらに用いることができる構造体およびその製造方法を提供することができる。
第一の実施形態に記載の構造体の構造、及び作成手順を説明するための模式図である。 均一な径のシリンダー状細孔が規則配列した構造を有するメソ構造体から構成される第一の実施形態に記載の構造体の模式図である。 第一の実施形態における、構造の異なる複数のメソ構造体から構成される構造体の模式図である。 メソ孔内への材料の導入の状態を説明するための模式図である。 第一の実施形態に記載の構造体における複数の凸部の配置を説明するための模式図である。 第一の実施形態に記載の構造体における複数の凸部の形成状況を説明するための模式図である。 第一の実施形態に記載の構造体における複数の凸部の面内での分布を説明するための模式図である。 第四の実施形態に記載の反射防止膜の反射防止効果を説明するための模式図、及びメソ孔中への材料の充填に伴う膜屈折率の変化を表わすグラフである。 プラズマエッチングを行って形成される第一の実施形態に記載の構造体中に含まれるフッ素量の深さ方向分析結果を模式的に示す図である。 表面にエッチング装置を構成する部材に由来するコンタミネーションを島状に形成しながらプラズマエッチングを行って作製される、第四の実施形態に記載の構造体の形成過程を説明する模式図である。 第一〜第三の実施形態に記載の構造体中の凸部のH/Dを向上させるために、エッチングレートの小さい材料を表面に形成し、2段階でプラズマエッチングを行う工程による、構造体の形成過程を説明する模式図である。 第一〜第三の実施形態に記載の構造体を型にして、そのネガに対応する構造体を作製する工程を説明するための模式図である。 実施例7において、メソポーラスシリカ膜に、プラズマエッチングで形成された、複数の微細な錐体状凸部から構成される構造体の走査電子顕微鏡写真である。 メソ孔内に無機材料を充填する工程で用いられる、減圧CVDの装置構成を説明するための模式図である。 実施例12において、メソポーラスシリカ膜に、プラズマエッチングで形成された、複数の微細な錐体状凸部から構成される構造体の走査電子顕微鏡写真である。 実施例12において、作製された反射防止膜の反射率の波長依存性を示すグラフである。 実施例20において、石英ガラス基板上に、プラズマエッチングで形成された、複数の微細な錐体状凸部から構成される構造体の走査電子顕微鏡写真である。 実施例27において、メソポーラスシリカ膜に、エッチング装置を構成する材料に起因するコンタミネーションを島状に堆積させながらプラズマエッチングを行うことで形成された、複数の微細な錐体状凸部から構成される構造体の走査電子顕微鏡写真である。 周期とサイズの異なる複数の凹凸形状を有する、撥水性膜の構成を説明するための模式図である。 実施例31で作製した撥水性膜の上での水の接触角を決定するために用いた写真である。 実施例33で記載した、周期とサイズの異なる複数の凹凸形状を有する撥水性膜の作製工程を説明するための模式図である。 反射防止を実施する部材の屈折率n4(nsub)と、微細構造体の実効屈折率n3(nfilm)との差と、両者の界面での反射率の関係を示す図である。 実施例7の製造工程を示す図である。 表面に保護層を有する構造体の模式図である。 表面に保護層を有する構造体の模式図である。 錐体の先端が一部欠落した形状を説明する図である。
以下、本発明の実施形態の例を用いて本発明を詳細に説明する。
<第一の実施形態>
先ず、本発明の第一の実施形態について説明する。
本実施形態にかかる構造体の模式図を図1に示す。図1の1(a)は構造体の立体図、1(b)は1(a)の構造体をA−A´断面で切断した際の断面図である。
本実施形態の構造体11は、表面に複数の凸部12を有する構造体であって、凸部12がメソ構造を有し、メソ構造がメソ孔13を有する構造である。
構造体11は、メソ孔13を有する(含んで成る)メソ構造をなしている。ここで記載する、メソ孔とは、International Union of Pure and Applied Chemistry の定義によって、2nm以上50nm未満の径の細孔のことをいう。この細孔の径は、細孔の断面積が最小になる断面における細孔の直径を意味し、細孔の断面が円状である場合にはその直径を指し、断面の形状が多角形の場合にはその対角線の長さの最大値を指す。断面形状が不定形の場合は、その断面形状における最大の差し渡し径をもって細孔径と定義する。また、メソ構造とは、上記メソ孔が、細孔壁を形成する材料からなるマトリクス(以下壁部と記載する場合もある)中に配されている構造を指す。メソ孔は、後述するように、内部が空隙(中空)であっても内部に有機材料もしくは無機材料が存在していても良い。ここで、本発明および本明細書において、メソ孔が中空である場合の構造体をメソポーラス材料と呼ぶ。メソポーラス材料の空孔率は20%以上80%以下であることが好ましい。なお、メソポーラス材料の空孔率が20%以上80%以下の範囲に、空孔率30%以上65%以下の範囲が含まれることは言うまでもない。
本実施形態の構造体11は、図1に示すように凸部12を複数有している。前記凸部12は、底部16から先端17に向う方向18に垂直な面19で凸部12を切断した断面の面積が方向18に沿って小さくなる形状(言い換えれば、底部16から先端17に向かう方向に垂直な断面積が当該方向に沿って小さくなる形状)をなしている。なお、凸部を面19で切断した断面にメソ孔の一部をなす中空部分が存在する場合には、切断した断面の面積に中空部分の面積を含めるものとする。凸部12は、先端部の面積がほぼ0である錐体形状、もしくは、錐体の先端が一部欠落した形状、である錐体部であることが好ましいが、方向18に沿って必ずしも単調減少でなくても良く、錐体もしくは錐台に近似できる形状であれば、一部にいびつな形状を有していても良い。なお、底部16から先端17に向かう方向18に垂直な断面積が当該方向に向かう方向に沿って変化しない(等しい)領域が一部存在していても良い。また、先端が割れた(先端が割れて複数になっている)形状であっても良い。なお、以降の記載で、錐体部と表現する場合は、先端部の面積がほぼ0である錐体形状および錐体の先端が一部欠落した形状のいずれの形状も含むものと定義する。ここで記載する「錐体の先端が一部欠落した形状」とは、図26(a)に示す錐面2301を延長した時に形成される、仮想の錐体A2302(図26(b)に記載)の高さ2303を1とした時に、図26(c)に示すように、前記欠落した部分のうちの前記仮想の錐体Aの頂点から最も遠い点2304を底面に含みかつ前記仮想の錐体Aの頂点と同一の頂点2307を有する仮想の錐体B2305の高さ2306が1/7以下である形状と定義する。このような形状を有することにより、構造体11の見かけの屈折率実部が前記方向aに沿って小さくなる。
構造体11が有する凸部12の底辺の長さをD、前記錐体部12の高さをHとしたきにH/D(以下、アスペクト比と記載する場合もある)は、好ましくは1/2以上、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは3.0以上、最も好ましくは5.0以上である。凸部12が錐体部である場合にはH/Dが1/2以上であることにより、凸部12が錐体部でない場合にはH/Dが1.0以上であることにより、構造体を用いて反射防止膜を形成した際に、電磁波の反射を効果的に抑制することができる。なお、H/Dが1/2以上であるということは、図1(b)に示す、本実施形態の構造体の断面投影図において、凸部の頂角θが鋭角であることを意味する。H/Dが大きい程、良好な反射防止特性が得られることが多いが、H/Dが大きすぎると機械的強度が低下する場合もあるので、強度を鑑みるとH/Dは12以下であることが好ましい。
ここで、底辺Dとは、底部16の形状である底面の重心位置を通り、外周上の2点を結ぶ線分の最短距離を示す。また、底部とは凸部の末端を一周して形成される形状を示しており、言い換えれば、凸部同士の隣界によって囲まれる形状である。
また、凸部12の高さHは、凸部12の先端17と底部16の中心とを結ぶ線分の長さを示す。なお、先端17と底部16の中心とを結ぶ線分の端部が底部16内にない場合、高さHは凸部12の先端17から底部16を含む平面に垂直に下した線分の長さとする。
なお、凸部の先端が割れた形状をなしている場合には、凸部の断面SEM画像においてそれぞれの頂点から、該頂点を含む凸部と隣接して存在する別の凸部が交差する交差点までの錐面を、凸部の断面SEM画像における複数の交差点のうち最も基体に近い交差点の高さまで延長することで形成される、複数の仮想の錐体を設定して、底部の底辺D、高さHを算出するものとする。
凸部12の高さHは50nm以上であることが好ましく、より好ましくは100nm以上、最も好ましくは200nm以上である。
凸部12の先端17間の平均間隔(図1(b)中p)は400nm以下であることが好ましい。凸部12の先端間の平均間隔がこの値よりも大きくなると、光の散乱が顕著になり、光学用途の場合には性能低下につながることがある。
凸部12の形状は、先端17間の平均間隔が400nm以下、高さH(図1(b)中H)が50nm以上で、前記H/Dが1.0以上であることが好ましく、先端17間の平均間隔が100nm以下、高さHが50nm以上で、H/Dが3.0以上であることがより好ましく、先端17間の平均間隔が100nm以下、高さHが300nm以上で、前記H/Dが3.0以上であることがさらに好ましい。
本実施形態の構造体における凸部の配置は、任意の配置を用いることができる。例えば、図5(a)に示すように六方最密配置や、立方最密配置(図5(b))、ランダム配置(図5(c))などの形態を包含する。図5において、円は凸部の底部の輪郭を、円の中心の黒い点は凸部の頂点を模式的に示すもので、凸部の底面は完全な円形である必要はなく、また凸部の頂点は底部の輪郭の中心にある必要もない。図5に模式的に示した凸部の各配置において、その断面の模式図よりわかるように、個々の凸部は独立して形成されている。
しかし、本実施形態の構造体の凸部は、図6(a)に示すように、隣接する凸部の稜線(もしくは錐面)の一部が基体表面よりも上部で互いに交わるように配置されていても良い。また、凸部は、底部や稜線が接したり交わったりしていなければならないということはなく、図6(b)に示すように、凸部と凸部が接していなくても良い。但し、本実施形態の構造体を、後述する反射防止膜のような用途に用いる場合には、凸部と凸部の間隔が大きくなると、構造体全表面に対する平坦な表面を有する部分の割合が大きくなる結果、界面での屈折率変化が急峻になり、反射防止特性が低下するという問題点が発生することがある。この様な応用に対しては、図6(a)に示すような、隣接する凸部の稜同士が基体表面よりも上部で交わっているような構成が好ましいことになる。
本実施形態の構造体における凸部は、構造体全体に渡って均一に形成されていることが好ましい。ここで記載する均一とは、図7(a)のように、凸部がほぼ一定の密度で分布している状態を指し、図7(b)のように、部分的に凸部が存在しない領域が形成されていない状態を指す。図7において、円は凸部の底部の輪郭を、円の中心の黒い点は凸部の頂点を模式的に示す。具体的な均一性としては、前記凸部の先端間の平均間隔をpとし、前記先端間の間隔の分布における標準偏差をσとするとき、
0.1<σ/p<0.5 式1
である。
この条件は、平均間隔pの値に対して各凸部の間隔のばらつき程度がどの範囲にあるかという事を意味している。この値が0.1よりも小さい場合には、凸部が一定間隔を持って配列することになり、好ましくない干渉効果を生むことがあり、また、0.5よりも大きい場合には、凸部の形成位置の広い分布が光学特性のムラとなって現れることがある。
尚、先端間隔の算出方法は、微細構造体を真上から撮影した電子顕微鏡写真の画像処理により、各先端部の座標を取得し、デロネー三角形分割法(与えられた各先端部の座標を頂点とする三角形を作り、その三角形の外接円に頂点以外のどの点も含まないような条件で分割する方法)により個々の凸部の先端間距離を得る事によるものとする。微細構造体を形成した領域内において、視野1μmの電子顕微鏡写真を、領域内で偏りのないように20箇所撮影し、各先端間距離を算出して平均間隔pおよび、標準偏差σを決定するものとする。
本実施形態の構造体におけるメソ孔は、その形状がシリンダー状(シリンダー形状)であることが好ましく、均一な径であることも好ましい。より好ましくは、メソ孔がシリンダー状かつ均一な径である。このような場合、後述する、中空であるメソ孔の内部に材料を充填するプロセスを容易にしたり、メソ孔の内部に充填する材料の量を調整しやすい。ここで、本発明および本明細書において、「均一な径を有する」とは、電子顕微鏡によって観察されるメソ孔の径が、メソ孔の径の平均値に対して±50%以内の大きさに収まっていることと定義する。
但し、メソ孔の形状がシリンダー状でなければ、本発明の効果が得られないことはなく、例えば、球状、楕円球状、ロッド状等、さまざまな形状のメソ孔であっても良い。図2に模式的に示すように、メソ孔がシリンダー状である場合、シリンダー状メソ孔21は、多くの場合、基体と平行に配向している。図2(a)は、シリンダー状メソ孔をメソ孔の長手方向から見た場合の模式図、図2(b)はメソ孔の長手方向に垂直な方向から見た模式図であるが、上記シリンダー状メソ孔の方向は、構造体内において制御されていなくても良い。前述した均一な径を有するシリンダー状のメソ孔は、構造体内において周期的に配向している(言い換えれば、周期的に配置されている)ことが、屈折率の均一性という観点から好ましい。メソ孔が構造体内において周期的に配置されている例としては、図2(a)に示すように、メソ孔(細孔)が六角形で示すような配置をなす、ヘキサゴナルパッキング等の規則的な配置をしている場合が挙げられる。メソ孔の配置はヘキサゴナルパッキングに限定されず、細孔の配置が長方形や正方形になるような配置であっても良い。
上記規則的配置は、前記メソ構造を備えた本発明の構造体をX線回折分析で分析した場合に、1.0nm以上の周期構造に対応する回折ピークが観測されることが好ましく、より好ましくは5.0nm以上の周期構造に対応する回折ピークが観測されることが好ましい。なお、1.0nm以上の周期構造に対応する回折ピークが観測されるものとは、図2に示すように細孔の規則配置により規定される構造周期dが、1.0nm以上であるということを示している。メソ孔の形状がシリンダー状でない場合にも、メソ孔は規則的に配置されていることが好ましく、X線回折分析において5.0nm以上の周期構造に対応する回折ピークが観測されるものが好ましい。但し、メソ孔が規則的に配置されなければ、本発明の効果が得られないということではなく、本実施形態の構造体が有するメソ孔は、例えば、シリンダー状メソ孔が、不規則に連結されたような構造であっても良い。
本実施形態のメソ構造を有する構造体は、図3に示すように、構造の異なる複数のメソ構造31、32から構成されている場合、後述するように、一つの凸部の中で、凸部の底部近傍と先端部近傍での物メソ孔の内部に存在する有機化合物もしくは無機化合物の存在量を変化させて屈折率の変化を持たせることが可能である。ここで記載する異なる構造とは、メソ孔の径、メソ孔の配列、メソ孔の間隔等、いずれかの構造パラメータに差があることを意味する。なお、図3では凸部先端近くのメソ孔の径が凸部底部のメソ孔の径よりも大きい場合について模式的に記載しているが、本発明における構造の異なる複数のメソ構造とは、メソ孔の径の差異に限定されるものではない。
本実施形態の構造体の壁部(メソ孔を形成するマトリクス)を構成する物質としては、金属、窒化物、炭化物、フッ化物、ホウ化物、酸化物などを成分として含むものを用いる事ができる。反射防止膜のような光学材料に本発明の構造体を用いる場合には、壁部を構成する物質も可視光に透明であるバンドギャップの大きな材料が好ましく、バンドギャップが2.5eV以上かつ10eV以下の範囲にある材料が好ましく用いられる。例としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニア、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化亜鉛などである。特に、材質の安定性を考慮すると、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタンが好ましく用いられる。また、壁部を構成する材料が酸化チタンである場合には、酸化チタンの少なくとも一部が結晶化していることが好ましい。これは、酸化チタンの少なくとも一部が結晶化していることにより、結晶化していない場合と比較して壁部の材料の屈折率をさらに増大させることが可能となる他、酸化チタンの光半導体としての性質が顕著に発揮されるようになるからである。なお、酸化チタンの結晶化はX線回折分析などにより測定することが可能である。
本実施形態の構造体におけるメソ孔13は、メソ孔の内部が空隙(中空)であっても、メソ孔の内部に有機材料もしくは無機材料が存在していても良い。ここで、メソ孔の内部に有機材料もしくは無機材料が存在するとは、メソ孔の内部に有機材料のみ存在する場合、無機材料のみ存在する場合、有機−無機ハイブリッド材料などの有機材料および無機材料が存在する場合、有機材料もしくはおよび無機材料とその他の材料が存在する場合があることは言うまでもない。また、メソ孔の内部に有機材料もしくは無機材料が存在する場合、メソ孔の少なくとも一部に有機材料もしくは無機材料が存在していれば良く、複数のメソ孔のうちの一部のメソ孔に完全に充填された状態で存在する場合と、複数のメソ孔のうちの大半のメソ孔が、内部の一部に有機材料もしくは無機材料が存在するメソ孔である場合とが含まれる。なお、本発明においては、複数のメソ孔の全てが有機材料もしくは無機材料で完全に充填された場合であっても、メソ構造がメソ孔を有し、その内部に有機材料もしくは無機材料が存在するものであるため、「メソ構造がメソ孔を有する」という概念に含まれるものとする。
メソ孔の内部に存在する有機材料としては、例えば、後述するメソ構造体作製の際に構造規定剤として用いられる両親媒性物質の他、ポリマー等の高分子材料、及び分子量が10000未満のモノメリックな材料などがあげられる。
また、メソ孔の内部に有機材料が存在する例として、有機材料が疎水性官能基を有し、メソ孔の表面が疎水性の官能基で化学修飾される例が挙げられる。このような場合、後述するように、形成される複数の凸部を有する構造体の形態を制御することが可能になる。ここで、本発明および本明細書において、疎水性官能基とは、清浄な溶融石英基板の表面を、その化合物で飽和レベルまで修飾した場合、修飾後の表面における水の接触角が90°よりも大きい官能基のことと定義する。このような疎水性官能基の例としては、アルキル基やフルオロアルキル基が挙げられる。
メソ孔の内部に存在する無機材料は、導電性材料、絶縁性材料、半導体材料等の幅広い材料の中から選択することができる。
無機材料の例としては金属、窒化物、炭化物、フッ化物、ホウ化物、酸化物などを主成分とするものを用いる事ができる。無機材料は単一組成であっても、2種以上の混合物、複合材料であってもよい。反射防止膜のような光学材料に本実施形態の構造体を用いる場合には、メソ孔の内部に存在する無機材料は、バンドギャップが大きく可視光に透明である材料であることが好ましく、2.5eV以上かつ10eV以下の範囲にバンドギャップがある材料が特に好ましく用いられる。例としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニア、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化亜鉛などであり、特に酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタンが、材質の高い透明性から、光学応用という観点からは好ましい。
メソ孔の内部に存在する無機材料は、凸部を有する構造体のメソ孔の内部に、図4(a)及び(b)に模式的に示すように一様に分布するように含まれていても良いし、メソ孔への無機材料の充填率が前記凸部の底部から先端に向かう方向において低下するように、好ましくは、空隙率が前記凸部の底部から先端に向かう方向において大きくなるように、充填量を制御しても良い。この様な充填率の局所的変化は、例えば、前述したように、凸部を形成するメソ構造体を、構造の異なる複数のメソ構造体で構成することによっても達成することが可能である(図4(d))。
メソ孔への無機材料の充填率が前記凸部の底部から先端に向かう方向において低下する構造体である場合、無機材料を構成する元素の、前記メソ構造を備えた構造体を形成する材料を構成する元素に対する局所的存在比を表わす、(無機材料を構成する元素量)/(メソ構造を有する構造体を構成する元素量)の値が、前記凸部の底部から先端に向かう方向において減少する(図4(c))。
前述の(無機材料を構成する元素量)/(メソ構造を備えた構造体を構成する元素量)の値は、イオンスパッタリングを繰り返しながら行う光電子分光法の深さ方向分析によって求めることができる。
なお、メソ孔全てを充填する場合には、壁部を構成する材料と、メソ孔に存在する材料が異なることが好ましい。
本実施形態の構造体は、多くの場合、基体上に形成される。基体の材質、形状は、その上に本発明の構造体が形成可能である範囲において、基本的に制限はない。
また、本実施形態の構造体は、表面に保護層を有していても良い。
以下、保護層について詳細に記載する。
表面に有する凸部からなる構造体の模式図を、図24に示す。基体2201上に形成された凸部2202において、表面に保護層2203を有することにより、凸部2202が有するメソ孔2204が、水分を含む大気から遮蔽される。この結果、凸部2202を形成するメソ構造中への水分の吸着を阻害でき、安定した屈折率を維持することが出来る。また、同様に、メソ孔2204を通じての基体2201への水分の到達を阻害することで、アルカリ金属酸化物・アルカリ土類金属酸化物・酸化ホウ素といった酸化物成分が含まれるような基体を用いた場合においても、これらの成分の溶出に伴う曇りや白化の発生を防止することが出来る。なお、ここで記載する空孔とは、空孔中の少なくとも一部に有機材料もしくは無機材料が充填された場合において、完全に充填しきれていない部分に生じる空孔も含む。同様に、以下の説明における空孔率とは、空孔中の少なくとも一部に有機材料もしくは無機材料が存在する場合は、有機材料もしくは無機材料が入った上での全体の体積に対する、空孔の占める割合を指す。
保護層を形成する材料としては、空孔を有する凸部への水分の侵入を抑制するという目的から、凸部よりも空孔率が小さい材料を選択することが望ましい。空孔率の大小は、例えば保護層の有無での、窒素ガス吸着法により得られる吸脱着等温線により評価することが出来る。ここで記載する吸脱着等温線とは、IUPACで定義された分類の等温線を指し、文献「Pure Appl.Chem.,57号,p.603(1985年)」に記載されている。具体的には、保護層が無い凸部のみの場合、または凸部よりも空孔率の大きい保護層が表面に形成されている場合には、凸部内部の空孔に対する吸着・脱着が支配的となり、等温線としてはIV型の吸脱着挙動を示す。一方、凸部よりも空孔率が小さい保護層が表面に形成された場合には、凸部内部の空孔に関する吸着・脱着挙動は保護層により阻害され、結果として保護層表面への吸着・脱着挙動が支配的となることから、吸脱着挙動はII型、もしくはII型に近い挙動を示す。
保護層は、メソ孔を有する凸部の表面の全ての領域を覆っていることが望ましいが、作製上の都合により、保護層が一部形成されていない領域があっても良い。そのような場合でも保護層の効果は期待できるが、メソ孔を有する凸部の表面の少なくとも50%以上には保護層が形成されていることが望ましい。
以下、メソ構造を有する凸部と、その表面に形成された保護層について、図25を用いてより詳細に説明する。なお、ここでは凸部内部に存在するメソ孔2204を模式的に丸い形状で示しているが、メソ孔の形状には特に制限がなく、またメソ孔同士が連結していても良い。
図25(a)は、保護層を有する構造体の一例を示す模式図である。メソ孔2204を含む凸部2202において、表面部分のみに保護層2203が形成され、凸部内部の空孔率は保護層形成前の状態を維持している。このような構造を作製する手段として、例えば「Journal of American Chemical Society 128号、p.11018(2006年)」に記載されているような、プラズマアシスト原子層堆積法を用いることが出来る。
図25(b)は、保護層を有する構造体の別の一例を示す模式図である。メソ孔を有する凸部2202の表面に、外部にメソ孔が露出している場合、及び、それらのメソ孔が凸部の表面からある深さまで連続している場合には、保護層2203として形成する材料が、表面から数層分に当たるメソ孔まで侵入して充填する場合もある。この場合であっても、形成された保護層2203は、大気中の水分を遮断する働きがある。そのため、凸部を含む構造体において、凸部の底面から先端に向かう方向に屈折率が連続的に減少している限りは、このような構造であってもよい。
図25(c)は、保護層を有する構造体のさらに別の一例を示す模式図である。この例では、凸部2202が有するメソ孔2206に有機材料もしくは無機材料が存在し、凸部の表面に保護層2203を形成した例である。この時、保護層2203を形成する材料は、保護層形成前の凸部の空孔率よりも低い値の空孔率を有するものであれば特に制限はない。また、メソ孔に存在する材料(有機材料もしくは無機材料)と、保護層を形成する材料が同じ材料であっても良い。このような構造は、例えば、メソ孔を有する凸部を形成した後、メソ孔内に有機材料もしくは無機材料を充填した上で、メソ孔の表面に保護層を形成することで容易に得られる。一般的な真空装置を用いた成膜手法のほかに、スピンコート法やディップコート法などの塗布による成膜も用いることが出来る。また、メソ孔に充填する材料(有機材料もしくは無機材料)と同じ材料かつ同じプロセスで凸部の表面に保護層を形成してもよい。そのような場合、メソ孔に有機材料もしくは無機材料が充填した後に、そのまま充填を継続して行うことで、保護層を形成することも可能であるし、メソ孔に有機材料もしくは無機材料が充填した後に、充填を停止し、その後充填を再開することで保護層を形成することも可能である。
保護層を形成する材料としては、具体的には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、リン酸アルミニウムなどが挙げられる。
保護層の厚さは、1nm以上20nm以下であることが望ましい。保護層の厚さが1nm未満の場合は、十分な膜厚均一性を維持することが出来ず、大気中の水分を遮蔽する効果が十分に得られない場合がある。また、保護層の膜厚が20nmより大きい場合は、本発明の凸部形状に対して保護層が占める割合が大きくなりすぎてしまい、例えば構造体を反射防止膜として利用する場合には、凸部における屈折率の連続的な変化を一部相殺してしまう場合がある。
<第二の実施形態>
本実施形態の構造体は、表面に複数の凸部を有する構造体であって、前記凸部の底部から先端に向かう方向に垂直な面で前記凸部を切断した時の断面が、前記方向に沿って小さくなる形状を有し、前記凸部がメソ孔を有するメソ構造を有し、前記凸部の先端に金属元素が存在しており、前記凸部の底辺の長さをD、前記凸部の高さをHとした時、H/Dが2.0以上であることを特徴とする構造体である。
本実施形態の構造体は、凸部の形状が異なる点、凸部の先端に金属元素が存在する点、凸部の高さをH、凸部の底辺の長さをDとした時のH/Dが2.0以上である点以外は第一の実施形態と同じである。
したがって、以下では異なる点のみ記載する。
本実施形態の構造体が有する凸部の先端に存在する金属元素は、プラズマエッチング装置のエッチングチャンバーを構成する部材を含んでいても良い。製造方法に関する説明の中で後述するが、本実施形態の構造体は、プラズマエッチング処理の条件を調整し、エッチング処理中に、エッチングチャンバーを構成する部材を含む物質が、膜表面に微細なドメインとなるように形成し、このドメイン状に形成された物質を耐エッチング材料として製造することもできる。この場合には、前記凸部の先端にはプラズマエッチング装置のエッチングチャンバーを構成する部材を含む物質が残存する構造体が形成される。上記プラズマエッチング装置のエッチングチャンバーを構成する部材を含む物質は、典型的には金属元素を含む物質であり、特にアルミニウムを含む物質である。
後ほど、本実施形態の構造体の製造方法に関する記載で説明するが、このように凸部の先端に金属元素が存在する場合には、構造体が有する凸部のアスペクト比が高アスペクト比(H/Dが2.0以上)になりやすい。
<第三の実施形態>
本実施形態の構造体は、複数の凸部を有し、前記凸部の底部から先端に向う方向に垂直な面で凸部を切断した時の断面の面積が当該方向に沿って小さくなるような形状を有し、隣接する前記凸部の先端間の平均間隔が100nm以下であり、前記凸部の底辺の長さをD、前記凸部の高さをHとした時に、H/Dが1/2以上であることを特徴とする構造体である。
複数の凸部を有する構造体の形状は、基本的に図1に示した、第一の実施形態に記載の構造体の形状と同じであり、複数の凸部を有する形状をなしているが、本実施形態の構造体は、メソ孔を有していない。本実施形態の構造体の隣接する凸部の先端間の平均間隔は100nm以下であり、且つ前記凸部の底辺の長さをD、前記凸部の高さをHとしたきにH/Dの値で定義されるアスペクト比は1/2以上である。このような構造体を基体上に形成することで、基体表面における反射率を大幅に低減することができる。反射率低減効果は、1/2以上のアスペクト比で確認されるが、前記アスペクト比は高い方が好ましく、より好ましくは1以上、さらに好ましくは√3/2以上である。このような形態的特徴を有する構造体は、従来の材料加工技術では作製が困難であるものであり、後に記載する本実施形態の製造方法によって作製が可能になったものである。
また、第一の実施形態と同様に、本実施形態の構造体における凸部は、構造体全体に渡って均一に存在していることが好ましい。具体的には、前記凸部の先端間の平均間隔をpとし、前記先端間の間隔の分布における標準偏差をσとするとき、
0.1<σ/p<0.5 式1
であることが好ましい。
<第四の実施形態>
本実施形態の反射防止膜は、第一〜第三の実施形態のいずれかの実施形態に記載の構造体を有する。
上記のように説明してきた第一〜第三の実施形態に記載の構造体は、凸部の底部から先端に向う方向に垂直な面で凸部を切断した時の断面の面積が当該方向に沿って小さくなる形状を有する複数の凸部を表面に有することにより、見かけの屈折率実部が凸部の底部から先端に向かう方向に沿って小さくなるため、空気と構造体の間の屈折率変化が緩やかになる。したがって、第一〜第三の実施形態に記載の構造体は、いずれも、基体の表面に形成された場合、光学界面における屈折率変化の急峻性が低下する結果、可視光乃至近赤外の反射を抑制し、優れた反射防止膜として機能する。
本実施形態の反射防止膜が反射防止能を示す電磁波の波長範囲は、可視光乃至近赤外領域にある。
さらに、本実施形態の反射防止膜は、基体と屈折率のほぼ等しい材料を使用して形成する、又は、メソ構造体で作製した本発明の構造体のメソ孔内に構造体の屈折率が基体の屈折率にマッチングするようにメソ孔の空孔率を制御するもしくは他の材料を材質と量を制御して導入することによって、基体と本実施形態の反射防止膜の界面における屈折率差による反射を抑制することができる。
これを図8を用いて説明する。
第一〜第三の実施形態に記載の微細構造体の実効的な屈折率nfilmは以下の式(3)で表され、反射防止を実施しようとする部材に合わせて各値を適宜設定する事ができる。
通常、第1の材質から成る基体の上に、第2の材料が形成された場合、該第2の材料を透過する波長の電磁波に関しては、図8(a)に示すように、基体表面での反射R2と、第2の材料表面での反射R1とが起こる。ここで、前記第2の材料の表面に本実施形態の反射防止膜を形成することにより、反射Rtotalは、反射防止膜が有する微細構造体(凸部)の形状効果により低減される反射R1と、部材と微細構造体界面の反射R2により決定され、式(4)で表され、
第2の材料表面では界面が定義できなくなることにより反射率が大きく低減される。
しかし、そのような場合においても、前記第1の材料と第2の材料との屈折率が異なる場合には、基体と第2の材料の界面での反射R2は防止できない(図8(b))。
反射防止を実施する部材の屈折率nsubと、微細構造体の実効屈折率n3(n_film)との差と、両者の界面での反射率の関係を図22に示す。なお、図22では、n_subをn4、微細構造体の実効屈折率n_filmをn3で示してある。
ここで、第1と第2の材料の屈折率をマッチさせれば、図8(c)に示すように、R1もR2も抑制することができ、原理上反射が起こらなくなる。言い換えれば、微細構造体203の形状効果による反射(R1)の低減に加え、微細構造体と部材との屈折率を揃える事により反射(R2)を低減する事ができ、原理的に無反射を実現する事が可能となる。
両者の屈折率差(n_sub−n_film)の範囲としては、両者の関係が下記式(5)を満たすようにする事が、より好ましい。
本実施形態の反射防止膜では、この、R1とR2の抑制が同時に達成されるわけであるが、R2を抑制する方法として、第1の材料とマッチングした屈折率を有する材料に本実施形態の反射防止膜が有する微細構造(凸部)を形成する方法と、メソ構造体に微細構造(凸部)を形成した後に、メソ孔内に、適切な屈折率を有する材料を量を制御して導入してすることで構造体と基体の屈折率をマッチングさせる方法とがあるということである。図8(d)は、中空のメソ孔を有するシリカメソ構造体の細孔内に酸化チタンを導入した場合の屈折率の変化を示すグラフである。図からわかるように、元のシリカメソ構造体の空孔率、導入する酸化チタンの量によって屈折率が精密に制御できる。ここでは酸化チタンの導入に関する例を示したが、細孔内に導入する材料を変化させることで、同じ空孔率のメソ構造体の導入量に伴う屈折率変化の割合を変化させることが可能である。
このように、形成した、隣接する前記凸部の錐面同士が結合しており、前記錐面同士が結合する部分が前記基体の表面よりも前記反射防止膜側にあり、前記錐面同士が結合する部分と前記基体との距離が一定でないことが好ましい。これは、錐面同士が結合する部分と前記基体との距離が一定でないことにより、基体と反射防止膜の界面での屈折率変化率が小さくなり、より反射防止効果が高まるからである。
また、本実施形態の反射防止膜が有する構造体がメソ構造を有する場合には、反射防止膜の前記基体と接触する層がメソ構造を有しており、前記基体の屈折率をna、前記反射防止膜を構成する層のうち前記基体と接触する層の屈折率をnbとした時に、
0≦|na−nb|≦0.05
であることが好ましい。
これは、基体と接触する構造体の屈折率が基体の屈折率にマッチングするように空孔率を制御するもしくはメソ孔内に他の材料を材質と量を制御して導入することによって、本実施形態の反射防止膜と基体とを有する光学部材における、基体と、反射防止膜の界面の屈折率差が0.05以下となり、かつ構造体が有する凸部の先端における空気と構造体との間の緩やかな屈折率変化により、高い反射防止効果を実現することができるからである。
基体の表面に存在する本実施形態の反射防止膜を有する光学素子の基体は、可視光を集光する基体(すなわち凸レンズ)もしくは可視光を発散させる基体(すなわち凹レンズ)であることが好ましい。このような場合、特に反射防止効果が高い。
さらに、基体と、本実施形態の反射防止膜を有する光学部材において、反射防止膜が有する構造体がメソ構造を有し、構造体のメソ孔の内部に有機材料もしくは無機材料が存在する場合には、メソ構造のメソ孔は、基体の法線方向に周期的に配向していることが好ましい。これを言い換えると、反射防止膜が有する構造体がメソ構造の基体に対する結晶学的方位が一方向であるとも表現することもできる。このような構造とすることで、メソ孔の内部に有機材料もしくは無機材料を充填する際に、充填量を制御しやすくなる。
<第五の実施形態>
本実施形態の撥水性膜は、第一の実施形態に記載の構造体のメソ孔の内部に有機材料が存在する構造体を有する撥水性膜である。
すなわち、本実施形態の撥水性膜は、表面に複数の凸部を有する構造体を有し、前記凸部がメソ構造を有し、前記メソ構造がメソ孔を有する構造であり、前記メソ孔の内部に有機材料が存在することを特徴とする撥水性膜である。
本実施形態の撥水性膜の構造を図2に模式的に示す。
本実施形態の撥水性膜は、構造体が有するメソ孔の内部に有機材料が存在するが、メソ孔の内部に存在する有機材料は疎水性官能基を有することが好ましい。ここで、メソ孔の内部に存在する有機材料は全てのメソ孔に存在していても良く、一部のメソ孔にのみ存在していても良い。また、全てのメソ孔の表面にのみ存在していても良く、一部のメソ孔の表面にのみ存在していても良い。メソ孔の表面にのみ疎水性官能基を有する有機材料が存在している場合は、メソ孔の表面が疎水性官能基で修飾されていると表現することもできる。さらに、メソ孔の表面が疎水性官能基で修飾されかつメソ孔の内部に疎水性官能基を有する有機材料が存在していても良い。
これを詳細に図4の模式図を用いて説明する。
メソ孔の内部に有機材料が存在するとは、図4(a)のように、有機化合物を成分として含む有機材料13がメソ孔内に存在する場合、および、図4(b)のように、メソポーラス材料の表面が疎水性官能基14などの有機材料で修飾されている場合のいずれをも含む。疎水性官能基による修飾は、メソ孔表面のみならず、メソ孔を疎水性官能基が埋め尽くしていても良い。また、導入量や修飾量は、図4(c)のように、必ずしも一様でなくても良い。図4(b)は、メソ孔の内壁が、完全に疎水性官能基によって覆われているように描かれているが、被覆率が不完全で、部分的にメソ孔の細孔壁が露出していても良い。完全に疎水性官能基によって覆われていなくても疎水性の官能基が、アルキル基、若しくはフルオロアルキル基を含む場合、撥水効果が顕著である。
以下に、メソ孔表面に形成される官能基の例を示す。但し、本発明に使用可能な官能基はこれらに限定されるわけではない。各修飾基は、酸素原子を介して、前記メソポーラス膜の主骨格と共有結合を形成していることが好ましい。下記に列挙した官能基の例におけるnは、修飾基中のケイ素原子に直接結合している疎水基の数を示す。これらの修飾基を導入する材料は、シランカップリング剤が好ましく、これらの官能基を有するアルコキシド、もしくはハライドが好ましく用いられる。疎水性修飾基をメソポーラス膜中へ導入する方法に制限は無く、化学気相成長法、疎水性修飾基の原料を含む溶液中への浸漬などが用いられる。
本実施形態の撥水性膜は、その微細な特徴的表面形状と、メソ孔内部に存在する有機材料の疎水的性質により、優れた撥水性能を有することになる。本実施形態の撥水性膜は、機械的衝撃や摩耗によって、表面層が部分的に破壊された場合にも、内部に存在する有機材料が表面に露出することになるため、耐久性に優れるという特長を有している。
また、本実施形態の撥水性膜は、前記複数の凸部が、凹凸形状を有する表面に存在し、前記複数の凸部の周期および高さよりも前記凹凸形状の周期および高さが大きいことが好ましい。このような場合、撥水性膜を複数の層で構成し、複数の凸部を有する層aの表面に、前述の構造体を有する層bが存在し、前記層aが有する一つの凸部の表面に層bが有する複数の凸部が存在する構造としても良い。
このような場合、見掛け上の表面積が増加することにより顕著な撥水効果が発揮されることがある。本実施形態の撥水性膜が有する複数の凸部は、先述したように、マスクを設置せずに形成することができる。その結果、従来のマスクを用いる方法では凸部の形成が困難であった、非平坦面に対しても、微細な凸部を均一に形成することができる。表面に凸部を有する撥水性膜においては、疎水性の官能基で修飾された表面の面積が大きくなるほど、高い撥水効果を示すことが知られている。そのため、先述の凸部よりも大きな周期と高低差を有するような第1の凹凸形状をあらかじめ表面に形成した上で、第1の凹凸形状の表面に、微細な凸部を形成することは、見掛け上の表面積を増加させる。その上で疎水性官能基により凸部の表面及びメソ孔の表面を修飾することで、より表面の撥水性に優れた撥水性膜を得ることができる。これについて図19を用いて説明する。
図19(a)は、基体1902上に、円錐状の第1の凹凸形状(先端間の平均間隔:p´、先端部の高さ:H´)を形成し、その表面を、メソ構造を有し、メソ構造におけるメソ孔の少なくとも一部に有機材料が存在する複数の微細な凸部を有する構造体1901(先端間の平均間隔:p、先端部の高さ:H)とした、本実施形態の撥水性膜の一例を示す模式図である。この時、pよりもp´を大きく、かつHよりもH´を大きく設計することにより、表面の形状がフラクタル構造に似た形となる。その結果、見掛け上の表面積が増加し、結果として表面の撥水性をさらに高めることができる。なお、図19(a)において、H´は、第1の凹凸形状のうち、ある1周期に相当する領域内において、先端部の高さの最大高低差を示すと定義する。第1の凹凸の形状としては、矩形状のものも好ましく用いることができる。この場合、メソ孔の内部に有機材料を有する第一の実施形態に記載の構造体を形成することによって図19(b)に模式的に示すような、構造の膜が得られる。この場合においても、先述の図19(a)と同様に、pよりもp´を大きく、かつHよりもH´を大きく設計することにより、見掛け上の表面積が増加し、結果として表面の撥水性をさらに高めることができる。
このような第一の凹凸形状を形成する際のp´の上限値には特に制限は無いが、現実的に撥水性膜の表面に発生する水滴の大きさを考慮すると、撥水性の向上効果が十分に確認できるp´としては1mm程度以下が好ましい。また、上記第一の凹凸形状を形成する際のH´の上限値についても特に制限は無いが、第一の凹凸形状の作製プロセスの難易度などを考慮すると、H´は10μm以下程度であることが望ましい。
本実施形態の撥水性膜が有する構造体における、メソ構造体の壁部を構成する物質は、安定性や、表面修飾の容易性等から、酸化ケイ素であることが好ましい。
また、上述の本実施形態の撥水性膜は、その表面での、水滴に対する接触角が、150度以上であると定義する。この大きな接触角は、凹凸を有しない平坦な表面の基体では、表面の疎水性をいかに大きくしても達成できない値である。
<第六の実施形態>
本実施形態の質量分析用基板は、導電性を有する基体と、該基体の表面に存在するメソ構造の壁部が酸化チタンである第一もしくは第二の実施形態に記載の構造体と、を有する質量分析用基板である。
また、本実施形態に含まれる別の形態の質量分析用基板は、導電性を有する基体と、該基体の表面に存在する凸部が酸化チタンからなる第三の実施形態に記載の構造体と、を有する質量分析用基板である。
この材質に関する制約は、酸化チタンが導電性を有していること、及び質量分析の励起用レーザー光の波長域に強い吸収を有することの2つの要請による。細孔壁を形成する酸化チタンは、非晶質であっても、一部が結晶化していても良いが、微結晶を含む場合の方が、イオン化効率がさらに増大し、S/N比が向上するために好ましい。
このため、光学界面の急峻さが低下する結果、構造体表面におけるプローブ光の反射を防ぐことができる。すなわち、本実施形態の質量分析用基板は、イオン化に伴う検体試料の破壊を防ぐ役割を有する微細な構造を保持したままで、反射を防止することで、イオン化の効率を向上させることが可能である。本実施形態の質量分析用基板がメソ構造を有し、メソ構造のメソ孔内部が空隙である場合にはもうひとつの別の利点がある。それは、微細構造を形成したことにより膜の比表面積が増える、即ちメソ細孔の開口部が増えるために、レーザー照射によってイオン化された検体分子が、それらが保持されていたメソ細孔から、脱離し易くなるという効果である。本実施形態の質量分析用基板が、内部が空隙であるメソ孔を有する場合のメソポーラス酸化チタン膜の細孔径は、検出対象の物質のサイズに合わせて最適化するのが良い。典型的な細孔径は5ナノメートル以上であり、特に分子サイズの大きな生体関連分子の検出の場合には、10ナノメートル以上のものが好ましく使われる場合が多い。細孔径は、先述のように使用する界面活性剤の種類と溶液組成によって制御することが可能である。
<第七の実施形態>
本実施形態の位相板は、第一の実施形態または第二の実施形態に記載の構造体における、メソ孔がシリンダー状であり、かつ、メソ孔の配向方向が構造体の厚さ方向に垂直な面において一つの方向に制御されている構造体で構成される。この構造においては、メソ孔に平行な方向と垂直な方向では、見かけの密度が異なるために、上記2つの方向で屈折率の異なる、つまり複屈折性を有するメソ構造体薄膜を得ることができる。この場合、上記2つの方向での屈折率差は、細孔壁を形成する材料の屈折率が高い程大きく、また、細孔内が空洞である場合に大きい。これらの、配向性の中空メソ構造体薄膜は、複屈折性を有するため、その複屈折の値に応じて膜厚を変化させることで、所望の特性を有する位相板として機能する。
例えば、複屈折の値Δnが0.1であれば、膜厚を1μmとすることでレターデーションを100nmとすることができ、その膜は、波長400nmの光に対して1/4波長板として機能し、直線偏光を円偏光に変換することが可能となる。
このような、複屈折性を有するメソ構造体薄膜の表面を、第一の実施形態または第二の実施形態に記載した形状の構造体とすることによって、膜表面での反射を抑制した、より特性の優れた位相板とすることが可能である。
次に、第一〜第三の実施形態に記載の構造体の製造方法の例について詳しく説明する。
第三の実施形態に記載の構造体は、例えば、反応ガスを用いて、マスクを用いずに無機酸化物をプラズマエッチングして、前記無機酸化物に先端間の平均間隔が400nm以下でありかつ底部から先端に向う方向に垂直な面で切断した時の断面の面積が前記方向に沿って小さくなる形状を有する複数の凸部を形成する工程を有する構造体の製造方法により形成することができる。このような工程を有する構造体の製造方法の場合、プラズマエッチングによって無機酸化物に、先端間の平均間隔が400nm以下でありかつ底部から先端に向う方向に垂直な面で切断した時の断面の面積が前記方向に沿って小さくなる形状を有する複数の凸部が形成され、第三の実施形態に記載の構造体を得ることもできる。
プラズマエッチングに用いられるガス種は、プラズマによりイオン化して前記無機酸化物と化学反応し、揮発性の化合物を形成することで、エッチングを進行させる。プラズマエッチングの為のプラズマ生成手法としては、容量結合、誘導結合(ICP)、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、磁気中性線放電(NLD)などの公知の方法によるものを使用することができるが、比較的簡単な装置構成にて、10Pa以下の低いガス圧力で高密度(1012個・cm‐3)なプラズマが得られるICP法が好ましく用いられる。無機酸化物のプラズマエッチングに用いるガスは、フッ素を含有しているものが好ましく、例示するとSFなどの硫化物、CxFyにより表されるフルオロカオーボン系のガスが用いられる。
上記プラズマエッチングの条件を適切に制御することで、無機酸化物の表面に複数の凸部を形成することができる。ここで記載する凸部は、底部16から先端17に向う方向18に垂直な面19で切断した断面の面積が方向18に沿って小さくなる形状であり、前述したように、凸部が錐体部である場合には、錐体形状もしくは錐体の先端が一部欠落した形状(錐体の錐面を延長した時に形成される仮想の錐体の高さを1とした時に、仮想の錐体の先端から欠落した部分のうち最も仮想の先端から遠い箇所までの距離が1/7以下となる形状)である。
また、ここで記載するエッチングの条件とは、ガスの圧力、プラズマ形成のために印加する高周波電界のパワー、エッチングする対象を置く陰極に印加する高周波電界のパワー、エッチング時間、基板温度等を指す。典型的には、ガスの圧力は0.05Pa〜20Pa程度、プラズマ形成のために印加する高周波電界のパワーは100〜500W、エッチングする対象を置く陰極に印加する高周波電界のパワー密度は0.1〜2.5W・cm‐3、エッチング時間は10秒〜5時間、基板温度は室温〜200℃である。
第三の実施形態に記載の構造体は、例えば、上記プラズマエッチング工程において、反応性ガス成分の少なくとも一部(一部若しくは全部)を、無機酸化物に含有させながらエッチングするものである。このことにより、無機酸化物と反応性ガスに含まれる成分とが結合し、結合した部分とその他の部分とのエッチング耐性の差によって、無機酸化物に複数の凸部を有する微細構造体を形成することができる。例えば無機酸化物がSiOである場合には、SiOxFyが局所的に形成され、この部分と、エッチングガスと反応していないSiOとのエッチング耐性の差により、SiOに複数の凸部を有する微細構造が形成される。
反応性ガスは、フッ素を含有しているものが好ましく、例示するとSFなどの硫化物、CxFyにより表されるフルオロカオーボン系のガスが用いられる。
上記エッチング条件は、凸部を形成する無機酸化物材料の材質に合わせて最適化する必要があるが、種々の条件を最適化し、エッチングレートが10nm/min以下になるようにした場合に、第三の実施形態に記載の構造体が好ましく形成される。
プラズマエッチングに供される無機酸化物は、バンドギャップ2.5eV以上かつ10eV以下の範囲となる物質が好ましく、中でも酸化ケイ素、酸化ジルコニウム又は酸化チタンのいずれかが最も好ましい。
次に、第一の実施形態に記載の構造体を製造する方法の一例を説明する。
第一の実施形態に記載の構造体は、例えば、メソ孔を有するメソ構造体を形成する工程と、前記メソ構造体にプラズマエッチングを行い、前記メソ構造体に凸部であって底部から先端に向かう方向に垂直な面で前記凸部を切断した時の断面の面積が、前記方向に沿って小さくなる形状を有する凸部を複数形成する工程と、を有することを特徴とする構造体の製造方法などにより作製することができる。
図1(c)を用いて説明すると、メソ孔13を有するメソ構造体15を形成する工程と、形成されたメソ構造体をプラズマエッチングする工程により、メソ構造体表面に複数の凸部12を形成することによって、第一の実施形態に記載の構造体11が製造される。
ここで、上記メソ構造体を形成する工程について詳しく述べる。メソ構造とは、前述した通り、メソ孔内部が空隙(中空)である、または、有機材料もしくは無機材料が存在するメソ孔が、細孔壁を形成する材料のマトリクス中に配されている構造を指す。
したがって、ここで記載するメソ孔を有するメソ構造体を形成する工程は、内部が空隙であるメソ孔を有するメソ構造体を形成する工程であっても良く、内部に有機材料もしくは無機材料が存在するメソ孔を有するメソ構造体を形成する工程であっても良い。メソ孔を有するメソ構造体を形成する工程が、内部に有機材料もしくは無機材料を有するメソ孔を形成する工程である場合には、メソ孔が形成される段階で内部に有機材料もしくは無機材料が存在していても良いし、内部が空隙であるメソ孔を有するメソ構造体を形成する段階と、内部が空隙であるメソ孔に有機材料もしくは無機材料を充填する段階とを有する工程であっても良い。
また、メソ孔を有するメソ構造体を形成する工程が、内部が空隙であるメソ孔を有するメソ構造体を形成する工程であり、メソ構造体に複数の凸部を形成する工程の後に、複数の凸部を有するメソ構造体の前記メソ孔に有機材料もしくは無機材料を充填する工程を有していても良い。
なお、本発明および本明細書において、「AにBもしくはCが存在する」と記載する場合には、AにBおよびCのいずれもが存在する場合も当然のことながら含まれる。また、AにBおよびCの複合体が存在する場合も含まれることは言うまでもない。
メソ孔を有するメソ構造体を形成する工程は、特に制限されるものではないが、例えば、両親媒性物質と、無機酸化物の前駆体を含む前駆体溶液から、ゾル−ゲル法のような方法で作製することができる。この場合、前記両親媒性物質の分子集合体が無機材料のマトリクス中に配されているメソ構造体が、自発的に形成される。つまり、分子集合体がメソ孔を形成する鋳型として機能する。この鋳型の両親媒性物質を、焼成や溶剤による抽出、オゾンによる酸化、紫外線照射等のプロセスによって除去することで中空の構造(メソ孔の内部が空隙である構造)とすることができ、中空になったメソ孔に両親媒性物質とは異なる材料を導入することも可能である。メソ孔に有機材料もしくは無機材料を導入する方法として、特に好ましく用いられる方法は、化学気相成膜法、レイヤーバイレイヤー成膜法、ゾル−ゲル法である。
メソ構造体を形成する際に用いる材料は、第一の実施形態に記載した通り、可視域において透明であることが好ましく、そのために、前記メソ構造体を形成する材料は、バンドギャップ2.5eV以上かつ10eV以下の範囲となる物質であることが好ましい。なお、バンドギャップ2.5eV以上かつ10eV以下の範囲の物質に、バンドギャップ5.0eV以上かつ10eV以下の範囲となる物質が含まれることは言うまでもない。酸化ケイ素、酸化ジルコニウム又は酸化チタンのいずれかであることが特に好ましい。
メソ構造体の作製に用いられる両親媒性物質は、特に限定されるものではないが、界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤分子の例としては、イオン性、非イオン性の界面活性剤を挙げることができる。このイオン性界面活性剤の例としては、トリメチルアルキルアンモニウムイオンのハロゲン化物塩を挙げることができる。トリメチルアルキルアンモニウムイオンのハロゲン化物塩のアルキル鎖の鎖長は好ましくは炭素数10〜22である。非イオン性の界面活性剤は、ポリエチレングリコールを親水基として含むものを用いることができる。ポリエチレングリコールを親水基として含む界面活性剤としては、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール‐ポリプロピレングリコール‐ポリエチレングリコールのブロックコポリマーを用いることができる。この疎水成分、親水成分の大きさを変化させること等により構造周期を変化させることが可能である。一般的に疎水成分、親水成分を大きなものとすることにより孔径を拡大することが可能である。なお、ポリチレングリコールアルキルエーテルの好ましいアルキル鎖長は炭素数10〜22であり、PEGの好ましい繰り返し数は炭素数で2〜50である。また、界面活性剤に加えて、構造周期を調整するための添加物を加えてもよい。この構造周期を調整するための添加物としては、疎水性物質を用いることができる。この疎水性物質としては、アルカン類、親水性基を含まない芳香族化合物を用いることができ、具体的にはオクタン等を用いることができる。
無機酸化物の前駆体としては、ケイ素や金属元素のアルコキサイド、ハロゲン化物を用いることができる。アルコキサイドとしては、メトキサイド、エトキサイド、プロポキサイド、または、その一部がアルキル基に置換されたものを用いることができる。ハロゲンとしては、塩素が最も一般的に用いられる。
第一の実施形態に記載の構造体が有するメソ構造は、例えば、上述の前駆体溶液を塗布、またはキャストすることによって作製することができる。塗布の工程としては、ディップコート法、スピンコート法、ミストコート法等が一般的である。また、塗布工程とは異なる水熱合成法によって、本発明のメソ構造体を作製することも可能であり、この場合、前駆体溶液中に基板を保持し、不均一核発生−核成長によってメソ構造体が形成される。また、気相化学成長法によって成膜することも可能である。
さらに、第一の実施形態に記載の構造体が有するメソ構造は、構造が異なる複数のメソ構造であっても良い。このような場合、メソ孔を有するメソ構造体を形成する工程において、使用する界面活性剤種や界面活性剤濃度を変化させた前駆体溶液を、複数層塗布する等のプロセスを用いることで、構造の異なるメソ構造を有する構造体を形成することができる。
メソ構造体にプラズマエッチングを行い、前記メソ構造体に複数の凸部を形成する工程は、マスクを用いずに行うことが好ましい。ここで記載するマスクとは、メソ構造体をエッチングする工程において、部分的にエッチングのなされない領域を形成するために、エッチング工程において、凸部を形成する対象であるメソ構造体の膜とプラズマの間に設置され、部分的にメソ構造体のプラズマへの暴露を防ぐ働きをするもので、メソ構造体上にフォトリソグラフィーやナノインプリント等の方法によって形成するレジストパターンや、孔のあいた遮蔽板等を含む。
したがって、ここで記載するマスクは、これらのうち、意図的に形成、または設置をするもので、後述するような、プラズマエッチングの工程において、メソ構造体上に自発的に形成するコンタミネーションのようなものは、マスクの定義には含まれないものとする。
前述のプラズマエッチングは、前記メソ構造体を形成する材料と反応する反応性ガスを用いて、メソ構造体に反応性ガスの成分を含有させながらエッチングするエッチング方法であることが好ましい。無機酸化物材料をエッチングして形成される、前述の構造体の製造の場合と同様、このことにより、前記反応性ガスの少なくとも一部を前記無機酸化物に含有させて前記無機酸化物と前記反応性ガスに含まれる成分との結合部分を形成し、前記結合部分とその他の部分とのエッチング耐性の差を利用して複数の凸部を有する微細構造体を形成することができる。反応性ガスとしては、フッ素を含むガスであることが好ましい。例えばメソ孔を有している材料がSiOである場合には、SiOxFyが局所的に形成され、この部分と、エッチングガスと反応していないSiOとのエッチング耐性の差により、SiOに微細構造である複数の凸部が形成される。このことは、例えば、本発明におけるプラズマエッチング工程の時間に伴う、メソ構造体表面の組成分析により確認される。
図9は、フッ素を成分として含むエッチングガスを用いて、シリカメソ構造体のエッチングを行い、本発明の凸部を有する構造体を作製した場合の、プラズマエッチング時間に伴う膜表面において検出されるフッ素の量の変化を、エックス線光電子分光法によって分析した結果を表わすグラフである。この図より、エッチング時間に伴い、すなわち微細構造である複数の凸部を有する多孔質膜の膜厚(図9(b)中のtに相当)が減少するとともに、フッ素の量が徐々に増加していくことが確認される。エックス線光電子分光法の深さ方向分析を行うことにより、フッ素原子が膜表面のみならず、膜の内部にも存在していることが確認され、特に多孔質体場合には、基体との界面近傍においてもフッ素原子の含有が確認できる。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置から、フッ素原子は多孔質体の主成分となる原子と結合して存在している事が確かめられる。
前述のメソ構造体をプラズマエッチングする工程の前には、前記メソ構造体の表面を有機材料で修飾する工程を有することが好ましい。メソ構造体の表面を有機材料で修飾する工程を有することにより、凸部のアスペクト比(H/D)を変化させることができ、多くの場合アスペクト比を増大させることができる。上記表面を有機材料で修飾する工程は、具体的には、有機物により表面を被覆する工程や、有機物で表面の少なくとも一部を終端化する工程などを意味するが、本発明において好ましく用いられるのは表面の一部を有機化合物で終端化させる工程である。ここで、終端化とは有機系官能基が共有結合を介して表面に固定する事であり、赤外線吸収スペクトルや光電子分光法による結合状態の分析により確認する事ができる。表面の一部を有機化合物で終端化させる工程は、凸部を有する微細構造体の表面がOH基、COOH基、等の極性が強く界面エネルギーを大きくする傾向のある官能基を有している場合に特に有効であり、極性を弱める効果がある有機系官能基を有する有機物で表面を修飾し界面エネルギー低下させる目的で行うものである。そのような有機系官能基としては、C、H原子からなるアルキル基や、C、F原子からなるフルオロカーボン類を挙げる事ができる。この理由から、前記有機材料としては特にアルキル基を有するものであることが好ましい。このような有機化合物としては、上記官能基を有し、かつメソ構造体の表面と反応して結合を形成する活性基を有している物質が好ましく、たとえばアルコキシドやハロゲン化物などを用いる事ができる。修飾に用いる有機化合物のサイズは、メソ構造体中に効率よく前記有機化合物分子を供給する目的から、メソ構造体の構造やメソ孔の径などを鑑みて決定する。具体的には、修飾に用いる有機化合物は、SiX4-yの構造で示される化合物であることが好ましく、メソ構造体の表面を有機化合物で修飾する工程は、下記一般式(1)で示される化合物を含む雰囲気に曝す工程、もしくは、上記化合物を含む液体を塗布する工程であることが好ましい。
SiX4-y 一般式(1)
(ただし、式(1)において、Xはハロゲン、若しくはアルコキシ基を示す。Rはアルキル基を示し、yは1〜3のうちのいずれかの整数である。)
なお、yが2、または3の場合、前記Xは同種でも異種でも良い。また、yが1、または2の場合は複数のアルキル基を含むことになるが、それらは、同種でも異種でも良い。SiX4-yの構造で示される化合物としては、クロロトリメチルシランが特に好ましく用いられるが、本発明において、表面の少なくとも一部を有機化合物で終端化させる工程に用いる化合物は、これに限定されるわけではない。上記の修飾する有機化合物中の官能基を含む有機化合物の活性基と、メソ構造体表面を反応させる目的で、暴露中に加熱してもよい。加熱温度としては両者の組み合わせにより適宜最適化されるが、例えばメソ構造体の成分がシリカで、上記有機化合物がクロロトリメチルシランである場合には、室温から100℃以下の範囲が好ましい。有機化合物への暴露後、余剰な有機化合物を除去する目的で、終端化工程の後でメソ構造体をアルコールなどで洗浄する工程等を付与してもよい。
この様な有機化合物で表面を修飾することによって界面エネルギーが低下する結果、エッチング生成物が多孔質体膜上で凝集しやすくなり、部分的な加工速度差がより増加して、高いアスペクト比の凸部を有する微細構造体が得られるものと、本発明者らは推測している。
次に、第二の実施形態に記載の構造体を製造する方法の例について記載する。
第二の実施形態に記載の構造体の製造方法は、例えば、メソ孔を有するメソ構造体を形成する工程と、プラズマエッチング装置のエッチングチャンバーの一部を構成する材料を有する物質を堆積させながら前記メソ構造体をプラズマエッチングして表面に複数の凸部を有する構造体を形成する工程と、を有する構造体の製造方法により形成することができる。
なお、ここで記載する複数の凸部は、第二の実施形態で記載した通り、凸部の底部から先端に向かう方向に垂直な面で前記凸部を切断した時の断面が、前記方向に沿って小さくなる形状を有している。
メソ孔を有するメソ構造体を形成する工程は、第一の実施形態に記載の構造体の製造方法例におけるメソ孔を有するメソ構造体を形成する工程と同じである。
無機酸化物にプラズマエッチング装置のエッチングチャンバーの一部を構成する材料を有する物質を堆積させながらメソ構造体をプラズマエッチングして表面に複数の凸部を有する構造体を形成する工程は、エッチング工程において、プラズマ中で発生したイオンがエッチング装置内部の部材をスパッタする事により生じた物質をエッチング部材の表面に島状に堆積させるような条件でエッチングを行うことを意味する。プラズマエッチング時のプラズマ密度としては、ICP、ECR、NLDなどの公知の高密度プラズマ発生法により1011cm‐3以上のプラズマ密度とする事が望ましく、比較的簡単な装置構成にて、低いガス圧力で高密度(1012cm‐3)なプラズマが得られるICP法が好ましく用いられる。プラズマエッチングに用いるガスは、反応性ガスであることが好ましく、SFおよびCxFyにより表されるフッ素を含むガスであることがより好ましい。また、これらのガスを用いて0.05Pa〜1Paの範囲の低い圧力でプラズマを生成し、基板に印加されるバイアスRFパワー密度は0.12W/cm〜0.40W/cmの範囲とする事が望ましい。このような低圧力、低基板バイアス条件下では、発生させた高密度プラズマの電位と、エッチング室内に存在する部材の電位差が、基板とプラズマ間の電位差と大差なくなるために、エッチング室構成部材に入射するイオンの割合が増加する事に加え、低真空下では粒子の平均自由工程が長くなりエッチング室構成部材からスパッタリングにより叩き出された物質(コンタミネーション)が基板上に飛散するようになる。そして飛散したコンタミネーションが基板上に島状に堆積(堆積物にはコンタミネーションに加えエッチングガスの成分が含有される場合もある)し、部分的にエッチングを妨げる結果としてH/Dが2.0以上といったアスペクト比の高い微細構造が形成される。このプラズマエッチング装置内の部材を含むコンタミネーションは、前記メソ構造材料に比較して、前記プラズマエッチングによるエッチングレートが著しく小さい物質であることが望ましいため、金属元素を含む物質であることが好ましく、特にアルミニウムはフッ素系のガスにより蒸気圧の高い化合物が形成されないため(例えばAlF3のように不揮発性化合物が形成される)に、金属元素はアルミニウムであることが特に好ましい。
また、プラズマエッチングする際には、反応性ガスを用い、マスクを用いずに行うことが好ましい。
この方法を、図10を用いて詳しく説明する。図10において、1001は基板、1002はメソ構造体である。この製造方法において第二の実施形態に記載の構造体を作製する場合には、メソ構造体上に、島状に、エッチングチャンバーを構成する部材を含むコンタミネーション1003が堆積するような条件を選択する。この様に形成されたコンタミネーションは、プラズマエッチングに対する耐性が高く、コンタミネーションの形成された部分は殆どエッチングされることなく、非形成部のメソ構造体が選択的にエッチングされる結果、アスペクト比の大きい、複数の、底部から先端に向かう方向で切断した時の断面の面積が減少する形状のピラー状凸部1004を有する構造体を得ることができる。プラズマエッチング条件の調整により、前記ピラー状凸部の高さHの平均値が300nm〜600nm、頭頂部間の平均間隔pが20nm〜400nm、の範囲で比較的形状の揃った微細構造体を得る事ができる。本工程で形成した各凸は図5(c)のような規則性に乏しいランダムな配置をとり、かつ各凸部の面内密度分布としては図7(a)のように比較的均一であり、反射防止構造として用いた場合に好ましい構成とする事ができる。前記ピラー状凸部の間隔距離の分布は、正規分布に近い形となり、プラズマエッチング条件の調整により、各柱状構造間の平均間隔pと各ピラー状凸部の間隔の分布における標準偏差σとの比σ/pが、0.1<σ/p<0.5の範囲で適宜形成する事ができる。
第一〜第三のいずれかの実施形態に記載の構造体の凸部のアスペクト比を高めるためには、エッチングレートの遅い材料を利用することができる。これについて詳しく述べる。
先ず、メソ孔を有するメソ構造体から構成される第1の層の表面に、該第1の層よりもエッチングレートの小さい材料から構成される第2の層を形成し、この第2の層に対してマスクを使用せずに第1のプラズマエッチングを施し、前記第2の層に複数の凸部からなる微細構造体を形成する。次に、この様にして作製した第2の層に形成された微細構造体を介して、第2のプラズマエッチングを施すことにより、第1の層に複数の凸部を形成する。ここにおいて、前記第2の層に形成される複数の凸部からなる微細構造体は、第1のプラズマエッチングにおいて、前記第2の層を構成している材料と反応性ガスに含まれる成分が局所的に結合し、結合した部分と結合していな部分とのエッチング耐性の差を利用して形成されるものである。また、第2のプラズマエッチング後に第1の層に形成される複数の凸部は、底部から先端に向かう方向に垂直な面で前記凸部を切断した時の断面の面積が、前記方向に沿って小さくなる形状を有する凸部である。
この方法を、図11を用いて詳しく説明する。図11において、1101は基体、1102はメソ構造体である。この製造方法において本発明の構造体を作製する場合には、先ずメソ構造体上に、該メソ構造体よりもエッチングレートの小さい材料の層1103を形成する。そして、このエッチングレートの小さい材料の層に対して、マスクを使用せずにプラズマエッチングを施し、表面に複数の凸部からなる微細構造体1104を形成する。次に、この様にして作製した微細構造体1104を介してメソ構造体層のプラズマエッチングを行い、メソ構造体層に複数の凸部1106を形成する。多くの場合、エッチングレートの小さい材料の層のプラズマエッチングの条件と、メソ構造体のプラズマエッチングの条件は異なり、それぞれ、ガス種、ガス圧、プラズマパワー等を最適化する。上記、メソ構造体よりもエッチングレートの小さい材料、というのは、メソ構造体のエッチングを行う条件におけるエッチングレートの違いを意味する。この方法によって、エッチングレートの小さい材料の層の表面に形成される複数の凸部からなる微細構造体1104は、該材料と反応性ガスに含まれる成分が局所的に結合し、結合した部分と結合していな部分とのエッチング耐性の差を利用して形成される。このエッチングレートの小さい材料の複数の凸部からなる微細構造体を介してプラズマエッチングを行う場合、エッチングレートの差により、表面に一部前記エッチングレートの小さい材料が残存した状態で、メソ構造体のエッチングが進行することになる。すると、表面に島状に残存するエッチングレートの小さい材料1105がプラズマエッチングを局所的に阻害するため、アスペクト比の高い、複数の凸部を有する本発明の構造体1106を得ることができる。
上記製造方法において、メソ構造体から形成される第1の層を形成する材料は、可視光領域において透明であることが好ましいことから、バンドギャップ2.5eV以上かつ10eV以下の範囲の物質が好ましく用いられる、特に酸化ケイ素、酸化ジルコニウム又は酸化チタンのいずれかがとくに好ましく用いられる。また、上記、メソ構造体よりもエッチングレートの小さい材料すなわち第2の層を構成する材料としては、無機酸化物が好ましく用いられる。
以上記述した、構造体の製造方法においても、第1および第2のプラズマエッチングに使用される反応性ガスはフッ素を含むガスであることが好ましく用いられる。
また、このような構造体の製造方法により構造体を製造する工程と、製造された構造体を型として別の基体に前記構造体の形状を転写する工程と、を有する構造体の製造方法により、第一の実施形態に記載の構造体および第2の実施形態の構造体を製造することも可能である。
この製造方法を図12を用いて説明する。基体1201上に、複数の凸部を有する構造体を形成する材料の層1202を形成し、プラズマエッチングを加工手段とし、以上説明したいずれかの方法によって、第一〜第三のいずれかの実施形態の複数の凸部を有する構造体1203を形成する。次に、この構造体1203を完全に埋めるように材料1204を形成し、続いてもう一方の基体1205を密着させる。材料1204の材質、及び形成方法は、第一〜第三のいずれかの実施形態に記載の構造体の形状が正確に転写できる限りにおいて、特に限定はない。例示すると、流動性を有する樹脂のキャスト、流動性を有する無機材料前駆体のキャスト、真空成膜法、化学気相成膜法、レイヤーバイレイヤー成膜法等が好ましく用いられる。最後に、最初に作製した複数の凸部を有する構造体1203を除去すると、最後に形成した基体1205上に、最初に作製した構造体をポジとした場合のネガに相当する構造体が転写された、微細構造体が形成される。第一〜第三のいずれかの実施形態に記載の構造体を転写して、その相補的構造を有する構造体の製造方法は、上記説明と完全に一致しない、例えば追加工程が含まれる場合でも、本発明に包含されることは言うまでもない。追加工程とは、例えば、材料1204が1203除去後もその微細な構造を保持するために、複数の凸部を有する構造体1203を除去する前に、1203の型を取る工程において流動性を有していた材料1204を固める工程である。
上述したように、本製造方法によって作製された構造体は、プラズマエッチングによって形成された構造体をポジとした場合のネガに相当するものである。このネガに相当する構造は、プラズマエッチングで形成された構造体と相補的な構造を有するものであるが、このネガの構造を型に用いて、もう一度転写工程を行うと、最初の構造体と同一の、ポジの構造を有する構造体を得ることができる。このような構造体に製造方法は、すなわち、プラズマエッチングを用いて作製された、複数の凸部を有する構造体を型として、別の基体に前記構造体の形状を転写する工程と、該別の基体に転写して作製した構造体を型としてさらに他部材(基体)に転写する工程を有する構造体の製造方法である。
また、基体の表面に、以上説明した、第一〜第三の実施形態に記載の構造体の製造方法例に記載の方法により構造体を形成することで、基体と反射防止膜とを有する光学部材を製造することができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
実施例1では、石英ガラス基板上に成膜したシリカメソ構造体膜に微細構造体を形成し、反射防止構造を設けた光学部材とした例について記載する。本実施例の構造体は、図1において、基板14が石英、シリカメソ構造体が11及び15、シリカメソ構造体で形成された凸部が12の場合である。
先ず、本実施例の光学部材の製造方法を図1に沿って順を追って説明する。
(1−1)基板準備
基板14として、石英ガラス基板を準備した。
(1−2)シリカメソ構造体膜形成
(1−2−1)シリカメソ構造体膜の前駆体溶液調製
メソ構造体の前駆体溶液は、エタノール、0.01M塩酸、テトラエトキシシランを加え20分間混合した溶液にブロックポリマーのエタノール溶液を加え、3時間攪拌して調製される。ブロックポリマーとしては、エチレンオキサイド(20)プロピレンオキサイド(70)エチレンオキサイド(20)(以降、EO(20)PO(70)EO(20)と記載する(カッコ内は、各ブロックの繰り返し数))を使用する。エタノールにかえてメタノール、プロパノール、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリルを使用することも可能である。混合比(モル比)は、テトラエトキシシラン:1.0、HCl:0.0011、水:6.1エタノール:8.7、ブロックポリマー:0.0096とする。溶液は、膜厚調整の目的で適宜希釈して使用する。
(1−2−2)シリカメソ構造体膜の成膜
洗浄した石英ガラス基板14上に、ディップコート装置を用いて0.5mms−1の引き上げ速度でディップコートを行う。製膜後は、25℃、相対湿度40%の恒温恒湿槽で2週間、続いて80℃で24時間保持し、シリカメソ構造体膜15を形成した。本実施例で作製したシリカメソ構造体膜においては、メソ孔中には、有機物である、上記EO(20)PO(70)EO(20)が保持されている。このシリカメソ構造体膜断面を走査電子顕微鏡で観察したところ、本実施例で作製した膜中では、均一な径のシリンダー状のメソ孔が、ハニカム状に周期的に配置されていることが分かった。この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期8.0nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できた。
(1−3)プラズマエッチング
石英ガラス基板14上に形成したシリカメソ構造体膜に、ICP型のプラズマエッチング装置(samco社製;高密度プラズマICPエッチング装置:RIE−101iP)を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを実施し、凸部12を形成した。
反応性ガス:C
ガス流量:20sccm
圧力 :3Pa
ICPパワー:500W
Biasパワー:20W
エッチング時間:9分間
プラズマエッチング後のメソ構造シリカ膜表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=150nm、Θ=30度、p=100nm、T=60nm、H/D=1.5となるような凸部を表面に有する微細構造体が得られた。ここで、凸部の密度は3.1×1010個/cmと見積もられた。各凸部の間隔の分布はσ=32nmの正規分布であり、σ/pは0.32である。
それぞれの値については、Θ、H、T、Dについては電子顕微鏡の断面写真から、p及び密度については電子顕微鏡の平面写真を画像処理し、各凸部の先端位置の座標を取得する事により算出した。尚、Hについては原子間力顕微鏡を使用する事によって算出する事も可能であり、電子顕微鏡像から得た値と整合が取れる事を確認している。これらの値は、微細構造体を形成した領域内において、視野1μmサイズの電子顕微鏡写真を、領域内で偏りのないように20箇所撮影して、各値の平均値を算出して求めている。
プラズマエッチング後に微細構造体11について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が、微細構造体11内に含有されており、その量はSi原子比率で平均25%という値であった。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置からフッ素原子はSi原子と結合して存在している事が確かめられる。この事は、フッ素をメソ構造シリカ膜内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
ここで、比較として細孔を有していない密なシリカ膜を用いて、本工程と同じ条件でプラズマエッチングを施すと、表面に凸部は形成されず(H=5nm以下)、膜の深さ方向にフッ素原子も検出されない。また、シリカメソ構造体膜を用いても、Arガスを用いてプラズマエッチングを施した場合には、表面に凸部は形成されず(H=5nm以下)、膜の深さ方向にエッチングガス由来のアルゴン原子が検出されない。
このことは、プラズマエッチングのみにより複数の凸部を形成する本工程において、材料が、メソ孔を有するメソ構造体であること、及びエッチング工程がメソ構造体を形成する材料と反応する反応性ガスを用いて、ガスの成分をメソ構造体に含有させながらエッチングを進行させることが、本発明の構造体形成に重要な意味を有することを示している。
以上のようにして、石英ガラス基板14上に、反射防止構造11を形成した。
(1−4)反射率の測定
反射率の測定は、実施例1で作製した、複数の凸部を有する構造体を形成した石英ガラス基板に、ハロゲンランプを用いて光を垂直入射させ、基板表面(複数の凸部を有するシリカメソ構造体膜が存在する側)からの反射光を計測する事により行う。光の波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、実施例1で作製した基板表面の反射率は1.5%である。比較として反射防止構造を設けない、石英ガラス基板の反射率を同様な方法で測定すると5.0%であり、実施例1で作製した反射防止構造により反射率が低減されている事が確認される。これにより本実施例に示すように、メソ構造を備えた、複数の凸部を有する本発明の構造体は、反射防止膜として機能することが示された。
(実施例2)
実施例2では、石英ガラス基板上に成膜したメソポーラスシリカ膜に複数の微細凸部を有する構造体を形成し、反射防止構造を設けた光学部材とした例について記載する。本実施例の構造体は、図1において、基板14が石英、メソポーラスシリカが11及び15、メソポーラスシリカで形成された凸部が12の場合である。
実施例1の(1−1)から(1−2)と同じ方法で、石英ガラス基板14上にメソ構造シリカ薄膜を形成した((2−1)から(2−2−2))。
(2−2−3)多孔質化
形成したメソ構造体膜を、焼成炉にて大気雰囲気下で400℃4時間焼成し、鋳型として、細孔中に保持されていた有機成分を除去して、メソポーラスシリカ膜15とした。得られた膜の透過電子顕微鏡分析から、本実施例で作製したメソポーラスシリカ膜は、均一な径のシリンダー状のメソ孔がハニカム状に周期的に配置されていることが分かった。この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期6.0nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できた。
(2−3)プラズマエッチング
石英ガラス基板14上に形成したメソポーラスシリカ膜15に、ICP型のプラズマエッチング装置(samco社製;高密度プラズマICPエッチング装置:RIE−101iP)を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを実施した。
反応性ガス:SFガス
ガス流量:20sccm
圧力 :3Pa
ICPパワー:100W
Biasパワー:100W
エッチング時間:2分間
プラズマエッチング後のメソポーラスシリカ膜表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=60nm、Θ=30度、p=D=50nm、T=60nm、H/D=1.2となるような凸部を表面に有する微細構造体が得られた。凸部の密度は6.5×1010個/cmと見積もられた。各凸部の間隔の分布はσ=14nmの正規分布であり、σ/pは0.28である。
プラズマエッチング後に微細構造体11について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が、石英ガラス基板14との界面近傍に至るまで含有されていることがわかり、その量はSi原子比率で平均50%という値であった。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置からフッ素原子はSi原子と結合して存在している事が確かめられる。この事は、フッ素をメソポーラスシリカ膜の細孔内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。鋳型として用いた有機成分を除去したメソポーラスシリカ膜に複数の凸部を形成した、本実施例で作製した構造体では、鋳型である有機物が残存した状態のシリカメソ構造体膜に複数の凸部を形成した、実施例1で作製した構造体よりも、含有フッ素量が多かった。また、実施例1に比較して、短いプラズマエッチング時間で、本発明の構造体の形成が可能であった。
以上のようにして、石英ガラス基板14上に、本発明の複数の凸部を有する構造体11を形成した。
(2−4)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。実施例2で作製した、本発明の構造体を表面に形成した石英ガラスの反射率は2.5%となり、構造体を形成していない石英基板の反射率に比較して反射率が低減されている。これより、本実施例で作製した、メソポーラスシリカから構成される本発明の構造体は反射防止膜として機能することが示された。
(実施例3)
実施例3では、石英ガラス基板上に成膜したチタニアメソ構造体膜に微細構造体を形成し、反射防止構造を設けた光学部材とした例について記載する。本実施例の構造体は、図1において、基板14が石英、チタニアメソ構造体が11及び15、チタニアメソ構造体で形成された凸部が12の場合である。
(3−1)基板14として、石英ガラス基板を準備した。
(3−2)チタニアメソ構造体膜形成
(3−2−1)チタニアメソ構造体膜の前駆体溶液調製
チタニアメソ構造体膜の前駆体溶液は、12M塩酸とテトラエトキシチタンを混合した水溶液に、ブロックポリマーのブタノール溶液を加え、3時間攪拌することで調製される。ブロックポリマーとしては、実施例1、2で使用したのと同じ、EO(20)PO(70)EO(20)を使用した。混合比(モル比)は、テトラエトキシチタン:1.0、塩酸:2.0、水:6.0、ブロックポリマー:0.013、ブタノール:9.0とする。溶液は、膜厚調整の目的で適宜希釈して使用する。
(3−2−2)チタニアメソ構造体膜の成膜
洗浄した石英ガラス基板14上に、調整した溶液を滴下してスピンコーティングを行うことで、本実施例のチタニアメソ構造体膜を形成する。スピンコーティングは、25℃、相対湿度40%、基板の回転速度3000rpmの条件で15秒間行う。成膜後は、25℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽で30時間保持し、チタニアメソ構造体膜15を形成する。形成されたチタニアメソ構造体膜15の膜厚はおよそ550ナノメートルで、屈折率はエリプソメトリーにより1.5と求められる。本実施例で作製したチタニアメソ構造体膜においては、メソ孔中には、有機物である、上記EO(20)PO(70)EO(20)が保持されている。このチタニアメソ構造体膜断面を走査電子顕微鏡で観察したところ、本実施例で作製した膜中では、均一な径のシリンダー状のメソ孔が、ハニカム状に周期的に配置されていることが分かる。この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期8.4nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できる。
(3−3)プラズマエッチング
石英ガラス基板14上に形成したメソ構造チタニア薄膜15に、実施例1、2で用いたのと同じICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを施す。
反応性ガス:SF
ガス流量:20sccm
圧力 :3Pa
ICPパワー:100W
Biasパワー:20W
エッチング時間:7分間
プラズマエッチング後のチタニアメソ構造体膜表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=80nm、Θ=25度、p=60nm、T=200nm、H/D=1.33となるような凸部を表面に有する微細構造体が得られた。ここで、凸部の密度は6.5×1010個/cmと見積もられた。各凸部の間隔の分布はσ=14nmの正規分布であり、σ/pは0.23である。
プラズマエッチング後に微細構造体11について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が、微細構造体11内に含有されており、その量はTi原子比率で25%という値であった。この事は、フッ素をメソ構造チタニア膜内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
(3−4)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。本実施例3で作製した、本発明の構造体を形成した石英ガラスの反射率は2%となり、作製した反射防止構造により反射率が低減されている事が確認される。これより、本実施例で作製した、チタニアメソ構造体から構成される本発明の構造体は反射防止膜として機能することが示される。
(実施例4)
実施例4では、石英ガラス基板上に成膜したジルコニアメソ構造体膜に微細構造体を形成し、反射防止構造を設けた光学部材とした例について記載する。本実施例の構造体は、図1において、基板14が石英、ジルコニアメソ構造体が11及び15、ジルコニアメソ構造体で形成された凸部が12の場合である。
(4−1)
基板14として、石英ガラス基板を準備した。
(4−2)ジルコニアメソ構造体膜形成
(4−2−1)ジルコニアメソ構造体膜の前駆体溶液調製
ジルコニアメソ構造体膜の前駆体溶液は、12M塩酸と塩化ジルコニウムを混合した水溶液に、ブロックポリマーのブタノール溶液を加え、3時間攪拌することで調製される。ブロックポリマーとしては、実施例1〜3で使用したのと同じ、EO(20)PO(70)EO(20)を使用した。混合比(モル比)は、塩化ジルコニウム:1.0、塩酸:2.0、水:6.0、ブロックポリマー:0.013、ブタノール:9.0とする。溶液は、膜厚調整の目的で適宜希釈して使用する。
(4−2−2)ジルコニアメソ構造体膜の成膜
洗浄した石英ガラス基板14上に、調整した溶液を滴下してスピンコーティングを行うことで、本実施例のジルコニアメソ構造体膜を形成する。スピンコーティングは、25℃、相対湿度40%、基板の回転速度3000rpmの条件で15秒間行う。成膜後は、25℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽で30時間保持し、ジルコニアメソ構造体膜15を形成する。形成されたジルコニアメソ構造体膜15の膜厚はおよそ400ナノメートルである。エリプソメトリーにより屈折率は1.4と求められる。本実施例で作製したジルコニアメソ構造体膜においては、メソ孔中には、有機物である、上記EO(20)PO(70)EO(20)が保持されている。このジルコニアメソ構造体膜断面を走査電子顕微鏡で観察したところ、膜中では、均一な径のシリンダー状のメソ孔が、ハニカム状に周期的に配置されていることが分かる。この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期8.6nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できる。
(4−3)プラズマエッチング
石英ガラス基板14上に形成したメソ構造ジルコニア薄膜15に、実施例1〜3で用いたのと同じICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを実施す。
反応性ガス:SF
ガス流量:20sccm
圧力 :3Pa
ICPパワー:100W
Biasパワー:20W
エッチング時間:7分間
プラズマエッチング後のジルコニアメソ構造体膜表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=60nm、Θ=30度、p=50nm、T=200nm、H/D=1.2となるような凸部を表面に有する微細構造体が得られた。ここで、凸部の密度は6.5×1010個/cmと見積もられた。各凸部の間隔の分布はσ=15nmの正規分布であり、σ/pは0.30である。
プラズマエッチング後に微細構造体11について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が、微細構造体11内に含有されており、その量はZr原子比率で25%という値であった。この事は、フッ素をメソ構造ジルコニア膜内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
(4−4)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。本実施例4で作製した、本発明の構造体を形成した石英ガラスの反射率は2%となり、作製した反射防止構造により反射率が低減されている事が確認される。これより、本実施例で作製した、ジルコニアメソ構造体から構成される本発明の構造体は反射防止膜として機能することが示された。
(実施例5)
実施例5では、実施例1と同様な方法でガラス基板上に作製した、複数の凸部を有する本発明の構造体を型として用い、モールド成形により微細構造体の形状を、別の部材に転写することで、本発明の構造体、及びどれを用いた光学部材を製造する方法について記載する。以下、本実施例の光学部材の製造方法を図12に沿って説明する。
実施例1の(1−1)から(1−3)までと同様な方法で、石英基板1201上に本発明の構造体1203を作製する。
(5−4)モールド成形
前記、構造体を形成した基板上に、50μmのスペーサーを設け、紫外線硬化樹脂1204(RC−C001:大日本インキ化学工業製)を滴下する。続いてカップリング処理を施した石英ガラス基板1205を前記紫外線硬化樹脂1204上にゆっくりと接液した後、圧着させ、ゆっくりと気泡が入らないようにプレスし、石英ガラス基板1205と石英基板1201上に形成した微細構造体1203との間に前記紫外線硬化樹脂1204を均一に充填させる。続いて、充填させた紫外線硬化樹脂1204に中心波長365nmの紫外線を40mWで750秒間照射し硬化させた後、硬化物1204を微細構造体1203表面から剥離し、石英ガラス基板1205上に微細構造が表面に転写された樹脂1204を得る。この転写された微細構造は、実施例1において作製された複数の凸部を有する構造体の構造をポジとした場合、そのネガに相当する構造を有する。
(5−5)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。本実施例5において、上記転写工程を用いて作製した、本発明の構造体を形成した石英ガラスの反射率は4%である。以上より、本実施例で作製した反射防止構造により反射率が低減されている事が確認される。これにより本実施例に示すように、メソ構造を備えた、複数の凸部を有する本発明の構造体は、反射防止膜として機能することが示される。
(実施例6)
実施例6では、実施例5において、転写工程を用いて石英ガラス基板上に作製した、複数の凸部を有する本発明の構造体をさらに型として用い、モールド成形を行い別の部材に転写することで、実施例1で作製した構造体と同じ形状を有する、本発明の構造体を作製する方法について記載する。
(6−4)モールド成形
実施例5の(5−4)までと同じ工程により、石英基板上に、光硬化性樹脂から構成される、実施例1で作製した構造体のネガに相当する構造を有する構造体を形成する。この樹脂の表面に、剥離層としてアモルファスカーボンを成膜した後に、実施例5で行ったのと同じ手法により、紫外線硬化樹脂を滴下する。続いて実施例5で記載したのと同様に、カップリング処理を施した石英ガラス基板を前記紫外線硬化樹脂上にゆっくりと接液した後、圧着させ、ゆっくりと気泡が入らないようにプレスし、石英ガラス基板と実施例5で石英基板上に形成した硬化した樹脂から構成される微細構造体との間に前記紫外線硬化樹脂を均一に充填させる。これに続いて、充填させた紫外線硬化樹脂に中心波長365nmの紫外線を40mWで750秒間照射し硬化させた後、2つの樹脂を、前記カーボン剥離層を用いて分離し、石英ガラス基板上に微細構造が表面に転写された樹脂を得る。この転写された微細構造は、型取りを2度繰り返しているために、実施例1において作製された複数の凸部を有する構造体と実質的に同一の、複数の凸部を有する構造を有している。
(6−5)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。本実施例6において、上記2段階の転写工程を用いて作製した、本発明の構造体を形成した石英ガラスの反射率は1.2%である。以上より、本実施例で作製した反射防止構造により反射率が低減されている事が確認される。これにより本実施例に示すように、メソ構造を備えた、複数の凸部を有する本発明の構造体は、反射防止膜として機能することが示される。
(実施例7)
実施例7では、光学ガラス基板上に成膜したメソポーラスシリカ膜に、複数の微細な凸部を有する構造体を形成した後、メソ孔内にチタニアを導入することにより、構造体と光学ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。本実施例の構造体は、図1において、基板14が光学ガラス、11、15、及び凸部12がメソ孔内にチタニアを形成したメソポーラスシリカである。
本実施例の製造工程を図23を用いて説明する。
(7−1)基板準備
基板14として屈折率1.6の光学ガラス基板を準備する。
(7−2)メソポーラスシリカ膜形成
実施例1の(1−1)から(1−2)と同じ方法で、光学ガラス基板14上にシリカメソ構造体膜を形成し、実施例2の(2−2−3)と同じ方法によって細孔内の有機物を除去して内部が空隙であるメソ構造体(メソポーラスシリカ膜)15とする。得られた膜の透過電子顕微鏡分析から、本実施例で作製したメソポーラスシリカ膜は、均一な径のシリンダー状のメソ孔がハニカム状に周期的に配置されていることが分かる。この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期6.0nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できる。膜厚は約500nmである。本工程で作製したメソポーラスシリカの屈折率は、エリプソメトリーにより1.22と求められる。
(7−3)プラズマエッチング
光学ガラス基板14上に形成したメソポーラスシリカ膜15に、実施例1〜6で用いたのと同じICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを施す。
反応性ガス:SFガス
ガス流量:20sccm
圧力 :3Pa
ICPパワー:100W
Biasパワー:100W
エッチング時間:2分間
プラズマエッチング後のメソポーラスシリカ膜表面には円錐状の複数の凸部12が互いに隣接するように形成され、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=60nm、Θ=30度、p=50nm、T=80nm、H/D=1.2となるような凸部を表面に有する微細構造体11が得られる。形成された微細構造体の走査電子顕微鏡写真を図13に示す。13(a)は断面の写真、13(b)は表面の写真である。凸部の密度は6.5×1010個/cmと見積もられる。凸部の間隔の分布はσ=14nmの正規分布であり、σ/pは0.28である。
このプラズマエッチング後の微細構造体11について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が、光学ガラス基板14との界面近傍に至るまで含有されていることがわかり、その量はSi原子比率で50%という値となる。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置からフッ素原子はSi原子と結合して存在している事が確かめられる。この事は、フッ素をメソポーラスシリカ膜内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
(7−4)メソ孔内への無機材料導入
続いて、図14に示すような減圧化学気相成膜(CVD)装置を用いて、メソポーラスシリカの細孔内へチタニアを導入し、屈折率の精密制御を行い、構造体を得る。図14において、1401は真空容器、1402は前駆体が格納された試験管、1403はニードルバルブ、1404はメインバルブ、1405はターボ分子ポンプ、1406はドライスクロールポンプ、1407は真空計、1408は基板ホルダである。
CVDの前処理として、工程(7−3)までに作製した、メソポーラスシリカより成る微細構造体を形成した光学ガラス基板を、大気雰囲気下400℃で4時間焼成した後、真空容器1401内の基板ホルダにセットし2×10−5Paまで排気した後、300℃で3時間加熱を行い、表面吸着水の除去、及び表面の清浄化を行う。
基板を室温に戻した後、真空容器内1401へチタンイソプロポキシドを5Paの圧力となるまで導入し減圧CVDを行う。このCVD工程において、メソポーラスシリカのメソ孔表面に存在するシラノール基がチタンイソプロポキシドと反応し、Si−O−Ti結合を形成する。
7時間後に真空容器内から基板を取り出して、エックス線光電子分光法により、微細構造体の表面から基板界面方向へと深さ方向分析を行うと、微細構造体表面から基板界面近傍まで比較的均一にTi原子が導入されていることがわかり、Ti原子はTi/Si原子比率で73%程度導入されていることがわかる。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置からTi原子は酸化チタン(チタニア)TiOとして存在している事が確認できる。CVD後の構造体の走査電子顕微鏡観察の結果、構造体の形状には顕著な変化は認められず、細孔が観察されにくくなっていたことから、酸化チタンはメソ孔内に形成されていることがわかる。
本実施例では、CVD条件、特にCVDを行う時間に対して、図8(d)に示したような屈折率のチタニア導入量依存性に関する検量線を求めておく事で、チタニア導入後の構造体の実効屈折率が、使用した光学ガラスの屈折率1.6と同じになるようにチタニア導入量を制御している。比較のために本実施例で使用したメソポーラスシリカから構成される構造体に対して同じ条件において5時間、及び3時間CVDを行った場合には屈折率はそれぞれ、1.5、および1.4となり、本工程の減圧CVD法によってチタニア導入量の制御を精密に行い、屈折率を精密に制御できることが示される。
以上述べたように、本工程によって、メソポーラスシリカから構成される本発明の複数の凸部を有する構造体の屈折率を、チタニアの導入によって、基板の屈折率1.6にマッチングできることが示される。
(7−5)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入したメソポーラスシリカから構成される本発明の構造体を形成した、光学ガラスの反射率は2%と求められる。比較として本実施例の(7−1)から(7−3)まで同様な方法で作製し、(7−4)のチタニアのメソ孔内導入工程を省略して、中空のメソ孔を有するメソポーラスシリカから構成される本発明の微細構造体を形成した光学ガラスの反射率を測定すると4%であり、屈折率制御の効果により反射率が低減されている事が確認される。
(実施例8)
実施例8では、実施例7における工程(7−4)の、メソ孔内へのチタニア導入を、減圧CVDの代わりに、レイヤーバイレイヤー成膜法で行う例について記載する。
(7−1)から(7−3)までは、実施例7と同じ工程で、メソポーラスシリカより構成される複数の凹凸を有する構造体を作製する。
(8−4)メソ孔内への無機材料導入
メソ孔内へのチタニアの導入、及びそれによる屈折率の精密制御は、実施例7で使用したものと同じ装置を使用して行う。
レイヤーバイレイヤー成膜の前処理として、メソポーラスシリカより成る微細構造体を形成した光学ガラス基板を、大気雰囲気下400℃で4時間焼成した後、真空容器1401内の基板ホルダにセットし2×10−5Paまで排気した後、300℃で3時間加熱を行い、表面吸着水の除去、及び表面の清浄化を行う。
基板を室温に戻した後、真空容器内1401へチタンイソプロポキシドを2Paの圧力となるまで導入し30分保持し、再び1×10−4Paまで排気した後、真空ポンプのバルブ1404を閉じ、チャンバーを大気開放し常圧に戻す。5分後に再び2×10−5Paまで排気した後、300℃で1時間加熱を行い、基板温度が室温に下がった状態で、再びチタンイソプロポキシドを2Paの圧力となるまで導入し30分保持する。
本工程では、最初のチタンイソプロポキシド導入工程においてメソポーラスシリカのメソ孔表面に存在するシラノール基がチタンイソプロポキシドと反応し、Si−O−Ti結合を形成する。次の大気開放工程では空気中の水分がシラノールに結合したチタンイソプロポキシドと反応してTi−OH結合を形成する。さらに次のチタンイソプロポキシド導入工程において、Ti−OH基がチタンイソプロポキシドと反応してTi−O−Ti結合が形成される。
従って、本工程において、チタンイソプロポキシド導入→大気開放→加熱→冷却→チタンイソプロポキシド導入を繰り返すことによって、1層1層、メソ孔内壁にチタニアを形成することが可能である。このため、本方法はレイヤーバイレイヤー成膜法と呼ばれる。本方法は、別名表面ゾル−ゲル法とも呼ばれ、ゾル−ゲル法の一種に分類される手法である。
本実施例の条件では、最初のチタンイソプロポキシド導入を含め、チタンイソプロポキシド導入工程を3回繰り返すことで、メソポーラスシリカから構成される本発明の複数の凸部を有する構造体の屈折率を、チタニアの導入によって、基板の屈折率1.6にマッチングさせることができる。基板の屈折率が異なる場合には、この繰り返し回数を調整することによって、本発明の構造体の屈折率を精密に制御することができる。
作製した本実施例の構造体に関し、エックス線光電子分光法によって、微細構造体の表面から基板界面方向へと深さ方向分析を行うと、微細構造体表面から基板界面近傍まで比較的均一に、Ti原子がSi原子比率で73%程度導入されていることがわかる。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置からTi原子は酸化チタン(チタニア)TiOとして存在している事が確認できる。CVD後の構造体の走査電子顕微鏡観察の結果、構造体の形状には顕著な変化は認められず、細孔が観察されにくくなっていたことから、酸化チタンはメソ孔内に形成されていることがわかる。
(8−5)反射率測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入したメソポーラスシリカから構成される本発明の構造体を形成した、光学ガラスの反射率は2%と求められる。これは、実施例7の減圧CVDで作製した場合と同じ値である。実施例7で記述したように、中空のメソ孔を有するメソポーラスシリカから構成される本発明の微細構造体を形成した光学ガラスの反射率を測定すると4%であり、本実施例においても、屈折率制御の効果により反射率が低減されている事が確認される。
(実施例9)
実施例9では、実施例7における工程(7−4)の、メソ孔内へのチタニア導入を、減圧CVDの代わりに、ゾル−ゲル法に基づく液相法で行う例について記載する。
(7−1)から(7−3)までは、実施例7と同じ工程で、メソポーラスシリカより構成される複数の凹凸を有する構造体を作製する。
(9−4)メソ孔内への無機材料導入
窒素ガス雰囲気中にて、チタンイソプロポキシドのn−デカン溶液(80wt%)を調製し、前記メソポーラスシリカより構成される複数の凹凸を有する構造体を形成した基板を室温で1時間浸漬させる。続いて、構造体を形成した基板をn−デカンで洗浄、乾燥した後、蒸留水中に配置し24時間保持後、150℃で24時間乾燥し、さらに400℃にて2時間の大気焼成を行い、前記メソポーラスシリカ構造体の細孔内にチタニアを導入する。
作製した本実施例の構造体に関し、エックス線光電子分光法により、微細構造体表面から基板界面方向へと深さ方向分析を行うと、Ti原子がTi/Si原子比率で64%程度、比較的均一に導入されていることが分かる。本実施例で作製したチタニア導入後の構造体の実効屈折率は1.56であり、光学ガラス基板の屈折率1.60との差は0.04となる。
(9−5)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入したメソポーラスシリカから構成される本発明の構造体を形成した、光学ガラスの反射率は2.2%と求められる。実施例7で記述したように、中空のメソ孔を有するメソポーラスシリカから構成される本発明の微細構造体を形成した光学ガラスの反射率を測定すると4%であり、メソポーラスシリカ構造体にチタニアを導入する事により基板との屈折率差を小さくする事で、本実施例においても屈折率制御の効果による反射率低減が確認される。
(実施例10)
実施例10では、光学ガラス基板上に成膜したチタニアメソ構造体膜に微細構造体を形成し、メソ孔内にシリカを導入した後に有機成分を除去することにより、構造体と光学ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。本実施例の構造体は、図1において、基板14が光学ガラス、11、15、及び凸部12がメソ孔内にシリカを形成したメソポーラス酸化チタンである。
(10−1)基板準備
基板14として屈折率1.7の光学ガラス基板を準備する。
(10−2)チタニアメソ構造体膜形成
実施例3の(3−2−1)から(3−2−2)に記載したのと同じ工程により、実施例3に記載したものと基本的に同一の構造を有するチタニアメソ構造体膜を作製する。
(10−3)プラズマエッチング
実施例3の(3−3)に記載したのと同じプラズマエッチング工程により、実施例3に記載したものと基本的に同一の複数の微細な凸部を有する構造体を作製する。
(10−4)メソ孔内へのシリカの導入
上記のように作製した、複数の凸部を有する構造体を形成したチタニアメソ構造体を作製した基板を、容積70mlのオートクレーブ中に配置し、容器内にオルトケイ酸テトラメチル(TMOS)3mlを入れた後密閉し、50℃において2時間TMOSの蒸気に暴露させる処理を行い、チタニアメソ構造膜のメソ孔中にシリカを導入する。TMOSの蒸気に暴露するチタニアメソ構造体膜のメソ孔中には、鋳型のブロックコポリマーが保持されているが、この状態においても、本実施例に記載した方法でシリカが細孔内に形成されることを本発明者らは見出している。このTMOS蒸気処理後、オートクレーブから構造体を形成した基板を取り出し、大気中において350℃で4時間焼成を行い、鋳型のブロックコポリマーを除去する。
エックス線光電子分光法により、本実施例で作製した微細構造体の表面から光学ガラス基板界面方向へと深さ方向分析を行うと、膜中にはSi原子がSi/Ti原子比率で約49%程度導入されていることがわかる。
(10−5)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にシリカを導入したメソポーラスチタニアから構成される本発明の構造体を形成した、光学ガラスの反射率は2%と求められる。比較として本実施例の(10−1)から(10−3)まで同様な方法で作製し、(10−4)のメソ孔内へのシリカの導入工程を省略して、大気中250℃4時間の焼成によって得られた中空のメソ孔を有するメソポーラスチタニアから構成される本発明の微細構造体を形成した光学ガラスの反射率を測定すると4%であり、屈折率制御の効果により反射率が低減されている事が確認される。
(実施例11)
実施例11では、光学ガラス基板上に成膜したジルコニアメソ構造体膜に微細構造体を形成し、メソ孔内にシリカを導入した後に有機成分を除去することにより、構造体と光学ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。本実施例の構造体は、図1において、基板14が光学ガラス、11、15、及び凸部12がメソ孔内にシリカを形成したメソポーラス酸化ジルコニウムである。
(11−1)基板準備
基板14として屈折率1.7の光学ガラス基板を準備する。
(11−2)ジルコニアメソ構造体膜形成
実施例4の(4−2−1)から(4−2−2)に記載したのと同じ工程により、実施例4に記載したものと基本的に同一の構造を有するジルコニアメソ構造体膜を作製する。
(11−3)プラズマエッチング
実施例4の(4−3)に記載したのと同じプラズマエッチング工程により、実施例4に記載したものと基本的に同一の複数の微細な凸部を有する構造体を作製する。
(11−4)細孔内へのシリカの導入
上記のように作製した、複数の凸部を有する構造体を形成したジルコニアメソ構造体を作製した基板を、容積70mlのオートクレーブ中に配置し、容器内にTMOS3mlを入れた後密閉し、50℃において2時間TMOSの蒸気に暴露させる処理を行い、ジルコニアメソ構造膜のメソ孔中にシリカを導入する。TMOSの蒸気に暴露するジルコニアメソ構造体膜のメソ孔中には、鋳型のブロックコポリマーが保持されているが、この状態においても、本実施例に記載した方法でシリカが細孔内に形成されることを本発明者らは見出している。このTMOS蒸気処理後、オートクレーブから構造体を形成した基板を取り出し、大気中において350℃で4時間焼成を行い、鋳型のブロックコポリマーを除去する。
エックス線光電子分光法により、本実施例で作製した微細構造体の表面から光学ガラス基板界面方向へと深さ方向分析を行うと、膜中にはSi原子がSi/Zr原子比率で約49%程度導入されていることがわかる。
(11−5)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にシリカを導入したメソポーラスジルコニアから構成される本発明の構造体を形成した、光学ガラスの反射率は2%と求められる。比較として本実施例の(11−1)から(11−3)まで同様な方法で作製し、(11−4)のメソ孔内へのシリカの導入工程を省略して、大気中250℃4時間の焼成によって得られた中空のメソ孔を有するメソポーラスジルコニアから構成される本発明の微細構造体を形成した光学ガラスの反射率を測定すると4%であり、屈折率制御の効果により反射率が低減されている事が確認される。
(実施例12)
実施例12では、光学ガラス基板上に成膜したメソポーラスシリカ膜に、有機化物の修飾を施した後にプラズマエッチングを行い、アスペクト比の高い、複数の微細な凸部を有する構造体を形成し、さらにメソ孔内にチタニアを導入することにより、構造体と光学ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。本実施例によって作製される構造体の基本構成は実施例7で記載したものと同じであるが、形成される構造体のアスペクト比が異なる。
(12−1)基板準備
基板14として屈折率1.6の光学ガラス基板を準備する。
(12−2)メソポーラスシリカ薄膜形成
実施例1の(1−1)から(1−2)と同じ方法で、光学ガラス基板14上にシリカメソ構造体膜を形成し、実施例2の(2−2−3)と同じ方法によって細孔内の有機物を除去してメソポーラスシリカ膜15とする。得られた膜の透過電子顕微鏡分析から、本実施例で作製したメソポーラスシリカ膜は、均一な径のシリンダー状のメソ孔がハニカム状に周期的に配置されていることが分かる。この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期6.0nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できる。膜厚は約500nmである。本工程で作製したメソポーラスシリカの屈折率は、エリプソメトリーにより1.22と求められる。
(12−3)有機化合物による表面修飾
前記光学ガラス基板上に形成した、上記のメソポーラスシリカ膜上に、トリメチルクロロシランを滴下し、回転数2000rpmで30秒間スピンコートを行った。その後エタノールで基板を洗浄した。本処理の前後において赤外吸収スペクトルを比較すると、処理後は孤立シラノール基(Si−OH)に対応する3740cm−1の吸収ピークが処理前に比べて減少し、メチル基(−CH)に対応する2960cm−1の吸収ピークが観測された。また、エックス線光電子分光法により、メソポーラスシリカ膜の深さ方向における組成分析を行ったところ、処理前には観測されなかった炭素原子が、処理後は光学ガラス基板との界面近傍に至るまで観測された。これらの事から、本処理により、メソポーラスシリカのメソ孔の表面(外部表面も含む)がトリメチルシリル基で終端された事が確認できた。
(12−4)プラズマエッチング
上記表面処理を施したメソポーラスシリカ膜に、実施例1〜11で用いたのと同じICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを施す。
反応性ガス:C
ガス流量:20sccm
圧力 :3Pa
ICPパワー:500W
Biasパワー:50W
エッチング時間:90秒間
プラズマエッチング後のメソポーラスシリカ膜表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、複数の微細な凸部を有する微細構造体が得られた。微細構造体の走査電子顕微鏡写真を図15(a)(断面写真)、および図15(b)(基板チルト角75度で撮影した表面像)に示した。本プラズマエッチングにより、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=320nm、Θ=20度、p=D=70nm、T=200nm、H/D=4.6となるような凸部を表面に有する微細構造体が得られた。ここで、凸部の密度は5.2×1010個/cmと見積もられた。凸部の間隔の分布はσ=30nmの正規分布であり、σ/pは0.42である。このことから、メソポーラスシリカ膜のプラズマ処理を施す前に有機物で表面修飾を行うことで、飛躍的に形成される凸部のアスペクト比を向上させることができることが示された。
プラズマエッチング後の微細構造体について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が、光学ガラス基板との界面近傍に至るまで含有されていることが明らかとなり、その量はF/Si原子比率で平均約50%という値であった。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置からフッ素原子はSi原子と結合して存在している事が確かめられる。この事は、フッ素をメソポーラスシリカ膜内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。この様な構造体は、Arガスを用いたプラズマエッチングでは形成することはできなかった。
(12−5)メソ孔内への無機材料導入
上記の工程で作製したメソポーラスシリカより形成される構造体のメソ孔中に、続いてチタニアを導入する。チタニアの導入は、実施例7の(7−4)で用いたのと同じ減圧CVD装置を用い、(7−4)で用いたのと同じ条件で行った。7時間後に真空容器内から基板を取り出して、エックス線光電子分光法により、微細構造体の表面から基板界面方向へと深さ方向分析を行うと、微細構造体表面から基板界面近傍まで均一にTi原子が導入されていることがわかり、Ti原子は、Ti/Si原子比率で73%程度導入されていることがわかる。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置からTi原子はTiO2として存在している事が確認できる。このチタニアの導入量を細孔充填率に換算すると約60%となった。
この導入量は、実施例7で達成された導入量とほぼ同じであり、チタニア導入後の本発明の構造体の屈折率は約1.6となり、これは、使用した光学ガラス基板の屈折率にほぼ等しい。以上述べたように、本工程によって、メソポーラスシリカから構成される本発明の複数の凸部を有する構造体の屈折率を、チタニアの導入によって、基板の屈折率1.6にマッチングできることが示される。
(12−6)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入したメソポーラスシリカから構成される本発明の構造体を形成した、光学ガラスの反射率は0.3%と求められた。比較として反射防止構造を設けない、本実施例で使用した光学ガラス基板の反射率を同様な方法で測定すると5%であり、本実施例で作製した反射防止構造により反射率が大幅に低減されている事が確認された。本実施例で作製した構造体を形成した光学ガラス基板と、表面にコーティングを施していない光学ガラス基板の反射率の波長依存性を図16に示す。本実施例に示すように、光学ガラス基板上のメソポーラスシリカ膜に、有機修飾を施した後にプラズマエッチングを施すことによって、形成される凸部のアスペクト比を大きく向上させることができ、その細孔内にチタニアを、量を制御して導入し、基板と構造体の屈折率マッチングをとることによって、非常に低い反射率を実現できることが示された。
(実施例13)
実施例13では、石英基板上に成膜したメソポーラスシリカ膜に、有機化物の修飾を施した後にプラズマエッチングを行い、アスペクト比の高い、複数の微細な凸部を有する構造体を形成し、さらにメソ孔内にシリカを導入することにより、構造体と石英ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。本実施例の構造体は、図1において、基板14が石英ガラス、11、15、及び凸部12がメソ孔内にシリカを形成したメソポーラスシリカである。
(13−1)基板準備
基板14として石英ガラス基板を準備する。
(13−2)メソポーラスシリカ薄膜形成
実施例12の(12−1)から(12−2)と同じ方法で、実質的に実施例12で作製したものと同じ構造のメソポーラスシリカ膜を作製する。
(13−3)有機化合物による表面修飾
実施例12の(12−3)と同じ工程で、同様の有機修飾を施す。
(13−4)プラズマエッチング
実施例12の(12−4)と同じ装置、同じ条件で、実質的に実施例12で作製した構造体と同一の構造体を作製する。
(13−5)メソ孔内への無機材料導入
上記の工程において作製した、複数の凸部を有する構造体を形成した基板を、容積70mlのオートクレーブ中に配置し、容器内にTMOS3mlを入れた後密閉し、50℃において2時間TMOSの蒸気に暴露させる処理を行い、この処理に続いて大気中350℃で4時間焼成を行い、メソポーラスシリカのメソ孔中にシリカが導入された構造を形成する。
(13−6)反射率測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入したメソポーラスシリカから構成される本発明の構造体を形成した、石英ガラスの反射率は0.5%と求められる。比較として反射防止構造を設けない、本実施例で使用した石英ガラス基板の反射率を同様な方法で測定すると5%であり、本実施例で作製した反射防止構造により反射率が大幅に低減されている事が確認される。本実施例に示すように、石英ガラス基板上のメソポーラスシリカ膜に、有機修飾を施した後にプラズマエッチングを施すことによって、形成される凸部のアスペクト比を大きく向上させることができ、その細孔内にシリカを、量を制御して導入し、基板と構造体の屈折率マッチングをとることによって、非常に低い反射率を実現できることが示される。
(実施例14)
実施例14では、石英基板上に膜厚の大きなメソポーラスシリカ膜を作製し、実施例12、13と同様のプラズマエッチングを行うことでアスペクト比の大きな複数の凸部を有する構造体を作製した例について記載する。
(14−1)基板上へのメソポーラスシリカ膜の形成
実施例1の(1−1)から(1−2)と同じ方法で、石英ガラス基板上にシリカメソ構造体膜を形成し、完全に乾燥、固化させた後、もう一度(1−2)の工程を繰り返し、膜厚約1000nmのシリカメソ構造体膜を得る。この後、実施例2の(2−2−3)と同じ方法によって細孔内の有機物を除去してメソポーラスシリカ膜とする。得られた膜の透過電子顕微鏡分析から、本実施例で作製したメソポーラスシリカ膜は、均一な径のシリンダー状のメソ孔がハニカム状に周期的に配置されていることが分かる。この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期6.0nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できる。
(14−2)有機化合物による表面修飾
このメソポーラスシリカ膜に対して、実施例12の(12−3)と同じ工程で、トリメチルクロロシランを用いて有機修飾を施す。
(14−3)プラズマエッチング
修飾後のメソポーラスシリカ膜に、実施例1〜13で用いたのと同じICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを施す。
反応性ガス:C
ガス流量:20sccm
圧力 :3Pa
ICPパワー:500W
Biasパワー:50W
エッチング時間:200秒間
プラズマエッチング後のメソポーラスシリカ膜表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=620nm、p=70nm、D=60nm、T=50nm、H/D=10.3となるような凸部を表面に有する微細構造体が得られる。ここで、凸部の密度は6.0×1010個/cmと見積もられた。各凸部の間隔の分布はσ=15nmの正規分布であり、σ/pは0.21である。
本実施例では、上記のように、初期のメソポーラスシリカ膜の膜厚を厚くし、有機修飾後にプラズマエッチングを施すことにより、凸部のアスペクト比10以上の構造体を形成できることが示される。
(実施例15)
実施例15では、石英基板上に膜厚の大きなメソポーラスシリカ膜を作製し、クロロトリブチルシランで表面を修飾した後に、実施例12、13と同様のプラズマエッチングを行うことでアスペクト比の大きな複数の凸部を有する構造体を作製した例について記載する。
(15−1)基板上へのメソポーラスシリカ膜の形成
実施例14の(14−1)と同じ工程によって、石英基板上に膜厚約1000nmのシリカメソ構造体膜を形成した後、同様の工程で細孔内有機物を除去してメソポーラスシリカ膜とする。本実施例で作製したメソポ−ラスシリカ膜は、実質的に実施例14で作製したメソポーラスシリカ膜と同一の構造である。
(15−2)有機化合物による表面修飾
石英ガラス基板上に形成した、上記のメソポーラスシリカ膜上に、トリブチルクロロシランを滴下し、回転数2000rpmで30秒間スピンコートを行い、その後エタノールで基板を洗浄する。メソポーラスシリカのメソ孔の表面(外部表面も含む)のトリメチルシリル基による終端は、実施例12と同様、赤外吸収スペクトルにより確認される。
(15−3)プラズマエッチング
修飾後のメソポーラスシリカ膜に、実施例1〜14で用いたのと同じICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを施す。
反応性ガス:C
ガス流量:20sccm
圧力 :3Pa
ICPパワー:500W
Biasパワー:50W
エッチング時間:220秒間
プラズマエッチング後のメソポーラスシリカ膜表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=550nm、p=90nm、D=90nm、T=50nm、H/D=6.1となるような凸部を表面に有する微細構造体が得られる。ここで、凸部の密度は6.0×1010個/cmと見積もられた。各凸部の間隔の分布はσ=15nmの正規分布であり、σ/pは0.21である。
本実施例によって、上記のように、トリメチルクロロシラン以外の有機物を用いて有機修飾した場合でも、メソポーラスシリカ膜へのプラズマエッチングによって形成される微細な凸部のアスペクト比を大きくすることができることが示される。
(実施例16)
実施例16では、光学ガラス基板上に細孔構造の異なるメソポーラスシリカ膜を積層して成膜し、複数の微細な凸部を有する構造体を形成した後、メソ孔内にチタニアを導入することにより、構造体と光学ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。本実施例の構成では、メソ孔へのチタニアの充填率が、前記凸部の底部から先端に向かう方向に小さくなっており、その結果、Ti/Siの比が、当該方向に小さくなっている。本実施例で作製される構造体の構成は、実施例7で作製した構造体の構成に類似しているが、実施例7では単一構造のメソポーラスシリカ膜を使用しているのに対し、本実施例では、構造の異なるメソポーラスシリカ膜を積層して使用している点が異なる。
本実施例の構造体は、図1において、基板14が光学ガラス、11、15、及び凸部12がメソ孔内にチタニアを形成した、異なる細孔構造の層が積層されたメソポーラスシリカである。
(16−1)基板準備
基板14として石英ガラス基板を準備する。
(16−2)メソポーラスシリカ薄膜形成
(16−2−1)第1のシリカメソ構造体膜作製
実施例1の(1−2−1)の手順に従って第1のシリカメソ構造体膜用の前駆体溶液を調整する。溶液組成は、実施例1に記載したものよりもエタノール濃度の高い、下記の組成(モル比)とする。テトラエトキシシラン:1.0、HCl:0.0011、水:6.1エタノール:29.0、ブロックポリマー:0.0096。エタノールを多くしたのは、第1のシリカメソ構造体の膜厚を薄くするためである。この溶液を用いて、前記石英ガラス基板上に、実施例1と同じ条件のディップコーティングにより、第1のシリカメソ構造体膜を作製する。膜厚は90nmと求められる。この第1のシリカメソ構造体膜は、膜厚以外は、実施例1で作製したシリカメソ構造体膜と同じ、均一な径のシリンダー状のメソ孔が、ハニカム状に周期的に配置されている構造を有するものであることが、走査電子顕微鏡観察により明らかで、また、この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期8.0nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できる。
(16−2−2)第2のシリカメソ構造体膜作製
上記のプロセスで作製した第1のシリカメソ構造体膜中のシリカの固化が十分に進行した段階で、上記第1のシリカメソ構造体膜上に、構造の異なる第2のシリカメソ構造体膜を作製する。この作製も基本的に実施例(1−2−1)と同じであるが、溶液組成(モル比)を以下のようにする。テトラエトキシシラン:1.0、HCl:0.0011、水:6.1エタノール:10.0、ブロックポリマー:0.0096、エチレングリコール:0.067。エチレングリコールの添加により、形成されるシリカメソ構造体膜中のメソ孔の周期的配列が失われることは、本発明者らが既に見出している。この溶液を用いて、前記第1のシリカメソ構造体膜を形成した石英ガラス基板上に、実施例1と同じ条件のディップコーティングにより、第2のシリカメソ構造体膜を作製する。膜厚は400nmと求められる。
(16−2−3)多孔質化
実施例2の(2−2−3)と同じ方法によって細孔内の有機物を除去してメソポーラスシリカ膜とする。
(16−3)プラズマエッチング
上記の工程で作製した、2層構成のメソポーラスシリカ膜に、実施例1〜11で用いたのと同じICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを施す。
反応性ガス:SF
ガス流量:20sccm
圧力 :3Pa
ICPパワー:100W
Biasパワー:100W
エッチング時間:2分間
プラズマエッチング後のメソポーラスシリカ膜表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、複数の微細な凸部を有する微細構造体が得られた。本プラズマエッチングにより、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=60nm、Θ=30度、p=D=50nm、T=60nm、H/D=1.2となるような複数の凸部を表面に有する微細構造体が得られた。ここで、凸部の密度は5.0×1010個/cmと見積もられた。凸部の間隔の分布はσ=14nmの正規分布であり、σ/pは0.28である。基板界面から凸部の先端までの平均距離は約120nmであり、このことは、形成された構造体中の凸部は、先端に近い側半分程度が第2のメソポーラスシリカの構造を、根元に近い側半分程度が第1のメソポーラスシリカの構造を有するということを示している。プラズマエッチング後の微細構造体について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が、光学ガラス基板との界面近傍に至るまで含有されていることが明らかとなり、その量はSi原子比率で平均約50%という値であった。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置からフッ素原子はSi原子と結合して存在している事が確かめられる。この事は、フッ素をメソポーラスシリカ膜内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
(16−4)細孔内への無機材料導入
上記の工程で作製したメソポーラスシリカより形成される構造体のメソ孔中に、続いてチタニアを導入する。チタニアの導入は、実施例7の(7−4)で用いたのと同じ減圧CVD装置を用い、(7−4)で用いたのと同じ条件で行った。7時間後に真空容器内から基板を取り出して、エックス線光電子分光法により、微細構造体の表面から基板界面方向へと深さ方向分析を行うと、表面近傍ではTi/Si比は約0.65、基板近傍ではTi/Si比は約0.73と求められ、表面近傍ではTiの相対比率が10%程度小さいことがわかる。この深さ方向分析は、イオンスパッタリングを繰り返し行い、その度に光電子スペクトルを測定することによって行う。この差は、凸部の先端側半分に形成されている、メソ孔の構造周期性が乱れた第2のメソポーラスシリカ膜の細孔中には、凸部の基板側半分に形成されている、メソ孔の構造周期性を有する第1のメソポーラスシリカ膜の細孔中に比較して、チタニアが導入されにくいことを示す。実際に、第1のメソポーラスシリカ膜の細孔中のチタニアの充填率は、第2のメソポーラスシリカ膜の細孔中における充填率よりも低いことが、透過電子顕微鏡観察によって確かめられる。これは、構造周期性の無い細孔構造の場合には、CVD工程において酸化チタンの前駆体が細孔内を拡散しにくいことに起因すると本発明者らは考察している。このTi/Si比0.65、0.73は、チタニアの充填率に換算するとそれぞれ55%、62%となる。
以上述べたように、本実施例で作製した、複数の微細な凸部を有する構造体においては、メソ孔へのチタニアの充填率が、前記凸部の底部から先端に向かう方向に小さくなっており、その結果、Ti/Siの比が、当該方向に小さくなっていることが確認される。
(16−5)反射率測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入した、構造の異なる2層のメソポーラスシリカ膜から構成される本発明の構造体を形成した、石英ガラスの反射率は1.8%と求められる。この反射率は、実施例2において、単一の構造のメソポーラスシリカを用いて作製された、本実施例との同様の構造を有する構造体を形成した石英基板の反射率に比較して低く、本実施例において、本発明の構造体における凸部の中で、メソ孔へのチタニアの充填率を、前記凸部の底部から先端に向かう方向に小さくすることで、より反射防止効果を高めることができることが確認される。
(実施例17)
実施例16では、光学ガラス基板上に構造周期及(細孔径)の異なるメソポーラスシリカ膜を積層して成膜し、複数の微細な凸部を有する構造体を形成した後、メソ孔内にチタニアを導入することにより、構造体と光学ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。本実施例の構成では、メソ孔へのチタニアの充填率が、前記凸部の底部から先端に向かう方向に小さくなっており、その結果、Ti/Siの比が、当該方向に小さくなっている。本実施例で作製される構造体の構成は、実施例16で作製した構造体の構成に類似しているが、実施例16では構造の異なるメソポーラスシリカ膜を積層して使用しているのに対し、本実施例では構造周期と細孔径が異なるメソポーラスシリカ膜を積層しているという点が異なる。
(17−1)基板準備
基板14として石英ガラス基板を準備する。
(17−2)メソポーラスシリカ薄膜形成
(17−2−1)第1のシリカメソ構造体膜作製
実施例1の(1−2−1)の手順に従って第1のシリカメソ構造体膜用の前駆体溶液を調整する。ここでは、実施例1で使用したものとは異なる界面活性剤Brij56(商品名、Aldrich社製、=ポリオキシエチレン−10−セチルエーテル)を鋳型に用いる。この前駆体溶液は、2−プロパノール、0.01M塩酸、テトラエトキシシランを加え20分間混合した溶液にBrij56の2−プロパノール溶液を加え、3時間攪拌することで調製される。溶液の組成(モル比)は、テトラエトキシシラン:1.0、ブロックポリマー:0.080、2−プロパノール:25、塩酸:0.0011、水:6.1である。この溶液を用いて、前記石英ガラス基板上に、実施例1と同じ条件のディップコーティングにより、第1のシリカメソ構造体膜を作製する。膜厚は100nmと求められる。この第1のシリカメソ構造体膜中では、均一な径のシリンダー状のメソ孔が、ハニカム状に周期的に配置されている構造を有するものであることが、走査電子顕微鏡観察により明らかで、また、この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期5.0nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できる。
(17−2−2)第2のシリカメソ構造体膜作製
上記のプロセスで作製した第1のシリカメソ構造体膜中のシリカの固化が十分に進行した段階で、上記第1のシリカメソ構造体膜上に、構造の異なる第2のシリカメソ構造体膜を作製する。実施例1の(1−2−1)の手順に従って第2のシリカメソ構造体膜用の前駆体溶液を調整する。溶液組成も、実施例1に記載したものと同一である。この溶液を用いて、前記第1のシリカメソ構造体膜を形成した石英ガラス基板上に、実施例1と同じ条件のディップコーティングにより、第2のシリカメソ構造体膜を作製する。膜厚は500nmと求められる。この第2のシリカメソ構造体膜は、実施例1で作製したシリカメソ構造体膜と同じ、均一な径のシリンダー状のメソ孔が、ハニカム状に周期的に配置されている構造を有するものであることが、走査電子顕微鏡観察により明らかで、また、この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期8.0nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できる。
(17−2−3)多孔質化
実施例2の(2−2−3)と同じ方法によって細孔内の有機物を除去してメソポーラスシリカ膜とする。
(17−3)プラズマエッチング
上記の工程で作製した、2層構成のメソポーラスシリカ膜に、実施例1〜11で用いたのと同じICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを施す。この条件は、実施例16の条件と同一である。
反応性ガス:SF
ガス流量:20sccm
圧力 :3Pa
ICPパワー:100W
Biasパワー:100W
エッチング時間:2分間
プラズマエッチング後のメソポーラスシリカ膜表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、複数の微細な凸部を有する微細構造体が得られた。本プラズマエッチングにより、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=60nm、Θ=30度、p=D=50nm、T=70nm、H/D=1.2となるような複数の凸部を表面に有する微細構造体が得られた。ここで、凸部の密度は6.5×1010個/cmと見積もられた。凸部の間隔の分布はσ=16nmの正規分布であり、σ/pは0.30である。基板界面から凸部の先端までの平均距離は約130nmであり、このことは、形成された構造体中の凸部は、先端に近い側半分程度が構造周期の大きな第2のメソポーラスシリカの構造を、根元に近い側半分程度が構造周期の小さな第1のメソポーラスシリカの構造を有するということを示している。プラズマエッチング後の微細構造体について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が、光学ガラス基板との界面近傍に至るまで含有されていることが明らかとなり、その量はSi原子比率で平均約50%という値であった。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置からフッ素原子はSi原子と結合して存在している事が確かめられる。この事は、フッ素をメソポーラスシリカ膜内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
(17−4)細孔内への無機材料導入
上記の工程で作製したメソポーラスシリカより形成される構造体のメソ孔中に、続いてチタニアを導入する。チタニアの導入は、実施例7の(7−4)で用いたのと同じ減圧CVD装置を用い、(7−4)で用いたのと同じ条件で行った。4時間後に真空容器内から基板を取り出して、エックス線光電子分光法により、微細構造体の表面から基板界面方向へと深さ方向分析を行うと、表面近傍ではTi/Si比は約0.65、基板近傍ではTi/Si比は約0.73と求められ、表面近傍ではTiの相対比率が10%程度小さいことがわかる。この深さ方向分析は、イオンスパッタリングを繰り返し行い、その度に光電子スペクトルを測定することによって行う。この差は、凸部の先端側半分に形成されている、メソ孔の構造周期性が大きな第2のメソポーラスシリカ膜の細孔中では、凸部の基板側半分に形成されている、メソ孔の構造周期性の小さな第1のメソポーラスシリカ膜の細孔中に比較して、チタニアの導入量が少ないことを示す。実際に、第1のメソポーラスシリカ膜の細孔中のチタニアの充填率は、第2のメソポーラスシリカ膜の細孔中における充填率よりも低いことが、透過電子顕微鏡観察によって確かめられる。これは、構造周期性の小さいメソポーラスシリカ膜のメソ孔の径は、構造周期性の大きいメソポーラスシリカ膜のメソ孔の径よりも小さいために、同じ分圧の酸化チタン前駆体蒸気中に置かれた場合に多くの前駆体が細孔中に導入されるためであると本発明者らは考察している。このTi/Si比0.65、0.73は、チタニアの充填率に換算するとそれぞれ、55%、62%となる。
以上述べたように、本実施例で作製した、複数の微細な凸部を有する構造体においては、メソ孔へのチタニアの充填率が、前記凸部の底部から先端に向かう方向に小さくなっており、その結果、Ti/Siの比が、当該方向に小さくなっていることが確認される。
(17−5)反射率測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入した、構造周期の異なる2層のメソポーラスシリカ膜から構成される本発明の構造体を形成した、石英ガラスの反射率は1.8%と求められる。この反射率は、実施例2において、単一の構造のメソポーラスシリカを用いて作製された、本実施例との同様の構造を有する構造体を形成した石英基板の反射率に比較して低く、本実施例において、本発明の構造体における凸部の中で、メソ孔へのチタニアの充填率を、前記凸部の底部から先端に向かう方向に小さくすることで、より反射防止効果を高めることができることが確認される。
(実施例18)
実施例18では、単一構造を有するメソポーラスシリカ膜に、複数の微細な凹凸を形成した後に、基板の屈折率とのマッチングをとるために、メソ孔内にチタニアを、量をコントロールして均一に導入した後に、エッチングによって部分的に細孔中のチタニアを除去することによって、メソ孔へのチタニアの充填率が、前記凸部の底部から先端に向かう方向に小さくなっており、その結果、Ti/Siの比が、当該方向に小さくなっている構造を形成し、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。
(18−1)基板準備
基板14として屈折率1.6の光学ガラス基板を準備する。
(18−2)メソポーラスシリカ薄膜形成
実施例1の(1−1)から(1−2)と同じ方法で、光学ガラス基板14上にシリカメソ構造体膜を形成し、実施例2の(2−2−3)と同じ方法によって細孔内の有機物を除去してメソポーラスシリカ膜15とする。得られた膜の透過電子顕微鏡分析から、本実施例で作製したメソポーラスシリカ膜は、均一な径のシリンダー状のメソ孔がハニカム状に周期的に配置されていることが分かる。この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期6.0nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できる。膜厚は約500nmである。本工程で作製したメソポーラスシリカの屈折率は、エリプソメトリーにより1.22と求められる。
(18−3)
実施例7の(7−3)と同じ工程により、上記メソポーラスシリカ膜にプラズマエッチングを施し、複数の微細な凸部を有する構造体を形成する。形成された構造体の形状は、実施例7で得られたものと実質的に同じである。
(18−4)メソ孔内への無機材料導入
実施例7の(7−4)と同じ工程により、上記構造体のメソ孔中にチタニアを導入する。細孔中へのチタニアの導入量は、実施例7と実質的に同一である。本工程によって、メソポーラスシリカから構成される本発明の複数の凸部を有する構造体の屈折率を、基板の屈折率と同じ1.6にマッチングできることが示される。
(18−5)エッチングによる無機材料充填率の分布形成
上記の、メソ孔中にチタニアを導入したメソポーラスシリカから構成される、複数の微細な凸部を有する構造体に対して、チタニアの部分的なウェットエッチングによる除去を施し、構造体の凸部の先端側におけるチタニアの充填率を低下させる。濃度20%のアンモニア水、濃度20%の過酸化水素水を1:1の容量比で混合し、全体として所定の濃度となる様に水で稀釈してエッチング液を調整し、このエッチング液中に、上記の工程(18−4)で作製した、メソ孔内にチタニアを含む構造体を形成した光学ガラス基板を、室温で5分間浸漬させ、チタニアのエッチングを行う。このエッチング液ではシリカおよび光学ガラス基板はエッチングされず、チタニアが選択的にエッチングされる。微細構造体の先端付近では底部に比較してメソ孔が短いためにチタニアが溶出しやすく、本工程によって微細構造体の底部から先端部にかけてチタニアの充填率が小さくなる構造を形成することが可能である。この充填率の分布は、透過電子顕微鏡観察によって確かめられる。
エッチングを施した上記構造体に関して、エックス線光電子分光法により、微細構造体の表面から光学ガラス基板界面方向へと深さ方向分析を行うと、表面近傍ではTi/Si比は約0.58、基板近傍ではTi/Si比は約0.73と求められ、表面近傍ではTiの相対比率が20%程度小さいことがわかる。この深さ方向分析は、イオンスパッタリングを繰り返し行い、その度に光電子スペクトルを測定することによって行う。このTi/Si比0.73、0.58は、チタニアの充填率に換算するとそれぞれ49%、62%となる。
(18−6)反射率測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入した、構造周期の異なる2層のメソポーラスシリカ膜から構成される本発明の構造体を形成した、光学ガラスの反射率は1.7%と求められる。この反射率は、実施例2において、単一の構造のメソポーラスシリカを用いて作製された、本実施例との同様の構造を有する構造体を形成した、本実施例の光学ガラスよりも屈折率の小さい石英基板の反射率に比較して低く、本実施例において、本発明の構造体における凸部の中で、メソ孔へのチタニアの充填率を、前記凸部の底部から先端に向かう方向に小さくすることで、より反射防止効果を高めることができることが確認される。
(実施例19)
実施例19では、曲率を有する基板上に、実施例7と同じ構成の、メソ孔内にチタニアを導入したメソポーラスシリカ膜で構成される複数の微細な凸部を有する構造体を形成し、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。
(19−1)基板準備
基板として、凸面の曲率半径60mm、凹面の曲率半径25mmのレンズを準備する。レンズの材質は、実施例7で用いた光学ガラスである。
(19−2)シリカメソ構造体膜形成
(19−2−1)シリカメソ構造体膜の前駆体溶液調製
実施例1の(1−2−1)と同じ工程で、実施例1と同じシリカメソ構造体の前駆体溶液を作製する。
(19−2−2)シリカメソ構造体膜の成膜
洗浄した上記レンズ上に、上記の前駆体溶液を滴下してスピンコーティングを行うことで、本実施例のシリカメソ構造体膜を形成する。スピンコーティングは、25℃、相対湿度40%、基板の回転速度4000rpmの条件で180秒間行う。製膜後は、25℃、相対湿度40%の恒温恒湿槽で2週間、続いて80℃で24時間保持し、シリカメソ構造体膜を形成する。これを、実施例2の(2−2−3)と同じ工程に沿って焼成し、細孔中の有機成分を除去し、メソポーラスシリカ膜とする。塗布工程は異なるが、本実施例において作製されたメソポーラスシリカ膜は、実施例2で作製した膜と、実質的に同じ構造を有しており、均一な径のシリンダー状のメソ孔が、ハニカム状に周期的に配置されており、その構造周期は約6.0nmであることが、レンズから剥離させた膜の透過電子顕微鏡観察によって明らかとなる。本実施例で用いたレンズの凸面にも、凹面にも、透明で均一性の高いメソポーラスシリカ膜が形成されていることが確認される。
(19−3)プラズマエッチング
このレンズ状のメソポーラスシリカ膜に対して、実施例7の(7−3)と同一の条件でプラズマエッチングを施す。プラズマエッチング後に膜表面に形成される、複数の凸部を有する構造体の構造パラメータは、実施例7で平板基板上に作製した構造体のものと実質的に同じである。この場合も、膜中におけるフッ素の分析により、フッ素をメソポーラスシリカ膜内に含有させながらエッチングが進行した事が示される。
(19−4)メソ孔内への無機材料導入
実施例7と同じ工程、同じ条件で、メソポーラスシリカのメソ孔にチタニアを導入する。チタニアの導入量には、平板基板の場合も、本実施例で用いた曲率を有する基板でも差異はないことがエックス線光電子分光分析によって確認される。
(19−5)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。凸レンズ、凹レンズともに、レンズ上の異なる3か所について波長400nm〜700nmの範囲での反射率を測定する。反射率測定時には、測定箇所において、入射角度が90度に成るようにレンズの保持角度を調整する。平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入したメソポーラスシリカから構成される本発明の構造体を形成した、レンズの反射率は、凹レンズ、凸レンズともに、約2%と求められる。これは、実施例7で平板基板上で達成された反射率と比較してほぼ同じであり、本発明の構造体を用いた反射防止膜は、曲率を有するレンズに対して良好に形成できることが示される。
(実施例20)
実施例20では、石英ガラス基板2001上に、プラズマエッチングによって直接、複数の微細な凸部を有する構造体を形成することで、反射防止構造を設けた光学部材とした例について記載する。
(20−1)基板の準備
基板14として石英ガラス基板を準備した。
(20−2)プラズマエッチング
上記石英ガラス基板に、上記実施例1〜19で用いたのと同じICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを施す。
反応性ガス:SFガス
ガス流量:20sccm
圧力 :10Pa
ICPパワー:100W
Biasパワー:10W
エッチング時間:70分間
エッチングレート:6nm/min
ここで、エッチングレートは、リファレンスとしてSi基板上に酸化ケイ素の熱酸化膜
を形成したものを用意し、熱酸化膜の膜厚減少分から求める。
プラズマエッチング後の石英基板表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成されており、本発明の複数の微細な凸部を有する微細構造体得られた。本実施例で形成した微細構造体の電子顕微鏡像を図17に示す。図17(a)は断面の写真、図17(b)は表面の写真である。本プラズマエッチングにより、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=75nm、Θ=28度、p=D=61nm、H/D=1.2、凸部の密度は7.2×1010個/cmと見積もられた。各凸部の間隔の分布はσ=22nmの正規分布、σ/pは0.36であり、複数の凸部がランダムな配置で基板表面を覆い尽くすように形成された。
以上のように形成した、複数の微細な凸部を有する細構造体について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が微細構造体表面から深さ方向にわたり15nmの深さまで確認され、表面から15nm深さにおけるフッ素原子の量は石英ガラスを構成するSi原子に対して35%であった。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置から、フッ素原子はSi原子と結合している事が確認できる。この事はフッ素を部材である石英ガラス内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
ここで、比較として本プラズマエッチング工程の条件のBiasパワーを15Wとした場合、エッチングレートは10nm/minとなり、膜の深さ方向にフッ素は検出されず表面に凸部も形成されなかった。しかし、本実施例のBiasパワーよりも低い値とした場合には、構造形成に時間がかかるように成るものの、本実施例と同様の構造が形成できる。本発明者らがエッチングレートを細かく制御して本発明の構造体形成の有無を確認した結果、9nm/minのエッチング条件の場合には構造形成が確認できることから、エッチングレート10nm/minが、本発明の構造形成の閾値であるとわかった。このことから、メソ構造体でない、denseな酸化ケイ素に対して、プラズマエッチングにより、本発明の構造体を形成する場合においては、エッチングレートを10nm/min以下に制御する必要があることがわかった。
また、Arガスを用いて本工程と同等のエッチングレートにてプラズマエッチングを施した場合にも表面に凸部は形成されず、当然のことながら膜の深さ方向にフッ素原子は検出されない。
(20−3)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行った。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、複数の微細な凹凸を有する構造体を形成した石英ガラス表面の反射率は2.5%であった。比較として反射防止構造を設けない、石英ガラス基板の反射率を同様な方法で測定すると5%であり。本実施例で作製した反射防止構造により反射率が低減されている事が確認された。エッチング時間を変化させて、アスペクト比を変化させた、複数の微細な凸部を有する本発明の構造体は、アスペクト比が1/2よりも大きい場合、すなわち錐体状凸部の頂角が鋭角である場合には、反射率低下に寄与することができる。
(実施例21)
実施例20では、光学ガラス基板上に、緻密な酸化ケイ素薄膜を形成した後に、プラズマエッチングによって、複数の微細な凸部を有する構造体を形成することで、反射防止構造を設けた光学部材とした例について記載する。
(21−1)基板の準備
基板14として光学ガラス基板を準備する。
(21−2)酸化ケイ素薄膜の作製
前記光学ガラス基板上に、以下のような手順で酸化ケイ素薄膜を形成する。
(21−2−1)酸化ケイ素の前駆体溶液調製
酸化ケイ素の前駆体溶液は、エタノール、0.01M塩酸、テトラエトキシシランを加え2時間攪拌することで調製する。
(21−2−2)酸化ケイ素薄膜の成膜
調製した酸化ケイ素の前駆体溶液を用いて、ディップコート装置により光学ガラス基板上に0.5mms−1の引き上げ速度でディップコートを行う。製膜後は、大気中で室温にて4時間乾燥後、続いて400℃に昇温して4時間焼成を行い280nmの厚さで酸化ケイ素膜を形成する。
(21−3)プラズマエッチング
上記、酸化ケイ素薄膜を形成した光学ガラス基板に、実施例1〜20で使用したのと同じICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを実施する。
反応性ガス:SF
ガス流量:20sccm
圧力 :10Pa
ICPパワー:100W
Biasパワー:10W
エッチング時間:45分間
エッチングレート:6nm/min
プラズマエッチング後の石英基板表面には円錐状の複数の微細な凸部が互いに隣接するように形成された構造体が得られた。図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=115nm、Θ=25度、p=D=62nm、H/D=1.85、凸部の密度は7×1010個/cmと見積もられた。各凸部の間隔の分布はσ=24nmの正規分布、σ/pは0.39であり、複数の凸部がランダムな配置で基板表面を覆い尽くすように形成された。この場合も、上記構造体の形成の可否はエッチングレートと密接な関係があり、10nm/min以上のエッチングレートの場合には、上記特徴を備えた構造体を形成することはできなかった。
形成した微細構造体について、エックス線光電子分光分析により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が微細構造体表面から深さ方向にわたり20nmの深さまで確認され、表面から20nm深さにおけるフッ素原子の量は酸化ケイ素薄膜を構成するSi原子に対して40%であった。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置から、フッ素原子はSi原子と結合している事が確認できる。この事は、フッ素を酸化ケイ素に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
(21−4)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行った。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例において、複数の微細な凹凸を有する構造体を形成した酸化ケイ素薄膜を有する光学ガラス基板表面の反射率は1.8%であった。比較として反射防止構造を設けない、酸化ケイ素薄膜を形成した光学ガラス基板の反射率を同様な方法で測定すると5%であり。本実施例で作製した反射防止構造により反射率が低減されている事が確認された。エッチング時間を変化させて、アスペクト比を変化させた、複数の微細な凸部を有する本発明の構造体は、アスペクト比が1/2よりも大きい場合、すなわち錐体状凸部の頂角が鋭角である場合には、反射率低下に寄与することができる。
(実施例22)
実施例22では、光学ガラス基板上に、プラズマエッチングにより、直接、複数の微細な凸部を有する構造体を形成し、反射防止構造を設けた例について記載する。
実施例20と同じ方法と条件で、光学ガラスBK7(屈折率1.51)、及びSF11(屈折率1.78)に、プラズマエッチングを実施した。
プラズマエッチング後に得られた微細構造体の形状は、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、BK7については、H=60nm、Θ=30度、p=D=50nm、H/D=1.2、凸部の密度6.5×1010個/cm、凸部の間隔の分布はσ=18nmの正規分布、σ/pは0.36であり、SF11については、H=70nm、Θ=25度、p=D=55nm、H/D=1.27、凸部の密度6.0×1010個/cm、凸部の間隔の分布はσ=20nmの正規分布、σ/pは0.36である。
形成した微細構造体について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、両者ともフッ素原子が微細構造体表面から深さ方向にわたり10nmの深さまで確認され、フッ素を光学ガラス材料に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
本実施例の構造体を形成した光学ガラス基板の反射率は、いずれの光学ガラス基板においても、反射率が2/1以下に低減されるという明確な反射防止効果を示す。
(実施例23)
実施例23では、各種酸化物(酸化ジルコ二ウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ハフニウム)基板上に、プラズマエッチングにより、直接、複数の微細な凸部を有する構造体を形成し、反射防止構造を設けた例について記載する。実施例20、21と同じ方法と条件で、各種酸化物基板(酸化ジルコ二ウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ハフニウム)に、プラズマエッチングを実施した。
プラズマエッチング後の微細構造体の形状は、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ次のようになる。
酸化ジルコニウム:H=65nm、Θ=30度、p=D=55nm、H/D=1.18、凸部の密度6.5×1010個/cm、凸部の間隔の分布はσ=18nmの正規分布、σ/p=0.36。
酸化タンタル:H=70nm、Θ=25度、p=D=55nm、H/D=1.27、凸部の密度6.5×1010個/cm、凸部の間隔の分布はσ=15nmの正規分布、σ/p=0.27。
酸化チタン:H=110nm、Θ=20度、p=D=60nm、H/D=1.83、凸部の密度7.2×1010個/cm、凸部の間隔の分布はσ=15nmの正規分布、σ/pは0.25。
酸化ハフニウム:H=80nm、Θ=25度、p=D=60nm、H/D=1.33、凸部の密度6.1×1010個/cm、凸部の間隔の分布はσ=14nmの正規分布、σ/pは0.23。
形成した微細構造体について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、いずれの材料ともフッ素原子が微細構造体表面から深さ方向にわたり10nmの深さまで確認され、フッ素を基板構成材料に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
本実施例の構造体を形成した光学ガラス基板の反射率は、いずれの光学ガラス基板においても、反射率が2/1以下に低減されるという明確な反射防止効果を示す。
(実施例24)
実施例24では、石英ガラス基板上に、シリカメソ構造体薄膜を形成した上に、該シリカメソ構造体よりもエッチングレートの小さい緻密な酸化ケイ素膜を形成して、積層膜を作製し、先ず表面の酸化ケイ素薄膜に対して第1のプラズマエッチングを行って、酸化ケイ素薄膜に複数の微細な凸部を有する構造体を形成し、続いて、前記酸化ケイ素薄膜に形成された構造体を介して、下地のシリカメソ構造体膜に対して第2のプラズマエッチング行うことで、シリカメソ構造体膜にアスペクト比の大きな複数の微細な凸部を有する構造体を形成する例について記載する。
本実施例を図11を用いて説明する。
(24−1)基板準備
基体1101として、石英ガラス基板を準備する。
(24−2)シリカメソ構造体膜形成
実施例1の(1−2)と同じ工程によってシリカメソ構造体膜1102を形成する。得られる膜の構造は、実施例1で記載したものと同じである。
(24−3)酸化ケイ素薄膜の作製
前記光学ガラス基板上に、以下のような手順で酸化ケイ素薄膜を形成する。
(24−3−1)酸化ケイ素の前駆体溶液調製
酸化ケイ素の前駆体溶液は、エタノール、0.01M塩酸、テトラエトキシシランを加え2時間攪拌することで調製する。
(24−3−2)酸化ケイ素薄膜の成膜
調製した酸化ケイ素の前駆体溶液を用いて、ディップコート装置により石英ガラス基板上に0.5mms−1の引き上げ速度でディップコートを行う。製膜後は、25℃、相対湿度40%の恒温恒湿槽で2週間、続いて80℃で48時間保持し、350nmの厚さで酸化ケイ素薄膜1103を形成する。
(24−4)第1のプラズマエッチング
酸化ケイ素薄膜1103に、実施例1〜23で用いたのと同じICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件で第1のプラズマエッチングを実施する。
反応性ガス:SF
ガス流量:20sccm
圧力 :10Pa
ICPパワー:100W
Biasパワー:10W
エッチング時間:45分間
エッチングレート:6nm/min
第1のプラズマエッチング後の酸化ケイ素薄膜1103には、円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、微細構造体が得られる。図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=65nm、Θ=25度、p=D=55nm、H/D=1.18、凸部の密度は7×1010個/cmと見積もられる。各凸部の間隔の分布はσ=24nmの正規分布、σ/pは0.39であり、複数の凸部がランダムな配置で酸化ケイ素薄膜表面を覆い尽くすように形成される。この構造体は実施例21で形成されたものと実質的に同じでものある。この第1のプラズマエッチングは、実施例21で述べたように、エッチングレートが10nm/min以下になるように行う必要がある。
形成した複数の微細凸部を有する構造体1104について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行った後、フッ素原子が微細構造体表面から深さ方向にわたり20nmの深さまで確認され、表面から20nmの深さにおけるフッ素原子の量は酸化ケイ素薄膜を構成するSi原子に対して40%と求められる。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置から、フッ素原子はSi原子と結合している事が確認できる。この事は、フッ素を酸化ケイ素薄膜1103内に含有させながら第1のプラズマエッチングが進行した事を示している。
(24−5)第2のプラズマエッチング
次に、上記、酸化ケイ素薄膜に形成された微細構造体1104を介して、シリカメソ構造体膜に、同じ装置を用いて第2のプラズマエッチングを実施する。第2のプラズマエッチングの条件は、Biasパワーを10Wから20Wに変更し、圧力を10Paから3Paに変更した以外は、第1のプラズマエッチングの条件と同じで、エッチング時間は10分間とする。この第2のプラズマエッチングの条件において、酸化ケイ素薄膜のエッチングレートは、シリカメソ構造体膜のエッチングレートに比較して小さい。これは、シリカメソ構造体膜、及び酸化ケイ素薄膜を、各々、別のリファレンス基板上に単独で成膜したものを参照サンプルとして、第2のプラズマエッチングの条件におけるエッチングレートを測定することで確認される。本実施例における第2のプラズマエッチングの条件においては、シリカメソ構造体薄膜のエッチングレートは30nmであるのに対して、酸化ケイ素膜のエッチングレートは15nmとなり、酸化ケイ素薄膜の方が、エッチングレートが遅いことが確認される。
第2のプラズマエッチング後、酸化ケイ素薄膜は完全に除去され、露出したシリカメソ構造体膜には、円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、微細構造体1106が得られる。図1(b)の模式図に示す数値の平均値は、それぞれ、H=230nm、Θ=13度、p=D=62nm、H/D=3.7、凸部の密度は7.0×1010個/cmと見積もられる。各凸部の間隔の分布はσ=24nmの正規分布、σ/pは0.39であり、複数の凸部がランダムな配置でシリカメソ構造体膜表面を覆い尽くすように形成されていることが確認される。
(24−6)多孔質化
実施例2の(2−2−3)と同じ方法によって細孔内の有機物を除去してメソポーラスシリカ膜とする。
(24−7)
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。本実施例で作製した、本発明の構造体を表面に形成した石英ガラスの反射率は1.4%となり、構造体を形成していない石英基板の反射率5.0%に比較して大幅に反射率が低減されている。なお、有機物がメソ孔内に残存している、多孔質化前の構造体でも、反射率は2.8%と、石英基板の反射率より低い。これより、本実施例で作製した、メソポーラスシリカから構成される本発明の構造体は反射防止膜として機能することが示される。
(実施例25)
実施例25では、光学ガラス基板上に、チタニアメソ構造体膜を形成した上に、該チタニアメソ構造体よりもエッチングレートの小さい緻密な酸化ケイ素薄膜を形成して、積層膜を作製し、先ず表面の酸化ケイ素薄膜に対して第1のプラズマエッチングを行って、酸化ケイ素薄膜に複数の微細な凸部を有する構造体を形成し、続いて、前記酸化ケイ素薄膜に形成された構造体を介して、下地のチタニアメソ構造体膜に対して第2のプラズマエッチング行うことで、チタニアメソ構造体膜にアスペクト比の大きな複数の微細な凸部を有する構造体を形成する例について記載する。
本実施例も、図11を用いて説明する。
(25−1)基板準備
基体1101として、屈折率1.6の光学ガラス基板を準備する。
(25−2)チタニアメソ構造体膜形成
実施例3の(3−2)と同じ工程によってチタニアメソ構造体膜1102を形成する。得られる膜の構造は、実施例3で記載したものと同じである。
(25−3)酸化ケイ素薄膜の作製
実施例24の(24−3)と同じ工程によって、実施例24で作製したものと同じ膜厚350nmの酸化ケイ素薄膜1102を形成する。
(25−4)第1のプラズマエッチング
実施例24の(24−4)と同一の装置と条件を用いて、酸化ケイ素薄膜1103に第1のプラズマエッチングを実施する。酸化ケイ素薄膜に形成される構造体の構造は、実施例24で作製されたものと同じである。
(25−5)第2のプラズマエッチング
次に、上記、酸化ケイ素薄膜に形成された微細構造体1104を介して、チタニアメソ構造体膜に、同じ装置を用いて第2のプラズマエッチングを実施する。第2のプラズマエッチングの条件は、実施例24の(24−5)に記載したのと同一の条件である。エッチング時間も実施例24と同じ10分間とする。この第2のプラズマエッチングの条件においては、チタニアメソ構造体膜のエッチングレートは30nmであるのに対して、酸化ケイ素薄膜のエッチングレートは15nmとなり、酸化ケイ素薄膜の方が、エッチングレートが遅いことが確認される。
第2のプラズマエッチング後、酸化ケイ素薄膜は完全に除去され、露出したチタニアメソ構造体膜には、円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、微細構造体1106が得られる。図1(b)の模式図に示す数値の平均値は、それぞれ、H=220nm、Θ=13度、p=D=60nm、H/D=3.7、凸部の密度は7.2×1010個/cmと見積もられる。各凸部の間隔の分布はσ=15nmの正規分布、σ/pは0.25であり、複数の凸部がランダムな配置でチタニアメソ構造体膜表面を覆い尽くすように形成されていることが確認される。
本実施例で作製した、複数の微細な凸部を有するチタニアメソ構造体から構成される構造体を形成した光学ガラス基板の反射率は、2.6%で、コーティングを施していない光学ガラスの反射率の1/2以下の低反射が実現できることが確認される。
(実施例26)
実施例26では、光学ガラス基板上に、ジルコニアメソ構造体膜を形成した上に、該ジルコニアメソ構造体よりもエッチングレートの小さい緻密な酸化ジルコニウム薄膜を形成して、積層膜を作製し、先ず表面の酸化ジルコニウム薄膜に対して第1のプラズマエッチングを行って、酸化ジルコニウム薄膜に複数の微細な凸部を有する構造体を形成し、続いて、前記酸化ジルコニウム薄膜に形成された構造体を介して、下地のジルコニアメソ構造体膜に対して第2のプラズマエッチング行うことで、ジルコニアメソ構造体膜にアスペクト比の大きな複数の微細な凸部を有する構造体を形成する例について記載する。
本実施例も、図11を用いて説明する。
(26−1)基板準備
基体1101として、屈折率1.6の光学ガラス基板を準備する。
(26−2)ジルコニアメソ構造体膜形成
実施例4の(4−2)と同じ工程によってジルコニアメソ構造体膜1102を形成する。得られる膜の構造は、実施例4で記載したものと同じである。
(26−3)酸化ジルコニウム薄膜の作製
マグネトロンスパッタリングにより、膜厚350nmの酸化ジルコニウム薄膜1103を形成する。
(26−4)第1のプラズマエッチング
実施例24の(24−4)と同一の装置と条件を用いて、酸化ジルコニウム薄膜1103に第1のプラズマエッチングを実施する。
第1のプラズマエッチング後の酸化ジルコニウム薄膜1103には、円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、微細構造体が得られる。図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=60nm、Θ=25度、p=D=55nm、H/D=1.09、凸部の密度は6.5×1010個/cmと見積もられる。各凸部の間隔の分布はσ=18nmの正規分布、σ/pは0.36であり、複数の凸部がランダムな配置で酸化ジルコニウム薄膜表面を覆い尽くすように形成される。この第1のプラズマエッチングは、実施例21で述べたように、エッチングレートが10nm/min以下になるように行う必要がある。
形成した複数の微細凸部を有する構造体1104について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行った後、フッ素原子が微細構造体表面から深さ方向にわたり20nmの深さまで確認され、表面から20nmの深さにおけるフッ素原子の量は酸化ジルコニウム薄膜を構成するZr原子に対して35%と求められる。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置から、フッ素原子はZr原子と結合している事が確認できる。この事は、フッ素を酸化ジルコニウム薄膜1103内に含有させながら第1のプラズマエッチングが進行した事を示している。
(26−5)第2のプラズマエッチング
次に、上記、酸化ジルコニウム薄膜に形成された微細構造体1104を介して、ジルコニアメソ構造体膜に、同じ装置を用いて第2のプラズマエッチングを実施する。第2のプラズマエッチングの条件は、実施例24の(24−5)に記載したのと同一の条件である。エッチング時間は15分間とする。この第2のプラズマエッチングの条件においては、ジルコニアメソ構造体膜のエッチングレートは25nmであるのに対して、酸化ジルコニウム薄膜のエッチングレートは10nmとなり、酸化ジルコニウム薄膜の方が、エッチングレートが遅いことが確認される。
第2のプラズマエッチングの後、酸化ジルコニウム薄膜は完全に除去され、露出したジルコニアメソ構造体膜には、円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、微細構造体1106が得られる。図1(b)の模式図に示す数値の平均値は、それぞれ、H=170nm、Θ=13度、p=D=55nm、H/D=3.1、凸部の密度は6.5×1010個/cmと見積もられる。各凸部の間隔の分布はσ=18nmの正規分布、σ/pは0.36であり、複数の凸部がランダムな配置でジルコニアメソ構造体膜表面を覆い尽くすように形成されていることが確認される。
本実施例で作製した、複数の微細な凸部を有するジルコニアメソ構造体から構成される構造体を形成した光学ガラス基板の反射率は、2.5%で、コーティングを施していない光学ガラスの反射率の1/2以下の低反射が実現できることが確認される。
(実施例27)
実施例27は、基板上に形成したシリカメソ構造体膜1002に対してプラズマエッチングを施す際に、エッチングチャンバーの部材に起因するアルミニウムを含むコンタミネーション1003を、島状に堆積させながらエッチングを進行させ、複数の、底部から先端に向かう方向に沿って垂直な面で前記凸部を切断した時の断面の面積が、前記方向に沿って小さくなる形状のピラー状凸部1004を有する構造体を得、ポーラス化した後、メソ孔内にチタニアを導入することにより、構造体と光学ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。図10を用いて本実施例を説明する。
(27−1)基板準備
基板1001として屈折率1.6の光学ガラス基板を準備する。
(27−2)シリカメソ構造体膜形成
実施例1の(1−1)から(1−2)と同じ方法で、光学ガラス基板1001上にシリカメソ構造体膜1002を形成した。得られた膜の構造は、実施例1で作製したものと実質的に同じ構造を有するものである。
(27−3)プラズマエッチング
上記シリカメソ構造体膜1002に、実施例1〜26で使用したものと同じ、ICP型のプラズマエッチング装置を用いて、以下の条件でプラズマエッチングを施した。
反応性ガス:SF6
ガス流量:20sccm
圧力 :0.3Pa
ICPパワー:100W
Biasパワー:20W
エッチング時間:24分間
プラズマエッチング後のシリカメソ構造体膜表面には高さの揃った複数のピラー状の凸部が互いに隣接するように形成された微細構造体1004が得られた。個々のピラー状の凸部は、その底部から先端に向う方向に垂直な面で凸部を切断した時の断面の面積が当該方向に沿って小さくなる形状を有していた。本実施例で作製された複数のピラー凸部を有する微細構造体の走査電子顕微鏡写真を図18(鳥瞰図)に示す。図18(b)は図18(a)の高倍率像である。図1(b)の模式図に示す数値の平均値は、それぞれ、H=450nm、p=90nm、D=90nm、T=50nm、H/D=5.0と求められた。凸部の密度は5.2×1010個/cmと見積もられた。ピラー状構造の間隔の分布はσ=30nmの正規分布であり、σ/pは0.42であった。
プラズマエッチング後の微細構造体1004について、エックス線光電子分光法により組成分析を行ったところ、微細構造体を構成する組成であるSi、Oとエッチングガスの組成であるF原子に加え、Alが5%の元素比率で検出された。Alはエッチング装置の内部の構成材料に含まれる元素であり、プラズマエッチング中にコンタミネーションとしてシリカメソ構造体膜表面に飛散し、島状に堆積したものである。Alはフッ素系のガスと蒸気圧の低いAlFを形成し、シリカのエッチングを強く妨げる。この結果、上記のような、高さの揃った、複数のピラー状の微細な凸部を有する構造体が形成される。
(27−4)多孔質化
形成したメソ構造体膜を、実施例2の(2−2−3)と同様に、焼成炉にて大気雰囲気下で400℃4時間焼成し、鋳型として、細孔中に保持されていた有機成分を除去して、メソポーラスシリカ膜とした。
(27−5)メソ孔内への無機材料導入
上記の工程で作製された、複数のピラー状の凸部を有するメソポーラスシリカ膜から成る構造体のメソ孔内に、実施例7の(7−4)と同じ減圧CVD法によって、チタニアを導入する。CVDの条件は、実施例7の(7−4)に記載したものと同じで、時間は5時間とした。本実施例の、複数のピラー状凸部を有する構造体の場合にも、この条件のCVDによって、微細構造体表面から基板界面近傍までTi原子がTi/Si原子比率で均一になるように導入されていることが、エックス線光電子分光法による分析で明らかとなり、Ti原子はTi/Si原子比率で45%程度導入されていることがわかった。この比率は、メソ孔の充填率60%に相当する。この条件は、チタニア導入後のメソポーラスシリカ膜の屈折率が1.6になる条件である。エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置からTi原子はTiOとして存在している事が確認できる。得られた構造体は、ピラー状の凸の底部から先端に向う方向に有見かけの屈折率が小さくなっており、それは、底部から先端に向う方向に垂直な面で切断した時の断面の面積が当該方向に沿って小さくなる個々のピラー状凸部の形態に起因する。
(27−5)反射率測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行った。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入した、複数のピラー状凸部を有するメソポーラスシリカから構成される構造体を形成した光学ガラスの反射率は0.5%であった。比較として反射防止構造を設けない、光学ガラス基板の反射率を同様な方法で測定すると5%であり、本実施例で作製した、屈折率の制御された、複数の微細凸部を有する構造体形成により、反射率が低減されている事が確認された。
(実施例28)
実施例28では、曲率を有する基板上に、実施例27と同じ構成の、メソ孔内にチタニアを導入したメソポーラスシリカ膜で構成される、複数のピラー状の微細な凸部を有する構造体を形成し、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。
(28−1)基板準備
基板として、凸面の曲率半径60mm、凹面の曲率半径25mmのレンズを準備する。レンズの材質は、実施例7で用いた光学ガラスである。
(28−2)シリカメソ構造体膜形成
(28−2−1)シリカメソ構造体膜の前駆体溶液調製
実施例1の(1−2−1)と同じ工程で、実施例1と同じシリカメソ構造体の前駆体溶液を作製する。
(28−2−2)シリカメソ構造体膜の成膜
実施例19の(19−2−2)と同じ工程で、実施例19で作製したものと同じシリカメソ構造体膜を、凸面を有する基板、凹面を有する基板上にそれぞれ成膜する。
(28−3)プラズマエッチング
凸面基板、及び凹面基板上に形成した、上記シリカメソ構造体膜に、実施例27の(27−3)と同じ装置と条件、時間で、プラズマエッチングを施す。電子顕微鏡による観察により、曲面を有する基板上に形成したシリカメソ構造体膜にも、実施例27で平板基板上のシリカメソ構造体膜に形成されたのと実質的に同一の構造の、複数のピラー状の微細凸部から構成される構造体が形成されることが確認される。また、実施例27同様、表面にはエッチング装置の内部の構成材料に含まれるAlが検出され、実施例27に記載の機構により、このピラー状微細凸部が形成されることが確認される。
(28−4)多孔質化
形成したメソ構造体膜を、実施例2の(2−2−3)と同様に、焼成炉にて大気雰囲気下で400℃4時間焼成し、鋳型として、細孔中に保持されていた有機成分を除去して、メソポーラスシリカ膜とする。
(28−5)メソ孔内への無機材料導入
上記の工程で作製された、複数のピラー状の凸部を有するメソポーラスシリカ膜から成る構造体のメソ孔内に、実施例7の(7−4)と同じ減圧CVD法によって、チタニアを導入する。チタニア導入後の、本発明の構造体の膜のエックス線光電子分光法による分析の結果、本実施例でも実施例28とほぼ同じ、メソ孔内へのチタニア導入が確認される。
(28−6)反射率の測定
実施例19の(19−5)で、曲率を有する基板に対して行ったのと同じ方法で、反射率の測定を行う。本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入したメソポーラスシリカから構成される、複数のピラー状凸部を有する構造体を形成した、レンズの反射率は、凹レンズ、凸レンズともに、約0.5%と求められる。これより、本実施例で作製した、屈折率の制御された、複数の微細凸部を有する構造体形成により、曲面を有する基板の反射率が低減される事が確認される。
(実施例29)
実施例29は、基板上に形成したチタニアメソ構造体膜1002に対してプラズマエッチングを施す際に、エッチングチャンバーの部材に起因するアルミニウムを含むコンタミネーション1003を、島状に堆積させながらエッチングを進行させ、複数の、底部から先端に向かう方向で切断した時の断面の面積が当該方向に沿って減少する形状のピラー状凸部1004を有する構造体を得、メソ孔内にシリカを導入した後有機成分を除去し、構造体と光学ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。
(29−1)基板準備
基板1001として屈折率1.7の光学ガラス基板を準備する。
(29−2)チタニアメソ構造体膜形成
実施例3の(3−2−1)から(3−2−2)に記載したのと同じ工程により、実施例3に記載したものと基本的に同一の構造を有するチタニアメソ構造体膜を作製する。
(29−3)プラズマエッチング
実施例27の(27−3)と同じ装置、条件でプラズマエッチングを行い、チタニアメソ構造体膜に、複数のピラー状の微細凸部から構成される構造体を形成する。
プラズマエッチング後のチタニアメソ構造体膜表面には高さの揃った複数のピラー状の凸部が互いに隣接するように形成された微細構造体1004が得られる。個々のピラー状の凸部は、その底部から先端に向う方面で切断した時の断面の面積が当該方向沿って小さくなる形状を有している。得られた構造体の解析より、図1(b)の模式図に示す数値の平均値は、それぞれ、H=500nm、p=90nm、D=90nm、T=50nm、H/D=5.6と求められる。凸部の密度は5.2×1010個/cmと見積もられる。ピラー状構造の間隔の分布はσ=30nmの正規分布であり、σ/pは0.42である。
ピラー状の微細凸部を形成した後の、チタニアメソ構造体膜表面のエックス線光電子分光分析によって、膜表面には、メソ構造体を構成する組成であるTi、O、Cとエッチングガスの組成であるF原子に加え、Alが5%の元素比率で検出された。Alはエッチング装置の内部の構成材料に含まれる元素であり、プラズマエッチング中にコンタミネーションとしてチタニアメソ構造体膜表面に飛散し、島状に堆積したものである。
(29−4)メソ孔内へのシリカの導入
上記のように作製した、複数のピラー状の微細凸部を有する構造体を形成したチタニアメソ構造体を作製した基板を、TMOSの蒸気に暴露することで、メソ孔内にシリカを導入し、続いて有機成分を除去する。この工程は、実施例10の(10−4)と同じ工程である。エックス線光電子分光法による深さ方向分析により、シリカ導入後の、微細ピラー状凸部を形成したチタニアメソ構造体膜中では、Si原子がTi原子比率で約49%程度、均一に導入されていることがわかる。
(29−5)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にシリカを導入した、複数のピラー状凸部を有するメソポーラスチタニアから構成される構造体を形成した光学ガラスの反射率は0.4%である。これより、本実施例で作製した、屈折率の制御された、複数の微細凸部を有する構造体形成により、基板の反射率が低減される事が確認される。
(実施例30)
実施例30は、基板上に形成したジルコニアメソ構造体膜1002に対してプラズマエッチングを施す際に、エッチングチャンバーの部材に起因するアルミニウムを含むコンタミネーション1003を、島状に堆積させながらエッチングを進行させ、複数の、底部から先端に向かう方向で切断した時の断面の面積が当該方向に沿って減少する形状のピラー状凸部1004を有する構造体を得、メソ孔内にシリカを導入した後有機成分を除去し、構造体と光学ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。
(30−1)基板準備
基板1001として屈折率1.7の光学ガラス基板を準備する。
(30−2)ジルコニアメソ構造体膜形成
実施例4の(4−2−1)から(4−2−2)に記載したのと同じ工程により、実施例4に記載したものと基本的に同一の構造を有するジルコニアメソ構造体膜を作製する。
(30−3)プラズマエッチング
実施例27の(27−3)と同じ装置、条件でプラズマエッチングを行い、ジルコニアメソ構造体膜に、複数のピラー状の微細凸部から構成される構造体を形成する。エッチング時間のみ変更し、18分間とする。
プラズマエッチング後のジルコニアメソ構造体膜表面には高さの揃った複数のピラー状の凸部が互いに隣接するように形成された微細構造体1004が得られる。個々のピラー状の凸部は、その底部から先端に向う方向に垂直な面で切断した時の断面の面積が当該方向に沿って小さくなる形状を有している。得られた構造体の解析より、図1(b)の模式図に示す数値の平均値は、それぞれ、H=400nm、p=90nm、D=90nm、T=50nm、H/D=4.4と求められる。凸部の密度は5.2×1010個/cmと見積もられる。ピラー状構造の間隔の分布はσ=30nmの正規分布であり、σ/pは0.42である。
ピラー状の微細凸部を形成した後の、ジルコニアメソ構造体膜表面のエックス線光電子分光分析によって、膜表面には、メソ構造体を構成する組成であるZr、O、Cとエッチングガスの組成であるF原子に加え、Alが5%の元素比率で検出された。Alはエッチング装置の内部の構成材料に含まれる元素であり、プラズマエッチング中にコンタミネーションとしてジルコニアメソ構造体膜表面に飛散し、島状に堆積したものである。
(30−4)メソ孔内へのシリカの導入
上記のように作製した、複数のピラー状の微細凸部を有する構造体を形成したジルコニアメソ構造体を作製した基板を、TMOSの蒸気に暴露することで、メソ孔内にシリカを導入し、続いて有機成分を除去する。この工程は、実施例11の(11−4)と同じ工程である。エックス線光電子分光法による深さ方向分析により、シリカ導入後の、微細ピラー状凸部を形成したジルコニアメソ構造体膜中では、Si原子がZr原子比率で約49%程度、均一に導入されていることがわかる。
(30−5)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にシリカを導入した、複数のピラー状凸部を有するメソポーラスジルコニアから構成される構造体を形成した光学ガラスの反射率は0.7%である。これより、本実施例で作製した、屈折率の制御された、複数の微細凸部を有する構造体形成により、基板の反射率が低減される事が確認される。
(実施例31)
実施例31では、実施例2で作製した、メソポーラスシリカから構成される、複数の円錐状の微細な凸部を有する本発明の構造体に対して、疎水性のトリメチルシリル基で外部表面、及びメソ孔表面を修飾し、撥水性の膜を得た例について記載する。
(31−1)メソポーラスシリカ膜への、複数の円錐状の微細な凸部を有する構造体形成
実施例2の(2−1)から(2−3)に記載した手順で、実施例2で作製したものと実質的に同じ、複数の円錐状微細凸部を有する構造体を、メソポーラスシリカ膜に形成した。構造体を特徴づける図1(b)の模式図に示す数値、凸部の密度及び分布は、実施例2で記載した値とほぼ同じであった。
(31−2)疎水性有機基を含む官能基による表面修飾
密閉可能なデシケーター内に、上記の、複数の円錐状微細凸部を有する構造体を有するメソポーラスシリカ膜を形成した基板を設置し、デシケーター中に200μLのヘキサメチルジシラザンを投入し、密閉後、24時間室温にて静置した。ヘキサメチルジシラザンは、メソポーラスシリカ膜中に存在するシラノール基と反応して、表面に疎水性のトリメチルシリル基を共有結合によって結合させることのできるシランカップリング剤である。この反応の進行は、修飾工程後の赤外吸収スペクトルにおいてシラノール基に由来するO−H結合の吸収が減少することにより確認される。
(31−3)撥水性評価
上記工程で作製された、疎水基で表面修飾を行ったメソポーラスシリカより構成される本発明の構造体撥水性材料膜を形成した基板について、表面に水滴を滴下した際の接触角を接触角計により評価した。結果を図20(a)に示す。この時、接触角は160度となり、膜表面が極めて高い撥水性を示すことが確認された。
比較のため、複数の円錐状微細凸部を有する本発明の構造体を形成しないメソポーラスシリカ膜に、ヘキサメチルジシラザンを用いて同様の修飾を行った膜についても、同様な手法で水滴の接触角を測定した結果、図20(b)に示すように、接触角は100度であり、本発明の構造を形成した場合に、上記の極めて高い撥水性が発現されることが確認された。
(実施例32)
実施例32では、実施例2で作製した、メソポーラスシリカから構成される、複数の円錐状の微細な凸部を有する本発明の構造体に対して、疎水性の3,3,3−トリフルオロ0プロピルジメチルシリル基で外部表面、及びメソ孔表面を修飾し、撥水性の膜を得る例について記載する。
(32−1)メソポーラスシリカ膜への、複数の円錐状の微細な凸部を有する構造体形成実施例31の(31−1)と同じ工程で、実施例31と同じ、複数の円錐状微細凸部を有する構造体を、メソポーラスシリカ膜に形成する。
(32−2)疎水性有機基を含む官能基による表面修飾
実施例31と同様な手法によって、メソポーラスシリカ膜の表面修飾を行う。本実施例では、200μLの3,3,3−トリフルオロプロピルジメチルクロロシランを用いて表面の疎水化処理を行う。
修飾工程後の赤外吸収スペクトルにおいてシラノール基に由来するO−H結合の吸収が減少することから、このシランカップリング剤が共有結合でシラノール基のO−Hサイトに結合することが確認される。
(32−3)撥水性評価
上記工程で作製される、疎水基で表面修飾を行ったメソポーラスシリカより構成される本発明の構造体撥水性材料膜を形成した基板について、表面に水滴を滴下した際の接触角を接触角計により評価する。本実施例で作製した構造体を形成した基板上での、水の接触角は165度となり、膜表面が極めて高い撥水性を示すことが確認される。
(実施例33)
実施例33では、周期とサイズの異なる複数の凹凸形状を有する、本発明の構造体を作製し、疎水性のトリメチルシリル基で外部表面、及びメソ孔表面を修飾し、撥水性の膜を得る例について記載する。
(33−1)シリカメソ構造膜の作製
実施例1の(1−1)から(1−2−2)と同じ工程で、実質的に実施例1と同じ構造を有するシリカメソ構造体膜を、石英基板上に作製する。
(33−2)第1の凹凸形状の形成
以下の工程は、図21を用いて説明する。上記工程で石英基板2102上に作製した、シリカメソ構造体膜2101表面上に、図21(b)に示すように、直径2μmのシリカ微小球2103の充填単層膜を形成する。次にこれをマスクとして用い、Arガスを用いたドライエッチング処理を施す。その結果、図21(c)に示すような、円錐状の第一の凹凸構造を表面に有するシリカメソ構造体膜2104が得られる。この時、図19(a)で示すところのp´は2μm、H´は500nmである。このドライエッチング工程では、下記の微細構造が形成されないようなエッチングガスを用いて行う。
(33−3)多孔質化
この第1の凹凸形状を形成したシリカメソ構造体膜を、焼成炉にて大気雰囲気下で400℃4時間焼成し、鋳型として用いた有機成分を除去して、メソポーラスシリカ膜とする。
(33−4)プラズマエッチング
実施例2の(2−3)と同じ装置、同じ条件でプラズマエッチングを施し、実施例2で平坦基板のメソポーラスシリカ膜に形成したものと実質的に同じ、複数の円錐状微細凸部から形成される構造体を形成する。構造体を特徴づける図1(b)の模式図に示す数値、凸部の密度及び分布は、実施例2で記載した値とほぼ同じである。この微細構造体の凹凸は、前記第一の凹凸構造と比較して、周期、高低差とも小さい。形成される構造体を模式的に示したのが図21(d)である。
(33−5)疎水性有機基を含む官能基による表面修飾
実施例31の(31−2)と同じ工程により、メソポーラスシリカとヘキサメチルジシラザンとを反応させ、メソポーラスシリカ表面を疎水性のトリメチルシリル基で修飾する。
(33−6)撥水性評価
上記工程で作製される、疎水基で表面修飾を行った、複数の凹凸構造を有する、メソポーラスシリカより構成される本発明の構造体撥水性材料膜を形成した基板について、表面に水滴を滴下した際の接触角を接触角計により評価する。本実施例で作製した構造体を形成した基板上での、水の接触角は170度となり、膜表面が極めて高い撥水性を示すことが確認される。
(実施例34)
実施例34では、実施例7に記載したのと同様に、光学ガラス基板上に成膜したメソポーラスシリカ膜に、複数の微細な凸部を有する構造体を形成した後、メソ孔内にチタニアを導入することにより、構造体と光学ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。実施例7との相違点は、メソポーラス構造の細孔構造にあり、本実施例で記述するメソポーラスシリカ膜は、ケージ(楕円球)状細孔が、3次元的に連結した構造を有する。
(34−1)基板準備
基板として屈折率1.6の光学ガラス基板を準備する。
(34−2)メソポーラスシリカ膜形成
(34−2−1)シリカメソ構造体膜の前駆体溶液調製
メソ構造体の前駆体溶液は、エタノール、0.01M塩酸、テトラエトキシシランを加え20分間混合した溶液にブロックポリマーのエタノール溶液を加え、3時間攪拌して調製される。ブロックポリマーとしては、EO(20)PO(70)EO(20)を使用する。エタノールにかえてメタノール、プロパノール、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリルを使用することも可能である。混合比(モル比)は、テトラエトキシシラン:1.0、HCl:0.0011、水:6.1エタノール:8.7、ブロックポリマー:0.0048とする。溶液は、膜厚調整の目的で適宜希釈して使用する。
(34−2−2)シリカメソ構造体膜の成膜
実施例1の(1−2−2)で記述したのと同じディップコーティングにより、前記光学ガラス基板上にシリカメソ構造体膜を成膜する。
(34−2−3)多孔質化
実施例2の(2−2−3)と同じ条件で焼成し、有機成分を除去し、メソポーラスシリカ膜とする。このメソポーラスシリカ膜断面を走査電子顕微鏡で観察すると、本実施例で作製した膜中では、均一な径の楕円球状のメソ孔が、六方細密充填構造をとって周期的に配置されていることが分かる。この膜中のメソ孔の周期的配置は、X線回折分析において、構造周期7.4nmに対応する回折ピークを確認することができることによって確認できる。
(34−3)プラズマエッチング
上記工程で作製されるメソポーラスシリカ膜に、実施例7の(7−3)と同じ条件でプラズマエッチングを施す。エッチング時間も実施例7と同一である。
プラズマエッチング後のメソポーラスシリカ膜表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成され、図1(b)の模式図に示す数値の平均値がそれぞれ、H=70nm、Θ=30度、p=50nm、T=80nm、H/D=1.4となるような凸部を表面に有する微細構造体が得られる。形成された微細構造体の走査電子顕微鏡写真を図13に示す。13(a)は断面の写真、13(b)は表面の写真である。凸部の密度は7.2×1010個/cmと見積もられる。凸部の間隔の分布はσ=16nmの正規分布であり、σ/pは0.30である。
このプラズマエッチング後の微細構造体について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行うと、フッ素原子が、光学ガラス基板との界面近傍に至るまで含有されていることがわかり、その量はSi原子比率で50%という値となる。尚、エックス線光電子分光分析による結合エネルギー位置からフッ素原子はSi原子と結合して存在している事が確かめられる。この事は、フッ素をメソポーラスシリカ膜内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
(34−4)メソ孔内への無機材料導入
上記工程により、複数の円錐状の微細凸部を形成したメソポーラスシリカ膜のメソ孔内に、実施例7の(7−4)と同じ減圧CVDプロセスにより、チタニアを導入する。実施例7との差異は、チタンイソプロポキシドの圧力を2Paに低下させたことと、CVD時間を10時間に延長したことの2点のみである。これは、本実施例のケージ状細孔を有するメソポーラスシリカのメソ孔内へのチタンイソプロポキシドの拡散が、シリンダー状のメソ孔に比較して低下しているためである。
(34−5)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にチタニアを導入したメソポーラスシリカから構成される本発明の構造体を形成した、光学ガラスの反射率は2%と求められ、メソポーラスシリカ膜への本発明の微細構造体形成と、メソ孔内へのチタニア導入による屈折率制御の効果により反射率が低減されている事が確認される。
(実施例35)
実施例35では、実施例10に記載したのと同様に、光学ガラス基板上に成膜したチタニアメソ構造体膜に微細構造体を形成し、メソ孔内にシリカを導入した後に有機成分を除去することにより、構造体と光学ガラス基板の屈折率のマッチングをとり、反射防止能を有する光学部材とする例について記載する。実施例10との相違点は、メソポーラス構造の細孔構造にあり、本実施例で記述するチタニアメソ構造体膜は、構造規定剤として、ブロックコポリマーEO(20)PO(70)EO(20)を、チタニア源としてチタニウムイソプロポキシド(TTIP)用いて作製される、ケージ(楕円球)状細孔が、3次元的に連結した構造を有するものである。
(35−1)基板準備
基板として屈折率1.6の光学ガラス基板を準備する。
(35−2)チタニアメソ構造体膜形成
(35−2−1)チタニアメソ構造体膜の前駆体溶液調製
チタニウムテトライソプロポキシド(TTIP)、ブロックコポリマー、塩酸、エタノール、水を、それぞれのモル比がTTIP:1.0、塩酸:1.9、水:7.2、ブロックコポリマー:0.010、エタノール17.6となるように混合し、溶液が完全に透明になるまで攪拌し、前駆体溶液を得る。
(35−2−2)チタニアメソ構造体膜の作製
上記光学ガラス基板に、実施例3の(3−2−2)と同じ条件のスピンコートプロセスによって、本実施例のチタニアメソ構造体膜を形成する。形成されたチタニアメソ構造体の膜厚はおよそ450nmである。
(35−3)プラズマエッチング
前記光学ガラス基板上に形成したメソ構造チタニア薄膜に対して、実施例3の(3−3)と同じ装置と条件で、プラズマエッチングを施す。プラズマエッチング後のチタニアメソ構造体膜表面には円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成されていることが、走査電子顕微鏡による観察で明らかとなり、図1(b)の模式図に示す数値の平均値は、それぞれ、H=90nm、Θ=25度、p=D=60nm、T=200nm、H/D=1.5となるような凸部を表面に有する微細構造体が得られた。ここで、凸部の密度は7.0×1010個/cmと見積もられた。各凸部の間隔の分布はσ=15nmの正規分布であり、σ/pは0.25である。
プラズマエッチング後に微細構造体について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が、微細構造体内に含有されており、その量はTi原子比率で25%という値であった。この事は、フッ素をメソ構造チタニア膜内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
(35−4)多孔質化
上記工程によって、表面に上記構造体を形成した、チタニアメソ構造体膜を、窒素雰囲気下300℃で熱処理してメソポーラス酸化チタン膜を得る。熱処理後の膜の赤外吸光分析によって、有機物がメソ孔から除去されていることが分かる。このメソポーラス酸化チタン膜を、X線回折分析で評価すると、構造周期6.5nmに対応する角度位置に、明瞭な回折ピークが観測され、作製したメソポーラスチタニア膜が、規則的に配列した細孔構造を有していることが分かる。また、透過電子顕微鏡によってこの膜を評価すると、膜厚方向に歪んだ、楕円球状細孔が六方細密充填された構造を有することが分かる。
(35−5)メソ孔内へのシリカの導入
上記のように作製した、複数の凸部を有する構造体を形成したチタニアメソ構造体を作製した基板を、容積70mlのオートクレーブ中に配置し、容器内にオルトケイ酸テトラメチル(TMOS)3mlを入れた後密閉し、50℃において2時間TMOSの蒸気に暴露させる処理を行い、チタニアメソ構造膜のメソ孔中にシリカを導入する。
エックス線光電子分光法により、本実施例で作製した微細構造体の表面から光学ガラス基板界面方向へと深さ方向分析を行うと、膜中にはSi原子がTi原子比率で約35%程度、比較的均一に導入されていることがわかる。
(35−6)反射率の測定
実施例1の(1−4)と同様な方法で、反射率の測定を行う。波長400nm〜700nmの範囲での平均反射率を算出すると、本実施例で作製した、細孔内にシリカを導入したメソポーラスチタニアから構成される本発明の構造体を形成した、光学ガラスの反射率は2%と求められ、メソポーラスチタニア膜への本発明の微細構造体形成と、メソ孔内へのシリカ導入による屈折率制御の効果により反射率が低減されている事が確認される。
(実施例36)
実施例36では、構造規定剤としてブロックコポリマーEO(20)PO(70)EO(20)を用い、チタニア源としてTTIPを用いて、導電性を有するシリコン基板上に作製したメソポーラス酸化チタン膜に対して、SFをエッチングガスに用いた反応性エッチングを行って、表面に複数の円錐状凸部を有する構造体を作製し、質量分析用基板として使用する例を記載する。
(36−1)基板の準備
低抵抗n型シリコンの(100)単結晶基板を準備する。
(36−2)メソポーラス酸化チタン膜の合成
上記低抵抗シリコン基板上に、実施例35の(35−2−1)から(35−2−2)の工程と同じ工程により、実質的に実施例35で作製したものと同じ構造、同じ膜厚のチタニアメソ構造体膜を作製する。
(36−3)プラズマエッチング
実施例35の(35−3)と同じ条件で、シリコン基板上に形成したメソ構造チタニア薄膜に対してプラズマエッチングを施す。プラズマエッチング後の膜表面の形状は、実施例35で形成された複数の微細錐体状凸部を有する構造体と実質的に同一のものである。
(36−4)多孔質化
上記工程によって、表面に上記構造体を形成した、チタニアメソ構造体膜を、窒素雰囲気下350℃で熱処理してメソポーラス酸化チタン膜を得る。熱処理後の膜の赤外吸光分析によって、有機物がメソ孔から除去されていることが分かる。このメソポーラス酸化チタン膜を、X線回折分析で評価すると、構造周期6.1nmに対応する角度位置に、明瞭な回折ピークが観測され、作製したメソポーラスチタニア膜が、規則的に配列した細孔構造を有していることが分かる。また、透過電子顕微鏡によってこの膜を評価すると、膜厚方向に歪んだ、楕円球状細孔が六方細密充填された構造を有することが分かる。
(36−5)作製したメソポーラス酸化チタン膜を用いた質量分析
上述のように作製した、表面に複数の微細な円錐状凸部を有する構造体を形成したメソポーラス酸化チタン膜を質量分析用基板に用いて、微小量試料の質量分析を行う。励起光としてはNレーザー(波長337nm)を用い、レーザーパルスを20パルス照射した結果を積算して1つのスペクトルを得る。また、同様のスペクトルを10スペクトル測定した結果をもって、質量分析の結果の基板間比較を行う。
心疾患の治療に用いられる、アテノロールの1μM水溶液を調整し、1μlを上記基板上に滴下して乾燥させる。基板としては、上記の手順で作製した、微細凸部有する構造体を形成したメソポーラス酸化チタン膜を用い、比較のために、同様のプロトコルで作製したプラズマエッチングによる微細凸部形成を行っていないメソポーラス酸化チタン膜についても同様の測定を行う。
どちらの基板を用いた場合でも、m/z=267.3に、プロトン化したアテノロールに起因するピークがスペクトル中に観測される。そのS/N値は、微細凸部を形成していない平坦な表面を有するメソポーラス酸化チタン膜の場合の117±44に対し、本発明の、表面に複数の微細な円錐状凸部を有する構造体を形成したメソポーラス酸化チタン膜を用いた場合には362±92であり、表面への微細構造形成によって、得られる質量分析スペクトルのS/N比が大きく向上する。これは、表面に本発明の、微細な円錐状凸部を有する構造体を形成したことによる、メソポーラス酸化チタン膜の反射率低下によるものである。
本発明の、表面に複数の微細な円錐状凸部を有する構造体形成したメソポーラス酸化チタン膜を、低湿度(20%RH)の空気中において1週間放置した後に、同様の試料の測定を行った結果、得られるスペクトルのS/N比はほとんど低下せず、本発明の質量分析用基板が、ポーラスシリコンに比較して、安定性という点において優れていることが確認される。
(実施例37)
実施例37では、構造規定剤としてブロックコポリマーEO(106)PO(70)EO(106)を用い、チタニア源としてTTIPを用いて、導電性を有するシリコン基板上に作製したメソポーラス酸化チタン膜に対して、SFをエッチングガスに用いた反応性エッチングを行って、表面に複数の円錐状凸部を有する構造体を作製し、質量分析用基板として使用する例を記載する。
(37−1)基板の準備
低抵抗n型シリコンの(100)単結晶基板を準備する。
(37−2)メソポーラス酸化チタン膜の合成
(37−2−1)チタニアメソ構造体膜の前駆体溶液調製
TTIP、ブロックコポリマー、塩酸、エタノール、水を、それぞれのモル比がTTIP:1.0、塩酸:1.9、水:7.2、ブロックコポリマー:0.010、エタノール17.6となるように混合し、溶液が完全に透明になるまで攪拌し、前駆体溶液を得る。
(37−2−2)チタニアメソ構造体膜の作製
上記低抵抗シリコン基板上に、実施例3の(3−2−2)と同じ条件のスピンコートプロセスによって、チタニアメソ構造体膜を形成する。形成されたチタニアメソ構造体の膜厚はおよそ500nmである。
(37−3)
上記低抵抗シリコン基板上に形成したメソ構造チタニア薄膜に対して、実施例3の(3−3)と同じ装置と条件で、プラズマエッチングを施す。プラズマエッチング後のチタニアメソ構造体膜表面には、円錐状の複数の凸部が互いに隣接するように形成されていることが、走査電子顕微鏡による観察で明らかとなり、図1(b)の模式図に示す数値の平均値は、それぞれ、H=100nm、Θ=25度、p=D=60nm、T=200nm、H/D=1.67となるような凸部を表面に有する微細構造体が得られた。ここで、凸部の密度は7.4×1010個/cmと見積もられた。各凸部の間隔の分布はσ=14nmの正規分布であり、σ/pは0.23である。
プラズマエッチング後に微細構造体について、エックス線光電子分光法により膜の深さ方向の組成分析を行ったところ、フッ素原子が、微細構造体内に含有されており、その量はTi原子比率で25%という値であった。この事は、フッ素をメソ構造チタニア膜内に含有させながらエッチングが進行した事を示している。
(37−4)多孔質化
上記工程によって、表面に上記構造体を形成した、チタニアメソ構造体膜を、窒素雰囲気下450℃で熱処理してメソポーラス酸化チタン膜を得る。熱処理後の膜の赤外吸光分析によって、有機物がメソ孔から除去されていることが分かる。このメソポーラス酸化チタン膜を、X線回折分析で評価すると、構造周期5.2nmに対応する角度位置に、明瞭な回折ピークが観測され、作製したメソポーラスチタニア膜が、規則的に配列した細孔構造を有していることが分かる。また、透過電子顕微鏡によってこの膜を評価すると、膜厚方向に歪んだ、楕円球状細孔が六方細密充填された構造を有することが分かる。さらに、この熱処理後の膜を、平行光学系を用いたX線回折分析で評価すると、アナターゼの結晶のピーク位置にブロードな回折ピークが観測されることから、細孔壁が一部結晶化し、アナターゼの微結晶が形成されていることが分かる。
(37−5)作製したメソポーラス酸化チタン膜を用いた質量分析
上述のように作製した、表面に複数の微細な円錐状凸部を有する構造体を形成したメソポーラス酸化チタン膜を質量分析用基板に用いて、実施例1と同様のプロトコルで微小試料の質量分析を行う。
血圧降下作用を持つ、9個のアミノ酸から成るペプチドである、濃度5μMのブラジキニンを含むクエン酸緩衝溶液を調整し、1μlを上記基板上に滴下して乾燥させる。基板としては、本実施例において、上記の手順で作製した、微細凸部有する構造体を形成したメソポーラス酸化チタン膜を用い、比較のために、同様のプロトコルで作製したプラズマエッチングによる微細凸部形成を行っていないメソポーラス酸化チタン膜についても同様の測定を行う。
どちらの基板を用いた場合でも、m/z=1060.2に、プロトン化したブラジキニンに起因するピークがスペクトル中に観測される。そのS/N値は、微細凸部を形成していない平坦な表面を有するメソポーラス酸化チタン膜の場合の390±181に対し、本発明の、表面に複数の微細な円錐状凸部を有する構造体を形成したメソポーラス酸化チタン膜を用いた場合には862±272であり、表面への微細構造形成によって、得られる質量分析スペクトルのS/N比が大きく向上する。これは表面に本発明の、複数の微細な円錐状凸部を形成したことによる、メソポーラス酸化チタン膜の反射率低下によるものである。
本発明の、表面に複数の微細な円錐状凸部を有する構造体を形成したメソポーラス酸化チタン膜を、低湿度(20%RH)の空気中において1週間放置した後に、同様の試料の測定を行った結果、得られるスペクトルのS/N比はほとんど低下せず、本発明の質量分析用基板が、ポーラスシリコンに比較して、安定性という点において優れていることが確認される。
(実施例38)
実施例38では、石英ガラス基板上に成膜した一軸配向メソポーラスチタニア構造体膜に微細構造体を形成する例について記載する。
(38−1)基板準備
表面に溶媒洗浄及びUVオゾン洗浄を施した石英ガラス基板を準備し、基板上に化学式(1)に示したポリイミドからなる高分子膜を形成する。この高分子膜にラビング処理を行い、ポリイミド配向膜を得る。
化学式(1)
(38−2)チタニアメソ構造体膜の成膜
(38−2−1)チタン酸テトライソプロピル、界面活性剤、1−ブタノール、塩酸、水を混合してゾル反応液を作製する。界面活性剤にはBrij56(商品名、Aldrich社製)を用い、混合比(モル比)は、チタン酸テトライソプロピル:1.0、界面活性剤:0.15、1−ブタノール:29、塩酸:1.5、水:5.5とし、反応時間は3時間とする。
(38−2−2)(38−2−1)で作製するゾル反応液をディップコート法により(38−1)で得るポリイミド配向膜上に塗布し、一軸配向チタニアメソ構造体膜を得る。テトラエトキシシランの蒸気処理により一軸配向チタニアメソ構造体膜の壁部を補強する。
(38−3)多孔質化
マッフル炉を用いて400℃で4時間焼成して界面活性剤とポリイミド配向膜を焼成除去し、一軸配向メソポーラスチタニア膜を得る。
このメソポーラスチタニア膜は、X線回折装置による測定の結果、膜厚方向の構造周期d値が4nmで、シリンダー状のメソ細孔がラビング方向と垂直方向に配向していることが明らかとなる。この膜のΔnは0.1となる。
(38−4)プラズマエッチング
この一軸配向メソポーラスチタニア膜に対して、ICP型のプラズマエッチング装置を用いて、Cを反応性ガスとしてプラズマエッチングを実施する。
その結果、高さHの平均が約100nm、凸部の先端間の平均間隔Pが60nm、及び断面形状が略三角形で頂角が約40°の凸部が、一軸配向メソポーラスチタニア膜の表面に形成される。また上記Pの分布はσ=14nmの正規分布となり、σ/Pは0.23となる。
この時の、位相板全体としての膜厚Tは約550nmで、波長400nmに対するレターデーションは50nmとなる。これは波長400nmの入射光に対して1/8波長板として機能する。また、垂直方向の反射率は約0.4%で、高い反射防止効果が得られる。
(実施例39)
実施例39では、石英ガラス基板上に成膜した一軸配向メソポーラスチタニア構造体膜に微細構造体を形成する例について記載する。
実施例38の(38−1)〜(38−3)と同様の手順により、一軸配向メソポーラスチタニア構造膜を得る。
この一軸配向メソポーラスチタニア膜に対して、ICP型のプラズマエッチング装置を用いて、Cを反応性ガスとしてプラズマエッチングを実施する。このとき、実施例38よりも高さHが高くなるように、エッチング時間が長い条件を用いる。その結果、高さHの平均が約200nm、凸部の先端間の平均間隔Pが70nm、及び断面形状が略三角形で頂角が約20°の凸部が、一軸配向メソポーラスチタニア膜の表面に形成される。また上記Pの分布はσ=20nmの正規分布であり、σ/Pは0.29である。
この時の、位相板全体としての膜厚Tは約1100nmで、波長400nmに対するレターデーションは100nmとなる。これは波長400nmの入射光に対して1/4波長板として機能する。また、垂直方向の反射率は約0.2%で、高い反射防止効果が得られる。
(実施例40)
実施例40では、石英ガラス基板上に成膜した一軸配向メソポーラス酸化スズ構造体膜に微細構造体を形成する例について記載する。
(40−1)基板準備
実施例38の(38−1)と同様の手法により、ポリイミド配向膜を得る。
(40−2)酸化スズメソ構造体膜の成膜
(40−2−1)
塩化スズ、界面活性剤、エタノール、水を混合してゾル反応液を作製する。界面活性剤にはBrij76(商品名、Aldrich社製)を用い、混合比(モル比)は、塩化スズ:3.6、界面活性剤:1.0、エタノール:127、水:20とし、反応時間は30分とする。
(40−2−2)(40−2−1)で作製するゾル反応液をディップコート法により(40−1)で得るポリイミド配向膜上に塗布し、一軸配向酸化スズメソ構造体膜を得る。テトラエトキシシランの蒸気処理により一軸配向酸化スズメソ構造体の壁部を補強する。
(40−3)多孔質化
マッフル炉を用いて400℃で4時間焼成して界面活性剤とポリイミド配向膜を焼成除去し、一軸配向メソポーラス酸化スズ膜を得る。
このメソポーラス酸化スズ膜は、X線回折装置による測定の結果、膜厚方向の構造周期d値が4nmで、シリンダー状のメソ細孔がラビング方向と垂直方向に配向していることが明らかとなる。この膜のΔnは0.075となる。
(40−4)プラズマエッチング
この一軸配向メソポーラス酸化スズ膜に対して、ICP型のプラズマエッチング装置を用いて、Cを反応性ガスとしてプラズマエッチングを実施する。
その結果、高さHの平均が約200nm、凸部の先端間の平均間隔Pが70nm、及び断面形状が略三角形で頂角が約20°の凸部が、一軸配向メソポーラス酸化スズ膜の表面に形成される。また上記Pの分布はσ=22nmの正規分布となり、σ/Pは0.31となる。
この時の、位相板全体としての膜厚Tは約770nmで、波長400nmに対するレターデーションは50nmとなる。これは波長400nmの入射光に対して1/8波長板として機能する。また、垂直方向の反射率は約0.1%で、高い反射防止効果が得られる。
(実施例41)
実施例41では、石英ガラス基板上に成膜した一軸配向メソポーラスシリカ構造体膜に微細構造体を形成する例について記載する。
(41−1)基板準備
実施例38の(38−1)と同様の手法により、ポリイミド配向膜を得る。
(41−2)シリカメソ構造体膜の成膜
(41−2−1)テトラエトキシシラン、界面活性剤、2−プロパノール、塩酸、水を混合してゾル反応液を作製する。界面活性剤にはBrij56(商品名、Aldrich社製)を用いる。混合比(モル比)は、テトラエトキシシラン:1.0、界面活性剤:0.080、2−プロパノール:17、塩酸:0.0040、水:5.0とする。反応時間は3時間とする。
(41−2−2)(41−2−1)で作製するゾル反応液をディップコート法により(41−1)で得るポリイミド配向膜上に塗布し、一軸配向シリカメソ構造体薄膜を得る。
(41−3)多孔質化
トリメチルクロロシランの存在下、(41−2)で得る一軸配向メソ構造体膜を密封容器中に80℃で14時間保持した後、基板をエタノール中に浸漬して密封し、80℃で8時間抽出処理を施す。その後、基板を取出し、表面をエタノールで再度洗浄して、一軸配向メソポーラスシリカ膜を得る。
このメソポーラスシリカ膜は、X線回折装置による測定の結果、膜厚方向の構造周期d値が6nmで、シリンダー状のメソ細孔がラビング方向と垂直方向に配向していることが明らかとなる。この膜のΔnは0.031となる。
(41−4)プラズマエッチング
この一軸配向メソポーラスシリカ膜に対して、ICP型のプラズマエッチング装置を用いて、Cを反応性ガスとしてプラズマエッチングを実施する。その結果、高さHの平均が約200nm、凸部の先端間の平均間隔Pが100nm、及び断面形状が略三角形で頂角が約30°の凸部が、一軸配向メソポーラスシリカ膜の表面に形成される。また上記Pの分布はσ=20nmの正規分布となり、σ/Pは0.2となる。
この時の、位相板全体としての膜厚Tは約1700nmで、波長400nmに対するレターデーションは50nmとなる。これは波長400nmの入射光に対して1/8波長板として機能する。また、垂直方向の反射率は約0.6%で、高い反射防止効果が得られる。
(実施例42)
実施例2と同様の手法により、石英ガラス基板上に成膜したメソポーラスシリカ膜に複数の微細な凸部を有する構造体を形成する。この時、窒素ガスを用いた吸脱着等温線はIV型の挙動を示す。また、同じ組成で、凸部を形成していない状態のメソポーラスシリカ膜をエリプソメトリーにより光学評価した結果、空孔率は40%と見積もられる。これより、凸部を形成した状態のメソポーラスシリカからなる構造体においても、凸部内部の空孔率は約40%と見積もられる。
この複数の微細な凸部を有する構造体に対して、プラズマアシスト原子層積層法により酸化ケイ素からなる保護層を形成する。具体的には、真空引きされた反応容器内に前記構造体を設置した後、反応容器中へテトラエトキシシランの蒸気を導入し、凸部の表面にテトラエトキシシランが吸着した状態とする。次に、アルゴンガスで反応容器内をパージ後、酸素ガスを反応容器内に導入した上で、反応容器中のコイルに高周波で電流を流し、酸素とアルゴンのプラズマを生成する。この結果生じたラジカル成分が、凸部の表面に吸着しているテトラエトキシシランと反応して、最終的に凸部の表面に酸化ケイ素からなる極薄膜層が形成される。以上の一連のプロセスを150回繰り返すことにより、表面に5nmの厚さの酸化ケイ素からなる保護層を有する構造体が得られる。
凸部の表面に酸化ケイ素からなる保護層を有する構造体について、窒素ガスを用いた吸脱着等温線はII型の挙動を示す。これは、凸部内部の空孔が、凸部表面の保護層によりほぼ完全に遮断されていることを示す。また、保護層を形成する酸化ケイ素からなる層は、実質的に空孔率はほぼ0%と見積もられる。
(実施例43)
実施例7と同様の手法により、石英ガラス基板上に成膜したメソポーラスシリカ膜に複数の微細な凸部を形成した後、空孔内にチタニアを導入した構造体を形成する。この時、窒素ガスを用いた吸脱着等温線は、吸着・脱離時のヒステリシスは充填前に比べて小さくなるものの、IV型の挙動を示す。
次に、この構造物を表面に有する基板を、0.5wt%のリン酸アルミニウム[Al(HPO]水溶液に浸漬し、引き上げ速度3mm/sで引き上げた後、60℃の乾燥機で1時間熱処理することにより、凸部の表面にリン酸アルミニウムからなる保護層を形成する。この時、リン酸アルミニウムからなる保護層の厚さは、約5nmである。凸部の表面にリン酸アルミニウムからなる保護層を有する構造体について、窒素ガスを用いた吸脱着等温線はII型の挙動を示す。これは、凸部内部の空孔が、凸部表面の保護層によりほぼ完全に遮断されていることを示す。
(実施例44)
実施例7と同様の手法により、石英ガラス基板上に成膜したメソポーラスシリカ膜に複数の微細な凸部を形成した後、空孔内にチタニアを導入した構造体を形成する。この時、窒素ガスを用いた吸脱着等温線は、吸着・脱離時のヒステリシスは充填前に比べて小さくなるものの、IV型の挙動を示す。
この構造体に対して、チタニア導入と同様のプロセスをさらに3回繰り返すことにより、空孔内がチタニアで充填されるだけでなく、凸部の表面も5nmの厚さのチタニアからなる保護層で覆われた構造体を得る。凸部の表面にチタニアからなる保護層を有する構造体について、窒素ガスを用いた吸脱着等温線はII型の挙動を示す。これは、凸部内部のメソ孔が、凸部表面の保護層によりほぼ完全に遮断されていることを示す。また、保護層を形成するチタニアからなる層は、実質的に空孔率はほぼ0%と見積もられる。
11 構造体
12 凸部
13 メソ孔
14 基体
15 メソ構造体
16 底部
17 先端
18 底部から先端に向かう方向
19 方向18に垂直な面
21 シリンダー状メソ孔
31 メソ構造
32 メソ構造
1001 基板
1002 メソ構造体
1003 コンタミネーション
1004 ピラー状凸部
1101 基体
1102 メソ構造体
1103 酸化ケイ素膜
1104 構造体
1105 エッチングレートの小さい材料
1106 構造体
1201 基体
1202 複数の凸部を有する構造体を形成する材料
1203 構造体
1204 材料
1205 基体
1401 真空容器
1402 試験管
1403 ニードバルブ
1404 メインバルブ
1405 ターボ分子ポンプ
1406 ドライスクロールポンプ
1407 真空計
1408 基板ホルダ
1901 構造体
1902 基体
2101 シリカメソ構造体膜
2102 石英基板
2103 シリカ微小球
2104 円錐状の第一の凹凸構造を表面に有するシリカメソ構造体膜
2201 基体
2202 凸部
2203 保護層
2204 メソ孔
2206 メソ孔
2301 錐面
2302 仮想の錐体A
2303 仮想の錐体Aの高さ
2304 欠落した部分のうちの前記仮想の錐体Aの先端から最も遠い点
2305 仮想の錐体B
2306 仮想の錐体Bの高さ
2307 仮想の錐体Aおよび仮想の錐体Bの頂点

Claims (16)

  1. 基体と、前記基体の表面に存在する反射防止膜と、を有する光学部材であって、
    前記反射防止膜が表面に複数の錐体部を有し、
    前記錐体部がメソ構造を有し、
    前記メソ構造がメソ孔を有する構造であり、
    前記メソ孔の内部に、前記メソ孔を形成する壁部の材料よりも屈折率が高い無機材料が存在し、
    前記メソ孔の内部に前記無機材料が存在することにより、前記錐体部の実効的な屈折率と前記基体の屈折率との差が低減されることを特徴とする光学部材。
  2. 前記メソ孔がシリンダー形状を有しており、前記基体の表面と平行に配向していることを特徴とする請求項1に記載の光学部材。
  3. 前記反射防止膜のうち前記基体と接触する層に存在する前記メソ孔の内部に前記無機材料が存在し、
    前記基体の屈折率をna、前記層の実効的な屈折率をnbとした時に、
    0≦|na−nb|≦0.05
    であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学部材。
  4. 前記錐体部の底辺の長さをD、前記錐体部の高さをHとした時、H/Dが1/2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学部材。
  5. 前記錐体部の高さが50nm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学部材。
  6. 隣接する前記錐体部の先端の平均間隔pが400nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学部材。
  7. 隣接する前記錐体部の先端間の平均間隔をp、前記先端間の間隔の分布の標準偏差をσとした時に、以下の式1を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学部材。
    0.1<σ/p<0.5 式1
  8. 前記無機材料が、バンドギャップ2.5eV以上かつ10eV以下の無機材料であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学部材。
  9. 前記無機材料が、酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学部材。
  10. 前記メソ孔が周期的に配向し、前記反射防止膜が、X線回折分析において1.0nm以上の構造周期に対応する回折ピークを示すことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学部材。
  11. 前記メソ孔を形成する壁部が、バンドギャップ2.5eV以上かつ10eV以下の材料からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学部材。
  12. 前記メソ孔を形成する壁部が、酸化ケイ素からなることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学部材。
  13. 基体と、前記基体の表面に存在する反射防止膜と、を有する光学部材であって、
    前記反射防止膜が表面に複数の凸部を有する構造体を有し、
    前記凸部が、前記凸部の底部から先端に向かう方向に垂直な面で前記凸部を切断した時の断面の面積が、前記方向に沿って小さくなる形状を有し、
    前記凸部がメソ孔を有するメソ構造を有し、
    前記凸部の先端に金属元素が存在しており、
    前記凸部の底辺の長さをD、前記凸部の高さをHとした時、
    H/Dが2.0以上であり、
    前記メソ孔の内部に、前記メソ孔を形成する壁部の材料よりも屈折率が高い無機材料が存在し、
    前記メソ孔の内部に前記無機材料が存在することにより、前記凸部の実効的な屈折率と前記基体の屈折率との差が低減されることを特徴とする光学部材。
  14. 隣接する前記凸部の錐面同士が結合しており、
    前記錐面同士が結合する部分が前記基体の表面よりも前記反射防止膜側にあり、前記錐面同士が結合する部分と前記基体との距離が一定でないことを特徴とする請求項13に記載の光学部材。
  15. メソ孔を有するメソ構造体を形成する工程と、
    マスクは用いずにプラズマエッチング装置のエッチングチャンバーの一部を構成する材料を有する物質を堆積させながら前記メソ構造体をプラズマエッチングして、前記メソ構造体に凸部であって底部から先端に向かう方向に垂直な面で前記凸部を切断した時の断面の面積が、前記方向に沿って小さくなる形状を有する凸部を複数形成する工程と、
    を有することを特徴とする構造体の製造方法。
  16. 前記メソ孔を有するメソ構造体を形成する工程が、内部が空隙であるメソ孔を有するメソ構造体を形成する工程であり、
    かつ
    前記凸部が有するメソ孔に有機材料もしくは無機材料を充填する工程を有することを特徴とする請求項15に記載の構造体の製造方法。
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