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JP6365817B2 - 分析装置、及び電子機器 - Google Patents

分析装置、及び電子機器 Download PDF

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JP6365817B2
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Description

本発明は、分析装置、及び電子機器に関する。
近年、医療診断や食物の検査等における需要がますます増大し、小型で高速なセンシング技術の開発が求められている。電気化学的な手法をはじめさまざまなタイプのセンサーが検討されているが、集積化が可能、低コスト、そして、測定環境を選ばないといった理由から、表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)を用いたセンサーに対する関心が高まっている。例えば、全反射型プリズム表面に設けた金属薄膜に発生させた表面プラズモンを用いて、抗原抗体反応における抗原の吸着の有無など、物質の吸着の有無を検出するものが知られている。
また、表面増強ラマン散乱(SERS:Surface Enhanced Raman Scattering)を用いセンサー部位に付着した物質のラマン散乱を検出し付着物質の同定を行うなどの方法も検討されている。SERSとは、ナノメートルスケールの金属の表面でラマン散乱光が10〜1014倍に増強される現象である。この表面に標的となる物質が吸着した状態で、レーザーなどの励起光を照射すると、物質(分子)の振動エネルギーの分だけ、励起光の波長から僅かにずれた波長の光(ラマン散乱光)が散乱される。この散乱光を分光処理すると、物質の種類(分子種)に固有のスペクトル(指紋スペクトル)が得られる。この指紋スペクトルの位置や形状を分析することで、極めて高感度に物質を同定することが可能となる。
このようなセンサーは、光照射により励起される表面プラズモンに基づく光の増強度が大きいことが望ましい。
例えば、特許文献1には、局在型表面プラズモン(LSP:Locarized Surface Plasmon)と表面プラズモンポラリトン(SPP:Surface Plasmon Polariton)との相互作用の記載があり、GSPP(Gap type Surface Plasmon Polariton)モデルの幾つかのパラメーターを開示している。
特許文献1のGSPPでは、プラズモン共鳴を起す粒子のサイズが50〜200nm、かつ、励起波長より少ない周期的粒子間間隔、かつ、粒子層とミラー層を隔てる誘電体厚みが2〜40nmなるディメンションを有しており、粒子寸法に0から20nmを加えた粒子間間隔による細密充填プラズモン共鳴粒子の規則的アレイとしている。
特表2007−538264号公報
しかしながら、特許文献1に開示された構造のセンサーでは、粒子とミラー層を隔てる誘電体の厚さは2−40nmであり、発明者らの検討によれば、電場増強度の波長依存性(増強度スペクトル又は反射率スペクトル)におけるピークは、ブロードであるものの全体として低く不十分な増強度となっていることが分ってきた。また、同文献に開示されたセンサーでは、複数の粒子の寸法が、不均一となった場合(ばらつきが生じた場合)には、増強度スペクトルにおけるピークの波長が大きくシフトしてしまうことが分ってきた。
本発明の幾つかの態様に係る目的の1つは、増強度スペクトルにおいて、高い増強度が得られ、標的物質を高感度に検出・分析することのできる分析装置及び電子機器を提供することにある。また、本発明の幾つかの態様に係る目的の1つは、標的物質が高い増強度となる位置に付着しやすい分析装置及び電子機器を提供することにある。さらに、本発明の幾つかの態様に係る目的の1つは、製造上のばらつきの許容範囲の広い分析装置及び電子機器を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するために為されたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
本発明に係る分析装置の一態様は、
金属層と、前記金属層上に設けられ励起光を透過する透光層と、前記透光層上に設けられ、第1方向に第1ピッチで配列され、前記第1方向に交差する第2方向に第2ピッチで配列された複数の金属粒子と、を含む電場増強素子と、
前記第1方向に偏光した直線偏光光、前記第2方向に偏光した直線偏光光、及び、円偏光光の少なくとも1つを前記励起光として前記電場増強素子に照射する光源と、
前記電場増強素子から放射される光を検出する検出器と、
を備え、
前記電場増強素子の前記金属粒子の配置は、下記式(1)の関係を満たし、
P1<P2≦Q+P1 ・・・(1)
[ここで、P1は前記第1ピッチ、P2は前記第2ピッチ、Qは、前記金属粒子の列に励起される局在型プラズモンの角振動数をω、前記金属層を構成する金属の誘電率をε(ω)、前記金属粒子の周辺の誘電率をε、真空中の光速をc、前記励起光の照射角であって前記金属層の厚さ方向からの傾斜角をθ、として、下記式(2)を満たす回析格子のピッチを表す。
(ω/c)・{ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))}1/2=ε1/2・(ω/c)・sinθ+2aπ/Q (a=±1,±2,) ・・・(2)]
前記透光層の厚さをG[nm]、前記透光層の実効屈折率をneff、前記励起光の波長をλ[nm]としたときに、下記式(3)の関係を満たす。
20[nm]<G・(neff/1.46)≦160[nm]・(λ/785[nm]) ・・・(3)
このような分析装置は、増強度スペクトルにおいて、非常に高い増強度が得られ、標的物質を高感度に検出・分析することができる。また、係る分析装置の高い増強度の得られる位置が、少なくとも金属粒子の上面側に存在するため、当該位置に標的物質が接触しやすいため、標的物質を高感度に検出・分析することができる。
本発明に係る分析装置において、
前記G[nm]、前記neff、前記λ[nm]は、下記式(4)の関係を満たしてもよい。
30[nm]≦G・(neff/1.46)≦160[nm]・(λ/785[nm]) ・・・(4)
このような分析装置は、30[nm]≦G・(neff/1.46)なる関係を満たすため、製造上のばらつきの許容範囲を大きくとることができる。
本発明に係る分析装置の一態様は、
金属層と、前記金属層上に設けられ励起光を透過する透光層と、前記透光層上に設けられ、第1方向に第1ピッチで配列され、前記第1方向に交差する第2方向に第2ピッチで配列された複数の金属粒子と、を含む電場増強素子と、
前記第1方向に偏光した直線偏光光、前記第2方向に偏光した直線偏光光、及び、円偏光光の少なくとも1つを前記励起光として前記電場増強素子に照射する光源と、
前記電場増強素子から放射される光を検出する検出器と、
を備え、
前記電場増強素子の前記金属粒子の配置は、下記式(1)の関係を満たし、
P1<P2≦Q+P1 ・・・(1)
[ここで、P1は前記第1ピッチ、P2は前記第2ピッチ、Qは、前記金属粒子の列に励起される局在型プラズモンの角振動数をω、前記金属層を構成する金属の誘電率をε(ω)、前記金属粒子の周辺の誘電率をε、真空中の光速をc、前記励起光の照射角であって前記金属層の厚さ方向からの傾斜角をθ、として、下記式(2)を満たす回析格子のピッチを表す。
(ω/c)・{ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))}1/2=ε1/2・(ω/c)・sinθ+2aπ/Q (a=±1,±2,) ・・・(2)]
前記透光層は、m層の層が積層した積層体からなり、
mは自然数であり、
前記透光層は、前記金属粒子側から前記金属層側に向って、第1透光層、第2透光層、・・・、第m−1透光層、第m透光層の順に積層しており、
前記金属粒子周辺の屈折率をn
前記金属層の法線方向と前記励起光の入射方向とがなす角をθ
前記金属層の法線方向と前記第m透光層中の前記励起光の屈折光の前記金属層への入射方向とがなす角をθ
前記第m透光層の屈折率をn
前記第m透光層の厚さをG[nm]、
前記励起光の波長をλ[nm]としたとき、
下記式(5)、及び、式(6)の関係を満たす。
・sinθ=n・sinθ ・・・(5)
このような分析装置によれば、増強度スペクトルにおいて、非常に高い増強度が得られ、標的物質を高感度に検出・分析することができる。また、係る分析装置の高い増強度の得られる位置が、少なくとも金属粒子の上面側に存在するため、当該位置に標的物質が接触しやすいため、標的物質を高感度に検出・分析することができる。
本発明に係る分析装置において、
前記θ、前記n、前記G[nm]、前記λ[nm]は、下記式(7)の関係を満たしてもよい。
このような分析装置は、
なる関係を満たすため、製造上のばらつきの許容範囲を大きくとることができる。
本発明に係る分析装置において、
前記金属粒子の前記透光層に近い側の角部に励起される局在型表面プラズモンの強度に対する、前記金属粒子の前記透光層に遠い側の角部に励起される局在型表面プラズモンの強度の比は、前記透光層の厚さにかかわらず一定であってもよい。
このような分析装置によれば、透光層の厚さが変動しても、前記金属粒子の上面側に励起される局在型表面プラズモンの強度の、前記金属粒子の下面側に励起される局在型表面プラズモンの強度に対する比が変化しないため、製造がさらに容易である。
本発明に係る電子機器の一態様は、上述の分析装置と、前記検出器からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する演算部と、前記健康医療情報を記憶する記憶部と、前記健康医療情報を表示する表示部と、を備える。
このような電子機器によれば、増強度が極めて大きく、標的物質を高感度に検出・分析することができ、高感度・高精度な健康医療情報を提供することができる。
実施形態に係る電場増強素子の要部を模式的に示す斜視図。 実施形態に係る電場増強素子の要部を平面的に見た模式図。 実施形態に係る電場増強素子の要部の断面の模式図。。 実施形態に係る電場増強素子の要部の断面の模式図。。 励起光の光路の一例を示す模式図。 励起光の光路の一例を示す模式図。 金属層周辺の屈折率に応じた分散関係。 銀の誘電率の波長特性。 金属層の伝搬型表面プラズモン及び金属粒子の局在型表面プラズモンの分散関係と電磁的結合を示す図。 実施形態に係る分析装置の模式図。 実施形態に係る電子機器の模式図。 実験例に係るモデルの模式図。 実験例に係るモデルの反射率スペクトル。 実験例に係るモデルの反射率スペクトル。 実験例に係るモデルの反射率スペクトルのFWHMの透光層厚さ依存を示すグラフ。 実験例に係るモデルの反射率スペクトルにおけるピークの波長及び反射率スペクトルにおけるピークのミニマム値の透光層の厚さへの依存性を示すグラフ。 実験例に係るモデルの反射率スペクトル。 実験例に係るモデルのSQRT及びトップ/ボトム比の透光層厚さ依存性を示すグラフ。 実験例に係るモデルのSQRT及びトップ/ボトム比の透光層厚さ依存性を示すグラフ。 実験例に係るモデルの反射率スペクトル。 実験例に係るモデルの反射率スペクトルにおけるピークの波長及び反射率スペクトルにおけるピークのミニマム値の透光層の厚さへの依存性を示すグラフ。 実験例に係るモデルのSQRTの透光層厚さ依存性を示すグラフ。 実験例に係るモデルの反射率スペクトルにおけるピークのミニマムの波長の透光層厚さ依存性を示すグラフ。 実験例に係るモデルの反射率スペクトル。 実験例に係るモデルの反射率スペクトルにおけるピークのミニマムの波長の透光層厚さ依存性を示すグラフ。 実験例に係るモデルの反射率スペクトル。 金属粒子の配列と、LSP及びPSPとの関係を示す模式図。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.電場増強素子
図1は、実施形態の一例に係る電場増強素子100の斜視図である。図2は、実施形態の一例に係る電場増強素子100を平面的に見た(透光層の厚さ方向から見た)模式図である。図3及び図4は、実施形態の一例に係る電場増強素子100の断面の模式図である。本実施形態の電場増強素子100は、金属層10と透光層20と金属粒子30とを含む。
1.1.金属層
金属層10は、金属の表面を提供するものであれば、特に限定されず、例えば、厚板状であってもよいし、フィルム、層又は膜の形状を有してもよい。金属層10は、例えば基板1の上に設けられてもよい。この場合の基板1としては、特に限定されないが、金属層10に励起される伝搬型表面プラズモンに影響を与えにくいものが好ましい。基板1としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、樹脂基板などが挙げられる。基板1の金属層10が設けられる面の形状も特に限定されない。金属層10の表面に規則構造を形成する場合にはその規則構造に対応する表面を有してもよいし、金属層10の表面を平面とする場合には平面としてもよい。図1〜図4の例では、基板1の表面(平面)の上に金属層10が設けられている。
ここで、平面との表現を用いているが、係る表現は、表面が、わずかの凹凸もなく平坦(スムース)な数学的に厳密な平面を指すものではない。例えば、表面には、構成する原子に起因する凹凸や、構成する物質の二次的な構造(結晶、粒塊、粒界等)に起因する凹凸などが存在する場合が有り、微視的にみれば厳密な平面ではない場合がある。しかし、そのような場合でも、より巨視的な視点でみれば、これらの凹凸は目立たなくなり、表面を平面と称しても差し支えない程度に観測される。したがって、本明細書では、このようなより巨視的な視点でみた場合に平面と認識できれば、これを平面と称することとする。
また、本実施形態では、金属層10の厚さ方向は、後述の透光層20の厚さ方向と一致している。本明細書では、金属層10の厚さ方向又は透光層20の厚さ方向を、金属粒子30について述べる場合などにおいて、厚み方向、高さ方向等と称する場合がある。また、例えば、金属層10が基板1の表面に設けられる場合には、基板1の表面の法線方向を
厚さ方向、厚み方向又は高さ方向と称する場合がある。
さらに、基板1からみて、金属層10側の方向を上、又は上方と表現し、その逆方向を下、又は下方と表現する場合がある。係る上方、下方との表現は、重力の作用する方向とは無関係に用いられ、素子を見る場合の視点や視線の方向を適宜に定めて表現するものとする。また、本明細書において、例えば、「部材Aの上に部材Bが設けられる」との表現は、部材Aの上に接して部材Bが設けられる場合と、部材Aの上に他の部材又は空間を介して部材Bが配置される場合と、を含む意味である。
金属層10は、例えば、蒸着、スパッタ、鋳造、機械加工等の手法により形成することができる。金属層10が基板1の上に設けられる場合には、基板1の表面の全面に設けられてもよいし基板1の表面の一部に設けられてもよい。金属層10の厚みは、金属層10の表面又は金属層10と透光層20との界面付近に伝搬型表面プラズモンが励起され得るかぎり特に限定されず、例えば、10nm以上1mm以下、好ましくは20nm以上100μm以下、より好ましくは30nm以上1μm以下とすることができる。
金属層10は、励起光により与えられる電場と、その電場によって誘起される分極とが逆位相で振動するような電場が存在する金属、すなわち、特定の電場が与えられた場合に、誘電関数の実数部が負の値を有し(負の誘電率を有し)、虚数部の誘電率が実数部の誘電率の絶対値よりも小さい誘電率を有することのできる金属によって構成される。このような誘電率を有しうる金属の例としては、金、銀、アルミニウム、銅、白金、及びそれらの合金等を挙げることができる。励起光として可視光領域の光を用いる場合には、金属層10は、これらの金属のうち、金、銀又は銅からなる層を含むことが好ましい。また、金属層10の表面(厚さ方向の端面)は、特定の結晶面であってもなくてもよい。また、金属層10は、複数層の金属の層で形成されてもよい。
金属層10は、本実施形態の電場増強素子100において伝搬型表面プラズモンを発生させる機能を有している。金属層10に後述する条件で光を入射することにより、金属層10の表面(厚さ方向の上端面)近傍に伝搬型表面プラズモンが発生する。また、本明細書では、金属層10の表面付近の電荷の振動と電磁波とが結合した振動の量子を、表面プラズモン・ポラリトン(SPP:Surface Plasmon Plariton)と称する。金属層10に発生した伝搬型表面プラズモンは、後述の金属粒子30に発生する局在型表面プラズモンと、一定の条件下で相互作用(ハイブリッド)することができる。さらに、金属層10は、透光層20側に向って光(例えば励起光の屈折光)を反射させるミラーの機能を有する。
1.2.透光層
本実施形態の電場増強素子100は、金属層10と金属粒子30とを隔てるための透光層20を有する。図1、3、4には、透光層20が描かれている。透光層20は、フィルム、層又は膜の形状を有することができる。透光層20は、金属層10の上に設けられる。これにより、金属層10と金属粒子30とを空間的、電気的に隔てることができる。また、透光層20は、励起光を透過することができる。
透光層20は、例えば、蒸着、スパッタ、CVD、各種コーティング等の手法により形成することができる。また平面的に見た場合、透光層20は、金属層10の表面の全面に設けられてもよいし金属層10の表面の一部に設けられてもよい。
透光層20は、正の誘電率を有すればよく、例えば、酸化シリコン(SiO例えばSiO)、酸化アルミニウム(Al例えばAl)、酸化タンタル(Ta)、窒化シリコン(Si)、酸化チタン(TiO例えばTiO)、PMMA
(Polymethylmethacrylate)等の高分子、ITO(Indium
Tin Oxide)などで形成することができる。また、透光層20は、誘電体からなることができる。さらに、透光層20は材質の互いに異なる複数の層から構成されてもよい。
透光層20の厚さGは、金属層10の伝搬型表面プラズモンと、金属粒子30の局在型表面プラズモンとが相互作用できるように設定される。例えば、透光層20の厚さG[nm]は、以下のように設定される。
(i)透光層20の厚さG[nm]は、透光層20の実効屈折率をneff、励起光の波長をλ[nm]とした場合、下記式(4)の関係を満たすように設定される。
20[nm]<G・(neff/1.46)≦160[nm]・(λ/785[nm]) ・・・(4)
ここで、透光層20の実効屈折率neffは、透光層20が単一の層からなる場合には、当該単一の層を構成する材料の屈折率の値と等しい。一方、透光層20の実効屈折率neffは、透光層20が複数の層からなる場合には、透光層20を構成する各層の厚さ及び各層の屈折率の積を、透光層20の全体の厚さGで除した値(平均値)に等しい。
図5は、透光層20が屈折率nの単一の層で構成された場合の励起光の光路を模式的に説明する図である。図5を参照し、透光層20が屈折率nの単一の層で構成された場合であって、励起光がnの屈折率の相から、透光層20の法線方向(厚さ方向)に対して傾斜角θの角度で傾斜して透光層20に入射した場合には、スネルの法則から、n・sinθ=n・sinθの関係を満たす、透光層20の法線方向に対する傾斜角θで透光層20内に励起光の屈折光が生じる(式中「・」は積を意味する。)。
そして、透光層20の上面で反射された光と、透光層20の下面で反射された光の光路差は、2・n・G・cosθである(図5参照)。また、金属層10での反射で半波長ずれることから、励起光の波長をλとした時、光路差=k・λ(但し、kは整数)となる。従って、2・n・G・cosθ=k・λが成立し、sinθ=(n/n)・sinθ、及び、θ=sin−1{(n/n)sinθ}の関係が成立する。
(ii)図6は、透光層20が複数の層で構成された場合の励起光の光路を模式的に説明する図である。図6を参照し、透光層20が複数の層で構成された場合であって、励起光が透光層20の法線方向(厚さ方向)に対して傾斜角θの角度で傾斜して入射した場合には、mを2以上の整数として、透光層20が、金属層10に遠い側から、金属層10に向って、第1透光層、第2透光層の順に、第m−1透光層、第m透光層まで積層しているものと考える。そして、励起光がnの屈折率の相から、透光層20の法線方向(厚さ方向)に対して傾斜角θの角度で傾斜して透光層20に入射したものとする。この場合には、透光層20の法線方向と第m透光層中の励起光の屈折光とがなす角をθ、第m透光層の屈折率をn、第m透光層の厚さをG[nm]としたとき、スネルの法則から、n・sinθ=n・sinθの関係を満たす、透光層20の法線方向に対する傾斜角θで第m透光層内に励起光の屈折光が生じる。従って、第m透光層の厚さをG、屈折率をnとすると各層で、2・n・G・cosθの光路差が生じる。
このことから、全光路差Lは、L=Σ(2・n・G・cosθ)となる。そして係る光路差Lが、入射光の波長の整数倍(k・λ)となる場合に光が強め合うことになる。また、垂直入射(励起光の入射方向が透光層20の厚さ方向と平行)の場合、θ=0であって、cosθの値は1となり、斜め入射の場合には、cosθの値は1よりも小さくなるから、光を強めあう条件となる厚さGは、斜め入射のときのほうが、垂直入射のときよりも大きい(厚い)ことが理解される。
また、透光層20の厚さGは、透光層20が、m層の層が積層した積層体からなる場合(mは自然数)、透光層20が、金属層10に遠い側から、金属層10に向って、第1透光層、第2透光層の順に、第m−1透光層、第m透光層まで積層しているものと考える。そして、励起光がnの屈折率の相から、透光層20の法線方向(厚さ方向)に対して傾斜角θの角度で傾斜して透光層20に入射したものとする。この場合には、透光層20の法線方向と第m透光層中の励起光の屈折光とがなす角をθ、第m透光層の屈折率をn、第m透光層の厚さをG[nm]としたとき、スネルの法則から、n・sinθ=n・sinθの関係を満たす、透光層20の法線方向に対する傾斜角θで第m透光層内に励起光の屈折光が生じる。
そして、励起光の波長をλ[nm]としたとき、下記式(5)、及び、式(6)の関係を満たすように設定される。
・sinθ=n・sinθ ・・・(5)
上記式(4)、式(6)中、「20[nm]」、「160[nm]」、「785[nm]」、及び「1.46[−](無次元数)」は、いずれも、発明者らの検討により経験的に得られた値であり、本発明の重要なパラメーターの1つである。透光層20の厚さGは、上記(i)、(ii)のいずれかの手法に依拠して設定されることにより、本実施形態の電場増強素子100の電場増強度が極めて高くなる。
上記式(4)及び式(6)における下限値を20nmとしていることは、後述の実験例により実証されているように、実験的に求められる値であることが理由の一つとなっている。また、上記式(4)及び式(6)における上限値に乗じられる(λi/785[nm])は、励起光の波長が変化しても各式が成立するため、このことを表現するための補正項である。さらに、上記式(4)及び式(6)におけるGに乗じられる(n/1.46)は、透光層の屈折率が変化しても各式が成立するため、このことを表現するための補正項である。これらの補正項については、後述の実験例で立証される。
さらに、上記式(4)及び式(6)における下限値は、以下のような理由によって、30nm、40nm等とすることが考えられる。本実施形態の電場増強素子100の構造によると、透光層20の上には、複数個の金属粒子30が設けられる。透光層20の厚さGが、およそ20nmを下回ると、金属粒子30の大きさのばらつきによる、電場増強素子100の電場増強スペクトルにおける増強度ピークの位置の変動量が、非常に大きくなってしまうことがある。例えば、後述の実験例に示すように、透光層20の厚さGが、およそ20nm程度では、強い増強度は得られるものの、増強度のピーク位置が金属粒子30の直径の変化に対して敏感となるため、電場増強素子100の電場増強度プロファイルの設計が若干煩雑になってしまうことがある。そのため、その逆として、透光層20の厚さGを、20nmを越える(20nm<G)ようにするとよく、さらに好ましくはおよそ30nm以上とすることにより、電場増強素子100の設計を容易にし、製造上のばらつきの許容範囲を大きくとることができる。
さらに、透光層20の厚さGが、およそ40nmを下回ると、金属粒子30近傍の局在
型表面プラズモンの、金属層10表面付近の伝搬型表面プラズモンとの相互作用が大きくなる。後述の実験例でも示すように、透光層20の厚さGが、およそ40nmを下回ると、金属粒子30のボトムにおける増強度に対するトップにおける増強度の比が小さくなる。そうすると電場増強のためのエネルギーの配分が金属粒子30のボトムに偏るため、微量物質を検出するための増強電場を形成するための励起光のエネルギーの利用効率が低下してしまう。したがって、透光層20の厚さGをおよそ40nm以上とすることにより、微量物質を検出するための増強電場を形成するための励起光のエネルギーをより有効に利用することができる。なお、これらのことは、「1.5.ホットスポットの位置」等の項においても述べる。
1.3.金属粒子
金属粒子30は、金属層10から厚さ方向に離間して設けられる。すなわち、金属粒子30は、透光層20の上に設けられ、金属層10と空間的に離間して配置される。金属粒子30と金属層10との間には、透光層20が存在する。本実施形態の図1〜図4の電場増強素子100の例では、金属層10の上に透光層20が設けられ、その上に金属粒子30が形成されることにより、金属層10と金属粒子30とが透光層の厚さ方向で離間して配置されている。
金属粒子30の形状は、特に限定されない。例えば、金属粒子30の形状は、金属層10又は透光層20の厚さ方向に投影した場合に(厚さ方向からの平面視において)円形、楕円形、多角形、不定形又はそれらを組合わせた形であることができ、厚さ方向に直交する方向に投影した場合にも円形、楕円形、多角形、不定形又はそれらを組合わせた形状であることができる。図1〜図4の例では金属粒子30は、いずれも透光層20の厚さ方向に中心軸を有する円柱状の形状で描かれているが、金属粒子30の形状はこれに限定されない。
金属粒子30の高さ方向の大きさTは、高さ方向に垂直な平面によって金属粒子30を切ることができる区間の長さを指し、1nm以上100nm以下である。また、金属粒子30の高さ方向に直交する第1方向の大きさは、第1方向に垂直な平面によって金属粒子30を切ることができる区間の長さを指し、5nm以上200nm以下である。例えば、金属粒子30の形状が高さ方向を中心軸とする円柱である場合には、金属粒子30の高さ方向の大きさ(円柱の高さ)は、1nm以上100nm以下、好ましくは2nm以上50nm以下、より好ましくは3nm以上30nm以下、さらに好ましくは4nm以上20nm以下である。また金属粒子30の形状が高さ方向を中心軸とする円柱である場合には、金属粒子30の第1方向の大きさ(円柱底面の直径)は、10nm以上200nm以下、好ましくは20nm以上150nm以下、より好ましくは25nm以上100nm以下、さらに好ましくは30nm以上72nm以下である。
金属粒子30の形状、材質は、励起光の照射によって、局在型表面プラズモンを生じうる限り任意であるが、可視光付近の光によって局在型表面プラズモンを生じうる材質としては、金、銀、アルミニウム、銅、白金、及びそれらの合金等を挙げることができる。
金属粒子30は、例えば、スパッタ、蒸着等によって薄膜を形成した後にパターニングを行う方法、マイクロコンタクトプリント法、ナノインプリント法などによって形成することができる。また、金属粒子30は、コロイド化学的手法によって形成することができ、これを適宜の手法によって金属層10から離間した位置に配置してもよい。
金属粒子30は、本実施形態の電場増強素子100において局在型表面プラズモン(LSP)を発生させる機能を有している。金属粒子30に、励起光を照射することにより、金属粒子30の周辺に局在型表面プラズモンを発生させることができる。金属粒子30に
発生した局在型表面プラズモンは、上述の金属層10に発生する伝搬型表面プラズモン(PSP:Propagating Surface Plasmon)と、一定の条件下で相互作用(ハイブリッド)することができる。
1.3.1.金属粒子の配置
図1〜図4に示すように、金属粒子30は、複数が並んで金属粒子列31を構成している。金属粒子30は、金属粒子列31において、金属層10の厚さ方向と直交する第1方向に並んで配置される。言換えると金属粒子列31は、金属粒子30が高さ方向と直交する第1方向に複数並んだ構造を有する。金属粒子30が並ぶ第1方向は、金属粒子30が長手を有する形状の場合(異方性を有する形状の場合)、その長手方向とは一致しなくてもよい。1つの金属粒子列31に並ぶ金属粒子30の数は、複数であればよく、好ましくは10個以上である。
ここで金属粒子列31内における第1方向の金属粒子30のピッチを第1ピッチP1と定義する(図2〜図4参照)。第1ピッチP1は、第1方向における2つの金属粒子30の重心間の距離を指す。なお、金属粒子列31内における2つの金属粒子30の粒子間距離は、金属粒子30が金属層10の厚さ方向を中心軸とする円柱である場合には、第1ピッチP1から円柱の直径を差引いた長さに等しくなる。
金属粒子列31内における第1方向の金属粒子30の第1ピッチP1は、10nm以上2μm以下であり、好ましくは20nm以上1500nm以下、より好ましくは30nm以上1000nm未満、さらに好ましくは50nm以上800nm未満とすることができる。
金属粒子列31は、第1方向に第1ピッチP1で並ぶ複数の金属粒子30によって構成されるが、金属粒子30に発生される局在型表面プラズモンの分布・強度等は、この金属粒子30の配列にも依存する。したがって、金属層10に発生する伝搬型表面プラズモンと相互作用する局在型表面プラズモンは、単一の金属粒子30に発生する局在型表面プラズモンだけでなく、金属粒子列31における金属粒子30の配列を考慮した局在型表面プラズモンを含む場合がある。
図1〜図4に示すように、金属粒子列31は、金属層10の厚さ方向及び第1方向と交差する第2方向に第2ピッチP2で並んで配置される。金属粒子列31が並ぶ数は、複数であればよく、好ましくは10列以上である。
ここで、隣合う金属粒子列31の第2方向における間隔を第2ピッチP2と定義する。第2ピッチP2は、第2方向における2つの金属粒子列31の重心間の距離を指す。また、第2ピッチP2は、金属粒子列31が、複数の列から構成される場合には、複数の列22の第2方向における重心の位置と、隣の金属粒子列31の複数の列の第2方向における重心の位置と、の間の距離を指す。
金属粒子列31間の第2ピッチP2は、第1ピッチP1と同様に、10nm以上2μm以下であり、好ましくは20nm以上1500nm以下、より好ましくは30nm以上1000nm未満、さらに好ましくは50nm以上800nm未満とすることができる。
なお、金属粒子列31の伸びる第1方向の線と、隣合う金属粒子列31にそれぞれ属する2つの金属粒子30であって、互いに最も近接する2つの金属粒子30を結ぶ線と、がなす角は、特に限定されず、直角であってもなくてもよい。例えば、両者がなす角が直角であってもよいし、両者がなす角が直角でなくてもよい。すなわち、厚さ方向から見た金属粒子30の配列を、金属粒子30の位置を格子点とした二次元格子とみなした場合に、
既約基本単位格子は、長方形の形状であっても、平行四辺形の形状であってもよい。また、金属粒子列31の伸びる第1方向の線と、隣合う金属粒子列31にそれぞれ属する2つの金属粒子30であって、互いに最も近接する2つの金属粒子30を結ぶ線と、がなす角が直角でない場合には、隣合う金属粒子列31にそれぞれ属する2つの金属粒子30であって、互いに最も近接する2つの金属粒子30の間のピッチを第2ピッチP2としてもよい。
1.3.2.伝搬型表面プラズモン及び局在型表面プラズモン
まず、伝搬型表面プラズモンについて説明する。図7は、励起光、金(実線)及び銀(破線)の分散曲線を示す分散関係のグラフである。通常は、金属の表面に光を0〜90度の入射角θ(照射角θ)で入射しても伝搬型表面プラズモンは発生しない。例えば、金属がAuからなる場合には、図7に示すように、ライトライン(LightLine)とAuのSPPの分散曲線が交点を持たないからである。また、光が通過する媒体の屈折率が変化しても、AuのSPPも周辺の屈折率に応じて変化するため、やはり交点を持たないことになる。交点を持たせ伝搬型表面プラズモンを起こさせるためには、クレッチマン配置のようにプリズム上に金属層を設け、プリズムの屈折率により励起光の波数を増加させる方法や、回折格子によりライトラインの波数を増加させる方法がある。なお図7はいわゆる分散関係を示すグラフ(縦軸を角振動数[ω(eV)]、横軸を波数ベクトル[k(eV/c)]としたもの)である。
また、図7のグラフの縦軸の角振動数ω(eV)は、λ[nm]=1240/ω(eV)の関係があり、波長に換算することができる。また、同グラフの横軸の波数ベクトルk(eV/c)は、k(eV/c)=2π・2/[λ[nm]/100]の関係がある。したがって、例えば、回折格子間隔をQとしたとき、Q=600nmのとき、k=2.09(eV/c)となる。また、照射角θは、励起光の照射角θであって、金属層10若しくは透光層20の厚さ方向、又は金属粒子30の高さ方向からの傾斜角である。
図7には金(Au)及び銀(Ag)のSPPの分散曲線を示したが、一般には、金属表面に入射される励起光の角振動数をω、真空中の光速をc、金属層10を構成する金属の誘電率をε(ω)、周辺の誘電率をεとしたとき、その金属のSPPの分散曲線は、式(A)
SPP=ω/c[ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))]1/2 ・・・(A)
で与えられる。
一方、励起光の照射角であって金属層10若しくは透光層20の厚さ方向、又は金属粒子30の高さ方向からの傾斜角をθとし、間隔Qを有する仮想的な回折格子を通過した励起光の波数Kは、式(B)
K=n・(ω/c)・sinθ+a・2π/Q (a=±1,±2,) ・・・(B)
で表すことができ、この関係は、分散関係のグラフ上には、曲線ではなく直線で現れる。
なお、式(B)中、nは、周辺屈折率であり、消光係数をκとすれば、光の振動数における比誘電率εの実数部ε’と虚数部ε”は、それぞれ、ε’=n−κ、ε”=2nκで与えられ、周辺の物質が透明であれば、κ〜0であるから、εは実数で、ε=nとなり、n=ε1/2で与えられる。
分散関係のグラフにおいて、金属のSPPの分散曲線(上記式(A))と回折光の直線(上記式(B))とが交点を有する場合に、伝搬型表面プラズモンが励起される。すなわち、KSPP=Kの関係が成立すると、金属層10に伝搬型表面プラズモンが励起される。
したがって、上記式(A)及び式(B)から、以下の式(2)が得られ、
(ω/c)・{ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))}1/2=ε1/2・(ω/c)・sinθ+2aπ/Q (a=±1,±2,) ・・・(2)
この式(2)の関係を満たせば、金属層10に伝搬型表面プラズモンが励起されることが理解される。この場合、図7のSPPの例でいえば、θ及びmを変化させることにより、ライトラインの傾き及び/又は切片を変化させることができ、AuのSPPの分散曲線に対してライトラインの直線を交差させることができる。
次に、局在型表面プラズモンについて説明する。
金属粒子30に局在型表面プラズモンを生じさせる条件は、誘電率の実数部により、
Real[ε(ω)]=−2ε ・・・(C)
で与えられる。周辺の屈折率nを1とするとε=n−κ=1なので、Real[ε(ω)]=−2、となる。
図8は、Agの誘電率と波長の関係を示すグラフである。例えば、Agの誘電率は、図8のようであり、約366nmの波長で局在型表面プラズモンが励起されることになるが、複数の銀粒子がナノオーダーで近づく場合や、銀粒子と金属層10(Au膜等)が透光層20(例えばSiO等)によって隔てられて配置された場合には、そのギャップ(透光層20の厚さG)の影響により、局在型表面プラズモンの励起ピーク波長はレッドシフト(長波長側へシフト)する。このシフト量は、銀粒子の直径D、銀粒子の厚さT、銀粒子の粒子間隔、透光層20の厚さG等のディメンジョンに依るが、例えば500nm〜900nmに局在型表面プラズモンのピークを有する波長特性を示すことになる。
また、局在型表面プラズモンは、伝搬型表面プラズモンと異なり、速度を持たず、移動しないプラズモンであり、分散関係のグラフにプロットすると、傾きがゼロ、すなわち、ω/k=0となる。
図9は、金属層10の表面プラズモンポラリトン(SPP)と、金属粒子30に生じる局在型表面プラズモン(LSP)の分散関係と電磁的結合を示す図である。本実施形態の電場増強素子100は、伝搬型表面プラズモンと局在型表面プラズモンを電磁的に結合(Electromagnetic Coupling)させることにより、電場の極めて大きい増強度を得るものである。すなわち、本実施形態の電場増強素子100は、分散関係のグラフにおいて、回折光の直線と金属のSPPの分散曲線との交点を、任意の点とするのではなく、金属粒子30(金属粒子列31)に生じる局在型表面プラズモンにおいて最大又は極大の増強度を与える点の近傍で両者を交差させるよう、回折格子となる金属粒子30を配置することを特徴の一つとしている(図7、9参照)。したがって、本実施形態の電場増強素子100では、金属粒子30に励起される局在型表面プラズモン(LSP)と、金属層10と透光層20との界面に励起される伝搬型表面プラズモン(PSP)とは、電磁的に相互作用している。なお、伝搬型表面プラズモンと局在型表面プラズモンを電磁的に結合(Electromagnetic Coupling)させると、例えば文献:OPTICS LETTERS/Vol.34, No.3 /February
1, 2009等に記載されるようなアンチクロシングビヘービアが起きる。
換言すると、本実施形態の電場増強素子100では、分散関係のグラフにおいて、金属のSPPの分散曲線と、金属粒子30(金属粒子列31)に生じる局在型表面プラズモンにおいて最大又は極大の増強度を与える励起光の角振動数(図9の分散関係のグラフ上で、LSPと付した横軸に平行な線)との交点の近傍を、回折光の直線が通過するように設計される。
1.3..第2ピッチP2
金属粒子列31の間の第2ピッチP2は、上記のように、第1ピッチP1と同じであっても異なってもよいが、例えば、励起光を垂直入射(入射角θ=0)で、かつ、1次の回折光(a=0)を用いる場合には、第2ピッチP2として上述の回折格子の間隔Qを採用すれば、式(C)を満たすことができる。しかし、選択する入射角θ及び回折光の次数mにより、式(C)を満たすことのできる間隔Qは、幅を有することになる。なお、この場合の入射角θは、厚さ方向から第2方向への傾斜角であることが好ましいが、第1方向の成分を含む方向への傾斜角としてもよい。
したがって、上記の交点近傍であること(±P1の幅)を考慮して、局在型表面プラズモンと伝搬型表面プラズモンとのハイブリッドを生じさせることのできる第2ピッチP2の範囲を、式(D)、
Q−P1≦P2≦Q+P1 ・・・(D)
の関係を満たすようにしてもよい。なお、第2ピッチP2は、P1<P2としてもよく、下記式(1)の関係を満たすようにしてもよい。
P1<P2≦Q+P1 ・・・(1)
なお、一般に、垂直入射の場合(斜め入射だとLSPとSPPの交点を通る回折格子ピッチが入射角により変動するため、説明に正確性を欠くので、垂直入射で説明する。)、第1ピッチP1及び第2ピッチP2の値が励起光の波長に比べて小さいと、金属粒子30間に働く局在型表面プラズモンの強度が増大する傾向があり、逆に、第1ピッチP1及び第2ピッチP2の値が励起光の波長に近いと、金属層10に生じる伝搬型表面プラズモンの強度が増大する傾向にある。さらに、電場増強素子100の全体の電場増強度は、ホットスポット密度(単位面積あたりの、電場増強度の高い領域の割合)(HSD)にも依存するため、第1ピッチP1及び第2ピッチP2の値が大きくなるほど、HSDは低下する。そのため、第1ピッチP1及び第2ピッチP2の値には、好ましい範囲が存在し、例えば、60nm≦P1≦1310nm、60nm≦P2≦1310nmの範囲にあることが好ましい。
1.4.表面増強ラマン散乱
本実施形態の電場増強素子100は、高い電場増強度を示す。したがって、係る電場増強素子100は、表面増強ラマン散乱(SERS:Surface Enhanced Raman Scattering)測定に好適に用いることができる。
ラマン散乱では、ラマン散乱によるシフト量(cm−1)は、励起光の波長をλ、散乱光の波長をλとしたとき、下記式(a)で与えられる。
ラマン散乱のシフト量=(1/λ)−(1/λ) ・・・(a)
以下、ラマン散乱効果を示す標的物質としてアセトンを例に挙げて説明する。
アセトンは、787cm−1、1708cm−1、2921cm−1にラマン散乱を起こすことが知られている。
上記式(a)より、励起光の波長λ=633nmとすると、アセトンによるストークスラマン散乱光の波長λは、上記シフト量に対応して、それぞれ666nm、709nm、777nmとなる。また、励起光の波長λ=785nmとすると、波長λは、上記シフト量に対応して、それぞれ837nm、907nm、1019nmとなる。
また、アンチストークス散乱も存在するが、原理的にストークス散乱の発生確率が高く、SERS測定においては、通常は励起波長より散乱波長が長くなるストークス散乱を用
いる。
一方、SERS測定は、非常に強度の低いラマン散乱光の強度を、表面プラズモンによる電場増強効果を用いて飛躍的に大きくできる現象を利用する。即ち、励起光の波長λの電場増強度Eとラマン散乱光の波長λの電場増強度Eが強く、且つHSDが大きいことが求められ、SERS強度(SERS intensity)は、下記式(b)に比例する。
・E ・HSD ・・(b)
但し、Eは励起光の波長λにおける電場増強度、Eはラマン散乱光の波長λにおける電場増強度、HSDは、Hot Spot Density(ホットスポット密度)を表し、単位面積当たりのホットスポットの個数である。
すなわち、SERSの測定は、使用する励起光の波長と、検出しようとしている標的物質のラマン散乱光の波長特性を把握したうえで、上記式(b)に比例するSERS増強度が大となるよう、励起光の波長と散乱光の波長と、表面プラズモンの電場増強度(反射率(Reflectance))スペクトルにおけるピークの波長とが、それぞれほぼ一致するよう設計することが好ましい。また、SERSセンサーは、電場増強度(反射率)スペクトルにおけるピークがブロードで、かつ高い増強度の値を有することが望ましい。
また、励起光の照射によって表面プラズモン共鳴(SPR)が発生すると、共鳴による吸収が起き、反射率(reflectance)が低下する。そのため、SPR増強電場の強度は、反射率rを用いて(1−r)で表すことができる。反射率Rの値がゼロに近いほど、増強電場の強度が強いという関係があるため、反射率をSPR増強電場の強度の指標として用いることができる。そのため、本明細書では、増強度プロファイル(増強度スペクトル)、及び反射率プロファイル(反射率スペクトル)は互いに相関していると考え、両者を上記関係を踏まえた上で同等のものとして扱う。
1.5.ホットスポットの位置
本実施形態の電場増強素子100に励起光が照射されると、少なくとも、金属粒子30の上面側の端、すなわち、金属粒子30の透光層20に遠い側の角部(以下この位置を「トップ」と称することがあり、図中ではtの符号を付す。)、及び、金属粒子の下面側の端、すなわち、金属粒子30の透光層20に近い側の角部(以下この位置を「ボトム」と称することがあり、図中ではbの符号を付す。)に増強電場の大きい領域が発生する。なお、金属粒子30の透光層20に遠い側の角部とは、金属粒子30の頂部に相当し、例えば金属粒子30が透光層20の法線方向を中心軸とする円柱形状である場合には、透光層20から遠い側の表面(円形の面)の周付近のことを指す。また、金属粒子30の透光層20に近い側の角部であり、金属粒子30の裾部に相当し、例えば金属粒子30が透光層20の法線方向を中心軸とする円柱形状である場合には、透光層20から近い側の表面(円形の面)の周付近のことを指す。
金属粒子30は、透光層20の上に、凸状に配置されているため、電場増強素子100に、標的物質が接近する際には、金属粒子30のトップに接触する確率のほうが、ボトムに接触する確率よりも大きいと考えられる。
このような考察のもと、金属粒子30のトップにおいて電場増強度が大きくなる条件に着目すると、上述の透光層20の厚さGの範囲を決定することができる。すなわち、本実施形態の電場増強素子100は、上述のとおり、金属層10と、金属層10上に設けられ励起光を透過する透光層20と、透光層20上に設けられ、第1方向及び第1方向に交差する第2方向に配列された複数の金属粒子30と、を含み、励起光が照射された場合に、金属粒子30(近傍)に励起される局在型表面プラズモンと、金属層10と透光層20と
の界面(近傍)に励起される伝搬型表面プラズモンとは、電磁的に相互作用するものである。そして、「1.2.透光層」の項で述べた、(i)、(ii)の条件の少なくとも1つに従って、透光層20の厚さGを選ぶことにより、金属粒子30のトップにおける電場増強度を非常に大きくすることができる。
また、本実施形態の電場増強素子100の構造によると、透光層20の上には、複数個の金属粒子30が設けられる。既に述べたが、透光層20の厚さGが、およそ40nmを下回ると、金属粒子30近傍の局在型表面プラズモンの、金属層10表面付近の伝搬型表面プラズモンとの相互作用が大きくなり、金属粒子30のボトムにおける増強度に対するトップにおける増強度の比が小さくなる。すなわち電場増強のためのエネルギーの配分が金属粒子30のボトムに偏る。
透光層20の厚さGが、およそ40nmを下回ると、トータルの電場増強度に変化がないとしても、標的物質が接触しやすい金属粒子30のトップにおける電場増強度が相対的に低下することになり、電場増強素子100の電場増強の効率は低下すると考えられる。このような観点からも、(i)、(ii)の条件の少なくとも1つに従って設定され、透光層20の厚さGの下限値を40nm以上とすれば、金属粒子30の上面側(トップ)に励起される局在型表面プラズモン(LSP)の強度の、金属粒子30の下面側(ボトム)に励起される局在型表面プラズモンの強度に対する比が、透光層20の厚さGにかかわらず一定となるため、電場増強のエネルギーの利用効率が高いと言うことができる。
なお、ここで「一定」とは、特定の値が変動しない場合、特定の値が±10%の範囲で変動する場合、及び、好ましくは、特定の値が±5%の範囲で変動する場合を含むものとする。
1.6.励起光
電場増強素子100に入射される励起光の波長は、金属粒子30の近傍に局在型表面プラズモン(LSP)を生じ、かつ、「1.2.透光層」の項で述べた、(i)、(ii)の条件の少なくとも1つの関係を満足させることができる限り、限定されず、紫外光、可視光、赤外光を含む、電磁波とすることができる。励起光は、例えば、第1方向に偏光した直線偏光光、第2方向に偏光した直線偏光光、及び、円偏光光の少なくとも1つとすることができる。このようにすれば、電場増強素子100によって非常に大きい光の増強度を得ることができる。
なお、電場増強素子100をSERSのセンサーとして用いる場合には、励起光として、第1方向に偏光した直線偏光光、第2方向に偏光した直線偏光光、及び、円偏光光を適宜に組み合わせて用いることにより、電場増強スペクトルにおける増強度ピークの数、大きさ、形状(幅)を、励起光の波長λや、標的物質のラマン散乱光の波長λに対して合わせ込むことができる場合がある。
本実施形態の電場増強素子100は、以下の特徴を有する。本実施形態の電場増強素子100は、光照射により励起されるプラズモンに基づき、光を非常に高い増強度で増強することができる。本実施形態の電場増強素子100は、高い増強度を有するため、例えば、医療・健康、環境、食品、公安等の分野において、細菌、ウィルス、タンパク質、核酸、各種抗原・抗体などの生体関連物質や、無機分子、有機分子、高分子を含む各種の化合物を高感度、高精度、迅速かつ簡便に検知するためのセンサーに用いることができる。例えば、本実施形態の電場増強素子100の金属粒子30に抗体を結合してこのときの増強度を求めておき、該抗体に抗原が結合した場合の増強度のピーク波長の変化、あるいはピーク波長近傍に設定された波長における反射率の変化に基づいて抗原の有無や量を調べることができる。また、本実施形態の電場増強素子100の光の増強度を利用して、微量物
質のラマン散乱光の増強に用いることができる。
2.分析装置
本実施形態の分析装置は、上述の電場増強素子と、光源と、検出器と、を備える。以下、分析装置がラマン分光装置である場合を例として説明する。
図10は、本実施形態に係るラマン分光装置200を模式的に示す図である。ラマン分光装置200は、標的物質からのラマン散乱光を検出して分析(定性分析、定量分析)するものであって、図7に示すように、光源210と、気体試料保持部110と、検出部120と、制御部130と、検出部120及び制御部130を収容している筐体140と、を含む。気体試料保持部110は、本発明に係る電場増強素子を含む。以下では、上述の電場増強素子100を含む例について説明する。
気体試料保持部110は、電場増強素子100と、電場増強素子100を覆うカバー112と、吸引流路114と、排出流路116と、を有している。検出部120は、光源210と、レンズ122a,122b,122c,122dと、ハーフミラー124と、光検出器220と、を有している。制御部130は、光検出器220において検出された信号を処理して光検出器220の制御をする検出制御部132と、光源210などの電力や電圧を制御する電力制御部134と、を有している。制御部130は、図7に示すように、外部との接続を行うための接続部136と電気的に接続されていてもよい。
ラマン分光装置200では、排出流路116に設けられている吸引機構117を作動させると、吸引流路114及び排出流路116内が負圧になり、吸引口113から検出対象となる標的物質を含んだ気体試料が吸引される。吸引口113には除塵フィルター115が設けられており、比較的大きな粉塵や一部の水蒸気などを除去することができる。気体試料は、吸引流路114及び排出流路116を通り、排出口118から排出される。気体試料は、係る経路を通る際に、電場増強素子100の金属粒子30と接触する。
吸引流路114及び排出流路116の形状は、外部からの光が電場増強素子100に入射しないような形状である。これにより、ラマン散乱光以外の雑音となる光が入射しないため、信号のS/N比を向上させることができる。流路114,116を構成する材料は、例えば、光を反射し難いような材料や色である。
吸引流路114及び排出流路116の形状は、気体試料に対する流体抵抗が小さくなるような形状である。これにより、高感度な検出が可能になる。例えば、流路114,116の形状を、できるだけ角部をなくし滑らかな形状にすることで、角部における気体試料の滞留をなくすことができる。吸引機構117としては、例えば、流路抵抗に応じた静圧、風量のファンモーターやポンプを用いる。
ラマン分光装置200では、光源210は、電場増強素子100に励起光を照射する。光源210は、電場増強素子100の第1方向(金属粒子30の並ぶ方向であって、金属粒子列31の伸びる方向)に直線偏光した光(第1方向と同じ方向の直線偏光光)、第2方向に直線偏光した光、及び円偏光光の少なくとも1種をい照射できるように配置される。図示しないが、光源210から照射される励起光の入射角θは、電場増強素子100の表面プラズモンの励起条件に応じて適宜変化させることができるようにしてもよい。光源210は、図示しないゴニオメーター等に設置されてもよい。
光源210が照射する光は、「1.6.励起光」の項で述べたと同様である。具体的には、光源210としては、半導体レーザー、気体レーザー、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、キセノンランプなどに、適宜、波長選択素子、フィルター、偏光子などを設けたものを
例示することができる。
光源210から射出された光は、レンズ122aで集光された後、ハーフミラー124及びレンズ122bを介して、電場増強素子100に入射する。電場増強素子100からは、SERS光が放射され、該光は、レンズ122b、ハーフミラー124、及びレンズ122c,122dを介して、光検出器220に至る。すなわち、光検出器220は、電場増強素子100から放射される光を検出する。SERS光には、光源210からの入射波長と同じ波長のレイリー散乱光が含まれているので、光検出器220のフィルター126によってレイリー散乱光を除去してもよい。レイリー散乱光が除去された光は、ラマン散乱光として、光検出器220の分光器127を介して受光素子128にて受光される。受光素子128としては、例えば、フォトダイオードを用いる。
光検出器220の分光器127は、例えば、ファブリペロー共振を利用したエタロン等で形成されており、通過波長帯域を可変とすることができる。光検出器220の受光素子128によって、標的物質に特有のラマンスペクトルが得られ、例えば、得られたラマンスペクトルと予め保持するデータとを照合することで、標的物質の信号強度を検出することができる。
なお、ラマン分光装置200は、電場増強素子100、光源210、及び光検出器220を含み、電場増強素子100に標的物質を吸着させ、そのラマン散乱光を取得することができれば、上記の例に限定されない。
また、上述した本実施形態に係るラマン分光法のように、レイリー散乱光を検出する場合は、ラマン分光装置200は、フィルター126を有さず、分光器によって、レイリー散乱光とラマン散乱光とを分光してもよい。
ラマン分光装置200では、上述の電場増強素子100を含む。このようなラマン分光装置200(分析装置)によれば、増強度(反射率)スペクトルにおいて、非常に高い増強度が得られ、標的物質を高感度に検出・分析することができる。また、ラマン分光装置200が備える電場増強素子100における高い増強度の得られる位置が、少なくとも金属粒子30の上面側(トップ)に存在するため、当該位置に標的物質が接触しやすいため、標的物質を高感度に検出・分析することができる。
また、このようなラマン分光装置は、「1.2.透光層」の項で述べた、(i)、(ii)の条件の少なくとも1つに従って、電場増強素子100の透光層20の厚さGが設定されるため、透光層20の厚さGをおよそ20nm以上とすることにより、製造上のばらつきの許容範囲を大きくとることができる。
さらに、このようなラマン分光装置200によれば、金属粒子30の上面側(トップ)に励起される局在型表面プラズモン(LSP)の強度の、金属粒子30の下面側(ボトム)に励起される局在型表面プラズモンの強度に対する比が、透光層20の厚さGにかかわらず一定となる電場増強素子100を用いているため、電場増強のエネルギーの利用効率が高い。
3.電子機器
次に、本実施形態に係る電子機器300について、図面を参照しながら説明する。図11は、本実施形態に係る電子機器300を模式的に示す図である。電子機器300は、本発明に係る分析装置(ラマン分光装置)を含むことができる。以下では、本発明に係る分析装置として上述のラマン分光装置200を含む例について説明する。
電子機器300は、図11に示すように、ラマン分光装置200と、光検出器220からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する演算部310と、健康医療情報を記憶する記憶部320と、健康医療情報を表示する表示部330と、を含む。
演算部310は、例えば、パーソナルコンピューター、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistance)であり、光検出器220から送出される検出情報(信号等)を受け取る。演算部310は、光検出器220からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する。演算された健康医療情報は、記憶部320に記憶される。
記憶部320は、例えば、半導体メモリー、ハードディスクドライブ等であり、演算部310と一体的に構成されてもよい。記憶部320に記憶された健康医療情報は、表示部330に送出される。
表示部330は、例えば、表示板(液晶モニター等)、プリンター、発光体、スピーカー等により構成されている。表示部330は、演算部310によって演算された健康医療情報等に基づいて、ユーザーがその内容を認識できるように、表示又は発報する。
健康医療情報としては、細菌、ウィルス、タンパク質、核酸、及び抗原・抗体からなる群より選択される少なくとも1種の生体関連物質、又は、無機分子及び有機分子から選択される少なくとも1種の化合物の有無若しくは量に関する情報を含むことができる。
電子機器300では、上述のラマン分光装置200を含む。そのため、電子機器300では、微量物質の検出を高感度で効率よく行うことができ、高精度な健康医療情報を提供することができる。
例えば、本発明に係る電場増強素子は、抗原抗体反応における抗原の吸着の有無などのように、物質の吸着の有無を検出するアフィニティー・センサーなどとして用いることもできる。アフィニティー・センサーは、該センサーに白色光を入射し、波長スペクトルを分光器で測定し、吸着による表面プラズモン共鳴波長のシフト量を検出することで、検出物質のセンサーチップへの吸着を高感度に検出することができる。
4.実験例
以下に実験例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
各実験例では、図12に模式的に示すようなモデルを用いた。光が透過しない程度に十分厚い金属層として、金(Au)層を用い、当該金属層(金)上に、透光層として、屈折率1.46のSiO層、その上に金属粒子として、円柱状の銀を一定の周期で形成したGSPP(Gap type Surface Plasmon Polariton)モデルとした。なお、金属層、金属粒子の材質は、限定されず、励起光の波長領域において、誘電率の実数部が負で大きく、虚数部が実数部より小さい金属であればプラズモンを生じさせることができる。なお、モデルは、金の金属層上に透光層としてSiOを形成し、金属粒子として、銀又は金を所定のピッチで形成したものとし、金属粒子の直径は、LSPとPSPとの相互作用が大きくなるサイズを選んだ。
(計算モデルのパラメーター等)
各実験例で示されるグラフ等には、例えば「X180Y780」などの表記を用いている。「X180Y780」は、第1方向(X方向)に180nmピッチ(第1ピッチP1)、第2方向(Y方向)に780nmピッチ(第2ピッチP2)で金属粒子が配置される
ことを意味する。
また、数値に添えて「D」、「T」なる文字が付された場合には、モデルに用いた金属粒子が直径D、高さTの円柱状であることを指す。また、数値に添えて「G」なる記号が付された場合には、透光層の厚さGが当該数値[nm]であることを指す。また、グラフの横軸等にGap thicknessとあるのは、透光層の厚さGのことを指している。さらに、数値が、例えば、「20−100」等と範囲を有して表記される場合は、当該範囲において計算上、当該数値範囲内で連続的又はとびとび(離散的)の値を採って計算されたことを示している。
さらに、図中「Ag」又は「AG」とあるのは、注目する構成の材質が銀であることを示しており、「Au」又は「AU」とあるのは、注目する構成の材質が金であることを示している。また「@」とあるのは、「@に続けて記載された波長において、」という意味であり、例えば、「SQRT_@815nm」との記載であれば、波長815nmにおけるSQRTを指す。
(計算の概要)
計算はRsoft社(現サイバネットシステム株式会社)のFDTD soft FullWAVEを用いた。また、各実験例では、ニアフィールド特性及び/又はファーフィールド特性を求めている。ニアフィールド特性のFDTD計算条件は、XY方向に均一な1nmメッシュ、Z方向に1−5nmのグリッドグレーティング(GG)(計算時間cT=10μm)、又は、XYZ方向に2−10nmのGG(計算時間cT=7μm)を用いている。また、用いたメッシュの条件は、各実験例で示すが、例えば、「XY1Z1−5nmGG」と記載あるものは、「XY1nmZ1−5nm Grid Grading」を指し、「2−10nmGG」と記載あるものは、「XYZ2−10nm Grid Grading」を指す。金属粒子の周辺の屈折率nは1とした。また、励起光については、透光層の厚さ方向(Z)からの垂直入射とし、X方向(第1方向)の直線偏光光とした。
増強位置(ホットスポット)では、電場EとEの2つの成分から成立つため、以下の実験例における全ての増強度はSQRT(E +E )で表す。ここで、Exは、入射光の偏光方向(第1方向)の電場強度を示し、Ezは、厚さ方向の電場強度を示す。なお、この場合には第2方向の電場強度は小さいので考慮していない。また以下、SQRT(E +E )を単に「SQRT」と称することがある。
また、励起光の照射によって表面プラズモン共鳴(SPR)が発生すると、共鳴による吸収が起き、反射率が低下する。そのため、SPR増強電場の強度は、反射率rを用いて(1−r)で表すことができる。反射率rの値がゼロに近いほど、増強電場の強度が強いという関係があるため、反射率をSPR増強電場の強度(SQRT)の二乗の指標として用いることがある。
ファーフィールド特性のFDTD計算条件は、モニターを素子の遠方に置き、0.5μmに中心波長を有するパルス光を励起光として入射させ、反射率の波長特性を取得するようにした。この方法によると、反射率のミニマム値(極小値)が、増強度の最大値を示し、同時に増強度が最大となるピークの波長も取得することができる。また、ファーフィールド特性は、各部のホットスポットのニアフィールド特性の積分値でもあるが、通常、ニアフィールド特性とほぼ等しい結果を得ることができる。ファーフィールド特性は、主として2−10nmGGで取得し、計算時間cT=32.7μmとした。なお、ファーフィールド特性において、メッシュサイズに依存する異常値が生じた場合は、メッシュサイズを1−5nmGGとして、再計算をした。
計算上いずれもX方向の直線偏光光の入射光を用いており、例えば、「X120Y600」と付したものは、ピッチP1が120nm、ピッチP2が600nmである場合に、「第1方向」の直線偏光光の入射光による結果と等価であり、「X600Y120」と付したものは、ピッチP1が120nm、列ピッチP2が600nmである場合に、「第2方向」の直線偏光光の入射光による結果と等価である。
また、説明の便宜上、X180Y780及びX780Y180等のXY方向の一方が励起光の波長近傍の長さで、他方がそれよりも短いモデルを、どちらも1ラインモデルと称することがあり、1ラインモデルすなわちX180Y780にX方向(第1方向)に偏光した励起光を入射させた場合(ピッチが短い方向に沿う方向の直線偏光)を「PSP⊥LSP」あるいは単に「⊥」、Y方向(第2方向)に偏光した励起光を入射させた場合(ピッチが長い方向に沿う方向の直線偏光)を「PSP‖LSP」あるいは単に「‖」と表記することがある。
4.1.実験例1
(1ライン⊥モデルの金属粒子の大きさのばらつきに対するピーク波長のシフト)
電場増強素子の金属粒子のサイズのばらつきは、素子を製造する上で完全に排除することは難しい。発明者らは、電子線描画装置(EB)を用いて、直径150nmの金属粒子を有する、複数の電場増強素子を試作して解析たところ、金属粒子の直径は、標準偏差σ=5nmの分布(バラツキ)が発生していることが分かっている。すなわち本実験例の前提として、すなわち金属粒子の直径は、平均的に最大と最小の差は10nm程度となっていることがわかっている。
(1ライン⊥モデル)
まず、633nmの励起波長のためのモデルとして、金属層を150nmの厚さの金(Au)とし、透光層を10−50nmのSiOとし、金属粒子を80−90D30Tの銀(Ag)として、X140Y600に配列したモデルを計算した。係るモデルは、X140Y600_80−90D30T_AGで略記される。透光層の屈折率は、1.46とし、透光層の厚さ(ギャップG)を、10nmから10nm刻みで50nmまで変化させて反射率の波長依存性(反射率スペクトル)を取得した結果を図13に示す。
励起光の条件は、垂直入射、偏光方向はX方向である。このモデルでは、LSPがX方向に生じ、PSPはY方向に生じたハイブリッドモードであり、アンチクロシングビヘビアーを生じず、反射率スペクトルにおいて1つの極小値を示すピークが見られた。
図13より、金属粒子の直径をそれぞれ80、85、90nmと変化させたとき、10Gのモデルの反射率スペクトルにおける極小値の波長は、それぞれ、700nm、730nm、745nmと大きくレッドシフトすることが分った。また、20Gのモデルの反射率極小値の波長は、それぞれ、615nm、640nm、652nmと10Gの場合と比較してシフト量は小さいもののレッドシフトが生じることが判明した。
これに対して、30Gのモデルの反射率極小値の波長は、金属粒子の直径をそれぞれ80、85、90nmと変化させたとき、それぞれ、605nm、620nm、628nmとレッドシフトのシフト量が非常に小さくなり、40G及び50Gのモデルでは、反射率極小値の波長は、ほとんど変化しないことが判明した。
このような結果から、透光層の厚さが、20nm以下では、金属粒子の直径の変化に対して敏感に反射率の極小値を与える波長が変化したが、30nm以上では、金属粒子の直径の変化に対して鈍感であり、40nm以上では金属粒子の直径の変化に対してほとんど
変化しないことが分かる。そのため、透光層の厚さGが30nmから40nm程度以上とすることにより、金属粒子の直径のばらつきが生じた場合に、反射率の極小値を与える波長が変化しにくく、製造上のばらつきの許容範囲を大きくとることができることが判明した。
次に785nmの励起光のモデルとして、1ラインX180Y780のディメンジョンのモデルの反射率スペクトルを取得した。このモデルは、AG及びAUでは、ピーク波長を785nm前後とするには、AGの径がAUの径よりも大きくなり、また逆にAUの場合はAGの場合の径よりも小さくなることを考慮している。このモデルでは、LSPがX方向に生じ、PSPはY方向に生じたハイブリッドモードであり、アンチクロシングビヘビアーを生じず、反射率スペクトルにおいて1つの極小値を示すピークが見られた。
図14は、1ライン_X180Y780_125−135D30T_AG_20−80G、及び1ライン_X180Y780_115−125D30T_AU_20−80Gの反射率の波長特性(反射率スペクトル)を示している。
透光層の厚さ(G)が20nmである場合には、金属粒子の直径が10nm変化することにより、金属粒子が銀(AG)である場合は55nm、金(AU)である場合は40nmレッドシフトすることが判明した。
これに対して透光層の厚さ(G)が40nm、60nm、80nmと厚くなるにともない、反射率の極小値自体は上昇している(大きくなっている)が、例えば60GのAgの場合は、10nmの直径の変化によって、反射率の極小値を与える波長は35nm、60GのAuの場合は20nmと、20Gの場合に比べ、反射率の極小値を与える波長の変化量は20nm程度低下していることがわかる。
したがって、この結果から、金属粒子がAgであってもAuであっても同様に、透光層の厚さが、20nm以下では、金属粒子の直径の変化に対して敏感に反射率の極小値を与える波長が変化し、40nm以上では金属粒子の直径の変化に対して鈍感に反射率の極小値を与える波長が変化することが分かる。そのため、透光層の厚さGが30nmから40nm程度以上とすることにより、金属粒子の直径のばらつきが生じた場合に、反射率の極小値を与える波長が変化しにくく、製造上のばらつきの許容範囲を大きくとることができることが判明した。
図15は、1ライン_X180Y780_130D30T_AGの反射率スペクトルにおける極小ピークの半値幅(半値全幅)と、透光層の厚さ(G)との関係を示すグラフである。図15の計算には、1−5GGのメッシュを用いた。また、ここでの半値幅は、下向きのピークに対して測定され、図中「FWHM」と記載されている。FWHMは、Full Width at Half Maximumの略であり、本明細書では、Maximumは極小値に対応する。
図15より、半値幅(FWHM)>60nmを超える透光層の厚さGが、20nm≦G≦140(nm)の範囲であることがわかった。更に透光層の厚さGが100nmで、半値幅が100nmというブロードな特性を示すことがわかった。半値幅が広いということは、ラマン分光測定において、下記の理由で有効である。
ラマン散乱波長λs、励起光の波長λiについて、(λs−λi)の値が、100nmまでカバーできる(785nmの波長の励起光の場合には、1450cm−1までの範囲のラマンシフトをカバーできることになる。
次に、1ライン_X180Y780_130D30T_AG、及び、1ライン_X180Y780_120D30T_AU、について、反射率スペクトルの極小値を与える波長の透光層の厚さG依存性を調べた。図16は、反射率スペクトルにおける極小値を与える波長を、透光層の厚さGに対してプロットしたグラフである。図16には、主たる極小ピーク(黒四角(filled square))の他に、従たる極小ピーク(黒菱形(黒斜め四角)(filled rhombus; filled diamond))がプロットされているが、後者は、透光層に生じる干渉共鳴効果により生じたものであり、アンチクロシングビヘビアーが生じているわけではない。
図16をみると、金属粒子がAGである場合には透光層の厚さGが220nm付近において、AUである場合には、透光層の厚さGが260nm付近において干渉共鳴効果による反射率の極小ピークの値の最小値が観測され、これらの厚さGよりも小さい場合に、反射率の極小値の値が大きくなった。
このため、AGの場合は、透光層の厚さGを220nm、AUの場合は、透光層の厚さGが260nmにおいて、それぞれ反射率スペクトル(ファーフィールド特性)を取得した。その結果を図17に示す。図17は、干渉共鳴を生じる透光層の厚さGにおける、X180Y780_AG_220G_120−140D、及び、X180Y780_AU_260G_110−130Dのモデルのファーフィールド特性を示している。
図17をみると、干渉共鳴効果は短波長側のピークであり、Agでは、220Gのときに半値幅FWHMが26nm、Auでは、260Gのときに半値幅FWHMが46nmであった。これに対して、図15の1ライン_X180Y780_130DAGのモデルでは、20Gから140Gの範囲においてFWHMは60nm以上であるから、これらを比較すると、反射率スペクトルにおいて干渉共鳴によって生じるピークは、半値幅が狭く、広い波長帯域において増強度を高めることが難しく、ラマンセンサーとしては、このような効果を用いて電場増強素子を設計することは必ずしも最適ではないことが分かった。例えば、AgのFWHMが26nmの場合、0cm−1−400cm−1のラマンシフトしか計測できず、ラマンセンサーとしては適さない。例えば、特開2009−115492号公報に開示されたデバイスは、干渉共鳴を利用するものであり、半値幅を狭くしてセンシング物質の付着による誘電率の変化を検出する方式、すなわちピーク波長のシフト量あるいはピーク波長近傍の固定波長における反射率の変化を検出する方式であり、半値幅を増大させることによって広い波長帯域で高い増強度を得る本明細書に記載の方式とは異なっている。
4.2.実験例2
(1ライン⊥モデルのニアフィールド特性)
図16下段に示されるファーフィールドの反射率特性を参照すると、透光層の厚さGが大きくなると、反射率の極小値が徐々に上昇している。この理由は、ファーフィールド特性は、金属粒子の下部(ボトム)又は上部(トップ)のホットスポットの積分値を表すことが一因となっているためと考えられる。本実験例では、各ホットスポットにおける透光層の厚さG依存性を調べるため、同モデルのニアフィールド特性を取得した。その結果を図18に示す。
ボトムは、金属粒子とSiO(透光層)との間の界面の増強度、トップは、金属粒子上面の増強度、(トップ/ボトム)比は、それぞれの位置のSQRTの比の値を示す。上述の図16から分かるように増強度のピークを与える波長は、透光層の厚さGに従って変化するため、図18のSQRTは、それぞれ最大の増強度(最小の反射率)を与える波長における増強度(SQRT)を求めてこれをプロットしたグラフである。
図18は、1ライン⊥_X180Y780_130D30T_AGモデル、及び、1ライン⊥_X180Y780_120D30T_AUモデルのSQRTの透光層の厚さGに対するプロット、及び、同モデルの(トップ/ボトム)比の厚さGに対するプロットである。
図18をみると、金属粒子がAg、Auのいずれの材質であっても、ボトムのSQRTは、Gの値が20nmから大きくなるにつれて徐々に小さくなっているが、トップのSQRTは、金属粒子がAgの場合にはGが約60nm、Auの場合にはGが約80nmで最大値を示している。
つまり、ボトムの電場増強(SQRT)は、透光層の厚さ方向に生じたLSPを主体とするモードであり、トップの電場増強は、金属層に生じたPSPを主体とするモードであると解することができる。このことは、図18のモデルが、X方向(透光層の平面に平行な方向)の金属粒子間に生じるLSPと、透光層の厚さ方向に生じたLSPとが複合したLSPが、金属層に生じたY方向のPSPと相互作用することにより高い増強度を示すというメカニズムとも合致し矛盾がない。
既に述べたが、試料中の標的物質は、金属粒子のトップの位置に付着しやすい。図18のモデルでは、透光層の厚さGが20nmのときのSQRT以上のSQRTを示す透光層の厚さGは、20nm以上170nm以下と読取ることができる。また図18をみると、(トップ/ボトム)比は、透光層の厚さGが40nmないし50nmを越える付近から一定値となることが分かる。すなわち、透光層の厚さGが40nm以上では、Gが変動しても、(トップ/ボトム)比は変化しにくく、例えば、透光層の製造上の膜厚のばらつきの許容範囲を大きくとることができる。また、透光層の厚さGが40nm以上では、40nm未満の場合に比べて、(トップ/ボトム)比が大きいことから、励起光によって与えられるエネルギーを、トップ側により多く配分することができるため、標的物質の測定をより効率的に行うことができる。
次に、励起光の波長が異なる場合について調べた。図19は、1ライン⊥_X180Y600_100D30T_AGモデル、及び、1ライン⊥_X180Y780_130D30T_AGモデルのSQRTの透光層の厚さGに対するプロット、及び、同モデルの(トップ/ボトム)比の厚さGに対するプロットである。計算に用いたメッシュはXY1nmZ1−5nmGGである。また、上述の図18の場合と同様に、増強度のピークを与える波長は、透光層の厚さGに従って変化するため、図19のSQRTは、それぞれ最大の増強度(最小の反射率)を与える波長における増強度(SQRT)を求めてこれをプロットした。
図19をみると、Y600の場合(図19左側)、ボトムのSQRTは、Gの値が20nmから大きくなるにつれて、小さい極大があるものの、徐々に小さくなっており、Y780の場合(図19右側)、ボトムのSQRTは、Gの値が20nmから大きくなるにつれて単調に徐々に小さくなっている。一方、トップのSQRTは、Y600の場合にはGが約40nmから100nm、Y780の場合にはGが約60nmで最大値を示している。
図19のモデルでは、透光層の厚さGが20nmのときのSQRT以上のSQRTを示す透光層の厚さGは、Y600の場合(633nm励起モデル)は、20nm以上140nm以下と読取ることができる。また、Y780の場合(785nm励起モデル)では、透光層の厚さGが20nmのときのSQRT以上のSQRTを示す透光層の厚さGは、20nm以上175nm以下と読取ることができる。
さらに図19の下段のグラフをみると、(トップ/ボトム)比は、透光層の厚さGが40nmないし50nmを越える付近からほぼ一定値となることが分かる。すなわち、透光層の厚さGが40nm以上では、Gが変動しても、(トップ/ボトム)比は変化しにくく、例えば、透光層の製造上の膜厚のばらつきの許容範囲を大きくとることができる。また、透光層の厚さGが40nm以上では、40nm未満の場合に比べて、(トップ/ボトム)比が大きいことから、励起光によって与えられるエネルギーを、トップ側により多く配分することができるため、標的物質の測定をより効率的に行うことができる。
さらに、透光層の厚さGが20nmのときのSQRT以上のSQRTを示す透光層の厚さGの上限値は、励起光の波長に比例すると考えられ、両者の値を用いて規格化することができ、この場合の比例定数(補正項)を(633nm/785nm)とすることができる。
図19の結果からは、633nm励起モデルと785nm励起モデルとの間の関係を知ることができる。すなわち、633nm励起モデル(Y600)では、透光層の厚さGが20nmのときのSQRT以上のSQRTを示す透光層の厚さGの上限値は140nmであり、785nm励起モデル(Y780)では、透光層の厚さGが20nmのときのSQRT以上のSQRTを示す透光層の厚さGの上限値は175nmであった。
そして、785nm励起モデルの場合の透光層の厚さGの上限値175nmに、(633nm/785nm)を乗ずると、141nmとなり、633nm励起モデル(Y600)の透光層の厚さGの上限値140nmとほぼ一致していることが確認できた。
4.3.実験例3
(1ライン‖モデルのファーフィールド特性)
次に1ライン‖X780Y180のモデルの反射率スペクトルを図20に示す。励起光の偏光方向はX方向であり、X方向にPSPとLSPとのハイブリッドを生ずるモードである。この場合は、アンチクロシングビヘビアーが生じて、反射率スペクトルに、2つの極小値を示すピークが現れる。
図20には、1ライン‖_X780Y180_130−140D30T_AG_20−100G、及び、1ライン‖_X780Y180_115−125D30T_AU_20−80Gの反射率スペクトルを示した。
透光層の厚さGが20nmである場合、780nm近傍に見られるピーク(極小値をもつグラフ上で下に凸のピーク)のピーク波長は、金属粒子の材質がAg、Auいずれでもその直径Dに依らず一定であるが、長波長側のピーク(0.85μm〜1μmの範囲に見られるピーク)のピーク波長は、金属粒子の材質がAg、Auいずれでも、その直径が10nm変化することにより、約30nm程度シフトすることが分かる。
一方、透光層の厚さGが60nmの場合には、短波長の780nm近傍のピークは、反射率の極小値は大きくなる(ピークが小さくなる)が、ピーク波長は、金属粒子の材質がAg、Auいずれでもその直径Dに依存せず、780nmで一定である。そして、長波長側のピークは、金属粒子の材質がAg、Auいずれでも、その直径が10nm変化することにより、10nm程度シフトに留まることが分かる。
図21は、図20に示したファーフィールド特性から読取った極小ピークの波長を各モデルごとにプロットしたグラフである。図21をみると、1ライン‖のモデルでは、いずれのモデルでも、透光層(SiO)の厚さGが40nmから140nmの範囲で変化しても、短波長側のピークの波長は、ほとんど変化しないことが分かる(グラフ中の「黒四
角(filled square)」)。これに対して、長波長側のピークの波長は、透光層(SiO)の厚さGが40nmから大きくなるにつれて、単調に長波長側へシフトすることが分かった(グラフ中の「黒三角(filled triangle)」)。
長波長側のピークのピーク波長が、Gの増大に従って長波長側へシフトする現象は、金(Au)からなる金属層の周辺の実効屈折率が、Gの増大に比例して高くなり金属層に生じる伝搬型プラズモン(PSP)の分散関係が、長波長側にシフトすることが一因であると考えられる。
4.4.実施例4
(1ライン‖モデルのニアフィールド特性)
実験例2と同様にして、1ライン‖X780Y180のモデルの金属粒子のトップの位置の増強度(SQRT)について、透光層の厚さGへの依存性を調べた。増強度のピークを与える波長は、透光層の厚さGに従って変化するため、SQRTは、それぞれ620nm、630nm及び640nmの波長における増強度(SQRT)を用いた。
図22は、1ライン‖_X600Y180_100D30T_AUのモデルの、金属粒子のトップにおけるSQRTを、透光層の厚さGに対してプロットしたグラフである。
図22を参照すると、透光層の厚さGが20nmのときには、630nm及び640nmの波長で励起されると高いSQRTの値を示すことが判明した。そして、係る値よりも大きいSQRTの値を示す透光層の厚さGの範囲は、励起光の波長にかかわらず、20nm以上130nm以下であることが読取れる。
これらの結果から、以下ことが分かった。1ライン‖モデルのニアフィールド特性において、透光層の厚さGが20nmのときには、モデルのディメンジョンに依らず、(トップ/ボトム)比が小さくなる、すなわち、金属粒子のボトムに発生するプラズモンが、相対的に強くなることが分った。このことは、透光層の厚さGが20nm程度の場合には、増強度が透光層の厚さ方向のLSPによって支配的となるためと考えられる。また、透光層の厚さGが20nm程度では、金属粒子の直径Dのバラツキによって、反射率の極小を示すピークの波長が大きく変化するため、例えば製造時に高い寸法精度が要求されることが分った。更に、透光層の厚さGが20nm程度では、標的物質が付着しやすい金属粒子のトップ端における増強度が相対的に小さくなるため、エネルギーの利用効率が低下すると考えられる。そのため、1ライン‖の633nm励起モデルでは、透光層の厚さGは、20nmを越え130nm以下とすることにより、総合的な電場増強効果の高い電場増強素子となることが分った。
4.5.実験例5
(数値範囲の一般化(補正項について))
上述の各実験例で得られたとおり 20nm<G≦160nmという好ましい透光層の厚さGの範囲は、垂直入射の励起光の波長が785nm、透光層の材質がn=1.46のSiOのある場合から導出された範囲である。また、図19と図22から、785nm励起モデル(X180Y780)及び633nm励起モデル(X180Y600)において、Gが20nmのときのSQRTを越えるSQRTを示すGの範囲は、1ライン⊥モデルでは、
633nm励起モデルは、20nm<G≦140nm
785nm励起モデルは、20nm<G≦175nm
となっていた。
また、1ライン‖モデルでは、
633nm励起モデルは、20nm<G≦130nmであった。
そのため、785nm励起モデルでは、Gの上限値は、130nm・(785nm/633nm)=161nmが導かれるため、式の上限を160nmとし、
20nm<G≦160nm・(励起光の波長[nm])/785nm
が導かれる。
また、上述のモデルにおける好ましい透光層の厚さGは、透光層の材質をSiOととした場合の範囲となっているが、透光層の屈折率に対して当該範囲はシフトする。具体的には、透光層の材質がSiOのときに、20nm<G≦160nmの範囲の場合、他の材質の透光層について規格化することができる。すなわち、SiOの屈折率1.46を用いて、20nm<G・(透光層の屈折率/1.46)≦160nmと表すことができる。例えば、透光層の材質をTiOとする場合には、透光層の屈折率は2.49であり、範囲は、11nm<G≦94nmとなることが分かる。
また、透光層は多層であってもよく、その場合には、実効屈折率を用いて同様に好ましい範囲を決定することができる。例えば、透光層が、10nmの厚さのAlの層(屈折率1.64)、及び、30nm厚さのSiOの層(屈折率1.46)の積層構造を有する場合には、(1.64・10nm+1.46・30nm)/1.46=41.2nmとなり、41.2nmの厚さのSiOの透光層とした場合と同様と考えることができる。
4.6.実験例6
(増強度プロファイルの設計)
図16のように、LSPとPSPとが強く相互作用している1ライン⊥モデルでは、40nm以上160nm以下の透光層厚さGにおいて、ピーク波長の変化は少なく、かつ、ブロードなピークが1つ現れることから、ラマンシフト量の小さい標的物質に対して高い増強度が得られるように、透光層の厚さGを設計することができる。
この場合、モデルにより半値幅(FWHM)は、若干異なるが図15に示されるように、FWHMは60nm以上と比較的大きいため、633nm励起モデルにおいては、693nmまでの波長に対応するラマンシフト、すなわち、波数では1350cm−1までのラマンシフトをカバーすることができる。一方、785nm励起モデルでは、845nmまでの波長に対応するラマンシフト、すなわち、波数では900cm−1までのラマンシフトをカバーすることができる。
図23に、1ライン⊥モデルの反射率スペクトルにおけるピークの波長の透光層厚さG依存性を示す。他方、1ライン‖モデルでは、図21に示したように、モデルのディメンジョンにかかわらず、透光層をSiOとした場合に、透光層厚さGに対して、短波長側のピークのピーク波長はほとんど変化せず、一方、長波長側のピークは透光層厚さGが大きくなると、長波長側へシフトすることが分かる。
長波長側のピークの波長が透光層厚さGが増すとともに長波長側にシフトするのは、金属層の周辺の実効屈折率がギャップ厚に比例し高くなり金属層の伝搬型プラズモン(PSP)の分散関係が長波長側にシフトするためであると考えられる。
633nm励起モデルでは、長波長側のピークは、波長で710nm以上すなわち波数で1750cm−1以上、853nm以下すなわち4100cm−1以下をカバーすることができる。また、785nm励起モデルでは、長波長側のピークは、波長で880nm以上すなわち1400cm−1以上、976nm以下すなわち2500cm−1以下をカ
バーすることができる。
図24の上図は、X180Y780_130D30T_60G_AGモデルで偏光方向をX方向(P1方向)とした場合(⊥モデル)であり、図24の下図は、偏光方向をY方向(P2方向)とした場合(‖モデル)である。⊥モデルではアセトンのラマン散乱光787cm−1(785nm励起、837nm散乱)を検出し、‖モデルではアセトンのラマン散乱光1708cm−1(785nm励起、907nm散乱)を検出できることが分かる。このことを一般化したものが図25であり、励起波長とセンシングしたいラマンシフト量によりラマン散乱波長が導出され、図25から、そのラマン散乱波長で増強ピークを持つ透光層の厚みにすればよいことがわかる。
以上をまとめると、以下のようになる。
(1)633nm励起の場合
標的物質のラマンシフトが0cm−1〜1350cm−1(692nm)である場合には、1ライン⊥モデルを用い、ラマンシフトが1750cm−1(712nm)〜4100cm−1(853nm)である場合には、1ライン‖モデルを用いてラマンシフトの値に合わせた透光層の厚さとすることが、広い波長域で増強度を高めるために有効である。(2)785nm励起の場合
標的物質のラマンシフトが0cm−1〜900cm−1(845nm)である場合には、1ライン⊥モデルを用い、ラマンシフトが1400cm−1(880nm)〜2500cm−1(976nm)である場合には、1ライン‖モデルを用いてラマンシフトの値に合わせた透光層の厚さとすることが、広い波長域で増強度を高めるために有効である。
そして上記(1)の場合の1350cm−1(692nm)〜1750cm−1(712nm)のラマンシフト、及び、上記(2)の場合の900cm−1(845nm)〜1400cm−1(880nm)のラマンシフトを有する標的物質からのラマン散乱光を増強する場合には、金属粒子を配置する密度を高める(例えば、X180Y600の代わりにX180Y400とするなどしてY方向のピッチを詰める)、又は、金属粒子列の列数を複数とする(マルチライン化)ことにより、反射率スペクトルを1ライン⊥モデルの場合よりもブロードにすることができ、当該波数域の散乱光の増強を行うことができる。
標的物質がアセトンである場合を例に、具体的に説明すると、まず、アセトンは、787cm−1、1708cm−1、2921cm−1にラマンシフトを生じることが分っている。そして、励起波長をλi=633nmとすると、ストークスラマン散乱後の波長λsは、ラマンシフトに対応して、それぞれ666nm、709nm、777nmとなる。また、励起波長λi=785nmとすると、ストークスラマン散乱後の波長λsは、ラマンシフトに対応して、それぞれ837nm、907nm、1019nmとなる。
図24は、反射率(増強度)の波長特性とSERSの励起波長と散乱波長の関係を説明するための図である。例えば、図24に示したように、アセトンの787cm−1のラマン散乱光を検出するには、励起波長λi=785nmとし、ストークスラマン散乱後の波長λsは、それぞれ837nmとなるから、偏光方向をX方向とし、1ライン_X180Y780_130D30T_60G_AGとすれば、アセトンの787cm−1のラマン散乱光を強く増強でき、強いSERS信号を得ることができる。
また、アセトンのラマンシフト1708cm−1のラマン散乱光を強く増強するためには、励起波長λi=785nmとする場合には、ストークスラマン散乱後の波長λsは、907nmとなるから、偏光方向をX方向とし、1ライン_X780Y180_130D30T_AG_60Gとすれば、アセトンの1708cm−1のラマン散乱光を強く増強でき、強いSERS信号を得ることができる。
なお、この偏光方向をX方向とした1ライン_X780Y180_130D30T_AG_60Gモデルは、偏光方向をY方向にした1ライン_X180Y780_130D30T_AG_60Gモデルと全く同義である。そのため、上記の例では、それぞれのラマン散乱光を増強するために、2つの電場増強素子を準備する必要はなく、励起光の偏光方向をX方向とY方向とに変えるだけで、1つの電場増強素子によって広い範囲のラマンシフトを有するラマン散乱光を増強できることが理解される。また、円偏光光を用いれば、X方向の直線偏光光及びY方向の直線偏光光を用いて取得されるSERS信号を同時に取得することができる。
図25には、図21で求めた2つのピークを有する系(1ライン‖モデル)のピーク波長の透光層厚さG依存性、及び図23で求めた1つのピークを有する系(1ライン⊥モデル)のピーク波長の透光層厚さG依存性を示した。
1ライン⊥モデルと1ライン‖モデルは、物理的(構造的)には同じ電場増強素子となるが、励起光の偏光方向をX方向とするか、Y方向とするかの違いにより、高い増強度が得られる波長領域を選択することができ、標的物質に応じて高いSERS信号を取得できるような自由度を有することが理解されるであろう。
4.7.実験例7
上記実験例1−6は、金属層を全て金(Au)からなるものとして計算した。一方、銀(Ag)とした場合の各実験を行ったが、両者において大差がなかった。また、透光層はSiO以外にも、Al、TiO等とすることができる。透光層にSiO以外の材質を用いる場合には、上述の実験例1−6のSiOを基本とし、透光層の厚さGを、当該SiO以外の材質の屈折率を考慮すればよい。例えば、材質がSiOの場合の透光層の厚みが20nm超160nm以下の範囲が好ましい場合であって、透光層の材質をTiOとするならば、TiOの屈折率(2.49)を考慮すれば、好ましい透光層の厚さGは、材質がSiOの場合の透光層の厚みに対して(1.46/2.49)の値を乗じて求めることができる。したがって透光層の材質をTiOとする場合には、好ましい透光層の厚さGはおよそ12nm超94nm以下となる。
また、上記実験例1−6では、633nm励起モデルとして600nmピッチで金属粒子が配列されたモデルと、785nm励起モデルとして780nmピッチで金属粒子が配列されたモデルとを用いているが、これに限定されない。
また、633nm励起の1ライン⊥モデルとして、Y方向のピッチを詰め、金属粒子の存在密度を高めた一例として、図26には、1ライン⊥_X140Y600_90D30Tモデル、及び、1ライン⊥_X140Y400_90D30Tモデルの反射率スペクトルを比較するグラフを示す。
図26に示すように、1ライン⊥_X140Y400_90D30Tモデルのように金属粒子の存在密度を高めた場合でも、1ライン⊥_X140Y600_90D30Tモデルと同様の挙動を示すことが理解される。なお、細部を比較すると、ピークの増強度(反射率の最小値)は、1ライン⊥_X140Y600_90D30Tモデルに較べて1ライン⊥_X140Y400_90D30Tモデルのほうが低下するが、半値幅は広がっており標的物質によっては、より適した電場増強素子となっていると考えられる。さらに、SERSの信号強度は、ホットスポット密度に比例するため、金属粒子の存在密度が高まったことにより、ホットスポット密度(HSD)が増加する分、SERS信号の強度は高くなっている。
また、上記実験例は、いずれも金属粒子の形状を円柱としたが、楕円や角柱でも良い。金属粒子の形状を角柱とする場合には、増強度をさらに高くすることができる場合がある。さらに、励起光の波長として、HeNeレーザーの633nmと半導体レーザーの785nmを想定しているが、これに限定されない。励起光の波長がこれらの波長と異なっても、その波長に応じて透光層の厚さGを決定することができることは、既に述べたとおりである。さらに、金属粒子のサイズは80nm−160nm直径、厚みを30nmで計算したが、これらについても限定されない。なお、直径を小さく且つ厚みを薄くするか、直径を大きく且つ厚みを厚くすれば、各実験例と同様又は類似した波長特性に近づけることができる。例えば、34D4T等の小さいサイズであっても上記説明したと同様である。
5.その他の事項
図27は、金属粒子の配列と、LSP(LSPR:Locarized Surface Plasmon Resonance)及びPSP(PSPR:Propagating Surface Plasmon Resonance)との関係を示す模式図である。本明細書では説明の便利のため、LSPが単に金属粒子の周辺に発生するものとして説明してきた。本発明に係る電場増強素子は、金属粒子の配列に異方性を有する(P1<P2)ため、本発明に係る電場増強素子において利用するSPRは、LSPとPSPが電磁的に相互作用して生じるものである。
ここで、金属粒子の周辺に発生し得るLSPには、隣合う金属粒子間に生じるモード(以下、「PPGM」(Particle−Particle Gap Mode)という。)、及び、金属粒子と金属層(ミラーの機能も有する。)との間に生じるモード(以下、「PMGM」(Particle−Mirror Gap Mode)という。)の2種のモードが存在することが知られている(図27参照)。
PPGM及びPMGMの2種のモードのLSPは、いずれも、電場増強素子に励起光が入射されることにより発生する。これらのうち、PPGMのLSPは、金属粒子が接近する(金属粒子間の距離が小さくなる)ほど強度が高くなる。また、PPGMのLSPは、励起光の電場の振動の成分(偏光成分)が、接近した金属粒子の並ぶ方向に多いほど強度が高くなる。一方、PMGMのモードのLSPは、金属粒子の配列や励起光の偏光方向には大きく影響されず、励起光が照射されることにより金属粒子と金属層との間(金属粒子の下方)に生成する。そして、PSPは、これまで説明したとおり、金属層と透光層の界面を伝搬するプラズモンであり、金属層に励起光が入射されることにより、金属層と透光層の界面を等方的に伝搬する。
図27には、実験例等で説明した1ライン構造と、その他の構造(Basic構造及びHybrid構造)との比較を模式的に示した。励起光の偏光方向は図中矢印で示してある。なお、Basic構造、1ライン構造及びHybrid構造なる語句は、本明細書においてそれぞれを区別するために用いられる造語であり、それらの意味を、以下に説明する。
まず、Basic構造は、金属粒子が透光層上に密に配置された構造であり、励起光の照射により、PPGMのLSPR及びPMGMのLSPRが励起されている。この例において、PPGMのLSPRは、励起光の偏光方向における金属粒子の両端に発生しているが、Basic構造は金属粒子の配列の異方性が小さいため、励起光が偏光光でない場合にも同様に、励起光の電場ベクトルの成分にしたがって発生する。Basic構造では、金属粒子が密に配置される結果、励起光が金属層に到達しにくいため、PSPRはほとんどあるいは全く生じておらず、図示ではPSPRを表す模式的な波線が省略してある。
次にHybrid構造は、金属粒子が透光層上に、Basic構造と比較して疎に配置
された構造であり、励起光の照射により、PMGMのLSPRが励起されている。この例において、PPGMのLSPRは、金属粒子間が離れているため、Basic構造と比較すれば微弱に生成しており、図示では省略してある。Hybrid構造では、金属粒子が疎に配置される結果、PSPR(図中波線)が発生する。
そして、1ライン構造は、金属粒子が透光層上に、Basic構造及びHybrid構造の中間的な密度で配置された構造である。1ライン構造は、金属粒子の配列が異方性を有するため、発生するLSPRが、励起光の偏光方向に依存する。1ライン構造のうち、LSPR⊥PSPRの場合(すなわち、金属粒子間の間隔の狭い方向に沿う方向の直線偏光光を入射する場合)には、当該励起光の照射により、PPGMのLSPR及びPMGMのLSPRが励起されている。そして、1ライン構造であるため、金属粒子が疎に配置される結果、PSPR(図中波線)が発生する。
また、1ライン構造のうち、LSPR‖PSPRの場合(すなわち、金属粒子間の間隔の広い方向に沿う方向の直線偏光光を入射する場合)には、当該励起光の照射により、PMGMのLSPRが励起されている。この場合、PPGMのLSPRは、励起光の偏光方向に沿う方向の金属粒子間が離れているため、LSPR⊥PSPRの場合と比較すれば微弱であり、図示では省略してある。そして、1ライン構造であるため、金属粒子が疎に配置される結果、PSPR(図中波線)が発生する。
なお、図27では偏光光を入射した場合について説明しているが、いずれの構造においても、偏光されていない励起光や円偏光光が入射された場合には、その電場の振動方向の成分に応じて上述のSPRが発生する。
各構造における全体のSPRの強度(電場増強度)は、それぞれに発生するSPRの総和(又は積)と関連している。上述のように、全SPRの強度に対するPSPRの寄与度は、Basic構造<1ライン構造<Hybrid構造の順で大きくなる。また、全SPRの強度に対するLSPR(PPGM及びPMGM)の寄与度は、金属粒子の密度(HSD)の観点から、Hybrid構造<1ライン構造<Basic構造の順で大きくなる。さらに、HSD及びPPGMのLSPRに着目すると、全SPRの強度に対するPPGMのLSPRの寄与度は、Hybrid構造<1ライン‖構造<1ライン⊥構造<Basic構造の順で大きくなる。
本発明に係る電場増強素子における金属粒子の配置は、既に説明したとおり、式(1)
P1<P2≦Q+P1 ・・・(1)
[ここで、P1は前記第1ピッチ、P2は前記第2ピッチ、Qは、前記金属粒子の列に励起される局在型プラズモンの角振動数をω、前記金属層を構成する金属の誘電率をε(ω)、前記金属粒子の周辺の誘電率をε、真空中の光速をc、前記励起光の照射角であって前記金属層の厚さ方向からの傾斜角をθ、として、下記式(2)を満たす回析格子のピッチを表す。
(ω/c)・{ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))}1/2=ε1/2・(ω/c)・sinθ+2aπ/Q (a=±1,±2,) ・・・(2)]
の関係を満たすため、構造上、図27に示した構造に関して分類すれば、1ライン⊥構造又は1ライン‖構造に属する。
1ライン⊥構造及び1ライン‖構造は、他の構造と比較して中間的な強度のLSPR及びPSPRが電磁的に強く相互作用する(相乗的に結合する)構造である。また、1ライン⊥構造では、強度の大きいPPGMのLSPRとPSPRとが電磁的に強く相互作用する。また、1ライン‖構造では、中間的な密度(Hybrid構造よりも高い密度)で発生したPMGMのLSPRとPSPRとが電磁的に強く相互作用する。
したがって、1ライン⊥構造及び1ライン‖構造は、PSPRがほとんど発生しないBasic構造や、PPGMのLSPRがほとんど発生しないHybrid構造とは、少なくとも金属粒子の密度及び各SPRの寄与率が異なり、電場増強のメカニズムが異なっているといえる。そして、1ライン構造に属する本発明の電場増強素子では、LSPRとPSPRとが相乗的に相互作用することにより、極めて高い電場増強度を得ることができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…基板、10…金属層、20…透光層、30…金属粒子、31…金属粒子列、100…電場増強素子、110…気体試料保持部、112…カバー、113…吸引口、114…吸引流路、115…除塵フィルター、116…排出流路、117…吸引機構、118…排出口、120…検出部、122a,122b,122c,122d…レンズ、124…ハーフミラー、126…フィルター、127…分光器、128…受光素子、130…制御部、132…検出制御部、134…電力制御部、136…接続部、140…筐体、200…ラマン分光装置、210…光源、220…光検出器、300…電子機器、310…演算部、320…記憶部、330…表示部

Claims (3)

  1. 金属層と、前記金属層に向けて所望の傾斜角で照射される励起光を透過する透光層と、前記透光層上に設けられ、第1方向に第1ピッチで配列され、前記第1方向に交差する第2方向に第2ピッチで配列された複数の金属粒子と、を含む電場増強素子と、
    前記第1方向に偏光した直線偏光光、前記第2方向に偏光した直線偏光光、及び、円偏光光の少なくとも1つを前記励起光として前記電場増強素子に照射する光源と、
    前記電場増強素子から放射される光を検出する検出器と、
    を備え、
    前記電場増強素子の前記金属粒子の配置は、下記式(1)の関係を満たし、
    P1<P2≦Q+P1 ・・・(1)
    [ここで、P1は前記第1ピッチ、P2は前記第2ピッチ、Qは、前記金属粒子の列に励起される局在型プラズモンの角振動数をω、前記金属層を構成する金属の誘電率をε(ω)、前記金属粒子の周辺の誘電率をε、真空中の光速をc、前記励起光の照射角であって前記金属層の厚さ方向からの傾斜角をθ、として、下記式(2)を満たす回析格子のピッチを表す。
    (ω/c)・{ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))}1/2=ε1/2・(ω/c)・sinθ+2aπ/Q (a=±1,±2,…) ・・・(2)]
    前記透光層の厚さをG[nm]、前記透光層の実効屈折率をneff、前記励起光の波長をλ[nm]としたときに、下記式()の関係を満たす、分析装置。
    30[nm]<G・(neff/1.46)≦160[nm]・(λ/785[nm]) ・・・(
  2. 金属層と、前記金属層に向けて所望の傾斜角で照射される励起光を透過する透光層と、前記透光層上に設けられ、第1方向に第1ピッチで配列され、前記第1方向に交差する第2方向に第2ピッチで配列された複数の金属粒子と、を含む電場増強素子と、
    前記第1方向に偏光した直線偏光光、前記第2方向に偏光した直線偏光光、及び、円偏光光の少なくとも1つを前記励起光として前記電場増強素子に照射する光源と、
    前記電場増強素子から放射される光を検出する検出器と、
    を備え、
    前記電場増強素子の前記金属粒子の配置は、下記式(1)の関係を満たし、
    P1<P2≦Q+P1 ・・・(1)
    [ここで、P1は前記第1ピッチ、P2は前記第2ピッチ、Qは、前記金属粒子の列に励起される局在型プラズモンの角振動数をω、前記金属層を構成する金属の誘電率をε(ω)、前記金属粒子の周辺の誘電率をε、真空中の光速をc、前記励起光の照射角であって前記金属層の厚さ方向からの傾斜角をθ、として、下記式(2)を満たす回析格子のピッチを表す。
    (ω/c)・{ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))}1/2=ε1/2・(ω/c)・sinθ+2aπ/Q (a=±1,±2,…) ・・・(2)]
    前記透光層は、m層の層が積層した積層体からなり、
    mは自然数であり、
    前記透光層は、前記金属粒子側から前記金属層側に向って、第1透光層、第2透光層、・・・、第m−1透光層、第m透光層の順に積層しており、
    前記金属粒子周辺の屈折率をn
    前記金属層の法線方向と前記励起光の入射方向とがなす角をθ
    前記金属層の法線方向と前記第m透光層中の前記励起光の屈折光の前記金属層への入射方向とがなす角をθ
    前記第m透光層の屈折率をn
    前記第m透光層の厚さをG[nm]、
    前記励起光の波長をλ[nm]としたとき、
    下記式(5)、及び、式()の関係を満たす、分析装置。
    ・sinθ=n・sinθ ・・・(5)
  3. 請求項1又は請求項に記載の分析装置と、前記検出器からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する演算部と、前記健康医療情報を記憶する記憶部と、前記健康医療情報を表示する表示部と、を備えた電子機器。
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