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JP6521215B2 - 分析装置、及び電子機器 - Google Patents

分析装置、及び電子機器 Download PDF

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JP6521215B2
JP6521215B2 JP2014187684A JP2014187684A JP6521215B2 JP 6521215 B2 JP6521215 B2 JP 6521215B2 JP 2014187684 A JP2014187684 A JP 2014187684A JP 2014187684 A JP2014187684 A JP 2014187684A JP 6521215 B2 JP6521215 B2 JP 6521215B2
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Description

本発明は、分析装置、及び電子機器に関する。
近年、医療診断や食物の検査等における需要がますます増大し、小型で高速なセンシング技術の開発が求められている。電気化学的な手法をはじめさまざまなタイプのセンサーが検討されているが、集積化が可能、低コスト、そして、測定環境を選ばないといった理由から、表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)を用いたセンサーに対する関心が高まっている。例えば、全反射型プリズム表面に設けた金属薄膜に発生させた表面プラズモンを用いて、抗原抗体反応における抗原の吸着の有無など、物質の吸着の有無を検出するものが知られている。
また、表面増強ラマン散乱(SERS:Surface Enhanced Raman Scattering)を用いセンサー部位に付着した物質のラマン散乱を検出し付着物質の同定を行うなどの方法も検討されている。SERSとは、ナノメートルスケールの金属の表面でラマン散乱光が10〜1014倍に増強される現象である。この表面に標的となる物質が吸着した状態で、レーザーなどの励起光を照射すると、物質(分子)の振動エネルギーの分だけ、励起光の波長から僅かにずれた波長の光(ラマン散乱光)が散乱される。この散乱光を分光処理すると、物質の種類(分子種)に固有のスペクトル(指紋スペクトル)が得られる。この指紋スペクトルの位置や形状を分析することで、極めて高感度に物質を同定することが可能となる。このようなセンサーは、光照射により励起される表面プラズモンに基づく光の増強度が大きいことが望ましい。
例えば、より高感度なセンシングを目的として、局在型プラズモン(LSP:Localized Surface Plasmon)と伝搬型プラズモン(PSP:Propageted Surface Plasmon)の両モードを同時に共鳴させるハイブリッドモードを実現する構造を備えたセンサー素子の一例として、非特許文献1には、GSPP(Gap type Surface Plasmon Polariton)と称するものが提案されており、LSPおよびPSPの電磁的結合(Electromagnetic Coupling)の基礎的事項が述べられている。
さらに、より高感度なセンシングを目的として、金属金属微細構造の形状に異方性を持たせ、金属金属微細構造に励起される局在型表面プラズモン(LSP:Localized Surface Plasmon)の増強電場を強めることが試みられている。例えば、非特許文献1では、金のナノロッドと称する異方性を有する金属粒子について報告があり、当該粒子のアスペクト比(長軸径/短軸径)が大きくなると、吸収スペクトルが増大し、共鳴波長が長波長側にシフトすることが示されている。
OPTICS LETTERS Vol. 34, No. 3 2009, pp244-246 J. Phys. Chem. B 1999, 103, pp3073-3077
高い電場増強度を達成するために、上記非特許文献2に開示された方法を適用すると、金属粒子のアスペクト比を大きくするか、金属粒子を先鋭化することになるが、同文献に
記載のとおり、共鳴波長の長波長化(波長シフト)が起きるため、実用的な波長の範囲におけるセンサーの感度が低下してしまうことがある。したがって、目的の波長において高い増強度を達成するには、単に金属粒子の形状を変化させるだけでは足りず、より精密な寸法設計を行うことが要求される。
本発明の幾つかの態様に係る目的の1つは、増強度スペクトルにおいて、高い増強度が得られ、標的物質を高感度に検出・分析することのできる分析装置及び電子機器を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するために為されたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
本発明に係る分析装置の一態様は、
金属層と、前記金属層上に設けられ励起光を透過する透光層と、前記透光層上に設けられ、第1方向に第1ピッチで配列され、前記第1方向に交差する第2方向に第2ピッチで配列された複数の金属微細構造と、を含む電場増強素子と、
前記第1方向に偏光した直線偏光光を前記励起光として前記電場増強素子に照射する光源と、
前記電場増強素子から放射される光を検出する検出器と、
を備え、
前記電場増強素子の前記金属微細構造の配置は、下記式(1)の関係を満たし、
P1<P2≦Q+P1 ・・・(1)
[ここで、P1は前記第1ピッチ、P2は前記第2ピッチ、Qは、前記金属微細構造の列に励起される局在型プラズモンの角振動数をω、前記金属層を構成する金属の誘電率をε(ω)、前記金属微細構造の周辺の誘電率をε、真空中の光速をc、前記励起光の照射角であって前記金属層の厚さ方向からの傾斜角をθ、として、下記式(2)を満たす回析格子のピッチを表す。
(ω/c)・{ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))}1/2=ε1/2・(ω/c)・sinθ+2aπ/Q (a=±1,±2,,) ・・・(2)]
前記金属微細構造の前記第1方向及び前記第2方向の寸法をそれぞれ、d1及びd2としたとき、d1>d2の関係を満たす。
このような分析装置は、増強度スペクトルにおいて、非常に高い増強度が得られ、標的物質を高感度に検出・分析することができる。
本発明に係る分析装置において、前記励起光は、620nm〜650nmの波長の光を含み、前記金属微細構造の前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向の寸法をd3としたとき、1.1<(d1/d3)の関係を満たしてもよい。このようにすれば、さらに高い電場増強度を得ることができる。
本発明に係る分析装置において、前記透光層の屈折率は、1.4以上1.7以下であってもよい。このようにすれば、さらに高い電場増強度を得ることができる。
本発明の分析装置において、d1>d3>d2の関係を満たすようにしてもよい。このようにすれば、さらに高い電場増強度を得ることができる。
本発明の分析装置において、d3は、30nm以上50nm以下であってもよい。このようにすれば、さらに高い電場増強度を得ることができる。
本発明の分析装置において、前記透光層の材質は、酸化シリコン又は酸化アルミニウムであってもよい。このようにすれば、さらに高い電場増強度を得ることができる。
本発明に係る電子機器の一態様は、上述の分析装置と、前記検出器からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する演算部と、前記健康医療情報を記憶する記憶部と、前記健康医療情報を表示する表示部と、を備える。
このような電子機器によれば、増強度が極めて大きく、標的物質を高感度に検出・分析することができ、高感度・高精度な健康医療情報を提供することができる。
実施形態の電場増強素子を模式的に示す斜視図。 実施形態の電場増強素子を金属層の厚さ方向から平面的に見た模式図。 実施形態の電場増強素子の第1方向に垂直な断面の模式図。 実施形態の電場増強素子の第2方向に垂直な断面の模式図。 実施形態の電場増強素子を金属層の厚さ方向から平面的に見た模式図。 金属微細構造の形状を説明する模式図。 励起光及並びに金の分散曲線を示す分散関係のグラフ。 Agの誘電率と波長の関係を示すグラフ。 金属の分散曲線、局在型プラズモン及び励起光の分散関係を示すグラフ。 実施形態に係る分析装置の模式図。 実施形態に係る電子機器の模式図。 実験例で使用した計算モデル。 実験例に係る電場増強度と金属微細構造の形状との関係を示すプロット。 実験例に係る金属微細構造の形状を示すプロット。 実験例に係る電場増強度と金属微細構造の形状との関係を示すプロット。 実験例に係る金属微細構造の形状を示すプロット。 実験例に係る電場増強度と金属微細構造の形状との関係を示すプロット。 実験例に係る電場増強度と金属微細構造の形状との関係を示すプロット。 実験例に係る電場増強度と金属微細構造の形状との関係を示すプロット。 実験例に係る電場増強度と金属微細構造の形状との関係を示すプロット。 実験例に係る金属微細構造の形状を示すプロット。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.電場増強素子
図1は、実施形態の一例に係る電場増強素子100の斜視図である。図2は、実施形態の一例に係る電場増強素子100を平面的に見た(透光層の厚さ方向から見た)模式図である。図3及び図4は、実施形態の一例に係る電場増強素子100の断面の模式図である。本実施形態の電場増強素子100は、金属層10と透光層20と金属微細構造40とを含む。
1.1.金属層
金属層10は、金属の表面を提供するものであれば、特に限定されず、例えば、厚板状であってもよいし、フィルム、層又は膜の形状を有してもよい。金属層10は、例えば基板1の上に設けられてもよい。この場合の基板1としては、特に限定されないが、金属層
10に励起される伝搬型表面プラズモンに影響を与えにくいものが好ましい。基板1としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、樹脂基板などが挙げられる。基板1の金属層10が設けられる面の形状も特に限定されない。金属層10の表面に規則構造を形成する場合にはその規則構造に対応する表面を有してもよいし、金属層10の表面を平面とする場合には平面としてもよい。図1〜図4の例では、基板1の表面(平面)の上に金属層10が設けられている。
ここで、平面との表現を用いているが、係る表現は、表面が、わずかの凹凸もなく平坦(スムース)な数学的に厳密な平面を指すものではない。例えば、表面には、構成する原子に起因する凹凸や、構成する物質の二次的な構造(結晶、粒塊、粒界等)に起因する凹凸などが存在する場合が有り、微視的にみれば厳密な平面ではない場合がある。しかし、そのような場合でも、より巨視的な視点でみれば、これらの凹凸は目立たなくなり、表面を平面と称しても差し支えない程度に観測される。したがって、本明細書では、このようなより巨視的な視点でみた場合に平面と認識できれば、これを平面と称することとする。
また、本実施形態では、金属層10の厚さ方向は、後述の透光層20の厚さ方向と一致している。本明細書では、金属層10の厚さ方向又は透光層20の厚さ方向を、金属微細構造40について述べる場合などにおいて、厚み方向、高さ方向、第3方向等と称する場合がある。また、例えば、金属層10が基板1の表面に設けられる場合には、基板1の表面の法線方向を厚さ方向、厚み方向、高さ方向又は第3方向と称する場合がある。
さらに、基板1からみて、金属層10側の方向を上、又は上方と表現し、その逆方向を下、又は下方と表現する場合がある。係る上方、下方との表現は、重力の作用する方向とは無関係に用いられ、素子を見る場合の視点や視線の方向を適宜に定めて表現するものとする。また、本明細書において、例えば、「部材Aの上に部材Bが設けられる」との表現は、部材Aの上に接して部材Bが設けられる場合と、部材Aの上に他の部材又は空間を介して部材Bが配置される場合と、を含む意味である。
金属層10は、例えば、蒸着、スパッタ、鋳造、機械加工等の手法により形成することができる。金属層10が基板1の上に設けられる場合には、基板1の表面の全面に設けられてもよいし基板1の表面の一部に設けられてもよい。金属層10の厚みは、金属層10の表面又は金属層10と透光層20との界面付近に伝搬型表面プラズモンが励起され得るかぎり特に限定されず、例えば、10nm以上1mm以下、好ましくは20nm以上100μm以下、より好ましくは30nm以上1μm以下とすることができる。
金属層10は、励起光により与えられる電場と、その電場によって誘起される分極とが逆位相で振動するような電場が存在する金属、すなわち、特定の電場が与えられた場合に、誘電関数の実数部が負の値を有し(負の誘電率を有し)、虚数部の誘電率が実数部の誘電率の絶対値よりも小さい誘電率を有することのできる金属によって構成される。このような誘電率を有しうる金属の例としては、金、銀、アルミニウム、銅、白金、及びそれらの合金等を挙げることができる。励起光として可視光領域の光を用いる場合には、金属層10は、これらの金属のうち、金、銀又は銅からなる層を含むことが好ましい。また、金属層10の表面(厚さ方向の端面)は、特定の結晶面であってもなくてもよい。また、金属層10は、複数層の金属の層で形成されてもよい。
金属層10は、本実施形態の電場増強素子100において伝搬型表面プラズモンを発生させる機能を有している。金属層10に後述する条件で光を入射することにより、金属層10の表面(厚さ方向の上端面)近傍に伝搬型表面プラズモンが発生する。また、本明細書では、金属層10の表面付近の電荷の振動と電磁波とが結合した振動の量子を、表面プラズモン・ポラリトン(SPP:Surface Plasmon Plariton)
と称する。金属層10に発生した伝搬型表面プラズモンは、後述の金属微細構造40に発生する局在型表面プラズモンと、一定の条件下で相互作用(ハイブリッド)することができる。さらに、金属層10は、透光層20側に向って光(例えば励起光の屈折光)を反射させるミラーの機能を有する。
1.2.透光層
本実施形態の電場増強素子100は、金属層10と金属微細構造40とを隔てるための透光層20を有する。図1、3、4には、透光層20が描かれている。透光層20は、フィルム、層又は膜の形状を有することができる。透光層20は、金属層10の上に設けられる。これにより、金属層10と金属微細構造40とを空間的、電気的に隔てることができる。また、透光層20は、励起光を透過することができる。
透光層20は、例えば、蒸着、スパッタ、CVD、各種コーティング等の手法により形成することができる。また平面的に見た場合、透光層20は、金属層10の表面の全面に設けられてもよいし金属層10の表面の一部に設けられてもよい。
透光層20は、正の誘電率を有すればよく、例えば、酸化シリコン(SiO例えばSiO)、酸化アルミニウム(Al例えばAl)、酸化タンタル(Ta)、窒化シリコン(Si)、酸化チタン(TiO例えばTiO)、PMMA(Polymethylmethacrylate)等の高分子、ITO(Indium
Tin Oxide)などで形成することができる。また、透光層20は、誘電体からなることができる。さらに、透光層20は材質の互いに異なる複数の層から構成されてもよい。
透光層20の材質は、酸化シリコン(屈折率:1.46程度)又は酸化アルミニウム(屈折率:1.6〜1.7程度)とすることで、より高い電場増強度を得ることができる場合がある。
透光層20の実効屈折率neffは、透光層20が単一の層からなる場合には、当該単一の層を構成する材料の屈折率の値と等しい。一方、透光層20の実効屈折率neffは、透光層20が複数の層からなる場合には、透光層20を構成する各層の厚さ及び各層の屈折率の積を、透光層20の全体の厚さGで除した値(平均値)に等しい。透光層20の実効屈折率neffは、特に限定されないが、例えば、1.3以上2.0以下、好ましくは1.35以上1.8以下、さらに好ましくは1.4以上1.7以下とすることができる。透光層20の実効屈折率neffがこの範囲であると、より高い電場増強度を得ることができる場合がある。
1.3.金属微細構造層
図1〜図5に示すように、金属微細構造層30は、金属微細構造40が、第1方向にピッチP1で複数並んだ金属微細構造列41を有し、かつ、金属微細構造列41が、第1方向と交差する第2方向に、ピッチP1よりも大きいピッチP2で複数並んだ構造を有する。図3、4に示すように、金属微細構造層30は、金属微細構造40を含む層であるが、金属微細構造40以外の部分には、誘電体、金属等の他の物質が配置されてもよく、好ましくは気体(空間)が配置される。本明細書では、金属微細構造層30は、透光層20の上面から、金属微細構造40の透光層20から離れた側の先端に接する面との間の領域を指す。例えば、金属微細構造層30の上面は、金属微細構造層30に金属微細構造40と気体が含まれている場合には、仮想的な面であり、金属微細構造層30には、金属微細構造40の側方に配置された気体も含まれるものとする。
(金属微細構造)
金属微細構造40は、透光層20の存在により、金属層10から厚さ方向に離間して設けられる。金属微細構造40は、金属層10の上に透光層20を介して配置される。本実施形態の図1〜図5の例では、金属層10の上に透光層20が設けられ、その上に金属微細構造40が形成されることにより、金属層10と金属微細構造40とが厚さ方向で離間して配置され、金属微細構造層30が形成されている。
金属微細構造40の形状は、特に限定されない。例えば、金属微細構造40の形状は、金属層10又は透光層20の厚さ方向に投影した場合に(厚さ方向からの平面視において)円形、楕円形、多角形、不定形又はそれらを組合わせた形であることができ、厚さ方向に直交する方向に投影した場合にも円形、楕円形、多角形、不定形又はそれらを組合わせた形状であることができる。図1〜図5の例では金属微細構造40は、いずれも透光層20の厚さ方向に中心軸を有する楕円柱状の形状で描かれているが、金属微細構造40の形状はこれに限定されない。
図6は、金属微細構造40の形状及び寸法を説明する模式図である。本明細書では、図6(a)〜(c)に示すように、金属微細構造40の第1方向(X方向)及び第2方向(Y方向)の寸法をそれぞれ、d1及びd2と定義する。また、金属微細構造40の第3方向(Z方向)の寸法をd3と定義する。
金属微細構造40の第3方向(高さ方向)の寸法d3は、高さ方向に垂直な平面によって金属微細構造40を切ることができる区間の長さを指し、1nm以上300nm以下である。また、金属微細構造40の高さ方向に直交する第1方向の寸法d2は、第1方向に垂直な平面によって金属微細構造40を切ることができる区間の長さを指し、5nm以上300nm以下である。また、金属微細構造40の高さ方向に直交する第2方向の寸法d2は、第2方向に垂直な平面によって金属微細構造40を切ることができる区間の長さを指し、5nm以上300nm以下である。なお、図6(d)に示すように、例えば、金属微細構造40の形状が高さ方向を中心軸とする楕円柱である場合には、楕円柱を平面的に見た場合の楕円の長軸が第1方向に対して傾いている場合等であっても、寸法d1、d2及びd3は、上記のように定義される。
例えば、金属微細構造40の形状が高さ方向を中心軸とする楕円柱である場合には、金属微細構造40の高さ方向の大きさ(楕円柱の高さ)は、10nm以上300nm以下、好ましくは20nm以上100nm以下、より好ましくは30nm以上50nm以下である。また楕円柱を平面的に見た場合の楕円の長軸が第1方向に平行である場合には、金属微細構造40の第1方向の寸法d1は、楕円の長軸の長さに等しく、例えば、10nm以上300nm以下、好ましくは20nm以上200nm以下、より好ましくは30nm以上150nm以下である。さらに、楕円柱を平面的に見た場合の楕円の長軸が第1方向に平行である場合(すなわち、楕円柱を平面的に見た場合の楕円の短軸が第2方向に平行である場合)には、金属微細構造40の第2方向の寸法d2は、楕円の短軸の長さに等しく、例えば、1nm以上300nm以下、好ましくは20nm以上200nm以下、より好ましくは30nm以上150nm以下である。
そして、本実施形態の電場増強素子100では、d1>d2(すなわち、d1/d2>1)の関係を満たすように、d1及びd2が選ばれる。すなわち、本実施形態の電場増強素子100では、金属微細構造40が、金属微細構造列41の延びる方向(ピッチの狭い方向)に長手を有するような異方的な形状を有する。また、d1/d2の値は、1.5以上5.5以下であればより高い電場増強度が得られ、さらに好ましくは、d1/d2が2.5以上5以下である。
また、本実施形態の電場増強素子100において、1.1<(d1/d3)の関係とな
るようにすれば、増強電場の強度をさらに高めることができる。さらに、d1>d3>d2の関係を満たすようにすると、増強電場の強度をさらに高めることができる。また、これらの関係を満たすようにする場合、波長600nm〜700nmの光を含む励起光、好ましくは、610nm〜680nmの光を含む励起光、より好ましくは波長620nm〜500nmの光を含む励起光、さらに好ましくは、波長633nmの光を含む励起光、特に好ましくは、波長632.8nmの光を含む励起光を用いると、増強電場の強度をさらに高めることができる点で好ましい。
金属微細構造40の材質は、励起光の照射によって、局在型プラズモンを生じうる限り任意である。可視光付近の光によって局在型プラズモンを生じうる材質としては、金、銀、アルミニウム、銅、白金、及びそれらの合金等を挙げることができる。これらの中でも、金属微細構造40の材質としては、Au又はAgであることがより好ましい。このようにすれば、より強いLSP共鳴が得られ、素子全体の増強度を強めることができる。
金属微細構造40は、例えば、スパッタ、蒸着等によって薄膜を形成した後にパターニングを行う方法、マイクロコンタクトプリント法、ナノインプリント法などによって形成することができる。また、金属微細構造40は、コロイド化学的手法によって形成することができ、これを適宜の手法によって金属層10から離間した位置に配置してもよい。
金属微細構造40は、本実施形態の電場増強素子100において局在型プラズモンを発生させる機能を有している。金属微細構造40に、後述する条件で励起光を照射することにより、金属微細構造40の周辺に局在型プラズモンを発生させることができる。金属微細構造40に発生した局在型プラズモンは、上述の金属層10に発生する伝搬型プラズモンと、一定の条件下で相互作用(ハイブリッド)することができる。
(金属微細構造の配置)
図1〜図5に示すように、金属微細構造40は、複数が並んで金属微細構造列41を構成している。金属微細構造40は、金属微細構造列41において、金属層10の厚さ方向(第3方向)と直交する第1方向に並んで配置される。言換えると金属微細構造列41は、金属微細構造40が高さ方向と直交する第1方向に複数並んだ構造を有する。金属微細構造40が並ぶ第1方向は、金属微細構造40が長手を有する形状の場合(異方性を有する形状の場合)、その長手方向とは一致しなくてもよい。1つの金属微細構造列41に並ぶ金属微細構造40の数は、複数であればよく、好ましくは10個以上である。
ここで金属微細構造列41内における第1方向の金属微細構造40の重心間の距離をピッチP1と定義する(図2〜図5参照)。第1方向に延びる金属微細構造列41内における2つの金属微細構造40の粒子間距離は、ピッチP1から金属微細構造40の寸法d1を差引いた長さに等しい。この粒子間距離が小さいと、粒子間に働く局在型プラズモンの強度が増大する傾向がある。粒子間距離は、1nm以上530nm以下であり、好ましくは5nm以上200nm以下、より好ましくは5nm以上150nm以下とすることができる。
金属微細構造列41内における第1方向の金属微細構造40のピッチP1は、6nm以上535nm以下であり、好ましくは10nm以上400nm以下、より好ましくは20nm以上350nm以下である。
金属微細構造列41内における第1方向の金属微細構造40のピッチP1が、20nm以上350nm以下であると、400nm以上700nm未満の波長λの励起光(励起光)を用いて、1100cm−1未満のラマンシフトを示す試料を測定する際に、励起光及びラマン散乱光の両者を十分に増強することができる。
金属微細構造列41は、第1方向にピッチP1で並ぶ複数の金属微細構造40によって構成されるが、金属微細構造40に発生される局在型プラズモンの分布・強度等は、この金属微細構造40の配列にも依存する。したがって、金属層10に発生する伝搬型プラズモンと相互作用する局在型プラズモンは、単一の金属微細構造40に発生する局在型プラズモンだけでなく、金属微細構造列41における金属微細構造40の配列を考慮した局在型プラズモンである。
図1〜図5に示すように、金属微細構造列41は、金属層10の厚さ方向及び第1方向と交差する第2方向にピッチP2で並んで配置される。金属微細構造列41が並ぶ数は、複数であればよく、好ましくは10列以上である。
ここで、隣合う金属微細構造列41の第2方向における重心間の距離をピッチP2と定義する。ピッチP2は、金属微細構造列41が、複数の列から構成される場合には、複数の列の第2方向における重心の位置と、隣の金属微細構造列41の複数の列の第2方向における重心の位置と、の間の距離を指す。
金属微細構造列41間のピッチP2は、金属微細構造40間のピッチP1よりも大きい。すなわち、ピッチP1及びピッチP2の間には、P1<P2の関係がある。係る関係を有することにより、電場増強素子100における金属微細構造40の配置は、透光層20の厚さ方向から見た場合に、異方性を有することとなる。
金属微細構造列41間のピッチP2は、以下の「1.4.伝搬型プラズモン及び局在型プラズモン」で述べる条件に従い設定され得るが、例えば、10nm以上10μm以下であり、好ましくは20nm以上2μm以下、より好ましくは30nm以上1500nm以下、さらに好ましくは60nm以上1310nm以下、特に好ましくは60nm以上660nm以下である。
金属微細構造列41間のピッチP2が、60nm以上660nm以下であると、400nm以上700nm未満の波長λの励起光を用いて、1100cm−1未満のラマンシフトを示す試料を測定する際に、励起光及びラマン散乱光の両者を十分に増強することができる。
なお、金属微細構造列41の伸びる第1方向の線と、隣合う金属微細構造列41にそれぞれ属する2つの金属微細構造40であって、互いに最も近接する2つの金属微細構造40を結ぶ線と、がなす角は、特に限定されず、直角であってもなくてもよい。例えば、図2に示すように、両者がなす角が直角であってもよいし、図5に示すように、両者がなす角が直角でなくてもよい。すなわち、厚さ方向から見た金属微細構造40の配列を、金属微細構造40の位置を格子点とした二次元格子とみなした場合に、既約基本単位格子は、長方形の形状であっても、平行四辺形の形状であってもよい。また、金属微細構造列41の伸びる第1方向の線と、隣合う金属微細構造列41にそれぞれ属する2つの金属微細構造40であって、互いに最も近接する2つの金属微細構造40を結ぶ線と、がなす角が直角でない場合には、隣合う金属微細構造列41にそれぞれ属する2つの金属微細構造40であって、互いに最も近接する2つの金属微細構造40の間の距離をピッチP2としてもよい。
1.4.伝搬型プラズモン及び局在型プラズモン
まず、伝搬型プラズモンについて説明する。図7は、励起光及び金の分散曲線を示す分散関係のグラフである。通常は、金属層10に光を0〜90度の入射角(照射角θ)で入射しても伝搬型プラズモンは発生しない。例えば、金属層10がAuからなる場合には、
図7に示すように、ライトライン(LightLine)とAuのSPPの分散曲線が交点を持たないからである。また、光が通過する媒体の屈折率が変化しても、AuのSPPも周辺の屈折率に応じて変化するため、やはり交点を持たないことになる。交点を持たせ伝搬型プラズモンを起こさせるためには、クレッチマン配置のようにプリズム上に金属層を設け、プリズムの屈折率により励起光の波数を増加させる方法や、回折格子によりライトラインの波数を増加させる方法がある。なお図7はいわゆる分散関係を示すグラフ(縦軸を角振動数[ω(eV)]、横軸を波数ベクトル[k(eV/c)]としたもの)である。
また、図7のグラフの縦軸の角振動数ω(eV)は、波長λ(nm)=1240/ω(eV)の関係があり、波長に換算することができる。また、同グラフの横軸の波数ベクトルk(eV/c)は、k(eV/c)=2π・2/[波長λ(nm)/100]の関係がある。したがって、例えば、波長λ=600nmのとき、k=2.09(eV/c)となる。また、照射角は、励起光の照射角であって、金属層10若しくは透光層20の厚さ方向、又は金属微細構造40の高さ方向からの傾斜角である。
図7にはAuのSPPの分散曲線を示したが、一般には、金属層10に入射される励起光の角振動数をω、真空中の光速をc、金属層10を構成する金属の誘電率をε(ω)、周辺の誘電率をεとしたとき、その金属のSPPの分散曲線は、式(3)
SPP=ω/c[ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))]1/2 ・・・(3)
で与えられる。なお、本明細書の式における「・」又は「×」は、積の演算子を意味する。
一方、励起光の照射角であって金属層10若しくは透光層20の厚さ方向、又は金属微細構造40の高さ方向からの傾斜角をθとし、間隔Qを有する仮想的な回折格子を通過した光の波数Kは、式(4)
K=n・(ω/c)・sinθ+m・2π/Q (m=±1,±2,,) ・・・(4)
で表すことができ、この関係は、分散関係のグラフ上には、曲線ではなく直線で現れる。
なお、nは、周辺屈折率であり、消光係数をκとすれば、光の振動数における比誘電率εの実数部ε’と虚数部ε”は、それぞれ、ε’=n −κ 、ε”=2nκで与えられ、周辺の物質が透明であれば、κ〜0であるから、εは実数で、ε=n となり、n=ε 1/2で与えられる。mは回折光の次数を示す。
分散関係のグラフにおいて、金属のSPPの分散曲線(上記式(3))と回折光の直線(上記式(4))とが交点を有する場合に、伝搬型プラズモンが励起される。すなわち、KSPP=Kの関係が成立すると、金属層10に伝搬型プラズモンが励起される。
したがって、上記式(3)及び式(4)から、以下の式(5)が得られ、
(ω/c)・{ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))}1/2=ε 1/2・(ω/c)・sinθ+2mπ/Q (m=±1,±2,,) ・・・(5)
この式(5)の関係を満たせば、金属層10に伝搬型プラズモンが励起されることが理解される。この場合、図7のAuのSPPの例でいえば、θ及びmを変化させることにより、ライトラインの傾き及び/又は切片を変化させることができ、AuのSPPの分散曲線に対してライトラインの直線を交差させることができる。
なお、金属微細構造40の列に励起される局在型プラズモンの角振動数をω、金属層10を構成する金属の誘電率をε(ω)、金属微細構造40の周辺の誘電率をε、真空中の
光速をc、励起光の照射角であって金属層10の厚さ方向からの傾斜角をθ、とすれば、(ω/c)・{ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))}1/2=ε1/2・(ω/c)・sinθ+2aπ/Q (a=±1,±2,,) ・・・(2)
の関係となる。
次に、局在型プラズモンについて説明する。
金属微細構造40に局在型プラズモンを生じさせる条件は、誘電率の実数部により、
Real[ε(ω)]=−2ε ・・・(6)
で与えられる。周辺の屈折率nを1とすると、ε=n −κ =1なので、Real[ε(ω)]=−2、となる。
図8は、Agの誘電率と波長の関係を示すグラフである。例えば、Agの誘電率は、図8のようであり、約400nm以上の波長で局在型プラズモンが励起されることになるが、複数のAg粒子がナノオーダーで近づく場合や、Ag粒子と金属層10(Au膜等)が透光層20(SiO等)によって隔てられて配置された場合には、そのギャップの影響により、局在型プラズモンの励起ピーク波長はレッドシフト(長波長側へシフト)する。このシフト量は、Ag径、Ag厚さ、Ag粒子間隔、誘電体層厚さ等のディメンジョンに依るが、例えば500nm〜900nmに局在型プラズモンがピークとなる波長特性を示すことになる。
また、局在型プラズモンは、伝搬型プラズモンと異なり、速度を持たず、移動しないプラズモンであり、分散関係のグラフにプロットすると、傾きがゼロ、すなわち、ω/k=0となる。
図9は、金属の分散曲線、局在型プラズモン及び励起光の分散関係の一例を示すグラフである。本実施形態の電場増強素子100は、伝搬型プラズモンと局在型プラズモンを電磁的に結合(Electromagnetic Coupling)させることにより、電場の極めて大きい増強度を得るものである。すなわち、本実施形態の電場増強素子100は、分散関係のグラフにおいて、回折光の直線と金属のSPPの分散曲線との交点を、任意の点とするのではなく、金属微細構造40(金属微細構造列41)に生じる局在型プラズモンにおいて最大又は極大の増強度を与える点の近傍で両者を交差させることを特徴の一つとしている(図9参照)。
換言すると、本実施形態の電場増強素子100では、分散関係のグラフにおいて、金属のSPPの分散曲線と、金属微細構造40(金属微細構造列41)に生じる局在型プラズモンにおいて最大又は極大の増強度を与える励起光の角振動数(図9の分散関係のグラフ上で、LSPと付した横軸に平行な線)との交点の近傍を、回折光の直線が通過するように設計される。
ここで、交点の近傍とは、波長に換算した場合に、励起光の波長の±10%程度の長さの波長の範囲内であり、又は、励起光の波長の±P1(金属微細構造40の金属微細構造列41内におけるピッチP1)程度の長さの波長の範囲内である。
上記式(3)、式(4)及び式(5)では、金属層10に入射される励起光の角振動数をωとして、伝搬型プラズモンの励起される条件を示したが、局在型プラズモンと伝搬型プラズモンとのハイブリッド(相互作用)を生じさせるためには、本実施形態の電場増強素子100では、上記式(3)、式(4)及び式(5)におけるωは、金属微細構造40(金属微細構造列41)に生じる局在型プラズモンにおいて最大又は極大の増強度を与える励起光の角振動数もしくはその近傍の角振動数となる。
したがって、金属微細構造列41に励起される局在型プラズモンの角振動数をωとした場合に、上記式(5)を満たせば、局在型プラズモンと伝搬型プラズモンとのハイブリッドを生じさせることができる。
よって、ピッチP1で金属微細構造40が並んだ金属微細構造列41に発生する局在型プラズモンの角振動数をωとし、分散関係のグラフにおいて、金属のSPPの分散曲線のωの位置の近傍に、照射角θで間隔Qの仮想的な回折格子に入射して回折された回折光(次数mdiff)の直線が通るようにすれば(式(5)を満足させれば)、局在型プラズモンと伝搬型プラズモンとのハイブリッドを生じさせることができ、極めて大きい増強度を得ることができる。言換えると、図8に示す分散関係のグラフにおいて、ライトラインの傾き及び/又は切片を変化させて、SPPとLSPとの交点の近傍を通るようにライトラインを変化させることにより、局在型プラズモンと伝搬型プラズモンとのハイブリッドを生じさせることができ、極めて大きい増強度を得ることができる。
金属微細構造列41の間のピッチP2は、次のように設定される。垂直入射(入射角θ=0)で、かつ、1次の回折光(m=1)を用いる場合には、ピッチP2を間隔Qとすれば式(5)を満たすことができる。しかし、選択する入射角θ及び回折光の次数mにより、式(5)を満たすことのできる間隔Qは、幅を有することになる。なお、この場合の入射角θは、厚さ方向から第2方向への傾斜角であることが好ましいが、第1方向の成分を含む方向への傾斜角としてもよい。
したがって、上記の交点近傍であること(±P1の幅)を考慮して、局在型プラズモンと伝搬型プラズモンとのハイブリッドを生じさせることのできるピッチP2の範囲は、式(1)、
Q−P1≦P2≦Q+P1 ・・・(7)
となる。
一方、ピッチP2は、金属微細構造列41間の第2方向のピッチであるが、隣合う金属微細構造列41に属する2つの金属微細構造40の間のピッチは、2つの金属微細構造40の選び方によって、これらを結ぶ線は第2方向に対して傾けることができる。すなわち、ピッチP2よりも長い間隔を有するように、隣合う金属微細構造列41に属する2つの金属微細構造40を選ぶことができる。図2には、このことを説明する補助線が描かれており、第2方向に対して傾いた方向に沿って、ピッチP2よりも長い距離で離間した2つの金属微細構造40を、隣合う金属微細構造列41から選択することができる。既に述べたように、隣合う金属微細構造列41は、互いに同じ金属微細構造列41であるため、厚さ方向から見た金属微細構造40の配列を、金属微細構造40の位置を格子点とした二次元格子とみなすことができる。そうすると、この二次元格子には、ピッチP2よりも長い間隔(回折格子)が存在することになる。
したがって、ピッチP1及びピッチP2で配列された金属微細構造40のマトリックスは、そのピッチP2よりも大きい間隔を有する回折格子による回折光が期待できる。そのため、上記式(7)の左側の不等式は、P1<P2とすることができる。換言すると、式(7)において、ピッチP2が、Q−P1よりも小さい場合でも、式(5)を満たすことのできる間隔Qを有する回折格子が存在しうるため、局在型プラズモンと伝搬型プラズモンとのハイブリッドを生じさせることができる。したがってピッチP2は、Q−P1よりも小さい値であってもよく、P1<P2の関係を満たせばよいことになる。
以上のことから、本実施形態の電場増強素子100における金属微細構造列41の間のピッチP2は、下記式(1)
P1<P2≦Q+P1 ・・・(1)
の関係を満たせば、局在型プラズモンと伝搬型プラズモンとの良好なハイブリッドを生じさせることができることになる。
1.5.励起光
電場増強素子100に入射される励起光の波長λは、局在型プラズモンを生じ、かつ、上述の式(5)又は式(2)の関係を満足させることができる限り、限定されず、紫外光、可視光、赤外光を含む、電磁波とすることができる。本実施形態では、励起光は、第1方向と同じ方向の直線偏光光であって、波長λの光である。本実施形態では、励起光は、電場が電場増強素子100の第1方向(金属微細構造列41の伸びる方向)と同じ方向の直線偏光光である。このようにすれば、電場増強素子100によって非常に大きい光の増強度を得ることができる。
励起光の波長λは、例えば、400nm以上800nm以下、好ましくは500nm以上800nm以下、より好ましくは630nm以上700nm以下とすることができる。このようにすれば、ラマンシフト1100cm−1の試料を測定する際に、励起光及びラマン散乱光の両者の増強度をより高めることができる。
1.6.増強度
FDTD計算のメッシュ位置により、X方向(第1方向)の電場ExとZ方向(厚さ方向)の電場Ezの大きさの関係、つまりベクトルが変化する。X方向の直線偏光光を励起光として用いた場合、Y方向(第2方向)の電場Eyはほとんど無視できる。そのため、増強度はExとEzの二乗和の平方根、即ちSQRT(Ex+Ez)を用いて把握することができる。このようにすれば、局所電場のスカラーとして互いに比較することができる。
なお、本明細書の実験例や図等において、第1方向をX方向と称する場合があり、その方向のことを「X」なる表記によって表現する場合がある。また、第2方向をY方向と称する場合があり、その方向のことを「Y」なる表記によって表現する場合がある。また、素子の厚さ方向をZ方向と称する場合があり、その方向のことを「Z」なる表記によって表現する場合がある。
SERS(Surface Enhancement Raman Scattering)効果は、SERS EF(Enhancement Factor)として、励起光の波長における電場増強度をEi、ラマン散乱後の波長における電場増強度をEsとし、ホットスポット密度(HSD)を用いて、下記式(a)
SERS EF=Ei×Es×HSD ・・・(a)
で表される。
電場増強素子100の増強度を考える場合には、いわゆるホットスポット密度(HSD)を考慮する必要がある。すなわち、電場増強素子100による光の増強度は、電場増強素子100の単位面積あたりの金属微細構造層30の数に依存する。本実施形態の電場増強素子100においては、上述の式(1)、式(2)の関係が満たされるようにピッチP1、ピッチP2が配置される。したがって、HSDを考慮すると、電場増強素子100のSERS増強度は、(Ei+Es)/(P1・P2)に比例することになる。なお、後述の実験例においては、同一のHSDにおける比較のため、上記式(a)に関し、簡単のため、SERS EF=Ei×Esと定義している。
1.7.その他
上記説明では、金属微細構造を楕円柱としたが、形状は限定されず、角柱、回転楕円体
、ランダム形状であっても、d1、d2、d3を同様に定義することができる。また、複数の金属微細構造のサイズは、互いに必ずしも厳密に揃える必要はない。また、金属微細構造の第1方向の寸法(d1)は入射光(励起光)の波長より小さければよい。さらに、金属微細構造と金属層の材質は、表面プラズモン共鳴を持つものであればよく、互いに同じでも異なってもよい。さらに、基板の各要素(金属層、透光層、金属微細構造)の製造方法は限定されない。
2.分析装置
本実施形態の分析装置は、上述の電場増強素子と、光源と、検出器と、を備える。以下、分析装置がラマン分光装置である場合を例として説明する。
図10は、本実施形態に係るラマン分光装置200を模式的に示す図である。ラマン分光装置200は、標的物質からのラマン散乱光を検出して分析(定性分析、定量分析)するものであって、図10に示すように、光源210と、気体試料保持部110と、検出部120と、制御部130と、検出部120及び制御部130を収容している筐体140と、を含む。気体試料保持部110は、本発明に係る電場増強素子を含む。以下では、上述の電場増強素子100を含む例について説明する。
気体試料保持部110は、電場増強素子100と、電場増強素子100を覆うカバー112と、吸引流路114と、排出流路116と、を有している。検出部120は、光源210と、レンズ122a,122b,122c,122dと、ハーフミラー124と、光検出器220と、を有している。制御部130は、光検出器220において検出された信号を処理して光検出器220の制御をする検出制御部132と、光源210などの電力や電圧を制御する電力制御部134と、を有している。制御部130は、図10に示すように、外部との接続を行うための接続部136と電気的に接続されていてもよい。
ラマン分光装置200では、排出流路116に設けられている吸引機構117を作動させると、吸引流路114及び排出流路116内が負圧になり、吸引口113から検出対象となる標的物質を含んだ気体試料が吸引される。吸引口113には除塵フィルター115が設けられており、比較的大きな粉塵や一部の水蒸気などを除去することができる。気体試料は、吸引流路114及び排出流路116を通り、排出口118から排出される。気体試料は、係る経路を通る際に、電場増強素子100の金属微細構造40と接触する。
吸引流路114及び排出流路116の形状は、外部からの光が電場増強素子100に入射しないような形状である。これにより、ラマン散乱光以外の雑音となる光が入射しないため、信号のS/N比を向上させることができる。流路114,116を構成する材料は、例えば、光を反射し難いような材料や色である。
吸引流路114及び排出流路116の形状は、気体試料に対する流体抵抗が小さくなるような形状である。これにより、高感度な検出が可能になる。例えば、流路114,116の形状を、できるだけ角部をなくし滑らかな形状にすることで、角部における気体試料の滞留をなくすことができる。吸引機構117としては、例えば、流路抵抗に応じた静圧、風量のファンモーターやポンプを用いる。
ラマン分光装置200では、光源210は、電場増強素子100に励起光を照射する。光源210は、電場増強素子100の第1方向(金属微細構造40の並ぶ方向であって、金属粒子列31の伸びる方向)に直線偏光した光(第1方向と同じ方向の直線偏光光)を照射できるように配置される。図示しないが、光源210から照射される励起光の入射角θは、電場増強素子100の表面プラズモンの励起条件に応じて適宜変化させることができるようにしてもよい。光源210は、図示しないゴニオメーター等に設置されてもよい
光源210が照射する光は、「1.5.励起光」の項で述べたと同様である。具体的には、光源210としては、半導体レーザー、気体レーザー、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、キセノンランプなどに、適宜、波長選択素子、フィルター、偏光子などを設けたものを例示することができる。
光源210から射出された光は、レンズ122aで集光された後、ハーフミラー124及びレンズ122bを介して、電場増強素子100に入射する。電場増強素子100からは、SERS光が放射され、該光は、レンズ122b、ハーフミラー124、及びレンズ122c,122dを介して、光検出器220に至る。すなわち、光検出器220は、電場増強素子100から放射される光を検出する。SERS光には、光源210からの入射波長と同じ波長のレイリー散乱光が含まれているので、光検出器220のフィルター126によってレイリー散乱光を除去してもよい。レイリー散乱光が除去された光は、ラマン散乱光として、光検出器220の分光器127を介して受光素子128にて受光される。受光素子128としては、例えば、フォトダイオードを用いる。
光検出器220の分光器127は、例えば、ファブリペロー共振を利用したエタロン等で形成されており、通過波長帯域を可変とすることができる。光検出器220の受光素子128によって、標的物質に特有のラマンスペクトルが得られ、例えば、得られたラマンスペクトルと予め保持するデータとを照合することで、標的物質の信号強度を検出することができる。
なお、ラマン分光装置200は、電場増強素子100、光源210、及び光検出器220を含み、電場増強素子100に標的物質を吸着させ、そのラマン散乱光を取得することができれば、上記の例に限定されない。
また、レイリー散乱光を検出する場合は、ラマン分光装置200は、フィルター126を有さず、分光器によって、レイリー散乱光とラマン散乱光とを分光してもよい。
ラマン分光装置200では、上述の電場増強素子100を含む。このようなラマン分光装置200(分析装置)によれば、増強度(反射率)スペクトルにおいて、非常に高い増強度が得られ、標的物質を高感度に検出・分析することができる。
3.電子機器
次に、本実施形態に係る電子機器300について、図面を参照しながら説明する。図11は、本実施形態に係る電子機器300を模式的に示す図である。電子機器300は、本発明に係る分析装置(ラマン分光装置)を含むことができる。以下では、本発明に係る分析装置として上述のラマン分光装置200を含む例について説明する。
電子機器300は、図11に示すように、ラマン分光装置200と、光検出器220からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する演算部310と、健康医療情報を記憶する記憶部320と、健康医療情報を表示する表示部330と、を含む。
演算部310は、例えば、パーソナルコンピューター、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistance)であり、光検出器220から送出される検出情報(信号等)を受け取る。演算部310は、光検出器220からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する。演算された健康医療情報は、記憶部320に記憶される。
記憶部320は、例えば、半導体メモリー、ハードディスクドライブ等であり、演算部310と一体的に構成されてもよい。記憶部320に記憶された健康医療情報は、表示部330に送出される。
表示部330は、例えば、表示板(液晶モニター等)、プリンター、発光体、スピーカー等により構成されている。表示部330は、演算部310によって演算された健康医療情報等に基づいて、ユーザーがその内容を認識できるように、表示又は発報する。
健康医療情報としては、細菌、ウィルス、タンパク質、核酸、及び抗原・抗体からなる群より選択される少なくとも1種の生体関連物質、又は、無機分子及び有機分子から選択される少なくとも1種の化合物の有無若しくは量に関する情報を含むことができる。
電子機器300では、上述のラマン分光装置200を含む。そのため、電子機器300では、微量物質の検出を高感度で効率よく行うことができ、高精度な健康医療情報を提供することができる。
例えば、本発明に係る電場増強素子は、抗原抗体反応における抗原の吸着の有無などのように、物質の吸着の有無を検出するアフィニティー・センサーなどとして用いることもできる。アフィニティー・センサーは、該センサーに白色光を入射し、波長スペクトルを分光器で測定し、吸着による表面プラズモン共鳴波長のシフト量を検出することで、検出物質のセンサーチップへの吸着を高感度に検出することができる。
4.実験例
以下に実験例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
実験例1−3では、FDTDシミュレーションで近接場解(増強電場の分布)を求めた。計算はRsoft社(現サイバネットシステム株式会社)のFDTD soft FullWAVEを用いた。励起光は、X方向の直線偏光光とし、Z方向(基板の厚さ方向)に平行な垂直入射とした。
また、金属層として、光が透過しない程度に十分厚い金(Au)層を用い、当該金属層(金)上に、透光層として、屈折率1.46のSiO層(実験例1、2)、及び屈折率1.64のAl層(実験例3)を用い、透光層上に金属微細構造として、楕円柱状の金を一定の周期で形成したGSPP(Gap type Surface Plasmon Polariton)モデルとした。なお、金属層、金属微細構造の材質は、限定されず、励起光の波長領域において、誘電率の実数部が負で大きく、虚数部が実数部より小さい金属であればプラズモンを生じさせることができる。なお、金属微細構造の寸法は、LSPとPSPとの相互作用が大きくなるように選んだ。
図12に各実験例で使用した計算モデルを示す。図12(a)及び図12(b)に模式的に示すように、金属微細構造は、X幅がd1、金属微細構造Y幅がd2、金属微細構造の高さがd3である。
実験例1〜3の共通のパラメーターを示す。
・金属層は、厚さ150nmの金とした。
・X方向(第1方向)におけるピッチP1は140nm、Y方向(第2方向)におけるピッチP2は400nmとした。
・金属微細構造の材質は金とした。
・金の屈折率は、ローレンツドルーデモデルを用いた。
SERSの増強効果は、励起光の波長における電場増強度をEi、ラマン散乱後の波長における電場増強度をEsとし、Ei×Esに比例することが知られている。実験例1〜3は、励起波長を633nmとし、散乱波長677nmに対して、Ei×Esが最も高くなるように設計した。このように設計すれば、ラマンシフトがおよそ1100cm−1未満のラマンピークを増幅可能である。
4.1.実験例1 (d1/d2を変化)
図12の計算モデルで、透光層の誘電体の屈折率を1.46(SiOを想定)とし、d3=30nm、及び50nmに対して、d1/d2=2、3、4・・・と変化させた。この時、d1/d2の比を維持しながらd1とd2の寸法を変え、また、透光層の膜厚を変えて、Ei×Esが最大となる条件を求めた。また、比較として、d1/d2=1としたモデル(円柱モデル)を計算した。
図13及び図14にd3=30nmとした場合の結果を示す。また、表1には各パラメーターの数値を示す。図13は、d1/d2に対してEi×Esをプロットしたグラフである(d3=30nmで固定)。図14は、d1/d2に対してd1/d3をプロットしたグラフである。
図13をみると、d1/d2の値が大きくなるに従って、Ei×Esの値は増加し、ある値で減少に転じることがわかる。しかし、d1/d2=1(円柱状の金属微細構造)に比べれば、d1/d2=6程度までは、より高い電場増強度が得られることが判明した。
また、図14をみると、d1/d2の値が大きくなるにつれて、d1/d3の値が単調に小さくなることが分かった。両者の値は、線形的に相関しており、関係式は、図14中に示した破線のようになった。これは、表1に示すように、Ei×Esが最大となる条件を追求した結果、d1/d2が大きくなるほど、d1の値が小さくなるためである。すなわち金属微細構造の形状が、第1方向に延びる(細長くなる)につれて、プラズモン共鳴波長が長波長にシフトするため、d1を減少させて共鳴波長を維持したことによる。
図15及び図16には、d3=50nmとした場合の結果を示す。また、表2には各パラメーターの数値を示す。図15は、d1/d2に対してEi×Esをプロットしたグラフである(d3=50nmで固定)。図16は、d1/d2に対してd1/d3をプロットしたグラフである。
図15をみると、d3=50nmとした場合も、d3=30nmの場合と同様に、d1/d2の値が大きくなるに従って、Ei×Esの値は増加し、ある値で減少に転じることがわかる。しかし、d1/d2=1(円柱状の金属微細構造)に比べれば、d1/d2=6程度までは、より高い電場増強度が得られることが判明した。
また、図16をみると、d3=50nmとした場合も、d3=30nmの場合と同様に、d1/d2の値が大きくなるにつれて、d1/d3の値が単調に小さくなることが分かった。両者の値は、線形的に相関しており、関係式は、図16中に示した破線のようになった。これは、表2に示すように、Ei×Esが最大となる条件を追求した結果、d1/d2が大きくなるほど、d1の値が小さくなるためである。すなわち金属微細構造の形状が、第1方向に延びる(細長くなる)につれて、プラズモン共鳴波長が長波長にシフトするため、d1を減少させて共鳴波長を維持したことによる。
図13、図15、表1、表2に示したように、金属微細構造の形状が、第1方向に延びる(細長くなる)につれて、より高い電場増強度が得られる一方、第1方向に延びすぎる(非常に細長くなる)と、電場増強度が低下してしまうことが分かった。
本実験例の結果から、金属微細構造の形状として、d1/d2>1(すなわちd1/>d2)の領域で、異方性のない形状の金属微細構造よりも高い電場増強度が得られることが判明した。また、d1/d2が1.5以上5.5以下であればより高い電場増強度が得られ、さらにd1/d2が2.5以上5以下であるとさらに高い電場増強度が得られることが分かった。
また、金属微細構造の高さ(d3)についても、d1/d3>1.1以上で高い電場増強度が得られることが判明した。さらに、表1及び表3をみると、d1>d3>d2とした場合のほうが、d1>d2>d3とした場合よりも高い電場増強度が得られることがわかる。
4.2.実験例2 (d3を変化)
図12の計算モデルにて、透光層の屈折率を、1.46(SiOを想定)とし、d1/d2=2に対して、d3=20nm、30nm、40nm、50nm及び60nmとなるようにした。d1、d2及びd3の寸法及び透光層の膜厚を変え、Ei×Esが最大となる条件を求めた。図17にその結果をプロットした。また、表3には各パラメーターの数値を示す。図17は、d1/d3に対してEi×Esをプロットしたグラフである(d1/d2=2で固定)。
図17及び表3から、d3を大きくすると、d3=50nmでEi×Esが最大値を示すことがわかる。d3=60nmではEi×Esは若干低下することが分かった。
4.3.実験例3 (実験例1、2のまとめ)
図18に、上記実験例1及び実験例2のデータを、横軸にd1/d2をとり、縦軸にd1/d3をとり、Ei×Esの相対的な強度を円の大きさで表したプロットを示す(Ei×Esの値は、各表に示した通りである。)。なお、d1/d2=1.5及びd1/d3=3のプロットは、図15及び図16のプロットから補完して得た、d3=50nmのプロットである。
図18をみると、Ei×Esの強度は、d1/d2>1の全領域で高くなっている。すなわち、図18のグラフにおけるd1/d2=1のライン上にある2点よりも、他の全ての点における電場増強度が高かった。また、d1/d3については、1.1以上の領域で電場増強度が高く、2.5以下あるいは1.7以下の領域で電場増強度が高かった。
図19は、上記実験例1及び実験例2のデータを、横軸にd1/d2をとり、縦軸にd1/d3をとり、Ei×Esの相対的な強度をプロットの色の濃さで表したプロットを示す(Ei×Esの値は、各表に示した通りである。)。
図19に補助線を描いた通り、より高い電場増強度が得られる領域は、d1/d2>1、かつ、d1/d3>1.1、かつ、d1>d3>d2であることがわかった。
4.4.実験例3 (透光層の屈折率を変化)
図12の計算モデルで、透光層の屈折率を、1.64(Alを想定)とし、d3=30nmに対して、d1/d2=2、3、4・・・となるようにした。ここでは、d1/d2の値を維持しながら、d1及びd2の寸法及び透光層の膜厚を変化させ、Ei×Esが最大となる条件を求めた。また、比較として、d1/d2=1としたモデル(円柱モデル)を計算した。
図20及び図21にd3=30nmとした場合の結果を示す。また、表4には各パラメーターの数値を示す。図20は、d1/d2に対してEi×Esをプロットしたグラフである(d3=30nmで固定)。図21は、d1/d2に対してd1/d3をプロットしたグラフである。
図20、図21及び表4をみると、透光層の屈折率を変えた場合でも、実験例1、2とと同様に、d1/d2の値が大きくなるに従って、Ei×Esの値は増加し、ある値で減少に転じることがわかる。しかし、d1/d2=1(円柱状の金属微細構造)に比べれば、d1/d2=5程度までは、より高い電場増強度が得られることが判明した。
また、図21をみると、d1/d2の値が大きくなるにつれて、d1/d3の値が単調に小さくなることが分かった。両者の値は、線形的に相関しており、関係式は、図21中に示した破線のようになった。これは、表4に示すように、Ei×Esが最大となる条件を追求した結果、d1/d2が大きくなるほど、d1の値が小さくなるためである。
透光層の屈折率が1.46(実験例1、2)から1.64に増大させた結果、d1の値は、実験例1、2の場合に比較して小さい値となった。これは、プラズモン共鳴波長が長波長シフトしたためと考えられる。
本実験例の結果から、透光層の屈折率を、1.64とした場合でも、金属微細構造の形状として、d1/d2>1(すなわちd1/>d2)の領域で、異方性のない形状の金属微細構造よりも高い電場増強度が得られることが判明した。また、d1/d2が1.5以上4.5以下であればより高い電場増強度が得られ、さらにd1/d2が2以上4以下であるとさらに高い電場増強度が得られることが分かった。
また、金属微細構造の高さ(d3)についても、d1/d3>1.1以上で高い電場増強度が得られることが判明した。さらに、表4をみると、d1>d3>d2とした場合のほうが、d1>d2>d3とした場合よりも高い電場増強度が得られることがわかった。
なお、上記実験例では、いずれも金属微細構造の形状として、楕円柱を想定しているが、d1、d2、d3を定義することができ、異方性を有すればどのような形状でもよく、例えば、楕円の長軸を軸として回転した回転楕円体(この場合長軸がd1となる。)や、葉巻型、針状、ロッド状、不定形等を組み合わせた形状であってもよい。
以上の実験例から、d1、d2、d3を適切に選ぶことにより、共鳴波長の長波長化を起こさず、かつ強い増強電場をもつ構造を実現できることが判明した。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…基板、10…金属層、20…透光層、30…金属微細構造層、40…金属微細構造、41…金属微細構造列、100…電場増強素子、110…気体試料保持部、112…カバー、113…吸引口、114…吸引流路、115…除塵フィルター、116…排出流路、117…吸引機構、118…排出口、120…検出部、122a,122b,122c,122d…レンズ、124…ハーフミラー、126…フィルター、127…分光器、128…受光素子、130…制御部、132…検出制御部、134…電力制御部、136…接続部、140…筐体、200…ラマン分光装置、210…光源、220…光検出器、300…電子機器、310…演算部、320…記憶部、330…表示部

Claims (7)

  1. 金属層と、前記金属層上に設けられ励起光を透過する透光層と、前記透光層上に設けられ、第1方向に第1ピッチで配列され、前記第1方向に交差する第2方向に第2ピッチで配列された複数の金属微細構造と、を含む電場増強素子と、
    前記第1方向に偏光した直線偏光光を前記励起光として前記電場増強素子に照射する光源と、
    前記電場増強素子から放射される光を検出する検出器と、
    を備え、
    前記電場増強素子の前記金属微細構造の配置は、下記式(1)の関係を満たし、
    P1<P2≦Q+P1 ・・・(1)
    [ここで、P1は前記第1ピッチ、P2は前記第2ピッチ、Qは、前記金属微細構造の列に励起される局在型プラズモンの角振動数をω、前記金属層を構成する金属の誘電率をε(ω)、前記金属微細構造の周辺の誘電率をε、真空中の光速をc、前記励起光の照射角であって前記金属層の厚さ方向からの傾斜角をθ、として、下記式(2)を満たす回析格子のピッチを表す。
    (ω/c)・{ε・ε(ω)/(ε+ε(ω))}1/2=ε1/2・(ω/c)・sinθ+2aπ/Q (a=±1,±2,,) ・・・(2)]
    前記金属微細構造の前記第1方向及び前記第2方向の寸法をそれぞれ、d1及びd2としたとき、d1>d2の関係を満たす、分析装置。
  2. 請求項1において、
    前記励起光は、620nm〜650nmの波長の光を含み、
    前記金属微細構造の前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向の寸法をd3としたとき、1.1<(d1/d3)の関係を満たす、分析装置。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記透光層の屈折率は、1.4以上1.7以下である、分析装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
    前記金属微細構造の前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向の寸法をd3としたとき、
    d1>d3>d2の関係を満たす、分析装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
    前記金属微細構造の前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向の寸法をd3としたとき、
    d3は、30nm以上50nm以下である、分析装置。
  6. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
    前記透光層の材質は、酸化シリコン又は酸化アルミニウムである、分析装置。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の分析装置と、前記検出器からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する演算部と、前記健康医療情報を記憶する記憶部と、前記健康医療情報を表示する表示部と、を備えた電子機器。
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